第5回 支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会 議事録

日時

2025年5月15日(木)15:00~17:15

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

出席者

(専門委員)
【会議室】
池本委員、葛山委員、柴田委員、瀧委員、谷本委員、山本委員
【テレビ会議】
坂東座長、森下座長代理、井上委員、柿野委員、加藤委員、滝澤委員、永沢委員、宮園委員
(オブザーバー)
【テレビ会議】
黒木委員長代理、柿沼委員
(事務局)
小林事務局長、後藤審議官、友行参事官、江口企画官、事務局担当者

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    ①瀧委員プレゼンテーション
    ②谷本委員プレゼンテーション
    ③森下座長代理プレゼンテーション
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1. 開会≫

○坂東座長 本日は、皆様、お忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございます。ただいまから、消費者委員会第5回の「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」を開催いたします。

本日、会議に御出席いただいております委員の皆様を御紹介いたします。

本日は、池本委員、葛山委員、柴田委員、瀧委員、谷本委員、山本委員は会議室で、森下座長代理、井上委員、柿野委員、加藤委員、滝澤委員、永沢委員、宮園委員及び私、坂東はテレビ会議システムで出席しております。なお、岩澤委員は御所用により御欠席との連絡をいただいております。

また、消費者委員会からのオブザーバーとして、本日は、黒木委員長代理、柿沼委員にはテレビ会議システムにて御出席をいただいております。なお、鹿野委員長、大澤委員、星野委員は御欠席との連絡をいただいております。

本日の進行についてですが、途中で私の回線が切れた場合には、復旧するまでの間、座長代理に、座長代理の回線も併せて切れた場合には、事務局に進行をお願いすることにいたしたいと思います。

それでは、本日の会議の進め方等につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。

○江口企画官 議事に入る前に、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第に配付資料を記載してございます。もし不足等がございましたら事務局までお知らせください。

本日、テレビ会議システムを活用して進行いたします。一般傍聴者にはオンラインにて傍聴いただき、報道関係者のみ会議室で傍聴いただいております。議事録については後日公開いたしますが、議事録が掲載されるまでの間は、本日の会議の模様をホームページにて配信いたします。

以上でございます。

○坂東座長 ありがとうございます。


≪2.①瀧委員プレゼンテーション≫

○坂東座長 それでは、早速ですが、本日は、支払手段の多様化にも深く関わっているフィンテックの現状や消費者保護に係る問題意識について、瀧委員に御発表をお願いしております。大変短い時間で恐縮ですが、瀧委員、20分程度で御報告をよろしくお願いいたします。

○瀧委員 どうぞよろしくお願いいたします。

このたび、このような機会を頂戴しましてありがとうございます。マネーフォワードの瀧でございます。

私、フィンテック村から来ましたという体裁で本検討会に入っておりますけれども、この分野を11年ほど研究しておる人間でございまして、私は実はフィンテックという言葉を殊さら取り上げる意味が実はだんだん最近分からなくなってきたといいますか、割と当たり前になりつつある技術を、とはいえ新しく生んでいる様々な課題に対してどう読み解くかという観点で本日申しております。どうぞよろしくお願いいたします。

構成として、フィンテックは、とはいえどんなことをもたらしてきたのかが半分と、当検討会にフィンテック屋さんが来るとどういうふうに思っているのかというのを半分でお持ちする予定でございます。

内容に入りますけれども、まずフィンテックが大きく台頭した背景を幾つか概略をお話しできればと思います。

一番重要なのは当然スマートフォンの普及と言い切れるのだと思っておるのですけれども、世の中というのはフィンテックがそもそも何で言葉として重要になったのかを申し上げますと、スマホよりも昔の時代は、金融取引というのはパソコンを使うなり、専用線を使うなり、よくインフォームされた人たちが使うものだったというところから、スマートフォン上ですので、誰でもどこでもいつでも何でもできてしまう期待値が社会に生まれましたので、当然その流れが金融にも波及してきたというのがあるのだろうなと思っております。

フィンテックは単語として面白がっていた時代が10年ぐらいはあったのですけれども、私、それは結構ナンセンスだなとずっと思っているところがございまして、見てのとおり金融というのはもともと情報産業でございますので、テクノロジーが重要なのだと言っているのは、何を言っているんだか感が正直当時はあったのだろうなと思っています。ただ、私たちが想像していた以上に金融サービス自体が身近になったというのはあるのだと思っています。様々なピアツーピア決済の在り方とかも含めて、簡単で低コストですぐに起きますよねというのが社会の期待値としてかなり定着したのはあるのだと思っています。

ただ、フィンテックが進展したという表現は実はあまり適切ではないと私は思っていまして、社会全体が様々にデジタル性を帯びているから、それを可能とするために金融が適合してきた結果として私たちがフィンテックと呼んでいるものがあるのだろうなと思っております。

あと、後ほどキーワードになるのですが、金融のイノベーションというのは基本的にアンバンドリングという言葉がよく出てくるのです。昔であれば、1人の人がワンストップでいろいろなことをやってくれた時代から、それぞれの機能に適した技術だったり、それぞれの機能に適した事業者が生まれてきて、今まで1人の人、会社がやっていたものを4者でやるみたいな、機能をばらばらにしていくという傾向があるのだと思っていまして、その過程で非常に効率化がある意味競争優位まで進みますと。その結果として、利便性も促進されるような、そういうドライバーの下でできているのかなと思っております。

フィンテックは触れ始めると何時間もかかる話なのですが、一番重要なキーワードは機能だと思っております。金融産業というのは割と小難しい説明も可能なのですが、私のゼミの先生だった池尾先生という方が一番シンプルな説明をされていて、金融というのは機能なのですと。機能の塊で金融はできていて、その機能がどのような技術によって、もしくはどのような契約理論によって支えられているのかというので理解するのがよいというのがもともとの考え方なのだと思っています。

ツヴィ・ボディーとロバート・マートンが昔書いた本で『金融の本質』という本があるのですけれども、金融と呼ばれているものは軒並み左側にある6つの機能の組合せによってできているというのがファイナンス理論の学者の間では割とよくある考え方なのだと思っています。これが6個なのか4個なのかはいろいろな学派があるのですけれども、金融というのは基本的には機能であると。私は、フィンテックを読み解くときには、その機能を可能としている技術がありまして、その技術を使うコストが何らかの方法で安くなると、金融のサービスの提供方式が結果的には変わるのだと思っています。製造業とかいろいろな例えができると思うのですが、部品のある部分がとても安くなると、ほかのものと別々に提供したほうがいいみたいなことが起きるのです。まさにそういういろいろな技術変化があるときに、見てのとおり決済というところは割と本質的な技術変化がスマートフォンの登場によって起きたのだと思っていまして、その結果として、一番右側にあるように、代表的な業態商品としても非常に主語の大きなスーパーアプリだったり、店舗決済とか、そういうものが抜本的にやり方が変わってきたのだなと見るのかなと思っています。細かいところは差し置いて、そういう大枠で見ていただくのかなと思っています。

結果として生まれてきたもの、本当に有名なものだけ書いておりますけれども、決済であったり、資産運用であったり、あとお金の管理みたいな領域で日本はいろいろな大きなプレーヤーが当社も含めて生まれてきたのかなと思っています。ここは羅列するところまでです。

肝心なのは後ろにあるトレンドなのだと思っていまして、スマートフォンをみんなが使うようになりましたという背景のところに、世の中でクラウド化がいろいろなサービスについて進みましたし、結構重要なポイントとして、フィンテックとかキャッシュレス決済はECの拡大によって一緒に進んできたのだと思うのです。オンライン上で物が買えるというときに現金取引をやるというのは、無理ではないですけれどもやりませんよねというところもありますので、ECがすごく拡大したことで、すぐに決済したいという需要が生まれますから、そこに即して社会が膨らんできたというか、フィンテックが受容されてきたというのがあるのだと思っています。

それと同時に、デジタルグッズといいますか、デジタルそのものの商材が増えたのだと思っていまして、マネーフォワード社なんてデジタルグッズの塊なわけでして、会計ソフトを使う権利とかを売っているのです。なので、サブスクリプションであったり、ソフトを買い切るのではなくて使っているときだけ支払うようなシェアリング型の消費が行われるときに、これもまた個別に端数でめちゃくちゃ支払いがいっぱい起きるみたいなところですと、フィンテックがだんだん役に立つようなところがあるわけでございます。

あとは世の中の動態として、デジタルプラットフォーマーはどんどん増えているというのもありますし、例えばマクドナルドを一つ取っても、お店へ行っても私は少なくともインターネット上で決済をしているみたいなのがあるわけでして、オフラインとオンラインが本当に一緒の体系にされつつあるというところは非常に大きなトレンドなのかなと思っております。

テクノロジー業界というのは非常に主語を大きく偉そうなことを申し上げることが多いのですが、フィンテック業界で今まで最も大きなほらを吹いたのがこの言葉かなと思っていまして、「全ての企業はフィンテック企業になる」というのがシリコンバレーの非常に有名なキャピタリストから発せられたというのがございました。大言壮語と取ることもできるのですけれども、どのような商品にも必ず消費者余剰がありますから、すぐに買いたい人がいますと。あと、初見さんに売るよりも、2回目、3回目を促したほうがサービスとかビジネスの質がよくなりますから、リピーターによいものを提供したいというイメージもありますし、あと商売の常として、できれば早く払ってほしい、できるだけ多く早く払ってほしいみたいなのがあるわけでして、それは全部裏側では、便利な決済サービスだったり、便利な与信サービスがあれば、便利なビジネスを創出するところにはそういうものが裏側に埋め込めていくという姿勢があるのだと思っています。

一番分かりやすいのは多分Apple Payとか、あとはAmazonでワンクリックショッピングがされるとか、そういうものは便利なものをすぐに可能とするという観点で、こういう金融機能が自然と便利な経済圏の裏側に埋め込まれていくような構造があるのかなというのがまずフィンテックの外観像なのかなと思っています。

これを可能とする法体系はどうなっているか、過去十数年分、全部ではないのですけれども大事と思われるものをずらっとAIにまとめさせてみたのですけれども、これをポイントにまとめるとこういうところかなと思っていまして、一つは、私どもの会社もやっていますけれども、利用者中心型、利用者代行型のチャネルというのが幾つか金融法制の中では生まれてきています。と同時に、まとめていて結構目立つなと思ったのは、預金との対比で電子マネーというものが持つ利便性拡大が非常に大きく図られているというのがございます。これは電子マネーが昔はどちらかというと前払式支払手段という表現のように、あるお店では前もって払っておくみたいな手段であるところから、今は価値移転の方法であったり、給与を支払う方法であったり、あと全銀ネットに接続するだの非常に預金のような性質を帯びてきているというのがあるのだと思っています。これ自体が預金のイノベーションを促すというのもあれば、預金というのはそうそう触ることができない制度でもあるので、イノベーションが早いところに新しいお金の形が生まれているのだというのがあるのだと思います。

3つ目にありますのは、クレジットカードが日本のキャッシュレスでは主役になっているのは変わらずでございまして、その適用範囲がどんどん広がってきたと。当然広がっている範疇の中に現状の課題の多い支払いみたいなものが出てくるわけですけれども、全体としては、社会が便利になる過程でクレカが非常によく使われるようになったというのはあると思います。

4つ目は結構別の論点ですけれども、非対面で口座をつくるみたいなことが昔はできなかったわけなのです。それがどんどん本来あるべき強度においてデジタルに口座開設がつくれるとなったわけでして、これが可能になると当然口座がつくれるのでお金をすぐに移すことができてしまうという、よく切れる包丁状況が起きるというのがあると思います。そういうことに起きる悪いことに対しても、金融庁さんはかなり早くいろいろ対応されているなというのは思っておりまして、下のとおりいろいろな保全手段が図られてきたというのがあるのだと思っております。

2つ目の大きなトピックは、情報の管理とかについてなのですけれども、これは昨年消費者委員会のエンパワーメントのところでも話したので本当に触るだけにいたします。

我々みたいなフィンテック業の中でも、資産管理をやっていたりする業はどういうふうに情報を使っているのかというのを3つに大きく分類すると、利用者が主人公である使い方と、サービス提供者が情報を活用するルートと、あとは統計加工して社会の役に立てる、これは今日はあまり関係ないですけれども、そういう3つのルートがあるなと思っています。エンパワーメントのときにずらずらと述べましたけれども、特に電代業を営んでいる当社とかは、ユーザーに物すごくたくさんの同意を取って、あなたのデータを使わせてくださいという仕組みを各銀行との間で構築をし、それは非常に丁寧にデジタル上の信頼を高める仕組みを保全しているわけなのです。

その上で、例えば高齢者の見守りにそのデータを使うことをやったりとか、自分のお金が不正に使われていないかをアラートで検知するみたいな仕組みをつくったり、実際にそういう不正検知をマネーフォワードでやっている人は結構いたりするのです。あとはサブスクで不要なものがないかを検知するとか、こういう形で自分のために決済データを自分で使うというのが一つあるわけでございます。これはこれでデジタル行財政改革会議等々でもいろいろと今、議論をしているポイントではありますが、決済データを自分のために役立てるというルートはまだまだもっと広がるべきテーマだなと思っていまして、ここはフィンテックが持つ非常に明るい一面だと思っている次第でございます。

2番目は事業者のためにデータが使われるケースになりまして、例えばアカチャンホンポに急に行くようになった人というのは、多分ライフイベントがありましたよねというのがあるのだと思っていまして、そういう人たちに関係のありそうな広告を見ていただくときには物すごく効果の高い広告をお見せすることができたり、マネーフォワード自体、出産とか結婚とか現金に余裕がありますみたいなことも情報の活用としてはやっているというのがあったりいたします。なので、これは当然広告ビジネスとして最終的には行きやすいところではあるのですが、当然そういうデータの活用のパターンもありますというところでございます。

あとは統計の話ですけれども、世の中で特に政策上ワイズスペンディングが行われているかみたいなところにおいては、統計化された個人のデータを使うみたいなのが一つポイントになってくるというところでございます。

いろいろな議論がありますけれども、日本はデータ活用における権利が非常に弱いというのが私どもがよく政策提言しているところでございまして、日本はデータアクセス権とかポータビリティーみたいなものがまだまだ議論の途上中の途上にあるなと思っていますので、いろいろな国々で、自分のデータを活用して消費者保護を図るだの、競争法的な消費者保護を促進するみたいなところは、日本としては進展がまだまだだなと思うところが多いのです。なので、その辺はデータ政策として非常に重要な論点があるなと考えているというのが情報パートの簡単なまとめでございます。

本日、言葉としてはいっぱいお持ちしているのですけれども、本検討会に今まで参加させていただいてどう捉えているかを述べさせてください。

まず1点目は、一番最後のポイントに書いておるのですけれども、消費者マターと私たちイノベーション側にいる人が呼ぶときは最初は結構警戒しながら臨むことが多いのです。というのは、ここで言うと4点目ですかね。金融制度の議論は、金融審さんとかいろいろなところにお伺いしていて思うのは、当然問題がありそうだなみたいな、この仕組みは今の法律だとカバーできていないよねというその1点だけをもっていきなり規制するということがたまに起きるなというのがございまして、これと実際に起きている消費者被害とかが乖離しているときには、優先順位が違うということがあるのかなと思っています。当然、システミック・リスクだの、金融というのは本当に世の中の経済行為を大きく加速させてしまう側面がありますから、平場でそれを否定することはなかなか会議の性質上難しいなというのは、私もいろいろな議論を経ている中で思うのですけれども、ただ、消費者にとって実は便利なイノベーションがあるのだが、それを規制されていないから危ないというので止められてしまったこともいっぱいあるのです。未来の消費者利便をどう残せるのかというのは私たち技術屋さんがよく気にしているところである中で、この会議の前々回、第3回のときに、私は非常に気持ちがいい議論だなと思いましたのは、国民生活センターさんの発表の最後に載せられていた統計を見ながら、件数に対する不正の対比数とか、ああいう非常に追うべきKPIの下で議論ができることはある意味幸せなことだなといいますか、そういう建設的な方向で物事を解く分においては、多くの人が一緒に進めるのだなと思うところを思ったというのが一つでございます。

それと同時に、あまり知られていない点なのですけれども、3点目にありますように、フィンテックというのは実は日本で言うと消費者庁さんが主導してもいいようなテーマなのです。アメリカでも、フィンテックを初期的に推進したのは向こうの通貨管理局とかではなく、FRBとかでもなく、消費者金融保護局だったというのがありまして、メインストリームの金融に対してしっかりとした競争をもたらすことで消費者保護をより高めていくという思想がアメリカでは民主党的な政権ですけれども非常にあったのです。なので、このような観点で進める部分においては、私はテクノロジー産業というのは消費者保護に絶対に役に立っていく要素があると思っていまして、そこは非常にアピールさせていただきたいというのが1つ目でございます。

2つ目は、本検討会でたくさん出てきているトピックでありますが、複層化というのがあるのだと思います。フィンテックというのは最初に申し上げたとおり、金融技術に一つの事業者の業務をばらばらにしたときに、幾つかの業務が非常に安く営めるようになるからこそ、そこだけ切り出して専門業者に任せるというのが出てくるのです。それは結果的にアンバンドリングが起きるということですので、今まで2業者でできていたことが今後は5業者でやることになりますみたいになってくると、当然その一連の取引の中で問題があったときに、チェーンとして見たときには一つの問題だが、それがどこに帰属するかが複雑化するというのは割と明らかであるだけでなく、私は結構残念なお知らせだと思うのは、複層化の方向性は結構不可避だなとずっと思っている点がございます。

ただ、ばらばらになった上に消費者がどこに行けばいいか分からない問題が出てきますので、そうすると池本先生の御資料とかにもあられた連携とか協働と私たちが書いているものの解像度をかなり上げた対応が要るなと思っていまして、それは決済のシンプルな銀行の世界だと責任分界とかよく呼ばれているものがあって、ここまでは私が面倒を見ますけれども、ここ以降は訴訟ですよみたいな、そういうものをもっと促すのだろうなというのをニュアンスとして感じているというのが上の3点なのかなと思っています。

それを絵に表すとこういうことかなと思っていまして、今まで聞いたものの中で言うと真ん中の右側ぐらいですよね。決済代行からいろいろなものがぶら下がっていて、間接加盟店がいる世界ではいろいろ起きているなというのは正直感じているところでございます。

もう一点ありますのは、とはいえ決済というのは結構放っておくとウィナー・テークス・オールになりやすい世界だと思っています。ネットワーク性が非常に強く働く業界ですので、非常に大きなプレーヤーが出てくると、そのプレーヤーが非常に交渉力を持って、逆にオンアス化が進むみたいな傾向があるなと思っています。というときに、巨大なオンアス電子マネープレーヤーみたいなものが出てきたときに、そこに課せられている義務みたいなものが、仮に先ほどあったように間接加盟店みたいな議論と合わさってきたときには、今だとそこは手が打ちづらいところがあるのだろうなと思っています。先ほど述べましたように、問題がありそうだから問い詰めるというよりは、この構造の中で実際に起きているならばしっかり手を打っていく必要があるのでしょうねというのが、私がいろいろな問題を頑張ってそしゃくした中で感じていることでございます。

これまでの検討会で出てきた論点をAIに食わせて、一番重要そうな問題はどの辺にあるのですかという類型をまとめさせてみたのがこのボックスの中なのですが、複層化と単層化というのは構造の問題になっているのですけれども、明らかに問題が起きまくっている領域があるなと思っていまして、こういうところにピンポイントで対応していくことが問題の解決としてはまず重要なのかなと思っています。そのときに、本日の一番重要なポイントかなと思っていますのは、決済というのがあまりに多くの省庁にまたがって存在していると。決済というのが機能だからだと思うのです。様々な例えば通信だの割賦販売だの電子マネーの中には金融事業者など、そういう人たちが経済活動を営むところに決済がくっついているが、経済活動ごとに省庁が異なるのであれば、当然決済の監督というのは放っておくと分散してしまうという構成要素があるのだと思っています。

見てのとおり複数の省庁に、本当に私たちも問題が起きたときにどこに相談すればいいのかが大分分かれているなというのはあるわけです。例えばキャリア決済などは非常に新しいテーマだとは思っておるのですが、金融庁さんでは既に解かれている問題が総務省さんの側では認識されていないとかいうことは今後も起きてくるのだと思っていまして、ゆえに連動して制度が生まれることは大事なのだと思っています。ただ、省庁間の連動というのは、内閣府さんでは非常によく聞かれるテーマだとは思うのですけれども、大体の場合縄張りみたいな話が出てくるわけでして、当然問題が起きていたとしてもその業務自体を相手に渡したくないみたいな流れだってあるわけでございまして、役割分担論になった瞬間に議論はかなり停滞するなというのは、様々な政府の審議会で見られてきたことだと思っています。

こういうことをデマケの問題にしていると解かれない状況は進んでしまうというか残されてしまうと思うので、40ページで見ましたような個別の論点をある意味ちゃんと解いていく過程で、誰が一番この問題を解くのに適しているのかという議論を進めていく必要があるのだなと思っている次第でございます。

消費者委員会さんという場でこの議論がされるというのは、そういうことをやっていく必要があるのだなと思っていまして、個別の議論をしっかり詰める過程で、どうやったら司令塔と呼ばれるものが形成されるのかのモデルケースが幾つか出てくるのだと思うのです。政府の中にもリソースの強いところ弱いところがありますから、それをどうやってオーケストレートしていくのがよいのかというのがお伝えしたいポイントかなと思っております。

以上でございます。

○坂東座長 瀧委員、ありがとうございました。幅広いテーマからいろいろな観点で御指摘をいただいたかなと思います。

それでは、瀧委員の御発表を踏まえまして意見交換に移りたいと思います。御質問、御発言のある方は挙手あるいは、オンラインの方あるいは会場参加の方もチャット等でお知らせいただけると大変ありがたく思います。よろしくお願いします。

池本委員、よろしくお願いします。

○池本委員 池本でございます。

非常に貴重な御報告をありがとうございました。

前半の話題の中でも出てきました、消費者に対するエンパワーメントということで、家計簿アプリのようなまさにフィンテックの今いろいろなものが多様に利用されているものを一覧できるような形で情報を集約するという技術の面でも使われるというのは、私も議事録や資料を拝見していて、今日のお話の中でも本当に全体像を含めて議論していただいているなと思います。そこの中でも触れてありましたけれども、情報をコントロールする消費者の観点をそこに据えた上で、情報を集約し、一覧できる、そういう利便性を提供するというような考え方は、まさにこういった委員会の中で議論するときの大事な視座ではないかなと感じました。それが1点、これは感想であります。

もう一点、私なりの受け止め方と、それについて教えていただきたいところがあります。レジュメで言いますと37ページのところで、支払手段の多様化、特に複数の事業者にまたがるものについて行為規制をどう設計するかと。私も、それぞれが連携、・協働してきちんとやっていただきたいという抽象論は言えるのですが、その先は、一方では消費者からは見えない中間の事業者の関与の在り方について、消費者保護のための一定の法制度、ルールをつくるときに、その事業者間の取引の関与の形態というのはそれこそ様々なものが今後も出てくるだろうし、あまりそこに法律が入り過ぎていくのもどうかという気がします。消費者保護のためのルール設定の問題と事業者間取引のルール、それこそ公正取引を逸脱しない限りはもう自由にやるという分野が少し違ってくるのではないかと思います。

その意味で、これは後から出てくる話ですが、例えば消費者等の顧客対応については、直接決済手段を提供する者が責任を負い、加盟店の調査・指導については、加盟店契約を締結しコントロールできるものが負うという、本当に入り口と出口のところのルールははっきりさせて、中間は内部での求償の問題になるのか、何らかのルールの目安をつくるとなるのか、そこは分からないのですが、その辺りの法制度的なルールの置き方と、多数当事者が起きている特に事業者間の責任分担、責任分界という言葉が示されていますが、そこをどうしたらいいかという点について少し補足して教えていただければと思います。

以上です。

○瀧委員 ありがとうございます。

率直に、法律の専門家でない人間としてはびびりながらしゃべるところがあるのですけれども、まずエンパワーメントというよりはもう一個のパラダイムシフトの側でも取り上げられてきた、デジタル社会においてデジタルは便利なのだけれども、事業者にとって便利に使われてしまっているよねという、人間として持つ脆弱性の保護みたいなところも決済と一見不可分に見えてくる領域があるなとは常々思っておるのですが、海外法制とかも素人なりに見ながらいつも思うのは、例えばクレジットカード会社さんがいろいろな対応をしますと。加盟店をちゃんと調査するみたいなところの一連のアクワイアリングとイシューリングのものを見たときに、すごく正しくない法律、法律表現ではないですけれども、金融関連の法制と、民法なのか商取引の過程における問題点を交ぜて一つの制度の中でエンフォースしている側面は多分にあるなと思っていまして、あらゆるデジタル化に言えることだと思うのですけれども、人間的にというか業規制的にやっている以上、それエンフォースできるのだが、全部がアルゴリズムとかデジタルに進むときには、法律のタイプ別の要請はタイプ別に処理しなければいけないというのがあるのだと思っていまして、そういうときに本検討会でよく出てきているのは、民法上というか、どちらかというと詐欺に遭ったとか、商取引上のリスクを金融においてどこまで本当にやっつけることができるのかというところにかなり問題が依存するなと思っておるのです。

まず消費者を守らなければいけないという意味では、入り口のところが明確であるというのは、特商法とかもそうだと思うのですけれども、窓口を丁寧に示しつつというのがまず消費者からした理解の中で最初に出てくると思っていまして、責任者は私ですみたいなことが見えることは経済に対する信頼を持つ上ではすごく大事だと思うのです。なので、入り口のところはすごく大事だと思っています。そこは個人的には割とそんなに議論がばらけないなとは思っておるのですが、出口のところは、どこで問題があるというのをチェーンとして見なければいけなくて、私は結構、銀行法に関連する責任分界についてはAPIを扱う過程でずっと闘っているところがあるのですけれども、最後は、海外ではPSD2とかではやはり裁判をしてくださいと。例えば銀行のAPIでよからぬ決済が起きたときは、まずは1回銀行が補償するのですけれども、その後の責任はちゃんと電代業と銀行の間で最後裁判に持ち込んでくださいというふうに捉えるのです。そこはある意味、入り口はすごく明確に用意してあるのだが、出口のところは最後はかなり法律だけでは解消し切れないような進展の速さがあるのだと思っていまして、出口はいろいろ意見が分かれるし、きっといろいろな経済団体が議論を闘わせてしまうことになるのだろうなと思うのですが、最後はそうやって司法で何とかするみたいなところがあるのだなとは感じている次第です。

ふわっとして恐縮なのですが、結構私は今日のテーマの一つとして金融法と民法というか、そこをうまく分離することができればイノベーションが進むよなと感じている次第です。大分不正確なことを申し上げているのですが、以上です。

○池本委員 ありがとうございました。大きなヒントになりました。

○坂東座長 ありがとうございました。

せっかくですので、技術のことも含めて、それから法律のことも含めて、何か御意見があれば。

永沢さんが、御質問があると書いていただきました。永沢さん、お願いします。

○永沢委員 山本先生が先に御質問をされているようなので、順番だとそちらからだと思います。

○坂東座長 ありがとうございます。山本委員から御質問をお願いします。すみません。

○山本委員 ありがとうございます。

瀧委員のお話はすごく示唆的だったと思っておりまして、本来の議論の趣旨に沿っているかは分からないのですけれども、特にアンバンドルというところで、マネーフォワードさんのような事業者が、様々なサービスを横断的にデータを見るようになってきているという認識をしたのです。他方で、金融機関などから見ると、消費者との接点がどんどん希薄になっていって、その人がほかに何を使っているかが見えないところがますます大きくなっていく。そうするとフィンテック技術を使ったマネーフォワードさんというのが一つの事例になると思うのですが、非常に重要な役割を担うのかなと思っておりまして、そんな中で感想とちょっとした質問になるのですが、被害に遭いそうな兆候というのは、もしかしたらこういったフィンテックのアカウントを持っている人が一番最初に気づくのではないかなと思っていまして、そういったアラートを消費者に対して出すというのはできるのですけれども、事業者にも連携できたらいいなと思うのですが、そこのところがなかなかデータの利活用の問題があって難しいのかなというようなお話をいただいたと思いますが、その辺、進めていける一つの可能性があるのかと。

そんな中で例えば一つ思ったのは、過剰な与信というのがよく言われる中で、こういうアプリが一番そこを検出しやすい立ち位置にいるなということで、質問というよりも私の意見なり感想になるのは、こういったものはもっと若年層から幅広く使うような体制をつくって、リテラシーをもっと醸造していかなければいけないのかなと思います。これも質問なのですが、現状だと使っている方はハイリテラシーに寄っているのでしょうか。そうではない人が使えるようになるとさらにいいのかなと思いました。質問と感想が交ざってしまったのですが、瀧委員の御意見を聞けたらなと思いました。

ありがとうございます。

○坂東座長 瀧委員、お願いします。

○瀧委員 ありがとうございます。

確かにマネーフォワードは30代後半ぐらいの家族持ちがメインなのです。よく申し上げるのは、20代の独身者は別に人生がどうなろうと知ったことではないと思って生きている人が多くて、これは嫌われる表現ですけれども、家族は負債なのです。子供は負債だと思っていて、将来の支出増は会計的には負債ではないですか。責任は負債なのです。なので、責任を持つと皆さん家計簿を使い始めるというのは、怒られそうなのですけれども思っています。

そういう人たちはもちろん非常に包括的に御利用いただくのですが、不正検知でマネーフォードを使っている方とかも結構多くあられます。当社だけでなくいろいろなサービスでこういう機能が御提供されていて、お店へ行っていないのに使われてしまったみたいな古典的なカードでの不正みたいなものに、特に私たちはみんな4枚ぐらいクレジットカードを持っていますから、そういうときに使っていない1枚を紙のあれを見ずに捨ててしまう中で気づくのは難しいのです。特に確定前明細の時点で気づいたほうがいいというのはやはりあるわけでして、そういうデータがすぐに手に入るのはオンラインでデータを集めている人になるので、そこには一つポイントがあるかなとは思っています。

18ページは私がずっと夢見ているサービスというか、何度か実験はしているサービスでして、京都信金さんとかでこういうサービスのトライアルとかをやってみたのですけれども、高齢の方の預金口座に私はワクチンを打つようなことがしたいなと思っていて、ほかの地銀さんとかで、例えば認知症という顧客対応フラグがついている方々の分析をすると、毎日50万円引き出し続けて2000万円がゼロになった日に店舗に来るみたいな、非常に不幸としか言えないような状況があって、2000万円が1800万円に減ったぐらいのところで本当は家族に電話がかかってくればよかったのにというのはいっぱいあるのです。そこを人間の目で確認するというのはどこかで限界が来ますから、何かアルゴリズムで検知してあげたいというのはあると思っています。

それと同時に、決済上のフレイルというか、よく久しぶりに実家に帰ってお母さんともっとちゃんと向き合わないとというのは、冷蔵庫の中にケチャップ7本みたいなケースがあるわけでして、私たちはケチャップ3本目ぐらいで気づかせてあげたいというか、そこで多分外部者は介入できないのだけれども、家族であったり、ケアマネさんであったり、そういうレベルだったら介入できるという薄いグレーゾーンのタイミングがあるのだと思うのです。この領域をもうちょっと積極的に保険のようなサービスとしてつくれないかなというのは長らく思っているところです。

昔はそういうことを言うと、高齢者はキャッシュレスを使わないみたいな話があったので頓挫していたのですけれども、今は状況が違いますので、どちらかというとワクチンのようなサービス、何かあったときに早めにまずは耐性をつけておくみたいなことが大事かなと思っておるのですが、売り込むにも私たちがいきなり売り込むのは難しいので、セコムさんとか総研さんとかああいう人たちがむしろこういうサービスを実体化させるのかなとか思いながら見ているというのが率直なポイントかなと思います。そんな感じですかね。

○山本委員 ありがとうございました。

○坂東座長 ありがとうございます。

永沢委員、御質問いただければと思います。

○永沢委員 ありがとうございます。

最後の森下先生からのご発表の中に情報に関するお話もありますので、そちらで御質問してもよかったかもしれないのですけれども、瀧委員に、17ページのところを出していただきながら御質問させていただきます。

本日のお話にもありますように、金融サービスは機能の塊であり、そのアンバンドリング化が進むことによって安く便利なサービスが生まれているという、金融分野のイノベーションの状況について、私たち一般消費者はあまりよく理解できておりませんでしたが、具体的に分かるようにご説明いただき、いつものことながら、瀧さんの説明はすばらしいなと思いました。

統合されていたサービスが再びアンバンドリングされて、それがまた再びネットワークでつながって様々なサービスが登場してきており、特に御社マネーフォワードの家計簿アプリのようなサービスは、そのような形で出来上がっているということですが、そこで質問となります。決済という行為に伴い個人データがどんどんつくり出されていき、それらがネットワークを通じて統合されて、例えば御社が提供されている家計簿アプリのようなサービスが実現しているわけですが、以前、金融庁で銀行との接続のためのOpenAPIの議論をさせていただいたときに、安全に個人データのやり取りが行われるための体制整備のコストをどのように分担するのかが議論になったように記憶しております。

あの当時は、金融庁の指導のもとで、銀行が相当の負担をされたようでしたが、今日提供されているサービスには銀行以外のところも接続されており、今後は、ネットワーキングに金融機関以外の事業者もつながってくるということもあるように思うのですが、その場合の個人データの安全性確保のためのコストはどのように負担されていくことになるのでしょうか。

○瀧委員 ありがとうございます。

3つぐらいのコストに分けて御説明するのかなと思っていまして、1つ目がAPI構築の議論で、これがデータの利活用においては最もかまびすしい議論の対象になるところなのですが、もともと金融機関さんというのはオフラインの世界といいますか、専用性の世界でいろいろなものを構築されてきた中で、それをインターネットという自由空間につなげるときには、当然開くための様々なコストがかかります。一定のコストはかかるのですけれども、最近は選択するべき技術のパッケージというのが、国際的にもこの標準を使ってくださいと、具体的にはOpenIDファウンデーションがつくっているFAPIと呼ばれる金融APIを開くためのこういう仕様でつくってくださいというのができてきていますので、ある程度部品の再発明をする必要がなくなってきている観点で、安全だけれどもちゃんと安くつくれるというものが可能になってきているのかなと思っています。特に、データを見るだけなのであればかなり安くつくれるケースが見られていて、一方で、例えば銀行口座から送金まで外部者が行いますよと。これまでのツールで言うとペイジーみたいなものを考えていただくと、こういうのは高くつくのです。なので、銀行法は参照系と更新系を交ぜた制度になっているのですが、参照系だけに限って見ると、かなり安くつくれるようになってきたなというのが構築時の話かなと思っています。

2つ目は、インフラというか本当にサーバーをどうしていますかという話だと思っていまして、業界としては今、3大クラウドサーバーベンダーさんがおられるわけですけれども、例えばAWSさん一つ取っても、金融のサービスを営むためのAWSのセキュリティー技術標準みたいなものがあったりしまして、それに批准した開発をしていればおおむね大丈夫ですよというか、世の中の人たちは銀行並みみたいな表現をすると割と安心していただけると思うのですが、そういうパッケージが別にすごく高いコストでやらなければいけないという状況ではないので、割と私たちみたいなSaaSと呼ばれるようなクラウド上でソフトウエアを提供する会社にとっては、AWSとかそういうところが提供している金融レベルセキュリティーを施されたサーバーの仕組みを使わせていただくというので、一応は世の中的にはまず安全というレベルには達しているのかなと思っています。そういう意味で、昔だったら本当に自らサーバーを置かなければいけないとかいろいろあったところよりは、従量制でサービスを提供できるようになっているので、かなりいい世の中になったなというのが2つ目でございます。

3つ目は運用の世界でして、これはまさに実は銀行法とかにも注文があるところであるのですが、世の中には、永沢先生の御指摘の機密性の高いデータを扱うときに、個別の事業者に責任をしっかり負わせて契約関係を任せるタイプのセキュリティーの在り方と、このウオールの中、こういう広域性を守っている人たちは安全ですよねという、トラストと呼ばれるような城壁のある町みたいなものをつくって、その城壁の町の中にいる間においては契約とかも法律上は必須としないみたいな考え方があるわけでして、日本を除くほとんどの国では、金融データの流通にはトラスト型を取ることが結構多いのです。

銀行法においては、金融機関と例えば電代業の間は契約が必須なわけですけれども、海外だと電代業を営むための行為規制は厳しくするのだが、銀行と電代業の契約は逆に不要にしているみたいなケースが結構あるわけでして、毎年交渉してその中身を決めなければいけないというのは、イノベーションを起こす側にとってはかなり負担なのです。なので、人的工数を割く必要があるという意味では最後のところも結構重くて、今後の日本のトラストベースでのデータ流通を考えたときには、ちゃんとトラストの仕組みを構築して、その事業者への監督は厳しくするのだけれども、ピアツーピアでの契約というのは別にそこまで強く見なくてもいいのではないか。これはデータ活用の話ですので決済の支払いの話はまた別なのですが、データ活用においてはそういう考え方があるのかなと思っております。

ちょっと長くなりましたが以上でございます。

○永沢委員 ありがとうございました。とても勉強になりました。

○坂東座長 どうもありがとうございます。

まだまだいろいろな御議論がきっとあるかとは思いますが、時間の限りがありますので、次の御報告に移りたいと思います。


≪2.②谷本委員プレゼンテーション≫

○坂東座長 支払手段の多様化と簡便化による消費者問題の対応について、民法及び消費者法の御専門の立場から、本調査会のこれまでの議論状況についての御感想と御意見も含めて、谷本委員に御発表をお願いしております。

それでは、谷本委員も大変短い時間で恐縮ですが、20分程度で御報告をお願いしたいと思います。

○谷本委員 谷本でございます。

本日は、このような発表の機会をいただき、誠にありがとうございます。

私からは、支払手段の多様化と簡便化に焦点を当てて、割賦販売法に着目した発表を行ってまいりたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

支払いのオンライン化とスマホの普及によって支払手段は多様化し、簡単、便利になって、それとともに消費者問題も新たに生じていること、その原因としては、悪質詐欺的な加盟店や詐欺者のリスクをコントロールできていない点にあることは本専門調査会でも既に発表されたところです。併せて消費者に生じる多重債務のリスクを排除する体制も不十分であることも発表されました。

そこで私からは、これらのリスクへの対応を定めている割賦販売法の適用状況を確認した上で、同法をモデルとして現在の状況に対応するための方策を検討していきたいと考えております。

3ページには、支払手段の多様化と簡略化により、加盟店が詐欺的であったり詐欺者であったときに、消費者に財産流出のリスクや被害が集中することの全体像を図によって示しております。

まず消費者から見ると、簡単、便利なほうがよいでしょうし、簡便な金銭支払手段とオンライン取引へと向かうことになります。しかし、加盟店に問題が生じたり詐欺者が現れたときには、この簡便さは消費者の財産流出というリスクへと変化してしまいます。そして、この簡便な支払手段を提供しているのは決済事業者です。この決済事業者は、消費者の支払いにより利益を獲得できることを期待し、決済の簡便さにより利益を増やしている点で加盟店と同じと言えます。

4ページには、決済事業者についての現状とこれに対応するための考え方を示しています。

現状としては、明確な法適用の対象とされない決済事業者が、オンラインで簡便な支払手段を提供することで、消費者には少額多数回のリスクや被害が新たに発生していると言えます。また、決済事業者が契約により加盟店リスクを引き受けない旨を定めていますが、明確な法適用の対象とされないために、これが可能となっていると言えます。さらに信義則の適用の可能性があり、司法への期待もありますが、それだけでは制御できないリスクが生じていて、実効性ある自主規制もない状況です。つまり、現状では多大なリスクを消費者のみが負担する構造となっていると言えます。

このような現状に鑑みると、消費者のみが負担するリスクや被害を未然に防止し、拡大しないようにリスクを排除し、そして生じたリスクについて分散させる必要があると考えます。これは現在の割賦販売法の考え方でもありますので、これを基礎として対応を考えることができます。

そうすると、決済の簡便さにより利益を得ていて、かつ、加盟店のコントロールが可能な決済事業者に加盟店リスクへの対応義務を負担させるべきと言えます。つまり、現在、明確な法適用の対象とされていない決済事業者を明確な法適用の対象とすべきではないでしょうか。

なお、5ページから7ページにかけては、支払手段の多様化と簡便化による消費者問題を検討するに当たり、前提問題として消費者による支払いと消費者の信頼にも検討の目を向けたいと思います。これは3ページの図において(1)、(2)、(3)と示している点です。

まず(1)では、消費者による支払いと詐欺的加盟店や詐欺者への金銭流入について、これには2つのパターンがあることを示しています。一つは右側の図で、まず決済事業者から加盟店などへ金銭が流入し、消費者が決済事業者から受けた与信の対価として金銭を支払うパターンです。もう一つは左側の図で、まず消費者から決済事業者に金銭を支払い、その後に消費者の財産減少を伴い加盟店などに金銭が流入するパターンです。

これら2つのパターンには、その特性に応じて生じるリスクや問題も異なる点は多いため、別個の法律により規制されている状況にあります。しかし、図にも示したとおり、後払いでもその他の支払いでも消費者の財産が流出し、悪質加盟店や詐欺者に金銭が流入するという点では同じです。この共通点から見ると、消費者問題として着目すべき点は、簡便な支払手段によって簡易に消費者の財産が流出し、悪質加盟店や詐欺者に財産が流入してしまうこととして捉えることができると思います。

つまり、この問題は、信用取引のもたらす問題とは異なるものと言えるのではないでしょうか。したがって、消費者に生じるのは、加盟店などの金銭流入先のリスクとして共通していて、対応策として必要なのは加盟店コントロールだということになります。

次に(2)と(3)では、消費者による信頼に着目しています。信頼という要素が取引関係において重要であることは言うまでもないことですが、消費者が関わる加盟店と決済事業者において消費者の信頼がどのような意味を持つのかを確認しておきます。

まず詐欺的加盟店においては、そもそも消費者の信頼を形成するという動機はありません。これに対して優良加盟店においては、信頼を形成しているため、信頼を維持する動機があるわけです。

消費者にとって加盟店への信頼も重要ですが、オンライン取引では、加盟店について知らなくとも、支払手段を信頼していると言えます。なぜなら、従来からクレジットカード取引や銀行振込などの支払手段については被害やリスクがあまりなかったために、これを信頼してきたことが基礎にあると言えます。

しかし、現状は、新規事業者や海外事業者が登場していて被害が発生している状況にあり、信頼が形成されていないにもかかわらず、コロナ禍での必要性もあって急速にキャッシュレス決済とオンライン取引が普及したという状況にあります。つまり、現在、決済事業者介在の下で加盟店とスマホで簡便に支払いができることを、消費者は根拠なく何となく信頼できると認識しているにすぎない状況にあると言えます。

このような何となく根拠なく信頼している状況から、真に信頼できる状況へと改善するためには、現在法規制が及んでいない決済事業者への法規制が必要と考えます。決済事業者の介在により、加盟店をも何となく信頼している状況が生み出されている状況に鑑みて、加盟店リスクについて決済事業者も責任を負うことを説明することもできます。

7ページに示しているように、法規制と信頼形成は、法規制を行えば好循環する関係にありますし、法規制を行わないと悪循環へと陥る危険があります。これまでも包括クレジットや個別クレジットに対して、割賦販売法が規制することによって消費者の信頼は形成されてきました。新規の事業者についても、法規制により加盟店をコントロールさせることにより、加盟店と決済事業者双方に対する消費者による真の信頼を形成し、健全な市場をつくる必要があると考えます。

ここまでは特に加盟店リスクと詐欺者リスクについて検討してきましたが、多重債務のリスクも見過ごさせない問題です。8ページで示しているように、詐欺的商法と結びついてクレサラ商法が横行していますし、信用情報登録のタイミングを悪用して、同日に複数業者から借り入れることにより、総量規制を超えた借金が可能となっている現実もあります。

また、いわゆるBNPLなどの後払い決済も、第三者与信型信用取引として、割賦販売法の適用対象と同タイプの取引ではあるけれども適用除外取引となっていて、過剰与信防止規定の適用がない状況です。

しかし、消費者の多重債務リスクは、簡便で多数回の借金や後払い決済によって広く浅く拡大している状況にあると言えます。信用情報の登録タイミングの問題については、技術により解消する必要があると思います。その他の現状に対しては、リスク・被害の未然防止が必要であり、これは割賦販売法並びに貸金業法の考え方ですので、これを基礎として対応を考えるべきです。つまり、加盟店リスク等への対応と同様に、決済の簡便さにより利益を得ている決済事業者に多重債務リスクへの対応義務を負担させるべきで、現在法適用の対象とされていない決済事業者を法適用の対象とすべきと考えます。

それでは、これらのリスクに具体的にはどのように対応すべきか、割賦販売法を手がかりに検討します。まずは同法が多様な支払手段に対応しているかを見ていきます。

9ページから12ページに示した表1から表4では、縦に支払手段を挙げて、横に薄緑色で同法が予定する主な規制を示しています。水色は規制が及ぶ範囲で、白色は規制の核心部が及ばない範囲で、その詳しい意味についてはマル・バツ・ハテナ・三角で示しているので御覧ください。赤色など点線で囲った部分については後で説明します。これらの表において、まず幾つかの点に注目したいと思います。

9ページの表1では、包括型の場合、いわゆるオンアス、つまりイシュアーがアクワイアリングを行う場合には、二月払購入あっせん業者も決済代行業者もクレジットカード番号等取扱契約締結事業者として登録義務を負うという点です。そして、二月払購入あっせん業者には、その定義である2条3項1号、35条の16によればキャリア決済事業者も含まれるのではないかと考えるところです。しかし、現状ではキャリアは登録をしていません。この点についてどう考えるべきか、また御意見をいただければと考えております。

これに対して、オフアスの場合にはイシュアーとアクワイアラーが分離するため、消費者からの苦情はイシュアーが引き受け、それをアクワイアラーに伝達することにより、アクワイアラーが加盟店を調査し、適切に対応する義務を負うことにより、加盟店を管理してコントロールすることができるのですが、二月払購入あっせんの場合には、消費者からの苦情に対応してアクワイアラーに伝達する義務を負う者が欠如することになるため、加盟店コントロールが利かない状況が生じていると言えます。

また、包括型の場合には、クレジットカード番号等を取り扱う点で、これと加盟店管理が一体となるルールとなりますが、個別型では、10ページの表2で示すように加盟店管理のみがルールとして定められています。

個別型の場合にも、二月内の支払いについて加盟店管理のルールが適用されないため、そのコントロールが欠如する状況が生じています。

さらに、11ページと12ページの表3と表4では、消費者への行為義務、消費者の民事的権利、民事強行規定の適用の有無を示しています。

13ページでは、表1と表2でも示した割賦販売法が持つ加盟店管理規制に焦点を合わせて、この規制が先に示した加盟店リスク・詐欺者リスクを排除・分散させる仕組みであることを示しています。つまり、加盟店リスクをコントロールすることができる決済事業者が、単独でも複数でも①ないし④を実行することによって、加盟店リスクを排除する体制がつくられていると言えます。これとともに、消費者から決済事業者への抗弁対抗という民事的権利を認めることによって、発生した加盟店リスクを分散させる方策も用意していると言えます。

これに対して、割賦販売法が適用されない取引や、事実として適用されていない取引については、加盟店リスク排除の体制も加盟店リスク分散の方策も欠如しているのが現状と言えます。これを示しているのが14ページとなります。

それでは、このような欠如状態には合理的理由は存在するのでしょうか。15ページで示しているように、これまで言われてきた主な理由としては、二月内払いは単なる支払手段であって信用取引としての性質が弱いこと、また、新たなキャッシュレス決済手段については、イノベーション促進の観点から、法規制よりも自主規制を促進する方が適切というものです。

これについて現状の特徴から再検討すると、信用取引性に起因するのではなく、支払手段の簡便性に起因する加盟店リスクへの対応については、二月内払いと二月を超える支払いを区別する理由はないように思われます。また、自主規制は現状では促進されているとは言えないですし、消費者へのリスク・被害の集中の上に促進されるイノベーションではなく、消費者に安心を届けるイノベーションを目指すべきです。

以上に加えて、既に述べてきましたように、消費者のみにリスク・被害が集中しているという現状にあり、割賦販売法が適用対象とする取引との共通点もその規定趣旨との共通点も見られるため、法規制は必要であり、上記①ないし④につき義務を負う者が必要となると考えます。したがって、加盟店リスク排除の体制やリスク分散の方策が欠如した状態には、合理的理由は存在しないと言えます。

16ページからは個別の問題について検討しています。

まず、包括クレジットと個別クレジットの双方において二月内払いが適用除外とされている点について検討しております。これは16ページと17ページです。双方の場合、共に、まず、加盟店に問題が発生するリスクは同じであって、加盟店リスクの排除とその分散が必要という点で同じであり、二月を超える支払いの場合と二月内払いとで区別する理由はないため、購入あっせん業者としての登録も含めて、加盟店管理に関する規定及び抗弁対抗を認める規定を二月内払いの場合にも適用すべきではないかと考えます。この考えを包括クレジットについては、表1と表3において上2行の赤色の点線で囲んだ部分で示し、また、個別クレジットについては、表3と表4において赤色の点線で囲んだ部分で示しています。

なお、キャリア決済について、通話料金と商品代金分の支払いを分離できないとの規約については、抗弁対抗規定が適用されれば、規約が強行規定に反するとして無効となり、商品代金分の支払いのみを拒絶して、通話料金については別途支払うことが可能となると考えられます。

次に、多重債務リスクについては、二月内払いの信用供与性は弱いとも言えますが、オンラインで簡便な多数取引が可能となっている現状においては、従来は不可能であった多数取引が重なることにより、多重債務が発生するリスクが生じていると言えます。そのため、過剰与信防止に関する規定及び民事強行規定を二月内払いにも適用すべきではないかと考えます。これを表3と表4において黄色の点線で囲んだ部分で示しております。

また、18ページでは、包括クレジットと個別クレジットの双方において、抗弁対抗規定と過剰与信防止規定に関して、少額取引がその適用から除外されている点について検討しています。双方の場合、共に従来とは異なりオンライン取引の簡便性により多数取引が可能となっている現状から、多数回取引により取引全体としては多額な被害が生じていると言えますし、少額であろうと加盟店に問題が発生するリスクは同じであって、その分散が必要という点でも同じであり、区別する理由はないため、抗弁対抗を認める規定を少額取引にも適用すべきではないかと考えます。この考えを表3と表4において赤色の点線で囲んだ部分で示しています。

次に多重債務リスクについては、少額でもオンラインで簡便な多数取引が可能となっている現状においては、従来は不可能であった多数取引により多重債務が発生するリスクが生じていると言えます。そのため、過剰与信防止に関する規定を少額取引にも適用すべきではないかと考えます。これを表3と表4において黄色の点線で囲んだ部分で示しております。

19ページからは決済代行業者に関わる問題を取り上げています。

まず、クレジットカード番号等取扱契約締結事業者であることは、13ページで確認したように、包括クレジットにおいて同法における加盟店リスク排除方策の根幹となる規制対象であることを意味します。これは9ページの表1でも示したものです。しかし、いわゆるオフアスにおいては、アクワイアラーである立替払取次業者と決済代行業者等のうち、誰がそれに当たるかの判定が不明瞭な状態が生じています。つまり、35条の17の2第2号に言う「クレジットカード番号等の取扱いを認める契約を加盟店との間で締結することを業とする者」が不明瞭であるために、同事業者として登録する者が存在しない事態、つまり加盟店管理を行う者が欠如する事態が生じていて、これに対応する必要があります。

また、海外アクワイアラーが介在する場合には、国内の決済代行業者が登録義務を負うことを明確化することも必要です。どちらの問題も、加盟店リスク排除のための出発点、13ページで示した出発点①が欠如する事態が生じているわけです。

これらの問題を解決するためには、35条の12の2第2号の定義規定を見直す必要があると考えます。つまり、加盟店コントロールが可能な者であり、加盟店への金銭流入のための手段を直接提供する者として、加盟店契約を締結した者又は加盟店契約締結の代理又は媒介をする者に登録義務を課し、加盟店管理を義務づける必要があると考えます。そして現在の定義に、例えば「又はその代理又は媒介をすることを業とする者」を追加することも考えられます。これについては表1において下の2行の赤色点線で囲った部分で示しています。

次に20ページでは、決済代行業者が法規制の対象とされない場合もあるのですが、これにどのように対応すべきかを検討しています。現状としては、消費者が支払いを行う決済事業者、これには法適用の対象者も法適用のない者も含まれますが、決済事業者と加盟店との間で加盟店契約を締結する者や加盟店契約締結を代理・媒介する者が登場しています。つまり、加盟店リスクをコントロールできる者に変更が生じていて、その結果として加盟店リスクをコントロールしない状態が発生し、そのリスク排除の体制が欠如する状態が生じているわけです。

このような現状に対応するためには、先ほどと同様に、加盟店コントロールが可能な者であり加盟店への金銭流入のための手段を直接提供する者として、加盟店契約を締結する者又は加盟店契約締結を代理・媒介する者を規制する必要があると考えます。

そもそも加盟店に問題が発生するリスクは同じで、加盟店リスク排除が必要という点で同じであり、決済代行業者を区別する理由はないため、登録も含めた加盟店管理に関して義務づけるべきではないかと考えます。これを表2において紫色の点線で囲った部分で示しています。なお、2か所に同様の紫色で囲った部分があるのは、上は包括クレジットの場合と同様に個別クレジットに決済代行業者が介在した場合として示していますが、下はそれら以外の支払手段に決済代行業者が介在した場合として示しています。

また、21ページには、収納代行・送金代行・代金引換業者への法規制がない状態への対応も示しています。これらの者も加盟店コントロールが可能な者であり、加盟店への金銭流入のための手段を直接提供する者として、加盟店契約を締結する者又は加盟店に金銭流入の手段を直接提供する者として規制する必要があると考えられます。

そもそも加盟店に問題が発生するリスクは同じで、加盟店リスク排除が必要という点で同じであり、登録も含めた加盟店管理に関して義務づけるべきではないかと考えます。これを表2において灰色の点線で囲った部分で示しております。

ちょっと早口になりましたけれども、私からの発表は以上となります。御清聴いただき誠にありがとうございました。

○坂東座長 谷本委員、どうもありがとうございました。大変整理をしていただいた刺激的な御報告をいただいたと思います。

議論は、次の森下座長代理の御発表が終わってから、していただきたいと思います。


≪2.③森下座長代理プレゼンテーション≫

○坂東座長 それでは、続きまして、決済法制の課題について、金融法及び国際商取引法の御専門の立場から、これまでの議論全体への御意見も含めて、森下座長代理に御発表をお願いしております。

それでは、森下座長代理、短くてすみません。20分程度でお願いをいたします。

○森下座長代理 御紹介いただきましてありがとうございます。上智大学の森下でございます。

私からは、「決済法制の課題」ということでお話しさせていただきたいと思います。

お話しする内容は、金融法あるいは法学者の中でコンセンサスを得ているというよりも、消費者保護という観点からいろいろな論点を考えるときにどういう考え方があり得るのかというような観点から御紹介をしたいと考えております。

日本の決済法制の特徴については、これまでも言及されてきましたけれども、為替取引と前払式証票というものを基礎に、順次発展してきたということが特徴であるかと思います。この間、機能別・横断的な法制度にしようと、決済に限ったわけでありませんけれども、全体としてそのような議論はありましたけれども、決済の部分について大規模なストラクチャーはなかったのではないかと思います。

また、これまでのお話で既に出ていますように、公的な規制の対象でない決済手段があるということと、為替取引規制の規制対象が比較的狭いく、資金の保全に軸足を置いた規制になっている。他方で、無権限取引の処理ですとか、不着時の事業者の責任ですとか、利用者の権利保護に関する私法的な取扱いについての規定はあまり見られないということが言えるのではないかと思います。

他方で、欧州は今、PSD2からPSD3に移行するような段階にありますけれども、例えば欧州ではより包括的な法制を用意していますし、支払サービスを少し広めに取って、お金を預かってそれを届けるということだけではなく、支払サービスを提供するというサービスの内容に着目した法体系を整理しようとしているという例がございます。

一方で、日本国内を見ますと、決済サービスを担うプレーヤーが非常に拡大してきたということ。これはもうこれまでこの調査会で多くの先生方がおっしゃったことだと思います。また、複数のプレーヤーが一体となってサービスを提供する。あとは決済関連サービスが物販やサービスなどと一体になって提供されるようになってきている。こうしたことから、責任主体が明らかでない状況で顧客が必要な救済を得やすくすべきではないかという議論ですとか、あるいは正当な原因関係がない資金移動や決済を巻き戻せるようにすべきではないかといったようなニーズが示されたというようなことがあるのではないかと理解をしております。

以上を踏まえまして、考え得る論点ということで幾つか御紹介をさせていただきたいなと思っております。

一つは、為替取引という概念に依拠して規制の対象とするかどうかを決めるというのはもうそろそろ制度疲労が出てきているのではないかということです。為替取引については最高裁の決定というものがありますけれども、その上で、為替取引になると銀行規制あるいは資金移動業者の比較的重いパッケージの規制がかかるというようなことになっていまして、サービスのリスクですとか実態に応じた柔軟な規制がやりにくいということになっているかと思います。

こういった点については、金融審のワーキング・グループなどにおいても、柔構造化できないだろうかというようなことが言われていますので、為替取引というところから踏み出して、もう少し広い決済サービスの規制の枠組みの在り方を考えるということは十分あり得るのではないかと思っております。

ただ、一定の場合には適用除外をするというようなことも必要かと思います。先ほどのお話の中で、少額取引を適用対象外にするか。ただ、少額でも何回もやれば被害が大きくなり得るというお話もあったと思うのですが、適用除外の仕方にしても、1回の取引の規模に着目するのか、トータルとしての事業者の規模において適用除外するのか、いろいろな考え方があると思いますので、そういった点は柔軟に考えていったらいいのではないかと思っております。

2つ目がルールのメニューであります。私法的な効果を伴う顧客保護の観点からのルールというようなものが、もう少しストレートにあってもいいのではないかというような気がいたします。前回私が質問させていただいた中で、どういったルールや枠組みが一番役に立っているのでしょうかというお話をお伺いしたところ、やはり私法上のところで使えるものだというお話がありました。確かに規制法があると、規制法を遵守していないということをワンステップを踏んだ上で私法上の責任につなげるということは考えられるわけですけれども、私法上の責任をダイレクトに規定するというようなやり方もあるかと思います。

そうした観点から見ますと、例えば欧州では、無権限取引が行われた場合には、支払者が取引前に察知し得ないようなものである場合か、決済サービス事業者の従業員の作為・不作為によって紛失が発生した場合を除き、支払者は50ユーロを上限に損失を負担しなければいけないけれども、それを超えた部分は事業者が負担をするとか、そういったようなタイプの無権限取引に関する責任の分担の在り方についてのルールがございます。

また、機能の確実な履行に関する責任という観点では、いついつまでに振込を完了しなければいけないと。それができなかった場合には、お金を返さなければいけないといったようなことについてのルールもあり、また、立証責任の転換もなされております。そういった意味で、こういった決済の機能の重要な部分について、規制によるのではなくて、直接に私法ルールの在り方を考えるということは一つのアプローチではないかと思っております。

3つ目ですけれども、海外では、欧米などではネットワーク責任というような考え方がございます。これは左側の図が示しているところなのですけれども、一方にお金を送るお客さんがいて、右側のほうにお金を受け取るお客さんがいると。そういった送金というサービスを事業者A、B、Cが一体となって、ネットワークを形成して提供する場合に、このネットワークの内部で何らかの事故が起きた場合には、顧客に対する窓口となっている者がまず補償をし、その後、A、B、Cの間で誰が最終的に責任を負担するかというのは、ネットワークの内部で処理をしてもらおうというような考え方です。

日本では、業界の反対が大きく採用されませんでした。ただ、欧米で採用されている考え方で、最近のように複数の事業者が一体となってサービスを提供するというようなことが広がってきた中で、改めてそういった考え方に何らかの合理性はないのだろうか、採用する可能性はないのだろうかということを考える余地はあるのではないかと考えております。

最近でも、電子決済等代行業を入れる際に、瀧さんからのお話もありましたけれども、責任追及を銀行に対して直接できるかどうかというようなことが大きな論点になりましたけれども、これも反対が多く、日本では採用されなかった考え方ですが、本当に改めてそのような余地がないのか、なかなか難しいところはあると思いますけれども、これは一つの論点となり得るのではないかと思っております。

3番目です。事業者が預かった資金の帰属がルールとして必ずしも明確ではないということがあろうかと思います。これは銀行預金を特別なものとして保護し、規制する一方で、例えば資金移動者が預かったお金ですとか、あるいは前払式支払手段発行業者が預かっているお金ですとか、そのようなものをどのように考えていくかが必ずしもはっきりしないように思います。また、原因関係がない取引であったとしても、資金は口座名義人に帰属するといったような最高裁判例も出ています。こういった資金の帰属についてのルールの在り方についても、必ずしも欧米で常に日本と同じような考え方をしているわけではなく、本当にそういったような考え方がベストなのだろうかということは改めて検討されていいように思います。

4番目ですが、先ほど瀧委員から御報告があったとおりでありますけれども、キャッシュレス化ということは必ず誰かの手元にデータが残るということで、そこが現金の取引との大きな違いだと思いますが、そのデータを誰がどのように利用できるかについてのルールが不明確であるということであります。

海外では、ルールをつくってしっかりとしたデータの利用ができるということのみならず、顧客がそのデータを管理するためのインターフェースについての法制度も整備するというようなところまで進んできていますので、日本でもこの点についての議論を深化する必要があるのではないかと考えております。

5番目は、顧客の同意の実質化ということです。いろいろなことがオンラインで便利になってきて、顧客が同意するということがネット上でできるようになってきていますけれども、そういった同意の実質化をどう図っていくのかということが重要になってくるかと思っております。一番下に書いてありますが、例えばオーストラリアでは顧客がどういう情報を誰と共有するように指示したかをリアルタイムに確認できるようなダッシュボードを提供しなければならないという立法がなされていると書いておりますけれども、そういった実質的な同意を確保する、あるいは顧客が本当に自分の情報をコントロールできるというようなことも含めて、制度整備が必要なのかなと思っております。

6番目です。さはさりながら、何でもかんでも規制をしたらいいのか国による規制が望ましいのかというのは、よく考える必要があるのかなと思います。規制をつくったとしても、実際に規制のエンフォースがなかなか難しいですとか、規制の実効性、実施が難しいですとか、規制が重過ぎて事業の提供がなかなか難しいということでは本末転倒になってしまいます。現在規制の対象外となっているものにつきましても、リスクの状況ですとか、役割分担ですとか、コストベネフィットについての検証などを通じて、どういったアプローチがいいのだろうかということをしっかりと検討することが必要かと思います。

ただ、冒頭に申し上げましたように、今は為替規制に当たるか当たらないかという、どちらかというと二者択一的な分類になっているがために、規制の対象にしたときの負担が重くなってしまうということがあると思うのですが、もう少し柔構造化することで、規制の対象についての考え方をよりリスクに応じた柔軟なものにできるのではないかと考えております。

加えて言えば、規制の対象にするのがいいのか、あるいは私法上のルールをつくるのがいいのかというのも考えようで、規制の対象にしなくても、私法のルールだけ整備するというような考え方もあるのかもしれないと思います。

最後に、決済と商取引の融合であります。これも本調査会で強調されていることかと思いますが、商取引の一連の流れの中で決済がなされるということが多くなっています。そうした中で商取引が詐欺的なものであった場合に、資金を取り戻すことができないかということで、商取引の部分の後始末を決済の部分で何とか処理できないだろうかというような問題意識が示され、それが例えば割賦販売法の抗弁接続の適用範囲の拡大というような形で示されてきているのではないかと思っております。

しかしながら、従来は決済と商取引をワンセットにして、その上で、商取引の部分に不適切なものがあったから決済を取り消すというような考え方は取られてこなかったわけで、そこを一体的に処理するということが果たして適切なのかどうか。その上で、処理をするとするとどう処理をするのかと。私法的にどのようなルールをつくるのがいいのかというのはなかなか考えどころなのではないかと思います。

これも欧米などにおける考え方を参考にするという余地はあるかもしれませんけれども、一方で、そういった個々の商取引の後始末について決済事業者に負荷をかけるということになりますと、大量の取引を処理する決済事業者にとっては大変酷であるというようなことも考えられると思うので、ここは慎重にコストベネフィットを考えていく必要があるのではないかと考えております。

駆け足でございましたけれども、今までのお話をお伺いしていた上で、決済法制の観点から7点ほど今後検討する余地があるのではないかと思われるような論点について御報告をさせていただきました。

ありがとうございました。

○坂東座長 森下座長代理、示唆にあふれる御報告ありがとうございました。

それでは、谷本委員、森下座長代理の御発表を踏まえまして、意見交換に移りたいと思います。本日、できるだけ多くの先生方に御意見をいただきたいと思っております。御発言のある方は、挙手あるいはオンラインのチャット欄でお知らせいただきますようによろしくお願いします。

それでは、葛山委員が御発言を希望されているということですので、どうぞよろしくお願いいたします。

○葛山委員 ありがとうございます。

お二人の先生方にお話をいただいたので、時間の関係もあると思いますので、片方ずつ発言させていただきたいと思います。

谷本先生の発表、ありがとうございました。本当に法的にきれいな整理をしていただきまして、資料で言いますと5ページに関連してなのですけれども、ほかのところも含めてなのですが、後払い、前払いなども含めて細かく分けるのも必要なのですけれども、その間に入った者の加盟店リスク負担という大きな発想は本当にすごくしっくりきました。

現場では、間に入った者などの責任というのは、民法上の不法行為の幇助責任という構成で責任を追及することは本当に頻繁にありまして、行政規制があるところについては行政上の義務を手がかりに私法上の義務を措定するということをやっております。

行政規制をするときに、こういう幇助責任のような発想を前提として平準化した規制をすべきという視点かなと思いまして、大変勉強になりました。間に入る者で最も中間者の責任を問いづらいかなと思われる銀行送金みたいなところでも、振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結ができたりとか、それ以上に、銀行と預金者以上に加盟店と密接な関係がある決済事業者については、加盟店リスクを消費者だけに押しつけずに分担する仕組みをつくるのは本当に大事な視点だなと思いました。

ここまでは意見なのですけれども、消費者にとっては、責任を取る者が不明であるとか、加盟店管理責任がないこと、情報開示がないこと、被害救済の関係ではとても大きな課題だと思っているのですけれども、間に入る者の責任として、資料の13ページで割販法に関連して①から④を御指摘いただいているのですが、新しい決済制度のうちこれが入っていない、かつ、被害が実態として生じているところを優先的に塞ぐべきという発想でよろしいのでしょうかというのが、確認というかお話を伺えたらありがたいなと思っているところです。

長くなりましたが以上です。

○坂東座長 谷本先生、コメントいただけますとありがたいです。

○谷本委員 御質問いただきありがとうございました。

13ページの図とかが理想的な現在の管理の仕組みだと思うのですけれども、先ほど森下先生からも御発表がありましたように、これの全てを全ての新しい事業者に適用すべきだとは言っておらず、被害の大きいところとか、森下先生からも、その事業者の規模とかによって適用除外を考えるのがいいのではないかということも言われていました。この①から④全てが欠如しているというのは、その中でも、加盟店の調査措置義務とかの内容についても、厳しいところから緩いところまで様々あり得ると思いますので、そこは何らかの規制はすべきだとは思っておりますけれども、①から④を全ての新規事業者に適用すべきだとまでは思っていませんが、これがモデルとしてどれかは必要だろうというような考え方を示しているということです。

○葛山委員 ありがとうございます。

レベル感の違いはあるものの、これを参考にして当てはめを考えていくのがいいのではないかということですね。ありがとうございました。

○坂東座長 ありがとうございます。

引き続きまして、御質問でも御感想でも御意見でもいいかと思いますが、御発言いただけるとありがたいです。

滝澤委員が御発言を御希望だということですので、よろしくお願いします。

○滝澤委員 ありがとうございます。

先生方の御発表、ありがとうございました。

私は経済が専門でして、専門外かもしれませんけれども、感想と1点質問をさせていただければと思います。

森下先生が御説明されましたリスクに応じた柔構造的規制体系というのか、経済学的には例えば価格メカニズムに基づく調整・アプローチなどに通じるのではないかなと思います。つまり、二者択一の規制から脱却して、リスク水準とか市場の影響の程度に応じた調整的負担を課すということで、制度の効率性とイノベーションの促進を両立するという構想があろうかと思いまして、経済学と非常に親和性が高いということを私自身は思いました。

1点、オーストラリアの取組を御紹介いただきましたけれども、CDRというのは情報の非対称性を是正して、取引コストを削減して、プラットフォームによるロックイン効果を弱める効果が期待されるのかと思いますけれども、こうしたものを導入した結果、例えば消費者行動ですとか、価格の形成ですとか、何か変化があったのかどうか、もし御知見があれば御提示いただけるとうれしく存じます。

以上です。

○坂東座長 ありがとうございます。

森下先生、今の御質問に先生のコメントをいただけますと大変ありがたいです。

○森下座長代理 ありがとうございました。

最後のお尋ねで、どこまで具体的な成果が上がってきているかというところですけれども、今、私自身が統計等で承知しているものはありませんが、少しずつ対象となる業界を拡大してきているということは承知をしております。比較的新しい制度ということもあり、これからそのような検証もなされていくのではないかとは思っております。申し訳ありません。

○滝澤委員 ありがとうございました。

○坂東座長 ありがとうございます。

恐らく今、議論になってきているものは、これからの話もあれば、今、動いている最中のものもあるかなと思いますので、もちろんそういう制度ができる裏には、先生の御見解のような経済学的バックアップが何らかの形で影響を与えているだろうと思います。それも含めて、この専門調査会でぜひいろいろな議論ができるとありがたいなと思っております。続けてまた先生方に御意見いただければと思います。

池本委員、よろしくお願いします。

○池本委員 ありがとうございます。

谷本委員、森下委員のお二人の御報告で、本当に目が開かされるような思いでした。第4回で私自身が報告したのは、訴訟などの被害救済の現場で、具体的な法的な義務規定がないために被害救済が困難なのです、何とかしてくださいという非常に狭い範囲でしか問題提起できなかったのですが、お二人の御発言は、信用供与という線を軸にした割賦販売法から決済というところに少し純化したところで、責任分担の在り方、それから、銀行法あるいは資金決済法という分野でも、為替取引、資金の保全というところを軸にした法制度から決済の部分を取り出して、そこについての適切な規制の在り方という、本当に別々の分野から統合される軸を示していただいたということと、しかも、それがいずれも民事的効果というところを視点として責任分担の在り方を考えていくという、実務家である私がそれを言っていないのを本当に恥ずかしく思うくらいに、全体像をしっかりと提示していただけたかと思います。

そこで、それぞれ質問なのですが、谷本委員に対しては、16ページに割賦販売法を軸にしたモデルを個別分野ということで、二月内払いの包括・個別両方について、登録義務とか加盟店調査措置義務とか苦情適切処理措置義務というものと共に抗弁対抗という言葉が書いてあります。現行法で言う抗弁対抗は未払金の支払い拒絶ということに限定された意味になってしまいますが、翌月払いだと、問題が起きたときにはもう支払ってしまっている場面がある。最高裁の平成23年判決などは、既払金の返還に関する責任も一定の知りもしくは知り得べき場合にはあり得るというような議論の余地を残したものがある。その意味では、ここで提示されている抗弁対抗というのは、今言った未払金だけではない既払金も含むもう少し幅広い民事的効果を想定する必要があるというような広い意味で受け止めてもよろしいのかどうかという点であります。

それから、森下委員への御質問ですが、ネットワーク責任という言葉が示されました。まさに複数の事業者が関わっている中で、顧客と直接契約している者がまず一旦責任を負う。それを内部で事業者間で求償するという言葉が記載されていました。

実はこの点、先ほどの谷本委員のところでは、一旦顧客と接する事業者がリスクを負担するけれども、それは事業者間の誰に責任があるかが特定できないこともあるわけで、最終的には利用者全体が薄く広くリスクを分担するということを含めて正当化できるのだという御指摘がありました。これはある意味では双方共通する考え方と理解していいのかどうか。この点は、谷本委員にも同じ点は確認をしたいところですが、ネットワーク責任における事業者の責任、一旦顧客と接する者が責任を分担するということの後の清算の正当性と言うのですか、その辺りについて御意見を伺えればと思います。

以上です。

○坂東座長 ありがとうございます。

まず谷本委員に御回答いただいた上で、森下座長代理にお話をいただければと思います。よろしくお願いします。

○谷本委員 ありがとうございます。

1つ目の二月払いのマンスリークリア方式の場合に、抗弁対抗では実効性がないということを前提にされての御質問をいただいたと思います。

実効性がないということを前提として考えると、先生のおっしゃるように抗弁対抗では不十分であって、既払金の返還請求を認めるということももちろんあり得る話かなとは思っております。先生ももちろん御承知のように、割賦販売法自体も一定の場合には既払金の返還請求を認めて、それは不当利得返還請求の構造というものを、この場合に特別に考えているのではないか、それを一般論として構築できるのではないかということは、司法も学会も実務界も考えてきたところではあると思いますので、それをこのような二月払いの場合にも拡張して既払金の返還請求を認めるという方向性ももちろん構想できるのではないかと考えております。1点目の御質問については以上です。

2つ目の御質問については、森下先生に一旦御回答いただいてから私も回答したいと思います。

○坂東座長 森下先生、御意見いただけますでしょうか。

○森下座長代理 ネットワーク責任のところについてのお尋ねだと思います。

ネットワーク責任は、私の理解では、欧米では決済事業者のグループの中で何か事故があったときには、そのグループの中で処理をさせようというような考え方であると思います。そこを超えて、例えば決済システムが不法な取引のために加盟店なども巻き込んで使われたと。そのときに加盟店での不始末を決済事業者まで一つのネットワークとして考えて、ネットワーク内部で処理をしてくださいという考え方は、今までのところ出てきていないのではないかと思います。そういう意味では、谷本先生がおっしゃったことと私が申し上げたことではその範囲が違うように思います。決済事業者のグループの中では、みんな同じような仲間なので、その中ではネットワークとして責任を負いましょうということが言えたとしても、それを加盟店というところまで伸ばすと、ネットワーク責任という話でいけるかどうかというのはかなりハードルが高くなってくるのかなと。今までの考え方だとそうなるのかなと理解しております。

○坂東座長 ありがとうございます。

今の森下先生の御説明も含めて、谷本委員、コメントございますか。

○谷本委員 ありがとうございます。

従来からその取引に関わっている複数の者がいる場合には、システム責任というような概念もいろいろな形で提示されているところではありますけれども、森下先生のおっしゃっておられる外国法制を参考にしたネットワーク責任というものも、それが実現できたら非常に望ましいのだろうなとは思いつつ、私の示しました考えは、あくまで割賦販売法の構造に基づいて、それを応用していくということですので、森下先生が提示されているのとは少し違う考え方かなと思っております。

以上です。

○坂東座長 ありがとうございます。

恐らくその言葉の使い方が、それぞれの領域のところでやや違っているのだろうなという気が私もします。ただ、御提示いただいたものについて議論をしていく土台みたいなものは今回、両先生から御提示いただいたのではないかと思います。

次に、山本委員、お願いいたします。

○山本委員 ありがとうございます。

私からは、谷本先生、森下先生、示唆的で非常に共感しましたというのがまずあるのですが、私は御質問というよりも、どう整理したらいいのでしょうかというオープンクエスチョン的な思った点が3点ぐらいございましたので、共有させていただきたいと思います。

まず谷本先生のほうに、割販法で加盟店管理のところ、その対象をちゃんと広げなければいけないなというのは私も全くそのとおりだと思っていまして、その中で一つ最近の傾向として、プラットフォームとか収納代行会社が決済代行と同じような位置に入ってきていて、これは池本先生なんかからも御指摘があったところなのですが、そうすると加盟店という地位や属性を持っている事業者ではなくて、利用者と言っていたり、決済をする人が収納先、要はキャッシュレス決済、お金を受け取る人だという属性だけで営業していることの間に入っているような例も結構出てきていまして、そういったものは割賦販売法みたいな整理の中にうまく入るのでしょうかというのは、答えがあるわけではないのですけれども、その辺の整理の難しさというのが一つあるのかなと、悩みがお話を聞いて膨らんでしまいましたというのが1点目なのです。

もう一つは、割販法に限定できないというところで、決済代行会社の実態として、決済代行会社あるいはそれに準ずるサービスを提供している収納代行会社もそうなのですけれども、割賦販売法の規制というのは、与信をして、その与信された人が加盟店でカードで払ったという一連の流れがあるわけなのですが、決済代行会社とか収納代行会社というのは、どちらかというと与信のところ、個人と切り離されていて、お金を右から左に流している的なビジネスモデルになっている場合も多いと。複数の支払手段をやっているというところが原点にあるからだと思うのですが、そうしたときにそこは森下先生のほうの例えば為替みたいなもので整理するやり方はあるのでしょうかと。その辺ちょっと悩んでますというところが一つ。

為替的な考え方のところで、実務的なところで相談員さんが現場でやっていることなのですけれども、決済代行会社さんはリスクの高い加盟店に対しては代金を全額払わずに留保するというやり方をよく取っているのです。それが適正かというのもあるのですけれども、留保しているお金があるから、お金を返してと言ったらそこから返してくれたりしているという、民事的効果とまでは行かないのですが、実務的に実は助かっているところもあったりする。

それが先ほどの資金決済法などで言うと滞留金みたいなところが実はあって、そういう枠組みには全く入っていないのだというような、話を発散させただけになったのですが、そういうもろもろの私の中でもやもやとしているところがありまして、そんなところに関して、答えはないかもしれないのですけれども、谷本先生、森下先生、少しアドバイスなりお考えがあったらお聞かせいただけたらと思いましてお話をさせていただきました。

漠としたお話で申し訳ありません。

○坂東座長 やはり捕まえ難い人たちが決済の仕組みの中にいると。それをどういうふうに考えたらいいのだろうかという、具体的な対応も含めての山本委員からの問題提起かなと思いますが、谷本先生、本当に御感想でいいと思うので、あるいは谷本先生はこう考えているという話も、先ほどの御報告でもあったかとは思いますが、改めて発言いただければと思います。いかがでしょうか。

○谷本委員 ありがとうございます。

まず大きなものとしては決済代行業者についてのところで、それが与信的なものだけではなくて、いろいろな決済の仕組みの中に入ってきているという状況について、割賦販売法でいけるのかというような疑問を持たれているのかなと思った次第です。

それは割賦販売法でいけるのかといったときに、そもそも割賦販売法は加盟店管理の中に決済代行業者を組み込む仕組みを持っているということはまずあると思います。さらに、決済代行業者について考えるときに、資金決済法においても一定の加盟店管理のルールは弱いものですけれども持っているというようなこともありますと、資金決済法も割賦販売法も、一定、加盟店管理については必要なのだという認識にあるのではないかと考えると、間に入って加盟店管理をできる者については、それによって利益を得ている者については、加盟店管理について、弱いか強いかというレベル感はあると思いますけれども一定の規制を課すことはできるのではないかと考えるところです。

収納代行等についても、同様の考え方もできるのではないかと思いますが、そこら辺については森下先生にもお話を伺えればと思います。

以上です。

○坂東座長 ありがとうございます。

森下先生、為替という概念の中の問題提起をしていただいたのですが、そのことも含めて、今のいろいろな課題を整理していくために、どういう概念が有効であり、あるいは限界があるのかということも含めて、御意見いただけませんでしょうか。

○森下座長代理 ありがとうございます。

決済代行業者には、本当にいろいろなプレーヤーがいらっしゃると思うのですけれども、そういった多様なプレーヤーをどう位置づけていき、どのようなリスクを負担していただくのが一番いいのかというのは、お話のあったように非常に難しい考えどころだと思っています。先ほど一部留保するというお話がありましたけれども、そういったことができるというのは、決済代行業者がその加盟店のリスクをよく知り得る立場にあるからということだと思うのです。制度をつくっていく上で、決済代行業者はいろいろな決済サービスを取りまとめて加盟店に提供しており、むしろ、決済代行業者のほうが加盟店をよく知っているということであれば、むしろそういった決済代行業者さんにモニタリングをしていただくということのほうが合理的という考え方もあるかもしれませんので、視野を広げて考えていく必要があるのではないかなとは思っております。

○坂東座長 ありがとうございました。

あっという間にもう時間があと10分なのですが、永沢委員に御発言をいただきたいと思います。

今日、実は今までの議論のまとめという趣旨も含めて、瀧委員の御報告も含めて、谷本先生や森下先生に御報告をいただいたということもありますので、御質問とか御意見も含めて、一言委員の皆さんに御感想をいただきたいなと考えております。永沢委員、それから柴田委員に御発言をいただいた後に、ほかの先生方もできれば一言御感想をいただければと思っております。

永沢委員、よろしくお願いします。

○永沢委員 発表してくださった先生方の御意見に対して何らかの意見を申し述べるべきと思いまして、手を挙げさせていただきました。

まず谷本先生の御発表に対しては、私は先生が2回目のときに御発言をされたときに、リスクの負担の在り方がこのビジネスにおいては違うのではないですかという御指摘をされて、共感したと発言しましたが、そのご発言の趣旨を本日は具体的に私たちに分かるように示していただきまして大変勉強になりました。特に13ページと14ページの比較対象は大変説得力があるものであると思いました。

それから、一消費者として、日頃から、なぜマンスリークリアとそれ以外で、利用者保護の規制に違いがあるのか、疑問に思っておりましたが、先生の御発表をお聞きして、違いを合理的に説明できる理由はないことがわかりました。規制のあり方を横断化する方向で見直していくべき時期に来ているのではないかと強く感じたところです。

それから、森下先生のご発表も、金融庁の資金決済法制に関するワーキング・グループで御一緒しておりました。金融庁での議論は私には難しすぎたのですが、本日の先生のお話で、民法やその他の法律の難しいお話を消費者の私にも分かりやすく御説明いただき、大変勉強になりましたし、特に先生の御指摘の中で、為替取引かどうかという二者択一的な視点でどの規制を適用するかを考えるという今日の規制の在り方について、時代に合わなくなってきているというご指摘については、どこの役所が主導して見直しを進めていくのかはわかりませんが、なるほどと思いました。

また、私たち消費者は国による行政規制の強化を求めがちですけれども、そうした行政規制が有効に通用するわけではない場合や、費用対効果という観点から消費者全体の利益に必ずしもつながるわけではないということも理解できました。行政規制だけではなく、民事ルールやそれらとの組合せという選択肢もあるということを示していただけたことは一歩前進なのではないかと思いました。

最後に事務局へのお願いになりますけれども、今日、瀧委員と森下委員から、決済に絡む個人データの帰属に関する欧米の考え方についてお話をいただきましたが、この点について、この会ではこれまでのところあまり触れてきておりませんが、非常に重要な論点であると思いました。取りまとめの段階ではこの論点については必ず載せてほしいなと、私としては希望いたします。

私からは以上です。

○坂東座長 ありがとうございます。今のご発言は御意見として承りたいと思います。

続きまして、柴田委員、よろしくお願いします。

○柴田委員 今日は、先生方、大変示唆に富む御報告をありがとうございました。

私も、谷本先生、それから森下先生に御指摘いただいたことは大変説得的であって、共感しているところであります。特に決済手段が多様化してきて、非常に簡便化してきて、やはりリスクが生じている。今の状況だと、そのリスクが消費者に偏っているのではないかという御指摘は大変説得的であると思いました。

その中で、どのように消費者目線で規制していくかということを考えますと、目に見えるところ、加盟店のコントロールというのが一義的には考えられるのかなと思いました。

また、これは瀧委員もおっしゃっていた入り口を規制するというところとつながるのかなとは思っております。決済制度、そういう法規制について少し外国の状況も気になっていたところでございまして、今日、森下先生からPSD2のお話をしていただきまして、これが一つ参考になるのかなと私も考えております。

決済というところと、少し難しいなと思っているのは、決済と商取引の関係かなと思っています。これを別々に独立して考えるというのは、どうも決済として何かしら規制を考えていくというアプローチもあるかなと思っていたのですけれども、お話をずっと聞いていると、詐欺的商取引というような表現もありましたが、取引と決済が結構密接に不可分であるというような局面もあるのではないかなと。そこは少区別、どのようにルールをつくっていけばいいのかなというところは今、少し考え中であります。

そこで最後、森下先生がおっしゃったネットワークの責任というのは一つ有効な手段かなと思います。最後に、詐欺的な商取引の後始末として決済事業者までが責任を負うというのはどうかというようなお話もあったのですけれども、ネットワーク責任を使えばそれはできるのでしょうか。それはまた別の話になるのか、少し教えていただければと思っております。ただ、ネットワーク全体として、どういうふうな形で責任を分担していくかという議論も必要だと。ネットワーク責任というのはかなり有効のような気もしております。

以上です。

○坂東座長 ありがとうございます。

改めて確認ということで、森下先生、ネットワーク責任が従来金融法でどう議論されていたかというところについて、一言だけコメントいただけませんでしょうか。

○森下座長代理 ありがとうございます。

私の理解では、ネットワーク責任というのはあくまで同種のプレーヤー、決済事業者間のネットワークということであって、それを加盟店まで含めてネットワークとして考えようという考え方は、今までの金融分野での議論の中ではそこまで拡大したということはなかったのではないかと思っております。

○坂東座長 ありがとうございます。

先ほど谷本先生からあったように、民事のところではシステム責任という議論があって、そのときに異種のものも議論としてつながっているというところを評価しようという話はあったような気はしますが、確かにそのときの議論と同一性があるのかないのかについては、少し私も自信のないところです。

さて、時間があっという間に来ております。今日御参加いただいている委員の方々で、せっかくですので一言御感想なり御意見なりをいただければと思います。

井上委員、よろしくお願いします。

○井上委員 お世話になります。日本アイ・ビー・エムの井上でございます。ありがとうございました。

感想的なところと、少しデジタルという側面でのお話になるのですけれども、今までのお話をいろいろ伺っていますと、支払手段が多様化する今後の方向性というものは、もちろん課題がいろいろ必ずつきまとうところはあるのですけれども、今後も狭まることは恐らくなくて、多様性の方向は広がっていってしまうのかなと思っております。

結局、思考というか、どういうふうに支払いたいのかというところも、世代ですとか、物理的な場所に、どこにいるかですとか、そういったところでどんどん多様化してしまうので、手段も多様化するのですけれども、恐らくどういうふうに支払いたいのかという消費者視点での偏りもより多様化してくるのだろうなと改めて思ったところです。

ただ、一方で、消費者の目線において、今日は私も一人の消費者ですので、こういったものを伺っていますと、そこを安全・安心に例えばデジタルの仕組みで縛ろうとすると、縛り過ぎることによってそのプロセスが複雑になると、むしろユーザーインターフェースとしての観点とかが複雑化してくるとより使いにくくなるとか、より遠のいてしまうといったところのバランス感というのは本当に必要なのだろうなと改めて思うところですし、基本的になかなか海外の動向との違いというものは、今回も勉強になっておりますけれども、それを知る仕組みというのは一消費者の単位で機会が少ないので、こういった場で学べたことというのは、多くの消費者に発信して、それが学べる機会というものがあると、より理解が深まっていけるのではないかなと思った次第です。

どうしてもデジタルデバイドというか、使いこなせる方と理解ができる方との差というのが、実際の消費者目線での損につながらないようにならなければならないなと思いましたので、学べる環境とか情報の発信粒度を広げていって、多くの人が機会として得られるようになれるといいのかなと改めて思った次第でございます。

私も非常に勉強になりました。ありがとうございました。

○坂東座長 ありがとうございます。

恐らく技術的な対応がそういう場合にどれだけの役割を果たすかなど、井上委員に教えていただかなければいけないことがたくさんあると思うので、今後ともどうぞよろしくお願いします。

時間が来ているのですが、宮園委員、加藤委員からも御発言をしていただけるということですので、まず宮園委員、御発言をよろしくお願いします。

○宮園委員 宮園です。発言の機会をいただき、ありがとうございました。

相談現場の中で、どうしてこっちは解決で、こっちは解決しないのかとか、どうしてここまで被害に遭っても本人が気づけなかったのかと思うことが多々ありますが、本日の先生方の議論で、法的に明確なアプローチを提出していただきまして、今後ここから変わっていくのではないかと期待が持てるような回でございました。

私のほうの担当として、多重債務というところに焦点を当てて今日もお伝えさせていただきたいと思っているのですが、過剰与信防止義務のところです。この部分で、例えば18歳以上の学生が限度額10万円のクレジットカードをつくって、これならばと思っても、結局5枚も6枚もつくれてしまう現状があったり、BNPLでたくさん買物をしてという現状もある中で、過剰与信防止は非常に大事だと思うところなのですが、その判断というのは元金で判断されるのか、それとも金利・手数料を含めた金額で与信の可能性を判断されるのか、そこがすごく気になっています。というのが、出前講座をやるのですが、金融庁が出しているシミュレーションを出して、金利・手数料を入れた実際払う金額は幾らなのかということを消費者にお伝えさせていただいているのですが、案外知らないです。これだけの金利だとこれだけ払わなければいけないということを知らなくて、驚かれる方がほとんどです。そういった意味で、もし過剰与信防止義務があるのであれば、払わなければいけない、金利・手数料も含めた部分の金額で判断されているのかどうかというのが気になりました。

それからもう一つ、家計簿アプリは私も使っていて非常に便利だと思うのですが、発達障害のある方の支援をよくするのです。そうすると家計簿を全くつけることができない。そういった場合に、今の設定ではなかなか登録とか設定が難しいという声も聞きますので、デジタルのスキルがあまりない方でもうまくできて、さらにアラートも、例えばキャリア決済だったり、手数料も含めた金額でのアラートが出るとか、何か使いやすいものが出てきてほしいなと思っているところです。

以上です。ありがとうございました。

○坂東座長 ありがとうございます。

今の金利・手数料の問題というのは確かにあるのですが、いわゆる過剰与信のときには、それに最初から踏み込んでではないけれども、そういったところの視野も含めてちゃんとした議論ができるといいという御意見として受け止めさせていただければと思います。

そうしたら、加藤先生、御感想、御意見をいただけますと大変ありがたいです。

○加藤委員 本当に感想のようなことしか申し上げられないのですけれども、消費者問題の表れ方として、例えば決済を例に挙げた場合に、決済の機能に何らかの問題が生じたことにより生じる問題と、決済の機能が言わば詐欺業者などに悪用されていることによって生じる問題があると思います。

これまでの決済法制は、森下先生がおっしゃったように、決済の機能に内在する問題に焦点が当たってきたのではないかなと思います。そのために決済の機能と商取引の機能などが密接不可分に組み合わさってしまった場合にうまく対応できていない部分があると思います。ただし、決済の機能が詐欺的な取引の決済手段として使われるという問題に対応していくためには、結局個々の決済手段に着目した規制というよりも、横断的な規制が必要だということになるので、それをいかにして達成すべきかということが今後課題になっていくとの印象を持ちました。

以上です。

○坂東座長 ありがとうございます。適切な問題の指摘をいただけたのではないかと思います。

時間も参っておるのですが、黒木委員長代理が時間がありましたら御発言をお願いしますということですので、黒木先生に一言御発言いただければと思います。よろしくお願いします。

○黒木委員長代理 時間がないところ、どうもすみません。

アンバンドルということで、結局のところ決済制度については複数の契約者における複数の契約があると理解できるのかなと思っています。そうなってくると一つの契約上の問題点がほかの契約にどこまで波及するのかという問題を私たちは考えなければならないのではないかということが今日3先生のお話を聞いていてすごく感じたところです。 その観点で最後に一言だけ教えていただきたいんですが、森下先生の最後のページに信託法的な考え方の導入ということを一言書いていただいています。ここで物権法的・信託法的な考え方の導入というのは、これだけでは私が今のような問題意識からするとどうこれを理解したらいいのかということが分からなかったものですから、その点だけ教えていただければありがたいと思いました。

以上です。

○坂東座長 ありがとうございます。

森下先生、恐縮ですが一言コメントをいただけますと大変ありがたいです。

○森下座長代理 ありがとうございます。申し上げませんでしたので。

欧米などでは、不法に人のお金を取られた人については、そのお金を取り戻すことができるというような私法的な効果を実現する際に、信託のような考え方を使ったりすることがあるのですけれども、日本ではそこまでは行っていないのかなと思いますので、そういったような考え方を入れることによって、実質的な救済を図っていく余地があるのかなということを書かせていただきました。

○黒木委員長代理 分かりました。そうすると決済業者が預かっている資金は、信託財産を構成しており、受託者的に決済事業者を考えるみたいな発想と考えてよろしいのでしょうか。

○森下座長代理 あるいは、もう加盟店の口座の中に入った後でも構わないと思いますけれども、人からだまし取ったお金なのであれば、それは本来の利用者のお金だよねという考え方をするというような感じです。

○黒木委員長代理 大変勉強になりました。ありがとうございました。

○坂東座長 金銭の所有権の概念は法的にも大変難しい話ですけれども、権利能力なき社団の預金口座のお金についても、一定、場合によっては所有権的構成が考えられるのではないかという議論がなされている。ですので、そこがヒントになるということでもあるのかもしれません。そろそろ予定の時間を10分ほど過ぎておりますので、今回の議論はこれで終わりにしたいと思います。

瀧委員、谷本委員及び森下座長代理からは、大変示唆的な御報告が今日はなされたと思います。今後の議論をするに当たって参考になる点を様々指摘いただきました。

また、委員の皆様方におかれましては、活発な御議論をしていただきましたし、その中で、改めて整理すべき論点も提示されたのではないかと思います。本日御議論いただいた内容を踏まえて、次回以降も続けて活発な議論をしてまいりたいと思います。

最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。

○江口企画官 事務局です。

座長、柿野委員のコメントのほうはよろしいでしょうか。

○坂東座長 大変失礼しました。柿野委員からは、実はミュートの解除が今日はうまくいかなかったのでということで、チャットに御意見をいただいています。読み上げさせていただきます。

感想になりますが、消費者にとって、最初の瀧委員の中にもありましたが、不正アクセスのチェックのように、消費者自らが確認をすることによって被害防止につながったり、複数の少額決済による多重債務リスクの防止に役立てる方法があったりと、消費者利益の向上につながる考え方もあるのだと理解をしました。

また、森下委員のオーストラリアの事例のように、消費者にとって、自分の情報をいかにコントロールできるのかという点が非常に重要であり、消費者自身もその権利の自覚を高めていく必要があると感じました。

雑駁な感想ですが以上ですという形で御感想をいただいています。

御紹介しなければいけないと思っていたのに忘れるところでした。大変失礼しました。


≪3.閉会≫

○坂東座長 それでは、最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。

○江口企画官 本日は、長時間にわたりありがとうございました。

次回の会合につきましては、確定次第、御連絡させていただきます。

以上です。

○坂東座長 ありがとうございます。

それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところ、お集まりいただきまして、大変ありがとうございました。

(以上)