第4回 支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会 議事録
日時
2025年4月17日(木)15:00~17:00
場所
消費者委員会会議室・テレビ会議
出席者
- (専門委員)
- 【会議室】
池本委員、柿野委員、葛山委員、瀧委員、永沢委員、山本委員 - 【テレビ会議】
坂東座長、森下座長代理、柴田委員、谷本委員、宮園委員 - (オブザーバー)
- 【テレビ会議】
黒木委員長代理、柿沼委員 - (事務局)
- 小林事務局長、後藤審議官、友行参事官、江口企画官、事務局担当者
議事次第
- 開会
- 議事
①池本委員プレゼンテーション
②葛山委員プレゼンテーション - 閉会
配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)
≪1. 開会≫
○坂東座長 本日は、皆様、大変お忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございます。ただいまから、消費者委員会の第4回「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」を開催したいと思います。
まず、本日、会議に御出席いただいております委員の皆様を御紹介いたします。
本日は、池本委員、柿野委員、葛山委員、瀧委員、永沢委員、山本委員は会議室で、森下座長代理、柴田委員、谷本委員、宮園委員、それに私、坂東はテレビ会議システムで御出席をさせていただいています。なお、井上委員、岩澤委員、加藤委員、滝澤委員は、所要により御欠席との連絡をいただいております。
また、消費者委員会からのオブザーバーとして、本日は、黒木委員長代理、柿沼委員にはテレビ会議システムにて御出席いただいております。なお、鹿野委員長、大澤委員、星野委員は御欠席との御連絡をいただいております。
なお、本日の進行についてですが、私もオンラインで参加をしておるものですから、途中で、私の回線が切れた場合には、復旧するまでの間は座長代理に、座長代理の回線も併せて切れてしまった場合には、事務局に進行をお願いすることといたします。
それでは、本日の会議の進め方等について、事務局より御説明をお願いいたします。
○江口企画官 事務局です。
議事に入る前に、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第に配付資料を記載してございます。もし不足等がございましたら、事務局までお知らせください。
本日、テレビ会議システムを活用して進行いたします。一般傍聴者にはオンラインにて傍聴いただき、報道関係者のみ会議室で傍聴いただいております。議事録につきましては、後日公開いたしますが、議事録が掲載されるまでの間は、本日の会議の模様をホームページにて配信いたします。
以上でございます。
○坂東座長 ありがとうございます。
「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」は、これまでに3回会議を行ってまいりました。議論が徐々に深まってきたところであります。
事務局より、今後の議論のポイントについて、参考資料を作成いただきましたので、その点について、事務局より御説明をお願いいたします。
○江口企画官 お手元の参考資料を御覧ください。
事務局にて御議論いただきたい論点について、専門調査会立ち上げ時の論点を基に作成いたしました。御一読いただき、今後の議論の参考にしていただきたいと存じます。
以上でございます。
○坂東座長 ありがとうございました。
中間報告に向けて、今後議論を重ねて集中的にやっていきたいと思っております。1つの参考文書として御確認いただけますと、大変ありがたいです。
≪2.①池本委員プレゼンテーション≫
○坂東座長 それでは、本日は「キャッシュレス決済を利用した消費者被害の実情と課題」について、池本委員に発表をお願いしております。
池本委員からは、クレジットカード決済、プリペイド決済、BNPLなどの様々な支払手段に関する弁護士としての取組の中から、被害救済や悪質加盟店排除の難しさ等について、交渉や裁判例の紹介も交えて、御報告いただけると聞いております。大変立派な資料をつくっていただいたのに恐縮ですが、池本委員、30分程度で御報告をどうぞよろしくお願いいたします。
○池本委員 池本でございます。
まず、キャッシュレス決済の問題は、非常に便利な制度ではあるのですが、特に匿名性が強いネット上のサイト業者が、それをさらにキャッシュレス決済をネット上で使うとなると、いわば取引が全て匿名性で完結してしまうということになって、私たち実務家にとっても解決がなかなか困難である。それを悪用して、さらに詐欺犯罪にまで使われているという状況があります。
私の報告では、クレジット決済やプリペイド決済については、苦情の適切処理義務あるいは加盟店調査義務ということが、一応規定があるのですが、そこへさらに決済代行業者が介在することによって、現実にはなかなか解決できていないという辺りのところを、私の報告の中心に据えたいと思います。
そこで、まず、第1の論点ですが、クレジット決済のシステムの中では、3つの課題を整理してみました。
まずは、カード発行会社について、マンスリークリアについては、登録制も苦情の適切処理義務もない、自主規制というものがあるのですが、実務的には、少なくとも法的責任を追及する場面では、実効性が十分ではないということ。
2番目に、一部の決済代行業者について、クレジットカード番号等取扱契約締結事業者ということで位置づけてあるのですが、これも登録要件の判断基準が非常に不明朗であるということもあって、現実には、無登録の決済代行業者というものが横行しているということ。
そして、そのように無登録の決済代行業者が介在しているために、カード発行会社あるいは加盟店契約会社は、直接の加盟店ではありませんので、調査、指導あるいは排除ということができない、こういう実態にあるということです。
そこで、比較のために、割販法の適用が全面的にある2か月を超える後払い、包括信用購入あっせん業者について確認していきます。
法律上の規律については、第2回で既に詳しく山田先生からも報告されているところですので、それは繰り返しませんが、ポイントを2点だけ確認しますと、苦情の適切処理義務、苦情の伝達義務というものが、取消事由に当たるような苦情の場合は、1件であっても直ちに伝達しなさいと、義務発生要件が非常にクリアになっている。これは実務的にも非常に使いやすいものです。
ただ、割販法上は抗弁の接続という与信業者の認識可能性の要件を問わない別の救済手段がありますので、この苦情の適切処理義務というものが、表に出るということはあまりありません。むしろ、これは個別事案の解決というよりは、同種被害の再発防止、悪質加盟店の排除という業界全体にとって有益な制度として機能していると思います。
その先にクレジットカード番号等取扱契約締結事業者、アクワイアラーと一部の決済代行業者というものですが、先ほども申し上げましたが、登録制のところで、加盟店契約締結の実質的な権限を有する者というものの判定が不透明であるという課題があるということです。
それから、加盟店調査措置義務の発生要件は非常にクリアに、先ほどと同じように、取消事由に当たる苦情の場合は、1件でも直ちに調査をしなさいとなっています。
もう一点大事なことは、②の2番目のポツですが、調査、指導を行った結果を、カード発行会社に通知しなさいと、報告をしなさいと定めているわけです。
これは、カード発行会社とアクワイアラーが相互に連携して、不適切な取引については、きちんと解決しなさいという制度であります。
ただ、これも抗弁接続を活用しますので、個別案件でこういう規定がどう使われるかという場面は、ほとんど出てこないということです。
そこで問題は、マンスリークリアのカード決済で決済代行が介在している場合ですけれども、私たち実務の感覚からしていくと、出会い系サイトとか、投資情報商材とか、副業サポートとか、占いサイトとか、本当に各種の悪質商法というか、詐欺商法のようなもので使われている。また、その多くが、海外アクワイアラーを経由して無登録決済代行業者でやっているといえます。
国内のアクワイアラーと、国内の決済代行の場合には、訴訟にまではならない、センターで連絡をして解決できるというものが多いと思います。
そして、サイト業者とも交渉するのですが、彼らは、言わば確信犯としてやっていますので、こちらが幾ら、いろいろな資料をそろえて説得しようとしても、違う違うと否認して、そのうち所在不明、連絡不能になってしまう。
他方で、カード発行会社に連絡するのですが、カード発行会社は、これは伝達しても調査措置の対応は見込めないですということで、苦情伝達そのものをあまりしようとしてくれないという実態もあります。
それでも、いろいろこちらで情報提供をして、資料も出して、チャージバックなどを実行してくれるカード会社ももちろんありますが、そうならないところも少なくありません。
そして、法的な責任としても、本来は、自社の直接加盟店ではないとしても、実態が把握できていたのではないかということを指摘しても、いやいや、その把握は無理ですと言われてしまう、こういう状況です。
それから、アクワイアラーとの交渉というのは、実はできません。これは業界として、顧客対応はカード発行会社、加盟店対応はアクワイアラーというすみ分けをしていて、この取引のアクワイアラーはどこかということは一切開示しませんので、交渉にも、訴訟にも対象にならないのです。
それでは、決済代行業者はどうかということですが、先ほども触れましたが、これは、海外アクワイアラー経由だから、あなたが決済代行業者として登録する義務があるではないかということを指摘しても、いや、うちはアクワイアラーから最終の加盟店審査決定権限は与えられていないから登録義務はないのだと、登録義務がないのだから加盟店調査義務も発生しないと、こういう主張をします。
それで、カード発行会社と交渉して、そこが苦情の伝達なり、チャージバックなりという働きかけをしてくれれば、それがきっかけになって解決するということはありますが、そこが動いてくれないと、なかなかその先も動かない。
それでも私たち実務家、サイト被害の問題に取り組む弁護士としては、サイト業者とか決済代行と交渉した材料をカード発行会社にせっせと伝えて、まさに力技というか、粘り強く交渉していく中で、決済代行業者が、これ以上粘ると、この弁護士だとアクワイアラー側からうちが切られては困ると、提携関係を切られると困るので、では、分かりました、クレジット決済は解除しない代わりに、直接返金しますということで対応してくれることがあります。依頼者を抱える弁護士からすれば、それでも満額返すと言われれば、拒む理由はありませんから、それで解決して、ある意味では、原因は先送りということです。
次に、交渉で解決できないものについて、早い段階ではカード発行会社に対しても併せて訴訟を行ったケースがありますが、残念ながら敗訴というのが現状です。
まず、判断枠組みとしては、特別の義務はありませんので、抗弁事由が生じ得ることを知り、もしくは知るべきでありながら与信を行ったという、平成2年の最高裁判決あるいは平成23年の最高裁判決で、そういう特段の事情がない限りは、支払請求の制限あるいは既払金の返還義務は発生しないということになります。
個別事案の認定としても、カード発行会社は、決済データが届いたものを一々チェックするいとまもなく、機械的に決済するという形でアクワイアラーから報告が来るので、個別の加盟店について違法性を認識し得たということは認められないと、私たちもそこは立証できない、立証不能ということで敗訴に至るわけです。
そこでその後は、むしろ決済代行業者は直接加盟店契約をしているのだから、そちらのほうが責任があるはずだということで、そちらとの交渉や訴訟に重点を置いているという状況です。カード発行会社には自主規制の規定があるけれども、少なくとも法的な責任の議論としては、残念ながら機能していないということです。
そして、無登録決済代行業者の訴訟についても、実はほとんど敗訴です。判断枠組みは結局同じで、決済代行業者は、単に事実上取り次いでいるだけであるし、加盟店調査義務もないから、認識可能性は、先ほどの最高裁判決と同じような判断枠組みでしかない。そして、事実認定の問題としても、違法であることを認識し得た特段の事情は認められない。決済代行業者がどこかということも、そもそもスタート時点では把握できていないわけですから、情報が入ってこないわけです。
珍しい勝訴判決というか、さいたま地裁で控訴審判決、これは一審が簡裁であったので、高裁で確定しているものです。これは、単なる決済代行業者というよりは、情報商材の広告サイト兼決済代行もやっているという、言わば、デジタルプラットフォーム型の事業者でした。
そして、いろいろ代理人が情報を集めて、いろいろな説得をして、売上ランキングを出しているとか、上位のものを殿堂入りと表示したり、あるいは上位サイトについては、この運営業者自身からもダイレクトメールで推奨しているとか、そんなものを積み上げた結果、詐欺サイトであることを十分認識しつつ、利用者の購入を容認していたということで、故意の幇助による不法行為損害賠償責任と認定しました。
私たちは、この判決を見たときに、まさに加盟店調査義務も何もない民法の一般法理だけでいくと、ここまで認定を取らなければ責任は認められないのか、いかにハードルが高いかということを痛感しましたし、この案件は、むしろ決済代行業者一般に使えるというよりは、デジタルプラットフォーム型の問題として逆に使う余地があるのかなという議論をしております。
次に、プリペイド決済の問題について紹介していきます。
これも、法制度については、既に紹介されているところですが、電子マネーの発行会社については、公序良俗違反でないことを確保する措置のほかに、苦情の適切処理義務というのが2016年改正によって導入されております。決済代行業者については何も規定がありません。
これも実務の実情としては、電子マネー業者、決済代行業者、サイト業者にそれぞれ通知して交渉していくのですが、結局、流れとしては同じで、電子マネー業者は、直接サイト業者と提携しているわけではないので、責任はないと主張します。
以前提携していたようなところも、2016年改正後は、直接提携はやめて決済代行業者介在型に移行しているという実態さえあります。
交渉事案でも、先ほどとほとんど同じような形で、粘り強くやることによって電子マネー業者が連絡してくれているのか、決済代行は直接返金に応じるということが、しばしばあるというか、粘り強くやって、サイト弁護団などが粘り強くやって何とかそういう解決にこぎつけるというところです。
裁判例を紹介しますと、電子マネー業者に対する訴訟は、残念ながらことごとく敗訴です。実態としてはクレジットと共通です。
この中の東京高裁の平成28年2月4日判決というのが非常に象徴的ですので、これを紹介したいと思います。判断枠組みとしては、公序良俗違反でないことを確認することや、何か問題がある場合には加盟店契約の解除も含めた対応をしなさいというのがあるので、それをきちんとやっていない場合は、損害賠償責任を負う場合があると、このように判断枠組みは認定しているのですが、当てはめのところに至ると、電子マネー業者が膨大な数の加盟店の多種多様な商品役務を事前にチェックすることは事実上不可能であると判断した。消費生活センターから、本件の場合は、当該サイトに関する代金返還を求める事案が、以前に6件寄せられていたので、これだけあるのだから当然知り得たでしょうと主張したのですが、サイト利用者全体からすれば多いとは言えず、いずれもサイト側と利用者との間で解決しているからサイト自体に問題があると認識することは困難であると判断した。
つまり、私どもがやっているようなサイト業者あるいは決済代行業者から返金されて、決済手段の解約をしていなければ認識できないと、こんな認定をされてしまっているのです。
最近、責任が濃厚な事案について訴訟を起こした弁護士がいるのですが、実は訴訟を起こして訴状が送達されると、それまでは一切拒否していた電子マネー業者から電話がかかってきて、全額返すからすぐ和解しましょうといって、第1回期日前に和解してしまったそうです。依頼者を抱える立場からすれば、全部返すと言われると、訴訟を続ける意味はないですから、その意味で、勝訴判決がないという裏には、こういう実情もあるのだということを知っていただきたいと思います。
ここまでを再確認しますと、カード発行会社については、2か月を超える後払いと前払いについては、苦情の適切処理義務があるのに、2か月以内のマンスリークリアについては、ないというアンバランスがある。
そして、アクワイアラーの部分について言いますと、実質的な権限を有する決済代行業者を含むというのが、クレジット決済については規定があるのですけれども、判断基準が不明瞭で無登録業者が横行している。
そして、③のところ、加盟店契約を直接結んでいるものが、そういった責任を負わないということで、結局、誰も責任を負ってくれないと、こういう問題があるということです。
それから、実は運用上の問題として指摘しておきたいのが、海外アクワイアラー経由の無登録決済代行業者が横行するのではないかということは、割販法の改正の時点で議論しているのです。割賦販売小委員会にVISAジャパンを呼んでヒアリングを実施して、その中で、通常のチャージバックルールとか、そういうものとは別に、もっと上位のルールとしてVGBPプログラムという、加盟店が違法行為を行っていることが分かって、それがイシュアー側から報告されたときには、アクワイアラーに連絡して、即時に契約解除をしなさいと要請をすることになっているのです。過去に取り扱った中でも、バイナリーオプションの海外無登録業者について、金融庁の事業者名公表とイシュアーからの連絡によって、加盟店契約を解除させたことがあるとか、クレジットカード現金化については、これは警察庁が事業者名リストを出してVISAに提供して、同じように対応したということがあるようです。
実は、この報告は、2015年の割賦販売小委員会の中でも報告されています。その中で海外経由の取引について、アクワイアラー等に措置の遵守を求めるためには、国際ブランドとのより一層の連携強化が必要であると、まさにVGBPを活用する必要があるということが指摘されているわけです。
それどころか、その後、これは、2022年、令和4年6月2日の割賦販売小委員会の中でも、今の問題がさらに続いているということも、無登録業者があるということが指摘されていますし、実は、2023年11月14日、この消費者委員会の本会議でも、この同じ資料を使って報告されています。
ぜひともこれは、経産省で、現在、無登録決済代行業者について国際ブランドに対して要請などをしているのかどうか、確認していただく必要があるのではないかと思います。
時間があまりありませんが、あと少し、さらに駆け足になります。
後払い決済業者、BNPLについての問題ですが、残念ながら、これは、取引高が4、5万円あるいは2、3万とか少額の事件であるために、私自身だけではない、サイト問題をやっている弁護士の何人かに聞いたのですが、直接弁護士が受任して処理をしているというのはない。消費生活センターで事例研究の中では、私も何度も報告は聞いているのですが、直接やっている案件はありませんでした。
ただ、実情について、個別案件は前回報告がありましたが、もう一つ資料として確認できたもので、大阪市の消費生活センターが報告資料の中で、詐欺的定期購入でクレジット決済の方法ではない、もっと簡単な後払い決済サービスがこの頃広く使われているということで、令和3年には、業界団体に対して適切な加盟店管理をしてくださいという要請をし、令和5年には、条例に基づく事業者指導を行った。後者は、業界団体か、それ以外かというのは書いてありませんので分かりませんが、こういう指摘がありました。
ちなみに、後払い決済については、ID・パスワードを付与して、一定枠は簡単に決済できるという、ちょうど包括信用購入あっせんの2か月内払いのような仕組みでやっているもの、あるいは定期購入の何回かの支払いを1個の契約で、その都度、請求書を発行するという、いずれも脱法と疑いがあるようなものも現実に存在しています。
この分野は、もう明らかなように、個別信用購入あっせんについては、登録制とか、加盟店調査義務とか、様々な規律があるのですが、BNPLについては全くないと、こういう問題で、しかも今、被害が深刻だという状況があります。
クレジットカードの不正利用被害の問題の中でも、実は決済代行業者の役割というものが、今、注目されているというところを紹介しておきたいと思います。
これは、ここ何年かでクレジットカードの不正利用の被害金額が爆発的に増えておりまして、2024年は555億円という数字になっております。
この間に、2008年をスタートにして、カード発行会社、アクワイアラー、そして加盟店、そして2020年には、決済代行業者を含む関係する事業者について、自らのカード情報安全管理義務というものが入っているのですが、この中で、300万社とか500万社とか言われるカード加盟店については、経産省が直接行政規制を加えるという条文はなくて、アクワイアラーなどが、加盟店調査措置義務を通じて調査是正を図ると、こういうルールになっているわけです。しかし、残念ながら、これだけ被害が出ているという事実があるわけです。
このことについて、実はやはり問題だということが、2022年から23年、2022年度の割賦販売小委員会で問題になりました。非常に手口も巧妙化して、利用者の注意だけでは到底防げないのだと。そこで、カード加盟店全体が、暗証番号の入力方式EMV-3Dセキュア方式を24年度末までに全加盟店に導入するように推進していこうと。ただ、カード発行会社は加盟店を直接指導はできませんので、アクワイアラーあるいは決済代行業者などが指導してもらわなくてはいけないのですが、その実効性を確保するために、決済代行業者についての加盟店管理責任あるいは登録制なども検討課題であるという指摘が報告書の中にあります。あるのですが、その後も被害はどんどん広がっているし、この登録制や加盟店調査義務については、この2年間小委員会が全く開かれていないので、議論はされていないということです。
現在、経産省のこの部署は、フィッシング詐欺が激増していることへの対策で非常に多忙を極めているということは十分推測できるのですが、この辺りもどうなっているのかということは、検証が必要ではないかと思います。
最後に、コンビニ収納代行とかキャリア決済の問題ですが、これも、いずれも金額がさらに少額になるものが多いために、弁護士が直接受任するケースというのも、私も含めて、ほかの弁護士に聞きましたが、ほとんどありませんでした。
ただ、共通して言えるのは、もともとコンビニの収納代行とか、あるいは宅配業者の代金引換、こういうものについては、信頼できる公共利用料金とか、大手の業者について直接加盟店にしていた時代には、そんなトラブルはなかったはずです。それが決済代行業者を入れる、あるいはコンビニ収納でいうと、BNPL業者がそこを利用すると、そういう形になってから、今、トラブルが急増しているではないかと、相談員さんとの事例検討会などの感想も含めて、そういう整理ができるだろうと思います。
それどころか、収納代行というものは、そもそも定義がありませんので、自称、収納代行だと称して、実は、第三者の口座を勝手に使って、口座提供型収納代行あるいは送金代行業とも呼ぶことのできる、口座の不正利用による被害というものが増えているとこういう実態があります。
これについては、口座凍結等の手段ですが、ここは後で葛山弁護士に紹介していただきたいと思います。
あと、キャリア決済についても、前回も少し議論がありましたが、日常生活で必要不可欠な携帯料金の支払いという中に、こういう支払いも含めているので、争うことを諦めるケースが非常に多い。私たち、弁護士の実務でも、破産の事件で、携帯電話料金は、光熱費などと同じように生活必需のものだからということで、支払い継続は認めています。
ただ、キャリア決済で計上された債務部分は、それとは別だと、それを払わないでおくと携帯電話が利用停止になってしまうわけなのですが、そこが区別されないために、携帯電話の契約先を変えざるを得ないと、こういう実態もあります。やはりここはキャリア決済というものの本来の性質を考えていただく必要があるのではないかと思います。
以上、駆け足ですが、私の報告といたします。
以上です。
それでは、私のレジュメを御覧いただきながら、少し駆け足になるかと思いますが、よろしくお願いします。
○坂東座長 ありがとうございました。
大変幅広い議論を分かりやすく、しかも時間内にまとめていただきまして、心より感謝申し上げます。
それでは、池本委員の御発表を踏まえて、意見交換に移りたいと思います。御発言のある方は挙手あるいはオンラインでチャットのところに書いていただきますと、私もオンラインですから、御指名しやすくなりますので、御協力をよろしくお願いします。
それでは、御意見のある方、よろしくお願いします。
永沢委員、御発言ください。
○永沢委員 発言の機会をいただき、ありがとうございます。池本先生、詳しく丁寧にご説明いただき、ありがとうございます。資料中の12ページで、プリペイド決済、クレジットカードのマンスリークリア払い、2月超後払いの3つの決済方法について、苦情適切処理義務と加盟店調査措置義務がなし、ありとばらばらになってきている実情をわかりやすくお示しいただきました。なぜ、このようなばらつきが生じてきてしまったのでしょうか、それぞれの事情があるのだろうと思いますが、その事情、背景について、事務局に調べていただきたいと思いますが、池本先生からもご意見をいただけるでしょうか。
続いて、14ページですが、2022年6月に開催された経済産業省の割賦販売小委員会で、経産省は海外アクワイアラーや海外決済代行業者経由の国内決済代行業者が無登録で活動している実態を監督実務上の課題であると報告しているが、その後の動きが見えないこと。そして、19ページで同小委員会の開催が過去2年間開催されていないということも教えていただきました。経済産業省はキャッシュレスを推進しているわけで、そうした中でいろいろな消費者問題が起きていることに対して、当局として動きがないのは残念に思うという先生のご意見には、私も強く共感いたします。
行政の監督に関連して、初歩的な質問なのですが、例えば金融の分野では、無登録で金商業を行う者に対して、金融庁が勧告しますが、やめさせる直接的な権限はないので、証券取引等監視委員会が設置されていて、裁判所に禁止命令等の申し立てをして活動を止めてくれていますが、割賦販売法の分野では、経済産業省では、無登録の業者に対してどのような対応を行っているのでしょうか。無登録業者が跋扈しているという報告をお聞きしていますが、無登録の場合、経済産業省は直接的に対応できる権限を持たないように思いますが、それならどこが無登録のまま活動を行う業者を止めることができるのか、そこが見えてこないので、教えていただければと思います。
私からは以上です。
○坂東座長 ありがとうございます。
池本先生、分かる範囲でというか、池本先生の御意見も含めて、規制の凸凹や、あるいは監督の問題について少し御発言いただければと思います。いかがでしょうか。
○池本委員 御質問ありがとうございます。
まず、第1の規制の枠組みがばらばらであるのはどうかと、これは、まさに縦割り行政から来るということと、あと、金融庁の資金決済法は、どちらかというと、前受金を受け取って万一倒産したりしたら、それこそ深刻な被害になるので、財産保全の面とか、金融商品取引法などもそうですが、やはり、事業者の財産保全的な観点が従来強かった。それに最近、悪質加盟店という問題が出てきて、それで2016年に急遽、加盟店の苦情の適切処理義務ということで、ガイドラインの中で、その決済代行等の間が入った場合も、そこも含めて対応しなさいということが抽象的に触れてあるということではないかと思います。
他方で、クレジット決済は、昔から加盟店の管理をきちんとしなさいということが言われてきていたので、その考え方からすると、マンスリークリアについてだけアンバランスであるというのは、残念でならないのですが、そのときの審議会の中では、問題は海外アクワイアラールートであって、国内については問題ないのだと。国内については、自主的にやっているし、今度、自主規則を入れるのだから大丈夫だという発言でした。
それが自主ルールの中に反映されたのですが、しかし残念ながら、そこについても、訴訟にまで行く案件はあまりありませんが、消費生活センターレベルでいうと、きちんとそれなりにやってくれる事業者と、やや後発的なところとかは、苦情の適切処理義務、伝達をしたり、チャージバックを対応したりという対応をしてくれるところと、くれないところとばらつきがあるという問題です。
それから、決済代行業者に対する取組のところも、実態を調査の上、しかるべき範囲のものについては、登録制と加盟店調査が必要ではないかというのが、その前の会議の議論にはあったのですが、単にフィッシング問題で忙殺されたということだけなのか、あるいは決済代行ということを、本当に要件的に考えていけば、これはデジタルプラットフォーム事業者も、決済を取り次ぐという限度では決済代行業者に当たるので、そこまで広げるということを逡巡されているのか、ここは全くその、公式の場の議論はないので、私の推測でしかありませんが、やはり、そこが経産省のクレジット決済の部門だけでは、なかなか決めかねるところがあるのではないかなと、ここは推測を交えた意見でございます。
以上です。
○坂東座長 ありがとうございました。
規制のばらつきが、直接救済のばらつきにつながっているのか、それとも事業者の個性の問題なのかというのは、なかなか現場でも判断の難しいところであろうし、現実に、相談に直接携わっている方々には、きっといろいろな御意見があるかなと思いながら聞いておったところではあります。
ほかにも、せっかくの機会ですので、確認したいこと、御質問、御意見等をいただけたら大変ありがたいですが、まず、山本委員、お願いします。宮園さん、少しお待ちくださいませ。
○山本委員 今、2点ございまして、永沢委員の御質問されたことの答えではないのですが、実務的に見てというところが少しありますので、その点と、あと、もう一点お話しさせていただきたいと思います。
まず、経産省さんの運用のところで、これは、池本先生も言われたことですけれども、特に決済代行会社の規制というのが、いろいろ難しくて、議論もいろいろあったと。その中で、今、実質、恐らく相談現場などで困るような事態になっているということは、登録すべき事業者だけれども、国内にいるのだけれども、なぜか登録をしないで営業しているという事業者の存在が1つで、そこは、きちんとした登録の執行をしてもらえないかなという要請をしなくてはいけないところではないかと、個人的には思います。
もう一つ、もともと議論が難しかったのではないかと、あと、実務的に見ると、それは無理だみたいな話としましては、海外に所在があって、海外にアクワイアラーもいる、しかも決済代行会社も海外に所在がある、そういうところが日本向けに営業しているケースがありまして、そこは、体的にどう規定するのかという指針というのは、なかなか難しかったのではないかと。実務的に見ると、残念ながら、そういうところが穴になっていて、ばらつきが生じたように感じておるところです。1つの例としてですね、それが1点目でございます。
もう一点、池本先生が、私も気になっていたところを全て御発表していただきましたので、最近のことで少し気になっている点、補足的なところというか、追加的なことなのですが、クレジットカードの不正被害というのが、やはり毎年増えているところは、誰もが問題視をしているところで、当然、実務的にクレジットカード会社なども、そこは非常に真摯に受け止めているというか、理解、認識をしているのだと思うのですね。
ただ、昨年と今年度、1年前と最新のデータのところの、池本先生ので、最新だと550億円でしたか、その前から最新の間の増加というのが少し鈍化しておりまして、そこを実際に取引全体の金額で割り算をした数字が、たしかありまして、それで見ると、一時的に少し、カードのインターネット上での不正利用というのが減ったということをよく言われているカード会社さんもいらっしゃいますので、そこの部分は、もう一度調べてみてもいいかなと思ったところでございます。
少し3-Dセキュアの導入が進んで、抑制が働いていると、実務的な人たちがよくアピールをしていまして、私もそういうデータを見せてもらったことがあります。
そこまでは少しいいことなのかもしれませんが、もう一つ、3-Dセキュアなどの認証によって全体的な被害が減ったとしても、たまたま不幸にして被害に遭われた方の救済というのが、実は、これまで以上に困難になってくると。
それは、どうしてかというと、例えば、今までですとチャージバックなどでカード会社が代金を取り戻すことができたことが、3-Dセキュアに対応することで、それが一切できなくなるような状況も生まれておりまして、要は、全体として被害が減る、ところが、そこの中で被害を受けてしまった人の救済が難しいという問題もあるのだなと思っております。
その点のみ、少し述べさせていただきました。ありがとうございます。
○坂東座長 ありがとうございます。
そうしましたら、宮園委員も手を挙げていただいたと思うので、御発言いただけますでしょうか。
○宮園委員 NACSの宮園です。機会を与えていただきまして、ありがとうございました。
私のほうも海外アクワイアラーの件で、質問をさせていただきたいことが1つございまして、13ページのところに、VISAのルールでGBPPというところがあります。
そこで、バイナリーオプションについては、海外無登録業者について金融庁のホームページで事業者名の公表があったとか、そういったことから、加盟店契約を解除したとありますが、実際、消費者の被害回復というのは、どのようになったのかというのが知りたいところでございまして、恐らくチャージバックなのだろうかと思うのですが、その辺り、もし、この事例でなくても構わないのですが、こういった場合の救済はどうだったとか、それから、次のクレジットカード現金化は、恐らく消費者にチャージバックはしてもらえなかったのではないだろうかと思ったりもするところなのですが、もし、この辺りを教えていただければありがたいと思います。お願いいたします。
○坂東座長 池本先生、お願いできますでしょうか。
○池本委員 お二人の御質問について、分かる範囲のところを発言したいと思います。
まず、山本委員から御指摘のありました、海外所在の業者が直接、今はネットの時代ですから、直接日本国内のサイト業者と契約をした場合に、これが阻止できないのではないかという問題があるということでした。まさに、そこが隙間になってしまうために、日本国内のルールでは、国内の加盟店をとるときには、日本国内に事業者所在地を置き、加盟店調査体制を整備して登録をしなければならない。国内にちゃんと責任の所在を置くようにということが、登録要件にしてあるのです。
それをしていないということは、日本の国内法に違反して加盟店契約を結んでいるから、これは日本法からすれば違法な事業者だと。それについて行政処分を直接かける権限はありませんけれども、国際ブランドのルールに違反して、日本国内法に違反する加盟店契約を結んでいる決済代行については、アクワイアラーを通じて、そこは加盟店契約を解除しなさいということが要請できるのが、本来、GBPPのルールのはずなのですが、経産省からそういう情報がきちんと伝えられていない、あるいは現実に無登録業者が横行しているというところにも、そこに実際の法の執行というよりは、そのルールの活用が十分できていないという問題があるのではないかと思います。
それから、暗証番号の利用ということが、だんだん今普及してきていて、暗証番号が使われてしまうと、もう責任をカード会員が負ってしまうと。
実は、最近のカード契約、利用契約の中では、第三者に不正利用された場合には、責任は負わないのだけれども、暗証番号も含めて利用された場合は、それは情報提供をしたか、管理が不十分だったと扱うという、そういう規約になっているのです。
ところが、これもセキュリティに関する、そういった検討会の中で出た発言で、まさに、今、それこそ日々犯罪者集団の手口もだんだん変わってきていて、暗証番号そのものが全くどこかのルートで抜き取られたとしか考えられない事案というのは、現実にあるのだという、本当はそういうところも含めて、カード会員規約をもう少し丁寧に見直しをしていく必要があるのではないかと思います。
それから、宮園委員から御指摘のあった、バイナリーオプションやカード現金化の問題が、個別事案の解決に向けて、どう反応して対応できているかということですが、そもそも、そういう要請があって加盟店契約が切られて、被害の拡大防止ができたということは、これは当時話題になったことでもありますが、さかのぼって過去の案件も含めてチャージバックができているかというと、残念ながら、そういう情報は、私は把握できていません。
本当にそれに近い時期に、消費生活センター相談員との事例検討の中で、少し前の事案だけれども、こうなっているではないかというのを話して、請求を止めてもらったことがあるということが、話題になったことはありますが、全体の流れとしてそうなっているかどうかという情報までは、申し訳ありませんが、私も把握しておりません。
以上です。
○坂東座長 ありがとうございます。
なかなか本人確認義務と、技術的対応とか、様々なレベルの段階で、それを法的にどう評価するかというのは、改めてとても簡単な話ではないのだなと気づかされました。
あと、若干時間がありますので、森下先生、お願いできますでしょうか。
○森下座長代理 森下でございます。今日は、本当に参考になるお話をありがとうございました。
最後のほうで、金額が比較的少額であるがために、弁護士の先生方のところに届いていないとか、なかなか弁護士が使われていないという事例があったと思います。金額が少額であるがために、手をかけての救済が難しいということかと思うのですけれども、そういった少額のものについて、こうしたらよいのではないかとお感じになられていることがあれば、ぜひお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○池本委員 御質問ありがとうございます。
そして、なかなかここは難しいところだというところを前提に、考えているところを少しお話ししたいと思います。
まず、コンビニ収納代行もキャリア決済も、その事業者自身が悪質加盟店を自らの手で直接排除するということは、これは、間に決済代行なり、BNPLという別の業者が入って、そこが加盟店をかき集め、なおかつ、きちんと調査、指導しなければ、直接手が及ばないということがあります。
しかし、他方では、苦情が寄せられるのは、そのコンビニであり、キャリアに行くわけですから、そこから、カード決済で言えば、苦情の伝達に当たるような、その情報を、本当に鍵を握る人に伝えるというルールだけでも入れておかないと、問題は解決しないのかなと思います。
その上で、実際の案件として言うと、私たちが交渉しているところも、法的な責任の問題で言うと、コンビニあるいはキャリアそのものの責任という形にしても、なかなか法的な責任は確定されないので、そこへぶら下がっている決済代行業者、あるいはBNPLの事業者を相手にすることになると思います。
非常に低額な案件について、どうするかという問題が指摘されました。これが、私は特定適格消費者団体の1つに参加しているのですが、共通義務確認訴訟の支配性の要件といって、事業者の同一の違法な取引について多数被害があると言えるかということで言うと、把握できている情報が非常に間接的なので、そこもなかなか適用できないところがあります。
その意味では、消費生活センターでも活用できる明確なルールがないと、個別の弁護士が個別の3万、4万円の案件で、被害者にある程度費を負担してもらって訴訟をやっていくといっても、現実に機能していかないのではないかと、非常にもどかしいところはあります。
実は、今回のこの関係で、サイト被害の弁護団の中でも少し問題を持ちかけたのですが、消費生活センターと情報交換をしながら、あるサイト業者について、こういう問題があると、コンビニ収納代行にぶら下がっている決済代行業者がいるというのがあれば、消費生活センターとも意見交換をして、被害事例を集めて弁護団をつくるなりということができるかどうか、意識的にそういう情報交換をする必要があるのかなということは話題になりました。
ただ、消費生活センターも全国にたくさんあるので、全体に及ばすというわけにもいかないし、現実にはなかなか難しい、実務的には難しい課題だと思います。
以上です。
○森下座長代理 ありがとうございました。
○坂東座長 ありがとうございました。
≪2.②葛山委員プレゼンテーション≫
○坂東座長 まだ、御意見、御質問等があるかもしれませんが、葛山委員からも、消費者被害の現状についての御報告をいただくこととなっております。
そこで、続きまして、被害の現状等について、葛山委員から御発表をお願いしたいと思います。
葛山委員の御発表をいただいた上で、御報告をいただいた上で、また、再度全体についての議論をすることといたしたいと思います。
それでは、葛山委員、早速ですが、大変な資料をつくっていただいたのに恐縮ですが、30分程度で御報告をお願いいたします。
○葛山委員 葛山です。
それでは、引き続き弁護士の葛山から御報告させていただきたいと思います。
私のほうからは、池本先生に引き続いて、現場の被害状況について御説明をさせていただければと思います。
「はじめに」ということで、前置きを若干お話しさせていただきますと、1つ目としては、当たり前の話ですが、実際にそこで被害が発生している現実に目を向ける必要があって、あとは、今後被害が拡大していく蓋然性があるかどうかというところで、対策の検討をする必要があるということを強調しておきたいと思っております。
2つ目として、今回御報告させていただく被害類型について、第3回と重複するところもありますが、先ほどお話もありましたが、弁護士に上がっている被害ということで、視点の違いを簡単に述べますと、消費者センターでは、今回お話しする極悪層ですね、これは取扱いづらいという一方で、先ほどあったようにBNPLのような案件というのは、件数が多いものの被害額が小さいので、弁護士のところに来づらいと、有料の法律相談は、消費者も使いづらい金額ということがあって、なかなか来づらいのかなというところが、前回の報告との違いかなと思っております。
私からの報告ですけれども、東京の常設の弁護団や、被害類型ごとの特設弁護団に私が幾つか入っている関係から、弁護団で取り扱っている事例のうち被害の件数が多いもの、あと、被害のボリューム、金額が多いものについて御報告したいと思っております。
ここに書いてあるとおり、4つ取り上げておりますが、これらを順に被害回復の実務はどうなっているもので、決済から見てどういう課題があるのかということを御報告したいと思っております。
4ページ目が、決済制度全体に対する本報告の被害の位置づけということで、今回の御報告が若干今までの毛色が違うところもあると思いますが、被害が大きいところから見ていくと、こうなるという現実を御認識いただければありがたいと思っておりますが、一方で、従前の御報告からの連続性がどうなっているのかというところが分かりづらくならないように、全体像ということで、山田先生の資料をお借りしまして、今回の御報告をひもづけさせていただきました。
右側に矢印をつけておりまして、各被害類型ごとに被害回復しようとしたときに、実務的にどの部分の決済の運用や制度に課題があるのかをざっと書いております。
これらを次のスライド以降で御報告させていただきたいと思っております。
報告を詰め込んでしまいまして、スライドが長くなってしまいましたので、池本先生と重複する部分は省略しながら報告させていただければと思っております。
まず、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺と言われる被害類型です。ロマンス詐欺については、どういうものか御存じの方は多いと思いますが、典型事例として政府から出ている注意喚起の事例を記載しておりますが、ほとんどが、ここのアにある事例と同じで、ネットで知り合ったものから、偽の投資サイトを勧められて、投資するも出金できないという類型になっております。
手口をもう少し分解して説明したのがこちらです。4段階に区切っていますが、1段階目の入り口がマッチングアプリや、有名人の偽広告ということになっております。
2段階目が、ほぼLINEに誘導されてクローズドなコミュニケーションに誘導されると。
3段階目が、海外投資サイト、偽サイトに誘導されます。
4段階目が、金銭詐取の手段としての決済手段で、これは銀行振込みと暗号資産送金の2つが圧倒的に多いです。
何が問題かということですが、言うまでもなく、件数、被害金額、これは圧倒的に多いです。年間1100億円という統計が出ています。
あと、問題点としては、海外からの犯行なので、加害者の特定に至らない、被害回復が非常に困難、参照に挙げていますが、弁護士会からも被害回復ができない典型事例としてホームページで公表していて、これだけ被害があって被害回復が困難だというのが実態です。
なぜ、被害回復ができないのかというところですが、現場ではもろもろ対応しているのですけれども、結局、海外なので決済手段から何とかしないとどうしようもないという状況です。
今後、この手の詐欺というのはどう見ても増えるので、これを織り込んで決済制度の構築、運用も考えなければいけないのではないかと思っております。
その前提として、なぜ、決済手段以外からどうしようもないのか、現状を簡単にお話ししたいと思います。
被害回復の実務というのは、何をしていて、何ができていないのかが分からないと、課題が理解しづらいのかなと思いますので、緑で囲った部分は決済ではないので、簡単に御紹介だけさせていただければと思っております。
まず、入り口部分のマッチングアプリ経由で詐欺サイトに勧誘がなされる場合についてなのですけれども、マッチングアプリ業者が犯人の情報を持っていますので、これを開示してくれということでいろいろやるのですが、結局犯人が海外にいるので、海外のIPアドレスとか、出てきたものでいろいろ追ったのですけれども、盗難カードの情報だったりとか、回収につながる情報というのはほとんどない。
続いてSNS上にある、去年はやりましたが、偽広告案件です。そこから詐欺サイトに誘導されるケースでは、海外のSNS事業者というのは、犯人、広告主ですね、情報の開示にあまり協力してくれないと、詐欺広告自体を出したプラットフォームの責任を追及する訴訟というのは、現在、継続しておりますが、プラットフォームの責任を争ってきておりますので、こちらからの被害回復の程度というのも、なかなか見込みは不透明。
そして、2段階目、クローズドなコミュニケーションに誘導されるということなのですが、これは90パーセント以上がLINEを利用しておりまして、従前からLINEについては、内閣府消費者委員会でも取り上げていただいておりまして、対策の必要性が議論されています。
ただ、ここで強調しておきたいのが、LINEは現時点でも加害者情報を開示しないということになっています。
ポンチ絵を描きましたが、犯人はLINEを利用しているので、利用登録の際に自分の情報をLINEに登録していると。つまり、LINEは犯人の情報を持っていますが、被害者にこれを開示しないと。電話であれば情報は開示されるのですけれども、LINEは、現在は電話と変わらないインフラになっていますが、LINEだけは、なぜか犯人の情報を守るような対応を取っていて、詐欺の温床になっていると言わざるを得ない状況が続いております。
続いて、3段階目の海外サイト、詐欺サイトですが、ここは一言で済ませますが、海外で開示請求することはあり得ても、費用的にも出てくる情報的にもほとんど意味がなく、ここまで見たとおり、決済手段以外からの回収はほぼできないというのが現状です。
さて、ようやく決済手段ということなのですけれども、今まで取り上げられていなかった暗号資産について報告をさせていただければありがたいと思っております。
基本的なところからの確認なのですけれども、暗号資産として詐欺によく利用されるのは、ビットコインをはじめ何種類かですが、被害者がどのように送金させられるかというと、被害者は暗号資産の口座など持っていないのですね。そこで詐欺師のほうから新たに暗号資産交換業者のほうで口座開設しろと言われて口座を開設し、指定された口座に送金させられます。
基本的な暗号資産の仕組みですが、暗号資産というのはブロックチェーンなので、送金先などは全てネット上で公開されておりまして、送金先口座全て、これは御存じのとおりだと思いますが、追うことが無料でできます。
一方で、送金先の口座、アドレスと言われるところ、暗号資産では送金先アドレスということになりますが、これを誰が管理しているのかということは、必ずしも公開されていませんが、これも、ある程度コストをかけると一定程度の調査をすることは可能ということになっております。
ただ、問題はほとんどの場合、犯人というのは海外から犯行を実施しておりまして、海外の特に匿名性の高い幾つかの暗号資産交換所に送金されています。その結果、ここで記載したとおりなのですけれども、回収事例が1件もないのです。1100億円の被害のうち、20パーセント程度は暗号資産であるという統計データがあります。海外に送金されると回収ができないというのが、現在の全国の各弁護団からの報告から明らかとなっております。
こういう状況ですから、まず、被害予防と、被害回復のためにできることを検討しなければならないというのが問題意識としてございます。
被害予防という観点からですが、これは一定程度というか、相当程度できるのではないかと思っています。
すなわち「被害者の行動」と書いておりますけれども、被害者の行動から被害に遭っていることが類型的に検知できるので、被害を検知した場合、それを止めてあげれば、相当被害が減るはずだと思われます。
従前の例で言うと、振り込め詐欺とかで、高齢者の方が銀行のATMに行くではないですか、そのときにATMで振り込め詐欺の注意喚起をするというのに似ている形になります。これは非常に効果を上げていると聞いております。
暗号資産の場合、若干ややこしいのですけれども、被害者の行動ということに書きましたが、被害者は先ほど申し上げましたとおりで、暗号資産口座などは持っていないので、詐欺のために口座を新規に開きます。
開設直後に、ここに少し専門的な用語で「アンホテッドウォレット」と書きましたけれども、これは何かというと、暗号資産の口座というのは、どこの暗号資産交換所にも属さない、端的に言うと怪しい口座がありまして、犯人は送金先として、そこを指定するわけです。
ですので、被害者としては、口座をすぐに開いて、その後に怪しい口座に送金すると、こういう典型的な行動を取ります。これが詐欺の被害者の典型的な行動で、この行動というのは容易に判定が可能です。こういう行動というのは、口座が開設されている暗号資産交換所のほうで検知したりすると、詐欺被害の可能性ありますよとか、被害者にアラートをしたり、個別に連絡したりとか、そういうことをすると被害が相当減らすことができるはずです。
実際に、そんなことはできるのですかという話なのですが、実際にやっている暗号資産交換業者さんもいらっしゃいます。やっていないところがあると、犯人側は利口なもので、そこで口座をつくらせますから、この点、足並みをそろえて被害予防をしていかないと、被害は減らないのではないかなと思っているところです。
続いて、被害回復の点です。現状何もできていません。これは、このままでいいのですかと、消費者被害、決済制度に関するものとして、これは、このままでいいのかと。すぐに何かできなくても、何かすべきだということは、消費者被害を扱う場から発信したほうが望ましいのではないかなと思っています。
さて、どのように日本の被害者のお金が年間何百億と流れているかというのを示したのが、この送金後の状況の図です。
被害者さんが送金した金銭、暗号資産ですね、転々として最終的には海外の暗号資産交換業者、特に有名な幾つか匿名性の高い海外の業者に行っています。
「問題点は?」と書きましたが、国内から正直なかなか、現状やりようがない。ただ、ここに黄色を書きましたけれども、このような匿名性の高い暗号資産交換業者についても、日本国内にグループ法人を展開したりするわけですね。黄色で書きましたが、巨額な詐欺被害金が特定の暗号資産交換業者の管理する口座に流れている。そのグループ法人が日本国内にあるような場合、何らか対応できないのかということが課題として書いております。
なお、アメリカでは、グループ法人経由などで指導したか、グローバルから返金させるという事例もあるようです。これは、すぐに対応できるかどうか分からないです。ただ、現状何もできない状況ですが、できないから仕方ないというので、これを放置するには巨額過ぎると、額が大き過ぎる被害ですし、今後も減るとは思えないので、対応は検討しないといけないのではないかと思いまして、少し荒唐無稽に思えるかもしれませんが、問題点の提示に加えて、対応策のアイデアということで記載させていただきました。
続けて、銀行振り込みについて御報告をさせていただければと思います。
まず、銀行振り込みについては、暗号資産と異なりまして、被害回復が一定程度は可能というのが大きな違いとなっております。
銀行振り込み型の課題ということですが、銀行振り込みというのは、決済手段の多様化とは無縁で古くからあるものですし、その被害回復の方法としても詐取された金銭、だまされて振り込まされた金銭、そこが入っている口座を振り込み詐欺救済法に基づきまして口座凍結をして、その口座の残高や、もしくは口座からの移転先の残高を回収するというのが、実務的な手法、これは従前と変わらないです。
ただ、振り込め詐欺救済法に基づく凍結と、残高からの回収というのも、近時の巨額の詐欺被害、被害金額、これを生じさせているロマンス詐欺の被害回復の現場では、幾つか制度上、運用上の問題というところが生じておりますので、その辺りを報告させていただければと思っております。
被害の構造の簡単な説明ということなのですけれども、銀行振り込み型の場合、被害者さんは犯人だから、偽のFXサイトの入金先口座として振込先が指定されます。振り込みの都度異なる口座、個人とか、法人とか、外国人が多いですけれども、指定されています。
それで、被害者さんの振り込んだお金の流れを示したのが、この図です。
図を見ていただきますと、被害者さんが国内の銀行口座に振り込みます。国内を転々として最終的に海外に資金が流れていくと、犯人もさがしいものなので、最初に振り込んだ口座が凍結されるのは把握しているので、すぐに資金をほかの口座に移していく。ですので、最初の口座、一次振込先と言っていますが、ここは凍結してもあまりお金が残っていない。
一方で、移転先にはお金が残っていることがありますので、ここを凍結すればいいのですが、ここの凍結がきちんとできていないという大きな課題があります。
しかも、被害者側からはどこにお金が移転しているのか、情報が開示されない、把握できていないという問題があって、そのため回収が困難になって、被害者のお金がどんどん犯人に流れていってしまっているという現状がございます。
1つ目の課題と書きましたが、こちらは、凍結できていない原因としては、新たな被害類型としてのロマンス詐欺の数、SNS型投資詐欺の数、これが多過ぎるという問題で、従前の制度の運用が機能不全になってしまっているのが背景にあると思っております。
法制度としては、移転先の凍結を求めているのですね、やれと書いてあると、凍結方法は簡単で、一時振込先の銀行が、その情報を移転先の銀行に通知して、通知を受けた銀行が凍結すると、これなのですけれども、これは全然徹底されていない。
監督官庁はどこですかというと、預金保険機構なのですけれども、ここもいろいろな業務をやっていますので、この監督も、ここだけにマンパワーを割けませんから、恐らく徹底が難しくて、銀行も監督官庁もこの種の詐欺が爆増しているということに人員を割けていないのかなと思っております。
ただ、このような被害の金額の大きさからすれば、もっとコストを割いても対応しないと、被害者がいつまでたっても泣き寝入りなので、何とかしていただきたいと思っています。
なお、直近、銀行のほうも、やはり問題意識を持っておりまして、去年、国民を詐欺から守るための総合対策というのが、犯罪幕僚対策会議で出まして、それに基づいていろいろと検討していただいており、全銀協で検討会をやっておりまして、直近、このパワポをつくっているときだったのですが、3月31日に報告書が公開されており、一般には概要版しか出ていないのですけれども、今後、移転先の凍結を効果的にやっていこうという動きはありますが、これは、きちんとできるのかというところは、きちんと見守っていく必要があるのではないかと思っております。
2つ目の課題として、移転先の情報を被害者が把握できていないというものがあります。残高が残っている移転先の口座の情報を被害者が把握できないという問題なのですけれども、その理由は、シンプルに金融機関のほうで移転先の情報を被害者に開示してくれない、犯人の情報を被害者に開示してくれないのです。その結果、被害者から移転先の口座について、ここが移転先だから凍結してくれということもできないですし、被害者が、移転先が分からないので回収することもできない。
対応はシンプルなのですけれども、単に開示してくれればいいという話ですが、個人情報の関係もありますので、具体的な方策として考えられる1つとしては、金融機関向けのガイドラインに、犯罪の凍結口座の情報は被害者に開示すると記載するだけで簡単に解決する問題だと思いますが、記載するまでは多分大変だと思っておりますが、前例として、郵便の転居届の開示について総務省のガイドラインに記載して解決を図っているという事例が過去にはございます。
なお、被害者に情報が開示されると、被害回復はかなりはかどります。実際に被害者に情報を開示されたケースで、海外送金の情報を全部被害者の弁護士が追っていって、海外にどうやって送金されているのか、実態が明らかになったというケースがございまして、これは、次の次のスライドで御説明したいと思います。
3つ目の課題と記載しましたが、被害者が振り込まされた口座自体、これはどこから来たかという問題がありまして、これは、今、本当に警察とかでも対応いただいていますが、闇バイトとかで若者が売った口座、あと、外国人が在留期間満了後に帰る前のバイトとして口座を売ると、これが犯罪に利用されているのが実態です。
口座を売るのは犯罪になるのですが、検挙されている件数が実感としても大分少ないです。私も振り込まれた口座の名義人、何十人、何百人と訴えてきましたが、逮捕されていると聞いた事例は、本当にわずかです。実際に統計を見てみても検挙件数は3,000件、これは大分頑張っていただいていると思うのですが、実際凍結されている口座は5万件ということ、これは、凍結で、しかも消滅手続といって、その手続が始まった件数だけで5万件になっていますので、この対応自体も件数が多過ぎて十分とは言えないという現状になってしまっておりますので、何らかの対応が必要なのではないかなと思っております。
これも直近で、在留期間の満了した外国人の口座からの出金を、警察庁の要請に基づいて、金融機関が止めるということをやり始めていたりするので、これもどんどん対策をしていかないと、到底被害の予防に追いつかないのではないかなと思っております。
次のスライドで、先ほど、移転先の情報が被害者に開示されたケースで、海外への資金移転の流出経路を追った事例が、弁護団で幾つか報告されているということなのですが、少しややこしい話なのですが、御報告をさせていただければと思っております。
こちらの図にあるとおり、被害者のお金が転々とした後「移転先口座」と書きましたが、いわゆる収納代行と名乗る、日本国内の口座に移っているケースというのは幾つも報告されています。
これは、実は、海外に拠点があるグローバルな収納代行の日本拠点の日本法人の口座なのです。
ここの青矢印にあるとおり、日本法人に振り込まれたお金というのは、海外法人に内部勘定で即時に移転させて、後日、バルク送金しているということをやっています。
海外拠点に移ったお金が、海外拠点から詐欺の関係者、一番右にお金が流れるということになっています。
こういうケースの場合は、日本拠点の日本法人は、日本の銀行にも当然口座をつくりますと、その口座に入ったお金の真の受取人、これだと詐欺の関係者ですが、これは被害者からも見えないし、口座が開かれている日本の銀行からも見えない。
実際に、被害者側の代理人がこういう流れを負ったケースだと、海外のこれは、1つで月に何十億と流れているケースを見つけたりもしております。
このようなケースで問題になるのが、移転先である収納代行、日本拠点である日本法人に対して、これは詐欺に関与したねということで提訴した場合に、収納代行という日本法人は責任を否定して争ってきます。
具体的には、収納代行は規制がないものですから、収納代行である日本法人の義務の範囲に関して、代理受領であって為替取引に当たらないと。資金移動業者ではなく、犯収法の特定事業者でもないと。だから本人確認義務とか、うた取りの届出義務もないと、ほぼ何の規制もなく義務もないですよという主張をしてきます。
ただ、実際この図で見たとおりで、実際には、海外の拠点である詐欺の関係者、ここに日本の銀行口座を代理で開設させるようなサービスを提供しているという状況です。
この点、関連してなのですけれども、直近1月に出た金融審議会の資金決済制度等に関するワーキンググループの報告書では、問題点が議論されておりまして、クロスボーダーの収納代行については規制すべきと議論がなされていますが、まさにこのロマンス詐欺にも規制の必要性が非常に高いと言わざるを得ないところであります。
なお、ちなみにこのワーキンググループの報告書の趣旨からすれば、上のような図の事例の場合、詐欺サイトへの資金移転をしている場合は、そもそも債権債務関係が発生しない資金の移動ですから、為替取引として規制されるべきものではあります。
この収納代行の問題というのは、クロスボーダーのみならず、国内にも同様の問題がありまして、これは、後ほど御報告をさせていただければと思っております。
以上が、ロマンス詐欺関連の課題としてお話をさせていただきました。
続いて、サクラサイト・情報商材詐欺関連でお話をさせていただきたいと思います。
こちらについては、解決手法とか問題意識では、池本先生のほうから御報告がありましたので、重複しない部分だけお話をさせていただければと思っております。
今、25ページです。こちらのページから28ページは被害分類等の記載なのですけれども、池本先生の御報告でも触れていただきましたので、割愛をさせていただきたいと思います。
続いて、29ページ、これは決済手段の説明です。詐欺サイト、サクラサイトで使われる手段の説明ですが、クレジットカード、電子マネーの説明についても、池本先生のほうで御説明いただいた点とおおむね同じなので、省略をさせていただきたいと思います。
続いて、32ページ、サクラサイト、情報商材サイト系の運営者の責任関連ですが、これも詳細は省きますが、基本的には、サイト運営者の責任というのは、弁護団の裁判例の積み重ねで、ほぼ責任は認められるようになってきましたが、これも先ほどお話がありましたとおりで、運営者はすぐ逃げるので、実際の被害回復は決済手段から図らざるを得ないというのが被害の現場の実情ではあります。
そこでということで、決済に関与した者の責任ということで、被害回復を図っていく事例として、まずは口座提供者、これも収納代行と言っていいのか微妙なところですけれども、この事例を御紹介いたしますと、先ほどロマンス詐欺については、収納代行の事例を御紹介しましたが、これは、サクラサイトについて収納代行を行っていた事例の裁判例の御紹介です。
この裁判例は、収納代行業者もひどくて、代表者以外の従業員もいない、口座凍結の可能性を認識した上で本人確認もしないままで、サクラサイト運営者に口座を提供して、1日に何回も何回も引き出していたという事例で、これは、さすがに口座提供者の責任を認めますよということなのですが、この認定も先ほどのプラットフォームの責任と近くて、運営者と競合して作業をやったという認定になっております。
続いて、電子マネー発行会社の関係ですが、これは、サクラサイトに決済手段を与えたことについて、加盟店調査義務が争われた事例ですが、こちらは、東京の弁護団でやりましたが、池本先生のほうで御紹介していただいたとおりですので割愛させていただければと思います。
また、クレジットカードの決済代行業者の加盟店管理義務についても、先ほどの池本先生の御報告どおりであります。
同じくプラットフォームの責任について、これも御紹介いただきましたので割愛させていただきたいと思います。
39ページのところまでは、現場でどういう被害救済の実務をしているかと、詳細にフローを書きましたが、時間がないということと、もう既に触れていただいている部分と重複するので割愛させていただきまして、飛ばす部分が多くて恐縮なのですが、これらが前提として、実際に幾つも被害回復の現場で働いている身として、現在の課題ということで3点述べさせていただいております。
1つ目が、海外の決済代行の課題ということで、これは、御紹介がありましたが、御質問にもありましたとおり、サクラサイト業者は海外、かつ、決済代行業者は海外という場合、これは訴訟の提起が非常に困難で、カード会社経由の交渉等以外に解決手段がないという現状です。
サクラサイトに利用される海外の決済代行業者は、ほぼ特定されているのです。ここだと名前を言えるぐらい特定されていますと。これが排除されずに残っていますので、現在はイシュアーからの申告という自主ルールで、GBPPと先ほどありましたが、任せることになっていますが、運用が適正になされていないのであれば、制度的な措置をせざるを得ないのではないかというのが意見でございます。
2つ目、電子マネーについてということで、これは、決済代行業者の法規制はないのですけれども、決済代行業者が被害者に対して適切に対応してくれないということで、被害回復に困難を生じているということが幾つも報告されています。
典型的な、本当に具体的なものとしては、被害者さんがサクラサイトとかで電子マネーを使った場合に、あれは紙なので、控えがないと、控えを保存していない場合に、被害回復のためにその詐欺サイトで、被害者がどの電子マネーを使ったという情報、これが必要なのですけれども、決済代行業者は、これを全部持っているのですね、ただ、これの開示を求めたとしても全然対応しない。
決済の詳細が分からないと被害回復につながらなくて、意図的に決済代行業者が情報開示を拒むことで被害回復が困難になっているという現状がございます。
3つ目として書かせていただきましたが、電子マネーのチャージ・移転の問題というものがございます。
これは、具体的な問題なのですけれども、これまでサクラサイト等の被害事案では、コンビニで発売される電子マネー、これが利用された場合、決済代行業者が間に入っていて決済代行業者との交渉で、被害回復されるという事案も多々ありました。
ただ、コンビニで発売される一部電子マネーについて、残高引き継ぎというのが可能になっています。
一番下に記載しましたが、残高引き継ぎというのは、移動元の電子マネーIDと移動先の電子マネーIDを指定することで、移動元の電子マネーの残高を送金することが可能になると、端的に言えば、電子マネーで送金ができるという仕組みです。
問題としては、当該電子マネーが、引き継ぎ先のIDについて、本人確認をしていない。法律上も義務づけられていない。さらに、その利用先、オンラインゲームとかであると決済先も本人確認をしていないので、結果、被害回復ができないという事例が増えているということがあります。
これは、資金移転にもかかわらず、端的に言うと、本人確認がなされていないために被害回復ができないという問題であります。
ほかの決済手段における規制が厳しくなっていけば、緩い規制に当然悪いやつらは行くわけです。この電子マネーも利用されることが予想されていて、法規制も一応あります。令和4年の割販法改正で、高額電子移転可能型前払い式支払手段として、ここにあるような基準の場合、本人確認義務があります。
ただ、電子マネーの譲渡によって決済が行われた場合、総額で高額となるという被害でも、少額の電子マネーによって多数回決済がなされて、それが複数の者に転売されていくと、この規制に該当しないということで、本人確認は義務づけられない可能性がありますので、本人確認をより厳格にしないと、今後の被害回復が困難になると言わざるを得ないのかなと思っているところです。
少し時間があれですが、すみません、あと、副業・セミナー詐欺について見ていきたいと思いますが、これは、第2回、第3回いずれでも御報告がありましたので、短めにしたいと思うのですけれども、ただし、これは弁護士への相談件数も、近時、激増しておりますので、一言だけ触れさせていただきたく、スライドをつくりました。
ですので、簡単に、問題意識としては、借入れの点が1つです。
既に何度か御指摘がありましたが、同時に借入れをすることで、信用情報の登録のタイムラグをついて、多額の借入れをして被害金額が増えるという問題があります。
さらに、この類型でも、収納代行が本当によく利用されるというのが典型的な手口としてございます。
最後に、駆け足で申し訳ないのですが、大規模投資詐欺被害という類型でテーマ設定をさせていただきました。
これは何かというと、ロマンス詐欺等との違いが、これは大規模な組織で、国内で勧誘して、国内の収納代行の口座に支払われるという類型になります。
問題としては、その運用母体が海外であると、国内では勧誘のみして、収納代行経由で金を送っているという主張の場合、海外の運用母体というのに対する対応は非常に困難なので、被害回復しようと思った場合には収納代行を相手として訴訟するということで取り戻しを図るのですけれども、問題は、直近でも敗訴している事案というのが幾つもありますと。
このケースは、収納代行という主張が問題となる事例が幾つも報告されています。
最後に、収納代行の被害現場目線の分類分け、法的ではないです、事実上のものです。
1つ目が、仲間内で会社名義を貸すパターン、副業セミナー詐欺のパターンに多くて、自社の口座が凍結されたので、仲間内で合同会社とかをつくって口座を貸しますよと。これは、ほかの収納代行の顧客を有するわけではないということが1つ特徴的な点です。
2つ目が、いわゆる業務として実施されている収納代行、先に御紹介したロマンス詐欺の事例、二次移転先に使われるケースが多くて、日本拠点の銀行口座から海外の首謀者らに海外送金されると。
3つ目、これが日本国内で勧誘・収納代行をして、海外運用先と称する先への送金代行です。
これが、このテーマで報告させていただく、近時、非常に事例が多くて、捜査機関の方も海外が絡むと、多分捜査になかなか難があって、立件が1000億とかの被害であっても、詐欺ではなくて、国内の勧誘者は、金商法の無登録営業にとどまって、非常に軽い罰則と、規制が緩いと犯罪者が得をするという典型的な事例なのかなと思っております。
収納代行のリーディングケースということで、東京高判を紹介しておりますが、これは、送金代行について、為替取引に当たらないと判示したもので、これは、第2回に山田先生に御紹介いただいたとおりでございます。
最後に、直近の収納代行の事例が否定された事例の御紹介ということで、令和6年、去年の東京高裁の裁判例です。
判示事項のみの御紹介になるのですけれども、収納代行業者というのは、原因関係を把握することが困難であり、送金が金商法に違反する行為または投資詐欺に係るものであるか調査確認義務を負わないという判示をしています。
なお、事例と直接関係はないのですけれども、これに関連するものとして、金融審議会の資金決済制度等に関するワーキンググループ報告書、これはクロスボーダー収納代行の該当性について、収納代行業者が金銭債権を有する債権者からどのような依頼を受けているかによって判断するとしていますから、クロスボーダー収納代行については、今後は規制の対象となっていくような議論がなされていくはずだと思っております。
ただ、先ほど分類で見たとおりで、国内での収納代行での詐欺事例というのも多数存在するものですから、クロスボーダーの収納代行のみならず、国内での収納代行についても、詐欺に利用されると、法的な行政規制もない、かつ、ここで見たような裁判例が通用するとなると、今後も国内においては、詐欺に収納代行を利用することで、円滑な詐欺の被害金の受取りが実行できてしまうことになってしまうのではないかと懸念しているところではございます。
なお、関連して、関東弁護士連合会からも収納代行については、クロスボーダーのみならず、資金移動業として規制すべきという意見書を昨年提出しているところでございます。
以上、すみません、少し駆け足になってしまいましたが、私からの御報告は以上とさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
○坂東座長 どうもありがとうございました。
大変多面にわたる議論を詳細にお話しいただきまして、ありがとうございました。
それでは、葛山委員のこの御発表も含めて、意見交換に入りたいと思います。御質問、御発言のある方は、遠慮なく御挙手あるいはチャットでお知らせいただいて御発言いただければと思います。よろしくお願いします。
瀧委員、御発言いただけますでしょうか。
○瀧委員 どうもありがとうございました。
私の過去の身元を明かすと、新経済連盟でも政策提言をしていた立場ですので、過去に収納代行が、例えば、ヤマトさんみたいな、ある意味、昔からある収納代行と、今いただいたような悪辣なケースをどうやって線引きできるのかというのを、私なりに悩みながら、今日ここに来ている次第です。
1つは、金額とか、お金がどう向かっているのか、みたいなところかと思うのですけれども、今一度その議論をリフレッシュし切れていないので、善良なと言ったら何なのですけれども、類型ごと資金移動業に入れようとすると、物すごい反対が出ることは確実なときに、何だったら線がきれいに切れるのだろうかと、きれいな線はないのかもしれないですけれども、その辺のアイデアをいただけると幸いでございまして、いかがでございますか。
○坂東座長 葛山委員のお考えといいましょうか、今の実務のところからの御経験の上で、お考えになることというのは、何かございますでしょうか。
○葛山委員 ありがとうございます。
すみません、今日は問題意識だけを持ってくるということで、こうやって規制したらいいのだというところの提案までは、全然考えていなかったのですけれども、御指摘のとおりで、もともとヤマトさんとかの関係とか、まともな業者さんが使っている収納代行という形と、今回私が御紹介した極悪な収納代行と全く事例が違っていると思っております。
そのときに、私の意見としても、まともなところというのは、私個人としても非常に便利に使わせていただいているので、その収納代行について規制する必要があると思っていないのです。
そうすると、どこで切り分けていのかという議論が、なかなか今の段階ではできていないのではないかというところがございますので、そこをどうやっていったらいいのかというところを、今後検討していくという部分でしか、今のところ考えていません。
ただ、1つあるのが、よく分かりやすいところとしては、その口座を提供しているというところ、この形については、割と事例として分かりやすいのかなというところがあったりしますので、そこは、まず規制する必要があるだろうと。ただ、それで尽きているのかというと、それだけではないというところが幾つかあると思いますので、そこも含めて、この場合については、ひどい使われ方をしやすいところがあるのかというのは検討していく必要があるのかなとは思っています。
逆に、この辺りは、ほかの先生方からも御意見いただいて、私としては、こういう事例で広く使われていますと、だからこうやって規制してほしいというよりは、これについてどうやって規制したらいいのかと、逆に規制しないでほしいという意見について御意見をいただければありがたいなと思って、今日は事例を持ってまいりました。
すみません、お答えになっているか分からないのですけれども。
○坂東座長 ありがとうございます。
もし、追加があったら御発言をいただければと思いますが、キャッシュレス決済に、これは全て共通のような気もしますが、便利な仕組みを悪用する人たちがいて、便利な仕組みのラインと、それを使って、様々な問題が生ずるというところのラインとの境目というか、その辺りは、本当に捕まえるのが難しいなと、改めて感じさせられるところではあるなと思っております。
ただ、どうやらキャッシュレス決済の問題を考えるときに、これをどう考えていくかというのは、確かに大きな、私たちにも課せられた宿題なのかなと思います。
ほかに、この点でも結構ですし、それ以外の御質問等でも結構ですが、御発言があれば御発言いただければと思います。
柿野先生、よろしくお願いします。
○柿野委員 ありがとうございます。
詐欺の手口が具体的に分かって、非常に有益な御報告でした。ありがとうございました。
今、お話をお聞きしていて、これは、池本先生の御発表にも通じる部分なのですけれども、日本国内だけで起きている問題なのか、あるいはこれは海外も含めて同じような問題が起きているのかという観点が非常に気になりました。
国内だけであれば、国内のルールの整備というところが非常に重要にもなってくると思うのですが、これだけ海外との関わりが強い中で、国際的なルールの検討というか、そういったことも併せて非常に重要なのかなということを考えたときに、質問の1つ目は、こういったトラブルが、国内だけの問題なのか、海外にも同様に起きているのかということと、あと、国際的なルールという観点で何か議論が進んでいるのかどうかということについて、教えていただけたらなと思いました。
以上です。
○坂東座長 ありがとうございます。
池本先生でも葛山先生でも、いずれでもありかと思いますが、御意見も踏まえて御示唆をいただければと思いますが。
○葛山委員 ありがとうございます。
では、先に私のほうからお話しさせていただきますと、被害について、1つ目にいただいたのが、国内だけなのかという話ですけれども、全部を把握しているわけではないのですが、ロマンス詐欺の関係で言いますと、海外でも同じようなことが起こっていると。なぜ知っているかというと、今、私は偽広告を出したプラットフォームの責任ということを検討しておるのですけれども、その関係で海外でどういう状況なのかというと、同じような被害が海外でも起きているのです。海外で訴訟事例とかがあって、偽広告、名前を出したらあれなのですけれども、具体的な大手のプラットフォームがあって、そこで著名人の偽広告を出して詐欺サイトに誘導すると。これは、海外でも結構はやっていて特定のプラットフォームは、これちゃんと排除していないということで、オーストラリアとかでは、当局が、それについて問題意識を持って、訴訟的なことをやっていますし、ほかの国でも起きているということなので、国内だけの問題かという点については、海外でも被害事例はいっぱいありますというのが1つ。
2つ目としては、国際的なルールづくりについては、民事的なことは、私は御存じ上げないのですけれども、いろいろと調べていった中で、にわか知識で申し訳ないのですが、一応海外と連携しようというのは、刑事司法的な部分であって、捜査の関係ですね。海外のインターポールを経由して現地の警察と連携していくという仕組みがございまして、これは、「I-GRIP」と呼ばれているものなのですけれども、日本の警察のほうからインターポールを経由して海外の警察当局に連携をして、そこから海外の金融機関等に指導とかをしてもらうという仕組みがあるということは伺っております。
ただ、これが少なくとも私は被害現場で、実際にワークしたということは聞いたことがないので、仕組みとしてはあるものの、これが生かされていないと、例えば、私、現場の所轄の警察とかに相談に行くのですけれども、「I-GRIP」と言っても、「何ですか」となるので、そこがもう少し、動かすのが難しいのか分からないのですけれども、被害回復につながる仕組みになってほしいなというのは、個人的には思っております。
私の把握しているところは以上です。
○坂東座長 ありがとうございます。
池本先生、追加は何か、先生の御意見とかはありますか。
○池本委員 私のほうからも、本当に感想的なことにとどまるかもしれませんが、少し発言をさせてください。
これは、先ほどの瀧委員からの御発言にも重なるのですが、例えば、宅配業者の収納代行とか、あるいはコンビニ収納代行とか、法規制をするというときに、莫大な正常な取引全部を含めて監視していくということは、それは不可能であるというのは、先ほど電子マネーに関する東京高裁の判決も言っているように、膨大な数の加盟店の多種多様な商品役務を事前にチェックすることは、事実上不可能であると言っています。
つまり、そういう全部を監視しなくてはいけないというルールを想定すると、とんでもない、逆に利便性まで損なうおそれがあるということで、強い反対も出てくるでしょうし、費用対効果の問題が出てくると思います。
それに対して、例えば、苦情の適切処理義務には伝達義務という言葉にあったように、現実にこういう被害があったということを聞いたら、それを伝えておしまいではなくて、加盟店と契約している場合に、きちんと調査をして、その回答を得ると、それを報告する、その苦情が発生した案件に限っての対処で、それできちんとしたものがなければ、その事業者との関係ではキャンセルを要求する、あるいは加盟店契約の解除も含めて、悪質な加盟店とつながってやっている可能性の高い事業者をどう排除するかということに絞った、何かルールをつくることによって、健全な事業者も一定の業務負担はかかるけれども最小限のものになると、何かそういうことを考えていく必要があるのではないかということと、海外を経由するというものについては、やはりその責任の所在との関係を考えるので、もう一つ加える必要があると考えております。取りあえず、現時点の感想です。
○坂東座長 ありがとうございます。
何かとてもいいヒントをいただいたような気がしますが、せっかくの機会ですので、このことに限らず、ほかの御質問や御意見等がありましたら、お願いしたいと思います。
山本先生のあと、また、森下先生にお願いしたいと思います。
山本先生、お願いします。
○山本委員 ありがとうございます。
簡単な質問が1つと、あとは、ほかの委員、先生方がおっしゃられた方と、コメント的な内容を2点述べさせていただきたいと思います。
まず、質問といいますか、感覚としてなのですが、暗号資産交換業といいますか、それが、要はウォレット業者に流れていって、いろいろというような事例というのは、結構現場でもあると思っていまして、いわゆるブロックチェーンによるトレースが完全にできるテクニックが、技術的にはできるわけですね。ところが、それをどこまでやるか、そういうビジネスモデルみたいな、やる価値があるのかということもあるのかと思うのですが、海外ですと、よく最後までトレースをして犯人を捕まえるという事例を聞くのですけれども、国内の判例などで、特に最近、サイバー捜査とかが、その辺をどれぐらいまで活躍されているのかとか、その辺の実態を御存じだったら教えていただきたいなというのが質問でございます。
どうしましょう、コメントも続けて述べたほうがよろしいですか。
では、それと、収納代行等、瀧委員がおっしゃられた点、私も全く同感でして、ぼんやりと考えていることではございますが、やはり用途類型によって幾つか分類していく必要があるのではないかという考えがあるのです。
収納代行は、もともとは、公金の収納をやるためにコンビニへ現金を持っていって払うというところから始まっているはずですので、その原則からかなり逸脱といいますか、発展した中に、やはりいろいろ悪用される余地が生まれたと思いますので、実態として、どういう用途で使われているのが、こんなサービスがあるというのが、私も幾つかの事例を接して、これは、ちょっとなと思うのと、これはしようがないなと思うのと、幾つかレベルがあるように思っております。そういう類型整理ができるかどうかというのは分からないのですが、してみたいという思いがあるということが、私のコメントの1つです。
もう一つ、これは池本先生も、葛山先生も触れたところなのですけれども、例えば、決済代行会社であれば、クレカの場合電子マネーがある、収納代行もそこに入ってきて、プラットフォームが入ってきている。
私から見ますと、全て販売者に資金を与える立場にある事業者と見えるのですね。それが、販売者という加盟店という地位で見るのか、単なる販売者なのか、個人なのかというのは分からないのですが、やはり一度、販売する者に対して資金を与えるという行為を加盟店と見るのかはともかくとして、そこに対する整理というのも必要ではないかと思っておりまして、要は、プラットフォームも、収納代行も、決済代行も1つの行為として見れば同じことをやっているように見える。それをいろいろ複雑な分かれた制度の中にうまくはめ込んでいくところが、テクニカルな難しさかと思うのですが、もう一度、プリミティブな部分というか原点に返ると、そういうところをもう一度整理してみる機会があってもいいのかなと思いました。
すみません、それをやると言われたら大変なのですけれども、そういう共有ができるかなという意味で意見を述べさせていただきました。
以上でございます。
○坂東座長 ありがとうございます。大変貴重な御意見かと思いますが、御質問の部分について、両先生、どうでしょうか。
○葛山委員 ありがとうございます。
御質問いただいたところ、1点目のところ、暗号資産に関して、ブロックチェーンのトレースなので、これは捜査機関も一定程度頑張っていただいているのではないかと。国内で追える事例があるのかというお話なのですけれども、追うことは技術的にはできて、有償の非常に高いツールとか、これは一般人でも契約しようと思えば、お金さえあればできるという状況でして、捜査機関がやっているかという点については、捜査機関のほうでは、これはきちんとやっております。
捜査機関のほうで追ってもらって、結果、やはり海外に行っていたとか、追った結果、実は一部国内に戻ってきましたという事例もたまにあるのですよ。追った結果、国内に戻ってきましたねと、私も技術的に自分で追ったりするのですけれども、戻ってきたお金はどこに行っているかというと、結局被害者に行っているのですよ。ほかの被害者の撒き餌として、暗号資産の一部、5万とか10万とかいっていると、そういう場合には、送金先は特定できて、どの人かと分かるのですけれども、犯罪者ではないのですね。結局のところ追えるのですけれども、海外に行っている、この国のどこの交換所に行っているというのを追えたとしても、それ以上警察としても、捜査権の問題もございますから、なかなか何もできていないというところなので、刑事的にも技術的なところで頑張ろうとしているのですけれども、被害回復ができたという事例はほとんど、私は少なくとも聞いたことはないというのが現状です。
あと、2点目、3点目でいただいた点については、私も本当に同意見で、結論、販売者、加盟店と言われるところにお金を流す仕組みで、これを送金していたのですね。これを加害者、犯罪者のほうがうまく利用していて、穴があるところを使っていっているので、そこの穴を塞いでほしいという思いは、本当に強くあります。
あと、少し長く話して申し訳ないのですけれども、一番最初に御質問をいただいた点に関して、収納代行の規制ですね、これは、関弁連、関東弁護士連合会のほうも、一応こういう形で規制したらいいのではないかということを申し上げておりまして、何かというと一定程度類型化して社会経済上、一般消費者に認知されてトラブルになっていない類型、ここは規制から外したらいいのではないかという意見を申し上げておりますので、まさに山本先生のほうに御指摘いただいたのと同じ形ですが、具体的にこれをやろうと思ったら相当大変だなというのも同感でございます。
○坂東座長 ありがとうございます。
池本先生、何かコメントはございますか。
○池本委員 池本です。
暗号資産について捜査当局は、どこまで追っているのかということについて、こういう経験があります。給与ファクタリング、給料の前貸しとして、後で支払日、翌月には、非常に暴利をむさぼるという給与ファクタリングの暴利業者がいて、それを特定適格消費者団体として、これは公序良俗に反するのだから、その契約者には全部返すべきだと、なかなか全部は追えないけれども、まず、仮差押えした時点では、ごくわずか、数百万ではありますけれども、それを押さえて、訴訟を提起した翌月に、警視庁がその業者の関係者を逮捕しまして、これで保全しておいてくれれば、相当額回収できて、それを、この特定適格消費者団体の集団的回復制度で配当するという先例になるのではないかと、喜んで検察官のところに会いに行ったのです。
そうしたら、ほとんどがすぐに暗号資産で流されていて、保全できていないということでした。結局、判決は、逮捕されたので、もう争うことなく判決が取れたのですが、事前登録された何十人かの人に、仮差押えで保全した分を辛うじて経費を、それぞれの人の参加費は若干上回る程度の配当はしたのですが、それ以上のことはできなかった。
つまり、捜査当局も暗号資産で意図的に流されたものについては、もう回収できていないという例を、目の当たりにしたということがありました。
それから、プラットフォームの問題も、まさに取引の場、個人が自由に検索できる、あるいは初めて事業をやろうとする人もそこへ出品して、取引に参加できるという便利な制度です。
その広告を出したり、入り口のところで全件審査せよと言ったら、これはとんでもない話になりますし、事業者は基本的に海外なので、そこを基準にして規制を考えるというのは現実的ではないと思いますし、広告規制というと、これは表現の自由の問題もありますから、そこは慎重にならざるを得ない。
それに対して、決済というのは、現実に取引をして、その代金を移動させるところですから、言わば、取引の最後の段階で、しかもそれを全件調査ではなくて苦情が発生したものについて、現実に加盟店を抱えている決済代行業者などがぶら下がっているのがほとんどですから、そこに連絡をして調べさせるとして、本当に規制しなくてはいけない人と、そこへ取り次ぐ役、そして、不適正なところは排除するという、加盟店契約を切る役という役割分担の中で必要最小限度の規律をどう線引きをするか。
私は、幾つかの決済手段、特にそういうものが組み合わさっている現在の中からすると、そういう仕分けをする中で、何かルールが見出せるのではないかと思っています。まだまだ、もやもやっとしたところではありますが、取りあえずの意見です。
○坂東座長 ありがとうございました。
我々が、なぜ決済というところに焦点を絞っていくのかということとか、それのアイデアについて、いろいろな議論が、ここから始まるのかなと思います。
森下先生、そうしたら、御質問をお願いしてよろしいでしょうか。
○森下座長代理 すみません、このチャットは、多分、前のが残っていたのだと思うのですけれども、ただ、せっかく御指名をいただきましたので。
○坂東座長 申し訳ありません。
○森下座長代理 1点、途中でもお話があったと思うのですけれども、今までの為替規制は、お客さんから預かったお金を、安心確実に届けること、破綻させないというところにフォーカスをしていたものが、今日のお話というのは、全く違う観点からの利用者の保護ということが問題になっていたと思うのです。
お伺いしたいのは、先生方が実際の被害者の救済に当たる上で、使い勝手がいい、有効であるとお感じになられているツールがあれば、それを教えていただきたいなと思いました。
今日のお話の中だと、例えば、資金の行き先の情報が出てこないだとか、あるいは最終的にお金を凍結してもらえないだとか、あるいは加盟店との取引を切ることが難しいとか、いろいろな課題のお話があったと思うのですけれども、これから新しい規制の仕方を考えていく際には、例えば、収納代行は為替に当たりますかといったようなタイプのイエス・ノー・クエスチョンよりも、もう少し本当に必要な規制のツールというものを考えていかないといけないと思うのです。
そう考えたときに、今、実務で、これは使えるとお感じになられているものがあれば、ぜひお話をお伺いしたいなと思いました。どうぞよろしくお願いいたします。
○坂東座長 よろしくお願いします。
○葛山委員 葛山です。ありがとうございます。
いろいろと問題点を御指摘いただいたのですけれども、使えるツールということで、やはり裁判なのですね、民事訴訟をやるとなったときに、今、先ほどの資金決済法の話とか、割販法の話、加盟店管理義務も含めてなのですけれども、あくまで行政規制なのですね、最終的に裁判で勝たなくてはいけないというときは、民事上の義務として措定しなくてはいけないというときに、何が使えますかというと、やはり裸な民法の信義則上の義務はしんどいのですよ。
そうなったときに行政規制がありますと、行政規制で加盟店調査義務がありますとか、本人確認義務がありますと、そこの義務を果たしていれば、これが見抜けたねということになると非常に使いやすい。
そういう意味で、最終的に裁判で勝つためには、民事上の義務、信義則上の義務を基礎づけるような行政規制がほしいと。
こういうことをきちんとやってくれれば、見抜けたのに見抜けなかったと、それは、あなたの責任ですねというためのツールがほしいというのが、抽象的ですけれども、そこが、まず大きな視点としてはございます。
○池本委員 池本ですが、よろしいでしょうか。
○坂東座長 お願いします。
○池本委員 私も、まず、今の指摘は全く同感です。クレジット決済の苦情伝達義務、加盟店調査義務のところでもお話ししましたが、取消事由に当たるような苦情の場合は、1件であっても直ちに伝達せよ、それをまた直ちに調査せよと、要するに、具体的な義務発生要件が規定されている規律があれば、事業者も、この場合は動く必要がある、この場合は必要ないということが、事業者の行動の規範としても見えやすいですし、民事的な責任を問うときにも使いやすいというのがあるのではないかと思います。
もう一つは、これは、葛山さんが先ほど来おっしゃっていた情報開示だと思います。取引主体の情報も開示しないというのは論外ですし、このお金をどこへどう動かしたのかという銀行もですが、それ以外の資金移動部分の先を開示してもらえれば、そこに向けて、次の手が打てるということもあります。そういった情報開示のところと、2つではないかと私は思います。
以上です。
○森下座長代理 ありがとうございました。大変勉強になりました。
○坂東座長 ありがとうございました。
森下先生、大変失礼しました、申し訳ありません。オンラインでのやり方で、駄目だなと反省をしておりますが、そろそろ時間も参ったのですが、あと、お一人、お二人から御発言をいただきたいと思います。
黒木先生から、オブザーバーですがと、御遠慮深く質問をさせていただければということです。
どうぞ御遠慮なく御質問をいただければと思います。黒木先生、お願いします。
○黒木委員長代理 ありがとうございます。それでは、葛山委員の23ページ内容について質問したいと思います。基本的に、この種の事案では組織的犯罪処罰法の対象となる行為になると考えています。そうなると、収納代行の件については、本来なら犯罪収益移転防止法(犯収法)の話が出てくるはずです。
まず第1点として、先ほど言及された犯収法における民事効をどう考えるか、また犯収法違反の場合は、基本的に行政規定ですから、ここから信義則上の義務を読み取ることができるかについてのお考えをお聞きしたいです。 第2点として、資料に書かれている「資金移動業者ではなく、犯収法の特定事業者でもない」というご主張についてです。仮に犯収法上の特定事業者に資金移動業者や収納代行業者を指定したとして、先ほど言及された信義則などとどのように関連づけることができるのでしょうか。
この2点について教えていただければ、23ページの内容をより理解できると思います。
以上です。
○坂東座長 お願いいたします。
○葛山委員 葛山です。厳しい御質問をありがとうございます。
難しい御質問なのですけれども、行政規制が、民事効があるのかというところについては、もちろん直接はないと。ただ、行政規制を基に、民事上の義務を措定するというのは、よくあるやり方で、先ほども池本先生のほうから御紹介がありましたけれども、電子マネーの決済、電子マネーに関してのガイドラインの規定があって、そのガイドライン上の義務を基に東京高判も、最終的には負けましたけれども、規範自体としては、民事上の義務があるという形で義務の措定を認めてくれています。
これは、従前からある議論ですけれども、行政規制の立法の趣旨が何なのかと、被害者救済の趣旨にある場合は、それは民事効につなげやすいですねというところで、割販法の加盟店調査義務についても行政規制ですけれども、これは民事効があるという形でよく被害弁護団では主張しているところではございます。
あと、2点目が何でしたか。
○黒木委員長代理 つまり、収納代行業者が主張している点ですね。彼らは「資金移動業者ではない」と主張していますが、仮にこの業者が特定事業者として認定された場合、どのような影響や考慮事項があるでしょうか、ということを教えて頂きたいという質問です。
○葛山委員 ありがとうございます。
これも同列の論点だと思うのですけれども、行政規制とか、それぞれについて、本人確認義務とか、取引の調査義務というのが入りましたら、それを怠っていたということで民事上の義務というのを主張することができるのですけれども、これを必ず裁判官が認めてくれるかというと、そういうものではないというのは御指摘のとおりだと思っていて、そこについては、裁判例を幾つも積み上げていくしかないのですけれども、ただ、裸で、何度も申し上げていますけれども、信義則上の義務を措定していくというのは結構しんどくて、実際、何でここを問題点で取り上げたかというと、裁判の中でお互い準備書面を出すではないですか、そこで、行政規制がないから民事上の義務もないという形で相手方は主張してくるわけです。
そうなったときに、こちらとしては、それに対する反論材料がないので、規制があることによってより戦いやすくなると。それだけで勝てますかというと、そうではないのですけれども、勝ちやすくなるというのが間違いなくあるので、そういう意味で規制が入ってくれると、現場としては大変ありがたいという趣旨にはなって、それで全部解決するというわけではないのですけれども、解決の糸口がほしいというのが実態ではあります。
伝わりますかね、もし分かりづらい点がありましたら、御質問いただければと思います。
○黒木委員長代理 なるほど、理解しました。しばらくの間は、多くの敗訴判決の中から少しずつ勝訴判決が出てくるのではないかという状況なのですね。犯収法の適用対象とすれば、一度に全てが覆るということは現実的には想定されていないということも分かりました。ありがとうございます。
○葛山委員 そうですね、ただ、敗訴判決の山かというと、頑張っている弁護士もいっぱいおりますので、徐々に勝っていきたいとは思っております。
○黒木委員長代理 ありがとうございます。
○坂東座長 大変な御苦労のお話で、ただ、今のお話を聞いていると、行政規制のところにある1つのルールが民事効にどのように影響を与えるかという議論が、どうも土台の議論としてはとても大切で、我々も消費者法の領域で、そういうことをどう考えていくかということを、学者も考えなくてはいけなくて、谷本先生とか、柴田先生からも御意見を伺いたいところなのですが、次回以降に、この議論はきっと尾を引くだろうと思いますので、そこに期待をさせていただきたいと思います。
実は、もうそろそろ予定の時間が参っております。この辺りで、本日の議論は終わりにしたいと思いますが、どうしてもという方がおられたらあれですが、御協力いただけるということでよろしいでしょうか。
山本先生、どうぞ。
○山本委員 すみません、今日の議題ではないのですが、2回前に宿題をいただいていた答えを、前回時間がなくてお答えしていない件がありますので、それを少し触れさせていただいてもよろしいでしょうか。
○坂東座長 はい。
○山本委員 要は、キャリア決済で大量に金額がかさんでしまったときに、通信料とキャリア決済の金額を分別できないというのは問題ですねというような文脈の中に、いや、結果的に通信料が不払いになってしまって、不払者情報交換制度というところに登録されるという御指摘があって、それの対象となる事業者、そこに登録してしまうような事業者はどこですかと、これは、不払者情報交換制度というところへ検索をかけていただくと一発で出てくるので分かると思います。
まず、大手の通信事業者さんと、ですから、4社、5社ですね、それに加えてMVNOという通信回線を自ら持たずに大手から仕入れて販売して中間にいる事業者、それの原則全てが登録をしておりましたので、全体でいうと、格安SIMの事業者さんも含めて登録をされておりました。その確認をしましたことを、すみません、宿題の答えとしてお答えさせていただきました。
すみません、大変失礼いたしました。最後に申し訳ありません。
以上でございます。
○坂東座長 ありがとうございます。
大変貴重な情報だと思います。
それでは、本日の議論は以上にとどめたいと思います。
池本委員及び葛山委員におかれましては、大変貴重な情報をお教えいただきまして、本当にありがとうございました。
また、委員の皆様におかれましても、それをより具体化して、今後の議論に進めていくための活発な御意見を多数いただけたと思います。
本日の御議論も踏まえまして、次回以降も継続的に議論をしていきたいと考えております。
≪3.閉会≫
○坂東座長 それでは、最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。
○江口企画官 本日は、ありがとうございました。
次回の会合につきましては、確定次第、御連絡させていただきます。
以上です。
○坂東座長 ありがとうございました。
それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきたいと思います。大変お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございました。次回以降も、どうぞよろしくお願いいたします。
(以上)