第25回 消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会 議事録

日時

2025年6月13日(金)10:00~12:38

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

出席者

(委員)
【会議室】
沖野座長、山本隆司座長代理、小塚委員、二之宮委員、野村委員
【テレビ会議】
石井委員、大屋委員、加毛委員、河島委員、室岡委員
(オブザーバー)
【会議室】
鹿野委員長
(消費者庁)
黒木審議官、古川消費者制度課長、原田消費者制度課企画官、消費者制度課担当
(事務局)
小林事務局長、後藤審議官、友行参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    取りまとめに向けた検討③
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1.開会》

○友行参事官 定刻になりましたので、消費者委員会第25回消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会を開催いたします。

本日は、沖野座長、山本隆司座長代理、小塚委員、二之宮委員、野村委員には会議室で、石井委員、大屋委員、加毛委員、河島委員、室岡委員はテレビ会議システムにて御出席いただいております。

消費者委員会からは、オブザーバーとして、鹿野委員長に会議室にて御出席いただいております。

配付資料は、議事次第に記載のとおりでございます。

一般傍聴者にはオンラインにて傍聴いただき、報道関係者のみ会議室で傍聴いただいております。議事録につきましては、後日公開いたします。

それでは、ここからは沖野座長に議事進行をよろしくお願いいたします。


《2.取りまとめに向けた検討③ 》

○沖野座長 ありがとうございます。

それでは、本日の議事に入らせていただきます。

前回、前々回の専門調査会におきまして、取りまとめに向けた検討として、報告書の素案について議論を一通り終えることができました。

また、前回の専門調査会の最後に、報告書案の準備に当たって追加の御意見があれば事務局までお寄せいただくこととし、事務局から御案内しておりましたところ、数名の委員から御意見を頂戴しております。

本日は、このような素案についての御議論及び追加の御意見を踏まえて、事務局において報告書の案を作成いただきましたので、この案について御確認・御検討いただきたいと思います。

まずは、消費者庁より本日の配付資料について御説明をお願いいたします。

○原田企画官 沖野座長、ありがとうございます。

消費者庁消費者制度課企画官の原田です。

前回までの素案に基づく御議論や、その後に事務局にお寄せいただいた追加の御意見を踏まえまして、報告書案を御用意しました。専門委員の皆様には事前に資料をお送りしており、時間の関係もございますので、素案からの主な修正点につきまして、参考資料を基に御説明いたします。

まず、報告書全体を通じて、広く関係者に報告書の趣旨を理解していただく必要があるといった御指摘を踏まえまして、全体としてより分かりやすくなるよう、文章の構成や表現を整理しました。片仮名用語や専門用語につきましても、可能な限り説明を加え、具体例を追記する、相互参照を明記するなどの対応を行いました。

次に前文について、1ページにタイトルとして「前文」と入れ、文章の構成や表現を整理しております。具体的には次のとおりです。

1ページの第3段落、10行目ですが、素案での消費者の脆弱性の定義のような書きぶりを改め、その前までの文章とのつながりが分かるように修正しております。

次に第4段落、13行目ですが、前後のつながりが分かるように記載内容を整理しました。

次に第5段落、25行目以下ですが、パラダイムシフトに関する記載を整理しました。2ページ2行目から、近代法的な考え方からの根本的な転換を基軸として、既存の枠組みに捉われず、抜本的かつ網羅的に消費者法制度のパラダイムシフトを進める必要があるとしております。

その上で、前回までの御議論を踏まえまして、パラダイムシフトを進めるに当たってのアプローチとして3点あることが分かるように、第1、第2、第3という形で整理をしております。その上で、3ページ13行目にまとめを追加しております。

さらに、3ページ22行目にグラデーションの観点を補充しました。

次に、検討経緯についての修正点を御説明します。

追加の御意見で「幸福」という用語の説明が必要ではないかとの御指摘がございましたので、一般用語としてではなく、消費者庁で行いました「消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者懇談会」の「議論の整理」に記載のあるかぎ括弧つきの「幸福」を用いる場合につきまして、本報告書における初出箇所の7ページ18行目に脚注で説明を追加しました。

8ページ24行目ですが、このパートの趣旨を明確にするために、本専門調査会の検討対象が消費者取引を規律する消費者法制度であることを明記しました。その上で、その目的とする消費者取引の安心・安全を実現する上で、企業価値に係る資本市場や消費者教育なども重要であるということが分かるように修正しました。

9ページの3段落目、20行目以下ですが、本報告書の位置づけなどについての説明を補充しました。併せて、関連する法制度・施策につきまして、具体例として情報分野、競争法分野を追記しました。

次に、本文の第1について、修正点を御説明します。

11ページの(2)の1段落目、18行目ですが、前回の御議論を踏まえまして、「自由な意思決定はそれ自体として合理的であり」と追記することにより、本報告書で述べている近代法において前提とされている考え方の趣旨がより詳細になるようにしました。

11ページの33行目に偽・誤情報に関する記述を追加しました。

12ページの3行目ですが、素案では一つのポツで記載していた内容を二つのポツに分けて整理した上で、内容を補充しました。

14ページの8行目ですが、素案では「努力」としておりましたところ、追加の御意見で努力義務規定に限定するかのように受け取られる可能性があるといった御趣旨の指摘をいただきましたので、「取組」に修正しました。

20ページの35行目のポツですが、記載をもう少し補充する観点で記載内容も整理し、より具体的な内容は脚注としました。

次に、本文の第2について、修正点を御説明します。

23ページの4段落目、9行目以下で生成AIに関する内容を加筆しております。

同じ23ページの32行目ですが、追加の御意見で、ソフトローのみでは、国ごとの対応まで期待しにくいと言い切るのは事実と異なるのではないかという御趣旨の御指摘をいただいておりますので、「場合がある」と修正しました。

25ページの(2)の3段落目、27行目以下ですが、パーソナライズド・プライシングやターゲティング広告の捉え方に関する表現がより適切なものとなるよう整理しました。

26ページの18行目で、(3)のタイトルの「情報化」をほかとの平仄を合わせて「デジタル化」に修正しました。

27ページの3行目ですが、追加の御意見で「エンパワー」だと趣旨が伝わりにくいといった趣旨の御指摘をいただいておりますので、前述の有識者懇談会の「議論の整理」における記載との整合性を図り、「エンパワーメント」に修正しました。

次に、本文の第3について、修正点を御説明します。

29ページの導入文の部分で、7行目以下と10行目以下にあった記載は削除した上で、20行目におきまして、消費者法制度の設計の場面においても、健全な市場の実現という共通の目的を目指して共創していくことが重要と記載しました。

同じ導入文で29ページの23行目ですが、素案で「グラデーション」としていたところをより趣旨が明確となるように修正しました。

30ページからの「1.既存の枠組みにとらわれず、消費者取引を幅広く捉える規律の在り方」について、(1)から(3)までのタイトルを趣旨が分かるように工夫しました。

同じ30ページの7行目以下に記載していた一般論は削除し、17行目以下で過去に「保護から自立へ」と言われていた時代における「保護」に戻る議論をしているわけではないということが分かるよう、前回までの御議論を踏まえて記載を補充しました。

31ページ23行目以下で、二つの内容を述べていることが分かるように①、②で分けるなどして整理しました。その上で、消費者が金銭以外の情報、時間、アテンションを提供する取引との関係では、32ページ6行目で、土台となる考え方を示すという本報告書の範疇で可能な範囲で例示を記載しております。

32ページ12行目ですが、ベストミックスはキーワードとして維持した上で、小見出しを「様々な『ベストミックス』による規律の実効性確保」とし、28行目で「以下に様々な規律手法を活用し組み合わせていく上での分析軸を多角的に示す」として、一口にベストミックスと言っても様々な観点があることを明確化しました。

少し戻りますが、32ページの16行目以下で、素案では(3)の「ア」で記載していたリスクの観点につきまして、総論として導入文で記載するとともに、このリスクは消費者にとってのリスクであることを明記しました。

33ページ15行目ですが、追加の御意見で、安易な行政指導につながらないように留意が必要である旨を記載すべきといった趣旨の御指摘をいただいており、これを踏まえると共に、逆に行政の不作為も当然避けるべきであることも踏まえて加筆をしております。

同じ33ページ22行目以下ですが、要件と効果のベストミックスにつきまして、具体的な内容として、規律手法の複層的活用、違反の程度などと効果のメリハリ、柔軟な要件設定の3点を補充しております。

34ページ8行目につきまして、追加の御意見で、具体的規範の短所としては事業者の創意工夫の余地が阻まれるといった点もあるという趣旨の御指摘をいただいておりますので、このことを踏まえて加筆しました。

35ページ21行目ですが、プリンシプルを法律上規定する手法の具体例として、配慮責任規定を活用する場合を例にとって追記しました。

同じ35ページの31行目ですが、追加の御意見で、素案での「悪質性の高さ」という記載では対象が不明瞭といった趣旨の御指摘をいただいておりますので、このことを踏まえまして、ここでは悪質性の程度に応じて法効果に差異を設けるという考え方を示すものであるという趣旨が明確になるように修正しました。

36ページ5行目以下、12行目で、事業者の中には既に積極的に「消費者の脆弱性」への対応を行っている例もあるということも含めまして、ポジティブにインセンティブを付与する手法について補充しております。

37ページ4行目で、素案では「ディスクロージャ」と記載していた箇所につきまして、事業者の対応状況に係る情報の消費者等に対する伝達であることを明確化しました。

同じ37ページの30行目で、規律の運用主体のベストミックスについて事業者団体を追記しております。

38ページ2行目以下の「(4)様々な規律手法の活用」につきまして、「ア」の項目のレベルの順序を諮問の記載を踏まえまして、民事ルール、行政規制、刑事規制、ソフトロー、その他に整理しております。

「ア」の民事ルールの項目につきまして、40ページ15行目以下で、素案では別項目の法目的としていた記載を役割・機能の項目にまとめております。

41ページ24行目の債務不履行に関する記載は削除し、25行目以下で消費者法制度において不法行為に基づく損害賠償制度を活用する意義を明らかにするため、補充しました。

42ページ3行目以下は、「法律行為法」という用語は使わない形で記載を整理しました。

同じ42ページの11行目以下の「③努力義務・配慮責任の活用可能性」につきましては、安易な努力義務・配慮責任の採用に対する御懸念が示されたことを受けまして、18行目で努力義務・配慮責任とするか、又は直接の民事的な法律効果につなげるかについて、規範の実効性をいかに確保するかという観点から検討されるべきことを明記した上で、21行目以下で努力義務・配慮責任によることが有効と考えられる場合を記載するという形に整理し、内容を補充しました。

43ページ9行目以下ですが、「⑤消費者契約の履行・継続・終了過程に関する規律」につきまして、サブスクリプションに関する例示も含めて記載を補充しました。

同じ43ページ、24行目ですが、素案では「事業者の保存義務」と記載した箇所につきまして、追加の御意見で事業者に一律に保存義務を課すかのような表現に読めるといった趣旨の御指摘をいただいたことを踏まえまして、「事業者による保存を促し消費者による保存をサポートする取組を促す仕組み」と表現を修正しました。

同じ43ページ、25行目ですが、消費者による証拠の保全や取引時の状況等の再現が困難な場合であっても事後救済を受けられやすくする仕組みについて追記しました。

44ページ、4行目と7行目につきまして、追加の御意見で、ここでいうインセンティブが何を想定しているかを明確化すべきといった趣旨の御指摘をいただいたことを踏まえまして、脚注を追加しております。

「イ」の行政規制の項目につきまして、同じ44ページ、19行目以下で行政措置に多様なバリエーションがあり、柔軟な活用が重要であることを補充しました。また、素案では別項目としていたインセンティブに関する記載をまとめました。

次に「ウ」の刑事規制の項目ですが、45ページ19行目で「欲得がらみ」を「欲得志向」に表現を改めました。

次に「エ」のソフトローの項目につきまして、46ページ9行目以下で記載を整理、補充しました。

次に「オ」のその他の項目につきまして、48ページ22行目で、若者のソーシャルメディア上でのコミュニティー形成といった現代の状況を踏まえまして、情報収集等における技術の活用も期待されること、また、28行目で多言語化への対応可能性の拡大への期待につきまして追記しました。

次に「2.消費者法制度における“実効性のある様々な規律のコーディネート”の在り方」の項目についてですが、49ページ7行目で記載していた内容は、2のまとめという形で51ページ15行目以下に整理しました。

49ページ12行目に追加した脚注20につきまして、追加の御意見で項目の(1)と(2)あるいは(1)の中でのアとイの区分の分かりにくさに起因すると思われる御指摘をいただいておりまして、このことを踏まえて説明を補充しました。

同じ49ページ、16行目以下で事業者の積極的な取組が期待できる場面における記載を補充したほか、追加の御意見で、内容を具体的に示すべきといった趣旨の御指摘をいただいておりますので、このことを踏まえまして脚注を追加しました。

同じ49ページ、24行目につきまして、前回までの御議論を踏まえ、趣旨を明確化すべく表現を補充し、修正しました。

50ページ6行目の段落につきまして、前回までの御議論や加筆が必要との追加の御意見を踏まえまして、下位規範の策定に当たって様々な関係主体が参画することで取引の実態を反映し民間主体の専門性・現場力等を生かせるようにすることなどを補充しております。

同じ50ページ、22行目以下で、素案では独立して「ウ」としていた内容を「イ」の項目にまとめる形とし、また、表現を修正しました。

51ページ6行目の脚注23で消費者安全法の財産事案に対するアプローチの説明を補充しました。

次に「3.消費者法制度の担い手の在り方」の項目についてですが、(1)の「イ」の取引基盤提供者の項目につきまして、52ページ34行目から53ページ17行目までにかけまして、前回までの御議論を踏まえて内容を補充、修正しました。併せて、53ページ24行目で、素案で記載しておりました「ウ」のその他の取引関係主体の項目は削除しました。

53ページ21行目の脚注25で、取引基盤提供者が介在するC to C取引で規制に無関心な主体が法規範を意識せず取引を行うという状況が発生している旨を追記しました。

「エ」のケアの担い手、専門家組織等の項目につきまして、54ページ13行目ですが、追加の御意見で「ケア」の用語の説明が必要といった御指摘をいただいておりますので、このことを踏まえ、脚注26を追加しました。

同じ54ページ16行目以下で、ケアの担い手と専門家組織についてそれぞれ記載を補充しました。

55ページ20行目以下で、地方公共団体の役割の重要性等について追記しました。

私からは以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

詳細に御説明いただきまして、前回までの御議論、それから、その後にいただきました御意見に対して、どのような形でこの報告書案に盛り込まれているのかということをより具体的に御説明いただいたところでございます。

それでは、報告書案につきまして検討を進めていきたいと思います。

少し区切ってやるほうが対象が分かりやすくていいのではないかと思いますので、区切って進めていきたいと思っております。

なお、本日ですけれども、報告書案全体の検討を終えられれば理想的かと考えてはおりますけれども、議論を制約するものではございませんので、いずれにせよ、この後粛々と進めていきたいと思います。

参考資料に即して参りますけれども、まずはそれの1ページ以下、前文につきまして取り上げたいと思います。前文は1ページから4ページまででございますけれども、この部分について御発言のある方は、会場では挙手で、オンラインの方はチャットでお知らせください。いかがでしょうか。

いかがでしょうか。前文のところはかなり御指摘をいただいたところですが、それを酌み取って修文をしていただいておりますけれども、よろしいでしょうか。

では、また最後に改めて全体について御指摘いただく時間を設けさせていただきますので、お気づきの点がありましたらそのときにまたお願いしたいと思います。

それでは、次に検討経緯のところを取り上げたいと思います。7ページ以下ということになります。7ページから9ページまで、検討経緯についてはいかがでしょうか。

よろしいでしょうか。

それでは、次に参考資料の10ページ以下、「第1.消費者が関わる取引を幅広く規律する消費者取引全体の法制度の在り方について」、ここは少し分量が多くなるかと思いますが、第1全体について御検討いただきたいと思います。いかがでしょうか。ページは10ページから21ページまでとなります。

それでは、よろしいですか。

次のところを見たいと思いますけれども、参考資料の22ページ以下、「第2.デジタル化による技術の進展が消費者の関わる取引環境に与える影響についての基本的な考え方について」という部分でございます。第2の部分につきまして御指摘等がございましたらお願いいたします。22ページから28ページまでになります。

河島委員からお手が挙がっておりますので、お願いします。

○河島委員

以前、私からコメントさせていただいた点に関しまして、きちんと丁寧に御対応いただき、感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。

幾つかコメントと確認をさせていただきます。

まず1点目ですけれども、生成AIやその技術を基にしたAIエージェントについて、参考資料の23ページの9行目から13行目に分量を増やして書いていただきました。このままでもよいかとも思うのですが、「消費者が偽・誤情報に取り囲まれる状況の発生」「生成AIを悪用した詐欺の発生」は既に起きており、AIエージェントによる金銭を伴った取引の自動化はこれから起こり得る事態であることを考えると、加えてAIエージェントは大規模言語モデルを基盤とした応用であることが多いことも考えると、書く順序を逆にして、生成AIは、消費者が偽・誤情報に取り囲まれる状況の発生、生成AIを悪用した詐欺の発生等にもつながり、ユーザーに代わってタスクを実行するAIエージェント云々といった書き方のほうがよいかと思います。

また生成AIのことを書く箇所に関しまして、前回いろいろな書き方ができると発言いたしましたが、この場所にこのまま置いていただくのがよいかと思います。といいますのは、生成AIは「今すぐ購入すべき」といったような提案を行うことで、24ページからの「「消費者の脆弱性」の利用・作出」にも使われることが想定されますし、また、個々のユーザーに合わせて広告や商品の説明を個別に生成することができるため、25ページからの「取引環境の個別化」にも使われることが想定されるからです。したがって、この場所で書いていただくというのがよいのかなと思いました。

2点目は、22ページの26行目なのですけれども、「段階的に進むことなく」と書いてあるのですが、瞬時であっても段階的には進みますので、ここは「時間をかけて進むことなく瞬時に行われ」などとしたほうが誤解は少なくなるのではないかと思いました。非常に細かい点で、読めば通常分かるのですが、念のためです。

3点目は,用語の確認なのですけれども、この報告書案全体を通じて、設計という言葉とデザインという言葉の違いは、私が読み取った限りでは、設計は制度設計やインセンティブ設計などの言葉がありますので、主に社会的側面を指し、デザインは24ページの27行目、技術的要素(デザイン)とありますことから技術的要素を指すと理解しましたが、それでよいのかということです。もしそうだとしたら,これらの用語の使い分けに関して注などは必要ないのかということを含めて確認させていただければと思いました。

以上です。

○沖野座長 御指摘ありがとうございました。

3点にわたってということで、順番に参りますと、まず22ページの26行目、瞬時であっても段階的ということがあり得るので、より疑義のない形にしてはどうかということで、「時間をかけて進むことなく」という御提案もいただいておりますけれども、この点はよろしいでしょうか。こなれた表現かどうかということはあるかと思いますので、御提案いただいたものを軸に、御趣旨は確認できたと思いますので、修文をしたいと思います。

2点目が23ページの9行目からです。まず、ここに生成AIですとかAIエージェントの点を設けることについては適切な位置であるという御指摘で、その後、具体的な24ページ、25ページの記述にもつながっていくということですが、内容については、むしろ現在書かれている9行目の終わりからのユーザーに代わってタスクを実行するというエージェントの普及によってという部分と12行目からの消費者が偽・誤情報に取り囲まれる状況の発生、詐欺の発生といった点については逆にしたほうがいいのではないかという御指摘ですが、この点についてよろしいでしょうか。

それでは、小塚委員、お願いします。

○小塚委員 小塚です。

私はそれでよいと思います。ただ、入れ替えたときに、AIエージェントのところの文末をどうするのだろうという点がよく分からなくて、「生成AIの普及は利便性の向上をもたらす一方で」と。その次に後ろが来ますね。「消費者が偽・誤情報に取り囲まれる状況の発生、生成AIを悪用した詐欺の発生等にもつながり」と。そうすると、その後、近未来のことという趣旨で河島委員はおっしゃったのだと思うのですが、ここはどうしましょうということで、新たな状況の発生も見込まれるといった感じなのですかね。それともここは新たな状況の発生にもつながるとしてしまうということなのでしょうか。

○沖野座長 まずは河島委員にお聞きしてみましょう。河島委員、今、語尾をどうするか問題というのを御指摘いただいたのですが、お願いできますか。

○河島委員 ありがとうございます。

あくまで個人的意見ですけれども、例えば「AIエージェントの普及によって人が直接介入せずに行われる取引が増加する可能性がある」でとどめても文意は通じるかと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

可能性があるというのはまさに新たな状況だということなので、繰り返す必要はないということでありますと、今、小塚委員と河島委員でまとめていただきましたように、9行目以下、また、何々、利便性の向上をもたらす一方で、12行目の消費者が偽・誤情報に取り囲まれる状況の発生、生成AIを悪用した詐欺の発生等にもつながり、そこからユーザーに代わって、これこれによってつながり、すみません。私のほうで止まってしまって大変申し訳ないのですが、生成AIの利便性の問題が書かれて、一方で生成AIを悪用した詐欺ですとか、あるいは偽情報・誤情報という一方の問題もある。その後AIエージェントの話になるということですから、「また」ぐらいですかね。

○河島委員 すぐ前に「また」という言葉があるので、「さらに」などでいかがでしょう。

○沖野座長 「さらに」ぐらいですかね。

○河島委員 「「さらに」ユーザーに代わってタスクを実行する・・・可能性がある」でとどめると、文章としては成立するのではないかと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

生成AIに関する二つの面、それから、さらにAIエージェントの今後もたらされる状況というか、それを記述するということでよろしいでしょうか。文章はつながずに切ってもいいのかもしれません。「等にもつながっている」で、「さらに」とか。

小塚委員、いかがですか。

○小塚委員 私が理解したのは、このAIエージェントというものが生成AIの今後の応用形ということなので、そういう意味で言うと、一つの文章で現在起こっていることから近未来に予測されることまで書いているというので、そういう趣旨で河島委員はおっしゃっていると思いますので、これでいいと思います。

○沖野座長 分かりました。文章を切ったらどうかということを今申し上げましたが、切らないで、ひとまとまりのことだということで、「さらに」ぐらいを入れてつなぐということでお願いしたいと思います。

それでは、3点目の用語ですが、この中で設計という言葉とデザインという言葉が登場し、特にデザインについては24ページの27行目で技術的要素(デザイン)としていて、デザインというのが技術的な要素に着目しているのだということが分かるようになっているかと思うのですが、設計とデザインの違いは河島委員が御指摘くださったような意味合いで使われているということでよろしいか、あるいは使うことでよろしいか。そうすると、この使い分けなどについてもう少し書いておく必要はないかということですが、この点に関して御意見や御指摘はございますでしょうか。いかがでしょうか。

加毛委員、お願いします。

○加毛委員 ありがとうございます。

まず、河島委員の御指摘を受けるまで、私は「設計」と「デザイン」という言葉が使い分けられているという認識を有しておりませんでした。両者は互換的に使われているのではないかと思っていました。24ページ27行目の「技術的要素(デザイン)」という表現が問題なのかもしれず、河島委員がおっしゃったように、デザインというのは技術的な側面についてのものであり、設計というのは制度設計やインセンティブ設計などの社会的・制度的なものであると使い分けることはあり得るようにも思われるのですが、一般的にそのような使い分けがされているわけではないと思いますので、あくまで本報告書の中で使い分けがされているということになるのだろうと思います。

そのことを申し上げた上で、河島委員の読み方からすると少し気になるのではないかと思われる箇所が、23ページの17行目から始まる箇所です。新たに書き加えていただいたところで、「例えばウェブページのデザインのように取引環境の設計によって顧客を誘導する」という記述があります。「取引環境」については、報告書のほかの箇所では「設計・デザイン」と書かれているのに対して、ここでは「ウェブページのデザイン」という言葉が前に出ているので、「取引環境の設計・デザイン」ではなく、「取引環境の設計」と書かれているのだろうと思います。ただ、そうだとすると、「ウェブページのデザイン」を例として「設計」という言葉を使うことに、河島委員は違和感を覚えられるのではないかと思いました。その後の「『アーキテクチャーの権力』を強力に行使して取引環境を設計し」というところも、「アーキテクチャー」に着目するのであれば、「デザインし」と書くべきなのかもしれません。

最初に申し上げたとおり、「設計」と「デザイン」という言葉は、それほど明確に使い分けられていないようにも思われるところでして、あるいはそのことが、23ページの記述に表れているのかもしれません。

関連して、第3のところに入ってしまうのですが、同じ話なので、一点申し上げたいと思います。36ページの注14にも「設計」という言葉が出てまいります。これは、野村委員の御報告との関係で、「高齢者向けの設計」、「障害者向けの設計」と書かれているのですが、ここで言う「高齢者向け」、「障害者向け」に何を「設計」ないし「デザイン」するのかということは、「設計」・「デザイン」という言葉の使い方を措くとしても、もう少し説明があったほうが良いように思われます。関連する事柄であるように思いますので、ここで指摘しておきたいと思います。

○沖野座長 ありがとうございました。

デザインの語はいろいろなところに出てきますし、それから、23ページについてはアーキテクチャーの権力というものの概念を明らかにするということもあって、その意味も込めてここで使われていると思いますけれども、しかし、こういうときにはやはり大屋委員にお願いしたいと思います。大屋委員からお手も挙がっておりますので、お願いしたいと思います。

○大屋委員 ありがとうございます。大屋です。

端的に和英辞典で「設計する」を引くと「design」が出てきます。この両者は基本的に互換的だというのが一般的な理解であり、どちらかというとハードウエア的なものについては設計が使われる確率が高く、ソフトウエアとか意匠の問題についてはデザインという言葉が用いられる可能性が高いのですけれども、例えばウェブページのデザインのことを画面設計と言ったりもするので、これは基本的には互換的に使うということでよろしいのではないかと思っています。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

もともとの問題の指摘が、今回の報告書の記載ぶりからすると両者が使い分けられているのではないかと。そのため、もしそうであれば、どういう使い分けかがはっきりしないので明確にすべきだという御指摘をいただいたのですが、それに対し、むしろそうではなく曖昧にというか、どちらも互換的に使われているのではないかという御指摘を加毛委員からも、さらに大屋委員からもいただいたわけです。感覚的には確かにそんな厳密に使い分けていないというか、設計・デザインという言葉にもしていますので、多分使い分けてはいないと思います。

ただ、そうしますと、河島委員からどうも使い分けているのではないかと思われると指摘された表現のほうが問題なのかもしれないと思いまして、特に技術的要素(デザイン)のところですかね。これはデザインというものを定義しているかのように見えるので、そこが一番問題ということになりますでしょうか。

河島委員、もともとの問題意識の点と関係してこういう理解でよろしいでしょうか。

○河島委員 私は逆に「設計・デザイン」と中黒を使って書いているがゆえに使い分けていると感じ、そう感じて使われ方を確認すると、さきほど述べたように設計は制度設計やインセンティブ設計のように使われ、デザインのほうは24ページ目の27行目に技術的要素(デザイン)とあったため、使い分けていると思った次第です。

そのため、加毛委員から御指摘のあった箇所は「取引環境の設計」になっているので社会的な要素に着目して論を進めていると読んだということなのです。ウェブページのデザインを含めて取引環境全体を社会的に設計するという意味で読んだということです。設計とデザインを使い分けていないのでしたら使い分けないでもよいかと思います。「設計・デザイン」という表記と「技術的要素(デザイン)」という表記は表現として調整していただければ、互換的に読めるかと思いました。

取りあえず以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

互換的に使う、相互に言い換え可能なものとして使うということはよろしいのだけれども、ただ、そうでない使い方のように見える部分を今具体的に2点御指摘いただきましたので、その部分は何らかの修正をしてはどうかという御提言だと思いました。

では、大屋委員、もう一度よろしくお願いします。

○大屋委員 24ページの27行目につきましては、「ダークパターンはデザインのような、あるいはデザインを含む技術的要素によって構成され、」にしてしまえばよろしいと思います。つまり、技術的要素イコールデザインではない。技術的要素の中にはデザインが含まれるという部分集合であるということを明確にするとよいと思います。実際にデザインだけではないものによるダークパターンはあり得ると思いますので、それでよいのではないでしょうか。

設計・デザインのような表現については、それが要するにハードウエア的なものからソフトウエア的なものまで包含しているという趣旨であれば、そのように残したほうが読者にとっての便益になると思いますし、そうでなければどちらかにしてしまってもいいと思います。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

24ページの27行目については、技術的要素イコールデザインのように見えるけれども、むしろそういう関係ではないので、デザインを含む技術的要素あるいはデザインのような技術的要素という形にするという御提案をいただいておりますが、それはよろしいでしょうか。

河島委員、今の点の修文についていかがですか。

○河島委員 それで問題ないかと思います。

2点目の設計・デザインは、ハードウエア的なものからソフトウエア的なものまでを含む場合でも必ずしもそのような表記になっていない箇所もあると思いますので、ご確認いただければ幸いです。

○沖野座長 ありがとうございます。

今、設計・デザインがどの箇所でどういう文脈で使われているかの一覧を直ちには出せないのですけれども、問題の御指摘はいただきましたので、こちらで引き取らせていただいて、何がいいかということを、場合によっては少し個別にも御相談させていただきながら、最終的な報告書にさせていただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。

小塚委員、お願いします。

○小塚委員 いずれにせよ、最終的に事務局に精査していただく必要があるというところは賛成します。

恐らく河島委員が今おっしゃったのは同じ24ページの18行目だと思うのです。「環境を設計・デザインする」という表現がここに出てきていて、しかもそれが数行上であるがゆえに、17行目のデザインが中黒の後半を指すように見えるということではないかなと思いますので、このページに関しては慎重にしたほうがよいと思います。

あと、27行目ですけれども、よく考えるとこれは何のデザインなのかが分からないのです。技術的要素(デザイン)というのは、ウェブサイトのデザインとどこかにありましたけれども、それのことを主として考えているようでもあり、しかし、ダークパターンの定義は多分もう少し広いので、あえて言えば人間とのインターフェースのことで、それを言っていくと実は取引環境という上の18行目とどこが違うのだとか、そういうことがだんだん疑問になって混乱してくるということで、その辺りを踏まえて、事務局で落ち着いて整理をしていただいて、最終的にどうするかという文案を御提案いただくとよいのではないかなと感じました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

この部分、あるいは河島委員が御指摘くださった設計・デザインという表現の問題点について御指摘をかなりいただいたところですけれども、そのほか、この点についてこのような観点も考えてはどうかという点はございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、小塚委員からも御指摘をいただいて、単にデザインのようなでいきなりデザインを使えるのかという問題もありますし、24ページの18行目だけであれば「設計することが」でもむしろ十分分かりやすいかと思いますので、使い方がどうなっているか、少し報告書全体を通じて検討させていただくということにしたいと思います。ありがとうございました。

それに関連して、加毛委員から、第3のところに入るけれども、36の注の14のところで設計というのが幾つか出てくるけれども、何の設計かが分かりにくいのではないかという御指摘がありました。企業の取組として高齢者向けに何を設計するかということですが、この点については野村委員から補足はございますか。

○野村委員 野村です。

こちらですけれども、設計と言っても商品もあればサービスもあるという状況です。ですので、何と書いたらいいかと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

黒木審議官、お願いします。

○黒木審議官 こちらは注で第20回の会議のときに野村委員から御発表いただいた際の資料の表題を抜くような形にさせていただいております。資料の中で様々な企業のお取組を御紹介いただくときに高齢者向け設計としてこれこれ、何々設計としてこれこれという形で御紹介をいただいていたものの表題を利用させていただいたということですので、もしよろしければ、高齢者向け設計というものとかあるいは障害者向け設計というところにそれぞれかぎ括弧をつける形でこれが表題であることを分かりやすく示し、具体的にどんなものが紹介されているのかというのは、よろしければ第20回の資料に当たっていただくという形にさせていただくのではどうでしょうか。

○沖野座長 ありがとうございます。

そのほうがまさにいろいろなことを表題の下で御指摘いただいているので、かつ、ここはまさに第20回を見てくださいという趣旨でついている注でもありますので、そのような形でお願いしたいと思いますが、加毛委員、それでよろしいでしょうか。

○加毛委員 それで結構です。

○沖野座長 ありがとうございます。

それでは、引き続き第2の部分についてさらに御意見がありましたらいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。第2ということですので、28ページまでとなります。

それでは、次に進みまして、第3、参考資料の29ページ以下になります。「第3.ハードロー的手法とソフトロー的手法、民事・行政・刑事法規定など種々の手法をコーディネートした実効性の高い規律の在り方」、このうち、「1.既存の枠組みにとらわれず、消費者取引を幅広く捉える規律の在り方」「2.消費者法制度における実効性のある様々な規律のコーディネートの在り方」につきまして御指摘をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。29ページ以下の第3の1と2になります。29ページから50ページまで。

小塚委員、お願いします。

○小塚委員 小塚です。たびたび発言して失礼いたします。

ここについて二、三気になった点があります。

まず、恐らくこれが実質的な問題をはらんでいるのですが、32ページの情報、時間、アテンションの問題について加筆していただいた部分です。ここの8行目に「消費者が意図せず一方的に収奪される状況の改善を図る」という突然収奪という昭和のマルクス主義の文献のような言葉が出てくるのですが、これは何を言っているというか、イメージは分かりますけれども、どこにどういう問題性があるという意味で書いているのだろうかということです。そこをはっきりしたほうがよくて、あまり収奪という言葉のイメージで語るべきではないというのが私の意見です。

もっとこれを分解すると、実は意図せずという部分と一方的にという部分が多分違う問題をはらんでいまして、一つ、意図せずというのは別のところにも書いてあると思いますけれども、例えば同意がきちんと取れているかというようなことなのだろうと思います。そこはさらに突き詰めていくと、時間とかアテンションを持っていかないでくれ、奪わないでくれ、だから収奪というのだと思うのですが、持っていかないでくれと言う自由というのをどこかに確保したいということがあると思います。

他方で、一方的にというのは、これも別のところでどこかに書いてあったのですが、プラットフォームなり事業者にとって非常に意味のある私の時間やアテンションというものは言わば資源なので、それを使うのであればきちんと対価が欲しい。それはお金であるのか、それとも取引上の便益であるのかは別ですけれども、対価が欲しいという意味ではないかと思います。

この二つは違うのです。対価が欲しいというのは、対価をきちんと確保してくれれば使ってもよい。逆に言うと、対価的均衡を求めているのであって、意図せずのほうはその枠組みから離脱する自由を求めるということなので、二つは違うということを明確にしていくことが重要ではないか。

そうすると、例えばですが、「消費者が意図せず」の後に「、」か何かを入れて、「かつ」「または」などと入れてもよいのかもしれませんが、一方的に利用に供されるというようなことを言えば、何となく一見分かったように見える収奪という言葉を使わないで問題の所在を明確にできると感じました。

これが実質に関わる指摘です。

一度に発言してしまったほうが多分効率的だと思いますので、あとは言葉の使い方の問題なのですが、今回、ベストミックスという言葉もいろいろ工夫していただいて「様々な」と言っていただいたのですが、やはり前回も指摘した33ページのイの見出しが気になるのです。要件と効果のベストミックスは、要件と効果はミックスするものではないだろうとやはり気になるのです。中に書いてあることを読んでみると、例えば効果についていろいろな効果を考えて、そのベストミックスを取っていきましょうという意味もあれば、効果に合わせた要件を考えて、その要件効果の対応をベストミックスしましょうということも書かれている。そうだとすると、これは要件と効果をミックスしているわけではなくて、要件と効果におけるベストミックスということなのではないかと。これは言葉の修正で済むのではないかと私は思っております。それが二つ目です。

それから、三つ目ですが、これも43ページの加筆していただいた部分ですが、25行目から26行目の消費者による証拠の保全や取引時の状況等の再現が困難な場合であっても事後救済を受けられやすくする仕組み、これは内容的には私は大賛成です。大賛成で、ぜひこういうことは書いてほしいと思うのですが、他方で、嫌な時代ではありますが、こういう仕組みをつくっていくと、またそれを悪用する人たちが出てきかねない。こういうことを使って詐欺というようなことで、さらに消費者被害が生まれることもあり得るので、それはここに一言悪用の可能性に十分注意しつつとか、括弧書きでも何でもよいですけれども、何かあるとよいのかなとは思っているところです。

最後です。48ページの4行目にモラルハザード(保険金を得るための不正)、それから、モラールハザード(リスク対策の低下)という言葉が書いてあって、これは多分中出教授がこういうふうにプレゼンされたのではないかと思いますが、私の理解する例えば情報経済学などの言葉で言うと、モラルハザードというのは注意の働き方が緩和されること、つまり、リスク対策の低下なのです。これは保険業界に根深い誤解で、モラルハザードというもともときちんとした英語の専門用語であったものが、何となく日本語のモラルという和製英語、片仮名語に反応してしまって、それで保険金詐欺、悪質でモラルの低い人たちが行っていることというのでモラルハザードという使い方が出てきて、そうすると、悪質でないリスク対策の低下をどうするのだといって、それはモラールだと。でも、モラールというのはいわゆる士気、やる気のことなので、本来、保険契約者とか被保険者についてモラールにハザードが起こるというのはおかしいのですよね。こういう言葉は消費者委員会がオーソライズすべきではないと私は思います。

一番安易な解決の仕方は、保険業界にいわゆるモラルハザードやモラールハザードと言えば、それは保険業界でお使いの言葉であって、事実、実務の方は非常によくお使いになりますので、我々がそれを公認したわけではないと。一番安易に言えばそういうことで、もっときちんと直そうとすると、モラルハザード、モラールハザードという言葉を避けて何か書く方法があり得るかということであるのではないかと思います。

以上、細かいことで失礼いたしました。

○沖野座長 ありがとうございます。

室岡委員からお手が挙がっておりますので、関連する事項かもしれませんし、関連以外でも一通り御指摘をいただきたいと思いますので、室岡委員からお願いします。

○室岡委員 ありがとうございます。

2点ありますがどちらも関連する事項です。

一つ目に、モラルハザードとモラールハザードは、まさに小塚委員のおっしゃるとおり、少なくとも経済学の用語では全く使い方は異なります。一言で言うと、モラルハザードとは観察できない行動のことを指します。例として、保険に入ることにより被保険者がより危険な行動を取ったのだけれども、危険な行動を取ったかどうかは保険会社は少なくとも直接観察はできない、といった観察できない行動に基づく消費者と事業者の間の情報の非対称性を指します。そのためいわゆる日本語のモラル(道徳)とは少なくとも学術的には全く関係ないものです。

その上で、これも小塚委員が仰った方向に沿った改訂になるかと思いますが、私の提案は、モラルハザードやモラールハザードといった言葉は消してしまって、「保険金等を得るための不正」や「リスク対策の低下」のみでよいと思います。モラルハザードやモラールハザードという、少なくとも経済学の中では全く異なる意味での学術用語として用いられている言葉を、あえてここで使う必要はないと考えます。

以上が1点目です。2点目は小塚委員が一番最初に御指摘していた部分ですが、何ページ目でしたでしょうか。

○沖野座長 32ページの8行目になります。

○室岡委員 ありがとうございます。

私もこは誤解を生む表現なので、何らかの形で変えたほうがいいと思います。具体的には、情報、時間、アテンションを提供する取引を規律する規範の考え方を示す。ここまでは問題ないと思います。ただ、消費者が意図せず一方的に収奪されるというのは、これ自体はもちろん問題ではあるのですが、情報や時間やアテンションの取引及び消費に関わる問題というのは「意図せず一方的に収奪される」場合のみではありません。つまり、消費者が意図していて、かつ一方的な収奪でなくても、消費者保護として対策を考えなくてはいけない状況というのはあり得るかと存じます。そこも含め、書き方をご検討いただければと思います。

極端な例ですが、未成年者が朝から晩まで無料の動画を見続けている。これは消費者自身は意図して消費を行っているわけです。また、無料で動画が提供されているのは、たとえば広告を見ることによってこの未成年者が自身の時間を提供することにより、本来であれば有料であろう動画を無料で見られるため、一方的に収奪されているわけでもありません。ただ、あまりに中毒性があるものであった場合、この場合に本当に何も対策をしなくていいかというと、私は少なくとも議論の余地はあると思います。極端な例を挙げて恐縮ですが、この部分の文章についてより本質的に御検討いただければと存じます。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、引き続き大屋委員、お願いします。

○大屋委員 ありがとうございます。

一つ目は室岡委員に賛成ということで、48ページの4行目ですが、いずれにせよ誤解を生みそうな言葉は外してしまったほうがよいということで、モラルハザード、モラールハザードを抜きにして括弧を外してしまえばよろしいということです。

もう一つは、今の32ページの8行目ですが、小塚委員のおっしゃっていることはもっともであり、もう一つは、これは室岡委員がおっしゃったとおり、多分プラットフォーマーからするとある種の対価を与えているのというのが建前だと思うのです。そこで、例えばこのような修文がよいのではないかと思いましたということなのですが、7行目の最後からです。消費者がそれらを意図せずに費やされ、あるいは過剰な消費へと誘導されるということにしておくと、要するに不同意のケースと、同意はしているし対価提供もそれなりにされているのだけれども、やはり消費過剰なのだよというケースの両方がカバーできるのではないかと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

それでは、関連して、あるいはそれ以外の点でも、この部分、第3の1と2についていかがでしょうか。

黒木審議官、お願いします。

○黒木審議官 今、大屋委員に最後に御指摘いただいた、小塚委員なり室岡委員にも御指摘いただいていた部分でございますけれども、ほかにも同じような表現がある部分についていかがいたしましょうかということについて御議論いただければと思っております。32ページのところについて御議論いただいておりましたが、実は状況を分析していた第1の中の20ページの2行目にも同様のフレーズがございます。あるいは、その辺を受けて、実は同じフレーズが前文の3ページの6行目にもございますので、問題には対策が必要という32ページのところで使う場合とこれらではまた違うのかもしれませんが、併せて修文すべきかどうかについて御議論いただければと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

御指摘いただいた部分については20ページ、3ページも含めて検討する必要があるということで、関連する表現の部分はここで大体尽きていますか。

お願いします。

○消費者制度課担当者 失礼いたします。消費者制度課でございます。

一方的な収奪に限らず申し上げますと、ほかにも情報、時間、アテンションの収奪などと記載している箇所もございまして、例えば20ページの14行目などがございます。

○沖野座長 それで大体尽きていますか。ほかにもアテンションの収奪とあるでしょうか。

○消費者制度課担当者 収奪という言葉を使っているのは大体今出ているところでございます。

○沖野座長 ありがとうございます。

関連することかもしれませんし、一通り御意見を出していただきたいと思いますので、加毛委員からお願いします。

○加毛委員 ただいまの点に関連しないのですけれども、45ページにおいて、前回の私の発言に関係して、「欲得がらみ」という表現を「欲得志向」に改めていただきました。ただ、この表現になったことによって、ここで想定されている消費者被害が読み手にとって理解しやすくなったのかというと、それはよく分からないところです。「欲得志向」という場合、消費者が欲をかいて、それで被害に遭ったという場面を想定しているのだと思うのですが、そうすると「欲得」を「志向」しているのは消費者なのか、それとも消費者の「欲得」に向けて事業者が一定の行為をするという意味で、「志向」を有するのは事業者なのかが、少なくともこの表現では分からないように思います。修正前の「欲得がらみの消費者被害」や修正後の「欲得志向の消費者被害」がいかなる消費者被害を念頭に置いており、そのような場合であれば刑事法による保護に値しないという考え方もあり得るのだけれども、そうではなく、その場合も刑事法による保護が与えられるのだということを、もう少し分かりやすく書き下すような形で書いていただくと良いように思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

では、大屋委員、お願いします。

○大屋委員 ありがとうございます。

収奪の話なのですけれども、一つは20ページ2行目の具体的な修文案として、「自律性の侵害や」の後です。それらの過剰な消費に誘導されるという収奪の問題という形で、過剰消費への誘導というのは収奪になるという形である種定義してしまう。

そうすると、その下に出てくる、14行目、自律性の侵害や情報、時間、アテンションの収奪については定義済みなので、これでよいということになるはずです。

前文についても同様の修文をしてもらうといいのかなと思って、小塚委員にはいつの時代の用語だと言われるような気はするのですけれども、やはりこれ収奪なのだよという印象の強い表現は前文でしておいたほうがいいのではないかと私自身は思います。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

そのほか、今対象としております第3の1、2についていかがでしょう。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 二之宮です。

今の箇所とまた違うところなのですけれども、参考資料の41ページの21行目、②損害賠償制度の活用可能性というところに関してです。議論に参加している者からすると分かるけれども、この報告書だけを読むと分かりにくいというところは素案の検討の段階で指摘させていただきまして、私がコメントしたところはかなり反映していただきました。ありがとうございます。片仮名も非常に分かりやすくなりました。

その観点でいくと、私自身は気付かなかったのですが、素案の公表後に複数の弁護士から指摘を受けたのが41ページの29行目から35行目、具体的にはこれこれといった特徴があり、「これらを活かすことが考えられる。」という箇所について、既にやっている不法行為、既にある不法行為の特徴というものを言っているだけではないか、これを活用するとはどういうことか、我々は不法行為で消費者被害救済をやっているけれども、過失相殺だとか立証で苦労しているのだというところの指摘を受けました。その後を見ると、また特則における云々かんぬんとか、あるいは42ページの9行目で消費者法における民事ルールにおいても不法行為のということで、この部分を全部読むと、不法行為というのが民法の709条を使って損害賠償請求としてのみ活用するというのではなくというのは分かるのですが、先ほどの具体的にはというところの一文が「これらを活かすことが考えられる。」で文章が切れてしまっている。そこだけ見ると、おっしゃるとおりかなと思いました。

そこで、その後の文章につなげて読んでもらうという意味では、35行目の文末を「これらをさらに活かすことが考えられる」と。「さらに」と一言足して、さらにとはどういうことだろうと。その後を読んでもらったら誤解がなくなるのかなと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、そのほかにはいかがでしょうか。

よろしいでしょうか。

小塚委員、お願いします。

○小塚委員 小塚です。

さきに出た御発言に対してレスポンスをしたいと思います。

まず大屋委員に対してですけれども、過剰な消費への誘導というところをきちんと書き下していただいたということで、非常に問題の本質が明確になったと思います。私が申し上げたのは、言葉が古いということもありますけれども、やはり悪そうな言葉を使って何が悪いのかをはっきりさせないということが一番問題だと思っていましたので、きちんと定義した上で例えば収奪の問題とお書きいただくというのは、それはそれで私は異存はないところです。前文も含めてそういうふうに直していただいたらいいのではないかと思います。

ただ、今回せっかく直すので、どの箇所も同じ言葉遣いをしたほうがよいと思うのです。見ていると「無自覚に」と書いたり「自律性なく」と書いたり、言葉がぶれていたりするので、今回直すのであればどこを見ても同じように書いていただいたらよいのではないかと思います。それは事務局にお任せします。

二つ目ですが、加毛委員がおっしゃったことですが、書き下してほしいというのが加毛委員の御要望だったと思いますので、こういうことかなと。45ページの19行目です。消費者被害は消費者の欲得を起点とするものなので、刑事規制によって保護することには値しないという考え方、ここまでがかぎ括弧、かぎ括弧をつけなくてもよいですけれども、そういう内容の考え方を取るのではなくと直していただくと、欲得がらみという話が具体的に分かるかなと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、この部分、多くの御指摘をいただきましたので、一つずつ取り上げさせていただきたいと思います。

最初に収奪問題といいますか、32ページの8行目、関連しまして20ページの2行目、20ページの14行目、それから、前文の3ページの6行目といったところが関連してくるところで、情報や時間やアテンションの収奪、それが「意図せず」というのと「一方的に」という形で収奪の対応というのが語られているのかと思いますが、その部分についての御指摘が複数ありました。最終的には収奪という表現そのものは使っても問題がないといいますか、むしろ悪質性の高さだとか、イメージ喚起力もある言葉ですので使っていいのだけれども、そこでいう収奪というものが何を指しているのかということは明確にしたほうがいいのではないかということです。

そうしますと、前文は後のほうを受けていますので、まず本体の最初に出てくるのが20ページの2行目になります。ここについて、特に大屋委員から、過剰な消費への誘導と。過剰な消費に誘導されるという収奪と言っていただいたかと思いますけれども、もう一度大屋委員に確認させていただきたいのですが、20ページの2行目、自律性の侵害や、それらの過剰な消費に誘導されるという収奪でよろしかったでしょうか。どうでしょうか。

○大屋委員 それでいいです。正確な文言はチャットに書き込みましたので、後で御参照ください。

○沖野座長 すみません。情報はそちらで得られるということで、もう一つは過剰な消費でよろしいのですかね。つまり、延々と見ているのではなくて、知らないうちに個人情報とかを過剰に出させられているのだろうかというような気もしまして、過剰な消費だけにポイントを当てて収奪を言っていいのかというのが気になったのですけれども。

○大屋委員 そのページは1行目から2行目ですよね。無意識のうちにアテンションを提供するという自律性への侵害というのは前にありまして、それを受けて、その次の部分がそれらの過剰な消費に誘導されるという収奪ともなり得るという書き方になります。

○沖野座長 分かりました。過剰でなくても、それを奪われて利益取得に使われているのかなとは思ったのですけれども、やはり一定の量的な過度というところがあって収奪なのですかね。

小塚委員、お願いします。

○小塚委員 大屋委員がおっしゃっているのはそういうことではなくて、無意識のうちにというところが一つで、これが「同意なく」のところに該当するわけです。ですから、今まで収奪が全体にかかっていたかもしれませんけれども、自律性の侵害ということと少し定義が小さくなった収奪で、両方合わせて時間、アテンションに関わる問題ということを大屋委員はおっしゃっているのだと思います。

私は同意なくという話と対価の問題と言ったのですが、対価は多分提供されているのだろうというので大屋委員に却下されて、それでこの二つになったということだと思いますので、それはそれでよいと思います。ただ、御指摘で私は気がついたのですけれども、「無意識のうちに」のほうを「提供する」と書くのであれば、過剰な消費も過剰な提供なのかもしれませんね。そこの言葉遣いが違うとまた何か意味があるのかという憶測を呼んでしまうかもしれませんね。

○沖野座長 一体そこでの消費が何を消費しているのかということですね。今の小塚委員のご指摘は、過剰に提供させられるということですか。

○小塚委員 そうかなと。

○沖野座長 大屋委員、たびたびすみません。

○大屋委員 これはちょっと難しくて、時間は消費するものだと思うのです。アテンションは消費したり提供したりすると思います。どちらかという消費だと思います。情報は両方あります。どうしましょうというのがポイントです。なので、曖昧にしておけばいいのではないかなというのが私の発想ですけれども。

○沖野座長 過剰な消費・提供ですか。

○大屋委員 それでもいいと思います。

○沖野座長 では、一旦ここは定義とかではないので、消費になったり提供したりというので、客体によっては片方だけのこともあるという形にさせていただきましょうか。

○小塚委員 では、2行目も消費・提供にそろえて。

○沖野座長 すみません。ここも今直ちに決定できない気がします。全部統一していいのか、動詞の使い方とかでやや違和感があるところもありますので。

室岡委員、関連しての御発言ですか。お願いします。

○室岡委員 関連した点です。

恐らく大屋委員と方向性が重なるかと思いますが、例えばですがここは取引という言葉を用いてもよいかと思います。提供することも消費することも経済学では取引から生じると考えますし、ここ文章の一番の目的は物品や確たるサービスではなく、情報や時間やアテンションも取引の中に含まれ、それが消費者保護の対象に広く含まれ得るということだと思います。もちろんほかの言葉でも問題ないと思いますが、例えば取引という言葉は使用できるのではないかと個人的には感じています。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

そうすると、例えば具体的には20ページの1行目から2行目にかけてアテンションを取引するという形ということでしょうか。室岡委員。

○室岡委員 例えば、大屋委員に挙げていただいた修正をさらに変更するのであれば、過剰な取引へと誘導される、といった直し方だと思います。

○沖野座長 確認ですけれども、それらを一方的に収奪されるという部分に、それらの過剰な消費に誘導されるというところを、それらの過剰な取引に誘導されるということでしょうか。

○室岡委員 修正箇所について私の先ほどの発言は不正確でした。一番直すべきは32ページのところで、大屋委員に挙げていただいた修正をさらに変更するのであれば、消費者がそれらを意図せずに費やされ、あるいは過剰な取引へと誘導されるという形に修正すると、例えば消費・提供といった表現にはせずに済むのかなと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

今の形ではどうでしょうか。過剰な取引と言ってしまうと、どちらかというと、自覚的にでもないですけれども、その部分を前文のところでは言わば利益の原材料として出させられている、取られているというニュアンスがあるのが、取引と言うともう少し冷静に取引しているような印象がちょっとするような気がしまして、もともと意図したところから読み手に与える印象が違ってくるような気もします。二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 二之宮です。

過剰というのと取引というと、どうしても我々は過量販売のほうへ意識が行ってしまいます。議論をずっと聞いておりまして、どんどん要素が増えていくといいますか、先ほど座長が言われたように、もともと何が一番問題なのかということは厳格に言葉を整理していくと難しいと思いますし、だけれども、ここの何が一番問題なのだというのをストレートに表しているのはやはり収奪ではないかと。聞いていて分かりにくくなっていっているのではないかと思ってずっと聞いておりました。

ここは厳密にというところを書き分けるのであれば、ここでいう収奪というのは整理するとこうだけれどもと脚注か何かで説明するなりして、本文で言葉としてばんと出すといったときに、そこを正確に出すのか、どこを取るのかというところの問題なのかと思って聞いておりました。

これはだんだん堂々めぐりに陥っている感じがしますので、最後は決めの問題だと思います。今出た議論を踏まえまして、私は最後は座長一任でいいのではないか思います。でないと決まらない問題に陥ってしまっているのではないかとも思いますが、ただ、私は決まらないから一任とか言っておきながら、それは引っかかるなというのが、やはり過剰というのと取引というと過量販売にどうしても頭が行ってしまうという意見です。

○沖野座長 ありがとうございます。

二之宮委員が御指摘になりましたように、恐縮ですが、最終的には座長一任の形にさせていただきたいと思いますが、それにしても視点はいろいろ御指摘いただいたほうがいいと思いますので、大屋委員からさらにお願いできますか。

○大屋委員 最後は一任ですけれども、ちゃんと書こうかなと思いまして、正確にやるとこんな感じかなという文案を作りました。20ページの1行目からです。消費者が無意識のうちに情報を提供し、あるいは時間、アテンションを消費させられるという自律性の侵害や、それらの過剰な提供・消費に誘導されるという収奪の問題で、ほかのところの表現もこれに合わせて統一していただけると、過剰な提供・消費なので過量販売の話とは違うのですよということを明確にするのと、収奪という表現をきちんと使いましょうというのが両立できるかと思いました。またチャットに書き込んでおきます。

○沖野座長 ありがとうございます。

確認できますでしょうか。

すみません。もう一回だけ一通り読み上げてもらえますか。チャットに入っていますか。

○大屋委員 消費者が無意識のうちに情報を提供し、あるいは時間、アテンションを消費させられるという自律性の侵害や、それらの過剰な提供・消費に誘導されるという収奪の問題という表現になります。

○沖野座長 ありがとうございます。

非常にいいので、もはや座長一任は必要ないような気がしましたけれども。失礼しました。室岡委員、お願いします。

○室岡委員 二之宮委員の御指摘はまさにおっしゃるとおりだと思います。経済学の用語では時間やアテンションも含めて取引がまずあり、その結果として消費したり提供したりという考え方をするため、取引という言葉でいけるかと思いました。しかし実務上、過剰な取引といったら過量販売を想起させてしまうというのは極めてもっともな御懸念だと思います。

結論としては、私は大屋委員の改訂案に賛成です。最終的には座長一任ということにももちろん同意いたします。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

室岡委員からは、取引という用語の概念とその位置づけが経済学的な意味とこちらで使われている意味が違うということも明確に御指摘をいただいて、その観点から取引と置き換えることもいいけれども、今度は逆に法的なほうで別の取引実態を想起させるということからやはり避けたほうがいいということで、これをそれぞれ当てはめたときにどういうような表現になるのかということがございますので、最終的には大屋委員がお示しくださった修文を軸としてさらに検討させていただくということにしたいと思います。

それでは、ここの部分は今までのところで十分インプットをいただいたと思いますので、次の項目に行きたいと思います。

それから、32ページは今の収奪問題ですので、次に33ページの17行目の見出しの点ですけれども、ベストミックスについて、要件と効果のベストミックスというのは、小塚委員が言ってくださったように例えば対応関係をどうミックスするかで、要件と効果そのものをミックスしようということではないというのは全くそのとおりで、「の」という言葉によって含みを持たせているのだと思いますけれども、より明確にするのであれば「における」とか表現を変えたほうがいいということで、それは考えさせていただきたいと思います。

次に、43ページの24行目から27行目についてです。証拠保全や取引時の再現が困難な場合であっても事後救済を受けられやすくするための仕組みというのは必要であるし、サポートの仕組みは必要なのだけれども、それを口実に悪用に持ってこられる、情報をもっと出させるとかというようなことになりかねないという点も注意する必要があるので、そのこと自体も例えば括弧で付言するというようなことを考えてもいいのではないかという御指摘です。

あくまでこの部分というのは、23行目以下は例えばということなので、例示でこういうことも考える、こういう仕組みを考えたほうがいいということで、その仕組みを具体的に設計していくに当たっては、それをしたことがかえって別のマイナス要因だったりトラブルを生じかねないのではないかということは常に意識する必要があるということはそうなのですが、ある意味全てに当たる部分でもありますよね。いろいろな設計をしていくときに、それがかえって目的とするものをもたらさない別の副作用ですとか、あるいはむしろ中心的にそういう問題を生むということもあり得るので、ここだけそれを書くかどうかというのは一つ気になったのですけれども、小塚委員、いかがですか。

○小塚委員 全てに関わるといえばそうなのですが、やはり証拠も再現もできないのに救済をするというと、要するに虚偽の請求ですね。被害を受けたのだと言って、実際には全く被害を受けていない人が請求してくるということを非常に可能にする。そういう意味で悪用の可能性が高いので、それこそ制度設計、制度のデザインにおいて留意する必要があるということを書いておくと、事業者側は安心かなと感じたということです。

○沖野座長 ありがとうございます。

私は実は逆の方向のことを考えていて、それを口実に消費者からさらに情報を取るとかということを考えておりましたが、むしろ言わば消費者にいろいろな活用可能性を制度として設けていくと、今度はそれを濫用する消費者の側もありますねということなので、それ自体もやはり一般的に濫用につながりかねないというのはしばしば言われ、濫訴の弊とよく言われるわけなのですけれども、そういう観点かと思います。

再びここで明らかにすべきか、特にそういうことが問題になりそうだから、もちろんこういうものを考えるに当たっては、適正な行使ですとか、濫用の防止ですとか、そういうことに注意する必要があるというのはそのとおりだと思うのですけれども、二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 濫用事例、濫訴のおそれは抽象的な懸念としてはあると思いますが、それは具体的な制度設計のときに当然検討されることで、法制度の中では常に検討対象だと思いますから、それをこのパラダイムシフトの専門調査会の中で一文入れておくところまでは現段階では必要ないのかなと私は思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

問題の指摘自体は重要であり、常に検討すべきことだとは思うのですが、この具体的な項目のところに入るのがどうかという気もいたしまして、むしろ一般的に制度設計に当たって注意すべき点なのかなという気はしております。

それから、逆に今度は、先ほど少し濫訴の弊ということを申し上げましたが、その懸念があまりに強いために今まで小さくしか生んでこられなかったというような制度もありますので、打ち出し方は非常に難しいのではないかという印象は受けております。

両方の御意見をいただいたので、ここも御指摘を踏まえて少し考えさせていただく。場合によっては、その結果、やはりここは置いておこうということになる可能性もあることを含めて引き取らせていただきたいと思います。

小塚委員、よろしいですか。

○小塚委員 はい。

○沖野座長 ありがとうございます。

二之宮委員。

○二之宮委員 41ページの不法行為の損害賠償のところはよろしかったでしょうか。

○沖野座長 ページでいくと先ですね。

順番に行きましょう。それでは、ページとしては41ページの不法行為の点ですけれども、これは不法行為そのものを捉えているのではないかというのは、これは既にあった不法行為ということですかね。それで、二之宮委員からの御提案は、41ページの35行目に「といった特徴があり、これらをさらに生かすことが考えられる」ということで、「さらに」を入れることで今までもあるけれどもということですが、もう一つ、30行目に「不法行為は」とありますが、先ほど709条に基づく不法行為制度のことを言っているのだということが全部読めば分かってくるという御指摘を受けたようにも思いまして、不法行為というのが30行目、それから、25行目、例えば不法行為についてはというふうに不法行為というのが出てくるのですが、これで言っているのは不法行為に基づく損害賠償制度の場合はということですよね。

○二之宮委員 と思います。

○沖野座長 だから、そこまで書いてもいいのかなと思いましたけれども、それでは駄目ですか。

○二之宮委員 二之宮です。

25行目以下で例えばということで一つ書いてあって、具体的にはと書いてあって、28行目に不法行為に基づく賠償制度をと書いてあるので、ここで言っているのは不法行為に基づく損害賠償制度だということですが、35行目で「これらを活かすことが考えられる」というところで文章が終わってしまっているので、これは既に今あることで、今やっていることを書いているにすぎない、改めて活かすことではないと誤解されている。その後のところでは「また」で別の話に行っているかに見えるのですけれども、こういうことも活用方法として考えられると続いていますし、その後には消費者法の民事ルールにおいてというところを書いているので、民法の不法行為の損害賠償だけを言っているわけではないというところまでは分かるのですが、これは私が議論に参加していたからこのパートを全体としてそういうふうに読んでいるからです。前から読んでくると、35行目でばんと文章が切れて「また」といって違う話に行ってしまっているので、ここの24行目から35行目のところは何なのかという指摘だと思います。これが何人もから受けたので、そういうふうに読まれているのはちょっと誤解されているなというところが先ほど言ったところです。だから、「さらに」と書けば、今までの不法行為に基づく損害賠償制度のみのことではなくてさらに活用の話なのですよと誤解は解けるのではないかと思ったという意見です。

○沖野座長 分かりました。

実際に誤解を生んでいるということで、特に35行目までとそれ以下が一旦分断されているというふうに読まれ、「また」と言うとここで話を転じているのかというふうに読まれて、そうすると前の部分は一体何を言っているのかと。単なる描写なのかということがあるので、その部分をそうではなくてこれからの展開可能性のために書いているということを明らかにするような文章の表現にということで、「さらに」という部分を追加でいいかどうかを含めて検討をするということにさせていただきたいと思いますけれども、御指摘のところは理解をしたということで修文につなげていきたいと思います。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 同じ趣旨ですけれども、併記してつなげていけば誤解は解けると思うので、次の「また」というのを取ってしまうというのも一つだと思います。

○沖野座長 ここで何かもう一つのことを言っているということなので、今、「さらに」の追加、「また」の削除というのを具体的にいただきましたので、それを踏まえて修文ということでお願いしたいと思います。

そうしますと、ページの順でいくとよろしいですかね。そうすると、欲得志向のほうが先ですね。45ページの19行目、もともと「欲得がらみの」とあったのですけれども、ここを「欲得志向」とすることによって志向をめぐるいろいろな解釈可能性を生んでしまって、何が問題なのか分からなくなってしまっているのではないかという御指摘で、そこについて明確にすべきではないかという御指摘をいただきました。それで、ここの部分は、結局、刑事規制の保護法益に値しないとして、刑事規制はそれからは手を引くというふうになっているところを決してそうではあってはならないということなのですが、この部分がもともと欲得がらみといったときに、消費者が利益取得目的で様々な取引をしているので、被害というのはみんなそういうものだと消費者被害一般をそのように捉えていくのか、それともいわゆる投機的な豊田商事事件とかで、あなたたちが欲を出したからこういうものなのでしょうというおよそ一般的な消費者被害というよりは、まさにこれによって言わば大もうけできるというタイプのものについては、まさに自分の欲得ゆえに被害に遭ったというのは刑事ではそういう保護法益は対象にしませんという発想とあって、恐らく後者といいますか、消費者被害一般にというよりは、元からこれでうまい話はないのだけれどもうまい話があると。それを追求したからという過失相殺とかがよくされるようなところを多分捉えていて、日常的には欲得がらみと表現していたのだと思うのですけれども、欲得志向というと、ここは欲得というのが問題なのかと思われて、利益取得目的とか、それは全てではないかとか、かつ刑事規制の保護法益に値しないという部分については、恐らく自分がもうけられるということでもうけ話に乗ったのですよねと言われるようなタイプのものを一番念頭に置いていると思います。それを何とか一言で表せないかというのが欲得がらみだったわけなのですけれども、欲得を何とかできないかとして利益に置き換えると難しく、「がらみ」のほうを今変えてみたということなのですけれども、それでは一層分からないという御指摘をいただいたのですけれども、この点について、さらにこういうやり方ではどうかという御指摘はありますでしょうか。なければ、場面をもう少し書いたほうが分かりやすいのではないかという御示唆をいただいたので、その方向で考えてみるというのもあるのですが、今、場面を書くときにどういう表現が。さっきからもうけ話とかと言っていますけれども、もうけるとか書けるのかということもありますので、細かな修文ではあるのですが、この点についてさらに御指摘をいただくことはございますか。

加毛委員、先ほど御指摘いただいた点については今のような悩みを抱えているわけなのですけれども、いかがでしょうか。

○加毛委員 ありがとうございます。

今、沖野座長が整理されたうちの後者の場面が問題なのだろうと思います。過失相殺という御指摘もありましたけれども、被害を受けた消費者の側に何らか責められるべき事情のようなものが見いだされる場面を念頭に置いて、だからといって、刑事法による保護の対象から外すというのはやはりおかしいということが明らかになるような形で、ここを書いていただければと思いました。

読む人が読めば理解できるのかもしれませんが、現在の記述では、消費者被害は、ある意味で全て欲得がらみであるようにも思われまして、そのような消費者被害がおおよそ刑事法の保護対象とならないなどという考え方はあり得ないと思います。そうではなく、何がしか消費者の側に責められるべき事情のようなものがあるといった場面を念頭に置いていて、しかし、それは消費者の脆弱性への攻撃といった場合もあり、今後その問題が深刻化することが懸念されるという理由に基づいて、刑事法による保護を検討しなければならないというような説明がされていればよいのではないかと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

では、大屋委員、いかがでしょうか。

○大屋委員 ありがとうございます。

要するにちゃんと分かるように書けばいいのだろうということで、例えばですけれども、安易に金銭を稼ぐ目的で詐欺的な金融商品の勧誘に応じた場合に生じるような消費者被害について、そのように被害者側にも落ち度のあるものは刑事規制の保護法益に値しないとしてみたいにはっきり書けばいいのではないかなと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

今のような場面設定ということですが、二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 今のところで、やはり私らがこだわりたいのは、そこはあくまでも被害者の落ち度でも何でもなくて、落ち度があるのではなくて、もっと言うと、欲という言葉は出したほうがいいと思うのですけれども、それは欲があるということ自体が消費者の脆弱性そのものなので、それは責められるべきでも何でもない。だから、過失相殺の対象でもないし、ましてや刑事の保護にも値しないというようなことではなく、要はそういうことだと思います。

欲得とかという言葉のきつさが問題になって落としてしまうというのは考えないほうがよくて、やはり人の欲に基づいているのだけれども、そこをあおられているというところが本質的にあると思って、それで被害に遭った消費者が責められる落ち度があると。民事だろうと刑事だろうと保護に値しないというと傾向があるように書いていただければいいなと思います。

○沖野座長 小塚委員、お願いします。

○小塚委員 先ほど私はむしろ消費者被害全体のことを言っているのかと思ったのですが、ただ、御提案した文章は今の趣旨でも使えると私は思っていまして、例えばですけれども、消費者が積極的に欲得を追求したことから生じた消費者被害は刑事規制による保護には値しないという考え方を取るのではなくという書き方をすれば欲得も残せてよいのではないかと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

欲得という言葉をどうするかという問題、それから、責められるべき事情や落ち度という表現についての留意というのをいただきまして、もう少しここの部分はどういう話かを書いたほうがいい、もともとの欲得がらみだとちょっと分かりにくいということもあったということですので、今の御指摘を入れて、最後に小塚委員が言っていただいたのは、消費者が積極的に欲得を追求したことによって生じる消費者被害はとか、例えばそこに投資詐欺などというような一例を入れればよろしいでしょうか。

二之宮委員。

○二之宮委員 こだわって申し訳ないですけれども、そこも消費者のほうが無の状態から積極的にという場合ももちろんあるでしょうけれども、むしろ人というものはそういう欲を持っているものだから、そこを攻められるというか、仕組まれるというところが消費者被害に巻き込まれるときですから、その上で積極的にそれに乗っかってしまうというところはありますし、事業者との関係ではなく単に消費者が積極に欲を出したというのは、普通の取引にはあるのかも分かりませんけれども、多分ここで念頭に置いているのはそうではなくてと思いますので、その辺もニュアンス的に誤解がないように書いたほうがいいかなと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

では、小塚委員、次に大屋委員でお願いします。

○小塚委員 確認ですが、二之宮委員はむしろ私と同じで、消費者被害は全てそういう意味でいうと消費者の欲から発しているのであるというお立場なのではないのでしょうか。つまり、座長はむしろその中のある種のものだけについてここで対象としている。それは刑事規制の対象とすべきでないという考え方があるのではないかという御指摘だったのですけれども、二之宮委員はそうではなくて、私が最初に理解したようなお立場に近いような気がしたのですが、そうでもないのですか。

○二之宮委員 どちらかというのでなくて、私はその間のいろいろな、過失相殺の場合のとかも含めて、民事も含めてさっき言っていたのですが、今ここで言っているのは刑事法の話なのですよと限定してしまうのであれば、座長が言われたほうのことだと思います。私もここでもともと念頭に置いているのはそうだと思います。ただ、そこで言っている法的保護にという話に行ってしまうと、そこは予防性が高いものを刑事の対象にするけれども、弱いところは民事の話でも過失相殺でもというところになってくると一緒の話で、それは法的保護の問題で言うと落ち度があるだとか、そういうふうに、民事のほうではいいのですかと言われると、そんなことはないと思っているので、そうなってくると、小塚委員が言われたようにすべからく人は欲に基づいているのだからということになります。

だから、そこをここのパートでどこまで書くかというところになると、ここでは刑事規制の対象を捉えて書いているのですよということが伝わればいいと思いますけれども、そうではなくて民事の場合はどうなのですか、また別ですかと誤解を与えないようにしないと、過失相殺はいいのですかとか、変なほうに波及しなければいいなと思っています。

○沖野座長 ありがとうございます。

大屋委員からお手が挙がっていますので伺いたいと思いますけれども、例えば先ほどの「積極的に追求したことによる」としたとしても、その積極性の段階にはまさに過剰に刺激を与えるというか、それを吊り上げるとか、そういうことがあるから、ここでは消費者の脆弱性というのを正面から捉えるならば、そういう形ではなくて、欲求とかを持っているというのは普通のことであって、それにつけ込まれると容易に乗ってしまうというのは、そういう性質であることを踏まえるべきだということではあると思いますので、それに注意するような形で表現すればいいのかなと思いましたが、そこで、大屋委員、お願いします。

○大屋委員 小塚委員がおっしゃるように、あらゆる取引には欲得的な目的はあるわけですけれども、一般的なレベルの利益目的の場合に、それが消費者被害にぶつかったとき、やはり刑事制度の対象とすべきだということに異論のある人はあまりいないと思うのですよね。だから、先ほど落ち度という言葉を使いましたが、あからさまにこんな金融商品はおかしいというのでも引っかかったようなケースも、しかし、だからといって刑事規制の対象から除くというのは安易な考え方であってというのが今回言いたいことだと思っています。

そこで、先ほどの文案をもうちょっと修正してこのようなものを書きましたということですが、また長くなって恐縮なのですが、例えば安易に金銭を稼ぐという欲得から詐欺的な金融商品の勧誘に応じた場合に生じるような消費者被害について、そのように消費者側の落ち度と見られてきたような行為から生じるものは刑事規制の対象としない。こういうのが古い考え方で、ちゃんとやるべきだというところに持っていきましょうという提案でございます。文案は正確にはまたチャットに書きました。

○沖野座長 ありがとうございます。

これも表現をチャットに入れてくださったのですね。事務局のほうで把握されましたか。

今の話ですが、落ち度あたりもかぎ括弧に入れて、「落ち度」と見られてきたようなというような形にしていただいてもいいのかと思いましたけれども、チャットの部分ということなので、事務局のほうでもう一回読み上げていただけますか。

○消費者制度課担当者 読み上げます。

例えば安易に金銭を稼ぐという欲得から詐欺的な金融商品の勧誘に応じた場合に生じるような消費者被害について、そのように消費者側の落ち度と見られてきたような行為から生じるものは刑事規制の以下略ということです。

○沖野座長 内容としては結構かと思いますけれども、小塚委員、お願いします。

○小塚委員 いつもは大屋委員の文案に感銘するのですが、今回はあまり賛成できず、なぜ賛成できないかというと、私は二之宮委員と同じで、ここを長くすればするほど批判しようとしている考え方のかぎ括弧の中が書かれてしまっているような印象があって、それで非常に変な印象を読者に与えるのではないかと。それが気になるのです。恐らく二之宮委員は同じ考えではないかと思うのです。思い切って文章の書き方を変えてしまって、例えば刑事規制の活用範囲あるいは刑事規制の保護法益において、消費者による欲得の追求を重視した考え方を取らないといった、重視と言い方がいいかどうか分かりませんけれども、そういうふうに書いたほうが批判されるべき考え方が文章として出てこなくてよいのではないかと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

全体を少し組み替えるということもあるかとは思うのですが、この問題についてほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 私も今、小塚委員が言われたシンプルなほうに賛成です。ここは一般の読者というよりも、私は先ほど言わなかったですけれども、一番そういう考え方を取ってくれるなと思っているのは裁判所です。すぐ落ち度、過失であなたの欲でしょうと考えるのですが、そんなものは責められるべきものでも何でもないというところを明確に誤解せずに伝えたい。ほかの一般の読者の方はシンプルなほうがむしろ伝わると思います。そういう意味で言うと、小塚委員の先ほど言われたのに賛成です。

○沖野座長 ありがとうございます。

正確性を追求していくと、むしろ落ち度と言うけれども、実際は落ち度と評価するのはどうなのですかというニュアンスも最初に入れてしまうのが次の批判にあらかじめ答えてしまうというようなことにもなり、かえって分かりにくさがあるということですので、今、直ちにこの辺りの修文まで持っていくのは少し難しいように思っているのですが、ただ、御指摘は分かりましたので、それを踏まえて事務局のほうで工夫をしていただけると思いますので、ここの部分は一旦ここで置いておきたいと思います。ありがとうございます。

そうしますと、次は48ページでよろしいですか。モラルハザード関係で、概念の違いというのは非常に勉強させていただきましたけれども、結論としましては、モラルハザード、モラールハザードという言葉は削除してしまって使わないということで結構かと思います。括弧の中を本文に出してしまう。

この報告書の中でほかにモラルハザードとかモラールハザードが出てくる部分はあるのでしょうか。

○消費者制度課担当者 事務局でございます。

恐らくないかと思います。

○沖野座長 では、ここさえ対応すれば大丈夫なので、その意味でもあえて使う必要もないと思いますので、その形で修文をお願いしたいと思います。

これで一通り御指摘の部分は方向づけをさせていただいたと思いますけれども、よろしいでしょうか。

それでは、第3の1、2についてはかなり御指摘をいただきましたので、そうしますと、残りといいますか、第3のうちの3です。51ページの21行目以下の「3.消費者法制度の担い手の在り方」に移りたいと思います。この部分につきまして御指摘をいただくことがありますでしょうか。ここから最後までということになりますけれども、51ページから55ページまでいかがでしょうか。

各種の主体の関わり方などについてということになりますけれども、よろしいでしょうか。行政というのもありますけれども、山本座長代理、よろしいですか。

○山本隆司座長代理 よろしいかと思います。

修文まではいかないかと思いますけれども、事業者団体の役割のところでアウトサイダーという語が出てきます。

○沖野座長 一つは55ページの8行目にでてきますが、事務局のほうでほかにアウトサイダーの語が出てくるところがあるでしょうか。

○山本隆司座長代理 55ページの最後では、アウトサイダーと悪質事業者に対処すると書かれています。たしかもう一か所。

○消費者制度課担当者 事務局でございます。

アウトサイダーの用語でしたら、50ページの17行目あたりにあります。

○沖野座長 ありがとうございます。

○山本隆司座長代理 そこでは、自主規制をする事業者団体に入っていて、自主規制に違反したものとアウトサイダーとが並んでいます。それぞれにどのように対応するかが問題になることは確かですが、ただ、自主規制違反者に対する対応とアウトサイダーに対する対応の問題は少し違います。後のほうのアウトサイダーに対する対応と悪質事業者に対する対応もちょっと違うと思います。細かく説明し始めると大変なことになるので、少し分けて書けないかと思っていました。具体的な文案がにわかには思い浮かばないのですが、内容的に、今申し上げた二つの主体に対しては対応の仕方が変わる、問題状況が違うということを了解していればよいかと思っております。

○沖野座長 ありがとうございます。

今の点について、それ以外の点でも結構ですけれども、いかがでしょうか。

大屋委員、お願いします。

○大屋委員 ありがとうございます。

今、山本座長代理から出た点ですが、一番シンプルな解決は「のそれぞれ」を入れることだと思います。つまり、55ページのほうで言えば「アウトサイダーや悪質事業者のそれぞれに対処すること等の」としてしまうということで、これより細かく書けないのであれば、違うタイプで違うことをしますという趣旨を示すにはこれで十分かと思います。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

そのほかによろしいでしょうか。

山本座長代理、今の形で。

○山本隆司座長代理 それでよろしいかと思います。

○沖野座長 ニュアンス的には全く同じではないというか、まずは単純に並列して一括してワンカテゴリーということではないということが示せればいいということかと思います。

それから、2か所あるので、その2か所の関係のそれぞれというか、もう少し並び方が違うということもあったかと思いますが、差し当たりは最低限それぞれということでよろしいでしょうか。もっとうまい表現が見つかればさらに改善をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

それでは、今の部分も含めて、今のといいますのは第3の3も含めてですが、全体につきまして改めて御指摘いただくことはございますでしょうか。途中で関連して、例えば前文のところでも表現を改めるべきという御指摘をいただいたところもありますので、そういった部分も対応をお願いしたいと思いますけれども、全体にわたりましてよろしいでしょうか。

山本座長代理、お願いします。

○山本隆司座長代理 一つ、修文を要する話ではありませんが、資料1でいうと30ページの冒頭、参考資料でいうと30ページから31ページの辺りですけれども、法目的の刷新は、具体的な規律を変えることとペアでないと実現できないと思います。それがなく法目的だけ変えると、いろいろな方向に意味を解釈されたり使われたりしますので、そこは気をつける必要があるかと思いました。法目的の刷新は、あくまで具体的な制度の変革とペアで考えるべき話であるということは認識しておく必要があるかと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

修文そのものというわけではなく、今後の設計やこれの具体化、あるいは実現に当たっての御留意事項と思います。ただ他方で、例えば消費者契約法について、現在の消費者と事業者の構造的な情報の質量、交渉力の格差ということに対しては、いわゆる強い個人像が背景にあるのではないかと言われ、ここに消費者の脆弱性も勘案してというようなことを入れることによって、例えば先ほどの過失相殺の判断についての影響であるとか、そういうものが入ってくる可能性もあるのではないかといった御指摘もありますので、常に具体的な制度とセットでなければならないのかというのは、目的規定が果たす役割の捉え方にもよると思います。それから、立法実践としてはしかし目的だけを変えるということは考えにくい面もありますので、やはり具体的な制度とともにこの考え方を一層打ち出していくということになるのかと思います。具体的な制度だけではない目的規定の意義というのはあるのだろうとは思いますけれども、ただ、そこだけ本当に変えられるのかという問題もありますという感想ではあります。

この点に関してでも、あるいはそのほかの点でも、全体を対象としていかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、本日御議論をいただきまして、今、御注意いただいたように、必ずしもここに明確に入っていない部分もありますけれども、それ以外にも小塚委員に途中で御指摘いただいた濫用に対する懸念ですとか、なかなか十分には反映されていないところもありますけれども、他方で、報告書自体の方向性に影響する御意見はなかったと思われますので、本日の御議論の反映については、途中でも出てまいりましたけれども、座長に御一任いただきまして、一旦整理させていただき、形式的な修文等を含めて御指摘を反映させていただく。どういう形で反映するかはこちらに一任していただくということでお願いしてはどうかと思いますけれども、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○沖野座長 ありがとうございます。

それでは、事務局に御負担をかなりおかけすることにはなるのですけれども、座長一任ということにさせていただきまして、これは専門調査会ということで、諮問に対して検討していただいておりまして、報告書が整いましたら消費者委員会の本会議にて御報告させていただきます。

これでようやく、今日は何と25回という何となく区切りがいい感じがするのですけれども、長きにわたり御議論をしていただきました。これで報告書の一つ前というか、最終的な確定までには一任いただいたということでございますけれども、御議論をいただいて一つの区切りということになります。

委員の皆様におかれましては、これまで精力的に御議論をいただきまして、誠にありがとうございました。

議論として、会としてもこれで閉じるということになりますので、せっかくですのでというのもなんですけれども、閉会に当たりまして、委員の皆様から今後に向けた所感等を一言ずつ御発言いただければと思います。

そこで、まずは会場で御参加の委員の方にお願いし、次にオンラインで御参加の委員にお願いし、最後に鹿野委員長からという順でお願いしたいと思います。

それでは、まず会場で御参加の委員であいうえお順でということでお願いしますと、小塚委員、お願いします。

○小塚委員 小塚でございます。

この研究会は、前回でしたか、学会のようなと言ったかもしれませんけれども、本当に理論的な議論をさせていただいて、私にも勉強になりましたし、また、消費者政策にとって非常に意味のある文章ができたのではないかと構成員の一員として自負しております。

内容については一々申し上げませんけれども、その中で、やはり消費者法制というものが経済社会のインフラであって、そういう意味で言うと、経済実態がデジタル化を含めて変わってきたことによって、そのインフラの在り方を変えていく。変えていくのだけれども、それによって、日本の社会あるいは経済活動全体を発展させていく。そういうものであるということは変わりがないのだと思っておりまして、そのようなものとしてこれが受け取られるとよいと思いますし、今回、報告書案の中では対応していただいているのですけれども、私が繰り返しここで申し上げてきた問題、今、消費者がかなり直面している問題がグローバルなプラットフォーム企業あるいはプラットフォームで大きな地位を占めるサービス提供企業との関係であって、やはり本丸にきちんと取り組んでいただくということが消費者政策上非常に大事なことであろう。それがまた、ひいては残念ながら必ずしも大きなプラットフォームを形成できていない日本企業などにとっても、むしろ公正な競争環境というものをつくっていくのではないかと期待しているところです。

以上でございます。25回、ありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 二之宮です。

25回、本当にお世話になりました。毎回毎回いろいろな知らない分野のヒアリングで、正直に言いましてついていくのに必死でした。振り落とされないように一生懸命ついてきているうちに、だんだん分かってきました。恐らく一般の消費者、消費者団体の方、事業者の方もそうだと思いますけれども、これからどんどん発信していかないと報告書の内容は伝わらない。私は何度か言及しましたけれども、本当に多くのステークホルダーの方がこの報告書の中身についてそう思うと言ってもらわないと、具体的な制度設計を進めていくときに枝葉のところ、元へ戻ってしまうことになりかねない。大きな流れをつくって前に進めていく。そのためにはこの報告書を伝えていくというのが、専門調査会が終わった後も委員として参加した者の付随的といいますか、後の役割といいますか、ついてくるのだろうなと思います。

それとともに、この報告書の中で、やはり消費者問題の報告書であるのですけれども、健全な市場というものを打ち出したのは意義があることだと私は思っています。ともすると、今まで消費者団体と事業者団体というところがクローズアップされていましたけれども、健全な市場を担っているのは消費者であり、事業者であり、あと、消費者団体とか事業所団体、そこを取り込んで健全なほうへみんなで動かしていくのだというのを打ち出したのは非常に意義があることだと思います。

本当にお世話になりました。ありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、野村委員、お願いします。

○野村委員 野村でございます。

25回、本当にどうもありがとうございました。

経済界ということで参加させていただきましたけれども、最初のほうの議論は非常に法律の抽象的なものが多くて難しかったというところが多くあったのですけれども、最後、まとめる段になって全部がつながって、しかも、やはり私たちが一番大事にしなくてはいけないのは、事業者として市場をつくっていく中で、この大きな法制度の改正というものに対して前向きにみんなで考えていかなくてはいけないということ、改めて大きな責任とこれからの法律が変わっていくところできちんとやっていかなくてはいけないということを感じました。

守る側というか、法律を遵守していく側の事業者としては、なかなかいろいろな業者がいて、いろいろな立場の人がいてということにも改めて発見があったところでございますので、今後、実際に形が変わっていくときにまた私たちも参加できればと思っております。

どうもありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、山本座長代理、お願いします。

○山本隆司座長代理 ありがとうございます。

今回のテーマは、一方で消費者法を大きく超えた一般的な社会の状況、あるいは法制度をめぐる状況に関わっているところがあり、非常に難しいと思いました。消費者の脆弱性という消費者像、あるいはデジタル化は、いずれも消費者法を大きく超える話です。例えば政治的な意思決定等に関しても、こういう人間の脆弱性、意思決定の脆弱性とか、デジタル化に関わる問題が発生しています。いろいろな手法のベストミックスも、消費者法で特に求められるとは思いますが、ほかの法分野においてもやはり同じような話、課題があるかと思います。

他方で、消費者法特有の状況、今までの議論の経緯があります。消費者法の分野で法改正をしようとすると、過剰規制と過小規制の間で、過小規制に流れてしまう。いろいろな事業者がいる中で、制度全体を議論すると結果的に過小規制のほうになってしまう状況がずっと続いてきたと思います。それから、消費者法に関しては、いろいろ利害の対立、いろいろな立場、観点があり、その中で制度がつくられ、運用されてきたという経緯があります。

これからこの報告書を社会に示し、さらに具体的な法制度にする場合には、消費者法を超える問題と、消費者法のこれまでの議論・状況とをどのように織り合わせるかという非常に難しい、しかし、まさに喫緊の課題に取り組まなくてはいけないと思います。

私はほとんど貢献できませんでした。専ら勉強させていただく立場で、大変よい勉強をさせていただきました。どうもありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、オンラインで御参加の方につきましても五十音順に一言ずついただきたいと思います。

大屋委員からお願いします。

○大屋委員 大屋でございます。

よく法学部で一番金にならないと称しておるのですが、今回は消費者法という非常に市民の方々に近い領域で議論する法律の再検討という大きな仕事に就いて、多少なりとも貢献できていたとすれば全く幸いとするところだと思います。

二之宮委員からは常に抽象的だというお叱りを頂戴していたところでもありますが、抽象的な理論屋が場合によって役に立つんだということを示せていたならばいいなと思っております。

ありがとうございました。以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

それでは、加毛委員、お願いします。

○加毛委員 ありがとうございます。

本専門調査会は、消費者法制度のグランドデザインを提示することを目指す場であったと思います。様々な専門家の方から御報告をいただき、それを通じて委員の先生方も含めて議論をすることで、多くのことを勉強することができました。

非常に多様な報告に接する中で、消費者問題や消費者法制度を検討する際に、様々な知見、学術的知見のみならず、実務における知見を含めた様々な知見が必要とされることがよく分かりました。本専門調査会では取り上げることができなかった有益な知見も存在するのだろうと思います。御報告いただいた方々、委員の先生方に御礼を申し上げたいと思います。本専門調査会の議論を通じて、自分自身の不勉強を痛感したところであり、皆様にお教えいただいたところを手がかりとして、今後も勉強を続けてまいりたいと思います。

また、先ほど、座長一任が取りつけられました報告書につきましては、本専門調査会の多様な議論を取り込んだ、まさに消費者法制度のグランドデザインを提示する内容になっていると思います。前回、前々回と多様な意見が出たこともあり、報告書がまとまるのだろうかという危惧も覚えていたところですが、座長及び事務局の皆様が、様々な意見に真摯に向き合ってくださり、その内容を報告書に取り込んでいただいたと思っております。この点について、御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、河島委員、お願いします。

○河島委員 河島です。

報告書でも書かれているとおり、デジタル技術の変化が早く、それに伴って今後も消費者を取り巻く環境が相当変化していくと思います。現在想定されていない消費者問題が次々と生じてくるでしょうが、この専門調査会では、どのように考えていくべきか、将来の大きな方向性を定める礎となる議論ができたのではないかと考えています。

私自身、非常に勉強になりました。25回にわたりましてありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

では、室岡委員、お願いします。

○室岡委員 室岡です。

私自身は行動経済学を専門とする経済学者でして、法律に対しては全く専門外ということもあり、私自身、この25回を通じて大変勉強させていただきました。

この報告書の前段となる有識者懇談会でも議論があった点ですが、消費者保護というものはよく取引の機会拡大と対立するような形で捉えられることが旧来では多かったと思います。ここで私が強調したい点は、特に消費者の脆弱性が問題になる場合では、健全な取引を促進するためにこそ、消費者保護が極めて重要になるという点です。もちろんこれは、プラットフォームの進展、デジタル技術、そしてAIなどを含む新たなイノベーションによる将来の利益を阻害しないように制度を設計していかないといけません。その上で、健全な取引を促進するためにこそ、消費者保護が重要になってくるという点について、少しでも理解が広がっていくことを願っております。ありがとうございました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、鹿野委員長からお願いできますでしょうか。

○鹿野委員長 鹿野でございます。

皆様には、一昨年の12月から。25回にわたり精力的に御検討、御審議いただきましてありがとうございました。

私自身もオブザーバーという形で登録はさせていただいたのですが、日程的に他の業務と重なることが多くて、なかなか思うようには出席できなかったというところが個人的には残念でございましたけれども、出席できなかったときにも私なりに資料や議事録を拝見するということによって確認させていただき、勉強させていただきました。

今回の報告書、まだ確定版は出ていないのですが、案について申しますと、非常に多くの領域の方々の御知見を合わせて、健全な消費者取引市場を形成していくための基本的な考え方が整理されておりまして、非常に豊富な内容のものになっているのではないかと思います。具体的なところについては、また本会議で御報告いただくときに委員からいろいろなコメント等もあろうかと思いますけれども、全体としてはそのように受け止めているところです。

もちろんこの段階では抽象度が高いので、いろいろな方からお話を伺う中では、特に実務家の方々からは、具体的にどういう制度設計につながっていくのかというところが分かりにくくて物足りないという声もなお聞かれるところではございますが、今まで繰り返し個別法については検討してきて、個別の問題を検討するだけでは対応が難しく、根本的な考え方を見直さないと乗り越えられないような障壁があるのだと私自身も感じてきたところでございまして、その意味で、今回、特に消費者法制度のグランドデザインという言葉も先ほどありましたけれども、そういうものを示すということはとても意義深いことだと思います。

なお、現時点のとりまとめでも、具体的なところとのつながりが何も分からないのかというと、そうではないように思います。例えば本日の御議論を聞いていて、特にいわゆる欲得がらみの問題についての御議論を聞いておりましても、まさにこれは要するに消費者像あるいは人間像というものの捉え方というところにも大きく関わっております。本日のご議論の直接の対象は刑事規制の記載箇所に関してでしたけれども、御議論の中では、二之宮委員からも御指摘があったように、さらに民事ルールの在り方、特に不法行為法のところの過失相殺の考え方などにも関係するところでもあると思います。そういう形で、これは一つの例に過ぎませんけれども、その他、具体的なルールとのつながりに関するヒントも、あちこちに散りばめられてもいるのだろうと思っております。

そうは言っても、法制度にどういうふうに具体的な形で落とし込むかということは、これからの課題ということになろうかと思います。非常に課題は大きいとは思いますけれども、ぜひ先生方あるいは事務局の皆様方には、引き続きご尽力いただき、進めていただければと思っているところです。そういう意味で、今後にとても期待しているところです。

どうもありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、これで専門調査会は終了ということになるのですけれども、私も一言申し上げたいと思います。

座長として25回務めさせていただきました。この専門調査会あるいはその前段階の有識者懇談会を含めて、直接のきっかけというのは、社会的な変化の下で立法作業として行われた消費者契約法の改正というのが必ずしも期待されたところまで至っていないのではないかということがあって、国会の衆議院、参議院それぞれ附帯決議がされ、制度の在り方を抜本的に見直すべきではないかと、そういう検討を必要とするということが言われており、それだけではなくて、そもそも消費者法制度の在り方ということを具体的な立法を置いても考え直すというか、方向性を改めて考えるというか、今回グランドデザインと言っていただきましたが、それを検討しなければ、これからの消費者法制度というのは、個々には何かはできるかもしれないけれども、十分なまさに健全な市場を形成し、安心・安全、そして、対立的ではない様々な主体が関わって消費者取引の土台をつくっていくというようなことができないというので御検討いただいてきたわけです。

ただ、言わば消費者契約法の立法が壁に当たっているということが言われたわけなのですが、その壁をどうやったら乗り越えられるのか、あるいはどうやったら回避してその先にいけるのかという手法が難しい中で、有識者懇談会からそうですけれども、多様な分野の専門的な知見をまさに入れていただいて、そこに次の消費者法制度の在り方のための様々な御示唆や、まさに材料をいただくということでやってきていただきました。

本当に多様で、また、海外法制もやっていただいたので、これが一体どういう報告書に結実するのかという不安を持ちながらずっと来たわけですけれども、委員の皆様や事務局の皆様の御尽力によってこういう形で取りまとめていただいたということが大変ありがたかったと思います。

恐らく一番学ばせていただいたのは私だと思っておりますけれども、これまでの議論との関係では、この報告書でまとめていただいたものは様々な位置づけがあると思いますけれども、従来から言われていた消費者の脆弱性もそうですし、あるいはベストミックスというのもこのところずっと言われてきた。しかし、それをどう捉えるのかとか、それは一体何なのかとか、そういうところは言わば放置されてきたみたいなところもありまして、そういうものを展開していただいたというところもありますし、あるいはいわゆるケアですとか関係的自律と言われるような必ずしも従前十分に注目が集まっていなかったようなところにも光を当てていただいて、様々今回御議論いただいて取りまとめに至ったものはこういった位置づけを持っていると思います。それが壁の向こうへ行き、そして、どの方向に向かっていくのかということに対しての礎となるものとしてまさに取りまとめていただいたと思います。

この下での具体的な制度設計は、消費者契約法を中心に、既存の枠組みにとらわれることなく、消費者法制度を抜本的に再編、拡充すると書かれておりまして、そろそろ具体的な立法へと結びつけていく次の段階のための大きな礎になったのではないかと思います。本当にありがとうございました。

この調査会は時間が長いということでも特徴的なところがありまして、本日も最終回の取りまとめというのは割合にすぐに終わるかなと思っておりましたら、予定しておりました12時はとっくに過ぎており、何とか13時までは時間をいただいているというところまで、あと25分程度というようなところになっております。ここまではいただいているけれどもさらにちょっと延長するみたいなこともございまして、いろいろ御負担をおかけしました。日程調整も大変困難なところをやっていただきました。先生方の本当に貴重な時間を収奪したのでなければよろしいのですけれども、おかげさまでプロダクトとしてこれからに役立てていただけるものになったと思います。

ひとえに私の不手際で、自分の理解が進まないために議論を止めてしまったところもありますけれども、その不手際につきましては改めておわびを申し上げますとともに、関係してくださった委員の方々、それから、ここにはいらっしゃらないですけれども、ヒアリングの形で応じてくださった方々、あるいは海外調査ですとかアンケートなどに対応してくださった多くの方々がこの議論を支えてくださいました。そして、事務局の皆様、消費者庁、それから、消費者委員会の皆様には大変にお世話になりました。

しかし、これで終わりということではなく、次がありますので、それぞれにおいてと言えばいいですかね。次の御準備をぜひお願いしたいと思います。

これまで本当にありがとうございました。

ということで、本日は閉じさせていただきまして、審議は以上といたしまして、最後に事務局から御連絡をお願いします。


《3.閉会》

○友行参事官 本日も長時間にわたりまして、誠にありがとうございました。

また、本日、座長一任をいただきましたけれども、座長、座長代理、委員の皆様には多大なる御尽力をいただきまして、誠にありがとうございます。心より感謝申し上げます。

どうもありがとうございました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、これにて閉会とさせていただきます。皆様、本当にありがとうございました。

(以上)