第24回 消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会 議事録

日時

2025年5月23日(金)10:00~12:19

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

出席者

(委員)
【会議室】
沖野座長、山本隆司座長代理、大屋委員、小塚委員、二之宮委員
【テレビ会議】
加毛委員、河島委員、室岡委員
(オブザーバー)
【テレビ会議】
鹿野委員長
(消費者庁)
黒木審議官、古川消費者制度課長、原田消費者制度課企画官、消費者制度課担当者
(事務局)
小林事務局長、後藤審議官、友行参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    取りまとめに向けた検討②
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1.開会》

○友行参事官 それでは、定刻になりましたので消費者委員会第24回消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会を開催いたします。

本日は、沖野座長、山本隆司座長代理、大屋委員、二之宮委員には会議室で、加毛委員、河島委員、室岡委員はテレビ会議システムにて御出席いただいております。

なお、所用により石井委員、小塚委員、野村委員は本日御欠席との御連絡をいただいております。

消費者委員会からは、オブザーバーとして、鹿野委員長にテレビ会議システムにて御出席いただいております。なお、鹿野委員長は少し遅れて御出席される予定となっております。

配付資料は、議事次第に記載のとおりでございます。

一般傍聴者にはオンラインで傍聴いただき、報道関係者のみ会議室で傍聴いただいております。議事録については、後日公開いたします。

それでは、ここからは沖野座長に議事進行をよろしくお願いいたします。


《2.取りまとめに向けた検討② 》

○沖野座長 ありがとうございます。本日もよろしくお願いいたします。

それでは、早速、議事に入らせていただきます。

前回の専門調査会から取りまとめに向けた検討として、資料1の素案について議論を進めております。前回は、第3から項目に沿って議論を進めまして「1.既存の枠組みにとらわれず、消費者取引を幅広く捉える規律の在り方」のうち「(4)様々な規律手法の活用」の「ウ 民事ルール」、これは36ページまでということになりますが、そこまで議論を進めていただきました。

本日はその続きからといたしまして、36ページの35行目以下にあります「エ ソフトロー」から議論を行い、第3の検討が終わりましたら、前回御確認いただいた順番として、第1と第2、そして次に検討経緯と前文という順番で進めることといたします。

その際、検討の対象をある程度分かりやすくするために、適宜項目ごとに区切って進めてまいります。

本日は、最後の項目である前文の検討まで進められれば理想的だと考えておりますけれども、議論を制約するものではありませんので、いずれにせよ、項目の順番に沿って進めさせていただきます。

それでは、まずは「(4)様々な規律手法の活用」のうち36ページ35行目からの「エ ソフトロー」、それから、38ページの13行目からですけれども「オ その他」という項目がございますので、言わば1ポツの残りということになりますけれども、この2項目について御議論をいただきたいと思います。御発言のある方は、会場では挙手にて、オンラインの方はチャットでお知らせくださいますようにお願いいたします。いかがでしょうか、エとオについてということになります。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 二之宮です。ありがとうございます。

37ページの1行から2行目にかけて「検討対象がどのような意味でのソフトローなのか」とあるのですけれど、その後の整理は、意義だとか、ハードとの関係だとか、策定主体ということから考えると、この意味というのに少し引っかかる、違和感がある。特徴だとか、何かほかのものに置き換えたほうが分かりやすくなるのではないかと思いました。

それから、3行目、ソフトローの諸相を、意義、関係性、主体の三つの分析軸に沿って整理することが有益であるとあります。確かにそのとおりですけれど、この素案を見ると、これは、私だけかも分からないのですけれども、分析軸に沿って整理すると、わざわざこういう書き方ではなくもっとシンプルに書けば、もっと分かりやすいのにと思うところが何か所かあると思います。これらによって整理することが有益であると、すっと書けばいいのではないかと思います。ここはこだわるものではありません。

それから、5行目「内容が抽象的で可塑性がある」とあるのですが、これは規範の内容に可塑性がある、規定の内容が抽象的ということが引っつけて書かれているので、何の内容なのか、何が抽象的で可塑性があるというところが少し分かりにくくなっているのではないかと思いました。

それから、6行目、②として法的義務を伴わないというのと、③法的拘束力を伴わないという違いは、この文章を読んだだけでは伝わらないと思います。もう少し説明するか、脚注で補うかをしないと、各回の資料に当たると分かるのですけれど、この報告書だけでは分かりづらいと思います。

それから、第2段落の13行目から14行目で、②または③×補完するソフトローのこの×というのが、やはり文章の中で出てくると違和感があるなと思います。

その後で「すなわち」として文章を言い換えているということなので、②または③と補完型ソフトローを組み合わせることによってと、文言で書いたほうがいいのではないかと思いました。

それから、20行目「ソフトローの遵守を有利な法的効果に結びつけることで」とあるのですが、有利な法的効果というのが分かりにくいし、誤解を生じかねないと思います。ここに関しては、40ページの11行目にあるのと同じように書いたらいいのではないかと思います。

要は下位規範遵守による適法性の推定の仕組み等の法的効果と書いてはどうでしょうか。法律効果に有利も不利もないのではないかと思うので、ここは少し誤解を与えるかなと思います。

それから、第3段落の27から29行目、ソフトローを活用する上で正当性を担保するために、主体を組み合わせることが重要というところですけれど、その主体を適切に組み合わせることが重要ということと、民主的正統性の弱さを補い恣意性を削除するということが、その主体を組み合わせることによってということで、少し結びつきにくい、分かりにくいと思います。むしろ正当性を保つためには、民主的管理を行われていることが重要であり、そのために民主的要素を取り入れることが必要であると、要はそういうことが言いたいのではないかと思いますので、もう少し工夫されたらどうかと思います。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

諸種、御指摘をいただきました。現在、河島委員、加毛委員から御発言の希望がありますので、まずは、それぞれの御指摘をお伺いしたいと思います。

まず、河島委員からお願いします。

○河島委員 河島です。

まず、37ページの上の辺りにソフトローの意義として①「内容が抽象的で可塑性がある」とあります。これは、飯田先生から「曖昧・抽象的な内容の規定であり、予測可能性は低くなる一方、多様な事態に対応できる」と説明があったことによると理解しています。

この①は、必ずしも準備段階だけに限っただけでなくて、佐藤隆文先生の言うプリンシプルとかなり重なるのではないでしょうか。つまり、これよりも前の本文で出てくる「抽象的な規範」に相当するのではないでしょうか。

ハードローの一部としてプリンシプルを位置づけ、法令の目的規定や行為規則のバスケット条項に出てくると考える見方がある一方で、佐藤隆文先生は、法令の外で独立した規範として策定するプリンシプルを強調されていたと思います。

その意味で、わざわざ37ページでソフトローの意義として②、③が重要であると書かないほうがよいのではないか、あるいは別の対応として、プリンシプルについては前に書いているので、ここでは、②、③の重要性を強調する旨を記したほうがよいのではないかと思いました。

続いて、エの箇所にデジタル社会におけるソフトローの限界についても書いたほうがよいのではないでしょうか。すなわち、「デジタル取引のように変化が激しいのでソフトローが必要だけれども、オンライン上で様々な取引や交渉が行われている中で、事業者が次々と名前を変えてアカウントを変えていくことが簡単になり、しかも海外の事業者の参入も簡単になっていますので、ソフトローが遵守されにくい状況があり、ソフトローだけの規律にならないようにしなければならない」といった趣旨の文章を、ここで書き込んだほうがよいのではないかと思いました。

続きまして、オの「技術」の箇所についてです。39ページの上のほうに「紛争やトラブルを解決する場面において」と書いてあるのですが、それ以外の消費者問題の情報収集の面あるいはケアの面での技術の活用についても書き入れたほうがよいのではないでしょうか。「対面や電話だけでなく、デジタルメディアを積極的に活用しつつ、多様な人々が相談でき、また、消費者問題を迅速に察知できる仕組みを構築する」といった文言です。

なぜ、こういったことを申し上げるかといいますと、若い人たちは国民生活センターなどに電話をせず、ソーシャルメディアでクレームを申し立てている状況については、何度も指摘されていますし、ケアの倫理についても扱われてきたからです。

ケアの場面で、コミュニティーの重要性が言われているわけですけれども、若い人たちにとってコミュニティーは、地理的な空間に限定されていませんので、消費者問題の相談にオンラインで応じていくこともあってもよいのではないかと思いました。

最後に39ページの上に「デジタル技術を活用したODR等が消費者の経済的・心理的交渉コストを低減」とありますが、異なった言語間での取引が増えているということもありますので、多言語化への対応も期待されると記したほうがよいのではないかと思いました。

以上、長くなりましたから、私からは以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、引き続き、加毛委員からお願いいたします。

○加毛委員 36ページ35行目から始まる「エ ソフトロー」についてですけれども、直前の二之宮委員や河島委員のお話にも示されていたように思うのですが、ここで書かれている内容は、飯田教授の御報告を踏まえて、ソフトローにどのようなタイプのものがあるのかを整理するという意味では有益なのだろうと思います。

ただ、これだけを読んでも、それぞれのソフトローとして、具体的にどのようなものが想定されているのかが、十分には伝わらないのではないかという印象を受けました。もう少し具体的に、それぞれの段落におけるソフトローが、いかなるものであるのかについて説明したほうがよいと思います。

また、二之宮委員がおっしゃった点ですけれども、36ページの14行目や23行目に出てくる×というのは、やはり日本語の表現としてはどうかと思いますので、修正すべきと思います。

なお、ソフトローの具体例に関して、先ほど河島委員からプリンシプルに関するお話がありましたけれども、前回も話題になったサスティナビリティ開示についても、それがソフトローと位置づけられるのか、位置づけられるとしたら、どの類型に当たるのかについて説明があってもよいように思いました。

○沖野座長 ありがとうございました。

そのほか、この二つの項目についていかがでしょう。

大屋委員、お願いします。

○大屋委員 ありがとうございます。

小さなことではありますが、37ページの27から28行目にかけて「民主的正当性」と「その正統性を担保する」と二つ出てくるのだけれども、これは、正当性と正統性が逆ではないかという感じがします。民主的のほうがlegitimacyだからということです。後者が内容の正しさに関わるからということです。

○沖野座長 ありがとうございます。

そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 すみません、このエ以降ではなく、最後に、31から39ページの(4)の規律手法の全体の順番なのですが、素案では刑事規制、行政規制、民事ルール、ソフトロー、その他の順になっているのですが、諮問の内容の順番は、民事、行政、刑事の順になっている、これは形式論ですけれども、次の39ページ以降の、2の実効性のある様々な規律というのも、健全層、中間層、極悪層の順で書かれています。

この報告書を、やはり一番誰が読むのかと考えると、消費者側、健全層の事業者側の関係者だろうと思います。

そうすると、やはり一番関心が高いのは、民事ルールのところではないかと考えると、諮問の順番と次の39ページ以降を考えると、民事ルール、ソフトロー、行政規制、刑事規制の順でもいいのではないかと思います。ここは、御検討いただければと思います。

○沖野座長 ありがとうございました。

そのほかは、いかがでしょうか。

よろしいでしょうか。ありがとうございます。今回、御検討をいただきましたソフトロー、エの部分と、その他という部分ですが、それに先立ちまして、最後に、二之宮委員から御指摘のあった、この前の部分の規制の手法についての順番ですけれども、報告書の中で順番に少しずれがあるというか、そういうところがあるのと、諮問との関係でも少しずれがあって、むしろ後のほうに合わせ、とりわけ諮問と、それから読者層の関心ということを考えたときには、そのような形のほうがいいのではないかという御指摘をいただきましたので、それは、それで御検討をいただきたいと思います。

それでは、前回部分に関わる部分ということになりますけれども、今回のソフトローのところについては、ソフトローについての、言わば理論的な分析としての分類がありましたけれども、これがどのように、その後つながっていくのかというのが、それぞれの内容がはっきりとは分かりにくい。飯田先生のご報告を見れば分かるということかもしれませんけれども、報告書の中でどういったものを念頭に置いているのかということをつけ足したほうがいいだろうということですので、その例として法的拘束力を伴わないと言って、すぐ分かるのかという問題も御指摘いただきましたので、それぞれ少し具体例を書いていただくというのがよろしいかと思いました。

それから表現として、×マークというマークを使うのは、その趣旨がはっきりしないということもありますし、文章化というのは御指摘のとおりだと思います。

そのほか、文章としてどうなのかとか、言葉の使い方としてどうなのかという御指摘を幾つかいただいたと思います。最初のほうで意義というのがいいのか、特徴なのかとか、それぞれの御指摘の部分は、さらに検討をしていくということでお願いしたいと思います。有利な法的効果という「有利な」というのがいいのかというところもあったと思いますし、表現の仕方として、少し順序を変えたほうがいいということもありましたので、それは、それぞれで御検討をいただきたいと思います。

それから、ソフトローの、どういうものを考えるかというときに、プリンシプルとの関係で、法定のプリンシプルという話もあれば、法律の外で考えるというものもありますので、それは、恐らくソフトローの中身の話として、さらに検討をしていただくということかと思いますし、それを想定しながら、この表現でいいのかということの御指摘があったかと思いますので、それも考えていくということになります。

それから、ここに必ずしも書かれていないのだけれども、これは追加したほうがいいということで御指摘いただいた点があります。

先ほどの、もう少し具体的な中身を書いたほうがいいというのも追加ということになりますけれども、項目といたしましては、とりわけデジタル化に伴った社会におけるソフトローの有用性はあるのだけれども、その限界ということも指摘をするべきだろうということです。これ自体は、御報告の中で、たしか小塚委員の御報告でも御指摘があったかと思います。ソフトロー単体だけでは、なかなか十分ではなくて、デジタル化のもとでは、事業者が容易に交代するとか、そういうこともあって遵守されにくいという状況があるので、そのような限界について書くべきだろうということであります。

それから、追加すべきだという点について2点目としましては、技術の有用性という部分について、紛争等の解決だけではなくて、情報の収集ですとか、ケア面での有用性というのも、やはり書くべきだろうと、とりわけ、それを支える実態として、若い方がソーシャルメディアで、そのコミュニティー自体が、物理的でない中で形成されているという状況も背景にあるということでしたので、そのような有用性というのも追加したほうがいいと。

それから、ODRに関しては、異なる言語という多言語間での対応という意味も非常にあると思うので、それを追加したほうがいいでしょうということであったと思います。

それから、概念や表現の中で、37ページの27行目から28行目の二つの正統性と正当性が、対応が逆ではないかということを御指摘いただきましたので、中身をさらに考えて適切に対応するということでお願いしたいと思います。

それでは、エのソフトロー、それから、オのその他については、御議論を一定程度いただきましたので、引き続き進めていきたいと思います。

そうしますと、次に、その他まで行きましたので、「2.消費者法制度における“実効性のある様々な規律のコーディネート”の在り方」ということで「(1)法規範の尊重が期待できる場合」、39ページの12行目、それから(1)は、23行目ですけれども、そこから40ページの24行目まで、(1)のところについて御議論をいただきたいと思います。

まず、同じように御発言のある方は挙手で、オンラインの方はチャットでお知らせいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 二之宮です。

39ページの33行目に、最低限の行政規制と民事ルールを整備することが必要というところで、言わんとすることは分かりますし、私自身もこういうことに関して、これまで発言をしてきたところですが、最低限のとかを書かれると、これは少し誤解を与えると思います。もう少し補足したほうよいと思います。念頭に置いているのは、行政規制、民事ルール、要はハードローですから、最低も最高もなくて、適用範囲だとか、いろいろなところで、どうするのかということを念頭に置いているのは分かるので、補足が必要ではないかと思いました。

それから、40ページの15行目、自主規制に当たって「ピアレビューを機能させること」とあるのですが、これは読んだだけでは、私はよく分からない。ピアレビューを機能させるというのは、どういうことなのかというところも、もう少し説明したほうがいいのかなと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

それでは、加毛委員からお願いします。

○加毛委員 ありがとうございます。

39ページ24行目「ア 遵法意識が高い場合」について、前回の発言内容にも関わりますが、第1段落及び第2段落において、事業者に対してポジティブなインセンティブを与えるという考え方や、その具体的な内容が書かれているのですが、ここの記述をもう少し膨らませることができないだろうかと思います。

前回、第20回会合における野村委員の御報告に対して、私が質問を差し上げたことについて発言しましたけれども、私の質問に対しては、第22回会合において野村委員あるいは経団連から、回答という形で資料の提出をいただいています。その回答の内容については、やや抽象的であるように思われるところもあるのですが、例えば、「規制に対する事業者の取組にも着目したインセンティブを取り入れた評価の施策を検討いただきたい」や、「新たな枠組みとして違反の程度などを加味した施策を検討いただきたい」という御回答もいただいておりますので、具体的にいかなる制度があり得るのかは、直ちには分からないところがありますけれども、この専門調査会の検討の成果として、もう少しこの辺りの記述を厚くすることが必要ではないかと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

それでは、河島委員、お願いします。

○河島委員 いろいろとありがとうございます。

1点目としましては、39ページからの「ア 遵法意識が高い場合」の箇所で書くか、あるいはここよりも前の31ページ目からの「様々な規律手法の活用」の箇所で書くべきかはあるのですけれども、どこかで事業者・事業者団体が抱きかねない多重規制に関する懸念を和らげるような文言というのを追加すべきではないかと思いました。

2点目としましては、40ページの「ウ 法規範に無関心な場合」で「啓蒙する」という言葉がありますけれども、かなり上から目線であると解釈されかねないので、「法規範に対する理解を促す」などとしたほうがよいのではないでしょうか。

ここで書いてあるのは、単に情報提供だけでは限界があって教育が必要であるという意味だと思います。教育に関しては別のところで書かれてありますけれども、田口義明先生からも職域(企業)における取組が重要という指摘もありましたし、その辺りをもう少し明確に書いてはどうかと思った次第です。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

今、最後に御指摘いただいた、ウの点なのですけれども、現在、3行だけこういう形で書かれており、こういう分類が大事ではないかという御指摘もいただいたのですが、実は、ウを単独で項目として維持したほうがいいのか、それとも遵法意識があり、少なくとも消極的な反応性が期待できるというところに、無関心だけれども教育等をすれば対応できるというものとして、イのほうに入れてくるということもあり得るかと考えられるところです。内容はともかく整理の仕方として、別項目を立てたほうがいいのかということにつきましても、少し御意見をいただければと思います。

それから、ウのところの中身としては、今、河島委員が御指摘くださったように、啓蒙というのが少し姿勢としてどうかという問題はあるけれども、やはり法規範の理解を促すという手法としては、企業の中での取組という話もありましたので、田口先生の御報告なども参考にしながら、もう少し膨らませることができるとすると、分量的には少し増えることにはなりますが、しかし、内容的には教育面の話ということです。この項目立てについて、大屋委員、お願いします。

○大屋委員 ありがとうございます。

これは多分、ウは前回私が言った無知層みたいなものに対応した内容だと思います。つまり、さすがに事業者さんだと、ビジネスに関連する法規というのは事前に調べていることが通常であって、だから積極的、消極的に遵法的な態度を取る、もしくは逆に潜脱する方向に行くかということだと思うのですが、CtoC取引ですね、メルカリとかヤフオクみたいなものが主な契機となって、個人がそういう対消費者取引に参入してきたときに、彼らは必ずしもそういう関心もなければ、法的な知識もないし、それを調べなければいけないという意識もないというところが問題として指摘されるだろうと思うわけです。

したがって、このウが何で出てくるかということについて、今、述べたような背景を少し触れたほうがよろしく、そうすると、企業内での教育というよりは、やはりそれが、これまでの教育とか、啓蒙とか、広報が届いていない層というのがいるのだということを明確に踏まえた上で、啓蒙と書くか、教育方法と書くかはともかくとして、そういうことが必要だということを示すことが重要だと思っています。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

より趣旨が明確になったと思います。もともと39ページの2のところでは、19行目を見ていただきますと「その際、悪質・不当な行為を排し、健全な事業活動を普及・促進する」ということで、一方では、問題行動はなるべく排し、健全な活動は伸ばしていくということから、規律対象となる事業者に法規範の尊重が期待できるかどうか、そのグラデーションを踏まえるというので、有効、適切な制度設計が可能になるということで、ここでは事業者と書いて、そのグラデーションというのを今まで想定してきたと思います。

ですので、事業者としても、普通調べるだろうけれども、調べもせずにやっているようなところもありますねというのは、どういう場合なのだろうかという問題もありましたし、むしろ、そういう教育は企業内でしっかりやっていますということにもつながるのですが、今の御指摘は、むしろ、事業者というよりは、膨らんだ形で市場自体の適正だとか、取引環境の健全さで安心・安全な取引をできるというためには、まさにCtoCになっている、あるいは何回も繰り返すような、だけれども消費者なのかという、そういう取引の場における法規範への対応ということを考えると、こういう層が出てきてという話ですので、このア、イでもともと整理していた事業者とは少し違うのかもしれませんね。ですので、そうだとすると、逆にア、イとは少し違う面として、こういう面もあって、それは、事業者というよりは、事業者と言えるのかどうかという辺りのほうが問題な場面であるということになるのかもしれません。それが、最初のほうの事業者の分類というところと、うまく合うのかということも含めて、内容はよく分かったと思いますので、扱いについて、さらに検討をお願いしたいと思います。

それから、そのほかにつきましては、文章が分かりにくいという御指摘をいただいたところが幾つかありました。

一つは、39ページの33行目以下の最低限の行政規制と、紛争解決のための民事ルールということですけれども、最低限のというのが、少し印象というか、誤解を与えないかということもあるかと思いますが、ここ自体は遵法意識が高いということなので、それが分かれば、法の遵守というのがやっていただけるだろうということは、十分期待できる層に、どういう法制度を用意するのかと言ったときに、行政規制としては、ミニマムでいいのではないかという含みだと思いますけれども、そういう含みであるということからすると、それでもやはり分かりにくいですかね、二之宮委員、33行目はいかがですか。

「最低限の行政規制」という部分ですけれども、39ページの、33行目の遵法意識がある事業者なので、そういう事業者に対応するには、行政規制としては、過重でないように最低限というニュアンスのようですが、最低限というのは言い過ぎだということですかね。

○二之宮委員 いや、言い過ぎというより、誤解を与えるのではないかと、こういう意味で最低限という言葉を使っていますというのが伝われば、最低限を使うこと自体に抵抗があるわけではないですけれども。

○沖野座長 山本座長代理、お願いします。

○山本座長代理 恐らく、行政規制と民事ルール自体が、何か変わるという話ではなく、その前の32行目から33行目にある事業者による解消・救済のための積極的な取組があるときに、行政規制や民事ルールの適用の仕方を柔軟にし、例えば、行政処分を控える等のことかと思いました。

その辺りがうまく伝わるようにすれば、今の二之宮委員の懸念が解消されるかと思います。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

この中身が少し分かりにくいと、やはりそういうことですね。これで何を指しているのか、規制自体の話なのか、運用のレベルの話なのか、あるいは最低限というのが一体どういう話なのかと。大屋委員、お願いします。

○大屋委員 全く同じことだと思いますけれども、要するに強制的な手続というものをできるだけ回避して、事案の解決が図れるようにしましょうということを、恐らく言いたいわけであって、だから課徴金のような直接的な強制、行政的な強制手続や、それを差し控えるとか、あるいは訴訟ではなく、ADR、ODRなどの柔軟な紛争処理手続を利用できるようにするとか、そういった具体的な書き方をもう少しするといいのではないかと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

ここでも、これが指している内容がどうかということをより明確に、具体例などを挙げていただくと分かりやすいのではないかということでしたので、より正確な理解ができるようにということだと思いました。ありがとうございます。

もう一つ、40ページの15行目からの自主規制に合ったピアレビューを機能させるということについて、自主規制の場合は、自主規制をするというか、それに関わるというか、その構成員であるというか、そういう中で相互に評価というか、その中で自主的に評価というか、そういうことなのかと思いましたが、大屋委員、お願いします。

○大屋委員 そういうことだと思います。自主規制に参加する利用者同士の総合評価や総合点検という話ですね、それを機能させることでよいのではないでしょうか。

当初は、やはりそれで自主的な改善を促すということになるでしょうし、それが不十分である場合には、そこに書いてあるとおり、違反者やアウトサイダーに対する民事効や行政措置の発動というところにつなげていくのだと、そういう趣旨だと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

そういう趣旨だと思いましたが、今、言っていただいたような表現であれば、より分かりやすいかと思いますので、そのような形でお願いしたいと思います。

それから、前回も御指摘いただいたところですけれども、インセンティブの話として、まさに遵法のほうに持っていくというか、そういうポジティブなインセンティブの話はもう少し膨らませて、内容を書いたほうがいいということで、具体的な中身としては、野村委員の御報告に関連してのやり取りがあったものなども、例えば、こういう形でと考えられるのではないかということでしたので、前回の御指摘と併せて、インセンティブのところ、特にポジティブなインセンティブについては、よりイメージが湧くように、あるいはその重要性が分かるようにしていただくということでお願いしたいと思います。

それから、様々な規律のコーディネートというときには、その規律なり規制が非常に多重化して、対応がかなり負担になると、そういう御懸念かと思いましたけれども、そういう懸念に対して懸念は当たらないのか、このような対応が考えられるのか、そういった点も書くべきではないかという御指摘をいただきました。

それが、ここがいいのか、もう少し前のほうがいいのかということも御指摘いただいたのですが、河島委員、今のような御趣旨だということでよろしいでしょうか。

○河島委員 はい、そのとおりです。

先ほど議論のあった39ページの33行目、34行目の辺りでも、行政処分を控えることなどをもう少し詳しく書いたら、多重規制に対する懸念が和らぐのではないかと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

御指摘の点は理解できたかと思いますので、記述を加えることができるかというのを引き続き検討いただきたいと思います。

山本座長代理、お願いします。

○山本座長代理 今のところですけれども、自主規制を少しはっきり書き分けたらどうかという気がいたしました。

例えば、11行目の「下位規範遵守による適法性の推定の仕組み」という辺りは、国が定める政省令等については、適法性の推定ではなく、それによって適法かどうか決まるという話ですので、むしろ自主規制を想定した記述かと思いました。

それから、今の河島委員の御指摘の部分も、全体に書いてあることは書いてあるかと思いますが、伝わりにくいので、特に自主規制については、こうだと少し書き分け、整理したらどうかという気がいたしました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

河島委員から御指摘いただいたところとしては、再度御指摘いただいた中では、39ページの33行目から34行目ということがありましたが、今、山本座長代理からは40ページの11行目辺りの記載ということがありまして、それぞれ自主規制というものについて、少し書き分けるということがより理解の促進につながるのではないかということでしたので、その観点から工夫ができるかというのを、さらに検討をお願いしたいと思います。

では、室岡委員、お願いします。

○室岡委員 ありがとうございます。

まさに、いま議論に上がっていた点なのですが、私もガイドライン、指針、自主規制等と並べてしまうよりは、ガイドラインや指針は、やはり行政側が出すものですし、自主規制はそれに対し原則としては業界の中でやるものだと思うので、やはり書き分けたほうがいいということに賛同いたします。

関連して、もし、ここにソフトローとして例を足すならば、もしかしたらこれはガイドラインや指針の範疇に入るのかもしれないですが、努力義務も行政の側から出すという意味では、むしろ自主規制を入れるよりは自然なのかなと感じました。

○沖野座長 ありがとうございます。

書き方、整理の仕方の工夫の方向性について御指摘をいただいたと思います。ガイドラインという言い方は、結構一般用語としては分かりにくい面もあって、行政など、国側というか、公共団体というか、そちらから出るガイドラインもあれば、団体でガイドラインを策定するということもありますので、どういうことを内容としているのかというのは念頭に置いて使い分けるなら使い分けたほうがいいようにも思いました。

それから、努力義務の問題は、位置づけが非常に難しいものでもありますけれども、それについても加えてはどうかという御指摘をいただきましたので、それを加えて、よりよい内容にできるかというのは検討をお願いしたいと思います。

では(1)の部分はよろしいでしょうか。

それでは、次に「(2)法規範の尊重が期待できない場合」、40から41ページということになります。40ページの25行目から41ページの13行目までですけれども、この部分についてお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 二之宮です。

この40ページから41ページのところで書かれていることは、刑事規制、行政規制、関係機関の連携、その辺りのことが書かれていまして、これは第12回の横田教授から御説明があったトリプル・エンフォースメントの手法のことが書かれているのだと思います。

ただ、この報告書の全体を通じて、健全な市場の確保ということを掲げて、それの一つとしては、健全層の事業者の創意工夫を尊重すること。それと、極悪層については、官民総力を挙げて徹底的に市場から排除すると、これがセットになっている書き方になっています。

官民総力を挙げてと強く打ち出しているのであれば、このこと自体は、私は大賛成なのですけれども、トリプル・エンフォースメントに加えて、これは、どこまで具体的に書くかというところなので、強く具体例を書くというところまで意見を述べるものではありませんけれども、第13回の川崎教授の御説明があった犯罪収益剥奪強化と被害者の被害回復のパッケージでの強化だとか、没収、追徴の強化による被害回復給付金制度の原資の確保だとか、こういったこともいろいろ例を挙げて強化策というのを述べられていましたので、もう少し踏み込んで書いてもいいのではないかと、官民総力を挙げて徹底的に排除するのだということを打ち出したほうがいいのではないかと思いました。

それと、41ページの4行目「消費者安全法の財産事案に対するアプローチを積極的に活用する」と、これは、先ほどのピアレビューと同じようなことを感じたところなのですけれども、この素案、報告書は、とにかく片仮名が多いので、分かるところは分かるように書いて、もう法律に規定があるのだったら、わざわざ片仮名に置き換える必要は極力避けたほうがいいのではないかと思います。

これは、前に加毛委員が言われていた消費者安全法の38条の2項のことだと思いますので、具体的にどこをどう書くかというところに、いろいろ検討の余地があるというのだとしても、消費者安全法の財産事案に対するアプローチと言うだけでは、何を指しているのだろうと、伝わらないかなと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

この部分について、そのほかいかがでしょうか。

よろしいでしょうか。内容面では、基本的にこのように書いていただいているということで結構だと思うのですが、川崎教授の御報告などもありましたように、刑事法とセットにした上での被害回復の様々な強化ということもあるので、そういったこともより書いてはどうかと、ここで書かれている手法だけではなくということでしょうか。

大屋委員、お願いします。

○大屋委員 本当に小さなことで申し訳ないのですが、41ページの10行目「健全な事業者の予見可能性を図り」というのは、こういう言い方をするかなと思うところがあって、予見可能性を向上させとか、担保しとか、そんな感じではないかなと思いました。

○沖野座長 ありがとうございました。

予見可能性を図るは、確かに少し日本語としてどうかということがありますので、中身に照らして工夫した表現にしていただきたいと思います。

それから、片仮名遣いという問題もありますし、必ずしも、一般的にこれだけで分かるものではないことの表現を省いているというか、ピアレビューとかもそうだと思うのですが、ここも安全法の財産事案に対するアプローチとは何だという、その先の問いが立つので、もし、先ほど御指摘のあった38条2項の手法などの展開だとか、そういうことであれば、もう少し分かるように書くということかと思います。

この部分は、加毛委員が御報告くださったものだと思いますので、それを踏まえて、内容をも少し読んで分かる形にということでお願いできればと思います。

では、この項目はよろしいでしょうか。

ありがとうございました。

それでは、次に、41ページの15行目から「3.消費者法制度の担い手の在り方」ということについて、御議論をいただきたいと思います。

41ページから44ページまで、一気に最後まで行くということですが、この中には、行政ということも入っております。

それでは、3の全体について御指摘をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 42ページの「イ 取引基盤提供者」のところです。

26行目から28行目で「取引基盤提供者には、取引の場合における消費者の安心・安全」云々とあって、「選択の確保といった役割が想定される」と書かれているのですが、この内容は、これまでさんざんいろいろなところで言われてきたところだと思います。

こういった役割を担う背景として、この専門調査会の中でいろいろ出てきましたし、この素案の中でも、例えば、21ページの14行目にある、第2、デジタル化が取引環境に与える影響のところでは、プラットフォームを含む事業者側のアーキテクチャーの権力を強引に行使した取引環境の設計とか、あるいは22回に小塚委員のほうからのプレゼンで、フードデリバリーにおけるデリバリーサービスや、オンライン通販におけるフルフィルメントサービスのようなプラットフォーム事業者は、単なるシステムの提供だけではないという御報告がありました。

あと、素案の42ページの20行目には、離脱が難しい依存状態が生じさせているということが書かれています。

それで、この3点ぐらいを書き込んだ上で、単に役割が想定されるというよりも、もう少し踏み込んで書いてもいいのではないかと思いました。

それから、43ページに行政のところが書かれています。この報告書は巻頭言、前文にも端的に書かれている内容からしても、今後の消費者法制度の羅針盤のようなものになると、私は思います。

44ページの15行目以降で「分野横断的に関係行政機関が適切に連携することも重要」と、さらっと書かれているのですが、消費者庁が消費者行政における司令塔機能をますます発揮することが必要になってくると思いますので、消費者庁の強化というものが必要だと思いますし、分野横断的に消費者政策を企画するというためには、消費者委員会の強化というのも必要になると思います。

ですから、この消費者庁と消費者委員会の強化が必要だということも、この報告書に盛り込んではいかがかと思います。

それから、これは言葉の問題なのですけれども、42ページの民間主体の事業者団体のところで「事業者の健全な事業活動」と、ここで健全と使ったからなのかも分かりませんけれども、2行目で公正な市場だとか、9行目で公正な市場と、これまで健全な市場といろいろなところで書いているので、ここは何かあえて書いているのか、あるいは前で健全な事業者と使ってしまったから、公正に置き換えているのか分かりませんけれども、健全な市場なら健全な市場で、公正で健全な市場ならそれで、統一させたほうがいいのではないかなと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

そのほか、いかがでしょうか。

では、山本座長代理、お願いします。

○山本座長代理 今の行政のところですけれども、二之宮委員が指摘された国の問題とともに、地方公共団体の問題があります。地方公共団体における消費者行政の強化ということは、ずっと言われていますが、今、地方公共団体は、消費者行政に限らず、リソースが不足している状態にあり、消費者行政に限らず、どのように行政機能を維持していくかが、深刻な問題になっています。ここの主なテーマではないと思いますので、細かく書く必要はないと思いますが、地方公共団体における消費者行政の維持・強化のための方策を考えていかなくてはいけないということは、一言入れておくとよいかと思いました。

詳しくは、消費者委員会で検討したこともありますし、今、総務省の検討会でも、消費者行政を含めて取り上げていますので、そういったことも視野に入れながら書き加えるとよいかと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

では、加毛委員、お願いします。

○加毛委員 言葉遣いというか、表現の話なのですが、42ページ36行目から43ページ1行目に「フルフィルメント事業者」という言葉が出てくるのですけれども、ここでも説明を加えないと読みにくい気がします。片仮名言葉の対応ということにも関わるのかもしれませんが、やはり読者に読みやすく伝わりやすい報告書にするという観点から、説明を付加してはどうかと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

最後に御指摘のあったフルフィルメント事業者なのですけれども、そもそもこれは、民間主体として事業者団体、取引基盤提供者で、その他の取引関係主体となっていて、それから、消費者団体、ケアの担い手、専門家組織等ということになっているのですけれども、その他の取引関係主体というのを、取引基盤提供者というのをクローズアップしているということに伴って、その他のということが一つ出ているのですが、しかし、具体的には、フルフィルメント事業者が役割を果たすと、これは小塚委員の御報告などでもあった話です。

ただ、他方で、二之宮委員から御指摘があったように、フルフィルメントという部分を実際どこが担うかというときに、全く別の取引関係主体なのかという問題も御指摘があったところで、このウという項目を、そもそもどのように扱ったらいいのかという問題があります。すなわち、別途独立の項目として立てるのか、以前は、取引基盤提供者その他の取引関係主体という形だったのかと思いますけれども、そう書きますと、その他の取引関係主体とは何かという問題があって、それが今まで出てきた中だと、フルフィルメント事業者が当たりますかということで、御報告の中から補充的に役割を果たすということもありますねということですけれども、それを取引基盤提供者と別立てにすると、この程度になってしまうのだけれども、独立した項目として、そもそも立てるのがいいのか、立てたときにフルフィルメント事業者だけを書いていいのか、それからフルフィルメント事業者というのは、これだけ言われても確かに分からないですので、先ほど小塚委員の御報告の例も出していただきましたが、どういう部分を指しているのか、それから、どういう場面を、取引基盤提供者とは別にということかと思いますけれども、指しているのかは、もう少しその報告を見よということではなくて、この報告書自体から分かるような形にしたほうがいいという御指摘なのですが、その他の取引関係主体として、この中身を明らかにすべきという点では、フルフィルメント事業者だけを書いているのですけれども、そのような項目立てでよろしいものでしょうか。

いかがですかね、ほかにどういった主体が考えられるかなどですが。大屋委員。

○大屋委員 すみません、私自身はアイデアがないのですけれども、ここは小塚委員が、何が言いたいかということを確認したほうが安全かなという気がしました。保留にしておくといいかもしれないと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

専らこの部分のフルフィルメント事業者の関係などは、まさに小塚委員の御報告を踏まえて書いているところがありますのと、それから、取引基盤提供者以外に、ほかの主体もというときに、これ以外にあるのかということも、あるいは小塚委員から補足をいただくなり、御確認させていただいて、ここを書いたほうがいいのかもしれません。

いかがでしょうか。大屋委員、お願いします。

○大屋委員 オのほうなのですけれども、ケアの担い手というのが出てきて、これは書くこと自体はいいのだけれども、どういうケースを想定しているか、ここだとよく分からないなという気がしました。

どちらかというと、一つあり得るのは、要するに事業者自身とか、プラットフォーマーがちゃんと情報提供するとか、熟慮期間を置くなどの取組をすることによってケアの機能を果たさないといけないねという話はしたところですけれども、それと独立のケアの担い手というのが、何かあり得るのかなというのは、ちょっとよく分からない。あるとすれば、実例を込みで書かないと分からないだろうという気はいたします。

それと、専門家組織について挙げておくのは適切だと思いますが、これは、具体的には、例のダークパターンに関する専門家組織のようなものを考えているわけで、これもそういう形で実例を挙げたほうがよいのではないかと。つまり、よくないウェブデザインの例としてのダークパターンを提示し、それを回避することを事業者に働きかけるという具体例を入れたほうがいいのかなと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

それでは、加毛委員、お願いします。

○加毛委員 先ほど沖野座長からお尋ねのあった、42ページ35行目の「ウ その他の取引関係主体」につきまして、41ページに書かれているとおり、42ページ以下の内容は、取引当事者である消費者・事業者以外の関係主体に関するものであり、フルフィルメント事業者は、契約の当事者ではないものの、債務の履行過程において一定の役割を果たす主体として想定されているのだろうと思います。同様の主体に関する具体例が挙がるのであれば、この項目は残しておいてもよいのではないかと思います。

他方、フルフィルメント事業者だけが具体例なのだとすると、それは、一定のプラットフォーム提供者のサービスを念頭に置いた事業者であることになりますので、「イ」に取り込んでいくことが、報告書を読みやすくすることにつながるのではないかと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

これも最後に言っていただいた点ですけれども、小塚委員にも確認をさせていただいて、どういうものが想定されるかというのを、さらに追加があれば、今、加毛委員から御指摘あったような取扱いということを考えたいと思いますが、この場で、こういうものが考えられるのではないかという御示唆などがありましたら、お教えいただきたいと思いますけれども、何かございますでしょうか。

それでは、改めまして、本日御欠席の委員も含めて、情報の追加収集をした上で、この項目をどうするかというのを考えたいと思います。フルフィルメント事業者だけであるとすると、むしろプラットフォーマーとの関係になるので、独立したというよりは、それに関連して、こういうところが補助的に役割を果たすことも期待されるということで、イのほうに取り込んで、イのタイトルはそのままでもできるのかなと、今、伺っていて思いました。

それから、取引基盤提供者につきましては、様々な役割の中で、26行目から28行目の役割というのは、まさに期待されると、想定されるということではありますけれども、今までから指摘されてきたところでもあるということで、その背景ですとか、分析とか、今まで素案の中にしていますので、それも含めて、なぜこういったことが出てくるのかということを書き込んだほうがいいのではないかということでした。それから、例えばフルフィルメントの話だとすると、そういうものもここに書いてくるのであれば、それと関連させて記載を少し厚めにすることが考えられるのではないかということでした。どういう形があるかというのを、さらに検討をお願いしたいと思います。

それから、行政関係につきましては、一方で、消費者庁や消費者委員会のそれぞれの機能と役割を踏まえた、まさにそれゆえの強化が必要であるということを、より書いたほうがいいというお話がありました。

それから、地方公共団体の消費者行政の機能の維持や強化ということについても、まさにここで書いたほうがいいと。リソース不足の中で消費者行政だけではなく、問題を抱えている、それを踏まえた検討もされているところだけでも、だからこそ、やはりその維持機能強化の重要性ということをここでしっかりと書いたほうがいいのではないかという御指摘をいただきましたので、それは、まさに記載を追加するということでお願いできればと思います。

今までのところ、これで44ページまでということになりますけれども、いかがでしょうか。二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 すみません、先ほどの地方の消費者行政のところで、山本座長代理がおっしゃっていて、私もはっとさせられたのですけれども、どこまで書くかというところで、地方消費者行政、地方自治体の強化そのものもそうなのですけれども、エの消費者団体との関係で、地域の消費者団体との連携を担っているのは、まさに地方の消費者行政ですし、オのケアの担い手というのも見守りだとかを含めると、やはりそこのネットワークの基盤づくりは、地方自治体でしょうから、それらと絡めた上で、やはり強化、補充、てこ入れが必要だということも一言触れたほうがいいのではないかと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

他の主体との連携ということでも、非常に重要な役割を担うという観点から記載をしてはどうかということでしたので、検討をいただきたいと思います。

それから、ケアの担い手のところは、これがどういう場面の、どういう主体を考えるのか、事業者側の役割なのか、そうではないのかということは、もう少し足したほうがいいということ。

それから、専門家組織というのも、例えばどういうものなのかということの具体例があると分かりやすく、既にダークパターンについての協議会というのでしょうか、詳細に御説明もいただいたところですので、そういった例を挙げることで、どういうものがあり得るのかというイメージをよりつかめるようにしたほうがいいということですので、それは、まさにお願いをできればと思います。

それ以外のところでは、市場が健全な市場であるのか、公正な市場であるのか、公正かつ健全な市場であるのかということが、あちこちでばらばらになっているので、それは、違う概念を言っているのでなければ、統一ということで注意をしたいと思います。

健全な市場でよろしいのですかね、二之宮委員。

○二之宮委員 この言葉を言ったときは、私は、もうセットだと思って、中身は一緒だと思っているのですけれども、競争政策をやっているところと、役所のデマケといいますか分担を気にするのであれば、消費者行政分野では健全な市場を目指しているのですと、明確にして、健全な市場の確保、推進を進めていったらいいのではないかと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

そのような御示唆もいただきましたので、それぞれの分野によって、概念として違う部分があるかもしれませんので、その意味でも、使い分けというのは難しいように思いますから、ここは健全なということで、消費者行政にとって最も重要なというところに基点を置いて、消費者行政だけではないと思いますけれども、消費者法制度にとって大事なというのは、そこに光を当てていますということで、言葉遣いを注意していくということにしたいと思います。

それでは、山本座長代理、すみません、ここだけに限らず、御指摘をいただければと思います。お願いします。

○山本座長代理 43ページのケアの担い手ですけれども、ケアということ自体は、非常に広がりを持ったものとして捉えられていたかと思います。あらゆる主体がケアの視点、観点を持って行動すべきであるということかと思いました。それとは若干位相が異なる問題として、消費者行政を専門とする団体と、それ以外の主体との連携という話があります。例えば、今、二之宮委員が挙げられましたけれども、社会福祉関係の団体とか、あるいはその関係の行政機関です。それから、地方公共団体においては、そういった諸主体、諸団体を一つのプラットフォームの上に乗せて協力関係をつくっていくことが重要だと議論されています。もし主体という観点から言うとすると、そういう消費者保護を専門とする団体、機関等以外の主体との連携といったことになるかと思いました。

ケアは、観点、視点ということになるかと思いますので、それをどのように書くかという問題はあるのですけれども、主体という点からいうと、そういう問題があるかと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、まさにケアというのは、視点ですとか、機能ですとかというところとともに、その主体としては、今、社会福祉協議会とか社会福祉関係とかを挙げていただきましたが、そういったことも視野に入るということで、より具体的に明らかにできればと思います。

それでは、これまでのところでよろしいでしょうか。

加毛委員、お願いします。

○加毛委員 すみません、先ほどのフルフィルメント事業者についての補足なのですけれども、報告書のなかでは、21ページの脚注4において、フルフィルメント事業者に関する説明がありますので、そこへの参照指示をつけることが考えられます。

そして、21ページでは、「フルフィルメント事業者や物流事業者」と書かれていることから、フルフィルメント事業者の他にも物流事業者を取引に関係する主体として想定できるのかが、42ページ35行目との関係で問題となることを申し上げておきたいと思います。

報告書を読みやすくするという観点からすると、42ページでは、取引基盤提供者について、いかなるタイプの事業者があるのかを説明しており、これは20ページの説明を繰り返して書いていることになります。そのような形で、前に説明があっても、もう一度説明することはあり得ると思います。他方、一度説明したことを繰り返さないのであれば、最初に説明したところを参照するよう指示することが、報告書の読みやすさという観点から重要であるように思われます。

○沖野座長 ありがとうございます。

報告書全体の書き方というか、姿勢というかに関する点と、それから具体的にフルフィルメント事業者についての21ページの記述との関係あるいは関連づけ方、ないし再びここで、その内容を明らかにするということも含めて、書き方を検討するということだと思います。

それから、物流事業者というのがどう絡んでくるかというのは、海外展開との関係で日本の接点ということで出てきているのですけれども、同じようにここで出せるのかということも含めて、これもまた小塚委員から御指摘を非常に詳しくいただいていたところなので、確認も含めてお願いできればと思います。

それでは、以上で第3につきましては、一通り御指摘をいただいたということで、第1、第2に戻っていき、それから、前文、検討経緯という順番でお願いしたいと思います。

それでは、次に今度は戻りまして、第1のほうですけれども「第1.消費者が関わる取引を幅広く規律する消費者取引全体の法制度の在り方について」、これが9ページからになります。

この第1と次の第2は、中間整理の内容を基に、この後半の議論を踏まえてブラッシュアップをしたという内容になっています。

どういうところがブラッシュアップをしたかということですけれども、そのうちの1の消費者の脆弱性というところでは、10ページの11行目以下のパラグラフを追加していただいていまして、その前までの脆弱性の類型を踏まえて、その消費者の脆弱性を端的に総括する内容というのを加えていただいております。

ただ、このまとめ方がいいのか、状態のことでありという表現だとか、焦点の当て方がいいのかというのは、前回の御議論の中でも、この部分、それから、この記載を受けてまとめている前文の1ページの9行目について御意見をいただいたところですので、改めて、この部分について、前回も御指摘いただいたところでもありますので、さらに追加をして御指摘いただくことがあれば、御議論をいただきたいと思います。

それから、いろいろブラッシュアップというか、追加修正した中で、もう一つが10ページの(2)の17行目で「近代法では強い個人をモデルとし、自由な意思決定により」とあるのですが、中間整理では、自由かつ自律的な、自律は、立つほうではなくて、律するのほうの自律的な意思決定によりと記載していたところを、自律的というのを削りまして、シンプルに自由な意思決定によりとしています。

この削った趣旨なのですけれども、13ページの31行目のところに、自分自身の選択であると納得できるような自律的(autonomous)な決定が可能になること(関係的自律)を保障するという、そういう関係的自律との関係でも、自律という形で自律的がキーワードになりますので、これとの関係を考え、対比的に分かりやすくする趣旨で、ここは自由な意思決定のほうに焦点を当てているということです。このような整理でいいのかどうかということも御指摘をいただければと思います。

それから、次に、第1のところでは、少し飛びまして、16ページの17行目から3としまして、いわゆるアテンション・エコノミーについて記載をしているということなのですが、順序につきまして、少し入れ替えまして、この対応の在り方、17ページの9行目以下ですけれども、ここの「ア 『消費者』の捉え方」を先頭にして、次に「イ 『消費』『消費者取引』の捉え方」と、記載順序を若干入れ替えているということでございます。

今の3項目目ぐらいが、特に違いでもあり、御議論をいただければと思うところですが、それ以外も含めて、ここは第1全体ということでお願いしたいと思います。

第1全体について、御指摘や御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 二之宮です。

第1の1ポツの脆弱性の概念の捉え方のところなのですが、前文を入れていただいて非常にすっと入りやすくなって、それを踏まえて第1を読み返すと、(1)で類型・内容が、まず最初に来て、(2)で脆弱性を捉える必要性が来て、最後に3として、消費者法制度の在り方という順番になっているのですけれども、強い個人、近代法モデルから脱却するのだということを前文で書いてあって、まず最初に、それがパラダイムシフトの一つ目ですから、(2)の捉える必要性を先に書いて、では、その脆弱性というのは、どういうものがあるのかという類型、内容をその後に回して、それを消費者法制度では、どう捉えましょうかと(3)と、(1)と(2)の順番を入れ替えたほうが、すっと読みやすいのではないかと思いました。

それから、10ページの17行目で、これは修正をいただいたところで「自由な意思決定により」とあるのですが、これは、強い個人をモデルとして、従来は、情報・交渉力の格差を埋めれば、自由だけではなくて、情報を与えれば合理的な判断ができただろうというのが前提になっていたはずですから、自由で合理的な意思決定にしたほうがいいのではないかと思います。これは、脆弱性の限定合理性のことを考えても、そうではないのだよということにつながってくると思います。

同じ自由な意思決定というのは、前文の1ページの9行目だとか20行目、11ページの8行目、同じように自由な意思決定という言葉が出てきますので、そこは全部自由で合理的な意思決定というのが今までの捉え方ということで、書いたほうがいいと思います。

それから、9ページから10ページのところで、脆弱性の類型、内容として、三つの脆弱性、類型的・属性的脆弱性、限定合理性による脆弱性、状況的脆弱性と、この三つはキーワードですから鍵括弧でくくって明確化したほうがいいのではないかと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

そのほかの点は、いかがでしょうか。

大屋委員、お願いします。

○大屋委員 今、二之宮委員から御指摘のあった10ページの17から18なのですけれども、合理的だったら、それなりに多分幸福になると思うのですね。問題は、自由な意思決定をさせると、その内容は自動的に合理的であり、したがって、幸福な社会状態になるというロジックだったものがおかしいということだと思うので、自由な意思決定は、それ自体として合理的であり、それに基づいて契約を結んでいくことで幸福な社会状態になるという書き方をしてもいいかなと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

そのほかに、いかがでしょうか。

よろしいでしょうか。前回、加毛委員から御指摘いただいた点でもありますけれども、また、改めて前文や経緯については、再度確認というか御指摘をいただきたいと思いますが、加毛委員、お願いします。

○加毛委員 前回の発言内容は繰り返さないということで、新しいことだけ申し上げたいと思います。

先ほどから話題になっている「自由な意思決定」という言葉に関して、13ページ29行目から始まる段落で、いわゆる「関係的自律」を念頭に置いて、「自律」という言葉を使わないことにしたという御説明だったのですが、「関係的自律」というのは「関係的」という形容の文言がついているのであり、「自律」という言葉自体は、必ずしも、自分自身の選択であると納得できるような決定をすることまでは含意しないのではないかと思われます。「自由な意思決定」という言葉を使うこと自体には、反対ではないのですけれども、「自律」という言葉の意味について、一言申し上げたいと思います。

すみません、ただ今は、「第1」全体が質疑の対象となっているということでよろしいでしょうか。

○沖野座長 はい、結構です。お願いします。

○加毛委員 ありがとうございます。18ページ14行目から15行目のところに「『無償』で供与されるポイント」と書いてあります。中間整理からこのような表現を用いて参りましたし、私も、専門調査会において何度か「ポイント」と発言をしてまいりました。ただ、報告書の読みやすさという観点からすると、「ポイント」という言葉だけで。その意味するところが適切に伝わるのかについて、心もとなく思うところもあります。

ここで言われている「『無償』で供与されるポイント」というのは、企業ポイントなどとも呼ばれるもので、社会で広く利用されている、企業から無償で供与される決済手段を意味するものと思います。そのことについて説明が必要かもしれないと思った次第です。

○沖野座長 ありがとうございます。

自律の点については、立つほうの自立との関係もあるわけですが、ここは律するのほうですけれども、まず一つは、10ページの17行目について、今、自由な意思決定という形で再度まとめていただいたのですが、自律的なというのを落とすのでいいのかを含めて、大屋委員、お願いします。

○大屋委員 確かに、まず、律するほうの自律について言うと、通常は他律の対義語であるとされてきて、それは、おおむね干渉がない状態だとイメージされてきたのが事実だと思いますが、一方で、そこが私の本来の専門なのですけれども、二つの自由概念という古典的な理論があるように、自由という言葉も、実は他者の干渉がない状態としての自由と、自己実現できるという結果としての自由というものは、常に重なり合いながら使われてきたわけですし、これは、実は権利の意思説と利益説の対立にも重なってくると。つまり、これまでのモデルでは、この二つを必ずしも分離する必要がないままに使われてきたところ、今回の報告書の多分一つの中心的なポイントの一つは、ここには、実は立つ自立と、律する自律の二つがあって、これがずれるというのが、まさに現代的現象なのだということを言う点にあると思うのです。

ですので、そのことを考えると、ここでその話をしないほうがよくて、つまり13ページを読んだところで、その主張がはっきり分かるようにしたほうがよいので、ここは自由だけにしておくとよいのかなと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

概念の整理や、どこで何を捉えるかということについて、明確にしていただいたと思います。

それから、自律という表現について、今までどういうことを考えてきたかというのは、関係的自律の中で言われているものとは一致しないとか、少しずれるのではないかというのも御指摘のとおりなので、それだけに一層自律については、13ページのほうでしっかり書いたほうがいいのではないかという御指摘でもあったかと思います。

それから「合理的な」を入れるかというのは、これは、多分、自由に意思決定をすれば、それが合理的であって、だからこそ、結果としても自分が満足のいくものになって幸せになると、そういうことだったので、合理的を入れると、やや、自由だけれども不合理な決定とか、そんな話になってくると少し複雑になりますので、ここは自由な決定ということで、想定としては、それが合理的というか、中身としても、自分にとっても最も幸福な帰結をもたらすということを含意しているということではないかと思いますけれども、そういう整理でよろしいですか、大屋委員。

○大屋委員 それでいいと思いますし、あるいは先ほど私が口頭で申し上げたような修文案で趣旨を明確にしていただいてもいいと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

少し趣旨を明確にしていただいて、あと、表現として自由で合理的な決定ということで、ワンタームにしたほうがいいのではないかというのが、二之宮委員からの御指摘ですけれども、それよりは、そこでの含意というのは、矢印でつながっていくということを明らかにして、それが自由な意思決定なのだというほうが、今までの議論にも合うのかなと思いました。二之宮委員の御指摘は、それで説明としては入れられるかなと思いましたけれども、よろしいですか。

ありがとうございます。

それから、ポイントについては、確かにポイントというのが何を指しているのかというのは、共通理解として加毛委員が言語化してくださったとおりだと思いますので、それを明らかにするということでお願いしたいと思います。

記載の順序については、必要性から入ったほうがいいのではないかということは、一つあり得ると思いますので、前文の書き方も含めてになるかと思いますが、どちらがよろしいのか、改めて検討させていただくということでお願いしたいと思います。

それから、脆弱性の三つの脆弱性はキーワードなので、少し目立たせる、あるいは、いわゆるという形で鍵括弧に入れるということも表現の仕方として考えられるということなので、それがいいのか、ずっと鍵括弧でくると、それがかえって煩わしいのかということもあるかと思いますので、その可能性もあるということで検討をお願いしたいと思います。

河島委員からお手が挙がっていますので、お願いしたいと思います。河島委員、お願いします。

○河島委員 

10ページに、「現代の消費者像や消費者を取り巻く環境」について、中黒が付いた項目が幾つかあるわけですけれども、ここに偽情報、誤情報についても書いてはいかがかでしょうか。

たとえば「情報・選択の機会・選択肢の過多による単独での十全な選択の困難化」のところに、偽情報、誤情報を入れてもよいかもしれません。

つまり、16ページに偽・誤情報が書かれてありますので、全体の統一性も考えて、ここで偽情報、誤情報を入れてはいかがかと思います。

あと、16ページの33行目の「「刺激の競争」が激化することにより、偽情報、誤情報の拡散の助長にもつながっていること」とありますが、原因は刺激の競争の激化だけではないと思いますので、ここは「刺激の競争が激化すること「など」により」と、改めてはいかがかでしょうか。

取りあえず、以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

どちらも対応をお願いできればと思います。16ページの33行目のほうは、より正確にそれだけではないということですので、などを入れるということで、そこでの記載も含めて、10ページの30行目については、その点の言及も入れたほうが、より正確でもありますし、重要な点を落とさなくて済むということだと思います。

そのほか、第1に関していかがでしょうか、二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 第1に限らずなのですが、前回形式論は後でまとめてと言った一つは、先ほども少し言いましたけれども、片仮名がとにかく多いという点です。

この本報告書の最初の壁、読んでいて多分ここでつまずくだろうというのは、9ページの34行目の認知バイアスの括弧書きのところ、多分、ここで挫折者がいっぱい出てくると思います。読み手が各回の資料に当たって参照するようにというのは、本当に不親切ですので、片仮名も脚注で、まず最初に説明して、ただいろいろなところで出てくるので、最後に巻末で用語をつけて、何ページの脚注参照ぐらいにして当たれるようにしておかないと、本当にどんどん挫折していくと思います。

もう一つ同じように、プリンシプルという言葉もいろいろなところで出てくるのですが、場所によって、その意味内容が、やはり少しずつ違うので、どこかでまとめて、この報告書では、こういう意味でプリンシプルという言葉を使っていると脚注で説明するなり、あるいは同じ言葉を使っているのだけれども、ここでは、こういう意味で使っているとかということを説明しておかないと、少し混乱するだろうなと思いました。

あわせて、これは本当に細かいことで恐縮なのですけれど、恐らくこの素案のライターというか、起案者の癖なのだと思いますが、「すなわち」というのがいっぱい出てくるのですが、実は、一生懸命考えて読んでいると、四つぐらいの意味で使われていて、普通の言葉の別の観点で置き換えているときの「すなわち」と、同じことを言っているイコールの意味で言っているときと、その結果こうだというときにも「すなわち」と言っていて、あるいは、なぜならという理由で、後文が前文の理由づけをしていると、これを全部「すなわち」と書いてしまっているので、少し工夫されたらどうかなと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

室岡委員、大屋委員の順番でお願いしたいと思います。

○室岡委員 ありがとうございます。

今、表示されている34行目、35行目の認知バイアスについてです。

私は行動経済学の専門家ではありますが、これ以外にも消費者にとって重要なバイアスはたくさんありますし、この本文の中で、例えば、アンカリング効果をわざわざ説明する必要があるのかというと、必要ないのではと私は思います。様々な認知バイアスがあるとだけ言及し、他の箇所で特定の認知バイアスについて詳しい言及がないのであれば、この括弧の中は全部取ってしまうのが良いと、先ほどの御発言から考えていました。

○沖野座長 ありがとうございます。

では、大屋委員、お願いします。

○大屋委員 ありがとうございます。

同じ点ですが、認知バイアスが、まずまずいのではないかと思い、例えばですが、人間の知覚や判断には様々な偏りやゆがみがあり(認知バイアス)としておく。認知バイアスは、この後も何度も出てくるので、これはやむを得ないとして、あと室岡委員がおっしゃったような、ここで実際に挙がっているものについては、書くとすれば脚注に入れて、その内容を説明するという扱いにするのがよいのではないかと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

そのほか、室岡委員。

○室岡委員 私も賛同いたします。加えて申し上げるならば、私は脚注でなく、そもそも具体例は書かなくていいのではという立場です。もちろん、最終的には一任いたします。

○沖野座長 ありがとうございます。

脚注に延々とこれらの説明があっても、やはり挫折するのではないかという感じもいたしますし、必ずしも必要ではないものもあります、いろいろなところで少し具体例を書いてくださいとは、今、御指摘もいただいたところではあるのですが、何かバイアスとはどういうものですかという例として、様々挙げていただいているということかと思いますけれども、挙がっているものが、それぞれ非常に専門的なというか、少しなじみのないものですので、何かいろいろあるらしいぐらいになってしまうというのもどうかということがありますので、取捨選択、場合によっては、ざっくり削除で、認知バイアスというのはどういうものかという概念は、大屋委員がまとめてくださったところでかなり分かるように思いますので、どうするかというのを御検討いただきたいと思います。

加毛委員、お願いします。

○加毛委員 ただ今、話題になっていることに関連して、二之宮委員のお考えをお尋ねすべきかと思うのですが、報告書において、「アテンション・エコノミー」については一応説明があるのですが、「関心・アテンション」という表現が繰り返し登場します。この「アテンション」という言葉に、引っかかりを覚えられないだろうかということについて、二之宮委員に限りませんが、委員の皆様の御感触をお聞きしたいと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

これは、悩ましい表現ですが、まず、大屋委員からお願いします。

○大屋委員 日本語のほうがよければ、注目でいいと思います。最初のところに、例えばアテンションと書いておくとか、そういう工夫でもよいかなと思いました。

あと一つ、これは、すみません、私だけかもしれないけれども気になったのは、10ページの1行目の直感的の感でして、我々は、これは観察の観の字を書くのです、intuitiveは、そちらですということです。

○沖野座長 ありがとうございます。後のほうの直観的のほうは、観察の観だと思いますので、そちらに変更していただき、アテンションはどうですかね、これは、有識者会議から議論があって、まさに山本龍彦委員から非常に御示唆をいただいたところであり、なかなか置き換えが難しいということで使ってしまっているのですが、二之宮委員、どうですか。

○二之宮委員 私も、この専門調査会を通じてやっと慣れてきたところですけれども、自分の中では、どう捉えているかと、言葉を置き換えるのは難しいのですけれども、注目とか、関心とか、日本語にすると、そうなのでしょうけれども、もっと無意識のものではないかと感じています。関心とか注目とかいうと意識しているのですけれども、意識していない注目、関心を向けさせられているという、ニュアンスとしては、そんな感覚で捉えています。では、それは日本語で何と言うのですかというと難しいなと、アテンションかなと思います。

ただ、ずっと言ってくと、恐らくそういう意味だというところは、浸透はしていくと思うのですけれども、この報告書を読んだ段階では、何度も何度も説明が必要でしょうし、何度も何度もそういう形で説明していくと、アテンションとはそういうもので、アテンション・エコノミーとはそういうものでというところにはなるのでしょうけれども、やはり、置き換えは難しいなと、アテンション・エコノミー、アテンションについては、私も脚注で書いたとしても伝わるかというところは、引っかかるところです。

○沖野座長 ありがとうございます。

室岡委員、御発言をお願いします。

○室岡委員 ありがとうございます。

経済学及び行動経済学では、アテンションは注意、インアテンションは不注意と訳されることが多いと思います。ただ、恐らく日常用語で言う注意及び法律用語で言う注意と、このアテンションを経済学の論文で訳したときの注意という意味とは、はっきり異なると思います。例えば、21行目から説明しているように、消費者の時間を取ること、つまり注目を引きつけることにより、例えばアプリの広告を見せることによって、消費者の時間を取るという点もアテンション・エコノミーに入ってくると思います。そのため、この文章における適切な和訳は、なかなか無いのではないのかなと、個人的には思いました。

恐らく一点、仮にこの20行目から21行目における「人々が払える関心・アテンション」などと書き、その後に(アテンション・エコノミー)とすると、定義の時点で既にアテンションという言葉を使っていることになってしまいます。大屋委員が仰ったとおり、注目も定義に入ると思いますし、加えて私が理解する限りでは認知コスト(あるいはコストという片仮名を避けるのであれば認知的資源)を払うことなども一般にアテンション・エコノミーに入ると思います。そういった形で、ここでは括弧内でアテンションを定義し、その後はアテンション・エコノミーという言葉を使っていくというのが、一つ修正の方法としてはあり得るのかなと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

その中身を書いた上で、アテンション・エコノミーとして以下は使っていくということで、多分発想的には、今の16ページなども、これこれをアテンション・エコノミーと言って、さらに特徴としてと書いていたりということが、例えば16ページなどではあるのかなと思うのですけれども、具体的にさらにどういう形にしたらいいのか、大屋委員、お願いします。

○大屋委員 今の室岡委員の指摘と共通していると思います。16ページの(1)の1行目のところで「人々が払える」の後のところですね、そこをできるだけ日本語にすると、具体的には、関心・注目・注意・認知コストや、消費時間がという話にしておいて、ここの認知コストまでの後ろに(アテンション)と入れておくと、最後に、これをアテンション・エコノミーというというのが出るわけですね。

ここでアテンションという言葉を取りあえず定義してしまったので、この後出てくる関心・アテンションは、単純にアテンションにしてしまい、これだけは申し訳ないけれども、付き合ってくれという形で残すという方向性かなと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

認知コストは、やはり認知的資源にしたほうがいいのですかね。

○大屋委員 それは、どちらでも。

○沖野座長 それはどちらでもよいようであれば、コストは、割と一般化している言葉だから、また片仮名かという感じはするかもしれませんけれども、分かりやすいかなとは思います。

いかがでしょうか、具体的な修文の提案もいただいたので、書き方としては指針というか、方向性が見えたかと思いますが、よろしいでしょうか。

悩んだ末、もう少し工夫があれば、さらに検討するということでお願いしたいと思います。

そのほか、プリンシプルという言葉遣いも、少しぶれがあるのではないかという御指摘もいただきました。それから「すなわち」という用語の使い方についても、やや多用しているという面があって、それぞれの局面において違う言葉を使うことも含めて書いたほうがいいかもしれませんねと、それは示唆ということで捉えたいと思います。

それでは、第1については、一通り御指摘をいただいたということにしまして、第2のデジタル化の部分について御指摘をいただきたいと思います。

20ページ以下ということになりますが、こちらについては、いかがでしょうか、第2全体についてお願いします。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 20ページの21行目から23行目のところで、主体について、取引主体が多様化する、その一方で、取引の場とか決済手段が多層化する。その結果、取引関係が複雑化していると書いてあるのですが、ここも細かい話なのですけれども、決済手段だとか、主体が多様化することによって、単に取引関係が複雑化しているだけではなくて、ここは、まさに取引関係が多様化、複雑化しているとしたほうがいいのではないかと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

より正確な表現に改めたいと思います。

そのほか、いかがでしょうか。

よろしいでしょうか。河島委員お願いします。

○河島委員 

生成AIについては、21ページに記載があるわけですけれども、かなり短く目立っていません。

2020年代になって生成AIが非常に活発に使われ出していることを踏まえて、記述をもう少し増やすべきではないでしょうか。

生成AIを使った詐欺、あるいは生成AIを使った大量の偽情報、誤情報の投稿によって、消費者の脆弱性がさらに増します。また、中川先生に来ていただきAIエージェントの話もしていただきました。AIエージェントによって消費者が介在しない自動的な取引が増えるおそれがあることなどを記述したほうがよいのではないでしょうか。素案では、かなりアテンション・エコノミーに記述が偏っていますので、そういった生成AIやAIエージェントについて記述を増やしてはいかがかと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

21ページの9行目から、また、生成AIの普及は、こうこうという一般的な記述ですが、ここを膨らませるというイメージでよろしいでしょうか。

○河島委員 ありがとうございます。

そうですね、どのように生成AIのことを報告書に組み込んでいくかについては、いろいろ工夫の仕方があると思いますけれども、ここを膨らますのも一つの手かと思います。

あと、AIエージェントについては、素案では言及がないように思うのですが、なければ、追記していただいたほうがよろしいかと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

一案として、ここを膨らますというやり方もあるけれども、AIエージェントについての言及も含めて、ほかの場所のほうがより、例えば、独立性を高めた記述したほうがよければ、それも含めてということで、少し書きぶりを検討するということで、お願いしたいと思います。

では、加毛委員、お願いします。

○加毛委員 ありがとうございます。

先ほどと同じ趣旨の発言なのですけれども、23ページ6行目に「パーソナライズド・プライシング」が出て参ります。先ほどの二之宮委員のお話は、当を得ていると思ったのですが、自分の専門分野の知識や専門調査会を通じて勉強した事柄については、それを前提として、報告書を読んでしまうところがあります。その点で、「パーソナライズド・プライシング」という言葉が断りなく登場することに、私自身は、違和感を覚えないのですが、一般的な読者にとっては、その直後の「価格差別」という言葉があるだけで、十分な説明といえるのかが気になりました。もし、ほかの委員の皆様が、この点について御意見をお持ちであれば、お伺いしたいと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

具体的にパーソナライズド・プライシングということについて、説明なくぽんと使ってしまってよろしいものだろうかということかと思いますけれども、二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 先ほど片仮名と全部ひっくるめて言ったのですけれど、ばっと見ていったときに、9ページに、まずここに一つの大きな山があってと言ったのですけれど、言葉を拾っていって一々言わなかったのですけれども、アテンションは先ほど出ました、レコメンデーション、ターゲティング広告、フィルターバブル、エコチャンバー、アーキテクチャーの権力、フルフィルメント、パーソナライズド・プライシング、これは今出たもの、リスクガバナンス、インセンティブ、ディスインセンティブ、ポジティブスクリーニング、ネガティブスクリーニング、エンフォースメント、ベストプラクティス、恐らくこの辺のところは、一般の人からすると全部引っかかってくると思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

エンフォースメントもかと、いろいろと、もう一般化できているかなと思ったところもありましたが、今、御指摘いただいた部分を全て説明して置き換えていくというのは、なかなか難しいかもしれないのですけれども、あるいはこのような表現の仕方があるのではないかというのは、具体的に御示唆いただけることがあれば、ありがたいのですが、大屋委員、お願いします。

○大屋委員 少なくとも、やはり初出のところで、本文か脚注でどういうものかを書いておくというのが、多分求められるわけだと思います。

それで、これは難しくて、分かっている人も読むわけですね、研究者とか、そうなったときに、専門用語を使っていないと、それはそれで不気味がられてしまう。ここで言う場合、エコーチェンバーとか、フィルターバブルというものを使っていないと、それは分かって書いたのかしらと見られてしまうところがあるわけです。アーキテクチャーの権力とかですね。

ですので、両立させようとすると、置き換えられるのは置き換えていいと思うのですけれども、やはりきちんと説明をするということになろうかと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 もちろん程度問題ではあると思います。ただ、前半部分、中間整理のときにも少し申し上げたのですけれども、この後、具体的な検討に入っていくときに、やはり多くのステークホルダー等を考えたら、消費者関係者、事業者関係者の方が、そうだと思って前に進めてもらうためには、まずは、やはり理解してもらって、そうだと思ってもらう必要が一番大事で、そうでないと、パラダイムシフトにもならないと思います。

あと一つは、むしろ事業者の方は、業界団体ごとに片仮名を、自分たちの用語で意味を捉えていますから、学者の先生方とは必ずしも一致していないことはいっぱいあって、その会社、その業界独自の意味で取ってしまうところも、実はかぶっているところが出てくるので、この報告書では、こういう意味ですよというのは、やはり、ある程度ちゃんと伝えたほうがいいと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

一般的な方針として、その意味するところをより専門家ではない方に伝わるようにということで、とりわけ事業者、消費者と、最も中核にある主体というか、その団体だとかというところを特に意識して説明をつけていく。

それから、後で何回も出てくるようなときには、あるいはレファレンスを考えたほうがいいかもしれず、二之宮委員からは、巻末に事項索引的なというか、用語一覧的なということもあり得るのではないかという御示唆をいただきましたので、どういう形があり得るかというのも検討するということで、お願いしたいと思います。

大屋委員、お願いします。

○大屋委員 少なくともということで、まず、1点提案をすると、17ページの7行目でフィルターバブル、エコーチェンバーと出てきて、これは、その筋には分かるのですけれども、やはり引っかかるだろうと。

ここでは、要するに依存性(嗜癖)や、片仮名を使わないようにしゃべらないといけないと、選好の偏りの強化みたいなことで書けばよくて、脚注にフィルターバブル、エコーチェンバーという言葉を出すような説明を入れるというのが一案だと思います。ここは、この専門用語を書かなくても本文はつながるはずだと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

今直ちにでなくても、素案をさらに案にまとめていく作業をする必要がありますので、その中で、ここは、こういう書き方ができるのではないかというのを具体的に御示唆いただけると、非常にありがたいと思いますので、それも併せてお願いしたいと思います。

今、一例として17ページの7行目のところは、この用語を全く使わないでも、概念というか、ここで問題としていることはできて、しかし、それがどういうものかというのは、専門家の方にも、そういうことをちゃんと意識した報告書なのだなということが分かるように注で書くということもあり得るというお話でした。

具体的に、特に引っかかりを覚えるであろうという用語は、二之宮委員からかなり一覧的に出していただきましたので、その用語が出てきたときには少し注意をして、説明をできるかということを検討した上で、案に持っていくというのでお願いをできればと思います。よろしいでしょうか。

そういう用語の置き換えや説明の仕方についても、引き続き、お考えをいただきたいと思いますけれども、よろしければ、第2については以上といたしまして、検討経緯、6ページから8ページまでのところの御検討をお願いしたいと思います。検討経緯6ページから8ページという部分ですが、いかがでしょうか。

この19行目から22行目について、市場や消費者教育との関係などについては、そこの記載の仕方については再考するということで、前回既に御指摘をいただいているということであります。

大屋委員、お願いします。

○大屋委員 本当にごめんなさい、7ページの3行目の後ろから、法学のみならず法哲学、法社会学、倫理学、経済学、法と経済学と書いてあって、すみません、私、一応法学者のつもりなのですという、実定法学にしていただけませんかね、最初のところを。

○沖野座長 これは、多分、単に誤記だと思います。すみません、大変失礼しました、ご指摘のとおり修正をお願いしたいと思います。

それでは、検討経緯についても御指摘いただくことはあるかと思うのですけれども、前文の部分、1ページから3ページも含めて御指摘をいただきたいと思います。検討経緯とともに、前文1から3ページのところです。

ここにつきましては、前回既に御指摘をいただきまして、非常に中核的な話としては、パラダイムシフトとして何を捉えるのかという問題の提起がありました。

前回は、現在の案では、消費者の脆弱性というものを正面から捉え、消費者ならば、誰しもが多様な脆弱性というのを有するという認識を消費者法制度の基礎に置くと。これまでの事業者と対置的な情報交渉力格差があって、そこを是正できれば、求められる消費者像が回復されるのだということを含むような捉え方から、言わば、それに加えてといいますか、そういう部分というのを消費者法制度の基礎に置くのだと、それによって、安心・安全に取引に関わることができるという部分がパラダイムシフトだとしまして、ここが記載されているわけなのですけれども、それに対して、もっとパラダイムシフトとして捉えるべきは、いろいろある。例えば、消費者取引として消費者が出しているものが何であるのか、アテンション・エコノミーと言われる中での消費者あるいは消費者取引といったこともあるし、むしろここで改めてより新規にクローズアップしていくというものも、パラダイムシフトであり、そういうものに光を当てているということ自体がパラダイムシフトではないのかという御指摘もいただいたところです。

ここには、アテンション・エコノミーという現象というか、それがもたらす課題を含めて、消費者取引や消費者の概念というのを再定義していくということを考えれば、消費者概念の再定義という話にもなってくるわけですが、他方で、従来型のものもある中で、そちらにも光を当てるというか、その重要性にも意識するということであれば、それを消費者法制度の基礎に据えるという話であるのかと、視点として広げる必要があるし、対象として取り込む必要があるというのは、そうなのですが、消費者法制度の起点であるのか、パラダイムであるのかと、あるいはシフトであるのかというのが、従来型の消費者の捉え方から、そこからの転換というか、展開というか、それをしていくのだということに対して、そのカテゴリーなのかという問題意識があるのかと思いますが、結局のところ、パラダイムとかパラダイムシフト、消費者法制度におけるパラダイムあるいはパラダイムシフトとして、まず、その概念自体をどう捉えるのかで、それを割と広めに捉えれば、こういうものも含まれるということになるし、そうすると、逆にパラダイムシフトの希薄化が起こるのかもしれません。

一方で、今の報告書に出していただいたような形で捉えると、何かほかのものが落ちていくということが問題にならないかということで、その新規性というか、この報告書が、今後、消費者法制度の土台をつくっていくに当たっての土台性というものについて、やや弱まるというか、もともと捉えようとしていたところが滑り落ちないかという御指摘もあるかと思いますので、そういう点も考えた上で、前文について、さらに御指摘をいただければと思います。いかがでしょうか。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 前回、加毛委員から、そこの御指摘があって、三つ挙げられたと思います。私は、それがすごくすとんと腑に落ちました。そもそもどこから始まったのかと考えたときに、出発点は、やはり国会の前回の改正時の附帯決議の中で、既存の枠組みにとらわれない抜本的かつ網羅的なルール設定の在り方と、やはり既存の枠組みにとらわれないということ、抜本的と、網羅的というところが出発点で、本当にそれがシフトなのかと考えると、詰めていくと、いろいろ入ってくるのがあれば、入らないという問題になるのかも分かりませんけれども、出発は、やはり消費者像の転換、それから、各論でも検討している取引概念にどこを含めるのかと。

それと、もう一点、加毛委員が言われていた健全な市場を消費者法制度でつくっていくと、そこを目指すというところも、既存の枠にとらわれずに抜本的にというところに、大きい枠では、そこを捉えるのだと、やはりこの三つがパラダイムシフトの項目かなと、私は聞いていて納得いたしました。

○沖野座長 ありがとうございます。

そのほか、いかがでしょうか。パラダイムシフトは、そのまま扱っていいのかという感じもする用語なのですけれども、むしろそこで言いたいことは、前回の消費者契約法の改正あるいは法人の寄附の不当勧誘法のときも、同じように消費者契約法に対する指摘がございましたけれども、そもそも、今、二之宮委員が言ってくださった既存の枠組みに必ずしもとらわれず、抜本的、網羅的に見直すというものとして、何を中核に据えるべきかという、そういう中核に据えるべきもの、あるいはそもそも附帯決議にあった、今、説明していただいた内容こそ、パラダイムシフトと呼んでいるという形で書いたほうがいいのではないかということですが、加毛委員、お願いします。

○加毛委員 ありがとうございます。

先ほどからの議論の関係でいうと、沖野座長がおっしゃったように、「パラダイムシフト」という言葉は、説明せずに使えるほど、人口に膾炙したものなのだろうかと思います。社会科学の研究者にとっては、「パラダイムシフト」は様々な意味・文脈で使われているものの、それなりになじみのある言葉であるとは思われます。他方、この報告書が「パラダイムシフト」をいかなる意味で用いているのかについて説明したほうがいいのかもしれないと、本日の議論を通じて思いました。

その上で、パラダイムシフトの対象として、どういったものが考えられるのかについては、前回申し上げたところであり、先ほど二之宮委員から言及をしていただいたところとなります。その点については、前回の発言に付け加えることはないのですけれども、前文との関係では、2ページの17行目が空白とされているところに、報告書をまとめてくださった方の悩みが表れているような気がします。アテンション・エコノミーの問題は、非常に重要であると思いますので、これもパラダイムシフトの対象として位置づけることを明確にするのがよいのではないかと思います。

もう一つ、健全な市場の実現については、それを新たな消費者制度の目的に据えるのか、あるいは再度強調するのかについて評価の違いはあるかもしれませんが、いずれにせよ、そのことは、消費者取引として何を把握するのかという問題とは、次元を異にするものであるように思われます。パラダイムシフトが、何をパラダイムと捉えて、どのようにシフトするのかを説明する際にも、対象の問題、着目する消費者の脆弱性、さらには、法制度に対する監督官庁を含めたスタンスないしは発想など、様々なレベルでのパラダイムシフトが生じる必要があるのだということを前文において明確に示すと、本文の内容について、より理解が深まるのではないかと思いました。

○沖野座長 ありがとうございました。

そのほか、いかがでしょうか。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 この報告書は、先ほども言いましたように、今後の消費者取引における消費者法制度の羅針盤になると、私は思っています。

そうした中で、この前文のところは、かなり分かりやすくコンパクトにまとめていただいておりますので、この前文の部分は、ここだけ何度もいろいろなところで引用、指摘されることになると思います。

そうしたときに、法律に携わっている者からすると、あるいは役所、行政の方からすると、前文、前文と当たり前のように言いますけれども、きちんとタイトルを打っておいたほうがいいと思います。そうでないと、一般の人は、報告書の最初に書いてあるやつとか「はじめに」とか、巻頭文だとか、そのうち報告書の最初のあれとか言い始めますので、やはり誰が指してもこのことだと分かるように、何かタイトルを、前文でいいと思いますけれども、打ったほうがいいと思います。

それと、これは、本当に細かいところで恐縮なのですけれども、2ページの25行目「自ら消費するものを購う取引」、今は、「購う」など使わないと思いますから、購買するでいいと思います。

すみません、以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

タイトルを打ったほうがいいということですが、タイトルは、例えば。

○二之宮委員 前文でいいと思います。

○沖野座長 前文というタイトルで構わないということですね。

○二之宮委員 要は、みんなが引用したときに、特定できるようにしておけばいいだけの話で。

○沖野座長 分かりました。いきなり本文から始まっているからということですね。今までも前文、前文と呼んでおるわけですが、大屋委員、お願いします。

○大屋委員 パラダイムのところは難しいなという話でして、御承知のとおり、これは1961年のトーマス・クーンの科学革命の構造なのですけれども、その後、1960年代にパラダイムシフトという表現が大変はやったのです。ただ、その言葉もしくはパラダイム自体が非常に誤用、濫用が相次いだということで、1970年の2版で撤回されているということがあり、パラダイムを正確に説明することが極めて困難であるという言葉なのです。

ですので、これは、大変申し訳ないですけれども、ふわっとした用語として使うのが一番よいというので、できる限り説明を避けるべきだと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

というわけで、パラダイムやパラダイムシフトの概念自体がはっきりしないことが大元ではないかということですが、これは、はっきりしないというか、厳格な定義はできないというものとして、ただ、抜本的な見直しというか、再考というかでしょうか。

大屋委員、お願いします。

○大屋委員 先ほど来、二之宮委員が御指摘だったと思いますが、要するに、抜本的、網羅的、あと何でしたか、3要素というのが。

○沖野座長 既存の枠組みにとらわれない。

○大屋委員 そうです、既存の枠組みにとらわれない、それを挙げた上で、その後、これはパラダイムシフトであるみたいに宣言しておくことでよいのではないかと思いましたということです。

だから、1ページの21行目のところでパラダイムシフトが初出になるわけですが、あるいは、その下の22行目のところで、このように既存の枠組みにとらわれず、抜本的、網羅的な見直しとしての消費者法制度のパラダイムシフトを進めるに当たってはみたいに言っておくと、何となくイメージとしてはっきりするかなと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

よろしいでしょうか、具体的な言葉も含めて、ですので、もともとこの前文をつくっていただいたときには、もう少し基盤に据える考え方の変換なりをパラダイムシフトと呼んで、空白に見られる悩みを抱えつつも、こういうところも視点として重要であるということを書いた形になっているのですけれども、むしろ、様々な面で鍵括弧つきのパラダイムシフトとして見るべき点が出ているということを書いたほうがいいということですので、パラダイムシフトについては、二之宮委員が御示唆くださったような形で、まさに、これも全体の流れは、恐らくそうだと思いますけれども、やはり消費者契約法改正の際の附帯決議の問題提起を基本に受けているということがありますので、それとのつながりという点でもいいということがあろうかと思いますから、その観点から少し書き直すということにさせていただきたいと思います。

その上で、これでいいのかというのは、かなり表現ぶりも含めて御検討いただければと思っております。

それでは、これで本日お願いしたいと考えていたところは、一通り御議論をいただきました。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 すみません、先ほど第2のところもまとめてやってしまったと。

○沖野座長 はい。

○二之宮委員 すみません、では、追加で。

○沖野座長 失礼しました。急ぎ過ぎましたね、では、第2のところをお願いします。

○二之宮委員 27ページの33行目から34行目に、時間、関心、情報を消費者法制度の対象として視野に入れていくことが必要であるという書き方をしているのですが、第1の同じようなところの書き方としたら、18ページの2行目から23行目のところで、情報、時間、関心・アテンションを消費者取引として自覚的に捉えていくことが必要と、もっと積極的に書いてあるので、ここは、27ページも単に視野に入れていくではなくて、自覚的に捉えていくと合わせないと、何かトーンダウンしているように読めますから、合わせたほうがいいと思います。

すみません、以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

それでは、今のところは第3のところですが、全体を通じて、改めて検討経緯、前文も含めて、さらに追加的に御指摘いただくことはございますでしょうか。

よろしいでしょうか。では、事務局のほうから、これまでのところで不明な点ですとか、もう少し御指摘をいただきたいという点はございますでしょうか。

黒木審議官、お願いします。

○黒木審議官 すみません、現時点では大丈夫かと思いますが、少し御指摘を踏まえて、修文を考えていくに当たって、また、御発言をいただいた先生を中心に、ここはこういう御趣旨でしたでしょうかということは、適宜、御確認をさせていただくことになるかと思いますので、ぜひ御対応のほど、よろしくお願いいたします。

○沖野座長 ありがとうございます。

今、まだ素案の段階ですので、まさにいろいろ御指摘をいただいて案にまとめていくのですが、かなり抜本的、網羅的とは言いませんが、修正が必要であることが認識されたわけですが、失礼しました、河島委員、お願いします。

○河島委員 

最後に1点だけ、目次の第2の2の(3)は「……技術の進展、情報化の下で…」となっているのですが、上の「デジタル化」と同じなのであれば、ここはデジタル化にそろえたほうがよいのではないでしょうか。情報という概念と、デジタルという概念は、一般的には区別されていないことが多いのですが、学術的には違いますので、「デジタル化」で統一するのがよいのではないでしょうか。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

無用な概念の混乱を避けるためにも、用語は統一したほうがいいと思います。片仮名ですが、デジタル化でよろしいですね。ここは、情報化のほうが逆に分かりにくいかもしれませんので、ここはデジタル化で統一をしたいと思います。ありがとうございます。

それでは、本日、想定しておりました、あるいは理想としておりました、一通り御議論をいただきたいという点は、まさに前回と今回を通じまして、素案について一通り御議論をいただくことができました。

今後の進め方ですけれども、まず、事務方におかれまして、今回までの議論を踏まえて報告書の、今度は案を御準備いただき、その上で、次回はその報告書案を委員の皆様に御確認、御検討いただきたいと思います。

本日、途中で御退席になった委員の方もいらっしゃいますし、そもそも御欠席であった委員もいらっしゃることもあります。また、最後まで御出席いただいた委員におかれましても、発言し切れなかった御意見がおありということもあると思いますし、ここの用語としてはどうかということについて、お考え中のものもあったかと思いますので、事務方において報告書案を準備してもらうに当たりまして、この委員会の場で御指摘いただいたこと以外にも、追加でこれは指摘しておきたいということであるとか、あるいはこういうことが示唆としてあり得るのではないかとか、表現ぶりとか、それも含めまして御意見がありましたら、恐縮ですが、準備の都合上できれば、30日金曜日正午までに事務局にメールで御連絡をいただければと思います。

本日、この場にいらっしゃらない方につきましては、そのように改めて事務局から御案内をお願いしたいと思います。むしろ全員に宛てて、リマインドも含めて、こういう形でお願いしたいということです。30日正午というのは、準備の都合上ということですので、そこでどうしても間に合わないということであれば、もちろんその後の御議論とか、何よりも次回検討いただきますので、封じるものではないのですけれども、なるべくインプットを適時に入れていただきたいと思いますので、そのような形で進めさせていただければと思います。

では、事務局から事務連絡をお願いしたいと思います。


《3.閉会》

○友行参事官 長時間にわたりまして、誠に御議論いただき、ありがとうございました。

次回の会合につきましては、決まり次第御連絡させていただきます。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

前回、今回と非常に充実した御指摘をいただきまして、ありがとうございました。

今回もまた延長になりましたけれども、長時間にわたりありがとうございました。

それでは、本日は、これにて閉会とさせていただきます。お忙しいところ、ありがとうございました。

(以上)