第20回 消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会 議事録
日時
2025年3月31日(月)10:00~12:17
場所
消費者委員会会議室・テレビ会議
出席者
- (委員)
- 【会議室】
沖野座長、二之宮委員、野村委員 - 【テレビ会議】
山本隆司座長代理、石井委員、大屋委員、加毛委員、河島委員、室岡委員 - (オブザーバー)
- 【テレビ会議】
鹿野委員長、大澤委員 - (参考人)
- 【会議室】
赤堀一成 一般社団法人日本経済団体連合会経済基盤本部主幹 - (消費者庁)
- 黒木審議官、古川消費者制度課長、原田消費者制度課企画官、消費者制度課担当者
- (事務局)
- 小林事務局長、後藤審議官、友行参事官
議事次第
- 開会
- 議事
①野村委員プレゼンテーション
②消費者庁からの報告(海外の消費者法制度に係る種々の手法の組み合わせに関する調査・分析について) - 閉会
配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)
- 議事次第(PDF形式:166KB)
- 【資料1】 野村委員提出資料(PDF形式:1278KB)
- 【資料2-1】 消費者庁提出資料①(PDF形式:950KB)
- 【資料2-2】 消費者庁提出資料②(PDF形式:812KB)
《1. 開会》
○友行参事官 定刻になりましたので、消費者委員会第20回「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」を開催いたします。
本日は、沖野座長、二之宮委員、野村委員には会議室で、山本隆司座長代理、石井委員、大屋委員、加毛委員、河島委員、室岡委員はテレビ会議システムにて御出席いただいております。なお、所用により小塚委員は本日御欠席との御連絡をいただいております。
消費者委員会からは、オブザーバーとして、鹿野委員長、大澤委員にはテレビ会議システムにて御出席いただいております。
先ほど御紹介しました本専門調査会の委員のうち、山本隆司座長代理、室岡委員につきましては、現時点で少し入室が遅れているようでございます。
また、本日は、野村委員からの御発表の質疑対応として、一般社団法人日本経済団体連合会経済基盤本部主幹の赤堀一成様に御出席をお願いしております。赤堀様には会議室で御出席いただいております。
配付資料は議事次第に記載のとおりでございます。
一般傍聴者にはオンラインにて傍聴いただき、報道関係者のみ会議室で傍聴いただいております。議事録については、後日公開いたします。
それでは、ここからは沖野座長に議事進行をよろしくお願いいたします。
《2.①野村委員プレゼンテーション》
○沖野座長 ありがとうございました。本日もどうかよろしくお願いいたします。
早速、本日の議事に入らせていただきます。
本専門調査会では、後半の検討テーマである「種々の手法をコーディネートした実効性の高い規律の在り方」について、これまでに様々な分野の有識者や行政機関関係者からのヒアリングを行い、議論を重ねてまいりました。
今後、専門調査会としての取りまとめに向けまして、委員間での議論をさらに深めていただければと思っております。
それに当たりまして、さらなる検討が必要と考えられる事項について、当該分野に御知見のある委員からプレゼンテーションをいただきながら議論する形を取れればと考えております。
具体的には、事業者や事業者団体の役割という視点から野村委員に、適格消費者団体の役割という視点から二之宮委員に、民事ルールの役割という視点から加毛委員に、取引基盤提供者をはじめとする消費者取引に関わる多様な主体の役割という視点から小塚委員に、それぞれプレゼンテーションをいただくことを想定しております。
その第1弾となる本日は、野村委員にプレゼンテーションをお願いしております。
本専門調査会の後半の検討テーマには、実効性のある様々な規律のコーディネートの在り方として公私協働の仕組みや共同規制の活用可能性等が、また、消費者法制度の担い手の在り方として民間の関係団体の役割などがあります。
中間整理におきましても、消費者の脆弱性を捉えた消費者法制度の在り方との関係で、ハードな手法のみならず、事業者のベストプラクティスを称揚し促進するようなソフトな手法も検討すべきことや、事業者団体が事業者の自主的な取組を推進する役割の重要性についても言及をしていたところです。
そこで、本日は、これらの検討に当たり、花王株式会社で執行役員を務められ、一般社団法人日本経済団体連合会の消費者政策委員会委員でもいらっしゃる野村委員に、「消費者を取り巻く環境変化を踏まえた企業の取り組みや今後の消費者法制度のあり方について」というテーマで20分程度御発表いただいて、質疑応答・意見交換をさせていただければと思います。
また、本日は質疑対応といたしまして、一般社団法人日本経済団体連合会経済基盤本部主幹の赤堀一成様にも御出席いただいております。
それでは、野村委員、どうかよろしくお願いいたします。
○野村委員 野村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
中間整理を受けて、消費者の脆弱性などについて、今回企業の現在地としてお伝えしたいと思っております。どういうふうに変化を感じていて、どう対応していて、どういう課題を持っているのか。そして、今回の中間整理を受けて、法制度となる上での要望や課題について、経団連消費者政策委員会委員及び花王の立場から、企業がどのように取り組んでいるかということをお話しさせていただきたいと思っております。
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目次になりますけれども、本日は、消費者を取り巻く変化、消費者の脆弱性への対応、今後の消費者法制度の規律のあり方、消費者団体との連携のあり方を中心にお話をさせていただきたいと思います。
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これまでの経緯として、この専門調査会が昨年10月に公表した中間整理を受け、本年1月21日に経団連は消費者政策委員会消費者法部会・企画部会を開催いたしました。当日は、内閣府消費者委員会事務局及び消費者庁から中間整理の内容と今後の取り組みについて説明を聴くとともに、意見交換を行いました。
その後、経団連の会員企業にアンケートを実施し、本年夏の最終整理に向けて、各社の取り組みや消費者法制度における規律のあり方などについて意見を取りまとめました。
本日は、アンケート結果を基に、各企業の取り組みや意見を御紹介いたします。
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まず、消費者を取り巻く変化ということで、市場の変化についてお話をさせていただきたいと思います。高齢化やデジタル化の進展により、消費者を取り巻く環境が大きく変化し、それに伴い、消費者の行動や意識にも変化が見られます。
アンケートでは、消費者の変化と消費者行動の変化に関して次のような意見が上がりました。
まず、市場の変化ですけれども、広告媒体の多様化が挙げられます。若年層はSNSを中心に情報を得る一方、高齢者はテレビや新聞など従来のメディアを利用しています。このため、企業としては適切な広告施策が求められています。
また、サステナビリティーを重視した商品の選択が広がっていて、信頼できる第三者の認証機関と協力し、サステナブルな商品を認証する取り組みも進められています。
デジタル化の進展により、購入前に実物を見る機会が減少したことも課題として挙げられています。そこで、消費者に対して商品やサービスの正確な情報を迅速に伝えることが必要になっているとの意見がありました。
また、SNSに関するリスクも指摘されています。SNSを悪用した投資詐欺、なりすまし広告、ダークパターンなど、違法行為が見られるとの意見がありました。
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個人間の取引の変化について御説明いたします。近年、C2Cプラットフォームの利用が拡大し、個人間の取引が活発化していることに伴い、取引の内容や形態も多様化しております。
特にリユース市場の拡大が顕著です。中古品の売買が一般消費者の間でも広まり、リユースが定着しております。図1のとおり、リユース業界の市場規模は2009年から2023年まで14年連続で拡大を続けていて、3兆円規模になっているというようなところでございます。
また、フリマアプリの利用も拡大しています。フリマアプリの利用層は全ての年代に広がっていて、不用品を売る消費者行動が定着し、図2のとおり、取引される商品も増えております。昔はブランド品ばかりだったのですけれども、今、かなり一般的なものが売り買いをされているという状況になっております。
さらに、個人間の取引の増加によって、事業者と消費者の明確な区分が難しくなっていて、事業者兼消費者として取引が増えているとの意見もありました。
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消費者を取り巻く変化でも消費者行動の変化になります。高齢者をサポートするため、デジタルデバイドへの対策が必要になってきているということになります。
まず、スマホやウェブ手続に関する意見です。高齢者が自ら手続を行う機会が増える中、加齢に伴う認知能力の低下への配慮が求められています。
一方で、非対面でのサービス・手続が拡充されていても、高齢者の活用が進んでいない課題も指摘されています。また、オンラインとリアルの長所の組合せを目指していますけれども、デジタルに慣れない高齢者が不利益を被らない仕組みづくりが課題であるという意見もありました。
次は資産管理や相続対策についてです。顧客のニーズが安定的運用から積極的運用にシフトする中、顧客の属性に応じた対応が必要との意見や、リスク許容度の変化に対応できる資産管理のオプション機能が求められるという意見がありました。
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企業と消費者のコミュニケーションが減少しており、企業からの積極的な声がけが必要だという意見も多くありました。
まず、若年層の傾向として、声を上げない消費者が増えています。自分で解決したいと思う一方、クレーマーになりたくないという気持ちもあって、何かあっても声を上げず、不良品も捨ててしまうということが花王でも多いのですけれども、非常に多くなってきております。このほか、メーカー側が積極的に声を集める活動が大切になっています。
次に、高齢者の課題です。昨今の詐欺被害への警戒心から、高齢者を中心に顧客と企業の接点の確保が困難になってきているという状況があります。例えば、知らない電話番号からの電話に出ない、SNSを活用しないなどの行動が事業活動にとっての課題になっているとの意見がありました。
全ての世代に共通する課題として、デジタル化の進展が挙げられます。チャットなどのテキストやスマホでの自己解決を試みる傾向が強まっておりますが、解決に至らず断念してしまうケースもあります。さらに、SNSを介して消費者が匿名でコメントすることが一般的となり、企業と消費者の直接的なコミュニケーションの機会が減っています。このような環境において、企業が消費者の声をどのように適切に拾い上げていくかが課題になっているとの意見もありました。
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ここから消費者の脆弱性への対応ということでお話をさせていただきます。
消費者を取り巻く環境の変化によって、事業主には消費者の脆弱性への対応が求められています。
中間整理では、脆弱性について三つに分類した上で、事業者には消費者の安心・安全を確保する主体としての役割が求められていると指摘されました。
各社では、高齢者向けの設計、障がい者向けの設計、デジタルデバイド支援、ダークパターンへの対応など、様々な取り組みを進めております。
以降、具体的な内容について説明をしてまいります。
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まず、高齢者向けの設計です。生命保険業界では、認知機能の低下に対応するため、家族による契約サポートサービスや70歳以上の契約時の家族同席必須化などの取り組みを進めています。
また、専用ダイヤルの設置も進めており、各社はシニア専用フリーダイヤルや高齢者向けの窓口を設けております。
図4にあります明治安田生命保険の取り組みでは、電話音声明瞭器という電話における送話者の声を聞きやすい音声に変換する機器を自社で開発しております。これらの取り組みは、2023年度ACAP消費者志向活動表彰において消費者志向活動章を受賞しております。
生命保険以外では、野村ホールディングスはオンラインサービスサポートダイヤルを設置しています。
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障がい者向けの設計について御説明いたします。
まず、音声サービスの活用です。味の素は、音声読み上げに最適化したレシピサイト「音でみるレシピ」を作成しました。
次は手話通訳リレーサービスです。日本生命保険は、図6のとおり、パソコンやスマートフォンのビデオ通話システムから手話通訳オペレーターに手話や筆談で用件を伝えて、同時通訳でコールセンターに問合せができるサービスを提供しております。
最後はユニバーサルデザインです。花王は、製品カタログの多言語化対応を実施しております。キャノンは、複合機におけるユニバーサルデザインの推進に取り組んでいます。
次のページをお願いいたします。
デジタルデバイド支援について御説明いたします。
まずはカスタマーサービスの充実です。住友生命保険は、図8のとおり、オペレーター・顧客間でアプリ等の画面をリアルで共有しながら説明できるLOOOKITというものを導入しております。また、野村ホールディングスでは、スマートフォンやタブレットからも安心して取引ができるよう、高齢者のユーザビリティーを重視したインターフェイスを開発しました。メルカリは365日24時間体制のカスタマーサービス体制を整備し、出品や取引を常時監視し、偽造品や盗品などの出品禁止物の排除に努めています。
最後は自社体制の強化です。リクルートは新しい商品を提供する際に法務、セキュリティー、プライバシー等の複数の部署がレビューを行う体制を構築しています。
次のページをお願いします。
ダークパターンへの対応について御説明します。
まずは不適切な広告表示の抑止です。LINEヤフーは、ECモールにおいて不適切なストア出店・商品出品、不適切な広告表示を抑止し、お客様の保護に取り組んでおります。また、図9のとおり、法令違反の広告やなりすまし、ダークパターンと言われるユーザーをだますおそれのある広告アカウントを審査し、非承認や取引停止などの対応をしております。
次は利用ガイド等による情報の提供、自主ルールの作成です。メルカリは、消費者が売り手となる取引が増える中、意図せずに不適切な出品をしてしまう場合があるため、情報提供や出品後の検知を行っております。ほかにもユーザー向けの表示に関する自主ルールを作成し、社内に周知徹底をしている企業もあります。
次のページをお願いします。
消費者教育について説明します。
消費者教育プログラムの開発、展開の取り組みとして、メルカリは、図10や11のとおり、フリマアプリの安心安全な使い方などを学べる教育プログラムをウェブサイトで無償公開しています。また、全国の自治体や学校と連携し、小学校を対象にしたワークショップを開催しております。LINEヤフーはユーザーのリテラシー向上を支援するため、外部機関とも連携しながらネットセーフティー教育などの啓発活動を推進しています。
次は消費者向け講習です。トヨタ自動車は販売店でのスマホ講習を実施しております。メルカリは、シニア層などを対象にフリマアプリ「メルカリ」の使い方から出品までの手順を講師が解説するメルカリ教室を無料で開催しております。
次のページを御覧ください。
ここからは、今後の消費者法制度や規律のあり方についてお話をさせていただきたいと思います。
こちらについて、企業からの提案・要望を取りまとめました。
1点目は事業者の予見性向上に資する判断基準の提供です。
2点目は事前規制から事後規制の流れに反しないことです。善良な事業者に対する過度な負担を避ける必要があります。
3点目は規律のグラデーションの柔軟な検討です。善良な事業者の自主的な取り組みを尊重する一方で、悪質な事業者には厳しい対応を行うべきです。
下段に消費者法制度や規律のあり方について四つのポイントをまとめております。
ポイント①は規制の明確性と柔軟性の両立です。規制対象行為を明確にしつつ、ハードローによる規制よりもソフトロー手法による自主的な取り組みの推進が必要です。
ポイント②は悪質事業者対策の強化です。善良な事業者の事業活動を不当に制限する一律的な規制ではなく、業界団体のガイドラインの活用などが必要です。
ポイント③は海外事業者への法執行強化です。海外事業者とのレベル・プレイング・フィールドを確保し、海外事業者による違法行為への抑止力を強化すべきです。
ポイント④は政府の体制です。法令遵守のための省庁間の横断的な連携の強化に加えて、善良な事業者の公表、違反事業者への罰則軽減など、企業へのインセンティブへの検討が必要です。
これ以降、14ページから16ページは企業からの具体的な意見であり、代表的な意見を御紹介いたします。
次のページをお願いいたします。
規制の明確性と柔軟性の両立については、禁止行為の要件を明確化しつつ、義務遵守の手段には柔軟性を確保することが必要です。そのためには、政策目的を明確にし、目的を達成する取り組みモデルを示し、そのモデルと同等以上の効果が期待できる対応を認める法的枠組みの検討が必要との意見もありました。
また、ダークパターンの取り締まりのため、善良な事業者の作業が増加することは避けるべきとの意見もありました。
加えて、一律的なハードローによる規制よりも、ソフトローの手法により事業者の自主的な取り組みを促すほうが望ましいという意見も出ております。
次のページをお願いします。
悪徳事業者対策の強化では、悪徳事業者はごく少数であり、善良な事業者の事業活動を不当に制限する一律規制は回避すべきとの意見がありました。
海外事業者への法執行では、例えば越境EC事業者などによる違法行為への抑止力を高めるべきとの意見がありました。
次のページをお願いします。
こちらについては、先ほどの御説明のとおりです。
次のページをお願いします。
有効な消費者団体との連携を進める上での課題と連携のあり方について、上段に企業からの提案・要望をまとめております。
具体的には下段の表に課題と有効な連携のあり方をまとめております。
主な課題として、一つ目は消費者団体と事業者での意見交換や情報の機会が少ないことです。二つ目に、消費者団体の高齢化やデジタル課題への対応が難しいということが挙げられます。三つ目に、ダークパターンに対し、生活者視点から意見を発信できる第三者機関の設立を求めます。
連携のあり方としては、一つ目は消費者法規制、トラブル事例、消費者教育の教材等について、情報共有や意見交換を行うことでより実効的な取り組みを進めることです。二つ目は消費者の声を事業者に届ける仕組みの構築です。
次の18ページから19ページは企業からの具体的な意見であり、代表的な意見を御紹介します。
次のページをお願いします。
課題として、消費者保護法制に係る最新の情報や消費者トラブルの事例などについて、消費者団体と事業者間で情報交換の場を設けていただきたいという意見がありました。
また、全国の消費者センターなどにサービスに関連した苦情や問合せが入った際に、スムーズに解決するため、消費者団体との情報共有の仕組みを整えることが必要との意見もありました。
次のページをお願いします。
連携のあり方では、消費者団体の問題意識を踏まえた取り組みを行った企業に対し、ポイントを加算する取り組みを行うべきという意見がありました。
また、製品安全情報など、事業者が消費者に直ちに伝えたい情報について、消費者団体を通じて幅広く周知するなどの連携ができればよいという意見もありました。
さらに、消費者が情報を適切に認識し、自律的な意思決定を行うために、消費者リテラシーの向上が引き続き求められるとの意見がありました。
最後になりますけれども、中間整理では、消費者を取り巻く環境の変化を踏まえた取り組みや今後の消費者法制度のあり方について、企業にとっては非常に抽象的な内容が多く、具体的な対応方針が見えにくい部分がありました。最終整理においては、企業の意見も反映し、より具体的な内容としていただきたいと考えております。
今回は、経団連の企業ですので、本当に善良な企業からのヒアリングという内容になりますけれども、経団連消費者政策委員会としても引き続き意見交換の機会をいただければ、幸いです。
発表は以上となります。御清聴ありがとうございました。
○沖野座長 ありがとうございました。
ただいまの野村委員からの御発表内容を踏まえて、質疑応答・意見交換をしていきたいと思います。御発言のある方は挙手で、オンラインの方はチャットでお知らせいただきたいと存じます。
それでは、どなたからでも、どの点からでも結構ですので、よろしくお願いいたします。
では、二之宮委員、お願いします。
○二之宮委員 二之宮です。
御説明ありがとうございました。
この専門調査会は、具体的な法律や法制度の制定とか改正というのを検討する前段階、消費者法制度全体がどうあるべきかというところの検討をしているということから、どうしてもある程度抽象的にならざるを得ないというところはあると思いますが、経団連さんの中でもやはり分かりづらい、抽象的だからもう少し具体的にという声があるというのも理解できますし、消費者団体のほうも同じような捉え方をしているところです。ただ、あまりここでぎりぎり詰めてしまうと全体像が見えにくくなる。そこを踏まえた上で検討するということを前提に幾つか質問させてください。
具体的な制度論をやっているわけではないので、背景事情を相互に理解するという観点から、予見可能性というところとコストというところについて何点かお聞きしたいことがあります。
資料の中にも、包括的な規制は適用の有無に関する予見可能性を欠く場合が多く、規制対象事業者が規制の適用や行政処分等のリスクをおそれ、イノベーションが萎縮するという記載が13ページ、14ページあたりにあります。これは具体的な法制度を検討しているときにも必ず出てくる争点の一つだと思います。
他方で、資料の7ページ以降に記載されている、まさにこの専門調査会で一つのテーマになっている消費者の脆弱性に対してどういう取組が行われているのかという各事業者の皆さんの取組を資料から拝見しますと、実に様々な取組がなされているということが分かります。これは具体的な何かの法制度あるいは規制、ああしなさい、あるいはこれはしては駄目だということを前提にした上で様々な取組がなされているのではなく、要は合法、違法レベルで検討されているのではなく、はるかにそれを超えた高いレベルでより消費者にどういう形で脆弱性に資するのかというところで、本当に創意工夫がされているということが分かります。
そうすると、今後、具体的な制度論を検討していくに当たって、あるいはこの専門調査会でその前段階として全体構成をどう考えるのかということを考えるに当たっても、包括条項とか一般条項というものは、個別的な規定があって、そこでは拾い切れない、こぼれ落ちる、あるいはすり抜けるものに対してどう対応するのかということになってきますので、およそ個別規定の対象とならないような行為までが包括条項とか一般条項によって違法だと判断されるということは、ルールのつくり方からしても考えにくいというところがあると思います。これは私の意見になります。
そうすると、既存の規制の隙間をこぼれ落ちる、すり抜けるというレベルの行為、そこの漏れを防ぐというために包括条項とか一般条項というものをつくった場合、例えばこれまでこういうケースで不都合が生じただとか、やはりリスクが高まって懸念が生じて萎縮してしまっただとか、例えばこういうケースでこういうことがあったのですということがあれば、一つ何か参考になるようなのを教えていただければ、今後検討するときに、なるほど、そういうところが懸念点なのかということがより分かりやすいと思うので、教えていただければと思います。
もう一点は、どうしても個別規定は具体的な規制に対する手段として細分化されていくことになりますので、後追いになる、いたちごっこになるというのが現状続いている。後追い規制になると公正な市場が害され続けるということは、結局は規範意識の高い事業者にとってもデメリットではないのかと思うのですけれども、そうすると、包括的な規定、一般条項があったほうが公正な市場が結局維持される、高いところで守られるのではないかと考えることもできると思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。ここが予見可能性のところです。
もう一点、コストのことについても教えていただきたいと思います。資料15ページでは、消費者保護規制の強化は事業者全体のコンプライアンスコストの増加につながるが、悪質事業者対策としての効果は不透明ということとか、極悪層と呼ばれるごく少数の事業者が膨大な消費者相談を引き起こしていくという指摘があると企業のアンケートに対するコメントとして紹介されております。
ただ、ここは、どうしても我々消費者被害の相談を受けている弁護士の立場からすると、例えば消費者センターに入るPIO-NETの情報だとか、あるいは適格消費者団体が事前の差し止めだとか、提訴して被害救済されたケース、被害額あるいは対象事業者というのを考えると、必ずしも一部の極悪層がというのではなく、むしろいわゆる中間層と言われている圧倒的多数がそれほど違法、合法というのを、故意にではないのでしょうけれども検討せずに過失でやってしまうだとかというのも含めると、かなりの多くの事業者がいろいろなトラブル問題を起こしているのではないかと思います。
そうすると、健全層というのはもともとコンプライアンス意識は高いと思いますので、資料7ページ以降に記載されている消費者の脆弱性に対する対応というのも先ほど少しコメントしましたけれども、違法、合法レベルではないもっと高いところで取組をされていると思いますから、仮に規制が強化される、ルールが整備されるとしても、さらに高い意識で取組をされているので、改めてコンプライアンスコストが増加するということはないのではないかと思います。
他方で、中間層というのは違法、合法というのをそれほど意識していない。そうすると、ルールが整備されたとしても、それに対するコンプライアンスコストというのを改めてかけるというのは想定しづらい。むしろそれを意識してコストをかけるというのは健全層ではないかと思います。
極悪層を言われているところは、コンプライアンスコストは逆のほうにコストをかけますので、どうすればすり抜けるのかということを考える。そこがコンプライアンスコストをかけるとも思えない。そうすると、この資料に書いてある増加につながるとされている事業者全体のコンプライアンスコストというのは、どういったものを想定しているのかというところを教えていただければと思います。
もう一つは、これと関連するのですけれども、消費者保護規制の強化が事業者全体のコンプライアンスコストの増加につながるということはどういうことを想定されているのか。先ほど少しコメントしましたけれども、健全層は改めてかけないだろうと思います。中間層も規制に対応したコンプライアンス意識を働かせてコストをかけるとは思えない。極悪層、悪質層は逆の方向でコストをかけるということを考えると、事業者全体のコンプライアンスコストの増加につながるというところで想定していることについて教えていただければと思います。
すみません。ちょっと多くなりましたけれども、よろしくお願いします。
○赤堀主幹 経団連の赤堀でございます。
二之宮委員、御質問ありがとうございます。
前提といたしまして、これは経団連全体の要望というよりは、各社から出された個別の意見を列挙した形になっているので、各社の意見への具体的な質問については、お答えすることについてやや限界がある部分があることを御了承いただければと思います。
まず、各社において合法、違法レベルを超えた高いレベルの創意工夫ということを評価していただき、ありがとうございます。それで、包括条項や一般条項とか個別的な規定で拾い切れないすり抜けるものにどう対応するかという一般条項をつくった場合のこれまで不都合が生じたなどの懸念につきましては、具体的な事例というのはなかなか説明しにくいところでありますが、経団連といたしましては、あくまで企業の自主的な取り組みを尊重していただく法制としていただきたいと考えております。
経団連の全会員企業が遵守する企業行動憲章というものを定めておりまして、その中で、消費者、顧客との信頼関係については、消費者、顧客に対して商品・サービスに関する適切な情報提供、誠実なコミュニケーションを行い、満足と信頼を獲得するということを掲げております。その上で、消費者が自主的かつ合理的に商品・サービスを選択できるよう、企業は必要な情報を分かりやすく提供するなどの自主的な取組を掲げて、会員企業に遵守を求めているところでありまして、その上での事前規制から事後規制への流れということを求めているところであります。
コストについては、具体的な数値を出すというのはなかなか難しいところではありますが、意見を出していただいた企業によると、事業者全体のコンプライアンスコストの増加について、2021年のアフィリエイト広告等検討会では、5万件の相談のうち半数が10社に関するものだという指摘があったとのことです。また、ある人物が運営する一つのグループで20パーセントの相談が発生し、その者を取り締まることで違法広告は一斉に消えたという報告もあったということです。そこで、消費者庁と警察庁などの省庁間の連携を通じて、消費者トラブルの大半を生み出す極悪層をターゲットにした政策を検討することが有効ではないかということです。中間層や善良な事業者の層を含めた一般的な規制を導入するのは、まずは極悪層をターゲットとした政策では十分な効果が得られないことが確認された後にしていただけるとありがたいという意見がありました。
また、消費者保護に積極的に取り組む姿勢を有する善良な事業者に対しては、仮に問題が発生した場合、行政と事業者間で対話を重ねて問題を解決するといったことが可能であれば、行政と事業者間の情報共有と極悪層対策に関する建設的な連携をより促進するのではないかという意見がありました。
私からは以上でありますが、野村さんはいかがでしょうか。
○沖野座長 ありがとうございます。
野村委員からもまさに御指摘いただきたいのですが、加毛委員から御質問が出ておりまして、かつもうすぐ退出しなければいけないということなので、ちょっと間に入りますけれども、御質問だけ先に伺わせていただきたいと思います。
では、加毛委員、お願いします。
○加毛委員 申し訳ありません。よろしくお願いいたします。
野村委員におかれましては、本日の御報告誠にありがとうございました。いろいろな観点から参考になるお話をいただいたと思います。
まず総論として、消費者法制を考える際には、それが企業活動にいかなる影響を及ぼすのかについて十分に配慮をする必要があることをしっかりと認識すべきと思います。とりわけ、合理的な事業者を想定すれば、事業継続のために消費者の利益を考慮するのは当然と言えるので、あえて厳しい規制を設けなくとも、市場メカニズムなどを通じて消費者の保護が図られることがあることを確認する必要があります。
その一方で、合理的な事業活動を継続する事業者との関係でも、短期的に判明しやすい消費者被害については、それを回避することを期待できるわけですが、短期的には判明しにくい消費者被害については、やがて問題が発覚するかもしれないとしても、現在において事業者の担当者が適切に対応しない可能性が考えられますので、そういった消費者被害に関しては、適切な規制などを考えなければならないものと思います。
そのことを申し上げた上で、15ページと16ページについて、四つほど質問をさせてください。
第1に、15ページでは、「悪質事業者対策の強化」の一つの手法として、「事業団体等が策定するガイドラインの活用も有効」と書かれているのですが、それがなぜなのか、私にはよく分かりませんでした。悪徳事業者は、業界団体等のガイドラインなどには従わないだろうと予想されます。それにもかかわらず、なぜガイドラインの活用が有効なのかについて、ご説明いただきたいと思った次第です。
第2に、16ページの一つ目のチェックにおいて、「ポイントの加算、善良な事業者の公表」が「企業の法令順守のインセンティブを強化する施策」として挙げられていますが、御報告でも御紹介のあった消費者志向経営の顕彰制度などが既に存在するところ、現存の制度では十分でないということなのか、仮に十分でないとすると、どのような形で「善良な事業者の公表」などをするようにすれば、優良な企業にとって参加しやすいのかについて、お考えをお聞かせいただけないだろうかと思います。この点は、本専門調査会において今後の制度作りを考えていく上で重要なポイントであると思いますので、もう少し具体的なアイデアを頂戴できないだろうかと思うところです。
第3に、今のところに続けて、「過失により違反を生じさせた事業者への罰則の軽減」と書かれていることについてです。これも恐らくは何か具体的な事例が念頭に置かれているのではないかと想像したのですが、故意でなく、過失であったことだけを根拠としてペナルティーを軽減することが、どのように正当化されるのか、よく分かりませんでした。例えば、何らかの消費者被害が生じた場合に、被害原因を積極的に開示するなどして、同様の被害の再発防止に貢献をしたり、あるいは被害原因に関する情報提供を通じて業界団体による適切な自主ルールづくりに寄与したりするなどの事情があれば、それを考慮してペナルティーを軽減することは理解しやすいのですけれども、単に過失であったという事情だけでペナルティーの軽減が認められるのはなぜなのかということについて教えていただければと思いました。
最後に、16ページの一番下のチェックのデジタルプラットフォーマーに関する箇所で、「事業者が取得できる消費者の情報は限定的である」と書かれており、むしろ「行政の法執行能力」を高めるべきと指摘されているのですが、ここでは、プラットフォーマーが取得できない消費者の情報として、いかなるものが想定されており、なぜその情報を取得できないことが消費者対応に限定があることを導くことになるのかについて、資料だけではよく理解できなかったので、御説明いただければと思います。
質問だけ差し上げて、あと数分で退出しなければならず、誠に申し訳ありません。冒頭にも申し上げた通り、本日の御報告は大変勉強になりました。御礼を申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
○沖野座長 ありがとうございます。
もう退出されているかもしれませんけれども、プレゼンテーション自体の中身についての質問そのものですので、こちらを先に取り上げさせていただきたいと思います。4点いただいていますが、いずれからでも結構ですのでお願いします。少し御説明の内容を補足していただければということかと思います。
一般的には、ガイドラインですと、まさに遵法精神のある人がガイドラインを守るので、極悪層への対応がガイドラインというのはどういう理屈でどういうお考えなのかというのは少し引っかかりがありますので、よろしかったら説明していただきたいというのが1点目かと思います。
○野村委員 先ほど赤堀さんからもあったように、これは一企業からの意見を中心にまとめているものではありますが、基本的には、二之宮委員からもあったように、健全層から極悪層までいろいろグラデーションがある中で、やはり一つはガイドラインを設けてまず守らせるというのは有効ではないかと思います。守らないからつくらないということとも違っていると思います。
○沖野座長 ガイドラインを守らないようなところは悪質と認定できるとか、そういうソートアウトのためということでしょうか。
○野村委員 そういう意味合いだと思うのですけれども。
○沖野座長 赤堀主幹からさらに補足はございますか。
○赤堀主幹 確かに極悪層がガイドラインにそもそも従わないのではないかという御指摘はごもっともですが、ガイドラインというよりは、消費者保護法制の厳しい規制を避けるべき、むしろこちらのメッセージは上の行にあるように一律的な規制を避けるべきということにメッセージの主眼があると理解しております。その上での一案としてガイドラインの活用が有効であるということだと思います。
○野村委員 少しだけよろしいですか。悪質な取引というのは何なのかですとか、そこをある程度明確化するためにガイドラインが有効ではないかということですが、いわゆる普通に大きな法規制の中ではなかなか具体的なことが、語られないことも多いと思います。業界のガイドラインになるとかなり具体的になるため、悪質な取引というのはこういうものですとか、そういうことを伝えていくことで、どこが悪質のラインになるのかということもはっきり分かってきますので、そういった意味でガイドラインが有効だと思います。
加毛委員がおっしゃるように、悪質な業者は守らないのではないかということはあるとは思いますが、悪質なのかそうではないのかというところを明確にできるのではないかという意図だと思っております。
○沖野座長 ありがとうございます。
他の点、項目が多くて恐縮ですが、いかがでしょうか。
○赤堀主幹 ポイントについて、現在の消費者優良事例の公表では不足はないのかという御指摘でしたが、こちらにつきましてはこれ以上の回答がなかったので、必要があれば回答元の企業に確認するということでご理解いただければと思います。
○沖野座長 ありがとうございます。
もちろんさらに今回の質問を受けて情報を確認していただければと思います。現在ある制度では足りないということだと、どういうことをお考えなのかというのは非常に示唆的に思われますので、ぜひ追加をお願いできればと思います。
○赤堀主幹 こちらについては追って確認させていただきます。
○野村委員 今、消費者志向経営のエントリーをするときに、こういった法を守っているというところが特にフィーチャーされないところではあると思うので、選考の基準ですとかそういったところに、この法律が新しくできたときに法遵守ですとかそういったところも入れてくれば、同じように働いていく可能性もあるのかと思いました。
○赤堀主幹 過失により違反を生じさせた場合の罰則の軽減というのも確認が必要となることをご理解いただければと思います。
○沖野座長 恐らく意図的でなかったというのではなく、過失しかないところがより積極的に遵守行動を取っているとか、何かの行動を取っているとか、多分そういうことをお考えではないかということだと思うのですけれども、少し考え方をまた追加していただければと思います。
○野村委員 1回の過失で完全な罰則というところではなくて、優良企業なので救ってほしいというところがあるのではないかとは思います。
○沖野座長 優良だというのは、過失によって被害が生じたことを放置していいということでは恐らくなく、それに取り組まれているという意味で優良ではないかと思いますけれども、適宜また補足をお願いできればと思います。
4点目はいかがでしょうか。
○赤堀主幹 事業者が取得できる消費者の情報は限定的というところだと思いますが、こちらについても確認させていただければと思います。
○沖野座長 よろしくお願いいたします。またそのほかの点でも疑問で出てきましたら、引き続きの確認や調査をお願いすることになるかとも思います。それでは、二之宮委員からの御質問に対する応答が今、中途になっております。他方で、河島委員からお手が挙がっていまして、そちらの御質問を聞いて、もし関連するようなら併せてお願いしたいと思いますし、必ずしもそうではなければそれぞれまたお願いしたいと思います。
では、河島委員、お願いできますか。
○河島委員 ありがとうございます。
日本経団連のアンケート結果の内容につきまして、とてもきれいにまとまった御説明をいただきまして、ありがとうございました。勉強になりました。
質問は2点あります。
1点目は、今回は経団連の企業の個別の意見を列挙したということでありますけれども、このアンケートの回収率はどの程度でしょうか。このアンケートの結果をどこまで経団連全体の意見とみなすかに関わってきますので、教えていただければ幸いです。
2点目は、今日のお話ではプリンシプルについて触れられなかったのでお聞きするのですが、以前この専門調査会で議論になったプリンシプルについてどのようにお考えになっているのでしょうか。
といいますのは、経団連にも先ほど言及があったように企業行動憲章があり、加えて、野村委員は花王の執行役員でいらして、私が言うまでもなく、花王はEthisphere Instituteの世界で最も倫理的な企業に長年、選ばれており、花王ではプリンシプルに非常に近いパーパスが重視されていると思うからです。金融業界とは違い、消費者行政が扱う領域があまりにも幅広いので、プリンシプルになるものは効果がないと思っていらっしゃるのか、その辺りについてお考えはいかがでしょうか。
以上2点、よろしくお願いいたします。
○沖野座長 ありがとうございます。
1点目は事実ですので、まず数字をお願いします。
○赤堀主幹 今回のアンケートにつきましては、資料の2ページの2行目にあります経団連消費者政策委員会消費者法部会・企画部会の企業にアンケートを実施しました。合計四十数社です。それで、回答があったのは13社でありました。今回の資料はその13社から出された意見を基にまとめたところで、回収率といたしましては約3割程度というところでございます。
プリンシプルについては野村さんからお願いできますか。
○野村委員 ここは花王の立場でということでお話をしたほうがいいのかと思います。
倫理的な企業としてきちんとありたい、そういうところを花王はずっと考えていて、原理とかそういうプリンシプルの部分というのはうちの企業にとっては有効だと思っています。それは、こういう精神、こういうことで守っていこうとか、こういうことを考えていこうということそのものは、企業としてのあるべき姿を考えるときに、法遵守であるというのは大前提なので、そこを出していただくことというのは私たちの企業にとっては有効だと思うし、多くの企業にとっても、この精神とかこの範囲を守っていけばいいのだということが分かるということは非常に有効なのではないかなとは思います。
ただ一方で、ここから外れるところがあるというところに対しては、ここは有効ではないのかなと思いながらも、法制度をつくるに当たっては、まずはプリンシプルがあって、この前提、この精神でつくられているのだということを知らされて、企業そのもので考えていくというような体制がつくられるということが私たちにとっては守りやすい状態になるなと思っております。
○河島委員 ありがとうございました。
○沖野座長 ありがとうございました。
それでは、間で中断してしまって、二之宮委員からの御質問に対して赤堀主幹から一定の補足をしていただいた後、野村委員の御発言を止めてしまって申し訳ございません。予測可能性の関係で、まさに具体的な不都合や萎縮効果の具体例があったらひとつ教えていただきたいということと、確認だけさせていただくと、一般条項の存在によって公正な市場が実現されるということになれば、むしろ規範意識の高い事業者にとってはメリットがあるほうになるのではないかと考えられるのだけれどもどうでしょうかというご質問です。
コスト面については、ここで書いてくださった事業者全体のコンプラコストが増加するというのが、事業者のグラデーションを考えたときに必ずしもそうならないように思うのだけれども、どういったお考えでこのような結論になっているだろうかということについて、主幹から御発言はいただいたのですが、もし野村委員からさらに御指摘なりをいただければと思います。
○野村委員 包括的なものというのは、私は花王としてはまずメリットも多いと当然思っております。具体的にどういうことがあったのかというところを今考えていたのですけれども、ぱっとは思いつかないのです。ただ、企業は技術もサービスも常に進化を求めてどんどん変わっていく。出るものがどんどん変わっていくということになります。なので、世の中にいいものができたときに、法制度によってそれが実現できないということも当然考えられることになります。そこが恐らくデメリットになるのだろうなとは思っています。少し話は変わるのですけれども、消費者法制度ということではないのですが、花王にモスブロックセラムという商品がございます。これはタイで発売している商品で、蚊を殺虫剤で殺すのではなくて、肌にスキンケア品として塗ってあげることで、蚊が肌に止まれないようにする商品です。そのことで刺されない。なので、マラリアなども防ぎますという商品なのです。これはタイでは発売ができたのですが、実は日本では出せない商品になっていて、それは、殺虫剤の成分としては殺虫剤としてこういう規定があります、そして、スキンケア品としてはこういう機能がないとスキンケア品としては出せません。薬機法になりますけれども、スキンケアの範疇で肌に蚊が止まらないとか蚊に刺されにくいという効果がないので出せないという状態になっており、せっかくいいものができても世に出せないケースというのがあって、これを発売したくても、規制の中で今なかなか難しいという状態が続います。
ですので、こういったことは技術が進化したりサービスが進化したりしていくとデジタルの世界でも十分起こり得る話なので、新しい進化が企業で起きたときに、それをせっかくいいことなのに阻むような規制にはならないでほしいという思いが非常に強いです。
以上になります。
○沖野座長 ありがとうございます。
二之宮委員からさらに御指摘などはございますか。
○二之宮委員 いえ、ありがとうございました。
ここはまたどんどん検討が進んでいく中でさらに詰めていくところがひとつ必要だろうと思います。
ほかにも別件でお聞きしたいことがありますので、また後で時間があればで結構です。
○沖野座長 分かりました。
今の御説明、御回答をいただきまして、一方で、最後のスキンケア関係のお話というのは非常に分かりやすいと思いましたけれども、その場合は規制自体が非常に細かく具体的であるために引っかかっているということがあって、確かに現在の法制度が新しい技術に十分対応できるのかという問題はあると思うのですが、だからこそ一般性を持った条項で、より具体的なところは業界のガイドラインなどで適切にかつ機動的に中身を展開できるようにというのはある意味一つの可能性なのかなとは伺いました。
それから、コスト面ですとか予測可能性ですとか、二之宮委員から御指摘をいただいて、これは必ずしもそうではないのかもしれませんが、私が伺っていて、一般的に様々な懸念や注意事項をお伝えいただけるということ大変ありがたいことだと思います。ただ一方で、実証的にどうですかというような話はいろいろな面で言われるところで、例えば具体例ですとかコストなどもこういうことがあるからということがあると理解もしやすく対応もしやすいということがあります。
他方で、まさに抽象的な懸念ということだとすると、その懸念が必ずしも具体的な例がない中で、それとバランスする様々な利益あるいは市場全体の健全性の確保なども含めて、それとの関係でどう評価したらいいのかというのは難しいようにも思いますので、そういった観点も二之宮委員の御質問には含まれているように思いました。
これは個別のアンケート結果を踏まえたものということですので、恐らくそれぞれどういう趣旨ですかというのを御確認いただけるということですから、また追加で情報提供をいただければと思います。
それでは、そのほか御指摘や御質問はございますでしょうか。
チャットのほうは大丈夫ですか。分かりました。
では、二之宮委員から個別に幾つかあるということでしたので、内容だけでも明らかにしていただければと思います。よろしくお願いします。
○二之宮委員 私ばかり質問して申し訳ございません。
別の点で、資料18ページで消費者団体との連携のことが書かれております。その中で、課題というところで二つ目、消費者団体と事業者側が様々な形で相互に理解を深めて連携を行うことが有効と。ここは私も消費者団体に携わる者として全く同感です。いろいろな試みを既に行っているところがありますけれども、経済界、経団連さんのほうで消費者団体との連携、対話、理解を深めるために、こういう取組をやっていてこういうのはうまくいっている、あるいはこういうのも新たにやってみたいという考えとかがあれば教えていただきたい。
その上で、この専門調査会の場で別の機会で私のほうから発言させてもらったのが、事業者側と消費者団体側でというのがメインとしては必要なのですが、その場をプラットフォーム的に行政が提供する。その場合に、ほかの省庁は所管業法がありますから、どうしても対象が限られてくる。これに対して消費者庁は言わば業法を所管していないので、あらゆる事業者との土台をつくれる。だから、そういう場をテーマごとにいろいろなものを検討していく。そこでは一つ、ガイドラインとかソフトローに結びつけていくということにもつながるのでしょうが、必ずしもそれを目的にせずに、対話そのもの、相互理解そのものが目的としてそういう場があってもいいのではないかということを以前発言させていただきました。ここで記載されている連携と理解を深めておくということに対してアイデアあるいはお考えがあれば教えてください。
それともう一つ、ここの下のほうに、消費者団体は高齢化が進んでデジタル化の波に対応できておらずと。これは実際にそうだと思います。正直そういう面はどんどん深刻になっていくし、この後進むだろうと思います。
他方で、これは消費者団体に限らず、恐らく事業者の皆さんでも、大企業ではないところ、中小企業が抱えているのと全く同じ悩み、課題だと思います。そうすると、恐らくそちら側にヒントが隠されているのだろうと思います。中小企業のほうはM&Aだとかでというのもあるのでしょうけれども、消費者団体はそこまで市場がありませんので、必ずしもそういうわけにはいかない。だから、むしろこの高齢化だとかデジタル化の波に対するアイデア、ヒントがあれば教えていただきたいというところをお願いします。
○赤堀主幹 まず私からですが、個別具体的な取り組みとなるとなかなか難しいので、やや一般論的になってしまいますが、経団連として、先ほど申し述べた企業行動憲章の実行の手引きで各社への呼びかけていることがあります。業界団体との連携に加えて、消費者団体やNPO、NGOなどの協力も呼びかけている。消費者の啓発活動に自主的に取り組むことで、消費者が商品・サービスに関わる情報や持続可能な社会の形成に資する取り組みについての理解を深めるよう、企業が啓発活動に取り組む。具体的な取り組みとして、商品の正しい使い方や誤使用に関する情報について、関係当局、こちらは消費者庁などが主催する活動に積極的に参加して、製品安全文化の定着に貢献する。あるいは政府、地方公共団体や教育機関、NPO、NGOなどと協力しながら学校などでの出前授業や各種教室、学習会、公開講座、寄附講座等の実施、ほかにも自社並びにグループ企業などにおける工場見学の実施や教育啓発施設の運営、インターネットなどを活用した情報発信など、その他、分かりやすいパンフレットや教材などを作成するといったことを呼びかけておりまして、この意見を出してきた企業から、このほか具体的にもっと足りないところがあるのではないかという質問は行ってみたいと思います。
消費者団体の高齢化、デジタル化については野村様からお願いできますでしょうか。
○野村委員 花王でということになりますけれども、花王は消費者相談をやっている窓口の部門が、毎年、消費者庁もそうですけれども、国民生活センターですとか一部消費者団体と交流をして、自社がどういう活動しているのかとか、今課題に思っていることはどうなのかといった情報交換をさせていただいています。また、化学物質に関しても、そういった有識者の方たちと交流をしたり、活動をしたりして、自社の活動の理解ということでアプローチをさせていただいているというのが現状で、これも何かあったときに誤解のあるようなことがないといいというリスクコミュニケーションの一環としてやっているものになります。
そういった交流は、基本、現状は企業の意識とか活動そのものになってしまっていて、特に網羅的に何かがなっているわけではないという状況です。消費者団体側との交流というのを私たちみたいにアプローチして取っていけばいいのかもしれないですけれども、各社がそれをやったら消費者団体側も大変だと思いますので、ある程度まとめて組織立ってできるようなことですとか業界団体としてやっていけるようなことがあるといいなと私も思っております。
消費者団体の間でデジタル化への遅れというところは、私も二之宮委員がおっしゃるように中小企業にヒントがありそうな気がしておりますが、デジタルの悩みの相談ですとかそういったところに関しては、そういった交流を通じてもやはり遅れているなと私も感じるところは多々ありますので、今後の課題かと思います。
○沖野座長 ありがとうございます。もし何かそういうヒントになるようなことがあるようでしたら、また教えていただければと思っております。
ちなみに、消費者団体と事業者間、あるいは事業者団体間での情報交換の場という中で、今、個社レベルで国民生活センターですとか消費者庁とかと意見交換というか情報確認などをされているということですが、例えば経団連自体としてそういう取組はされているのですか。
○赤堀主幹 あいにく、ここしばらくはそうした取り組みは行っていないというのが率直なところであります。
○沖野座長 しばらくというのは、例えばコロナ前はしていたとか、そういうことですか。
○赤堀主幹 過去まで把握はしておりませんが、個別の消費者団体との意見交換会のようなものまでは開催したようなことは、コロナ前も含めてあまりないと認識しております。
○沖野座長 開催には支障があるのでしょうか。
○赤堀主幹 特段支障はありませんが、今後の検討課題とさせていただければと思います。
○沖野座長 ありがとうございます。
余計なことを伺ったかもしれませんけれども、私は、金融ADRの関係を幾つかやっておるのですけれども、そこにはどの団体も国民生活センターですとか幾つかの消費者団体との意見交換会というのを年に何回か持っておられて、その結果を組織関係の運営諮問委員会だとか評議員会だとかで御報告いただいて、今こういうことが問題になっているというところを今度はADR機関を通じて各社レベルにさらにフィードバックしていくというようなことが一般化しているものですから、金融ADRについてはそういうのがあることも念頭にありました。野村委員、お願いします。
○野村委員 申し遅れたのですけれども、業界団体そのものはそういった会もございます。商工連ですとか石鹸洗剤工業会といったところと交流を持つというのは、工業界が消費者団体と交流を持つとか情報交換ということはやっています。それが各社に落ちているかというと、そこまでかもしれないです。
○沖野座長 ありがとうございます。
現状としてお伝えいただいたということで、またこの意見を出されたところでどういうことを想定されているのか。二之宮委員からは、一定の目的を持った意見交換もあるけれども、情報共有には、まずは知っていて、その土台づくりというようなこともあるという御指摘をいただいたかと思うのですけれども、さらにこちらについても引き続きの情報などが得られるようでしたら補足をお願いできればと思います。
二之宮委員、いかがでしょうか。よろしいですか。
○二之宮委員 はい。ありがとうございました。
○沖野座長 ありがとうございます。
そのほかよろしいでしょうか。
それでは、予定した時間を超過しまして申し訳ございませんでした。
野村委員におかれましては、貴重な御報告をいただきましてありがとうございます。赤堀様におかれましても、御対応ありがとうございました。
それでは、最初の野村委員からのプレゼンテーションは以上とさせていただきたいと思います。
《2.②消費者庁からの報告(海外の消費者法制度に係る種々の手法の組み合わせに関する調査・分析について)》
○沖野座長 早速ですけれども、次の議題に入らせていただきます。
本専門調査会では、前半の議論においても海外の状況についてヒアリングを実施してきたところですが、後半の議論におきましても海外の状況を参考にすることが重要であるという御意見をいただいておりました。
この間、消費者庁におかれまして、委託調査により海外の消費者法制度に係る種々の手法の組合せに関する調査・分析を実施されたとのことですので、現時点でのその状況につきまして御報告をいただき、議論を深めてまいりたいと思います。
まず、消費者庁から調査の概要について20分程度御報告いただきまして、その上で、行政法を御専門にされている山本隆司座長代理から、調査内容の評価や本専門調査会における議論との関係でのポイントにつきましてコメントをいただき、その後、質疑応答・意見交換をさせていただければと思います。
それでは、まず消費者庁から御報告をよろしくお願いいたします。
○原田企画官 沖野座長、ありがとうございます。消費者庁消費者制度課企画官の原田と申します。海外の消費者法制度に係る種々の手法の組合せに関する調査・分析の概要につきまして御説明します。
資料は2点です。資料2-1は、調査結果の概要について国・地域ごとにまとめたものです。また、資料2は調査項目ごとに表形式でまとめたものです。
まず資料2-1の1ページ目ですが、本調査の目的と調査内容について記載しております。
本調査の目的について御説明します。本専門調査会の後半では、ハードロー的手法とソフトロー的手法、民事・行政・刑事法規定など種々の手法をコーディネートした実効性の高い規律の在り方について議論しております。今回の海外調査は、そのような議論に関連して、海外における消費者法制度に係る民事・行政・刑事法規定、ハードロー・ソフトロー、ステークホルダーとの協働の仕組みなど、種々の手法の組合せについて調査分析したものです。我が国における望ましい制度の在り方(ベストミックス)の検討の参考になればと考えております。
次に、調査内容です。今回の海外調査は、消費者庁消費者制度課からワールドインテリジェンスパートナーズジャパン株式会社(WIPジャパン)に委託して行いました。WIPジャパンには各国のリサーチャーの皆様と連携し調査を進めていただきました。
今回私から御説明する調査結果の概要は、今月半ばにWIPジャパンから受領した暫定版の報告書を基に作成したものです。最終版の報告書は、今後、内部手続を行って、消費者庁のウェブサイトに掲載する予定です。
調査対象の国・地域は、米国、ドイツ、英国、オーストラリア、フィリピン、EU、ASEANです。調査結果に異なる特徴が表れるようにするなど、比較・分析に適した調査対象国・地域の組合せを考慮した選択となっております。米国につきましては、連邦の制度のほか、全米で最も包括的かつ先進的な消費者法制度を持つとされるカリフォルニア州についても調査しております。EU加盟国のドイツにつきましては、どのようにEUの消費者法制度を国内法化し、また、欧州委員会や他の加盟国と連携しているかという観点からも調査を行いました。フィリピンはASEANのメンバー国であり、ASEANとしての消費者法制度に係る取組との連携についても調査対象としました。
WIPジャパンは、令和6年9月から令和7年3月までの間、特にソフトローとハードロー、ステークホルダーとの協働を組み合わせた仕組み・手法を活用する取組の内容、各制度の実務上の運用状況などに関しましては、ヒアリング調査も実施し情報を収集しました。
調査結果は、①当局、②ハードロー、③ソフトロー、④ステークホルダー等との連携という調査項目ごとに取りまとめております。
なお、ハードローとソフトローをどのように定義するかは、各国、また、地域により、さらには有識者によっても様々であると思われます。今回の調査におきましては、法的拘束力を伴うものをハードロー、法的拘束力を伴わないものをソフトローとして取り扱っています。
ヒアリング対象者は、関係行政機関の職員、大学教員等の有識者、消費者団体及び事業者団体の事務局の職員、消費者法制度に詳しいシンクタンク等の研究機関の職員などとなっております。特に、ハードローに関する最新の状況や執行状況、ソフトローやステークホルダー等との連携については、関係行政機関などへのヒアリング調査により多くのことを聞くことができました。一方で、米国につきましては、ヒアリング対象者へのアクセスがなかなか難しく、文献調査により得られた情報を基に記載しております。そのため、必ずしも網羅的な内容ではなく、情報自体が少し古いものであるということを申し添えます。 ヒアリングに協力いただいた各国・地域の皆様には、心より感謝を申し上げます。
また、本調査に対しましては、有識者として龍谷大学のカライスコス・アントニオス教授、立教大学の早川雄一郎准教授、京都大学の吉政知広教授に御協力をいただきました。報告書につきましても、WIPジャパンから3名の先生方に意見照会を行いました。先生方には、お忙しい中、本調査に御協力いただき、大変貴重な御意見もいただきまして、誠にありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。
それでは、調査結果の説明に入らせていただきます。ここからは資料2-2の比較表を基に御説明したいと思います。資料2-1は各国・地域ごとに表と同じ内容をまとめておりますので、必要に応じて資料2-1のほうもお手元で御参照いただければと思います。
最初の項目である「当局」では、消費者法制度に関し、各国・地域で政策決定や法執行に関わる当局を記載しております。
まず、米国ですが、米国の消費者政策・規制は、連邦レベルでは連邦取引委員会(FTC)の消費者保護局(BCP)が対応しております。また、金融サービスについては消費者金融保護局(CFPB)が担当しております。米国では、連邦政府が全米を適用対象として消費者保護制度を策定、施行していることに加えまして、州政府の権限が強いことから、州政府でも独自の法整備を行っており、50州全ての州で何かしらの消費者取引に関する法規制を制定しております。今回、調査対象としたカリフォルニア州の消費者政策規制の整備を担当する主要規制当局は、表に記載のとおりです。
次にドイツですが、消費者保護に関する事項は、2021年12月より連邦環境・自然保護・原子力安全・消費者保護省(BMUV)の管轄となっており、関連する消費者政策を立案し、関連機関と調整するほか、消費者に関する情報提供や普及啓発活動、消費者団体への支援を行っております。消費者法に関する主要な立法権は連邦政府にございまして、連邦司法省(BMJ)が消費者保護に関連する法的枠組みの策定を主に担当しております。ほかに連邦ネットワーク庁や連邦カルテル庁なども関与し、地方では各州の機関が制度運用を担っております。
英国の消費者政策は主に競争・市場庁(CMA)が担当しております。CMAは2013年企業規制改革法に基づき、それまでの公正取引庁(Office of Fair Trading(OFT))と競争委員会が廃止されたことに伴いまして、2013年10月に設置された独立の非大臣庁です。このほか、取引基準局(TSS)、全国取引基準局(NTS)なども公正取引の確保といった観点で消費者保護と関連があるとされております。
豪州では、豪州競争・消費者委員会(ACCC)、豪州エネルギー規制局(AER)、豪州証券投資委員会(ASIC)が連邦レベルで規制を担い、各州・準州でも地方の行政機関が対応しております。ACCCは1995年に取引慣行委員会と価格監視委員会の統合により発足した組織で、豪州消費者法(ACL)の施行を管轄し、消費者保護の中心的役割を果たしております。
フィリピンの消費者保護は主に貿易産業省(DTI)が担当し、フィリピン消費者法などを施行しております。DTI内の公正取引グループ(FTG)が法執行などを担当し、FTGの消費者保護・擁護局(CPAB)が政策決定機関として機能し、貿易及び消費者保護法の推進と啓発を担当しております。
EUの消費者法は欧州委員会の司法・消費者総局(DG JUST)が策定し、加盟国がこれに基づく規定の施行を担当しております。また、越境案件ではEUレベルで連携しております。
ASEANの消費者保護は、加盟国の消費者保護機関で構成されるASEAN消費者保護委員会(ACCP)が中心となり、推進しております。ACCPは地域的な取り決めの実行、監視を担い、全ての加盟国において消費者保護に関する措置について、法律、規制、政策なども含めて整備することを目指すなど、加盟国における法整備、消費者救済制度の確立、情報アクセスの強化を目指しております。
次に、2番目の「ハードロー」の項目に移らせていただきます。その概要と最新の動向を一覧表にしております。ただし、欧州と米国における消費者法につきましては、昨年1月31日に開催した本専門調査会の第2回におきまして、それぞれ、龍谷大学のカライスコス・アントニオス教授と同志社大学の川和功子教授から詳細な御説明をいただきました。それ以外の国・地域におけるハードローにつきましても、様々な文献などで既に御紹介いただいているところです。時間の関係もございますので、本日はドイツ以下の各国・地域におけるハードローに関する最新の動向と執行状況を中心に御紹介するにとどめたいと思います。
まずドイツですが、消費者取引関連法は単一では存在しておらず、関連事項が民法などで規定されておりまして、近年、EU策定のデジタルコンテンツ指令や代表訴訟指令の国内法化が進んでおります。執行状況をみると、消費者法の規制違反は主に私法で扱われておりまして、消費者相談センターが年間約1,000件の訴訟手続に関与し、うち50パーセント以上は裁判外で解決し、約20から25パーセントのケースで法的措置が取られているということです。このほか、連邦消費者センター連盟(vzbv)では消費者法関連の判決概要をウェブサイトで公表しており、2024年は72件となっております。
英国では2008年不公正取引方法からの消費者保護規則、2015年消費者権利法などがありますが、特に現在注目されているのがデジタル市場・競争・消費者法(DMCCA)です。実質的かつ確立された市場支配力及び戦略的な重要性を有する事業者がその地位を濫用して競争相手や消費者に不利益を与えることを防ぐため、CMAが措置を採ることができます。本年4月6日に施行されますが、CMAは深刻な法令違反については全世界での売上高の10パーセントまでの制裁金を事業者に対して直接課すことができるようになります。CMAの執行状況は、ウェブサイト上は2016年までしか掲載がされておりませんが、CMAの担当官の説明によれば、これは消費者被害に関する事件があまり裁判に持ち込まれていないからではないかということです。
オーストラリアでは、全事業者に適用される統一的な消費者法として豪州消費者法(ACL)と、金融商品とサービス市場に関する消費者保護を実施する金融版ACLとも言えるASIC法があります。いずれも2023年に改正され、不公正な契約条項が違法とされたほか、ACLの制裁金の上限が引き上げられるなど、規制強化の傾向にあります。執行状況については、ACCCの年間報告書での消費者保護及び公正取引に関するデータを見ますと、過去3年間において訴訟件数は減少しているものの、制裁金は増加傾向にあります。
フィリピンでは、近年、金融商品・サービス消費者保護法や、電子商取引における消費者と事業者の保護を目的とし、特にデジタルプラットフォームを含む事業者に対し規制や救済措置等を定めるインターネット取引法が制定されました。フィリピン消費者法の修正案であるフィリピン消費者法強化案が上院議会に提出されております。執行状況について、DTIが消費者から受理した件数などについて傾向を見ますと、少なくとも2023年は増加傾向にあったということでございます。
EUでは、新しい消費者アジェンダ(New Consumer Agenda)が2020年に策定され、2022年にはデジタル分野の適合性チェック(Digital Fairness Fitness Check)が開始されており、消費者政策の包括的な方針を基礎づけるものとなっております。また、EU消費者法の執行については、各加盟国の消費者当局が担っております。ただし、消費者保護協力という規則に基づく措置ですとか、インターネット上の消費者法コンプライアンスチェックの実施結果を報告書などで公開することで、EUレベルでハーモナイズされた規制内容となるような基盤を提供しています。
次に、3番目の項目の「ソフトロー」に移らせていただきます。ソフトローにつきましては、その策定主体が当局か民間かという観点からまず整理し、また、ハードローとソフトローを組み合わせた仕組みについても調査を行いました。ヒアリング調査が可能だったドイツ以下について御紹介させていただきます。
ドイツにつきましては、BMUVの担当官から欧州レベルのガイドラインを当局策定のソフトローとして活用しているという説明がありました。また、そのほか当局が策定したソフトローとして企業の社会的責任報告基準に関するものなどがあり、連邦政府策定の各種認証ラベル、民間策定のものとしても団体の品質認証制度などがあって、ハードローと組み合わせて消費者への情報提供義務の実効性を高めていると言えそうです。また、電子商取引、データ保護、食品栄養情報表示などの分野では、法規制と業界の自主規制が連携して運用されています。
英国では、CMAとその前身である公正取引庁(OFT)が作成したガイドラインが数多くあり、特に執行手続に関するものは重視されているようです。また、民間策定のソフトローとして、英国規格協会(BS)や広告基準協議会(ASA)が消費者保護のための基準を策定しております。ソフトローとハードローの組合せとして、例えば、2008年不公正取引法からの消費者保護規則ガイダンスが、規則を補完する役割を担うといったことが見られます。また、先ほど御紹介しましたデジタル市場競争消費者法(DMCCA)ですが、CMAがどのように法運用していくかということにつきまして関連ガイダンスが示されるということで、事業者の法遵守の支援を目的としているということです。
オーストラリアの当局策定のガイドラインについては、ACCCがACLに関して発行する各種ガイドラインがあり、事業者が法律上の責任を理解する助けとなっております。また、豪州証券投資委員会(ASIC)法とASIC関係のガイドラインも同様の関係となっております。
次にフィリピンですが、当局策定のものとして、消費者法に基づく各種ガイドラインが行政命令として発行されているほか、消費者のために責任あるビジネスを評価するDTI-Bagwis Programや、オンラインで苦情受付処理するためのCAReシステムなどがあるということです。ハードローとソフトローの組合せとして、フィリピンのハードローとソフトローの組合せも見られますし、また、ASEANのソフトローとフィリピンのハードロー・ソフトローの組合せも見られ、例えば、ASEANオンラインビジネス行動規範とオンライン販売業者・消費者に適用される法律・規則の再確認をするオンライン販売業者向けガイドラインのような取組が参考とされています。
最後、4番目としまして、「ステークホルダー等との連携」の項目に移らせていただきます。本専門調査会の後半では、消費者法制度による実効性のある様々な規律のコーディネートの在り方に関連しまして、公私共働の仕組みや共同規制の活用可能性、事業者の自主的な取組の称揚などについて議論が行われてまいりました。そのため、今回の海外調査でも、規律の策定または実効性確保の役割を担う主体として、ステークホルダーである消費者団体、事業者団体などとの協働の仕組みを活用している取組の内容についても調査対象としました。また、関係省庁やほかの国・地域、国際機関などとの連携についても整理をしております。ここでも、ヒアリング調査ができましたドイツ以下について御紹介いたします。
ドイツでは、ステークホルダーとの連携としまして、電子商取引分野における官民協力、デジタルサービス法と業界団体の補足自主規制の組合せや、データ保護分野における協働、法遵守支援のための中小事業者向けガイドなどといったものが見られました。また、アウトリーチ活動などに関する省庁間連携、消費者教育協会における連邦・州の連携といった取組も見られております。
英国につきまして、CMA内で新しく結成された戦略チームやコミュニケーションチームが様々なステークホルダーと連携しているということで、実際に新しいステークホルダー戦略では、約50の企業、利害関係者、消費者団体、事業者団体との連携に焦点を当てているということです。そのほか、ステークホルダーからの法規制に関する意見公募を行ったり、消費者保護パートナーシップ(CPP)というCMA、広告基準協議会(ASA)など14の組織により構成される枠組みを構築して消費者保護問題に取り組んでいるということです。
オーストラリアではオンブズマン制度が活用されております。一般的には、オンブズマンというと、行政への国民の苦情を解決するため、中立的な立場から調査を行うような制度を指すようですけれども、オーストラリアのこの消費者分野におけるオンブズマン制度は、民間の仲介業者が消費者の苦情を解決する支援を行う、言わばADRのような仕組みを提供しているということです。オンブズマンを監督する業界が資金援助を行うという仕組みもあります。国・連邦及び地方公共団体間の当局同士の連携の項目について、豪州消費者法に関する覚書(Australian Consumer Law – Memorandum of Understanding)には、豪州競争・消費者委員会(ACCC)、豪州証券投資委員会(ASIC)のほか、豪州の州・準州の規制機関、さらにはニュージーランドの政府機関も参加しているということで、これらの機関で協力して消費者法の遵守状況のモニタリング執行などを行っております。
フィリピン国内では、先ほども御紹介しましたDTI-Bagwis Programですとか、Seal of Legitimacyのように消費者保護のために優れたビジネスを実践する民間企業を認定する仕組みがあるということです。このほか、生活必需品・主要商品の製造・小売業者の非公式対話、デジタル商取引協会との覚書、電子商取引推進評議会の設立といった取組が見られます。他の国・地域との連携ですが、ASEANの消費者保護関連の取組に様々参加しており、また、国連貿易開発会議(UNCTAD)に加盟しグローバルスタンダードの推進にも努めているということです。
最後、ASEANですが、こちらはASEAN消費者保護委員会(ACCP)が中心となってガイドラインを策定するとか、あとはASEAN消費者保護会議(ACPC)を開催しています。今後の目標としては、ASEAN全域にわたるODRネットワークの設立が掲げられております。ASEANとしての国際的な連携として、消費者保護に関するASEANガイドラインやハンドブックがあり、こちらはドイツ政府やオーストラリア政府の支援の下、策定されたものであるということです。また、2018年以降、ドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)の支援で実施されているPROTECTというプロジェクトは、加盟国の消費者保護体制の強化、持続可能な生産消費の推進、消費者権利救済システムの強化、国境を越えた取引やオンライン取引の改善などを目的としているということです。
私からの説明は以上になります。ありがとうございました。
○沖野座長 ありがとうございました。
それでは、以上の報告内容を踏まえまして。山本座長代理から恐縮ですが5分程度でコメントをお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○山本隆司座長代理 時間が押しているようですので、手短に感想程度のお話をいたします。
まず、縦のほうの項目で申しますと、ハードローとソフトローを組み合わせた仕組みが8、9ページにあります。ハードローとソフトローの定義はいろいろあると思いますが、ハードローとして法律等の法的な拘束力を持つ一般的なルールを想定し、もう一つ、普通はハードローとは言いませんが、裁判の判決のように個別の事案を解決するに当たって法的拘束力を持つ決定を想定しますと、その間に、厳格な意味での法的な拘束力を持たないけれども機能する様々な一種のソフトローがあると思います。それとはまた独立のソフトローもありますが、もしハードローとしての一般的なルールと法的拘束力のある個別の決定との中間の段階にどのようなものがあるかという観点で申しますと、今回はあまり出ていないかもしれませんけれども、ハードローを適用するためのガイドラインとか、先ほども少し話が出ましたが、個別の事案において、例えば場合により制裁金等を軽減する等の措置を取るといった柔軟な決定の手続があるかと思います。その辺りを今後深掘りしていくことが重要ではないかと思いました。
それから、次に横のほうの軸について、私もそれほど吟味しているわけではないのですが、感想だけ申し上げるならば、ドイツに関しては、4ページの下にある執行状況という項目で、消費者相談センターがかなり訴訟手続に関与しているとあり、数字が出ていますが、その具体的な内容、内訳が分かると有益かと思いました。
英国に関しては、2ページから3ページにかけてのところです。英国はEUを離脱しましたが、依然として制裁金をかなり課す制度をつくっていることは注目されるところです。日本では議論がどうも一定のレベルで止まっているようなところがありますので、興味深い点です。
オーストラリアに関しては、先ほどオンブズマンの話がございました。ステークホルダーとの連携の最初のところ、9ページです。これがどのように機能しているか、どのような内容かという点が興味深いかと思いました。
フィリピンに関しては、オンラインでの相談、苦情受付が6ページにあります。これは各国でいろいろ工夫しているところかと思いますけれども、フィリピンでも取り組まれていることが注目されます。
今回、アメリカに関しては事情があって十分な調査ができなかったというお話もありましたが、全体として、これだけ包括的な調査をされたということですので、今後さらに部分的に深掘りしていくと面白いかと感じました。
私からは以上です。
○沖野座長 ありがとうございました。
それでは、これを踏まえまして、質疑応答・意見交換をしていきたいと思います。
既にこの辺りはどうなのかという御質問に関わるところが山本座長代理からあったように思います。まず何か補足がございましたら消費者庁の原田企画官からお願いします。
○原田企画官 報告書の本体のほうの公表は間もなくと思っておりまして、詳細はまたそちらを御確認いただければと思いますけれども、山本座長代理から御指摘いただいたところで何点か補足をさせていただきます。
まず、制裁金の軽減を何かできるような仕組みについて言及いただきました。今後導入される英国のデジタル市場・競争・消費者法(DMCCA)に制裁金の減額の仕組みがあります。制裁金の最終決定前に当局と事業者との間で和解に至った場合には、最大で40パーセントの減額が得られるということです。DMCCAには競争分野に関する規定も含まれているということの影響もあるかとは思います。
それから、オーストラリアのオンブズマン制度についても山本座長代理から言及いただきました。こちらはヒアリング調査で聞いたところによりますと、金融分野ですとか通信の分野でよく活用されているということです。
部分的な補足になってしまって恐縮ですが、私からは以上です。
○沖野座長 ありがとうございました。
それでは、石井委員からお手が挙がっておりますので、石井委員からお願いします。
○石井委員 中央大学の石井です。
非常に包括的な調査、お疲れさまでございました。勉強になりました。
私のほうからは執行機関の体制についてお聞きできればと思います。特にアメリカが顕著といいますか、分かりやすいかと思いますが、規制当局が消費者保護も担いつつ、競争の分野やプライバシーの分野を担うという状況が見られる中で、最近ではプラットフォーム規制も進み、アメリカ以外の国も消費者法制、競争法制、プライバシー、個人情報保護法の領域で執行の足並みをそろえるといった取組も必要になってくるように思われます。全体的に見て、消費者法以外の分野との連携が進んでいるのか、そういうことをしようとする動きが見られるのか。独立した規制当局同士でも連携がなされようとしているのか、あるいは一つの機関の中で3分野に対処しようとしているのか、全体的な傾向が多少見えているようでしたら御教示いただければというのが1点目です。
もう一点はソフトローの位置づけの確認です。資料2-2の3の(1)で当局が策定したソフトローというのは、法律と結びついているので、ソフトローと言いながらも、それに違反すれば執行がついてくるような性質のものを(1)に入れていて、(2)は民間が策定したものと理解しております。その上で、(3)ですが、これは(1)に入らないようなものを入れておられるのか、(3)の位置づけがどういう性質のものであるのか教えていただければと思いました。よろしくお願いします。
○原田企画官 一点目ですが、規制当局として競争政策、個人情報保護政策、プラットフォーム規制など、様々な分野を横断的に一つの当局で対応するというような傾向があるのか、また、ほかの分野との連携が見られるのかという御質問であったと理解しております。
今回、調査対象として5つの国と2つの地域を選んでおりますけれども、違う特徴が表れるように選んだという部分もございまして、それぞれの国・地域の元々の法制度の影響もあり、そこは必ずしも一様ではありません。例えば、米国について言えば、FTCは競争政策も担っている役所ではございますが、ほかにカルテル規制などはDOJという司法省の反トラスト局でも対応しています。競争政策と消費者保護政策を一緒にやっているのは、イギリスのCMA、オーストラリアのACCCですが、オーストラリアでも金融関係は別途ASICという組織を設けているともいえます。また、フィリピンに関して言えば、貿易との関係で消費者保護政策を考えているという部分もありますので、日本で言うと経済産業省のような組織の下に消費者保護に関する当局を置いています。そういったわけで、全体的な傾向というのはなかなか見受けられなかったかなとは思います。ただし、デジタルに関して大きな問題だと捉えて、何らかの法規制ですとかガイドラインを示すといった動きをしているという傾向があるかとは思います。
次に2番目の御質問で、これはこちらの資料の整理が出来ていない部分があって大変恐縮です。ソフトローについて、まず(1)の当局策定のものは、執行がついてくるものを念頭に置いたというよりは、単純に作った主体が当局かということで分類しました。難しいのは、民間がつくって当局が何らかオーソライズ(認証)するというような仕組みもあるので、分類がなかなか難しい面もありましたが、最初に当局と民間のどちらが主導権を持ってつくっているかということで分類をさせていただきました。
また、(3)のソフトローとハードローの組合せについては、ハードローを何らかのソフトローが組合せで補完的になっているのではないかなということを知りたかったので、そういったもので特徴的なものが見られれば、各国・地域のリサーチャーさんに挙げていただいたというところがございます。(1)で挙げているものを全て(3)で網羅しているというものになっていないのは大変恐縮なところです。
私からは以上です。
○石井委員 ありがとうございます。
時間も押しているところですけれども、後半の質問のほうで念のためもう一点だけ確認させていただいてもよろしいですか。
○沖野座長 お願いします。
○石井委員 ありがとうございました。
実質的には、(1)の表を拝見しますと、行政命令が入っていたり、法の執行に関するガイドラインといったものが見られるのが多いかと思います。やはり執行がついているものが結果的には多くなっているという理解は正しいのかというについて念のため教えてください。
○原田企画官 今回調査対象とした国・地域で何らかの消費者保護法制を執行しているところは比較的多かったため、執行に関するガイドラインや行政命令がソフトローとして入っているというのは御指摘のとおりです。その中では、ドイツは私法を中心に消費者保護法制が運用されているということなので、少し異なる特徴を示しているかもしれません。
私からは以上です。
○石井委員 ありがとうございます。確かに法的拘束力はないと書いているソフトローはありますので、よく分かりました。
○沖野座長 ありがとうございました。
そのほかにはいかがでしょうか。
二之宮委員、お願いします。
○二之宮委員 二之宮です。
御説明ありがとうございます。
聞き漏らしたのかも分かりませんけれども、この資料の詳細報告はこの専門調査会の中でまた別途出てくるのでしょうか。先ほどホームページで公表ということは言われていましたけれども、今回頂いた資料は項目が整理されてはいるのですが、中身がよく分からないので、その辺のところがどうなっているのかというのは改めてまた出てくるのかと思いまして。
それに関連して、そこに出てくるのか、あるいは分かる範囲で教えていただきたいのですけれども、資料には民事・行政・刑事法規定、ハードロー、ソフトロー云々のところを調査・分析しとあるのですが、この資料に入っているのを見ると、おそらくこれは行政規制、行為規範とそれに対するソフトローの在り方というのが各国いろいろ整備されている状況の資料だろうと思いますが、民事ルールに関してソフトローというものが各国にはあるのか、あるいはハードローとの組合せというのがあるのかというところがどうなっているのか。ガイドラインとかコンメンタールのような説明本というのがソフトローの中に場合によっては位置づけられて、そういうのがあるというのか、あるかも分かりませんが、その辺がよく分からりませんでした。執行のところを見ると、ドイツが高い、50パーセントぐらいは裁判外でとかという紹介が先ほどありますけれども、おそらくこれは差し止め関係、行政規制に関して消費者センターが差し止めを行ってというのが執行に結びついているのだろうと思います。そうではなくて、民事に関して自主ルールで返金に関する基準とかあって、それに基づいて一定程度の返金措置がなされている。そうではないときには、民事ルールを使って個人なり消費者団体なりが訴訟に申し込んで回復が図られる。ここのハードとソフトの関係というものがどこかで詳しく出てくるのか、分かれば教えてください。
○原田企画官 詳細版でございますが、消費者庁のウェブサイトに内部手続を行って掲載予定です。掲載がされましたら御確認いただければと考えております。
それから、民事ルールに関するソフトローということなのですけれども、今回の調査対象とした国・地域の中では、ドイツが比較的民事ルールを活用している国と言えるかと思いますが、それに関連して何かソフトロー的なものがないかということで、我々も確認はしたのですけれども、少なくとも当局の担当官は欧州レベルのガイドラインを挙げていたのみで、何かドイツ当局からソフトローとしてのガイドラインを出しているということは今回の調査では確認できませんでした。
それから、返金のような仕組みがあるかということなのですけれども、そこだけを深掘りした調査というのは、今回は行っておりません。オーストラリアのオンブズマン制度をみると、これは業界ごとの制度で何日間で解決するかというところは変わってくるみたいですけれども、実際に消費者被害を解決するというところまでやっているようなので、その中で何らかの返金ということもあり得るのかなと考えられます。例えば、金融業界でやっているオンブズマン制度で対応しているのは、豪州金融苦情機関(Australian Financial Complaints Authority:AFCA)ですが、対応する紛争がクレジットカードとかローンとか保険とかいろいろございまして、金融会社は30日間(退職年金については45日間ともう少し長いみたいですけれども)の間に紛争を解決しなければならないということになっています。解決方法はオンブズマン組織であるAFCAのほうから提案するということになっていまして、合意に至らない場合、企業はAFCAによって決められた救済を消費者に提供する必要があるということでございます。
不十分な回答になってしまって恐縮ですが、私からは以上です。
○沖野座長 ありがとうございました。
二之宮委員、差し当たりはよろしいでしょうか。
○二之宮委員 はい。
○沖野座長 そのほかはいかがでしょうか。特によろしいでしょうか。
それでは、ありがとうございました。
今回の海外調査につきましては、後半の議論のためのインプットということで委託をして調査をしていただいて、その結果が3月末には最終報告として提出がされるであろうということですが、その前の段階ではありますが、ほぼ固まっているのではないかという段階でその調査結果を本専門調査会にインプットするために御報告をいただいたということかと思います。
整理の仕方は恐らくいろいろあると思いますし、ただ、最終プロダクトが今月末に出るということだと、今から整理のやり方を変えてほしいというようなことはなかなか難しいのかもしれませんけれども、御指摘いただいた点については、むしろ今後の専門調査会の検討の中で踏まえていっていただければと思います。
特に今回、ハードローとソフトローの考え方というのは、以前から非常に難しく、だからこそ飯田先生のプレゼンテーションもしていただいたわけですけれども、一方で、法律ということではなく、裁判所の判決や決定というものをどう位置づけるかというのを今回特に出されたように思います。国家の公権的な声明ということでは、一種のハードローではないかとも見うるのかもしれません。それとの組合せとか、その影響だとか、あるいはそれぞれがどのような形で消費者政策なり消費者保護に効いているのかということは今までやや手薄だったのかなと思いまして、その点も今回御指摘をいただいたかと思います。
それ以外にも御指摘をいただいた点はありますけれども、もし報告書の中で多少なりとも明らかにできるところがあれば、こういうところが不明だという御指摘を受けたので、詳細版ではより明らかになっているようであれば明確にする形で見ていただければいいようになるかと思いますけれども、さらに詳細版というか完成版については、今のところは改めて専門調査会で報告いただく機会というのは想定しておらず、消費者庁のホームページ公表をもって御報告させていただくという形でしょうか。
○原田企画官 今後の日程もなかなか詰まってきておりますので、消費者庁のウェブサイトでの公表をもってということで、今のところ我々も考えているところでございます。
○沖野座長 ありがとうございます。しかるべき手続があるので、それを経てということですが、なるべく早くにそういう資料が入手できるようになるとありがたいと思います。
それでは、既に予定の時間を過ぎておりますので、この辺りで今回の議論を切り上げたいと思います。
委員の皆様におかれましても、活発な御議論をありがとうございました。
では、最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。
《3.閉会》
○友行参事官 本日も長時間にわたりまして御議論いただきまして、誠にありがとうございました。
次回の会合につきましては、確定次第、御連絡させていただきます。
以上です。
○沖野座長 それでは、これで終了となります。
お忙しいところ、お集まりいただきまして、本当にありがとうございました。
(以上)