第18回 消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会 議事録

日時

2025年2月20日(木)14:00~16:02

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

出席者

(委員)
【会議室】
沖野座長、山本座長代理、大屋委員、加毛委員、小塚委員、二之宮委員、野村委員
【テレビ会議】
河島委員、室岡委員
(オブザーバー)
【テレビ会議】
鹿野委員長、大澤委員
(参考人)
【会議室】
新発田龍史 金融庁企画市場局審議官
田口義明 公益財団法人消費者教育支援センター理事長
(消費者庁)
【会議室】
黒木審議官、古川消費者制度課長、原田消費者制度課企画官、消費者制度課担当者
(事務局)
小林事務局長、後藤審議官、友行参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    ①関係省庁ヒアリング (新発田龍史 金融庁企画市場局審議官)
    ②有識者ヒアリング(田口義明 公益財団法人消費者教育支援センター理事長)
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1. 開会》

○友行参事官 定刻になりましたので、消費者委員会第18回「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」を開催いたします。

本日は、沖野座長、山本隆司座長代理、大屋委員、加毛委員、小塚委員、二之宮委員、野村委員には会議室で、河島委員、室岡委員はテレビ会議システムにて御出席となっております。なお、所用により石井委員は本日御欠席との御連絡をいただいております。

消費者委員会からは、オブザーバーとして、鹿野委員長、大澤委員にはテレビ会議システムにて御出席いただいております。

また、小塚委員におかれましては、少し御到着が遅れております。

本日は、金融庁企画市場局審議官の新発田龍史様と、公益財団法人消費者教育支援センター理事長の田口義明様に御発表をお願いしております。新発田審議官と田口理事長には会議室で御出席いただいております。

配付資料は議事次第に記載のとおりでございます。

一般傍聴者にはオンラインにて傍聴いただき、報道関係者のみ会議室で傍聴いただいております。議事録については、後日公開いたします。

それでは、ここからは沖野座長に議事進行をよろしくお願いいたします。


《2.①関係省庁ヒアリング (新発田龍史 金融庁企画市場局審議官)》

○沖野座長 ありがとうございました。それでは、本日もよろしくお願いいたします。

早速、本日の議事に入らせていただきます。

本専門調査会の後半では、実効性の高い規律の在り方について、隣接法分野の取組を含めてヒアリング・意見交換を進めてきているところ、金融分野では、公正な市場の形成のために、既に取り上げたプリンシプル・ベース・アプローチのみならず、悪質事案には厳格に対処しつつ金融業界とともにルールをつくり上げる取組や、取引や市場に係る横断的なルールの整備、サステナビリティ情報の開示等投資への働きかけを通じた取組など、様々な取組がなされているものと承知しており、金融行政における取組状況を知ることは、私どもが規律のグラデーションやコーディネートの在り方を検討する上で大いに参考になるものと考えております。

そこで、本日は、金融庁企画市場局審議官の新発田龍史様に、「制度面から見た近年における金融行政の展開」というテーマで20分程度御発表いただきまして、質疑応答・意見交換をさせていただければと思います。

それでは、新発田審議官、どうかよろしくお願いいたします。

○新発田審議官 皆さん、こんにちは。今御紹介いただきました新発田でございます。

今日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。

今、沖野座長からもございましたけれども、グラデーションのある規律、あるいは様々な手法の組合せということで、多少なりとも金融規制のところが参考になればと思ってございます。

ただ、私は法律の専門家でもございませんし、消費者行政の専門家でもございませんので、必ずしも皆さんの要求水準に応えられるかどうか分かりませんけれども、今日は整理させていただいた中身をお話しさせていただきたいと思います。

なお、役所ではこういう切り口でやっていないものですから、なかなか公式見解みたいなものを申し上げづらいところがありますので、ファクトはきちんと申し上げますけれども、特に歴史の見方のところについては必ずしも金融庁のオフィシャルなものではないことをお断りさせていただけたらと思います。

最初に、金融行政ということでお話をさせていただきます。レジュメの1枚目にいろいろ書いています。「財政政策」とか「金融政策」という言葉は皆さんも御存じかと思いますけれども、「金融行政」という言葉がどこまで射程範囲としてそれを捉えているのかというところについてまずお話をさせていただきたいと思います。

こちらの矢羽根の一つ目にありますように、金融制度の企画立案から検査・監督・監視といったエンフォースメントのところまで一貫して担当しているというところ、それから、いわゆる銀行とか証券とか保険といった、業態と我々は呼んでおりますけれども、様々なそういったものを横断的にカバーしているというのが一つの特色であるかと思います。

この金融行政が何を目指しているのかというところにつきまして、二つ目の矢羽根です。究極的には、こちらにもありますように「企業・経済の持続的な成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大」という目標になっております。これを実現していくに当たりまして、その下に三つ書いてございます。

金融システムの安定と仲介機能の発揮、利用者保護と利用者利便、さらには市場の公正性あるいは市場の活力といったものを常にバランスをさせながら両立を図っていくというのが私どもの基本的なアプローチであると申し上げてよろしいかと思います。

我々がカバーしている業者さんの数ということで申し上げますと、三つ目の矢羽根になります。精査中と書きましたが、概数で捉えていただけたらと思います。見ていただけるとお分かりいただけますように、数十という単位であるようなものには銀行とか保険会社といったものがあります。こちらは基本的には免許制という仕組みの中で監督をされていると御理解をいただけたらと思います。他方で、15万とか、3,000とか、4,000とか、いろいろなオーダーの数字がございます。こちらのほうになってくると、登録や届出といった枠組みの中で監督をしているということでございます。

典型的には、古くは銀行、証券、保険といった、皆さんもよくなじみのあるところが多いですけれども、最近の傾向として、近接領域というか、フィンテックとかファンドといったものが入ってくることによって、非常に数の多い業者さんを相手にしているところでございます。

こういった監督行政に加えて、後ろのほうに「有価証券報告書提出企業」と書いておりますけれども、市場で資金を調達する場合に上場企業が提出する有価証券報告書の開示の中身についても我々は見ておりますので、こちらは一般の事業会社の方が対象になりますけれども、4,000ぐらいの数になるということでございます。

行政としてエンフォースメントはどうなっているのかというところについて申し上げますと、最後のところに「人的リソース」となっておりますが、道路を挟んでこの建物の反対側の霞が関におりますのが千五、六百人ぐらいでございます。それに加えて、組織上は財務省の地方支分部局になっておりますけれども、各地方に財務局がございます。こちらの中で金融部門を担当している者が同じぐらいの1,500人ぐらいでございますので、国と地方あわせて3,000強ぐらいだとイメージをしていただけたらと思います。

私どもは設立してから25年ぐらいたっております。足元では4分の1ぐらいが民間の出身者でございまして、そのうち180人ぐらいがいわゆる専門家で、弁護士、会計士という士業の方でございます。200人強が民間の金融機関の御出身の方でございます。そういう意味で、ほかの霞が関の役所とは人員構成がかなり異なっているということでございます。弁護士に加えまして、裁判官、検事、金融庁で資格を持っている方をいろいろ入れますと、恐らく五、六十人は法曹の方がいらっしゃるというイメージで捉えていただけたらと思います。

続きまして、ページをめくりまして二つ目の項目です。かつての金融行政について少し触れておきたいと思います。これは経路依存性と申しますか、今の金融行政の方向性にかなり過去のやり方が影響していると思いますので、少し御紹介をさせていただきたいと思います。

ここにもありますように、銀行中心の間接金融中心のシステムということで、当局が金融機関を監督することによって、金融機関が財務の健全性とか業務の適切性を確保する。そういうことによって、円滑な金融取引と利用者保護が結果として図られる。そういうアプローチでやってまいりました。

その上で、具体的なやり方として、こちらにもございますように分業・規制による信用秩序の維持ということで、業態と呼んでいますけれども、かなり細かく、銀行と証券会社、あるいは今はなくなりましたけれども、長期信用銀行、信託銀行、あるいは中小企業金融の専門機関としての信用金庫・信用組合、そういった様々なニーズに応えるような形で垣根をつくってきたというところがございます。

その上で、業務や店舗、かつては金利といったものまで規制をすることによって金融システムを守り、結果として利用者を守ってきたということだと思いますけれども、こちらに三つ掲げていますが、そういうやり方についていろいろ批判も出てきたということでございます。

事前規制型という言い方もありますし、もう少し悪く言うと裁量だったと。もちろん行政ですので裁量行為は当然あるのですけれども、先送りをしてしまったというところが批判の的になったと承知をしております。それから、いわゆる業者行政、護送船団行政ということで、利用者のほうを見てきたのかという御批判もいただいたと思います。

結果的に、利用者保護のところについてはパターナリスティックなところが恐らくあるのだと思います。そういうことによって、本来イノベーションといったものがどこまで進んだかというところについては、我々として省みる余地があったのではないかということでございます。

そういう中で、「パラダイムシフト」という言葉を借用していいのかどうかはあれですけれども、金融行政についてパラダイムシフトがあったと考えますのは、ちょうど90年代の後半になります。当時、「日本版ビッグバン」という言葉も流布しておりましたし、金融行政のいろいろな仕組みが変わったのもちょうどこの頃でございます。まさに不良債権問題への対応、金融危機への対応、さらには不祥事というところで、私どもに対する信頼が失われた。そういう中で、どう信頼を回復していくのかというのが至上命題でありました。

それと、別の切り口として、こういう仕切られた中での監督をやっていく中で、我々として新しい商品・サービスが登場する、あるいは新しいリスクが出現してくることにどうやって対応していくのかという点で、私たちの能力なり、キャパシティのところで限界が来ていたのではないか、あるいは、先ほど申し上げましたような細々と区切られた規制や監督がイノベーションの足かせになっていたのではないか、そういったところもあると思います。

そういう中で、当時言われておりましたのが事後チェック型行政への転換ということでございます。「裁量行政からの『訣別』」と書きましたが、まさに括弧書きでございまして、行政行為ですので裁量は本来的にはあるのですが、当時はそういうフレーズがはやっていたと記憶しています。その上で、ルールに基づく透明性の高い行政をしていくのだということでございました。

行政の役割が縮小していく一方で、我々がよりどころとして求めたものが市場規律と自己責任というところでございまして、あくまで私ども当局による規律づけは市場メカニズムの補完であるということでございました。

利用者のための行政という点につきまして、当時は、先ほど申し上げましたように、パターナリスティックに保護をするというところから、まさにどうやって自立を支えるかというところにシフトしていったと思います。そのためには情報の非対称性を解消していくところが求められたということでございますし、それがかなわない場合には、適合性の原則を適用していくのではないか、さらにはより積極的な支援として金融経済教育を充実させていくということが言われていたと理解をしてございます。

続いて、金融取引における規律づけということでお話をさせていただきます。こちらに幾つかのグラデーションに分けて並べさせていただきました。まず、市場メカニズム、価格が決まることによっていい物が選ばれていくというものもありますし、まさに株主による権利行使による規律づけもあると思います。証券業協会とか、そういった自主規制機関による規律づけもあって、その上で公権力による規律づけがあるということでございます。

特徴的かなと思いますのは、金融サービスの提供業者による自己規律をかなり重視しているということでございまして、他の事業者と比べて、より高度な内部統制、内部監査があるという前提で我々は行政をしているように感じます。

いわゆる行政処分ということで申し上げますと、立入検査、あるいは報告を徴求するということがあって、行政処分の規定が、いわゆる業務改善命令、業務停止命令、免許取消しといろいろありますけれども、基本的に自分たちで自己規律とか自己改善ができない人たちに対して業務改善命令を出すというのが通常の物の考え方なのかなと思っておりまして、行政処分自体が何かサンクションとして存在するというよりは、本来は金融機関が自分で自浄作用を働かせていくことができない場合に業務改善命令を出す。さらには、そういったものがきちんと機能するために、余計なことをやらせないほうがいいのではないかということであれば、期間を区切って業務停止命令をかける。そういう考え方であるように思います。

ですので、最後に「自ら改善策を講じられる場合」と書いていますが、いろいろ見方はあるのかもしれませんけれども、既に金融機関が自分たちでいろいろ改善策を講じているということであれば、あえて業務改善命令を出すことなく、改善策を役所としてきちっと受け取る。当然、その過程の中ではその中身が妥当かということを我々も判断するのですけれども、確約命令と同じと言っていいのか分かりませんが、機能的には近いのかなと感じたところがございます。

そういう中で、6番目ですけれども、金融サービス法という構想が2000年代の頃にございました。当時の基本的な考え方は、同じ活動には同じ規制をかけていく、あるいは同じリスクに同じ規制をかけていくということをやりつつ、画一的な規制によるイノベーションの阻害といった副作用に配慮するということだったと思います。

そういう中で、なるべく横断的な規制をつくっていくことを志向したわけですけれども、ここにもありますように、取引ルール、業者ルール、市場ルール、これらははっきりした定義があるわけではないのですけれども、こういった切り口に分けて、こういったものの組合せによって実効性を確保していくことが当時言われていたかと思います。

金融取引についてなぜそういうことをやらなければいけないのかというところで申し上げますと、見えない将来のキャッシュフロー、あるいはリスクを扱う取引である、そもそも額が巨大である、あるいは商品として複雑になっていく、そういったことがあったと思います。

金融取引については、消費者契約のようなBtoCの取引だけではなくて、プロ同士がやる取引もございますので、その辺りをどうグラデーションをつけるのかというのが当時からの問題意識であったところでございます。ここにもありますけれども、一般的には「買い主注意せよ」ということでございますが、それの修正を、リーテイル取引についてどう適用するのかとか、そういった議論をずっとしてきたという印象がございます。

そういったところが基本的な考え方でございますけれども、そういった中で個別の政策についてこれまでどういうことをやってきたのかということをややアドホックな形で、網羅し切れているか分かりませんけれども、7番目のところからお話をさせていただきたいと思います。

まず、金融サービス法構想のホップ・ステップ・ジャンプのホップとも言われておりましたが、販売・勧誘について横断的なルールをつくれないかということで、2000年に金融商品販売法をつくりました。こちらでは、金融商品販売業者に説明義務を課すこと、それから、損害賠償責任とか損害額の推定というところについて規定を設ける、そういったところが工夫をされたところだと思います。

その次のところでは、例えば上場企業が粉飾決算をして開示書類に虚偽記載をする、この場合に民事責任をどう追及していくのかといったときに、やはり一人一人の投資家が訴えを起こして損害を立証するというのは大変難しいということでございますので、こちらについて損害額の推定とか立証責任の転換というところを設けつつ、多少、無過失責任から過失責任といった修正はございますけれども、そういったところについて手を加えたというのもございます。

3番目は市場監視機能の強化ということでございますけれども、証券市場の取締り、公正確保というところは、証券取引等監視委員会が犯則手続も含めて対応しておりましたけれども、刑事手続だけでは慎重を期すところもございますので、これも法制局との関係で課徴金を入れるのは非常に難しかったと当時の担当から聞いておりますが、ほかの役所に先駆けて課徴金を導入したところもございます。これによって、行政的な手法でより迅速に対応できるようになったところもあると思います。

公認会計士法につきましては、監査法人に業務停止をかけることによって監査業務ができなくなる、その結果として反射的に上場企業が監査を受けられなくなり、監査難民が出るといった問題点もあったところで、いろいろな行政上の対応を考えていく中で、業務停止という手法ではうまくいかないケースがあるということで、こういった場合に課徴金を代わりに入れることを考えてきたところでございます。

次の4番目は金融ADR制度ということで、こちらも2000年代の後半ですけれども、いろいろな利用者保護にもとる行為が頻発した。特に保険金の不払いといった問題が当時世を騒がせていたところでございますが、苦情あるいは紛争処理といったものに対して金融機関がまともに取り合わないことが指摘されていたところで、横断的にADRの仕組みを各業法に盛り込むことをやらせていただいて、応諾義務を入れていくということをさせていただきました。

最後のページのところでございますと、規制の柔構造化ということで、こちらは金融商品取引法を制定する中で、投資家の中に一般の投資家とプロ投資家という区分をつくって規制にグラデーションをつけるということをやらせていただいたり、あるいはプロ市場、プロ向けの投資家に限ってできることを加えるというところがあったかと思います。まず一般的な投資家を想定した上で、特定投資家というカテゴリーを設け、一部のプロの人については規制の適用を外していくということで、どちらかというと規制を緩和したということでございます。

続いてプリンシプルベースというところで申し上げますと、ファイアーウォール規制という、銀行と証券の間の、役員の兼職とか情報の共有の禁止という形式的な規制ではなくて、利益相反をきちんとコントロールしてくださいという規制を入れるといった話もございました。

この辺りまでは割と通常の業者を念頭に置いてやっていくということですけれども、最近、それ以外のところでもかなりチャレンジが増えております。一番はやはり無登録業者への対応だと思います。無登録なので捕まえようがない、あるいは海外の業者、さらにはデジタルの世界の向こう側にいるような方をどう捉えていくのかというのは非常に難しいところでございます。

最初のところの金商法に基づく緊急差止命令申立制度の改善というのは、証券取引等監視委員会に申立て権限を委任するという話でございますけれども、そういった法制的な話だけではなくて、たとえば、個人間金融とかそういったもので投資詐欺まがいのXの投稿がありますが、そういったところのリプライのところに「金融庁です」みたいなものを貼り付けて、そういうものに関心を持ったお客さんに注意喚起をするといった対応がちょっと前にございました。ここ最近の話で申し上げますと、グーグルとアップルにアプリの削除を要請するといった、法制的な対応とはちょっと違うアプローチも心がけてきているところでございます。

金融リテラシーの向上というのは、J-FLECというものを立ち上げたところでございます。

それから、最近の動きで申し上げますと、顧客本位の業務運営の確保ということで、金融サービスの提供に関する法律において、顧客の最善の利益を勘案する義務をかけたところでございます。これがどこまでどういう効果を持つのかはまさにこれからの運用のところであると思います。

8番目、エンフォースメント面での対応というところですけれども、今ざっと申し上げましたが、監督される、あるいは金融庁として見ていかなければいけない業者の数がどんどん増えているというのが実態かと思います。その上で、伝統的な免許といったかっちりした仕組みの下で、話が通じるというわけではありませんが、ルールをきちんと守って業務を遂行するという意識の高い業者さんと、必ずしもそうではないという業者さんに分かれている中で、どういうふうにやっていくのか。

さらに言うと、そういう登録とかソフトなやり方ではなくて、まさに初めから詐欺的な、あるいは消費者なり利用者を誤認させることをいとわないような業者が出てくることに対してどう対応していくのかというのは非常に難しいことでございます。先般のこの調査会でも佐藤隆文さんがおっしゃっていたかと思いますけれども、プリンシプルというものが効果を発揮する局面は一定の局面なのかなと我々も思っております。その上で、事後チェック型ということになりますと、被害が起きる、そういった上で迅速に対応していくことが求められてまいります。そういう中で、エンフォースメントの体制整備、あるいは実際に監督、モニタリングをする陣容の確保が非常に大切な課題になっているところでございます。

最後のところでサステナビリティ情報と、少し話題が変わりますけれども、最近、企業の行動変容において開示書類を活用できないのかといった議論をよく伺うことがあります。

こちらにもありますように、いろいろ考え方はありますが、投資家の投資判断に当たって、企業の中長期的な価値向上に資するような情報が財務情報だけではなくて非財務情報でも出てきているというのは事実だと思いますが、あくまで投資家にとって有用な情報であるというのが有価証券報告書に書くべきかどうかというところのメルクマールになるのではないかというところでございます。

したがいまして、ミニマム・リクワイアメントみたいなところは法定の開示書類でやりやすいのですけれども、さらに上を目指していくような場合はミニマム・リクワイアメントではなかなか対応しづらいところがございます。

そういう中で、いい取組をしている会社につきましては、好事例ということで実際の事例を我々が拾い上げて共有したり、あるいはどういうプロセスでこういうものをつくったのかといったことをお聞きしたり、それをほかの企業の方と共有するといったような話をさせていただいております。

以上、雑駁でございますけれども、途中の歴史的な話につきましては最後の参考文献でつけました「新しい金融の流れに関する懇談会『論点整理』」を参照させていただきました。

私からは以上とさせていただきます。ありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

ただいまの新発田審議官からの御発表内容を踏まえまして、質疑応答・意見交換をしていきたいと思います。御発言のある方は、会場におかれましては挙手にて、オンラインの方はチャットでお知らせください。どなたからでも、どの点からでも結構ですが、いかがでしょうか。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 二之宮です。

御説明ありがとうございました。

金融庁からの報告と関連して、第13回のときに佐藤先生からプリンシプル・ベース・アプローチの御説明をいただきました。そのお話と今日のお話を両方聞いて、より理解が深まりました。ありがとうございました。

プリンシプル・ベース・アプローチのときにまず一つ言われていたのが、プリンシプルとルールは両方補完的に合わさって効果を発揮すると。今日の説明資料の中でも、5ポツ、6ポツの辺りは、市場メカニズム、当事者間の権利行使とか自主規制といったプリンシプルと横断的なルールの組合せによって規律づけということの説明がありまして、この辺は両方合わさって大変よく分かりました。

他方で、金融商品の場合は何を扱っているのかが見えないのと複雑になってきている、だから横断的なルールが必要なのだというところに関しましては、金融商品の場合はそうだろうと思いますし、消費者取引の場合も同じようなことがもっと言えると思いますし、デジタル分野において何を扱っているのかもますます分からない、複雑になっている。

もう一つ言うと、金融庁の場合は監督権を持っていますから、その監督対象となる事業者が対象であるのに対し、消費者取引はそれがないので、より多い、複雑、見えないとなってくると、ますます横断的なルールが必要になってくるだろうと思いました。

その中で、金融庁の主なチャレンジとして7ポツのところで、説明義務違反に対する損害賠償と賠償額の推定と。これは、要は不法行為の特則として設けられたものだと思いますし、民事ルールを整備するに当たっても、横断ルールを整備した上で、例えば説明義務違反、あるいは今この専門調査会で取り組んでいる消費者の脆弱性への配慮に対する義務違反、あるいは包括的なルールを設けて、それに対する違反行為に対しては損害賠償規定、あるいはその推定というものは非常に参考にすべきだと思いました。

ここから何点か教えていただきたいのが、プリンシプル・ベース・アプローチのところの3本柱として佐藤先生が言われたのは、プリンシプルとルールと情報開示が3本柱なのだと。もっと言うと、情報開示というところが極めて重要だという話をされていました。

先ほど、最後のところで、財務情報のことに関しては情報公開ということの御説明がありましたけれど、我々が扱っている相談事例で金融商品の場合、一例を挙げると私募の仕組債の場合は手数料が開示されていないので、本当は幾らで組成されて、幾らで売って、その間の利ざやがどうなっているのかというのは外からは分からない。これは一例で、それがいいとか悪いと言っているのではなくて、こういう外から見て分からないとき、あるいは説明を受けても、ブラックボックスなのか、情報開示が不十分なのか、外から分からないというところは市場メカニズムの限界の一つだと思うのです。

そうすると、資料の3ポツのところに、当局による規律づけは市場メカニズムの補完ということが書いてありますけれども、情報開示一つを例に挙げると、市場メカニズムとして開示が不十分だといったときにはどういう当局による規律づけに結びついていくのか、あるいは今後こういうところがこういう規律づけが必要になってくるのか、その辺の動きとかお考え、現にこういう取組がされているというところがあれば、ヒントとして教えてください。

もう一点質問は、ルールを守らない悪質業者は徹底的に市場から出ていってもらうしかないと思います。その中の一つとして、2008年に金商法の緊急差止命令申立制度が改善されたというところの御紹介がありました。この資料を拝見して、来るまでに事前に確認したら、昨年の6月までに31件申し立てられている。16年で31件ということですので、年2件ほどのペースだと思います。これを多いと見るのか、少ないと見るのか。仮に少ないと見るのであれば、その原因はどこにあるのか、リソースの問題なのか、立証その他の手続的な問題なのか、あるいは、そうではなくて、この申立てをするまでに事前指導でもう廃業していく、やめるところがかなりあるのか、結果として16年で31件というのをどう見るのか、その辺の背景事情を御存じであれば教えてください。

以上です。

○新発田審議官 ありがとうございます。

2番目のところは、私は直接担当していないので、なかなかこうだと申し上げられないので、そこは御勘弁いただけたらと思いますけれども、まさに少ないという見方もあるのかもしれませんし、相応にやっているということなのかもしれません。

ただ、私の知る限り、ここについてさらに何か改善しろ、もっとほかにも優先順位が高い問題があるのかもしれませんけれども、ここについて何かもっとやれとか、できていないという批判はあまり今のところはないのではないか。我々が見逃しているのかもしれませんけれども、取りあえずそんな形でお答えさせていただけたらと思います。

一つ目のお答えの話、私は市場の規律づけというところで、開示というところを少し狭く解して申し上げている可能性があると思っています。今、私の担当もそうですけれども、基本的に上場会社がまさにディスクロージャー、公衆縦覧でやっているようなものを開示と申し上げておりますが、それだけではなくて、恐らく情報の非対称性を解消するということであれば、相対で説明義務をどう果たしていくのかといったところも含めて、例えば、保険の契約をする場合に、保険もかなり分厚い約款などがありますので、そういったものをどう理解してもらうかというときに、A4見開きの書面でコンパクトに概要や注意喚起情報を、それは公衆縦覧というよりは、まさに買う予定の人にきちんと説明をしなければいけないということでございます。市場ルール、業者ルール、取引ルールという三分論はやや便宜的なところで、厳密に区分できるわけではなくて、恐らくそれは市場ルールの一環だとも思いますし、むしろ業者にかけているということであれば業者ルールとも言えると思いますので、そういったところがあるのかと思います。

あと、言い忘れたところで補足させていただきますと、ほかにも偽造キャッシュカードの預貯金者の保護の法律や振り込め詐欺の救済法、これらは基本的に議員立法で実際には立法されておりますけれども、その制定過程なり、運用に当たって私どもはかなり関わっているのも事実でございますので、そういうところはやや事後的な救済の話になるのかもしれませんけれども、まさに民事法の特則的なところも含めてやれそうなことは何とかやるということかと思います。

お答えになっているかどうかはあれですが。

○二之宮委員 ありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

そのほかにはいかがでしょうか。

加毛委員、お願いします。

○加毛委員 東京大学の加毛と申します。

本日は、貴重な御報告をどうもありがとうございました。

消費者政策に関わるところとして、最後のページの「金融リテラシーの向上」で挙げられているJ-FLECの創設は、近時の金融行政における一つの目玉であろうと思います。

J-FLECは様々な事業をしておりますけれども、その中の一つに認定アドバイザー制度があります。金融行政においては、顧客に最も適した金融商品やサービスを提供できるようにすることが重要な政策課題であるところ、その実現のために、特定の金融機関に依存しない中立的なアドバイザー制度が創設されたわけです。この制度がまだ始まって1年もたっていないのですけれども、実態として、うまくいっているという評価なのか、あるいは課題が多いという認識なのか、そのあたりについて、差支えのない範囲で、金融庁としてのお考えをお教え願えればと思います。

○新発田審議官 ありがとうございます。

去年の夏に立ち上がったところでございますので、まさに始まったばかりで、うまくいっているともうまくいっていないとも評価をするのはなかなか難しいと思ってございます。

その上で、おっしゃられるように、中立の立場で、あるいは顧客に寄り添った立場でいろいろなアドバイスをする、あるいはどのサービスがいいのか、こういったものを勧めるという仕組みがいろいろ考えてみますと金融はあまりないというか、これはある意味金融の規制の限界と言ってはいけないかもしれませんけれども、業者がいるということを前提に代理店みたいな仕組みをつくって、そこの統制を利かせることでやっているというのは、実際の手段としてはそれなりに合理的と言うとあれですけれども、どうしてもそういう部分があって、今もちょうど保険の関係で仲立人の話が指摘されているのもまさにそういう文脈だと思っています。

実際にまさにそういうサービスを受けることによって、裨益する利用者の方からではなくて、業者の方からお金をもらうとか、そういうインセンティブがねじれているような状態をどう考えるのかというのは大変悩ましいところだと思います。

そういう中で、アドバイザーの話に限ることではないのですが、そういうサービスに適正な対価を払うみたいなところがどうしても、そこに価値をどう見いだしてもらえるのかとか、どうやればその対価を払うに納得していただけるようなサービスなりを、その回収の仕方はその都度都度なのかとか、いろいろあると思いますけれども、そういうところも含めて考えていかないと、きちんと定着したり、利用したりしてもらえないのかなと思います。

決して今うまくいっていないと言うつもりは全くないのですけれども、まさに理解が難しいサービスなので、直接業者がやるよりは、誰かが間に入ってうまく通訳をしてくれるような機能があったらいいなというのはそのとおりでございますが、それを働かせるためには、きちんと利用者の側にインセンティブがあるとか、そういったものも含めて考えていく必要があると考えてございます。

○加毛委員 ありがとうございます。

金融機関と顧客の仲介者がうまく機能すれば、金融商品・サービスの組成にも良い影響を与えることも考えられるので、期待するところは大きいのですが、新発田審議官がおっしゃられたように、仲介者が誰から報酬を得るのかが重要なポイントになろうかと思います。この点では、顧客が仲介者に手数料を支払うという慣行や社会認識が未だ日本では定着していないところに問題の一端があるのだろうと思います。

そのことに加えて、仲介者が機能するために重要と考えられるのが、顧客がいかなるニーズを有しているのかを適切に分析して特定することです。例えば、保険については、顧客自身が自分のニーズを把握していないなかで、当該顧客の属性やリスクを踏まえて、適切な保険商品を推奨することが求められます。顧客が明確に認識していない需要を特定することが必要になるわけです。

そうすると、仲介者が、顧客が有する情報について、どのくらいの質と量を確保できるのかが重要な課題となります。この点で、認定アドバイザーがうまく顧客の情報を引き出すことができるのかという点も、制度を評価するうえでポイントになるのではないかと思います。そのような観点から、認定アドバイザー制度について、今後も注視する必要があると考えています。

この専門調査会における従前の審議との関係では、消費者の意思決定を実質化していくことが、これからの消費者法制にとって重要であるとされております。そのためには、消費者教育も重要であるわけですが、それに加えて消費者の意思決定をサポートするプレーヤーが登場することによって、より実質的で豊かな意思決定ができることにつながるともいえます。そのような観点からも、認定アドバイザー制度が注目されるところです。

どうもありがとうございました。

○新発田審議官 ありがとうございます。

今のお話を聞いている途中で、先ほどの二之宮委員のお話とも絡んでくるのですけれども、なかなかインセンティブ構造としては難しいというところがありつつ、そういう仲介をする方ということになると、数が限られてくるとすると、先ほどのプリンシプルではないのですけれども、そういうインディペンデントな立場で、職業倫理まで求められるかどうかというのもありますが、まさに自分はお客様の立場に立って顧客本位を実現するとか顧客のニーズをきちんと酌み取るのだみたいな、規範というか、倫理なのかはあれですけれども、そういったものは逆に言うとプリンシプルみたいなものがなじむ世界なのかなと思いまして、そういったものとの組合せが大事になるのかなと思っております。

それから、顧客の潜在的なニーズみたいなものをどう顕在化するのかというのが、保険なんかは特にそうだと思いますけれども、そういった中できちんとお客さんに向き合う、それが保険会社とそうではないアドバイザーとどちらが適切なのかというところが問われていると思いますし、もちろんお客さんにきちんとニーズを酌み取ってくれという規範を課すのも大事ですけれども、今、デジタルデータといったところで、まさにフィンテックがいろいろ出てくる中で、いろいろな金融機関と取引している中で、全体がどう見えてどうなるのかということが実は利用者の方も分かっていなかったりするときに、おまとめサービスではないのですが、全体としてどういうポートフォリオになっているのかとか、そういったものを見せてくれるようなサービスもこれからはより価値が高まるのかなと、お話を伺っていて思いました。ありがとうございます。

○加毛委員 ありがとうございます。

最後の点は全く私も同感だということを申し上げておきたいと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

そのほかにはいかがでしょうか。

よろしいでしょうか。

では、私から2点伺わせていただければと思います。

一つは、4ページ目の半ばにある「顧客本位の業務運営の確保」ということで、これはもともと顧客本位の業務運営準則というので、むしろプリンシプルベースで、かつ、各事業者の取組という比較的自主的なルールであったのが、現在、その一部が法定されたことで、この関係がそういう理解でいいのかどうかというのもこの法定の内容次第ですけれども、一方で、最初に自主規制に委ねて、かつ、そのためのアンカーというのでしょうか、金融庁のホームページを見ればどういうところがどういう導入をしているかということが分かるような仕組みになって、かつ、パブリックにその辺りが公表されるという情報の開示や、市場にさらに評価を委ねるというところが、一方でハードロー化されているというか、法律に盛り込まれた、この動きの中で、あるものはそういうふうにハードロー化していくということなのか、どのような考え方でこういうふうになっているのだろうかというのが一つです。それに何か汎用性があるのかどうか。

もう一つは、最後の9のサステナビリティ情報の開示ということで、これはたしか佐藤先生が言ってくださったのではなかったかと思うのですけれども、消費者の利益擁護とか消費者保護についての企業の取組や姿勢が有価証券報告書における記載事項になれば、意識をしてどういう取組をするかというものをそれぞれ考えていただくという契機になるのではないかと、アイデアレベルで御指摘いただいたかと思うのですけれども、そういったアイデアについては、なかなか難しいというか、様々な記載事項との関係で、やはり異質ではないかとか、それはかなり可能性があるのではないかとか、問題点とか、何かお考えになることがあれば教えていただければと思うのですが、いかがでしょうか。

○新発田審議官 沖野座長、ありがとうございます。2点とも非常に難しい問題だなと思います。

顧客本位の業務運営の確保のところがまさにハードローになることについて、メリット・デメリットと言ってよいのかどうかは分かりませんけれども、法律に書くことで、今回年金関係者も含まれているという意味では、恐らくソフトローで自分は対象に含まれていないと思っていた人たちからすると、実はそこは広がっているといるのではないかと思う部分もございます。

他方で、この法律に書いてあることが守られていないときにどうルールの実効性を担保していくのかということになると、これは民事効があるような話ではないと思いますので、結局、割り切った言い方をすると、ここに何か違反があった場合に行政処分を打つ根拠にはなると思います。その場合に、ある意味ではハードローになると限定されてしまうと言うとよくないかもしれませんが、よりプリンシプルの持つ強みというか、まさに関係当事者自身が守らなければいけないと思っている部分と、ある意味では当局がおとがめをするのでやってはいけないのだというところは、白黒である必要はないと思うのですけれども、法定化したことによってソフトロー的な部分がなくなるということでも決してないと思います。私自身もまだ考えがまとまっておらず、お答えになっていないかもしれませんが、この点についてはこの程度でお許しいただければと思ってございます。

2点目のところは、消費者に対する配慮や、そういったものをきちんと考えること自体が企業に求められているのか、いないのかという点では、当然求められていると思います。そこは、コーポレートガバナンスもそうですけれども、基本的に株主だけではなくてステークホルダーに対する意識をしていく、それが中長期的な企業価値の向上につながるということでございます。

もちろんいろいろなメーカーがあると思いますので、野村委員のところもそうだと思いますけれども、まさに消費財を作っているメーカーは消費者のことを考えてやっているのは当然だと思いますので、そういった中でやられることと、あと、私が申し上げたかったことは、4,000ある上場会社の中で、まさに消費者取引の世界になじむところもあると思いますが、他方で基本的にBtoBみたいなところばかりやっているところもあって、そういった人たちに有価証券報告書上の記載の義務を課しても、そういう取引がないのであれば、「ない」という書き方もあるのかもしれませんけれども、どこまで書くのかという話があると思います。

あと、こういうものを義務付けると、いきおいKPIみたいなものを示すということになりがちなところもございます。卑近な例というわけではないのですけれども、女性管理職比率という数字を女性活躍推進法で開示することになっておりますが、とある企業で女性管理職比率を20数パーセントという数字を出しておりました。

実際に我々が見ると、それは管理職の定義を非常に緩く解して、例えば調査役みたいな人まで含めて開示をする。結果的に、開示資料には出ていませんけれども、全社員の70パーセント近くが管理職になってしまうみたいな、規制をクリアするためにミニマム・リクワイアメントにしてしまうと、どうしてもそういう行動が出てしまう。

必要な取組だと思うのですけれども、一方でそういうリスクというか、形式的なコンプライみたいな対応も出てくるというのが我々も本当に悩むところがあります。最低基準をしっかり守ってもらいつつ、どうやって消費者をきちんと意識した取組みたいなものを進められるのかというのが、それはベストプラクティスというものをハードローでやるのか、事例の紹介的なことでやるのか、どういうやり方でやると過不足なくできるのかというのは我々自身いつも悩んでいるところであるかと思います。これもお答えになっていなくて、すみません。

○沖野座長 もともとの問いが漠としたものでしたので、十分お答えいただきました。ありがとうございました。

そのほかはよろしいでしょうか。

小塚委員、お願いします。

○小塚委員 学習院大学の小塚です。

私もよく問題意識がまとまっていないのですけれども、90年代ぐらいに、先程パラダイムシフトとおっしゃったのですけれども、金融ビッグバンと言っていた頃と、最近の特にデジタル産業との関係が問われるようになってきた、この対比ということで、二つお聞きしたいことがあります。

一つは、エンフォースメントの話といいますか、金融ビッグバンの頃は基本的には規制の緩和と金融のアンバンドリングだったというのが私が当時聞いていた話で、当時は私も自由主義論者だったこともあって、そういうものはどんどん進めていったほうがよいと言っていたこともあるのですが、そういうときには、規制を緩和することで新しいものが出てくるといっても、金融サービスの提供者側の問題であった。

最近のフィンテックなどで出てきている話は、法律上の用語で言うと代行業者といいますか、代理なのか、媒介なのか、そういう形のところが、これも一種のアンバンドリングかもしれませんけれども、出てきている。そうすると、規制当局から見て、規律をエンフォースしていくときに、難しさみたいなものが変わってきているのかどうかというのが一つ目の質問です。

二つ目は、新しく出てきている媒介、あるいは仲介的な業者、法令上の代行業者は、先ほどの加毛委員の御質問にもあったのですけれども、利用者、消費者の利益をより充実させていく主体になっていくという可能性を持っている。そこの意味が、一方ではデジタル技術を利用することによって、例えば今まで金融サービスが受けられなかった人たちもこういう形であれば金融サービスが受けられますというような、サービスの受益を広げていくという方向にもなり得る。

他方で、よりデジタルの情報を使うことによって、例えば、典型的には消費者信用などで、あなたはこれ以上やめたほうがいいですよということも分かる。ところが、消費者の側からすると、やめたほうがいいですよというメッセージはあまり見たくないかもしれないわけですね。

そうすると、デジタルがもたらした利益というものを本当の意味での消費者の利益に結びつけていくために、やめたほうがいい人たちはその取引はしないほうがいいわけで、何があるとそこを推していくことができるのだろうかということで、私自身、解があるわけではなくて、もし何かそういうことでお感じのことがあれば教えてくださいというのが2点目です。

○新発田審議官 ありがとうございます。これも大変難しい問いかけだなと思って伺っておりました。

今日御説明した流れはこれまでの話で、今の金融行政の仕組みに課題がないとは決して思っておりません。恐らく、90年代から2000年代、あるいはここ数年前までぐらいの動きはこういう整理で自分としてはいいのではないかと思っているのですけれども、やはりデジタルの話や、いろいろな業者の参入が増えてくるというのはあります。あと、書き切れなかった話として、Banking as a Serviceではないですけれども、販売・勧誘の段階、提供の段階、家電であればメーカーがあって、卸があって、量販店があって、何でも選べるという関係ですけれども、基本的に金融はどちらかというと昔の電器屋さんのように、何とか電器の特約店みたいな感じでやっていたというところから、それがリアルな量販店なのか、電子的なプラットフォームなのかというところがさらに変わりつつあるところだと思いますので、そういう中でどのプロセスを捉えていくのか。

それから、いろいろなプロセスに分かれていくことによって、全体として誰がきちんと見ているのか、プロダクトガバナンスと言ったりしている部分もあると思いますが、本来であれば、商品開発をしている段階で販売のところでどういう問題があるのかとか、そういったところもきちんと考えてくれということを保険なんかで申し上げた部分もあるのですけれども、だんだん売る人はもう完全に売るだけというふうになってくると、その人には説明義務をかける必要がありますとか、業者さんとしての健全性みたいなものは売るだけの人には必要ないでしょうとか、そういう意味で、今の取引のやり方なり、分業の仕方なり、そういったものに合わせたところで、今何か不都合がないのかどうかというのはしっかり検証していく必要があるのではないかと思ってございます。

金融の場合には、「貸さぬも親切」という言葉も恐らくあると思うので、先ほどの加毛委員のまさに意思決定のところで、買いたいと言っていれば本当に売ればいいのかという部分が、そうすると、適合性原則は何だっけみたいな話に戻ってくると思います。本来であれば、買いたいと言っているのだから売っても何のおとがめもないだろうということでは恐らくないと思っています。余命があまりない超高齢者の方に契約期間の長い商品を売ることが、本人は買いたいと言っていますし、きちんと書面でも了解を取っているので、私は何も悪いことをしていませんというのが、まさにこれが形式的なコンプライアンスの悪いところだと思います。

そういうところは、何が足りないというわけではないのですが、組合せとして、「売らぬも親切」ではないのですけれども、そういった部分、あるいは、まさにお客さんの知識、財産、経験をきちんとよく見て、お客さんのニーズに本当に合っているのかということを考えることが必要なのかなと。

あまり気の利いた答えになってなくて申し訳ありません。

○小塚委員 ありがとうございます。

デジタル技術をどういう形で消費者利益にかなう方向に使っていくかというのは、ずっとこの委員会で議論してきて、我々もなかなか解がなくて困っているところですけれども、金融行政としても同じようなお悩みを抱えておられることはよく分かりました。ありがとうございます。

○沖野座長 ありがとうございました。

そのほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、予定した時間でもございますので、新発田審議官の御報告、それを受けました質疑応答につきましてはこれまでとさせていただきたいと思います。

新発田審議官におかれましては、大変貴重な御報告を本当にありがとうございました。この後、後半に進むのですけれども、関連する議論も出てこようかと思いますので、もしお時間等が許すのであれば、引き続き御参加いただければ幸いでございます。


《2.②有識者ヒアリング (田口義明 公益財団法人消費者教育支援センター理事長)》

続きまして、本専門調査会の後半では、「消費者の脆弱性を捉えた規律の在り方」が一つの重要な検討事項でありますところ、その手法を考える上で、これまでに消費者教育の重要性についても多々御意見をいただいており、また、中間整理におきましても、消費者のデジタル化への対応力向上のために、消費者教育やリテラシーの向上を自律的な意思決定の支援の仕組みと組み合わせて推進することの必要性について言及していたところでございます。

そこで、消費者教育支援センターにて消費者教育の普及・推進等の取組をされている田口義明理事長から、消費者教育がこれまで果たしてきた役割や今後期待される役割などにつきまして、「消費者政策における消費者教育の役割と実効性確保」というテーマで20分程度御発表いただきまして、その後、質疑応答・意見交換とさせていただきたいと存じます。

それでは、田口理事長、よろしくお願いいたします。

○田口理事長 御紹介をいただきました、消費者教育支援センターの田口でございます。

本日は、このような機会をいただきまして、大変ありがとうございます。「消費者政策における消費者教育の役割と実効性確保」ということでお話をさせていただきます。

次をお願いいたします。

本日の御説明は、全体が大きく4項目になっております。第1点は消費者政策の基本的な組立てとその中での消費者教育について、第2点は消費者教育の歴史と役割について、第3点は消費者教育における「消費者の脆弱性」について、最後に消費者教育の実効性確保に向けてということでお話をさせていただきます。

次をお願いいたします。

初めに、「1.消費者政策の基本的組立てと消費者教育」についてであります。

現在の消費者政策の基本的組立てにつきましては、2004年に改正されました消費者基本法で規定されております。

その構造は、まず法の根拠といたしまして、消費者と事業者の間には情報力、交渉力等で格差があること。このため、政策といたしまして、消費者利益の擁護・増進に関する総合的施策、すなわち、消費者政策を推進すること。その際の基本理念は、消費者の権利尊重と自立支援が基本とされております。この基本理念を実現するための政策手段といたしまして、基本法の第2章で様々な基本的施策が規定されております。

多少分類してみますと、まず、①対事業者の規制行政といたしましては、安全の確保、消費者契約・規格・計量・表示の適正化、公正自由な競争の促進などの施策がありまして、これらは基本的施策の前半、第11条から第16条辺りで規定されております。

②の対消費者の支援行政といたしましては、啓発・消費者教育の推進、意見の反映・透明性の確保、苦情処理・紛争解決の促進などの施策でありまして、これらは基本的施策の後半、第17条から第19条辺りで規定されております。

さらに、③消費者・事業者間の民事ルールにつきましては、第12条の消費者契約の適正化などの規定に含まれているかと思います。

次をお願いいたします。

こうした基本法全体の体系の中で、(2)消費者教育はどう位置づけられているかでありますが、まず、消費者の権利の一つとして教育の機会確保が規定されております。また、消費者教育は、この教育機会の権利の実現を図るとともに、消費者の自立を支援するための基本的施策の一つとして位置づけられております。全体としての消費者利益の擁護・増進は、対事業者の規制行政、対消費者の支援行政、両者間のルール整備などの基本的施策が総合的に効果を発揮して初めて実現するものであります。

したがいまして、当然ながらではございますが、消費者教育を徹底すれば、それによって消費者がしっかりしさえすれば、ほかの基本的施策が不要になったり、必要性が低下したりするわけではございません。このことは一つ留意しておく必要があるかと思います。

次をお願いいたします。

そこで、「2.消費者教育の歴史と役割」について見ておきたいと思います。

まず、(1)消費者教育の歴史でございます。我が国における消費者教育の歴史を振り返ってみますと、おおむね三つぐらいの時期に分けられるのではないかと思います。第1期は、1950年代の末頃から1960年代頃までのいわば立ち上がり期であります。我が国の消費者教育のいわばルーツといたしましては、①にありますように、1959年、日本生産性本部がアメリカに消費者教育の視察団を派遣いたしました。この辺りに消費者教育のルーツがあるのではないかと思います。

この視察団は、アメリカの消費者同盟、事業者の自主規制団体、商品テスト機関、学校などを訪問したわけでありますが、この視察団の報告を受けて、②にありますように、1961年、生産性本部の消費者教育室という部署を母体といたしまして財団法人の日本消費者協会が設立されました。この協会は、商品比較テストの実施などを通じまして、主に消費者への情報提供活動を中心として消費者教育に取り組むこととなります。

1966年には、当時の国民生活審議会が「消費者保護組織及び消費者教育に関する答申」を提出いたします。1968年は、旧基本法の消費者保護基本法が制定されて、消費者保護施策の一つとして消費者教育が規定されました。このあたりで、日本の消費者教育の形が整ってきたと言えるかと思います。

次をお願いいたします。

第2期は、1970年代から1990年代くらいまでで、いわば体制の確立期と言えるかと思います。アメリカでは、1975年にフォード大統領が消費者の権利の一つとして消費者教育を受ける権利を提唱したところでありまして、我が国でもこういったことを受けて消費者教育の重要性が認識され、機運が高まってまいります。

そうした中で、1981年には日本消費者教育学会が設立されます。この学会は、単に研究者の集まりということではありませんで、研究者のほか、行政、消費者団体、企業、そういう幅広い方々の御協力により設立されました。

1986年には、国民生活審議会が学校教育に焦点を当てまして、「学校教育における消費者教育について」という意見書を当時の文部省教育課程審議会に提出したところでございます。こうしたことも受けて、学習指導要領は10年単位ぐらいで改訂されておりますが、1989年の学習指導要領の改訂で、例えば契約に関する事項、契約というのは法的に拘束力を持つ約束事で、一旦結ぶと自由に解約などはできないものですといった、契約に関する事項などが多く盛り込まれるようになりました。

1990年には、私どもの団体でございますが、財団法人消費者教育支援センターが設立されまして、青少年等を対象とする消費者教育に関する各種事業を実施することになりました。

次をお願いいたします。

続いて、第3期が2000年代以降で、この時期、立法措置もなされまして、消費者教育はより本格的に展開されていくようになります。2004年には基本法が改正されまして、先ほどもお話ししましたように、消費者教育の機会確保が消費者の権利の一つとして規定されます。

2012年には、消費者教育推進法が議員立法で制定されます。この法律は、消費者教育の分野の基本法的な性格を持つもので、国や地方を通じた消費者教育推進の仕組みが整備されてまいります。

その後、消費者教育の分野で大きな動きといたしましては、2018年の民法改正によりまして成年年齢が18歳に引き下げられることとなりましたので、これに対応するために、消費者庁におきましては、私ども支援センターもお手伝いをさせていただいて、『社会への扉』という主に高校生向けの教材を作成して、高校等で消費者教育を集中的に実施したところでございます。

次をお願いいたします。

おおむね以上のような流れの中で消費者教育は今日に至っているわけでありますが、そうした中で、消費者教育が目指すもの、消費者教育の役割について見ておきたいと思います。

消費者教育の役割といたしましては、大きく捉えると3点ぐらいに整理されるのではないかと思われます。まずは、被害者にならない消費者、だまされない消費者の育成であったかと思います。第2には、いわゆる賢い消費者の育成でございます。単に被害者にならないとかだまされないというようなネガティブな捉え方だけではなくて、よりポジティブに適切、合理的な購買行動ができる、健全な生活設計をすることができるといった、いわゆる賢い消費者を育成することが目指されたところであります。

さらに2000年頃からは、消費者市民(Consumer Citizen)の育成が目指されるようになりました。消費者個人の生活にとどまらず、消費者を取り巻く社会とか環境にも着目して、個人の消費生活を通じて、よりよい社会とか地球環境の形成に参画することが目指されるようになりました。

今日では、消費者教育と言うときには、おおむねこれら①から③を総合的に目指すものと理解されているかと思います。

次をお願いいたします。

9ページは御参考までに、2012年に制定されました消費者教育推進法が基本理念として掲げている7項目を載せておきました。基本的には、①の知識を行動に結びつける実践的な能力を育成すること、②の社会の形成に主体的に参画・寄与できる消費者市民の育成、こういうことが掲げられております。そのほか、括弧書きにございますように、体系的推進であるとか効果的推進のためとして、③から⑦のようなことが規定されているところでございます。

次をお願いいたします。

次に、3といたしまして、消費者教育において「消費者の脆弱性」はどう捉えられているのか、あるいはどう捉えるべきかという点について少し整理してみました。

まず、(1)「消費者の脆弱性」は、従来、消費者教育においてどう考慮されてきたかという点でありますが、まず第1に、消費者教育はこれまで学校、地域などで主にライフステージに応じて行われてきたわけでありますが、「消費者の脆弱性」という観点で見れば、概して、各ライフステージの一般的あるいは平均的消費者像を想定して行われてきたと言えるかと思います。あわせて、高齢者とか障害を持った方など、類型的・属性的に脆弱性を有する方々に向けての消費者教育も行われてまいりました。

他方、「限定合理性による脆弱性」、人は限られた範囲でしか合理的な判断ができないとか、「状況的脆弱性」、誰しも状況次第では合理的に考えにくくなる、こういった脆弱性については、例えば、各種の悪質商法とか詐欺の手口への対処策など、主に消費者教育の内容面の問題として考慮されてきたのではないかと思われます。

次をお願いいたします。

11ページは、参考までに、消費者庁が「消費者教育の体系イメージマップ」として提示している表でございます。縦軸が消費者教育の重点領域で、内容面から「消費者市民社会の構築」、「商品等の安全」、「生活の管理と契約」、「情報とメディア」と大きく4分野を掲げております。横軸は、幼児期から成人期までのライフステージ別に整理しております。

消費者の脆弱性、とりわけ限定合理性による脆弱性とか状況的脆弱性といった点につきましては、縦軸の2番目の「商品等の安全」とか、その下の3番目、「生活の管理と契約」といった範疇の中の主に「トラブル対応能力」とか、その下の「選択し、契約することへの理解と考える態度」、こういった項目で内容的に盛り込まれてきたと考えられます。

次をお願いいたします。

こうしたこれまでの状況を踏まえながら、(2)消費者教育において「消費者の脆弱性」をどう捉えるべきかという点でありますが、まず前提として、消費者の脆弱性はどの消費者にも不可避的に随伴するということです。そうした中、消費者教育は消費者の脆弱性自体の解消を目指すものではなくて、消費者の多様な脆弱性を踏まえて、あるいはそれを前提として、学校、地域、職域など、それぞれの場において、かつ、それぞれの属性等に応じて多様な形で展開することが重要であると言えるのではないかと思います。あわせて、③でありますが、高齢者や障害のある消費者などについては、使いやすい教材なども十分整備していく必要があると考えます。

次をお願いいたします。

最後に、消費者教育の実効性確保という点について述べさせていただきます。

まず(1)消費者教育推進のための仕組みの現状(到達点)でありますが、消費者教育を実施するための体系とか体制、いわば推進の仕組みにつきましては、消費者教育推進法の制定に至る過程とかその施行の中で、国、地方を通じておおむね整備されてきております。

例えば、国・地方の仕組みの現状を見ますと、国では推進法の規定に基づいて基本方針が閣議決定されております。また、推進のための組織といたしまして消費者教育推進会議が2013年に設置されております。地方におきましても、都道府県や政令市の状況を見ますと、都道府県レベルの消費者教育推進計画は全ての都道府県で策定済みでありますし、市町村レベルでも政令市ではほとんど策定されているということで、規模の大きい自治体では計画の策定が進んでおります。また、推進組織の面でも、消費者教育推進地域協議会というような組織が全都道府県、あるいはほとんどの政令市でも策定済みとなっております。

このように、フォーマルな計画の策定とか推進組織の設置といった面では一定の進展が見られるわけでありますが、それを消費者教育として実際に進める上での課題は何かということになりますので、それを次のページで少し整理してみました。

次をお願いいたします。

消費者教育が現在直面する主な課題は何かと考えてみますと、幾つかの視点で考えられるわけでありますが、まず担い手の視点から見ますと、消費者教育を実施するための人材、場、教材といった消費者教育を実施するためのリソースをつなげてマッチングする機能を高める必要があると思います。

こうしたマッチング機能を果たすのが現在は消費者教育コーディネーターと呼ばれる方々でありますが、そういった職能を法定化し配置促進していくことに取り組む必要があると考えます。現在、都道府県や政令市ではこのコーディネーターの配置が進みつつありますが、さらに身近な市町村、自治体レベルでも配置していくことが肝要かと思います。

教育内容の視点から見ますと、現在、急速に進みつつありますデジタル社会に対応する消費者教育を充実していく必要があると考えます。消費者教育が行われる場の視点から見ますと、消費者基本法とか消費者教育推進法では、「学校、地域、家庭、職域その他の様々な場」と規定されていますけれども、これまではおおむね学校と地域に力点を置いて取り組まれてきたかと思われます。今後は、これに加えまして職域(企業)における取組も重要と考えます。この点は、消費者庁におかれても近年着手された状況と伺っております。

最後に、消費者教育の現場を支える支援組織の視点から見ますと、当専門調査会が昨年10月におまとめいただいた中間整理では、専門家組織や自主的な事業者団体の役割の重要性を提起していただいておりますが、消費者教育の分野におきましても、消費者教育の非収益性に鑑みますと、その実施とか推進に取り組む専門家組織への支援、特に資金面の支援などが重要と考えます。

次をお願いいたします。

最後に、まとめといたしまして、以上のような消費者教育の現状と課題に鑑みますと、消費者教育に今求められているのは、基本的な枠組み、パラダイムの転換というよりも、いかにして制度・仕組みの実効性を高めていくか、すなわち実効性の確保ではないかと思います。

次をお願いいたします。

最後のスライドは、御参考までに、私どもの公益財団法人消費者教育支援センターの概要であります。先ほど消費者教育の歴史の箇所でも少し触れましたが、国民生活審議会の提言を受けて、35年ほど前になりますが、1990年に設立されたこと。主な事業としては、枠囲いになっておりますが、消費者教育に関する調査研究・教材作成、セミナー等の企画・運営、講師派遣、優れた消費者教育教材の表彰、こういった事業を行っております。一言で言いますと、右上にオレンジ色の丸の箇所に「全国各地で消費者教育推進のお手伝いをさせていただいています」と書いてありますが、こういうことでいわば全国版の消費者教育コーディネーターというような団体でございます。

以上、御説明とさせていただきます。

○沖野座長 ありがとうございました。

ただいまの田口理事長の御発表内容を踏まえまして、質疑応答・意見交換をしていきたいと思います。先ほどと同様、御発言のある方は挙手にて、オンラインの方はチャットにてお知らせいただければと思います。

河島委員からチャットに御発言希望というのが挙がっておりますので、まず河島委員からお願いできますでしょうか。

○河島委員 河島と申します。

消費者教育の位置づけからその取組の全体像にわたるまで御説明いただきまして、本当にありがとうございました。

3点、お教えいただきたいことがあります。まず1点目としまして、スライド14に主な課題として「急速に進みつつあるデジタル社会に対応する消費者教育」とありますけれども、今回の専門調査会ではデジタル社会の変化を見据えて、「金銭を支払う取引だけでなく、情報、時間、関心、アテンションを提供する取引」までを含めて「消費」と捉えようとしてきており、そうなると消費者教育の内容はかなり変化することになるのではないかと思いますけれども、このあたりのことについて田口先生の御意見を頂戴できればと思います。

2点目といたしまして、消費者教育支援センターのウェブサイトにリンクが貼られている「GIGAスクール対応教材」の「「情報」をテーマとした教材」というのを見ると、日本独特の情報モラル教育の内容にとどまっていて、今回の配付資料でいいますとスライド8にある①の「「被害者にならない消費者」「だまされない消費者」の育成」の内容にとどまっていて、②、③のところまで届いていないのではないかと考えています。こういった状況について御意見を頂戴できればうれしく思います。

3点目の質問は、国民生活センターや消費生活センターなどの認知度についてです。先日、消費生活センターに行くと、小学生などが楽しめる参加型のコーナーがあって、実際に小学生が来て結構遊んでいました。そういう面を見るとうまくいっているように見えて、私の周りだけかもしれませんけれども、大学生に事業者とトラブルになったときに相談するところとしてどこを思いつきますかと聞いたときに、消費生活センターなどの機関が挙がってこないのです。若者への認知度について、あるいはその向上策について御存じでしたらお教えいただければ幸いです。

以上3点、長くなりましたが、よろしくお願いいたします。

○田口理事長 ありがとうございます。

まず1の課題ですね。お金だけでなくて、デジタル社会の中で情報とか時間、関心・注意、そういうものが対価的なものとして取り扱われる取引が非常に増えている、そこは非常に大きなテーマだと思います。

御指摘いただいたように、現在、学校教育等で行われている消費者教育の中心は契約概念ですね。金銭を対価として商品やサービスを得る、その取引をめぐる契約関係、契約の考え方を授業などでやっているということで、バスに乗るのも契約ですよ、物を買うのも契約ですよ、そういうところからやっているわけでありますけれども、デジタル社会での取引はそういう契約概念ではなかなか捉えにくい、情報とか時間、関心・注意とか、そういうもののやり取りで進んでいく、それも消費者取引の一つなのだと、より広げて考えていくことはますます重要になってきていると思います。

そういった問題は、御指摘のとおり、確かにまだ学校教育に取り入れられるに至っていないということでありますけれども、今日では消費者取引の大きな部分が情報社会における取引にだんだん移ってきておりますので、そういった消費者取引の捉え方は、これからどんどん学校教育、さらには地域社会での教育にも取り込んでいかなければいけないところですが、そこは消費者教育の面で取り入れるにはまだ十分ではないということは御指摘のとおりだと思いますので、その辺を織り込んだ消費者教育の教材づくりとか授業等を進めていくことはこれからの大きな課題ではないかと思っております。

それから、ネットで行われる取引に関連して、2番目の情報リテラシーの問題ですが、これは今、ネットを通じた通信販売などでは、単発の取引だと思ったら、何か月、何回かにわたってやらなければいけない定期購入の取引だった、こんなはずではなかったというトラブルが非常に多く、何とかしてくれという相談が消費生活センターなどにたくさん寄せられているという状況です。

そういう状況を見ると、委員が御指摘のように、まだ消費者教育のレベルが、被害者にならない、だまされない、そういうところにウエートが置かれたままで、第2ステップ、第3ステップのところまで及んでいないのではないか。そういう面ではおっしゃるとおりかと思います。

ただ、ネット社会での情報リテラシーというのは、何分にも学校教育等に取り込まれて間がない状況ですので、情報社会をうまく生きていくというポジティブな面での消費者教育というところにはまだまだ行っていないかと思いますが、これからそういうところにも進めていかなければいけないと思います。

それから、第3ステップのより社会や環境に目を向けてというところですが、ここも授業の中ではだんだん取り入れられるようになってきて、消費者市民社会というのが大事なのですよ、自分の行動は単に自分の消費生活を送るためのものではなくて、社会にとってあるいは環境にとっても重要なのですよ、だから、フードロスの問題も消費者一人一人が考えていかなければいけないのですよ、このような消費者教育も学校教育の中では大分取り入れられつつあるということで、③の消費者市民を育成する消費者教育、特に情報社会の中でそういうことを意識した消費行動に向かっていかなければいけない。これはもっと強化していかなければいけないのではないかと思います。

それから、3番目の相談機関の認知度です。これは一層高めていかなければいけないということでありまして、消費者庁さんでは意識調査を定期的に実施しております。手元に数字を持っておりませんのでアバウトですが、2023年に消費生活意識調査というのを、これはネットでやっている調査ですが、これで消費生活センターを知っていますかと聞くと、①名前と内容を知っていた、②名前は知っていた、③知らなかった、の3類型で回答を求めたところ、①と②を足したものが消費生活センターでは70パーセント台になっていたかと思います。知っていたといっても、やっていることもよく知っているという方々はまだそれほど多くなくて、名前だけは聞いたことがあるという方が多く、そこを含めると7割台ぐらいという状況かと思います。

ちなみに、消費者庁が普及に努めている、「188(いやや)」にかければ身近なセンターにつながるという、この消費者ホットラインの仕組みは3割程度だったかと思います。名前や内容を知っている、名前は聞いたことがある、それらを合わせると3割ぐらいかと思います。

そういうことで、消費生活センターについては、認知度の数字はそこそこのところには来ていますが、その実態、やっていることもよく分かっているという方々はまだそんなに多くなくて、名前は聞いたことがあるぐらいの方が非常に多いという状況です。

したがいまして、高校生や大学生、あるいは社会人になって、トラブルに巻き込まれた、定期購入商法と知らずに500円で買えると思ったら、2回目から5,000円を払え、1万円を払えと言われた、さあどうしようと困ったときに、それではまず188番にかけよう、あるいは地元の消費生活センターの電話番号を調べてかけてみよう、そういうところに思いが及ぶ方々はまだまだといいますか、認知度をさらに一層高めていかなければいけない状況にあるかと思います。

ただ、そういった点も含めて、18歳成年になるのを控えて高校生に向けて集中的に消費者教育をやった『社会への扉』という教材では、消費生活センターというのがあって、188番にかけると最終的につながっていく、こういう仕組みも織り込んでいますので、そういうものも学校教育の中にどんどん取り込んでいかなければいけないという状況かと思います。確かにまだまだ改善の余地ありということかと思います。ありがとうございました。

○河島委員 丁寧に答えていただきましてありがとうございました。勉強になりました。

○沖野座長 ありがとうございました。

そのほかではいかがでしょうか。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 御説明ありがとうございました。

消費者教育の課題のところで質問させてください。14ページの「近年、緒についた状況」というところで、今後、職域における取組が重要ということが述べられております。

私はふだん消費者問題に携わっている者ですけれども、事業者ともいろいろな場面で接する機会があります。そこで時々お聞きするのが、消費者とじかに接するCS部門の方からは、消費者の意識、趣向、あるいはその変化にじかに接して、それを会社の中で伝えていこうとすると、管理職あるいは経営層になかなか伝わらないというか、真剣に取り合ってもらえないという悩みを聞くことがあります。他方で、消費者志向の意識があるトップの悩みとして、その意識を現場に浸透させていくことは大変なのですというような話も聞きます。

その背景はいろいろあると思うのですけれども、先ほど新発田審議官のお話を聞いていて、一つはそういうところにもあるのかなと思ったのが、市場の中の多くはBtoCではなくてBtoB取引であって、投資家とはじかに接するけれども、最終的な顧客、消費者とじかに接しているところはサプライチェーンの中でそんなにない。そうしたところを考えると、消費者教育を消費者のほうから見ると100パーセントBtoCだけれども、事業者のほうから見るとBtoBばかりで、BtoCというのは一部ではないかと。

そうすると、職域における消費者教育を考えたときに、各ライフステージによる消費者教育のマトリックスが11ページにありましたけれども、事業者の中での部門別とか、管理職とか、経営層とか、そこを分けて教育していくとともに、その中を一体化させるような教育の在り方も、単に事業者に向けてというだけではなくて、そこも分類していってやっていかないと、単にひっくり返したらいいのではないと思いました。この辺について、何か取組というか、ヒントになるような、今後こういうことが考えられているとか、あるいはこういうこともできるのではないかという点があれば教えてください。

もう一点は、他方で消費者との関係でいうと、複雑になってきて、何が健全か、何か不健全かというところが分かりにくい状況になってくると、消費者向けの消費者教育だけ、事業者向けの消費者教育だけではなくて、実践の場としたら消費者と事業者と一緒になっている場での教育も考えられるのではないか、そこでの対話、コミュニケーションの場が消費者教育そのものになってくるのではないかと思います。この辺についても、何か取組がなされている、あるいはこういうことが考えられるということがあれば教えてください。

最後にもう一つ、これは全然違うのですけれども、消費者像です。一般的、平均的な消費者というのは実はもうフィクションなのだ、全員脆弱性を持っていると。その消費者像の転換に関して、まとまった形で、これはもうライフステージごとではないと思うのですけれども、消費者像の転換ということに関しては、消費者教育の中で取り組まれている、こういう形で考えられているというのがあれば教えてください。

以上です。

○田口理事長 ありがとうございます。

まず、学校や地域だけではなくて、職域もこれからは重視していこうということです。従業員も一面で消費者だからということで、企業の方への消費者教育は消費者庁さんにおかれても力を入れて取り組んでおられる。令和4年度ぐらいから年代層別に企業向け研修プログラムを開発して、今年度からはそれらを使って企業の中で消費者教育、研修の場を用意して、そこに講師を派遣するという事業を規模を拡大して実施しております。

そういう中で、二之宮委員がおっしゃったとおり、なんで企業の中でそういうことをやらなければいけないのかという意識は企業サイドの方にはまだ多くて、すんなり、それは大事ですね、すぐやりましょうという形になりにくいのがつらいところといいますか、私どもは消費者庁さんから受託して今年度事業を進めているところですが、そこを企業あるいは事業者団体などを通じてより広めていこうということで、様々な工夫を図っているところであります。

その中で、企業はBtoCの事業を行っているところだけではない、BtoBの仕事をやる企業も非常に多いということで、特にBtoBの事業をやっている事業者の方に消費者教育の重要性を御理解いただくのはなかなか苦労するところでありますが、研修のイントロのところで、消費者教育といっても単に消費者としての教育ではなくて、企業の中で働く従業員の方々が消費者の目線で仕事をすることは、最終的には企業にとってもメリットがある、ウィン・ウィンの関係になるのですよ、そういったところを前置きにして入っているというところです。

もう一つ工夫といたしまして、消費者に向けて日頃消費者教育の講師等をやっている人がやるだけでは、企業の人に言わんとするところがうまく伝わらないところはもどかしいところで、そこを何とかブレイクスルーというか、入り込んでいくために、例えば、企業の中で消費者対応部門の仕事をされている方々、消費生活アドバイザーとか、企業の中で消費者志向を意識して仕事をされている方々を研修の講師としてやっていただこうと。こうすると、話すほう、聞くほうに割と親近感が出て、我が事として聞いていただける。

こういうことで、職域に消費者教育を広げていくというのは確かにバリアがございますが、そこを超えてやっていかないと、消費者教育の対象も学校で学ぶ若い人と地域の退職後の高齢者などに限られて壮年層がすっぽり抜けてしまうということにもなりかねませんので、そこをどう埋めていくか。これが、現在、消費者庁さんも我々も同様にいろいろ知恵を絞っているところでございます。

2番目の消費者にとって何が重要かというところで、1番目とも絡みますけれども、CとBが一緒になってといいますか、そこはおっしゃるとおり一つのポイントだと思います。そういった点で、先ほど申し上げましたように、企業の中で仕事をする担い手、消費者のほうを向いて消費者志向経営とか、お客様相談室とか、そういったところで仕事をされている方々が多い消費生活アドバイザーなどと協働して消費者教育に取り組むトライアル的なものも徐々に進めておりますので、そうしたことをさらに進めていければと思っております。

3番目の消費者像の転換でありますが、消費者像の転換というのは消費者関係の分野で仕事をしてまいりました身としては実は難しい問題であります。これは、このパラダイムシフトの議論が起こる20年ぐらい前、ちょうど21世紀に入った頃ですので、非常に大きなテーマになったのが「21世紀型の消費者行政のグランドデザインを描く」ということ。従来の消費者像、消費者というのは事業者と比べて弱いから行政が守ってあげる、保護してあげる、そういう基本的発想で消費者行政を進めていくのではもう駄目ですよ、消費者像自体を変えていく。そこから、「保護される消費者から自立する消費者へ」というキャッチフレーズ的なものも出てきて、自立した消費者を前提とした消費者行政に転換していかなければいけない、こういう考え方がひとつの大きなテーマとなったわけでありますが、はっきり言って消費者団体の方などは非常に強い反対といいますか、「保護から自立へ」というのはきれいなキャッチフレーズだけれども、それは実際に消費者行政の現場で考えれば、消費者行政の撤退ということではないかと。消費者はもう保護される主体ではない、自立した主体であることを前提として消費者行政を考えるということは、今までやってきたような弱い消費者を前提とする消費者行政はやらなくていいと受け取る方々も出てくる。そうすると、消費者行政がどんどん撤退することになりかねないと。「保護から自立」は絶対反対と。むしろ、消費者の権利をベースに置いて、それを基本にして消費者行政を組み立てる、そっちの発想で考えるべきだという議論もなされる。いわば自立論と権利論が対立関係みたいになってしまって、消費者行政を前に進めにくくなる。どちらも一理ある話なのですが、その対立関係に陥ってしまうと、消費者行政を前進させることが非常に難しくなるというのが20年前の議論の実態でありました。

そこを、20年前の消費者基本法改正のときには、最終的には、基本理念として消費者の権利尊重と自立支援を2本柱とすることになりましたが、そこに収まったのは、消費者の自立ということを単独で言うことはしない。消費者が自立したから、消費者は自立が前提だからという言い回しは決してしないと。そうではなくて、消費者の自立を支援する。消費者の自立というのは永遠の課題みたいなもので、そこに向けて支援を行う。自立と言ったら必ず支援することをセットで言う。ということで、権利の尊重と自立の支援を2本柱にして、哲学的な論争をなんとか乗り越えてきたということであります。

今回、消費者像の転換ということで、消費者は誰しも脆弱性を持っている、そこを前提に進めていくということはいいのですが、情報社会の中での消費者というのを、取りようによっては消費者は幾らでも情報を自分で取れるのだから、それを前提に行政を考えていくべきではないかというところに走っていってしまうと、消費者行政がむしろ弱体化、撤退するという方向に進みかねないところも懸念されるわけで、消費者像の転換という点は、消費者の脆弱性ということに関連して子細に見れば確かによく分かるのですが、転換という点については注意深く考えていく必要があるのかなという感じがいたします。

十分なお答えでないかもしれませんが、以上でございます。

○二之宮委員 非常によく分かりました。ありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

そのほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

1点だけ、むしろ位置づけの最初のほうでお話しくださったスライドの4ページのところですけれども、最後に括弧書きで「消費者教育を徹底すれば、他の基本的施策が不要になったり、必要性が低下したりするわけではない」という、これは非常に重要な御指摘ではないかと思っております。

例えば、悪質な事業者への対応という際に、民事ルールを考えるような場で今までしばしば言われたのは、それはむしろ刑事の政策と消費者教育で、まさに被害に遭わない消費者をつくっていくことが大事なので、民事ルールでは、かえって悪質でない事業者への萎縮効果を考えると、実効性の点も問題だし、悪質な業者は逃げてしまって救済としても十分ではない、結局は消費者教育なのだと言われることがしばしばあるように私は経験しているものですから、この御指摘がとても重要に思われたのです。もしさらに敷衍していただくことがあれば、お願いできればと思った次第ですが、いかがでしょうか。

○田口理事長 ありがとうございます。

その点は、実は私も20年ほど前に基本法の改正に若干携わらせていただきまして、そのときもあった議論であります。要は、消費者がしっかりしていないからこういう消費者問題が起こるのでしょうと。当時は自立論とセットになって議論されたわけでありますが、消費者が自立すれば物事は解決するのだから、何はともあれ消費者をしっかりさせる、自立させることが第一課題なのだと。そのためには消費者教育なのだから、消費者教育を徹底的にやって、消費者が甘い言葉にふらふらと飛びついたり、だまされたりしないようにするというのがまず何よりも消費者行政の基本なのだから、そこをしっかりすればいい、権利とか何だというのはその先の話ではないか、突き詰めるとそういう議論も時に聞かれるというのがございました。

消費者政策というのは、スライドの3でも申し上げましたように、対事業者の問題、対消費者の問題、それから、横断的なルール整備、そういったものが総合的に効果を発揮して初めて効果をあげるのであって、全ての責任といいましょうか、根本的な責任を消費者教育に帰して、消費者教育さえしっかりやれば、消費者がしっかりして自立するのだから、消費者行政などやらなくてもいいのではないのか、そんな感じで話が進んでいくと、ちょっとそれは違いますねと。消費者政策というのは非常に幅の広いもので、消費者教育は確かに大変重要なものでありますが、それさえやれば消費者の利益が確保される、消費者の権利が実現するというわけではない。そういった趣旨で、このスライド4では最後にそんなことを書き足させていただいたわけです。

基本法では第2章に、行政がやるべきことのメニューが基本的施策として書かれていて、第11条からずっと並んでいる。消費者教育も確かに重要で、第17条に書かれておりますけれども、それがオールマイティというわけではないし、それさえやればあらゆる問題が解決するわけではないということは、消費者教育の充実・強化というときにも頭に置いておかなければいけない話ではないかということで書かせていただいたわけです。

○沖野座長 ここでお示しくださった問題背景や歴史がよく分かりました。ありがとうございました。

それでは、そのほかはよろしいでしょうか。

新発田審議官には残っていただいて、金融教育との対比などもあるかとは思いますけれども、時間が参っているのですが、何か一言言っていただくような内容はございますか。特になければよろしいのですが。時間もあって、発言の機会も与えずに恐縮です。

それではよろしいでしょうか。

まさに予定した時間が参っておりますので、このあたりで今回の議論を切り上げたいと思います。

田口理事長におかれましては、大変貴重な御報告をくださいましてありがとうございました。委員の皆様におかれましても、活発な御議論をありがとうございました。

最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。


《3.閉会》

○友行参事官 本日も長時間にわたりまして誠にありがとうございました。

次回の会合につきましては、確定次第、御連絡させていただきます。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、また御報告者のお二人には本当にありがとうございました。

それでは、終了とさせていただきます。

(以上)