第17回 消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会 議事録

日時

2025年1月27日(月)14:00~16:03

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

出席者

(委員)
【会議室】
沖野座長、山本座長代理、大屋委員、小塚委員、二之宮委員、野村委員
【テレビ会議】
石井委員、加毛委員、河島委員、室岡委員
(参考人)
【会議室】
鈴木健太 公正取引委員会相談指導室長
稲葉僚太 公正取引委員会デジタル市場企画調査室長
【テレビ会議】
成原慧 九州大学大学院法学研究院准教授
(消費者庁)
【会議室】
黒木審議官、古川消費者制度課長、原田消費者制度課企画官、消費者制度課担当者
(事務局)
小林事務局長、後藤審議官、友行参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    ①有識者ヒアリング (鈴木健太 公正取引委員会相談指導室長
    稲葉僚太 公正取引委員会デジタル市場企画調査室長)
    ②有識者ヒアリング (成原慧 九州大学大学院法学研究院准教授)
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1. 開会》

○友行参事官 それでは、定刻になりましたので、消費者委員会第17回「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」を開催いたします。

本日は、沖野座長、山本隆司座長代理、大屋委員、小塚委員、二之宮委員、野村委員には会議室で、石井委員、加毛委員、河島委員、室岡委員はテレビ会議システムにて御出席いただいております。

なお、室岡委員は少し遅れて御出席される予定でございます。

また、本日、公正取引委員会相談指導室長の鈴木健太様、デジタル市場企画調査室長の稲葉僚太様と、九州大学大学院法学研究院准教授の成原慧様に御発表をお願いしております。鈴木室長と稲葉室長には会議室で、成原先生にはテレビ会議システムにて御出席いただいております。

配付資料は議事次第に記載のとおりでございます。

一般傍聴者にはオンラインにて傍聴いただき、報道関係者のみ会議室で傍聴いただいております。議事録については、後日公開いたします。

それでは、ここから沖野座長に議事進行をよろしくお願いいたします。


《2.①関係省庁ヒアリング (鈴木健太 公正取引委員会相談指導室長、
稲葉僚太 公正取引委員会デジタル市場企画調査室長)》

○沖野座長 ありがとうございます。本日もよろしくお願いいたします。

本日の議事に入らせていただきます。

本専門調査会の後半では、実効性の高い規律の在り方について検討を進めてきておりますところ、前半の御議論の中で、委員の皆様から、情報法分野や競争法分野などの隣接法分野との関係を意識する必要性について御意見をいただいておりました。

本日は、まず、公正取引委員会相談指導室長の鈴木健太様と、デジタル市場企画調査室長の稲葉僚太様に、事業者の自主的な取組に関する視座や、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」とデジタル分野における公正取引委員会での取組などについて、20分程度御発表いただいて、質疑応答・意見交換をさせていただければと思います。

それでは、鈴木室長、稲葉室長、どうぞよろしくお願いいたします。

○鈴木室長 ありがとうございます。今、御紹介にあずかりました公正取引委員会相談指導室長の鈴木健太でございます。本日は貴重な機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

私のほうからは、お手元の資料の右肩に1-1と書かれておりますスライドに沿って御説明させていただきます。本日は「公正取引委員会における事前相談と消費者保護を目的とした事業者の自主的な取組への対応」について、私のほうから御説明させていただきます。

1枚スライドをめくっていただきまして、まず、公正取引委員会が行っている事前相談業務について御説明させていただきたいと思います。私は相談指導室というところにおりまして、この事前相談業務を担っておりますので、その担当している仕事を御紹介させていただきます。

この相談対応でございますが、目的としましては、独占禁止法違反行為の未然防止、また、事業者の皆様が様々な行動、行為をする際に当たって、独占禁止法に基づく規制に関して違反とならないということで安心して取組を進めていただけるように、規制についての透明性であるとか予見可能性を確保することを目的として相談対応を行っております。ということですので、相談の対象としましては、事業者・事業者団体の皆様が、今後自ら行うことについて、我々のところに相談に来ていただくということで対応させていただいております。また、抽象的な行動でありますと我々もお答えがなかなか難しいということもありますので、相談の対象としては、具体的な行為になったところで御説明いただいて、独占禁止法の問題がないかどうかということを回答させていただいているというものでございます。

相談の対応につきましては、大きく二つの種類がございまして、事前相談制度というのは正式相談と呼んでおりますが、正式な相談制度に基づいた相談というものがございます。これは相談者の方であるとか、また相談内容について後日回答を公表させていただくことを前提としたものでございます。それ以外にも、電話等で気軽に御相談いただけるようにということで一般相談というものも対応しておりまして、こちらについては通常は非公表にさせていただいております。通常といいますのは、これはちょっと皆さんに知っていただいたほうが、事業者の皆様、場合によっては消費者の皆様にもよいだろうというものについては、御相談させていただいた上で、支障がないということであれば公表させていただくようなことがございますので、そういった例もあるということで通常非公表というふうに書かせていただいております。

次のページをお願いいたします。相談件数の推移について、3ページ目で紹介させていただいております。これは最近5年度分の数でございますけれども、ちょっと分かりにくい表になっていて恐縮なのですが、先ほど申し上げましたとおり、我々事業者、個別の企業の皆さん、もしくは企業が何社かで御相談に来ていただくということと、また、下のほうの合計の上にありますが、事業者団体、団体で集まって、団体としての活動について御相談を受けております。右側の令和5年度の数字を見ていただきますと、事業者からの相談が右上、5,727件という数字になっております。すごく大きな数字でございまして、1年間でこれだけ来ているということなのですが、実は多くは優越的地位の濫用に関する相談ということで、中小企業を中心に大企業からなかなか厳しい条件を課されているとか、いじめられているということで御相談なり、逆に大企業のほうから、こういうことをやったら問題になりますかということで御相談いただくことが非常に、特に最近急激に増えておりまして、それが今、5,414件、そのうちの4,788件という数字が優越的地位の濫用、昨年度の数字でございます。

それ以外のものも下に書かれておりますが、団体からの相談が下のほうに183件ございます。昨年度の合計が5,911件ということで、横に見ていただくと、令和元年度の2,000件程度から急激に増えているということが見て分かるかと思います。これは下のほうに書いてありますが、新型コロナウイルスの関係もございまして、企業活動がやや停滞した中で、相談件数も少し少なかったのが徐々に回復してきて増えているというのもございますし、中でもやはり優越的地位の濫用に関するような相談が増えているということがございます。

ただ、優越的地位の濫用は今日のテーマから少し外れますので、それを除いた数字というのは、一番下に赤の白抜きで書いている数字が優越的地位の濫用に関する相談を除いた相談件数の推移でございます。こちらを見ていただきますと、令和元年度の940件から一時期下がっておりますけれども、ここ数年また増えてきているというのが件数の最近の状況でございます。特に増えているのが、最近ですと脱炭素とかカーボンニュートラルを実現するに当たって、単独の企業ではなかなか取組が難しいということで、複数の企業で連携して取組を進めていきたいという相談が増えてきておりまして、その中には競争している事業者間での協業みたいなことも含まれておりますので、少し独占禁止法に気をつけながらやっていきたいということで、相談に来ていただくケースが増えております。

それもございまして、実は私、一番最初のページに書いてございますが、チーフグリーンオフィサーという肩書きを昨年9月にいただきまして、企業の皆様、今日のテーマも同じなのですけれども、基本的には脱炭素のために本当に必要な取組ということであれば独占禁止法で問題となってくることはほとんどございませんので、それを後押ししていくということを対外的にもアピールしていくために、チーフグリーンオフィサーという肩書きでも様々な場所で講演させていただいたり、企業の皆様と意見交換をさせていただいているということをやっております。

続きまして、4ページでございますが、相談指導室の役割について少し全体像を御説明させていただきたいと思います。まずは、当然でございますけれども、上のほうの緑のところから黄色の矢印が出ておりますが、事業者及び事業者団体の皆様から、彼らのやりたいことについて独占禁止法上問題がないかということで御相談を受けるということをやっております。これは直接伺うこともございますし、法律事務所を通して御相談いただくことも多いですし、中には商工会・商工会議所を通じて中小企業の皆様から御相談をいただくといったこともございます。

相談指導室は相談対応をしているだけではございませんで、対応した相談について、先ほども少しお話ししましたけれども、これはほかの皆様にも見ていただきたいというものいついては、事例集というものを毎年つくっておりまして、公表させていただいております。中には個別で公表しているものもございますけれども、毎年6月頃には必ず、年10件程度でございますけれども、事例集を公表させていただいております。それ以外にも、同じような問題点がたくさん出てきた場合には、ガイドラインをつくって、もしくはそれを改定するような形で考え方を皆様に示していくという仕事をしております。それが下のほうの2という青い矢印でございます。

これを公表させていただいた上で、さらに、ここで終わりということではなくて、公表した事例集であるとかガイドラインにつきまして、今度は事業者・事業者団体の皆様であるとか法律事務所の弁護士の先生方とかに説明させていただく機会をいただいて、それを還元して、考え方を御理解いただいているというような形で、それをさらに次の相談に結びつけていただくというようなことを、我々相談指導室のほうで三つ目の仕事の中身としてやっているというのが現状でございます。

今日は、消費者法制度のパラダイムシフトに関する検討会ということでございますので、消費者保護関係の相談事例について三つほど御紹介をさせていただきたいと思っております。それが5ページからの資料の中身になってまいります。

最初の事例は、平成25年の事例集の中の事例6という事例でございますけれども、不動産情報サイトの運営業者による不当表示を排除する取組というものでございます。これは5社の事業者の方々から御相談をいただいた案件でございまして、我が国で主要な不動産情報サイトを運営している5社から相談をいただいたものでございます。彼らがやろうとしたことは、不当表示を抑止したり、一般消費者の被害の拡大を防止するために、不動産情報サイトについて、不動産業者の方々が使う際にルールを定める、処分基準を統一するというようなことをやっていきたいとか、また、ルールに違反した不動産物件であるとか不動産業者の情報を共有することについて独占禁止法上問題とならないかということで、それについて回答した事例でございます。

基本的に事業者の皆様がどのように活動するかは自由であるというのが原則でございますので、それについて何らかのルールを設定することが、場合によっては制限を伴うようなことがあるということですので、それについて5社の皆様は一応心配をされて、公正取引委員会に来た。また、主要なプラットフォームといいますか情報サイトでございますので、そこで何か問題があったときに、その事業者の名前とかを共有すると排除されてしまう、市場から追い出されてしまうことにもなりかねないということで、それが独占禁止法上問題ないかということで御相談に来ていただいたものでございます。

次の6ページで検討させていただいておりますけれども、一応、基本的な考え方はやや堅めといいますか、原則的な考え方を書かせていただいておりますので、今申し上げたような企業が共同で何かを設定するとか誰かを排除するようなことになった場合に、一応、独占禁止法上の問題となる場合があるということを考え方の基本としては書いております。ただ、今回の取組につきましては、不動産情報サイト運営会社5社のほうで不当表示を排除するとか、一般消費者の皆様を守るためにやる取組でございまして、5社の間での料金とかサービスの競争を制限するということではございませんので、基本的に独占禁止法上問題となるものではないということを回答させていただいております。また、その違反した事業者について情報を共有するということで、これも一般消費者への被害が拡大することを防止するための必要な取組でありますので、これについても独占禁止法上問題となるものではないという回答をさせていただいておりまして、実際にこういった取組を進めていただけているということになろうかと思います。

次の事例は7ページ、平成20年の事例5というものでございますが、今度は事業者団体から相談をいただいたものです。これは事業者団体のほうで会員事業者と一般消費者との間で締結される取引契約書であるとかパンフレットにつきまして、使用される用語について、一般消費者にとって分かりやすいものとするために、用語に関する基準を設定したいということで、それが独占禁止法上問題ないかということで相談に来ていただいたものでございます。一見すると全然問題ないのではないかと思われるかもしれませんけれども、事業者の方々は結構、私も日々相談対応をしていますと、慎重に御検討されている方も多くて、念のためということだと思いますが、御相談に来ていただいたものでございます。

この点につきましても、次の8ページで考え方をお示ししておりますが、もちろん表示であるとか説明の仕方、用語の使い方というところにつきましても、事業者の皆様は様々に工夫を凝らして、消費者の皆さんに分かりやすいようにとか、できるだけアピールできるようにということで工夫を凝らしていただいて、競争していただくことが重要であるということが大原則としてございますので、それを制限するようなことについて、どこまでが問題となるのかということで検討させていただいたものでございます。

この件につきましては、当然でございますけれども、消費者の皆さんに分かりやすくということでございますので、サービスについての正しい理解を促すということで、サービスが統一されるようなことではなくて、競争が制限されるようなことではない。また、一部の事業者が差別的に取り扱われるようなこともないということでございますので、独占禁止法上問題となるような取組ではないということを回答いたしまして、やっていただいているというのがこの件の対応でございます。

本日御紹介させていただく最後の事例は次の9ページでございます。こちらはちょっと古い事例ですけれども、平成10年頃の事例ですが、適正なEC事業者に対する認定マークの付与ということで、これも事業者団体から御相談いただいたものでございます。電子商取引の推進団体から御相談いただきまして、商取引の認定マークというものをつくって、一定の基準を満たす適正な事業者に対して、それを付与することで安心して消費者の皆さんに取引していただく取組をしたいということで相談に来ていただいたものでございます。

取組の中身は、9ページに少し細かく書いてありますけれども、事業者の実在・事業活動の存在の確認とか、広告表示・内容の確認等を行った上で認定マークを付すということを団体としてやりたいということで相談に来ていただいたものでございます。

これにつきましても、公正取引委員会の観点から、独占禁止法の観点からは、10ページでございますけれども、競争手段を制限したり事業者の利益を不当に害するようなものではないかとか、差別的なものとなっていないかということを検討させていただきまして、この取組についてもそういった中身にはなっていないと。また、消費者の方々に安心して電子商取引をしていただく環境を整えていくためには必要な取組であるということで、問題ないという回答をさせていただいております。

以上が本日御紹介させていただいた事例でございますけれども、まとめとして申し上げますと、真に消費者の皆さんに安心していただき、そういった皆様を保護してやっていくということで事業者・事業者団体の皆様が取り組まれることというのは、基本的には独占禁止法上問題ないということが多かろうと思います。一方で、中にはそういったものを隠れみのにして、価格を引き上げるとか、サービスの質を下げるというようなこともございますので、そういったものでないということを確認させていただきながら、適切な対応をしていくというのが公正取引委員会における相談対応の課題であると考えているところでございます。

ひとまず私からの説明は以上とさせていただきます。ありがとうございました。

○稲葉室長 それでは、続けて、私、稲葉のほうから、お手元の資料1-2に沿って「公正取引委員会のデジタル分野における取組」、特に冒頭座長からも御紹介いただきましたが、昨年新しい法律ができましたので、これに関連する取組を中心に御紹介させていただければと思います。

まず、資料の1ページ目でありますけれども、デジタル分野の取組と申し上げましたが、基本的にはデジタルプラットフォームをめぐる問題についての取組であります。ただ、デジタルプラットフォームをめぐる問題といったときに、このプラットフォームビジネス自体が何か大きな問題があるのかというと決してそうではなくて、大前提として、こうしたビジネスモデルは社会に多大な便益をもたらすものであるという認識を持っております。つまり、こちらにも記載していますように、このプラットフォームを利用する事業者にとっては、多くの顧客との接点を容易につくり出すことができるという意味において、新たなビジネスチャンスが提供されるものですし、また、このプラットフォームを利用する消費者との関係においても、例えば消費者はお勧め情報などを見ながら、自己のニーズに最適な商品ですとかサービスを容易に選ぶことができるようになりますし、また、多くの場合、安価な価格で商品やサービスの提供を受けることができるという意味において、こうした便益をもたらすものであるというふうに考えているところです。

一方で、右側にも書いておりますように、プラットフォームの特徴として、いわゆる間接ネットワーク効果、これは例えば一方にいる消費者が増えれば増えるほど、多くの消費者に対してサービスを提供できるようになることから、もう一方にいる事業者もどんどん増えていくという相互作用によって、お互いの便益が高まっていくことによって利用者が増えていくというような効果ですとか、それから、特に利用者、消費者にとっては切替えが困難になっていくロックイン効果ですとか、また、規模の経済が働くことによって参入障壁が高くなる。こうした一定の特徴については、一定のシェアを獲得するとより顕著に生じやすくなるということがありますので、さらなる集中が進んで、独占や寡占に至って競争上の問題が生じやすくなっていく、こうした特徴があると考えております。

具体的な公取の取組としましては、2ページを御覧いただければと思います。公正取引委員会というと、独禁法に違反する行為を取り締まるために立入検査などの調査活動を行っている役所であるという認識を多くの方はお持ちかもしれませんが、そうした厳正な法執行による競争の回復とともに、あわせて、実態調査と我々は呼んでおりますけれども、特定の分野について調査を行って、問題行為があればそれを指摘して、事業者における自主的な改善を促したりですとか、さらには必要に応じて、ルール整備が必要であると考えたときにはルール整備に向けた提言を行う。こうした実態調査と呼んでおります活動を通じて、競争環境の整備を行う。こうした二つの取組を相互に連携しながら進めているところです。

このうち特にルール整備につながった実態調査について御紹介をいたしますと、3ページを御覧ください。まず、一番上にも書いていますように、公正取引委員会が実態調査を行った分野として、いわゆるオンラインモール、それからアプリストア、こうした分野について実態調査を行って、特にプラットフォームを利用する事業者との関係で、取引をめぐる透明性ですとか公正性がより確保される必要があるのではないかということで公取として提言をさせていただきまして、その後、政府内でも議論をした上で、いわゆるデジタルプラットフォーム取引透明化法が制定をされました。

さらに、その後、公取のほうでデジタル広告分野の実態調査を行いまして、現在このオンラインモール・アプリストア、さらにはデジタル広告の分野を加えた三つの分野について、透明化法の運用が経済産業省さんのほうで行われているところです。

さらに、一番下になりますが、一昨年、ちょうど2年前、公正取引委員会のほうでモバイルOS等ということで、これはいわゆるスマートフォンのオペレーティングシステム、OSですとか、それからアプリを提供するために必要なアプリストア、こうしたモバイルの世界における競争上の問題を把握するために実態調査を行いまして、この調査の中で、下のほうに書いてございますように、従来、公取はこうした分野についても競争制限的な行為があれば独禁法の執行によって対応してきたところでありますが、独禁法の執行によって対応しようとすると非常に時間がかかってしまうといった課題がありましたので、独禁法の執行による対応を補完するために、法律による制度整備により担保することが有効であると、そうした提言をさせていただいて、これもその後、内閣官房のほうで政府としての議論をした上で、いわゆるスマホソフトウェア競争促進法が昨年6月に成立したところです。本日は、この新しいスマホ新法について幾つか御紹介させていただければと思います。

まず4ページになりますが、先ほども申し上げましたとおり、この法律の立法の背景・趣旨といたしましては、二つ目の

○にも書いてございますが、この市場については、特に新規参入などの市場機能による自発的な是正が困難であるということ。さらに繰り返しになりますが、独禁法による個別事案に即した対応では非常に時間がかかるということから、こうした課題に迅速かつ効果的に対処していくために、この新しい法律を整備したところでございます。一方で、特にスマートフォンに関しては、ユーザーの機微なデータをはじめとして、いろいろなデータを扱うデバイスということでありますので、セキュリティーやプライバシーをしっかりと確保しながら競争を促していくということを基本的なコンセプトといたしまして、そういった競争環境整備を通じて、最終的には消費者がそれによって生まれる多様なサービスを選択できて、その恩恵を享受できるようにしていくと、こうしたことを目的に掲げて立法を行ってまいりました。

この新しい法律の概要を申し上げますと、(1)として記載していますように、まず規制対象事業者については、大規模な事業者を公正取引委員会が指定するということになっております。さらに指定を受けた事業者に対して、一定の行為の禁止ですとか一定の措置を義務づける、これがこの新しい規制の特徴といえるかと思います。

(4)でありますけれども、この指定に関する規定は、昨年の年末に一部先行施行されまして、現在、(2)の規制を含めたその他の規制が今年の年末までに施行されることになっておりますので、この全面的な施行に向けた施行準備を進めているところでございます。

具体的な規定について一つ御紹介いたしますと、5ページになりますけれども、一番上のアプリストア間の競争制限というところを御覧ください。これについては、様々なアプリストア間の競争を促進していくということを目的に、他の事業者がアプリストアを提供することを妨げてはならないといった規定を置いております。と同時に、先ほど申し上げましたように、セキュリティーやプライバシーを確保していくこともまた重要ですので、ただしというところで、セキュリティー、プライバシー、青少年保護等のために必要な措置を講じることができると。こうした制度設計を行うことによって、セキュリティーやプライバシーを確保しつつ、一方で競争環境の整備というこの二つの要請のバランスをうまく取りながら執行ができるような制度としているところです。

次に、6ページを御覧いただければと思います。この新しい法律を今後いかに実効的に運用していくかということが一つの課題であると認識をしておりますが、実効的に法運用していく上では、関係事業者とのコミュニケーションをしっかり取っていくということが重要な点だと考えております。これは、指定を受けた規制対象事業者がこの新しい法律に基づく規制をしっかり遵守しているかどうかというモニタリングをしていく上でも重要ですし、また、この規制に基づいて様々な措置が講じられるということが期待をされるところですが、そうした措置の効果についても、公正取引委員会が検証していく上で関係事業者の声は非常に重要であると考えております。したがって、この関係事業者については、公正取引委員会のほうで積極的にアプローチをして、様々な意見を聞くといったようなことを現在の施行準備の段階からやっておりますが、これに加えて、今後さらにこの法が全面的に施行された場合に、関係事業者が公取に対してちゅうちょなく情報提供していただけるように、例えば公取に情報提供したことを理由とした報復の禁止規定を新法の中には設けたりですとか、また、運用レベルの話になりますが、公取のほうでも、例えばこの新法に対する相談体制を整備していく、こうした取組を進めていきたいと考えております。

最後に7ページですが、もう一つの課題としまして、この新しい法律を規制対象となる事業者において適切に遵守するために様々な対応を取っていただくために、公正取引委員会において、このルールの詳細な部分を下位法令で定めたりですとか、また、具体的な考え方をガイドラインという形で指針として示していくということで、現在検討を進めているところです。

昨年9月から有識者検討会を設置いたしまして、この専門調査会の委員になっておられる石井先生にも我々公取のほうの有識者検討会に参画をいただいて、今まさに議論を進めているところでして、今年の年末に予定しております全面施行に向けて、引き続き下位法令、ガイドラインの整備をしっかり進めていきたいと考えているところです。

取りあえず私のほうからの説明は以上となります。どうもありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの鈴木室長、稲葉室長からの御発表内容を踏まえまして、質疑応答・意見交換をしていきたいと思います。

御発言のある方は、会場では挙手にて、オンラインの方はチャットにてお知らせください。御報告を二ついただいておりますけれども、特に前半、後半と区別せずに、全体として対象とさせていただきたいと思いますので、どの点からでもお願いいたします。いかがでしょうか。

では、河島委員からお手が挙がっておりますので、河島委員からお願いします。

○河島委員 河島と申します。非常に分かりやすい御説明をありがとうございます。

公正取引委員会様は、従来、物やサービスの価格に関して優越的な地位を濫用することを中心に取り締まられてきたと思うのですけれども、無料のサービスと引換えに収集されるデータについてもその範囲に収めるようになってきたということは、デジタル社会に適合した規律のために必要な措置であり、そのような政策の範囲の拡大は非常にすばらしいと考えております。

質問は2点,あります。今回の専門調査会でも、金銭を支払う取引だけでなく、情報、時間、関心、アテンションを提供する取引まで含めて消費と捉えようとしてきております。競争法を所管する立場から見て、消費の概念を拡張するときの難しさや気をつける点などがありましたら、やや焦点のぼやけた質問ではありますけれども、お教えいただければと思います。

もう1点、一つ目の御発表の3スライド目なのですけれども、カーボンニュートラル、脱炭素の相談が増えているということを御説明されましたが、それとは別に令和5年度に優越的地位の濫用に関する相談が一気に増えているということがあります。2倍以上ですね。この理由は何かあるのでしょうか。よろしくお願いいたします。

○沖野座長 2点ですが、いずれからでも自由に取り上げていただければと思います。

○稲葉室長 ありがとうございました。

では、まず1点目のほうから、私のほうから説明をさせていただきます。非常に大きな見地からの御質問、御意見をいただいたと思っておりますが、まさに我々も、特にデジタル分野というのは商品やサービスが無料で取引をされることが多いということもありますので、そうした実態をよく踏まえながら、既存の独禁法ですとか、また、今御説明をしました新しくつくった法律も含めて、しっかりと競争上の問題に対応していくことができるかどうかということから、様々な検討をしてきたところであります。

今、御指摘のありましたように、我々も従来、価格が非常に重要な競争手段の一つでありますので、そこの面にフォーカスされているという印象を結構持たれている方も多いかもしれませんが、これまでも価格だけでなくて、様々な競争手段、これは品質の部分ですとかいろいろと競争手段はあると思いますが、そういうところも含めて競争制限的な行為があれば対応してきたところですが、一つの大きな要素、メルクマールとして考えてきた価格というのがゼロ円で取引されているような問題についても、先ほどおっしゃったような、例えば消費者は無料でプラットフォームサービスを利用することが多いと思いますが、その対価として自己の情報をプラットフォーム事業者に対して提供している関係にあるということが言えるかと思いますので、まさにそうした実態を踏まえながら、我々で言うと取引というような概念を使ってきましたが、そこでどういうふうに対応していくことができるかという検討をしてきたところであります。

簡単ですが、私からは以上になります。

○鈴木室長 続きまして、後半の御質問ですけれども、御指摘のとおり、私からも少し言及させていただきましたが、令和4年度から5年度にかけて急激に、特に優越的地位の濫用に関する相談が増えているところでございますが、いろいろな要因等ございまして、価格転嫁の問題とかがいろいろと騒がれてきた時期にも重なりますけれども、私のほうで把握している皆様に共有できる情報としては、それ以外に実はインボイスの関係でかなりまとまった数の御相談があったと聞いております。優越的地位の濫用に関して、インボイス制度が入ってくる中で、取引先との関係でどういった見直しであるとか、取引条件だとか、契約を切るとかそういったところでの御相談が非常に多く寄せられたと聞いております。

○沖野座長 ありがとうございます。

河島委員、よろしいですか。

○河島委員 はい。ありがとうございます。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、引き続き、石井委員からお願いします。

○石井委員 中央大学国際情報学部の石井です。御説明ありがとうございました。公正取引委員会の検討会のほうでもお世話になっております。私からは、稲葉室長にお考えをお聞かせいただきたい点がありまして、御質問させていただきます。

お伺いしたいのは、消費者の捉え方についてです。スライドの3ページ目からスマホ新法に関する御説明をしていただいているところで、具体的には規制の概要の部分で禁止事項、それから遵守事項が列挙されている。それによって、代替アプリストアが提供されるようになり、サードパーティの決済手段が提供されるようになり、アウトリンクが消費者に提供されるという方向になったときに、セキュリティーやプライバシー、それから青少年保護、その他の正当化事由を目的とする場合には例外が一定程度認められてはいるものの、やはり開放すればするほど危ないアプリが出てきたり、リンク先でだまされてしまうなど、消費者にとってのリスクはどうしても生じてしまうのではないか、トレードオフが発生するのではないかという問題意識があります。

そうしたときに、スマホのインターフェース上で様々な選択肢を提供される消費者の脆弱性をどのように考慮することができるのかという点についてお聞きできればと思います。よろしくお願いします。

○稲葉室長 ありがとうございました。まさに今、委員がおっしゃっていただきましたように、先ほども少し申し上げましたが、今回のスマホ新法によって新規参入者が増えていくことによって、今までこのプラットフォーム事業者の審査などを通じて一定程度維持をされていたセキュリティーやプライバシーのレベルが、様々な選択肢が増えていくことによって低下してしまうのではないかという懸念がかなりこれまでの議論の中でもありましたので、まず一つの方策として、先ほど申し上げたような、この法律の中でも指定を受けた事業者自身が引き続き、例えばセキュリティーの観点から問題のあるアプリストアであれば、それを事前に審査して、場合によってはそのアプリストアを引き続き使えなくするとか、またはそのアプリストアに対して何らかの条件を課すことによって一定程度セキュリティーを保つと、そういった取組は引き続き講じていただくことができるような枠組みにしているところです。

あわせまして、今、委員から御質問のあった消費者の脆弱性というものをどう考えていくかというところに関しましては、我々も選択の機会をつくるだけではなくて、その機会が増えた上で、消費者の方々が、まず何を選択するのかというところからしっかりと認識をするとともに、選択肢が出てきた場合に、それぞれどういったものなのかという情報をしっかりと認識した上で、消費者に合理的な選択をしていただくということが、ひいては競争環境を整備していくためにも重要ではないかと考えております。この法律の中でも、例えば消費者において特に選択の機会が確保される必要の高いものについては、選択画面のようなものを表示して、そこからユーザーが好きなものを選べるようにするということも今後実装していきたいと考えておりますが、そうした画面では、単にサービスの名称だけが記載されるだけではなくて、各サービスについての特徴ですとか、さらにその詳細な説明が、例えばクリックをすると見えるようにするとか、そういった消費者にとって選びやすいような選択画面を表示することも、今後具体的にどういったものが適切であるかということを考えていきたいと思っております。

少し長くなってしまいましたが、消費者に対してしっかり情報提供をしていくということが一つ重要ではないかと考えているところです。

○石井委員 ありがとうございました。もう少しだけ伺ってもよろしいでしょうか。

○沖野座長 お願いします。

○石井委員 丁寧に御回答いただけたかと思います。

今の御回答を伺って、法的に保護されるかどうかは別として、消費者にとっても手間は増えるという結果になるのでしょうか。消費者がいろいろと選択をしなければならなくなってくると、消費者の目線から見た場合に少し面倒に感じてしまうインターフェースにならざるを得ない可能性があるのではないか。そうなると、サービスレベルが下がる可能性はないのか。この点が法的に守られるべきかどうかは、私も答えを持っているわけではないのですが、消費者の観点から見たときには実質的な手間が増えてしまうという印象があります。

また、選択肢を増やすためのインターフェースを整えると、そのための開発にコスト的な面も発生すると思いますが、それは指定事業者が負わなければならないということでしょうか。

○稲葉室長 まず2点目のコストのところは、一定の対応していただくためのコストというのは当然生じてくると思いますが、それについては基本的には指定を受けた事業者のほうで負担をしていただくことになると考えています。

他方で、先ほど私が申し上げた、例えば選択画面の表示に関しては、今後、消費者の選択の機会を特に確保する必要があるものに関して、政令でどのサービスというふうに決めていくわけですが、そんなに多くはなくて、本当に重要なものを幾つかということで、それだけでそんなに多くの対応コストが生じることはないのではないかということと、それから、一つ目の御質問の関連でも、したがって、ユーザーにおいてもそんなに大きな手間が増えるわけではないということは言えるかと思います。一方で、おっしゃるように、例えば選択画面の表示されるタイミングですとか、頻度とか、そういうものによってはユーザーにとっても多少使い勝手は悪く感じられるようなこともあるかと思います。今、日本で導入した法律と同じような規制がヨーロッパでも導入をされまして、昨年の3月から既に本格的な施行が進んでおりますので、ヨーロッパでの実装状況なども見ながら、ユーザーにとっても使いやすいような、選択しやすいような、そうした方法を引き続き関係事業者とも協議をしながら検討していきたいと考えているところです。

○石井委員 分かりました。ありがとうございます。また続きは、公正取引委員会様の検討会のほうでお世話になりつつ、私も考えてみたいと思います。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、加毛委員、お願いします。

○加毛委員 ありがとうございます。東京大学の加毛と申します。本日は、非常に分かりやすく、示唆に富んだ御報告をありがとうございました。

御報告されたお二人にそれぞれ御感触を伺いたいのが、この専門調査会でも以前に話題になった競争政策ないし競争法における消費者の位置づけについてです。

まず、鈴木室長に対する御質問ですけれども、事前相談に対する回答において、ある行為が競争制限的でないことを理由として独占禁止法上問題とはならないという判断を行う際に、当該行為が消費者の利益になるということが、考慮要素としてどの程度重視されるのでしょうか。御報告の最後のところで、「隠れみの」とおっしゃったように思いますけれども、消費者の利益となる行為であっても、それをするために多大なコストがかかるために、新規参入者にとって対応が難しく、結果として、競争者排除の効果を有するという場合も考えられようかと思います。公正取引委員会のお立場から、独占禁止法違反などの判断において、消費者保護がどれくらいの意味を持つのかについて、お話をいただければと思います。消費者の利益になる行為が何ら競争制限的なものでなく、あるいは競争を促進するような場合には全く問題ないわけなのですが、消費者保護と競争政策の目的とが必ず一致するわけではないだろうと思いますので、その点について御感触を伺えればと思いました。

稲葉室長には、まず、新法の分かりやすい御説明をいただいたことに感謝申し上げます。大変勉強になりました。

その上で、御質問したいのが、7ページで、今後検討される内容として挙げられている「正当化事由として認めるべき目的」についてです。正当化事由の判断において、消費者保護がどの程度の意味を有するのかについてお尋ねしたいと思います。消費者にとって望ましいのであれば、それが競争制限的に働くとしても許容されると判断される可能性があるのでしょうか。法定された青少年保護は消費者保護の一環であるのかもしれませんけれども、青少年保護を超えて、消費者にとって望ましいことを理由として、例えば、他の事業者によるアプリストアの提供を制限することが許容されるというようなことが考えられるのかについて教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○鈴木室長 加毛委員、大変重要かつ難しい御質問をいただきまして、ありがとうございます。

まず、競争政策における消費者の位置づけということでございますけれども、先生方、御承知かもしれませんけれども、独占禁止法の第1条の目的には、いろいろと書いてございますが、「公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする」と書いておりまして、基本的に我々の日々の業務は、一般消費者の利益を確保するためということを意識しながら仕事をしておりますので、競争政策において事業者の皆様、事業者団体の皆様から御相談をいただいて、これは果たして一般消費者の利益になるものか、確保できるものかということで検討させていただいているという意味では、最終的に一番重要な基準として考えさせていただいているところかなと思います。

一方で、委員から非常に難しい御質問をいただいたのは、それが隠れみのといいますか、短期的には一般消費者、消費者の皆さんの利益になるようなことであっても、中長期的に競争が制限された結果として参入が阻害されたり、最終的には価格が引き上げられたり、品質が下がったりというようなことも場合によってございますので、そこはなかなか一概にこうしているというのは申し上げにくいのですけれども、事例ごとにそういったところもきちんと判断しながら、そういう意味では競争が中長期的に停止されたり失われるような取組は、いずれにしても消費者の利益にはならないということが多いのではないかと思われますので、たとえ短期的に消費者の利益になるという御説明があったとしても、それが明らかに中長期的に消費者の利益にならないことにつながるということであれば、なかなか認めるのは難しいというのが、なかなか一般化するのは難しいので、事例ごとに判断させていただいておりますけれども、申し上げられるところかなと考えます。

取りあえず私からは以上でございます。

○稲葉室長 2点目の御質問でありますけれども、法律上、この新法の正当化事由として認められるものに関しましては、セキュリティーの確保、プライバシーの保護、そして青少年保護、この三つの観点は既に法律で明記をされております。今後これに加えて、その他必要な目的について政令で追加をしていくということになっていますので、今まさにどういった要素を政令で追加する必要があるかということを公正取引委員会のほうの検討会でも御議論いただいているところです。

この仕組み、制度の基本的な考え方としましては、先ほど申し上げましたように、基本的には競争制限的な行為を規制するものですので、例えば、ほかの事業者によるアプリストアの提供を妨げてはならないという形で禁止行為を定めつつ、一方で、そのほかの事業者によるアプリストアの運営が、例えばセキュリティー上問題であるとか、プライバシーが保護されない、そういった事情が認められる場合には、そうした事業者によるアプリストアの提供を認めなくても、この法律との関係では抵触をしないと、そうした形での正当化事由という規定を設けているところです。

したがいまして、この法律、あくまでも競争環境を整備するための法律ですので、セキュリティー、プライバシー保護、さらには消費者保護も含めて、事業者に対してそうした取組を義務づけるものにはなっておりません。これはあくまでも指定を受けた事業者が、例えばアプリストアの審査などを通じて、自主的にそういうことをこれまでもやられてきたというところを踏まえて、今後も引き続きそういった部分については一定程度担保していただけるようにしているという規律であります。

したがって、消費者保護も含めて、プラットフォーム事業者に委ねるということまでしかこの法律ではできませんので、本来はそうしたことを超えて一定の事業者に全て委ねるということではなくて、必要であれば何らかのルールを、これは競争の観点以外から何らかのルールを整備するといったことが必要なのではないかと思っておりますし、ルール整備以外にも、各省、関係省庁において様々な取組が進められておりますので、そうした関係省庁と我々もしっかりと連携をしながら、このスマホの分野における消費者にとっての安心・安全を確保しながら、競争環境を整備していくという取組を進めていくことが重要ではないかと考えているところです。

○加毛委員 大変ありがとうございました。この専門調査会では、以前に東京大学の滝澤紗矢子先生に、競争法と消費者政策に関するご報告をいただきました。その際に、競争法・競争政策のなかで、消費者の保護がどのように位置づけられるのかが議論になったと記憶しています。

本日は、競争法の実務を運用されているお二人のお考えを伺うことができ、この点に関する理解が深まったように思います。大変ありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

そのほか、よろしいでしょうか。

小塚委員、お願いします。

○小塚委員 学習院大学の小塚です。

今、加毛委員が鈴木室長に御質問になったことと同じことを私も考えていたので、もう少し具体的にお聞きできますでしょうか。今日持ってきていただいた事例で、消費者に対する不当表示を排除することに共同で取り組みました。これが、確かに消費者のためにするというのは、いわば見せかけの理由で、実態はもう競争制限的だという場合には、これは認められないだろうと、このことはよく分かります。そうではなくて、主観的には事業者は、消費者向けにこういう表示をしたほうがよいのではないか、あるいはこういう表示はやめたほうがよいのではないかと言っている。ただ、客観的に見ると、それがあまり消費者保護として有効だと思われないというようなときに、どう御判断になるのだろうと。言い換えれば、隠れみのになっていない場合は、善良な意図というものを正当なものとして認めるのか、それとも、もう少しそこに実質的な審査があって、消費者の利益にある程度なるというところまで公正取引委員会が確認されるのか、そこはどちらのスタンスで臨んでおられますでしょうか。

○鈴木室長 ありがとうございます。なかなか難しい御質問だと思いますけれども、先ほど申し上げたとおり、最終的には事例ごとにどういったものかというのを実際に我々のほうでも検討させていただいて、最終的には担当というよりは委員会、5名の委員がおりますので、その5名の委員が、これは消費者のためになると。我々がいろいろ事実関係とか証拠等を集めて御報告させていただいた上で、御判断いただくということになろうかと思います。

ただ、我々のほうでも、企業のほうでいろいろ、当然ある程度は利益を確保していきながら、また一方で社会に貢献したり、消費者のためにもなるような形でということで取組を進めておられることが一般的かと思いますので、そこは我々のほうでも実際にそれぞれがどういった形で考えているのか、実際どういうインパクトがあるのかというのは、一定の形で御説明をいただいて、事実関係等も確認させていただいて、判断をさせていただきますけれども、本当に消費者のためになっているか、なるのかというところは難しい判断といいますか、即時に判断できるようなこともでないこともあるかと思います。そういったものになってくると、最終的には委員会に判断していただくことになろうかと思いますけれども、とはいえ多くの場合は、ある程度説得的な説明をしていただければ、我々としても十分理解は可能かなと思うのですが、そういうものができるかどうかというところで、場合によっては全く見せかけ、隠れみので、突っ込んでいくとなかなか答えてくれないとかそういうケースもございますので、そういった確認をある程度はさせていただいているということかなと思います。

すみません。なかなか非常に難しい御質問で、お答えできていないかもしれないですけれども。

○小塚委員 すみません。お答えしにくいことを御質問してしまったかもしれませんが、今のお話のニュアンスですと、公正取引委員会としては比較的謙抑的で、隠れみのに使われていないというところの確認がメインである。その上で、本当にといいますか、どれだけ消費者利益に貢献するかという辺りは、それは競争法とは別の次元の話である。必要があれば、消費者政策のようなところで対応してくださいと、ニュアンス的にはそうですかね。先ほどのスマホアプリの話とやや似ているかもしれませんけれども、やはり競争当局としてできることと、より踏み込んで消費者利益を図ることと、何となくそこにはある程度のすみ分けのようなものがあるという感じですね。

○鈴木室長 そうですね。我々は基本的には競争という尺度でいろいろな物事を測らせていただいておりまして、消費者保護ということに関しても、ある種、競争促進的な品質の向上であったり、消費者の皆さんにとっての利便性の向上であったりということで、競争促進的な要素というふうに見させていただいて、競争という尺度でやはり見ますので、どちらかというと競争制限の効果が大きいと、なかなかそれを認めていくのは難しいというようなことにもなろうかなと思いますが、抽象的な議論で非常に難しいところかなとは思っております。

○小塚委員 ありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございます。

お二人とも3時過ぎには御退室というふうに伺っておりますので、時間がないところ恐縮ですが、二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 すみません。御説明ありがとうございました。二之宮です。

近接法分野、隣接分野ということなので、中身の話をお聞きしたほうがいいのかも分かりませんけれども、後半戦も大分いろいろな分野からヒアリングをしてきまして、私の中でルール形成の実効的な在り方というのを何となく大分イメージができてきた中で、今日のお話は、競争法分野の構造と事前相談という仕組みが非常にイメージしやすい、参考になると思って聞いておりました。例えば民事ルールの明確性という点に関して、消費者契約法をはじめとする消費者法分野ではこれまでいろいろな障害になってきました。この専門調査会では、後追いとならないように、時代と社会に即した法目的を達成するためには、ある程度、一定程度抽象化した規定が必要になってくるのではないか、包括規定が必要になってくるのではないかという議論がされておりますし、私もそう思います。

独禁法の分野でも、今回御説明いただいた事前相談というのは、ある意味、要件がギリギリ詰めて明確化されていないからこそ事前に相談して、対話と協議によってよりよい方向へ持っていくという仕組みだと思います。例えば、独禁法の2条9項には不公正な取引方法の定義規定があります。これはかなり明確に書いてあると思うのですが、さらに6号において追加指定ができるという規定もあります。例えば、更に明確性を求められたり、あるいは6号のような追加指定規定がなかったとしたら、どんどん社会が変化していく中で、公正取引委員会として実効的な法目的を達成できるのかと言われると難しいのではないかと思うのです。この点について、実際に法を運用する側として、そこは事前相談でむしろ補完してよりよい方向へ持っていくんだという捉え方でいいのか、確認させていただください。

他方で、事前相談をしたときに、公正取引委員会としたら、市場の画定だとか競争制限がどの程度生じるのかというところはある意味、データ分析的なところもあると思うのですが、消費者の分野でこれまでこの専門調査会では、脆弱な消費者というものをどう捉えるのかという議論をしてきました。ここでは必ずしもデータ分析ではできなくて、消費者とか消費者団体とのむしろ事前相談、事前協議というのがますます重要になってくるのではないかと思います。行政がその場を提供する仕組みというのが公正取引委員会の事前相談の仕組みに通じるものがあるのではないかと考えながら聞いていました。ここは感想です。

さっきの1点目の確認の質問とは別に、事前相談に来る事業者はどういう事業者かと考えたときに、恐らく規範認識の高い、遵法意識の高い事業者だと思います。極悪層と言われています規範意識のない事業者は、まさか事前に相談に来てよろしいですかなんて聞くわけがないので、そこはもう法を適用して処分していくしかないのだと思います。そうではなくて、中間的な、規範意識が乏しいというか、あまり意識していないところに対しては、どのように法目的を守る方向へ促していくのか。公正取引委員会ではここはどういう取組をされているのかというのを教えてください。

あともう1点、資料1-2の3ページのルール整備の時間軸を見ると、すごく速いな、スピーディーだなと感じます。この背景事情として、社会的な要請というだけではなくて、独禁法が基本法としてまずあって、独禁法の改正ではなくて、それを補完する特別法を整備するのだということから、立法事実としてどの分野の何について迅速化を図るのかという点に絞り込めるから、これだけスピーディーに新法ができるのではないかと思って資料を読んでいたのですが、この点はいかがですか。要は、独禁法という基本法がなければ、一からルール整備するとか、あるいは独禁法そのものの改正だとかなるともっと時間がかかるし、大変だとうと思います。その観点からすると、例えば消費者契約法を消費者と事業者の間の基本法としてつくり直す。基本となる法をつくって、その後に補完する法整備をしていくというのが参考になるなと思って聞いていたのですが、先ほどのそういう背景事情としてあるのではないかという点についてはいかがでしょうかという点を教えてください。

○鈴木室長 ありがとうございます。まず私からお答えさせていただきます。

基本的に委員の御理解のとおりかと私は考えております。独占禁止法は、消費者法制度もそうだと思いますけれども、カバー範囲が非常に広いものでございますので、なかなか具体的な、企業、事業者のためにはできるだけ予見可能性を持たせるべきというところはもちろんありますけれども、一方であまりにも特定の基準を設けたりというところは、合う場合、合わない場合が出てまいりますので、法律上はかなり抽象的な規制にならざるを得ない部分があって、そこを補完する形でどうしても相談制度みたいなものが置かれているということはあろうかと思います。

非常に分かりやすい例として一つ申し上げたかったのが、私は途中で申し上げましたけれどもチーフグリーンオフィサーというのをやっておりまして、おととしにグリーンガイドラインというのを出しまして、企業の皆さんに、このガイドラインを見てGXの脱炭素の取組を進めていただきたいということで、できるだけ分かりやすく明確な基準を定めようということで頑張ったのですけれども、一方で、やはり最終的には、幾らガイドラインに落とし込んだ上でも、個別の事例ごとに相談で対応していかなくてはいけないということで、グリーンガイドラインの最後の章は、相談制度についての御案内と、ここにガイドラインを書いてあることでなかなか判断がつかなければ、個別具体的に御相談くださいということを書いておりまして、次の御質問にも関係すると思うのですが、出しておしまいということではなくて、私のほうで、事業者団体であるとか、弁護士の先生方の集まりであるとか、いろいろな機会を捉えてガイドラインの説明と相談制度についての御案内、御説明をさせていただいてきました。委員おっしゃるとおり、中間的な方にちゃんと相談に来ていただくというのはなかなか難しい面があると思うのですけれども、特にグリーンの関係で言うと、炭素をたくさん出している企業の方には個別にアポイントを取ったりして、ぜひ相談に来てくださいと。我々もこういう考え方でやっていますから、安心してやっていただくためには相談に来ていただくことにもメリットがあると思いますので、個別に御説明させていただいたりしながら、相談制度の案内をさせていただいて、できるだけ丁寧に、特にGXの関係は対応させていただいているという状況であります。

それ以外のところでも、もちろん、途中で御説明させていただいたとおり、事例集の解説であるとか講演をさせていただく中で、できる限り相談制度を使っていただけるようなPRもやっているというのが現状でございます。

○稲葉室長 それから、最後の点でありますけれども、時間軸が大変速いといった評価をいただきましたが、例えばこのスマホ新法に関して申し上げると、もちろん喫緊の課題であるということでかなりスピード感を持って検討してきたというのはありますが、公正取引委員会の実態調査というのは、いわば立法事実を積み重ねていくような調査をしているわけですが、これについても1年から1年半ぐらいかかっているというのが実情ではあります。その上で、それと並行して、そういった立法事実も踏まえて、制度的な手当ての方向性について議論をするというのが、資料の真ん中にあります内閣官房のデジタル市場競争会議ですが、これも例えばスマホ新法に関して申し上げますと、2年ほど議論して、令和5年6月に最終報告を取りまとめて、翌年の通常国会に法案を提出したというスケジュール感で進めてまいりました。

御指摘いただいた独禁法が基本法としてあるから、立法が比較的容易だったのではないかという点は、今まで私自身あまりそういった視点で考えたことがなかったのですが、御指摘いただいて、なるほどなというふうに感じたところであります。と申しますのも、我々の実態調査では、基本的にどういった競争上の問題が生じているかということを調査して、その問題が、まずは独禁法との関係でどういう問題になるかという整理をした上で、さらに必要な場合にルール整備に向けた提言をするということで、例えばこの一つ目の透明化法に関して申し上げると、独禁法上の優越的地位の濫用というのがプラットフォーム事業者とその利用事業者との力関係を見ますと非常に起こりやすいということもありますので、そうしたことを未然に防止できるようにするために、例えば取引条件を事前に開示するですとか、そういった取組を通じて取引の透明性や公正性を高めていくことによって、独禁法に違反するような行為を生じにくくする。そういったことを目的として、独禁法で対応できない部分を補完するような形で法整備をしたりですとか、さらにはこのスマホ新法に関しましても、独禁法に類型的に違反するような行為をこの新法の中でも禁止行為として定めていますが、これも先ほど申し上げたように公取のこれまでの審査実務において非常に時間がかかってしまったということがありますので、これは例えば違法行為の立証をより容易にしやすくなるような規定を設けたり、そういうことをやっております。

したがって、やはり独禁法という軸が一つあって、そこで足りないところを補っていくための法整備をしているという意味では、おっしゃるような点というのは多分にしてあるのではないかと思ったところです。

○二之宮委員 非常によく分かりました。ありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

まだ御質問や御意見は尽きないし、私もちょっとお伺いしたいことがいろいろあるのですけれども、お二人には次の御予定があると伺っておりますので、本日の第1パートのヒアリングはここまでとさせていただきたいと思います。

鈴木室長、稲葉室長、貴重なお時間を使って、また、非常に示唆に富む御報告をいただきまして、ありがとうございました。

それでは、どうぞ御退室いただければと存じます。

(鈴木室長、稲葉室長退室)


《2.②有識者ヒアリング (成原慧 九州大学大学院法学研究院准教授)》

○沖野座長 それでは、続きまして、消費者法制度における実効性のある様々な規律のコーディネートの在り方や消費者法制度の担い手の在り方に関連して、情報法を御専門とされ、アーキテクチャと法についても御研究されている成原慧准教授に御意見をお伺いしたいと思います。

成原准教授から消費者法制度におけるアーキテクチャの活用の在り方につきまして、「デジタル社会における消費者保護のあり方」というテーマで20分程度御発表いただいて、それを受けて質疑応答・意見交換をさせていただければと思います。

それでは、成原先生、よろしくお願いいたします。

○成原准教授 御紹介ありがとうございます。九州大学の成原と申します。本日は貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。

私は、先ほど御紹介いただいたように情報法が専門でして、その中でも法とアーキテクチャの関係に注目をしながら、特にプラットフォーム規制であるとかプライバシー、データ保護の在り方、あるいはAI規制の在り方などについて研究をしてまいりました。もちろん消費者法は素人なわけですけれども、最近では情報法と消費者法の接点も大きくなっているということで、今回お声がけをいただいたのではないかと思います。

それでは、次のスライドをお願いいたします。

まず最初に大まかな話をさせていただくと、自己決定とその環境が変容しつつあるというお話からしていきたいと思います。自己決定は、非常に雑駁な言い方になってしまいますけれども、近代法の基本原理とされてきました。例えば民法の基本原理の一つである私的自治や意思自治という理念は、個人が自己決定できる主体であるということを前提にしてきたものと思いますし、例えば行為能力に関する制度というのも、基本的に個人、特に成人は自己決定できる主体であるということを念頭につくられてきたのではないかと思います。あるいは憲法13条の幸福追求権の解釈に基づいて、自己決定権や自己情報コントロール権といった権利が説かれてきたわけですけれども、最近では、ちなみに情報法の世界では自己情報コントロール権への評判は悪くはなっているのですけれども、とはいえ、依然として影響力を持っているということからも分かるように、情報法の世界も含めて、個人が自らのことについて自ら決定できる、自ら何かを選択できるということが近代法の基本的な価値原理とされてきたことは間違いないのではないかと思います。

しかし、私たち個人は真空の中で自己決定しているわけではなくて、何らかの文脈や環境の下で自己決定をしています。これは何もデジタル技術の発展によってそうなったというわけではなくて、もともとそういうところがあるのかなと思います。私たちは周りの空気に影響を受けて何かを選択したり、決定をしてしまうということは珍しくないでしょうし、こういった自己決定というのが真空の中で行われずに、何らかの文脈や環境の下で行われてきたというのは昔からそうだったのだろうと思われます。

しかし、近年の大きな変化として、インターネットをはじめとするデジタル技術のアーキテクチャの設計によって、こうした自己決定の文脈や環境を操作することが容易になっている、あるいはこうした環境をより巧妙に操作することができるようになっています。

次のスライドをお願いします。

特に情報法の世界では、プラットフォーム事業者がインターネットをはじめとするデジタル技術のアーキテクチャを設計することなどによって、利用者らの自己決定に影響を与えることが注目されるようになっています。例えば選択肢をつくり出したり、制限をしたり、あるいは同じ選択肢だったとしても選択肢をどういうふうに並べるかによって、私たちユーザーの行動は大きく左右されるわけです。特に検索エンジンなどを考えてみると、どういう順位で検索結果が出てくるかを決める、アルゴリズムの設計によって、私たちがどういうサイトを訪れるのか、どういった商品を買う可能性が高くなるのかといったことが変わっていきます。これはナッジの理論でよく言われることですけれども、どのボタンにデフォルトが設定されるのかによって多くの人の行動が左右されることになります。あるいは情報をいかに提示するか、いかにシグナルを伝達するかによっても、私たちの行動は少なからず影響を受けることになります。

このようにプラットフォーム事業者は、今日のデジタル社会において、個人の自己決定の前提条件を創出し、あるいは制限をしています。あるいは私たちの自己決定を誘導したり、操作していると言っても過言ではないかもしれません。

次のスライドをお願いします。

こうしたプラットフォーム事業者が取引環境をつくっていることに対して、既存の法制度では十分に対応できていない部分もあるのですけれども、他方で、裁判例の中では、早くからこうしたプラットフォーム事業者が取引環境、あるいはそういった取引の場を設計することに伴う責任を負う可能性を認めてきたものもございます。例えば、これは今からもう十数年前の裁判例になりますけれども、ヤフーオークション詐欺事件において、名古屋地裁は、オークションで落札代金を振り込んだが商品が引き渡されなかった詐欺被害に関し、オークション運営事業者は欠陥のないシステムを構築してサービスを提供すべき義務を負い、義務の具体的内容は、オークションをめぐる社会情勢、関連法規、システムの技術水準、費用、効果、利用者の利便性等を総合考慮して判断されるべきだと判示しています。この事件では、結果としてはヤフーの損害賠償責任は認められなかったわけですけれども、一般論としてプラットフォーム事業者が欠陥のないシステムを構築してサービスを提供するべき義務を負うと判示している点は、今日の取引環境がプラットフォーム事業者によって設計されるデジタル社会における消費者保護の在り方を考える上でも示唆的なのではないかと思います。

次のスライドをお願いします。

こちらの専門調査会では、中間整理を拝読して大変勉強になったのですけれども、中間整理で示されているように、人間の脆弱性という概念に着目して従来の消費者法の在り方を根本的に見直そうという非常に刺激的で注目すべき議論が展開されているかと思います。

一方、私の専門とする情報法の世界でも脆弱性、vulnerabilityという概念は近年様々な分野で注目されるようになっています。特にAI規制であるとかデータ保護といった分野において、規制の根拠としてvulnerabilityという概念が参照されることが多くなっております。

例えば、アメリカの法学者、Daniella DiPaolaとRyan Caloが2024年に書いた論文を紹介します。ちなみにRyan Caloは日本でもロボット法の第一人者として知られている方なのですけれども、彼らもAI規制やデータ保護、あるいはデジタル社会における消費者保護との関係で脆弱性、vulnerabilityという概念に着目しています。彼女らによると、脆弱性とは、人々や集団の力を弱めたり、人々や集団を危害にさらされやすくする状態のことです。こうした他者の脆弱性を自己利益のために利用すべく取られる行為が操作、manipulationと呼ばれています。このことからも見てとれるように、脆弱性であるとか操作というのは関係性に着目した概念だと言うことができます。

これに対して従来の法は、ある人が脆弱性を有するか否かを二値的に扱い、一定の地位に基づくものとして位置づけてきました。例えば未成年者か否かによって保護を受けるかどうかが変わるであるとか、あるいは消費者か否か、労働者か否かによって保護を受けるかどうかが変わるという対応を取ってきました。

しかし、Caloらが指摘するように、私たちは誰もがときに脆弱な存在になり得ます。つまり、脆弱性というのは関係的で、偶然的で、程度の問題なわけです。しかも、今日のデジタル社会においては脆弱性は動的であって、意図的なデザインも含め、他者や環境からの影響を受けやすくなっています。特に彼らはデザインによる脆弱性、Vulnerability by designということを説くわけですけれども、インターネットのインターフェースのデザインなどによって、意図的に私たちの脆弱性が創出されるようになっているわけです。

次のスライドをお願いします。

彼らはこうした議論を踏まえて、社会的デジタル脆弱性という概念を提唱しています。これはどういうことかというと、媒介された環境における個人や集団の決定に関する社会的または構成的な干渉からの影響の受けやすさのことで、これは三つぐらいの種類にさらに分けることができて、決定に関する干渉というのがまずあって、これは消費者の行動を誘導するために認知バイアスや心理的データが利用されることです。次の社会的干渉というのは、意図的な社会環境の操作で、人々やその行動をまねること。先ほど冒頭、従来から周りの空気を読んで私たちの意思決定が左右されることがあったという話をしましたけれども、従来は周りの人々がどう考えているかという顔色をうかがったりして意思決定をすることが多かったわけですが、そうした人間の心理を悪用して、例えばロボットやAIに人間の感情に働きかけるような反応をさせて、それであなたはこうしたほうがいいよと誘導するといったことも行われるようになっています。さらに、構成的干渉と呼ばれる、信念やアイデンティティーの形成への干渉というのも行われるようになっています。

こうした脆弱性も踏まえて、実際にアメリカでは連邦取引委員会(FTC)がデータやAIを利用した消費者の行動の操作・誘導やダークパターンに対する規制を試みるなど、データやAIを用いた操作から脆弱性を有する個人を保護するための規制が試みられてきました。

また後ほど触れますけれども、FTC法5条では、不公正または欺瞞的な行為または慣行が規制されてきたわけですけれども、こうした一般条項を活用して、アプリのデザインなどにおいて不公正または欺瞞的な設計、unfair or deceptive designなども規制の網がかけられるようになっています。

次のスライドをお願いします。

一方、欧州においても、こうした人間の脆弱性に着目してAI規制やデータ保護の在り方を論じる議論が出てきています。例えば、ここで挙げているのはGianclaudio Malgieriという先生の論文ですけれども、私は昨年の夏にブリュッセルで実際にデータ保護のサマースクールに参加した時にこの先生の講義を受けているのですが、Malgieri先生によると、EUのAI法は人間の脆弱性に着目した規制を導入しています。例えば、AI法では許容できないリスクを有するAIを挙げて禁止しているということはよく知られていますけれども、その中の一つとして、年齢、障害または一定の社会的もしくは経済的状況による個人または集団の脆弱性を搾取するAIの販売等が禁止されています。さらに、7条(h)では、将来における高リスクAIのリストの見直しの際の考慮要素として人間の脆弱性が挙げられています。さらに、27条では、基本権リスク評価において脆弱性の評価・軽減が求められております。このようにEUのAI法においても脆弱性はキーワードの一つになっています。

Malgieriは、EUのAI法について、AIの生み出す文脈的・関係的な脆弱性から個人を保護するための規制を導入していると評価しています。彼によると、脆弱性は社会生活における他者への依存による権力の不均衡とそれに伴う危害を受けるリスクの高さのことです。これも先ほどのアメリカのCaloらの議論と同様に、文脈的で程度差のある概念として位置づけられているように思います。Malgieriによると、社会のデジタル化は中毒性のあるソーシャルメディアのアーキテクチャや搾取的な行動データの収集などにより、脆弱性を増幅しています。

次のスライドをお願いします。

さらに、このMalgieri先生は、Niklas先生との共著論文、数年前の論文において、EUのAI規則だけではなくて一般データ保護規則(GDPR)も、データ処理に伴う文脈的で相対的な脆弱性から個人を保護するアプローチを導入していると評価しています。

実は、海を渡ってまたアメリカに戻るのですけれども、アメリカにおいても、データプライバシーの保護の在り方について論じる文脈で脆弱性という概念が改めて着目されるようになっています。

Woodrow HartzogとNeil Richardsというアメリカの代表的なプライバシー研究者が2022年に書いた論文によりますと、個人は自らのデータを収集・処理する事業者に対して関係的な脆弱性を有しています。したがって、こうした脆弱性から個人を保護するために、個人のデータを収集・処理する事業者は、本人に対してデータの収集・処理に関する忠実義務、duty of loyaltyを負うべきだと論じています。具体的には、事業者が個人の脆弱性を利用してデータを収集・利用するデザインを規制する必要性などを説いています。

彼らの議論というのは、近年アメリカにおいて有力になっているプラットフォーム事業者を信託における受託者と同様に、受任者、fiduciaryとして捉える立場と軌を一にしていると言うことができるかと思います。

ちょっと時間がなくて挙げられませんけれども、プラットフォーム事業者にfiduciary dutyを課そうという議論においても、個人がプラットフォーム事業者に対して負っている脆弱性が根拠の一つとして挙げられることが多くなっています。

次のスライドをお願いします。

このように見ていくと、情報法の世界、特にAI規制であるとかデータ保護、プラットフォーム規制の文脈でも脆弱性という概念が注目され、脆弱性から個人を保護するために一定の規制の必要性が説かれるようになっています。そこでは脆弱性が他者への依存として捉えられていて、そして、それは相対的で関係的な概念として理解されているということができます。こうした脆弱性が意味している権力の不均衡の是正のために一定の場面で政府の介入が求められるという議論が展開されています。

しかし、ここでちょっと疑問も出てきます。先ほど脆弱性は相対的で関係的な概念だというお話をしましたけれども、私たちは多かれ少なかれ他者に、しかも多くの場合、相互に依存しています。要は程度問題なわけです。脆弱性が全くない人、主体というのは考えにくいでしょうし、場面によっては、あるいは関係性によっては誰でも脆弱となり得る。そうなってくると、脆弱性がどこまであれば、あるいはどのような依存関係があれば国家が介入すべきなのかということを明確にすることが法的安定性の観点、あるいは予測可能性を確保する観点からも求められるのではないかと思います。さらに、こちらは消費者法の在り方を検討する場だと思いますけれども、他者への依存関係があるとしても、確かに消費者法によって事業者から消費者を保護するということも重要になってくるのですけれども、先ほど公取の方からもお話があったように、例えば競争法によって優越的地位を有する取引相手等から保護をすることも可能ですし、あるいは労働法によって使用者から労働者を保護すること、あるいは個人情報保護法によって個人情報取扱事業者によるデータ処理から個人を保護すること、あるいはAI規制によってAIとの関係で脆弱性を持っている個人を保護するといったことも考えられますので、仮に個人が何らかの保護されるべき脆弱性を持っているとしても、その保護の方法は消費者法だけに限られず、様々なアプローチがあり得るということです。

また、先ほどプラットフォーム規制における信任義務論の話に少し触れましたけれども、こうしたプラットフォーム規制を脆弱性に基づいて行うということも考えられますので、いずれにしろ多様なアプローチが考えられるということになるかと思います。

次のスライドをお願いします。

このことを踏まえて、以下、各論のお話をしていきたいと思います。この専門調査会でも中間整理で示されているように、ダークパターンについても重要な論点として検討されてきたかと思います。ダークパターンは、簡単に言うと、事業者が取引環境の設計等により消費者を自らに不利な判断や意思決定を行うよう操作・誘導することと言うことができるかと思いますけれども、手法としてはナッジに近いところもあります。しかし、ナッジが一般に本人の福利のために行われるのに対して、ダークパターンは事業者の利益のために設計されるという違いがあるかと思います。この点で、ダークパターンは悪い目的を持ったナッジ、スラッジに近いところがあると言うことができるかと思います。

ということで、ダークパターンというのもある種の技術を使っているわけですけれども、ただ、ここで注意すべきこととしては、ダークパターンは必ずしも技術的に高度なものであるとは限らないということです。最近よくアメリカで問題になっているのは、例えばサブスクにおいて、契約はオンラインでできる一方で、解約は電話でないとできないといったことが問題となって、是正が求められるようになっています。あるいはオンラインで解約ができたとしても、解約の手続が複雑で分かりにくいといった事例も出てきています。

こうしたことは、ある意味、素朴な技術を使っているわけで、それでも効果は悪い意味で大きいわけですね。こうしたハイテクだけではなくてローテクによるダークパターンもあるということを念頭に様々な対処の仕方を考える必要があるかと思います。

次の分類の仕方として、ダークパターンには典型的な手法、先ほど触れたような解約は電話でないとできないとかいったものもあれば、次々と先端技術などを用いて編み出されていく巧妙なものもあります。それぞれで恐らく対応の仕方は変わってくるはずで、典型的な手法に対しては、消費者法であらかじめ禁止するルールを設けることが有効なのではないかと思います。

他方で、そうしたものから逃れて、いたちごっこ的にどんどん新しい巧妙なダークパターンがつくられていくことにはどうすればいいかというと、非典型的な手法に対しては、一般条項による対処というのが考えられるかもしれません。先ほども少し触れたFTC法5条では、不公正または欺瞞的な行為または慣行が禁止されているわけですけれども、日本の消費者法でも、もしかするとこうした一般条項によるダークパターンなどへの対処というのが必要になってくる場面も出てくるかもしれません。

次のスライドをお願いします。

次に、プロファイリングに基づくお勧めやターゲティング広告も論点として挙げられていたかと思いますけれども、こうした手法も個人の意思決定の操作・誘導に使われると言うことができます。ただ、ここでも注意すべきこととして、従来のマス向けの広告も消費者を誘導していた面があることは否めません。ただし、プロファイリングに基づくお勧めやターゲティング広告は、個人の特性や選好に基づいて、より巧妙な誘導や操作を可能にしている面があります。その点で消費者の脆弱性をより作出しやすくなっているということで、より規制の必要性が高くなっていると言うことはできるのかもしれません。

ただ、現実に行われているターゲティング広告が実際にどこまで巧妙と言えるかというと微妙なところもあるような気がします。よく学問的な議論においては、プロファイリングに基づくターゲティング広告が私たちを先回りして、私たちの選好や意思形成の過程を操作・誘導していくというような議論がなされて、私もそういうことを言うことはありますけれども、実際に私たちが例えばソーシャルメディアで接しているターゲティング広告には、例えば、私たちの購買履歴などに基づいて、少し前に私たちが買った商品やサービスの広告を延々と見せられる、そういった駄目な広告というのも結構あったりするわけです。これはこれで消費者にある意味で不利益になっているかもしれないわけですけれども、こうした、巧妙なターゲティング広告だけではなくて、粗雑なターゲティング広告についても対処の在り方を考えていく必要があるのかと思います。

また、こうしたお勧めやターゲティング広告は、消費者から収集されるデータに基づいて配信されているわけですけれども、こうしたお勧めやターゲティング広告について何らかの規制が必要だとしても、基となるデータの収集・利用については、既に個人情報保護法や電気通信事業法によって対処できる部分も大きいということも留意する必要があるかと思います。

次のスライドをお願いします。

消費者と事業者の相対化については、これは以前、水野祐先生なども御指摘されていたかもしれませんけれども、シェアリングエコノミーの発展によって、オークションやフリマアプリを通じた不用品の販売を一般の個人が行うことが容易になっています。あるいはライドシェアや民泊を通じて一般の個人も自家用車や自宅のシェアを行うことができるようになっています。あるいは、ちょっと別の文脈ですけれども、ソーシャルメディアではインフルエンサーが台頭していて、YouTuberやVTuberが大きな影響力を持ったり、あるいはXのようなソーシャルメディアを通じてインプレを稼ぐことで収益を獲得しているユーザーも出てきています。このような個人で、消費者に近い立場なのだけれども、いろいろなソーシャルメディアとかを活用して稼ぐ消費者のことを消費者的事業者と呼んだり、Prosumerと呼ばれたりすることがあるわけですけれども、こうした人々の保護の在り方、あるいは規制の在り方をどう考えていくかということも重要な論点になってくるかと思います。

彼ら、彼女らの力が強くなっているところもあるのですけれども、やはり典型的な事業者に比べると脆弱性を有していることが多いようには思います。ただ、どのように保護すべきかというと、競争法、労働法、消費者法、情報法など様々なアプローチが考えられますので、この点も多角的に検討していく必要があるかと思います。

次をお願いします。

さらに、先ほどの公取の方との意見交換でもいろいろと論点が出ていましたけれども、消費者法と競争法、情報法等との役割分担も考えていく必要があると思います。先ほど私が申し上げたことの繰り返しになりますけれども、脆弱性を有しているのは消費者だけではありません。例えば労働者、個人事業主、中小企業、ギグワーカーも脆弱性を有している、あるいは有することが少なからずあります。さらに言うと、ちょっと脱線になってしまうかもしれませんけれども、個人がむしろ脆弱ではなくて、企業との関係、場合によっては大企業との関係ですら個人が強い力を持つ可能性すらあるわけです。逆に言うと、企業が個人、消費者に対して脆弱となる場面というのも、インフルエンサーやカスハラのような場面を考えると、決して見いだせないわけではありません。

このように脆弱性はどこまでいっても文脈的で、関係的な概念と言うことができるかと思います。だとすれば、どこまで法的に保護すべき脆弱性なのかを明らかにしたうえで、そのうち、どこまで消費者法で保護し、どこから競争法、労働法や情報法に委ねるのかといったことも考えないといけないでしょうし、関連する法令とそれらが担う行政機関の間の連携と協調が必要になってくると思います。

次のスライドをお願いします。

これはもう御参考ですけれども、公取が平成元年に出された「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」と呼ばれる文書においては、取引の相手方には消費者も含まれる。さらに、金銭的な対価を払っていなくて、プラットフォームのサービスを利用するためにデータを提供しているだけの消費者も含まれるということで、消費者保護を図るプラットフォームとの関係で脆弱な地位に置かれがちな消費者の保護を図るとしても、消費者法だけではなくて、例えば独禁法の役割とかも考えられるという一つの例になっているかと思います。

最後に、次のスライドをお願いします。

これも御参考までですけれども、個人情報保護法の役割についてスライドを設けています。個人情報保護法は1条で掲げられているように、個人の権利利益を保護することが目的なわけですけれども、個人の権利利益というのは非常に幅広い概念でして、多くの法律が究極的には個人の権利利益を保護しているのではないかとも言えそうなのですけれども、わざわざ個人情報保護法がこういうふうに言っているというのは、個人の権利利益が侵害された後に対処するのではなくて、個人の権利利益、例えばプライバシーを侵されないことであるとか、あるいは不当な差別を受けないことといった権利利益が侵害されないように、そうしたリスクの段階であらかじめ予防する、そのためのルールが個人情報保護法なのだという理解が一般的になっているかと思います。

そのように考えていくと、個人情報保護法で保護される対象である個人と消費者はおおよそ重なるところが大きいかと思うのですけれども、データに起因する個人の脆弱性に伴う個人の権利利益の侵害のリスクがあるとして、そうしたリスクを予防する上でも個人情報保護法は少なからず役割を果たすことができるかと思います。その点でも消費者法でどこまで対処すべきなのか、ほかの法律、個人情報保護法などにどこまで委ねるべきなのかといったことも含めて検討する必要があるかと思います。

駆け足となってしまいましたが、私からは以上とさせていただきます。御静聴ありがとうございました。

○沖野座長 成原先生、ありがとうございました。

ただいまの御発表内容を踏まえて、質疑応答・意見交換をしていきたいと思います。

先ほどと同じように、御発言のある方は、会場では挙手にて、オンラインの方はチャットでお知らせください。どの点からでも御自由にお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

石井委員、お願いします。

○石井委員 ありがとうございます。

成原先生、御報告ありがとうございました。非常に勉強になりました。いろいろお聞きしたいことがあるのですが、時間の関係もありますので、端的に2点ほどお聞きできればと思います。

まず1点目です。後ろのほうの消費者法と競争法、情報法等の役割分担のスライドで、御指摘のとおり企業が個人に対して脆弱となる場面も見いだせるかもしれない。どこまでいっても脆弱性というのは文脈的、関係的な概念というのはおっしゃるとおりだと私も思いました。そこから先のところで、だから消費者法で保護し、競争法、労働法、情報法にどこまで委ねるのかという議論につながっていくのかというところ、その点についての理解を改めてお聞きしておきたいと思います。

どういうことを伺いたいかといいますと、消費者側が必ずしも脆弱とはいえない場面においては、消費者側がどちらかというと不法行為を行う側というような位置づけになると。そのような場合は、消費者を守る消費者法や、労働者を守る労働法はそもそも出てこない場面になると思います。ここで議論しているのは、あくまで個人である消費者が弱い立場に立つ場面において、競争法、労働法、情報法などの保護がどの程度求められるのかという議論なのだろうと思いました。その辺の理解について正しいかどうか確認させていただきたいというのが1点です。

それから、もう1点、役割分担が本当に必要かどうかというのも、改めて考えてみても良いのではないかと思っています。今日はいろいろな御論文を御紹介いただきましたが、プライバシーハームに関する有名な文献の中にも、自己決定、自律性が侵害されるというカテゴリーが一つのハームになっており、それは消費者法が守ろうとしている消費者の合理的な意思決定と共通する性格を持っているのではないか。その場合、規制すべき方向性は対立しているわけでもないですし、重なってもいいということになるのではないか。問題は、執行が重複して事業者に過剰な制裁を課すことがないように調整すればいいということなのかと思いますが、その辺りの協調、連携、それから役割分担が本当に必要なのかということですね。

例えばFTC法は、競争法、消費者保護、それからプライバシー保護の役割も担っており、FTCの執行事例も蓄積されている。そういうアメリカのような世界と比べると、日本はどうしても行政法が多いということもありやはりどの法律がどう適用されるのかということに意識が向きがちではありますが、法の在り方の考え方を見直したときに、仮にFTC法的な法令があるとすると、日本においてうまくワークするのか。この辺りの考え方の変化、そうした法の方向性を見いだすことができるのかどうか、その辺りも可能な範囲でお聞かせいただければと思います。お願いします。

○成原准教授 石井委員、貴重な御質問をいただき、誠にありがとうございます。

まず1点目については、先ほど時間がなくて駆け足で話していたこともあって、私の論理展開が粗雑になっていたところを補足してくださりありがとうございます。御示唆いただいたように、二つのステップに分けて検討する必要があるのかと思います。まず、脆弱性が相対的で関係的な概念であるということも踏まえて、実際にある場面において個人が企業など他の主体との関係で脆弱かどうかということを判断する必要があると思います。脆弱性が深刻であれば法による介入・保護が必要になるわけですし、そうでなければ必要ないということになるのかと思います。逆に、脆弱性がないどころか、他者との関係でむしろ脆弱性を搾取しているような場合については、個人に対しても何らかの規制が必要かもしれません。

その上で第2段階のステップとして、仮に個人が企業など何らかの主体との関係で脆弱性を有しているとすれば、その脆弱性を手当てするために消費者法でアプローチするべきなのか、労働法でアプローチすべきなのか、独占禁止法でアプローチすべきなのかという手法論、手段の選択というのが出てきますので、このように2段階に分けて検討する必要があるのかと思います。

次に、第2の質問ですけれども、個人の自律的な意思決定を保護すべき場面があるのだとすれば、そうした場面は消費者法からも保護すべき場面だし、データ保護の観点からも保護すべき場面とも言えるのではないかというお話だったかと思いますけれども、私もおっしゃるとおりだと思います。ある場面において、保護法益というか、守るべき価値のようなものが重なりあってそれぞれあるのだとすれば、規制が重なっていて、重畳的に適用されることがあったとしても、それはあり得るのではないかと言えるかと思います。ただ、規制が重複して事業者にとって過大な規制になったり、あるいは消費者にとって分かりにくいものとならないように調整は必要になってくるのだろうと思いますけれども、一定の場面において規制が重なり合うということは十分考えられるのかなと思います。

石井委員から御指摘があったように、確かにアメリカのFTC、さらに根拠となっているFTC法というのは、日本で言うと競争法であるとか、消費者法であるとか、データ保護法といった様々な役割を担うものになっています。日本の場合は、もっと分化されているところがありますので、そこはそうした相違も踏まえて検討していく必要があるのかなと思います。

先ほどFTC5条のような一般条項を日本でも導入する可能性はあるのではないかということを申し上げましたけれども、そのまま持ってくるのではなくて、やはり日米の法体系の相違を踏まえて、取り入れられる部分を検討していく必要があるのかなと思います。

取りあえず以上となります。

○石井委員 ありがとうございます。執行機関がきちんとしないとFTC法のような法令は動かすことができないというようにも思います。

私があまりお時間を取ってもいけないので、私からは以上です。ありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、室岡委員、お願いします。

○室岡委員 ありがとうございました。私からは1点質問がございます。

プラットフォームにfiduciary dutyを課すという点について欧州などで議論されているというのは非常に重要な議論になりうると思います。具体的な議論をもしご存じでしたら、御教示いただけますと大変助かります。

○成原准教授 ありがとうございます。

確かに欧州でも議論されているのですけれども、主にプラットフォームとの関係でfiduciary dutyが議論されているのはアメリカになります。アメリカにおいては、先ほども少し紹介しましたけれども、個人がプラットフォーム事業者に対して自らのデータを提供したり、預けたり、あるいは自分の発信したコンテンツの管理、モデレーションを委ねたりしているといった意味で、プラットフォーム事業者に個人が依存するようになっています。このように個人がプラットフォーム事業者に依存して、プラットフォーム事業者に脆弱性を負うようになっていることを踏まえて、プラットフォーム事業者は本人の利益に反しないように忠実に振る舞うことが求められると説かれるようになっています。具体的に言うと、個人のデータをしっかり機密として守る必要があるとか、あるいは不当な目的で使わないとか、あるいは本人に対して利益相反となるようなことをしないとか、そういったことが求められるという議論が有力になっています。

これは英米においてもともと信託法の積み重ねがあって、その中でfiduciary dutyという概念が発展してきましたので、こうした伝統的な概念をプラットフォームという新しい対象に適用しようとしているという背景があるのと、欧州などと比べてアメリカは行政法などによるプラットフォーム規制が進んでいないところもありますので、そうした伝統的な法理を借りてきて、プラットフォーム規制の発展を何とか促そうとしているというところがあるのかなと思います。

○室岡委員 ありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございます。

では、大屋委員、お願いします。

○大屋委員 慶應義塾の大屋です。御説明ありがとうございました。2点ほど伺わせていただきたいと思います。

一つ目は、特に非典型的なダークパターンへの対応としてFTC法5条のような一般的条項が有効ではないかということは御示唆いただいて、それはそのとおりだと一方で思うのですけれども、Sunsteinの論文なんかを読んでいますと、単に一般条項があるというだけではなくて、その権限とか規則の解釈権を行政庁が非常に強力に有している。シェブロン判決自体は昨年7月に覆されてしまいましたけれども、そこまで広範でなくても、やはり自分が何をできるかに関する強烈な解釈権を持っているのは、このような一般条項が機能する背景として指摘できるのではないかと。これは先ほどの公正取引委員会さんの御報告に対する二之宮委員の御指摘とも軌を一にするところがあるのではないかと思うのですが、その点についてお考えを伺いたいというのが1点です。

もう一つは、今の話にも出てきたtrustというか、fiduciary dutyの話です。HartzogとRichardsの別の論文を読んだときだったと思うのですけれども、これは確かに脆弱性が一方にありますねという指摘はしているのですが、それだけではなくて、まさに事業者のことを信じて個人情報を託しているという意味において、財における信託と類似の構造があるということとか、その託された情報を利活用して事業者が利益を得ているとか、あるいはさらに言うと、そこで信頼を保護することによって個人情報の利活用が促進されるので、ぐるっと回ると事業者自身にも利益になるよねとか、そういった様々な理由が挙がっていたと思うのですけれども、そういうことでよかったですかねという、これは確認的な御質問です。よろしくお願いいたします。

○成原准教授 大屋委員、御質問ありがとうございます。

まずは非典型的なダークパターンに対して一般条項が有効だとしても、一般条項が機能するためにはエンフォースメントを担う機関が強力な解釈権限などを有していないといけないのではないかという御指摘はおっしゃるとおりだと思います。実際にFTC法5条は非常に抽象的な文言でできておりまして、こうした抽象的な規定を今日のデータやAIなどの文脈で何が不公正に当たるか、何が欺瞞的に当たるのかということを直ちにそこから抜き出すのは、事業者にとっても消費者にとっても困難なわけです。

そこで実際に、特に、Lina Khanが委員長の時代にFTCは様々なガイドラインやスタッフレポートを出すことによって、その解釈指針を示してきたところがあります。解釈指針を示す際には、ステークホルダーと対話をしたり、様々な研究成果を生かして解釈の明確化、具体化を図ってきたところがあるかと思います。ですので、仮に日本でこうした一般条項を導入するとしても、先ほど石井委員がおっしゃったこととも重なりますけれども、それを担い得るだけの強力な執行機関、エンフォースメントのための機関が必要になるでしょうし、そうした機関には強力な権限とそれを裏づけるような専門知を担うような人材とリソースをつけていくことが必要になってくるのではないかと思います。

2点目の御指摘もおっしゃるとおりでして、確かにHartzogやRichardsの議論を読んでいると、脆弱性だけに基づいてプラットフォーム事業者の義務というのを基礎づけているわけではなくて、消費者が事業者に対して与えている信頼であるとか、あるいは事業者が消費者のデータを活用して利益を得ていることなど、様々な要素を考慮してそういった規制を正当化しているところもあるかと思います。

実際にこの専門調査会の中間整理を拝読していても、脆弱性という概念だけから直ちに規制の必要性を説いているわけではなくて、実際にそれぞれの場面において消費者の意思決定にどういう影響があるのかとか、あるいはどういうリスクが生じているのかとか、そういったことも考慮しながら規制の在り方を検討していく必要があるというふうに説かれていたと思いますので、私も脆弱性という概念は、問題を発見するためには有用だと思うのですけれども、それだけに寄りかかって具体的な規制を導き出すというのは限界もあると思いますので、他の正当化根拠も考慮しつつ、脆弱性概念の意義と限界を見極めていく必要があるのではないかと思います。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

そのほかいかがでしょうか。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 二之宮です。御説明ありがとうございました。

13ページ、14ページについて質問させてください。言葉の問題かも分からないのですが、13ページの3ポツで、どこまで消費者法で保護し、どこから競争法や労働法、情報法に委ねるのかと書かれています。その後、関係行政機関の連携と協調が必要だということが書いてあります。ここでタイトルとしては役割分担ということが書かれておりまして、連携と協調はそうだろうと思います。対象がほぼほぼ重複してきている部分、先ほどの公正取引委員会の話も何で競争法と消費者法が分かれているんだろうと思うぐらい、ほぼ一緒ではないかと思っておりました。連携と協調といったところで、やはり必要になってくるのは、対象がほぼ似通っているので、情報をどう共有するのかというところが連携と協調の要素だろうなと考えているのですが、その前提として、先生は3ポツで、どこまでが消費者法で、どこからが他の法でと、やはり一定の役割分担というものを想定されていると思います。ここでは明確な区分けではなくとも主としてどこが担うのかということをお考えになっているのか、あるいはそれはやはり法によってデマケというか、線引きというのがないと、行政機関なんだからというところで一定の線引きは要るだろうということを前提にされているのか。あるいはこれだけ対象がほぼ重複しているのだったら、役割分担といっても、デマケというよりも重複している部分について、どこがどう担っていくのかという階層的な役割分担を考えられているのか、ここら辺のイメージを少し教えてください。

○成原准教授 御質問ありがとうございます。

私からも取りあえずの問題提起のつもりで雑駁なことを申し上げたので、まだそこまで詰めて考えられていないのですけれども、さしあたりはそれぞれの行政機関の役割であったり法令の及ぶべき範囲は、組織法や根拠法に基づいて判断されることになると思うのですけれども、立法論まで含めて考えると、そもそもどの機関がどれくらいの専門知識を持っているのかとか、あるいはそれぞれの法律の本来目指している目的は何なのかということに立ち返って、改めて、例えば労働法、消費者法、経済法、情報法の間の役割分担の在り方を見直していく余地というのはありうるのかと思います。

そこまでのことができるのかどうかというのは私もよく分からないところがありますけれども、いずれにせよ、やはり他の法分野、法領域の動きというのを意識しつつ、まさに先生がおっしゃったように適宜エンフォースメントの事例を情報共有して、他の法分野や他の行政機関は何をしているのかということを常に意識しながら、フィードバックを得て、自らの役割を見直していく必要があるのかなと思っております。

○二之宮委員 ありがとうございました。私もこれからまたもっと考えてみようと思うのですけれども、これまでの議論の中で、ヒアリングで何度か出てきたのですけれども、やはり重複を恐れない、重なり合いを恐れないということをもって議論してきたところがあり、その延長線で考えていたところなので、また違う視点で何かヒントをいただけないかと思って質問させていただきました。ありがとうございました。

○成原准教授 ありがとうございました。

○沖野座長 ありがとうございました。

そのほかの点はいかがでしょうか。

よろしければ、少し細かい点になるのですけれども、室岡委員あるいは大屋委員から御指摘いただきましたfiduciary dutyについて少し教えていただければと思います。非常に興味深い点で、消費者についていえば、消費者が自分の非常に重要な情報を信じて託しているというところにfiduciaryということで、duty of loyaltyというのをその情報の管理ですとか利活用に課していくというか、提供された情報を自由にできるわけではないのだというのをそこにかけていくということなのかと思ったのですけれども、二つ疑問があります。一つは、信じて託しているというところから、trustですとかfiduciaryの関係を導くということなのですが、恐らく消費者は信じて託していないのだろうと思われます。つまり、出させられているとか、知らずに出させられているというような状況であって、それをfiduciaryであって利活用等において忠実義務が課されるというのは、今までは入口の問題が非常に問題ではないかと言ってきたところがあって、それに同意をかけるかとかいう話をしていたと思うのですけれども、逆に、fiduciaryということによって、その部分を少し隠してしまうというか、問題の性格をシフトさせる意味合いがあるようにも思いました。

一方で、同意については、同意が実効的なのかという、みんなクリックでやってしまうということもありまして、もっと内実のほうが大事ではないかという指摘もこれまでございましたので、そちらに目を向けるべきだという御指摘なのかなとも思ったのですけれども、主眼がどこにあるかということです。

そして、内実ということになったときになのですが、fiduciary dutyということになりますと、duty of loyaltyというので、あくまで消費者の情報を消費者のために管理し、あるいは利活用していくという、あくまで消費者のためなのだというのがこの仕組みの中で合うのかどうかということが一つあります。それから、仮にfiduciary dutyなどで言われるduty of loyaltyをかけていきますと、消費者の利益のためにということなのですけれども、その利益のためにというのが、ここでいえば受任者に当たる事業者が自分の利益のために使っていいのかということについては、基本的には使ってはいけないのだけれども、本人の同意があればいいと、本人の承諾によるのだという考え方と、本人のベストインタレストになるのならば、その承諾はなくても使えるのだという考え方がduty of loyaltyについてはあると思うのですが、本人の同意があれば利益相反的なこともできるというのは、透明性確保というのがここでの意義だということになるのですけれども、結局また同意になるということで、問題がちょっとめぐってしまいそうな気がします。

一方で、ベストインタレストになるならいいんだという、消費者のベストインタレストを考えるんだということになりますと、ベストインタレストとは何かということで、逆に、これで社会全体がよくなって利便性も高まるから使っていいでしょうとか、第三者に提供していいでしょうとか、そちらに向かう危惧もありまして、duty of loyaltyという議論をされることの主眼がどこにあるのか、どういう内実を持っているのかということについて、さらに御教示をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○成原准教授 御質問ありがとうございます。

確かにアメリカにおいてプラットフォーム規制の制度化根拠としてfiduciary duty論であるとか、duty of loyaltyの概念が盛んに唱えられるようになっているのですけれども、先ほど紹介したHartzogとRichardsも含めて様々な論者が議論を展開するようになっておりまして、論者ごとに依拠する論拠が少しずつ違っていたりします。さらに、先ほど大屋委員との質疑の中にも出てきましたけれども、同じ論者であったとしても、時期や論文によって若干姿勢が違う、ニュアンスが違うところもあったりします。あるいは一人の論者がfiduciary dutyを基礎づけるために複数の論拠を持ち出してきていることもあります。

ですので、必ずしも実定法のレベルで固まっているわけではまだなくて、学説を中心に議論されているところが大きいですので、共通のコンセンサスみたいなものは必ずしもないわけですけれども、まさにおっしゃったような消費者が事業者に対して信頼してデータなどを託しており、それに応えて一定の義務を負うのではないかという議論は核として説かれることが多くなっているのではないかと思います。

ただ、他方で、今まさにおっしゃったように、そうした個人の信頼であるとか期待といった主観的なものに依拠してしまうと、実際は多くの消費者はプラットフォーム事業者をそんなに信頼していないし、期待もしていない。むしろ知らないうちにデータを出させられてしまっているのではないか。そうした場面では、信頼とか期待に依拠した保護というのはなかなか広がりにくいのではないかというのはおっしゃるとおりで、私もかねてより似たような問題意識を持っておりました。

その意味で、先ほど紹介したHartzogらの論文において、もちろん信頼という側面はあるのですけれども、それだけではなくて、人間の脆弱性という客観的な側面にも着目して、そうしたところから事業者の本人に対するduty of loyaltyとかfiduciary dutyを導いていこうという議論にも有望なところ、説得力のあるところがあるのではないかと思います。

ということで、fiduciary dutyの内実、根拠は何かという御質問に対しては、必ずしも一義的なものをこれだということで答えることは難しいのですけれども、信頼や期待のような主観的なものだけではなくて、まさにこの会議でも議論されているような人間の脆弱性のような客観的な側面も考慮して事業者が消費者に対して負う義務の在り方を検討していく必要があるのかなと思います。

その上で、プラットフォーム事業者が消費者から得たデータをどういう場面で使ってよいのかという点については、あくまでも本人の利益のために使わないといけないということが原則だったとしても、事業者が自分のビジネスのため、自社の利益のためにも使ってよいのかどうかについては、結果として本人のベストインタレスト(最善の利益)に仕えるならばいいのか、あるいは同意が必要なのといったことが問われているということで、これもなかなか論争的なところではあるのですけれども、先ほどの客観か主観かという話に関わってくると思うのですが、恐らくそのいずれかだけに依拠して議論するというのはちょっと限界があるのではないかと思います。客観的な側面と主観的な側面を両にらみしながら、事業者がどこまでデータを使ってよいのか統制していく必要があるのかなと思っております。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、そのほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

では、予定した時間でもございますので、この辺りで今回の議論を切り上げたいと思います。

成原先生におかれましては、大変貴重な御知見をいただきまして、誠にありがとうございました。

また、委員の皆様におかれましても、活発な御議論をありがとうございました。

それでは、最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。


《3.閉会》

○友行参事官 長時間にわたりまして御議論いただき、誠にありがとうございました。

次回の日程につきましては、確定次第、お知らせいたします。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりくださいまして、ありがとうございました。

(以上)