第9回 消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会 議事録

日時

2024年8月21日(水)13:00~14:36

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

出席者

(委員)
【会議室】
沖野座長、大屋委員、小塚委員、二之宮委員、野村委員
【テレビ会議】
加毛委員、河島委員、室岡委員
(オブザーバー)
【会議室】
鹿野委員長
【テレビ会議】
大澤委員、山本(龍)委員
(消費者庁)
【会議室】
黒木消費者法制総括官、古川消費者制度課長、原田消費者制度課企画官、消費者制度課担当者
(事務局)
小林事務局長、後藤審議官、友行参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    前半の検討テーマについて②
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1. 開会》

○友行参事官 それでは、定刻になりましたので、消費者委員会第9回「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」を開催いたします。

本日、沖野座長、大屋委員、小塚委員、二之宮委員、野村委員には会議室にて、加毛委員、河島委員、室岡委員はテレビ会議システムにて御出席いただいております。

本日、所用より山本隆司座長代理、石井委員は御欠席との御連絡をいただいております。

消費者委員会からは、オブザーバーとして鹿野委員長に会議室にて、大澤委員、山本龍彦委員にはテレビ会議システムにて御出席いただいております。

配付資料は議事次第に記載のとおりでございます。

一般傍聴者にはオンラインにて傍聴いただき、報道関係者のみ会議室で傍聴いただいております。議事録については後日公開いたします。

それでは、沖野座長にここから議事進行をよろしくお願いいたします。


《2.前半の検討テーマについて②》

○沖野座長 ありがとうございました。

本日も暑い中ですが、どうかよろしくお願いいたします。

早速でございますが、本日の議事に入らせていただきます。

前回の会議におきましては、これまでの議論について中間的な整理をする方針といたしまして、資料1の「1.消費者が関わる取引を幅広く規律する消費者取引全体の法制度の在り方」のうち、①消費者法制度における“脆弱性概念”の捉え方、②「客観的価値実現」((取引環境・取引結果の)安全な状態の確保)の位置付けを中心に議論をいただきました。さらに、残りの時間におきまして、③金銭の支払いに限られない消費者取引の拡大(情報、時間、関心・アテンションの提供)への対応の在り方についても、途中までではありますが、議論を進めることができました。

本日はその続きと、残る「2.デジタル化による技術の進展が消費者の関わる取引環境に与える影響についての基本的な考え方」を中心に御議論をお願いしたいと存じます。

その際ですけれども、前回御議論いただいたテーマにつきましても、本日の御議論と関係する点もあり得るかと思いますので、必要に応じて御意見をいただければ、あるいは前回に必ずしも出てこなかったけれども補足としてというようなことでも結構かと存じます。

前回も申し上げたことなのですけれども、これまでの議論全体を振り返りまして、まだ議論が足りていない論点があるということでしたら、その点もぜひ御指摘をお願いしたいと思います。場合によっては追加のヒアリング等が必要であるという御意見もあり得ると思っておりますので、そのようなお考え、御指摘がありましたらお願いいたします。

本日のテーマも相互に関連するものではございますが、議論の対象を分かりやすくするために、1の③、前回途中まで入っていただいたところですが、それをやってから次に2という順で進めていきたいと存じます。

まずは1の③金銭の支払いに限られない消費者取引の拡大(情報、時間、関心・アテンションの提供)への対応の在り方について御議論をいただきたいと思います。既にこのように一括して取り扱うことが適切なのか、情報とそれ以外で分けるべきではないかという御指摘などもいただいているところではございますが、資料1を基にまた御検討いただきたいと思います。

御発言のある方は挙手にて、また、オンラインの方はチャットでお知らせいただきたいと思います。

では、1の③についていかがでしょうか。

野村委員、お願いします。

○野村委員 前回、最後のほうで対応の在り方のところにある生活者に広げてという議論があったかと思います。そのときに、私は生活者に広げるということがとても当たり前に感じていたので、何でなのだろうと思っていました。ここに書いてある消費者は「非事業者」性にとどまらず、生活空間における主体である「生活者」として「消費者」を考えていくことが必要であるというのは本当にそのとおりだなと思うのですが、私たち事業者から考えていくと、だからこそ消費というか金銭が伴わないデータやプロファイルをもらったりするのがそれが商売になっている世界なので、事業者にとっては消費を伴わない中で事業の利益が成り立っている構造になっていると思います。

そういうふうに捉えていくと、法制度において消費者を生活者まで広げるというのはひとつニュースな感じがありますが、これを守っていく事業者にとってそういうことを言われたときには、逆に自然に感じると思います。いつもの事業活動の一環と同じ感覚になるので、そんなに特別なことではないのかなと思います。もしかしたら法律を考えている人と事業から見ている見方が少し違うのかなと思いましたので、発言させていただきました。

○沖野座長 ありがとうございます。

生活者の点は前回も御指摘いただいて、消費者概念と生活者概念とか、それを広げるということが一体どういうことなのかという御指摘をいただきましたので、まさにそれを補完するとともに、事業者から見たときの新たな指摘をいただいたと思います。

この点に関してでも、あるいはそのほかの点についてでも、1の③に関しましていかがでしょうか。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 二之宮です。

6ページの対応の在り方のところで、最初のマルに消費者取引として自覚的に捉えていくことが必要である、取引として位置づけるべきだということがコメントとして残されております。この点に関連して、第4回の会議の際に、石井委員からアテンションエコノミーの広がりは消費者の自律性をどこまで維持するのかが論点だという御指摘がありました。同じく石井委員からは、ターゲティングについては収集された情報の利活用の進展によって、個人情報の問題、消費者保護の問題、競争法の問題、ひいては社会全体の問題に発展するという御説明もありました。

第5回において、山本龍彦委員からは、自らのアテンションや時間をどう振り分けるのかというのは重要な価値を持つという御指摘があり、それは被害・損害として捉えるべきではないかという御説明がありました。

先ほどの資料の対応の在り方には、取引というところはコメント、言及がされておるのですけれども、時間や情報、アテンションの収集、利活用というのは消費者の自律性の確保というものに関連する問題であるとともに、利活用を段階的に場面ごとに切り取った場合は、確かに何の問題かと分類することはできるとは思いますが、利活用の流れは一連のものですから、被害・損害の中核的なものが経済的な損害と現行法は位置づけており、そこは変わらないと思いますが、消費者の自律性の維持だとか消費者問題や競争法の問題が発展する元となる情報などは、デジタル取引においては単に取引としてだけではなくて被害・損害と捉えた上で後半の議論につなげる必要があるのではないかと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

今御指摘いただいた点からさらに展開してあるいは関連してでも、それ以外の点でも、そのほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

小塚委員、いかがですか。お考え中のように見受けました。

○小塚委員 小塚です。

今考えていたのですけれども、二之宮委員がおっしゃることは気持ちは分かる反面で、例えば損害とはどう考えるのだろうとか、つまり、そういうプロファイリング、そういうデータ処理をされなければ、消費者あるいは生活者はこういう選択肢も見られたかもしれない。それによって違う取引ができたかもしれない。それを損害として評価するのは大変だろうということを考えていたというので、賛成でも反対でもないのですが、立法化するときにどうしたらよいかというのはすごく感じたところです。

先ほどの生活者の話もそうで、これも趣旨としては賛成で、むしろそういう発言をしたような気もしますけれども、他方で、これは定義を書くとなると大変だと。生活をしている者というのでは何の定義にもならないので、そう考えていくと、法的にどう絞り込んでいくかというのは今後よく考えないといけないと思っていたところです。

当たり前のことしか発言できていなくて申し訳ありません。

○沖野座長 いえ、いずれも非常に重要な点だと思います。

では、加毛委員、お願いします。

○加毛委員 ありがとうございます。資料6ページで、先ほど野村委員から「消費者」を「生活者」としてとらえるのは当たり前のことであるとの御発言がありました。私は、資料6ページにおいて、最初のマルにおいて「金銭ではなく情報、時間、関心・アテンションを提供する場合も「消費者」「消費者取引」としてより自覚的に捉えていくことが必要である」と指摘されていることが、法的に重要であると考えています。

規制法の分野では、対価を支払って商品・サービスを得るという有償契約性に着目して、規制対象が規定されることがよくあるように思います。例えば、SuicaやPASMOなどについて、資金決済に関する法律(資金決済法)では、前払式支払手段として規制の対象とされています。前払式支払手段は「対価を得て発行される」ものと定義されているため、無償で与えられる決済手段は前払式支払手段ではないことになります。その結果、例えば、現在、社会において広く決済手段として利用されている様々なポイントについては、それが対価を得て発行されるものではないことを理由として、前払式支払手段に該当しないものとされ、資金決済法の規制が及ばないことになっています。

しかし、なぜサービス利用者がポイントを付与されるのかといえば、それは利用者が「情報、時間、関心・アテンションを提供する」からである場合も多いだろうと思います。そうすると、ポイントの付与にも、ある種の有償性を認めることができるのではないかと思われます。このような観点から、資料6ページの指摘は、消費者取引を超えて広い波及効果を持つのではないかと考えられます。

消費者契約法に関していえば、消費者契約が「消費者と事業者との間で締結される契約」と定義されるので、有償性・無償性を検討する必要性は正面に出てこないのかもしれませんが、それ以外の法律については、これまで無償だから規制の対象にする必要はないとされていたところについて、今後は、情報等の提供という対価の存在を根拠として、規制の必要性を正当化する可能性があるのではないかと思われます。以上、コメントを申し上げました。

○沖野座長 ありがとうございました。

大屋委員、お願いします。

○大屋委員 先ほどの小塚委員の御発言あるいは今の加毛委員の御発言とも関係するところなのですが、しばらく前に景品表示法が問題になったときに、景品表示法では要するに事業者が供給する商品または役務というものが対象となっているところ、いわゆる買い取りサービスがこれに該当するかどうかということが問題になったわけです。つまり、買い取りサービスにおいては、商品は市民の側から事業者に流れているわけであって、これが商品提供とは言えないだろうと。買い取りサービスという役務を提供しているのではないかという意見が出て、場合によってはそういうふうに言えなくもないのだけれども、それを言ったら、古本屋の店頭に持ってきた本を顧客から買うのも買い取りサービスという役務の提供だと言ってしまっていいのかというような話で、結構もめた記憶があります。

なぜこうなっているかというと、要するに現行消費者法の立てつけが、物にせよ、役務にせよ、事業者から消費者に流れる。それはもちろん消費者というのは消費をする者とされているから、そちらの側に物なりサービスが流れていくのが当然だという発想で書かれているからだと思うのですが、今、加毛委員がおっしゃったように、逆向きに流れているものがどうもありそうであると。しかし、それはやはり事業者と消費者の間の非対称性の一環として考えて差し支えないというのがここでの問題点だろうと思うと。なので、多分タームとしては消費者というものを使い続けることになるのでしょうが、それを消費の側面で定義づけるのではなくて、やはり事業者と対極にあり、事業者との間で金銭なりサービスなりアテンションなりを行ったり来たりさせているような相手方なのだという形で定義していくことになるのかなと思いました。

○沖野座長 ありがとうございました。非常に明確にしていただいたと思います。

そのほかに御意見、御指摘は。

鹿野委員長、お願いします。

○鹿野委員長 言うまでもないことかもしれませんけれども、1点だけ付け加えて申し上げたいと思います。消費者法分野に属すると言われる法律にもいろいろなものがありまして、消費者契約法はもちろんですけれども、特定商取引法も消費者法分野の重要な一つの法律と整理されてきたところです。御存じのとおり、特定商取引法で捉えられている取引の多くは有償性を前提にしておりますので、そこにおける有償性、これは従来のものを念頭に置くとお金を出してというような形で捉えられてきたと思うのですが、果たしてお金を出すということだけでよいのかということなどが具体的には問題となってくるのではないかと思います。特に通信販売に関する規律などは、デジタル化が進んだ中で問題となるものだと思います。

それから、ついでに申し上げますと、特商法には訪問購入も一つの取引類型として置かれていて、これは今までと異なる例外で、消費者がお金を払う場面ではなくて逆に、消費者のほうが物を渡してお金を事業者が払うというものです。これについても、トラブルの多かった類型として取り上げられているところです。

ただ、特商法は、御存じのとおり、いわゆる消費者トラブルが多い取引類型を具体的に取り上げて、それに関するルールを設けているというような格好なので、対象は狭いのですけれども、今も言いましたようにかなりトラブルが多いところについて、それに対処するための重要なツールをもった法律ですので、これは後半になるのかもしれませんけれども、具体的にそういうところの手当ての在り方というところにもつながってくるのかと思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

大澤委員、お願いします。

○大澤委員 大澤です。

私も一言だけ申し上げたいのですが、今の先生方のお話を聞いていて本当にそのとおりだと思ったのですけれども、あともう一つは、この③のところに関連して言いますと、先ほど加毛委員がポイントのことをおっしゃっていましたが、ポイントを付与するというときにも、お店が直接ポイントを付与する場合と、例えばグルメサイトあるいは旅行サイトのようなプラットフォーム事業者がポイントを付与している場合とか、いろいろなものがありまして、要するにこういう取引が拡大しているというときに、従来だと消費者と直接契約関係にある事業者というのが例えば消費者契約法などでも5条を除けば念頭に置かれていると思うのですが、ここでの事業者というのも消費者から見て複数の主体があり得るというところに留意する必要があるように思いました。もしかすると、これはこの後のデジタル取引拡大のところでもまた触れられる話なのかもしれませんけれども、事業者が例えばプラットフォーム事業者というのもありますし、それこそ例えば個人情報を扱っている業者、個人情報を扱う専門業者とか、消費者から見ると対峙する相手としていろいろな場で事業者が増えているということに、この消費者取引の拡大の一つの影響と言うのですか、その点が現れているのではないかということが言えると思います。

あとは、今、鹿野委員長から特定商取引法の話が出ておりましたが、今回まとめていただいたことはどれも本当に非常に勉強になる、全くそのとおりであるという新しい視点を示していただいたということで、私自身、個人的にも非常に勉強になるのですが、これを例えば法制度にどのように落とし込んでいくかというときに、今、鹿野委員長もおっしゃっていましたけれども、例えば訪問購入というのは、従来だと訪問販売ですと、言うまでもないことですが、消費者が買い主になる側だったところ、訪問購入というのは消費者が売り手になってしまうということで、従来の訪問販売と違うというところで、これは特定商取引法で対処したということになります。

今後、特定商取引法を消費者法でどう活用していくかというのは一つの消費者法の在り方かもしれませんが、ただ、新しい消費者取引が拡大しているからといって、特定商取引法に何か追加していくというだけでは恐らく済まない段階になっているのではないかと個人的には思います。なので、これは前回の専門調査会で申し上げましたが、例えば生活者という視点とか、あるいは消費者がアテンションを提供しているという消費者側も何か金銭以外のものを提供しているという新しい視点を法制度にどのように落とし込むかというときに、従来は例えばいわゆる悪質商法の類型が増えれば特定商取引法で対処するということをしていたのですが、そういう状況ではなくなっているということがひとつ言えるのではないかと思います。言うまでもないことかもしれませんが、一応確認として申し上げたいと思います。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

鹿野委員長、お願いします。

○鹿野委員長 一言だけ付け加えさせてください。

先ほど特定商取引法の話をさせていただきましたけれども、私も個人的には特定商取引法の規定を何か少し変えればそれでよいというような考えを持っているわけでは決してございません。やはりここでやっている議論というのはもっと大きな広がりを持つ議論でございまして、ただ、先ほどの話は、あくまでも従来の法律というところを捉えるとこういうことになっていたということで、それで今後どうするのかということについては、またより広い視野を持って考えていかなければならないと思っている次第です。

○沖野座長 ありがとうございました。

大澤委員、お手が挙がっていますけれども。

○大澤委員 鹿野委員長の御趣旨をそういう趣旨で取ったわけではありませんでしたので、全く同じではないかと思っております。大変失礼いたしましたというおわびをしたくて手を挙げさせていただきました。

○沖野座長 いえ、明確にしていただいてありがとうございました。ご指摘によってまさにより明確になったと思います。

そのほかにはいかがでしょうか。

1の③については御指摘、御意見をいただいたということですので、一旦ここまでとさせていただきたいと思います。

簡単にまとめますと、前回既にいただいた御指摘もございますが、今回いただいた御指摘を中心に申し上げますと、まず6ページで書かれている現在の消費者というものの非事業者性に特に着目するという点ですとか、あるいは消費をする主体であるということで着目していくとか、あるいは経済的な出捐、特に金銭を出して商品、役務等の提供を受けるものであるといったのでは少し狭過ぎる、ビジネスが展開してきていて、そうすると、消費者や消費者取引というのを金銭の支払いにまさに限られないものにも目を向けていく必要があるということでした。

生活者として行動する主体という中で、アテンションを提供させられるとか提供している主体というのが一つの見方ではあるのですが、これについては、事業者から見た場合にはビジネスとしては違和感のないところであるという御指摘がありました。既にビジネスとして展開しているということの裏づけでもあろうかと思います。

しかしながら、それを法制度にどういうふうに接合していくのかということになりますと、例えば具体的に生活者というようなことを定義していくのは非常に難しい。むしろ趣旨とか考え方として消費者や消費者取引を捉えるときには、従来型の典型例ですとかやや狭い捉え方ではない形で捉えていくことが求められるということと理解しました。

そういうことなのですけれども、既に特商法におきましては、例えば訪問購入の場合のように、消費者が物品を提供して事業者が金銭を提供するというようなものが出てきているわけなのですけれども、また、通信販売はデジタル化の進展とともに従来ない問題を生んでいるということは特商法でも一部取り入れられているわけなのですが、特定商取引法自体はまさに特定の商取引方法に着目して、特にトラブルが多いものについて個別に規律を設けるという対応になっているけれども、そういう個別対応ではもはや済まない状況になっており、より普遍化したといいますか、より一般的にこれを捉えていくことが必要であろうという指摘がされました。

その際に、消費者、消費者取引という点とともに、有償性、無償性という概念についても改めて検討しておく必要があるだろうということです。無償、有償というときに、特に金銭を中心に経済的な対価を得て提供を受けているのかということが論点だったわけなのですけれども、必ずしもそれにとどまらない。従来であれば無償とされたものが実は広い意味での有償であるということも見てとれるというわけで、有償、無償、あるいはそれによって切り分けるのかということを含めて法制度の中では検討していく必要があるということでした。

それから、有償、無償あるいはアテンション、あるいは情報の提供ということを考えたときに、情報の提供あるいはアテンションの提供を誰が受けているのかとか、誰が引き出しているのかということを考えると、従来の相対的な直接の事業者ではない様々な事業者が関わっている。前回、石井委員からもプラットフォーム、プラットフォーマーについて特に関心を寄せるべきだという御指摘をいただいたと思いますけれども、そういったプラットフォーマーも一つですし、あるいは個人情報についての管理者というか、提供を受けて処理をする主体というのもありますし、そういう事業者の複層化もアテンションですとか情報というものを消費者が提供している、あるいはそういうものが消費者取引に出てきているということは、他方で、どちらが鶏でどちらが卵かという問題はありますけれども、事業者の複層化ということにもつながっているので、それにも注意をする必要があるという御指摘をいただきました。

具体的なこれまでの法制度の中での問題としては、景表法の具体例ですとか実例といいますか、立法をしていくときの一つの例としてそういった御経験も含めて御紹介いただいたと思います。

それから、法制度において捉えるというときには、情報、時間、関心・アテンションというのを消費者が提供するということが、特に無意識のうちに提供しているということがあって、それ自体は消費者の自律性の確保の問題であるし、また、それを提供させられているというのは、むしろそれ自体を消費者被害として捉えるべきだという御指摘がありました。6ページの最後のところでは、人格的価値ですとか意思決定の確保といった点も踏まえ、規律を整理していくということなのですが、その具体例としてこういったものを消費者被害として捉えていくということも御指摘いただいたところだと思います。

その際になのですけれども、それをさらに法制度に持ってくるときに、例えば損害賠償ということだとすると、権利や利益の侵害はあるのかもしれないけれども、その場合の損害をどう捉えるのか。慰謝料なのかとか、慰謝料だったら幾らだというようなこともありますので、やはり法制度としてそのときに本当に損害賠償ということで動くのかというようなことも考えていく必要がある。そのときに損害はどういうものが出ているのかといった問題も提起されました。

それから、特に情報の問題ですけれども、利活用の状況、段階によって異なる種類の問題が出てくる、あるいは分類ができる。分析は従来このヒアリングの中ででも、あるいは委員プレゼンテーションの中でも御指摘いただきましたが、それはそれとして重要なのだけれども、一方で一連として捉える。そういう視点も重要で、一連として捉えた上での被害というような捉え方もあるという御指摘をいただきました。それらを追加してまたまとめに入れていくということになるかと思います。

既にこの問題自体は実はデジタルの問題へと関わっていきますけれども、それでは、1の③につきましてはこれぐらいにさせていただきまして、次に2のデジタル取引のほうです。「デジタル化による技術の進展が消費者の関わる取引環境に与える影響についての基本的な考え方」について御意見をお願いしたいと思います。

これは特徴の分析・具体化と場面の整理等があるのですけれども、かなり関連しておりますので、①、②に分けずに一括して対象として御指摘をいただきたいと思います。

これまでと同様、御発言のある方は挙手、それから、オンラインの方はチャットないし、または挙手機能でも結構かと思いますけれども、それでお知らせいただきまして御発言をお願いしたいと思います。

大きな2についてということになります。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 二之宮です。

前回の第8回のときに、消費者取引全体の法制度の在り方における脆弱性の捉え方の議論がありました。そこでは脆弱性は多義的ではあることと共に、類型的なものとか、状況に応じたものとか、いろいろな脆弱性があるということに関して議論がされました。

このデジタル取引の場面においては、類型や状況に限らず、誰もが持っている脆弱性というところが狙われる、攻撃される、侵害されるというところがやはり特徴だろうと思います。この特徴の源は何かと考えたときに、やはり取引環境の設計、デザインをプラットフォームを含めた事業者側が行っている。だから、誰もがその設計された環境での取引においては脆弱性が狙われるという形があるのだろうと思います。

取引環境を設計しているということと、第4回の石井委員のいろいろな進展していくというところで考えると、競争法の問題だとか公正な取引環境というところにもつながっていく問題だと思います。そうすると、事業者が行う取引環境の設計、デザインというものの在り方にルール整備が必要になってくるというのは当然だろうと思います。

そうしたときに、この脆弱性が侵害されたとき、狙われたときに、消費者自身は侵害されている、何を取引したのか、どういう被害に遭っているのかということに気づかないのみならず、第三者もなかなかチェックすることが難しいという点を捉えるならば、ルールの実効性をどう確保していくのかというところが後半の議論において大切になってくるのだろうと思います。ルールの実効性というのは、要は違反したときの措置をどう考えるかというところですので、被害救済も含めた措置をどう検討していくのかというところが後半は非常に重要になってくると思いました。

もう一つは、誰もが持っている脆弱性を侵害される。脆弱性というものがデジタル取引において考えると理解しやすい。形として要件だとかいろいろ考えやすいということにもつながってくると思いますので、デジタル取引のルールを考えるときに、過度にデジタル取引に限定して適用するのではなくて、そこで見えてくる脆弱性に対する対応というものはリアル取引にも応用できる、活用できると思いますから、これはデジタル取引だからこうだと切り分け過ぎない。フィードバックできるような形でルールづくりを検討する必要があると思いました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

では、河島委員から御発言の希望がありますので、先に河島委員からお伺いしたいと思います。

○河島委員 ありがとうございます。河島です。

消費者庁様にまとめていただいた資料は前半の議論のすばらしいまとめになっており、改めてとりまとめに感謝申し上げたいと思います。

言うまでもないことかもしれないのですけれども、スライド8などの内容に加えて、既に法制度で対応している悪質通販サイトについても多少であっても言及してもらいたいのに加えて、これも行政として対応されているとおり、ソーシャルメディアで有名人をかたって詐欺を行う事例やステルスマーケティング等、インターネット上であるがゆえに真偽や宣伝か否かがかなり分かりにくくなっている例が増えておりますので、そういったことについても言及したほうがよいのではないでしょうか。つまり、スライド8に「情報・選択の機会・選択肢の過多や取引の複雑化により単独で情報を十分に吟味し、判断することが困難になっている」と書かれているのですけれども、それだけではないのだろうと思うのです。

2010年代のAIは、データの認識・識別・分類が特徴で、それが監視資本主義や注意経済に結びついていったわけですけれども、御存じのように2020年代のAIは生成が特徴になっており、偽情報や誤情報が蔓延して、それらが消費者を取り囲むようになっていくと思います。その辺りについて、目配りの利いた文言を追加したほうがよいのではないかと思った次第であります。

また、スライド8には海外の事業者や悪徳事業者を念頭に置いた文言がありますが、スライド11の法制度が果たすべき役割の箇所では海外事業者や悪徳事業者を念頭に置いた文言がないので、当たり前のことなので書かなかったかもしれないのですけれども、念のため法制度が果たすべき役割としても記述しておいたほうがよいのではないでしょうか。海外事業者や悪徳事業者に対してはハードローできちんと対応すべきことが多いでので、ここでも書いておいたほうがよいのではないかと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

それでは、関連する点についてでも、あるいはそれ以外の点についてでも、いかがでしょうか。

小塚委員、お願いします。

○小塚委員 今、河島委員も御指摘になりましたが、海外事業者との関わりがますます促進されるという点は本当に大きな課題で、それをデジタル化が推進しているという面がありますので、それはしっかり受け止めていく必要があると思います。

これを分析していくと実は幾つかの面があって、一つは、デジタルプラットフォーム自体が、日本の事業者のプラットフォームはあるのですけれども、海外事業者のものが比較的多いということ。それらの中には、日本の事業者であれば考えられないような究極のダークパターンのような手法を用いているようなものすらあるということです。

二つ目は、デジタルプラットフォームを使うことによって海外から有形の商品が入ってくる。この場合は、最終的には有形の商品なのですけれども、それが個人輸入などの形で気軽に入ってきてしまうという問題がある。この場合も、要するに商品の売主であったり製造者であったりが国外にいるということで、今までの消費者行政の枠組みで対応していなかったとは申し上げませんが、目をつぶってきたというか敬遠してきた面があるのだと思うのですけれども、それはやはりしっかりと取り組んでいかなければいけない。

それから、三つ目のパターンというのは、プラットフォームでもなく、有形商品の売主でもなく、無形のサービスなりソフトウェアなりの提供者として海外事業者が出てくる。それがさらにプラットフォームに乗って提供されたりするというようなことでして、実際上はサービスの提供者が日本国内に拠点を持っていないというようなこともあるのではないか。しかし、日本の消費者は、生活者かもしれませんが、それを使ってしまっているというようなこともあって、そういうものにどう対応していったらよいのかということもやはり考えていかなければいけない。これは一方的措置として何かできることがあるかというのもあれば、執行共助のような形で関係国の消費者当局と協力して、場合によっては刑事当局と協力してアクションを取らなければいけないということもあるだろうということで、そのようなことについて積極的に考えていく必要があると思っております。

○沖野座長 ありがとうございます。

海外というのは、消費者取引を取り巻く状況の変化の中で常に国際化というのが大きく言われて、国境を越える取引の進展というのはずっと言われて、しかしながら、なかなか決め手がないということでもあったのが、デジタル化によって一層拍車をかけているという面があろうかと思います。

今、小塚委員が言ってくださった三つの分類のうち、②と③なのですが、②が有形の商品が入ってくる。③が無形のサービス提供だということなのですけれども、海外から無形のサービス提供がある場合もある。二つ目の類型はやはりデジタルプラットフォームを使ったというところに区別があるのでしょうか。それとも、有形か無形かというところで区別があるのでしょうか。

○小塚委員 有形か無形かはやはり大きいと思うのです。というのは、有形の商品というのは最終的には何らかの形で物理的に消費者の手元に届けられなくてはいけないのです。消費者は日本在住ですから、そこには何かの手がかりがあるわけです。もっと言ってしまうと、ヨーロッパなどは、デジタルプラットフォームで売り買いするときにパッケージングなどを行って出してくるサービス、日本の消費者法は今あまり注目していませんけれども、ヨーロッパなどはそうしたフルフィルメントサービスに注目して、売主が国外でつかまらないのだったら、それをつかまえようということをしていますね。無形のサービスの場合にはそれすらないわけです。

○沖野座長 ありがとうございます。より明確になったと思います。

大屋委員、お願いします。

○大屋委員 今の小塚委員のお話にも関わってくることでもありますが、もう一つの違いとして、有体物というのはやはり無形物の場合と比べて我々の社会になし得る害というものの種類が違っている。典型的にはモバイルバッテリーが爆発するといった形で、直接的な加害が発生するのが有体物の場合であり、無形物の場合はもちろんアテンションを取られるとか、場合によってはお金を巻き上げられるとかといったことは起きるわけですが、直接的な加害に至ることは比較的まれであるということになる。

比較的まれと言って若干ごまかすのは、スタックスネット事件以降、やはりデジタル上のものとフィジカルのものを完全に分離することはできない。スタックスネットというのは、イランの核燃料精製工場がサイバー攻撃を受けて暴走させられたというもので、幸い機械の停止で止まったので、それ以上の問題は起きなかったのですが、このようにサイバー空間を通じて現実世界に何らかの影響を及ぼすことがもはやあり得るということになっているというところから、両者は完全には分断できないのだけれども、相対的に違っていると整理したほうがよろしいと思います。

この点は二之宮委員の先ほどの御指摘とも重なっていて、取引環境の設計によって顧客にある種の誘導をかける、誘引をかけるということ自体は、広く言えば現実空間でも既になされている。つまり、圧縮陳列をすると顧客は一定の行動を取るようになるみたいな典型的なパターンですけれども、我々の業界ではそれをアーキテクチャーの権力と呼んできたわけですが、空間設計による我々の行動の誘導が現実空間では限定的に可能であるのに対し、サイバー空間ではかなり強く効くというような相対的な区別なのだとは整理したほうがいいだろうと思います。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

それでは、それ以外の点などいかがでしょうか。今まで御指摘いただいた点についての補足等でももちろん結構ですけれども、よろしいでしょうか。

野村委員、お願いします。

○野村委員 先ほども話にあったのですが、事業者側が取引環境を設計、デザインするというのが前提になっている中で、10ページにいかに健全性を確保するかが課題となると書いてあります。1番目のマルのところは、本当にそのとおりなのですが、健全性とは何なのかというところがやはりきちんと分かってこないと、事業者側が設計している以上、きちんとつくれないなというのをすごく感じております。この健全性とは何なのかという辺りが私はこれを読んでいて非常に気になった点でございます。

○沖野座長 ありがとうございます。

まさに、何をするかですけれども、大屋委員、お願いします。

○大屋委員 事業者の方の観点だとまさにそのとおりだろうと思われる一方で、多分これはある種の控除説に立って考えるしかないだろう。つまり、典型的な不健全性というものを考え、不健全性が生じていないことをもって一応の健全性だと考えるということになるというのは、別の言い方をすると、要するに取引環境に若干の色合いがついているということは非常によくあることであって、それを全て我々が問題にするべきでもない。消費者も通常の場合にそのようなバイアスとか色合いが生じているということは大体理解しており、それを差し引いて物事を理解するという能力を通常は持っている。

つまり、よく挙げられるのは、ステルスマーケティング規制の根拠だったわけですけれども、宣伝ですよと書かれているものについては、その真正性について若干の割引をして理解するのに対し、ステルスはそれを表示しないから誤認を生じさせるのだということだったわけですよね。

そうすると、ある程度まではそのようなバイアスを理解する判断能力が消費者に備わっているということを前提に、しかし、それを超えるような過度の誘導であるとか、今のステルスマーケティングのように、その判断の根拠を故意に隠蔽するようなものについて典型的な非健全性とリストアップしていって、それはやめてくださいという形で判断をお願いすることになるのかなと個人的には思いました。

○沖野座長 野村委員、お願いします。

○野村委員 おっしゃるとおりだとは思うのですけれども、不健全性はどんどん新しいことをしていくというのが一般的なことなのかなと思っています。かつ事業者はダークパターンの場合は本当にマーケティングという名の下にどんどんダークになっていくということもあると思います。そういった中で、今あるものは不健全ですよというのが言っていけると思うのですけれども、どんどんこれから発生するであろうものに対してはどう対処していくのかというのは、やはり後追いにしかならないのですか?というのが今お話を伺っていて単純に疑問に思った点でございます。

○沖野座長 ありがとうございます。

不健全性という点から考えていても、不健全性というのをどうピックアップするかということで、既存のものについてはこれと言えるけれども、これからのものをどのくらい縛るのかと。確かに難しいと思います。不健全性をただピックアップするときにも、本当にピンポイントというよりは、もう少し抽象的な考え方として、例えばまさにステルスマーケティングのときに、これ自体はアドバタイズメント、宣伝でやっているということを明らかにするとすると、どういったものがそのカテゴリーに入るのかというのはいろいろあり得るし、その発想というのはあるかと思いますけれども、ただ、抽象化と具体化の兼ね合いが難しかったり、全く新しい手法が出てきたりするとどうするのかという問題がありますので、適時の取引の進展に対して対応していけるような仕組みというのは、あるいは事業者だけで考えるということではなくて、事業者、消費者あるいは第三者を含めた機関の中でガイドラインを考えていくとか、いろいろあるのかと思います。新しい取引に対応していくための仕組みというのもあるかと思いますが、大屋委員。

○大屋委員 まさにそこが問題になったのがこの専門調査会の第2回あたり、カライスコス・アントニオス先生がおっしゃった話の辺りだと思っていまして、EUの場合にはもちろんリストアップもするのだけれども、やはり新しいものに対応するための一般条項があって、ばくっとそこで捉えられるようにできている。ただ、それは逆に言うと、事業者さんの観点から言えば予測可能性が低下しているということでもあるので、そこのバランスが難しいことにはなってしまう。端的に言うと、やはりそこはいたちごっこを受け入れるか、若干の不透明性があるけれども弾力的に対応できるというところを取るのかという合意形成の問題になってくるのだろうと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

鹿野委員長、お願いします。

○鹿野委員長 同じ趣旨なのですけれども、やはり技術が発展してきて、それで新しい手法が出てきたときにピンポイント的に捉えるということにはかなり困難があると思うのです。今、第2回のときのカライスコス先生の御発表に関する言及を大屋委員からいただきましたけれども、恐らく本日の資料でいうと、11ページの下から2番目のマルで書かれているように、やはり対症療法的な手法ではどうしても対応できないので、ある程度包括的な考え方というのをまず整理して、しかし包括的なものだけだとやはり事業者さんとしてはどこまでか分かりにくいというところがあると思いますので、それを中間的にでも、あるいはさらに具体化できるところは具体化していってというような形でのルールのつくり方というのが求められるのではないかと思います。大屋委員の御意見に同感ですという趣旨です。

○沖野座長 ありがとうございます。

小塚委員、お願いします。

○小塚委員 小塚です。

先生方がおっしゃることと矛盾するつもりはないのですが、この資料の9ページで、消費者が気づかない間に不利な判断・意思決定をするよう誘導する、いわゆるダークパターンという話が出てきます。これとの関係で不健全なものとはどういうものかということを言っていくのは比較的分かりやすい、包括的にも分かりやすいし、フォローアップしていくことも分かりやすいだろうと思うのです。

ところが、野村委員が御指摘になった10ページのところというのはプロファイリングに基づくレコメンデーションとかターゲティング広告、この健全性というのが何かというのは私は非常に難しいと思っています。これは取引環境を設定する側も消費者というか生活者にとってそのほうがよいと思って設計をして、レコメンドなりターゲッティングをしてくるという面もある。それが不健全だというのはどういうことなのか。ターゲティングが判断能力の劣った人だけをターゲティングするようなことがあれば、それはまた明らかに問題かもしれませんけれども、そういう場合を除くと、これはかなり難しいのではないか。もちろん社会全体として、ある種の民主的なプロセスの中でこういうことはやめてくださいというコンセンサスが成立すれば、例えばずっと政治のニュースを見ている人に、政治関係の本ばかりをレコメンドするのはやめてくださいと。そういう人にこそむしろ犬とか猫の写真とかをレコメンドして心を落ち着かせてくださいといったことが社会的にコンセンサスが得られればそれはよいと思いますが、そうでないとすると、今の話のどちらが健全かというのはなかなか判断できないのではないかと思いますので、とりわけこのページについては、私は非常に難しいのではないかと思います。

もう一つは、事業者との関係で言うと、仮に包括的な規制に基づいていろいろなプロセスで何が不健全かを決めていくとしても、その場合のサンクションの在り方ですね。後から不健全だと言われたことが非常に厳しいサンクションにつながったり、あるいは社会的に非難されたりということがあまり効き過ぎると、事業者側に非常に強い萎縮効果が出てしまうので、そういうことをするのであれば、サンクションは懲罰的なものではなくて、とにかく不健全だということにしたので今後はやらないでくださいと止めるという形のサンクションにしていく。そういうこととセットで考えていくことが必要かなと感じました。

○沖野座長 ありがとうございます。

二之宮委員、お願いします。

○二之宮委員 二之宮です。

今の小塚委員のお話とも関連して私も考えておったところで、分かりやすい一線を越えた問題というハードローで縛れるという問題と、そうではない問題とがやはりあるのだろうと思います。

10ページの健全性というところについて、事業者側が悩むのはそれはそうだろうなと思うのは、健全、不健全というよりも、事業者のほうも意識は消費者側を向いてやっているのだけれども、健全性というか消費者の側あるいは社会の側の受け入れる意識というのが相対的だし、これだけものの考え方の変化が速い、流動性も速いので、事業者側が消費者のために、生活者のためにと思っていても、思わぬしっぺ返しを食らうということになると、一体何が健全かというところに悩むというのはそれはそうだろうと思います。

そうしたときに、事業者側が事業者の中だけで自分たちはこう考えてというところに健全性の視点といいますか、そこが事業者側になっていると、自分はそう思ったけれどもというところとの違い、ギャップが出てくるのだろうと思います。そこを消費者側あるいは生活者側とどう埋めていくのかというのが透明性と対話、コミュニケーションの部分で、そこはソフトローだとかというところで、自分たちだけで考えるのではなくて、消費者の側はこれをこういうふうに考えたらどう思うかという受け手側の視点も入れて、健全性を相対化していくというところが必要になってくるのだと思います。後半の議論のソフトローの部分で恐らく消費者団体の位置づけ、役割というところがひとつポイントになっていくのだろうと思います。消費者一人一人がというのではなくてやはり媒介する形で、消費者団体の役割というところは、その対話の橋渡しというところが後半のポイントになってくるのかと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

よろしいでしょうか。

では、オンラインのほうで加毛委員、河島委員、山本龍彦委員、室岡委員から御指摘、御希望が挙がっていまして、室岡委員が特に10ページについてという御指定をいただいていますので、まず室岡委員から御発言をお願いしたいと思います。

○室岡委員 ありがとうございます。

特に小塚委員の発言とも関連しますが、10ページの点で、例えばパーソナライズド・プライシングやターゲティング広告などは、どこまでを範囲にするかというのは私もかなり疑問に思っています。例えば価格差別というのは非常に一般かつ広範に行われて、たくさん買った人に割引をするのも量を用いた価格差別です。映画館で例えば特定の曜日だけ女性あるいは学生が安くなるのも、特定の属性に基づいた価格差別になります。それをよりパーソナライズした場合、例えば私が特定の病気を持っていることがわかるから、その特定の病気に対する薬を法外に高く売りつけてしまえとなってしまうと社会通念上問題になるとは思います。ただし、この場合もパーソナライズド・プライシング一般、ターゲティング広告一般が問題だというよりは、それを用いた搾取やそれを用いた不公正な慣行が問題になるのであろうと個人的には感じております。

そのため、パーソナライズド・プライシングやターゲティング広告自体は通常のビジネスストラテジーの一つです。ただし、ほかのあらゆる取引と同様に、それを用いて搾取や不公正な取引につながる場合は考えないといけないということではないかと個人的には感じております。

○沖野座長 ありがとうございます。

今の10ページのところですと、一方で消費者の選択をむしろ支援する、あるいは利便性を高める。それから、今御指摘があったように、むしろビジネスプラクティスとして問題がないというか、かえって有利なものとして属性に着目した差別化であってもむしろ受け入れられているというものもある中で、他方で自律的な意思決定をゆがめるリスクを持つということですが、むしろそれを用いた搾取や不公正な取引につながりやすいということがあるので、それを含めていかに健全性を確保するかと。そういうふうに考えてよろしいでしょうか。自律的な意思決定をゆがめるということとともに。

それでは、今の関連でさらにございますか。

鹿野委員長、お願いします。

○鹿野委員長 一言だけすみません。おっしゃるとおり、パーソナライズド・プライシングが全ておかしいとかそういう話ではないと思いますし、経済的な合理性があって従来からいろいろなところで用いられてきたところではあると思います。

ただ、デジタル化になってひとつ違うかなと思っているのは、従来のパーソナライズド・プライシングというのは、先ほどの例を伺っても、割と分かりやすいというか、それが適用される人、されない人についても、こういう基準でこれなのだなというところが比較的分かりやすくて、それで納得して行動できるというようなことがあったと思うのです。ところが、デジタルの世界であると、そもそもどういうパーソナライズドがされているのか、どういうことで自分にそれを突きつけられているのかというのが非常に不透明な形になっていて、その透明性、不透明さというのをどのように考えたらいいのかというのは一つのポイントになるかなと思います。もちろん弱いところにつけ込んだ搾取というのは許されないですよねという段階があったり、違法な差別というものがあったり、そういうところも重要なのですが、透明性というところについても検討が必要かなと思っています。

○沖野座長 ありがとうございます。

あるいは自律的な意思決定をゆがめるというのはまさにそこにこれ自体が、パーソナライズド・プライシングなのか自体も分からない、あるいはターゲティングなのか自体も分からない。そこから誘導につながったりということもあるという点かと思いますので、よりこの意味をもう少し明らかにするような形で取りまとめに向けていただければと思います。

それでは、加毛委員、お願いできますでしょうか。

○加毛委員 ありがとうございます。

資料10ページにおいて指摘されている健全性の確保については、二之宮委員がおっしゃったことに、私も賛成です。他方、直前に室岡委員がおっしゃったように、ターゲティング広告やパーソナライズド・プライシングが一般的に悪いということはないと思います。そのことを前提とした上で、ターゲティング広告やパーソナライズド・プライシングを利用する事業者は、当然、自らの提供する商品やサービスがよく売れるようにするために、それを行うのだろうと思います。そして、商品やサービスがよく売れるようにすること自体は決して悪いことではないわけですが、これまでの議論を前提とすれば、その際の事業者のマインドセットとして、単に商品やサービスが売れるようにするというだけではなくて、買い手の側にどのようにして関係自律的な意思決定をしてもらうのかという視点を持つことが必要になってくるのではないかと思います。

そのことが健全性の確保につながるのではないかと思うのですが、ただ、やはり個社のレベルで何が健全なのかを判断するのは非常に難しいですし、個社の判断に任せていても健全性の実現は困難であろうと思います。そうすると、いかにして消費者の自律的な意思決定を支援・実現するのかを議論する場を設ける必要があり、また、個社の優れた取組を称揚することを通じて、そのような取組に付加価値を与えるような制度的枠組みが望まれるのではないかと思います。

この点について、二之宮委員は、消費者団体の位置づけが重要になることを御指摘されましたが、全くそのとおりと思います。もっとも、消費者団体が、そのような要請に対応するためのマンパワーや予算をどの程度確保できるのかは、深刻な問題であるように思われます。

さらに言えば、資料には明示されておりませんが、消費者庁や消費者委員会など監督をする側において、どのようなマンパワーや予算を確保することができるのかも、同様に重要である、あるいはより重要であるように思います。監督官庁の在り方も、健全性の透明化を実現する上で鍵になるのではないかと思われます。

また、この点にも関連しますが、資料11ページの下から二つ目のマルで「デジタル技術の進展に対応するためには、対症療法的な手法に限らず、包括的な視野に立った適切な規律の在り方を検討することも重要である」とされています。この記述の内容については、恐らく誰も反対しないように思われるのですが、重要なのは、それをどのように実現するのかです。適切な規律が法制度の策定を意味するのだとすれば、それを実行する監督官庁の在り方が重要なポイントになると思います。

また、先ほど一般条項に関するお話がありましたが、広く規制をかけるような法制度を作る場合には、それが企業活動に対する大きな萎縮効果をもたらすことへの対処が必要になります。例えば、事業者のある行為が規制の対象とならないことを適時に回答するような仕組みを併せて設けることが考えられます。包括的な立法は、経済界からの反発を招くというだけではなく、社会全体の効用を低下させてしまうおそれもあります。そのようなことがないようにするためには、これに対処するための監督官庁のマンパワーや予算の確保が重要な課題となるように思われます。

○沖野座長 ありがとうございます。

それでは、続きまして、河島委員から御発言をいただけますでしょうか。

○河島委員 ありがとうございます。

大屋委員の言われたこととほぼ重なるのですけれども、健全性を倫理的な正当性と考えるのであれば、それなりに議論はできるのだろうと思います。大屋委員が詳しいのですけれども、例えばあることを普遍化してもよいのかというのを考えて普遍化できることであれば倫理的によいと考えるなど、一義的に解は決まらないとはいえ、それなりに倫理学理論は知見を蓄積してきています。自律性もそういった理論的枠組みの中で考えられてきています。

第2回パラダイムシフト専門調査会の議論で、カライスコス・アントニオス先生からEUは「社会が何を求めているのか」を念頭に置いて法をつくると説明があったわけですけれども、健全性のような社会的価値をある程度明確にしてそれを守っていくことによって、社会的価値からの立論につながっていくのではないかと思いました。

○沖野座長 ありがとうございます。

それでは、山本龍彦委員、お願いします。

○山本龍彦委員 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

既にいろいろな委員の方から御発言がありましたので、特に新しいことを申し上げるということではないのですが、プロファイリングに基づくレコメンデーション、ターゲティング広告等のところですけれども、ここで既にお書きになっているように、消費者の選択を支援し、利便性を高める場合もあるということなので、やはり全てこれが問題だということではなくて、既にビジネスの中にこういったことが組み込まれている。ある種ベースラインのようになっているということはそのとおりなのだろうと思いました。

他方で、プロファイリングについては、例えば個人情報保護法でいう要配慮個人情報みたいないわゆるセンシティブ情報ですけれども、個情法上はそういった要配慮個人情報を取得する場合には事前に同意が要るとなっているわけですけれども、例えばセンシティブでない一般的な個人情報を収集して、プロファイリングして、センシティブな情報というものを生成する。プロファイリングによって予測していくということも考えられるわけで、そういった要配慮個人情報とかセンシティブな情報というのを専断的に取得するということもあり得るわけで、こういったことをどう考えるのかということもあるのだろうと。

つまり、一般的には当たり前のことだとしてもそういった問題はあるだろうと思いますし、これまで議論があったレコメンデーション、ターゲティングについても、例えばアルコール依存症だということがプロファイリングされたときに、アルコール依存症の人にアルコールの宣伝というかアルコール商品のターゲティングを行うことが果たして健全なのかどうかということもあり得るところかなと思いますので、そういう意味で、認知的な脆弱性につけ込むようなことというのはやはり問題だろうと考えています。

これはヨーロッパのAI法ですとか、第5条の辺り、脆弱性につけ込むようなAIの利用ですとか、非常にディセプティブ、欺瞞的なAIの利用については禁止ということになっていたり、Digital Services Actの条文、子供へのターゲティングについては一定の規律があるわけですけれども、こういったことを参考にしながら健全性というものを精緻に議論していくということは十分考えられるだろうと思います。

ということで、これまでの恐らく御議論と反対するものではないというか、むしろこれまでの議論はそのとおりだなと伺っていました。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございます。

そのほかに御発言はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、今までのところで、2のデジタル化の関係について一通り御指摘をいただきました。これを踏まえて、中間的な取りまとめというのにつなげていきたいと思います。

非常に多くの御指摘をいただいたわけですけれども、逐一申し上げるのは繰り返すだけなので、あまり適切ではないかもしれませんが、一つは、特徴の分析・具体化に書かれていた中のもので、対応のほうというか、言わば第2部というか、そこで落ちているものがあるので、それには注意を払っていただきたいということが御指摘としてあったと思います。

それから、特徴の分析・具体化あるいは問題の指摘という中でも、必ずしも指摘がされていないというものがあって、当然視されているのかもしれないけれども、そういうのもしっかりと言語化したほうがいいという御指摘をいただいたと思います。悪質な通販サイトの問題ですとか、ソーシャルメディアのなりすましの話といったものですね。それから、AI関係については、2010年度あるいは2010年段階の時点と2020年段階ではその役割というか機能というのもかなり変わってきているということがあって、特に生成型のものになると偽情報というものが非常に簡単にできるということなので、それが一層問題になっているというような状況、技術の展開の中でそういった問題がより出てきているということもありますので、それについても言及をお願いしたいということがございました。

それから、海外関係の問題です。これも指摘が十分反映されていないのではないかということがありましたので、それについてはスライド11のほうで特に指摘を補充していただきたいということで、さらに、海外の問題については小塚委員から三つの分類をしていただいて、それから、それぞれがどういう意味を持つのかということについて、特に有形、有体のものが手元に来る場合とそうでない場合とでは被害の出方なども違ってくるというのが、典型的、代表的にはということですが、そういうこともあるので、その指摘を受けて、そういった区別というのがひとつ有用ではないかと。その上でそれぞれ考えていく必要があるのではないかという御指摘をいただいたと思います。

それから、特に御議論いただきました中には、スライド10のプロファイリングですとか消費者の個別化に応じた取引の勧誘とかと言えばいいでしょうかね。提供について問題の御指摘をいただきまして、その中では、健全性をいかに確保するかが課題となるというのは全くもってそのとおりなのだけれども、この健全性というものをどう捉えるのか。とりわけ健全性のある取引のための手法だとか環境を設計するのが事業者であるということだとすると、事業者は何をしたらいいのかと。それが明らかにならないと、取引全体としても萎縮してしまって、利便性という点から問題があるということですので、この健全性の確保というものをどのように実現していくのかということについて幾つか指摘をいただきました。

一つは、健全性の確保というときに、これは倫理的におかしいというのが明らかなものもあるのだけれども、そうではなくて利便性もやはりあるものがある。特にスライド10のところではそういうものについてどう考えていくかという点がありました。

一般的に言えば、倫理的な正統性という点からの議論を詰めていくということはそれなりに可能ではないかという御指摘があったかと思います。社会が求めているものは何かと。ただ、それを特定の事業者が考えるというのはなかなか難しいので、それを明らかにするような仕組み、その中には消費者団体の役割、あるいは事業者団体の役割ということもあるかもしれませんし、さらには行政の役割というのを考えていく必要があるのではないかという御指摘があったと思います。

それから、健全性の捉え方については、より積極的にこういうものが健全であるというものと、不健全なものがこうであるということで、そうでないようにしてくださいという形のものもあるという御指摘がありました。前者のやり方が妥当することもありますし、さらには、前者についてはむしろベストプラクティス型の推奨事例として設けていく。そういう形で全体として健全性を確保していくというやり方もあるという御指摘をいただいたと思います。

さらに、健全性に関しては、これらの個別化を利用した手法自体は、一方では非常に利点もあるということなのだけれども、他方では個別化自体がどういう事情をすくい上げることができるのかというそれ自体において、それを捉えて、特定の販売促進などはそれ自体が反倫理的ではないかと言えるものがある。アルコール依存症の人にアルコールを勧めるというのは非常に分かりやすい例だと思います。それから、情報自体がセンシティブではなくても、技術の展開によってセンシティブな情報へとつくり変えていくというかつくり込んでいくということもできるので、そういったことも検討する必要があるという御指摘をいただいたと思います。

それから、一般的な情報を使う。かつそれを搾取しないような形で使うにしても、やはり透明性の確保という点からは非常に汎用性の高い問題がそこにあるので、それ自体の不健全さというのも考える必要があるだろうという御指摘をいただいたと思います。

また、健全性、不健全性という話だけではないのだと思いますけれども、一般的な普遍的な条項で捉えるとともに個別具体化を図っていくというのは非常に汎用性の高い手法なのですが、それぞれ長短がある中でどういうふうに具体化を図っていくかというやり方とともに、最後は政策判断や政策決定になるということですが、他方で、違反というか実効性のサンクションの在り方もバラエティーがあるということがありまして、ここが恐らく事業者の対応によって違ってくるというのは以前から御指摘いただいていたと思います。非常に悪質な事業者であれば、そこはサンクションとしても端的に懲罰的なということがありますけれども、そうではないような事業者で、むしろ積極的にそれは不健全であるということが分かったならば、それは対応していくというところであれば、むしろこれ以降は使わないということと、それから、積極的に自らそれに応じた対応をしていくということであれば、それを酌んだ方法というのですかね。確約手続とかがありますでしょうか。そういうような事業者の対応に応じたサンクションの在り方というので、そこでもバリエーションがあるのではないかという御指摘をいただいたと思います。

それから、関連しまして、消費者団体の役割というのもひとつ御指摘がありました。消費者団体に果たして十分なパワーがあるのかと。これは多分人的な面だけではなくて財政面でもということで、スライドの12につながるということかと思います。もちろん消費者本人ではなかなか難しいものを、消費者団体が加わることによって、全体として制度の適正化や予測可能性を高めていくとかということもありますし、あるいは消費者教育につながっていく面もあるのですが、しかし、消費者団体が本当に十分にできるだけの基礎を備えているかというのはまた消費者法の中でしばしば問題になり、団体訴訟ですとか集団的被害回復においても消費者団体をどう支えていくかということも問題であったかと思いますけれども、それ以外の団体がさらに支えていくというような話も一般的にはあったと思いますが、ここではそれとともに行政庁の役割、消費者庁、消費者委員会を監督官庁と呼んでいいのかというのは分からないのですけれども、所管官庁の役割と言えばいいのですかね。所管官庁の役割というのがあるのではないかと。健全性の透明化を図るときに、あるいは健全性についてもよいプラクティスを推奨していくというようなものだと、消費者庁のホームページを見ればとかそういうようなことがあるのかもしれません。そういった行政庁がどういうような役割を担っていき、何を期待するのか、期待されるのかということも明らかにしていく必要があるのではないかと。あるいはそういったことも組み合わせていくべきではないかと。これは以前からも御指摘があった点ですし、いろいろなところで言われるところですけれども、改めてデジタル取引を起点とした問題を考えたときに再び問題として出てくるということかと思います。

それから、デジタル化の観点ですが、特にデジタル化に関しては消費者の脆弱性というのが問題になっているのだけれども、とりわけ取引環境の設計において、誰もが持つ脆弱性というものがより顕在化するような形での設計が問題になっているところがあるのではないかという御指摘がありました。それとともに、それだけにというか、検知できない環境設定がされているということがあるので、実効性確保のための措置というのがよりクローズアップされてくる。この後どういう法制度へつなげていくかという点で、特に救済を含めて違反のときの措置というのはその点からも問題になるという御指摘がありました。

リアルというかフィジカルでは出にくいような問題がデジタルによってより顕在化していくとか、できないことができてくるとか、そういう面が非常にあるというのは確かで、デジタル化というのは非常に革命的な変化を生んでいるように思うのですけれども、他方で、これはデジタルだからということで本当にいいのか、フィジカルなり一般的な取引にフィードバックしていくものもあるのではないかということで、過度にデジタルに限定しないという視点も重要である。デジタルについてこうだということがあるときに、しかし、それはリアルでもあるいはフィジカルでもそうではないかという視点も重要でしょうという御指摘をいただいたと思います。

そのほかにも様々に御指摘をいただいたところですが、改めて本日の御指摘を踏まえて、議事録なども見返しながら、前回、今回を含めた御指摘に基づき、中間的な整理というのを行っていくことになります。

一旦項目ごとの御指摘というのはいただいたのですけれども、全体について、あるいは前回について、こういったところがやはり欠けているというか足りないのではないかという御指摘がございましたら、改めてこの段階でいただきたいと思いますが、本日の段階で何かお気づきのことはございますでしょうか。

小塚委員、お願いします。

○小塚委員 座長の振りというよりは、むしろ私が発言し忘れたと思ったことなのですが、先ほど加毛委員が消費者団体のことをおっしゃって、今、座長のまとめでも触れていただいたのですが、これは非常に大事な問題だと思っているのです。

日本でスマートフォンが発売されたのは2008年です。16年前です。ということは、今の高校生は生まれたときからスマートフォンを持っている子供たちなのです。そういうデジタルネイティブ、スマートフォンネイティブの消費者が抱えている問題というのが、現在の消費者団体によってうまく吸い上げられているように私には見えないのです。それをどうしていくかということを考えるべきだと思います。

注意しなければいけないのは、まず第一に、デジタルネイティブだからといって、デジタルの消費者問題にうまく対応できているということでは全然ないのです。そうではなくて、むしろどっぷりつかっているからこそ問題に一番さらされているということでもあるし、実際に被害もたくさん出ている。ただ、それはデジタルなものがうまく使えないので不利益を被っていますという類の不利益ではないわけです。この世界にどっぷりつかっている消費者、生活者の問題をどう吸い上げていくかということを考える必要がある。

私がこういう発言をするとよく言われるのは、そういう団体とか組織はありますかとか、どこにありますかということなのですが、分からないのです。分からないことが一番の問題なのです。それは、私は政策アイデアソンのようなことを行ったらよいと思いますし、もっと言えば、それもデジタルのプラットフォームでマッチングすることも含めて、意見を聞いて吸い上げたり、あるいは何か関わってくれるような人材を求めたりということもできるのではないか。そういうことも考えていったらよいと思いますので、消費者行政の在り方自体も新しいデジタル技術をよい方向で使って、新しい消費者の問題への対応の仕方ということを考えていく必要があるのではないかと思っているということを述べさせていただきます。

○沖野座長 ありがとうございます。

そういう団体や組織はありますかというのが分からないということで、ヒアリングを追加しようというのもなかなか難しいわけですかね。あるいは調査ということがあるのかもしれませんが、調査対象もなかなか絞り込みができないけれども、問題だとか消費者像として意識する必要があるのではないかと。これも一つの消費者像かもしれません、デジタル社会との関係で。

○小塚委員 消費者像であることは間違いないです。さっき申し上げたように、例えばこういうことについて問題があるというようなことを上手にアピールするようなプラットフォームに乗せて出てくるのを見て、アイデアソンと申し上げたのはそういうことなのですけれども、こういう人たちがむしろいるのだとか、こういうことに問題意識を持っているのだということが分かるという方法もあるかなと思います。

○沖野座長 ありがとうございます。

比較的若い、比較的若いと言うと物すごく幅がある言い方ですね。若年層と言っていいのでしょうか。その消費者被害がどうなっているのかというときに、なかなかPIO-NETとかでは捉え切れないというような指摘があって、それは相談に行かないからというので、SNSと言ったらいいのですか。そういうもので相談しているからPIO-NETに来ないのだけれども、またSNSの中で被害が出ているというような御指摘もあって、この辺りの実情をどう捉えるのかというのは非常に難しいというのが従来から指摘されていたかと思いますけれども、それをどこがどう捉えていけるのか。かといって問題がないわけではなくて、本当に問題ありなのだろうと思いますけれども、その辺りの実情把握は必要だけれども、具体的には、今、むしろここでもデジタルを使ってやれないかということを御指摘いただきましたので、ここは欠けている点だとは思います。どう対応できるかというのは直ちになかなか難しいとは思うのですが、ただ、そういうところが欠けているのではないですかという点は念頭に置いておく。御指摘をいただいたということでテイクノートしておく必要があると思いました。

そのほかにいかがでしょうか。

様々な団体の役割をどう考えるかとか、それから、事業者の複層化ということも御指摘いただいて、それはそのとおりですし、また、プラットフォーマー、デジタルプラットフォーム事業者の役割の大きさというのもそのとおりなのですが、それを一段具体化するとどういう話になるのかとか、複数の事業者の間でそれでどうするのかということは第2部に大きく残されているということがありますので、より法制度につなげていくときにはそこをつなげる議論もまた出てくるだろうということを改めて確認しておきたいと思います。

一方、デジタル化については、デジタル化の進展が取引にいろいろな影響だとかいろいろな取引対応につながってきていて、そこに新たな問題だとかより深刻化している問題が利便性とともに出てきているということなのですけれども、他方で、技術が取引を規律するというような御指摘もあって、この辺りは必ずしもここには十分に書かれていないのですけれども、今の抽象的に言えば技術が取引を規律するという問題がありますねという点について、何か補足をしていただくことはございますか。今日の時点では特にはないでしょうか。

ヒアリングの中で御指摘のあった点かとは思いますけれども、もし何かお気づきの点がありましたら、この後、メールなどもありますので、項目として加えるべき点があれば、なかなかまとめにくいというところもあって、どうしたらいいのかなと思っていることでもありますので、何か御示唆をいただくことがありましたらお願いしたいと思います。

それでは、本日のところはこれでよろしいでしょうか。そのほか、全般にわたって、前回の点でも、あるいはこれまで十分ではなかったのではないかという点も含めて、補足などをいただくことがありましたらお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

それでは、今回で資料1についての御議論を一旦終えたということにしまして、次回は、本日までの議論を踏まえて、事務局におかれまして中間整理の素案を準備していただきまして、それを基に議論をお願いしたいと思います。この間、この場では必ずしも発言できなかったのだけれども、こういう御指摘もあるというようなことがありましたら、事務局にメール等で御指摘をいただければと存じます。

それでは、今日のところはこれでよろしいでしょうか。

委員の皆様におかれましては、活発な御議論をありがとうございました。

それでは、最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。


《3.閉会》

○友行参事官 本日も誠にありがとうございました。

次回の日程につきましては、決まり次第また御連絡いたします。

以上です。

○沖野座長 ありがとうございました。

それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しい中、お時間を取ってくださいましてありがとうございました。

(以上)