第11回 公益通報者保護専門調査会 議事録

日時

2018年3月29日(木)16:30~18:58

場所

消費者委員会会議室
東京都千代田区霞が関3-1-1 (中央合同庁舎第4号館8階)

出席者

【委員】
山本座長、柿崎座長代理、石井委員、浦郷委員、亀井委員、川出委員、後藤委員、中村委員、林委員、春田委員、水町委員
【オブザーバー】
消費者委員会 高委員長、池本委員長代理、鹿野委員、樋口委員
【消費者庁】
小野審議官
廣瀬消費者制度課長
太田消費者制度課企画官
【内閣府】
幸田内閣府審議官
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官、友行企画官

  ※なお、柿崎座長代理の崎は、正しくは立つ崎、高委員長の高ははしごだか

議事次第

  1. 開会
  2. 通報者の範囲
  3. 通報対象事実の範囲
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○山本座長 本日はお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

ただいまから第11回「公益通報者保護専門調査会」を開催いたします。

最初に配付資料の確認をさせていただきます。お配りしております資料は、配付資料一覧のとおりとなっております。不足がございましたら途中でも結構ですので、事務局までお願いいたします。


≪2.通報者の範囲≫

○山本座長 それでは、議事に入ります。最初に、前回の専門調査会におきまして御検討いただきました個別論点についての検討の進め方ですけれども、前回様々な御意見をいただきました。検討すべき論点については、おおむね御了解をいただいたと思います。ただし、検討を進める際の留意点につきましては、つけ加えを行うということで、修正の仕方は私に御一任をいただいておりましたので、若干の修正をしております。修正したものは参考資料1で配付しております。

それから、前回、内部告発に関する裁判における取扱いを公益通報者保護法施行前、施行後を通じて整理すべきではないかという御意見をいただきました。これにつきましては早速、消費者庁に整理をしていただきましたが、この整理は個別論点の検討に入っていただく前に共有しておくべきものと思いますので、資料1につきまして最初に御説明をお願いし、ただ、更に個別の点は個別の論点の部分でいろいろ関係してくることだと思いますので、今日はその個々の点まではいろいろ検討、議論はしないことにしたいと思います。もちろん今日のテーマに関わるところは後で議論の対象にしていただければと思います。

それでは、資料1につきまして御説明をお願いいたします。

○消費者庁消費者制度課担当者 それでは、消費者庁から資料1「通報者の保護に関する判例法理について」を御説明させていただきます。

まず「1.はじめに」ですが、前回の専門調査会において、公益通報者保護法の個別論点を検討する前提として、通報者を保護している判例法理における取扱いを検討する必要があるとの御意見をいただきました。通報を理由に労働者が不利益を受けた場合、これを救済する法律として公益通報者保護法があるわけですが、本資料の一番最後のページに「別添」という形で、公益通報者保護法の適用が争点となった主な事案を挙げさせていただいており、こちらを御参照いただきたいのですが、公益通報者保護法の施行から現在までの間に、我々が確認できる範囲内ではありますが、公益通報者保護法が適用されて労働者が救済された例は、こちらの大阪高裁の1件しか見当たらないところでございます。そのほかの多くの事案は、一般法、例えば労働契約法や民法などにより保護されている状況でございます。このように、一般法により労働者などが不利益取扱いから保護される場合、どのような判例法理によって保護されているのかを、裁判例を検討することで整理いたしました。

「2.通報の正当性に関する主な判断例」ですが、事業者が、労働者の行った通報行為が違法行為であるとして、解雇などの不利益取扱いを行い、これに対して、労働者が、通報行為が正当行為であるとして争う事案があり、このような事案に関する判例法理を紹介させていただきます。

基本的な考え方として、(1)でございますが、労働者は労働契約の締結に伴い、信義則上の付随義務として、使用者の利益を不当に侵害しないよう配慮すべき誠実義務や、使用者の業務上の秘密を保持すべき秘密保持義務を負っています。このほか、就業規則においてこのような義務が明確化されている場合もあります。そのため、労働者が、使用者の行っている法令違反行為等について外部に通報した場合、こうした義務に反するとして労働者が解雇等の不利益取扱いの対象とされる場合があります。

2ページ(2)ですが、他方で、労働者が、使用者が行っている法令違反行為について外部に通報することで、法令違反行為の発生及び拡大を防止することは、消費者その他の関係者の利益に資する場合があります。また、法令の遵守及び不正の是正は、大局的に見れば事業者自身の利益にもつながります。このような通報行為の公益性に着目するなどして、通報行為が正当なものであるとして、労働者の通報を理由とした不利益取扱いから労働者を救済する判例法理が存在します。

(3)判例法理の具体例ですが、まず、代表的な考え方として、アの、告発内容が真実であり、又は、真実と信じるべき相当な理由があるか、告発の目的に公益性があるか、告発の手段・態様が相当なものであったかなどを総合的に考慮して、告発が正当と認められる場合には、仮に組織の名誉・信用が毀損されたとしても、不利益取扱いを行うことはできないと解釈する方法が存在します。

次に、3ページ、イですが、このような判断基準のうち、手段・方法の相当性を判断要素に含めないで労働者を救済するかどうか検討している事例もあります。

また、4ページのウですが、不利益取扱いが懲戒処分として行われる場合、懲戒事由を限定的に解釈することで、形式的に懲戒事由に当たるような行為があったとしても、実質的には懲戒事由に当たらないとして労働者を救済する例もあります。この場合、懲戒事由に当たるかどうかを判断するに当たって、通報内容の真実性などの要素が検討されないまま、労働者が救済される例も散見されます。

さらに、5ページ、エですが、このような明確な判断基準を示さずに諸事情を総合考慮するなどの方法により、労働者を救済している例もあります。

以上が、通報が違法か正当か否かが争われる事案における判例法理です。

次に、6ページの「3.不利益取扱いの理由が通報か否かが争われた事案における主な判断例」を紹介いたします。

事業者が、労働者の通報行為が違法であると主張するわけではなく、通報行為とは別の理由、例えば、業務上の必要性があるとか、適材適所であるとか、業務能力が不足しているとか、そういった別の事情があって、これを理由に労働者に対して不利益取扱いを行ったと主張する事案においては、不利益取扱いが通報を理由とするか、別の事情を理由とするかどうかが訴訟で争われることになります。この場合、裁判例では、不利益取扱いの必要性、労働者が被る不利益の程度、通報と不利益取扱いとの間の時間的接着性等を考慮して、通報が不利益取扱いを理由としているかどうかを判断しているようでございます。

不利益取扱いが正当な通報を理由としていると裁判で認定された場合、不利益取扱いが権利濫用や不法行為に当たるとされる関係にあります。

最後に、7ページ「4.労働者以外の者による通報の正当性に関する主な判断例」ですが、労働者以外の者、例えば退職者、役員等、事業者、その他の者が通報したところ、不利益取扱いが行われた事案もあり、このような事案に関する裁判例も存在します。このような労働者以外の通報者に対して不利益取扱いが行われた事案に関する裁判例の中にも、労働者が通報した場合と同様の判断要素を用いて、通報者を救済している例も散見されるところです。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございます。

何か御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、また個別の論点のときにここに立ち返って議論する場合に、もし御質問があれば伺いたいと思います。

個別論点の検討に入ります。最初に事務局から本日御議論をいただきたい論点の概要について、資料2の説明をお願いいたします。

○友行企画官 資料2を御覧いただけますでしょうか。あわせて、参考資料4も御覧いただければと思います。参考資料4は図の形になっておりますけれども、前回の消費者庁の提出資料でございまして、こちらも分かりやすい図になっておりますので、併せて御覧いただければと思います。

資料2のところでございますが、本日は論点の一つとして通報者の範囲というところでございます。参考資料4の一番最後のページを見ていただきますと、現行、労働者からの通報を公益通報者保護法の保護の対象としておりますけれども、実際のところ例えば退職者など、現行法の対象外からの通報が31.1%あるという事実がございます。こういった事実を踏まえまして不利益取扱いからの保護の必要性というところでございますが、退職者、役員等、取引先等事業者、その他の事業者はどこまで保護する必要性があるのか。必要性があるとした場合、具体的にどのようなものについて、どのような方法を、どのような場合に行うかということにつきまして、本日、御議論いただければと思います。

その際、例えば退職者でございましたらば、その下の*のところ、退職後の期間制限を設けるべきか否か。その辺りのところにつきましても若干御議論をいただければと思います。

2といたしまして不利益取扱いからの保護以外の観点というところでございまして、公益通報者の範囲としては含めるのですけれども、不利益取扱いからの保護の対象とはしない。ただし、行政の調査措置義務の対象であったり、秘密保持等の対象とする必要があるかどうかというところにつきましても、御議論をいただければと思います。

参考資料4で御確認いただきますと、2枚目の通報者の範囲という図でございますが、現時点、法律では労働者が公益通報者保護法による保護の対象となっておりますけれども、これを退職者、役員等、取引先事業者等とどこまで広げる必要があるのか、御議論いただければというところでございます。

資料2は2枚目、裏をおめくりいただきまして、もう一つの本日の論点が通報対象事実の範囲でございます。現行法どのような形になっているかといいますと、参考資料の3ページ目の図でございますが、通報対象事実の範囲といたしまして、刑事罰により実効性が担保されている法律という横軸と、法律の目的による限定というものが掛かっていまして、両方重なるところを公益通報者保護法における通報対象事実の範囲となっておりますが、これをどこまで広げる必要があるのかどうかというところについて御議論いただければと思います。

具体的には資料2に戻りますと、刑事罰の担保による限定との関係でございましたり、法目的による限定との関係ですとか、また、法令違反、つまり条例違反を含めるかどうかというところでございます。

2といたしまして、切迫性の要件というところでございまして、通報対象事実がまさに生じようとしているところを緩和する必要があるかというところにつきましても、併せて御議論いただければと思います。こちら本日、御議論いただきたいところを概要としてまとめたものでございますので、こういったことについて本日は御議論いただければと思います。

以上です。

○山本座長 この後、資料3と資料4の説明をすることになりますけれども、この時点でここまでのところで何か御質問はございますでしょうか。

それでは、個別の論点の検討に入ります。本日は今、お話がございましたように通報者の範囲、通報対象事実の範囲につきまして検討を行っていただきますけれども、できればそれぞれのところで委員の皆様の意見を集約し、一定の方向性を示し、確認するといったところまで目指していきたいと思いますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。

まず、通報者の範囲につきまして、消費者庁から資料3の御説明をお願いいたします。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 消費者庁でございます。

資料3に基づきまして、通報者の範囲に関わる論点につきまして御説明させていただきます。

まず資料の構成でございますが、1ページ目に「第1 問題の所在」とございまして、ここにおきましては現行法の規定、立法時における考え方、立法後に明らかになった課題について御説明をさせていただきたいと思います。

第2といたしまして、資料3ですと5ページ目以降となりますけれども、これまでの主な議論の整理をまとめてございます。これまでの主な議論というぐあいに、主には私ども消費者庁の有識者検討会で出された御意見でありますとか、報告書の提言、更にその報告書について出されたパブリックコメントの意見といったところの主なものを集めまして、まとめてございます。個別の論点につきまして積極的なお立場、慎重なお立場、それぞれからの主な意見を整理して御提示しております。

なお、御議論いただく際には時間をなるべく長く確保したいということでございまして、説明につきましてはポイントを絞って御説明をさせていただきます。

1ページ目「第1 問題の所在」、現行法の規定のところでございますけれども、その枠の中に現行法の規定がございまして、その下に問題の所在が書いてございます。現行の公益通報者保護法につきまして、保護される通報者の範囲といたしましては、在職中の労働者となってございまして、この中には派遣労働者等も含みますし、一般職の公務員につきましてもその解釈により含まれ得るわけでございますが、その下にございますように退職者、役員等、フリーランスなどを含む取引先等事業者といったところについては、保護の対象としては入ってこないという構成になっております。

2ページ、立法時における考え方でございます。まず(1)といたしまして労働者以外の者を通報者の範囲に含めていない理由でございますが、退職者につきましては当時の議論といたしましては、不利益を受けることは通常ないのではないかという説明をしておったということでございます。役員等につきましては、法律上、忠実義務が課されている。さらに委任契約であることを考慮して入れなかったということでございます。取引先等事業者につきましては、取引自由の原則といったものを考慮する必要がある。さらに事業者の範囲ですとか取引の定義付けといったところについて、非常に多種多様であるという中で慎重論が強かったという理由で入らなかったということでございます。

(2)といたしまして、一般法理で保護されるに関わらず、本法で保護する理由のところでございますが、労働者につきまして法の制定以前にも一般法ですとか判例法による保護というのは存在してきたわけでございますが、法で保護されるための要件ですとか効果を明確にするということで、保護されることについての予見可能性を高めるという観点から、法律が立法されたということでございます。

(3)といたしまして見直しについてでございますけれども、本法の附則第2条にいわゆる見直し規定というものが入ってございますが、立法時に国会のほうで附帯決議が付されておりまして、本法の見直しに際しては通報者の範囲についても再検討を行うことが求められているところでございます。

3ページ「3.立法後に明らかとなった課題」ということでございますが、ここにおきましては裁判例でありますとか報道事例、それから、私どもで運営している相談ダイヤルに寄せられた相談例、更に当庁が行った調査ヒアリングの結果などを紹介してございます。参考資料2に詳しい情報を載せておりますので、そちらも併せて御参照いただければと思います。

(1)でございますが、労働者以外の者が不正行為を認知し、通報を行った事案が存在しているということでございまして、退職者ですとか役員、取引先事業者、その他ということで、様々な例が存在してございます。このような中で(2)にございますように、通報をしたことを理由として不利益取扱いを受けるという事案も残念ながら起こってしまっているという状況でございます。(3)は相談ダイヤルの相談例をお示ししてございますけれども、労働者以外の主体から様々な相談が寄せられているという、そのポイントをお示ししてございます。

4ページ、(4)といたしまして通報経験者等への当庁が行ったヒアリング結果でございますが、通報する側からは退職者であることを理由として通報に対応してもらえなかったといったことですとか、通報したところ、事実上の不利益を受けた。あるいは取引停止をほのめかされたといったようなヒアリング結果が出ているところでございますし、他方、通報を受け付ける事業者の側からも、リスク管理という観点からは誰からの通報、情報提供であろうとも、法令違反の疑いがあるものは受け付けることが重要であるという御指摘ですとか、既に幅広い通報を受け付けるための制度を整備しているといった御意見もいただいているところでございます。

「4.ガイドラインによる措置」というものがございますけれども、制度の運用改善により対応可能なものについてはガイドラインの改正等につきまして、それなりに措置を講じてきているということでございまして、最初のポツの民間事業者向けガイドラインにおきましては、リスク情報の早期把握の観点から、窓口利用者の範囲についてはできるだけ幅広く設定することが適当だということで、役員ですとか退職者等からの通報についても受付の対象とするということを推奨しているところでございます。

2番目のポツにございますように、行政機関向けのガイドラインにおきましても、各事業者の法令遵守を確保する上で必要と認められる者につきましては、受付の対象としていくことを求めているところでございます。ただし、このガイドラインにつきましてはあくまでも任意の指針ということでございまして、法的な拘束力を持つものではないという中で、どうしても一定の制約が出てきてしまうという限界がございます。さらに現行法が定める要件を満たさないものにつきましては、本法による保護の対象とはならないということでございまして、予見可能性が相対的に低く、不安であるといった御指摘もいただいているところでございます。

5ページ、第2といたしましてこれまでの主な議論の整理でございます。まず不利益取扱いから保護される通報者の範囲を広げることにつきまして、まず退職者についての論点でございます。

1の通報者の範囲に含めることにつきまして、積極的なお立場からは在職中の労働者が会社を相手にして争うことは非常に難しい。その中で退職してから通報するといったケースも多いわけでございますが、退職者であっても通報したことを理由として損害賠償請求訴訟を起こされる、あるいは再就職妨害をされる。退職金が不支給となるといった不利益取扱いを受けることがあるんだという御意見を頂戴いたしております。

他方、イの慎重なお立場からの御意見といたしましては、具体的にどのような不利益取扱いがあるのかというのを明確にする必要があるのではないかという御意見を頂戴しているところでございます。

2でございますが、仮に退職者を保護の対象とする場合でございますが、退職から一定期間内に行われた通報のみを保護するという何らかの限定を置くべきかどうかという論点でございます。そういった限定をすることに積極的なお立場からすれば、通報を受理する事業者側の負担を考えれば、ある程度制限する必要があるのではないかという御意見をいただいております。

6ページ目のイでございますが、そういった限定を置くことに慎重なお立場といたしましては、年金など長期間にわたって受給するといったものがある場合に、保護されなくなってしまうのではないかという御指摘もございますし、退職前の通報であれば、通報対象事実の発生から通報に至るまでの期間の制限は特にないという中で、退職者のみにそういった制限を設けるというのは合理的ではないのではないかという御意見もいただいているところでございます。

(2)役員等でございますが、まず1の通報者の範囲に含めることについてでございますが、積極的なお立場からはその役員にとっていろいろ情報が集まってくるということで、不正行為を知り得る立場にあるという中で、通報を理由として解任、再任拒否等の不利益取扱いを受けることもあるといった御意見。さらに2番目のポツでございますが、役員等の解任に関しては会社法第339条2項による保護、これは正当な理由のない解任に対する損害賠償請求権といったものでございますけれども、こういったものがあるわけでございますが、この法律に規定して保護することによって、予見可能性を高めることができるのではないかという御意見をいただいているところでございます。

他方、イの慎重なお立場からは、役員等は法律上、忠実義務を負っておりますし、会社との関係というのも委任関係であるということで、労働者と立場が異なるのではないかということでございますし、更に役員等につきましては、その職責に応じて権限・義務ですとか選任・解任の方法等が規定されているといった中で、そういったものとの整合性を図る必要があるのではないかという御意見をいただいているところでございます。

7ページ目の(参考)とあるところに、会社法ですとか一般社団・財団法等々、関連する法令などの規定をお示ししてございまして、こういった関連規定なども踏まえた上で御議論をいただければと考えてございます。

8ページ、2でございますが、仮に役員等を保護の対象とする場合の論点でございますけれども、まず外部への通報に先立って、内部での是正措置を講ずることを要件とするかどうかという論点でございます。そういったことを要件とすることに積極的なお立場といたしましては、役員等は忠実義務を負っているということで、内部で是正措置をとったものの、不適切な対応しかなされなかったという場合に限定すべきではないかという御意見でございます。他方、イの慎重な立場から、役員の法令遵守義務の履行方法として、そういったものに限る必要はないのではないかという御意見を頂戴しているところでございます。

9ページ、3といたしまして保護の内容でございますけれども、アの積極的なお立場からは、役員の不利益取扱いとして一番考えられるのは任期途中の解任ということでございまして、こういった正当な通報を理由とする解任については、具体的な禁止行為として明示すべきではないかという御意見でございます。他方、慎重な立場からの御意見といたしましては、会社法上、解任の有効性についての理由、正当性は求められていない。いつでも解任できると規定されているということでございますので、それと整合しないのではないかといったこと、退職慰労金について、そもそも株主総会で決議しないと何ら権利もないんだといった御意見が出されているところでございます。

以上が役員等でございまして、10ページ目を御覧ください。(3)といたしまして取引先等事業者に係る論点でございますが、まず1の通報者の範囲に含めることについて、積極的なお立場からはそういった取引関係の中でいろいろ不正行為が発見されて、通報されることが多いということで、非常に企業コンプライアンスにとって重要なのでなはいか。さらにそういった取引先事業者が通報したことを理由として、契約解除ですとか再契約の拒否等、不利益取扱いを受けることが現実に存在しているというような御意見でございます。

他方、イの慎重なお立場といたしましては、事業者間の継続的契約というのは多種多様であるということで、一律的に取り扱うということは弊害が多いのではないかという御意見が出されております。

3番目のポツのところでございますけれども、通報以外の合理的な理由があっても契約解除ができなくなってしまうおそれがあるのではないかといったことですとか、契約継続を目的として通報制度が濫用される懸念もあるという指摘もされているところでございます。

最後の四つ目のポツにございますように、仮に保護の範囲に含めるのであっても、一定の限定をすべきであるという御意見をいただいているところでございます。

11ページ、仮に取引先当事業者を保護の対象とする場合の論点といたしまして、2といたしまして対象範囲を限定するかどうかという論点でございます。限定すべきというお立場からは一定の事実上の力関係にある企業のケースに限定すべきではないかという御意見をいただいているところでございます。

他方、12ページ目でございますけれども、イのところに限定することに慎重なお立場からの御意見ということでございますが、この論点では正当な通報を理由とすることで契約を破棄することの正当性が問題となっているのであって、取引の形態がどうなっているかということの問題ではないのではないかといった趣旨の御意見もいただいているところでございます。

(参考)というところに、事業者間の取引上の地位の格差を規定する例といたしまして独禁法ですとか、下請法などの例もお示ししておりますので、こういったことも御参照しつつ、御議論をいただければと思います。

13ページ(4)といたしまして、その他の者を保護の範囲に含めるかどうかという論点でございます。積極的なお立場といたしましては、フリーランス等の個人事業主ですとか、業務委託契約で就労している方などもいらっしゃる。一定の要件を満たすグループ会社に関する通報といったものも含めていくべきではないかといったこと。さらに労働者の家族なども含めるべきではないかということ。更に個別に列挙する形ではなくて、何人もと規定するような方法ですることも考えるべきではないかという御意見をいただいているところでございます。

他方、イの慎重な立場からの御意見といたしましては、労働契約法では対象とされないような者まで入れていくとなると、一般法を超えるような効果を与えることになるのではないかという御指摘でありますとか、公益通報者保護法というのは通報者を不利益取扱いから保護する性格の法律であることを踏まえて、何らかの限定をしていく必要があるのではないかという御意見を頂戴しているところでございます。

14ページ、「2.通報が行政機関の調査措置義務等の対象となる通報者の範囲を広げることの是非」でございますけれども、不利益取扱いから保護する範囲とは離れて、こういった行政機関の調査措置義務でありますとか、秘密保持の対象とすることについてどう考えるかといった論点でございます。

主な意見といたしまして、行政手続法の第36条の3に何人からの通報も受け付けるという条文の先例がございますので、こういった形で通報者の範囲を限定しないということも検討すべきではないかという御意見でありますとか、通報者の秘密を守るという点につきましては、特にその範囲を限定することなく広げることも考えられるのではないかといった御意見もいただいてございます。

以上が資料の説明でございまして、個々の論点につきまして積極、慎重それぞれの立場から主な御意見を御紹介させていただいたということでございまして、本専門調査会におきまして、これまでのこういった両方の議論を踏まえた上で、どういったところを着地点とするのか。その際にどういった点について留意する必要があるのかといったことにつきまして、具体的に御意見を頂戴できればありがたいと考えております。

御説明は以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

最初の論点は、労働者以外の者について通報を理由とした不利益取扱いから保護する必要性があるかどうか。あるとすると具体的にどのようなものについて、どのような場合に行うのかという点です。

資料2の「1.通報者の範囲」の12の各項目に沿って順次、意見交換を行いたいと思います。資料3では5ページの第2の「1.不利益取扱いから保護される通報者の範囲を広げることについての是非」からが関連する箇所となりますので、これを個々に順次検討していきたいと思います。

最初に退職者を通報者の範囲に含めることについてですけれども、この点につきまして御意見のある方は御発言をお願いしたいと思います。資料3で申しますと5ページの一番最初の(1)の部分です。通報者の範囲に含めることについてということと、2に退職から一定期間内に行われた通報のみを保護することについてという点がございますけれども、これらの点につきまして御意見のある方は御発言をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

それでは、林委員、お願いします。

○林委員 まず公益通報の相談を受けていますと、退職された方あるいは退職しようと思っているという方からの相談が結構多いのです。今回の資料4にもありましたけれども、退職するしない、その辺のところで通報したいという方が多くいらっしゃるということと、その間に得られている違法行為についてということで、情報も得られやすいということからすると、退職者も含めるべきであると考えます。退職した後に退職金が支払われないとか、年金を払わないという不利益を受けるという事態も起きています。そういうところからも必要性があると思っています。

期間の限定に関しましては、一般の労働者の通報が期間の限定がないにも関わらず、退職者についてだけ期間を限定すべきというのは均衡に欠けるのでなはいかと思いますので、期間の制限を設けるべきではないと考えます。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにございますでしょうか。浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 私も今の林委員の意見と同じです。退職者からの通報が現在もあるということ、それから、通報したいという相談もあるということですし、退職者であってもそこで勤めていたからこそ、そういう不正を知り得ることができたと思います。本来ならば在職中にそこで通報することが望ましいとは思いますけれども、やはり何らかの不利益取扱いを受けて会社と争いになった場合、在職しながら争うことは非常に難しい、それを考えると退職後のほうが通報しやすいのかなということもあります。

また、退職者が通報したことを理由に損害賠償請求や再就職の妨害、国家公務員の再任用申請の拒否など、そういう不利益取扱いを受ける可能性があるということで、それを恐れて本来なされるべき通報が妨げられるということは、国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することとする目的に反することではないかと思いますので、ぜひ退職者のところは通報者の範囲として含めていただきたいと思います。

期間の制限に関しては、これを設ける根拠はないのではないかと思っておりますので、特に期間は設ける必要はないと思います。

以上です。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。石井委員、お願いします。

○石井委員 林委員や浦郷委員と同様に、私も退職者というのは含めて考えていくべきではないかと考えます。消費者庁さんの資料を見ましても11%、在職の労働者の次に多いのが退職者でありまして、やはり相当なボリュームがあるだろう。不利益を受ける可能性といいますか、度合いが小さいのは、そうだからこそ逆に退職して通報されるのだと思いますが、その必然性といいますか、実態面から見てもサポートすべきものではないかと思います。

一方、期間を設けるかどうかについては、私は設けてもいいのではないかという考えを持っております。理由は、公益通報者保護の制度が速やかに状況を是正していくというところに一つの目的があるということと、例えば大企業などで考えたときに退職者が毎年大量におられます。退職者の確認ということについてみた場合も、例えば10年も20年も前の方になりますと、相当な実務的な困難さも出てくるのかなと。あるいはすごく昔のことについて言われても、それが現時点で生きている事案なのかどうかといった辺りも難しい面があるのではないかということがございまして、速やかに是正をするという法律の本旨に立ち返りますと、それがどのぐらいの期間かというのはなかなか一概には難しくて、相当な期間という形でケースによって判断されるのかもしれませんが、何か一定の期間というのはあるのが、法律の趣旨から見てもそぐうのではないかという意見を持っております。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにございますでしょうか。それでは、お願いします。

○中村委員 私はまず各企業において通報者として受け付けるという点に関しては、退職者からの通報も含めて受け付けるほうが、企業にとっていろいろな情報が集まるという意味においてはいいことだと思うのですけれども、一般的な企業からすると、年金を差し止めるとか、そういう不利益をとることが余り考えにくくて、だからこそ退職されてから通報することがあるのかなと思うわけなのですが、そういうことも含めまして基本的には不利益からの保護ということに関しては慎重に考えていただきたい。

と申しますのは、逆に会社に対するロイヤルティーがなくなった状態で発言をされるということなので、そのために営業機密に属するようなことを持ち出されたりなど、そのようなことの懸念も企業としてはございまして、慎重に御検討いただきたいと思います。

仮に退職者を範囲に含めるとした場合につきまして、その期間なのですけれども、先ほど石井委員からも御指摘がありましたように、現実に企業で受けている中で、例えばですけれども、そもそも職場環境に対する御意見というのが一番多いわけなのですが、10年前にパワハラを受けましたというようなものも現実問題としてありまして、そういった告発に対しては既にその方自身も退職されているとか、そういったことで対応のしようがないようなこともございますので、そういった意味でもしも退職者を範囲に含めるとしても、一定の期限は設けるべきなのではないかと思います。

以上です。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。お願いします。

○亀井委員 今、中村委員からのお話がございましたけれども、私も基本的に中村委員のおっしゃることに賛成でして、私どもも通報を受け付けているのですが、確かに退職者の方からの通報というのはございます。退職者、在籍者に限らず、圧倒的に多いのが個人的な御不満、待遇に関する御不満なのです。それを、年限を切らずに調べていくというのは事実上、難しいので、あるいは公益に資するような通報であったとしても、全く年限を切らずにどこまでさかのぼって調べることができるのかというようなこともございますので、特に退職者の方については年限を設定していただくのがよろしいのではないかと思います。

以上です。

○山本座長 いろいろ意見が出てございますけれども、なおございますでしょうか。水町委員、お願いします。

○水町委員 基本的には退職者も範囲に含めることに賛成で、具体的な制度設計なのですけれども、基本的に在職している人は指揮命令を受けて、給料をもらって働いているという点でかなり抑止的な効果がありますが、退職してみると使用者との権利義務関係から解放される分、告発しやすくなるという状況にはなると思います。

その中で、ただし、例えば退職金が未払いの部分があったり、年金という形で支払われている場合には、それが間接的に抑止効果になることもあるので、そういう場合は期限を設定するのだったら分けて考えたほうがいいかもしれませんし、更には期間の設定の仕方の合理的な期間の設定なのですけれども、一つこの中に必ずしも明示されていませんが、転職したり再就職しようというときに、前職照会のときに不利益な情報を提供されるということが退職した人にとってかなり大きな不利益になっているという事案が少なからずありますので、どれくらいの期間を置けば次の会社に就職するときに不利益な情報を、この人は公益通報したから採用しないほうがいいですよというようなことをされないような期間はどれくらいなのかというのを考えながら、不利益の内容に応じてどう考えるかを慎重に考えたほうがいいかなと思います。

○山本座長 そのほかにございますか。お願いします。

○柿崎座長代理 退職者を含めるという点に関しては賛成です。

期間の設定についてなかなか難しいところがあろうかと思います。私は一定期間の制約をつけざるを得ないかなと思います。問題は、その制約の合理的な期間ということなのだろうと思いますけれども、今、水町委員がおっしゃったように、何がその退職者にとっての不利益なのかといったときに、中村委員からは退職金を払わないということは余りないというお話がありましたが、先ほど紹介いただいた事例の中では、実際に未払いとか返還請求を受けているという話もありましたので、そうすると、そういう企業の側が退職金の不支給とか返還請求する根拠というのは、想像するに一定のロイヤルティーが続いている、つまり守秘義務が課されている期間の守秘義務違反にあたるからだろうと思うのです。守秘義務違反だから退職金を返せという論拠となると、企業が守秘義務を課す年限は通常5年程度であるようですから、この程度の期間で制約を課すということであれば、企業側の煩雑な調査義務の負担という点からも、余り長過ぎるということもないだろうと思います。ただ、これは、守秘義務とセットにするべきかどうかは一つ考えていく必要があるでしょうけれども、一つのアイデアとして、そういうものもあるのではないかと思いました。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。お願いします。

○春田委員 私も皆さんおっしゃっているとおり、昨今の企業不祥事が後を絶たない中で、通報者の保護に対する範囲を広げていくことには賛成で、その中でも退職者の件につきましては、非常に退職者の通報が多いという観点からも、退職者に広げるべきではないかと思っているところでございます。

先ほど来、話があったとおり、では年限、期間を区切るかということでございますけれども、これは今、話を聞いていても合理的根拠を持つのはなかなか難しいのかなというのが率直なところで、そういった根拠が持てるならそういうことを検討するというのが当然だと思いますけれども、今の時点で根拠を持つのは難しいかなと思っています。

以上です。

○山本座長 ほかにございますか。

今、全体的には退職者を含めるということ自体には、おおむねの賛成が得られているのではないかと思います。ただ、むしろ条件と申しますか、期間制限を設けるかという点について若干意見が分かれたと申しますか、いろいろな意見があったということかと思います。

私は伺っていて、一つは実務上の問題として退職者かどうかということを認定することが難しい。時間が余りにもたってしまうと難しくなるとか、あるいは違法行為が本当にあったかどうかを判断するのが難しくなるといった、どちらかというと実際上の問題が一つにはあるということですけれども、これは実際にどのような形で解決をしていくかという方向で恐らくは考えるべきことである。

もう一つは、特に期間制限の点ですけれども、今、お伺いした感じですと、余り期間がたってしまうと不利益取扱いというのも余り考えられなくなるのではないかという御意見が割とあったのではないかと思いますが、逆に申しますと期間がかなりたった場合であっても、不利益取扱いがあればそれは問題であろうということではないか。そうすると、その辺りの期間の設定が本当に合理的にできるのだろうかということに結局はなりそうなのですけれども、その点は更に具体的に、期間制限ができるのかどうかということを検討していただくことになろうかと思います。

伺った感じですと不利益取扱いがあるのに、それから保護しないということには合理的な理由がないだろう。ただ不利益取扱いとしてどういうものが考えられて、それが一体いつぐらいまであるのかということについて、検討する必要があるのではないかといったような方向なのではないかと思いますけれども、何か更にございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、次に役員等ということですが、この点はいかがでしょうか。これも資料3で申しますと、6ページ(2)1のそもそも範囲に含めるかという話がございまして、その後に8ページ2に要件を限定するかという話があります。外部への通報に先立って内部での是正措置を講ずることを要件とするかということ。それから、9ページの3に保護の内容ということですけれども、これは保護の効果ということかと思いますが、具体的には一番分かりやすいのは解任の無効という効果を与えるのか、それとも損害賠償というところにとどめるのかというところが一番大きく言えば問題なのかと思いますが、いかがでしょうか。御意見ございますか。林委員、お願いします。

○林委員 役員につきましても、会社の中にいて一番よく事情を知っている人であるということからすれば、含めるべきであると考えます。そのようにすることによってコンプライアンスを高めることにも資すると思いますので、役員が退職された後も含めてですけれども、入れるべきです。いろいろ会社法との問題がありまして、339条の1項で解任されたときに2項で正当事由がないということで損害賠償請求が認められるのかどうかという論点があるのですけれども、そこの公益通報者の中に役員を入れてしまえば、そこのところがすっと通るのではないかと一つ考えられると思うのです。ですからここは入れたほうがいいのではないかと考えます。

不利益の措置なのですけれども、不利益の措置から入れるかどうかというのも考えるべきだと思いますが、不利益措置というのが解任されることと、損害賠償請求ができるということと、逆に会社から損害賠償請求されるということがありますので、損害賠償請求されないようにするという形で持っていくことで、役員を保護する必要性があるのかなと考えているのですけれども、そういう観点で、では是正措置を先に取っておくべきなのか、前置すべきかどうかというところなのですけれども、これも恐らく裁判の中で是正措置を取ったのか取っていないのかというところの争いになると思うのですが、必ずしも是正措置ができない場合もあると思いますので、そこを必ず前置すべきというふうには考えないほうがいいのではないかと考えております。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。まず浦郷委員。

○浦郷委員 私も役員というのは職責上、不正行為を是正する立場でありますし、そういう意見をする権限を持っていると思いますけれども、現実問題として役員会や取締役会というものが、そうした是正意見をちゃんと受け入れて不正行為を正すことができるのかというと、必ずしもそのような環境になっていない場合もあると思います。そういう実態があるので会社上層部も含めた会社ぐるみの不正というものが後を絶たないのではないかと考えております。ですので役員もぜひこの対象に含めてほしいと思います。

是正措置をしたことを要件とするかというところなのですけれども、ここも事例としまして代表取締役が違法行為の是正を取締役会で求めたところ、逆に地位を解職されたという事例もありますので、そこは要件としなくてもいいのではないかと思います。

以上です。

○山本座長 ほかにいかがでしょうか。お願いします。

○柿崎座長代理 大変難しい問題だと思うのですけれども、先に解任無効という効果をもたらす規定の置き方について私の考えですけれども、お話したいと思います。

やはり会社法339条の関係が問題になると思いまして、この資料には書かれておりませんけれども、339条1項で取締役の解任はいつでも株主総会の決議でできるという規定がありまして、その解任の理由は、取締役が善管注意義務を尽くしていてもいなくても、単に取締役が気に入らないというものでも解任はできるというのが通説的な見解です。

しかし、339条2項で、正当な理由がなくて役員を解任したということであれば、解任によって生じた損害額というのは賠償しなければいけない。つまり会社と役員の関係というのは従業員とは異なり委任関係にあるわけですから、委任関係であれば当事者間の信頼関係がなくなれば、どのような理由によっても解任することができるという形で株主総会に解任の自由を与えている。その一方で、役員には任期満了までの間の報酬分を受け取る期待権というものがありますので、これを正当な理由なく解任されたという場合には保証するというのが339条2項の趣旨となると思います。

そうしますと、役員が公益通報を行ったことによってなされた解任は無効であるという規定を置きますと、会社法上、株主総会に与えられた解任の自由を制約するおそれが出てくるのではないかというのが、会社法学者の一般的な受けとめ方になろうかと思います。解任無効の効果をもたらす保護規定を置くというのは、会社法の体系との関係で難しいのではないかなと思います。ですから、もし保護規定を置くとしても、公益通報を行ったことが339条2項に定める会社が主張する「正当な理由がある場合」には当たらないということを明記することで、通報した役員というのは解任されたとしても、任期までの報酬相当額というものを損害賠償とするということで保護を与える方が妥当なのではないかと思います。

一方、株主総会の解任と言えども、法令に違反する場合や解任権の濫用というものがあれば、その解任は無効だということになるわけですから、そうすると公益通報者保護法の方で公益通報を理由とする解任は無効だという規定を置いておけば、法令違反の解任となりますから、別に会社法の体系とは抵触しないのではないかという意見もあると思います。しかし、そうした規定を置いたところでどうなるかというと、そういう無効規定を置いたとしても解任が無効とされた後でしばらくして、いや、あの人は気に入らないということで解任したとしても、それは立派な解任理由になるので、解任無効の規定を保護規定として置くことに余り実効性はないのではないかと思います。つまり、会社法はどのような理由であれ信頼関係のなくなってしまって解任された役員がもとの地位に復帰する利益までを、保護法益として認めていないのではないかと思います。ですから解任無効の規定を置くよりも、金銭的な補償を確実にする339条2項の解任の正当理由に当たらないという規定を置くほうが、実効的な保護に当たるのではないかと考えます。

それから、事業者外部の通報の場合、通報に先立って内部での是正措置をしたことを要件とするべきかどうかという点についてですが、これも悩ましいのですけれども、従業員と取締役との地位の違いは、善管注意義務を負っているかどうかということで、本来、不正やその兆候があればそれを是正するための努力をすることが役員の善管注意義務の内容として今は認められております。したがって、従業員と全く同じ保護要件で役員に外部への通報を認めるという点については、会社法の立場からは違和感があります。

しかし、どのような是正措置がなされたことを必要とすべきかが全く問題でありまして、これは会社の規模や業種、状況によって千差万別であろうと思います。上場会社であれば、例えば取締役会に上程することまでも求められることもありますでしょうし、小規模の会社でワンマン経営者が牛耳っているような場合には、そもそも初めから自浄能力を発揮することが期待できないこともあると思います。ですから、抽象的な一般規定を「適切な是正措置を講じた上で」というふうな規定ぶりで置いて、では本当に適切な是正措置があったかどうかは、裁判所の解釈に委ねていくというふうな在り方が考えられると思います。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにございますでしょうか。それでは、お願いします。

○中村委員 私は役員等につきましても、ほぼ退職者と同じ考え方でありまして、受付けということに関しては各社積極的に行っていただいたほうがいいと思うのですけれども、これを公益通報の保護対象とすることに関しては、少し違和感を感じているところでございます。

先ほど委員から御説明がありましたように、そもそも役員は、取締役であれ監査役であれ、自らの職責としてその会社の不正行為を知ったならば、それを是正していくというのが本来の姿であると思います。現実そういうことという御意見もありましたけれども、会社法のそもそもの考え方としてはそういうことであろうと思っておりますので、そういった趣旨から本来的な意味での保護対象として、取締役ないし監査役を捉えていくというのが違和感を感じるところであります。

以上でございます。

○山本座長 今の御意見は、8ページの2で是正措置を講ずることを要件にすることを考えるとしても、そもそも保護対象には含めるべきではないというお考えなのでしょうか。それとも要件を設定すれば、保護対象に含めるということも考えられるということなのでしょうか。

○中村委員 まず最低限としては、まずは自ら行為をするということは要件とすべきであると思いますし、仮にそのことをもって解任をされたという場合に、公益通報者保護という制度をもって保護する必要があるのか。その本人との間である意味、解任の正当性を争うのだと思うのですけれども、その中で解決できることではないかなと思います。

以上です。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。石井委員、お願いします。

○石井委員 実は私、事前に事務局にお尋ねをした点がありまして、先ほど柿崎座長代理から会社法の御説明をいただいたのですが、それに加えて会社法の831条で総会の決議の取り消しをすることが解任されてしまった取締役とか、あるいは監査役も可能だという解釈だと承ったものですから、そうしますと保護されているのは損害賠償請求に加えて、非常に違法な決議を恐らく総会でされた中のリストの中に、御自身の解任の決議が含まれたときに、取り消し請求ということも831条をもってできるという解釈だと聞いたものですから、そうであれば役員の保護というのは現行で一定程度なされたということも考えられるのかなと思っておりまして、もしその辺が違うとしたら、また お教えいただきたいと思うのですが、それを前提としたときには役員を入れるかどうか。恐らく会社法の考えからすると入れないという形になるのだろうと思いますが、入れないという考えがきれいなのかもしれません。ただし、深刻な事案というのは会社ぐるみとか、特に国民の生命とか安全に掛かって非常に深刻な、やむにやまれずこれしかないというケースは想定もされる。そうなってきたときを考えますと一定の条件、先ほどおっしゃったように前置主義を取った上で一定の保護を与えるというのはあろうかと思います。

ただ、実際、そういう厳しい立場に置かれたらどうするだろうかということを考えてみたときに、匿名で行政庁に出すことが考えられる。そうした場合に匿名で受け付けてもらうためには後の論点の先取りになりますけれども、行政の調整措置義務とか秘密保持のところ、そこのところがあるときちんと扱ってくれるのかなという印象を持っておりまして、いずれにしても行政の調査措置義務等々については、これがあることによっての進展が図られるのかなという感じを持っております。

○山本座長 今、出ました行政の措置義務のところは、資料3で申しますと一番最後のところでまた出てまいります。そこで更に議論をしたいと思います。

それでは、お願いします。

○消費者庁消費者制度担当者 今の石井委員の御意見について補足させていただきます。会社法第831条に規定している決議の取消しの訴えの提訴権者については、ご指摘のとおり、決議により取締役や監査役等も含まれるものでございます。他方で、決議の取消しの訴えについては、例えば招集通知を一部の人だけに送っていない等の、手続的な違反を主な対象としているものでございますので、決議が通報を理由とするかどうかについては、直ちには当てはまらないのではないかとも考えられるところでございます。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。それでは、水町委員、お願いします。

○水町委員 一つだけ前提として会社法上の取締役といってもいろいろな人たちがいる。大企業でコンプライアンスがしっかりしているような取締役会と、そうでないケース、取締役という肩書をもっていても従業員と同じように決定権限なく働いているという従業員兼務取締役のような人たちもたくさんいらっしゃる中で、労働者とか退職者との連続線上でどう位置づけるかということを考えなければいけないというのが一つ。

会社法339条、特に1項については、会社法上の解釈がどのようになされているか、これまでの学説なり裁判例なりの中でどう位置づけられているのかを少し精査した上で決めないといけないかなと思います。仮に339条1項と公序違反とか強行法規との関係で、解任有効が絶対だとすれば、有効が絶対であることのかわりに、有効以外のところでどういう不利益処分に対する保護をしていくかということを考えなければいけないですし、逆に有効か無効かは強行法規との関係ではアドホックな関係で、場合によっては判例に委ねるという解釈もあり得るのかということであれば、法律では何も書かないけれども、事案によって判例がこの関係について判断するという解釈もあり得るかもしれませんし、会社法の条文自体はそのことを明確に書いていないので、公益通報者保護法を改正するのであれば、改正法が解釈として会社法と齟齬のないような形でどうするかというのをもう少し検討させていただいた上で、考えを述べさせていただければと思います。

事前の措置については実態が多様なので、法律で形式的に、画一的に決めるというのはやや危険な気がしますということだけ述べておきます。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。

○柿崎座長代理 誤解があるといけないので、私も役員が保護の範囲に入るべきではないという立場では全くなくて、入れるべきだと思います。それは、今、水町委員からお話がありましたけれども、取締役が善管注意義務を尽くしたということは、もちろん最初に会社内部で是正措置を講じなければいけないということがありますけれども、その企業に自浄能力がないということになった場合、更に不正行為が公益に関わる重大なものであれば、それを外部の力を借りて是正していくことも、私は広い意味での役員の善管注意義務の履行に入ってくるものだと思いますので、公益通報の主体からは役員は外すべきではないと思います。むしろ企業内部の多くの情報を持っている主体ということでは、通報者に含める必要があると思います。ただ、役員と従業員との違いというものは法律の建付け上、厳然としてあるので、そこをどう考えるのかが問題だということです。また、役員として、どれほどの是正措置が必要かはケース・バイ・ケースになると思うのですけれども、是正措置などの前置の要件が全く要らないというふうにするのか、抽象的に置いたほうがいいのかという、そこのところが問題だと思うのですけれども、私は置いたほうがいいかなと思っています。

○山本座長 そのほかにございますか。

いろいろな御意見が出たのですけれども、おおむね方向性は一致しているのかなと感じます。そもそも絶対に含めるべきではないという意見はなかったのではないかと思います。

含めるとした場合に要件の設定や効果の部分をどのように考えるかということについて、更に検討を要するということだったのではないかと思います。その要件の設定、内部でまず解決をするということを前置すべきであるという点については、一般論としてはそうではないかというような方向だったと思いますが、ただ、絶対にそれを要件にしなくてはいけないのかというと、そこのところは取締役会等の状況がどうなっているかとか、あるいは当該役員というのが実際にどういう人なのか。むしろ労働者と連続性を持った人なのかどうかというようなことにもよるので、そこのところの要件設定、一般的に前置を求めたとしても、それでは例外をどのように設定していくのかということを、更に検討する必要があるのではないか。

それから、効果の点ですけれども、これはおおむねそうだったのかと思いますが、特に会社法の規定との関係でどのように考えるのか。損害賠償の点については余り強い反対等はなかったと思うのですが、特に解任の効力のところについて、会社法の規定との関係でどのように考えていくかということを更に検討する必要がある。ただ、これをこの場で決め切るのはいささか難しいのかもしれないのです。むしろ会社法の専門家の方にかなり検討していただかないと最終的にはいけないのかもしれませんけれども、損害賠償についてはおおむね意見が、方向性が一致していたと思いますが、解任の効力との関係については、更に特に会社法の体系との関係で検討を要するということだったのではないかと思います。

それでは、次に取引先等事業者という部分ですけれども、10ページ(3)のところからですが、いかがでしょうか。林委員、お願いします。

○林委員 取引先の事業者についても含めるべきであると結論的には考えています。どういうものを含めるのかというところが議論になると思うのですけれども、継続的な契約関係にあったり、請負の契約関係にある事業者については、通報対象の事業者の違法行為を知り得る立場にありますので、それを含める必要性があると思います。実際に不正の問題が発覚しているのも下請、孫請けの企業からの内部通報が多いということがございますので、そこは入れていくべきではないか。難しいのは、どういう人を入れるのかというところだと思います。上下関係、力関係があって、それを通報したことによって契約を打ち切られてしまうというような関係にあるところだけにすべきだと思うのですけれども、ただ、そういう方向性にしたいと思っても規定の仕方が非常に難しいと思いますので、そこのところは限定しないで、取引関係から知り得る事業者というような限定の仕方にするしかないのかなとは思っています。

以上です。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。それでは、春田委員、お願いします。

○春田委員 私も林委員とほぼ同じ意見なのですが、取引先事業者についても通報者保護の範囲の中に含めるべきだと考えております。

今、話があったとおり、継続的な契約だとか下請の契約だとか、そういった中で企業の不正行為を知り得る機会というのが非常に多いということと、それから、そういった通報が結構あるのではないかということで、私は入れたほうがいいのではないかと思っています。

その上で、少し観点がずれるかもしれませんが、13ページ(4)アの積極的な立場からの主な意見ということで取引先のことを触れているのですが、ここの二つ目のグループ会社に関する通報だとか、そういったところにつきましては私どもも検討の範囲に入れていただきたいと思っております。

その次のポツにあるとおり、不正行為を行っている事業者の取引先事業者の従業員が通報を行った場合については、現行法においても事業者間に継続的な取引がある場合ということで、この従業員が所属する事業者による不利益取扱いから保護されることとなっているのですが、そのような場合以外についても、保護を検討する必要があるのではないかという意見には賛成でございまして、例えば取引先事業者の従業員が通報を行った場合に、その従業員に対する保護は通報を受けた取引先が通報者の情報を第三者、例えば同業界内の他社に開示したりということで、他社から通報者が不利益な取扱いを受けた場合の保護も含めるべきではないかと考えているところです。そういった検討もしていただきたい

以上です。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。今の13ページの点はもう一つ後のところで更に話はいたします。

それでは、お願いします。

○柿崎座長代理 私も取引先は含めるべきだと思います。ただ、契約自由との関係という観点から慎重な立場の方が反対されていると思われるのですけれども、そこをどのようにクリアしていくのかなというのが気になるところではあります。もっとも、保護される取引先の範囲の問題としては、これは条文の作り方とか建付けの問題になるのかもしれませんが、契約関係の話に持っていかないで不法行為の問題に持っていって、公益通報を理由に取引先の契約の解除や更新拒否をした場合には違法性が推定されるという規定を置いて、そのうえで契約期間分の得べかりし利益というものを損害額と推定するという規定を置けば、契約を打ち切った方の企業が、契約の解除が公益通報を理由とするものではないという立証責任を負うことになりますから、それを覆さなければ責任を負わなければいけないということで、一定の保護規定にはなるのかなと思います。つまり、対象者として、取引先の事業者の範囲を絞りこむのではなくて、立証責任の法規定のほうで工夫をするという方法もあるのかなと思いました。

○山本座長 今の御意見は、12ページのウとしてその他の意見ということで、対象範囲、今の御意見はおおむねそうだったと思うのですけれども、確かに保護すべき場合もある。実際にそのような事案も現実的にある。ただ、範囲をどうするかというのは非常に設定が難しいということで、一つはウのところにはその他の意見という形で少し一般的な規定を、基礎的な規定を置いたらどうだろうということが書いてあるのですけれども、今の御意見はそのような方向なのですか。

○柿崎座長代理 はい、そうです。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。中村委員、お願いします。

○中村委員 取引先事業者につきましては、不利益な取扱いの禁止ということをどう規定するのかということが一番ポイントになってくるのかなということでありまして、事業者という立場からすると、継続的契約の保証というのはそもそもとして基本的にはないと考えますので、そうした中で、それが通報したことによっての不利益な取扱いであるとして、そもそも事実がないであるとか、それぞれの事情によって取り上げなかったという場合について、そのように解釈されるというのが一番懸念するところでありますので、そこは今、不法行為という話もありましたけれども、そもそも契約を維持しないことが不法行為なのかというところには、企業としては違和感を感じるところで あります。

以上でございます。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 消費者の立場からしますと、退職者であろうと、役員であろうと、取引先事業者であろうと、通報者が誰であっても組織の不正を通報した者は保護の対象となるべきと思います。けれども、この取引先事業者というところでは企業の自由競争力とか、今お話がありましたように通報制度が濫用、悪用されることもあるかと思いますので、全てを認めるというより、どこかで線を引く必要もあるのかなというのは感じております。

最初、林委員からもありましたけれども、事実上、力関係のあるようなところ、フランチャイズ契約などがそれに入るのかもしれませんが、そういうところに関してはこういう公益通報者の範囲に含めることはメリットがあるのではないかと思います。

そのほかにも別途、保護する法律、下請法とかそういうものもあると思いますけれども、それに重ねてこの法でも保護したほうが良いのではないかと感じております。

以上です。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。

意見の方向性は、おおむね一致をしているのではないかと思います。一方で保護すべき場合がある。これは今日の資料の10ページのところにも、判例法理においても一定の契約の継続が保護されている。それから、今、御指摘がございますように下請法等、11ページに幾つかの法律がございますけれども、契約の継続等々が保護されている場合もある。ただ、一方で契約自由の原則と先ほど御意見がございましたが、ということがまさにストレートに適用される場合もあって、なかなかこれを一般的に全部保護すべきだとか、全部保護すべきでないということが言えない。そうすると一つの立法の仕方としては、一般条項を置くということなのかと思います。

ただ、他方で一般条項であると何か非常に広く解釈されるのではないかという御懸念もあったと思いますので、その辺、法技術的にどのような形で保護すべきものを保護し、あるいは保護の対象にならない場合は除くということが可能なのかを、やや技術的なレベルの話になるかと思いますけれども、更に検討するという方向かと思いますが、いかがでしょうか。水町委員、どうぞ。

○水町委員 一つは、これも労働者なりとの連続線上にあるもので、働き方改革の中でフリーランサーも含め多様な働き方、個人事業主が増えていくとする場合に、労働者との保護の間に不連続があってはいけない。多様な働き方を中立的に推奨するためには何らかの保護が及ぶというテリトリーと、更には契約自由なので契約自由でやってくださいというテリトリー。不法行為については恐らく契約自由の前提であって、契約自由のもとで不法行為があった場合には契約関係どうこうよりも、不法行為として損害賠償請求をしてくださいという契約自由のテリトリーの話だと思いますが、真ん中のグレーゾーンのところで労基法上の労働者とは厳密な意味では言えないけれども、経済的 に力関係の差があって、個人事業主であって、体を使って働いていて、お金をもらっているというような状況のグレーなところについては、定義の仕方はいろいろあるかもしれませんけれども、例えば経済的従属性、労組法上の労働者に当たるとか、経済法で言うと優越的地位にある関係にあるとか、ほかの法律等も参考にしながら、そこについてはきちんと法律の中で保護しつつ、あとは契約自由で不法行為というところについては、一般法理の不法行為でいくと、そこら辺のグレーゾーンと一般法理の建付けをどうするかというのを、法律上の規定にする場合にどういう文言になるのかを念頭に置きながら、少し整理して建付けを考えたほうがいいかなと思います。

○山本座長 ありがとうございます。確かにここでも労働者との連続性という問題がありますので、そのことも考慮して、どのように、どこまで具体的に規定をすることが考えられるかを、更に検討する必要があるということかと思います。

それでは、その次に先ほど春田委員から少し意見がございましたけれども、(4)その他のものということで13ページ。さらにこれは石井委員から若干御意見が既にございましたが、14ページの2.通報が行政機関の調査措置義務等の対象となる通報者の範囲を広げる。つまりこれはいわゆる不利益取扱いとして保護することとはまた別にといいますか、それよりもミニマムな内容として、例えば調査措置義務の対象とする、あるいは守秘義務の対象にするという話かと思いますけれども、13ページから14ページにかけての部分についていかがでしょうか。川出委員、お願いします。

○川出委員 14ページの2のところなのですが、ある通報が行政機関の調査措置義務を生じさせるかということと、その通報者を不利益な取扱いから保護するというのは全く別の話ですから、それらを切り離すこと自体は全く問題ないですし、それが望ましいと思います。他方で、もう一つの通報の秘密保持に関しては、通報を受ける、私の理解では、守秘義務というのは、結局、不利益な取扱いを防止するために課すものであると思いますので、不利益な取扱いからの保護は認めないで、通報に関する秘密保持を規定することには違和感を覚えます。守秘義務を課すのであれば、その前提として、不利益な取扱いは許されないということにしないと一貫しないように思います。

もちろん、不利益取扱いの防止とは異なる守秘義務の目的が存在するのであれば、切り離しも可能ですので,その点を検討することが必要であると思います。

○山本座長 ありがとうございます。不利益取扱いの防止と守秘義務との関係を少し整理したほうが良いのではないかということですけれども、この点についてほかにいかがでしょうか。

まず13ページ(4)その他につきましては、これは春田委員から少しお話がございました。あとはざっと13ページを見たのですけれども、もう少し具体的にこういうもの、こういうものというふうに想定をして議論をし、まとめていかないと、その他とくくってしまうのは難しいという気がしますので、もう少し具体的にこういうものが考えられるのではないかということを更に詰めた上で、必要があれば議論をするということでいかがかと思います。

2.につきまして申し上げれば、行政機関の措置義務については、私も誰から通報があったかということによって行政機関が扱いを変えるということは、なかなか説明ができないのではないかと思います。その意味で言うと仮に不利益取扱いからの保護の対象となっていない者からの通報であったとしても、だから別に調べなくていいということにはならないはずで、そこのところはしたがいまして14ページに書かれているように、行政機関の取扱いとしては不利益取扱いからの保護の対象になっているか否かに関わらず、対象に含めていくという方向で考えてよいのではないか。これは私の専門と若干関わるところですので、そういう感じを持ちます。

守秘義務との関係につきましては、今、川出委員から説明がありましたように、不利益取扱いの話とこれが連動して考えられてきたとすると、確かに2のところで不利益取扱いと切り離して守秘義務の対象にするというのは難しくなるかと思いますので、もし守秘義務の対象を広げるとすれば、不利益取扱いの予防という趣旨とは切り離して、守秘義務そのものに重要な意味があるんだという形で制度の趣旨を明確にした上で、不利益取扱いからの保護の対象になっているか否かを問わず、守秘義務の対象にすることになろうかと思いますので、そこのところの守秘義務の独自の意義と申しますか、不利益取扱いの予防ということとは独立の意味というものを確認した上で、ここについては考えていくことになろうかと思います。

以上で公益通報者の範囲については終わりましたけれども、よろしいでしょうか。

≪3.通報対象事実の範囲≫

○山本座長 その次の議論がまだございますので、移りたいと思います。資料4「通報対象事実の範囲」につきまして、消費者庁から説明をお願いいたします。

○太田消費者庁消費者制度課 御説明させていただきます。資料4でございますが、資料の構成につきましては先ほどの通報者の範囲と同様となってございます。時間の関係上、ポイントを絞って御説明をさせていただきます。

まず1ページ目、第1の問題の所在の現行法の規定でございますが、四角の枠の中に現行法の規定をお示ししてございます。枠の下に解説がございますが、現行の公益通報者保護法におきまして、通報対象事実につきましては幾つか限定がございまして、まず一つ目といたしまして犯罪行為または犯罪行為となり得る規制違反行為となる法律違反であるということでございまして、これによりまして刑事罰のない規制法違反でありますとか、あるいは民事ルールといったところについては対象に入ってこないというような制限がございます。

二つ目のポツにございますように、更に法律の目的による限定というものがございまして、個人の生命または身体の保護、消費者の利益の擁護等々、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に係る法律違反であることが必要になっているということでございます。

2ページ、さらにその通報内容が法令違反に限定されているということでございまして、これにより条例違反は入ってこないということでございまして、更に対象法律というものを法律の別表と政令で掲げているということでございます。これによりまして参考資料4という色つきのペーパーがございますけれども、そちらに通報対象事実の範囲とございますが、そちらの赤枠でくくったところが通報対象事実の範囲となってくるということでございます。

さらに「また」以下でございますが、現行法におきまして通報対象事実につきましては、既に生じているか、またはまさに生じようとしていることということで、切迫性の要件というものが必要とされているという状況でございます。

「2.立法時における考え方」でございますが、(1)につきましては通報者の範囲と同様でございますので、省略させていただきます。

(2)刑事罰の担保がある法律に限定したことについてでございますけれども、まず法律違反行為に限定した理由といたしましては、法令違反以外ですと通報対象が不明確になってしまうといった説明をしてきております。さらに最終的に刑罰によって担保されているものに限定した理由といたしましては、それ以外の法律となりますと構成要件が不明確になってしまうといったことですとか、相対的に軽微な違反行為であると考えられるという説明をしてきているところでございます。

(3)といたしまして、法律の目的による限定をすることについてでございますけれども、こちらにつきましては、こういった目的の違法行為が起こった場合に広範囲に及ぶ回復しがたい影響が生じるといったことですとか、事後的な救済は効果的でなくて未然防止、拡大防止の観点から、こういった形での分野の法律を入れていくことが必要だという説明をしてきているところでございます。

3ページ(4)といたしまして条例を含めないことにつきましては、地域によって保護される通報の範囲に差が生じることは適当でないという説明がなされております。

(5)列挙方式についてでございますけれども、これにつきましては法律の目的による限定というものがある中で、通報対象事実の範囲を明確にする必要があるという形で、こういう形にしたということでございます。

(6)見直しの関係でございますけれども、国会審議の際にもこの分野の取扱いについては必要な時点で見直す旨の答弁を行ってきているということでございます。さらに国会の附帯決議におきましても、本法の見直しに際して通報対象事実の範囲についても再検討を行うことが求められてございます。

(7)切迫性の要件でございますけれども、これにつきましては単に「生ずるおそれ」とした場合に、その内容が不明確になってしまうということで、明確化を図る観点からこういった切迫性の要件を置いたという説明をしてきております。

4ページ目「3.立法後に明らかとなった課題」でございます。こちらにつきましても、詳細につきましては参考資料3にお示ししておりますので、併せて御参照いただければと思います。(1)といたしまして、現に通報対象事実の対象外の分野におきましても、様々な不正行為が起こっているということで、事業者の企業価値などが毀損するといったことが起こってきているとい うことですし、(2)にございますように、これに基づきまして通報がなされた事案も散見される。さらに(3)にございますように、対象外の分野の通報を利用したことを理由にして不利益な取扱いを受けるといった事案も現に発生してございます。(4)に相談例をお示ししてございますけれども、税法、補助金関係、公務員法等々、対象外の分野で様々な相談が寄せられている状況にございます。

5ページ(6)を御覧いただきますと、私ども消費者庁でヒアリングを行った結果によりますと、通報する側からは刑罰ですとか行政措置の対象となる行為かどうかというのを判断して通報するといったことは、一般の労働者にとっては難しいのではないかといった御意見もいただいております。他方、事業者側からにおきましても、リスク情報を幅広く収集するといった観点からは、現行法で通報対象事実とされている内容以外の通報についても、現に既に受け付けているんだという御意見を頂戴しているところでございます。

「4.ガイドラインによる措置」について書いてございますけれども、この点につきまして民間事業者向けガイドラインにおきましても、リスク情報の早期把握の観点からは、通報の受付けをする対象についてはなるべく幅広く設定することが適当であるということで、その受付対象を広げるということを推奨してきておりますし、行政機関向けのガイドラインにつきましても、通報対象事実以外の法令違反の事実、基本的には行政機関が処分等の権利を有する者となりますけれども、こういったものについても受付の範囲に含めるということをしてきてございます。他方、通報者の範囲と同様で、ガイドラインによる措置につきましては一定の制約があるところでございます。

6ページ、第2といたしましてこれまでの主な議論を整理してございます。

まず1.のところ、刑事罰による限定というところでございますけれども、これを外すということについて積極的なお立場からは、刑事罰以外の方法によって公益を図っているような場合もあるのではないかという御意見ですとか、刑事罰に該当するか否かといったことは、現実にはなかなか判断が難しいといった御意見が寄せられております。

(2)といたしまして、慎重な立場からの御意見といたしましては、法に解雇無効などの強い効力を持たせているといった観点からは、公益性のある事案あるいは重大性のある事案についての通報であることが必要なのではないかという御意見がございます。

なお、参考のところにいろいろ書いてございますけれども、二つ目のポツにございますように、法令の実効性担保の手段としまして刑事罰を定めてなく、行政措置や過料のみで定めているような法律も多数、男女雇用機会均等法ですとか、パートタイム労働法など多数存在するということでございます。さらに法律の別表ですとか政令で列挙されている法律につきましても、規定されている条項の全てが通報対象事実になるわけではなくて、あくまでも条文に罰則の対象となっているという条項のみが、その対象になってくるという点に御留意をいただければと思います。

8ページ、2.といたしまして法律の目的による限定を外すかどうかという論点でございます。これにつきまして外すことに積極的なお立場ですけれども、犯罪行為であれば、そういった法律の目的のいかんに問わず、通報することに意義があるのではないかといった御意見。さらに特定の目的以外の法律を対象外とすることによって、どういう意味があるのか明らかではないのではないか。それによって通報者の予見可能性が低下するといった弊害があるのではないかという御意見をいただいているところでございます。

他方、(2)といたしまして慎重なお立場からの御意見としました場合には、こういった特定の目的による法律という限定を一律に外した場合に、第1条の法目的との関係、消費者問題等に対処するための法律という現行法の位置づけに変化が起こるのではないかという御指摘もございまして、参考のところにございますように、法第1条の目的を維持しつつ、こういった限定を外すといったことについて合理的な説明ができるかということが論点となるということでございます。

さらに3.の条例を含めることにつきまして、入れることに積極的なお立場といたしましては、条例でも刑事罰規定が置かれている点では法令と同様ということで、法令と条例を区別する必要はないのではないかといった御意見でありますとか、9ページ目にまいりますと、現に公益通報者保護条例などを定めている地方公共団体におきましては、保護される通報の範囲に差が生じているということで、余りそれを対象外とする根拠はないのではないかといった御意見がございます。

他方、慎重なお立場からといたしましては、現状のように法目的による限定といったものを置いた上で、その中で条例を入れていくことになると、列挙しなければならないということでございますので、実務的に困難なのではないかという御意見を頂戴しているところでございます。

9ページの4.でございますが、これは政令列挙方式についての是非というところでございますが、基本的には単に民事効を発揮させるという意味では余り必要性はないのではないかという御意見もあるところでございますが、(2)の慎重なお立場から予見可能性の確保ということは非常に重要であって、現行の法目的による限定を維持するのであれば、こういった列挙方式というのは必要なのではないかという御意見を頂戴しているところでございます。

9ページ5.の切迫性の要件のところでございますが、外すべきというお立場からは、不正の芽を早期に摘んでいくという観点からは、通報対象事実が生じるおそれがあるといった場合も含めていく必要があるのではないか。さらにこの切迫性要件も「まさに」という文言はなかなか分かりづらいといった御意見を頂戴しております。他方、慎重なお立場から、こういった要件を外してしまった場合にどの範囲まで扱えばいいのか分からなくなる。際限がない状況になるといった御意見ですとか、10ページのところでは、これがあることによって具体的にどのような弊害があるのか明らかでないといった御指摘もいただいているところでございます。

御説明は以上でございます。

○山本座長 ありがとうございます。

資料4の部分の論点ですけれども、現行法の通報対象事実に含まれない事実に関する通報を行った通報者を保護する必要性があるのか。あるとした場合に具体的にどのような内容の通報について保護するかということです。資料2で申しますと「2.通報対象事実の範囲」の12の各項目に沿って順次、意見交換を行うことになります。資料4で申しますと6ページの第2「1.最終的に刑事罰の担保がある法律違反という限定を外すことについての是非」というところから後の部分が関連する箇所となります。そこで今も申しましたが、刑事罰による担保という限定との関係について、資料4で申しますと6ページ1.の部分です。8ページの頭の部分まで続いておりますけれども、ここの部分についてから入りたいと思いますが、いかがでしょうか。林委員、お願いします。

○林委員 刑事罰の担保があるということについて、この要件は外すべきではないかと思っています。というのも公益通報の御相談を受けるときに必ずあるのがパワハラ、セクハラ、それから、補助金の問題であったり税法の問題がありますので、そういう困っておられる通報をしたいという方たちの事情からすると、それを通報したことによって不利益を受けることもままあるようですので、それは含めていくべきではないかと思います。

それから、刑事罰に当たるかどうかということの判断なのですけれども、相談を受ける弁護士の側でも、これは当たるのかどうかというのを検討するのに相当時間が掛かりますし、たくさん法令がありまして、その法令を一つ一つ全部チェックしなくてはいけないというのは弁護士でも大変。であれば一般の人だったらもっともっと大変なことになりますので、そういう負担を通報者のほうにかけるべきではないかと考えるというところが理由です。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 この点に関しましては、私どもの全国消団連でも以前、最終報告書のところでパブコメで意見を出しております。刑事罰の担保がある法律違反という限定を外すべきという意見です。こういう規定、限定があるということが周知されていないということ、それから、実際に公益通報をする際に、法の保護の対象となるかどうかというところが多くの国民は理解できていないと思います。広く国民の利益に資するよう、通報対象事実を限定するのではなく広げるべきだと思います。

ではどこまで広げるのかというところなのですけれども、税法とか公務員法などの法律であっても公益に関する問題があると思います。国民として、社会として許せないこと、そういう不正が明らかになり是正されることを期待しており、そういう意味で公益通報者保護制度というものは生かされていくのかと思いますけれども、対象事実が限定的で、幅広い法律違反が適用とならないこと自体に私どもは違和感を覚え、そのこと自体が公益をそこなっているのではないかと思います。公益の観点で対象事実の範囲を追加的に拡大していくという方向性が良いのではないかと考えています。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。中村委員、お願いします。

○中村委員 現行のものから一歩たりとも出てはいけないと言うつもりはないのですけれども、範囲を外してしまうということには反対でございます。例えば先ほど御指摘のありました参考資料4の3ページで表がございますが、例えば努力義務違反でありますとか、民法の契約違反といった観点というのは、当然のことながら見解の相違というか齟齬の問題とか、そういうこともありますし、あくまでも努力義務については努力ということでもございます。

条例ということに関しましては、必ずしも企業であっても常に全て把握できているわけではないという場合もございますし、なかなか把握しにくいという点も含めまして、無限定に全ての内容を含めさせてしまうと、本来の公益通報という趣旨と違った使い方をされてしまう可能性がそれなりに高いと思います。

他方で犯罪行為であればという形で書いてあるのですけれども、犯罪行為であったり、例えばここでございます高齢者の虐待というのは、むしろ犯罪行為ではないかと私は思いますので、そういう趣旨で基本的には刑事罰が科されているような重大な内容ということと、民事的な内容であったり自主規制であったり、そういったことは分けて考えるべきではないかと思います。

ちなみに、事業者としての意見ということの中で、そういうものを受け付けていますということの御紹介があったのですが、私どもも法令根拠の別によって通報を受け付けないということは考えていないのですが、その問題と不利益、例えば契約違反ということに対して、いやそれは契約違反でないということをもって場合によって例えば契約を切るとか、そういうことについても公益通報という形にしてしまうと、そもそもの公益通報の保護という趣旨からは外れていってしまうのではないかと思います。

以上です。

○山本座長 柿崎座長代理、お願いします。

○柿崎座長代理 私は刑事罰の制限は撤廃するべきだと思います。諸外国の例を見ても、刑事罰で担保されているものに限っているところはほとんどないということが、前回の参考資料の中で示されていると思います。

ではどのように規定するのかということですが、現在、列挙方式になっていますが、そこに例えば、これもアイデアですけれども、包括規定を付けるのはどうでしょうか。フランスのサパン第2法のように、「その他、公益に重大な影響を与える脅威」とか、イギリスのように「個人の健康や安全に対する危険」というような一般的、抽象的な形での包括条項を追加するという考えです。法令が列挙されているのに包括条項を付ける意味があるのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、金商法のインサイダー取引規制なんかは、延々とインサイダーにあたる項目が列挙された上に最後にバスケット条項として包括条項があります。ですから、公益通報者保護法の方でも、列挙されている法令に当たればそれは立証が簡単にできて、そうでなければ、つまり刑事罰に担保がなくても公益に重大な影響を及ぼす法令を含める包括条項にあたることを立証できれば保護されるという建付けにすることが考えられます。公益に重大な影響を及ぼす事項は、時代によっても変わっていくと思いますので、そこは開かれた構成要件という形で、裁判所でその該当性を判断しても らうという建付けにするような形のアイデアはいかがなものでしょうか。刑法の先生に聞いてみたいところです。

○山本座長 では川出委員、お願いします。

○川出委員 まず、最終的に刑事罰の担保がある法令違反に限っている点について、それを支持する見解からは、犯罪行為というのは公益性のある事実であるが、それ以外の行為は必ずしも公益性が明らかでない場合もあるということが言われています。しかし、刑罰規定の中には、例えば消費者といった不特定多数の人の利益を保護しているのではなく、個人の法益を保護するものもありま すので、同じ法令違反行為であっても、それが犯罪として位置づけられると公益性を持つというのは、結論を先取りしているように思います。ですから、公益性があるかどうかということよりも、犯罪とされている法令違反行為は、通報を通じてそれを是正ないし予防する必要性が強いということが、限定の理由であると考えるべきであろうと思います。ただ、そのように考えた場合、現実の立法において、ある法令違反行為に罰則を付けるかどうかについて、違反行為の重大性を厳密に検討がなされているのかということには疑問もあります。特に行政法規などを考えると、ある意味、当然にように違反に罰則が付けられていて、しかし、実際にはほとんど適用されないということも起こっています。他方で、民事上の違反にとどまるものでも、罰則が付けられている法令違反行為と比べて、是正や防止の必要性が高いものもあるだろうと思いますので、そういう点からは、必ずしも最終的に罰則によって担保されているものに限定する必然性はないと思います。

ただ、他方で、立法時における考え方のところで御説明がありましたように、罰則を付ける場合には、構成要件の明確性ということが検討されますので、それ以外の法令違反に比べれば、対象行為が明確になっているということはいえます。それに対し,例えば先ほど出てきた民法上の不法行為まで法令違反行為に含めることになると、そこに何が入るのかは、裁判になってみないと分からないということにもなりかねません。さきほどご提案のあった包括条項によってある程度の限定ができるとは思いますが、現在に比べれば、やはり不明確な点は残ります。それでも構わないというのも一つの割り切り方ですが、それにあたるかどうかをまさに個別の事案ごとに判断せざるを得ないようなものについては、公益通報者保護法ではなくて、一般法理で個別に判断するという行き方もあるように思います。

○山本座長 そのほかにございますか。春田委員、お願いします。

○春田委員 私も刑事罰の担保の有無による限定の緩和を行うことについては、先ほど話があったとおり労働者たる通報者の負担だとか、通報者自身がこれは法令違反に当たっているかというのはなかなか分からない部分もあろうかと思いますので、そういった意味で公益通報を促進させるという観点から有用であると捉えています。

ただ、そのことによる受付窓口の対応だとか秘密漏えいが増えていくとか、先ほどお話があったとおり不正目的で通報が増えてしまうことも懸念されるわけでありまして、その効果と副作用につきまして、もう少し検討する必要があるのかなと思ってございます。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。では、お願いします。

○亀井委員 私も現行法での限定の仕方は、もう少し緩める必要があるのではないかと思っております。ただ、通報をお受け付けしている身からしますと、何回も申し上げていますけれども、個人的な御不満、待遇の御不満ですとか、あるいは上司もしくは同僚の方との人間関係の軋轢によると思われる通報が大多数を占めてしまっています。ですので法の整理はいろいろと必要だと思うのですが、それがこの法の理念ですとか狙いなどを組織に落としていったところのガイドや手引きのところで、個人の御不満は対象外ですと書いていただけると、私どもとしてはとてもやりやすくなります。

追加で申し上げますけれども、個人の御不満を組織が聞く必要はないと思っているわけでは全くございませんで、それは従業員満足度向上のプロセスで対応すべきことだと。最近増えておりますのが、そういう個人の御不満を匿名で解決してほしいという通報が非常に増えておりまして、組織側として対応が手詰まりになるという案件、つまり塩漬けになるという案件がどんどん増えてくると、結局、通報者の方からの口コミですとか投稿などによって組織の内部通報制度の評価が落ちてしまう。そうなるとかえって通報されなくなってしまう、信頼されなくなってしまうということもだんだん懸念してきております。ですので何とか個人の御不満は異なるプロセスで対応すべきというところをどこかではっきりとさせていただければなというのが私どもの願いです。

○山本座長 石井委員、お願いします。

○石井委員 今の在り方を見直して拡大していくという宿題をいただいていることもありまして、また、現実問題としてこれを外していくというのは私も大いにいいのではないかと思うのですが、その広げ方といいますか、どれを入れてどれを入れないかというところが難しいという点が残っているのだろうなと思います。

もう一つ、留意点としまして、これは最後のほうの議論になってくると思うのですが、不利益取扱いについて罰則を付すという形をもし想定するとなったときに、罰則がない法律を対象にすることがどうなのか。最後の点の議論だと思いますが、そのバランスというのは考えていく必要があるのだろうと思います。

さらにはいろいろ内部通報を会社のほうで受けますと、おっしゃるとおりパワハラ、セクハラ、マタハラというハラスメント系というのは非常に多いですし、今、労働局の個別紛争でも非常にその問題が増えている。現在これはこちらの法律の通報の対象ではない。法律の対象ではないのですが、仮に労働局のあっせんなどを求めた場合には、これは不利益取扱い禁止という規定が既にありまして、そういう意味で今、必然性の度合いがすごく高いかというと、そうではないという考え方もあり得る。すなわち何をとっていくかということについては、より皆さんが望むものを上手に取り込んだ形で、かつ、一つのラインとして先ほど柿崎座長代理からも一つの案がございましたが、その入れ込み方に相当難しさがあるなという感じを思っています。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。水町委員、どうぞ。

○水町委員 一般法理として公益通報者保護法理というものでいくと、公益目的という一般的な縛りだけなのです。なので列挙して細かいところまでやるか、それとも一般法理と同じように公益目的だ。ただ、一般法理と同じであっても私的目的は含まれないので、公益目的という要件は少なくとも入ると思いますが、あとは列挙方式にするか、それとも列挙しないで最終的にバスケット方式みたいなもので法の趣旨にのっとったような公益目的の射程というものがある程度特定できるかというところの選択かなと思います。

一つ、今、石井委員がおっしゃったように最終的に罰則を付けるか、行政上の措置も考えるかというときには、これは内容を特定しなければいけないので、最低限、罰則もしくは行政上の措置を行政が責任を持ってやりますというときには、刑罰もしくは少なくとも行政上、勧告とか企業名公表の対象になっているもので、勧告を付けたり企業名公表をするときもかなり慎重な議論をして、行政として対応できるかを考えた上で法律上の要件を設定してきていますので、そちらの議論になっていけばそうなりますが、民事上の効力としての不利益取扱いの禁止というのであれば、目的のほうからある程度限定していくということでもいいのかなと思います。

○山本座長 それでは、お願いします。

○後藤委員 今、罰則というお話があったのですけれども、行政上の罰則というのは誰が、どういう形で判断をするということをお考えなのかお聞きしたいと思います。

○山本座長 それは不利益取扱いした場合にということですか。

○後藤委員 はい。

○山本座長 それ自体は後でまた議論をするところですので、今の御指摘は、そこで議論をするときに、ここでの議論との関連をよく意識すべきであるという御指摘でしたので、不利益取扱いの場合の罰則それ自体の話はもう少しの後のほうでやるのですね。そこのところで議論しますので、今の議論は少しテイクノートしておいていただいてということかと思いますけれども、よろしいですか。

そのほかにいかがでしょうか。私も専門のことがございますので、少し考えることがございますが、基本的には川出委員が先ほど言われたように、6ページに慎重な立場からの意見として、公益性が罰則が付いていると強いからというのは理由になっていないのではないかという気がいたします。公益性の強弱だけで罰則が付いている、付いていないということが決まっているわけではないので、それは余り理由にならないだろう。

そうすると明確性の観点ということがもう一つあるのですが、少なくとも行政処分の対象になるとか、過料等の行政措置の対象になるということになりますと、これは法律上、根拠を置いて一定の法律上の構成要件を設けて、更に実務上は、行政手続法上要求されることもありますが、基準を定めるということまでやるわけです。だからそれでおよそ対象になるかならないかということが明確でないというふうには、なかなか言いがたいのではないか。これは後で出てくる条例上も例えば行政措置の対象になります、例えば処分の対象になりますとかいうことになれば、これは条例で明確に規定を置かなくてはいけないわけなので、明確性という観点からいけば、余りそれは問題にならないのではないかという気がいたします。

ただ、恐らく例えば民事法規違反とか、先ほど御指摘がございましたけれども、契約違反とか、そうなってくると、ではどこまでなのかという問題が恐らく生じるので、そこのところでどのように線を引くのか。

今、一つのアイデアとして、一般条項を置くような形で何か範囲が区切れないかというアイデアがございましたけれども、実際にどのような形で規定を置くことができるか。やや立法技術的な問題にもなりますが、その辺りどこまでというところをもう少し検討する必要があるかと思います。全体に今の刑罰という限定は狭過ぎるという点では、おおむね意見が一致しているのではないかと思います。

私が今ちょっと申し上げましたけれども、明確性という観点から言っても明らかに法律あるいは条例で明確に定められている部分もあるわけですので、そこまではおおむね意見が一致しているのかなと思いますが、そこから先のところですよね。必ずしも明確でないところがある部分、あるいはそもそも公益の問題なのかどうなのかということが明確でない部分があるので、そこをどういうふうに考えるのか、あるいは立法技術上どのように書いていくのかということがなお課題として残っているということかと思いますが、そのほかにございますでしょうか。

それでは、余り時間がございませんが、その次の法目的による限定というところですが、これはいかがでしょうか。8ページの2.というところです。これも若干私の専門に関わるので感想をまず申し上げますと、現在、法目的というのは法律を全部、この法律の目的はこうだという判断をしているのか、この規定の目的はこうだという判断をしているのかという点についてはいかがですか。これは基本的に法律丸ごとで判断しているわけですか。

○消費者庁消費者制度課担当者 基本的には、法律の第1条等にその法律の目的規定が置かれているわけですが、その目的規定を検討する等して、その法律が、国民の生命、身体、財産その他の利益に関わる法律かどうかを判断しております。

確かにおっしゃるとおり、国民の生命、身体、財産その他の利益に関わる法律であっても、その個々の条項の中には、一見、国民の生命、身体、財産に直接関わらないと思われるような条項もあるわけですが、その法律全体として国民の生命、身体、財産に関わる法律であると判断される場合には、個々の条項も有機的に連関しているということで、国民の生命、身体、財産に関連する条項と考えられているところでございます。

○山本座長 目的が何かというのは実は必ずしも自明でないというか、なかなか難しいところがありまして、厳密に申し上げれば法律の中でもこの規定の目的はこれだけれども、別の規定の目的は違うとか、更に言いますと例えば、主な目的はこうなのだけれども、こういう目的も含まれているというようなことが細かく言うとある場合もあって、最高裁の裁判例でも県の漁業調整規則が、産業振興が目的なのだけれども、しかし、究極的にその魚を食べる人の健康の保護も目的にしているのだということを言ったものがあったりして、私自身は目的を基準にして区別するということが、やや専門的な観点から言うとどれだけ合理性を持っているのだろうかという点に若干疑問を持つのですが、そのほかにいかがでしょうか。

では、その次、条例を含めることについて、先ほど若干議論がありましたけれども、この点についてはいかがでしょうか。これも条例には公益性がないとは言えないはずですし、条例を定めることによって地域によって取扱いがばらばらになるからということが根拠として挙がっていましたけれども、これを言い出すと条例をおよそ定めることがいけないのではないかという話になってしまうのです。ですからここに挙がっている理由は少なくとも私は成り立たないのではないかという気がしていて、ただ、むしろ条例に違反した等の場合にどういう措置が予定されているかとか、条例の規定が漠然として本当にごく一般的な行政指導の要件にしかなっていない場合があるのでないかとか、先ほどのどこまで範囲に含めるかという部分では確かに条例についても、これは法令等の場合と同じですけれども、もちろん考える必要があるが、条例だから外す理由は余りないのではないかという気がしているのですが、いかがでしょうか。

○林委員 私も同じ考えでして、条例だから外すという根拠は全くなくて、先ほど柿崎座長代理からもありました包括条項を入れるんだとかいうところの縛りで何とでもなる話ではあると思いますので、条例は入れるべきだと思います。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。後藤委員、お願いします。

○後藤委員 条例を入れることに反対はしませんけれども、条例の中身が非常に多岐にわたっていると思いますので、公益通報制度に合致する内容なのかどうか検証した上で、その保護に値するのかどうか。そこを勘案した上で対象にすべきであると考えます。

○山本座長 具体的な条例等で、こういう条例に違反したようなものについての通報は保護に値するのではないかというような、あるいはもう少し例を何か出していただくとよろしいかもしれません。その上で、およそ一般的に条例を外すということには、理由がないことについては今、意見が大体一致をしているのではないかと思うのですが、具体的に、あるいはここまで広げるのは少し難しいのではないかということがあるかもしれないので、更に具体的にこういうものが条例違反として公益通報の対象として考えられるというものを何か出していただくと、イメージがもう少し湧くのかなと思いますが、それでは、お願いします。

○柿崎座長代理 先ほど申し上げればよかったのかもしれませんけれども、通報対象の範囲を刑事罰の実効性が担保されている法律から刑事罰を外すという方向でいくとすれば、通報対象の法令の範囲を絞り込むとしたらまさに目的で制約するしかないだろうと思います。そうすると先ほどの国民の生命、身体、財産を直接目的とした法律ということですと、直接性というところで先ほど山本座長から必ずしもそれが直接でない目的もあるので、なかなか難しいというお話がありましたけれども、そこはこの法律の目的、公益通報者保護法の目的と絡めないと、際限なく、それこそ契約違反とかそういう話になってきますので、目的規制で絞り込む必要があるのかと思います。その中にもちろん条例が入ってきてもいいと思うのですが、刑事罰は外すけれども、直接でも間接でも目的規制の絞り込みは置くというので足りるのではないかという意見です。

○山本座長 私が先ほど目的について申し上げたのは、行政措置が要求されているものについて想定していたので、そうではなく純粋に民事上のルールとしてというものは想定していなかったのです。

そのほかにいかがでしょうか。あと9から10ページに通報対象事実を法の別表や政令において列挙しないことの是非、それから、切迫性の要件を緩めることについての是非ということですけれども、4については先ほど議論もあったのですが、そもそもの刑罰というところをまず外すことを前提に考えたときに、どういう法律等の書き方等になるのか。若干、技術的な問題もあるのですけれども、いかがでしょうか。

先ほど一般条項方式という御意見もございました。それから、行政処分とか過料とか、この辺までであれば、結局これは法令等に明確に根拠がなくてはそれはできないので、当然、法律等に書いてあるものという縛りは別に列挙しなくても、およそ限定は付くいうことではあるのです。ただ、そこから更に広げていくときにどこまでかということが明確でないので、そこをどのように定めるのかという問題かと思いますが、いかがでしょうか。それでは、中村委員、お願いします。

○中村委員 先ほど来、目的で規定をするでありますとか、刑事罰や行政措置ということも含めてというような、いろいろ御意見は出ているわけなのですけれども、いずれにしてもどこまでかというところの予見可能性は必要だと思っておりまして、そういった意味で列挙をしないことによって無限大に近くなってしまうということについては懸念がございまして、規定の仕方で本当に明確性や予見可能性を担保できるのかというところは、現時点では懸念があると思います。

以上です。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。林委員、お願いします。

○林委員 この列挙方式は、1月1日現在で464本あると言われていまして、膨大な法律の数なのです。それを一々見るのか。それが挙がっているから予見可能性があるのかというようなところもありますし、その法律だということで通報する側も特定しなければいけなくなってくるということもあります。全部が網羅できているのかという問題点もあって、消費者庁の方々はそれを検索するため、新しい法律があるのではないかということも調査しなくてはいけないという負担にもなっているというのも聞きます。本来的な私の言いたいことは、ここは列挙すべきではないというところなのですけれども。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。これは前からのお話ともつながっているのですけれども、6ページの刑事罰の担保がある法律違反という限定を外すことについての是非ということですが、これについて外すことについてはおおむねの意見の一致があったのではないか。ただ、どこまでにするかというところが、あるいはそれをどう表現するかというところについて、まだなお検討する必要がある。

さらにそこはある程度段階を区切る必要があって、法律とか条例に明確に根拠が置かれていなければならないような措置の対象になっているもの。これは法律等に明確に定めがあるわけなので、ここまでについては特に明確性の観点からも問題はないだろう。そこから先のところをどのようにするのかということで、2の特定の目的のというところに関しても、恐らくそこのところの必ずしも明確でないところについて、公益目的という形で一般条項を置く形で限定をするのか、それではやや不明確なので、もう少し具体的に何か書いていく必要があるのかどうかという辺りが問題かと思います。今の中村委員の御懸念もそういうことかと思います。

この場合にもいろいろなやり方があって、積極的に列挙するやり方もあれば、むしろこれは外すという形で書いていくようなやり方もあると思いますし、両者の組み合わせということもあって、この辺はかなり技術的にはいろいろなやり方があると思いますので、その辺りをもう少し更に議論する必要があろうかと思います。

条例についても同様で、条例だから外すという根拠は余りないのではないか。ただ、もう少し具体的に条例の規定を見てみないと、どこまでということについては更に検討を要するということかと思います。

最後に、切迫性の要件を緩めることについてということだけ残ってしまいましたが、これについてはいかがでしょうか。春田委員、お願いします。

○春田委員 前回、この場で発言しまして論点に加えていただいてありがとうございます。この関係でございますけれども、5.(1)にありますとおり、企業の不祥事が昨今、起こっている中で、不祥事の芽を早期に摘んでいくという観点、あるいは不正行為の早期把握、未然防止という観点、それから、通報者にとって切迫性の有無を判断することはなかなか容易でないという部分もございまして、「まさに」という切迫性の要件を見直すことが必要ではないかと考えているところでございます。具体的には、そういった意味で「通報対象事実が生じるおそれがある場合も」といったような法改正の見直しを検討いただければと思っているところでございます。

○山本座長 そのほかに今の点につきまして。それでは、浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 私も同様です。「まさに」という言葉が必要なのかどうかというところで「おそれがある場合」でいいのではないかと思います。不祥事を予防するという意味で早目に通報されるべきでありますし、まさに生じようとしているのがいつなのか予測するというのは非常に難しいのかなと思います。

また、外部に通報したからといってその通報先がすぐに動くわけではなく、本当に問題だと認識したときに動くということから考えると、時間の要件ではなくて、そこまでの事実の積み上げが要件になるのではないかと考えております。

以上です。

○山本座長 今のは事実の積み上げがということは、ある程度何か違反事実があるということについての証拠があればという意味ですか。

○浦郷委員 そうです。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。それでは、中村委員、お願いします。

○中村委員 まず、「まさに」ということがあることによって、不祥事の芽を摘めるような事例というのがどれだけあるのか、若干、今までの事例からすると既に起こっていることが問題であるということかと思いますし、事前の段階で通報するというシチュエーションというのは、そんなに余り私は想像できなくて、そういったことで先ほど浦郷委員からもございましたように、事実の積み上げがあってということだと、それは切迫性があるのかなという部分もある中で、現実に起こりそうだというところの蓋然性は、ある程度担保されてもいいのではないかという気がいたします。

以上です。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。それでは、お願いします。

○柿崎座長代理 私は切迫性の要件は外すべきだと思います。現代は企業のリスクマネジメント経営といいますか、そういったところにフォーカスされている時代になってきますので、企業のほうも「まさに起ころうとしている」段階で不正の予兆を知るのでは全然遅いのであって、かなり早い段階のリスク情報を収集していくことが求められていると思います。これで無限に通報が広がるかというと、外部通報の場合には、それだけで通報事実を判断されるわけでなくて、ほかにもいろいろな要件が課されてきますので、別の要件で濫用等のおそれというのはカットしていけばいいのであって、立法の趣旨は事前にできるだけ早い段階で不正の芽を摘む、それで何事もなければいいわけなので、できるだけ早い段階で消費者、一般市民に重大な損害を与えるようなことがないようにする法律に変えていくことが大事だと思います。ですから、切迫性の要件があることによって、通報が躊躇されることは防ぐべきだと私は思います。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。石井委員、どうぞ。

○石井委員 事務局に質問させていただきたいのですが、切迫性の要件があることによって通報することが妨げられたと思われるような具体的な事案があるのかないのか。今、議論を聞きながら私も迷うところがありまして、法律の対象もまだ見えない、そういう中で何でもありみたいになると第1回のときに濫用という話が出てきていましたので、判断する側も誤解のもとでなされるケースもありますし、その上で保護の強化というものを今回セットでやっていこうということですので、現状についてお教えいただいたらありがたいと思います。

○消費者庁消費者制度課担当者 「まさに」という要件があることによって、通報が妨げられたと思われるような事案があるかどうかという御質問でございますが、申し上げると、具体的にそのような観点で着目している具体的な事案は、特にはない状況でございます。裁判例におきましても、資料1で御紹介させていただいたとおり、公益通報者保護法の適用が問題となった裁判例は複数ございますが、切迫性の要件がないというだけで保護されなかった例は把握していないところでございます。

○山本座長 今の点については、恐らく具体的にどういうことが、どういう事案が考えられるかということを想定しないと、なかなか議論しにくいところがあろうかと思います。「まさに」という要件を外すかどうかという点については若干、異なる意見が出されておりますけれども、外すという意見の方もある程度、何か証拠というところまで強く言えるのかどうか分かりませんけれども、端緒があることは前提にされているわけなので、そういうものがあって、なおかつ「まさに」という要件があるのでは保護ができないというような事例が何か考えられるのかという辺り、あるいはこの辺は委員の方から、こういうことがあるのではないかということを伺いながら、事務局のほうで考えていただけますか。柿崎座長代理、それでよろしいですか。

○柿崎座長代理 はい。ありがとうございます。

○山本座長 柿崎座長代理もあれですよね。何もないのに言うのはということですよね。

○柿崎座長代理 もちろんです。ほかの要件があるから真実相当性とか、そちらで縛りが掛かるので、ここは別に外してもということです。

○山本座長 なるほど、分かりました。今の点も含めて具体的な事例を想定して、「まさに」という要件があるのでは救えないとか、ほかの要件があるので「まさに」という要件を外しても大丈夫かという辺りのところを、具体的な事案を想定して少し詰めていただけますか。


≪4.閉会≫

○山本座長 それでは、これで一応全部ですが、何か更にございますでしょうか。よろしいでしょうか。かなり今日は膨大な内容でしたけれども、意見の方向性はかなり一致をしていて、ただ、最後のところでまだ若干煮え切れていないところがあるという感じかと思います。

何か事務局からございますか。

○友行企画官 特にございません。

○山本座長 それでは、以上をもちまして本日は閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)