第86回 公共料金等専門調査会 議事録

日時

2024年12月2日(月)15:00~16:27

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

出席者

【専門委員】
野村座長、若林座長代理、太田委員、城所委員、郷野委員、後藤委員、長尾委員
【消費者委員会担当委員】
小野委員
【国土交通省】
物流・自動車局旅客課 重田課長
物流・自動車局旅客課 武藤タクシー事業活性化調整官
【消費者庁】
浪越参事官(公益通報・協働担当)
【事務局】
小林事務局長、後藤審議官、友行参事官、事務局担当者

議事次第

  1. 開会・事務連絡
  2. 一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃改定の事後検証について
  3. 事務連絡・閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会・事務連絡≫

○友行参事官 本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

ただいまより、「消費者委員会第86回公共料金等専門調査会」を開催いたします。

本日は、野村座長をはじめ、その他委員の皆様は、テレビ会議システムにて御出席されております。

なお、御都合により長田委員と柿沼委員が御欠席となっております。

本日、議題の御説明のため、国土交通省から物流・自動車局旅客課の重田課長、武藤タクシー事業活性化調整官にテレビ会議システムにて御参加いただいております。

なお、重田課長は、別用務のため途中退席される予定となっております。

加えて、オブザーバーとして、消費者庁から公益通報・協働担当の浪越参事官に会議室にて御参加いただいております。

本日はテレビ会議システムを活用して進行いたします。一般傍聴者にはオンラインにて傍聴いただき、報道関係者のみ会場にて御参加いただいております。議事録については、後日公開いたします。配付資料については、お手元の議事次第の下部に記載しておりますので、御確認いただきますようお願いいたします。

それでは、野村座長、以降の議事進行をよろしくお願いいたします。

≪2.一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃改定の事後検証について≫

○野村座長 本日はよろしくお願いいたします。

本日の進行についてですが、途中で私の回線が切れてしまった場合には、復旧するまでの間、座長代理に、座長代理の回線も併せて切れてしまった場合には、事務局に進行をお願いすることといたします。

それでは、本日の議題に入らせていただきます。

本日は、「一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃改定の事後検証について」でございます。

本件は、令和4年に実施されました東京都特別区・武三地区(武蔵野市、三鷹市)のタクシー運賃の改定に際しまして、国土交通省における事後検証及び当専門調査会より指摘した留意事項に関する対応状況について、令和6年中に国土交通省へのヒアリングを含めた検証を行うことにしていたものであります。

本日は、事後検証及び留意事項に関する対応状況等について、国土交通省様から御説明いただいた上で、専門調査会での意見交換を行いたいと思っております。

まず、国土交通省様より25分程度で御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○重田旅客課長 ありがとうございます。

国土交通省物流・自動車局で旅客課長をしております重田と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

今ほど座長から御紹介いただきましたが、令和4年の東京における運賃改定について、委員会のほうから、令和6年中に国交省からヒアリングを行うという御指摘を当時いただいておりますので、いただいた御指摘の留意事項という点を中心に御説明させていただきたいと思いますが、まずはタクシーの運賃制度全般について概要を御説明したいと思います。

資料をお願いします。

タクシーの運賃制度については、道路運送法に基づく国土交通大臣の認可事項になっております。様々な種類がございますが、上から順に、距離制運賃、時間制運賃、あるいは距離制で、一定の速度以下になったときにその時間に応じた運賃を加算する時間距離併用運賃が一般的に使われているものかと思います。それ以外にも、定額の運賃、事前確定運賃と、ニーズに対応して様々な運賃の種類が出てきているところであります。

一番下の緑のところに「料金」とありますが、運賃とは違って、個別に設定できるような、例えば迎車をするときの料金とか、こういった料金制度も用意されているところでございます。

次のページをお願いします。

我が国の運賃につきましては、全国で101の地域に運賃のブロックを分けて設定がなされているということであります。それは、それぞれの地域における様々なコストの違いとか、こういったことを的確に反映させるためにこのような仕組みになっているところでございます。

次のページをお願いします。

これは令和4年のときも同様ですが、運賃改定の手続について御説明申し上げます。

まず、先ほどの運賃ブロックの中のある事業者が運賃改定を申請いたします。そのときに、最初の申請から3か月以内に、運賃ブロック内の法人全車両数の7割の申請があった場合、次のプロセスに進んでいく。このような仕組みになっております。

次のプロセスですが、運賃ブロックの法人から標準的な事業者を抽出いたしまして、その実績年度の収支平均が赤字である場合には、運賃改定の必要性があるということで、また次のステップに行くということでございます。

そのときに、次に運賃改定率を算定するということであります。先ほど申し上げた標準的な事業者の中から、保有車両数などで偏りがないように、さらに原価計算を行う事業者を抽出いたします。そのような経営に必要な営業費に適正な利潤を加えた総括原価を求め、総収入がこれと等しくなるように運賃改定率を算定する。このような手続で行っているところであります。

それから、4番目、一定の人口規模以上の都市に係る場合には、その影響が大きいということもございまして、消費者庁さんへの協議が必要とされております。さらに、一定の場合には消費者委員会や関係閣僚会議への付議が必要とされておりまして、今回議題になっております東京のタクシー運賃についてはここに該当いたしますので、消費者委員会に当時も協議させていただいたということでございます。

その後、公定幅運賃を公示して、その1か月後に施行する。このような流れになっているところでございます。

次のページを御覧ください。

今回議題になっております東京特別区・武三地区における令和4年11月の運賃改定の概要でございます。

まず、改定の背景ですけれども、ここに書いてありますとおり、乗務員の労働環境の改善、ユニバーサルデザインタクシーの導入、配車アプリ・キャッシュレス決済の導入といったサービスの質や安全性の向上のための必要な投資、そのため収支率が悪化してきていることを踏まえ、実質的な運賃改定を行ったものであります。

改定の内容になりますが、先ほど申し上げた総括原価方式に基づきまして、原価計算対象事業者30社の実績を基に、増収率14.24パーセントというものを算出して適用しているところでございます。

具体的には、次のページを御覧ください。

先ほど申し上げたとおり幾つか運賃の種類がございますので、かいつまんで御説明しますが、例えば距離制運賃でいうと、普通車1.052キロメートル・420円だったところを改定後は1.096キロメートル・500円という形になりましたし、時間距離併用運賃につきましては、次の赤で囲っていますが、1分25秒までごとに80円加算とされていたのが、1分35秒までごとに100円加算、このような形になっております。時間制運賃についても同様でして、一番下のところですが、初乗り60分まで4,700円というところが初乗り60分まで5,360円、このような改定がなされたところでございます。

次のページを御覧ください。

改定後の運賃については、幅運賃と言いまして、上限と下限の運賃を定めているところでございます。例として普通車の距離制運賃について申し上げると、上限が1.096キロメートル当たり500円、下限が470円で、その間10円ずつ刻んでいる。このような運賃が幅として用意されたところであります。

この結果、実際にどういった運賃を届出として選ばれたかというと、上限運賃がほとんどで295社、下限運賃を出してきたのは2社(175両)、このような状況になっているところでございます。

次のページをお願いします。

輸送実績の推移と日車営収、1日の収入の推移でございます。黄色が日車営収になっておりまして、最近で言うと6万5000円ぐらいという形になっておりますが、令和6年2月以降も少しずつ伸びていますので、もう少しこの瞬間的には高いかもしれません。輸送人員についても、1か月当たり1900万人。このような形で推移してきているところでございます。

次のページを御覧ください。

ドライバーの数ですけれども、コロナ禍で減少した部分もありますが、最近はドライバーも大分戻ってきているという状況でありまして、6万1000人から6万2000人の間という形になっているところでございます。

次のページをお願いします。

ここからが今回のヒアリングの主な点だと理解しています。

令和4年9月の消費者委員会の御指摘については、黄色でハッチをしていますが、留意事項の対応状況等について、令和6年中に国土交通省へのヒアリングを含めた検証を行うとされております。

具体的に、1から4の4種類の留意事項をいただいておりまして、まず1つ目ですけれども、今回の改定案は運賃の値上げ幅が小さくないということで、消費者の理解を得るための丁寧な周知が必要とされております。今回の運賃値上げが消費者のサービス利便性の確保やタクシー乗務員の労働環境改善に資することについて積極的な周知が必要ということ。それから、タクシー業界も、利用者への丁寧な情報提供・説明が必要とされているところであります。

次のマルですけれども、タクシー運賃の値上げ状況については正確に把握すべきであるとされています。

留意事項の2つ目、消費者のサービス利便性の確保・向上でございます。消費者のサービス利便性の確保・向上のため、例えば、ポツを4つ並べておりますが、ユニバーサルデザイン車両の導入やタクシー乗り場の改善、配車アプリやキャッシュレス決済の普及、ドライブレコーダーや先進安全自動車の導入、その他のサービス(子育てや介護等に資するサービス)の推進を進めていくべきとされておるところでございます。

次のページに行っていただきまして(3)、留意事項の3つ目です。タクシーの利便性向上に向けて、国交省は、地方公共団体等との連携や消費者からの意見聴取を行う等、消費者等の意見の反映を一層進めるべきである。このように指摘をいただいているところでございます。

留意事項の最後、4つ目ですが、タクシー乗務員の労働環境の改善ということで、タクシーのサービスの質・安全性及びタクシー乗務員の労働環境は、運賃と並んで消費者のタクシー利用に影響を与えるものである。

次のマルですけれども、運賃値上げの趣旨である消費者のサービス利便性の確保・向上や安全性の確保、タクシー乗務員の賃金引上げ等の労働環境の改善に適切に反映されているか、監視を行うべきである。このような留意事項を4ついただいているところでございます。

それぞれについて御説明いたします。次のページです。

まず、丁寧な周知の実施状況でございます。今回の運賃改定に当たりましては、関東運輸局において十分な時間(1か月)を取って広く周知を行っております。その後、関東運輸局において、利用者からの問合せに対しては、都度、丁寧な説明を実施させていただいているところでございます。

次のページをお願いします。

プレスリリースをした後、1か月後にこういう形で公示をしているというものでございます。

次のページをお願いします。

また、関東運輸局だけではなくて、タクシー業界自らも広く周知を行うことをやっております。東京ハイヤー・タクシー協会において、左にありますようなプレスリリースをするとともに、タクシーの車内において分かりやすい形で表示をして周知を行ったというものでございます。

次のページです。

それ以外につきましても、乗り場での周知、ポスターをタクシー乗り場に貼り出す、デジタルサイネージでお伝えする、このような取組をやってきたところでございます。

次のページをお願いします。

サービス利便性の確保・向上ということでございます。まず1つ目、ジャパンタクシーというタクシーの種類がありますが、このタクシーは平成29年にデビューしたユニバーサルデザイン車両として、広く導入が進められているものでございます。この車両の導入につきまして国あるいは東京都から必要な補助もございますし、右のほうは、単に車両を入れるだけではなくて、ユニバーサルドライバー研修という形で、実際にドライバーの方々がこういった車両を使って車椅子の乗り降ろしなど、こういったことができるような研修も行っているところであります。UD研修の修了者につきましても、下にありますとおり、令和5年度で8万人に到達したということで、着実にこうした取組が進められているところでございます。

次のページを御覧ください。

UDタクシーは、先ほど申し上げたジャパンタクシーという種類だけではなくて、令和6年4月にはもう少し小さめのレベルの創設を行いました。認定レベル準1というものでございます。

目的は幾つかございまして、導入が遅れている地方での裾野を広げるということと、多種多様なラインナップを用意してメーカー間の切磋琢磨を促し、よりよい車両の開発につなげる。あるいは、これは価格が少し安いものですから、価格面で様々なラインナップを出すということになっております。

国の支援措置は、右に書いてありますとおり、レベル1が上限60万、レベル準1が上限40万という形で、このような差をつけているところでございます。

実際にどのような車両か、簡単に御説明します。次のページです。

レベル1は、先ほど申し上げたトヨタのジャパンタクシーという車両です。スロープの耐荷重は300キログラムまでもつというものでございます。レベル準1は、下に幾つかの種類がございますが、スロープの耐荷重については200キログラムと少し軽くなっているものでございます。

次のページをお願いします。

それ以外の利便性の向上についても御説明します。例えば、乗り場改善の事例といたしまして、羽田空港第3ターミナルでタクシー乗り場の待機レーンを拡張したり、キャッシュレス決済を普及させており、現在、ここにあるとおり、ほぼ100パーセントに近い普及率となっているところでございます。

ドライブレコーダーの導入も、ここに書かれてありますとおり、着実に増えてきておりまして、例えば事故後の対応の効率化とか安全に関する教育・指導にも使えるものになってございます。

右側は、それ以外のタクシーにお乗りになるときにいろいろ御苦労されるような方々についての対応でございます。一番上が陣痛タクシーと申しまして、妊娠なさっているお母さんが病院の場所を説明しなくても、24時間365日、事前に登録した病院まで連れていっていただける。真ん中は、塾帰りのお子さんが御利用される場合に顔なじみのドライバーがいつも来てくれる。あるいは、全般的にそういった子育てを支援するための子育てタクシーといった様々な対応を行っているところであります。

次のページをお願いします。

タクシー利用で御不便を感じるのは、先ほど申し上げた妊婦の方だけではございません。訪日の外国人の方々も言葉の違いなどから御苦労されることもあるかと思います。そうしたことにきちんと対応するため、スマホのアプリの導入を促進したり、多言語対応のタブレット端末も導入しているということでございまして、スマホアプリによる配車可能な車両数は東京では現在96パーセントまで上ってきているということでございます。

次のページを御覧ください。

訪日外国人のための取組として、さらなることを行っているところであります。左側は、TSTiEドライバー認定制度と申しまして、タクシードライバーとガイドの資格の双方を持っているガイドドライバーの育成を進めているところでございます。メリットとしましては、ドライバーがガイドを兼ねますので費用も抑えられますし、ガイドの方が乗らない分、より多くのお客様が乗れるといったメリットもございます。

右側ですが、同じように外国人の旅客の接遇研修を行ったり、外国人旅客の接遇の英語検定を実施して、合格したドライバーはこういった表示で分かるようにしていく。このようなことも取り組んでいるところでございます。

次のページです。

消費者等の意見の反映ということですが、まず国交省では、当然ふだんの消費者の方々からの御意見もお聴きしますし、あるいは、地域公共交通会議という交通のそれぞれの市町村単位で行われているような会議において自治体の声などをお聴きしているということでございます。

タクシー業界においては、毎年アンケート調査を行って、その調査結果を公表し、サービス改善のための参考としております。

幾つかアンケート結果を御紹介します。まず1つ目は、タクシー運賃について、令和4年11月14日に改定されましたが、それ以前と比べて御利用回数はどうなりましたでしょうかという質問について、最も多かったのが真ん中の紫の部分、「変わらない」というお答えが一番多かったということであります。

次のページです。

現在のタクシー運賃は、他の交通機関にはないドアツードアの特性を考えたとき、運賃水準についてはいかがですかとお聞きしたところ、真ん中のオレンジのところ、「まあまあと思う」と。「安いと思う」という方も「高いと思う」という方もいらっしゃいますが、まあまあ妥当だというお答えが一番多かった。

それから、右側ですけれども、現在タクシーを利用するに当たって重要視していることについては、これはいろいろ書かれておりますが、コロナの終わりかけだったこともあってだと思いますが、マスク着用、感染対策、換気、一番大きいのは車両が清潔であること、このような結果が出ているところでございます。

次のページを御覧ください。

それから、業界としても様々な消費者の方々からの要望を取りまとめて、業界全体として必要な対応を行っているところであります。1つ目、先ほども出てきましたが、出産を控える妊婦の方の移動に当たってタクシーが必要ということで、陣痛タクシーというものを導入して対応しているところです。

次の部分も、子育てをする中で、塾の送り迎えにタクシーが必要ということで、キッズタクシーという対応をしております。

それから、次のページですけれども、女性のドライバーを増やしてほしいという御要望もあります。これについても、例えば営業所の中で女性が必要な施設をきちんと用意するとか、このような取組を進めているところでありますし、右のグラフを見ていただくと、東京のタクシードライバーは、最近は戻っていますが、少し減少ぎみだったところ、女性の乗務員は、赤色のグラフですけれども、増えてきているということで、この調査をした時点では東京で1,809名の方が女性ドライバーとして活躍されています。ちなみに、全国でも1万人以上の女性がドライバーとして活躍されているところでございます。

それから、先ほどのアンケートにもありましたが、車内が清潔であることが重要ということで、例えば空気清浄機とか空気清浄モニターをつけるとか、防菌シートとか、このような対応を行っておりますし、大きな荷物がある際の対応ということで、先ほど申し上げたジャパンタクシーの導入で、トランクがきちんと入るようにという形で対応されているところであります。

次のページですけれども、これは東京駅の八重洲口ですけれども、タクシー乗り場に並んでしまって乗るまで時間がかかるという御意見をいただきまして、令和5年12月より5台同時に乗車して発車するような取組を行っております。また、カメラの映像でタクシー待ちの混雑状況も定期的に表示したり、ポーターを配置して、ポーターがきちんとお客様を案内して、効率よくタクシーに乗って、タクシー乗り場から車が発車できるというような仕組みを構築しているところでございます。

次のページを御覧ください。

留意事項の4つ目、乗務員の労働環境の改善についてでございます。

今回の運賃改定に関しまして、東京ハイヤー・タクシー協会と関東運輸局東京運輸支局が運賃改定を行った288社に対して調査を実施しました。その結果をそれぞれのホームページで公表しているところでございます。

まず、対象となる事業者数ですが、先ほど申し上げた運賃改定を行った288社でございます。3つ目の調査項目ですが、大きく4つについて調査を行いました。平均増収率、賃金上昇率、営業収入に占める賃金支給率の変動状況、その他労働条件改善の状況となっております。

調査の仕方ですが、次のページを御覧ください。

まず、東京ハイヤー・タクシー協会から各対象の事業者に調査のための調査票を配布していただいております。調査項目は先ほどのページで申し上げたとおりでございます。

この1次調査を経た上で、改定による賃金改善率が0パーセント未満の事業者や、営業収入に占める賃金支給率が低下した事業者に、東京運輸支局のほうでヒアリングを実施して、両者で連携してこの調査を行いました。

次のページを御覧ください。

運賃改定前後における平均増収率は31.68パーセントという結果になりました。10パーセント以上の会社が269社でございまして、多くは10パーセント以上のプラスとなりました。

さらに10パーセント以上の中を細分化してみますと、これは全体的に散らばっていますが、50パーセント以上のところが38社という形で出ているところでございます。

増収率がマイナスになった事業者については5社になっています。

次のページを御覧ください。

賃金上昇率と賃金改善率についてでございます。賃金上昇率については、32.84パーセントの上昇という形になっております。平均給与月額は、以前は28万6021円だったのが37万9946円という形で増えているところでございます。

運賃改定前後における賃金改善率につきましても、10パーセント以上がほとんどという形になっておりまして、この10パーセント以上をさらに細分化すると以下のようになっております。50パーセント以上の賃金改善率の会社が35社という形になっているところでございます。

次のページを御覧ください。

営業収入に占める賃金支給率の変動は102.55パーセントということで、ほとんど変わっていない。少しは増えていますが、大きくは変わっていないことが確認されております。

上昇した事業者は266社、低下した事業所は20社、このような形になっているところでございます。

その他労働条件の改善状況ですけれども、運賃改定後に実施した労働環境の改善として、各種検診の補助、アプリの導入、防犯仕切板、QRコード決済、このようなものが幾つか増えているところでございます。手当類の創設や拡充についても増えているところでございます。

次のページを御覧ください。

先ほど申し上げた東京運輸支局におけるヒアリング調査の結果でございます。調査対象の事業者については、次のいずれかに該当した事業者21社を対象にしてヒアリングを行いました。そのうちの20社は、営業収入に占める賃金支給率が低下した事業者でございます。それから、一部調査票が出ていなかった事業者が1社ございました。

20社のうち2社については廃業したためヒアリングの調査対象から除外しましたが、18社についてはヒアリングを実施した結果、一定程度やむを得ない事由によって賃金支給率が低下したことが確認されました。

主な理由ですが、労働時間の短縮に伴って賃金支給率が低下したもの。運賃改定前の期間においては通常よりも高い歩合で賃金を支給していたけれども、それを元に戻したもの。このような形になっているところでございます。

以上、留意事項の1から4に沿って、対応状況について私のほうから御説明させていただきました。ありがとうございます。

○野村座長 重田課長、どうもありがとうございました。

今の御説明に基づいて、委員から質疑応答をさせていただきたいと思います。80分程度の時間を使うかと思いますが、均等に御発言いただくということに御協力いただきたいと思います。挙手もしくはチャットのほうでお知らせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

小野委員、どうぞ。

○小野委員 小野でございます。

御説明をいただきましてありがとうございました。サービス利用の向上ということで、例えば消費者でもある訪日観光客も含めた状況についても御説明をいただきまして、よく分かりました。

私からは、消費者等の意見の反映ということで、2点お尋ねをさせていただきます。

1つ目は、説明資料の27ページから28ページ目になります。「タクシーに関するアンケート調査結果」ということで、これは毎年公表されているという御説明もありました。今回は運賃改定というところに関わらせてということでの御説明だったと思いますけれども、運賃改定の前と後ではどんな変化があったのかなというのが気になりまして質問いたします。

利用の回数自体は変わらないということで74.3パーセントということですから、4人に3人は変化なしということがまずは読み取れると思います。一方で、4人に1人は逆に言いますと変化をしたということがありまして、どのような変化かなということで、利用回数についてはこのグラフを見たら分かるのかなと思います。

それから、28ページになりますと、運賃水準、それから、問10で言うと重視していることなども説明がありますが、これは特に運賃改定前と後で比較をして分かるようなものがありませんので、この点についてまず1つ目ということで、令和4年11月の運賃改定の前と後で何か変わったことがありましたら分かる範囲で教えてください。これが1点目でございます。

2点目です。関連する問合せや苦情について丁寧な周知をされたということで、その成果の説明はあったところでした。ただ、私がちょっと気になりましたのは、意見集約のシステム、仕組みといいますか、その流れについてお尋ねをしたいと思います。

各会社に寄せられたものもあるでしょうし、あるいは、資料の中にありましたが、東京ハイヤー・タクシー協会に寄せられているものもあるかと思います。これは消費者からの申出や苦情を共有するような仕組みがあるのかどうか、そこを教えていただきたいと思います。この辺りのシステムがしっかり機能していることが、消費者からの意見を反映させることの要になるかと思います。

長くなりましたが、2点について教えてください。

○野村座長 国交省様、お答えいただけるでしょうか。

○重田旅客課長 御指摘いただきありがとうございます。

まず1点目ですけれども、運賃改定前後で様々なことが変わったかということです。先ほどのグラフにもありましたが、利用回数についてはあまり変化がないわけですけれども、運賃が高くなったわけですから、それを理由に乗らなくなった方もいらっしゃると思いますし、回数が減った理由をさらに細かく確認しているわけではございませんので、それ以外の事情で減ったという方もいらっしゃると思います。増えたという方も一定程度いらっしゃいますが、それについても同様かなと思っています。

それから、28ページの左側のグラフにあるタクシーの運賃水準はどうですかということについて、これは運賃改定前後の資料がついておりませんが、ここもおおむねそう大きな変化はなくて、まあまあと思うと答えられている方が一番多かったと思います。

2つ目の御質問、周知をした後、消費者の方々からの意見を集約するシステムがあるかということです。まず現状は、各タクシー会社に御意見をいただくケースがございますし、タクシー協会に御意見をいただくケースもございます。それから、役所のほう、東京でいうと関東運輸局にも来ますし、国交省の霞が関の本省の私の課に御連絡をいただくときもあります。

基本的には、大きな課題については最終的に様々なルートで本省の私の課に上がってくることがありますが、それ以外に事前のいろいろなやり取りの中で解決している部分も数多くあると思います。ただ、それを共有して公表するようなシステムは現時点ではございません。貴重な御指摘でございますが、現時点ではそういったシステムはございません。ありがとうございます。

○野村座長 ありがとうございました。

小野委員、よろしいでしょうか。

○小野委員 状況について理解いたしました。

消費生活相談について、PIO-NETというシステムがあります。御存じのように、さらに事故情報データバンクになりますと、PIO-NETという相談情報だけではなくて、関連する省庁からの情報を吸い上げるようなシステムになってございます。今はないということですけれども、消費者の意見の反映ということになりましたら、その辺りを構築していただきますと、さらに運賃の改定のところのより確かな情報が集まりましていいのかなと思いまして意見を申し上げました。

先ほど、利用回数について75パーセントは変化がない、それ以外の人はあるということで、回数が増えた人はいいのですが、減った人がどういう背景を持ってそうなっているのかというのは結構大切なことだと思っていまして、その辺りを聞きたくてお尋ねをした次第です。御回答いただきましてありがとうございました。

以上です。

○野村座長 ありがとうございます。

国土交通省さん、こちらの専門調査会の留意事項への御回答の資料ということですので簡略化されている部分もあろうかと思いますが、アンケートの結果がもし深掘りできるような資料がございましたら、またウェブのほうで公開していただく等を御検討いただければと思います。可能な範囲で結構でございます。

そうしましたら、次の質問に移らせていただきます。

郷野委員、どうぞ。

○郷野委員 御説明どうもありがとうございました。取組の内容がとてもよく分かりました。その上で、幾つか質問と意見がございます。

まず、利用者の理解を得るための取組のところで、資料18ページになるでしょうか。消費者に周知を広めるためには利用の場で伝えることが一番伝わりやすいのではないかと思います。例えば「タクシーご利用の皆様へ」という資料を提示していただいているのですけれども、ここでは「タクシー乗務員の確保と労働条件の改善、ならびに事業収支の改善を図るため」と書かれていますが、後から出てくる資料では、利用者の利便性向上の取組がとても進んでおり、そういうところをもっと利用者に伝えていくと、料金が値上げとなっても共感を得られるのではないかと感じました。

それから、次のページにユニバーサルデザインタクシーについて書かれているのですが、私はふだんあまりタクシーを利用しないので気がつかなかったのですけれども、ユニバーサルデザインタクシーやこのマークがどういうものなのかという周知があると、より消費者に伝わるのではないかと感じました。

それから、質問ですけれども、23ページの「妊婦対応・育児支援」というところで、陣痛タクシーはすばらしいサービスだと思うのですが、例えば配車予約みたいな形ではなくて、陣痛はいつ起こるか分からないというなか、24時間365日対応するというドライバーの確保はどのようにされているのかということが気になりました。もし分かれば教えていただきたいと思いました。

それから、24ページ目の「訪日外国人観光旅客のための取組み」というところで、多言語対応タブレットの端末の導入は今求められているところだと思いますし、進めていくべきものと思っておりますが、例えば何言語ぐらい対応されているのかというところをお聞きしたいです。英語だけでなく、いろいろな国から訪日されているので、何言語ぐらいの対応なのかということと、今後広げていく予定があるのかというところを教えていただければと思いました。

関連して、25ページのTSTiEドライバーの取組もとてもすばらしいと思う反面、英語圏の方だけではないことを考えますと、今、翻訳アプリを使ってタクシードライバーと行き先などをやり取りすることもあるので、翻訳アプリや翻訳タブレットみたいなものの活用も今後検討されていかれてはどうかと思いました。

最後ですが、乗務員の労働環境の改善というところで、賃金等、改善の取組をしていただき成果は現れていると感じますが、乗務員の満足度が重要だと思います。今後の調査では乗務員の満足度も聞いていただけると、ドライバー不足に対して有効な対策が取れるのではないかと思いました。

以上です。

○野村座長 ありがとうございます。

国交省様、感想が2点ほど、質問が3点ほどありましたが、お答えいただけるでしょうか。

○重田旅客課長 ありがとうございます。

まず、18ページの周知のところです。利用者の利便性向上にきちっと触れておくべきではないかというのは、全くそのとおりだと思いますので、次回、こういった場面がありましたらそのようにしたいと思います。

それから、UDタクシーの件です。少し御説明しますと、車椅子が載せられるようにレベル1もレベル準1も用意されています。それで、スロープの荷重が違うものですから、バッテリーを載せた電動の車椅子が乗れるかどうか、そういったところで差は出てくるのかなと思っています。こういったタクシーがあることも、私どもは特に関係団体を中心に一緒になって進めているところではございますが、さらなる周知をしっかりやっていきたいと思います。

それから、23ページの陣痛タクシーのところでドライバーの確保の問題がありますが、例えば、大手のタクシー会社でありますと、これに対応する専属のドライバーがいらっしゃいますので24時間365日対応できる。事前にお母さんのかかりつけの病院もきちんと登録されているということでございます。

東京はこうですけれども、委員が御指摘のとおり、地方だと深夜の対応とかはなかなか難しい場面もあるかと思いますが、こうした取組は子育て支援の観点からも非常に重要なことでありますので、できる限りの対応を取っていきたいと思っております。

それから、タブレットで多言語とありますが、国交省全体の方針として、英語、中国語、韓国語まではインバウンド対応として必ず用意することになっております。さらに、直ちにちょっと分からないですが、実際はもう少しお客さんが来ている国の多いところの対応は行っているはずですが、この瞬間はちょっと分かりませんが、英語、中国語、韓国語は必ずやっています。

それから、25ページ、これも同じような話で、英語だけ話せたらということなのですが、これは私見も入りますけれども、今、外国人のお客様御自身がスマホで翻訳をして、ドライバーの方とか、案内所とか駅でも示されておりますし、一番大切なのは、特別難しい会話をするわけでもないので、ドライバーの側もそういったものに抵抗感を持たずに、会話の一環として、例えばお客さんがアプリを使って翻訳されようとしたときには、壁を作らずにきちんと対応するという、心の問題の部分も多くあるのではないかなと私は思います。

それから、ドライバーの満足度の調査については、御意見をいただきましたので考えてみたいと思います。

私からは以上です。ありがとうございます。

○野村座長 ありがとうございました。

最後の労働環境のドライバーの満足度に関してはいかがでしょうか。

○重田旅客課長 御指摘を踏まえて少し考えてみたいと思います。

○野村座長 ありがとうございます。

郷野委員、いかがでしょうか。

○郷野委員 どうもありがとうございました。

妊婦対応や育児支援などは本当に求められるサービスだと思います。例えば、このように助かりましたなど利用者の声を一緒に発信できると、より消費者には共感が得られると思います。

先ほどのTSTiEについては、ドライバーの抵抗感を低くするという点は大事だと思います。英語を習得するだけではなくて、英語を習得しなくてもアプリを使えば対応できるといった研修を取り入れてみることも必要なのではということで申し上げました。ありがとうございました。とてもよく分かりました。

○重田旅客課長 こちらこそありがとうございました。

○野村座長 ありがとうございました。

次の質問に移らせていただきます。

城所委員、よろしくお願いいたします。

○城所委員 城所です。よろしくお願いいたします。

私はコメントになってしまうのですが、留意事項の(1)のマルの2つ目に行っていただけますでしょうか。「国土交通省は、各事業者の運賃届出の結果によるタクシー運賃の値上げ状況を正確に把握すべきである」ということに対する明確な説明はなかったように思うのですが、8ページのスライドの下半分がそれに対する御回答ということでよろしいでしょうかというのがまず1点目。

2点目は、その後に、「本改定案により運賃値上げが消費者に与える影響についても、国土交通省はフォローアップすべきである」と書いてあるのですが、これに対しての御説明はなかったように思いますが、この点はいかがでしょうか。

3点目です。全般的にそうなのですが、例えば18ページ、19ページ以降の御説明は、例の紹介であって、運賃の値上げがこういうものをもたらしたということの説明にはなっていないですよね。多分求められるのは、運賃の値上げがいかにこういう取組に影響を与えたかという分析だと思うのですが、そういう分析は何かされていないのでしょうか。

以上です。

○野村座長 ありがとうございます。

重田課長、いかがでしょうか。

○重田旅客課長 ありがとうございます。

1つ目は、値上げ状況は、私どもの資料の構成が中途半端だったかもしれませんが、当然、届出運賃でございますので隅から隅まで把握はできていますが、そういう意味で言うと、先生がおっしゃったとおり、8ページの下にある部分が、一つのパーツでしかありませんが、把握の状況ということになるかと思います。

それから、消費者に与える影響についてのフォローアップですが、システム的にされているかというと、そういう状況ではございません。日々の業務の中でそれを確認して対応しているところですので、それは少し深掘りをしなければいけないのかなと今の御指摘を伺って思いました。

それから、ユニバーサルタクシーとか様々な取組についても事例の紹介にすぎないではないかということで、全般的に言うと、収支状況が改善してきたのでこうした新規の投資が可能になっているということでございますが、では、値上げした分のどの部分がどういった投資につながっているかというところの分析まではできていないのが現状でございます。ありがとうございます。

○野村座長 ありがとうございます。

城所委員、いかがでしょうか。

○城所委員 今後お役立ていただければと思います。ありがとうございました。

○重田旅客課長 貴重な御意見をありがとうございました。

○野村座長 ありがとうございます。

次の質問に移らせていただきます。

後藤委員、よろしくお願いいたします。

○後藤委員 御説明ありがとうございました。

私からは、1点コメントといいますか、要望になるのかと思いますが、申し上げたいと思います。

まず、御説明いただいた内容で、全体的に料金改定に伴う留意事項への対応ということで、DXも含む設備投資とか、サービス向上、UD対応など、適切に対応していただいていることを理解いたしました。

身近なところですと、アプリ対応など新しい設備への投資による効率化とか快適性の向上というのは、消費者にとって非常にメリットがあるなと思っている次第です。

関連しまして、一方で、ドライバーさんによっては機器の使い方とかタクシー利用者への説明などにまだ慣れていない方もおられるようにお見受けいたします。ですので、料金改定に伴って様々なハード面の設備投資ができることは、サービスの向上という面で消費者、利用者にメリットがあるかと思いますけれども、ソフト面で、それをどうやって使ってサービスの向上につなげるかというところで、教育とか研修体制の改善がサービス品質の向上や均質化につながると思いますので、職場環境の改善とともに、教育・研修、人的資本への投資という面にもつながるかと思いますので、そういった点も是非料金改定の機会に際して促していただけるとよいのではないかと思っております。

私からは以上です。

○野村座長 ありがとうございます。

重田課長、いかがでしょうか。もし御感想があれば、よろしくお願いします。

○重田旅客課長 貴重なコメントをありがとうございます。

日本のタクシーの一番重要なところは安全であり安心ですけれども、サービス水準は一番重要なところであり、きちんとこれを維持、それから高めていかなければいけないと思っています。先生が御指摘のとおり、ハード面だけではなくて、使い方というのは基本的なことですけれども、こういったこともスムーズにできるように、各事業者あるいは協会を通じて、きちんとその辺りの教育の仕組みを設けるとか、そういったことは考えていきたいと思っております。貴重な御意見、ありがとうございます。

○後藤委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

○野村座長 次の御質問をお願いいたします。

太田委員、よろしくお願いいたします。

○太田委員 御説明ありがとうございました。

事情が、提言が既に出たもののフォローアップということ、あとは法律の枠の中でやっているということなので、その話からすると若干枠を出る可能性があるのですが、特に引き続き運賃規制全般について不断の見直しを続けるべきであるという提言もなされているようですので、その点についてお伺いしたいと思います。

基本的には、総括原価方式をするというのはかなり奇妙な業界でありまして、一般的に鉄道とかエアラインとかは独占対策ですね。企業は独占力を持っていると効率的な配分にならないので、独占力があると過少供給になって料金は高止まりになってしまうということで、料金を抑えるために料金規制、総括原価方式を入れるというのが一般的で、社会的な合意も得られていると思うのですが、タクシーの場合は、独占力は個々のタクシー会社あるいはタクシーの車にはないので、競争してしまうと、過当競争という言い方がいいかどうか分かりませんけれども、むしろ料金が下がってしまう。よって、労働環境が劣悪になって安全性に問題が出るという観点から、むしろ競争を制限して独占利潤を一定程度取れるようにする。そういう逆向きの方向の規制なのですね。

これは当然独占利潤をつくるように規制しているので、消費者の利益は害される。特に値上げをしてしまえば、消費者はなお害されるということは大前提としてあると思います。緑ナンバー営業とか、2種免許とか、参入規制を人為的につくって、タクシー会社の利益を確保するという政策だと理解しています。

ただ、消費者の観点からすると、一方では高齢者の免許返納があって買物難民になっている。しかし、タクシーがなかなか来ない。タクシーの供給が十分でない地域もあるように聞いております。そうすると、タクシー会社の独占利潤を確保するために消費者の利益が非常に大きく害されているという地域もあるようです。

そういう害と比較したときに、タクシー会社の独占利潤を確保することの妥当性を考えないといけないと思うのですけれども、諸外国ですとUberとかGrabの配車サービス、ライドシェアによってかなり高品質の配車サービス、運送が提供されているという実情があるわけで、そういうものと比べた場合に、緑ナンバー営業とか料金規制ということで独占利潤をつくる施策がどれくらい安全に貢献しているかというデータ、もしくは消費者に対して説得力のある情報をお持ちなのか。これが基本的なポイントでございます。

タクシー会社に独占利潤を稼がせる、安全性を確保するために一定程度料金規制をして消費者に犠牲を強いるという政策ですので、それによって安全性がこれだけ高まっている、外国と比べてこんなに日本のタクシーは安全なのだというデータが必要だと思うのですが、その点についていかがでしょうか。

○野村座長 ありがとうございます。

本日のテーマは東京都特別区・武三地区の話に特定されています。しかも、フォローアップですので、最初におっしゃったように枠を出るところでの御質問ということで、ライドシェアに関しても本日のテーマではございませんので、可能な範囲で重田課長がお答えいただけるようであればお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○重田旅客課長 ありがとうございます。

1つは、例えば、安全性を確認するデータとして、人身事故の発生件数とかこういうものを拾っております。私の手元に平成12年ぐらいから調べているものがありますけれども、人身事故は平成12年だと年間で7,200件ぐらいございましたが、これは安全性を高めてきているということもあって最近だと2,000件ぐらいと、大幅に減ってきているところです。その裏づけでどういう施策でこうなっているかというところまでは調べ切れていませんが、安全性は高いし、高くなってきているということは一つデータとしてはございます。

それから、運賃料金制度全般のお話ですので、座長がおっしゃったとおりこの場での議論ではないかと思いますが、コロナの期間にタクシーの供給量が少し減って、それが今戻ってきている状態になっていると理解しておりますし、完全に戻ってきていないタクシーの不足の部分を補完する仕組みとして、新しく日本版ライドシェアが導入されております。

もう一つは、過疎地でなくても交通空白となって既存の事業者がいなくなってきているようなところでは、18年前から公共ライドシェアということで、自治体が白ナンバーで運行できるような仕組みも導入されてきております。そうした足の確保をしなければいけないというのは私ども国土交通省も委員も同じ思いだと思いますので、現状やっているものをしっかり進めていきたいと思っております。この会ではこういった御説明になろうかと思います。ありがとうございます。

○野村座長 ありがとうございます。

そういうことですので、また新たに太田委員の御見解を専門調査会のメンバーに対して情報発信していただいて、勉強会等ができるのならばそうしたいと思います。経済学の総括原価を当てはめながら、独占をサポートするのか、あるいは競争を促進しながら安心・安全なタクシー業界をどう維持するのかということと、特別区・武三地区以外の特に過疎地域の足を確保するためのライドシェアに関して、何か情報をおまとめになったものがありましたらお知らせいただきたいなと。大きな問題ではありますが、本日のテーマからは逸脱してしまうということになりますので、別の機会に意見交換できればなと思います。いかがでしょうか。

○太田委員 質問の途中ですから、続けてよろしいでしょうか。

交通事故の数が減ってきているというのは、緑ナンバー以外の一般的な白ナンバーも含めて下がってきているわけですね。特に下がっているのか、あるいは他国と比較してどうかという点についてはいかがでしょうか。

○重田旅客課長 ありがとうございます。申し訳ございません。今手元に材料がございません。

○太田委員 昨今EBPMということがございまして、エビデンスに基づいた政策決定ということがありますので、緑ナンバー営業をする、あるいは2種免許をするということで、独占利潤をつくるという料金規制をする場合には、これをやったほうがいいのだというデータについては不断に集めておく必要があろうかと思います。

引き続き、運賃規制全般について不断の見直しを続けるべきであるというのは提言のほうにも書いてありますので、この点、よろしくお願いします。

これくらいで私のほうからは終わりにさせていただきたいと思います。

○野村座長 ありがとうございました。

そうしましたら、次の質問に移らせていただきます。

長尾委員、よろしくお願いいたします。

○長尾委員 長尾でございます。

本日は丁寧に御説明をいただきまして、大変分かりやすく、理解も進みました。ありがとうございます。

私からは、2点御質問をさせていただきます。留意事項に即して申しますと、留意事項3の(3)、消費者等の意見の反映に関しましては、「利便性向上に向けて、国土交通省は、同協議会のみならず、地方公共団体等との連携や消費者からの意見聴取を不断に行う等」ということを指摘されているところですが、比較的最近に施行された地域交通活性化法においても、地域の関係者との連携と協働の促進とか、協議運賃制度とか、新しい仕組み・制度ができていますが、こういった仕組み・制度が消費者の意見を聴取する取組として活用されている実態や実例があるのかというのが1点目でございます。

2点目でございますが、留意事項3の(2)に関して、配車アプリやキャッシュレス決済の普及、そして、デジタル化に伴うサービスの積極的な推進、ただし、取り残される不慣れな消費者がいないように十分に留意することなどということが挙げられておりまして、本日の資料におきましては23ページに配車アプリについては特に記載がなく、配車アプリに関しては外国人の関連のところで少し記載がありますが、外国人に限らず全般に利便性に関わる取組として存在するのかなと思います。

そして、デジタル化全般については、資料としては本日は大きく載っていないようですが、この間、大幅に促進された配車アプリが消費者の利便性に与えるポジティブな影響は、マッチングが容易になったり、迎車をすることが簡易になったり、そういう利点のところはもちろんあるでしょうし、それも御紹介いただきたいです。

その一方で課題として、私も日々タクシーをたくさん活用するほうかなと思うのですけれども、「迎車」とか「回送」という表示を掲げたタクシーが非常に増えたという印象を持っております。町なかの流しとか駅での待ちでタクシーを捕まえることが以前よりずっと難しくなってきたと感じているところでございます。

マッチングアプリの普及が消費者の利便性、とりわけマッチングアプリにアクセスできない高齢の消費者に与える利便性に関しての影響、それから、迎車料金を払わないと利用できない車が増えた、素朴に言うとそういう実感を持っておりまして、それが消費者に与える影響など、こういったところを分析されたのか。そして、デジタル化全般に取り残される高齢者などの消費者がいないようにという取組についてどのように分析されたかというところについて、もう少し補充的にお聞きしたいと思います。

以上です。

○野村座長 ありがとうございます。

そうしましたら、2点御質問でございます。重田課長、よろしくお願いいたします。

○重田旅客課長 ありがとうございます。

1点目、地域交通活性化法を御紹介いただきましたけれども、大切なのは、そうしたところで地域の足を確保するために、どういった交通手段を用意して、どういった料金体系で、どういったルートを走ってとか、そういったことを全般的に地域公共交通会議などで話し合っていただく。その場には、行政である自治体もそうですし、私どもの出先機関もそうですし、もちろん利用者の方々も入っていただきますし、地域の交通事業者の方々にも入っていただく。1つの型が全ての地域に当てはまるとは思いませんので、それぞれの地域の中で話し合っていただくことは先生御指摘のとおり必要だと思いますし、それはこれまでも十分にやってきているところだと思います。

少しあれかもしれませんけれども、私どもは地方に運輸局という機関があって、その機関が、あるいは運輸支局という機関が、それぞれの自治体を回って、実際にどういうことでお困りかというのを聴くこともこの夏から集中的に進めてきております。足の確保のためになかなかいいアイデアが出てこないという自治体の方々も実際にいらっしゃって、そういうところにはこういったソリューションがあるということを、一種の営業活動のようなものですけれども、これを強力に進めてきているところでありますので御紹介させていただきます。

2点目、デジタル化とかアプリの件です。1つは、アプリの普及と言っても、東京なり大都市は相当普及してきていますけれども、そうでないところも多くあります。だから、配車センターに電話をされて配車するということがまだ当然あちこちで行われております。

そうは言いながらも事業としての効率化も進めていかなければいけないということがございますので、電話は配車センターでお取りするのですが、その後の配車、バックオフィスでの作業は相当デジタル化が進んでいるということで、電話番号を既にいただいて登録されたり、1回御利用なさった電話番号からかかってくると、過去の行き先とか、その方がどこにお住まいなのか、いつもどこから乗ることが多いのかというのがちゃんとデータに残っていて、配車をする人間はそれを画面上で操作して選んでタクシードライバーに伝える。こういうふうに裏側ではデジタル化が相当進んでいる部分も多くありますので、アプリなどを使えない方々への対応も併せて、引き続き電話での注文の方々にも当然きちんと対応していかないといけないと思っております。

それから、流しとか駅で待っているタクシーが最近減ってきたということがありますが、先生の個々の場面でそういった場面があったのだと思いますが、全般的に言うと、タクシーがコロナで一時減ってきたことからの回復で、相当部分は解消していっていると私どもは思っております。とはいえ、先生のような御指摘もございますので、そういった形にならないようにきちんと対応してまいりたいと思います。ありがとうございます。

○野村座長 ありがとうございます。

長尾委員、いかがでしょうか。

○長尾委員 最後の点に関しては、純粋に流しや駅待ちの台数という数量の問題というよりは、もう少し深掘りしますと、やはり迎車のほうがタクシーのドライバーあるいは運行する会社に利益が大きいこともあって、流しや待ちができる車であっても、迎車料金が発生するようなアプリ配車に対応することを選んでいるドライバーが増えているのではないかという印象を持っております。コロナの影響による単純な台数の変化というよりは、アプリの導入により今までになかった事象が出ているのではないかと。もちろん憶測でというよりは、そういう報道も私も見かけたことがあって、私以外の方もそういう意見を持ってらっしゃるのだなというところもありましたので、そういったところの分析が必要ではないかという指摘でございます。

○野村座長 ありがとうございます。

国交省様、迎車料金に関してはきちんと決められているということで根拠はあると思うのですが、長尾委員が御指摘のように、消費者がそれをどのように受け止めているかというところは精査していただきたいと思います。

それから、1点目に関しましては、先ほどの太田委員と同様に、買物困窮者のこともございますので、それが東京都特別区・武三地区のモデルから、きちんと地方へ情報発信できるようにしていただきたいなと。もちろん人口密度が全然違うということで、こちらのモデルが適用できるとは限りませんが、その辺りも御配慮いただいて、今後、国交省様の全体の施策の立案につなげていただければなと思っております。よろしくお願いいたします。

○重田旅客課長 ありがとうございました。

○野村座長 そうしましたら、若林委員からの御質問に移らせていただきます。よろしくお願いいたします。

○若林座長代理 御説明どうもありがとうございました。

私の質問も、城所委員、太田委員と同様の問題意識だと思います。この値上げについては、サービスの向上、乗務員の労働環境の改善、乗務員の確保を目的として行われているということだったかと思います。それで、今回はそれが達成できているかどうか、どの程度それが寄与しているかということを確認したいということだと思います。

ただ、先ほどお答えいただきましたように、具体的に値上げがどの程度寄与したかという詳細な分析は非常に難しいというのは理解しておりまして、もしお手元にそういう資料があれば、サービスの向上については、例えばUDタクシーやキャッシュレス決済の端末の普及度合い、普及のパーセントについて、値上げ前と値上げ後の比較があるか。

労働者の環境についても、先ほど事故率の話が出て、事故率は随分前から見ると減っているというような話がありましたけれども、実際に値上げ前と値上げ後を比べるとどの程度変わっているのか。お手持ちにそういう資料があれば教えていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○野村座長 重田課長、よろしくお願いいたします。

○重田旅客課長 ありがとうございます。

大変重要な御指摘でしたのに、きちっと資料が用意できてなくて申し訳ございません。いずれのデータもございます。UDタクシーの導入数も毎年拾っていますし、キャッシュレス決済の導入もデータとしては持っているのですが、今ここになくて、確認してまた個別に御説明させていただきたいと思います。ありがとうございます。

○野村座長 ありがとうございました。

若林委員、よろしいでしょうか。

○若林座長代理 分かりました。どうもありがとうございます。

○野村座長 私が最初の小野委員のところでも申し上げましたように、我々専門調査会への回答、プラス、ウェブで利用者に発信することも可能であればお願いしたいと思います。

そうしましたら、重田課長が御退席になるまであと5分から8分ほどありますので、追加で御質問のある方、よろしくお願いいたします。

○太田委員 それでは、簡単に質問させていただきます。

今、若林委員からお話がありましたけれども、この値上げによってどれだけUDタクシーとかキャッシュレス決済が普及したかということですが、諸外国を見ていますと、料金規制が入っていない、緑ナンバー規制とか2種免許規制が入っていない配車サービスが入っているところでも、基本的に配車サービスは全部キャッシュレスですし、ユニバーサルデザインの車もそんなにないわけでもないように思います。よって、値上げの効果であったというのはなかなか検証が難しいというか、効果を測定するのが難しいだろうと思います。

やはり、規制の正当化のために国際比較でやる。それがなかった場合、反実仮想との比較を因果推論の手続を踏んで、できる限り消費者に分かりやすいようにウェブで開示していただければと存じます。

以上でございます。

○野村座長 有益な御助言をありがとうございます。

国交省様、それは可能でしょうか。特に都市部で人口規模が似ているようなところを取り上げ、もちろん公共交通のトラム等も含め相違があるかと思いますが、そういうことは脚注に落としてデータを比較する、そういう資料の作成は可能でしょうか。

○重田旅客課長 ありがとうございます。

貴重な御意見として承ります。

○野村座長 太田委員、特に料金値上げという観点で運賃改定の今回の議論ですので、それとまったく同じような条件の他国比較が必ずしも可能性としては高くはないと思うのですが、運賃改定後の比較とか、そういうレベルでよろしいということでしょうか。

○太田委員 いいとこ取りをして効果があったと結論を出すことは、必ずしも大事なことではなくて、いろいろ調べたけれども分かりませんでしたと。ただ、分からなかったけれども効果があったと信じるというようなデータの出し方のほうが消費者に対しては誠実なのだろうと思います。

実際、運賃値上げはいろいろ効果があって、いい方向に進んでいる、この運賃値上げが妥当であったというエビデンスを提示するのは、現実問題としては相当難しいと思います。ただ、それを示そうとする努力とか、分からなかったことを分からなかったと言うことは、消費者に対する情報提供としては重要ではないかと考えておりました。

以上でございます。

○野村座長 ありがとうございます。

こういう見解がございますということを、国交省様、御理解いただきたいと思います。

私からは、若林委員が尋ねられたようなパーセンテージをきちんと見せていくということと、御説明の中にもありましたけれども、運賃改定が投資をしやすくした、あるいはそこに補助が出てくるので投資に踏み切った等も、何か分かりやすくデータをお示しいただくと、郷野委員も御発言されておられましたが、共感が持てるようになるのではないかと。共感するような業界になっていってほしいと思っております。

そうしましたら、全体を通して感想等、まだ一言二言ありましたら、あと二、三分で手短にお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。

逆に、国交省様から専門調査会に対して何かお気づきの点がありましたらお知らせください。

○重田旅客課長 特にございません。今日はいろいろ貴重な御意見をいただきありがとうございます。今後の施策に生かしていけるような貴重な御指摘をいただいたので、しっかりとやっていきたいと思います。ありがとうございます。

○野村座長 ありがとうございました。

インバウンドのことも、多言語で英語、中国語、韓国語というのが挙がっていましたが、それ以外に増やしていく価値があるのか、あるいはヨーロッパ言語にもう少しインバウンドの比率とか消費額を見ながら対応していくのかとか、いろいろな観点で捉えていただきたいなと思っております。要するに、サービス向上ということが重要ですが、必ずしも定住者のみならず、観光で入ってくる方、あるいは国際的な二拠点生活者という方も増えてくるかと思いますので、その辺りも視野に入れた施策を業界のほうへ御指導いただきたいなと思っております。

それから、労働条件の改善ということでかなりお調べいただいていますので、賃金への反映度合いがマイナスになっていたところも、いろいろな状況があった、特にコロナ禍でいろいろな施策を業界のほうも取っておられたということも理解できました。そのような事実を利用者に、あるいはタクシーをあまり利用していない方にも、そういう事情があってこういう結果になったのだということも強調していただいてもよいのかなと思いました。

いずれにしましても、情報公開が大変重要になってきますので、こういうアンケートを利用者に加えてドライバーも対象に含めるということで引き続き実施していただきたいですし、結果についての解釈、考察みたいなものも国交省様のほうから情報発信していただきたいと思いました。

それから、後藤委員が言われましたように、ドライバーの教育・研修もサステナブルに実施していく必要がございますので、多言語のみならず、ITへの対応を含め、人的資本を重視するという御指導もよろしくお願いいたします。

そうしましたら、本日のタクシーの東京都特別区・武三地区のヒアリングの検証はここで一段落させていただきたいと思います。

国交省様、お忙しい中御協力いただきまして、本当にありがとうございます。

○重田旅客課長 こちらこそありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。

○野村座長 最後に、事務局から事務連絡ということでお願いしてよろしいでしょうか。

≪3.事務連絡・閉会≫

○友行参事官 改めまして、本日は誠にありがとうございました。

次回の詳細につきましては、また事務局より御連絡させていただきます。

以上でございます。

○野村座長 ありがとうございました。

そうしましたら、予定より少し早くなりましたが、本日の第86回の「公共料金等専門調査会」をこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございました。失礼いたします。

(以上)