一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃の改定案に関する消費者委員会意見

2026年2月24日
消費者委員会

消費者委員会は、本日、公共料金等専門調査会から、本件に関する意見の報告を受けた。

消費者庁において、本意見を踏まえ、国土交通省とともに適切に対応することを求める。

一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃の改定案に関する公共料金等専門調査会意見

2026年2月18日
消費者委員会 公共料金等専門調査会

消費者委員会公共料金等専門調査会は、令和8年1月9日付、消費者庁より消費者委員会に付議された「一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃の改定案について」(以下「本改定案」という。)について、令和8年1月14日及び1月28日に国土交通省及び一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会(以下「タクシー協会」という。)からのヒアリングを実施するなど、計3回にわたって調査審議を行った。

調査審議の結果を踏まえた当専門調査会の意見は、以下のとおりである。

1.結論

本改定案は、令和4年に続き運賃の値上げを行うものであり、利用者に度重なる負担を生じさせるものである。ただし、改定案の算定は、所定の算定方法に沿ってなされたものとして妥当であると認められる。

2.理由

今回の調査審議の対象となる東京都特別区・武三地区は、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(平成21年法律第64号)1第3条の2第1項に基づく準特定地域に指定されている。これら準特定地域におけるタクシーの運賃の範囲を変更するには、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えた運賃を標準とすること等の基準に適合するものでなければならないとされている(同法第16条第2項)。

タクシー運賃の改定を行う場合は、国土交通省において原価の精査を行った上で、経営に必要な営業費(人件費、燃料費等)に適正な利潤を加えた総括原価を求め、総収入がそれと等しくなるように運賃水準を決定する総括原価方式に基づき行われる。

本改定案の改定率は10.14パーセントであって、改定内容は別紙のとおりである。

国土交通省及びタクシー協会の説明によれば、タクシー運転士の労働環境の改善、ユーザーの利便性を高める投資2及び燃料費高騰への対応のためには、運賃改定が必要な状況にあるという資料が示された。タクシー事業における費用の約7割は人件費が占めており、改定率10.14パーセントのうち約7パーセント分が賃上げ等のタクシー運転士の労働環境改善に必要な費用増であるとの説明があった。

国土交通省から示された総括原価方式により算定された結果によれば、原価計算対象事業者30社における令和6年度を実績年とした平年度の査定額で総収入が約491億7,200万円、運送原価は約540億5,100万円であるところ、本改定案による運送収入の増加を反映させた総収入額は540億5,100万円となることから、本改定案による改定後の総収入が運送原価を超えない旨の説明がなされた。

なお、当専門調査会における調査審議の過程では、算定に係る審査基準3や、人件費の増加等に係る追加資料の提出を国土交通省に求め、説明を聴取した。

本改定案は、令和4年に行われた14.24パーセントの値上げに続き10パーセントを超える運賃の値上げを行うものであり、利用者に度重なる負担を生じさせるものである。ただし、総括原価方式により適切に算定されていることが確認されたことから、本改定案における値上げは妥当であると認められる。

以上の審議結果により、1.の結論とするものである。

3.留意事項

国土交通省及びタクシー協会は、以下の点について留意すべきである。

(1)経営効率化に向けた継続的な取組

本改定案は、令和4年に行われた14.24パーセントの値上げに続き、再び10パーセントを超える値上率となっている。その主たる理由は、運転士数の増加やタクシーサービスの質を向上するための投資等による運賃改定であるとのことだが、昨今の物価上昇等といった経済社会状況を踏まえると、消費者としては近い将来に再び値上げがなされるのではないかという不安が拭えない。そのため国土交通省及びタクシー業界において経営効率化に向けた必要な取組がなされることを期待したい。

(2)運賃制度に係る透明性の向上

タクシー業界の経営努力により、多様なサービス展開がなされていることもあって、現代において、タクシーは消費者にとり重要な公共交通手段となっている。そのため、国土交通省において、運賃改定に係る算定方法の透明性を一層高め、あらゆる角度から安全性、利便性、サービスの質を高めつつ、運賃体系や消費者に寄り添ったサービス提供の方策を中長期的に検討していくことが重要であると考える4

(3)消費者のサービス利便性の確保・向上のための取組

サービス利便性の確保・向上のための取組の一環について、DXへの投資や訪日外国人観光旅客の増加への対応5がなされていることが確認され、これらの取組は、消費者の利便性を向上させるものとして評価できる。また、アプリによる配車サービスの導入により、利用者にとってタクシーの配車予約や乗車が容易になったなど、利便性が向上している旨の説明があった。一方、アプリに関して、乗車の際の配車場所の特定が難しいなどという意見も引き続きあることから、アプリの使い勝手の向上について、消費者のニーズを把握の上、改善に努めるべきである。さらに、アプリ利用が難しい消費者が一定数いることも考えられ、こうした消費者層が取り残されることのないよう、国土交通省は適切かつきめ細かい取組を行うべきである。

(4)サービスの質・安全性確保及びタクシー運転士の労働環境の改善

サービスの質・安全性及びタクシー運転士の労働環境は、タクシーの運賃と並んで消費者のタクシー利用に影響を与えるものである。

安全性については、ユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)の導入6やドライブレコーダーの100パーセントに近い実装、タクシー運転士への安全に関する指導等により事故件数の減少に努める旨の説明があった。他方、審議過程において、東京都内におけるタクシー・ハイヤー車両による人身事故発生件数について、人身事故は減少傾向にあるものの死亡者数は減少がみられない旨の指摘があったところであり、サービスの質・安全性確保に向けてのさらなる取組強化が求められる。その上で、今回の運賃改定の趣旨の1つである消費者の利便性の向上のための投資が、どのようにサービスの質の向上・安全性の確保につながっているかについて、国土交通省はフォローアップすべきである。

また、国土交通省の説明によれば、令和4年の運賃改定により、タクシー運転士は増加を続けているということである。国土交通省は、今回の運賃改定後も、賃金引き上げが適切に行われているか、労働環境の改善に適切に反映されているかなど、継続的に事業者の監視を行うべきである。

(5)消費者に対する丁寧な周知及び実施状況の把握

本改定案は、改定率が10.14パーセントと小さくないものであることから、消費者の理解、納得感を得るよう説明を尽くすことが求められる。国土交通省は、今回の運賃改定の理由や、運賃改定がサービスの質・安全性の向上及びタクシー運転士の労働環境改善に資することについて、消費者に積極的な周知・説明を行うべきである。また、タクシー業界は、利用者へ丁寧な情報提供を行うべきである。

運賃制度について、距離制運賃制度に代表される既存の制度の他、利用者のニーズに応える形でイベント定額運賃、一括定額運賃等、様々な運賃制度の導入により柔軟化を進めている点は利便性の向上という点で評価できる。一方で、料金の中に何が含まれるのか、どのような割増運賃があるのかなど、利用者にとって分かりづらい点もあることから、国土交通省は、今回の運賃改定を含め、運賃制度について消費者に一層の周知を実施するべきである。

また、事業者は、上限運賃から下限運賃までの運賃幅から選択する際、多くが上限運賃を選択するとの説明が国土交通省よりあったところである。国土交通省は、各事業者の運賃届出の結果によるタクシー運賃の値上げ状況を正確に把握すべきである。また、本改定案による運賃改定が消費者に与える影響についても、国土交通省は可能な限り、定量的に把握するとともに、消費者からの意見聴取を行い、消費者利益の確保につながる取組に生かすべきである。

公共料金等専門調査会は、留意事項の対応状況等について、必要に応じて2年後を目途に国土交通省へのヒアリングを含めた事後検証を行うこととしたい。

(以上)

  1. https://laws.e-gov.go.jp/law/421AC0000000064
  2. ユニバーサルデザインタクシーの導入、子育て家庭の多様なニーズに対応したタクシーの導入、女性運転士の普及、訪日外国人観光客のための取組、配車アプリサービスやキャッシュレス決済への対応、お忘れ物DXの導入、ドライブレコーダーの装着等のタクシーサービスの質や安全性の向上のために必要な投資を進めてきたとの説明があった。
  3. 例えば、運送収入については、キロ当たり収入に過去5年の実績を基に推計した実車走行キロを乗じて算出し、人件費については、平均給与月額に支払延人数の伸び率や歩合給の状況を踏まえて算出し、燃料油脂費については、総走行キロ当たり単価に総走行キロを乗じて算出している。
  4. 審議過程においては、運賃認可の処理方針について、査定方針に盛り込まれた適正利潤の算定方法に関する疑問も出され、査定方針を消費者に対して分かりやすく示すことなどを含め、透明性を高める必要性も指摘された。
  5. 多言語対応タブレット端末の導入や外国人旅客接遇研修が実施されている。
  6. 東京都においては約2万台が導入されている(導入率約65パーセント。2025年時点)。