一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃の改定案に関する消費者委員会意見

2022年9月16日
消費者委員会

消費者委員会は、本日、公共料金等専門調査会から、本件に関する意見の報告を受けた。

消費者庁において、本意見を踏まえ、国土交通省とともに適切に対応することを求める。

一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃の改定案に関する公共料金等専門調査会意見

2022年9月16日
消費者委員会 公共料金等専門調査会

消費者委員会は、令和4年8月5日付で消費者庁より「一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃の改定案について」の付議を受けた。公共料金等専門調査会では、東京都特別区・武三地区(武蔵野市・三鷹市)の一般乗用旅客自動車運送事業(以下「タクシー」という。)の運賃の改定案(以下「本改定案」という。)について、令和4年8月8日に国土交通省及び一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会へのヒアリングを行い、調査審議した。これらの結果を踏まえ、上記付議についての公共料金等専門調査会の意見は以下のとおりである。

1.結論

○本改定案は、運賃の値上げを行うものであり、利用者に一定程度の負担を生じさせるものであるが、改定案の算定は、所定の算定方法に沿ってなされたものとして妥当であると認められる。

○本改定案の運賃の値上げ幅は小さくないものである。そのため、

マル1国土交通省及びタクシー業界は、消費者利益の擁護・増進の観点から、消費者への分かりやすく丁寧な説明に努められたい。また、当該地区における各事業者の運賃届出の結果によるタクシー運賃の引上げ状況について、国土交通省は把握すべきである。

マル2本改定案による運賃の値上げが、タクシー乗務員の労働環境の改善に適切に反映されているか、国土交通省は監視すべきである。

○既に導入されている事前確定運賃、一括定額運賃、相乗りタクシー等に加え、国土交通省においては事前確定型変動運賃等の新たな制度についての検討が進められている。国土交通省は、これら新たな制度を導入する場合には、消費者利益の確保につながるよう留意し、また、引き続き、運賃規制全般について不断の見直しを続けるべきである。

○公共料金等専門調査会は、後記3.で指摘する留意事項の対応状況等について、運賃規制全般についての不断の見直しの状況も含めて、本改定案による運賃改定実施後、検証に必要なデータ等が整う令和6年中に、国土交通省へのヒアリングを含めた検証を行う。

2.理由

(1)本改定案申請に至る経緯について

○国土交通省及び一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会の説明によれば、東京都特別区・武三地区のタクシー運賃は、平成19年の運賃改定以降、消費税率引上げに伴う2度の改定(平成26年及び令和元年)及び平成29年の運賃組替え以外は運賃改定を実施しておらず、適正利潤込みの経常収支率は平成19年の運賃改定実施前(平成18年度)の水準をこれまで一度も上回ることなく推移してきた。

○平成19年の運賃改定直後の年度(平成20年度)に比べて、運送の効率化が図られているが、タクシー乗務員の労働環境の改善、ユニバーサルデザインタクシーの導入、配車アプリやキャッシュレス決済等の導入等のタクシーのサービスの質や安全性の向上のために必要な投資を進めてきたところであり、更なるサービスの向上やタクシー乗務員の労働環境の改善及び公共交通としてのタクシーを維持するための乗務員の確保のためには、運賃改定が必要な状況である。

(2)本改定案について

○東京都特別区・武三地区は、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(平成21年法律第64号)第3条の2第1項に基づく準特定地域に指定されている。そして、準特定地域におけるタクシーの運賃の範囲を変更するには、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えた運賃を標準とすること等の基準に適合する必要がある(同法第16条第2項)。

○タクシー運賃の改定を行う場合は、総括原価方式の考え方に基づき、原価の精査を行った上で、適正な利潤を含めた総括原価と総収入が均衡することを確認するプロセスが必要となる。平成29年の運賃組替え時は、収入増加を目的としない運賃組替えであるとして、これを省略した。そのため、「一般乗用旅客自動車運送事業(東京都特別区・武三地区)の運賃組替えの事後検証に関する消費者委員会意見」(令和2年11月26日)では、「今後、運送収入の増加を図るための運賃・料金の改定に当たって、総括原価方式により査定がなされる場合には、運賃水準をより適正なものとする観点から厳密に査定すること」を求めた。

○今回の改定案申請に当たっては、国土交通省において、総括原価方式に基づいて査定を行ったとの説明がなされた。なお、運賃改定に当たっては、申請のあった前年度の実績を用いることを基本としているが、新型コロナウイルス感染症による影響を踏まえ、令和4年7月31日までの申請分については、同影響を受けた期間の実績を用いずに、令和元年の実績を使用して算出したとの説明がなされた。

○本改定案の改定率は14.24パーセントであって、改定内容は別紙のとおり。1

○国土交通省から示された総括原価方式により算定された結果によれば、原価計算対象事業者30社における令和元年を実績年とした推定額で総収入が約371億3,400万円、総括原価が約422億8,300万円であるところ、本改定案による運送収入の増加を反映させた総収入は約422億8,300万円となることから、本改定案による改定後の総収入が総括原価を超えないことが確認された。

○なお、燃料油脂費の算定に当たっては、近年の原油価格高騰を踏まえ、令和3年度下半期の燃料価格を反映させるとともに、国土交通省が実施しているタクシー事業者に対する燃料価格激変緩和対策事業2の効果を加味していることも確認した。また、タクシー乗務員の労働環境改善が重要であることから、改定率14.24パーセントのうち、約8パーセントを賃金アップなどタクシー乗務員の労働環境改善に必要な費用増と見込んでおり、人件費に適切に反映するとの説明があった。

○このように、今回の運賃改定は、運賃の値上げを行うものであり、利用者に一定程度の負担を生じさせるものであるが、総括原価方式により適切に算定されていることが確認されたことから、本改定案における値上げは妥当であると認められる。

○以上の審議結果により、1.の結論とするものである。

3.留意事項

(1)運賃改定に関する丁寧な周知及び実施状況の把握

○本改定案は改定率が14.24パーセントであり、運賃の値上げ幅が小さくないものであることから、消費者の理解を得るための丁寧な周知が必要である。国土交通省は、今回の運賃値上げが消費者のサービス利便性の確保・向上やタクシー乗務員の労働環境改善に資することについて、消費者に対して積極的な周知を行うべきである。また、タクシー業界は、利用者への丁寧な情報提供・説明を行うべきである。

○事業者は、上限運賃から下限運賃までの運賃幅から選択して運賃を決定することから、国土交通省は、各事業者の運賃届出の結果によるタクシー運賃の値上げ状況を正確に把握すべきである。また、本改定案による運賃値上げが消費者に与える影響についても、国土交通省はフォローアップすべきである。

(2)消費者のサービス利便性の確保・向上

○下記の取組が進められていることが確認された。これらの取組は、消費者の利便性、快適性及び安全性を確保し、向上させるものと評価できる。今後も、国土交通省及びタクシー業界は、地方公共団体等とも連携し、利用者のニーズに応じて一層の取組を進めるべきである。

  • ユニバーサルデザイン車両の導入やタクシー乗り場の改善
  • 配車アプリやキャッシュレス決済の普及
  • ドライブレコーダーや先進安全自動車の導入
  • 事前確定運賃、一括定額運賃、相乗りタクシー等の新サービスの導入
  • その他のサービス(子育てや介護等に資するサービス)の推進

○なお、デジタル化に伴うサービスは積極的に進められるべきであるが、デジタルによるサービス利用に不慣れな消費者が取り残されないように、国土交通省及びタクシー業界は、将来においても多くの消費者がメリットを享受できるように十分に配慮しながら取組を進めるべきである。

(3)消費者等の意見の反映

○国土交通省において、東京都特別区・武三交通圏タクシー準特定地域協議会に対して意見招請を行い、同協議会が改定に当たっての意見を回答している等、継続した取組等が確認された。

○タクシーの利便性向上に向けて、国土交通省は、同協議会のみならず、地方公共団体等との連携や消費者からの意見聴取を不断に行う等、消費者等の意見の反映を一層進めるべきである。

(4)サービスの質・安全性の確保及びタクシー乗務員の労働環境の改善

○タクシーのサービスの質・安全性及びタクシー乗務員の労働環境は、タクシーの運賃と並んで、消費者のタクシー利用に影響を与えるものである。

○国土交通省は、今回の運賃値上げの趣旨である、消費者のサービス利便性の確保・向上や安全性の確保、タクシー乗務員の賃金引上げ等の労働環境の改善に適切に反映されているかについて、継続的に事業者の監視を行うべきである。

○さらに、現在検討が行われている労働時間等の規制3の見直しがなされた場合には、国土交通省は、当該見直しを踏まえた対応を適切に行うべきである。

4.持続可能な経営環境のための取組

○デジタル化の進展や、新型コロナウイルス感染症の拡大、国際的なエネルギー情勢に伴う燃料油脂費を始めとする様々なコストの上昇等、社会・経済状況は常に変化している。また、中長期的には、更なる脱炭素化や人口減少等の社会環境の影響を見据える必要がある。

○国土交通省は、その変化に応じた必要な対応を行うとともに、タクシー業界も、その変化に応じて柔軟な業態の変革等がなされることに期待したい。

○さらに、既に導入されている事前確定運賃、一括定額運賃、相乗りタクシー等に加え、国土交通省においては事前確定型変動運賃等の新たな制度についての検討が進められている。国土交通省は、これら新たな制度を導入する場合には、消費者利益の確保につながるよう留意し、また、引き続き、運賃規制全般について不断の見直しを続けるべきである。

(以上)

  1. 改定率に対し運賃と距離の両方を変更することにより本改定案を決定している。
  2. 近年の原油価格の高騰を受け、国民生活等への不測の影響を緩和し、今後の需要回復局面において、タクシーの供給を順調に回復するための下支えとして、LPガスを使用するタクシー事業者に対して、燃料高騰相当分を支援する事業。本事業による支援により今回の燃料油脂費の算定額が抑制されている。
  3. 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年労働省告示第7号)