消費者基本計画工程表の改定素案(令和4年3月)に対する意見

2022年3月31日
消費者委員会

消費者基本計画工程表の改定素案(令和4年3月)に対する意見

消費者委員会は、消費者基本計画(以下「計画」という。)の具体的な施策を定める工程表の検証・評価及び見直しについて、令和3年12月17日に「消費者基本計画等の実施状況に関する検証・評価及び消費者基本計画工程表の改定に向けての意見」(以下「12月意見」という。)を取りまとめ、12月意見の内容を、可能な限り工程表の改定素案等に反映することを求めた。

その後、消費者庁をはじめとする関係省庁等では、12月意見も踏まえて工程表の必要な見直しを実施することとし、取りまとめられた工程表の改定素案は、令和4年3月9日からパブリックコメントに付されている。

消費者委員会は、3月10日の消費者委員会において、工程表の改定素案について、消費者庁からヒアリングを実施した。このヒアリングの結果や、これまでに行った建議・提言その他の意見等の内容、過年度の工程表に記載された個別施策についてのヒアリングの結果や最近の被害実態等を踏まえ、工程表の改定素案に対して、下記のとおり意見を述べる。関係省庁等においては、下記の各項目について積極的に検討の上、可能な限り工程表の改定案等に反映されたい。

消費者委員会としては、本意見及びパブリックコメントの工程表への反映状況やその後の実施状況等について引き続き監視を行い、消費者被害の状況が深刻なものや取組が不十分と考えられるもの等については、今後、重点的に消費者委員会の調査審議を通じて取り上げていくとともに、必要に応じて建議等を行っていくこととする。

1.工程表全体に関する事項

(1)社会状況の変化に伴う新たな消費者問題への対応

12月意見で指摘した通り、コロナ禍やデジタル化等の社会状況の変化に伴って生じている新たな消費者問題への対応を進めることが重要である。特に、デジタル化の進展に伴う取引形態や決済方法の多様化と、若年者、高齢者、障害者及び外国人等、それぞれの消費者の置かれた状況及びぜい弱性が多様であることとが相まって、多種多様な消費者問題が発生していることから、工程表の記載を充実させるとともに、これに基づき取組を進めること。

また、消費者政策における各施策は、例えば、食品の産地偽装対策・トレーサビリティの推進とエシカル消費における認証ラベルの普及、キャッシュレス決済の安全・安心確保と子供を含む若年者への消費者教育など、互いに関連し、連携して対応するべき施策が多く存在する。次期計画の策定を見据えた中長期的な課題として、施策間の連携を積極的に図り、適切に検証・評価をするとともに、後述する指標・目標の設定を行うこと。

なお、昨今の目まぐるしく変化する国際情勢についても、その影響を注視しつつ、物価の高騰や寄付金詐欺等、消費者行政として対処すべき事項については、必要に応じ工程表に記載すること。(消費者庁及び関係省庁等)

(2)消費者政策におけるEBPMの推進

12月意見で指摘した通り、施策を検証・評価できるようにするためには、定量的なアウトカム指標等の設定を積極的に行うとともに、具体的な目標設定を行うことが重要である。今回の改訂素案において、12月意見を踏まえ、アウトカム指標等の設定を積極的に行ったことは評価できるが、なお、抽象的な指標やアウトプット指標の設定にとどまっていたり、今後の対応に委ねられていたりするものも見受けられる。引き続き定量的な指標及び具体的な目標の設定に努めるとともに、こうした指標・目標の設定を短期的に行うことが容易でないものについては、継続した検討を行うこと。

また、中長期的な課題として、消費者政策におけるEBPMの推進に関する諸外国の取組について調査・研究を行い、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)情報と犯罪の認知・検挙等に関する情報や、行政処分、行政指導等の情報など各省庁等が保有する行政記録情報や民間が保有する様々な情報とを組み合わせ、時系列的に分析すること等により、消費者政策における課題や政策効果の把握を速やかに行うことができるように取組を進めること。(消費者庁及び関係省庁等)

2.消費者法令の企画・立案等

(1)消費者契約法及び消費者裁判手続特例法

平成30年の消費者契約法改正に際しての国会の附帯決議1等を受けて検討の上、取りまとめられた消費者庁の「消費者契約に関する検討会報告書」及び「消費者裁判手続特例法等に関する検討会報告書」を踏まえた取組を着実に進めていくことが重要である。令和4年3月、消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案が国会に提出されたところであるが、消費者契約法については、「消費者契約に関する検討会報告書」において改正の方向性が示されたものの改正法案に反映されていないと見受けられる事項が複数ある。これらについては、国会の附帯決議でも触れられている上述した消費者のぜい弱性の多様化を踏まえ、きめ細かく対応することが必要と考えられることから、同報告書において将来の検討課題とされた事項とともに、数度の改正経緯から見えてきた課題を踏まえ、消費者契約法の規定の在り方についての抜本的議論の必要性も視野に入れて、引き続き検討する旨工程表に記載すること。消費者裁判手続特例法については、改正法案の実現に向け万全を期すこと。(消費者庁)(1(2)マル1ウ、(4)マル1関係)

(2)特定商取引法及び預託法

特定商取引法等の契約書面等の電子化については、消費者庁の「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会ワーキングチーム」において出された消費者団体等の意見を踏まえて丁寧に検討を進め、同検討会が結論を得た場合には、可能な限りその結論を工程表に反映させること。なお、同検討会の検討状況を踏まえた上で、「特定商取引法及び預託法における契約書面等の電磁的方法による提供についての建議」(令和3年2月4日)に基づき、消費者委員会においても、実施状況について聴取する予定であることを付言する。

また、特定商取引法の執行強化については、送り付け及び定期購入に関する消費生活相談件数をKPIとして新たに設定したことは評価できる。引き続き行政処分件数や消費生活相談件数の変化を把握して、特定商取引法及び預託法の執行強化に努めること。(消費者庁)(1(2)マル1ア、3(1)マル5関係)

(3)公益通報者保護法

令和4年6月の改正公益通報者保護法の施行に向け、指針等の周知・広報、ガイドラインの改訂、認証制度の見直し等の所要の業務を着実に進めるとともに、法改正による効果を含む公益通報者保護制度の実効性を適切に検証・評価するため、その基礎となる各種調査を定期的に実施すること。(消費者庁)(2(4)マル5関係)

3.デジタル化への対応

(1)取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律

令和4年5月の取引DPF消費者保護法の施行に向け、周知・広報、施行令及び施行規則の制定、指針案の公表等が進められているところである。KPIを新たに設定したことは評価できるが、施行後の実効性確保のためには、取引デジタルプラットフォーム提供者の取組状況をモニタリングすることが重要であることから、モニタリングの手法及び結果の開示方法について検討すること。また、取引デジタルプラットフォーム官民協議会が適切に機能することが重要であり、消費者をはじめとするステークホルダーが官民協議会における議論を適切に評価できるよう、可能な限り情報開示されるように取り組むこと。

なお、同法の国会附帯決議において今後の課題とされた事項についても、引き続きその検討を進めること。(消費者庁)(3(1)マル1、(2)マル1イ関係)

(2)アフィリエイト広告等

令和4年2月に公表された消費者庁の「アフィリエイト広告等に関する検討会報告書」を踏まえ、景品表示法の指針の改定や、同法と他の関係法令との連携による執行強化等に向けた所要の取組について工程表に記載すること。また、今後の検討課題とされたステルスマーケティングについての実態把握及び検討実施について、消費者庁の「景品表示法検討会」における検討の予定とともに工程表に記載すること。(消費者庁及び関係省庁等)(1(2)マル3ア、3(1)マル1、(2)マル1イ関係)

4.成年年齢引下げ後の対応

(1)成年年齢引下げ後の対応の継続

KPIについて、上述した消費者政策におけるEBPMの推進の観点から検討し、定量的なアウトカム指標等の設定を行うこと。また、「成年年齢引下げに伴う若年者の消費者被害防止に向けた対応策に関する意見」(令和3年12月17日)及び12月意見において指摘した内容を踏まえて、令和4年4月の成年年齢引下げ後の具体的な取組方針を明確化することが重要である。そのため、成年年齢引下げを踏まえた対応について一覧性を確保する観点から、少なくとも第4期基本計画期間中は、成年年齢引下げ後の取組内容についても整理した上、工程表に記載すること。(消費者庁、金融庁、法務省、文部科学省、経済産業省及び関係省庁等)(1(3)マル1関係)

(2)若年者に対する消費者教育の推進

「成年年齢引下げに伴う若年者の消費者被害防止に向けた対応策に関する意見」において指摘した通り、「社会への扉」等を活用した授業の効果を検証し、教材の改訂や教育プログラムの改善につなげていくため、生徒・学生の理解度及び定着度について把握するための方策について、検討すること。また、成年間近の若年者のみならず、幼児期から発達の段階に応じて消費者教育を行うことが重要であることから、令和4年4月の成年年齢引下げを契機として、小学校、中学校、高等学校等における消費者教育の取組を一層推進するとともに、成年年齢引下げがもたらす影響等について、幼児・若年者の保護者等に向けた周知・広報の充実を図ること。(消費者庁、文部科学省及び関係省庁等)(4(1)マル1マル2関係)

5.地方消費者行政の充実・強化

(1)消費生活相談等の消費者行政のデジタル化

社会の急速なデジタル化を踏まえ、消費者、消費生活相談員、消費生活センターを含む地方公共団体、関係省庁等多様な関係者間での合意形成を図りながら、消費者行政のデジタル化を一層促進することが重要である。消費者庁及び国民生活センターの「消費生活相談のデジタル化に係る中間的とりまとめ」を踏まえ、今後必要となる取組について、可能な限り工程表に記載すること。その際、上述した消費者行政におけるEBPMの推進の観点から、PIO-NETの情報を最大限活用し、政策の企画立案や法執行に活用するための検討を進めること。(消費者庁)(5(3)マル1マル7関係)

(2)地方消費者行政への支援

今後、少子高齢化の更なる進展や、それに伴う社会的資源の制約により、地方消費者行政の体制整備の取組に関する地方公共団体間の格差が生ずることが懸念される。地方消費者行政強化作戦2020の進捗状況の検証・評価について、達成率の低い都道府県については、各都道府県・市区町村のそれぞれのレベルで実態・要因等をより丁寧に分析した上で、支援策の在り方の見直しも含め改善策を検討すること。また、令和2年度から実施している先進的モデル事業について、事業の成果や課題等の検証・評価を十分に行った上で、モデルとなる事業を横展開するための方策について具体的に検討すること。(消費者庁)(5(3)マル1関係)

(3)高齢者や障害者等への見守り支援

高齢者や障害者等のぜい弱性等を抱える消費者を保護するための取組が今後ますます重要となる中で、取組の実効性を向上させるためには、関連施策間で連携を強化することが不可欠である。社会福祉法に基づく重層的支援体制整備事業と消費者安全法に基づく消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)との連携が図られたことや、令和4年3月に閣議決定された第二期成年後見制度利用促進基本計画において消費生活センターが連携先として位置付けられたことなどは高く評価されるが、現場に近い市区町村レベルで十分な連携が行われるよう、現場の実態やニーズ等を把握した上で、必要な支援策等を検討すること。また、身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についても、引き続き関係省庁等が連携して必要な取組を進めること。(消費者庁、厚生労働省及び関係省庁等)(1(2)マル1オ、マル2ス、5(3)マル2関係)

6.食品表示制度の適切な運用及び執行

(1)食品表示制度の適切な運用

食品表示制度についての消費者及び事業者への普及・啓発は制度の適切な運用を図る上でも重要である。インターネット販売における食品に関する情報提供についてのガイドブックについては、作成のみならず作成後の周知・広報にも十分に取り組むこと。また、保健機能食品については、消費者の理解度が横ばいで推移していることから、更なる理解向上に向けた方策について検討を行うこと。(消費者庁)(1(2)マル5ア、3(1)マル1、(2)マル1イ関係)

(2)食品表示の監視・取締りの強化

食品表示は、消費者の自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保に関し、重要な役割を果たしており、その適正を確保することが必要である。「アサリの産地表示適正化のための対策」(令和4年3月消費者庁、農林水産省)に基づき対応するとともに、食品表示に対する消費者の信頼を回復するため、サプライチェーンの各段階における監視を含めて、引き続き関係省庁が連携して不適切な食品表示への監視、取締りの強化に一層取り組むこと。(消費者庁、警察庁、国税庁、農林水産省)(1(2)マル5ウ関係)

7.SDGsの達成に向けたエシカル消費の推進

SDGsの達成に向けては、エシカル消費の実践を通じて、消費者一人一人の行動変容を促していくことが必要である。そのため、従来の周知・啓発の結果のみならず、認証ラベルの活用なども含めエシカルな商品・サービスに対する消費者の行動を調査・分析することに取り組むこと。また、消費者の適切な選択のためには、サプライチェーンの各段階において事業者が適切に活動し、それが消費者に適切に情報開示がされコミュニケーションが進むことが重要であることから、事業者の活動の実態把握に取り組むこと。

食品ロス削減については、食品ロス発生量を2030年度までに2000年度比で半減させるという目標達成に向け、食品ロス発生量の内訳をより詳細に分析し、項目ごとに削減目標を設ける等、消費者や事業者の取り組むべき課題の一層の見える化について検討すること。また、サステナブルファッションの推進については、新たな取組として期待するとともに、具体的な今後の取組予定について、可能な限り工程表に記載すること。

なお、エシカル消費の対象は、児童労働や強制労働等の人権問題、カーボンニュートラル等の環境問題など幅広く、国際情勢の影響も無視できないことから、その影響も踏まえつつ取組を進めること。(消費者庁、農林水産省、経済産業省、環境省及び関係省庁等)(2(1)マル1、(3)マル1関係)

(以上)

  1. 消費者契約法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成30年5月23日衆議院消費者問題に関する特別委員会)及び消費者契約法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成30年6月6日参議院消費者問題に関する特別委員会)