消費者基本計画等の実施状況に関する検証・評価及び消費者基本計画工程表の改定に向けての意見

2021年12月17日
消費者委員会

消費者基本法(昭和43年法律第78号)においては、消費者政策の実施の状況の検証、評価及び監視について、それらの結果の取りまとめを行おうとする場合には、消費者委員会の意見を聴かなければならないとされている。このため、消費者委員会としては、消費者基本計画(以下「計画」という。)及び具体的な施策を定める工程表(以下、計画と工程表を合わせて「計画等」という。)の実施状況や、計画等に盛り込むべき新たな課題等に係る検討を、調査審議の重要な柱の一つと位置付けてきた。

令和2年7月に消費者政策会議で決定された工程表においても、「消費者委員会は、本工程表に記載されている施策の実施状況について、KPIを含めて随時確認し、検証、評価及び監視を行う。」とされている。

消費者委員会としては、個別施策に係るヒアリングの結果や最近の被害の実態等を踏まえ、計画等の実施状況に関する検証・評価において、特に留意すべき事項や工程表の見直しに向けて具体的に検討すべき課題について、下記のとおり意見を述べる。関係省庁等においては、下記の各項目について十分に検討の上、可能な限り工程表の改定素案等に反映されたい。

なお、消費者委員会としては、引き続き令和4年1月以降も、コロナ禍やデジタル化等の社会状況の変化に伴う消費者問題等についてヒアリングを行うとともに、今後、消費者庁において策定される工程表の改定素案に対し、更なる意見表明を行うことを予定している。

1.工程表全体に関する事項

(1)コロナ禍やデジタル化等の社会状況の変化に伴う新たな消費者問題に関する記載の拡充

消費者問題は、日々、変化しており、消費者政策もそれに対応して行われなければならない。特に、新型コロナウイルス感染症について、日本国内で最初の感染者が確認されてから間もなく2年となるが、この間、感染症の拡大に伴って外出自粛や人との接触をなるべく避ける行動が求められる中で、在宅時間の増加、インターネット通販の利用拡大、デジタル化の加速、消費行動や価値観の変化等、消費者に大きな影響が生じた。さらに、その後のワクチン接種の進展等により日常生活の回復を目指す中にあっても、ライフスタイルの変化やデジタル化の進展等に伴う消費者に対する影響は続いており、今後もそうした消費者への影響を踏まえた対応が必要である。

そのため、コロナ禍やデジタル化等の社会状況の変化に伴って生じている新たな消費者問題への対応について、工程表の全般にわたって改めて検討し、必要に応じて記載を充実させること。とりわけ、情報技術の発展が急速に進んでいるデジタル取引については、消費者の利便性を向上させる事業活動に配慮しつつも、技術が高度に複雑化し、情報が利活用されることに伴って生じたデジタル取引ならではのぜい弱性を踏まえた消費者への望ましい情報提供の在り方等に関し、国際的な動向も踏まえた今後の取組を検討すること。また、若年者、高齢者、障害者及び外国人等、それぞれの消費者の置かれた状況及びぜい弱性に由来する消費者問題が見られる。こうしたぜい弱性の多様化を踏まえた消費者被害の防止及び消費者への支援の在り方について、引き続き記載を充実させること。(消費者庁及び関係省庁等)

(2)消費者政策におけるEBPMの推進

消費者政策の企画・立案に当たってもEBPM(証拠に基づく政策立案)を推進していく必要がある。その際には、事前分析と事後検証の二つの観点からデータの収集やKPIの設定を行うことが重要である。

工程表の改定に当たっては、これまでの消費者委員会意見1を踏まえて、以下の四つの基準を念頭にKPIの見直しを行うこと。

1)法令及びガイドライン等の見直しや改訂の実施状況
2)消費者や事業者等への、法令及びガイドライン等の周知状況
3)消費者関連法令の執行等、行政処分の実施状況
4)関連する取組全体の効果としての消費者被害の発生状況

見直しに当たっては、現状のKPIについての検証・評価を行うとともに、より効果的なKPIの設定方法等についても検討の上、指標を設定すること。具体的には、事前分析と事後検証を適切に行えるようにするため、施策概要に記載された取組を内容に応じ区分した上で、それぞれに対応した複数かつ定量的な指標を設定するとともに、会議や説明会の開催件数等のアウトプット指標ではなく、認知度や理解度等のアウトカム指標の設定を積極的に行い、かつ、当該指標について具体的な目標を定めること。併せて、同種の取組については、比較して検証・評価することを可能にする観点から、できる限り同様の指標を定めること。(消費者庁及び関係省庁等)

また、次期計画の策定を見据えた中長期的な課題として、後述のSDGsの推進等の政府の重要政策における目標との整合性を確保したうえで、工程表の施策や目標の一層の体系化・構造化を進めること。さらに、諸外国の取組も参考にしつつ、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)情報とその他の情報との連携等による更なる利活用を検討2するとともに、KPIの定点観測が可能となるよう、消費者意識基本調査等の各種調査において、質問項目の見直しを含めた活用方策を検討すること。(消費者庁及び関係省庁等)

2.消費者法令の企画・立案等

(1)消費者契約法及び消費者裁判手続特例法

消費者庁において「消費者契約に関する検討会」及び「消費者裁判手続特例法等に関する検討会」が開催され、それぞれ令和3年9月、同年10月に報告書が公表された。各報告書を踏まえた今後の具体的な取組内容について、それぞれの報告書において将来の検討課題とされた事項についての検討方針を含めて、工程表に記載すること。(消費者庁)

(2)特定商取引法及び預託法

特定商取引法等の契約書面等の電子化については、「特定商取引法及び預託法における契約書面等の電磁的方法による提供についての建議」(令和3年2月4日)を踏まえ、電磁的方法による提供の在り方並びにデジタル技術を積極的に活用した消費者の保護の拡充について、消費者庁「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」において検討を進めること。そのうえで、同検討会における検討状況について引き続き消費者委員会に報告するとともに、検討状況を踏まえた今後の具体的な取組内容について、工程表に記載すること。(消費者庁)

また、特定商取引法及び預託法の執行強化については、令和3年6月に成立した消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律を踏まえて、詐欺的な定期購入商法や送り付け商法の抑止に向けた具体的な取組内容について工程表における記載を充実させること。併せて、法改正による効果の検証・評価が可能となるよう指標を検討し、工程表に記載すること。(消費者庁)

(3)公益通報者保護法

令和4年6月の改正公益通報者保護法の施行に向け、公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)及び同指針の解説(令和3年10月)の内容を事業者、公益通報対応業務従事者、労働者等に対して効果的に周知・広報するための方策を検討するとともに、法改正による効果の検証・評価が可能となるような指標を検討し、工程表に記載すること。

併せて、国の行政機関向け及び地方公共団体向けガイドライン3の改正・周知、改正法の施行に伴う消費者庁における体制・運用面での整備等、残された課題に関する今後の具体的な取組内容についても工程表に記載すること。(消費者庁)

3.デジタル化への対応

(1)取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律

来年度からの取引DPF消費者保護法の円滑な施行に向け、内閣府令、指針等について実効性のある規定となるよう「取引デジタルプラットフォーム官民協議会準備会」において十分な協議を進めるとともに、同法の周知に努めること。また、それらの実績、KPI及び施行後の具体的な取組内容について、工程表に記載すること。

併せて、同法の国会附帯決議において今後の課題とされたC to C取引への対応、オンラインによる手続が可能な裁判外紛争解決手続(ODR)の提供、SNSを利用して行われる取引における消費者被害の実態把握等の各事項について、その検討の時期や取組を工程表に記載すること。(消費者庁)

(2)デジタル広告

消費者庁「アフィリエイト広告等に関する検討会」における検討状況を踏まえた今後の具体的な取組内容について、工程表に記載すること。また、内閣官房において令和3年4月、「デジタル広告市場の競争評価 最終報告」が取りまとめられた。同報告書を踏まえた関係省庁等における今後の取組内容について、工程表に記載すること。これらの記載に当たっては、「自主規制の実効的な整備・運用の在り方に関する消費者委員会意見」(令和3年8月19日)を踏まえて、アフィリエイト広告やターゲティング広告等に関する自主規制の整備や実効性の向上を促進するための方策について検討すること。(消費者庁、内閣官房及び関係省庁等)

(3)通信分野の消費者保護

総務省において「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」が開催され、令和3年9月、報告書が取りまとめられた。報告書を踏まえた今後の具体的な取組内容について、引き続き検討することとされた苦情相談の処理の在り方の検討の進め方を含めて、工程表に記載すること。(総務省)

(4)食品表示におけるデジタルツール活用等

食品表示の在り方については、「食品表示の全体像に関する提言」(令和元年8月15日)を踏まえて、実証事業を含む各種調査等を進めるとともに、インターネット販売における食品に関する情報提供の在り方については、工程表への記載を充実させるとともに、Codexにおける議論を踏まえつつ取組を加速させること。(消費者庁)

また、保健機能食品制度の在り方については、消費者庁の「特定保健用食品制度(疾病リスク低減表示)に関する検討会」において、多くの委員から特定保健用食品制度の在り方といった全般的な課題に対応すべきとの意見が出されたことも踏まえ、その検討の方針を含めて、工程表への記載を充実させること。(消費者庁)

(5)デジタル化に対応した消費者教育の推進

消費者庁消費者教育推進会議の「社会のデジタル化に対応した消費者教育に関する分科会取りまとめ」(令和3年5月)や、消費者庁新未来創造戦略本部における「消費者保護のための啓発用デジタル教材開発に向けた有識者会議」の検討を踏まえた消費者教育の推進に係る具体的な取組内容について、学校教育における活用に向けた取組も含め、工程表に記載すること。(消費者庁、文部科学省)

(6)キャッシュレス決済への対応

キャッシュレス決済等の普及により、決済手段が多様化・複雑化し、これに関する消費者トラブルが増加していることから、キャッシュレス決済等に関する消費者問題についての対応等について取組状況の確認を行った上で、工程表への記載を充実させること。(消費者庁、金融庁、経済産業省)

4.成年年齢引下げ後を見据えた対応

令和4年4月に成年年齢引下げに係る改正民法が施行されることから、成年年齢引下げ後を見据えた取組について、工程表の記載を充実させることが重要である。そのため、「成年年齢引下げに伴う若年者の消費者被害防止に向けた対応策に関する意見」(令和3年12月17日)を踏まえて、成年年齢引下げに向けた消費者教育や周知・広報活動等を強化するとともに、これまでの取組の効果や課題等について検証・評価を行った上で、令和4年4月の成年年齢引下げ以降の具体的な取組方針について検討し、工程表に記載すること。(消費者庁、金融庁、法務省、文部科学省、経済産業省及び関係省庁等)

5.地方消費者行政の充実・強化

(1)消費生活相談等の消費者行政のデジタル化

消費者庁及び国民生活センターにおいて「消費生活相談デジタル化アドバイザリーボード」が開催され、令和3年9月、「消費生活相談のデジタル化に係る中間的とりまとめ」が公表された。本中間的とりまとめを踏まえた今後の取組内容について、その検討の進め方も含めて、工程表に記載すること。

その上で、消費者の利便性の向上、消費生活相談員等の負担軽減・力の発揮及び政策の企画・立案や法執行等への相談情報の利活用促進の観点から、次期PIO-NET刷新を含めた消費生活相談のデジタル化に向けた方針について検討を進め、可能な限り工程表に記載すること。(消費者庁)

(2)地方消費者行政への支援

令和3年度地方消費者行政の現況調査によれば、地方消費者行政予算に占める自治体の自主財源の増加は見られるものの、予算全体では減少している。また、消費生活相談員数は増加しているものの、資格保有者数は減少しているほか、消費者行政担当の事務職員数も減少している。引き続き、消費生活相談員の更なる処遇改善や消費者行政の担い手となる多様な人材を育成・確保するための方策を始め、地方消費者行政に対する必要な支援策について検討し、工程表に記載すること。(消費者庁)

(3)高齢者や障害者等の消費者問題への対応

高齢化やデジタル化等が進展する中で、高齢者や障害者等のぜい弱性等を抱える消費者を保護するための取組がますます重要となることから、成年後見制度の利活用促進や身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての対応等について取組状況の確認を行った上で、工程表への記載を充実させること。(消費者庁、厚生労働省)

また、地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律(令和2年6月成立)により改正された社会福祉法に基づく重層的支援体制整備事業と消費者安全法に基づく消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)との更なる連携強化について検討を進め、具体的な取組について工程表に記載すること。(消費者庁、厚生労働省)

6.事故情報の収集、通知制度の運用

「消費者事故対策に関する行政評価・監視-医業類似行為等による事故の対策を中心として-<結果に基づく勧告>」(令和2年11月17日総務省)を踏まえた今後の取組について、通知制度の意義の周知等に関する具体的な取組の内容を工程表に記載すること。(消費者庁、警察庁、総務省消防庁、厚生労働省)

7.SDGsの推進

(1)エシカル消費の普及啓発

消費者政策の立場からSDGsの達成に向けた貢献を行うため、人や社会・環境に配慮した消費行動の普及啓発を推進すること、また、食品ロスやファッションロスの削減等をはじめとして、様々な分野での事業者と消費者の連携・協働が重要である。

食品ロス削減については、「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」(令和2年3月31日閣議決定)の進捗状況を踏まえて、必要に応じて工程表を充実させること。また、サステナブルファッションの推進に向けては、「サステナブルファッションの推進に向けた関係省庁連携会議」における検討内容も踏まえて、具体的な取組を工程表に記載することとし、記載に当たっては、エシカル消費の普及・啓発に係る工程表における関連する記載との整合性を確保すること。(消費者庁、経済産業省、環境省及び関係省庁等)

(2)消費者志向経営の推進

消費者志向経営の推進を通じた事業活動の健全化を図ることは、消費者被害の防止にもつながるものである。事業者と消費者の連携・協働の促進に向けた優良事例表彰の見直し・改善や消費者志向経営を実践する事業者の資金調達の円滑化等について、「消費者志向経営の推進に関する有識者検討会」における検討内容も踏まえ、具体的な取組を工程表に記載すること。また、「事業者による消費者関連情報の積極的な活用を促すための対応策・環境整備に関する意見」(令和3年8月19日)も踏まえて、事業者と行政との対話に基づく共創体制の構築・整備や事業者による自主的な取組を応援する仕組みの充実等について検討し、工程表に記載すること。(消費者庁及び関係省庁等)

(3)循環型社会の形成やカーボンニュートラルに向けた取組

SDGsの達成に向け、循環型社会の形成に向けた取組等の環境の保全に資する取組を推進していくことが重要である。特に、2050年カーボンニュートラルに向けては、消費者が行動様式の変革や行動変容に取り組むことにより事業者の取組を後押しすることも重要であることから、地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定)の内容を踏まえて、脱炭素社会づくりに向けたライフスタイルの変革に係る工程表を見直すこと。(環境省)

(以上)

  1. 「次期消費者基本計画の素案(平成27年2月)等に対する意見」(平成27年2月17日消費者委員会)及び「消費者基本計画工程表の素案(令和2年5月)に対する意見」(令和2年5月29日消費者委員会)
  2. 例えば、検索キーワードを臨機応変に設定した上で行政処分や注意喚起等と紐づけて消費生活相談の推移の状況を把握し分析すること等が考えられる。
  3. それぞれ内部の職員等からの通報用及び外部の労働者等からの通報用の二種類が存在。