電力託送料金制度等の詳細設計の在り方に関する消費者委員会意見

2021年7月16日
消費者委員会

消費者委員会は、本日、公共料金等専門調査会電力託送料金に関する調査会から、電力託送料金制度等の詳細設計の在り方に関する意見の報告を受けた。

本意見を踏まえ、消費者庁において意見表明することを求める。

電力託送料金制度等の詳細設計の在り方に関する意見

2021年7月9日
消費者委員会 公共料金等専門調査会
電力託送料金に関する調査会

消費者が支払う電気料金には、小売電気事業者が一般送配電事業者の送配電設備を利用する際の利用料である託送料金が含まれている。託送料金は、電気の小売料金に転嫁され、最終的には消費者をはじめとする需要家が負担するものであり、消費者向け1電気料金の約3から4割を占めている。また、送配電事業が地域独占により営まれていることから、平成28年4月からの電力小売全面自由化以降においても総括原価方式による料金規制が措置されている2。しかし、近年頻発している自然災害への対応や脱炭素化社会に向けた再生可能エネルギーの導入拡大等を背景として、中立的な共通インフラである送配電ネットワークの強化の必要性が高まる中で、託送料金制度についても、一般送配電事業者における必要な投資の確保とコスト効率化を両立させる観点からの見直しが求められている。託送料金制度に関するこのような見直しは、電気の安定供給や料金の低廉化等を通じて消費者利益の向上に資するほか、小売電気事業者の新規参入や料金・サービス両面での競争や多様化を促進することにより、電力小売全面自由化の帰趨3にも大きく影響するものであり、消費者委員会としてもその在り方に大きな関心を寄せてきた4

このような中、令和2年6月における「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(「エネルギー供給強靱化法」)の成立に伴う措置のうち、「託送料金制度改革」と「配電事業ライセンスの導入」については、託送料金の変動を通じて消費者向けの電気料金にも大きく影響することから、消費者委員会は、令和2年8月より、公共料金等専門調査会電力託送料金に関する調査会(以下、「本調査会」という。)での調査審議を再開し、第10回から第15回までの計6回にわたり、経済産業省の資源エネルギー庁及び電力・ガス取引監視等委員会事務局から、それぞれにおける検討状況についてのヒアリングを行ってきた。また、本調査会の各回において出された主な指摘事項等については、その概要を消費者委員会事務局において取りまとめ、資源エネルギー庁の総合エネルギー調査会持続可能な電力システム構築小委員会(以下、「構築小委員会」という。)及び電力・ガス取引監視等委員会の料金制度専門会合(以下、「料金制度専門会合」という。)にオブザーバーとして参加している消費者庁から、それぞれの会合において随時報告が行われた。

その後、本年6月に構築小委員会において第二次中間取りまとめが行われるとともに、同年6月24日付で、消費者庁長官から消費者委員会に対して、経済産業省による「電力託送料金制度改革(小売規制料金関係を含む)及び配電事業に関するもののうち電気料金に係るものの検討について」の意見を求められた。これを受けて、6月29日、7月9日の計2回にわたり本調査会を開催して調査審議を行った結果、上記付議に対する本調査会としての意見は下記の通りである。

1.電力託送料金制度改革について5

(1)全般的な評価

現行の託送料金制度については、総括原価方式の下、一般送配電事業者から値上げ改定の申請がある場合に、国が審査を行い、認可を行う仕組み6となっており、事業者が値上げを必要とする場合には厳格な審査が行われる一方、それ以外の場合には料金や費用の適正性が必ずしも十分に検証されないほか、事業者における効率化インセンティブが十分に働きにくいという課題7が存在する。このため、電力託送料金に関する調査会報告書(平成28年7月)においても、一般送配電事業者による更なる効率化やコスト削減等に向けた取組を促すため、関係府省等に対して、原価の定期的な洗い替えや一般送配電事業者による効率化努力の検証・評価等の対応策を講じることを求めた。

このようなことを背景として新たに導入されることとなったレベニューキャップ制度は、一般送配電事業者における必要な投資の確保とコスト効率化の両立を図るものであり、一般送配電事業者が、一定期間8ごとに、達成目標や必要な費用等についての審査を経た上で、収入上限(レベニューキャップ)について承認を受け、その範囲内で柔軟に料金を設定できることとされている。このような仕組みは上記報告書における提言の趣旨にも沿うものであり、電力システム改革の目標である電力の安定供給や料金低廉化等の実現に向けて、各国の事例も参考にした上で、実効性のあるレベニューキャップ制度を構築し、それを適切に運用していくべきである。

(2)目標の設定・評価とインセンティブ付与の在り方

現在検討されているレベニューキャップ制度の案においては、安定供給、経済効率性、環境への適合などを柱として、複数の分野にわたる達成目標を設定し、その達成状況に応じて翌期の収入上限の上げ下げ等のインセンティブを付与することが提案されている。イノベーションやコスト効率化等を促進する上で、このような仕組みを導入することは有効であると考えられるが、複数の分野にわたり数多くの目標を設定すると、費用の増加を通じて託送料金の引上げにつながりかねないことから、優先度の高い項目への重点化を図るなど、消費者と一般送配電事業者の双方にとって過度な負担とならないような配慮をすべきである。

また、達成目標としては、できるだけ明確で、評価しやすいものを選定することを基本とするとともに、投資効果(便益向上やコスト効率化等)の発現時期が規制期間を超えるような項目も存在することから、それをどのように評価するかについても十分に検討することが必要である。更に、目標の設定・評価やインセンティブ付与について具体的に検討を行う際には、その実施方法についての透明性を高める観点から、十分な情報開示を行うべきである。

(3)収入上限の審査方法

収入上限設定の前提となる見積費用の査定に当たっては、事業計画の実施に真に必要な費用であるかを厳正に確認するとともに、事業者間比較や効率化係数の設定を通じて、適正かつ効率的な費用を算定することを徹底すべきある。特に、現行の託送料金制度において、原価算入が認められていない費用を算入対象とすること等については、その必要性について厳格に検討した上で、慎重に判断することが必要である。

見積費用の査定9や収入上限の審査については、適正かつ合理的な方法により、透明性を確保した形で行うべきである。OPEX(人件費・委託費等)について、一般送配電事業者の創意工夫の余地を残すために、個々の費目ごとではなく費用全体に対して査定を行うことには一定の合理性が認められるが、その結果として査定プロセスの透明性や厳格性が失われないよう十分留意すべきである。また、電源開発促進税、賠償負担金、廃炉円滑化負担金等の政策的観点から託送料金で徴収している費用については、送配電ネットワークの整備に要する費用とは区別した形で明示すべきである。

(4)託送料金等の設定・変更

頻繁な料金変更に伴う混乱を避ける観点からは、一つの規制期間内における託送料金についてはできる限り一定となるよう努めるとともに、期中に収入上限や託送料金の変更を行う場合には、消費者をはじめとする需要家に対しても十分に情報提供を行うべきである。

外生的な費用や効率化が困難な費用を制御不能費用と位置付けて、託送料金に反映することはやむを得ない措置であるが、公租公課等のほかにどのような項目を制御不能費用の対象とするかについては、十分な検討を行った上でその範囲を明確化し、安易に託送料金への反映が行われないよう特に留意すべきである。

また、送配電ネットワーク整備のための固定費の電圧別(低圧・高圧・特別高圧)の配分については、一般家庭等向けの低圧部門に過大な配分になっているとの指摘がある10ことから、新たな託送料金制度への移行に向けて、電圧別に必要な設備のコストに関する実績データ等のエビデンスを踏まえた上で、より公平な配分基準に修正することを速やかに検討すべきである。

(5)規制期間終了時の評価と利用者への還元

規制期間終了時の事業計画・目標の達成状況の評価、実績費用・実績収入の評価、翌期の収入上限への反映については、適正かつ明確な方法に基づき、透明性を確保した形で行うべきである。

一般送配電事業者における効率化インセンティブを機能させる観点から、規制期間内において実績費用が実績収入を下回った場合には、当該コスト効率化の成果については一般送配電事業者の利益とすることとされているが、翌期以降における利益分配(プロフィットシェア)については公正かつ合理的な方法により行い、消費者をはじめとする需要家にも適切に還元される仕組みとすべきである。他方、損失分担(ロスシェア)を行う場合には、どのような場合に、どのような方法によりシェアするのかを明らかにした上で、消費者をはじめとする需要家が一方的に不利にならないような仕組みとすべきである。

(6)消費者への情報提供、消費者の意見の反映

レベニューキャップ制度の下では、一定の規制期間を設定した上で、マル1期初における事業計画及び目標の策定、収入上限の算定、、マル2期中における事業計画の進捗状況のモニタリング、マル3期末における事業計画及び達成状況の評価、翌期の収入上限への反映等の一連のプロセスにより託送料金を設定することになる。託送料金の水準や内容について、消費者からの信頼や納得を確保するためには、どのような仕組みによって料金が決定されているのかについて、消費者の理解を得ることが不可欠であることから、一般の消費者にとっても分かりやすい説明資料を作成して周知するなど、消費者への丁寧かつ分かりやすい情報提供を行うべきである。

また、上記、マル1からマル3の各手続を行うに当たっては、十分な透明性を確保するとともに、消費者の意見を適切に反映することが重要である。経済産業省においてこれらの検討を行う際には、消費者利益を代表する者からの意見聴取やパブリックコメントの実施等、消費者からの意見を反映する機会を十分に設けるべきである。消費者庁は、消費者政策や物価政策を所掌する省庁として、上記のプロセスを適切にフォローするとともに、必要に応じ消費者委員会の意見を聴取した上で、消費者参画の促進や消費者の利益向上の観点から所要の対応を行うべきである。

2.配電事業について

(1)全般的な評価

新たに導入される配電事業ライセンスについては、特定の地域において、一般送配電事業者の送配電ネットワークを活用しつつ、配電系統を維持・運用し、託送供給及び電力量調整供給を行う事業者に付与されるものであり、これらを活用した分散グリッドの導入促進により、マル1供給安定性・レジリエンス向上、マル2電力システムの効率化、マル3再生可能エネルギー等の分散型電源の導入促進、マル4地域サービスの向上などの効果が期待されている。このような仕組みの導入は消費者利益の向上に資するものであり、新たな事業者による積極的な参入を通じて、地域のニーズに根差したきめ細かなサービス提供が普及するよう、地方公共団体を含む地域の関係者の意見を十分に踏まえつつ、適切な制度設計を行うべきである11

なお、配電事業については、一部の業務について一般送配電事業者に委託したり、小売事業との兼業が行われたりすることも想定されているが、これにより責任の所在が不明確になり、あるいは中立性が損なわれること等によって、消費者に不利益が及ぶことがないよう、適切な行為規制を課す等の措置を講じるべきである。

また、配電事業者の事業規模は一般的に小規模であることが多いと考えられるほか、配電事業で十分な収益を上げることが困難な場合もあることから、事業継続が困難になる事態が生じることも想定される。配電事業者が撤退した場合に、地域の需要家に悪影響が生じることがないよう、配電事業への参入時に撤退時の取決めについてあらかじめ明確な定めをおくとともに、不測の事態におけるセーフティネットの在り方についても十分に検討しておくべきである。

(2)配電事業による託送料金の適正性

配電事業者の託送料金については、そのエリアの一般送配電事業者の託送料金と比較して適正な水準であることが求められており12、その具体的な水準について、制度開始当初においては、一般送配電事業者の託送料金の個別需要家ごとの単価と比べて、配電事業者の託送料金に係る個別需要家ごとの単価水準が年平均±5パーセント以内であることとされている。このように、配電事業者による供給区域においては、一般送配電事業者による供給区域とは異なる水準の託送料金が適用される場合が生じ得るが、地域の消費者にとっては配電事業者を選択する自由がないことに鑑み、そのような違いが生じる理由や料金の妥当性等について、十分な情報提供がなされるべきである。また、「年平均±5パーセント以内」とする基準の妥当性については、制度の運用状況についての検証を踏まえ、必要に応じ見直すことを検討すべきである。

(3)消費者への情報提供、消費者の意見の反映

配電事業者は小売事業者と比較して消費者との直接的な接点が少なく、認知度も低いことから、本制度の普及を促進するためには、配電事業の具体的な仕組みや運用方法、配電事業者が参入することによるメリットや課題等について、消費者が十分に認識できるようにする必要がある。これらの点について、分かりやすい情報提供を行うとともに、地域の需要家向けの説明会を積極的に開催すること等により、十分な理解を得るよう努めるべきである。

また、新たな制度のもとでは、レベニューキャップ制度によって決まる一般送配電事業者の託送料金、配電事業者の託送料金、小売料金との関係が複雑化し、消費者にとって分かりにくいものとなることが懸念される。それら料金の関係を十分に整理するとともに、消費者に対して丁寧かつ分かりやすい情報提供を行うべきである。

なお、配電事業については、地域別に運営されていることから、個々の運用状況についてのモニタリングや評価を行うことが難しい面もある。経済産業省は、各地の配電事業の運用状況について積極的に情報収集を行い、その全般的な運用状況について分かりやすく情報提供することによって可視化するとともに、消費者をはじめとする需要家からの意見も踏まえた上で、制度の見直し・改善を行うべきである。消費者庁は、必要に応じ、経済産業省による上記の取組を適切にフォローした上で、消費者参画の促進や消費者の利益向上の観点からの対応を行うべきである。

(以上)

  1. 家庭用等の低圧部門。
  2. 電力小売全面自由化以前は、消費者向けの電気料金の値上げ改定の際には、経済産業大臣による認可に先駆けて、消費者庁への協議や物価問題に関する関係閣僚会議への付議等の手続が必要とされていたが、自由化後の託送料金の値上げ改定の認可に際しては、そのような手続は必要とされていない。
  3. 平成28年(2016年)4月から開始された電力小売全面自由化に際しては、2020年3月までに、消費者向け電気の経過措置料金(規制料金)を原則として解除することとなっていたが、大手電力会社の小売部門(子会社)と新電力との間で電力の調達や送配電網へのアクセス等の面で大きな格差が存在し、小売市場における新電力のシェアが十分に拡大していないなど、市場の競争環境が十分に整っていない中で料金規制を撤廃した場合、いわゆる「規制なき独占」に陥る恐れがあることから、現時点においても経過措置料金が維持されている。
  4. 平成28年5月には、内閣総理大臣から消費者委員会に対して、送配電事業を行う電力会社の託送料金に係る査定に関し、消費者利益の擁護・増進の観点からの資材・役務調達コスト等に係る更なる効率化の手法、コスト削減のための妥当な託送料金算定手法の在り方等の諸論点における問題の所在及び問題点の改善方法について、諮問が行われたことを受けて、公共料金等専門調査会の下に「電力託送料金に関する調査会」を設置し、平成28年7月に報告書を取りまとめるとともに、内閣総理大臣への答申を行った。
  5. 電力託送料金制度改革については、構築小委員会からタスクアウトされた料金制度専門会合において、レベニューキャップ制度の骨格についての検討が行われてきたが、専門性の高い詳細な論点については、料金制度専門会合の下に設置された料金制度ワーキンググループにおいて検討が継続されており、本年秋頃に取りまとめを行う予定とされている。したがって、本意見においては、本年6月の構築小委員会第二次中間取りまとめ(案)において示されたレベニューキャップ制度の骨格に関わる事項を検討の対象とした。
  6. 値下げ改定の場合は届出制。
  7. また、認可された料金水準の下で、一般送配電事業者が効率化努力を行うことなどにより超過利潤が一定の水準を超えた場合、経済産業大臣の変更命令により料金の引下げを求める仕組みとなっていることについても、事業者における効率化インセンティブを阻害する要因として指摘されている。
  8. 5年とする方針が示されている。
  9. 費用特性を踏まえて、CAPEX(新規投資・更新投資)、OPEX(人件費・委託費等)等に区分して、それぞれに適した方法により査定が行われることが検討されている。
  10. 電圧別の各部門が共通して利用する設備について、各部門のピーク需要電力等を比較した場合の比率をもとに、3部門が共通して利用する最上位の設備コストについては「2:1:1法」、特別高圧部門以外の2部門が利用する設備コストについては「2:1法」によって配分される。詳細については電力託送料金に関する調査会報告書を参照。
  11. その際、安定供給の確保や需要家保護等の観点からは、参入許可の審査基準として一定の水準を求めることは必要であるが、適格性を有する事業者の参入を阻害することにならないよう、適度にバランスのとれたものとすることが必要と考えられる。
  12. その水準を満たさない場合には、経済産業大臣が託送供給等約款の変更命令を出すことができる。