消費者基本計画及び工程表の改定素案(令和3年3月)に対する意見

2021年4月16日
消費者委員会

消費者基本計画及び工程表の改定素案(令和3年3月)に対する意見

消費者委員会は、消費者基本計画(以下「計画」という。)の具体的な施策を定める工程表の検証・評価及び見直しについて、令和2年12月18日に「消費者基本計画等の実施状況に関する検証・評価及び消費者基本計画工程表の改定に向けての意見」(以下「12月意見」という。)を取りまとめ、12月意見の内容を、可能な限り工程表の改定素案等に反映することを求めた。

第4期計画が令和2年3月31日に閣議決定されてからの1年で、コロナ禍における新たな生活様式の実践に伴い、消費生活のデジタル化が加速するなど、消費者を取り巻く環境が大きく変化した。消費者庁は、これに的確に対応して消費者政策を推進するため、新しい生活様式の実践に関する部分について計画を改定するとともに、12月意見も踏まえて工程表の必要な見直しを実施することとし、取りまとめられた計画及び工程表の改定素案は、令和3年3月31日からパブリックコメントに付されている。

消費者委員会は、4月1日の消費者委員会において、計画及び工程表の改定素案について、消費者庁からヒアリングを実施した。このヒアリングの結果や、これまでに行った建議・提言その他の意見等の内容、過年度の工程表に記載された個別施策についてのヒアリングの結果や最近の被害実態等を踏まえ、計画及び工程表の改定素案に対して、下記のとおり意見を述べる。関係省庁等においては、下記の各項目について積極的に検討の上、可能な限り計画及び工程表の改定案等に反映されたい。

消費者委員会としては、本意見及びパブリックコメントの計画及び工程表等への反映状況やその後の実施状況等について引き続き監視を行い、消費者被害の状況が深刻なものや取組が不十分と考えられるもの等については、今後、重点的に消費者委員会の調査審議を通じて取り上げていくとともに、必要に応じて建議等を行っていくこととする。

1.デジタル化に対応した消費者の保護及び消費者教育等

(1)デジタル化に対応した消費者の保護

デジタル技術を活用した消費者の選択の機会の拡大と消費者利益の擁護・増進の両立は、重要な視点である。

消費者庁において、特定商取引法及び預託法における契約書面等について、電磁的方法による提供を可能とすることが検討されていたことから、消費者委員会では、令和3年2月、当該提供の在り方、並びにデジタル技術を活用した消費者の保護及び消費者教育等について、「特定商取引法及び預託法における契約書面等の電磁的方法による提供についての建議」を取りまとめた。

建議を踏まえ、電磁的方法による提供の在り方及びデジタル技術を積極的に活用した消費者保護の拡充について検討し、今後の取組の具体的な内容を工程表に記載すること。特に、電磁的方法による提供に係る懸念事項については、早急に、必要な調査の実施や具体的対策の検討に着手すること。(消費者庁)(1(2)マル1ア等関係)

また、デジタル化によって消費者に利便性がもたらされる反面、消費者に不利な状況も生まれ得る。例えば、デジタル技術が不適切に用いられ、消費者が批判的、合理的に思考することを妨げる1など、デジタル取引ならではのぜい弱性が生まれ、それによって消費者の利益が損なわれるおそれがある。

このようなデジタル取引における消費者のぜい弱性に関して、消費者への望ましい情報提供の在り方を含め、国際的な動向も踏まえて調査分析を実施することを検討し、今後の取組の具体的な内容を工程表に記載すること。(消費者庁)(3(2)・(3)関係)

(2)社会のデジタル化に対応した消費者教育の推進

消費者教育のデジタル化の推進に当たっては、デジタルサービス等を安全・安心に利用するために必要な事項の学習に加えて、デジタルサービス等を使いこなすためのリテラシーを身に付けるよう促す視点も重要である。また、売買契約の基礎や契約を守ることの意義についての理解、消費者被害の背景とその対応など基礎的な知識について学ぶことがおろそかにならないよう留意する必要がある。

消費者教育推進会議の「社会のデジタル化に対応した消費者教育に関する分科会」において、社会のデジタル化を踏まえた、マル1消費者が身に付けることが望ましい内容、マル2消費者教育の場や情報発信手法について検討が行われ、令和3年3月、取りまとめが行われた。取りまとめを踏まえ、デジタル化に対応した消費者教育に取り組むことを計画に盛り込むとともに、今後の取組の具体的な内容を工程表に記載すること。(消費者庁)(第5章3(1)、3(1)マル24(1)マル1関係)

消費者庁新未来創造戦略本部において、「消費者保護のための啓発用デジタル教材開発に向けた有識者会議」が開催されている。デジタル教材の開発及び実証事業を始めとする、同会議に関する今後の取組の具体的な内容を工程表に記載すること。(消費者庁)(3(1)マル24(1)マル2からマル4関係)

学校教育におけるデジタル化に対応した消費者教育の推進について、今後の取組の具体的な内容を工程表に記載すること。(消費者庁、文部科学省)(4(1)マル2関係)

消費者教育のデジタル化の推進に当たっては、ウィズコロナ、ポストコロナ時代の持続可能な社会の実現に向けて、エシカル消費の普及啓発を図る観点も重要である。デジタル化に対応したエシカル消費の普及啓発について、今後の取組の具体的な内容を工程表に記載すること。(消費者庁、関係府省庁)(2(3)マル1関係)

(3)消費者生活相談体制のデジタル化

社会のデジタル化に対応し、消費生活相談体制の在り方を見直し、消費者からの相談に的確に対応するとともに、相談事例を収集・分析して迅速・適切な法執行及び法制度の企画立案につなげることが必要である。

12月意見で指摘している、広域での効率的なSNS相談体制の構築を推進する方策、チャットボットを活用した情報提供と相談員による相談対応とを組み合わせたハイブリッドな相談体制の在り方、AIによる相談内容の分析機能の導入など消費者行政の基盤であるPIO-NET2の機能強化を含めた消費生活相談体制のデジタル化について検討し、今後の取組の具体的な内容を工程表に記載すること。(消費者庁)(1(4)マル85(3)マル7関係)

2.消費者行政を推進するための体制整備

(1)消費者庁新未来創造戦略本部の機能の発揮

コロナ禍での消費者問題を諸外国と共有し、新たな解決を目指していくことは、国際業務等の拠点として設置された消費者庁新未来創造戦略本部の重要な役割の一つと考えられる。また、巣籠もり消費など新しい生活様式における課題の発見・解決に向けた消費者行政の発展・創造の拠点としてふさわしい機能を発揮することも、同本部の重要な役割の一つと考えられる。

これらに関する今後の取組の具体的な内容を工程表に記載すること。(消費者庁)(3(3)マル55(2)マル3関係)

(2)地方消費者行政の充実・強化

消費者行政について、国と地方それぞれにおいてデジタル化を推進し、新たな時代にふさわしいものへと変革していくことが求められる。デジタル技術を消費者行政に効果的に取り入れ、活用することにより、消費者教育や普及啓発、事故情報を含めた消費者被害に関する情報の収集、被害回復など様々な取組の実効性を向上させることが期待される。

巣籠もり消費など新しい生活様式の実践により、消費生活の様相が大きく変化している。地域の見守り活動を始めとする地方消費者行政における取組について、こうした変化にどのように適応させるのか、今後の取組の具体的な内容を工程表に記載すること。(消費者庁)(5(3)マル1マル2関係)

上記のほか、地方消費者行政の充実・強化に向けた地方公共団体への支援等について、地方消費者行政におけるデジタル技術活用の好事例を収集・提供するなど、今後の取組の具体的な内容を工程表に記載すること。(消費者庁)(5(3)マル1マル3関係)

3.食品表示の適正な運用に関する取組

コロナ禍によりインターネット通販が急速に拡大する中、食品を摂取する際の安全性の確保及び自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保のため、ECサイト上での消費者への情報提供を充実させる必要性は一段と高まっており、ECサイト上の食品表示の在り方について、早期に具体的な取組の方向性を示すことが重要である。

令和2年度に実施した「ECサイト食品表示実証モデル構築事業」の調査結果やコーデックス委員会での検討の内容等を踏まえた、ECサイトにおける食品表示の在り方の検討について、年限及び今後の取組の具体的な内容を工程表に記載すること。(消費者庁)(1(2)マル5ア関係))

4.キャンセル問題への対応

消費者庁の「消費者契約に関する検討会」における実態調査や意見交換の結果等を踏まえ、各業界における好事例の展開に取り組むこと。(消費者庁)(1(2)マル1ウ関係)

5.身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題への対応

一人暮らしの高齢者等を対象とする身元保証や日常生活支援、死後事務等に関するサービスの需要が、少子高齢化の進展により、今後一層高まっていくことが予想される。消費者がこれらのサービスを安心して利用できるよう、引き続き情報提供を行うとともに、関連する消費生活相談の状況を注視し、消費者委員会が発出した建議(平成29年1月31日)等3の内容を踏まえ、更なる実態把握を行った上で、起こり得る消費者問題を先取りして、必要な措置を検討・実施すること。(消費者庁、厚生労働省、関係府省庁)(1(2)マル2ス関係)

6.事故情報の収集、通知制度の意義の周知徹底

事故情報の収集、通知制度は、当該情報の分析を経た注意喚起等をするための前提として位置付けられ、実効的に機能させることが消費者の安全を確保する上で必要である。

これに関し、医業類似行為等による事故の対策に関する行政評価・監視の結果に基づく勧告(令和2年11月17日総務省)を踏まえた今後の取組の具体的な内容を工程表に記載すること。

消費者庁は、事故情報の収集の一元化に係る関係府省庁等に対し、通知制度の意義の継続的な周知を行うとともに、医業類似行為等による事故情報を一次的に受け付ける保健所、警察機関、消防機関を所管している省庁である厚生労働省、警察庁、総務省消防庁は、消費者庁に協力し、もって通知制度の的確な運用を図ること。(消費者庁、総務省消防庁等関係府省庁等)(1(1)マル2ア関係)

7.消費者による公正かつ持続可能な社会への参画等を通じた経済・社会構造の変革の促進

再生可能エネルギーの選択や省エネルギーの実践など消費者自らが行動を選択するとともに、脱炭素や資源循環などに熱心に取り組む事業者を後押しできる環境が整いつつあり、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けて消費者が果たす役割は大きい。消費者の選択に資する情報が、国や事業者から適切に提供されるための環境整備を更に進めるとともに、消費者の行動変容をいかに促し、さらに消費者の選択により事業者の行動変容をいかに促すかという視点を、消費者に関する施策に取り入れることが重要である。

以上を踏まえ、地球温暖化対策計画等の見直しに併せて、工程表のKPIや今後の取組予定を見直すとともに、消費者及び事業者の行動変容を促す具体的な取組を更に記載すること。(環境省、関係府省庁)(2(2)マル1、(3)マル1マル2関係)

8.消費者志向経営の推進

消費者庁の「消費者志向経営の推進に関する有識者検討会」において、令和3年3月、報告書が取りまとめられ、令和3年度見直しの方向性として、消費者志向経営に取り組むことで資金調達の円滑化につながるよう、ESG投資等の金融とのひも付けの検討に着手することや、消費者志向経営の普及に向けた事業者との協働による新しい取組の検討などが示された。報告書を踏まえた今後の取組の具体的な内容を工程表に記載すること。(消費者庁)(2(3)マル2関係)

9.KPI

現状のKPIについて検証を行うとともに、それを踏まえ工程表の最終決定に向けて、より実効的なKPIの設定等について検討の上、積極的に盛り込むこと。

(以上)

  1. 例えば、ECサイトにおいて、購入完了までの残り時間をカウントダウン表示したり、デフォルトでメール配信や定期購入にチェックが入っていたりすることなどが挙げられる。
  2. 全国消費生活情報ネットワークシステム(Practical Living Information Online Network System)。独立行政法人国民生活センターと全国の消費生活センターをネットワークで結び、消費者から消費生活センターに寄せられる消費生活に関する苦情相談情報(消費生活相談情報)の収集を行っているシステム。
  3. 「消費者基本計画工程表の素案(令和2年5月)に対する意見」(令和2年5月29日)では、厚生労働省が平成29年度に実施した実態調査報告書において今後引き続き検討すべき課題とされた、身元保証人に期待される機能の詳細検討、より小規模に提供される身元保証等高齢者サポートの実態把握、今後、身元保証等高齢者サポート事業の需要が増大する社会における制度の在り方などの事項に対する更なる取組を工程表に明記することを求めている。