消費者基本計画工程表の素案(令和2年5月)に対する意見

2020年5月29日
消費者委員会

消費者基本計画工程表の素案(令和2年5月)に対する意見

消費者委員会は、令和2年1月30日に第4期消費者基本計画案及び工程表策定に向けての意見(以下「1月意見」という。)を取りまとめ、1月意見の内容を、可能な限り工程表の素案に反映することを求めてきた。

第4期消費者基本計画が3月31日に閣議決定され、消費者庁は、1月意見を踏まえて工程表の素案を取りまとめ、4月30日からパブリックコメントを実施している。

消費者委員会は、5月13日の消費者委員会において、工程表の素案について、消費者庁からヒアリングを実施した。このヒアリングの結果や、これまでに行った建議・提言その他の意見等の内容、過年度の工程表に記載された個別施策についてのヒアリングの結果や最近の被害実態等を踏まえ、工程表の素案に対して、下記のとおり意見を述べる。関係省庁等においては、下記の各項目について積極的に検討の上、可能な限り工程表の案等に反映されたい。

消費者委員会としては、本意見及びパブリックコメントの工程表等への反映状況やその後の実施状況等について引き続き監視を行い、消費者被害の状況が深刻なものや取組が不十分と考えられるもの等については、今後、重点的に消費者委員会の調査審議を通じて取り上げていくとともに、必要に応じて建議等を行っていくこととする。

第1 全体的な事項

1.KPIについて

消費者政策の推進により消費者の安全・安心を確保することは、新型コロナウイルス感染症への対応において重要であるとともに(後述第2)、そのリスクが低減していく局面における、あるいは収束した後の経済回復の実現にとっても大前提となる重要課題である。この点に十分留意して、消費者委員会が従前1から指摘している基準2を念頭にKPIの見直しを行うほか、これまでの施策の達成状況等に応じ、指標の見直しやアウトカム指標の追加設定を行うとともに、目標の数値等についても、不断の見直しを図ること。

同種の施策については、できる限りKPIをそろえること。特に周知状況については、広報資料の配布部数や説明会の回数だけではなく、理解度の記載を検討すること。

また、現状のKPIについての検証を行うとともに、それを踏まえ工程表の最終決定に向けて、より効果的なKPIの設定方法等について検討の上、積極的に盛り込むこと。

工程表に記載されている施策の検証・評価において、関係省庁及び消費者行政の司令塔役・エンジン役である消費者庁が果たすべき役割について、明記すること。

2.今後の取組予定

年限を区切らずに5年間で取り組むことが示されているものについては、定期的・継続的に実施しなければならないものを除き、可能な限り具体的な取組に分けた上で、当該具体的な取組ごとに期限を明確に設定して記載すること。

3.SDGs

地球規模で人やモノが移動するグローバル経済の下では、気候変動、感染症といった課題もグローバルに連鎖して発生し、経済や保健等にも波及して深刻な影響を及ぼす時代であることが、改めて浮き彫りとなった。SDGsとして掲げられている17のゴール、169のターゲット及び232の指標は、国際社会全体の普遍的な目標である。消費者庁を始めとする関係省庁は、SDGs達成のために協力することが求められる。また、消費者が、持続可能な社会の実現に向けて、自ら考え、人や社会・環境に配慮した消費行動をとることができるよう、健全な市場の実現に加え、消費者教育を通じ、エシカル消費の普及啓発を図ることが求められる。

今回の工程表では、持続可能な開発目標(SDGs)推進本部において策定された持続可能な開発目標(SDGs)実施指針に位置付けられた施策について、個別施策の中で「SDGs関連」と明示しつつ、SDGs実施指針において明示された目標の番号を記載することとされている。SDGs関連と明示していないものについて積極的にSDGsとの関連を記載し、例えばそれぞれの目標と工程表の目次との関連をマトリクスの図表で示すなど工程表全体とSDGsをひもづけるとともに、消費者基本計画の対象期間である令和6年度までにおいて、工程表の各項目がそれぞれの目標達成にどのように貢献するかを明確にすること。

4.機動的な見直し

新型コロナウイルス感染症の拡大は前例のない危機であり、事態は時々刻々と変化しており、また、消費者の行動や消費者が直面する課題も変化している。工程表の最終決定までの間においても、今後取り組むべき新たな施策について可能な限り工程表に盛り込んだ上で、積極的に取組を進めること。

新型コロナウイルス感染症関連以外についても消費者を取り巻く環境変化に柔軟に対応していくためには、常に状況の変化を把握し、適時適切に工程表の見直しを行うことが重要である。特別な変化に対しては、ためらうことなく機動的に工程表の見直しを図ること。

第2 新型コロナウイルス感染症・災害への対応

新型コロナウイルス感染症の流行は、消費者行政に、喫緊の解決が必要な多岐にわたる諸課題を突き付けている。また、社会全体における情報通信技術の利用を加速させている。5月25日に緊急事態宣言が解除されたが、今後とも一定期間は、新型コロナウイルスの感染拡大を予防する「新しい生活様式」への切替えを求められることになる。こうした短期的及び中長期的課題に備え、グローバル化の観点も踏まえ、以下の対応を求める。(消費者庁)(3(1)マル3、(3)マル1関係)

  • 消費者教育のオンラインでの実施に当たっては、どこに住んでいても消費者教育を受けることができるよう、機会の均等に留意すること。
  • 食品表示基準や米トレーサビリティ法の弾力的運用について、消費者に対しても周知するとともに、消費者を欺瞞(ぎまん)するような悪質な違反に対しては厳正な対応をとること。また、市場における食品の需給状況や物流状況を注視し例外的な弾力的運用を中止する時期を失しないよう留意すること。
  • 個人等がSNSにより誤った、あるいは不確かな情報を発信・拡散することに伴う諸問題への対策を盛り込むことができないか検討すること。
  • 自然災害や人為的災害が新型コロナウイルス感染症の流行下で重複的に発生する緊急時の対応や、自然災害や人為的災害が複合する災害への対応も想定すべきことを記載すること。
  • 詐欺的事案・悪質商法への厳正な対応及びそれらの広告や手口に係る消費者への注意喚起、予防効果を標ぼうする商品の表示への対応、実際の消費者被害の状況を踏まえた対応を迅速かつ適確に実施するとともに、対処的取組のみならず、起こり得る消費者問題を先取りした対応も行うこと。
  • 自己都合と評価するのは酷なキャンセルの問題について、消費者契約に関する検討会の検討も踏まえながら対応すること。
  • 現下の状況及び今後の生活様式の変化に十分対応できるように、消費生活センターの体制を強化すること。

第3 個別的な事項

1.事故情報の収集、注意喚起等

12月意見3以降、累次指摘をしているとおり、平成29年8月に消費者委員会が発出した提言4を踏まえた、中長期的な取組スケジュールを検討の上、特に以下の取組について具体的に工程表に明記すること。(消費者庁)(1(1)マル2関係)

  • 事故情報データバンクの入力項目の精査や、事故原因の究明等を行っている研究機関へ事故の詳細な情報を公開する等の事故情報の公開促進に向けた取組
  • 事故情報の更なる活用に向けて、関係省庁のみならず消費者、事業者、事故情報データバンク参画機関が連携・情報交換をスタートさせる取組

消費者基本計画では、消費者安全調査委員会の提言について、効果的な周知の方法を随時検討することとされていることから、提言内容を消費者へ伝えるための施策を工程表に盛り込むこと。(消費者庁)(1(1)マル3関係)

2.食品表示

食品の安全を確保していくためには、基本原則である原料農産物等の科学的検証に加え、書類の確認等による社会的検証の仕組みを確立していくことが求められる。トレーサビリティの整備に関して、米や牛以外のいずれの食品について対象とするかを明らかにするとともに、いずれの取組が書類の確認等による社会的検証の仕組みの推進に該当するかを明らかにすること。(農林水産省)(1(1)マル4関係)

食品表示の全体像に関する報告書(令和元年8月消費者委員会食品表示部会) の内容を、今後の取組予定に反映すること。(消費者庁)(1(2)マル5関係)

3.取引及び表示の適正化

特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会での検討に当たっては、相談が急増している、いわゆる「お試し定期購入」に関する消費者問題についても併せて検討すること。(消費者庁)(1(2)マル1関係))

累次にわたる取組が一定の成果を上げていると考えられる一方で、電気通信サービスに係る苦情相談件数は依然として相当数あることから、電気通信消費者支援連絡会の在り方を見直すなど、苦情相談分析結果を踏まえた取組を行うこと。(総務省)(1(2)マル2関係)

4.ぜい弱性や生きづらさを抱える消費者の支援団体との連携

ぜい弱性や生きづらさを抱える消費者を支援する民間団体との連携策を盛り込むこと。(1(3)関係)

5.ADR

商品やサービス別のADR(裁判外紛争解決手続)を含めた様々なADRについて、消費者に向けた、横断的な活用促進策を盛り込むこと。(1(4)関係)

6.消費者と事業者の連携・協働、事業活動におけるコンプライアンス向上

消費者基本計画において、「消費者と事業者とが共通の目標の実現に向けて協力して取り組むこと」を「協働による取組」と定義している。工程表の2消費者による公正かつ持続可能な社会への参画等を通じた経済・社会構造の変革の促進に掲げる施策について、協働の実現方法が明らかとなるよう、KPIを見直すこと。(消費者庁、関係省庁)(2関係)

消費者志向経営を推進する上では、施策概要に記載された「事業者の取組を消費者に分かりやすく情報提供することで事業者の取組状況を可視化すること」が重要である。そのため、この情報提供に関して、KPIを設定すること。(消費者庁、経済産業省)(2(3)マル2関係)

公益通報者保護制度を活用したコンプライアンス確保の推進について、内部通報窓口に対する労働者の信頼度をKPIとすること。(消費者庁)(2(4)マル1関係)

7.消費者教育の推進及び消費者への情報提供の実施

消費者教育5には、消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育のほか、消費者が主体的に消費者市民社会の形成に参画することの重要性について理解及び関心を深めるための教育が含まれる。そのため、消費者教育に関する各施策を一体的に把握できるよう、「4消費者教育の推進及び消費者への情報提供の実施」において、「2消費者による公正かつ持続可能な社会への参画等を通じた経済・社会構造の変革の促進」のエシカル消費等に関する施策を再掲するなど記載の仕方を工夫すること。(消費者庁)(2及び4関係))

デジタル時代の消費者教育について、消費者のデジタル化への対応に関する検討会での議論も踏まえ、デジタル化に対応した消費者教育・啓発に関する基礎的な整理を行い、SNSの利用に係る情報リテラシーを含め、消費者が注意すべき事項や知っておくべき事柄等を取りまとめるとともに、消費者教育のオンラインでの実施等について施策に盛り込むこと。消費者教育のオンラインでの実施に当たっては、どこに住んでいても、生涯を通じて切れ目なく消費者教育を受けることができるよう、機会の均等に留意すること。(消費者庁)(3(1)マル3関係))

法教育や情報教育を始めとする消費生活に関連する教育の実施に当たっては、消費者教育との密接な連携を図ること。(関係省庁)(4(1)関係))

消費者トラブル抑止のための重層的・戦略的な普及啓発について、国民各層へ啓発内容を分かりやすく届けるための工夫のほか、資料の展開のためのネットワークや連携体制作り、アクティブ・ラーニング等の活用など具体的な方法論及び今後の取組予定を明記すること。(消費者庁)(4(2)マル1関係))

8.環境保全に向けた消費者の役割

気候変動対策、循環型社会の実現等が課題となる中、電力の小売全面自由化や、都市ガス小売自由化などにより、省エネルギーの実践や再生可能エネルギーの 選択など消費者自らが行動を選択するとともに、脱炭素や資源循環などSDGsに熱心に取り組む事業者を後押しできる環境が整いつつあり、環境保全に向けて消費者が果たす役割は大きい。

そのため、脱炭素社会や循環型社会の実現に向けた消費者への情報提供や普及啓発について、この消費者の役割を踏まえた具体的な取組を明記すること。(環境省、経済産業省、関係省庁)(2(2)関係)

9.消費者行政を推進するための体制整備

消費者政策の関係省庁を参集する連絡会議について、案件に応じた枠組みを設定するなど、機動的に開催し消費者政策の推進を図ること。(消費者庁)(5(2)マル1関係)

消費生活センターのニーズに応じた支援を行うとともに、消費生活センター間の連携策を講じること。(消費者庁)(5(2)マル3関係)

今年度に開設予定の消費者庁新未来創造戦略本部について、新たに項目を設けることを検討すること。(消費者庁)(5(2)関係)

地方公共団体への支援について、可能な限り数値目標を設定すること。(消費者庁)(5(3)マル1関係)

社会的要因や家族問題、健康問題が絡み合った内容の相談に対して、地方消費者行政担当部局による対応だけでは、相談者の抱える問題を解決できないことなどから、消費者行政担当部局と関係部局が連携して消費者問題の解決に当たることが求められる。このように地方消費者行政を総合的かつ効果的に推進することができるよう、消費者行政はあらゆる分野に関係するという認識が地方公共団体内において醸成される方策を検討すること。(消費者庁)(5(3)マル3関係)

都道府県における法執行強化について、研修を実施するだけではなく、法執行の経験を都道府県間で共有できるようにすること。(消費者庁)(5(3)マル4関係)

何らかの理由により公的な相談窓口にアクセスできない消費者からの相談をすくい取ることができるよう、消費者からの情報・相談の受付体制を充実させること。(消費者庁)(5(3)マル5関係)

消費生活以外の相談窓口と消費生活相談窓口との連携促進に当たっては、地方公共団体への要請と併せて、好事例の提供も行うこと。(消費者庁)(5(3)マル6関係)

10.身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての対応

1月意見でも指摘したとおり、これまでの取組及び現在の消費者被害の状況を踏まえ、今後どのような取組を行うのか、以下の事項を含め工程表に明記すること。(厚生労働省、消費者庁)

  • 預託金の適切な保全などに係る身元保証等高齢者サポート事業を提供する事業者への働きかけ
  • 平成29年度に実施された実態調査の結果を踏まえた身元保証人に期待される機能の詳細検討、より小規模に提供される身元保証等高齢者サポートの実態把握、今後、身元保証等高齢者サポート事業の需要が増大する社会における制度の在り方など、実態調査の結果から課題とされた事項に対する更なる取組

(以上)

  1. 次期消費者基本計画の素案(平成27年2月)等に対する意見(平成27年2月17日)
  2. 1)法令及びガイドライン等の見直しや改訂の実施状況
    2)消費者や事業者等への、法令及びガイドライン等の周知状況
    3)消費者関連法令の執行等、行政処分の実施状況
    4)関連する取組全体の効果としての消費者被害の発生状況)
  3. 消費者基本計画の実施状況に関する検証・評価及び計画工程表の改定に向けての意見(平成30年12月19日)
  4. 事故情報の更なる活用に向けた提言(平成29年8月8日)
  5. 消費者教育の推進に関する法律(平成24年法律第61号)第2条第1項