四国電力による伊方原子力発電所3号機の再稼動後の追加フォローアップに関する消費者委員会意見

2018年1月17日
消費者委員会

消費者委員会は、本日、公共料金等専門調査会から、本件に関する意見の報告を受けた。

電力・ガス取引監視等委員会には、本意見で示された今後の課題への積極的な対応を期待する。


四国電力による伊方原子力発電所3号機の再稼動後の追加フォローアップに関する専門調査会意見

平成30年1月17日
消費者委員会公共料金等専門調査会

1.経緯

電力・ガス取引監視等委員会においては、四国電力について、現行料金原価に稼働を織り込んでいる原子力発電所伊方3号機が平成28年9月より再稼働していることを理由に原価算定期間終了後における平成28年度の事後評価を平成29年10月13日及び11月7日に行った。当専門調査会においても12月12日に四国電力からヒアリングを行うとともに、電力・ガス取引監視等委員会から同社に対する事後評価に関する聴取を行った。

2.現状の評価

ヒアリングを踏まえた当専門調査会の評価は以下のとおり。

  • 燃料価格の低下を主因として、燃料費の平成28年度の実績値は、想定原価より585億円削減されている。
  • 四国電力からの説明では、伊方原子力発電所3号機の稼働は料金原価に織込み済であることに加え、自由化に伴う契約者の離脱等による販売電力量の減少による収入減の影響が大きいため、規制料金値下げは困難な状況であるとしている(注1)(なお、退職給与金の割引率の引下げに伴う数理計算上の差異償却費の増により想定原価よりも実績コストが上回っている)。販売電力量の減少等環境変化に対しては、更なる経営の効率化が必要であるが、同社の販売電力量の減少程度は他社との比較では少ない落ち込みとなっている(注2)一方、経営効率化の深掘りの程度は他社よりも低い(注3)ものとなっている。このため、四国電力には、経営効率化のための更なる取組が求められる。
       なお、経営効率化等による規制料金の値下げを行った関西電力にならって、四国電力は今後、経営効率化の成果を消費者へ還元する努力が必要である。

3.今後の課題

電力・ガス取引監視等委員会は、原発再稼働の進展により、規制料金値上げの理由が失われた際に料金引下げが適切に行われることにつき監視を行うことが必要である。四国電力については、電力・ガス取引監視等委員会により、想定された原子力発電所が再稼働したことを踏まえて追加の事後評価が行われたところであり、四国電力以外の震災後に値上げを行った電力各社(北海道電力、関西電力2社を除く(注4))についても同様に、同監視等委員会が、原子力発電所の再稼働が進展した場合の原価算定期間後の事後評価を行うことが適切である。

また、電力・ガス取引監視等委員会においては、現在、超過利潤累積額が一定水準を超過しているか否かなどの審査基準に照らして、各電力会社(旧一般電気事業者)に対して料金変更認可申請命令の発動が必要かを判断するための毎年のチェックを行っている。これに加えて、同監視等委員会が、原価算定期間終了後一定期間経過した後、原子力発電所の再稼働状況如何に関わらず、規制料金適正性確保のため、想定原価と実績を比較してその乖離の状況を確認する等の事後評価を各電力会社(旧一般電気事業者)に対して実施するべきである。

消費者委員会は消費者庁とともに今後の状況に関し、注視していくこととしたい。

以上

  • (注1)「現在、現行料金の原価算定期間は終了しておりますが、上記のとおり、伊方3号機の再稼働は現行料金に織込み済であることに加え、当初の想定よりも、節電や離脱の影響などにより販売電力量が大幅に減少するとともに、原子力の安全対策工事に係る減価償却費等の大幅な費用増が見込まれ、現段階においては値下げすることは困難な状況です。」(平成29年12月12日開催の第39回公共料金等専門調査会 資料3の四国電力説明資料P27より抜粋)
  • (注2)販売電力量の減少幅について、原価算定期間の平均値と実績値の差は、四国電力19(億kWh)、東京電力エナジーパートナー356(億kWh)、中部電力38(億kWh)。なお、実績値について、中部電力は原価算定期間平成26~28年度の平均値、四国電力と東京電力エナジーパートナーは平成28年度値。(平成29年11月7日開催の第27回料金審査専門会合 資料6参照)
  • (注3)経営効率化額について、原価算定期間の平均値と実績値の差は、四国電力66(億円)、東京電力エナジーパートナー4,047(億円)、中部電力439(億円)。なお、実績値について、中部電力は原価算定期間平成26~28年度の平均値、四国電力と東京電力エナジーパートナーは平成28年度値。(平成29年11月7日開催の第27回料金審査専門会合 資料6参照)
  • (注4)北海道電力と関西電力については、それぞれ、北海道電力株式会社の供給約款変更認可申請に係る査定方針(平成26年10月)、関西電力株式会社の供給約款変更認可申請に係る査定方針(平成27年5月)において、「原価算定期間終了後に再稼働する場合は、原則として、1基再稼働するごとに値下げを行うべきである。この場合、原価算定期間内に値下げする場合と同様に、再稼働の翌々月までを値下げの実施時期とすべきである。」等の条件付けがなされている。