消費者基本計画の実施状況に関する検証・評価及び計画の見直しに向けての意見

2014年2月25日
消費者委員会

 消費者基本法においては、消費者基本計画(以下、「計画」という。)の検証・評価・監視について、それらの結果の取りまとめを行おうとする場合には、消費者委員会の意見を聴かなければならないとされている。このため当委員会としては、計画の実施状況や計画に盛り込むべき新たな課題等に係る検討を調査審議の重要な柱の一つと位置づけてきており、昨年末の委員会本会議においても、計画中の具体的施策の平成25年度前半までの実施状況や今後の取組方針等について、関係省庁等からのヒアリングを計5回にわたって行ったところである。
 当委員会としては、本関係省庁等ヒアリングの結果や当委員会が行った意見表明の内容等を踏まえ、計画の実施状況に係る検証・評価において特に留意すべき事項や計画の見直しに向けて具体的に検討すべき課題について、下記の通り意見を述べる。関係省庁等におかれては、計画の実施状況に関する検証・評価や計画の見直しに向けて、下記の各項目について十分に検討の上、可能な限り改定計画に反映されたい。
 なお、現行計画の計画期間は平成26年度末までとなっており、現行計画の最終年度にかけて行う今回の検証・評価及び見直しの作業は、現行計画による成果を総括し、新計画の策定に向けた検討を行う上で極めて重要となる。このため、関係省庁等におかれては、「消費者白書」のとりまとめ作業とも連携しつつ、これまでの取組の進捗や効果等について、十分かつより実質的な検証・評価を行うとともに、消費者政策の分野ごとの重点施策や課題、今後の実施スケジュール及び効果把握のための指標等を明確化することにより、新計画への橋渡しとなる、より実効性のある計画へと改定されたい。
 当委員会においては、今後、政府がとりまとめる計画の改定案について、重点施策を中心に再度ヒアリングを行い、本意見の内容が適切に反映されているか等を検証した上で、改定計画のとりまとめに向けた意見表明を行うことを予定している。



1.計画全般に関する事項

(1)現行計画の見直し

  • (i) 計画初年度である平成22年度からの各施策の進捗状況について総括的な検証・評価を行い、施策目標の達成度やその効果を十分に(可能なものについては定量的に)明らかにされたい。十分な進捗や効果が見られなかった施策については、その理由及び今後に向けた課題、取組方針を明確化されたい。
  • (ii) 計画の見直しに際して、消費者や関係団体等の意見がより実質的に反映されるよう、パブリックコメントの実施方法の改善を図られたい。

(2)新計画の策定に向けて

  • (i) 現行計画の検証・評価及び見直し作業と並行して、新計画の策定に向けた基本的な考え方や進め方等について検討を行い、できるだけ速やかに提示されたい。
  • (ii) 新計画の策定を念頭に、今回の作業を通じて、現行計画終了後の数年間における各分野の消費者政策上の課題をできるだけ具体的に明らかにするよう努められたい。

2.個別施策に関する事項

(1)消費者安全行政(重点施策1、13、施策番号4、5・6、7、12関係、又は新規施策)

  • (i) 事故情報の収集を強化・早期化するための方策(国・地方の行政機関等、事業者、医療機関等からの情報収集強化、関係省庁との連携強化)について検討し、それを具体的に記述されたい。(消費者庁、関係省庁等)
  • (ii) 美白化粧品による白斑問題への対応について、上記(i)の事故情報の収集についての取組のほか、原因究明を行って必要な再発・拡大防止策を講じる旨を明確に記述されたい。(厚生労働省)
  • (iii) リコール情報の周知強化策について、当委員会の「消費者事故未然防止のための情報周知徹底に向けた対応策についての建議」(平成25年2月)以降の取組を十分に検証・評価した上で、更なる取組強化を実施されたい。(消費者庁、経済産業省、関係省庁等)

(2)消費者契約法(重点施策3、施策番号42関係)

  • 消費者契約法の問題点や課題についての整理を早急に行い、同法の見直しに向けた今後の取組方針や検討スケジュール等を明確化されたい。(消費者庁)

(3)公共料金等(重点施策4、施策番号67-2関係)

  • 公共料金の決定過程の透明性や消費者参画の機会の確保、料金の妥当性の継続的な検証等の分野横断的な課題については、当委員会の「公共料金問題に関する提言」(平成25年7月)等における指摘事項を踏まえ、さらなる取組強化を図られたい。 (消費者庁、各公共料金等所管省庁)

(4)いわゆる健康食品の表示等(重点施策6、施策番号76-2、77関係)

  • いわゆる健康食品等の機能性の表示の検討に当たっては、適切な科学的手法による機能性の評価、正しい情報提供及び十分な消費者理解を十分確保するものとされたい。(消費者庁、厚生労働省、農林水産省)

(5)食品表示等の適正化対策(施策番号79、80関係、又は新規施策)

  • (i) 政府がとりまとめた「食品表示等の適正化対策」(平成25年12月9日)を着実に実施されたい。(消費者庁、関係省庁等)
  • (ii) 景品表示法の執行体制を強化するための所要の法改正を行うとともに、不当表示規制の実効性を確保するための課徴金制度の導入等の違反行為に対する措置の在り方については、当委員会の調査審議を踏まえつつ、制度の整備について検討を行い、可能な限り速やかに必要な措置を講じられたい。(消費者庁)

(6)消費者教育(重点施策7、施策番号87、87-2、88、89、90、92、93、94、95、96、97、98関係)

  • (i) 消費者教育推進法や「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(平成25年6月28日閣議決定。以下、「基本方針」。)の趣旨を周知・徹底させ、関係者間の連携を強化するための具体的かつ実効的な施策を推進されたい。
  • (ii) 基本方針の「今後検討すべき課題」について、課題ごとの優先度やスケジュールを明確化した上で、できるだけ速やかに検討を進められたい。
  • (iii) 消費者庁と文部科学省は、より一層の連携を深めるとともに、地方公共団体における消費者行政担当部局と教育委員会の連携・協働が更に図られるよう、環境整備に取り組まれたい。また、すでに食育や金融教育等に取り組んでいる関係省庁等との連携についても、より一層強化されたい。
    (以上、消費者庁、文部科学省、関係省庁等)

(7)消費者被害救済制度(重点施策8、施策番号110、127、128関係)

  • 消費者裁判手続特例法の円滑な施行に向けて、関係政令・府令等の整備や制度の周知・広報等の所要の準備を進めるとともに、特定適格消費者団体の設立・活動を支援するために所要の措置を講じられたい。(消費者庁)

(8)食品ロス削減その他の消費者や事業者自身の意識改革による社会問題への対応(重点施策9、施策番号175関係)

  • 引き続き、食品ロス削減のような、消費者や事業者自身が社会の一構成員としての自覚を持ち、主体的に消費活動を行うことで社会問題を解決し得るような課題に対して、地方公共団体や消費者団体、事業者等の様々な主体が積極的に取り組めるような環境を整備するとともに、先駆的な取組が全国的に波及するよう、努められたい。(消費者庁、関係省庁等)

(9)地方消費者行政(重点施策10、施策番号121、122関係、又は新規施策)

  • (i) 当委員会の「地方消費者行政の体制整備の推進に関する建議」(平成25年8月)を受けて検討を進めている地方消費者行政の基盤強化等のための取組を明確に記述されたい。
  • (ii) 消費者安全法の改正において設置が検討されている地域見守りネットワーク構築のための「消費者安全確保地域協議会」については、既存のネットワークの活用を図るなど、効率的かつ実効的な運営が担保されるよう所要の措置を講じられたい。
  • (iii) 国による地方消費者行政の継続的な財政支援に対しては、引き続き最大限の努力をはらうとともに、委嘱者等への人件費としても活用できるよう促進されたい。
  • (iv) 消費者安全法の改正において検討されている消費生活相談員に関する任用要件等や「特定消費生活相談員(仮称)」の設置義務付けについては、現場の自治体や相談員の理解が得られ処遇改善につながるよう必要な対策を講じられたい。
    (以上、消費者庁、関係省庁等)

(10)PIO-NETの刷新(重点施策12、施策番号1関係)

  • (i) PI0-NETの刷新に当たっては、相談現場の負担軽減につながるよう、また、相談現場に混乱が起きないよう、現場の意見を十分に踏まえた上で、新システムへの円滑な移行を図られたい。
  • (ii) PI0-NETの専用端末・専用回線の一部廃止については、小規模自治体の切り捨てにつながらないよう、特段の配慮を行われたい。
    (以上、消費者庁)

(11)国民生活センターの在り方(新規施策)

  • (i) 「中期目標管理法人」として存続することとなった国民生活センターがその機能を十分に発揮できるよう、(1) 消費者の立場に立って柔軟かつ機動的な業務運営が行えること、(2) 各機能の相互補完性・一体性を確保すること、(3) 専門知識を有する職員を質・量ともに確保するための財政的な措置を行うこと、(4) 地方の消費者行政の現場とも密接な結び付きを保つこと等を制度的に担保するための措置を講じることを明確化されたい。
  • (ii) 同センター相模原事務所の研修施設については、消費者教育や地方消費者行政の充実を図るため、早急に活用を再開する方向で検討を進められたい。
    (以上、消費者庁)

(12)エステ・美容医療サービス(重点施策14、施策番号39-2、39-3、153-3関係)

  • (i) 「医療機関ホームページガイドライン」や「医療広告ガイドライン」の実効性について、必要かつ十分な検証・評価を実施されたい。
     (なお、次回の「消費者基本計画の検証・評価・監視」において、平成26年3月末までの検証・評価の結果を報告していただきたい。)
  • (ii) 上記両ガイドラインの実効性が担保されない場合は、美容医療機関等のホームページにおける表示を医療に関する広告とみなすなどの法改正を含めた表示適正化の実効性を担保するための措置を検討されたい。
  • (iii) 医療機関のホームページの監視について、指導権限を持つ保健所に対する厚生労働省による支援の在り方等について検討し、必要な対策を講じることを明確に記述されたい。
  • (iv) 美容医療サービス等における消費者(患者)への事前説明及びその同意に関し、医療従事者及び指導を行う保健所が適切に対応できるよう、具体的なQ&Aの作成や具体例の提示等の方策について検討し、実施することを明確に記述されたい。
  • (v) まつ毛エクステンションに係る教育プログラムと消費者への情報提供を適切に実施し、事故の未然防止に役立つよう対応されたい。
    (以上、厚生労働省)

(13)特定商取引法(重点施策15、施策番号41、43、44-2関係)

  • (i) 特定商取引法のいわゆる「5年後見直し」に向けて、できるだけ早期に消費者被害の実態把握と課題の整理を行い、必要な対応を検討することについて明記されたい。検討に際しては、当委員会の「詐欺的投資勧誘に関する消費者問題についての建議」(平成25年8月)を踏まえ、「指定権利制の廃止」についてあわせて検討されたい。
  • (ii) 訪問購入規制に関し、規制導入による効果や適用除外分野における被害の発生状況等について実態把握・検証を重点的に行い、必要に応じて機動的に見直しを行うことを明記されたい。
    (以上、消費者庁)

(14)詐欺的投資勧誘等(重点施策16、施策番号41、48、49、51、52、60、60-2、60-3、62、64、66、101関係)

  • 当委員会が「詐欺的投資勧誘に関する消費者問題についての建議」(平成25年8月)において指摘した各課題(関係法令の執行強化に向けた措置、制度整備に向けた措置、犯行ツールに関する取組の強化、消費者への注意喚起及び高齢者の見守りの強化)に対する建議以降の取組を十分に検証・評価した上で、必要となる取組強化を実施されたい。(消費者庁、警察庁、金融庁、総務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省)

(15)商品先物取引における不招請勧誘禁止規制(施策番号47関係、又は新規施策)

  • 総合取引所における商品先物取引の不招請勧誘禁止規制の在り方については、当委員会の「商品先物取引における不招請勧誘禁止規制に関する意見」(平成25年11月)を踏まえ、所要の措置を講じるとともに、その旨を明確に記述されたい。(金融庁、農林水産省、経済産業省)

(16)金融商品取引(施策番号48、60、62関係、又は新規施策)

  • (i) 第二種金融商品取引業者及び適格機関投資家等特例業務届出業者に係るいわゆるファンドへの出資等に関する消費者トラブルについては、無登録業者に対するものも含め、関係省庁における一層積極的な法執行や監督体制の強化、消費者教育・啓発による被害防止対策を検討し、必要な対策を講じられたい。(金融庁、警察庁、消費者庁)
  • (ii) 適格機関投資家等特例業務については、同制度を悪用した詐欺的投資勧誘が後を絶たず、その消費者被害が深刻である現状に鑑み、一般消費者が巻き込まれることがないような仕組みを構築するとともに、その旨を明確に記述されたい。(金融庁)
  • (iii) 金融商品取引に係る適合性原則については、実効性のある行政的な監督を行い、消費者被害の減少につながる取組を実施されたい。(金融庁)
  • (iv) クラウドファンディングについて制度を整備するに際しては、当委員会の「クラウドファンディングに係る制度整備に関する意見」(平成26年2月)を踏まえ、十分な消費者・投資家保護が図られるものとされるとともに、その旨を明確に記述されたい。(金融庁)

(17)電気通信事業における販売勧誘方法の改善(重点施策18、施策番号160、161、164関係)

  • 当委員会の「電気通信事業者の販売勧誘方法の改善に関する提言」(平成24年12月)を踏まえ、電気通信事業法における消費者保護ルールを見直し、所要の規定を設ける等の制度的な措置を講じられたい。(総務省)

(18)インターネットによる財産被害(施策番号153、153-2、171関係)

  • (i) インターネット取引被害に関し、決済手段や決済代行業者の実態を把握した上で、決済代行業者登録制度の今後のあり方について検討するとともに、必要に応じ、被害抑止及び被害回復のための方策や決済代行業者に関する制度的対応の必要性等について、割賦販売法等の法改正も含めて検討することを明記されたい。
  • (ii) 景品表示法や特定商取引法等の執行強化を図るとともに、関係省庁等の連携強化や消費者教育・啓発等、被害の未然防止のためのあらゆる方策を講じられたい。
  • (iii) 目下消費者庁が実施している越境消費者センターのサービスがより多くの国々との間で継続的に消費者に提供されるよう、所要の措置を講じられたい。
    (以上、消費者庁、総務省、経済産業省、関係省庁等)

(19)情報通信分野における個人情報保護(施策番号166、177関係)

  • (i) ビッグデータの利活用に関し、「パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針」(平成25年12月20日IT戦略本部決定)に基づき各施策を検討・実施するに当たっては、(1) 保護されるべき個人情報の範囲について慎重に検討を行うこと、(2) 匿名化について検討を深めること、(3) 第三者提供について消費者から同意を得る際には、消費者へ分かりやすく表示すること、(4) 自己に関する情報の開示・訂正・消去を求める権利を十分に保障すること等、パーソナルデータの保護に十分に配慮されたい。(内閣官房、関係省庁等)
  • (ii) スマートフォンのアプリケーションについて、事業者のプライバシーポリシーの作成や利用者への分かりやすい掲示の推進、安心安全に利用するための利用者への周知啓発等、利用者利益の確保のために所要の措置を講じられたい。(総務省)

(20)公益通報者保護制度(施策番号130関係)

  • 当委員会の「公益通報者保護制度に関する意見~消費者庁の実態調査を踏まえた今後の取組について~」(平成25年7月)を踏まえて、法制度の実効性を確保すべく、通報者の保護や相談窓口・通報先の拡大等に関し、制度の運用改善及び法の改正を含めた措置を検討することについて明記されたい。(消費者庁)

(以上)