地方消費者行政の体制整備の推進に関する建議

2013年8月6日
消費者委員会

消費者委員会は、地方消費者行政専門調査会から「地方消費者行政専門調査会報告」の提出を受けた。消費者委員会はこの報告の内容を踏まえ、以下のとおり、内閣府特命担当大臣(消費者)に建議を行う。

  1. 消費者委員会は発足以来、地方消費者行政の充実・強化を最重点課題の一つとして位置付けてきており、これまで地方消費者行政専門調査会(平成22年4月から23年4月)による報告書を基に、「地方消費者行政の活性化に向けた対応策についての建議」(平成23年4月)及び「地方消費者行政の持続的な展開とさらなる充実・強化に向けた支援策についての建議」(平成24年7月)を取りまとめ、国による支援策の検証・評価、財政・技術支援の在り方、消費生活相談員の雇止め等についての課題を明らかにし、消費者庁をはじめとする関係省庁に対応を求め、また、そのフォローアップを行ってきた。
  2. また、今回の専門調査会報告においては、地方消費者行政のなかで消費者に最も身近な行政主体である市町村の役割に焦点を当て、
    (i) 今後5年程度の中期的な視野に立って、市町村の消費者行政体制の現状の分析と優先的に取り組むべき課題の精査、とともに、
    (ii) 国、都道府県、市町村の役割分担に関して今後の論点の提示
    を行った。
    特に上記(i)で掲げた課題について、住民が「どこに住んでいても消費生活相談を受けられる体制」を実現し、それを維持・継続していくための優先課題として、
    (1) 広域連携やよろず相談窓口の強化による小規模市町村の消費者行政体制底上げ
    (2) 庁内連携及び官民連携を通じた「地域力」強化による地方消費者行政の体制強化
    (3) 研修の強化等を通じた消費者行政担当の地方自治体職員に対する支援策
    を掲げ、その推進のために消費者庁及び国民生活センターにおいて取り組むべき方策についての提言も盛り込んでおり、その着実な実施を求める。
    また、市町村の消費者行政体制整備にあたっては国に加えて都道府県の役割も重要である。本報告には上記で掲げた課題の対応のために都道府県に期待する方策も盛り込んでおり、その取組を期待したい。
  3. これまで消費者委員会で行ってきた地方消費者行政の建議等においては、いわゆる「基金(注1)後」の国による財政支援の在り方について検討を求めてきた。
       消費者庁は平成25年2月に消費者庁長官通知として「地方消費者行政に対する国の財政措置の活用期間に関する一般準則」(以下、準則)を定め、「各地方公共団体の消費者行政体制が定着するまでは、継続的な財政支援が必要であるとの認識を明示し、地方公共団体に対して中長期的な体制整備のロードマップを示した」(注2)としている。
    (注1) 地方消費者行政活性化基金(以下、基金)
    (注2) 消費者庁「平成25年版消費者白書」より。
    消費者庁による地方消費者行政への財政支援については、特に以下の点を求める。
    • (1) 国による地方消費者行政の継続的な財政支援に対する最大限の努力
         準則に盛り込まれた継続的財政支援の在り方について、現時点では基金の期限については平成25年度とされており、それ以降の国による地方消費者行政への財政支援の具体的在り方については、今後の平成26年度概算要求の過程で議論されていくことになる。
         地方自治体において、消費者行政に関する自主財源や人員の十分な確保が依然困難な状況であり、引き続き消費生活相談員の確保・レベルアップを始めとする消費生活相談体制の充実・強化のための下支えが不可欠である。これに加え、今年度から消費者教育の推進に関する法律(以下、消費者教育推進法)に基づく地域の取組が本格化していくことを踏まえ、引き続き国による財政支援の継続について最大限の努力を払っていく必要がある。
         また、当委員会が平成24年7月にとりまとめた「地方消費者行政の持続的な展開とさらなる充実・強化に向けた支援策についての建議」において示した課題として「活性化基金で新設・増設した相談体制維持のための財政支援等」「地方消費者行政に係る国からの財政負担の在り方の検討」「地方消費者行政に係る自主財源・人員確保等に向けた働きかけ」を踏まえ、最も効果的な財政措置の在り方について検討すべきである。
         今後の財政支援の重点的な課題として報告書が示した市町村の消費者行政体制整備の課題に沿って、
      • 小規模市町村の体制底上げ
        特に、窓口未設置市町村の解消による「どこに住んでいても消費生活相談が受けられる体制」づくりに引き続き尽力するとともに、これまで基金で構築された消費者行政体制を維持しつつ、その質的向上を図り、専門性を担保していくための財政支援の在り方の検討が必要である。
      • 地域力の強化による消費者行政体制の強化
           本年度から消費者教育推進法に基づく地方の消費者教育推進の取組が本格化することを契機として、地方消費者行政担当部署を中心として教育、福祉担当部局等との庁内連携や地域の高齢者等の見守りを行っている福祉関係団体等との官民連携を重層的に展開していくことは、消費者行政全体の「地域力」強化につながる。
           消費者教育・啓発の推進により消費者自身の消費者問題への対応力を高めていくと同時に、このような地域力強化による消費者行政体制の強化は、今後急速な高齢化の進展が見込まれるなか、消費者被害の未然防止や被害の早期発見・対処による被害拡大防止の観点から有効であると考えられ、地域力強化の取組を、国による財政支援の重点項目として位置づけていく必要がある。
          また、この観点から地方自治体の消費者行政担当職員への支援についても、連携のハブとしての役割が果たせるような研修プログラムの整備等を行っていく必要がある。
         また、地方消費者行政の自主財源・人員確保に向け、国から自治体の首長等に対する働きかけについても引き続き積極的に取り組むべきである。
    • (2) 準則による地方消費者行政の問題解決の効果の検証
         また、準則においては、これまで地方消費者行政が抱えてきた問題への対応策として、首長による消費者行政体制維持・強化の表明(消費者行政の重要性に対する認識深化)、消費生活相談員の雇止め抑止、小規模市町村への対応等に対して、財政支援期間の延長・短縮という形で、その対応を促進するための措置が盛り込まれている。
         消費者庁においては、今後、この準則による上記で掲げた地方消費者行政の問題解決の効果や地方自治体における自主財源の確保の状況等を検証し、それを踏まえて、国による財政支援等を安定的に継続していくにあたって、最大限の努力を行うべきである。

当委員会は、本建議への対応について、内閣府特命担当大臣(消費者)に対して、平成25年度末を目途にその実施状況の報告を求める。また、「消費者基本計画」の検証・評価・監視活動の一環として、本建議に対する対応状況について、定期的にフォローアップを実施する。

建議の概要

  1. 地方消費者行政専門調査会報告書」において提起された、市町村の消費者行政体制整備に向けての取組((1)小規模市町村の消費者行政体制の底上げ、(2)「地域力」の強化、(3)消費者行政担当職員への支援)を着実に実施すること。
  2. 国による地方消費者行政の継続的財政支援に対し、最大限の努力を行うこと。また、「地方消費者行政に対する国の財政措置の活用期間に関する一般準則」の効果の検証を行うこと。

主な成果

  • 【消費者庁】
    • 平成25年1月に基金を通じた当面の政策目標としての「地方消費者行政強化作戦」を定め、計画的・安定的な取組の中で、質の高い相談・救済を受けられる地域体制の全国的な整備を目指す。
    • 小規模市町村においても消費生活相談体制が整備されるよう市町村間の調整を都道府県の役割として規定する改正消費者安全法(以下、「改正法」という。)が成立(平成28年4月1日施行)。
    • 消費者教育及び地域力強化の取組を国による財政支援の重点項目として位置づけ、平成26年度「国と地方とのコラボレーションによる先駆的プログラム」の政策テーマとして、「消費者教育の推進(地域での推進体制強化及び事業者等のコンプライアンス意識の確立等)」及び「消費者のための安全・安心地域体制の整備」を採用。
    • 多様な関係機関により構成される消費者安全確保地域協議会を、国及び地方公共団体の機関が任意で設置できるよう、改正法において規定。
    • 国及び国民生活センターにおいて、消費者行政担当職員を対象とした研修を実施することを、改正法において規定。
    • 基金の活用期間延長を措置するとともに、地方公共団体において自主財源化計画を作成することを支援。
    • 複数の地方自治体において首長による消費者行政体制維持・強化の表明が行われた。