東北電力及び四国電力による家庭用電気料金値上げ認可申請に対する消費者委員会の意見について
2013年7月30日
消費者委員会
消費者委員会は、本日、公共料金等専門調査会家庭用電気料金の値上げ認可申請に関する調査会から、本件に関する意見の提出を受けた。
消費者庁においては、本意見を踏まえ、経済産業省との調整を進めることを求める。
東北電力及び四国電力による家庭用電気料金値上げ認可申請に関する調査会意見について
2013年7月30日
消費者委員会公共料金等専門調査会
家庭用電気料金の値上げ認可申請に関する調査会
消費者委員会においては、7月24日付けで消費者庁より「東北電力株式会社及び四国電力株式会社による電気供給約款の変更認可申請について」の付議を受け、本調査会として、7月25日に仙台市及び高松市で地元消費者団体との意見交換会を実施し、また26日には調査会を開催し、経済産業省資源エネルギー庁へのヒアリング等を行った。これらの結果を踏まえ、上記付議に対しての調査会の意見は以下のとおりである。
I.全体的な評価
- 人件費、調達等に関しては、本年3月の関西電力及び九州電力の家庭用電気料金値上げ認可申請の際のプロセスと同様に、本年5月に当調査会での調査審議を経て消費者庁で取りまとめた「東北電力及び四国電力の家庭用電気料金値上げ認可申請に関するチェックポイント」(注1)で指摘した意見が、先取り的に査定方針案に反映されている。
このことは、チェックポイントが家庭用電気料金値上げ認可申請の審査の過程において、公平かつ効率的な料金査定方針案策定のための指針とされたものと評価できる。また、今回の公聴会の運営、審査プロセスの透明性等についても評価できる。 - 他方、II.で掲げる個別の項目については、更なる改善を求めたい。
仙台での意見交換会において、東日本大震災の被災地であることの配慮が必要との声が出されたほか、最近の燃料費調整により電気代が上昇しているなか、今回の申請に基づく更なる値上げによる負担増への懸念の声も多数出された。このような声も踏まえ、厳正に精査を行うべきである。 - 新料金体系への移行に向けた情報提供等に当たっては、十分な周知期間をとるとともに、両電力会社において管内の消費者に適時かつ万遍なく届くような広報・周知体制を取るよう促すべきである。
また、両電力会社において下記の対応を取ることを促すべきである。- 消費者や消費者団体等からの説明会開催や情報提供等の要望に応えるとともに、積極的に説明会等の開催を提案すること
- ホームページに、公聴会等の場で消費者から多く寄せられる疑問点等に対する回答(いわゆるFAQ)を掲載すること等を通じて、明確かつ丁寧に対応すること。
特に、東北電力に対しては、供給区域内に東日本大震災により甚大な被害を受けた被災地があり、生活基盤が安定していない被災者もいまだ多数に上ることも踏まえ、今般の値上げ認可申請について、丁寧な説明と理解を得るための十分な努力を促すべきである。
(注1) 両電力会社からの値上げ認可申請に関する検証にあたり、消費者の観点を踏まえたものとなるよう、5月24日の調査会での議論を経て、消費者庁において5月30日に取りまとめたものである。
II.個別項目
1.人件費
- 両電力会社の一人当たり給与水準について、賃金構造基本統計調査の従業員1000人以上の正社員給与の平均値をベースとし、年齢、勤続年数、勤務地域等による補正が行われているが、それぞれの補正結果を詳細に示すべきである。
- 厚生費については、
- 健康保険料の事業主負担について、法定負担割合の50%を目指した削減とすべき。
- これまでの東京電力及び関西電力・九州電力の値上げ認可申請の査定方針等を反映して、カフェテリアプラン等に加え、その他各種奨励金等一般厚生費における各項目の削減状況も明確化し、引き続き効率化を図る観点からの検討を行うべきであり、必要最低限の額を計上すべきである。
2.調達
- 競争入札の比率について、東京電力の事例(注2)を踏まえ、さらに拡大するとともに、その進捗の検証に取り組むべきである。
- 子会社等からの調達についても、電力会社のコスト削減に照らした削減を可能な限り行うべきである。
(注2) 「競争入札の導入比率について東京電力は5年間で60%の水準を達成するとの目標を表明したが、その前倒しを求める」とされている(平成24年7月19日 経済産業省「消費者庁からの意見の対応について」)
3.事業報酬
- 事業報酬について、下記の例を含め、消費者にとってなぜ査定方針案で盛り込まれた事業報酬が適正であるのかを丁寧で分かりやすく説明を行うべきである。
事業報酬について、消費者の持つ疑問の例
- 事業報酬は、電力会社の利益に相当するのではないか。消費者が電力を消費する対価(受益者負担)として、なぜ料金で負担しなければならないのか。
- 事業報酬の算定に利用されている自己資本比率が実際よりも高い30%をベースに算定が行われ、その実際との差額相当分を、消費者が電力を消費する対価(受益者負担)として、なぜ料金で負担しなければならないのか。
- 原価算定期間内に稼動を見込まず、電力需要者である消費者への電力供給に直接的に寄与しない原子力発電所をレートベースに算入し、消費者が電力を消費する対価(受益者負担)として、なぜ料金で負担しなければならないのか。
4.購入電力料
- 日本原電に支払う、購入電力料に含まれる人件費を東北電力と同等に合理化しているが、日本原電自体が行う役員報酬及び人件費の削減幅等の合理化の内容を、より明確に定量的に説明すべきである。
5.電灯需要の伸び予測、最大電力量想定と節電予測、見込みと実績の乖離
- 節電や省エネ行動による需要削減効果が料金に与える影響について、個々の家庭で節電を行えば、支払いの抑制につながるものであること、また、節電が定着すれば、長期的には設備投資の抑制等による費用の逓減につながるものであることの説明を行うことで、消費者の間で節電しても値上げになるので意味がないといった誤解が生まれないようにすべきである。
6.新料金体系への移行に向けた情報提供等
- 新料金体系への移行に向けた情報提供等に当たっては、十分な周知期間をとるとともに、両電力会社において管内の消費者に適時かつ万遍なく届くような広報・周知体制を取るよう促すべきである。
また、両電力会社において下記の対応を取ることを促すべきである。- 消費者や消費者団体等からの説明会開催や情報提供等の要望に応えるとともに、積極的に説明会等の開催を提案すること。
- ホームページに、公聴会等の場で消費者から多く寄せられる疑問点等に対する回答(いわゆるFAQ)を掲載すること等を通じて、明確かつ丁寧に対応すること。(再掲)
- さらに、各電力会社においては、料金改定後は、消費者からの問合せ・苦情に対して、丁寧な説明(適当な場合には業務への反映)を行うとともに、定期的に消費者団体等との意見交換を行い、事業運営に消費者の意見を反映させるといった対応も行うべきである。
7.その他
- 資産売却について、更なる上乗せを行う余地はないか。売却可能資産の現状、処分計画等を明らかにし、検証するよう促すべきである。
III.今後の課題
- 人件費の査定における給与の比較について、比較対象とする企業や公益事業のセクターの範囲をより合理的なものにできないか検討すべきである。
- 事後検証については、以下のような課題があると考えており、今後、検討を行うべきである。
- 燃料調達について、世界的なエネルギー価格の動向を反映させ、継続的なインセンティブを与える観点からの検証(トップランナー価格での原価織り込み、燃料費調整制度の在り方等を含む)
- 料金算定の前提条件が、認可時からどの程度乖離したかどうかの観点からの検証
- 費用と、料金メニュー毎の収入及び販売電力量について、実績値や見込み額の原価算定期間内の進捗状況について定期的に一覧性のあるわかりやすい形での消費者への公表の在り方(なお、消費者庁においてはその点検を行い情報提供に努めるべきである。)
- 今回の原価算定期間終了後には電源構成が大きく変わり、燃料費の大幅削減による値下げも想定される。現行の電気事業法において、値下げにあたっては事業者からの届出のみで済むことになるが、その際に値下げ幅について何らかの検証が可能になるよう、その方策についての検討を行うべきである。
- これまでの電気料金値上げ認可申請の調査審議の過程で明らかになった諸課題(例:情報公開・開示の在り方、事業報酬算定の在り方等)について、今後消費者委員会において検討を続けていくこととし、その結果も踏まえて今後の電気料金改定認可申請に関する審査のあり方に適切に反映すべきである。
- 電力システム改革について、消費者にとってどのようなメリットがあるのかについて分かりやすい情報提供を行うべきである。今後の発送電分離などの電力の自由化、再生可能エネルギーの利用拡大及びスマートメーターの普及等が消費者に与える影響について明確に説明すべきである。
また、今後具体的な制度設計を行う際には、規制なき独占に陥り、消費者の利益が損なわれるといったことがないよう、消費者の意見を積極的に聴くべきである。
さらに、電力システム改革や原発の廃炉費用負担等の検討については、消費者の関心も非常に高いため、これら検討の全体を俯瞰できるような情報提供を工夫すべきである。
(以上)