関西電力及び九州電力による家庭用電気料金値上げ認可申請に対する消費者委員会の意見について

2013年3月19日
消費者委員会

 消費者委員会は、本日、公共料金等専門調査会家庭用電気料金の値上げ認可申請に関する調査会から、本件に関する意見の提出を受けた。

 消費者庁においては、本意見を踏まえ、経済産業省との調整を進めることを求める。





関西電力及び九州電力による家庭用電気料金値上げ認可申請に対する調査会意見について

2013年3月18日
消費者委員会公共料金等専門調査会
家庭用電気料金の値上げ認可申請に関する調査会


 3月6日付けで消費者庁より「関西電力株式会社及び九州電力株式会社による電気供給約款の変更認可申請について」の付議を受け、本調査会として、3月7日に福岡市で、11日には大阪市で地元消費者団体との意見交換会を実施し、また13日には調査会を開催し、経済産業省資源エネルギー庁へのヒアリング等を行った。これらの結果を踏まえ、上記付議に対しての調査会の意見は以下のとおりである。


I.全体的な評価

  • 人件費、調達等に関しては、「関西電力及び九州電力の家庭用電気料金値上げ認可申請に関するチェックポイント」(注1) により、先取り的に査定方針案への意見が的確に反映されたものであり、両電力会社からの聴取や検証にも資する役割を果たしたものと評価できる(注2)。チェックポイントで示した内容を取り入れて策定されたことは、今後の公平かつ効率的な料金査定方針案策定のための新たな指針となると考えられる。
    また、今回の公聴会の運営、審査プロセスの透明性等についても評価できる。
  • 他方、II.で掲げる個別の項目については、更なる改善を求めたい。
  • 新料金体系への移行に向けた情報提供等について、電力会社による消費者団体等への説明の機会を設定する等、単に情報を公開するだけではなく、個々の消費者に届くよう、分かりやすい説明によって積極的に周知することが必要であり、このために十分な周知期間をとるとともに、各電力会社にそのための工夫・努力を促すべきである。
(注1) 両電力会社からの値上げ認可申請に関する検証にあたり、消費者の観点を踏まえたものとなるよう、1月24日の調査会での議論を経て、消費者庁において2月1日に取りまとめたものである。
(注2) 経済産業省資源エネルギー庁電気料金審査専門委員会において個別具体のデータ等の検証が適切に行われているとの認識である。

II.個別項目

1.人件費

  • 厚生費については、
    • 健康保険料の事業主負担について、査定方針案では55%を上限としているが、法定負担割合の50%を目指した削減とすべき。
    • 自社持株奨励金として従業員拠出金に対して5%の奨励金を支出している点については、原価算入には適さない。
    • カフェテリアプラン等に加え、その他各種奨励金等一般厚生費における各項目の削減状況も明確化すべき。
    これらの項目については、引き続き効率化を図る観点からの検討を行うべきであり、東京電力に対する昨年7月の値上げ認可申請の査定結果との比較等を考慮して、必要最低限の額を計上すべきである。
  • 給与水準の低下に伴い、退職給付費用についても合理化されているか、確認すべきである。

2.調達、燃料費、購入電力料

  • 競争入札の比率について、両電力会社の申請では平成25年度から27年度までの3年間で30%を目標としているが、昨年7月の東京電力値上げに際して同社が5年間で60%の水準を達成するとの目標を表明したことを踏まえ、60%に近づけた目標を設定するよう促すべきではないか。
  • 子会社等からの調達についても、人件費については両電力会社のコスト削減努力並みに、その他コスト削減可能な経費についても両電力会社のコスト削減努力に照らした削減を可能な限り行うべきである。
  • 電力中央研究所の研究内容を精査し、真に必要なもの以外は原価から除くべきである。
  • 日本原電については、査定方針案では関西電力と同等の合理化を図ることとされているが、役員報酬及び人件費の削減幅等、どのような合理化が行われるのかについて、具体的削減金額等により明確に説明すべきである。

3.減価償却・レートベース、事業報酬

  • 事業報酬について、別掲の例を含め、なぜ査定方針案で盛り込まれた事業報酬が適正であるのかを消費者に対して、丁寧で分かりやすく説明を行うべきである。
事業報酬について、消費者の持つ疑問の例
  • 事業報酬は、電力会社の利益に相当するのではないか。消費者が電力を消費する対価(受益者負担)として、なぜ料金で負担しなければならないのか。
  • 事業報酬の算定に利用されている自己資本比率が実際よりも高い30%をベースに算定が行われ、その実際との差額相当分を、消費者が電力を消費する対価(受益者負担)として、なぜ料金で負担しなければならないのか。
  • 原価算定期間内に稼動を見込まず、電力需要者である消費者への電力供給に直接的に寄与しない原子力発電所をレートベースに算入し、消費者が電力を消費する対価(受益者負担)として、なぜ料金で負担しなければならないのか。

4.電灯需要の伸び予測、最大電力量想定と節電予測、見込みと実績の乖離

  • ピーク対応料金メニュー等の設定による節電や省エネ行動について、査定方針案では、一定の仮定をおいて試算した結果、むしろ値上げとなることが確認されたとしているが、消費者に対して、具体的に分かりやすく説明すべきである。
     (上記は単価に関する試算であって、個々の家庭で節電を行えば、支払いの抑制につながるものであること、また、節電が定着すれば、長期的には設備投資の抑制等による費用の逓減につながるものであることの説明を行うことで、消費者の間で節電しても値上げになるので意味がないといった誤解が生まれないようにすべきである。)

5.新料金体系への移行に向けた情報提供等

  • 新料金体系への移行に向けた情報提供等について、電力会社により消費者団体等への説明の機会を設定する等、単に情報を公開するだけではなく、個々の消費者に届くよう、積極的に周知・説明することが必要であり、このために十分な周知期間を取るとともに、各電力会社にも周知・説明の対応を促すべきである(再掲)。
  • 消費者に毎月届けられる「電気ご使用量のお知らせ」を、料金を含めた重要な情報の広報ツールとして、各電力会社においてはこれを活用した情報提供に努めるべきである。
  • さらに、各電力会社においては、料金改定前には消費者団体等との意見交換会を開催することを含め、個々の消費者に届くよう、分かりやすい情報提供を工夫するとともに、料金改定後は、消費者からの問合せ・苦情に対して、丁寧な説明(適当な場合には業務への反映)を行うとともに、定期的に消費者団体等との意見交換を行い、事業運営に消費者の意見を反映させるといった対応も行うべきである。

6.その他

  • 資産売却について、更なる上乗せを行う余地はないか。売却可能資産の現状、処分計画等を明らかにし、検証するよう促すべきである。
  • 各利害関係者(ステークホルダー)の負担について、既に利用者、取引先、役員・従業員、株主等は示されているが、金融機関の負担も可能な限り定量的に説明すべきである。

III.今後の課題

  • 人件費の査定における給与の比較について、比較対象とした公益事業のセクター選択の理由について、明確な説明をすべきである。今回、水道事業、鉄道事業、ガス事業を選択し、通信事業や航空事業を対象としなかった合理的理由を明示すべきである。
  • 事後検証については、以下のような課題があると考えており、今後、検討を行うべきである。
    • 燃料調達の在り方について、世界的なエネルギー価格の動向を反映させ、継続的なインセンティブを与える観点からの事後的な検証の在り方(トップランナー価格の原価織り込み、燃料費調整制度の在り方等を含む。)
    • 費用と、料金メニュー毎の収入及び販売電力量について、実績値や見込み額の原価算定期間内の進捗状況について定期的に一覧性のあるわかりやすい形で消費者に公表すべきである。消費者庁においてはその点検を行い情報提供に努めるべきである。
  • これまでの東京電力及び関西電力・九州電力の値上げ認可申請の査定のプロセスで明らかになった諸課題(例:情報公開・開示の在り方、購入電力料の負担の在り方、事業報酬算定の在り方等)について整理し、電気料金値上げ認可申請に関する審査のあり方に適切に反映すべきである。
  • 電力システム改革について、消費者にとってどのようなメリットがあるのかについて分かりやすい情報提供を行うべきである。今後の発送電分離などの電力の自由化、再生可能エネルギーの利用拡大及びスマートメーターの普及等が消費者に与える影響について明確に説明すべきである。また、今後具体的な制度設計を行う際には、規制なき独占に陥り、消費者の利益が損なわれるといったことがないよう、消費者の意見を積極的に聴くべきである。

(以上)