「消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果の報告」に関する意見

2012年2月14日
消費者委員会

「消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果の報告」に関する意見

消費者安全法第13条は、国が収集した消費者事故等に関する情報が消費者安全の確保を図るため有効に活用されるよう、内閣総理大臣がその集約及び分析の結果を取りまとめ、国会及び消費者委員会に報告するとともに、公表することを求めている。
消費者庁は、その規定に則り今回で5回目となる「消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果の報告」をまとめ、国会に提出した。
今回の取りまとめにより、過去2.5年分の消費者事故等の情報が蓄積されたことから、時系列での事故件数等の変化が明らかとなり、その分析を基にした対策の立案等、有効活用がより一層求められる。
消費者委員会は、過去4回の報告に対し意見を表明し、内容の改善を提起した結果、前回までに一定の改善が見られたことは評価している。
今回の報告についても、これまでの問題点や新たな課題などを確認し、次のように意見を述べる。


I 主な改善点

  • ア) 各項目に示されている事故件数の分類表のほぼ全てに、内容別の構成比と前年同期が示され、数字の増減による変化の状況が分かりやすく整理されている。
  • イ) 参考資料3のそれぞれの時系列データに、新たに平成21年からのデータが、年度別、半期別に一覧で示されることにより、その変化が分かりやすく掲載されている。さらにPIO-NETに収集された情報として、危害情報、危険情報別のデータが追加されている。
  • ウ) 参考資料4に、事故内容別分類の説明として、分類内容の事故概要の事例が紹介され、理解しやすくなっている。

上記のア)とイ)は時系列の事故件数等の変化が分かりやすく記載されており、また、ウ)はこれまで消費者委員会で是正を要望してきたもので、一定の改善が見られる。


II 残された課題

  • 1.情報の一元化と社会的共有化への推進について
    特に、「事故情報データバンク」「医療機関ネットワーク」によって収集された情報、並びにその情報を分析した結果についての説明の充実が重要である。
  • 2.分かりやすく使いやすい分類について
    参考資料5にある2つの表の内容がリンクしておらず、当初から改善を求めていた「商品等別分類」が分かりにくいままとなっている。

消費者安全法第13条は、国が収集した消費者事故関連情報が消費者安全の確保を図るため有効に活用されるよう、内閣総理大臣はその集約と分析の結果を国会及び消費者委員会に報告、関係行政機関、地方公共団体及び国民生活センターへ提供するとともに、公表することを求めている。
消費者庁は2月10日、当該規定により「消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果の報告」をまとめ、国会に報告した。
消費者庁の報告は今回で4回目となるが、消費者委員会は過去の報告に対しその都度意見を表明し、内容の改善を提起してきており、今回の報告は当委員会の意見に沿って一定の改善が見られたことは評価できる。
今回の報告についても、これまでの問題点が是正されたか、また、新たな課題はないか、などを含め、次のように意見を述べる。

I 改善された点

  • ア) 各項目の冒頭に「ポイント」として、各項目の要約(項目別要約の他、事故件数の前年同期比や事故内容別の割合等のグラフなど)が追加された。
  • イ) 事故情報データバンクに収集された情報について、情報の入手経路と件数を図示し、さらにホームページの画面とアドレスが掲載された。(26、27頁)
  • ウ) 参考1として、消費者安全法に基づき通知された重大事故等のデータに公表日と備考欄が追加され、備考には消費生活用製品安全法に基づき報告された重大製品事故との重複情報やリコール情報等が記載された。また、参考2も同様に記載がより詳しく追加された。(51頁から167頁)
  • エ) 参考3として、消費者安全法に基づき通知された事故件数について時系列データが掲載され、過去からの件数や構成比の推移が掲載された。(168頁から171頁)
上記4点のうち、イ)とウ)は、これまで消費者委員会が是正を要望してきたものであり、ア)とエ)については、内容説明がより分かりやすく、詳しく掲載されている点で、一定の改善が見られた。
しかしながら次の点については、依然として課題が残された。

II 課題が残された点

  • 1.情報の一元化と社会的共有化への推進について
    • (1)参考資料(51頁から)にある「追跡確認状況」が報告期間内の重大事故例を全て網羅するものとなっていない。
    • (2)重大事故の発生日から消費者庁の通知受理日との間に長期間を要している例が依然として見受けられる。
    • (3)「医療機関ネットワーク」に関する制度の運用実績と情報の活用状況に関する説明が不十分である。
    • (4)消費者安全法に基づき収集された重大事故例以外の、身体・生命に関する事故例についての分析・措置状況が明確ではない。特に最も件数の多い「食中毒」については、事例及び行政の対応が公開される必要がある。
    • (5)「重大事故例」のうち、「相談者非公表希望の事例」の公表が概要の一部に留まっている。
  • 2.分かりやすく使いやすい分類
    • (1)「事故内容」の分類が分かりにくいままとなっている。
    • (2)「商品別・サービス別分類」等が分かりにくいままとなっている。

III 今後の課題

消費者庁は、平成24年度に、適切かつ効果的な消費者政策を推進するために、消費者問題の現状や課題、政府の取組等の全体像を分かりやすくまとめた年次報告(「消費者白書(仮称)」)を新たに作成するとしている。
新たな「消費者白書(仮称)」においても、この国会報告が目的としている、社会全体で消費者安全の確保が図られるよう、収集・分析した情報が幅広く、積極的に活用され、消費者事故の未然・拡大防止に有効に活用できるようにするためには、情報の内容が分かりやすく、理解しやすいものであることが前提である。消費者庁はこの点を認識して取りまとめを行っていただきたい。
IIのように残された課題も多く、また情報の分析・対応について、件数の多い事故、前年と比べ増加している事故について、その分析やそれに基づく措置・対応が明確に報告されておらず、事故の未然・拡大防止へ向け、収集・分析・公表の一層の充実が求められる。

消費者委員会は、今後もこれらの課題について、国会報告ならびに「消費者白書(仮称)」が、より消費生活の安全・安心に寄与するよう、検証・評価・監視に取り組み、消費者庁に一層の努力を求めていく。

III 新たな課題

この報告書は、その名称にあるように、情報の集約と分析の取りまとめが求められている。
情報の集約については、今回の取りまとめにより平成21年9月以降の消費者事故等の情報が蓄積され、時系列データとその変化が示される等、充実してきているものの、その分析についての記述は十分とは言えない。
例えば、平成23年下半期の消費者事故等の件数は、前年同期と比べ19.6%減であるにも関わらず、同時期の重大事故等は、前年同期と比べ96.9%増となっている。しかしながら、その要因については何ら記述されておらず、この数字の違いについての疑問はそのまま残る。
消費者事故等に関する情報が消費者安全の確保を図るため有効に活用されるためにも、上記のような分析についての記述が必要と考える。


IV 消費者白書(仮称)での対応について

前回(平成24年2月14日)の意見で述べたように、消費者庁が平成24 年度に新たに作成を進めている年次報告(「消費者白書(仮称)」)においても、消費者事故等の未然・拡大防止に有効に活用できるようにするためには、分かりやすく、理解しやすい内容であることが前提である。
IIIの指摘のように新たな課題もあり、消費者事故情報の収集・分析・公表の一層の充実が求められる。
消費者庁は「消費者白書(仮称)」においても、この点を認識して取りまとめを行っていただきたい。

消費者委員会は、今後もこれらの課題について、より消費生活の安全・安心に寄与するよう、検証・評価・監視に取り組んでいく。