地方消費者行政の活性化に向けた対応策についての建議

2011年4月15日
消費者委員会

消費者委員会は、地方消費者行政専門調査会から、「地方消費者行政専門調査会報告書」の提出を受けた。消費者委員会は、この報告書の内容を踏まえ、以下のとおり、関係各大臣に建議を行う。

  1. 消費者委員会は、従来からの産業育成中心の行政のあり方を、国においても地方においても消費者重視に転換していくため、あらゆる施策を講じていく必要があるとの観点から、関係省庁の施策に対する建議、提言等を行ってきた。
    地方における消費者行政を活性化するための様々な方策について、消費者委員会は発足以来、消費者庁及び消費者委員会の設置に至る国会審議を踏まえ、調査、審議を行ってきた。それとともに、地方公共団体に対する実態調査やヒアリングを重ね、その中で浮かび上がってきた地方消費者行政の問題点を踏まえ、一昨年12月に、審議・検討すべき論点を整理し、地方消費者行政専門調査会(以下、「本専門調査会」という。)に提示したところである。

  2. 本専門調査会は、消費者委員会が示した上記の論点に基づき、昨年4月から1年間、計13回にわたって精力的に審議を重ねてきた。
    なお、昨年1月及び本年1月に、全国の都道府県及び市町村(特別区を含む。)に対して、消費生活相談窓口や相談対応等の現況や地方消費者行政活性化基金等の施策の効果についての実態調査を行った。また、本年1月に、それまでの審議・検討を踏まえて作成した報告書の骨子案について、意見募集を行った。これに対して、地方公共団体、関係団体・NPO法人、全国各地の個人の方々から計180を超える意見が寄せられたところである。

  3. 本報告書は、こうした1年間にわたる審議・検討や実態調査、全国から寄せられた様々な意見を踏まえて作成されたものであり、上記のとおり地方消費者行政強化に向けた対応をより充実したものとしようとする視点に立って検討された内容となっている。他方、地方消費者行政の活性化に当たっては、現在、進められている「地域主権改革」の趣旨を踏まえ、各地方公共団体が地域住民の声にきめ細かに対応し、地域の特性を踏まえて創意工夫を発揮できるように最大限配慮すべきであることは言うまでもなく、本報告書はこうした点からも評価できるものとなっている。

  4. 本報告書に記載された各種施策は、平成21年度からの集中育成・強化期間終了後、地方消費者行政を引き続き強化していくうえで、早急に実施する必要がある。
    また、その実施に当たっては、本報告書の第8章「今後の地方消費者行政の充実・強化の進め方について」を踏まえて、平成23年度以降、具体的な施策を総合的かつ計画的に実施していくため、詳細な工程表を策定する必要がある。

  5. そこで、消費者委員会は、消費者庁及び消費者委員会設置法に基づき、内閣府特命担当大臣(消費者)、総務大臣等関係各大臣に対して、本報告書の内容のとおり建議し、報告書において記載された各種施策の実施に向けて、早急な対応を求めるものである。
    また、消費者委員会は、消費者行政の司令塔たる消費者庁において、関係省庁の対応を取りまとめ、本報告書に記載された各種施策を実施するための詳細な工程表を作成し、本年7月までに報告することを求める。

  6. 本報告書の内容の中で、消費者委員会として、特に、早急な検討・実施を求める事項として、以下の点を特記する。
    • (1) 国による地方に対するこれまでの支援策に係る検証・評価
      これまでも国としては、「地方消費者行政活性化基金」や「住民生活に光をそそぐ交付金」等の様々な施策を講じてきたところであるが、集中育成・強化期間終了後の施策を講ずるに当たっては、これまでの様々な施策が、地方消費者行政の活性化に向けてどの程度成果を挙げたのか等について、しっかりと検証を行ったうえで、その評価を踏まえてより効果的な施策を立案することを求める。
    • (2) 相談ネットワークの充実
      消費者委員会が実施した都道府県及び市町村における相談窓口に係る実態調査等によれば、相談窓口設置に対する住民のニーズは大変強いものの、相談窓口のない市町村がなお相当数存在すること、あるいは設置したとしても充実したサービスを提供するのが難しいという実情が明らかとなった。
      本報告書で提言している広域連携(単独の市町村を県が支援する連携を含む。)に対する国による支援策を早急に実施することで、相談ネットワークを充実することを求める。
    • (3) PIO-NETの入力費用に対する国の一定の負担の検討
      地方公共団体の相談窓口におけるPIO-NETの入力に係る事務負担が、以前にも増して、増大している。これは、被害事案の早期把握等の国からの要請増加に伴う面も少なくない。したがって、相談窓口における入力に伴う手間・費用負担等のうち、費用の一部を国が負担する仕組みについて、早急に検討作業を進めることを求める。
    • (4) 地方における法執行体制の強化
      全国の消費生活センターに寄せられる相談件数のうち、悪質商法等に絡む無店舗販売や、表示義務違反等に係る相談が過半を占めている。このような特定商取引法・景品表示法違反行為に起因すると思われる相談が全国で多発していることを踏まえると、早急に地方における法執行体制を強化する必要がある。
      したがって、そのための法執行権限の見直しや、国としての支援策について、直ちに所要の作業を進めることを求める。

なお、今回の東日本大震災に伴い被害に見舞われた各県・市町村における地方消費者行政を含む地方行政の基盤が大きく損なわれたことから、消費者委員会は、その復旧支援策は緊急かつ重要な課題であると考えている。消費生活相談など地方消費者行政の基本的機能の復旧支援については、国としても全力を挙げる必要がある。消費者委員会は、そのような観点から、引き続き、関係機関の対応等を注視していく。

建議の概要

  1. 「地方消費者行政活性化基金」や「住民生活に光をそそぐ交付金」等、国による地方に対するこれまでの支援策に係る検証・評価
  2. 広域連携に対する国による支援策の実施による相談ネットワークの充実
  3. PIO-NETの入力費用に対する国の一定の負担の検討
  4. 地方における法執行体制の強化

主な成果

  • 第64回委員会(2011年8月5日)において、"集中育成・強化期間"後の地方消費者行政の充実・強化に向けた取組みの工程表を提示。
  • 「地方消費者行政活性化基金」の増額を平成24年度当初予算として計上。
  • 「集中育成・強化期間」後の地方消費者行政の充実・強化に向けた「消費者庁の取組」と「自治体への期待(提言)」をまとめた「地方消費者行政の充実・強化のための指針」を策定。