消費者行政体制の一層の強化について -「国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース」中間整理についての意見-

2011年6月10日
消費者委員会

  1.  消費者庁及び消費者委員会設置法(平成21年6月5日 法律第48号、以下「消費者庁等設置法」という。)附則第3項及び消費者庁等設置法案等に対する衆・参両院の附帯決議を踏まえると、政府は、同法施行後の3年以内である平成24年8月末までに、「消費者被害の発生又は拡大の状況、消費生活相談等に係る事務の遂行状況その他経済社会情勢等を勘案し、消費者の利益の擁護及び増進を図る観点から、消費者の利益の擁護及び増進に関する法律についての消費者庁の関与の在り方を見直すとともに、当該法律について消費者庁及び消費者委員会の所掌事務及び組織並びに独立行政法人国民生活センターの業務及び組織その他の消費者行政に係る体制の更なる整備を図る観点から検討を加え、必要な措置を講ずるものとする」とされ、その検討に際しては、「消費者委員会による実質的な審議結果を踏まえた意見を十分に尊重」(参議院附帯決議)することが求められている。

  2.  また、政府においては、独立行政法人の抜本改革の第一段階として、平成22年12月7日に「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(閣議決定)が取りまとめられ、これを受けて、平成22年12月24日から、消費者庁及び国民生活センターによる「国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース」(以下「タスクフォース」という。)における議論が始まり、その後の検討を踏まえ、平成23年5月13日に、タスクフォースの中間整理を公表し、消費者委員会からの意見を求めている。

  3.  消費者委員会としては、以上の経緯を踏まえ、消費者行政体制の一層の強化を目指しつつ、国及び地方の財政状況が厳しい中で、どのような体制であれば、効率性・有効性を向上させ、かつ、消費者行政全体を充実、強化することができるかという観点から、本年2月以降、
    (1) 都道府県及び政令指定都市の実態調査
    (2) 地方公共団体の消費者行政関係者からの意見聴取
    (3) 事業者団体・消費者団体からの意見聴取
    (4) 行政組織の在り方に詳しい学識経験者からの意見聴取
    を行うなど鋭意検討を進め、「消費者行政体制の一層の強化に向けた検討報告 -「国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース」中間整理を踏まえて-」(平成23年6月10日)(以下「本報告書」という。)をまとめた。
     消費者委員会としては、本報告書の内容のとおり、意見を述べるものであり、消費者庁及び国民生活センターにおいては、これを踏まえさらに検討を進めることを求める。また、引き続き、検討状況を注視し、必要に応じ意見を述べていくこととする。

  4.  本報告書の概要を簡単にまとめると、以下のとおりである。
    (1) 消費者庁、消費者委員会及び国民生活センターの3つの機関は、何れも消費者基本法(昭和43年5月30日 法律第78号)第2条の基本理念にのっとり、消費者が安心・安全で豊かな消費生活を営むことのできる社会を実現するために必要な事務を行うことを任務としていると整理できる。しかし、その所掌する事務・機能についてみると、消費者庁は、消費者利益の擁護・増進に関する基本的な政策の企画・立案・推進や、法執行といった権力的事務等を所管し、国民生活センターは、非権力的実施事務を所管し、消費者委員会は、消費者行政全般の監視、諮問を受けた事項について答申を行うとされており、現行法上は以上のような分担関係となっている。

    (2) なお、消費者庁の行う注意喚起と、国民生活センターの行う情報提供については、類似した機能を両者で担っているようにみえるが、前者は消費者安全法等においてその必要が認められた場合の注意喚起等であるのに対し、後者は広く国民生活の改善に関する情報提供等であり、法制的には、両者は異なるものとして位置付けられ、一方の事務を他方の事務で埋め合わせることができる関係にはない。ただし、国民生活センターが自ら行うことができる事務、又は、独立行政法人国民生活センター法(平成14年12月4日 法律第123号)第44条第1項に基づく消費者庁の求めに応じて行う事務を、消費者庁自ら行って注意喚起体制を強めている点については、一定の評価はできるが、適切な役割分担・効率性の観点からの検討が必要である。

    (3) 消費者庁、消費者委員会及び国民生活センターの各機関は、それぞれ迅速に解決すべき大きな課題を担っており、その課題解決のため、鋭意対応を図る必要がある。また、各機関の事務の性格や直面している課題の重要性などを踏まえると、国あるいは国の独立行政法人が対応すべき事務が多く、民間への委託については、実現が難しいものも多い。しかし、国民生活センターが行っている基礎的な研修や出版・広報事務を中心に、今後検討を進めるべきものもみられる。また、各機関において、運営の効率性、透明性の向上を図る観点から改善すべき点が少なからず見受けられる。

    (4) タスクフォースの中間整理に示された消費者庁と国民生活センターの一元化の案については、消費者庁及び国民生活センターが所掌する各事務をその求められる在り方に即して的確に遂行していく上で、懸念される点が少なからずあり、これらについて更に慎重に検討を深める必要がある。

    (5) 他方で、政府においては、新しい独立行政法人の在り方についての検討が進められているところであり、消費者庁から独立した法人格として国民生活センターを位置付ける方策についても検討し、タスクフォースの中間整理の案等も含め、消費者・消費者団体、事業者等の関係者・有識者も加わった公開の場での審議を深めた上で最終的な判断を行うことが望ましい。
      なお、一般に、組織の在り方の見直しを行うに当たっては、当該組織のそれまでの成果等について、経済性、効率性のみならず有効性の観点から検証する必要があるとされており、その検証に当たっては、専門性、客観性及び信頼性を有する識者を集めて行う必要があるとされているが、国民生活センターについては、そのような検証がまだ十分になされていない。したがって、速やかに国民生活センターの成果等についての検証にも着手すべきである。
      また、組織の在り方の検討とは別に、タスクフォースや本報告書において国民生活センターの運営方法について改善すべきであると指摘された点や、消費者庁において諸課題が山積している点等を踏まえ、同センターの運営方法の抜本的見直し、両者の連携体制の強化策等について、速やかに検討を進める必要がある。

以上