消費者安全法に基づく国会報告について今後重視されるべき基本的視点

2010年6月25日
消費者委員会

 消費者安全法13条は、消費者事故等に関する情報の集約及び分析を行い、その結果をとりまとめて、国会及び消費者委員会に報告し、関係行政機関、地方公共団体及び国民生活センターに提供し、事業者及び国民等に広く公表することを求めています。このような制度の目的は、「消費者事故等に関する情報が消費者安全の確保を図るため有効に活用されるよう」にするためにあります。
 消費者委員会としては、収集された事故情報が消費者のみならず事業者、地方公共団体等に幅広く、積極的に活用され、社会全体で消費者事故の未然・拡大防止に寄与するものとなるよう、同法に基づく国会報告について、今後重視されるべき3つの基本的視点を提示します。

(1)情報の一元化と社会的共有化

 消費者庁の消費者事故情報の収集は、消費者安全法に基づく通知、消費生活用製品安全法に基づく報告、全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO―NET)、危害情報システム、事故情報データバンクへの書き込みなど様々なルートがあります。しかし、これらの情報について、根拠法律や情報システム、受付窓口ごとに個別の集計法がとられ、整合性があるものとなっていません。
 たとえば、消費者安全法に基づく「重大事故」と消費生活用製品安全法に基づく「重大製品事故」では、重複する部分が多いのが実態ですが、根拠法の違いから、それぞれ区別して集計されています。分かりやすい報告にするためには重複する事故情報を整理して、報告内容を「一元化」することが必要です。誰が見ても理解できるよう、集計自体を整合化することが検討課題にされるべきです。
 なお、事故情報データバンクは、平成22年4月1日から本格稼働したもので、事故情報の一元化へ向けた新システムですが、現在はまだ事故情報の行政間の共有化の域から抜け出ていません。今後、消費者・事業者が登録情報を迅速的確に活用できる「社会的共有化」が求められます。そのためには、参画する機関の拡大、消費者からの情報アクセスのしやすさの向上も重要な課題です。

(2)分かりやすく使いやすい分類

 消費者庁には、様々なルートを通して、幅広い大量の消費者事故情報が日々寄せられています。これら収集された情報は国民に理解できるよう、分かりやすく分類され、報告・公表されることが必要です。
 そのためには、商品・施設・役務(サービス)などの項目設定も生活実態に合わせた内容とし、用語や事故の分類も統一・整合化することが求められます。消費者事故の内容が誰にでも具体的にイメージできるような報告・公表が求められます。

(3)原因究明結果と事故防止のための対応措置についての情報提供

 報告・公表にあたって重要な視点の1つは、集約した事故情報の分析・原因究明結果とその対応措置についての情報提供のあり方です。事故内容の統計分類だけでは、事故情報の積極的活用として不十分です。少なくとも、重大事故については、事故防止のための対応措置とその理由をていねいかつ明確に報告書に盛り込むことが必要です。誰もが理解し、事故防止に役立てることのできる報告とするには、「事故の発生状況」、「被害内容」、「事故原因」、「対応策」等が区別して明確に報告されていることが必要です。
 また、事故を教訓として、未然防止と今後の拡大防止へ向けた体制を整備していくには、対応措置の成果と今後の課題についても、きちんと報告・公表することが求められます。
なお、消費者安全法に基づいて収集された「重大事故」に関する情報のうち、「相談者非公表希望」の扱いについては、「事故情報は国民の共有財産」という観点から、「重大事故」であるのに全面非公表としてしまうことのないよう取扱いの工夫をすることが必要です。

 消費者委員会としては、今後、消費者基本計画の「検証・評価・監視」に際して、以上の視点を重視して取り組みます。