地方消費者行政の充実強化に向けて

2009年12月14日
消費者委員会

地方消費者行政の充実強化の基本的視点

 明治以来の産業育成を中心課題とした行政の施策を、消費者重視に転換するという大きな変化の流れの中で、本年9月、国においては消費者庁、消費者委員会という新しい組織が生まれ、消費者行政一元化による消費者行政の強化が図られつつある。しかしながら、国全体として消費者行政の強化を実現するには、全国各地の現場において、消費者に密接な「安全」「取引」「表示」の分野等において十分な施策が講じられる必要がある。
 その際、地方分権の強化・拡大によって住民の生活に密着した行政の充実を図り、地域の問題解決能力を高めることが重要である。そのために地方消費者行政の充実強化は極めて切実な緊急の課題である。
 消費者庁においては、今後3年間(平成21、22、23年度)を中心とする地方消費者行政強化プランが策定されようとしている。また、平成20年度、21年度に措置された地方消費者行政活性化基金は、向こう3年間を集中育成・強化期間と位置付け、当面のインフラ整備に主眼を置いたものであり、4年目以降を見通した施策のあり方については示されていない。
 消費者委員会は平成24年度以降の地方消費者行政の充実強化がどのようになされるべきかを平成22年度末を目途に提言し、その実現を図る。その際、消費者委員会は、地方の実態把握をしながら、地方自治の本旨を尊重しつつ、消費者行政における国と地方の役割分担のあり方を整理した上で、消費者目線から提言する。
 以下、その提言に盛り込まれるべき論点を次のとおり提示する。

検討されるべき論点

1.消費者行政における国と地方の役割分担のあり方

(1)地方の消費者行政に対して国はどのように関与することが適切か(地方自治、地方分権と消費者行政)。
(2)地方消費者行政を支える財政基盤はどうあるべきか。
  ・これまでの国会審議の経過を踏まえ、考え方を整理すべきではないか(地方財政法の改正の議論を含む。)。
  ・地方消費者行政活性化基金の期限後である平成24年度以降の財政支援はどうあるべきか。

2.国と地方のネットワークのあり方

(1)消費生活センター・消費生活相談窓口の整備をどのように進めるか。
  ・市町村がそれぞれに対応するのか、広域対応とするのか。
  ・消費生活センター、相談窓口の設置基準(最低水準のガイドライン)を設けることの是非、設けるとしたらどのようなものか。
(2)地方自治体相互のネットワーク(隣接県のブロック、県と市町村、近隣市町村相互間)をどのようにしたらよいか。
(3)国民生活センターはネットワークの機能向上にどのような役割を果たすべきか。

3.消費生活相談員制度及び相談員への支援のあり方

(1)国や地方自治体による相談員、相談体制への支援はどうあるべきか(特に情報提供、研修、専門家による支援、相談員の資格などのあり方)。
(2)相談員の処遇は、多様な選択肢の提示を含め、どのように改善したらよいか。
(3)国民生活センターによる相談員の教育・研修・支援はどうあるべきか。

4.情報(相談情報・事故情報を含む。)の収集・分析及び情報提供のあり方

(1)情報の収集体制をどのように充実させるか(PIO-NETなどの設置・活用のあり方を含む。)。
(2)情報の適切な分析のシステムはどうあるべきか。
(3)収集・分析された情報を消費者に迅速・適切に提供するためにどうすべきか。

5.商品テストの位置づけ・各機関のあり方

(1)商品テストにはどのような機能が求められるか(商品比較テスト、原因究明テスト、自主テスト等)。
(2)地方消費者行政施策の中にテスト機能をどう位置づけるのか。
(3)国民生活センターや製品評価技術基盤機構(NITE)などのテスト機能をどう活用するか。
(4)テスト機関相互の連携・役割分担をどう考えるか。

6.地方自治体による法執行のあり方

(1)国による法執行と地方自治体による法執行、条例との関係をどのように組み立てるか。(地方自治との関係を含め整理)
(2)特定商取引法や景品表示法等を都道府県あるいは連携して適切・迅速に執行していくためにどのような体制づくりが必要か。
(3)国の機関との連携・協力体制はどうあるべきか。
(4)法執行関連の研修の充実をどう図るか。

7.行政と消費者、事業者などの協働及び消費者の声を政策決定などに反映させるシステム構築のあり方

(1)地方自治体と消費者団体、事業者団体及び各種専門家・研究機関との連携協力体制をどう構築するか。
(2)地方自治体と消費者被害の情報収集、啓発などを行う消費者団体との連携や、地方自治体による支援をどう進めるか。
(3)消費者及び高齢者、障害者、子どもなど社会的弱者の声を地方自治体の消費者行政に反映させるシステムをどうするか。
(4)地方消費者行政の基盤として消費者の自立を支援するための消費者教育、啓発をどう進めるか。

8.地方消費者行政の充実強化に向けた組織体制と人材育成のあり方

(1)地方の消費者行政を推進する体制をどのように組織するか。
(2)消費者行政に携わる行政官の人材育成及び意欲喚起をどうするか。