「消費者問題シンポジウム in 小田原」を開催しました

「消費者問題シンポジウム」とは

消費者委員会の委員が地方に出向き、消費者、関係各団体のみなさまの声に直接真摯に耳を傾け、問題の解決に効果的に取り組むため、地方の関係団体や自治体などと連携し、意見交換等を開催するものです。

小田原での会合の様子を紹介します。

「消費者問題シンポジウムin小田原」は消費者委員会とNPO法人消費者支援かながわ、NPO法人神奈川県消費者の会連絡会が主催し、「消費者被害と消費者行政の在り方」をテーマに平成27年12月12日(土)、おだわら市民交流センターUMECOで開催しました。

会場の様子
(会場の様子)

当日は、神奈川県、小田原市をはじめ近隣の市町の消費者行政担当者や相談員のほか、消費者団体、弁護士、司法書士、事業者、一般消費者など約100名の参加がありました。

開会挨拶を行う上村副理事長
(開会挨拶を行う上村副理事長)

冒頭、NPO法人消費者支援かながわの上村副理事長より、「師走のお忙しい中、シンポジウムにお越しいただきまことにありがとうございます。

神奈川には政令市が3つあり、小田原市は特例市となっております。特例市とは法定人口が20万人以上で、その地域における標準的な、一般的な街を体現しているところを国が特例市として指定するものです。いろいろなイベントなどがあると、そこをモデル市として使ってやっていくということです。神奈川ですと小田原以外には平塚、厚木、茅ヶ崎などがあります。小田原は、都市と地方が一緒になって混在している、すごくバランスがいい街だと思います。

かれこれ3年ほど前、消費者支援かながわの前身の団体、消費者会議かながわで、神奈川の消費者行政を良くするという活動をやっており、そこでこの小田原の地で消費者行政に関するシンポジウムを開催しております。その時に、私も終わりの挨拶でお話をさせていただきました。また今回、同じ小田原の地で、消費者行政に目を向けたシンポジウムを開催する、こうしてまた皆様の前でご挨拶をさせていただけるのは、非常に感慨深いものがあります。

本シンポジウムは消費者行政を中心にお話をされると思います。我々、消費者支援かながわも、神奈川の消費者の皆様、それからひいては国民の皆様に正しい消費者行政、消費者に目を向けた活動をやっていけるように頑張っていきたいと思います。全国に適格消費者団体という悪質な事業者に対して差し止めの請求ができる団体が13あります。我々は、その14番目になれるよう鋭意努力しているところです。またそれについても皆様のご協力をいただければと思います。」との開会挨拶がありました。

基調講演を行う河上委員長
(基調講演を行う河上委員長)

シンポジウムは消費者委員会の河上委員長による基調講演「消費者委員会の活動と消費者行政の在り方」で始まりました。

まず、消費者委員会の活動について説明しました。「消費者委員会は内閣府にあることはご存知だと思いますが、どういう組織か知っている方は意外に少ないと思います。消費者委員会とは、独立した第三者機関として、消費者問題について自ら調査・審議を行い、消費者庁を含む関係省庁の消費者行政全般に対して意見表明、建議などを行い、また、内閣総理大臣、関係各大臣又は消費者庁長官の諮問に応じて調査・審議をしております。

消費者委員会は消費者庁、国民生活センターとは区別された、内閣総理大臣の下にぶらさがった独立した第三者機関です。消費者庁に建議をする、あるいは関係省庁に自由に問題提起をして意見を述べていくという役割を果たしています。国民生活センターのように、国民に向かって、こんな注意をしましょうという機会は少ないので、意外に目につかないかもしれません。内閣府の中にあって、それぞれの機関がやっている行為に対して監視機能を果たしています。監視機能の他には、諮問に応じて調査・審議をする審議会としての機能、審議会機能や国民の声を届けるパイプ機能があります。ほんとに大事なところは、むしろ消費者の目線で現在の国の消費者政策がうまくいっているか監視するということです。行政監視機能、審議会機能、国民とのパイプ機能、この3つの機能を持って活動しているということです。」と述べました。その他、これまでの建議や意見などの紹介や、消費者委員会の審議体制、食品表示部会などの下部組織について説明しました。

次いで、本日の本題、消費者行政の在り方について、そのテーマの選定について述べました。

「このテーマでシンポジウムをやるのは今回が初めてです。今回は視線を行政に向けて、行政というのが、消費者問題に対してどういうスタンスで臨むべきかという議論を皆さんと一緒に考えてみたいと思います。それはとりもなおさず消費者一人一人が行政にどういう形で参加していくかという問題でもあります。

消費者市民社会とよく言われますが、消費者が今までのように守られ、受け身で何かをするのではなく、社会の在り方、市場の在り方、そして行政の在り方に対して自分の意見を発信して行政を、社会を少しでも良くしていくという姿勢を市民として消費者が持ってほしい、そういうメッセージなんだろうと私は思います。そういう意味でも消費者行政というところに焦点を合わせて、少しお話させていただきたいということです。」

最初に消費者行政における国と自治体の役割について説明しました。

「首長さんの意識というのは産業振興の方には目が行くが、消費者被害をどう食い止めるかには目が行きにくいのです。プラスになって利益があがるというのはよく見えやすいが、被害を食い止めるということは、どうも見えにくいということがあります。しかし、消費者庁が試算した結果によると、消費者被害は毎年約6兆円発生しています。この額が健全な市場に還流されれば、どれだけ市場が活性化されるかを考えれば産業振興だけが市場の問題ではないとすぐ分かるはずです。ソウルの市長が『消費者政策にかける投資は、最も投資効率が良い投資だ』と演説でおっしゃっていました。首長さんには是非、消費者政策にお金を使ってほしい。頑張ってやっていただければと思います。

消費者安全法ができ、全国に消費生活センターができました。窓口は設置されました。しかしそこに消費生活相談員が配置されていない地方がたくさんあります。消費者問題に対する取り組みも地方で相当な温度差があります。まだまだ育てないといけません。今、育ちつつある消費者行政の末端な部分にもきちんとした支援が必要です。

他方で消費者問題は非常に広域化していることがあります。例えば、神奈川だけである種の問題が起きているというわけではなく、いろんな地域で同じような問題が起きています。違法な勧誘行為をやっている連中は、県境は関係ないのです。そういう時に県だけで物事が片付くものではありません。その意味では国が広域連携の要になっていろんな調整作業をする必要があります。」

次いで、連携の必要性について、次のようにのべました。

「問題は、国あるいは地方自治体の人的、物的支援に限界があることです。これが新たな官民連携の在り方の問題に取り組もうとしたきかっけです。国や地方自治体の消費者行政職員を総動員してもできることには限界があります。民間の補完が必要になってきます。官民連携による制度的補完による公益目的のより良い実現。その意味では、あるべき官民連携を求めていく必要があります。つまり『公助』、公によって救うもの、それから皆がお互いに助け合う『共助』の部分、そして自分自身が自ら救う『自助』の部分、これをうまく組み合わせていかなければなりません。これは単に行政をスリム化し、効率化して財政上の負担軽減を目指すというだけの民営化ではなく、きちんとした理念と方法論を持った官民連携でなくてはいけません。

官民連携だけではなく、行政の中の縦割りを崩していって、官官連携も大事です。社会福祉の領域の方は、当然高齢者問題の専門家です。消費者問題として高齢者が騙されている時は、福祉のネットワークを重ね合わせていく必要があります。消費者教育をみても、相談員がいろんなとこで、啓発のお話しをしてもなかなかうまくいかないことがあります。学校がのりだして卒業するまでに一定の消費者力を身につけさせるということに参加する。官官がうまく連携していく必要があるというわけです。ややもすると、官官連携は無責任な丸投げや、連携だけが合言葉になって形ばかりの定期的な協議をして終わってしまうことがあります。それではだめで、そこには哲学がなければいけません。きちんとした制度的補完をやりながら公益目的を皆で達成していくという姿勢が必要だということです。」

次いで、具体的な問題について説明しました。

「具体的に問題として、一つはセンターなどの消費者相談の在り方があります。消費生活相談員は消費者の味方、代弁者ではありません。これをよく、皆さん間違えられます。相談員はある種の専門知識を持ち、事業者とそして消費者のそれぞれの言い分を聞いて、何が公正な問題の解決の在り方かを考えながら相談に応じているわけです。もちろん消費者目線を持っていることは確かですが、消費者の味方だと思ってはいけません。そこはやはり行政としての中立的立場で相談に応じています。その相談員の立場について、必ずしもきちんと理解していただけない。事業者は事業者でおまえら行政のくせに消費者の味方ばかりするのかと怒る。消費者にも怒られる。相談員は間にたって、大変な思いをするわけです。またそれ以上に、相談員の身分は安定していないということもあります。相談員になっている人は、正義感だけでなんとか持ちこたえているということがあります。

また、複雑化、専門化する消費者相談に対して相談員は日々勉強しないといけないと頑張っています。相談員の方に、気休めではないですが、来所者の相談にのっている時、消費者教育の最大のチャンスだと思ったほうがいいと思います。消費者はどうあるべきか、相談にのりながら消費者教育をやっていく、消費者教育実践の最大の機会だととらえてもらえると有難いと思います。

センターには組織として消費生活相談員と市の職員がいます。上司として市の職員がいます。市の職員がきちんとした消費者マインドを持って相談員の活動を支えるということがないといけません。市は事業者の不正な行為を正すという職務を持っています。行政職員の消費者マインドというのはとても大事です。相談員と職員の連携、良好な関係をつくる。これがセンターの活動の基本になるのだろうという気がします。

さらに消費者市民としての立場、市場を監視する、賢明な市民としての選択的行動をとるのも大事になってくるわけです。今まではセンターに苦情を持ち込んで、なんとか解決して下さいという受け身の立場でしかなかった消費者が、そうではなくて、自ら選択することによって悪い事業者を市場から淘汰していくんだ、そういう力があるんだということを知っていく必要があります。逆に消費者自身も自らの権利、義務をきちんと理解することが必要です。資料に『わがままなだけの消費者』と『身勝手な悪徳事業者』は同類!と書きました。消費者もやはり安全、安心、公正な市場を形成するためのファクターだということです。その意味では事業者、消費者、行政の全ての力をもって、いい市場をつくるということが必要です。」

次いでこれからの消費者行政について述べました。

「これからの消費者行政は、どうあるべきか。なかなか難しい問題で簡単に答えは出せませんが、少なくとも『自助』、『共助』、『公助』の3つを適切に組み合わせてお互いに取り組んでいく必要があると思います。そして、その時の鍵はやはり情報になります。質の高い良い情報を共有すること、その情報を管理していくことが大事なポイントとなります。

さらに消費者の主体的参加が新たな官民連携の鍵だとすると、消費者団体の自主性を育てるのも大事です。上からこういうことをやれということではなくて、消費者団体自身がいったい、自分たちは何をして消費生活を良くしていこうかということを自主的に考える。そういう自主性を育てるのが大事です。適格消費者団体を目指して、消費者支援かながわが頑張っているということですが、ややもすれば、箸の上げ下げまでガイドラインをつくって要求する。そうではなくて、むしろ消費者のためにその団体がどれくらい自主的に活動しているか評価して、これを育てるという姿勢をもたないとだめです。消費者の立場を考慮した、専門化集団の目利き機能を十分に発揮していただくことこそが大事です。専門家集団というと、弁護士さん、司法書士さんが頭にぽっと浮かんできますが、それだけではありません。八百屋のオヤジは八百屋の専門家なんです。それぞれの消費者が自らの専門知識を活かして、これは市場においては許されないことだと見つけてはそれを集めて行政に声をかけていくということは必要なんだろうと思います。

消費者団体も高齢化していると言われますが、こういう消費者問題について一緒に皆で勉強して考えて行動していく機会を持つことで、消費者市民が育つだろうと思います。啓発講座をすれば育つというものではなく、自ら考えるもの、選択行動をとる中で育つものだと思います。どうせ育てるならそういう主体的な消費者を育てていく必要があります。

消費者相談も行政職員の質の向上のために、学習を積み重ねて訓練しないといけませんが、とくにコーディネーターとしての力を養う必要があるんだろうと思います。いろんな協議会がたくさんできています。消費者安全法や消費者教育推進法でも協議会ができています。しかし考えてみると消費者問題をやっている人はそんなにいません。どこにいっても同じような人がでてくるわけです。それは効率的なことではないので、むしろ中核になる人たちを、足したり引いたりしながらその目的にあった場をつくって、そしてそこで自由に意見交換できる、情報交換ができる場を設定することが行政にとって一番大事なことなのだろうと思います。」

最後に、本日の小田原のシンポジウムから発信していただきたいことについて、「今回、開催地としてなぜ小田原を選んだか、よく聞かれますが、好きだからです。小田原から全国に向けて消費者政策はかくあるべしと理念を是非発信していただきたい。神奈川県は都会と地方とが共存している、いわば日本の縮図だと思います。そして問題も同じようにあると思います。小田原から、特に四つを発信できればと思います。一つ、悪質事業者から消費者の権益を守り抜く消費者相談員と、それを支え抜く行政を確立する。二つ、官民連携でもって、高齢消費者あるいは児童消費者、情報アプローチだけでは救済できない人たち、そういう消費者を見守る体制を構築する地方消費者行政をやっていただきたい。三つ、事業者の方々に向けてですが、賢明な消費者から支持される事業活動を応援するという意味で、行政は応援する。最後に、市場と環境を考えるような消費者市民を育成するために消費者教育に力をつくしていただきたい。

行政に対する総務省のアンケート結果、最も国や地方自治体に力を入れて欲しい消費者問題の分野はというものでは、生命・身体の安全の確保はもちろんですが、自主的・合理的な選択を確保するための商品・サービスの表示の充実と信頼の確保を図ることがあげられています。やはり情報ですよね。この辺もご覧になりながら今日のシンポジウムの意味を考えて頂ければありがたいと思います。」と述べ、次の報告者である武井弁護士につなぎました。

報告を行う武井弁護士
(報告を行う武井弁護士)

武井弁護士は、「神奈川における消費者被害救済・予防から弁護士・弁護士会の活動と適格消費者団体を目指す活動」と題する報告を行いました。

「私は横浜弁護士会に所属する弁護士でして、1981年から弁護士をしております。81年くらいまでは消費者問題というとサラ金問題ぐらいしか取り組んでなかったと思いますが82年からは様々な消費者問題があり、以来30数年間、消費者問題に取り組んでいます。

神奈川というのは、消費者問題に弁護士あるいは弁護士会は力を入れて取り組んできているところです。例えば先物取引は1982年から、83年からは証券取引、集団事件でも、投資ジャーナルや豊田商事事件などで全国の中心的役割を果たしてきました。変額保険については、小田原など県西地域の被害が多くありました。銀行から土地を担保にお金を借りて、変額保険を払うというものですが、土地が値下がりし、株も値下がりし、金利は下がらないということでだいぶ大きな被害が出ました。これは東京では当初なかなか勝てずに苦労していたものでしたが、神奈川では横浜地裁で訴訟をし、10件あって9勝1敗、40数件、高裁も含めて全部和解で解決し、全国的にも群を抜く成果もあげたと思います。

他にはココ山岡事件があります。ココ山岡の本店が県内の横浜にあり、県や市など行政と協力して、横浜弁護士会で対応しました。関内ホールに2500人が集まり、3回説明会をやりました。他の各地の弁護団と協力し、当初はいかにクレジット会社からの請求を減らせるかを主眼にしてやっていましたが、最終的にはお金が一部戻ってくるというとこまでいきました。その他にも、呉服・光ファイバー等各種クレジット・リース事件、八葉物流、美白化粧品の白斑被害、あるいは茶のしずくの健康被害などを取り扱ってきています。

現在の被害救済の体制について、簡単にご説明します。弁護士会と任意団体で体制をとってやっています。一つは横浜弁護士会、相談者は無料です。弱点としては横浜の関内に一か所しかないことです。無料相談を第2、第4火曜と毎週金曜日やっています。よくない特徴ですが、受任が少ないことがあります。280件の相談がきて、受任は22件です。理由として、相談は無料だからちょっと聞いてみようかなときた方がいることと、専門的相談を期待して来たがそうではなかったということもあります。私は最近4件やって、担当したものは全部解決しています。先物の被害やマンション投資被害、サクラサイトの被害、銀行口座のなりすまし被害などです。ただ私が担当したのは、一年半か二年に1回ほどです。弁護士会の相談は、弁護士の日当を弁護士会の会費で出しています。そのため、一部の弁護士に担当が偏るとまずい、公平に相談をまわさないといけないという会の考えもありまして、必ずしも消費者問題専門の人が担当するわけではないということです。私が弁護士になった頃は、神奈川で500人いるかいないかでしたが、現在では1500人ほどの弁護士がいます。消費者問題専門の相談を無料で受けられる体制をなかなかつくりきれてないということです。他には、行政の消費生活相談もあります。これは県や市からお金を頂いているものです。ただ、これは消費者からの直接相談ではありません。消費生活相談員からの相談を受けるものです。消費者が直接、弁護士に相談できる体制を行政でも考えて頂くとよいと思います。

弁護士会では機動的に動けないものは任意団体として活動しているものもあります。金融商品取引被害研究会は、投資被害全般を担当します。毎年数十件単位で相談があります。最近、悪質投資詐欺がますます悪質化しており、被害の回復が非常に難しくなっています。最初から詐欺で、計画的に逃げるつもりでやっていたりして被害救済に応じないという事業者も増えてきており、困難を抱えています。消費生活センターも前は相談を沢山まわしてきましたが、最近は、まわしてもうまくいかないということで悪質投資詐欺については件数が減少しています。

あとは、悪質サイト被害対策弁護団があります。私が団長をしています。これは受任率が高く、過半数受任しています。原則受任ということでやっております。以前はほぼ100%被害を回復するのがスタンダードだったのが、最近は、サイトやサーバーが海外であることや、さらには、もっと困るのがアマゾンギフトなどあり、回収が非常に困難です。相談員の方は、本当にアマゾンギフトに困っていると思います。番号があるだけで、誰が使ったかもアマゾンは教えてくれない。詐欺師に便利な道具を与えてしまった格好です。ただし、私ども、なんとかしなきゃいかんだろうと、団員が報酬から弁護団財政を拠出していますが、それを活用して、例えば全国的な弁護士の集まりであるサクラサイト被害への協議会の参加を補助したり、コンビニ収納代行訴訟などの援助をしたり、あるいはアマゾンギフト問題、これは喫緊の課題だと思い、お客様からお金をもらえなくても取り組もうとやっております。

それから、神奈川消費者問題研究会があります。この団体では消費者被害、金融と悪質サイト以外全般をやっています。まだ実績があまりなく、数も多くありませんが、実は今、エフォートカンパニーという学習教材、モニター商法などを扱っている会社の県内での被害が広がってきています。今の段階でも数十件から百件ほどの被害が見込まれます。これに消費者問題研究会が母体となって弁護団をつくり取り組んでいます。まだお知らせがいっていないと思いますが、弁護団は一昨日にできました。この、神奈川消費者問題研究会がいわば消費者問題全般の受け皿として頑張るという体制になっています。この団体は消費者支援かながわを設立する推進力の一つともなっています。消費者支援かながわの正会員の一つで、また検討委員会の事前の下検討も行っています。

弁護士会、あるいは弁護士でこういった活動をしています。しかし、これまで被害があるものの救済をやってきましたが、予防という意味で、やはり差し止め請求をやっていこうという活動が弱かったと思います。神奈川県には、適格消費者団体がないと驚かれます。埼玉にあるのに、なぜ神奈川にないのかとよく言われていました。なかなか手が付けられませんでしたが、平成18年に消費者団体訴訟制度ができ、やはり作っていかないといけないと思い、去年の12月に設立総会を開催し、4月1日に法人設立登記をし、活動を開始しています。設立が認められ、法人登記を記念して板東消費者庁長官にもご出席いただき、記念シンポジウムを開催しました。これを出発点として取り組んでおります。また、申し入れ活動も始めました。11月には、ある大手の会社に申し入れもしました。2点申し入れをしている中で、1点については是正を認め、真摯に対応するという回答がありました。それに対して再度の検討申し入れの検討をしている段階です。

アンケート活動もやっています。今日のお手元の資料の中にアンケートが入っています。是非お気づきの点があればアンケートをお願いします。ホームページでもやっております。消費者支援かながわは、なんでも110番を開催します。皆さんの周りの方にも、お伝えいただければと思います。

その他2カ月に1回の理事会のほか、毎月検討委員会をしています。消費者問題全体に対して啓蒙活動や学習活動などをしていきたいと思います。ホームページも開設しております。会員も鋭意募集中であります。適格消費者団体にできるだけ早期になれるよう頑張っています。どうか皆さんご支援のほどお願いします。」と述べて、報告を終えました。

休憩後、「官民連携に向けて~消費者被害から消費者を守るための体制づくりについて~」というテーマのもと、パネルディスカッションが行われました。パネリストは消費者庁総務課の阪口課長補佐、神奈川県県民局くらし県民部の渡邉部長、かながわ中央消費生活センターの大岡消費生活相談員、NPO法人神奈川県消費者の会連絡会の今井代表理事、武井弁護士、コーディネーターは消費者委員会の河上委員長が務めました。

コーディネーターの河上委員長、パネリストの阪口課長補佐、パネリストの渡邉部長、パネリストの大岡消費生活相談員、パネリストの今井代表理事、パネリストの武井弁護士
(コーディネーターの河上委員長、パネリストの阪口課長補佐、パネリストの渡邉部長、
パネリストの大岡消費生活相談員、パネリストの今井代表理事、パネリストの武井弁護士)

冒頭、報告を行った武井弁護士を除く各パネリストよりご発言を頂戴しました。NPO法人神奈川県消費者の会連絡会の今井代表理事から身近な消費者被害と団体の取組みの状況、また、県への要望について、かながわ中央消費生活センターの大岡消費生活相談員から消費生活センターの概要と消費者被害相談の状況について、神奈川県県民局くらし県民部の渡邉部長から県の消費者行政の概要と今後の方向性について、消費者庁総務課の阪口課長補佐から消費者庁の役割、消費者被害防止に向けた国の取組みについて、説明がありました。パネリストの発言を受けたのち、討論を行いました。

「まず、武井さんにお伺いしますが、神奈川県では、投資ジャーナル、豊田商事事件、ココ山岡事件など全国的に大きな事件を取り扱われ、成果を出しておられる。これは何か神奈川特有のものがあるのでしょうか。また、県との連携に壁はなかったのでしょうか。」

「これは地理的なものというより、神奈川の弁護士は個々バラバラに取り組むのではなく、早い時期から弁護士がまとまって取り組んできたことが成果につながったのではないか、また、行政や県警との連携もとれているのが良い結果となったと考えています。もちろん、神奈川県行政の壁が低いということではないのですが、問題が多発、相談が多数きた時に行政は弁護士会に協力を求めてくる傾向があります。むしろ、そうしたことがなければ、なかなか情報は渡してくれません。弁護士会としては、日常的に連携がとれればと考えていますが難しいようです。また、県は行政も予算が厳しい中で、消費者団体等への支援をしてきています。首長さんのやる気によっては、消費者行政予算が増えることもありました。県の担当の方にも頑張って予算を確保していただきたいと考えています。」

「次に、今井さんには、これまでの消費者団体活動の中で感じられた、行政と団体の立ち位置、関係性について、また、行政へのご要望などについて、ご発言願います。」

「県との意見交換の場もありますが、なかなか消費者団体からの要望が通ることはありません。例えば、商品テスト施設の復活を要望してきました。こうした施設は、商品に関するトラブル解決に役立つばかりでなく、消費者を育てる、といった観点からも必要なのですが、実現できていません。過去にテスト室があったことで、私たちの団体が商品偽装を見抜けたという実績もあるように、役立つ施設なので、市町村レベルで持つことは難しいため、県に強く商品テスト室の復活をお願いしているところです。」

「次に生活相談の現場の問題、課題について、大岡さんにお伺いします。」

「消費生活相談の対象、内容は幅広く、日々の情報収集、研鑽が欠かせません。当窓口では絶え間なく入る相談対応に追われている状況です。必要な案件には極力あっせんを行うよう務めておりますが、あっせん件数が多ければ解決のためにそれだけ多くの時間を必要とし、日常業務のバランスに影響を及ぼすジレンマがあります。そうした中で法改正や新たな詐欺的消費者被害が発生しますので、新しい課題に関する日々の勉強も不可欠です。研修は時間内ばかりでなく時間外もあり、物理的な問題もあって、研修に参加することができない相談員もいます。また、社会の変化に伴い最近の相談現場では、契約内容を把握できないケースが出はじめています。従来の紙の契約書ではなく、契約内容をタブレットに保存しているとして、事業者が当事者へ契約書面を手交していないケースがあり、相談に当たり必要な書類を確認できない事例が散見されます。相談者へは、予約して来訪いただく際は、関係書類や契約の経緯を記したメモをお持ちいただくようにご案内していますが、準備不足も見受けられます。ご高齢者の場合、契約書が手元にない上に、契約先の事業者名を失念されていると、処理が難しいのが実情です。」

「次に、消費生活相談員と行政職員との関係性、また、消費生活相談と市民相談が一体となって行われている場合、市民相談は職員の方が行っている場合が多いのでしょうが、こうした場合の体制としての問題はありませんか。」

「行政職員が他の課との兼務をされている場合など、例えば商工課などの名称の課では地域活性のためのイベント等を通して、地域の業者とのつながりを持っていらっしゃる場合は、消費者トラブルの問題と重なるときはやりにくいケースもあるとお伺いしています。しかし、消費生活課の場合では、そうした矛盾はありません。行政職員の方は2から3年で異動となりますので、消費生活行政の経験がない方が異動されてきますが、非常勤である消費生活相談員との関係性は明確です。消費生活相談については相談員から行政職員の方にアドバイスをすることはありますが、最終的な判断は行政職員の方が行い、相談員は指示に従います。消費生活相談員の待遇は十分とは言えない状況ですが、やりがいのある業務だと感じています。ただ、雇用は非常勤ということもあり、若い有能な方の応募は期待できない状況にあります。今後、待遇等の一層の改善をお願いしたいところです。」

「これまでのご意見の中で、県に対する多くの要望が出てまいりましたが、渡邉さんにはその辺りを伺います。また、神奈川県は大都市と地方都市が混在しており、消費者行政に対して市町村間で温度差があるという特徴を持っています。県の基本計画の重点施策の1つに『県内の消費生活相談体制は、さまざまな市町村の実情を踏まえた支援を行っていく』ことが挙げられています。そのポイントについてお話ください。」

「まず、県への要望についてお答えします。武井さんからありました行政との連携の課題ですが、弁護団を組んで行政と一緒に解決に向かう、これが連携の形だと思われますが、その中で情報の問題があります。情報共有に関する連携ということを、行政の側としても留意して行っていきたいと考えています。次に、予算の関連ですが、これは県及び市町村の立場からは、国の活性化基金及び交付金、これが非常に有効な役割を担っています。国には助成の縛りの要件緩和を要望したいと考えています。次に、今井さんからのご要望ですが、県は現在、商品テスト室につきましては、委託という方式で商品テストを行っています。例えば、エコキュート、柔軟剤やフッ素コーティングについて商品テストを独自に行いました。エコキュートでは新聞、柔軟剤については週刊誌などに取り上げられたこともあり、できる限り行っているところです。次に大岡さんからのお話ですが、私も消費者行政の担当をこの春まで行っておりましたので、相談員のご苦労は目のあたりにしてきました。業務上の条件面では今後もできる限りのことをしてまいりたいと考えています。町村の相談体制については様々な状況にあり、他の市のセンターに委託しているところもあります。そうした点で温度差があることは意識しています。県としての支援につきましては、例えば相談員の少ないところには、県の相談員が出向いて助言する、また、相談体制についての会議を月1回開催するなど情報の提供を行っているところです。」

「消費者庁の立場から県の抱えるこうした市町村間の温度差を解消することも含めて、今後どのような消費者施策を考えていますか。」

「消費者行政は、法的枠組みは自治事務なのですが、全国の格差を放置すればその濃淡は消えないことから、一定期間、市町村間の濃淡の解消も含め、地方の消費生活相談業務を推進する目的で地方消費者行政推進交付金などを提供してきたところです。交付金は、平成27年度予算は30億円、27年度補正で20億円を要求しているところで、27年度全体で50億円の規模になればと期待しています。また、高齢者の消費者被害トラブルに関しましては、高齢化率を上回る率で上昇しています。こうした高齢者の被害を防ぐためには、現状の広報のみでは足らないということで、一歩踏み込んだ高齢者の見守りを目的に、消費者安全地域協議会、見守りネットワークの設置を来年の4月以降地方にお願いしているところです。この協議会のメリットは、個人情報などの機微情報の共有を可能とする点です。既に存在する他分野の協議会でご活躍いただいている方からは「新たな協議会の設置はこれ以上無理だ。」とのご指摘もありますが、この協議会は必ずしも新しく設置していただく必要はなく、既存の協議会に地域の実情に合わせて「見守り」に関する機能を付加することにより、個人情報を共有できるメリットがありますので、前向きに考えていただきたい。」

「パネリストのお話が一巡しましたので、ここからは将来に向けての『抱負』、『夢』について皆さんにお伺いします。先ほど来高齢者の見守りネットワークについて、実際に消費者団体としてネットワークを構築し、活動していらっしゃる立場から、まず、今井さんはどのように考えられているか、また、活動の中でのご自身の『夢』がありましたらその点をお伺いします。」

「消費者団体の活動をなさっている方には、地域の民生委員を務められている方も多く、民生委員として中には一人でご高齢者を10人も20人も面倒を見ている方もいらっしゃいますが、毎日訪問できるわけではなく、月に1度か2度の訪問です。そうした中で消費者被害を未然に防止できるかというと、これは難しい状況にあります。ただ、消費者団体が高齢化し、問題だ、と言われることがありますが、個人的には問題視していません。と言いますのは、高齢者の見守りには、高齢者でなければ気づかいない点が沢山あるからです。例えば、高齢者の方の気持ちの問題ですとか、段差の問題などは高齢にならなければ気が付かない点があります。そういった意味で、消費者団体が高齢化しても消費者のために役立つことは沢山ある訳で、今後とも頑張っていこうと考えています。また、今後の消費者団体ということでは、企業のOBの方、男性の方に参加してもらうことを考えています。男性の方は企業活動の中でいろいろなスキルをお持ちの方が多く、退職後はそうした力を消費者団体活動に生かしていただきたいと考えています。」

「次に、武井さんに、現時点では難しいでしょうが、適格消費者団体になられた後、見守りネットワークの中での適格消費者団体の果たすべき役割、また、消費者団体としての将来に向けての『夢』について、何かお考えはありましたらお伺いします。」

「適格消費者団体の認定に向けて活動している『消費者支援かながわ』は多様な人材が構成メンバーとなっており、いろいろな分野で活躍している方が所属していますので、見守りネットワークとしても連携して十分機能すると考えています。ただ、まずは適格消費者団体に認定されることが『消費者支援かながわ』の一番の目的となっておりますので、そうした意味で現在の会の活動は制約されています。先ほど委員長が言われたように、団体の認定に当たり、消費者庁の指導が最近ますます細かくなってきています。消費者庁には認定に当たって余り細かいことを指導しないで、まだ全国で13団体しかないのですから、消費者団体がのびのびと活動できるように指導していただきたいという希望があります。また、県には助成を含めて支援をいただいておりますが、行政情報の秘密保護との兼ね合いはありますが、情報面での支援をよりお願いしたいと考えています。差し止め請求を行うには情報の共有がカギになりますので、この点をお願いします。なお、助成に関しましては、国の制度設計の問題なのでしょうが、より使い勝手の良いものにしていただきたい。あと、私の『夢』は、現役で集団的被害回復訴訟を担当したい、というものがあります。このためには特定適格消費者団体への認定という、もう一つのハードルがありますが、是非実現したいと考えています。また、先ほど今井さんがおっしゃっていた、高齢者の問題に取り組んでみたいと考えています。」

「では、次に大岡さんに、消費生活センターの今後について、どのようなあり方、『夢』をお持ちか、お伺いします。」

「現状、センターは女性中心の職場でリタイアされた男性が若干いらっしゃる程度です。もう少し男性の方が参加できる職場でもよいのではないかと思います。最近のシルバー世代は元気なので、こうした方に活躍していただくのも良いのではないでしょうか。例えば、ご高齢の方からお電話で相談があった場合、わざわざ足を運ばなくても電話相談で対応することができることをお伝えし、『相談に必要な契約書等をFaxで送付しください。』とお願いしても、『自宅のFaxが使えない』とか、『コンビニはあるがFaxの操作が分からない』といった返事が返ってくる場合があります。高齢者によってはFaxをすること自体、敷居が高い場合があります。そうした時、地域で、社会経験のあるシルバー世代の方が相談者をサポートする体制がとれるようになっていれば、非常にありがたいと思います。また、相談員は広範、多岐に亘る法律等の知識が必要なのですが、男性の中にはそうした分野に関心を持ち学習をされている方もいらっしゃるので、そうした方のお力を相談に生かせないか、と考えます。相談者の中には長年の社会経験を積まれ、相談員以上に専門知識や情報をお持ちの方もあり、まさにそうした能力のある方に相談業務に参加や連携をしていただければと考えます。この春、民生委員の総会に講師として参加した際、民生委員の方たちの社会のお役に立ちたいという強い熱意を感じました。一方、包括支援センターの介護の方に出前講座を行った際には、福祉の担当者に消費者問題に関する知識や情報を一層深く理解していただきたいと思いました。今後とも、相談者が二度と被害に遭わないように相談業務の中で相談者への啓発を行うと同時に、地域の見守りの核になる方々に向け、積極的に啓発活動を行って裾野を広げていければと考えています。」

「「今井さん、どうぞ。」

「センターへのお願いなのですが、高齢者の方ばかりでなく若い方の中に被害に遭った相談者の中には、『センターに相談に行けば、救済してもらえ、問題が解決できる。』という認識の方がいらっしゃるのですが、特に若い方が二度と同じ失敗をしないために、自ら事業者と交渉できるように啓発していただきたい。自分で解決することができるように相談者の自助の力を高め、自立した消費者にするのも、センターの役割の1つと考えています。」

「フロアからの質問・意見では次のようなコメントがありました。

「相談員を行っている者です。現場からのお話をさせていただきます。由緒ある小田原市と鎌倉市との比較をしますと、鎌倉市は人口17万3千人に対し相談件数は1,472件、小田原市は19万4千人で1,142件です。人口の多い小田原市が330件少ないのですが、この相談件数の数は逗子市と綾瀬市の相談件数を合計した件数なので、考慮すべき数字だと思います。こうした差は、相談体制に原因を求めることができるのではないかと考えています。鎌倉市の相談員体制は4名です。小田原市は2名です。電話回線の少なさがこうした件数の差になってきています。つまり、小田原市の消費者相談は埋もれてしまっていると言えます。さらに問題なのは、小田原市に委託している3町、南足柄市に委託している5町ですが、これら8町は他の市町村に比較して相談件数が非常に少なくなっています。また、神奈川県下での比較では、川崎市8,190件と相模原市では5,078件なのですが、人口比で見ますと川崎市は140万人、70万人の相模原市の約2倍の規模ですので、約8,000件対10,000件になり、実に年間2,000件相模原市が多い結果になります。こうした差は、相模原市が3か所相談センターを持つ一方、川崎市が1か所しかセンターを持っていないことに起因しています。また、神奈川県は、2003年度末に8か所あったセンターを1か所に集約しました。その際、消費者団体と相談員は西部に1か所センターを残すべきと申し上げましたが実現できませんでした。その結果が現在の状況を生んでいる訳です。県は市町村の自治事務に口を出すべきではないという姿勢ですが、改正消費者安全法では、第1に、『都道府県は、市町村に対する必要な助言協力及び情報の提供、その他の援助を行う』、第2に、『都道府県及び市町村は消費者安全の確保に関する関係機関との連絡調整を行うこと』、第3に、『都道府県は市町村の消費者生活相談等の事務の共同処理または他の市長村への委託事務の必要な調整ができる』と明記されています。是非とも県には積極的に消費者行政に取り組んでいただき、かつて、『西の兵庫、東の神奈川』と謳われた消費者行政を取り戻していただきたいと要望いたします。」

「相談員を行っている者です。県の中央センターは、土、日、祝日も電話相談を受け、平日は午後7時まで相談を行っています。この点は県民にとって非常にありがたいことです。県の相談体制についてですが、神奈川県は年間約13千件、一日当たり6名くらいとのことでしたが、東京は34千件30名、横浜市は24千件 20名、川崎市は8千件10名と、他と比べると県のセンターは少ない傾向にあります。被害者情報を聴取し、問題点を整理し、事業者交渉を行うということは非常に時間のかかることですが、先ほどお話がありました消費者委員会の数多くの建議や提言、また、専門委員会での議論を支える消費者情報源は消費生活センターの相談情報が基本になっていると考えています。相談内容を聞き取って、整理し、情報化することが、法律改正や事業者指導につなげることになると考えています。こうした点から、県には相談体制の充実をお願いします。また、今井さんのお話にありました商品テスト室がなくなると同時に、江の島にありました資料室もなくなりました。現在横浜市は資料室を持っていますが、在住、通勤の方に限られています。消費者が自ら勉強し、自立するための施設として重要なものなので、県にはご検討をいただきたい。また、相談員の数が増える一方で、行政職員の数が減ってきています。行政職員の数を増やすことも消費者行政の充実になると考えておりますので、その辺りについて消費者庁にお伺いしたい。」

「これまでの議論をお伺いしたところ、行政の体制といった観点から対処療法的なお話が中心であったと感じています。しかしながら、未然防止、予防的な観点から、子どもたちへの消費者教育が重要と考えています。特に携帯などについては子供たちの被害も出ています。そうしたことから、学校への申し入れをしていただき、学校での消費者教育の充実をお願いしたい。また、高齢者に優しい提言をお願いしたい。例えば、マイナンバーについても『高齢者に分かり易いマイナンバー制度作り』について、提言してはどうでしょうか。」

「県の立場からご回答をお願いします。」

「人事体制などについては、この場ではお答えできませんが、本日のシンポジウムには消費者行政関係の方が多く参加されているので、貴重なご意見をいただいたということで、今後の取り組みの中で生かさせていただきたいと考えています。なお、神奈川県では消費者教育に力を入れてきており、昭和63年度から学校における消費者教育に取り組んできています。県の教育委員会とも良好な関係を築いてきており、協議会を開催し、現場の教員の方にも参加していただいています。協議会の中にワーキンググループを設置し、消費者教育のための教材を作成していきます。特に去年、今年は障害を持つ方、特別支援学校を対象とした分かり易い資料を作成し、現場で使っていただいています。今後とも消費者自ら自立できるための資料を作成するなどして、消費者教育を進めていきたいと考えています。」

パネルディスカッションで意見を交わすコーディネーターの河上委員長とパネリストの皆さん
(パネルディスカッションで意見を交わすコーディネーターの河上委員長とパネリストの皆さん)

パネルディスカッションの最後に、各パネリストからまとめや感想などのコメントを頂戴しました。

消費者庁総務課の阪口課長補佐から「本日は地方消費者行政の現場の方や会場の参加者の皆様からのいろいろなご意見を伺い、大変勉強になりました。先ほどのお話にありましたように、消費者庁では相談情報に基づき制度の企画・立案を行っておりますので、今後とも相談業務の充実をお願いします。また、ご指摘の通り行政職員数が微減しているのは事実で、自治体に職員を増加いただけるよう、どのようなことができるかを含め検討したいと考えております。また、適格消費者団体の認定につきましても制度が使い易いものとなるよう、目的の範囲内で柔軟な運用ができないか、担当課に伝えさせていただきます。本日は参加させていただき、貴重なご意見を伺い、誠にありがとうございました。」

神奈川県県民局くらし県民部の渡邉部長から「本日は様々な意見をいただきありがとうございました。厳しいご意見も含め貴重なご意見とし、今後の神奈川県の消費者行政に生かしてまいりたいと考えています。また、消費者教育につきましては今後ともいろいろな場面で行ってまいりますが、高齢者以外にも、先ほど申し上げた障害者の方、また幼児の事故も多いのですが、そうした弱者に対する消費者教育を進めて参りたいと考えています。その際、消費者教育の推進は行政のみで出来るものではないので、消費者団体やNPOの方、弁護士会の方々は行政と車の両輪になっていただき、それらの団体の皆さんには積極的にご提案をいただき、連携して進めて参りたいと考えています。」

かながわ中央消費生活センターの大岡消費生活相談員から「相談者により、お申し出は様々です。相談員はお申し出に沿って、相談者のできる範囲や能力を踏まえて、助言やあっせんを行ってまいります。相談者の方には窓口でご希望を明確にお申し出いただければと思います。また、出前講座では、相談員が講師としていろいろなところへ出向いております。県センターのみでなく、各市町村センターも同様の出前講座を行っているところもございますので、ご活用していただければと思います。県の相談窓口は回線数が少なく、また、窓口の人数が少ないため、つながりにくいといったご不満もあるでしょうが、忍耐強くお電話くださいますようよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。」

NPO 法人神奈川県消費者の会連絡会の今井代表理事から「まず、インターネット、情報発信の在り方についてなんらかの規制をお願いしたい。また、国や県の説明でよくあるのですが、『これらの資料はインターネットで情報が取れます。』と説明されるのですが、取れない方が大勢います。今後5年、10年はパソコンなどを持ってない方のことを考慮して、紙媒体で情報提供、発信をお願いします。予算的な問題もあると思われますが、この点は工夫してお願いします。」

武井弁護士から「本日は弁護士会からも何人か参加されています。実は弁護士会の名称が横浜弁護士会から神奈川県弁護士会に変更となり、名実とも神奈川全体の弁護士会となりました。先ほど渡邉部長から車の両輪というお話がありましたが、私もそう考えており、先ほどはこちらからの提案をというお話がありましたが、県からのご提案もお願いします。そうしたことにより、より連携が進むと考えています。さきほどからお話をお聞きしていますと『消費者支援かながわ』に対する期待が大きいことが分かりました。ただ、『消費者支援かながわ』はまだ生まれたばかりで幼児期にあります。これから皆さんにも参加していただき、皆様からのご意見、情報をいただき一緒に大きくして、活動して参りたいと考えています。『消費者支援かながわ』を今後とも宜しくお願いします。」

最後に、河上委員長が「行政が果たすべき役割として、速やかに被害を予防したり、救済をする基盤、枠組みを作るというのは大事なことですが、特に前面に立っている相談員の方の処遇を良くしていくことや職員を増員して消費者部門を充実させるというのはお金のかかることではあるのですが、これはけっして無駄遣いではなく大事なコストです。それと会場からの発言にもありましたように、消費者は勉強しなければならない。特に、若者が被害者ではなく加害者になることもある、それを考えると、教育と連携して良い消費者を育てていくこともこれからの大きな課題となってくると思います。その意味では、縦割りでやっていくのではなく、横串をさして、官官も連携しなければならないし、民も連携しなければいけないということであります。

本日ここに来られた方は大変意識の高い方です。ここに来られた方が10人の方と消費者問題について語っていただければ、約1000人の方とお話することになり、消費者意識の高い方を手に入れることができます。今日は95名参加者がいたということですから約100名参加されています。一粒の種が少しずつ広がっていって神奈川県全体が消費者意識の高い地域に育っていくことを祈念しています。そして、この神奈川からこうしたシンポジウムを開催したということを全国発信し、それぞれの地域で消費者行政のあるべき姿について議論していただければ大変ありがたいと思います。最後に本日熱心な議論をいただきましたパネラーの方にもう一度拍手をお願いします。」と総括して、会合は終了しました。

参加者のアンケート結果から

会場では参加者にアンケート調査を行いました。アンケートには、

  • 福祉の窓口との連携や、民生委員の声、現場の声をどうコーディネートするか。行政の職員に出席してもらえるよう声をかけて下さい。自治事務といっても数年で異動する職員にネットワーク作りの一助ができますか。
  • 地域の見守り、連携が非常に大切だと感じる。反面、プライバシーの確保も重要。高齢者の尊厳を守りながら如何に見守っていくかが難しいところだと思います。
  • 消費者活動に関係する婦人が減ってきていることが心配。
  • 市町村の窓口の自立はまだまだ途上だと思います。国からの交付金及び基金が命綱です。制度の引き続きの実施、充実を消費者庁に申し入れて下さい。
  • 地方行政においては、消費者行政に対する予算確保は困難な状況にあります。消費者委員会、消費者庁によるリーダーシップの発揮、特に予算上のバックアップを期待いたします。
  • 消費者被害にあう人が必ずしも、同じ目的で被害の回復を求めていません。官民連携といってもゴールが違うので難しいのでないかと思います。
  • 契約書にサインはできても、何のために契約したのか分からない人が多く相談処理の限界を感じています。行政間、地域間の連携が必要です。国が音頭をとって連携の仕組みを考えて下さい。
  • 男性の相談員が少ないのは、給与体系、一年契約など労働条件や身分保障が大きく影響しています。待遇の改善は急務では。

などのコメントが寄せられました。

小田原市、神奈川県への表敬訪問

12月9日(水)、河上委員長は表敬訪問のため小田原市の加藤市長を、12月11日(金)に神奈川県の吉川副知事をそれぞれ訪ね、開催にあたっての後援のお礼を述べ、当シンポジウムについて、神奈川県の消費者被害について、取組みについてなど幅広く意見交換しました。

小田原市の加藤市長と撮影
(小田原市の加藤市長と撮影)

神奈川県の吉川副知事と撮影
(神奈川県の吉川副知事と撮影)

以上