「消費者問題シンポジウム in 広島」を開催しました

「消費者問題シンポジウム」とは

消費者委員会の委員が地方に出向き、消費者のみなさま、関係各団体のみなさまの声に直接真摯に耳を傾け、問題の解決に効果的に取り組むために、地方の関係団体や自治体などと連携し、意見交換等を開催するものです。

広島での会合の様子を紹介します

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「消費者問題シンポジウムin広島」は消費者委員会と適格消費者団体・特定非営利活動法人消費者ネット広島が主催し、平成26年3月8日(土)、広島市の都心にある広島YMCA国際文化センター3号館2階多目的ホールで開催されました。
当日は冷え込みながらも晴天に恵まれ、広島県、広島市をはじめ近隣の県、市町の消費者行政担当者や相談員のほか、消費者団体、弁護士、司法書士、事業者、大学関係者、一般消費者など75名の参加がありました。

河上委員長の基調講演で熱心にメモを取る参加者の様子を撮影した会場の写真

冒頭、適格消費者団体・特定非営利活動法人消費者ネット広島の吉富啓一郎理事長より、「食品表示は、私たちの食生活における「安全性の確保」「商品の選択」にとって、なくてはならないもの。消費者にとって非常に関心が高いものです。消費者にとって、どんな表示が望ましいのか、事業者は消費者の要望にどこまでこたえられるのか、違反した場合、どんな行政処分があるのかなど、それぞれの立場で、様々なご意見、ご関心があると思います。是非、忌憚のないご意見を出して頂き、より良い表示制度となることを期待します」との開会挨拶がありました。

開会挨拶を行う吉富理事長の写真

シンポジウムは河上正二委員長による基調講演「消費者委員会の活動と食の安全」で始まりました。消費者委員会の役割と活動について紹介し、関係省庁のすきまに落ちかけようとしている問題に消費者目線で横串を刺すことの必要性について説明しました。食品については、「食の安全・安心は消費生活の基本中の基本である。これまでの消費者法、消費者運動の歴史は食品問題に端を発していることが多い。」と食の安全がいかに重要であるかを述べ、健康については「バランスの取れた食事が基本である」と述べました。前提として「あっと思ったら食べない等、自分の身は自分で守ること」、「情報については限界があること」を理解し、また根拠のない風評に左右されない、「ただしくおそれること」の必要性について説明しました。「食はある種の文化であり、親や社会が食事の正しいあり方について考えていく食育も大切である。」と述べ、最後に、「最近の食品の複雑性を考えると、科学的知見をもって、自分なりに勉強しながら、適切な食品選択、食育をやっていくのが大切である。消費者自身が主体となって、行動して学んで事業者と語り合い、よい市場を育てることが大事な作業である。」と述べて、次の講演者である阿久澤良造委員につなぎました。

基調講演を行う河上委員長の写真

阿久澤良造委員は、食品について、「(1) 栄養があって、(2) おいしくて、(3) 健康に寄与する成分があり、(4) そして安全であることが食品である大前提」と述べ、またこれが品質を構成する四つの特性であること、四つの特性について「これらに関わる細かい物、これが表示にいきれば、品質が判断できることに繋がる。」と説明しました。「食品には全てに生体調節機能がある、特に気にせずとも、バランスよい食事をとっていれば、健康は維持できる。それが食品であることをまず理解して欲しい。」と述べました。食品表示のあり方については、「表示は事業者と消費者とのコミュニケーションツールであり、重要かつ正確な情報と適当な情報量が必要である。自分だけの利益でなく、自分がミスをすれば、社会全体が傷つくんだという発想をもって表示してほしい。選択側は、情報には限界があることを理解し、過剰な情報は期待しない。事業者と消費者の信頼しあえる関係の確立、これがあって、はじめて素晴らしい表示になると考える。」と締めくくりました。

講演を行う阿久澤委員の写真

つづく広島県生活センターの川手三枝子相談員の報告では、広島県内の食品についての相談の概要から、実際にあった相談事例を具体的に紹介されました。「食品の表示については、賞味期限、原産地、原材料の相談が多く、今回紹介した事例はほんの一例で、様々な相談が日々入っており、生活に密着している食に関して、消費者の関心が高いことがうかがえる。」と述べました。

事例報告を行う川手相談員の写真

休憩後、パネルディスカッションが行われました。パネリストは消費者庁食品表示企画課の安藤峰央氏、広島県生活センターの川手三枝子相談員、広島県消費者団体連絡協議会の中原律子会長、公益社団法人消費者関連専門家会議(ACAP)の長谷川公彦専務理事、コーディネーターは消費者委員会の阿久澤良造委員が務めました。
冒頭、消費者庁食品表示企画課の安藤峰央氏より食品表示法、表示の一元化の背景と表示基準の概要、施行までのスケジュールについて、広島県生活センター川手三枝子相談員より日常の業務で発生している問題について、広島県消費者団体連絡協議会の中原律子会長からは団体の活動を通して、食品表示ウォッチャー活動など具体例のお話や、食品表示に対する意見・要望について、公益社団法人消費者関連専門家会議の長谷川公彦専務理事からは、表示に対しての事業者のあるべき姿、消費者と事業者の信頼関係が大事であると説明がありました。その後、以下のテーマを軸に討論が行われました。
(1) 「分かりにくい表示はなぜ分かりにくいのか」について
(2) 「表示の信用度」について

パネルディスカッションで意見を交わす阿久澤委員(左)長谷川専務理事(右)の写真パネルディスカッションで意見を交わす中原会長(左)川手相談員(中央)安藤氏(右)の写真

各パネリストから次のコメントがありました。
「パッケージの裏の表示を見なければ分からないような商品は作って欲しくないというのが消費者の本音だと思う。表示違反でなければいいということではなく、その商品を適切に消費者に伝えたいという意図で商品を作るようメーカーには強く要望したい。」「食品表示法ができたら、どこがポイントかおさえて、たくさんの情報の中から、自分にとって必要な情報を知ることが大切。消費者教育もまた大切だと考える。」「それぞれに細かいルールがあって、分かりづらい。例えばお刺身、マグロ単体であれば、産地表示があるが、盛り合わせになるとない。遺伝子組み換え、添加物、増粘剤にしても丸めて表示することで、消費者は、本当は何が使ってあるのか分からない。今後、一元化表示で分かりやすくなることを期待したい。」「分かりやすさは人によって基準が違う。添加物の中の物質を書いて欲しいという人がいる中で、一方で物質の名前を書かれても、それがなんなのか分からない人もいる。国としてどちらによるか、幅広く物質があるものは、物質をずらずら書くよりも、甘味料なら甘味料とまとめた方がよいという判断ではないか。」「分かりにくさについて、例えば食肉製品についていえば、JAS法と食品衛生法で定義が違う。食肉製品についてこの表示をしなさいということでも判断が分かれる。法律間で定義が違う。今後、統一を図っていきたい。」「表示で全て分かればいいが、お客様のニーズはたくさんある中で、全ての情報をラベルの中に収めるには限界がある。パッケージ上だけでなく、お客様相談室への電話や、ホームページそういうツールを工夫しながら、情報提供について考えていく必要があると事業者は考える。」「産地表示について、いろんな指摘を受けている。刺身盛り合わせなどについて、まぐろ単体にはあるのに、盛り合わせにはない、そこのギャップを埋める必要があると考える。少しずつ分かりやすく、かえられる部分はどんどん対応していきたいと考えている。」「零細企業に、毎日原産地が変わるものにも表示をして下さいという要望はしないが、表示をしなくてもいいというわけではなく、問い合わせをすれば、きちんと回答が得られるような表示のルールを考えてはどうか。パッケージに表示をするだけではなく、聞けば即答できる体制だけはとって頂きたい。」「企業は法対応をしているが、表示を受取る消費者とのギャップを埋めていかなければいけない。企業としては消費者から意見を頂戴して、またコミュニケーションをしていくことで、相互の信頼関係が高まれば、表示に対する信頼度も上がると考える。そういう取り組みを社会全体でやっていくことが大事。」「情報の信頼度という意味では、行政では原発の情報の出し方、事業者では、ホテルのメニュー誤表示などで、行政、事業者ともにだいぶ下がってきている。」「消費者庁は東京にしかない組織だが、農林水産省との併任などで消費者庁の職員として全国各地で対応できる体制にしている。表示について消費者にも厳しい目で見て頂ければ、少しずつ改善するのではないか。」「法令違反を排除する仕組みとして差止請求があるが、どういう時に差止できるのか消費者は分からない。相談員としてその制度の活用を図っていきたい。」などがありました。

フロアからは、「TPPは、食品表示に影響を与えるか。」「外食産業の表示の部分はアレルギーが中心だが、お米の部分はどうなるか?」「内容量虚偽の問題について、外装の重さも書くべきではないか。容器包装リサイクル法がある中で、企業にも特に大きな負担とならないのではないか。」「一般的に使うものではないものは、成分名だけでなく、効果も書いて欲しい。」「法・ルール以上にこのような表示をした、このような対応をしたといった企業を表彰するような制度はあるのか。あれば企業のモチベーションアップに繋がるのではないか。」「新しい表示基準の事業者とは、販売業者と製造業者のどちらのことか?製造業者名があり、所在地、販売業者の記載が望ましいと思う。」「前提として、自分の身は自分で守るという話があったが、食品表示の安全を置いて健全な社会はありえないと思う。」など忌憚のない意見が聞かれました。

パネルディスカッションで質疑する参加者の様子の写真

最後に、河上正二委員長が「食品表示の問題は様々なところで起きている。安全性は譲れない、守るべきところは守らなければいけない。消費者委員会も消費者庁もその部分は、はっきりとした方針をもっているが、そこから先の部分について、情報には限界があることを知っておかなければいけない。受身になっていては、何が起きるか分からない。その意味で消費者自身も賢くならなければいけない。何が適切な表示か、100点はなかなかとれない。今あるものを少しでも改善できないか、事業者、消費者の双方がコミュニケーションをとりながら、一歩ずつ今よりよい表示にもっていく。その部分について消費者自身も主体的に考えていかないといけない。行政は規制緩和をして、事業活動をしやすくしようと提案をしている。その中で、例えば食品の機能性表示など、様々なものについて、まえのめりになってきているが慎重になったほうが良いと考える。分かりやすさと正確さはトレードオフの関係にある。厳密にやるのは難しいのは理解するが、知恵を出して、いい表示になるようやっていきたい。」と総括して、会合は終了しました。

参加者のアンケート結果から

会場では参加者にアンケート調査を行いました。アンケートには、「今の表示に様々な問題があることがわかった」「健康食品の正しい利用法を知りたい」「表示の一元化の今後を注意深く見守りたい」「地方における食品表示のワンストップサービスも検討して頂きたい」「法令ごとではなく、横断的に情報提供していくことを検討してほしい」「消費者も全てがわかる表示はないと理解することが何より大切」「表示の内容だけでなく、行政の執行体制についてもきちんと議論すべき」「根本の信頼関係さえあれば、表示自体は細かく色々は必要ないと思います」など、数多くのコメントが寄せられました。

広島県庁への表敬訪問

開催前日である3月7日(金)午後、河上正二委員長は表敬訪問のため広島県庁を訪ね、湯崎英彦県知事へ後援のお礼と消費者委員会の活動状況についてなど説明しました。最近問題となったビットコインや景品表示法の改正について、広島県の消費者行政への取組み、国と地方の連携の必要性などについて幅広く意見交換しました。
続いて、広島市の及川享市民局長と懇談のため広島市役所を訪ねました。広島市へ後援のお礼を述べ、和やかに会談しました。多岐にわたる消費者問題に対して、消費者保護の取組みに加え、消費者自身の力をいかに高めていくか、消費者教育の推進の必要性について意見を交わされました。

広島県知事室で湯崎知事(右)と河上委員長(左)で撮影した写真




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