第469回 消費者委員会本会議 議事録
日時
2025年8月20日(水)10:00~11:26
場所
消費者委員会会議室及びテレビ会議
出席者
-
- 【委員】
- (会議室)鹿野委員長、黒木委員長代理
- (テレビ会議)今村委員、大澤委員、小野委員、柿沼委員、中田委員
-
- 【事務局】
- 小林事務局長、吉田審議官、友行参事官
議事次第
- 支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会の中間整理について
- その他
配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)
- 【参考資料1-1】 消費者委員会に寄せられた要望書・意見書・声明文等一覧(6月分)(PDF形式:268KB)
- 【参考資料1-2】 国民生活センター記者公表案件一覧(4月~6月分)(PDF形式:157KB)
- 【参考資料2】 委員間打合せ概要メモ(PDF形式:93KB)
《1. 開会》
○鹿野委員長 本日は、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。
ただいまから、第469回「消費者委員会本会議」を開催いたします。
本日は、黒木委員長代理と私、鹿野が会議室にて出席しており、今村委員、大澤委員、小野委員、柿沼委員、中田委員がテレビ会議システムにて御出席です。
なお、原田委員、星野委員、山本委員は本日御欠席と伺っております。
それでは、本日の会議の進め方等について、事務局より御説明をお願いします。
○友行参事官 本日も、テレビ会議システムを活用して進行いたします。
配付資料は、議事次第に記載のとおりでございます。もしお手元の資料に不足等がございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願いいたします。
以上でございます。
○鹿野委員長 ありがとうございました。
《2. 支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会の中間整理について》
○鹿野委員長 本日の最初の議題は、「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会の中間整理について」です。
昨今、支払手段の多様化やキャッシュレス化が進展しております。これは、消費者に一定の利便性をもたらす一方で、支払手段に関わる消費者トラブルが拡大し、未然防止・被害救済が難しくなっているなど、消費者への影響も懸念されているところです。
消費者委員会においては、昨年12月に「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」を設置し、その後、消費者が直面している問題やそうした問題に対する解決策について調査審議を行ってまいりました。
今般、同専門調査会において中間整理が取りまとめられましたので、本日はその内容について意見交換を行いたいと思います。
それでは、事務局より、中間整理について15分程度で御説明をお願いします。
○友行参事官 それでは、資料1を御覧いただけますでしょうか。「中間整理」という題名がついております。
3ページ目、「第1 問題意識と現状」でございます。
「1 本専門調査会の問題意識」。最初のマルでございます。支払手段の多様化が進展し、キャッシュレス決済比率は足元の2024年には42.8パーセントに高まっております。
この図の下のマルでございます。消費者委員会が2025年3月に消費者向けアンケートを実施しております。そこでは、現金以外の支払手段を使っている理由として、支払いが簡単で早い、現金を持ち運ばなくて済むといった回答が多くなっており、支払手段の多様化は消費者に一定の利便性をもたらしていると言えます。
その下のマルでございます。「他方」とあります。支払手段の多様化が、決済が対面でなく、インターネット空間で行われることなどにより、支払手段に関わる消費者トラブルが拡大し、未然防止・被害救済が難しい、また、キャッシュレス決済の仕組みが複雑化・多様化し、消費者には理解しづらいものとなっているなど、様々な影響を与えていることが指摘されております。
報告書を進みまして6ページ目、真ん中より下のマルの「本専門調査会では」というところでございます。この専門調査会では、支払手段の多様化が消費者にどのような影響や消費者問題をもたらしているか、その事実を可能な限りデータとともに明らかにすること、その消費者問題が生じている要因や構造を可能な限り明らかにしていくこと、そして、その要因を取り除くためどのような方策があり得るか、新規立法を含む法制度などを検討し、取りまとめることを目的に設置されております。
7ページ目にまいります。「2 支払手段の多様化の現状」でございます。(1)として、「様々な支払手段の利用実態等」でございます。1つ目のところは、「支払手段の多様化」とあります。図5の上に四角囲みがございます。キャッシュレス決済は、支払時期の観点から、プリペイド、後払い、即時払いに分類されております。プリペイドは、消費者が決済に必要な額をあらかじめ決済事業者に提供する。後払いは、取引の後に決済額が消費者に対して請求される。即時払いは同時ということでございます。
次のページにまいります。8ページ目のところ、図表7として、「主な支払手段と法律等の適用関係」をまとめた図表となっております。
9ページ目の図表8につきましては、「キャッシュレス決済関連法制度とサービスの相関図」となっております。割販法、資金決済法、銀行法、その他という形になっております。
10ページ目、「支払関連事業者の多様性」というところでございます。上の四角囲みでございます。消費者と販売事業者との間に、キャッシュレス決済事業者とキャッシュレス決済取次・仲介事業者が介在する場合があります。こうした場合、消費者から決済代行会社や収納代行会社の存在が見えない場合もあるということでございます。
11ページにまいります。図表10の上に四角囲みがございます。支払手段の多様化に伴い、関係する事業者も多様化しております。消費者・消費生活相談員の交渉・相談先も様々になっております。支払手段により関係法令が異なること、被害救済の仕組みに差異があることが消費者トラブルを複雑化し、被害回復を困難にしている場合があるということを指摘されております。
12ページにまいります。「(2)支払手段を選択する観点」とございます。こちらは、支払手段の多様化に関するアンケート調査を実施しており、その結果をまとめたものとなっております。
13ページにまいりますと、図表13がございます。「現金以外の支払手段を使っている理由」として、支払いが簡単で早い、現金を持ち運ばなくて済む、ポイント還元率が高い等、お得なオプションがついているなどの回答が多くなっております。
14ページにまいります。「(3)複雑化・多様化する仕組み」とあります。図表15の上に四角囲みがございます。例えば、消費者が自動チャージ機能を持つ電子マネーを利用した場合、消費者はクレジットカード会社、後払い決済事業者等、多くの支払関連事業者と関わりを持ちます。それぞれの支払関連事業者と利用契約が締結されることになります。消費者の資金は、チャージという形で各種支払手段に流れていきます。複数の事業者が関係する結果、取引に問題が生じた場合、誰にどのような対応を求めることができるかが分かりにくくなる可能性があります。
15ページにまいります。図表16の上の四角囲みでございます。複数の業態に属するクレジットカード会社や前払い式支払手段発行者と販売事業者との間を一括して仲介する決済代行会社が存在しています。これにより、販売事業者は個々の支払手段提供者とやり取りしなくても、複数の支払手段を消費者に提供することが可能となっています。一部の決済代行会社は、割販法に基づくクレジットカード番号等取扱契約締結事業者と定義され、登録義務、加盟店調査義務等が課されています。他方、こうした決済代行会社の態様などは多様であり、どのような決済代行会社が登録義務を負うのかという登録要件が必ずしも明確ではないという指摘があります。
17ページ、「第2 支払手段の多様化に係る消費者問題」でございます。
「1 主に相談現場で生じていること」であります。「(1)多様な支払手段と消費生活相談」でございます。図表19の上の四角囲みでございます。スマートフォンに届いたメールなどをきっかけに、クレジットカード番号、セキュリティコードを詐取された。その情報が第三者のプリペイドカードに紐づけられ、チャージに不正利用されるという消費者トラブルが発生しています。被害に気づいた消費者が、クレジットカード会社、プリペイド電子マネー会社に苦情の申し出をしても対応されないという事態が現場で生じています。
18ページにまいります。図表20の上に四角囲みがございます。クレジットカード決済を利用し消費者トラブルが生じた場合、消費者は一般的にカード発行会社に対応を求めております。カード発行会社、すなわちイシュアーには、苦情発生時の調査義務や苦情伝達義務があります。しかし、イシュアーにおいて、決済代行会社や決済プラットフォームといった存在が把握できない場合があります。消費者においても、クレジットカード明細書にこうした決済代行会社や決済プラットフォームの記載・連絡先がなく、被害回復が困難になっています。また、図表21を御覧いただきますと、決済プラットフォームといった業態が関わっている場合もあります。
20ページにまいります。「(2)多重債務の側面からみるキャッシュレス決済」でございます。図表23の上に四角囲みがございます。後払い決済(BNPL)には、支払可能見込額の調査義務がなく、信用情報機関の利用も義務付けられておりません。また、携帯電話番号、メールアドレス、運転免許証、マイナンバーカードなどの入力のみで利用可能となっています。収入確認がないものもあります。年齢制限については、事業者により異なっておりますが、一括払いの場合、年齢制限がない事業者もあり、18歳以上であれば分割払いが可能となっている場合もあります。
22ページでございます。図表25「キャリア決済の信用調査、運用」の上に四角囲みがございます。携帯電話はライフラインの一つとなっております。契約に際して必ずしも収入証明が必要ではないものとなっています。このため、クレジットカードを利用できなくなった消費者などが食品や日用品の購入のためキャリア決済を利用することがあります。食品等の支払いと通信料金の支払いは一括で行われております。キャリア決済の支払いを延滞した場合には、ライフラインでもある携帯電話の利用ができなくなります。そうすると、日常生活に支障が生じます。キャリア決済の上限額は、一般的に初期設定されておりますが、20万円という金額に設定されている例もあります。また、未成年者でもキャリア決済が利用できる初期設定となっていることが通常となっています。こうした点は消費者に認識されていない可能性があります。
24ページに進んでいただきます。「2 主に被害救済の現場で生じていること」でございます。「(1)キャッシュレス決済を利用した消費者トラブルの実情」でございます。図表26の上の四角囲みでございます。現状、キャッシュレス決済を利用した消費者トラブルとの関係では、以下のような3つの課題が存在すると指摘されております。
1つ目として、クレジットカード決済における2か月内のマンスリークリアには、登録制・苦情の適切処理義務がない。2つ目として、クレジットカード番号等取扱契約締結事業者には、アクワイアラーまたはアクワイアラーから加盟店審査・契約締結の実質的な権限を受けた決済代行会社を含むことになっておりますが、その判断基準が不明瞭で、無登録業者がいるとの指摘があります。さらに、海外のアクワイアラーが関連していることもあります。取引に関与した決済代行会社が、苦情の適切処理義務や加盟店調査義務を負わない場合、被害救済は困難となっております。3つ目として、決済代行会社が介在する場合、イシュアーやアクワイアラーは加盟店である販売事業者と直接の接点を持たず、加盟店の調査・指導・排除が十分に行われにくいといった点が指摘されております。
27ページでございます。「主に被害救済の現場で生じていること」の2つ目として、「(2)詐欺的金銭詐取の側面からみるキャッシュレス決済」でございます。図表28の上の四角囲みでございます。キャッシュレス決済が詐欺や犯罪における金銭詐取の手段として用いられることも少なくない。例えば、国際ロマンス詐欺の典型的な手口としては、マッチングアプリや偽広告等による勧誘を入り口とし、LINEへ誘導され、暗号資産やFXでの資産投資を勧められ、銀行振込あるいは暗号資産送金により支払いをすることにより被害に遭うといったことが起きております。
29ページでございます。図表31の上の四角囲みでございます。副業・セミナー詐欺においては、決済の方法がクレジットカード等の取消し可能な類型ではなく、借入れをさせた上で現金を送金させる形が多いということが指摘されております。信用情報機関のデータベースのタイムラグを利用して、インターネットにより複数の金融機関からほぼ同時に借入れをさせることによって総量規制が潜脱されております。また、口座凍結を回避するために、振込先口座は別名義の会社とし、その場合、収納代行であるから責任を負わないと主張される場合もあるということが生じております。
30ページにまいります。図表32の上の四角囲みでございます。大規模投資詐欺では、国内で消費者を勧誘し、国内で収納代行を利用して送金させる手口があります。収納代行の形としては、仲間内の会社の口座を利用する場合、業務として営業している収納代行会社の場合、国内で投資勧誘を行い、収納代行を介在させるが、最終的に海外への送金代行を介在させる場合があるということが指摘されております。
31ページでございます。「3 事業者の視点」でございます。図表33の上の四角囲みでございます。決済、資金のプール化・小口化、経済資源の移転、リスク管理方法、価格等の情報の提供といった、金融機能ごとに技術の進化等を背景に様々な金融サービスが進展しているというのが実態でございます。
32ページにまいります。図表35の上の四角囲みでございます。今後の課題としては、例えば、認知機能の低下に伴い、消費者が支払手段等に求めるニーズも変化する。例えば、健常時におけるファイナンシャル・プランニングから、認知症発症時における経済的虐待の防止、そして、相続時における相続人との円滑な手続きなどが考えられます。こうしたことにどう対応するかというものがある。ニーズに対応したサービスツールは、消費者に対するエンパワーメント効果が大きいと言える。こうした事業者の視点も指摘されております。
33ページでございます。「4 アンケート調査の結果概要」でございます。ここでは、消費生活相談員と一般消費者向けにウェブアンケートが実施されております。その詳細につきましては、本中間整理の参考資料4と参考資料5に掲載されておりますので、ここでは御説明を省略させていただきます。
中間整理をずっとページを進んでいただきます。
44ページの「第3 支払手段の多様化に係る消費者問題の要因を分析する際の視点」にまいります。
この専門調査会において議論していただいている中で、「1 おおむね委員の意見が一致した視点」でございます。第一に、支払手段の多様化あるいはキャッシュレス決済の進展が、その複雑さや匿名性などのゆえに、消費者トラブルの未然防止や被害の回復を困難にしているのではないかという観点でございます。
1つ目のマルでございます。インターネット取引のサイト上で契約締結から決済まで手続が完結するキャッシュレス決済が利用できることにより、販売業者が消費者に対してその実態を隠したまま取引を完結し決済が完了することが可能となったことで、悪質商法を助長し、被害発生後の責任追及が困難となっているのではないかということなどが指摘されております。
45ページでございます。「第二に」というところであります。支払いとは「資金の移動」であるとする従来の考え方では、多様化する支払手段、とりわけキャッシュレスによる決済を消費者が普通に利用している状況で、そこから生じる消費者トラブルの未然防止や被害回復を効果的に行うことは困難という観点でございます。
1つ目のマルでございます。伝統的に支払手段として考えられてきた銀行の送金や資金移動のほかに、様々な支払手段が多様なプレーヤーによって提供されております。支払手段に関する法制度の隙間や、法制度ごとの差異などが大きくなってきているのではないかということが指摘されております。また、仲介者と言われる方々が果たす役割が大きくなってきているのではないか。こうした状況に対応するため、より横断的、総合的な法制度の在り方を検討する必要があるのではないかということについて、おおむね委員の意見が一致しております。
「2 さらに議論を深める必要がある視点」でございます。1つ目として、「第一に」とございます。多様な支払手段を提供している事業者の法的な定義が現実に合致していない。それがゆえに、規制の対象外となったり、同じような業務を行っている事業者の間で、法的規制の在り方に相違が生じているのではないかという観点でございます。
この下のマルでございます。いわゆる決済代行会社、収納代行会社、決済プラットフォームは、それぞれ行為としては同じことをやっているように見えます。それを異なる法制度の中にうまくはめ込んでいくことが困難になっている、原点に返って整理し直すことが必要ではないかということが指摘されております。
46ページでございます。「第二に」というところが真ん中辺りにございます。消費者による支払いに関して消費者トラブルが生じた場合に、その決済の仕組みに関わる複数の事業者のうち、どの主体が消費者に対する責任を負担するのかという観点があります。この点に関して、以下のような意見があったということです。
最初のマルでございます。消費者のみが過度なリスクを負担しないよう、支払いに伴うリスクを可能な限り低減し、リスクについて消費者以外の当事者にも負担させる必要があるのではないか。これは現在の割販法の考え方でもあり、これを基礎として対応を考えることができるのではないか。決済の簡便さにより利益を得ていて、かつ、加盟店のコントロールが可能な支払関連事業者に加盟店リスクへの対応義務を負担させるべきではないかといった御指摘があったところでございます。
46ページの一番下のところでございます。支払手段、支払関連事業者の問題と、支払いから生ずる消費者トラブルとを分けて考える必要がないかという点も論点となったとございます。
47ページの一番上のマルでございます。消費者問題の表れ方として、決済を例に挙げた場合、決済の機能に何らかの問題が生じたことにより生じた問題と、決済の機能が詐欺業者などに悪用されていることによって生じる問題がある。これまでの決済法制は、決済の機能に内在する問題に焦点を当ててきたのではないか。そのために、決済の機能と商取引の機能などが密接不可分に組み合わさってしまった場合にうまく対応できていないという側面が指摘されております。
47ページの真ん中辺りに「第三に」とあります。支払手段の多様化やキャッシュレス決済に関する消費者トラブルに対応する法律の在り方はどうあるべきかという観点でございます。従来の割販法による対応で何ができて何が足りないか、あるいは決済を取り扱う統一的な法制度・ルールが必要ではないかという点が問題となるという点が指摘されております。
48ページでございます。「最後に」というところで、支払いに関するトラブルの効果的な救済のためにも、支払手段の多様化とそこから生じる消費者トラブルについて、経済学のマクロ的な視点から適切に問題状況を把握すべきという観点も指摘され、非常に重要な観点ということで取り上げられているところでございます。
49ページにまいります。「第4 要点整理」でございます。中間整理の中で様々なキーワード的な文言が出てまいりました。それを一定の構造に従って整理されたものが第4となっております。
「1 支払手段の多様化に際して課題が生じており検討が必要な消費者問題」とされております。「(1)既存の規制の対象となっているもの」。アとして、「支払手段に係る規制や消費者問題における救済レベルの相違」ということでございます。ここでは、最初のマルのところで、キャッシュレス決済の中には、規制があるものとないものが混ざっている。さらに、規制があるものの中でも保護のレベルに相当な差があるのではないかということが指摘されました。
次に、「(2)既存の規制の対象となっていないもの」であります。ア、「通信料金と一体となって支払が行われるキャリア決済」が指摘されております。
その下のマルでございます。通信契約については、電気・ガス等と同様のライフラインなので収入証明はなくてもよいが、それに加えて、キャリア決済という金融サービスを提供する際に収入証明による確認がないことの当否について、検討を深めるべきではないかという指摘がございました。
次に、イとして後払い決済でございます。最初のマルでございます。コード決済の決済額は13.5兆円で、相談件数は5,500件。他方、後払い決済の決済額は市場規模1.8兆円で、相談件数は5万件となっております。この数字を見ると、客観的事実として後払いは非常に苦情が多い、後払い決済は悪質事業者に利用されやすいと言えるのではないかという指摘がありました。
51ページでございます。「(3)過剰与信」の視点でございます。最初のマル、後払い決済、キャリア決済は信用調査、収入確認がなく、若年者も利用できてしまうことが消費者トラブルの要因となっているのではないかという指摘がございました。
51ページの下の「(4)詐欺的な原因取引・金銭の詐取」でございます。52ページの「今後さらに議論を深める点」といたしまして、詐欺的な原因取引・金銭の詐取に係る消費者問題について、未然防止等の観点から、どのような支払手段において仕組みがあればよいか、議論を深めるべきという御指摘がございました。
次に、「2 消費者問題に対応するための方策」でございます。最初に「(1)民事ルール」でございます。「今後さらに議論を深める点」として、最初のマル、民事ルールとして、抗弁権の接続、信用契約の解除、損害賠償責任等々が考えられるが、現行法の規制がどの範囲に及び、どのような効果を上げているかを整理する必要があるという指摘がございました。
「(2)行政規制」でございます。ア、規律のかかる主体として、いわゆる決済代行会社、収納代行会社等が指摘されました。そして、イの規律の手法として、加盟店管理ということが指摘されました。
54ページにまいります。ここでは、消費者からの苦情の適切な取扱いについての御指摘もございました。そして、(3)では金融技術を活用していく視点。
55ページにまいりまして、事業者・事業者団体が実際にどのような対応をしているのかという点について、確認が必要ではないかといった御指摘もございました。
56ページ、「3 その他」でございます。1つ目として「決済に関する情報」でございます。最初のマルでございます。キャッシュレス化ということは必ず誰かの手元にデータが残る、そのデータを誰がどのように利用できるかについてのルールが不明確ではないかという指摘がございました。
それから、「(2)支払関連事業者と消費者の契約関係」でございます。57ページの最初のマルでございます。いわゆる約款、契約書の話でございます。現金以外の新しい支払手段を開始する際、約款・契約書に目を通しているか。これはアンケート結果でございますが、全てに目を通している人が14パーセント、重要だと思う部分だけ目を通す人が42パーセント、必要になったときだけが14パーセント、目を通していないのが23パーセントとなっております。こういった実態を踏まえてどう考えるかということでございます。
57ページの最後のところ、(3)として「支払手段の多様化に関する消費者教育」についての御議論もございました。
58ページにまいります。「第5 支払手段の多様化と消費者問題に関して対応が求められると考えられる事項について」でございます。
最初のところ、専門調査会においては、審議を重ねる中で大切にしてきた観点が幾つかあるということで指摘していただいております。
第1として、専門調査会を設置した目的は、あくまで支払手段の多様化をめぐる消費者被害の未然防止、消費者トラブルの解決、そして、消費者の安心の向上に寄与することであるということでございます。
支払関連事業者にこういう対応を取ってもらえたら、支払手段に関してこういう規律・法制度があるのなら、消費者被害を未然防止、救済することができたのではないかについて議論をするといったことでございます。
続きまして、第2に、消費者を取り巻く生活全般がデジタル化・非対面化しております。これが支払手段の多様化や消費者トラブルの解決の困難さに影響を与えているのではないかという視点でございます。
59ページに行っていただきまして、最初の「消費者の」という段落でございます。消費者の手元のデバイスはスマートフォン一つであります。そこで、一見共通しているように見えたとしても、その最終的な支払いは、前払い、後払い、即時払いが絡み合っています。そうした支払手段に対して現状の金融法や消費者法は対応できているのかという点も検討すべきであるという視点でございます。
第3に、支払手段の多様化と多重債務問題の関係でございます。我が国はかつて多重債務問題に直面し、2006年12月に貸金業の規制等に関する法律の一部改正が成立しております。しかし、足元では、複数機関から借入れを行っている者の数や1人当たりの借入残高は緩やかであるが増加に転じています。
以上3点を踏まえ、そして、「以上で」というところでありますが、以上で述べた観点に加えて、本中間整理の第1から第4に記載した事項、これまでの専門調査会における調査審議を踏まえ、当専門調査会において、現時点において、支払手段の多様化と消費者問題について特に迅速な対応が必要と考えられる事項は以下のとおりということでまとめられております。
「1 既存の規制の対象となっていないと考えられる支払手段」でございます。それについては、「支払手段の」という段落から始まる最後のところで、後払い決済とキャリア決済が指摘されております。
60ページに行っていただきますと、図表50がございます。先ほども御紹介いたしましたが、支払手段別の決済額と相談件数でございます。一番右端の後払い決済については、決済額が1.8兆円に対し、相談件数は5万件となっております。いずれも推計値も含んでおりますが、こういった実態についてどう捉えるかということでございます。
また、図表51を見ていただきますと、これも推計でございますが、後払い決済サービスの国内市場規模の推移は、今後、右肩上がりで利用者が増えていくことが想定されております。
60ページの下半分、図表51の下の「キャリア決済」というところでございます。キャリア決済に関する具体的な相談内容として最も多いのは、キャリア決済と通信・通話料の分離ができず、支払停止ができないということでございます。
ずっと下のほうにまいりまして、下から4行目の「さらに」というところでございます。スマートフォンは今や生活上のインフラとなっております。通信料はそれを維持するために必要な支払いとなっております。キャリア決済は、実質的に強制力をもって、通信料と一般の商品等の代金を一体的に支払わせる支払手段となっております。スマートフォンによる通信を維持するためには、消費者はキャリア決済による代金を通信料とともに支払わざるを得ない状況となっております。こうした特別な力を持つ支払手段に対し、それを規制する法制度がない状況を看過し得るのかという御指摘がございました。
「2 与信・多重債務との関係」でございます。後払い決済とキャリア決済は、与信機能を有する支払手段であるとも言えます。61ページの2の項目の最後の段落です。支払手段の多様化が多重債務に与えている影響の有無、信用情報機関が支払手段の多様化に対応しているかどうかについて分析することが必要であるという指摘がございました。消費者に与信=「借金を負わせる」という支払手段が、法規制のない状態であることを放置し得るかという指摘があったところでございます。
63ページにまいります。「3 いわゆる支払仲介会社について」というところでございます。既存の規制の対象となっているかどうか、不明確な主体として、いわゆる決済代行会社、収納代行会社、決済プラットフォーム等があります。現状、このようないわゆる支払仲介会社は多様な業態を含んでおります。
3の最後の行でございます。したがって、いわゆる支払仲介会社の果たしている役割や、いわゆる支払仲介会社に関する法律関係の実態や、そこでの消費者トラブルや被害回復の課題を精査する必要があると指摘されております。
「4 民事ルールについて」でございます。63ページの2つ目の段落、実際に消費者トラブルが発生し、消費者が損害を被った際に、その損害を回復するために機能するのは民事ルールでございます。行政機関の監督による規制だけでなく、民事ルールの在り方について議論することには意義があるという御指摘がございました。
64ページでございます。「消費者の利便性と法制度の在り方」でございます。最初の段落は、マンスリークリアについて指摘しております。支払手段のうち最も決済額が多いのはクレジットカードとなっており、マンスリークリアについて、相談件数の大きさ等から抗弁の接続等の適用を求める意見が多数ありました。マンスリークリアに抗弁の接続等を認める場合に、それにかかるコストは誰がどのように負担するかなどについては重要な論点となっております。
「また」の段落であります。全体をひっくるめまして、クレジットカードに限らず、一般的に、規制に対応するコストが大きくなると少額の支払サービスの運営が困難になるということが指摘されております。制度の枠組みを考える際には、こうした消費者の利便性、消費者トラブルの深度、金融技術の発展へ与える影響、マクロ経済への影響等という観点を乗り越えていく必要がある。今後、こうした視点も含め、調査審議を発展させていく必要があるということが指摘されました。
御説明は以上です。
○鹿野委員長 丁寧な御説明をありがとうございました。
それでは、これより意見交換としたいと思います。いかがでしょうか。
小野委員、お願いします。
○小野委員 小野でございます。
御説明、恐れ入ります。
私からは、消費者教育の観点から今回の内容について支持をする意見を2つ申し上げます。
1つ目は、20ページになるかと思いますが、私自身も後払い決済(BNPL)の信用情報機関の利用の義務付けが必要だと考えています。その信用調査との関わりで申し上げたいと思います。
消費者教育、例えば大学などで授業をするときに、自分の持っている信用スコアリングを下げないようにする、信用を築くことの重要性を伝える場面がよくあります。金融業者からお金を借りるときは信用力が調査されて、それをベースにお金を借りるということが大前提になるわけです。従いまして、収入証明などが必要ないキャリア決済とか後払い決済というものがこの範疇から外れているとはとてもやりづらいといいますか、消費者にとっては理解が進まないということでございます。
それから、2つ目です。2024年の421回消費者委員会本会議において、全国社会福祉協議会の方に説明をいただいています。「地域の高齢者対応の現状と課題について」でございましたが、キャッシュレス決済の利用について、例えば、見えないお金のやり取りは障害特性などによっては理解しづらい、生活費が不足をして困窮をしたり、多重債務を抱えてしまうといった、サポートが必要な消費者の特性などと関わらせながら御説明いただいたという経緯がございます。
繰り返しになりますが、キャリア決済、後払い決済といったものを入り口にして消費者トラブルを大きくさせている消費者もいるということもありますので、今回まとめていただいている内容について強く支持をしたいと思います。
私からは以上です。
○鹿野委員長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
黒木委員長代理、お願いします。
○黒木委員長代理 丁寧な御説明をありがとうございます。
まず、消費者委員会では、この問題について令和6年に第5期消費者基本計画に関する意見をまとめました。具体的には、令和6年9月27日に出した「次期消費者基本計画の策定に向けた消費者委員会意見」の中で、「決済制度の安全性・透明性の確保と消費者保護の一層の取組」という項目を設けています。
そこでは次のような意見を述べています。「決済制度は、割賦販売法における支払停止の抗弁の適用など、消費者被害を防ぐ最後の砦となり得るものです。キャッシュレス決済が広がっている現在、消費者保護の観点から、安全性に関するものも含めて、決済制度をさらに整備・拡充していくべきです。決済制度を規制する法律はそれぞれ分かれて存在しており、規制の隙間や強弱の違いを悪質な業者が利用している可能性があります。関係する行政機関は、安全な決済制度の仕組みについて検討すべきです」というものでした。
この意見を受けて、消費者庁も令和7年3月18日に閣議決定した基本計画の中で、33ページに「決済サービスの多様化への対応」という項目を設けています。そこには次のように書かれています。「キャッシュレス決済の普及と支払手段の多様化によって決済手段が複雑になっている現状を踏まえ、キャッシュレス決済やクレジットカード決済について、法律の実施状況を継続的に注視します。過剰与信の防止については、割賦販売法で義務付けられた事業者による支払可能見込額の調査を適切に監督するとともに、消費者に対してキャッシュレス決済の適切な利用方法を普及させます。法規制が及ばない決済サービスが存在するという指摘を踏まえ、トラブルなどの状況について実態を把握し、必要に応じて必要な対策を検討します」となっています。
しかし、これはまだかなり抽象的なレベルの内容でした。今回の支払制度専門調査会における中間報告は、第5期消費者基本計画で定められた「必要に応じて所要の対策を検討する」という部分について、重要なマイルストーンやキーストーンになったと考えています。
また、もう一つ重要だと思うのは、「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」の報告書との関連です。この報告書の「デジタル化による技術の進展が消費者の関わる取引環境に与える影響についての基本的な考え方」という部分で、「事業者が多層的に関わることとの関係、技術の進展、デジタル化の下で法制度が果たすべき役割」について指摘されています。まさに、デジタル決済やキャッシュレス決済は、このようなデジタルアーキテクチャーの力によって構築された結果とも言えるでしょう。
ですから、内閣府消費者委員会が出したパラダイムシフト専門調査会の報告書と、今回の支払制度専門調査会の中間整理は繋がっていると考えられ、とても重要な報告になると思っています。
ただし、これはまだ中間整理の段階ですので、今後どのような点を考えていかなければならないかという課題があります。私はこの専門調査会にオブザーバーとして参加していましたが、実際にこのようなサービスを提供している事業者側をある程度代表する委員の方はいらっしゃったものの、具体的に事業者団体からのヒアリングまではできていませんでした。
そのため、最終報告に向けては、そういった関係者からのヒアリングも行った上で、先ほど述べました消費者庁の第5期消費者基本計画で触れられている必要な法制度について考えていく必要があるでしょう。基本計画にも「必要に応じて所要の対策を検討する」と書かれているのですから、必要な対策としてはこれがあるのではないか、ということを検討していくことになると思います。
同時に、この支払制度に関しては、さまざまな省庁が持っている監督権限と、フィンテックの進展に伴って新しい技術であるために法制度が追いついていない部分、そして、キャリア決済が典型例ですが、キャリアについては一応監督官庁があるものの、総務省自身がフィンテックと関わる部分についてはまだ十分に把握しきれていないといった、省庁間の隙間や法制度の隙間が点在しています。
これについては、消費者庁だけでは解決できない問題ですので、内閣府の消費者委員会が今後第9次に向けて、この中間整理を受けた最終報告を作成していくことは、先ほどの消費者基本計画との関連においても、また、パラダイムシフト専門調査会の最終報告書で指摘された、デジタル技術を使った人々のエンパワーメントの問題も含めて、大変重要なものだと思っております。
第8次の終わりにこの中間整理がまとまったことについては、内閣府の消費者委員会で支払制度を絶対に検討すべきだと申し上げた一人として、この8月の段階でとても意味のある報告をいただけたことを本当にありがたく思っております。これは確か今年の2月から始まって、7月の終わりまでの間に、本当に集中的に議論をしていただいてここまでの内容ができあがったわけで、そういう意味では専門調査会の各委員の先生方、そして座長の坂東先生に、心からお礼を申し上げたいと思います。
以上です。
○鹿野委員長 ありがとうございました。
既に昨年、消費者委員会から出した「次期消費者基本計画策定に向けた消費者委員会意見」の中で触れられてきた問題意識についても確認していただき、その後、消費者庁から本年出された消費者基本計画の中でも、決済制度について必要に応じて対策を講じる必要があると書かれていたけれども、まだ抽象レベルにとどまっていたというところを、この専門調査会において、具体的なデータなどに基づいて整理し重要な点について御指摘をいただいたということで、その意味は大きいという御指摘をいただきました。
ほかにいかがでしょうか。
もしよければ、大澤委員、何かございませんか。
○大澤委員 私は、今朝急用が入って5分ぐらい遅刻してしまったので、発言を控えておりました。ほかの委員の皆様が発言してからと思っておりました。
報告書を拝読させていただいて、今とにかく多様化している決済手段について、非常に包括的に、アンケート調査も踏まえて、そもそもまずどういう支払手段があるかということを改めて一覧性のある形で出してくださったことは、私個人的にも大変勉強になりました。
例えば、今、コンビニエンスストアとかスーパーのレジに行くと、こういう決済手段が使えますとレジの横に貼ってあると思うのですが、本当にいろいろな種類が増えたなと思っています。クレジットカードとか現金以外に、QRコードとかキャリア決済とか本当にいろいろなものが増えている。私が意外に思ったのは、クレジットカードの利用率はほかの決済手段より結構使われているのだなと思ったのですが、そういったものをまとめていただいて、実際にどういう問題が起きていて、それぞれの決済手段でどういう法的な穴があるかというのをまとめてくださって、専門調査会の委員の先生方の御尽力と、事務局の皆様がこれだけまとめてくださったことに心より感謝いたします。
今日お話を伺っていて、私が改めてこれはなかなか悩ましいなと思ったのは、マンスリークリアに関する問題です。マンスリークリアは、御承知のとおり、現在、割賦販売法の抗弁の接続等の対象外になっているわけで、マンスリークリアだけが対象外になっていることについては、実務あるいは研究者の中からも問題としては提起されているところだと思います。
これもどうすればいいのか、なかなか悩ましいなと思いながら伺っていたのですが、確かに経済学的な観点、あるいは経済活動という観点から見たときに、マンスリークリアについても、例えばどこまでの抗弁の接続を認めるのかとか、規制というか、民事的な効果も含めてかけていくかというのはなかなか悩ましいなと思いました。
他方で、マンスリークリアをめぐる消費者の苦情が多いというのも事実でございますので、割賦販売法でボーナス払いというのはたしか2008年に対象に追加されたはずですが、今、マンスリークリアだけが除外されてしまっているということをどう考えるのだろうかというのが、この報告書を読んで非常に難しいなと思いました。例えば、金額で下限を決めるのかとか、いろいろなやり方はあるのかなと今のところは思っております。
いずれにしても、これは中間報告と言うにはもったいないぐらい、すごく大部で、問題点を、民事、行政、様々な効果を含めてまとめてくださっていますので、これを踏まえて第9次でどういう形でこれを今後審議を続けていくのかというのは分かりかねるところもあるのですが、ぜひこれで一つの成果が出せることを心より期待しております。
あとは、決済手段に関しては、もちろん被害が起きた場合ということで、私はもともと民法の専門であるので、民事的な抗弁の接続とか、加盟店の管理義務とか、そういった話にもともと興味がありますが、過剰に支払義務を負わせてしまう、いわゆる借金を多く抱えてしまうというところと同じ問題があるというのがほかの消費者問題とやや違う特徴ではないかと思っていますので、そういった観点からも検討が必要であると思っております。
中身のない話で大変申し訳ないのですが、大変勉強になりましたので、今後この審議は当然続くのだと思うのですが、どういうふうにまとまるのだろうかと大変期待して見ているところです。どうもありがとうございました。
○鹿野委員長 ありがとうございました。
ほかはよろしいでしょうか。
柿沼委員、もし何かございましたらお願いします。
○柿沼委員 ちょっと気になったことがありますので申し上げたいと思います。
まず、今回の調査会では、決済制度に関する法的な視点のお話が中心となった印象を受けます。あとは、どちらかというと被害が起こったときにどうすればいいかという観点が中心になっておりまして、消費者問題という観点からの議論、一消費者としての意見がまだまだ尽くされたとは思えないということを、調査会の中でもオブザーバーではありながら意見を伝えたところではありますけれども、中間案を拝見し、その点が特に気になっております。今後は、もう少し消費者問題というところを中心とした議論の展開もぜひお願いしたいと思います。
黒木委員長代理からもお話がありましたが、消費者問題について決済事業者は一体どのような取組を行っているのか、行っていないのか、その辺りも踏まえた問題にももう少し踏み込んで議論を行っていただければと思います。その点についてお伝えしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○鹿野委員長 ありがとうございます。
中間整理までのところでは、消費者トラブルの実態や、現行法でどこまで対応できているのか、どこに穴がありそうかということなどを、先ほど大澤委員からも御指摘がありましたように、きれいに整理していただいたと思いますけれども、限られた時間の中で優先的にやることということで、このような形のまとめにしていただいたと思います。今後、具体的にどういう対応が必要なのかというところを深掘りしていく中で、今御指摘があったように、事業者からのヒアリングなども恐らく行われるものと思います。これは専門調査会でもそういう認識を持っていらっしゃいますので、一方的に事業者抜きで制度はこうあるべきだという結論を出すということではないと思いますけれども、柿沼委員から改めて御指摘をいただきました。ありがとうございます。
意見交換の時間として11時ぐらいまでを予定していましたが、よろしいでしょうか。もし何かありましたら追加で御発言をいただいてもいいのですが、よろしいでしょうか。
大澤委員、お願いします。
○大澤委員 先ほど言うのを忘れたのですが、たまたま私は今、夏休み中ではあるのですけれども、他大学で集中講義をやっていて、この決済の話はちょうど昨日やったところですけれども、もう一つ悩ましいなと思ったのはキャリア決済です。
キャリア決済はもちろん携帯電話の利用契約も絡んでいますので、今後もしキャリア決済に、例えば助言とか、もうちょっと厳しくするとか、いろいろやったときに、役所で言うと総務省で携帯電話関係の調整等々が必要になってくるのではないか。これも言われていることなのかもしれませんが、いろいろ決済手段がある中でなかなか問題が難しいと思ったのはキャリア決済であります。これもぜひ第9次で検討になるのではないかと思いますので、まさに先ほど柿沼委員がおっしゃっていた予防というのですか、被害に遭ってということよりは、むしろキャリア決済で使い過ぎてしまうことを防ぐことも必要ではないかと思います。忘れていましたので申し上げます。失礼いたしました。
○鹿野委員長 ありがとうございました。
この中間整理の中でも、キャリア決済の問題について御指摘があったと思いますし、黒木委員長代理からも、今まで専門調査会の中でそういう御指摘をしていただいていたものと思います。
柿沼委員、追加でお願いします。
○柿沼委員 柿沼です。
ちょっと気になることがあったのでお伝えしておこうかなと思うのですけれども、この調査会は支払制度の制度についての調査会ではなく、消費者問題に関した専門調査会となっておりまして、どちらかというと法的な話が先行して中間案その議論が大方と思うのですけれども、私はその部分は当然大切だと思いますけれども、やはり決済について消費者がどのように感じているのかにスポットを当てて、その内容と支払手段の多様化がどう問題なのかというところを踏まえたお話をしていただければと思っております。
なぜか決済制度に関する調査会というようなお話をなさっているところがあるかと思うのですが、そうではなく、もう少し広い観点で議論を深めていただきたいと思っております。この部分だけ付け加えさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○鹿野委員長 ありがとうございます。
正式名称は「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」ですが、ただ、タイトルが長いので、私たちは「決済制度専門調査会」という略称を用いて呼んだりしてきたことがございました。
それで、柿沼委員の問題意識が十分理解できているかどうかが分からないので、もし違ったら御指摘いただければと思いますけれども、ここにはどういう問題が生じているのかということでその実態をきちんと捉えるということがあり、また、小野委員から先ほど消費者教育の観点からということで御発言いただきましたけれども、消費者教育との関連等についても、これはまさに予防という観点からは非常に重要なところでございまして、そういうところについても触れられているところです。
一方で、予防という観点から見ても、先ほど黒木委員長代理からも御指摘がありましたように、規制の穴が生じていたり、規制にでこぼこがあって、とても弱いところができている。そうすると、その弱いところを悪質な事業者が利用して消費者被害をもたらしているという状況があるとすると、そのような被害やトラブルを予防するためにはやはり規制が必要ではないか、少なくとも現在の規制の在り方を見直していく必要があるのではないか、そういうところに予防という観点からもつながるのではないかと私自身は思っているところです。
柿沼委員、消費者問題というところにもっと焦点を当ててとおっしゃったのですけれども、今のような問題意識と柿沼委員のおっしゃる消費者問題というところで食い違っているところはございますでしょうか。もう一言、こういうところをとより具体的に御指摘いただければと思います。
○柿沼委員 承知いたしました。
法律に抜け穴があるとか規制の部分の御指摘などについては異論はございませんし、その話し合いをすることはもっともなことですけれども、法律では見えないような部分についてもう少し議論が必要ではないかなと思っております。
私が必要と思っている点として決済に関する消費者教育の充実や、決済事業者等がセキュリティー対策をどのように行っているかとか、いろいろあるかと思います。また、被害に遭ったときに、例えば消費者が決済事業者に電話をかけても連絡が全然取れず困っている問題やチャットで相談しかできず人間と話ができず意思が伝わらないとか、金銭的な被害に遭った際に対応方法が分からないとか、そういう事についての問題点は議論がされていない印象があります。また、消費者がキャッシュレス決済を行う際に事業者によって操作などに違いがあり、その部分についても順応できない消費者がいるというところがあります。
そういうような、例えばユニバーサルデザインとか、その辺りについても、制度だけがきれいに整えばいいわけではなく、もう少し踏み込んだ問題について議論していただきたいです。消費生活相談員向けのアンケートの中にも、相談員が事業者とお話をするに当たり困っている部分が法律以外のものについてもたくさん出てきているかと思います。その辺りについて、中間案まででは議論がなされていないことを私は懸念しています。
今までも、キャリア決済の問題やマンスリークリアの問題については、この委員会で初めて出てきた問題ではなく、いろいろなところで議論が持たれているというところは承知しておりますので、それ以外の部分についてスポットを当てて議論していただけるのではないかなと私は少し期待していた部分があったのですけれども、中間案を見ると、その辺りについては全く記載がない。全くと言ったら語弊があるかと思うのですけれども、私は記載が十分とは思っておりませんので、今後の議論の中でもう少し深掘りして、意見を反映していただけるような内容を設けていただけると大変ありがたいなと思っております。
当然、法制度に抜け穴があり、その部分について検討するということについて、異論はございませんが、それ以外の内容については薄く感じたものですから、意見として上げさせていただきました。
以上です。
○鹿野委員長 ありがとうございました。御発言の趣旨が少し分かってまいりました。
恐らく、法制度というところだけではなく、あるいは法制度をどういう形で設けるのかということを考える上でも、法制度以外の手段でどこまで賄えるのか、どのような方策が効率的・効果的なのかというところも当然視野に入れなければいけないと思いますし、先ほどおっしゃったように、前半の中間整理までの段階では事業者からのヒアリングなどの機会を設けることができませんでしたので、例えば、今御指摘になったセキュリティー対策として事業者あるいは事業者団体でどういうことが考えられるのか、現状どうなっているのかというところについても、情報を集める必要があるのであろうと思います。また、この中間整理にも少しは触れられていたと思いますけれども、今のところ、事業者によって対応が異なっていること、法的なレベルとは違うレベルで対応がある程度されているところとされていないところがあることなども伺っておりまして、そこら辺の状況についても、中間整理の段階までではヒアリング等を行う機会がなかったので、あまり触れられていないということもあるのかもしれません。
ユニバーサルデザインという御指摘もありました。御指摘の全てについて十分に触れられることになるのかはよく分かりませんけれども、御指摘のうち重要な点については恐らく後半で検討の対象、あるいはヒアリングの対象になるのではないかと私自身は認識しているところでございます。現時点の整理について今後これが更に必要だという視点についての御指摘として受け止めました。
柿沼委員、よろしいでしょうか。
○柿沼委員 ありがとうございます。
では、後半では御議論いただけるようお願いしたいと思います。
以上です。
○鹿野委員長 専門調査会にお願いしているので、私の独断で決めることではないのですが、改めてそういうことも含めて御検討いただけるようにお願いしたいと思います。ありがとうございました。
ほかにはよろしいでしょうか。
ありがとうございます。
本日は、「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」の中間整理について意見交換を行いました。委員からは様々な角度から御指摘をいただいたところでございます。
もともとこの専門調査会を内閣府消費者委員会の下で設置しようと決めたところの問題意識については、先ほど黒木委員長代理からも丁寧に確認をしていただいたところですけれども、改めて申しますと、「次期消費者基本計画策定に向けた消費者委員会意見」に向けていろいろなテーマについて検討する中で、かなり早い段階で決済制度と支払手段の多様化に関する問題を取り扱いました。消費者委員会としても、その段階では深掘りをすることまではできなかったのですが、それでも、支払手段の多様化に伴って既存の法規制の対象から漏れているものなど、制度の隙間が生じているのではないか、また、たとえ一応の規制はあるとしても、規制の差異などが大きくなっていて、それが消費者トラブルの増加や救済の困難をもたらしているのではないか、あるいは柿沼委員から御指摘いただいたような問題意識も多少は含まれていたと思いますけれども、主には今申しましたような問題意識が消費者委員会意見の中でも示されていたところでございまして、それに基づいて昨年12月に「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」を立ち上げることを決定したものでございます。
今回、中間整理を取りまとめていただき、ここでは、既に複数の委員から御指摘がありましたように、現在の実態をデータ等を踏まえてきちんと整理していただいているということであり、先ほども言いましたけれども、現在の法制度との関係でどこに穴があるのかということについても非常に分かりやすくなったのではないか。現状をきちんと整理することがあって、初めて今後どういう対策が必要なのかということの検討が可能になるわけですので、そのための重要な基礎を成す整理が行われたものと思うところでございます。それから、一般消費者へのアンケートの実施もあって、それも含めて支払手段に係る消費者問題の実態を、検討が要請されることの一つの根拠資料として示されているということも重要だと思います。さらに、それを踏まえて、優先して今後調査検討すべき問題を洗い出して、これだけというわけではないかもしれませんが、今後の方向性を一定程度を示しており、非常に有益と考えております。
恐らく今後、中間整理で指摘された事項の中でも特に重要な事項を中心にして、個別に深掘りして調査審議が進められるものと思っているところでありまして、その中で、柿沼委員がおっしゃったような、もう少し広い観点、あるいは事業者としてどういう対応が可能なのか、あるいはどういうことを行っていらっしゃるのかということに関するヒアリングを実施するなどして、その点も踏まえて検討が進められるのではないかと思っているところです。
今後は、9月以降の次期の消費者委員会においてということになろうかと思いますが、そこで中間整理の続き、つまり、これを踏まえて今後どういう対策が講じられるべきなのかということについての御検討があることを期待しているところです。
今期の消費者委員会は任期が8月末までとなっておりますが、ぜひ次期の消費者委員会に対してもその点の重要性を申し送りということでお伝えして、御検討を進めていただきたいと思っています。
「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」の委員の皆様には、精力的に御審議いただき、中間整理を取りまとめていただいたことに改めて感謝を申し上げたいと思います。先ほども言いましたが、第9次の消費者委員会において、これを踏まえて更に具体的な検討を進めていただくことを大いに期待しています。
以上で、本日の第1の議題については終わりとさせていただきます。
《3. その他》
○鹿野委員長 次は、「その他」についてです。消費者委員会に寄せられた意見書等の概要につきまして、事務局から御説明をお願いします。
○友行参事官 それでは、参考資料1-1を御覧いただけますでしょうか。消費者委員会に寄せられた要望書・意見書等の6月分でございます。
まず1つ目、宅地建物取引業法のクーリング・オフ制度について改正を求める意見書となっております。右側のポイントのところを見ていただきますと、「宅地建物取引業法37条の2を次のように改正することを求める」と記載されております。宅建業法の37条の2というのは、宅建業者と消費者との間での宅地や建物などの売買契約に関するクーリング・オフ制度を定めたものとなっております。それについて、このポイントを見ていただきますと、1つ目は代金を全部支払ったときはクーリング・オフできないというものを削除してほしいとか、クーリング・オフ妨害があった場合の規定を設けてほしいという御意見となっております。
その背景といたしましては、意見書によれば、最近、宅地建物取引業者による訪問販売、とりわけ賃貸用物件やその共有持ち分の販売において不適切な勧誘が後を絶たない。これに対して、現行のクーリング・オフ制度では消費者保護が適切に図られていない。特に、リースバックなどと称して、当該高齢者が所有する自宅不動産を買い取る勧誘についてもトラブルが急増しているという御指摘がございました。こういうことを背景にこのような意見書が届いております。
次は、特商法に関する法改正を求める意見書となっております。訪問販売・電話勧誘販売に対しては、勧誘拒否者に対する訪問販売の規制等となっております。
その次は、食の安全に関する政策についての質問状でございます。右側のポイントのところを見ていただきますと、食品添加物については、安全面に加えて、表示の不備などから消費者がしっかりと選択できなくなっているという問題意識の下、御意見をいただいているところでございます。
それから、消費生活相談体制をはじめとする地方消費者行政の維持・強化を求める意見書もいただいております。右側のポイントところを見ていただきますと、例えば、1番ですが、国は、消費生活相談員の人件費に充てることを含む人材確保及び処遇改善に活用できるよう、交付金の交付期限を延長して、少なくとも同交付金と同様に、人件費にも充てることができる交付金等の強力な財政支援を早急に措置すること、また、PIO-NETなどについては、国が全額負担する措置を講ずることなどの内容となっております。
その下、公益通報に関する意見について3通いただいております。
また、その他の中のくくりになりますけれども、共用空間での「香り演出」についての自粛を求める意見書や、参考送付として薬害オンブズパーソン会議からいただいた意見書が届いているところでございます。
さらに、6月分につきましては、あわせて参考資料1-2を御覧いただきまして、国民生活センターの記者公表案件一覧についても御紹介いたします。4月、5月、6月の公表分でございます。
まず、上から3番目、「新生活スタート後に気を付けたい消費者トラブル」ということで、4月の半ば頃に公表されたものでございます。新生活スタート後に気を付けたい消費者トラブルとして、訪問販売トラブル、もうけ話トラブル、ネット回線などの通信契約トラブルなどが取り上げられておりました。
その次に、海外事業者とのサブスク契約について注意喚起が出ているところでございます。占いサイトがサブスク契約になっていたとか、サブスクを解約したはずが請求が続いているというような消費者トラブルについての注意喚起がなされております。
5月のところに行きまして、「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意」という注意喚起の公表資料、報道発表資料が出ております。強引に勧められる住宅のリースバックに注意ということでございます。自宅マンション、戸建て住宅を売却すると同時に、その不動産の賃貸借契約を結んで、その後は家賃を払いながら同じ家に住み続ける、いわゆる住宅のリースバックの契約に関する相談件数が足元2024年では239件上がってきております。ボリュームとしては大きくないかもしれませんが、右肩上がりでものすごい勢いで増えております。特徴としては、契約当事者の7割が70歳以上です。その割合を見てみますと、70代が26パーセント、80代が41パーセント、90代が6パーセントとなっております。高齢の方が非常に被害に遭っていることが見てとれます。これについての公表資料が出ているということでございます。
それから、18歳、19歳の消費生活相談の現況についても、念のため確認したいと思います。2022年4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ、3年が経過しております。この間、18歳、19歳を契約者とする相談件数は、幸いなことに右肩上がりということはなく、横ばい、ないしはなだらかな右肩下がりという実態となっております。足元2024年では8,900件で少なくはないのですけれども、相談件数はその数字となっており、前年よりも若干下がっております。内容としては、脱毛エステや医療サービスなどの美容に関するもの、それから、副業などの金銭に関するものが傾向としては多いというところは変わっておりません。
最後、太陽光発電システムの点検商法の相談が急増していることについても御紹介いたします。こちらは、足元の相談件数は613件という国センのデータとなっておりまして、前年から倍増しております。こちらは、点検が義務化された、法的にやらなければならないといううたい文句で点検を迫られるということになっております。ただ、点検義務の対象となるかどうかはそれぞれでありまして、全部が点検対象となっていないことを消費者の方がどれだけ知っているかということがまず大事なポイントの一つかと思われます。
御説明は以上です。
○鹿野委員長 御説明ありがとうございました。
委員からこれについて何か御意見等がありましたら、よろしくお願いします。いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
今回も、多くの御意見等をいただきました。御意見等を寄せていただいた団体・個人の皆様に感謝を申し上げます。これらの意見書等については、必要に応じて消費者委員会の調査審議において改めて取り上げることといたします。
《4. 閉会》
○鹿野委員長 本日の本会議の議題は以上になります。
最後に、事務局より、今後の予定について御説明をお願いします。
○友行参事官 次回の本会議の日程と議題につきましては、決まり次第、委員会のホームページを通してお知らせいたします。
以上です。
○鹿野委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。
お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。
(以上)