第465回 消費者委員会本会議 議事録
日時
2025年7月9日(水)12:30~14:53
場所
消費者委員会会議室及びテレビ会議
出席者
-
- 【委員】
- (会議室)鹿野委員長、黒木委員長代理、柿沼委員、中田委員
- (テレビ会議)今村委員、大澤委員、柿沼委員、原田委員、星野委員、山本委員
-
- 【説明者】
- 公共料金等専門調査会 野村座長
- 消費者庁公益通報・協働担当 茶谷参事官
- 消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会 沖野座長
- 消費者庁 黒木審議官
- 消費者庁消費者制度課 古川課長
-
- 【事務局】
- 小林事務局長、吉田審議官、友行参事官
議事次第
- 公共料金の変更について(東日本旅客鉄道の鉄道事業における旅客運賃の上限変更案)
- その他
- 消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会の報告について
配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)
- 議事次第(PDF形式:183KB)
- 【資料1-1】 東日本旅客鉄道の鉄道事業における旅客運賃の上限変更案について(消費者庁付議文書)(PDF形式:230KB)
- 【資料1-2】 「東日本旅客鉄道の鉄道事業における旅客運賃の上限変更案」に関する公共料金等専門調査会意見(消費者委員会事務局提出資料)(PDF形式:219KB)
- 【資料2-1】 消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会報告書(PDF形式:830KB)
- 【資料2-2】 消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会報告書(概要)(PDF形式:1,370KB)
《1. 開会》
○鹿野委員長 本日は、お忙しいところ、お集まりいただき、ありがとうございます。
ただいまから、第465回「消費者委員会本会議」を開催いたします。
本日は、黒木委員長代理、中田委員、そして、私、鹿野が会議室にて出席しており、今村委員、大澤委員、柿沼委員、原田委員、星野委員、山本委員がオンラインにて御出席です。
小野委員は、本日、御欠席と伺っております。
委員の中に、一部遅れての御参加と伺っている方がいらっしゃいますが、定刻になりましたので、これより始めたいと思います。
それでは、本日の会議の進め方等について、事務局より御説明をお願いします。
○友行参事官 本日もテレビ会議システムを活用して進行いたします。
配付資料は、議事次第に記載のとおりでございます。もしお手元の資料に不足等がございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願いいたします。
以上です。
○鹿野委員長 ありがとうございました。
《2. 公共料金の変更について(東日本旅客鉄道の鉄道事業における旅客運賃の上限変更案)》
○鹿野委員長 本日最初の議題は「公共料金の変更について」でございます。
今回、東日本旅客鉄道の鉄道事業における旅客運賃の上限変更案について、資料1-1のとおり、消費者庁長官から消費者委員会に対し意見を求められております。
そこで、公共料金等専門調査会において調査審議を行い、今般、意見の取りまとめが行われたところでございます。
本日は、この専門調査会取りまとめの内容について御報告をいただき、当委員会の意見をまとめたいと思います。
改めて御紹介をさせていただきます。
本日は、公共料金等専門調査会の野村座長にオンラインにて御出席いただいております。
また、消費者庁公益通報・協働担当の茶谷参事官に会議室にて御出席いただいております。
皆様、本日は、お忙しいところ大変ありがとうございます。
本日の進め方ですが、まず、変更案に関する公共料金等専門調査会の意見の内容について、野村座長から概要を御報告いただいた後、事務局から詳細を御説明いただきます。その後、意見交換を行った上で、当委員会としての意見を取りまとめたいと思います。
それでは、野村座長の御報告と、事務局の御説明を順にお願いいたします。
○公共料金等専門調査会野村座長 了解いたしました。
専門調査会の座長を務めております、野村でございます。よろしくお願いいたします。
東日本旅客鉄道の鉄道事業における旅客運賃の上限変更案につきましては、4月14日と5月12日に開催しました公共料金等専門調査会におきまして、国土交通省及び東日本旅客鉄道株式会社へのヒアリングを実施するなど、計3回にわたりまして議論を行い、意見書を取りまとめましたので、本日、ここで御報告させていただきます。
今回付議されました変更案は、令和8年3月に首都圏に設定している電車特定区間及び山手線内の運賃区分を幹線に統合した上で、幹線及び地方交通線の普通旅客運賃及び通勤定期旅客運賃を改定するというものであります。
なお、家計負担を考慮し、幹線及び地方交通線の通学定期旅客運賃は据え置かれるものの、電車特定区間及び山手線内の通学定期旅客運賃は幹線への統合に伴って改定されます。
その結果、普通運賃は平均7.8パーセント、通勤定期は平均12.0パーセント、通学定期は平均4.9パーセント、全体としましては平均7.1パーセントの値上げとなっております。
当専門調査会では、今般の運賃改定の審査に際して、鉄道運賃水準の算定根拠となる総括原価の算定方法を定めるJR旅客会社、大手民鉄及び地下鉄事業者の収入原価算定要領に沿った対応が行われていることを確認したほか、旅客運賃等の上限による総収入が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるとの予測にも一定の合理性があると判断し、変更案について妥当であると結論づけたところであります。
ただし、JR東日本の直近の業績が好調である中で申請されました今般の運賃改定は、消費者に少なくない負担を生じさせる一方で、改定の内容や理由、さらに消費者の生活に及ぼす具体的な影響に関しまして、適時適切な周知・説明が行われているとは言い難いという点で複数の意見がございました。
また、電車特定区間及び山手線内の運賃区分が適用されますエリアについては、当該運賃区分が廃止され、幹線へ統合されることに伴い、通勤・通学定期を含めて、他のエリアに比べて値上げ幅が大きくなっていることから、運賃区分別の収支状況を可能な範囲で公表するなど、透明性を高める努力が必要であるとの意見もございました。
これらの課題は、意見書においても留意事項として記載しました上で、その対応状況等につきましては、必要に応じて事後検証を行うこととしております。
それでは、意見書の詳細については、事務局から説明をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○友行参事官 それでは、資料の1-2を御覧いただけますでしょうか。
「『東日本旅客鉄道の鉄道事業における旅客運賃の上下変更案』に関する公共料金等専門調査会意見」でございます。
前半に記載しておりますところについては、ただいま座長から御紹介があったところを文書として起こしているところでございます。
最初の段落のところでございますが、表のところの3行上「この結果」というところでございます。普通運賃については平均7.8パーセント、通勤定期については平均12.0パーセント、通学定期については平均4.9パーセント、全体としては平均7.1パーセントの値上げになっているということでございます。
また、その値上げ率の内訳といたしましては、その下の表にあるとおりでございます。
「1.結論」のところにまいります。
先ほど座長から御紹介もありましたように、変更案については妥当であると認められるとしております。
「2.理由」でございます。
最初のマルでございます。鉄道運賃制度におきましては、総括原価方式の考え方に立ち、個々の運賃の上限を認可する枠組みが採用されているところでございます。
2ページ目にまいります。
2つ目のマルでございます。専門調査会におきましては、収入面では新しい生活様式の定着に伴う鉄道利用の減少、今後の更なる沿線人口の減少を反映した将来輸送量の推計、費用面におきましては、昨今の物価高騰、それから人材確保、定着に向けた待遇改善に伴う人件費増に加えて、事業報酬水準などについても確認がなされました。
審議の過程におきましては、国土交通省に対しまして、減価償却費の算定内容に関する詳細資料の提出、また、JR東日本に対しましては、運賃改定の必要性、電車特定区間、山手線内の運賃区分を廃止し、幹線に統合する理由などについての詳細資料の提出を求めるなど、多様な視点から変更案について議論を深めたところでございますということでございます。
その結果「1.結論」となされたというところでございます。
「3.留意事項」でございます。国土交通省及びJR東日本は、以下の点について留意すべきであるとされております。
「(1)運賃改定に関する消費者への丁寧な周知・説明について」でございます。
今般のJR東日本の改定につきましては、消費者に少なくない負担を生じさせる一方で、改定の内容・理由や消費者の生活に及ぼす具体的な影響に関して、適時適切な周知・説明が行われているとは言い難いとされております。特に電車特定区間及び山手線内の運賃区分につきましては、通勤・通学定期を含めて、他のエリアに比べて値上げ幅が大きくなっております。こうした区分変更に伴う運賃改定に際しては、運賃区分別の収支状況を可能な範囲で公表するなど、透明性を高める努力が必要であるとされております。
3ページ目でございます。
今般の運賃改定が鉄道設備の強靱化、セキュリティ対策、老朽化した車両設備の更新など、JR東日本が展開する広範な鉄道ネットワークの持続的な維持、輸送サービスの改善に必要なものであることについて、消費者の納得を得るよう説明を尽くすべきであるとされております。
また、こうした安全性、利便性、快適性の向上に関する具体的な進捗状況や成果を積極的に開示する、消費者に対する丁寧な説明を継続的に行うことが望ましいとされております。
「(2)安全・安心の確保及び今日的な課題への対応について」でございます。
鉄道事業者におかれましては、安全・安心の確保はもとより、自然災害、カーボンニュートラル、ユニバーサルデザインへの対応など、今日的な課題を解決するための様々な設備投資を計画的に実施することが求められております。
今般の運賃改定による収入増を踏まえまして、大規模地震対策、エネルギー・環境対策といった中長期的な視点に立った取組を進めることが重要であるとされております。
さらに、事故防止対策、ホームドア整備、防犯対策などの安全性の向上、駅改良といった利便性、快適性の向上など、全ての消費者が改善を実感できる取組を着実に進めるべきであるとされております。
国民生活におきましては、その状況が大きく変化し、社会や利用者が鉄道事業に求める役割・サービスも多様化しております。鉄道事業者におかれましては、消費者の行動変容やニーズの変化を的確に捉えたサービスを機動的に提供していくことが求められていると考えられます。
今般の運賃改定を契機として、混雑率の現状を踏まえた列車運行本数の拡充等、緑の窓口におけるサービスレベルの改善、運賃・料金に関する様々な提案に柔軟に対応するための投資を戦略的に進めるなど、消費者の利便性・快適性を更に向上させるべきであるという意見でございます。
また、運賃改定についての消費者の理解を得るためには、こうした取組に関する具体的な整備内容、改善効果等に関して、広報媒体等を工夫しながら分かりやすく継続的に周知することが必要であるとされております。
以上につきまして、公共料金等専門調査会は、留意事項の対応状況等について、必要に応じて、国土交通省へのヒアリングを含めた事後検証を行うこととしたいとされております。
以上です。
○鹿野委員長 御説明ありがとうございました。
これより意見交換の時間としたいと思います。時間は10分程度を予定しております。いかがでしょうか。
中田委員、お願いします。
○中田委員 公共料金等専門調査会での御審議と意見書の御説明、ありがとうございます。コメントをお伝えしたいと思います。
まず、JR東日本の鉄道事業としては、1987年のJR東日本発足以来初の本格改定ということで、38年もの長い期間、本格的な料金改定をされずに運営継続をされて来られたことに対して、相当の企業努力があられたことと推察します。
それと同時に、現在の事業環境を鑑みて、今回の運賃改定案には、一定の妥当性があると感じております。
その上で、お願いしたいことといたしましては、事業のより一層の効率化を進めていただくと同時に、意見書にも記載がございましたが、幅広い利用者を想定した利用者満足度向上についても十分に配慮した事業推進をしていただきたいと思います。
具体例としては、現在、みどりの窓口は大幅に閉鎖する方針で、オンラインでのチケットレス化や、販売機の機能拡充などを進めているということですが、高齢者や、昨今、急増している外国人旅行客の方々にとっては、説明を伴う対面のサービスの必要性が、現時点では顕在化しており、多くのみどりの窓口が閉鎖されていることで、一部のみどりの窓口に利用者が殺到して、待ち時間が長時間化し、利便性の低下や混雑を招いているという状況も、個人として拝見しております。また、バリアフリー化の進捗も十分なスピードで進んでいるとは言えないのではないかと感じております。
幅広い多様性のある顧客層が利用する公共交通機関として、事業の効率化と同時に、利便性や快適性の在り方についても、利用者目線で御検討いただき、サービスの質を向上するための企業努力を、引き続きお願いしたいと思います。
以上でございます。
○鹿野委員長 ありがとうございました。
ほかに、いかがでしょうか。
今村委員、お願いします。
○今村委員 今村です。詳細な説明をありがとうございました。
専門調査会の意見そのものには、全くそのとおりだと思いますので、賛成させていただきます。
ただ、私もコメントをさせていただきたいのですけれども、今回、JR東日本の対策で安全について強化するということをコメントしていただいているのですけれども、やはりJRの安全問題で一番気になるのは、福知山線の事故のような、ああいう大規模な悲惨な災害事故をどうやって防ぐかということだと思うのです。
今回ハードの強化ということは、随分言っていただいているのですが、あの事故は、やはり職員の方々への安全運行のための投資が、あまり十分ではなかったのではないかということを危惧しています。
健康管理をするような体制とか、メンタルヘルスのフォローとか、産業保健分野についても、もっと強化して、ああいう事故が起こらないように対策を取ってほしいと考えております。
コメントとしては以上です。
○鹿野委員長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
大澤委員、お願いします。
○大澤委員 御説明いただき、ありがとうございました。
私も提案自体には、全く異存はないのですが、コメントをさせていただきたいと思います。
2点ありまして、1点なのですけれども、電車特定区間と山手線内というのが、今、恐らく運賃区分であると思うのですが、これらが幹線へ統合されるということを知って、そもそも、このエリアが幾つかに分かれていること自体、私はもともと地方出身者なので、東京に来たときによく運賃体系が分かりづらいなと感じておりました。
ただ、今回資料を拝見していると、これらのエリアが廃止されることで、結果的にこのエリアは、ほかのエリアに比べると値上げ幅が大きくなっているということですので、これも既に資料1-2の2ページの最後のほうにも書かれていることなのですけれども、こういう区分変更に伴って、一部運賃の上がり方がほかよりも大きいところがあるということですから、それについては、きちんと消費者に透明性を高める努力をしてほしいと、私もここは強く思います。
そもそも運賃エリアが幾つかに分かれていること自体が、今までも、私、一消費者としては、非常に分かりにくいなと感じておりました。要は、山手線から外に出てしまうと、急に料金が上がったなとか、そういうのを感じたことがあって、非常に分かりにくいなと、私のような地方から来た者は思っていたところ、今回、これが廃止されるというのは、確かにそういう意味では分かりやすくなるのかもしれませんが、ただ、結果的には値上げ幅が大きくなるということですので、そこについては、透明性を高める努力が必要だというのは、全くそのとおりではないかと思っています。
2点目なのですが、これは、先ほど中田委員がおっしゃっていたこととも、若干関係するようなことでもあるのですが、今、窓口を減らして、いろいろオンライン化されているということなのですけれども、非常に率直に申しますと、東日本さんのオンラインサービス、ほかのJRの会社に比べて、まだまだ改善の余地があると感じております。
例えば、一方で、確かに窓口が減らされていることで、特にオンラインにあまり慣れていない、あるいはオンラインをあまり使いたくないという消費者にとっては、非常に不便であるとともに、他方で消費者の中には、むしろオンラインで気軽に予約をしたいとか、逆に窓口に並ぶよりも早くやりたいという消費者もいるでしょうから、そのように2つに分けているというのは、それはそれでいいと思うのですが、肝心のオンラインのほうの予約が、例えば、ほかのJR東海さんとかと比べると、割引率であったりとか、あるいは割引運賃の数が少ないとか、いろいろ改善の余地があるのではないかと思っています。
窓口を減らして、その分オンラインにということであれば、ますます、オンラインのほうの改善もきちんとやっていただきたいと思います。サイトの内容とかも、もう少し見方とか、見やすさの工夫等々が必要ではないかと思いますので、今回運賃改定ということで値上げということですから、当然、消費者は、これでサービスが向上するとか、安全性が高まるということを期待しますし、そうであるからこその運賃改定だと、やはり納得をしてもらうためには、そういった窓口ももちろんですが、オンラインのほうもまだまだ改善の余地があると考えております。
大変素人で、大変失礼なことを言っているかもしれませんが、よろしくお願いします。
以上です。
○鹿野委員長 ありがとうございました。
ほかは、いかがでしょうか。
星野委員、お願いします。
○星野委員 すみません、遅れて参加しまして、途中から聞いておりましたが、文章も拝見しておりまして、御丁寧な説明をありがとうございます。
公共料金等専門調査会の丁寧な議論に関しましては、全く意見はございませんが、追加して、今後ということで申しますと、例えば、地方と都会の、例えば二拠点生活など、様々な国民生活が変化している中で、もっとより柔軟な制度で、例えば、現状ですと、普通の1回券とせいぜい往復割引と月額定期券などがございますが、様々な国民のニーズに合わせた形で料金体系の、更なる柔軟な変更をしていただいて、社会構成を高めるような方法というのはございますので、多分、モビリティというのは、非常に、社会、経済活動において、また、国民の生活にとって非常に重要なものでございますから、ここら辺は、様々な調査等をきちんとしていただいて、より国民の利便性が高まるような形で制度設計していただければと思っております。ありがとうございます。
○鹿野委員長 ありがとうございました。
ほかは、よろしいでしょうか。
御意見はいただいたと思いますので、それでは、専門調査会の意見を踏まえた委員会としての意見案を表示、配付いたしたいと思います。
こちらを御覧ください。
(意見案の画面表示及び配付)
○鹿野委員長 ただいま、追加資料として、皆様に表示あるいは配付しました意見案は、令和7年4月10日付で消費者庁長官から当委員会に諮問のあった「東日本旅客鉄道の鉄道事業における旅客運賃の上限変更案」については、「消費者庁において、専門調査会意見を踏まえ、国土交通省とともに適切に対応することを求める」こととしております。
これについて、御意見ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。本日は、各委員から専門調査会意見を踏まえ、強調しておきたいこと、あるいは補足しておきたいこと等の御発言をいただきました。
まず、全体としては、約38年間、実質的な改定を行わずに事業運営を行って来られたという点について、その企業努力を評価するというコメントがありました。今回の運賃の値上げについては、その背景と理由等も別にいただいた資料に記載されているところですが、こちらについては、今後の安定的、継続的な事業運営、そして、何よりも安全の確保というところなどを考えると、この専門調査会意見で示されているとおり、適切であろうということで一致していたと思います。
一方、専門調査会取りまとめの留意事項にも関連することが盛り込まれているのですが、当委員会の委員からも、おおよそ、次のような御意見がありました。
まず、公共性の高い事業であることから、幅広い利用者の利便性や快適性の確保ということに、ぜひ取り組んでほしいということでございまして、例えば、例としては、みどりの窓口の閉鎖に伴う混雑が見られることとか、バリアフリーなどについては、十分に進んでいるとは言えないところがあるということ、さらに、オンラインでの利用についても改善の余地があるのではないかということなどの御指摘もありました。
さらに、これを進めるに当たっては、いろいろな調査、分析を行って、国民の利便性が高まるような制度設計を進めてほしいということも挙げられました。
また、第2には、特に今村委員からは、今回の値上げの理由の1つとされているところの安全の確保に関して御指摘がありました。もちろん、ホームドアやブレーキ制御などの設備の充実というところも大切ではありますけれども、運転手など、運行に関わる方が、例えば、追い込まれた心理状態で無理な運転をするということがあってはならないことでございまして、そういう面も含めて産業保健分野の強化ということも、安全という観点から非常に重要であるという御指摘があったと思います。
もう一つ、これも留意事項に丁寧に書かれているところですが、今般の値上げについては、かなり大幅なところですし、消費者の理解が得られるよう、丁寧な説明や周知をする必要があるということでございます。
特に、山手線内の運賃については、料金の区分の統合ということもございまして、その意味では二重の改定というところもあって、大幅な値上げになるところでございます。その理由も含めて、分かりやすい周知・説明が必要であるという御意見がございました。
その上で、委員会としての意見案については、特に異論はないと思いますが、いかがでしょうか。皆様に御了解いただいたものとして、消費者委員会の意見としたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○鹿野委員長 皆様から御了解いただきましたので、ただいま取りまとめた意見については、消費者庁長官宛てに回答したいと思います。ありがとうございました。
消費者庁及び国土交通省におかれては、専門調査会での議論や意見を踏まえ、また、本日、委員から出された補足の意見等も踏まえて適切に対応していただきたいと思います。
皆様、お忙しいところ御対応いただき、ありがとうございました。特に野村座長におかれましては、オンラインで御説明等をいただきましてありがとうございました。どうぞ御退席ください。
○公共料金等専門調査会野村座長 ありがとうございました。失礼いたします。
○鹿野委員長 ありがとうございました。
(野村座長、茶谷参事官 退出)
《3. その他》
○鹿野委員長 続きまして、議事次第の2番目ですが、消費者委員会に寄せられた意見書等の概要につきまして、事務局から御説明をお願いします。
○友行参事官 それでは、参考資料の1を御覧いただけますでしょうか。消費者委員会に寄せられました要望書・意見書・声明文等の一覧の5月分でございます。
まず、最初のところでございますが、地方消費者行政充実・強化のための意見書となっております。
右側の「要望書・意見書等のポイント」でございます。
1つ目として、地方消費者行政の現状と課題が記載されております。
2つ目として、地方消費者行政強化交付金の果たしてきた役割について記載がございます。
3つ目といたしまして、交付金終了がもたらす深刻な影響の記載がございます。交付金が終了することにより、地域における消費者行政の空洞化を招きかねない。自治体間格差の拡大、相談体制の縮小・停止、広域的な連携の断絶、啓発・教育活動の縮小といった深刻な影響が懸念されると記載がございます。
また、4つ目といたしまして、消費者行政持続可能性のためにということでございます。
今後の消費者行政は、デジタル化、グローバル化、さらには消費者の権利意識の向上に即した政策展開が求められる。成年年齢引下げ、高齢化、外国人住民の増加といった社会構造の変化を踏まえれば、一層の消費者行政の強化が求められる。自治体が自らの判断で消費者行政を拡充できるよう、国による継続的な財政支援が不可欠であるとされております。
5番、おわりにでございます。最後の行でございますが、令和7年度以降も本交付金を継続し、消費者行政の更なる拡充を図るよう強く要望すると記載がございます。
また、その他といたしまして、香害への対応を求める意見書もいただいております。
「なお」のところでございますが、団体から寄せられた意見書のほかに、個人から12件の意見書が寄せられております。
内訳といたしましては、取引・契約関係が1件、その他が11件となっております。
以上です。
○鹿野委員長 ありがとうございます。
これについて、意見などがありましたら、お願いいたします。
よろしいでしょうか。地方消費者行政の充実・強化ということについては、当委員会でも何度か調査審議等を行ってきたところでございまして、今回いただいた意見も踏まえさせていただきたいと思います。
これも含め、いただいた意見等につきましては、必要に応じて消費者委員会の今後の調査審議において、改めて取り上げることといたしたいと思います。
この点については以上ですが、前半が予定より少し早く終わりましたので、ここで一旦休憩を挟み、13時30分から再開して、パラダイムシフト専門調査会に係る議題を検討することとしたいと思います。
それでは、少しイレギュラーですが、よろしくお願いいたします。
(休 憩)
《4. 消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会の報告について》
○鹿野委員長 それでは、途中休憩を挟みましたが、13時30分になりましたので、再開したいと思います。
本日、3番目の議題は「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会の報告について」です。
令和5年11月8日に設置した「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」において、同月7日付で内閣総理大臣より諮問のあった、超高齢化やデジタル化の進展等、消費者を取り巻く取引環境の変化に対応するため、消費者の脆弱性への対策を基軸とし、生活者としての消費者が関わる取引を幅広く規律する消費者法制度のパラダイムシフトについて、調査審議を行ってまいりました。
今般、専門調査会において報告書が取りまとめられたとのことですので、本日は、その内容について御報告をいただきたいと思います。
その上で、報告書の内容を踏まえて、委員会としての答申を取りまとめたいと思います。
改めて御紹介させていただきます。
本日は、消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会の座長をお務めいただきました、沖野先生に会議室にて御出席いただいております。
また、消費者庁の黒木審議官、そして、消費者庁消費者制度課の古川課長にも会議室にて御出席をいただいております。皆様、本日は、お忙しいところ、ありがとうございます。
本件の進め方についてですが、まず、事務局から、検討経緯について簡単に御説明いただいた後、沖野座長から報告書について御報告をいただきます。その後、意見交換を行いたいと思います。
それでは、事務局の説明と沖野座長の御報告を順にお願いしたいと思います。
○友行参事官 それでは、御説明いたします。
令和5年の11月7日付で内閣総理大臣から消費者委員会に対しまして諮問を受け、消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会が設置されました。
令和5年12月に第1回を開催して以降、計25回にわたりまして、実定法学のみならず、法哲学、法社会学、経済学、AI技術等の様々な分野についてのヒアリングや、委員におかれましてのプレゼンを実施するなど、調査審議を重ねていただいてまいりました。
この間、令和6年10月には、中間整理を取りまとめ、また、令和7年6月の専門調査会におきまして、報告書が取りまとめられたところでございます。
それでは、報告書の内容につきましては、沖野座長から、その概要、ポイントなどにつきまして御報告をお願いいたします。
○消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会沖野座長 ありがとうございます。沖野でございます。
それでは、私のほうから今般取りまとめました報告書の内容について、御説明をしたいと思います。
前提といたしまして諮問でございます。委員長から御説明くださいましたように、令和5年11月7日の諮問を受けて、この検討を進めております。報告書は51ページまでありますけれども、その次に参考資料として1から4までが付いており、その1が諮問になります。
先ほど委員長から一般的な部分の、諮問の内容の御説明があったのですけれども、さらに諮問におきましては、具体的に3つの項目が検討課題として指定されておりました。
参考資料1を御覧いただきますと、諮問の「記」とありますところの3行目から「具体的には」といたしまして、消費者が関わる取引を幅広く規律する消費者取引全体の法制度の在り方。次に、ハードロー的手法とソフトロー的手法、民事・行政・刑事法規定など種々の手法をコーディネートした実効性の高い規律の在り方。そして、デジタル化による技術の進展が消費者の関わる取引環境に与える影響についての基本的な考え方等を検討することとなっております。ですから、具体的な項目としまして、3つの項目が指示されていたと理解しております。
そこで本専門調査会におきましても、この3つの項目について、若干順序は変えましたけれども、検討をし、かつ報告書もそれに即して取りまとめております。
さらに、御紹介がありましたように、前半については2つの項目、この後申し上げます第1と第2なのですけれども、それを検討し、一旦中間整理を経て第3の項目を中心に検討し、最終的には中間整理も統合した形で、この報告書に取りまとめたというものでございます。
この中間整理でございますが、これに対しまして、あるいはその後もなのですけれども、パラダイムシフトとは何かということ自体が、定義をしにくい問題であり、また、中間整理におきましては、かなり説明なく用語を使っていたとか、片仮名のものが多く、必ずしもなじみのないものがあったという御指摘も受けましたので、それは全くもっともなことだと考えまして、報告書におきましては、伝えたいことを伝えられるようにということで形式的な面で若干の工夫をし、それから説明なしで、あまり聞き慣れないような言葉は使わない、なるべく片仮名用語というのを当然視して使わないといった配慮をしております。
そこで中身なのですけれども、報告書の表紙をめくっていただきますと、まず、前文を置いております。これは、やや特殊なことかもしれませんけれども、今、申し上げましたように、消費者法制度のパラダイムシフトに関する検討というのは、そもそもが、今後の消費者法制度の土台となる考え方を示すものであって、その性質上も理論的、抽象的な内容が多いということがございます。
また、報告書も1ページ目からの前文を含めてですが、51ページというかなり分量のあるものになっておりますので、相対的にではありますけれども、そのような大部のものであるということから考えますと、その報告書の趣旨をより広く関係者に御理解いただけるように、エッセンス的なものを、まずお伝えするという趣旨で前文というのを置いております。
そこで、前文の内容について御説明いたします。まず、最初の第1段落目では、背景となる社会状況を示しております。超高齢化やデジタル化の進展というのは、諮問でも示された社会状況でございますけれども、専門調査会での議論を通じまして、誰もが単独で十全な意思決定をすることが、これまでより一層困難になっていると、それにもかかわらず、単独で取引に関わる機会が増え、自ら対処することが困難で、周りも気づきにくいトラブルにさらされる可能性が高まっている。そのため、消費者の力を弱めたり、危害にさらされやすくする状態が急激に拡大しているというのが問題状況の整理でございます。
これを受けまして、では、従前の消費者法制度はどうなのかというと、やはり必要な対応ができなくなっている。その理由は何なのか、原因は何なのかという点につきまして、従前の消費者法制度がその基礎としておりました1つのモデル、具体的には、消費者像です。その強い個人モデルに着目いたしました。確かに消費者には取引において事業者との間に情報交渉力の格差があると、しかしながら、その格差を是正すれば、1人で立っていける強い個人というのが想定されていたように思われます。その格差さえ是正すれば、強い個人による自由な意思決定ができると、そして、幸福な社会状態になるのだという捉え方でございます。
しかしながら、この捉え方自体が限界にあるということでございまして、今後は、この格差是正に加え、つまり、格差是正という捉え方を放棄するとかではなくて、あくまで格差是正は見据えた上で、それに加えて、消費者であるならば、誰しもが多様な脆弱性を有するのだという認識を消費者法制度の基礎に置くべきであるという考え方を示したということでございます。
次に、段落は進みまして、5段落目ですけれども、この考え方を強い個人モデルという近代法的な考え方からの根本的な転換といたしまして、これを基軸として、既存の枠組みに捉われず、抜本的かつ網羅的に消費者法制度のパラダイムシフトを進める必要があるとしております。
具体的には、では、どうするのかという点で、アプローチを3つ示しております。
第1に、2ページのところですが、消費者ならば誰しもが多様な脆弱性を有するのだという認識に基づく包括的な視野に立ちまして、消費者取引を規律する規範を確立するという、基本理念の刷新の必要性を示しています。
第2に、消費者の多様な脆弱性や取引の複雑化・個別化に対応するために、民事ルールや行政法規定、ソフトロー等の種々の規律手法を目的に応じて、有効かつ適切に組み合わせて用いることや、全ての消費者が他者からのサポートなしに単独で選択することは困難となっているという現実を踏まえまして、様々な関係主体が役割を果たし連携していくという形で、共通の目的に向けた様々な関係主体の意識改革を通じて、健全な市場の実現に向けた共創・協働を図ることの重要性を示しております。
第3ですが、現代は取引の在り方も変容していまして、個人の情報、時間、いわゆるアテンションが経済的価値を持って取引されているという、まさにアテンション・エコノミーと言われる状況が急速に拡大しております。そのような状況も踏まえまして、取引の在り方の変容が生じているわけで、それを受けて、規律の対象や射程の変革を図る必要があることを示しております。
これらをまとめた上で、次にですけれども、3ページの3段落目で、消費者契約法を中心に、既存の枠組みに捉われることなく、消費者法制度を抜本的に再編・拡充するべきであるといたしまして、その上で、次に具体的な制度設計ですけれども、それに当たりましては、事業者の多様性を勘案し、法規範の尊重が期待できる場合には、事業者の創意工夫を生かす仕組みと併せて制度設計すべきである点。他方で、悪質な事業者や悪質商法については、言わば官民総力を挙げて消費者取引の市場から排除すべきであるという旨を指摘しております。
以上がエッセンスである前文の、さらにエッセンスということになります。
次に、報告書全体の内容について御説明をいたします。目次の4ページを見ていただきますと、前文に続けて「検討経緯」というのを設けております。
6ページ以下でございますけれども、専門調査会の審議経過や報告書の全体像、位置付け等と併せまして、企業価値に係る資本市場や、あるいは消費者教育をはじめとする種々の制度や施策の重要性についても、ここで記載しております。
その上で、本体でございますが、まず、目次に即して概要、全体像を御説明いたします。
大きな柱といたしまして、目次を見ていただきますと、第1、9ページ以下、それから、第2が21ページ以下、目次をめくっていただきますと、第3が28ページ以下という構成になっております。
これは、先ほど確認させていただきました諮問文における具体的な課題の3つに対応したものでございます。順序を若干変えております。
第1では、消費者像の捉え方や、それを踏まえた法制度の在り方として、消費者の脆弱性とは何なのか、それをなぜ捉える必要があるのか、また、どのように対応していくべきなのか、消費者取引の安心・安全を確保するための介入の在り方はどのようなものか、いわゆるアテンション・エコノミーの現状と課題を踏まえた対応の在り方という3つにまとめております。
第2は、デジタル化の影響についての基本的な考え方をまとめたものでございます。
目次をめくっていただいて5ページ、第3でございますけれども、ここでは消費者法制度に求められる役割を果たすための手法論といたしまして、実効性の高い規律の在り方に関する考え方を示しております。
1では、総論的に目的設定の刷新の必要性や、規律の対象や射程を拡充させていくこと、様々なベストミックスの観点、そして、民事・行政・刑事法規定やソフトローなど、それぞれの手法の活用方法についてまとめております。
2では、実効性のある様々な規律のコーディネートのための考え方をまとめております。
最後、3でございますけれども、ここでは、消費者法制度の担い手の在り方として、様々な関係主体に期待される役割や連携の在り方をまとめたというものでございます。
以上が全体像でございますので、これを頭に置いていただきまして、中身をもう少し詳しく説明させていただきたいと思います。
そこで、本文です。9ページから第1が始まっております。
まず、1の(1)におきましては、消費者が、生活領域における非事業的な活動を行う生身の人間、生活者たる自然人であるということから、消費者には様々な脆弱性が生じるとした上で、年齢、教育水準、経済状況等の集団に共通する特徴から捉える類型的・属性的脆弱性、認知バイアスなど全ての人が持ついわゆる限定合理性による脆弱性、判断自体が限定されているために合理性が限定されるという一般的にあまねく消費者が持つ脆弱性、それから、その状況の影響による状況的脆弱性という3つに整理しております。
その上で、これらの様々な脆弱性は、当該消費者の力を弱めたり、危害にさらされやすくする状態であるとしまして、全ての消費者が有するものであるということを指摘しております。
次に、10ページの(2)では、まず、近代法の強い個人モデルを前提とする考え方について記載いたしまして、その上で、消費者を取り巻く環境の変化を11ページ以下で整理した上で、強い個人による自由な意思決定というのが、もともとフィクションであったわけなのですが、それがフィクションとしても揺らいできているのだということを示し、そして、法介入の根拠として格差という側面のみならず、脆弱性を有することは、人間としては、むしろ普通のことであって、消費者の脆弱性として正面から捉えていく必要があること、そして多様な脆弱性を捉えて対応していくことが必要であると示しております。
では、どのような消費者の脆弱性を捉えた法制度の在り方ということになるのかという点でございますが、これは、脆弱性があるというだけで介入ということにはなりませんので、他の要素との組み合わせとか、具体的な介入の必要性等を考慮しながら考えていくわけですけれども、ある種の脆弱性がある場合に、いかにして自立的な意思決定や選択の機会を確保するのか、一定の脆弱性があることで深刻な許容し難い結果に陥ることをどのように回避するのか、特定の脆弱性を事業者が積極的に引き出したり、意図的に利用するということをどのように規制するかといったことを組み合わせた上で、規律を考えていくべきだということを示しております。
次に、13ページの2でございます。2の(1)では、消費者法制度の介入の在り方といたしまして、現代社会では、個人は他者のサポートがなければ、単独で選択することが困難となっているという認識を改めて明らかにしまして、それを踏まえた上で、他者との適切な関係性の中で、自らの価値観に基づく自分自身の選択であると納得できるような自律、これは、律するのほうですけれども、自律的な決定が可能となること、いわゆる関係的自律と、それを保障する必要があるといたしまして、選択の実質性をいかに保護していくのか、そのアプローチとしまして、他者との適切な関係性の構築を促進し、関係性から生じる信頼を保護する役割を果たしていくということが考えられるとしております。
さらに、これを基盤といたしまして、一定の脆弱性があることで深刻な、許容し難い結果に陥ることを回避すべく、消費者法制度のもとでの結果としての幸福を保護するための介入の可能性についても検討する必要があるとしております。
次に、15ページの(2)でございますけれども、(2)では、取引当事者である消費者と生活をともにし、自身の生活を当該消費者に依拠している者、第三者と言えば第三者なのですが、そういう者も考慮に入れてくる必要があるということで、そういった者の幸福や利益の実現も考慮する余地があることなどを記載しております。
また、次の16ページの(3)では、ケアの倫理からの示唆についてまとめております。
次に、16ページの3に入りますが、これは、アテンション・エコノミーへの対応を記しております。まず(1)で現状と課題を分析した上で、めくっていただきまして、17ページの(2)では、対応の在り方といたしまして、まず、アにおきまして、消費者を消費する者という側面で定義づけるのではなく、生活領域における非事業的な活動として、事業者との間で、あるいは事業者を介して、金銭や物、サービス、加えて情報、時間、アテンションをやり取りしているものであるとして考えていくべきであるとしております。
その上で、18ページのイにおきましては、それを踏まえた消費や消費者取引の捉え方を示しまして、そして、19ページのウでは、規律を考える視点を示しております。
次に、第2に入ります。21ページから第2のデジタル化の問題です。
第2におきましては、デジタル取引の特徴を分析し、具体化した上で、リアル取引と次元の異なる規律が必要となる場面、規律が整備されていない場面を整理し、それを踏まえた基本的な考え方を示しております。
まず、23ページに入っていただきまして、2の(1)では、ダークパターンをはじめとしたデジタル技術により、消費者の脆弱性が作出、利用される場面については、デジタル取引特有の環境やデジタル技術による規律、情報処理能力の非対称性といった特徴によるものであり、リアル取引とは異なった、これらの特徴を踏まえた対応が必要となると考えられることなどを示しております。
次に、24ページの(2)では、プロファイリングに基づくレコメンデーションやターゲティング広告、パーソナライズド・プライシングといった取引環境の個別化との関係で、いかに健全性を確保するかや、透明性に関する問題への対応が課題とすることなどを示しております。
このほか、デジタル取引について、リアル取引と次元の異なる規律が必要となる場面、規律が整備されていない場面の整理という2では、事業者側が取引環境を設計することが可能になっている、環境自体を事業者が設計するということが可能になっているという特徴を踏まえた対応ですとか、それから、事業者が多層的に関わること、様々な事業者がいろいろなレベルで関わってくるということを踏まえた対応が課題となることを示しております。
一方、消費者のエンパワーメント、消費者のほうを、むしろ支援していくとか、力を増していくというために技術を活用すること、消費者のリテラシーの向上、消費者団体をはじめとする多様な団体の役割等についての基本的な考え方についてもまとめております。
その上で、28ページ以下が第3でございますけれども、様々な手法をコーディネートした実効性の高い規律の在り方という点でございます。
28ページの1の(1)では、目的設定の刷新の必要性というのを掲げておりまして、消費者基本法への改正当時の保護から自立へ、この自立は立つほうの自立ですけれども、保護から自立へという議論を踏まえつつ、それとの関係で、今後は、第1でも示しました、律するほうの自律を保障していくことが重要であり、それを踏まえた法目的の刷新の必要性を示しております。
さらに進みまして、30ページの(2)でございますが、規律の対象・射程の拡充の点でございます。
対象・射程につきましては、いわゆる消費者が経済的な支出として金銭を払って消費するという場面に加えまして、消費者のほうが情報を提供するとか、時間や注目を費やしたりすると、そういう場面も捉えていく必要があることですとか、消費者取引の全過程と消費者取引の内容を視野に入れる必要があることを示しております。
次に(3)では、様々な規律手法を活用し、組み合わせていく上での分析軸というのを多角的に示しております。
まず、31ページでございますが「ア 規律手法のベストミックス」というところでは、ハードロー的手法、ソフトロー的手法、民事・行政・刑事法規定、インセンティブ設計、技術の活用等の種々の規律手法を念頭に、それぞれの特徴を踏まえながら活用し、最適に組み合わせるという観点を示しております。
次に、同じページのイでは、具体的な規定を設けるに当たって、実現されるべき行為規範等との関係で、様々な実行手段を視野に最適な組み合わせを施行するという観点を示しております。
次に、32ページに入ってウでございますけれども、ここでは、抽象的規範と具体的規範の長所、短所を踏まえながら、分野や場面ごとに適切に使い分ける、あるいは組み合わせるということで、相互補完的に活用するという観点を示しております。
具体的に33ページにおきましては、その手法といたしまして、抽象的規範を、法的効果を伴う規範として用いる場合に、下位規範として具体的規範を設けるということですとか、抽象的規範を直接法的な効果、拘束力や強制力を伴わない原理や原則、プリンシプルを規定するものとして活用する手法等についてまとめております。
34ページのエにおきましては、事業者にとって違反行為や不当行為を抑制する要素としてのディスインセンティブの点と、健全な事業活動を促進する要素としてのインセンティブと、これらをベストミックスする観点というのを示しております。
進んでいただきまして、35ページのオでは、担い手のベストミックスの観点について、規律の策定主体と規律の運用主体という面で整理をして示しております。
その上で、36ページの「(4)様々な規律手法の活用」でございます。
まず「ア 民事ルール」につきましては、役割・機能といたしまして、従来の情報の質及び量並びに交渉力の格差の是正に加えまして、必ずしも事業者との対比や格差ということを前提とすることなく、消費者があまねく脆弱性というのを持つのだという点に焦点を当てて、これに対応する消費者取引の一般民事法としての役割を果たすことが求められるということを示しております。
次に、37ページの規律の対象・射程に関しましては、取引の全過程、成立過程だけではなく全過程を対象とすること、それから、内容にも立ち入って契約内容を対象にすること、消費者が情報、時間、アテンションを提供する取引への対応などを指摘しております。
引き続き、同じページですが、多様な規律手法の在り方に関しましては、①としまして、取消しに限られない解放手段の可能性、②損害賠償制度の更なる活用可能性、38ページにまいりまして、③努力義務・配慮責任の活用可能性、39ページ、④正当化のための要素を組み合わせた行為規範や契約内容規範、例えば、自主規制の遵守があれば正当化されるといったことなどでございますけれども、そういった内容、それから、⑤としまして、消費者契約の履行や継続や終了過程に関する規律、必ずしも成立に限られない全取引過程ということでございます。⑥としまして、消費者被害の事後救済における手続遂行に関する規律について、それぞれ考え方を示したものでございます。
次に、40ページの「イ 行政規制」でございますが、行政規制につきましては、行政措置にはハードなものからソフトなものまで多様なバリエーションがあり、これらを柔軟に活用することが重要であることや、消費者を取り巻く取引環境の変化に対応しまして、行政規制の実効性を高めていく上では、法規定において抽象的な規範を定めて、後追いや隙間事案の発生をできる限り防ぎつつ、下位規範により細目を定めることで、予見可能性や透明性の確保を図る手法によることが有効と考えられることなどを示しております。先ほど、抽象的規範と具体的規範の組み合わせというお話を一般的にいたしましたが、例えば、その行政規制における1つの例ということになるかと思います。
次に、めくっていただきまして、41ページの刑事規制におきましては、とりわけ深刻な消費者被害をもたらす悪質商法を抑止する上では、刑事規制は有効な手法となること。そのような観点から、例えば、複数回にわたって、または多数の消費者に対して、消費者の脆弱性を攻撃して、一方的な利得を得るという場合や、あるいは消費者に対して、意図的に誤った情報を伝えて取引を実現するといった場面を刑事規制対象の中核とすることが考えられるということなどを示しております。
42ページの「エ ソフトロー」におきましては、ソフトロー自体は非常に多様なものが存在いたしますので、ソフトローの概念整理が、まず必要であるということが考えられるわけで、その概念整理をした上で、①、既に述べた抽象度が高い規範としての活用、ソフトロー自体は、この抽象度の高いものとして活用する可能性。それから、②といたしまして、法律上の抽象的な規定を具体化して、明確化、予見可能性に資するというハードローの補完としての活用。③といたしまして、環境変化が激しく、ハードローの制定が困難な場合に、ハードローの代替として活用すると、こういう観点があるとしてソフトローの活用可能性をさらに類型化しております。
43ページの「オ その他」におきましては、保険ですとか、あるいは技術の活用への期待等についても指摘をしております。
次に、45ページの2では、これまでに述べました様々な手法につきまして、事業者のグラデーション、すなわち事業者による法規範の尊重が期待できるのかどうかということを踏まえて、より有効かつ適切な制度設計を可能にしていくという考え方を示しております。
まず、法規範の尊重が期待できるという場合が、45ページの(1)でございまして、このうち、アにおきましては、遵法意識が高く積極的な取組が期待できる、こういう事業者を想定した場合の規律といたしましては、プリンシプルを示すとか、ベストプラクティスを積極的に評価するなどによりまして、事業者の創意工夫を生かすことが重要であるとともに、この場合でもトラブルが発生するわけですので、事業者による解決を促進する仕組みや、規律の運用を柔軟にすることが考えられるとしております。
一方、法規範の尊重が期待できる場合といいましても、そこまでではなくといいますか、遵法意識はあるのだけれども、少なくとも消極的な反応性は期待できるという場合もございます。
その場合が、イでございまして、そのような場合には、行為規範を示すだけではなくて、民事ルールと行政規制を組み合わせて実効性を図ることが考えられます。
また、消費者団体訴訟制度の活用や、抽象的な規範と具体的なガイドライン、自主規制等との組み合わせ、適法性の推定の仕組み、自主規制に参加する事業者相互間における評価や点検など、多様な方策が考えられるとしております。
一方ででございますが、(2)におきましては、法規範の尊重が期待できない、もとより法規範に従うつもりはないと、あるいはこれに反し潜脱することで深刻な消費者被害を発生させる、いわゆる悪質な事業者や悪質商法につきましては、法規範の尊重は期待できないといたしまして、官民総力を挙げて市場から排除することが求められるという考え方を示しております。
47ページの3でございますけれども、消費者法制度の担い手の在り方ということでございます。
この冒頭に示しておりますように、多様な脆弱性を有する消費者が、安心して安全に取引に関わることができる環境を整備することという、これこそが非常に重要なわけですが、そのためには、悪質事業者を排除し、優良な事業活動が選ばれる健全な市場を実現するということが必要で、この両者は表裏一体というべきものです。
そのためには、当事者である消費者と事業者が主体的に形づくっていくということが重要で、消費者は自立的な決定により、能動的、創造的な主体として市場に参画すること、事業者は、消費者の対応の脆弱性に配慮し、消費者との適切な関係性の構築や、そこから生じる信頼の保護のための取組を行うとともに、消費者被害を発生させた場合には、その解消、救済に向けて適切に対応することが求められるとして、それが1つの在り方であるということを示しております。
その上で、この当事者である消費者と事業者以外の関係主体の役割や連携についてもまとめております。
まず、48ページでございますが「(1)民間主体」の「ア 事業者団体」については、健全な事業活動の普及、ADR、ODRの活用、消費者、消費者団体との対話などが期待されるところでございます。
次に「イ 取引基盤提供者」です。この役割は、現在、非常に重要化しておりますけれども、取引基盤提供者は、システムの提供それ自体だけではなく、その管理主体として、それぞれの立場に応じて消費者取引の安全・安心を確保するための役割を果たすことが求められます。
次に、49ページでございますが「ウ 消費者団体」につきましては、その役割は、今後ますます重要となると考えられます。適格消費者団体による差止請求制度の発展可能性といたしまして、ソフトローの策定等に関与したり、差止請求に限られない事業者の行為等の適法性の評価、取引環境の設計の評価、事業者との対話等が期待されるところでございます。
50ページのエにおきましては、ケアの担い手や専門家組織等に期待される役割を示しております。
同じ50ページの(2)は、行政の役割でございまして、基本的な役割としての消費者政策の企画・立案・推進だけではなく、消費者の自律的な意思決定の支援策を講じる役割、健全な事業活動の促進という観点から、厳正・迅速な公権力行使まで、事業者のグラデーションに応じた対応、海外当局、国際当局との連携強化も重要であることや、さらに地方公共団体の役割の重要性についても示しております。
以上、長くなりまして、また、大部でございましたけれども、報告書の概要ということになります。
改めて、少しまとめ的なことを申し上げますと、全体を通底するものは、今後の消費者法制度が、多様な脆弱性を有する消費者、そして、それは一般の普通の消費者であるということですが、そういう消費者が安心して安全に取引に関わることができる健全な環境、市場を整備するために、役割を果たしていくことの重要性、そして、優良な事業活動が選ばれる健全な市場を実現していくということが、表裏一体として重要であるということが、この根底にある考え方ということになります。
そういう認識が広く共通認識となることが重要であり、それが後押しとなって、様々な関係主体による健全な市場の実現のための、共創・協働が進むということが、ぜひ期待され、この報告書は、その一助となるということを期待しているわけでございます。
本報告書におきましては、諮問の内容を踏まえて、今後の消費者法制度の土台となる考え方を示したというものでございます。
具体的な制度設計は、まさに今後と考えておりまして、本報告書の内容を十分に踏まえながら、具体的な制度設計へと今後進めていくということを期待したいというのが専門調査会の総意でございますし、個人的には座長としての私の思いでもございます。
以上でございます。
○鹿野委員長 とても丁寧な御説明をいただき、ありがとうございました。
これより意見交換の時間としたいと思います。時間は30分程度を予定しています。いかがでしょうか。
それでは、黒木委員長代理、お願いします。
○黒木委員長代理 ありがとうございます。
オンラインも含めて、多くの専門家の委員がいらっしゃる中で、最初に質問するのは恐縮ですが、3つほど質問させてください。
まず、第1点目の質問です。
先ほど御説明いただきました専門調査会報告書の25ページ以下で、(3)事業者が多層的に関わることとの関係、技術の進展、デジタル化の下で法制度が果たすべき役割で、事業者がそもそもシステムを構築し、それが多層的に関与しているという御指摘でございました。
この点につきまして、リゾートマンションの売買契約とスポーツクラブ会員権契約で定められた屋内プールの債務不履行に関する平成8年11月12日の最高裁判決について、先生のお考えをお伺いしたく存じます。この判決では、目的に関連性がある場合、複数の契約でも相互に関係があれば、一つの契約の解除が他の契約の解除につながる可能性があることが認められています。
事業者が自らシステムを構築し、それが複数の契約に多層的に関わってまいります場合、この最高裁判決の射程距離は必然的に拡大してくるものと考えられますが、新しい消費者法制におきまして、相互に目的・手段の関係にある契約が多数存在する状況では、平成8年の最高裁判決の適用範囲も広がってくるものとして理解してよろしいでしょうか。先生の御見解をお教えいただければ幸いでございます。
次に第2点目の質問です。
報告書28ページ以下の「ハードロー的手法とソフトロー的手法、民事・行政・刑事法規定など種々の手法をコーディネートした実効性の高い規律の在り方」について、私が特に関心を持たせていただいた部分がございます。ハードローとソフトローのベストミックスという観点から、消費者法制を抜本的に再編・拡充していくことが求められるとの御指摘でございます。
私が特に注目させていただいておりますのは、46ページ以下の「法規範の尊重が期待できない事業者に対する取扱い」の部分でございます。47ページには「民事ルールにおいて厳格な規程を設けることで、私法上も許容されないことを明確化することが考えられる」とされ、「消費者法制度の目的・価値規範を共有せず、深刻な消費者被害を発生させる悪質事業者・悪質商法については、官民総力を挙げて消費者取引の市場から排除するべきである」との御提案でございますが、これは伝統的な公法私法二分論を超えた形で、行政が悪質な事業者に対応すべきであるというお考えでいらっしゃるのでしょうか。
この問題の背景といたしまして、2023年8月9日の第7次消費者委員会におきまして、ルール形成ワーキンググループが破綻必至商法に関する報告書を発表し、それに対する意見書も提出されております。行政が一定の場合に厳格な民事ルールを適用するという観点から、公法私法二分論を超えて、行政に破産申立権限などを付与するという制度設計も、この専門調査会の報告書の御提案の射程に含まれているものとお考えでしょうか。先生の御指導をいただければと存じます。
最後に第3点目でございます。
この報告書全体を拝見いたしますと、アテンション(注意喚起)まで追求されており、競争政策と消費者保護政策全体について非常に包括的にお取り扱いいただいております。このような消費者保護法制は、様々な事業者にとってもそれを後押しするものであると理解いたします。
すなわち、先生方におかれましては、競争政策と消費者保護政策は基本的に相互に矛盾するものではなく、対立するものでもないというお考えのもとで、この報告書をおまとめいただいているものと理解してよろしいでしょうか。
以上3点につきまして、ぜひ先生の貴重な御見解をお聞かせいただければ大変ありがたく存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○鹿野委員長 それでは、御回答をお願いします。
○消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会沖野座長 御質問ありがとうございます。
まず、第1点の25ページから26ページにつきまして、事業者が多層的に関わるということで、ここでは具体的にデジタル取引において、事業者側が取引環境を設計することが可能になっているということのほか、取引のプラットフォーム提供事業者のほか、決済機能の提供事業者ですとか、あるいは情報広告のプラットフォーム提供事業者といったものが重要な役割を果たして、多層的に関わるということを申し上げております。
これが、例えば、具体的に消費者が関わる取引において、複合的な取引が一体として相互に関連するものとして今後捉えられていくのかというのは、これを踏まえた検討の在り方の1つということになると思います。
お示しいただいた、ある程度同一平面的な形で複合しているという面もあれば、これは、かなり多層化していると言うのでしょうか、というものですので、全く同じように捉えられるのかどうかということはあると思いますけれども、むしろ、このような多層性を踏まえて、それがどのように影響するのかとか、法制度をどう組んでいくのかというのは、まさに、今後、検討していただくことだろうと考えております。
そのときに、おっしゃった最高裁判決などを、言わば、てこにして、これを広げることができるのかどうか、同じように考えていいのかどうかは、まさに具体的な制度設計において、次にお考えいただくということです。
そのときに、いろいろな事業者がこうやって絡んでいるときに健全な市場を展開して、消費者が安全に取引できるには、どういう法制度がいいのかというのを、ぜひ考えていただきたいということになります。
次に、2点目でございますけれども、28ページ以下の、特に官民総力挙げて市場から排除したいというものについては、まさに官民総力を挙げて市場から排除するためには、どういう設計が必要かということになります。
伝統的な公私二分論を超えているのかというのは、伝統的な公私二分論が何かということにも関わるわけですけれども、公法は公法、私法は私法、分断していてそれぞれやるというのではなく、私の理解するところでは、消費者法制度あるいは消費者取引制度においては、既に公私協働論が一般的になっていると理解しており、公法だから私法だからということよりは、同じ1つの目的のために様々な手法を活用し、協力していくということだろうと考えます。
ですから、民事ルールと行政ルールが連関していくということも十分あり得るだろうし、一定の行為規範に対して、行政的な効果とともに民事的な効果を付与されるということも十分あるだろうと考えます。
それから、具体的に挙げていただきました破綻必至商法などについての破産手続開始申立権を行政機関に付与すべきなのかというのは、これは、従来から非常に問題になっているところであって、実効性の確保も含めて検討していくべきことだと考えておりますので、それ自体、まさに具体的な制度設計の在り方の1つとして、しかし、既に、以前に提案されているところでございますので、そのような必要性も含め、実効性も含めて検討していくことになるだろうと思います。
3点目のアテンションの問題に関しまして、この点は、口頭の報告の中で必ずしも指摘していなかったところを補充していただきました。すなわち、消費者保護政策と競争政策あるいは競争法との関係がどうなるのかということでございます。このように、消費者政策や消費者取引の制度の在り方というのは、消費者法制度だけではなくて、関連する様々な法分野あるいは政策というものとの間で構築していく必要があると考えております。
そして、一般的に言えば、競争政策と、それから消費者取引あるいは消費者政策とが矛盾した目的を持っているとは考えておりません。ともに健全な市場を展開していくと。そのときに不正な競争は許さないとか、一方で、消費者が安心して取引できる、そのための健全な市場は何かということですので、目的は共通しているのだと思います。
ただ、具体的な局面におきまして、何を考慮して、具体的な規律を設けていくかというときに、それぞれの着目点が違うということもありますので、そのことは考えていかなければならないと思いますし、この検討の中におきましても、今の競争法と消費者法と、さらに個人情報保護法の問題がありまして、例えば、個人情報について着目しますと、例えばですけれども、プラットフォーマーにより自動的に収集されるので、収集していいのかという問題自体がまだあるのですけれども、そこに収集されたものを、例えば消費者は第三者には出してもらいたくないと思っていると、これは消費者の個人情報についての管理の問題ということになりますし、消費者の保護という点もあります。
他方で、競争政策的に見れば、一人情報を握って独占していいのかという問題もありますから、それぞれの視点によって、あるいは競合するというのでしょうか、両者の間でどういう調整を図っていくのかということが問題になるところはあると思いますし、そういった御報告はヒアリングの中でもしていただいております。困難な問題はあると思いますけれども、しかしながら、何のためにそれらの法制度を動員して、何をしようとしているのかというところは本来共通ではないかと、少し個人的な思いが入っているかもしれませんけれども、ということで、まさに具体的な制度設計について、この報告書を踏まえて御検討いただきたいということでございます。
○黒木委員長代理 ありがとうございました。
○鹿野委員長 よろしいですか。
それでは、ほかに、大澤委員、お願いします。
○大澤委員 御説明いただき、誠にありがとうございました。
パラダイムシフト専門調査会につきましては、まず、そもそも今の消費者を取り巻く環境が、デジタル化も相まってどのようになっているかということについて、今日も御報告を沖野座長からいただきましたように、非常に丹念に御検討いただいており、大変勉強させていただきました。
私も一応オブザーバーではあったのですが、なかなか急な授業等があって、最後のほうは伺うことができなかったので、報告書を改めて拝見させていただいて、勉強させていただいております。
まずは、これだけの大部な分量の報告書を執筆あるいはそこに至るまでのヒアリング、あと御議論に心より感謝を申し上げます。
その上で1点が質問で、もう一点が意見になります。
1点目の質問なのですが、私は法律の専門家でもありますので、細かくそれぞれのページで、ここは今後どういうことになるのだろうかとか、あるいは少し違う考え方のほうがよろしいのではないかというところは、ないわけではないですが、非常に雑駁な、一般的な質問をさせていただきますと、まさに今回は、消費者法制度全体、別に法律だけではなく、しかも法律もハードだけではなく、ソフトと、いろいろなものを組み合わせて、消費者法制度自体のパラダイムシフト、パラダイム転換をするということですので、このような質問すること自体が、時流に後れているという批判を受ける可能性はあるとは覚悟していますが、今後、この報告書を踏まえて、具体的に今の法制度に落とし込む、あるいは今後どのような新しい法律をつくるとか、そういう議論は、今後期待しております。私も期待していますし、恐らくこの報告書が公表されたら、そのように国民からも期待をされると思いますが、現状、言うまでもないことですが、例えば、消費者法に関しては、日本の場合には、1つまとまった法定があるわけではなくて、複数の法律に分かれております。この法律の区別を維持すべきかどうか、あるいはその法律それぞれに、あくまでその区別を維持してということなのかどうかというのも、今後検討の余地があるのではないかと思いました。
あと、今の法律にもない法律上の効果ですとか、あるいはそもそもソフトローのような話も入っていますので、今の複数に分かれている法律それぞれの中だけで議論するというのは、恐らく難しい段階に来ているのではないかと思っています。
しかし、他方で、消費者庁の中で、この複数の法律についても、はっきり言いますと、担当している部署が分かれていたりですとか、あるいはそれぞれの法律の趣旨も、私は全部共通しているところはあると思うのですが、やや、その執行方法あるいは趣旨についての差異などもあると思うのですが、今後そういった区別を乗り越えた上で、法制度全体を見渡すような議論が必要だと考えておりますが、それについて、何か現時点で、もちろん何も決まっていないということなのだと思うのですが、どのようにお考えなのでしょうかというのが質問です。
2点目は、これは意見になります。先ほど黒木委員長代理が御指摘なさっていた、いわゆる事業者の遵法意識の際に基づく規制の在り方という箇所で、報告書で言いますと、45ページ以下なのではないかと思っています。
ここについては、遵法意識が高い場合で、遵法意識があり、少なくとも消極的な反応性が期待できる場合とあって、最後に46ページに、期待できない場合と、現時点では、もちろんざっとだと思うのですが、3つに分けて、これも非常に丹念に御議論いただき、あるいはおまとめいただいていることには、まず心から感謝を申し上げたいです。
他方で、例えば、今は違法意識が高いと見える事業者であっても、その事業所の、例えば経済状況の変化だったり、いろいろなことに応じて、むしろ遵法意識がないわけではないけれども、少し消極的になってきたりですとか、そういうこともあるのではないかと思っています。つまり、今、3つに分けているのですが、恐らくそこは非常に相対的なものだと理解しています。
これは、私の個人的な希望でもあるのですが、このように遵法意識が高い、あるいはそのように見えるのだけれども、あまり積極的には反応していない事業者に対しても、ソフトあるいはそういうインセンティブをもたらすという形だけではなく、やはりそれでも法を犯してしまうようなことがあったという場合には、きちんと適切な対処をお願いしたいというのが個人的な意見です。
ですので、この個別に従った法規制の在り方というのは、今、このパラダイムシフト調査会だけではなく、消費者法の研究者からも主張されていることではあるのですが、私も一部、もちろん賛同するところもあるのですけれども、他方で、しかし、ハードなものを発動しなくてはいけない場面というのも、少なくないのではないかと思っていますので、あまり柔軟なというか、むしろインセンティブをもたらす方向にというところだけにフォーカスを当てるのではなく、やはりきちんと、遵法されていない場合、法律も守っていない場合については、厳しい対処ができるような法体系というのも、あるいは法制度というのも、きちんと維持あるいは発展させていただきたいと思っています。
ヨーロッパでは、例えばデジタルプラットフォーム事業者に対しても、私、日頃勉強しているフランスでも、先日、中国のプラットフォームだったと思いますが、罰金が科されています。それ自体は、別に、いわゆる悪質商法ではない、何をもって悪質商法と言うのかという問題もありますが、悪質かと言われれば悪質商法ではない、最初からだます気があったわけではないのでしょうけれども、例えば、実際には、別にセールとか割引をやっていたわけではないのに、すごく値引きされているかのような表示をしていたという、いわゆる価格表示、プロモーション表示の問題でありました。
ですので、そういったものについても積極的に行政的な罰金を科したという事例が、先日伝えられていましたので、世界的にも、もちろんソフトなものというのも、特にデジタルの世界では使われているというのは承知しているのですが、他方で、やはりそれでも守ってくれない事業者というのは、決して悪質な、本当に極悪層だけではないと思っていますので、そこの辺りは、この報告書を前提としつつ、今後、消費者庁においても意識をしていただきたいというのが個人的な願いです。
すみません、長きになりました、以上になります。ありがとうございました。
○鹿野委員長 1点御質問、1点御意見ということでしたが、可能であれば、御意見についてもコメントがあれば、お願いします。
○消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会沖野座長 ありがとうございます。御指摘ありがとうございました。
2点なのですが、後のほうから先に申し上げたいと思います。御意見に関わる点なのですが、まず、大澤委員がおっしゃったことが報告書と違う内容をおっしゃったのかというと、そうではないと考えております。
ここでの報告書の事業者のグラデーションというのは、規律などがあったときに、どういう反応をするかということで、およそ規律などあっても、全く遵法意識はなくてというものもあれば、遵法意識はあると、だけれども、そういう事業者は、違反をしないということではないので、違反というのはあり得るという前提でおります。
ですから、先ほど挙げられましたような、ヨーロッパの表示の問題ですけれども、それについて罰金を科す、刑事罰なのか、行政罰なのか、いろいろあるかもしれませんけれども、それを科すということについても、それでも、自ら是正をした上で、そして、それによって誤って誘導された消費者については、自ら更に一定の保障をしていくとか、それを確実にするということであるならば、例えば、行政的な課金はしないとか、罰金は科さないとか、こういうのは、違反をしてもその後、その事業者が、いや、それは違反をしたけれども、私たちは自ら是正しますということであれば、そういう事業者の反応性とか、対応を考慮した制度設計にするということであって、一定の事業者を全て、あなたはランクA、B、Cということで区分けしていくという話ではないということであります。
ですから、大澤委員が最後に御指摘になったお考えというのは、報告書が、むしろ取っているところではないかと考えているところでございます。
次に、1点目の御質問についてなのですけれども、今後の消費者法制度の在り方が、言わば消費者法典という一大法典に網羅的にいろいろなものを組み込んでいくということがいいのか、今、消費者基本法がありますけれども、それから安全についての基本的なものとか、ここは既にグラデーションができていると思いますが、しかし複数の法律から成っているというものを維持したほうがいいのかという点については、この報告書では特には語っておりません。
むしろ、これらの考え方をふまえた上で、何が最も望ましいやり方なのか、あるいはその中間にいろいろあるということかもしれませんので、それを考えていただくということになるだろうと思っております。
その上で、若干個人的に申し上げますと、これは、いずれもあり得ると考えておりますけれども、一大消費者法典あるいは消費法典ということになりますと、しかし、本当に網羅されるのかという問題もあり、かつ、それぞれの間で、実は結構違う概念になったりということもあります。このこと自体は、実は消費者契約法という小さな法律の中でもあることでございまして、意思決定の取引の取消しに関するときの概念と、約款なり契約条項の場合の概念と同じなのかということも言われておりまして、それが一大法典になると、いろいろなところで実は違う概念であるといった話が出てくる可能性もあると考えております。
それから、一大法典になりますと、やはり適切に対応していくためには、かなりの改正が必要になるのですけれども、どこがどう改正されたのかということをフォローするのも非常に難しくなるといった指摘もあるようでございます。
ですから、それぞれ長短があることですので、その長短を踏まえて、かつ二者択一ではないのだろうということも考えておりますので、現在、そして、将来の消費者法の問題を見据えた上で、何がよいのかというのを今後まさに検討していただくことではないかと思っております。一大法典がいいのではないかというのは、ほかの分野でも、例えば倒産法などでも一大倒産法典というのも考えられましたけれども、現在はこのような状況で、しかし、それでいいのかという議論は、なおあるところでございますので、少し話が横に行ってしまいましたけれども、とりわけ消費者法のような広範な分野については、様々な検討が必要だろうと考えております。
以上でございます。
○鹿野委員長 ありがとうございます。
大澤委員、いかがですか。
○大澤委員 御説明いただき、ありがとうございました。
すみません、意見のほう、事業者のグラデーションについては、私の説明というか、理解不足で申し訳ありませんでした。
恐らく、ここまで丁寧に、これとこれを組み合わせてと、手法を組み合わせて書かれておりますので、もちろん悪質、極悪層以外には何もしませんということではないということは承知していたのですが、すみません、私の勉強不足ではないかと反省をしているところでございます。
ただ、私が申し上げたかったのは、この事業者を悪質さの程度に分けて議論するというところが、今、消費者法の研究者の中でも言われていることではあるのですけれども、もしかすると、この報告書は、今、沖野座長がおっしゃったように、非常に丁寧にその辺は説明してくださっていますが、割と論者によって違うような気がしておりまして、ですので、この報告書を見た方が、悪質事業者には厳しくやるのだけれども、そうではないときにはという誤解をする可能性もあるかなと思って、それが少し気になったというだけです。報告書に異を唱えているわけではありません。大変失礼しました。
2点目なのですけれども、私、これも私の説明の仕方がよくなかったと反省しているのですが、消費法典のようなものを1つにつくったほうがいいと、私も別にはっきり思っているわけではありません。あり得るとは思いますが、まさに、今、沖野座長がおっしゃったようなデメリットというか、そういったものもあると思っています。フランスでも、その点は指摘をされています。
私がもっと申し上げたかったのは、もしかすると、もう少し機能的な話で、日本では、例えば、表示だったら景品表示法、特商法、消費者契約法、少なくともこの3つがあり、あとはクレジットとか、各分野ごと、今、おっしゃっていたような基本法、安全法といろいろな法律に分かれているわけですけれども、今後この議論をするときに、例えば消費者契約法の改正を前提にすると、今までは消費者契約法の、例えば専門調査会を立ち上げるなど、あるいは消費者庁の中で消費者契約法に関する研究会を立ち上げるという形で、法律ごとの検討をしていたのだと思うのですが、今後は恐らく、その法律の垣根を越えて、もしかすると、例えば部局も越えた形での議論が必要になってくるのではないかと思いまして、言うまでもないかもしれませんけれども、そういった検討も今後は、私は個人的には期待していますし、今後は積極的にぜひ行っていただけるのだろうかと思って質問したという次第でした。
大変失礼いたしました。
○鹿野委員長 沖野座長、お願いします。
○消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会沖野座長 ありがとうございます。
まさにそういった御検討を、この報告書の先にしていただけることを期待しております。
○鹿野委員長 ほかにいかがでしょうか。
中田委員、お願いします。
○中田委員 報告内容の丁寧な御説明、ありがとうございます。コメントと質問をお伝えさせていただきます。
私は、今回の報告は、全ての消費者の多様な脆弱性を前提とした、今後の消費活動や、消費者制度を議論する上で、次のアクションにつながる方向性を示した、示唆のある内容になっていると感じております。
私は、法律の専門家ではなくて、規制される側の民間事業に携わっておりましたので、サービス提供者である事業者への対応について、事業者全てを一律ではなく、そのグラデーションを踏まえた有効、かつ、適切な制度設計、法の必要性について言及されている点は、現実の経済やビジネス環境を踏まえた整理であると感じております。
従来は、法規範を尊重している事業者ばかりが法令順守を強化して、場合によっては、健全かつスピーディーな事業活動の必要以上の妨げになる場合があったり、かたや対応に全く応じる気配のない事業者が放置されてしまうという二極化の傾向も見られると思いますが、私も事業者特性に応じた対応の必要性を論じている点は、牽制だけではなくて良心的事業者の特性を前向きに生かすことが可能な内容になっているのではないかと感じました。
その上で、お願いと質問なのですが、複雑かつ変化が激しい課題を実効性高く解決していく上では、この報告書の次のステップとして、官民協業による巻き込みとか、消費者団体や官庁横断協力の流れが強化されることが不可欠で、この答申をもって消費者庁には、多様化する消費者トラブルの解決のための法整備や対応の司令塔としての役割を一層強化していただきたいと感じております。
この報告書は、今後、制度設計をしていく上での土台というお話が、先ほど沖野座長からございましたが、この報告書を踏まえて、先ほど大澤委員からの御質問にもありましたが、消費者庁が、今後、制度設計において担われる役割とか、姿勢、意気込み等について、ぜひ消費者庁の御担当者からお考えを伺わせていただければと思います。
○鹿野委員長 コメントと、それから最後の点は、消費者庁に御質問ということでしたが、どうでしょう、黒木審議官からお答えをいただくことはできますか。
○消費者庁黒木審議官 御質問、御意見ありがとうございます。
具体的にというのは、まだ、これからかと思っておりますけれども、まさに最初に、沖野座長からも御説明いただきました前文のところにもありますとおり、この報告書を踏まえて、消費者契約法を中心に、既存の枠組みに捉われることなく、消費者法制度を抜本的に再編・拡充するべきであるということですので、そのような再編・拡充をする具体的な法改正なのか、新法なのか、法律の在り方、法案の在り方を考えていくということを、速やかに進めていくべきと考えておりますし、やっていきたいと思っております。
そのための方向性が、まず、前文などにしっかり端的にまとめていただいておりますし、その際の材料というと何か少し語弊があるかもしれませんけれども、工夫、使えるツールみたいなこととかというのが、50ページの中に大変たくさん盛り込んでいただいていると思っておりますので、それらをしっかり活かしていきたいと考えております。
○中田委員 御回答ありがとうございます。
私たちがこうして議論している間にも、消費者被害が多数発生している状況がありますので、ぜひ具体的に、いつまでにどういったことをするというスケジュール感を持って、消費者行政をリードしていただけたら幸いと感じております。よろしくお願いいたします。
○鹿野委員長 それでは、沖野座長から、中田委員の御発言全体に関して、コメント等がありましたら、お願いします。
○消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会沖野座長 ありがとうございます。
第1点として御指摘いただいた点は、まさに思いを共通するというか、報告書の中でも種々強調させていただいた点でございます。
例えばですけれども、第3のところの28ページの最初の部分、2段落目ですけれども、消費者法制度によって多様な脆弱性を有する消費者が安心して安全に取引に関わることができる環境を整備することは、優良な事業活動が選ばれる健全な市場を実現していくということですから、まさに優良な事業者の方が、その事業を健全に展開していってくださるということを促進することと、言わば表裏一体ということがありますので、様々な事業者のグラデーションを踏まえて、かつ、今までいささか格差に注目していたところが、あたかも対立構造のように捉えられ、あるいはいろいろな検討の中で、あたかも利害が対立化するかのように捉えられた面も、いささかあったと思いますけれども、むしろ、ともに同じ目的で実現していくことではないかということを強調しており、しかし、その目的を共有しないところについては、むしろ排除のほうへと、そういうことを打ち出しておりますので、中田委員の御指摘というのは非常に力強く、まさに報告書が示しているところでもあると感じたところでございます。
以上です。
○鹿野委員長 ありがとうございます。
よろしいですね。
それでは、星野委員、お願いします。
○星野委員 御説明ありがとうございます。また、長期間にわたる御審議をありがとうございます。
報告書、2-1の2ページでございますが、消費者ならば誰しもが多様な脆弱性を有するという認識、これ自体、私は、行動経済学会の会長などをしておりまして、そのような研究もしているところで、4年前にこちらの委員になった際から何度も何度も申し上げていたところでございますが、当時は脆弱な消費者がいるというような認識だったところでございまして、このように取り上げていただいて大変ありがたいと思っておりまして、今後、立法や消費者行政全般に、このような概念を入れていただくことは非常にありがたいと思いますし、消費者庁には、次期の基本計画などにも、必ずこの概念を入れていただきたいと思っております。
一方、具体的な観点になりますと、たまにというか、外形的に判断しきれないような要素というのも、もちろん、そういった認識は御理解いただいていると思いますが、例えば、搾取、不公平といった要素に関しまして、例えばダークパターンでございましたら、明確にOECD等で7つほど分類がありまして、具体的に、例えば、スニーキングという中のドリッププライシングというのは、例えば、最初のうちに出た価格だけでは、実際には物を買えないみたいなことがあって、そういったものを規制することが、実際にアメリカのカリフォルニア州等で、もう法規制が行われていると。
同じように、アージェンシーでタイムプレッシャーを用いた表示などに関しまして、例えば、EUがこれを規制するみたいなことは起こっておりまして、明確な基準があって、それに対してこういった行為であったら、これを規制するみたいなことが明確化されるというところがあると思います。
それに対し、例えば、報告書の24ページでしょうかね、下の方の「もっともダークパターンが」というところがございまして、私として、経済学的な観点で見ますと、例えば、レコメンデーションとか、パーソナライズド・プライシングとか、ターゲティング広告というのは、必ずしも消費者に対して害をもたらすものではなくて、一般的に社会構成を増加させるとは言われておりまして、それを実際に消費者余剰と生産者余剰で分配するわけですが、生産者というか、企業側が全部取っていくということは確かにあり得るかもしれませんが、基本的に社会構成を向上させるという場合に、もし、消費者余剰が取り切れないのであれば、例えば、税とかで対応するとか、ほかの手段もあるかと思います。
ですから、このような、例えばレコメンデーション、ターゲティング広告、パーソナライズド・プライシングみたいな、資料2-2の5ページにもございますが、これは、ダークパターンと大分違う要素かと思いますので、ここら辺に関しましては、なかなかこれを外形的に、これが搾取で不公正なのかといったところは、なかなか、何かしら定義というのを明確にするのであれば、それに関しては、やり切れると思いますが、このような観点で、ここら辺、先ほどの人々が脆弱であって、いろいろな認知的な不足があって、そこに対して、例えばレコメンデーションは、ある意味、それに対してポジティブに働くということもあるかと思いますので、そこら辺を全てというか、搾取や不公正的な取引が具体的に何なのかというところまで行くと、なかなか、この定義は難しかろうと思いますので、そこら辺、すみません、報告書で、もちろんいろいろ記載はされていると思いますけれども、具体的に、例えばそこに関して、それらを用いた搾取や不公正な取引が不健全だとかといったことに関して、なかなかそこをどのように規制するなり、何かしらディスインセンティブを加えるなりということに関しては、また、かなり一定の議論が必要なのかなと思っておりますので、そこは留意が必要なのかなと思います。
あと、資料の2-2自体に関しましては、単純にそれらを用いた搾取や不公正取引が不健全というよりは、それらを搾取や不公正な取引に用いることが不健全というぐらいの言い方、3つの下のところ、そこの部分は、これだとかなり不公正な取引が不健全という何かよく分からないことになっていますので、そこら辺は事務局のほうというか、ここを変えていただきたいかなと、この文書、このようなものが出ると基本的に、このレコメンデーション、ターゲッティング、パーソナライズド・プライシングという基本的に社会構成を高めると言われているものが不健全だと思われかねませんので、そこら辺、留意が必要かなと思っております。
一般的に、すみません、非常にすばらしい、本当にパラダイムシフトをということで、消費者ならば誰しもが持つ脆弱性ということに着目いただいて、すばらしいと思いますが、具体的な制度設計におきましては、先ほどから座長がおっしゃっているように、少し外形的な何かしらの基準みたいなものが必要になってくるのかなと感じました。ありがとうございます。
○鹿野委員長 ありがとうございます。
行動経済学の専門家からのコメントでございましたが、沖野座長から、何かございますか。
○消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会沖野座長 明確な御指摘ありがとうございました。
これも、やや不遜な言い方かもしれませんけれども、まさに報告書でも、そういうことを言いたいというつもりではございます。ただ、表現が適切かというのは、まさに考えるところはあるだろうと思っております。
御指摘いただいたところですと、ここで書いております中では、一方でダークパターンのように、むしろそれを規制するというか、やめさせる方向に動くべきものというものが一方であると、それは、比較的簡単ですが、ただ、言ってくださった幾つかの手法のほか、どんどん開発されていきますので、そういう後追いといいますか、そういうものをどうするかという問題は、一方であるのだろうと思います。
他方で挙げていただきました、パーソナライズド・プライシングですとか、ターゲティング広告につきましては、例えば、今、挙げていただきました報告書の24ページを御覧いただきますと、(2)の冒頭でございますけれども、プロファイリングに基づくレコメンデーション、ターゲティング報告等は消費者の選択を支援し、利便性を高めるものであるという一定の有用性がある一方で、自律的な意思決定を弱めるリスクを持つという危険性もある、あるいは負の点もあるということで、パーソナライズド・プライシングにつきましても価格差別がプラスの経済的効果を持ち得るということではありますけれども、マイナスの面もあるという、この両面を持つものをどのような形で対応していくかということの難しさということが、やはりあるのだろうという指摘を報告書ではさせていただいているつもりでございます。
それから、24ページの最後の段落「もっともダークパターンが不健全であるとして」という、ここはダークパターンは不健全だということで、対応を検討するというのは、問題はいろいろありますけれども、比較的方向性が分かりやすいと、ただ、どういうものがダークパターンかというのを、その定義ですとか、一方で考える必要があるのでしょうけれども、しかし、それとは異なりまして、パーソナライズド・プライシングやターゲティング広告においては、すべからく否定されるものではなく、それらを用いた搾取や不公正な取引がということですので、それら自体が搾取だとか、不公正だというつもりはなくて、しかし、それを悪用するという可能性もあるので、そこをどう抑えていくかと、これは非常に難しいというのは、まさに委員御指摘の点だと考えているわけでございます。
それから、専門調査会の中では、ダークパターンのようなものは、端的にその手法自体を禁止するというか、それを実効性をもってどのように図るかという問題があるのに対して、これらについては、それ自体がおよそ禁止されるべきものでは必ずしもないので、例えば、それが搾取につながっているとか、そういう何らかの結果の表象を捉えられるかとか、あるいは透明性の確保というのが非常に重要ではないか、言わばプロセス面に着目するということでございますけれども、着目の仕方も幾つかあるのではないかといった検討をしており、報告書にも書いているところと存じます。
ですので、全く委員御指摘のとおりだと考えているというのが、一言での結論ということになります。
以上です。
○鹿野委員長 ありがとうございました。
星野委員、よろしいですか。
○星野委員 ありがとうございます。
ただ、1点だけ、搾取、不公正な取引というのが、なかなかどういったものなのかという定義もなかなか難しいだろうと思います。そこに関しましては、今後ぜひ、ここでつくられました方向性を具体的な施策に落とし込む際に、御議論いただくべきものかなと思っております。ありがとうございます。
○鹿野委員長 ありがとうございます。
それでは、実は、予定した時間を経過しているのですが、柿沼委員からお手が挙がっているようですので、柿沼委員、できれば少し手短にお願いしたいと思います。
○柿沼委員 はい、分かりました。
丁寧に、また、多角的にまとめていただきまして、ありがとうございます。
消費生活相談員と消費者団体の立場として、コメントを申し上げたいと思います。
消費生活相談の現場では、契約トラブルや情報提供不足など、様々な課題に直面する消費者が後を絶ちません。
たとえ、関連法規が整備されていても、実効性ある制度運用や相談体制の確立が十分でない場合、結果として消費者救済に結びつかないケースが多く見受けられます。
こうした現場の実情に正面から向き合い、制度の課題を浮き彫りにし、改善の方向性を明示した今回の報告書は極めて意義が深く、現場を支える関係者にとっても大きな励みとなる内容と受け止めています。
一方で、近年の消費者トラブルは、デジタル化の進展や新たな取引形態の登場などに伴い、複雑化、高度化しています。
こうした急速な変化に対し、制度設計や対応方針の検討が十分に追いついていないという現状があり、それが懸念材料と思っております。
今後の消費者保護の実効性にも影響を与えかねないというところもありますので、展開の時期や運用の方針が明確でないという、このような状況下では、消費者支援の取組が後手に回る可能性も否定できません。引き続き、速やかに実効性を伴う取組として、形骸化しないよう、相談現場でも活用できるように柔軟にかつ検討が進められるようお願いいたします。
また、消費者団体の活動に光が当てられたことに対しても心より感謝申し上げます。消費者団体の活動は、本当に地道な努力がありますので、こちらについて、改めて評価されたことは、今後の消費者トラブルなどの対応、推進にとって大きな力になると感じております。
こちらの報告書が十分に生かされるように、今後も後押しをしていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○鹿野委員長 基本的にはコメントということだったと思いますが、何か沖野座長、ございますか。
○消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会沖野座長 まさに報告書でもそういった点を強調したいと考えておりましたので、コメントをいただいて大変力強く思っております。
○鹿野委員長 ありがとうございます。
ほかは、よろしいですね。
それでは、議論はここまでとし、委員会としての答申案を表示、配付したいと思います。こちらを御覧ください。
(答申案の画面表示及び配付)
○鹿野委員長 ただいま、追加資料として答申案を表示、配付させていただきました。
この答申案では、令和5年11月7日付で内閣総理大臣から当委員会に諮問のあった、「超高齢化やデジタル化の進展等、消費者を取り巻く取引環境の変化に対応するため、消費者の脆弱性への対策を基軸とし、生活者としての消費者が関わる取引を幅広く規律する消費者法制度のパラダイムシフト」について、下記のとおり答申することとしております。なお、諮問には、より具体的なところについても書かれていたということは、先ほどの沖野座長からの御説明にもあったところです。
その答申の内容としては、別添「「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会報告書」の内容を踏まえ、消費者ならば誰しもが多様な脆弱性を有するという認識を消費者法制度の基礎に置き、既存の枠組みに捉われない抜本的かつ網羅的なルール設定に向けて、種々の規律手法を目的に応じ有効かつ適切に組み合わせて実効性の高い消費者法制度を整備すべく更なる具体的な検討を行うなど、必要な取組を進めることが適当である」としております。
先ほどの御議論でもありましたとおり、この報告書自体は、今後の法制度の設計をする上での土台を形成するようなものでございまして、そういうことですから、まだ具体的な法律についてどうするかというところは、今後の検討とされているところでございます。
この報告書自体は、先ほど各委員から意見がありましたように、とてもよくできていると思いますが、この答申案としては、この報告書の内容を踏まえて、今後、更なる具体的な検討を行うなど、必要な取組を進めることが適当であるということを盛り込んだ答申案としているところでございます。
これを委員会の答申としてよろしいでしょうか。委員の皆様、オンラインの皆様もよろしいでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○鹿野委員長 それでは、皆様の御了解をいただきましたので、この内容で内閣総理大臣宛てに答申させていただきたいと思います。
沖野座長におかれましては、報告書をおまとめいただき、本日も様々な質問やコメントに御対応いただきまして、ありがとうございました。これまでの御尽力に感謝申し上げます。
皆様、本日はお忙しいところ御対応いただき、ありがとうございました。どうぞ、御退席ください。
○黒木委員長代理 ありがとうございました。
○鹿野委員長 ありがとうございました。
(沖野座長、黒木審議官、古川課長 退室)
《5. 閉会》
○鹿野委員長 本日の本会議の議題は以上となります。
最後に事務局より、今後の予定について御説明をお願いします。
○友行参事官 次回の本会議の日程と議題につきましては、決まり次第、委員会ホームページを通してお知らせいたします。
以上です。
○鹿野委員長 それでは、本日は、これにて閉会とさせていただきます。
お忙しいところお集まりいただき、活発な議論をしていただきまして、ありがとうございました。
(以上)