第460回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2025年5月13日(火)10:30~12:53

場所

消費者委員会会議室及びテレビ会議

出席者

  • 【委員】
    (会議室)
    鹿野委員長、黒木委員長代理
    (テレビ会議)今村委員、大澤委員、小野委員、柿沼委員、中田委員、山本委員
  • 【説明者】
    公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会 小野寺専務理事
    公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会SC部
    百瀬競技委員会委員長
    東商アソシエート株式会社クライミング&アミューズメント事業部営業部
    技術営業グループ 東部長
    帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科学科長 加藤教授
  • 【事務局】
    小林事務局長、後藤審議官、友行参事官

議事次第

  1. クライミング施設における消費者安全について

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1. 開会》

○鹿野委員長 本日は、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまから、第460回「消費者委員会本会議」を開催いたします。

本日は、黒木委員長代理と、私、鹿野が会議室にて出席しており、今村委員、大澤委員、小野委員、柿沼委員、中田委員、山本委員がテレビ会議システムにて御出席です。

なお、原田委員、星野委員は、所用のため本日は御欠席と伺っております。

それでは、本日の会議の進め方等について、事務局より御説明をお願いします。

○友行参事官 本日もテレビ会議システムを活用して進行いたします。

配付資料は、議事次第に記載のとおりでございます。もしお手元の資料に不足等がございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願いいたします。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございました。


《2. クライミング施設における消費者安全について》

○鹿野委員長 本日の議題は「クライミング施設における消費者安全について」でございます。

近年、スポーツクライミングは、オリンピックを1つの大きな契機として人気が高まり、国内ではクライミング施設が増加しております。

一方で、落下した場合には、重大な事故につながる可能性があり、実際に骨折等の事故が発生している状況ですが、現時点でクライミング施設の安全基準が定められているのか、また、事故情報が十分に把握されているのかなども不明な状況です。

消費者委員会では、令和6年4月に取りまとめた「次期消費者基本計画策定に向けた消費者委員会意見」の中で、生命身体に関する事故が増加傾向にある現状を指摘するなど、こうした安全面での消費者問題に対しても強い関心を持っています。

過去には、平成27年8月に「商業施設内の遊戯施設における消費者安全に関する建議」を発出し、関係省庁に対し、商業施設内の遊戯施設における消費者安全に関する取組の強化や、事故情報の収集、活用等を求めた経緯もございます。

本日は、こうした背景を踏まえ、クライミング施設における消費者安全について調査審議を実施したいと思います。

本日は、スポーツクライミングの競技団体である公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会より、スポーツクライミングの概要について御説明いただきます。

続いて、クライミングウォールの設計、施工業者である東商アソシエート株式会社より、クライミング施設の現状等について御説明をいただきます。

そして、有識者として、帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科の加藤教授より、スポーツクライミングによる外傷、障害の実態等について御説明をいただきます。

皆様には、これらの御説明に加えて、それぞれのお立場からスポーツクライミングを安全に楽しむための課題についての御見解も御発表いただきたいと思っております。

それでは、改めて御紹介させていただきます。

本日は、公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会の小野寺専務理事、SC部の百瀬競技委員会委員長、東商アソシエート株式会社クライミング&アミューズメント事業部営業部技術営業グループの東部長、そして、帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科学科長でいらっしゃる加藤教授の皆様に会議室にて御出席いただいております。本日は、お忙しいところ誠にありがとうございます。

本日の進め方ですが、まず、公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会、続いて、東商アソシエート株式会社、その次に、加藤教授という順番で御発表をいただき、全ての発表が終了したところで、全体としての質疑応答、意見交換の時間を30分程度取らせていただく予定でございます。

それでは、早速ですが、最初に日本山岳・スポーツクライミング協会の小野寺専務理事、そして百瀬競技委員会委員長、できれば20分程度でお話をいただければと思います。よろしくお願いします。

○公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会小野寺専務理事 皆様、おはようございます。日本山岳・スポーツクライミング協会、小野寺と申します。

ただいまより、大体20分ぐらいということでしたので、現在、日本国内のスポーツクライミングの現状ということで、簡単ではございますけれども報告させていただきます。

パワーポイントで作成してきました、今、画面に映っているのが、その1ページになります。現状についてということのお話になります。

次をお願いいたします。

もともとクライミングは、登山の一部として発展してきたものなのですけれども、それがだんだん特化してきて、国際連盟の中でも、いわゆるクライミングということで頭角を現してきたという形になります。

もともとは、これからお話し申し上げますけれども、特に海外の団体、我々の外部の団体としまして国際山岳連盟、それから、国際スポーツクライミング連盟、それから、国際山岳スキー連盟と、我々、NFとIFと呼んでいますけれども、我々がNFで、上部団体がIF、インターナショナルとなります。

もともと国際山岳連盟の中からスポーツクライミング連盟、それから、山岳スキー連盟が発展してきたという形です。

国際山岳連盟は1932年の創立、ただし、スポーツクライミング連盟は2000年代に入ってから、それから、スキーも恐らく2010年代以降に入ってからという形になっています。

したがいまして、オリンピックになるということが決定したのは、たしか2016年のリオの大会であったと思います。そのときには追加種目ということで、正式ではなかったのですけれども追加種目という形になっています。

それで、2017年に、やはり種目のある種目名を団体名にしなくてはいけないということがありまして、日本山岳協会から日本山岳・スポーツクライミング協会と名称を変更いたしました。

それから、2020年と言っていますけれども、2021年、それから、昨年という形で、いろいろな国内の施設とか、環境を整えてまいったのですけれども、なかなか急激なことがありまして、現在、競技のほうには、オリンピックということで、JOC、ここに書いてございますけれども、上部団体の日本オリンピック委員会、あと、スポーツ協会というところが関連しておりまして、オリンピックに勝たなくてはいけないと、そういうことがありまして、どうしても競技のほうに力が入ってきたというのが現状です。

そうは言いましても、やはり、マスコミで報道されていますように、日本国あるいは世界的にもスポーツクライミングということが名前として広がってまいりまして、やはり普及ということ、あと、一部の方はクライミングジムをつくって、そこで人を集めて登らせてみようという方もいらっしゃってきたと、そんな形になります。

いろいろ話しましたけれども、我々は、国内加盟団体としましては、各都道府県にも山岳連盟及び山岳・スポーツクライミング連盟、これはまだ全部なっていませんで、山岳連盟のままのところもあります。まだ道半ばなのですけれども、あとは、全国高体連登山専門部、これは、スポーツクライミングは入っておりません。いわゆるインターハイを中心にやってきたところですけれども、12月には、埼玉県の加須では、高校選抜の選手権はスポーツクライミングで行われていると、そんな状況になります。

我々の組織といたしましては、いろいろな委員会がございまして、ここには書かなかったのですけれども、指導委員会とか、遭難対策とかいろいろあるのですけれども、特にスポーツクライミングに関しましては、比較的最近出てきた、当時は単なる競技委員会だったのが、いろいろな形で分かれてまいりまして、強化委員会とか競技委員会、百瀬は競技の委員長をやっております。それから、医科学委員会、アンチドーピング委員会とか、そのような形の委員会も設けて、安全性、あと普及に努めているという現状です。

それでは、目次に沿ってお話ししていきますと、このスポーツクライミングの起源、それから道具、競技人口、それから事故例、安全対策という形で申し上げていきたいと思います。

次のページをお願いします。

歴史です。先ほど申しましたように、いわゆるロッククライミングという名前でかつては言われておりました。あるいはアルパインクライミングという名称もございます。

特に欧州、ヨーロッパアルプスで、実は岩登りをしてきたのですけれども、競技化ということも、やはりヨーロッパ系統から来ているという形になります。

当時は、クリミア半島でしたか、当時のソビエトにおいて、いわゆる自然の岩場で、あくまで人工ではなくて、自然の岩場で登る競技会が開催されたと。そのときには、世界で参加25人中、日本は3人参加して、23位、24位、25位という大変な敗北感を味わってきたという歴史もあります。

その後、ここで申し上げますけれども、このときは今で言うスピード種目に近い形で採用してきたという形になります。

あとは、ロープを確保支点ごとにかけ直して登るリード種目に近いものは、アメリカでヨセミテ等々から発展してきたという形、それから、イタリアでもという形になります。

もともと見ていて御存じのとおり、例えばリードクライミングなどは、初めから支点がかかっていて、そこにロープを通しながら登っています。もともとのアルパインクライミングというのはそうではなくて、最初から何もないところから登っていくという、そんな状況で支点をつくりながら登っていく。ただし支点の場合には、岩に穴を開けるというか、岩に傷つけるということもあったので、それをやめましょうと。それでクリーンクライミングとかフリークライミングとか、そういう呼び名でもって変わってきたわけなのですけれども、あるいは岩の割れ目に単なるくさびを置いて、いわゆる岩を傷つけないで登るという形のものがだんだんと発展してきたと、そんな形になっています。

特にオリンピックの場合、リードは一応時間制限がございます。高さも制限がございます。

あと、いわゆるロープを使わずに手足のみ、シューズとチョークのみでのボルダーと、ボルダリングと書いてございますけれども、もともとはボルダーという形で言われておりました。

語源は、アメリカのコロラド州にボルダーという町があるのは御存じかと思いますけれども、そこで大きな岩を、10メートルぐらいかな、ちょっと分かりませんけれども、そこに登って遊んでいたと、それがだんだん競技化されたということでボルダーという形になっています。

いわゆるボルダリングと、ここに書いてございますけれども、最近はボルダーという名前にしていますけれども、そこで特に日本人は、ボルダーとかリードについては得意種目になっている。ただし、スピードは、力が入ることなので、なかなか世界に比べては少し劣っていると、そんな状況になっています。

あとは、クライミングの歴史の3のほうを見ていただければと思いますけれども、日本人もやがていろいろな練習を積んで強くなってきたという形になります。

日本でも岩登り競技会、外のようですけれども、例えば、山梨県にある三つ峠などでも岩登り競技会ということを言われているような現状です。

種目としましては、ロープを使わないボルダーというのと、ロープを使って登るリード、あと、スピードというのが、これは速さを競うのですが、そういうのがあるという形になります。

今後は、どうなっていくかというのは、オリンピックの種目は、種目そのものは変わらないのですけれども、点数の付け方とかが変わってきていますので、コンバインドという形でリードとボルダーを一緒にしたりということも、東京ではありましたけれども、ロサンゼルスでは、ボルダー、リード、それからスピードと、それぞれ独立した形で開催される、そのような形になります。それが、競技だけではないのですけれども、登るという行為の中では、そのようなものがあるという形で考えていただいて結構です。

道具、装備も、全体的にクライミングシューズ、足は、ビブラム底ではまずいので、それなりの足場を安定させる、あるいはフリクションを生かせるということでクライミングシューズ、それからチョークというか、摩擦をかけて手が滑らないようにと、そのような形のもの、それからハーネスと、これはクライミングの命綱というか、ロープと、昔はザイルと言っていましたけれども、ザイルでもいいのですけれども、ロープという形をつけるハーネスということと、ビレイ器具、要するに確保の器具です。ATC、Air Traffic Controllerという形ですかね。これで確保する。だから、テレビなどを見ていると、登っている人は見えますけれども、下のほうで確保している人はなかなか見えないかもしれないですけれども、それは、ちゃんとリードなどの場合には確保しております。ATCとか、それ以外の機器もありますけれども、そういうのを使って確保していると。

それで、装備の2のほうでは、ロープ、それからクイックドローと書いてございます。御覧のとおり、リードクライミング等々は、ロープをクイックドローにかけて、かけ方も少し技術はあるのですけれども、そうやって登っていくと、そんな状況になります。

我々は、そういう選手の強化もさることながら、やはり選手の登録とか、それから審判員、ルートセッターというのも含めて養成していかなくてはいけないということに、いわゆる協会として考えていく方向になっています。

選手登録は、これは、4月24日現在なのでまだ少ないですけれども、大体1万名ぐらいが選手登録としてあります。ただし、そのうち8,000人はほとんど高体連です。だから、ほとんど競技に出る選手が登録していると、これをもう少し全国に広げていかなくてはいけないと考えておりますけれども、まだ手が回っていないというのが現状です。

審判員は、A級、B級、C級と、いろいろクラス分けをしまして582名と、それからルートセッターが、やはり選手との駆け引きというと、言葉があまり良くないですけれども、ルートを難しくするか、簡単にするかという形、天然の岩場の場合には、そのものを登るしかないのですけれども、人工の場合ですので、難しくしたりとか、この辺は東さんが得意分野だと、簡単にしたりという形でやっております。

この赤で書いてあるところをクリックしていただいてもよろしいですかね。ホームページが多分出てくると思います。このような形でスポーツクライミングの、いわゆる指導者養成というのでしょうか、表現とすれば、レベルによってコーチ1、2、3、4となるのですけれども、この表現によって変わってきますけれども、コーチの養成ということも行っています。

したがって、ただ登るだけではなくて、クライミングの歴史とか、それから、本当はいかに安全に登るか、登っているときの動きとか、それから確保ですかね、落ちたらどのような形で落下者を食い止めるかということも含めて、指導は行っているというのが現状になります。

ここは、しゃべると長くなるので、ここはこの辺で結構です。ただ人数的には、そのぐらいの人が、まだまだ足りません。山岳は約3,000人ぐらいのコーチがおりますけれども、ここのスポーツクライミングについては、まだ700、800名、もう少しコーチ養成をしなくてはいけないと、発展途上にあるというのが現状です。

次のページをお願いします。

競技人口は、私どもが直接調査したわけではございません。ネット上にあるものから抜粋したという形で、大体60万人ぐらいという形で考えております。

あと、クライミングジムの件数も、大体500件から数百件ぐらいかなという形と考えております。

ここの競技人口、クライミング施設の中に書いてございますけれども、ジム数、いわゆるプライベートな感じのジムの数というのは、完全にはつかめておりません。これは、できたり、つぶれたり、それからジムの連盟があるけれども、実際どういう組織になっているのかと、私も調べようとしたのですけれども、なかなか調べ切れなかったということもございまして、これは、現在道半ばという形になります。

ここのところは、統一されてくると随分違うのですけれども、まだまだ普及にはほど遠い感じになっている形になります。

ただ、公の施設と言うのでしょうか、いわゆる自治体がつくっている施設もあります。JOC公認の施設と、これは盛岡とか、倉吉とか、西条とか、佐賀とか、こういうのは全部自治体がつくっている施設になります。そこでは、主に強化選手の育成ではありますけれども、一般にも自治体が開放してやっていると。

それと少し落ちるけれども、我々の略称JMSCA、ジムスカという表現で呼んでいますけれども、これも全国に数件という形。ただ、なかなか公となると人の問題があるので、毎日運営というのは、現状は難しいかなという形になります。

それとは別個に、我々の団体とは直接ではないのですけれども、公認競技会というものをつくっております。これは抜粋です。こういうことを要件としてきちんとしないと、公認できませんという状況になります。

あと、競技規則というものも、特にクリックしなくても結構なのですけれども、必ず競技は、このような規則に則って行わなければならないということは全てホームページに掲載している状況になります。

あとは、クライミングジムにおける事故例という形で、この辺のところは、落下して、やはり確保のロープの使い方、それから確保がうまくなかったということが、結構事例としては多くあります。

これは、クライミングジムのジムの中でもそうですし、それから自然壁、外岩などでも同じような形で、やはり技術に未熟な方が実際そういうことをすると、事故が発生すると、だから、どうしてもきちんと教育はしなくてはいけないということで考えている形になります。

最後のページ、安全対策になりますけれども、基本的にはコーチの資格を持った方の指導、ただ、コーチといっても完全に100パーセント教え方がうまいかというと、これは、後で加藤先生のほうからも出てくるのですかね、手とか関節の使い方とか、そういう身体的な要素、そこまではなかなか一般的なコーチには教えきれないところがあるのですけれども、そこは、私どもは先ほど申しましたように、加藤先生もいらっしゃいますけれども、医科学委員会、登山もスポーツクライミングも医科学委員会をつくって、なるだけ注意をするよう努めてはいますが、まだまだ全国には至っていない現状になります。

あとは、ロープを使う場合には確保です。それからヘルメットはかぶってほしいというのが我々の願いです。外でやるときにはかぶるのだけれども、中でやるときはなかなかかぶりません。いわゆる確保の支点の問題がありますので、外の場合には、支点が緩いと、落ちてロープで取り切れずに下まで行ってしまうことがある。だから、インドアの場合には支点がしっかりしているので途中で止まるという、そういう前提があるのでヘルメットはつけないのですけれども、基本的には、ヘルメットはつけてもらいたいというのはあります。

あとは、ジムなどで狭い場所で行っているという話をよく聞きます。ただ、我々が行って、それは駄目だと言うわけにもなかなかいきませんけれども、消防署が入って、とても煙に巻かれて逃げられるどころではないのではないのとか、そういうものもあるように聞いております。そこのところは、やはり、これからどの形で指導していくか、これは今後の課題という形になっております。

簡単ですが、以上です。

○鹿野委員長 小野寺専務理事、詳細な御説明をいただきまして、ありがとうございました。

続きまして、東商アソシエート株式会社の東部長から、同じく20分程度で御説明をお願いします。

○東商アソシエート株式会社クライミング&アミューズメント事業部営業部技術営業グループ東部長 それでは、私のほうは、この委員会様の説明内容としましていただいています、1、スポーツクライミングの現状、2、クライミング施設の安全対策、これは運営面と施設面を含みます。3、スポーツクライミングを安全に楽しむための課題、事故の状況、また、その要因ということで、御説明をさせていただきます。

第1章としまして、スポーツクライミングの現状、このレジュメというか、資料に沿って御覧ください。

1、スポーツクライミングの説明。スポーツクライミングとは、クライミングは本来、自然の岩場を登るスポーツでしたが、クライミングホールド、これは岩に似せた突起ですが、これが開発されて以降、それを取りつけたクライミングウォール、人工の岩壁が設置され始めました。

自然の岩の場合は天候の急変や落石・雪崩等の不確定要素がありますが、スポーツクライミングでは、しっかりとした強度や危険要素に関する基準が定められています。このため安全性の高いスポーツとなっています。

本来、スポーツクライミングといいますと、2つ意味がございまして、広義、広い意味では、岩場も含めまして安全なアンカー、支点が打っているところがスポーツクライミングの対象のエリアとなります。

これ以外のところは、雪崩があったり、ハーケンが抜けたり、落石があったりという冒険的要素の強いのは、スポーツクライミングとは言いません。

狭い意味、狭義では、人工施設を登るクライミングのことを、スポーツクライミングと呼んでいます。これは、後ほど述べさせていただきますが、様々な規格がありまして、施設をつくる安全面での規格に適合したクライミングウォールで行うことが、スポーツクライミングとなっています。

このスポーツクライミングには、下の絵のように、ボルダリングという種目と、リードクライミングという種目が、大きく分けてこの2つがございます。

ボルダリングは下にマットを敷いて落ちても大丈夫なところを登ります。高さは、規格上は4.5メーター以内となっています。リードクライミングは、特に高さの制限はないのですが、大体10メーターから20メーターの範囲で行われています。これは、ロープをつけて、もしクライマーが落ちても、このロープにぶら下がるシステムで登るようなジャンルです。

続きまして、次の2ページですが、スポーツクライミングの施設の変遷。クライミングは、もともと自然の岩を登るスポーツでしたが、40年前にヨーロッパで合成樹脂製のクライミングホールドがつくられ始めました。それによって、国内では、1980年代の後半から人工のクライミングウォールの導入が開始され、クライミングウォールやクライミングホールドは年々進化して、現在ではサイズや形状、材質が大きく進化しています。

私が今、手持ちをしているのが、こんな感じで、これはクライミングホールドで、Mサイズぐらいになりますが、これは合成樹脂製です。こういうものを岩の代わりに登るのがクライミングです。

この写真の中で、1990年のほうは、垂直の壁に少量のクライミングホールドがついています。こういうものからスタートして、30年後には、非常にカラフルな壁に色とりどりのクライミングホールド、大きさも、大きいものは、直径が2、3メーターあります。小さいものは、直径が7センチぐらいのものがございます。この大きさは規格で決められています。

下はリードクライミングですが、最初は体育館の側壁、これはわざとつくったものではなく、コンクリートの壁があるので、こういったクライミングホールドをつけようということからスタートしまして、現在では、試合は、このオーバーハング、前傾といいますが、これが非常に前傾度の高い壁でないといけない。前傾は、20度から30度ぐらいになります。国際規格では、15メーター登る間に、後ろに8メーターから9メーター前傾度がないと、競技施設としては使えないとなっています。

続きまして、2番、クライミング施設の現状。3ページです。

クライミング施設の増加ということで、国内では35年前に、人工のクライミングウォールが設置され始め、その後、各県に1から3か所の公共クライミング施設が設置されました。

また、民間のクライミングジムは飛躍的に建設され、2018年には500軒を超えています。現在では、国内の愛好者は60万人に達し、2020年東京オリンピックの追加種目になるほど、国際的な隆盛状況となっています。

この下が、ジムが増えてきたグラフですが、私は、クライミング歴は45年ぐらいあるのですが、1989年にゼネコンから今の会社に転職して、日本で最初のジムを手がけました。大阪です。2件目は、御成門に、うちの会社のショールームを改造してつくりました。これが最初のクライミングジムだったわけですが、そこから非常に多くなってきました。

この理由としましては、最初はクライマー向けのトレーニング施設として、最寄りの港の倉庫とか、空いているところにつくったのがクライミングジムの発祥です。ところが、だんだん一般的なスポーツになってきまして、クライミングをされていない方がクライミングジムで始めるという現象が多くなってきました。

これによってクライミングをやっている人が、自分もクライミングで身を立てたい、何かクライミングに関わる仕事をしたいということがございまして、我々は昭和30年、40年世代は、恐らく脱サラして喫茶店をつくりたいとか、スナックをつくりたいとかというのがあったかもしれません。それとほぼ同じような状況で、家を建てるために1,000万の頭金があるのだけれども、これをクライミングジムにできないかという人が多くなりまして、今のクライミングジムの隆盛につながっています。

1つの拠点に、例えば、1日50人とか60人来たら、もう少しターミナル駅に近いところに自分がつくれば、このお客さんの半分は奪えるのではないかとか、自分の出生地に早くジムをつくらないと自分の橋頭堡が確保できない、そういう過当競争がありまして、こういう比例関数的なジムの多さに至りました。その後、500件で大体頭打ちになっている感じがございます。

続きまして、4ページです。

スポーツクライミングの競技種目ということで、スポーツクライミングは1980年代の後半から競技種目になっていますが、この中の種目としては、ボルダリング競技、リード競技、スピード競技という3種類がございます。

ボルダリング競技は、高さ5メーター弱のルートに、ボルダーウォールにルートをつくりまして、制限時間内に何回でもトライできるのですが、課題が4つから5つぐらいありまして、それを幾つ登れたかを競います。

リードクライミングは、高さ15メーター程度のクライミングウォールに、大体45から50ぐらいのホールドがついていまして、何個まで登れたかというのが、これは到達高度に相応するのですが、それを競います。試技時間は大体5分ぐらいで、1回でも落ちたら、そこで試技はストップされます。

スピード競技は、高さ15.7メーターの壁、クライミングウォールで、コースは国際スポーツクライミング連盟のほうで決まった配置になっています。それを登っていくのですが、最初の頃は10秒そこそこでしたが、現在では、5秒を切る選手が世界チャンピオンとなっています。

そして、日本選手の競技力ですが、1990年代から大体日本選手も国際大会に出始めました。初めはヨーロッパ、もしくはアメリカの選手に押されてとても予選を突破できなかったのですが、その後、平山ユージさんという非常に強いクライマーが出たり、野口啓代さんという方々が非常に頑張りまして、世界でもリードとか、ボルダリングでチャンピオンになっていきました。

その後、非常に日本選手の実力が上がりまして、今は日本人選手が世界でトップにあります。逆に言えば、日本人選手が勝ち過ぎて、ヨーロッパが盛んのクライミングのルールを変えられています。これは、スキーのジャンプで板の長さとかというのもございますし、いろいろ人数制限があるのですけれども、去年はヨーロッパで行われた国際大会の決勝戦に進んだ大半が日本人だったのです。そういうことから、今年はインターナショナルシードという日本人が入りやすいシードをなくして、一国が何人制と決められて、日本人の選手が少なくされている状況、これは、要するに日本人が強過ぎるからということです。

では、なぜ強いかといいますと、まず、先ほど申し上げたように、ジムが非常に多いです。アメリカでもジムは多いのですが、アメリカのジムは非常に巨大なジムで、1回に何百人という人が入れます。日本のジムは小型で、要はこの部屋ぐらいのスペースで行われていまして、一度に20、30人入れるかどうかです。ただ、それは駅に近いところにございますので、小学生とか中学生が帰りやすい範囲です。それで非常に競技力が進んだ傾向がございます。

それ以外に、このクライミングに対して、スケートボードの中学校の選手、世界レベルの選手が、そこも日本人が強いのですけれども、なぜ強いかというインタビューの中で、日本人はみんな非常にうまくなろうと努力している。例えば、私が海外の岩場で登っていたら、アメリカ人から今日はどれを登ったのだ、楽しかったかいと聞かれます。日本人に出会ったら、東さん、今日はどこへ登ったの、登れたかと成果を聞かれます。ですから、日本人は非常に成果主義でございまして、ジムでも非常に競い合って登っていくので、それが競争力となって強い選手を輩出している傾向にございます。

続きまして、クライミングルートの説明です。

5ページの写真は、ボルダリングですが、スタートのホールドが定められていまして、ゴールのホールドまで5、6個のホールドがございます。これをゴールに到達できれば、このルートを攻略したということになります。

スタートは、手の届く範囲からではなくて、このスタートのホールドを両手でもってスタートと、競技ルールで決まっています。

そして、このホールドは取替えも可能ですし、角度や場所を変えることができます。それによって競技種目としては、出場選手の力量に合わせてルートの困難度を調整していきます。

そして下の写真のように、幼児でも登れるようなルートをつくれれば、全日本の選手でも困難な、要するに出場枠が100人でも1人しか登れないようなルートもつくることができるということです。

6ページにまいります。

それでは、ルートがどのようにつくられるかというと、例えば1スペースに1ルートでしたら、例えば、この部屋ぐらいの大きさのクライミングジムがあっても、30ルートぐらいつくるのがやっとではないかとなってきます。

ただ、今のシステムは、クライミングホールドの色別でルートをつくっておりまして、この写真の中のように、黄色いだけの突起、要するにホールド、緑、赤、紫、オレンジと、約10色のホールドがございますので、それぞれが難しさの異なるルート、もしくは柔軟性が要るとか、瞬発力が要るとか、持久力が要るというような身体的要素が様々必要な性格のあるルートをつくることができます。

このルートにはグレード、難易度というのがついています。似ているのが体操とかフィギュアスケートでも難易度と呼ばれています。ただ、スケートや体操は、その技を行ったら、その難易度に相応するということです。ボルダリングとかクライムのほうは、そのルート自体に難易度がついていまして、そのルートを落ちずに登れば、その難易度のルートを登ったということになります。

これは、ボルダリングの場合は、8級から6段ぐらいまであります。今後、7段、8段となっていくかもしれませんが、8級でしたら、ほとんどの方が1回で登れると。その後、体力があれば登れたりとなってきて、最終的に世界クラスでは3段ぐらいで国際大会が行われています。

また、現在確認されているのは、世界でも1人しか2人しか登れていないという中では、6段ぐらいまでのルートがございます。

このように、クライミングジムでは、たくさんのルートを設定して、自分として限界のルートをチャレンジしていくのが、このクライミングの在り方です。

その次、7ページにまいります。

クライミングの特徴としまして、クライミングの多様性です。クライミングは固定されたホールド、動かないホールドに体を当てはめていくという特異なスポーツです。

かつてアメリカのフィットネスクラブの半分に、このクライミングウォールがあったぐらい、フィットネスにも即している側面がございます。

現在では、クライマー以外に、東京の蓮沼にあります味の素スタジアムでは、水泳やスキー、レスリングなどの全日本選手が、サブトレーニングとしてクライミングを行っています。

その次、2番目、クライミングの簡便性、クライミングでは複雑なルールはなくて、ただ、スタートからゴールまで落ちずに登ればいいということですので、体験クライミングをはじめとして、非常にクライミングが行いやすい競技となっています。

また、現在では東京の中央区、品川区、また、茨城県の小学校には、ボルダリングウォールが設置されていまして、これは児童の体力増強、特に上体の力がないということで、何か競技性の高いスポーツがないかということで調べたら、ボルダリングに行き当たったということで、今、整備が進んでいます。今後もしかしたら東京都内の全ての小学校にもボルダリングウォールが配備される可能性もございます。

クライミングの対象年齢としまして、8ページです。選手の年齢としましては、大体10代後半から30代前半までが一番多いのですが、平均年齢は20歳でした。以前は30歳の選手も普通におりましたが、現在は10代の選手のほうが強い傾向で、これは体操競技みたいな感じですが、幼少の頃からクライミングをやって、非常に体のこなしというか、それがクライミング的なムーブになってきまして、クライミング選手の低年齢化が進んでいます。

これは、ジムでもそうなのですが、ジムでは大体小学生ぐらいから始めています。そして、ボルダリングで一番多い年齢層は、20代から40歳ぐらいの方です。さらにこの特徴は、途中から始める方が多いということです。これは、ボウリングみたいなレジャー的な側面もあり、スポーツ性もあるというのに若干似ているかもしれません。サッカーとか野球を途中から始める方は少ないと思いますが、ボルダリングの最たる特徴は、社会人になってから始める方も結構いらっしゃるということです。

そして、また、ここに書いていますように70歳、私自身が65歳で今日も登りに行く予定なのですけれども、70歳を超える方でも、80歳に達する方でもクライミングをされている方もいらっしゃいます。ですから非常に息の長いスポーツだと言えます。日本スポーツ協会の人に尋ねると、こういう生涯スポーツというところが、非常にクライミング的には有用性が高いのではないかとおっしゃられたこともございます。

続きまして、第2章、時間は大丈夫ですかね、もう少し早く進めたほうがよろしいですか。

○鹿野委員長 はい、あと少しだと思います。お願いします。

○東商アソシエート株式会社クライミング&アミューズメント事業部営業部技術営業グループ東部長 クライミングの安全対策ということで、国内にはJIS規格とかに相応する安全規格はございません。クライミングは非常に欧州で盛んでして、欧州規格といいます。要するに、ヨーロッパノームと訳しますが、ENという規格がございます。

この中のEN12572-1番、2017年に制定されていますが、これはクライミングウォールです。その枝番号2番がボルダリングウォール、枝番号3番がクライミングホールドについての規定がございます。

これに対しまして、国内の安全規定を調査したのですが、クライミングに対しては特にございません。相応しますのは、国土交通省から発行されています、都市公園における遊具の安全確保に関する指針です。これは、公園施設業協会の方が編集されたマニュアルを基に作成されたものですが、例えば、遊具の高さに関しては、落下には転落による重度の障害、あるいは恒久的な障害を最小限にするため、最大値を幼児用で2メーター、児童用で3メーター以内とするとなっています。

また、下にも砂やウッドチップ、ラバーなど衝撃吸収のあるものを設置すると書かれています。

つまり、公園遊具は汎用性が非常に高いですので、特に落ちないように安全柵を設けたりして、落ちても死亡事故もしくは後遺症が残る事故を避けることを旨として計画されています。

対しまして、次のページで、クライミング施設の計画仕様ですが、この欧州規格の中では、ボルダリングウォールは、高さ4.5メーター以内にしなさい、そして、マットは、加速度の減速率、それから反発係数、それから沈み込み率といったものにファクターを求めた規定がございます。

あとは、ボルダリングウォールは、マットの範囲が、側面が1.5メーター以上、前面に対しては、落ちてから仰向けに倒れてもまだマットがあるようにということで、2.5メーター以上の余長がないといけないと、欧州規格では定められています。

このようにして、ヨーロッパ地方では、安全基準もしくは安全の規格、敷設範囲とか、支点の間隔、支点の強度などを定めて、安全な法律というか、規格になっています。

クライミング施設の安全対策としましては、11ページです。ボルダリングウォールでは墜落しても十分安全な緩衝力のあるマットを敷設します。また、墜落マットの面までは3メーター以内にするということが基準になっていますと。

この写真のように、オーバーハング、天井裏みたいなところを登っていて、ハイジャンプの背面跳びみたいな姿勢で落ちても、ケガをしないということを前提につくられているのが、このボルダリングウォールです。

リードクライミングでは、ロープをつけて登りますので、この強度が2トン以上ございます。そして、落ちて止めるのは、ロープを通してきたカラビナですが、このカラビナもしくはカラビナを固定している支点も全て静荷重では2トン以上耐えなければいけないという基準になっています。これは欧州規格もそうですし、国際山岳連盟が定めた基準がヨーロッパに踏襲されて、今のCEの規格にもなっています。

これ以外の施設についての安全対策ですが、12ページです。

6)番、クライミング施設運営面の安全対策としまして、ボルダリング施設の場合は、初めて施設を利用される方には、スタッフが登り方の説明を行っています。

それから、このレクチャーは、ビデオもしくは現地で説明することが多いです。このボルダリングで最も危険なのは、落ちる人と下にいる人が交錯することです。そのため、常にマット外で待機するように説明しています。

この下の写真でも、小学校が体育の授業でボルダリングを行っていますが、これはマット外で列になって待つと。これは、私が校長先生に言われて、体育で授業をやったのですが、ちゃんと並んで左が一番優しくて、それを登れたら、その次の右に行ってください、それが登れたら、その次のまた右に行ってくださいという感じで体育の授業を行ったのですが、マット外で待っていただきました。

右は、葛飾にあるクライミング公共施設です。ここでも、水色のテープでエリアが区切られていて、登る人は、水色のエリアごとにルートがあるのですが、待つ人は絶対にマット外で待ってくださいということを守っていただいています。

また、この下にあるような分かりやすいボルダリングウォールの説明板で、利用者に御案内をさせていただいています。

13ページです。

リードクライミングの施設で、最も安全なのは、ロープ操作に長けているということです。どれだけロープ操作に対する技術を持っているかということで、チェックの方法が2つありまして、1つはライセンス制、その競技施設で講習会を行いまして、確かな技術を持っている方だけライセンスを発行して、次回からそのライセンスを見せていただいたら使うことができるというやり方です。

もしくは、申請方式、ライセンス方式では、やはり講習会を頻繁に開催しなければいけませんので、これは自己責任ということで、私は、こういう能力を持っていますというのをチェックリストに書いていただきます。それによって、また、事故があっても自分で処理をいたしますという念書に近いものを書いていただいて、この施設を利用していただくという方法もございます。

その下は、安全に関することですが、これは立入禁止措置のほうですので割愛させていただきます。

第3章スポーツクライミングを安全に楽しむための課題。14ページです。

クライミング施設で、私が業界では一番長いほうなのですが、35年になりますが、その間、明確に確認されている死亡事故は2件ございます。

これは、自然の岩で行われているような事故では、もしかしたら年間1件、もしくは0.5件ぐらいの死亡事故があるかもしれません。やはりこれは、先ほど冒頭で申し上げたように、落石とか、雪崩とか、外的要素が強いからです。しっかりした支点で行うスポーツクライミングでは、そういった不確定要素がほとんどありませんので、この間、死亡事故は2件だけだと確認されています。

そのうちの1件が、関東のジムでロープをつけて登ったのですが、うまくカラビナに通さずに登って、落ちたときに振り子状になって、脳挫傷で亡くなったという方が1名。

その次は、私が施設に言われて検証に行ったのですが、キャリア25年ぐらいの70歳ぐらいのクライマーが登って、これは上からロープをかけてクライマーを吊る方式で登っていました。この右下の写真に近い方法です。

そして、ループがほどけて落ちた。これは、1回登って休憩した後、カラビナをロープにかける位置が間違った。それからロープがほどけて、6、7メーター墜落して、被災者自体は、少し痛いと言っていたらしいのですけれども、心臓にカテーテルが入っていて、それが破裂して、だんだん意識が遠のいていって、最後亡くなったという事故がございました。いずれにしましても、これは利用者の過失ということで、施設側は、訴えられてはいません。

重傷事故としましては、そちらの下に書いていますように、右の写真は、オートビレイ装置といって、登るたびに、この器具のものが巻き上げてくれます。見かけはヨーヨーに近い感じです。手を離したら一定スピードで下してくれます。これを自分のハーネス、腰に巻いている器具につけて登るのですが、何回もやっていると麻痺して、これをつけている気分になって落ちることがございます。これは、オートビレイ装置をつけているジムがほとんど経験していることで、大きな事故にはなっていませんが、今まで10メーターぐらいから落ちた事故が、恐らく10件から20件ぐらいの間であったのではないかと思います。

その他、スポーツ傷害、これは後ほど加藤先生のほうから御説明していただけますと思いますので、割愛させていただきます。

係争例に関しましては、4)番です。

この35年間で、私どもが係争案件で認められたのは1回だけです。関西地方のスポーツクラブ内にあるボルダリングウォール、高さ4メーターから身長が180センチぐらいの方とおっしゃっていました。初めてクライミングされる方が落ちたときに、腰に衝撃があった。マットの厚みが20センチしかなくて、劣化のほどは不明です。これは、私どもに弁護士事務所から問合せがあって、大阪高裁でしたので第二審まで行っているということなのですが、私どもがつくった施設ではなかったのですが、マットの厚さはどれぐらいが適切だったかと聞かれたわけです。

一般的には30センチにしているのですが、欧州規格の範囲にない日本では、特に20センチであっても規格外ということはございませんので、これに関しては、30センチは標準ですけれども、非常に高性能なマットだったら20センチでも耐えられる可能性がありますとだけお伝えさせていただきました。

なお、現在、国際スポーツクライミング連盟が行う競技施設では、このボルダリングではマットの厚みが40センチ以上、これは一昨年度の1月から変更されていると思います。

最後に、クライミングを安全に楽しむための課題としましては、まず、競技施設は欧州規格を守っていますが、民間では、まだ、そういう指針はございません。ただ、現時点では、ものすごく事故が多いというわけではなく、事故のほとんどがスポーツ傷害、選手レベルで難しいルートを登り過ぎた挙げ句、炎症を起こしたり、指の関節が痛くなったりということがあるかもしれません。

それ以外で、最近、若干多いのが、低年齢化によりまして、保護者がクライミング施設に立ち入っています。私がトレーニングしているときでも、ひょっと見ると、下にお母さんが子供の写真を撮るために構えていたりしています。ああいうところは、非常に注意が必要だと思いますので、今後どういう規定をされるかは難しいのですが、ジムのほうで、もしくは横のつながりを持って、こういう事故があったから、こういう対策をしなければいけないのではないかということも必要になってくるのではないかと思います。

また、欧州規格では、日常点検、それから、月例点検、それから年次点検というのを規制化しています。一般的な公共施設でも、やはりこういった点検、また、熟練した点検者による点検が行われています。

この写真では4つございますが、ホールドの亀裂とか変形の確認、パネルの確認、鋼材の確認、カラビナというロープを通す部分の摩耗確認を行いながら、こういう保守点検によって施設の安全管理がなされています。

最後に、2)番、利用者の課題ということで、これは先ほど申し上げましたが、ボルダリングは落下を伴いますので、必ず、落下範囲には人が立ち入らない。また、右側の施設では、両サイドから人が落ちてきて、滞留場所が真ん中しかございません。こういうときは、周囲を非常に注意して、自分たちのグループだけで登っていると思うと、後ろから人が落ちてきますので、そういった交通整理も必要ではないかと思います。

また、幼い子供がジムで走り回ることもございますので、保護者への注意とか、ジムスタッフの巡回とかというのが必要になってくると思います。

3)番、法整備または設置基準について、現在では、まだ、国内では、こういった欧州規格に相応するようなクライミング施設の整備がされておりません。ただし、今後、事故やトラブルが増加する傾向にあるのであれば、何かの規格が必要か、もしくは、申合せ事項、もしくは指針とか、こういうトラブルがあるというのを何かのニュースに載せていただいて、注意喚起が必要になってくるかもしれません。

以上をもちまして、説明を終了させていただきます。御清聴ありがとうました。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

スポーツクライミング施設という観点を中心に、非常に詳しい御説明をいただき、また、重要な御指摘もいただいたと思います。

続きまして、帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科の学科長でいらっしゃる加藤教授から、同じく20分程度ということで御説明をお願いします。

○帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科学科長加藤教授 よろしくお願いいたします。

私のほうからは、外傷・障害の実態の調査から現状において、その結果から見えてきたことということで報告をさせていただきたいと思います。

まず、目次のほうを見ていただきまして、以下のように、これに至る経緯並びにスポーツクライミングの現状、特にジュニア世代の増加、そして3つ目、外傷と障害の実態、そして、外傷と障害の要因というところと、あとは考察を述べさせていただきたいと思います。

まず、1ページ目のほうから行きたいと思います。かなり時間も押してしまっていますので進めさせていただきたいと思います。

私は、2001年からクライミング愛好家とか競技者に関わることをさせていただいた者です。その当時、ワールドカップとか、日本選手が、ほとんどが準決勝、先ほど言われた平山ユージさんとか野口啓代さんとか、往年のさらにクライマーという方がいらっしゃいましたけれども、ほとんどが準決勝に残れない現状というのを目の当たりにした経験があります。

そして、理学療法士として、その理由を探してみようと探ってみたところ、ほとんどクライマーとか愛好家の関節障害を受傷していることが分かりまして、指の関節変形とか炎症、これによって、まずクライマーが本気で競技に向かい合えないという現状などが見えてきまして、その特性とクライミングにおける外傷の特性とか、その把握を、今後の予防策とともにクライマーに提供しようというところを目指したところが始まりであります。

2番のジュニア世代の増加というところを報告いたします。

御覧のように、表のテーブル1のところで、少し改良していますけれども、東京都のリード選手、ジュニア、少年、青年、男女というところで、ジュニアというのは大体9歳から14歳未満ということで、小学4年生から中学2年生で、少年少女というのは14歳から18歳なので、中学3年から高校3年生というところで、18歳以降になりますと、成年、男女ということになります。

この表から見ても、やはり2016年から東京都のほうで公開しているところを、危険者を除いて表にしてみましたところ、明らかに、ジュニアの子たちが増えてきていると。

もちろん、少年ぐらいのクライマーも増えているのですけれども、特にジュニアの男子、女子が増えてきているというところに気づきました。

もちろん、これは、クライマーの愛好家人口が増えたということからも言えると思うのですけれども、2025年の3月の埼玉、栃木、群馬のボルダーは入っていませんけれども、リードの合同練習会というものがあって、それに参加していた友人から聞きましたら、やはり、明らかに少年、小学校、中学校のジュニア世代が増加しているということが明らかになってきました。

2ページ目に行きたいと思います。

ここは、もうJMSCAとか東商様のほうからも既にお伝えしていますので、ボルダリングをボルダーとかリードクライミングをリードというところはもう外して、やはりどうしてこんなに増えてこられたのかというところをもう少しお伝えしたいと思います。

クライミングは非常に入りやすい競技でありまして、クライミングシューズとチョークというものがあるのですけれども、先ほど御説明が、東商さんたち、JMSCAでも言った、チョーク、滑り止め、その程度があれば、特にボルダーは容易に経験でき、入りやすいことがあって、競技人口も2023年のときに、世界競技人口が3,500万人で、国内2020年の時点で60万人というところは調べて出てきました。

そして、さらに、日本フリークライミング協会というのも、クライミングの黎明期からそういう協会をつくっていた方たちの施設件数というものも、徐々に2005年から20年まで追ってみたところ、このように100件が600件以上になってきたと。

そして、私の知人等から聞くと、2024年はそろそろ減少傾向になるのではないかと、景気も悪いしという話がありましたが、やはりパリオリンピックとか、特に、せんだっての方たちがお話ししたように、開設に対してとても敷居が低くて、特にボルダージムは、倉庫とか空き倉庫、店舗、その再利用とか、SDGsも加わって予想外に急激に増えてきたということが分かってきました。

それは、JMSCAのほうから中長期経営計画という中期編というのが2024年の2月に出されているところでは、クライミング競技だけではなく愛好家の人口を見ると279万人も増えてきてしまっている。そして全国では800施設のクライミングジムが開業しているところまで公になってきております。

非常に敷居が低いことによって、先ほど東商さんもお伝えしたように、かなり危険度が高いような小さなボルダージムというものが増えてきていることが分かってきました。

次に、3ページ目のほうですけれども、こうやってクライマーの写真が幾つか写ってきますけれども、本人の肖像権というところで了解を得て写真を貼りつけております。

そして、2018年度の論文のときのクライミング歴とか、年齢というものを貼りつけておりますので、最近の2023年、2024年のところでは、まだ、その後調査に十分に至っていませんので、ただ言えることは、とても若い、18年度の調査では、4年未満のクライマーが71パーセント、70パーセントを超えていると。平均が34歳というところで、とても若いスポーツの特性が見られるのだろうと思います。

そして、もう1つこれからが重要なのですけれども、半数以上の66パーセントの者が傷害を経験しているということも分かりました。

下の2つの論文は海外でも出ているものなのですけれども、上のほうでは10年以上のクライマーにおける脊髄損傷などが多いと。これは、多分、非常に難易度の高いところを挑戦して落下しているのだろうと思います。

それから、ボルダリングを定期的に練習した経験、1年未満の初心者というと、やはり腕よりも足の損傷ですかね、着地だとか、足をいろいろな関節角度を曲げたりするところで、私は腕の指とかのほうかなと思ったのだけれども、海外のほうでは、ボルダリングに限っては下肢の損傷が高いという報告を見つけました。

そして、外傷・障害の実態というところに入らせていただきます。

これも15年から17年の二度の全国クライミング、72か所中63か所で得た数値ですけれども、上肢が59パーセントということと、その中でも手指が29パーセントというところで、圧倒的に高かったというところが、我々の調査では分かりました。

下肢においては26パーセント、やはり上の1年未満だと、下肢の障害のほうが高いって言ったのですけれども、どう見ても上肢のほうが高くて、下肢のほうがないわけではないのですけれども、少し低めということが分かりまして、これを見ると、70パーセントがインドアの発生、すなわちボルダリングジムとか、ジムの中でのケガがほとんどということが分かってきまして、特にその中でもボルダリングだったということです。

5ページのほうに行きたいと思います。

傷害の有無というところで、1,638名の中で64パーセントというところで、やはり傷害があったということです。

左側の写真のほうは、擦過傷でよく競技中とかに起こってしまう。右側のほうは、着地のときに失敗して、これから話しますけれども脱臼だとか、捻挫、骨折ということが出てくるということと、あとは、傷害部位というところを、いろいろ分けて調査をしてみますと、やはり手指が29パーセントというところで、かなり圧倒的に高いというところ、その次に手首が入ってくるのかなと思います。

一昨年の23年度の、我々有志による50施設において、各県の山岳連盟チームの傷害調査、200名を対象に調査させていただいたものがあります。

ここでは、上肢が45パーセントで、36パーセントの手指が最も多いということで、15年から17年のときに調査した以上に、かなり増えてきていると。

それから、下肢も33.26パーセントという形で、高い数値を見せております。

以前は、上肢のほうが高くて下肢が低かったというところですけれども、それは、23年度も同じような報告ができたと思います。

それと、やはり指の傷害となると、次の6ページのところに、指の持ち方なのです。右側に写っているのが、クリンプグリップと言って、日本名だとカチとか言ったりするのです。やはり関節を大きく曲げているものと曲げていないもので、やはり曲げるほうですと、やはり非常に関節包とかを痛めてしまうというところで、指の障害の部位のところを貼りつけさせていただきましたけれども、非常にこういう登りを、負荷のかかるホールドをセッティングすると、どうしても痛めてしまうところがあります。

次に、リードのほうです。時間がかなり押しておりますので、スピードをあげて進めさせていただきます。

4つ目の外傷と障害の要因というところを見てみたいと思います。

コンディショニング方法というところで、非常にストレッチとかウォーミングアップというのは、もう一般的にちゃんとやっている方も多々いるのですが、その引き換えに、クライミングを終了しようかと言ったときに、クーリングダウンというものとか、ほてった筋を冷やして、アイシングというところに着目をしてみました。

このアイシングは、御存じのように、氷などで冷やすことなのですけれども、クーリングダウンとは、当日のクライミングを終了とした時に、血圧や心拍など負荷のかかった身体に対し、急激に止めてしまうのを避けるために、負荷の低いクライミングを数回行い、各関節その周囲の筋腱へのリラックス、血圧・心拍を正常に近づける運動行為のことです。陸上の方たちもゴールした後、少し軽くジョギングだとか、歩いたりとかをしていますね。突然やめるというと、やはりこういう心拍数とか、心臓に負荷がかかってきますので、クライミングなどもそういう運動を奨励しています。

この調査後に、やはり、どうしてクーリングダウンをしないのかなというところも調べてみて、追調査をしたら、「その目的を知らなかった」、それから、「ジムの環境が狭くて混雑していて」、「なかなか周りの目が気になる」と、そういうところから取り入れていなかったというところがほとんどであったということも分かってきました。

先ほど言ったクーリングのアイシングなのですけれども、アイシングの処置方法は別にして、やはり氷キューブが沢山できる製氷機、リハビリテーション科などでよく病院で使っている製氷機があれば、とてもベストなのですが、これはなかなか高価で、経営が厳しくなっているジムの現状のところでは、ここでは愛好家とか競技選手経験者からすると、同じようなルートとかを何度も、1か月、2か月やっていると飽きてしまうということで、ルートへ配置転換、新しいルートをつくってほしいと、そういう要望がかなり現場の経営者側には来ています。

それによって、ほとんど欧州等からの輸入がありますので、その交換を迫られるも、かなり金額も上がってきてしまうところもありまして、外傷的な処置のケアというのは、クライマー本人とか、お子様でしたら親御さんに委ねられているというところも見受けられますし、今、JMSCAのほうも、世界の競技会などで救護班とかにおいても、事故以外でのある程度の止血法とかというのは選手自らがやりなさいと変わってきております。

ですから、そういうところでもクライマー本人とかが、このような知識とかも必要ですし、かつ利益重視のジムであれば、冷蔵庫さえ置いていないところも散見されるところも私は見てきております。そこはかなり危惧しております。

すみません、あと、考察のほうに流れて行かせていただきますが、今後の課題というところで、先ほど東商さんのほうもおっしゃっていたように、マットの質というものの規定がほとんどない。それで厚さというところがヨーロッパと日本と大分違う。これも高さとマットの広さ、その角度は出るのですけれども、マットの質というところとかの規定は統一性がないというところで、非常に危惧しています。

それと、もう1つ、ケガが多い課題としては、ここにあると思います。オリンピックとか国体などだと、課題を作る方をセッターというのですけれども、研修を修得した世界基準の方たちが、セッターとしてルートをつくってくれるのです。問題なのはそのセッター中でも指導者というインストラクターを希望する若手のクライマーや愛好家が結構多く、健康増進でジュニア世代が増えてきたジュニア世代は技術や知識に乏しい、少し頑張っていると国体に出られるのではないか、ワールドカップに出られるのではないかという期待を、かなり本人以外に、周りの親御さんたちからの期待が高まってきてしまいまして、それに対して、経験値の低い指導者が、その子たちを、少しでも結果も出して、実績を上げたいということで、かなり過激に過剰なルートとか、壁の角度とかをどんどん登らせて、かなり危ないということも医科学として感じていますし、そういう方がほとんど研修会に出てくれていないところも見受けられます。

基本的に正常な医学的な知識もないところでやはり指導してしまうと、非常に危ないのですが、ただ、個人で指導しているため、なかなか把握しきれていないので、これは、もうJMSCAを通して啓発活動というところで、しっかりと研修を受けて、指導者として次世代の若手を育てていってほしいということがあります。

V-2の事故の要因として考えられることは、①、②、③、④というところで、落下することをグランドと言うのですけれども、リードにおいてビレイヤーという方の操作の不手際、不用意にボルダー壁の画難易度が高くて、指とか足が抜けて下に不用意に落下して着地した時に、手をついて肘を脱臼してしまうとか、あとはマットとマットの間にビニールは敷いているのですけれども隙間に足が挟まって、転倒とともに骨折・捻挫をしてしまうということも多々見られます。

やはり、JMSCAからのちゃんとした指導、ルートセッターとかからの指導という研修会もされていますので、学連でもやっていますので、そこはぜひ、研修会を受けた方にやってもらいたいなと、そしてもっともっと広げて、安全・安心でやっていきたいと、お願いしたいと思います。

あとは、V-3の運営側に対する希望のことです。

先ほど言ったように、クッションの厚さのマットの質の選択というところ、この辺も非常に考えていただいて、できれば日本が、ヨーロッパに合わせるのか、日本がアジア特有に、日本が一番になって、その辺の統一などをアジア系で広げるというのも良いと思いますし、あとはジム施設の広さに見合った人員配置、ひどいというか、危ないなというところなどだと、従業員が1人受付をやっていて、あとは、もう会員になったから自由に登ってくださいという放置気味のジムも、残念ながら見ることもあります。

あとは、救護的なマニュアル、JMSCAのほうでは止血法とかというものもちゃんとYouTubeとか研修会などもしていますので、そういうところのマニュアルファイルを施設のほうで保管して、誰でもすぐに分からなかったら見ることができるような、それから、念のため、AEDというものがあるということと、あと、ジムの構成員においては、できればAEDの講習会は義務づけるとか、そういうところの安全対策はしてもらいたいということと、あとこれはできればですけれども、着地とか外傷したときのカメラが録画されていれば、どういうところから落ちたのか、何が問題だったのかというのも見えてくると思います。

あとは、講習会を修了した方に配置をお願いしたいということと、最後に、クライミングの愛好家に必要なことということは、初心者向けの指導は必ず受講を心がけてほしいというところですかね。リードであれば、ビレイヤーというところのロープワークのスキル、それから、突然指や足が抜けて不用意に着地してしまう場合とか、パフォーマンスの限界までクライムして受け身姿勢に入れず落下したり、競技中などでふざけて奇声をあげながら観客へのパフォーマンスで落ちるクライマーも時々見受けますが、本当に大怪我をしてしまいますのでやめてほしいと思います。着地時に伴う体の対応動作というところも、講習会を受けて理解してほしいということ。

それから、十分なストレッチ後のクライミングと擦過傷の処置、それから、クライミング後の体のケア、アイシングだとかクーリングダウン、そういう知識を持って楽しんでほしいということで、あとは、JMSCAのほうから講習会、指導者がいれば教えてもらえる体制はできておりますので、ぜひ愛好家の方たちは、JMSCAのほうの講習会を受けて安全・安心でやっていきたいと思っております。それを期待しております。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

それでは、かなり時間は押しているのですが、全体を通しての質疑応答、意見交換としたいと思います。

時間は当初から30分程度を予定しておりました。御発表者様には、少し時間が押して恐縮ですけれども、30分程度お付き合いいただければと思います。もし、30分お時間が取れないという方がございましたら、早めにお知らせいただくと、そちらへの御質問を先にしていただきますが、よろしいでしょうか。

すみません、それでは、30分程度の質疑応答をさせていただきたいと思います。いかがでしょうか。

委員から質問が出る前に、それでは、私から確認ですが、クライミングに関する事故等については、公に、例えばデータバンクに挙げられている数などは少ないように見えるのですが、一方で、特に最後に御紹介いただいた加藤教授の御発表、特に資料でいうと4ページ以下のところになりますが、そこのアンケート調査によれば、かなりの割合で身体事故が生じているのではないかということが伺われるところでございます。

このギャップということを考えると、まず、第1に事故情報の報告が、適切に行われていないのではないかという気がして、そこがうまく行われないと、今後の対策というところにつなげられないところがございますので、そこが、まず、第一に問題ではないかと思うところでございます。

それから、加藤教授と、ほかの発表者様からもあったのですが、安全規格などについて、欧州とかでは整備されている部分があるけれども、こういうものについては、日本ではまだ不十分なところがあると伺いました。

東様からの御発表においても、全てというわけではないけれども、民間クライミング施設では、欧州規格の存在などがあまり認知されていないという現状があるのではないかという御指摘もあったと思います。

今までのお話によると、オリンピックなどを契機として、幅広い層の方々が、クライミングは面白そうだということで人気が高まっており、その人気の高まりとともに、気軽に一定のスペースでクライミング施設を開設するという方々も増えているように思われます。それは、スポーツ人口の増加、特にクライミングの普及という意味では、良い面でもあるとは思いますけれども、やはり一方で、事故の発生などのことをお聞きしますと、安全性に対する配慮について不十分なところがあり、そうだとすると、そこについて何らかの対策を講じていく必要があるのではないかと感じた次第でございます。

ということで、私からコメントというか感想を申し上げましたが、いま私の発言の間に委員から御質問が出ましたので、それでは順番に、今村委員、そして、その次に小野委員ということで、御質問等をいただきたいと思います。

まず、今村委員、お願いします。

○今村委員 今村です。御説明ありがとうございました。

いろいろと問題があることはよく分かったのですけれども、加藤先生に御意見をお伺いしたいのですけれども、私、医師免許を持っていて、臨床もやっていたことがあるので、自分自身が柔道を長い間やっていまして、もともとケガをするスポーツなのだと自分では思ってやっていました。

そのときに、8ページにアイシングの話とかを強く書いていただいているのですけれども、では、柔道場に製氷機のあるところが本当にあるかっていったら、ほとんどないと思うのです。やったほうがいいのは間違いないのですけれども、では、このボルダリングやスポーツクライミングで、これを特に推奨してやっていかなくてはいけないような部分というのがあるのかということは、ぜひ先生の目から見て、その点があるかどうかを教えてほしい。

あと、私も武道をやっていて、たくさんケガをしましたけれども、ケガをするという意味では、このスポーツクライミングのほうがずっと少ないような気がするのですけれども、一般的なスポーツに比べて、このスポーツクライミングの傷害が起きやすいものとか、特に留意するべき傷害という面から見たときに、何が特徴かというのを教えていただきたいのですけれども、それは、一般的なケガをするスポーツと比較してということで、教えていただければと思います。

以上です。

○帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科学科長加藤教授 ありがとうございます。

音声の関係で聞き取れず、申し訳ないのですが、どのような御質問でしたでしょうか。

○今村委員 ケガ製氷機とか、アイシングのための、そういうことが必要だということを書いていただいているので、そこに何かほかのケガをするスポーツに比べて、必要性の高いものがあるかという質問です。

あったほうがいいのはよく分かっているのですけれども、ほかの実際にケガをしやすいスポーツで、では、皆さん、冷蔵庫は必ずありますかと言ったら、現実、ほかも、あまりそういうのはないわけで、一般的に見た標準線と比べて、特にこのスポーツクライミングでそこが劣っているというところがあるのかということです。

ほかのスポーツでもアイシングが行われていないところはたくさんあって、スポーツクライミングで、特に平均よりも低いという状況があるかということです。

○鹿野委員長 今村委員は、御自身が柔道をなさってきた経験から、柔道とかでも炎症が生ずるような事態というのはよくあるけれども、必ずしもそのようなアイシングとかは備えられていなかったように思うということで、現状でもそうなのかどうか私はよく存じませんが、それで、特にクライミングにおいて、そのような備品の設置の必要性が高いという状況があるのかという御質問だったかと思います。

すみません、今村先生、少し音声の関係で、なかなか加藤先生にお伝わりにくかったかもしれないところを、勝手に言い替えさせていただきました。

○帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科学科長加藤教授 御質問ありがとうございます。残念ながら他のスポーツ愛好家らとのアイシング率の平均値を比較検討し実施率が低いかとの検証まではしておりませんため断定はできません。今回の発表はクライミング愛好家からによるアンケート調査での回答率から申し上げております。

クライミングジムにおいては、特にあったほうが良いと思います。クライミングは全身の筋や関節を限界領域まで伸ばして登攀しますため、筋靭帯に加えて大・小関節への負荷が非常に高いことから、容易に小分けし当てることができますので沢山できる製氷機が理想です。通常の冷蔵庫ではペットボトルを十分に確保することが難しく、製氷機であればジムに来られる多くの方への利用が可能です。世界的に医科学で問題になったクライマー指の小関節の変形は「無理の利く傷害」からの関節包や靭帯損傷が多く、それが続くことで関節可動域制限や疼痛を伴いADLにおいても障害となってくる事象も散見されることからも大関節のみでなく満遍なく通常からクールダウンしてほしいです。

○鹿野委員長 今村委員、よろしいでしょうか。恐らくは、柔道とかにおいてもあるべきなのかもしれませんけれども、少なくともスポーツクライミングにおいては、落下等の関係で炎症が生ずるという危険が高いことから、そのようなものはあったほうが良いという御意見を表明していただいたのだと思います。

○今村委員 分かりました。それで結構です。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

それでは、続きまして、小野委員、御質問をお願いします。

○小野委員 小野でございます。

本日はスポーツ自体、そもそものところを御教示いただいたり、あるいは課題を整理いただきまして誠にありがとうございました。

比較的最近、競技人口が増加をしたというスポーツですので、スポーツクライミングの醍醐味といった良い面と同じぐらい、気をつける必要もあるということから、ルールづくりと施設等の普及を社会でしていかなければいけないことを知りました。

私からお尋ねしたいことは1つで、未然防止というよりは起こってしまった事故対応のことになるのですけれども、賠償責任が生じた場合の保険ですね、スポーツクライミングに対応したといいますか、特化したような保険があるのか、あるいはその種類についてです。

2つ目が施設側とクライマー側の加入状況について、何か御存じでしたら教えていただきたいと思いまして、質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○鹿野委員長 どなたにお答えいただいたら一番いいですか、それでは、小野寺専務理事、お願いします。

○公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会小野寺専務理事 まず1つは保険ですね。賠償責任保険というお話があったかと思います。

登山に関しては、しっかりしたものがございます。あと、スポーツクライミングにつきましても、スポーツクライミング保険というものがあって、その中に賠償責任というものも入れております。ただ、それはあくまで私どもが提供する保険、私どもというか、私どもの関連で提供する保険というものでしておりますので、ほかの保険会社さんのことは分かっておりません。

それが、いわゆる個人賠償というか、あと講習会、我々、JMSCAというのは分からなかったと思いますが、我々の協会です。JMSCAの協会で、例えば、研修していて事故があった場合、それは賠償責任も加えておりますので、そこは、全くないというわけではございません。ただ、あくまで私どもが関連している保険会社ということでの発言です。

以上です。

○鹿野委員長 保険の加入率といいましょうか、それは、大ざっぱにで結構ですが、いかがなものでしょうか。

○公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会小野寺専務理事 これは、なかなか難しいですね。いわゆる分母が分からないので、加入率と言われましても、何とも言えないのですね。ただ、今、申しましたように、私どもが主催する、あるいは加盟団体が主催する山岳連盟の研修会では、そういう保険をかけるようには推奨していると、こういう話です。

○鹿野委員長 お願いします。

○東商アソシエート株式会社クライミング&アミューズメント事業部営業部技術営業グループ東部長 保険に関しまして、公共施設も民間もそうなのですが、包括保険に入ることが多いです。保険に関しては2種類ございまして、1つは、施設が入っている保険、もう1つは個人が入っている保険です。施設が入っている保険は、施設に瑕疵欠陥があった場合、個人に賠償されるという保険で、これは、ほとんどのクライミング施設が入っていらっしゃるのではないかと。民間のジムでも入っていますし、公共のところは、例えば、体育館、テニスコート、野球場、それ1つ1つではなく、包括保険で入っていると思います。

これに対して、個人がスポーツ傷害を負った場合の保険ですけれども、私どももクライミングジムを運営していて、そういう保険も入ろうとしましたら、入場料が2,000円に対して、300円から400円かかると言われたのです。それを利用者に負担していただくことになると、自分のジムがやや不利益になるというか、ジム代が高くなりますので、これは個人のミスによって起こったことについては、施設側は入っていないのが一般的です。

ただし、JMSCAさんも交えて、競技会のときは、スポーツ傷害の保険に特別に入ることがございます。選手が加盟する、もしくは大会運営スタッフが加盟していることが多くあります。

これ以外に、日本フリークライミング協会では、独自の保険制度を持っています。これは、フリークライミングエリアとして認定されたところで、骨折とか落石とか、いろいろ捻挫とかがあった場合に下りる保険です。これが非常に完備されていますので、年間の発表によって、どこで誰がどんな事故を起こしたかというのが、こういう保険に対して、このように支払われたという記録が、機関誌では発表されていますので、事故例としては一番多く収集できるパターンです。

これ以外に、日本勤労者山岳連盟も独自の保険制度と、事故収集制度を持っていまして、その機関誌に、1年間もしくは半年間に、落石とか転落とかでどんな場所で、何人がどんな事故を起こしたというのが発表されています。

以上です。

○鹿野委員長 小野委員、いかがですか。

○小野委員 どうもありがとうございました。

とても大切な情報だなと思いました。保険の種類であるとか、あるいは加入率、その辺りの整理を今後私たち委員会でする必要があるなと思ったのと、保険の支払われた情報でもって事故の状況の全体を把握するというのが、今できることなのかなと教わりました。

どうもありがとうございました。

○公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会小野寺専務理事 追加でよろしいですか。

○鹿野委員長 はい、お願いします。

○公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会小野寺専務理事 私はインドアのことしか言わなかったのですけれども、アウトドアというのか、外岩については、確かに大きな事故例で、実際に額は言いませんけれども、言ってもいいのかな、3,000万とか5,000万ぐらい払う形の賠償責任保険を払ったという実例があります。そのことによって全体の保険料が高くなってしまうという、そういうこともあります。

したがって、岩から落ちてケガをした。それで、そういうこともすぐに話ができるわけではなくて、2年か3年ぐらいかかって初めて認められてということもあります。

したがって、インドアというよりも、今のは、アウトドアのほうの外岩のほうの話なのですけれども、そういうことの実例があります。

以上です。

○鹿野委員長 情報を追加していただいて、ありがとうございました。

それでは、中田委員、お願いします。

○中田委員 御説明ありがとうございます。

登山の一部として始まったスポーツクライミングが普及して、専門性の高い競技者だけでなくて、子供から大人まで幅広いクライミング人口が増えたことは、健康や体力促進という意味でも効果があると思いました。

一方で、幅広く生涯スポーツとして短期間に普及した結果、設置場所が、競技者が利用する専門施設だけでなくて、子供も利用できるような、屋外の公園施設や室内の小規模ジム等多岐にわたるという特徴と、利用者の体力やスキルに大きな差があるという点が、安全性を議論していく上で論点になると思ったのですが、そのような安全リスクに対し、例えば、施設の設計施工をされている、今日御説明いただいた東商アソシエートさんのような企業や、装備の製造企業に安全に配慮していただいたり、あるいは私たち利用者もリスクを十分理解した上で競技に参加する責任があると理解いたしましたが、その中でも、私はやはり設置場所の施設運営責任者の責任は大きくて、特に多くの未経験者が利用する競技以外の施設における安全性の確保に課題があるのではないかと感じています。その上で、できれば日本山岳・スポーツクライミング協会さんに御質問をさせていただきたいのですが、競技施設における強度や安全性の基準は、欧州標準委員会によるEN基準に準じているというお話が、先ほど東様からありましたが、競技以外の日本の施設においても、現在把握されている事故発生率は低いのではないかという御説明もありましたが、競技環境の整備、指導者及びサポート人員の配置、あるいは機器メンテナンスの責任等を競技以外の施設においてより厳格な安全基準責任を、施設運営責任者に課す必要があるのではないかと思いますが、この点どのようにお考えになられますでしょうか。

もう1点は、設置場所が多岐にわたり、ステークホルダーが多岐にわたる中で、鹿野委員長からの御発言にもありましたが、私も事故情報がもしかしたら十分収集できていないのではないかと感じております。今後、効果的な安全策の対策を検討していく上でも、重度あるいは中長期的に影響が出る関節障害等含め、事故発生件数やその内容を満遍なく把握することは重要ではないかと思うのですが、その報告義務を、クライミング施設を備える全ての施設運営責任者に課すことは現実的なのか、事故を未然に防ぐためには効果があるとお考えかということを、こちらもできれば、日本山岳・スポーツクライミング協会さんにお伺いしたいと思います。

よろしくお願いします。

○鹿野委員長 それでは、再び小野寺専務理事、お願いします。

○公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会小野寺専務理事 御質問ありがとうございます。

なかなか非常に難しい御質問だと思います。先ほど、私のレポートにもありましたように、私どもの関連する団体は、ほとんど公共施設だけなのです。いわゆるプライベートなジムは入っていないのですよ。そこのところをいかに我々が取り込んでいったらいいのかということになりますと、これは非常に難しいことが発生いたします。

要するに、どこにどういうジムがあるかというのは全く分からないわけで、あとジム連というジム連盟さんもあるのですけれども、そのジム連盟が1つなのかどうかというと、複数個あるとも聞いております。

したがいまして、どのような形で統一していったらいいかということは、私ども団体だけではなくて、どこか行政を含めた形でやっていかないと難しいのかなと、私は考えているのですけれども、答えになっていないような気もしますが、いかがでしょうか。

○鹿野委員長 中田委員。

○中田委員 御回答ありがとうございます。

そうですね、プライベートなジムは管轄外でいらっしゃるということで、でも、これだけプライベートのジムが普及している状況があるとしたら、ぜひ、行政と御連携いただきながら、一番情報を持っていらっしゃるのは、こちらの協会でいらっしゃると思いますので、御協力いただきたいと感じました。ありがとうございます。

○公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会小野寺専務理事 御意見ありがとうございます。

私どもも、どうしたらいいか模索しているところなのですけれども、具体的に今、妙案が出てこないというのが現状でございます。

ただ、考えるのをやめたということではなくて、東商さんも、実際にそういう施設をつくっていらっしゃいますし、ジム連盟の方、全てではありませんが幾らかは知っておりますので、その辺でもって、うまく協力体制をつくっていかなくてはいけないのかなということまでは考えております。

○鹿野委員長 お願いします。

○東商アソシエート株式会社クライミング&アミューズメント事業部営業部技術営業グループ東部長 すみません、差し出がましいようですけれども、今、小野寺様がおっしゃったように、私どもは非常に公共施設をたくさんつくっていまして、基本的にはコンプライアンスが高いですので、私ども手がけたものは、全て欧州規格を適合させています。また、安全施設についても年次点検をさせていただいたり、日常点検と月例点検のやり方を説明して施設側でしていただくようにしています。

ただ、問題なのは、委員のおっしゃられたジムのほうで、正直申し上げて、ジムは事故隠しをするのが当たり前です。

昔、私もゼネコンにいましたけれども、昔は、こう言っては何ですけれども、現場で災害があった場合に、命の危険がない限り救急車を呼ぶなという指導が社内ではありました。

その後、やはり、いろいろなものが改善されて、今では労災隠しは絶対的に悪で、どんなことがあっても全て発表するし、事故報告書を書く、それから労働安全基準書に報告、まずは事故救護者の救命が第一だと、どんどん時代の風潮が変わっています。

加藤先生も含めましてですけれども、ジムで行う傷害には、施設の瑕疵欠陥、要するにマットの劣化によって底づきして骨折する場合もあれば、クライマーが飛びついて過剰な負荷がかかってスポーツ障害が起こる場合があります。これが一緒にされたら、要するに、施設のほうの欠陥だったのか、クライマーが無理して行った欠陥なのかというのがございまして、クライマーが無理して行っても、それは、施設側は補償しませんし、クライマー側も訴えません。

問題なのは、マットの敷設面積が少なかったり、ホールドが割れたり、もしくはマット外に落ちたりというのがあるときです。そういう場合も、救急車を結構呼ぶのですが、何ら発表する手段もなければ、要するに発表する義務もありません。

それに対して、施設側が反省をして、自主的に直す場合もありますし、予算がないのだったら、そのままにしておこうかという場合もございます。

現状は、そういう感じにはなっています。

○中田委員 御説明ありがとうございます。

現状を正しく把握する意味で、報告義務を公共・プライベートな施設にかかわらず徹底するための努力が重要であると、先生方のお話を伺って改めて認識いたしました。ありがとうございます。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

それでは、柿沼委員、お願いします。

○柿沼委員 柿沼です。すみません、お時間のないところ申し訳ございません。

まず、お伺いしたいのが、山岳協会様と、それから東商アソシエートさんにお伺いしたいのですけれども、まず、指導者についてです。指導が不十分な場合、誤った技術や安全対策の欠如が事故につながると思います。

インストラクターの資格というのがあるということだったのですけれども、安全面についてどのような学習をどれくらいの時間をかけて行っているのか、また、設備などについて点検をするなど、そういうものについて、どのようなことを行っているのかを、まず教えていただきたいと思います。

また、公共機関がメインということでしたけれども、そういう施設にインストラクターがどれくらいの割合でいるのかということについても教えていただきたいと思います。

それから、安全面についての説明なのですけれども、楽しむ側の説明なのですけれども、初めてスポーツを行う際には当然説明しているということだと思うのですけれども、それがどの程度の時間をかけて行っているのか、また、初めてだけではなく、何かステップアップとか、レベルアップするときにも、安全面についてどのような説明をするのかということをお伺いしたいと思います。

また、クライミングに級があるということで先ほどお示しいただいたのですけれども、クライミングの難易度をはかるものとはなっているかと思うのですけれども、安全に登る際のレクチャーなどについての、その級の在り方みたいなものはなくていいのかというところを、まずお伺いしたいと思います。

それから、設備面についてです。当然劣化すると、事故の原因となる可能性があると思うのですけれども、特に頻繁に利用される施設では、定期的な点検とか交換が不可欠だと思うのですけれども、器具についてどのくらいの周期で交換しているのでしょうか。また、指標とか点検メモなどを備えつけるなどを行っているのかどうかについて、お聞きしたいと思います。

また、民間のジムへの連携が、先ほどの話ではあまりなされていないということだったと思うのですけれども、積極的に取り入れたりとか、安全面の講習会とか設備などのレクチャーなどを行っているのかということを教えていただきたいと思います。

それから、東商アソシエートさんの資料の中の5ページに、幼児が登れるルートがあるということで画像があったかと思うのですけれども、ロープをつけていませんでした。そんなに高いところを登っているようには思えなかったのですけれども、そういう幼児に安全面を説明するのは難しいのではないかなと思ったのですが、そのような幼児に対してどのような説明を行っているのか、また、大人と比べて幼児に対して安全面にどのような配慮を行っているのかというのをお聞きしたいと思います。

最後に加藤先生になのですけれども、どのスポーツにも言えることだと思うのですけれども、今回は外傷的な内容についてお示しいただいたかと思うのですが、体調などによっても、やはりスポーツというのは、いろいろな弊害が起こるのではないかなと思っています。例えば、睡眠不足や、熱があったり、花粉症などがあったりとか、風邪を引いている場合もあるかと思うのですけれども、そのような場合においても気をつけることなどがあれば教えていただければと思います。

すみません、少し声の調子が悪くて、よろしくお願いいたします。

○鹿野委員長 かなり多くの質問をいただきましたが、お三方にそれぞれお答えいただければと思います。

まず、小野寺専務理事。

○公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会小野寺専務理事 御質問ありがとうございます。

ただ、全てに対しては、私、お答えできないところがございますので、その辺は、東さんと、加藤先生にお譲りしていきたいと思っております。

まず、指導者なのですけれども、先ほどホームページを、全部はもちろんお見せできなかったのですけれども、コーチのレベルは1が一番下なのですけれども、1、2、3、4とございます。

それは登るだけではなくて、確保というか、いわゆる落ちた場合にどう止めるか、それからロープワーク、ロープはどういうものがあるかとか、あとはリードとかボルダーについての登り方とか、そういうところを中心に指導はしております。

ただ、もちろん、教える方もそうですし、教えられる方もレベルに結構差がある場合もありますので、それは、もちろん教えるだけではなくて、検定試験も行うということと、何年かに1回は更新講習ということも行っているのが現状です。

ただ、それでも多分十分に技術を、習得はしているのだろうけれども、ケアレスミスになる場合もございますし、だから100パーセント確実とは言えませんけれども、そのような形で行っているという現状です。

ただ、そういう方々は、結局私どもの加盟団体でもっての指導をしているという形になりますので、いわゆる民間のほうのジムにも教えても、もちろん全然構いません。構わないのですけれども、それはどの程度の人間が教えているかというのは、申し訳ないですけれども、そのデータは持っておりません。現状はそういう形です。

では、東さん。

○東商アソシエート株式会社クライミング&アミューズメント事業部営業部技術営業グループ東部長 すみません、引き継ぎまして、御回答をさせていただきたいと思います。

指導者につきましては、今、小野寺様が申し上げたように、山岳連盟様のほうでも、そういう資格制度がございまして、上級指導員資格とか、ルートセッター制度、審判資格というのがございます。

これは、指導関係プラス試合に対する、整合性の高い試合をつくっていこうということが念頭にございます。

それ以外に、公共機関のインストラクター制度ですけれども、これは特にございません。例えば、レストランとか寿司屋にしても、調理師免許がないと開店できないですね。ただし、クライミングジムは、特にそういう資格制度はございません。こういう指導員がいないと開店できないということは何ら今のところはございません。

また、こういう人でないと、コーチとか講師をやってはいけないということもありません。例えば、山岳ガイドのほうであるアルパインガイド協会とか日本ガイド協会さんのほうで独自のライセンス制度を取っていますが、それを持たないとガイドをしてはいけないということはありません。ただし、そういう協会のガイドの試験を通っているということが、そのガイドの力量を判断する材料になりますので、どのガイドに頼もうかというときには、たくさんの優れた記録を持っている、もしくはそういったライセンスを取得している方にお願いすることが多いと思いますので、そのために、ライセンスを取る人、ガイドは比較的多くなっていると思います。

それから、ステップアップ時の安全説明については、特にジムでも行われておりません。基本的にはボルダリングジムを中心に、どういう体勢で落ちても安全なようにしているのがボルダリングという、1つのファクターがございますので、それに寄っているところもあるのですが、大体ジムについては、最初、何も知りません、初めて来ましたという人に対して、住所、名前を書いていただいて、注意事項を読んでいただきます。その後、施設を案内して、ここにはこういうルートがあります。このように登ります。こういう順番で登ってください。マットの外から落ちたら危ないので、それは注意してくださいというレクチャーを5分程度行うと思います。その後は、ほぼ野放図にしているのが一般的ではないかと思います。

こう言ってはなんですが、ジムを運営していくのに、そんなにたくさんのスタッフを、まず割けない。それから、大体のスタッフが、大学生のアルバイトみたいな感じで、専門性がそのように高いわけではありません。ジムのアルバイトをするのは、クライミングが好きでやっている人が多くて、サービス業的にはやや難があるようなことも見受けられます。実際には、もっと巡回を増やして、安全面を注意していただいたらいいのですが、現状では、そんなに事故が起こっていないというところで、その程度で収まっているのではないかと思います。

器具の安全については、これは、公共施設のほとんどが、年次点検は必ず行っています。日常点検とか、月例点検については、公共施設のありようとか、もしくは人材によってやっているところもあれば、もしかしたらやっていない。一番簡単な方法として私どもが提唱しているのが、点検リストをつくって利用者に報告に来ていただくと、異常があったら報告に来ていただくということを説明くださいと言っているのですが、なかなか毎日日常点検までやっているかどうかというのが不明です。

器具の交換頻度につきましては、年次点検によってホールドを全部外して洗浄して亀裂の有無、変形の有無を確認して、良好なものだけ再利用すると。それ以外、支点については金属摩耗もしくは疲労を起こしているところは交換するという程度で、1年に1回程度やっているところがほとんどではないでしょうか。

安全講習会については、予備で行っているところは、ほぼないと思います。

幼児のクライミングについてですが、私が会社を経営したジムで、2歳の子供がいまして、4歳の人に付き添ってきた、その人に、この子も登りませんかとお母さんに言ったときに、その人が届く範囲でルートを設定して、登っていただいたら普通に登れました。お母さんは、この子はまだ話も、口もきけないのに何でこんなに登れるのかというので、人間はもともと、要するに、サルの延長で、物にしがみつく能力は長けていますので、実際には2歳ぐらいからでも登れます。

実際のところ、私は65歳ですけれども、10回ぐらい落ちたら体がぎくしゃくして、翌日つらいです。でも幼児のほうは、歩くときに廊下にばたんと倒れても、ほぼケガなく、要するに全体に柔軟性が富んでいますので、ケガはないことが多いです。ただし、脳に対しての損傷があったら具合が悪いので、今、国際的には略称がH何とか、要するに、頭に対するインパクトの衝撃の関わり具合の調査が入っていると思います。

これは、通産省の研究所のほうでも、それを行いつつあるのですが、今、クライミングの屋外マットについては、そのヘッドインパクトに対する係数をクリアしたものしか販売しないようにしようという動きになりつつあります。ただ、現時点では、それをパスしているのは、世界中で1製品しかございませんので、今後どのような広がりを見せていくかというのが不明なところです。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

それでは、最後に、加藤教授、お願いします。

○帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科学科長加藤教授 体調における弊害というところだったと思います。

今、おっしゃられたような睡眠不足、それから、アレルギー、特に花粉症が出ている時期、アウトドアのほうに行きますと、ものすごく咳き込んだり、鼻水が出たりとか、集中力が散漫になったり、あとは、注意力散漫、集中力の低下というものが、アレルギーだとか、風邪気味の場合と同じように弊害が出てきます。

もちろん、女性の場合は、生理中は行かないと思うのですけれども、こういうのが季節的には非常に大きな弊害になったり、例えば、競技会のときも意外と春先の時期、結構きついというクライマーも、競技選手でも弊害が出てくることもありますけれども、それは自己管理が必要なのかなと思います。十分体調の優れないことでの弊害というのは出てくると思います。よろしいでしょうか。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

柿沼委員、よろしいですか。

○柿沼委員 はい、大丈夫です。ありがとうございます。

○鹿野委員長 ほかには、黒木委員長代理。

○黒木委員長代理 時間がないところ申し訳ありません。

まず加藤先生に質問です。資料の4ページに2015年と2017年の調査が載っていますが、この調査は今後アップデートする予定はありますか?

続いて、内閣府消費者委員会で調べたところ、事故情報データバンクでは2012年から2024年の間にスポーツクライミングによる事故情報が18件記録されていることが分かりました。

このような情報について、JMSCAさんでは事故情報をチェックする体制はございますか。

それから、民間のジムから事故情報を収集するシステムは、先ほどの話では今のところないということでしたが、改めて確認させてください。

あと、いただいた資料の18ページに「基本的には前述の資格を持ったコーチの指導方法に従う事」と書いてありますが、現在ある施設が約500で、コーチの資格を持っている人が756名ということになると、その人たちがフルタイムで働いたとしても、施設の営業時間をカバーすることはできないと思います。

そうすると、実際に資格を持ったコーチの指導に従うことや、加藤先生の資料にも書かれている「初心者は講習を受ける」ということを、何かルール化することを業界全体で考えているのでしょうか?東部長からも何か御意見があればお聞かせください。

まず加藤先生からお答えください。

○帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科学科長加藤教授 この研究に対するアップデートということは、当然考えております。これは、以前の18年に発表したときの時代と、オリンピックを超えてものすごく盛り上がっているところなので、これはぜひやっていきたいというところで、今、計画は立っているのですけれども、なかなか全国になると、今度は1,000名どころではなく3,000名とか4,000名になるのではないかなというところ、ただ、それは期待してやっていきたいと考えております。

○黒木委員長代理 ありがとうございます。

○公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会小野寺専務理事 まず、事故情報の確認なのですけれども、私どもは保険会社とタイアップしておりますので、事故に関しては、1つ1つ細かいのは見ていませんけれども、何件何件という形では入ってきております。ただ、その中は、山岳とスポーツクライミングが一緒になっておりますので、区分けしてはおりません。

ただ、先ほど申しましたように、外の岩場でもかなり厳しい事故が起きております。全治何年とかという厳しい事故が起きておりますので、その状況は把握しているという状況になります。

それから、指導者の数なのですけれども、冒頭に申しましたように、やっと最近そういう制度が確立してから3年、4年という形になります。登山に関しては、20年、30年やっておりますので、ほぼ問題ないと思っているのです。問題がないわけではないですけれども、それほど大きな問題はないと思っているのですけれども、スポーツクライミングは、まだまだ指導者を育成していかなくてはいけないという認識でおります。

ただ、その際には、単に登るとか、確保とかというだけではなくて、先生がおっしゃっているような医学的なところも、詳しいことは別にしましても、注意しなくてはいけないということは考えているという状況です。

ただ、それがクライミングジムに対してどう適用するかという話になりますと、まだ、そういうところの検討はしておりません。

○黒木委員長代理 ありがとうございます。

東部長に質問です。EN規格を全てのジムに同じ水準で適用することについてですが、日本の場合、先ほどおっしゃっていたように倉庫などを改造してジムにしているケースがあるということでした。そうすると、もともと不特定多数の人が入ることを想定していない規格で建てられた建物なので、建築基準法や消防法上の制限との関係で問題が出てくるのではないでしょうか。そういう日本独自の建築基準法や消防法にも適合するような規格を独自に考えていく可能性はどうでしょうか?

つまり、EN規格を基準にしつつ、倉庫などを改造すると間違いなく不特定多数が入る施設に変わってしまうわけですから、いろいろな意味で他の工法との関係で問題が出ていると思うんです。その辺りも含めた新しい規格を作ることはできるでしょうか、という質問です。

○東商アソシエート株式会社クライミング&アミューズメント事業部営業部技術営業グループ東部長 まず、この場でこういうことを申し上げていいかどうかというのは、内閣府様の委員会ですので、何ですけれども、基本的には民間のクライミングジムというのが、消防法とか建築基準法に全て適合しているかどうかというのが不明です。

要するに、倉庫なのに用途変更をやっているかとか、避難通路を定めているかどうか、これにつきましては、実際のところ、コンプライアンスの高い大型クライミングジムとか、商業施設の中に入っているジム、公共施設については、全て確認申請を受けたり、構造計算をした上、もしくは消防法の適合を受けてスプリンクラーの設置とか、防火扉の設置は行っています。

ただ、民間については、基本的には査察を受けたときに違反行為が高かったら、消防からの指導があって、ここに表示板をつけろとか、消火器を置けという指導にとどまっているのが現状です。

用途変更については、個々のジムによって異なると思いますので、その辺については、調査のしようがありませんし、それをジムのオーナーに聞いたところで、きっちり答えてくれるとは思えませんので、そういうところがございます。

この問題を複雑にしていますのは、クライミングという施設と、趣味という側面がございまして、まず、陸上とか、サッカーとか、スイミングプールは競技を対象にしていますので、競技会を行うためには、陸連とか水連の認定を受けないといけません。こういうときに、規格、基準がしっかりありまして、もしくは、その中に指導員規定があったら絶対に認定の中に包括されると思います。

ただ、クライミングに関しては、まず、ボウリング場と一緒と思っていただいたほうが近いと思います。スポーツでありながら、レジャーの側面も非常に強いですので、そこに指導員がいるかどうかといったら、ボウリング場には指導員がいませんけれども、そんな状態です。

ただ、我々が危惧しているのは、やはりマットの外に落ちたり、マットが薄過ぎたりというのがございますので、ボウリング場とは、ケガの程度が違います。この辺をどのように指導したり、網掛けしたり、事故を防いだり、一番良いのは事故報告書を上げていただいて、類似な事故が起こらないような対策を、業界全体を通じてどうしていくかというのが一番良いのです。例えば、年間通じてマットが薄過ぎて骨折が本当はたくさんあるのに、マットを取り替えるのに200、300万かかるから、これは報告したら、お客さんが来なくなるから伏せていようというところもある可能性があります。

そういうものをどのように調査したり、指導員を常駐ではないですけれども、巡回制度になるのか、そういうことで安全を今後守っていかなくてはいけないということは、恐らく業界全体の課題ではないでしょうか。

○黒木委員長代理 ありがとうございました。

○公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会小野寺専務理事 差し出がましいようですが、よろしいですかね。

製品安全委員会というのがあると聞いたことがあります。これは、多分、経産省の中ですかね。10年か20年前、もっと前かもしれませんけれども、やはり登山、今ほどスポーツクライミングが盛んになる前は、ロープの基準とか、それから、カラビナの基準とか、そういうのは全部UIAA規格というものがあります。UIAAというのは、国際山岳連盟の略称なのですけれども、そういう規格があって、その規格を持っていれば問題ないですよと、これはヨーロッパ規格です。

それは、ENとかCEを基につくられているとなっております。ですから、それは、あくまでも安全が保障されているということなのですけれども、それが日本に輸入されて来た時点で、それは通らないと、それは製品安全委員会を通さなくては駄目だということを言われていました。

実際に、私どもの何人かの委員も、その製品安全委員会に出席して話をしたことがあります。ただ、最近はそういうことが言われていないのです。ですから、今はENでしたか、CEでしたか、そういう規格も、むしろ製品安全委員会のほうで、もしやっていただけるのであれば、それはそのほうが、いわゆる国も関係しているということですから、私は、いかがなものでしょうかと、今、考えた次第です。

以上です。

○東商アソシエート株式会社クライミング&アミューズメント事業部営業部技術営業グループ東部長 すみません、これについては、通産省のほうで、PIUと言ったかな、製品の安全基準がございます。ただし、これは非常に複雑な法令で、クライミングに関しては、クライミングロープしか対象になっていません。あと、なっていますのが、ライター、ヘルメット、ガス器具等が通産省の製品試験をパスしなくてはいけないし、そのPIUだったか、そのマークがついています。

一度フランスのメーカーが大々的にクライミングロープを日本に輸入して、それが、そういうマークが貼っていないので、全回収したという前例があります。これをほかの器具まで広げていけるかどうかというのが不明ですけれども、現状では、そういった重篤な事故を引き起こす可能性がある製品に、そういう制度がございます。

○黒木委員長代理 ありがとうございました。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

ほかはよろしいでしょうか。

御説明、御回答をいただき、ありがとうございました。司会の不手際により、大分時間を超過してしまいましたが、今回の議論は、以上とさせていただきたいと思います。

本日は、貴重な御発表をいただきまして、誠にありがとうございました。おかげさまで、現状と課題を、現状では対応が難しいところまで含めてお話をいただき、理解を深めることができました。本日の議論を踏まえて、引き続き当委員会として調査審議を行っていきたいと思います。どうもありがとうございました。


《3. 閉会》

○鹿野委員長 本日の本会議の議題は以上になります。

最後に、事務局より今後の予定について御説明をお願いします。

○江口企画官 次回の本会議の日程と議題につきましては、決まり次第、委員会ホームページを通してお知らせいたします。

以上です。

○鹿野委員長 それでは、本日は、これにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)