第421回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2024年1月17日(水)13:00~15:36

場所

消費者委員会会議室及びテレビ会議

出席者

  • 【委員】
    (会議室)鹿野委員長、黒木委員長代理
    (テレビ会議)今村委員、大澤委員、小野委員、柿沼委員、中田委員、原田委員、星野委員、山本委員
  • 【説明者】
    厚生労働省社会・援護局地域福祉課 火宮成年後見制度利用促進室長
    厚生労働省社会・援護局地域福祉課 高坂地域共生社会推進室室長補佐
    消費者庁 内田地方協力課課長補佐
    東京大学 秋山名誉教授
    新潟大学法学部 上山教授
    社会福祉法人全国社会福祉協議会 水谷地域福祉部副部長
  • 【事務局】
    小林事務局長、後藤審議官、友行参事官

議事次第

  1. 消費者基本計画の検証・評価・監視(高齢化等への対応)

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1. 開会》

○鹿野委員長 皆様、こんにちは。本日は、お集まりいただき、ありがとうございます。

定刻になりましたので、ただいまから、第421回「消費者委員会本会議」を開催いたします。

本日は、黒木委員長代理と、私、鹿野が会議室にて出席しており、今村委員、大澤委員、小野委員、柿沼委員、中田委員、原田委員、山本委員がテレビ会議システムにて御出席です。星野委員も、恐らくテレビ会議システムにて、今はまだのようですが、御参加の予定です。

なお、大澤委員は所用のため、1時間程度で御退室と伺っています。

それでは、本日の会議の進め方等について、事務局より御説明をお願いします。

○友行参事官 本日もテレビ会議システムを活用して進行いたします。

配付資料は、議事次第に記載のとおりでございます。もし、お手元の資料に不足などがございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願いいたします。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございます。


《2. 消費者基本計画の検証・評価・監視(高齢化等への対応)》

○鹿野委員長 本日は、消費者基本計画の検証・評価・監視の一環として、高齢化等への対応について御議論いただきます。

我が国の総人口に占める65歳以上人口の割合は、昭和25年には5パーセントに満たなかったものが、平成6年には14パーセントを超え、令和4年10月時点では29パーセントに達しており、今後もその割合は高まるものと予想されております。

同時に、単身世帯の増加、親族の減少あるいは近隣関係の希薄化といった社会的な状況が見られます。

また、一方で、デジタル化の進展やAIの台頭といった社会情勢の変化も見られるところでございます。御存じのように、高齢者の消費者被害も深刻な状況が続いているところです。

そこで、超高齢社会の中、独り暮らしの高齢者や認知症を伴う高齢者が増加していく現状を踏まえて、高齢者等の消費者被害の発生・拡大の防止等を図るという観点から、高齢化等への対応としての取組について、確認することが重要だと考えております。

なお、消費者委員会では、平成29年1月に「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての建議」を発出したところでございますが、当該論点に関しましては、総理を議長とする「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」、この幸齢というのは、高いという字ではなくて、幸せと書くものと承知しておりますが、その会議において検討が進められているところでございます。

そこで、本日は、それ以外の論点を中心に、高齢化等への対応に関する現状と課題等について、有識者、関係省庁から御報告いただき、消費者の視点に立ち、行政が取り組むべき点などについて意見交換を行いたいと思っております。

本日は、有識者として、東京大学の秋山名誉教授、新潟大学法学部の上山教授、社会福祉法人全国社会福祉協議会の水谷地域福祉部副部長に会議室にて御出席いただいております。

また、関係省庁としまして、厚生労働省社会・援護局地域福祉課成年後見制度利用促進室の火宮室長に、オンラインにて御出席いただいております。

また、質疑対応としまして、厚生労働省の社会・援護局地域福祉課地域共生社会推進室の高坂室長補佐、そして、消費者庁地方協力課の内田課長補佐に会議室にて御出席いただいております。

皆様、お忙しいところ、どうもありがとうございます。

本日の進め方ですが、最初に、秋山様に20分程度で御発表いただき、次に、地域の高齢者対応の現状と課題について、水谷様から20分程度で御発表いただきます。

その後、成年後見の利用促進に関して、厚生労働省から15分程度、次に、成年後見制度の改正をめぐる議論の現状等に関して、上山様から20分程度で御発表いただきます。

そして最後に、全体を通じて、質疑応答、意見交換をさせていただくことを予定しております。

それでは、まず、最初に東京大学名誉教授の秋山先生から、よろしくお願いします。

○東京大学秋山名誉教授 秋山でございます。よろしくお願いいたします。

委員長からお話がありましたように、日本は、世界で長寿社会のフロントランナーです。高齢者政策や施策、アカデミアにおいては高齢社会研究、そして、産業界においては、高齢者市場の開拓という意味で、世界から注目されています。今や、アフリカ諸国も含めて人口が高齢化しており、人口の高齢化はグローバルな状況です。

私が在籍している東京大学の高齢社会総合研究機構は学際的な組織で、医学、工学、経済学、法学、教育学、心理学など多様な分野の研究者が一緒に高齢社会の課題解決に取り組んでおります。私は、もともと社会心理学が専門でございまして、常に生活者の立場から高齢社会の研究をしてまいりました。私自身も高齢者で50年ぐらい高齢者研究に携わっておりますが、その間に高齢者は変化しています。したがって、高齢者政策や高齢者市場の開拓においても、目掛ける的自身が動いていくのですね。ムービングターゲットというのでしょうか。本日は、その辺りのことを少し御紹介したいと思います。私自身は消費者被害の専門家ではありませんので、そういう領域のデータを持っておりません。皆さんのお話のバックグラウンドをお話しして、前座を務めさせていただきたいと思っております。

スライドが多いので少し駆け足でまいります。2枚目のスライドですが、本日は、これら4点、「高齢人口の多様化」、「働くシニアの増加」、「高まる自律・自立志向」、そして「独り暮らし・認知症高齢者の増加」について駆け足でお話ししたいと思います。

まず、「高齢人口の多様化」です。スライド右の銅像ですが、普通、銅像は、人が亡くなってから誰かほかの人が彫るものですが、これは自分自身で石を刻んで、自分の体を形作っている点で非常に象徴的だと思っています。今、人生100年と言われていますが、100年の人生を自ら設計して生きる姿を表しています。私の若い頃は、学校を出たら就職して定年まで勤めて、あとは余生が当たり前の人生でしたが、今や、そういうことを考えている若い人はほとんどいないですね。自分のキャリア、結婚、出産、育児などを含めて、自分の人生を自ら設計して、かじ取りをしながら生きていく時代になってきています。高齢者も同様です。高齢期の生き方は様々で、高齢者は多様化しています。

4枚目のスライドです。これは、私たちが1987年に始めた全国高齢者パネル調査の分析結果です。全国の住民基本台帳から無作為に抽出した、60歳以上の約6,000人を対象にして、基本的に同じ質問を3年ごとに行う追跡調査です。日本の高齢者の身体と心の健康、収入や資産、消費など経済、あとは家族関係、友人関係、地域との関係などの社会関係の加齢に伴う変化を把握する調査です。今まで11回調査しており、今年12回目の調査をする予定です。

これは、少し古いデータですが、初めの15年間追跡をした人が、生活の自立度、つまり誰でも日常生活でするような、例えば、お風呂に入る、短い距離を歩く、階段を上るといった日常生活基礎動作、もう一つは、手段的日常生活動作と言われており、もう少し認知能力も要る、例えば、銀行に行ってお金の出し入れをするとか、電車やバスに乗って一人で出掛ける、これらは誰でもする動作です。そういう2つのレベルの日常生活動作を人の助けや道具の助けがなくてできるかどうかという質問を3年ごとに同じ人に訊きました。

そのデータを分析して、日本の高齢者の生活自立度は、加齢とともにどのように変化するかを知るために分析した結果がこの図です。縦軸が自立度で、横軸が年齢です。6,000本こういう線があると思っていただいて結構なのですが、6,000本の線を見ても分からないので、パターンを分析する統計手法を使いました。注目していただきたいのは赤い線です。約7割の男性は、70代の半ば辺りまでは独り暮らしができる程度に元気ですが、その辺りから支援が少し必要になってくるということです。2割の方は、70代になる前に亡くなるか、重度の介護が必要になる。逆に、10パーセント強の方は80、90歳になっても元気だということが分かります。

次のスライドは女性の自立度です。70代の初め頃から、9割近い方が、緩やかに自立度が低下している。男性の場合は、心臓病や脳血栓などで亡くなったり重度の支援が必要となるケースが多いのですが、女性の場合は、命に関わらない、足腰が弱くなって支援が必要になることが多い。女性はある程度障害を持ちながら生き続けるということが分かりました。

次のスライド、今は長寿で高齢期が長くなり、親子で高齢者というケースも珍しくありません。したがって、高齢期は3つぐらいのステージに分かれるかなと思います。ステージⅠは、いわゆる元気高齢者と言われる人たちで、定年で退職したが体も心も元気だし、いろいろなスキルもあるという人たちで、何かやりたいとか、やってもいいと思っている段階です。ステージⅡでは、75歳ぐらいを過ぎると、ある程度の人たちが何かの形で少し支援が必要になってくる、少し弱ってくる段階です。ステージⅢは、最後のステージといいますか、介護が必要になってくるステージ、それぞれのステージによってニーズはかなり異なります。親子とも高齢者で、子供がステージⅠ、親御さんがステージⅢという御家庭はかなり多いと思います。図が示すように、それぞれのステージでニーズがかなり異なります。そうしたニーズに対して政策、施策、そして産業界がモノとかサービスを提供していくことになります。

人間は、生まれたときには、できることもできないことも皆、大体同じですが、だんだん多様化し、人生の最後になるほど多様化します。高齢期はばらつきが大きいことを把握しておく必要があると思います。

8枚目です。今、国内の60歳以上の高齢者市場は約100兆円と言われています。産業界にとっては非常に大きな市場です。家計消費市場全体に占める高齢者消費の占める割合は46パーセント、半分近いと言われています。したがって、昨日の新聞でしたか、日本経済の行く手みんな憂いているが、ピンチをチャンスに変えよう、1つは、高齢者が急増すると、課題に圧倒され、ピンチなのだけれども、これをチャンスに変えるべきだという記事がありました。多様で大量なニーズがありますから、いろいろなモノやサービスが次々と開発されていくでしょう。そこには常にリスクがあります。本当に役に立てばいいが、立たないものもあるし、危ない、安全でないものもあるので、消費者庁の役割は非常に大きいと思います。

次は、シニアの多くは定年退職した人です。昔は余生という言葉がありましたが、最近はあまり聞かなくなりましたね。高齢期に見られる2番目の大きな変化は、働くシニアの増加です。

まず、心身の健康度が著しく変化しています。普通の歩行速度は、老化の簡便な指標として国際的に広く使われています。1992年から2017年まで4回にわたって、同じ年齢層の歩行速度を比較したのが、10枚目のグラフです。赤い棒が2017年のデータです。今、24年ですから、これよりも更に高くなっていると思われます。御覧になるように、歩行速度は、どの年齢層をとっても速くなっています。特に85歳以上の歩行速度の変化は著しいですね。

次のスライドは教育程度の変化です。私が若いときには、3月になると上野の駅に中学校の学生服を着た人たちが大勢降り立ち、東京で就職しました。金の卵と呼ばれていました。当時、中卒者は多くいましたが、現在は最終学歴が中学卒業は非常に少なくなり、逆に大卒が増えています。

したがって、今日のシニアは元気で、しかも高等教育を受けている人たちが多い。こうした統計データだけでなく、本人の実感としても今や60代で自分が年寄りだと思っている人はあまりいませんね。今日の60代は、昔の中年で、ちょうど人生半ばと思っている人が多くなりました。そういうこともあって、2017年に日本老年学会と老年医学会が共同で、高齢者の定義を変えるべきだと公式に提案しました。国際的には65歳以上となっているが、75歳以上とすべきではないかと。このように准高齢者、高齢者、超高齢者という区分を提案して、シニアからは歓迎されました。しかし、年金制度とか、いろいろなことが65歳という定義で設定されていますので、一朝一夕には変えられません。将来的には、この方向に動いていくのではないかと思っております。

次も私たちの調査です。人生50年と言われた時代が日本では非常に長く、織田信長の頃から第二次世界大戦が終わる頃まで続きました。そして、20世紀後半に平均寿命が急速に30年ぐらい延びて、今や人生100年と言われています。人生が倍になりました。人生50年時代には、定年後は余生だと考えられていました。それが団塊世代の辺りから、定年はセカンドライフのスタートライン、もう一つ人生があると考える人が増えています。

こちらは5年ぐらい前に実施した50歳から64歳までの人を対象にした全国調査の結果です。あなたが65歳頃に定年退職した後、79歳ぐらいまで、どんなことをしたいですか、どんなことをしていると思いますかと尋ねました。そうすると、一番が働いているということだったのです。2番目が自分を磨く、学ぶということ。働くとは、何も定年を80歳まで延長するということではなくて、何らかの形で社会と繋がって役割を持って暮らしたいと思っている人が多い。また、年を取っても自分を磨く、学ぶことに関心があると。私が若い頃は、定年退職すると盆栽を手入れして、将棋を指して、お孫さんの相手をしてお迎えを待つのが穏やかな余生と考えられていましたが、今は、そういうことを考えている人はあまりいません。働くこと、学ぶことに関心を持っている人が増えています。新たなニーズですね。

次のスライド、日本の高齢者の就労意欲は世界的にも高いです。現在働いている人では、70歳ぐらいまで働きたいという人が8割以上、働けるうちはいつまでも働きたいと願っている人が4割ぐらいいます。定年後も無理のない範囲で働きたいと願っている人が多いということです。

次のスライドです。御存じのように、出生率が低下して生産年齢人口が縮小することは明らかです。このままでいくと、65歳で線を引いて、下が支える現役世代で、上が支えられる人として比率を見ると支えきれなくなっています。50年前には胴上げだったのが、今は騎馬戦、もう少しすると、肩車になって、下手をすると、重量挙げになると予想されています。そうなると、社会保障制度を維持できなくなりますし、日本の経済自体が成り立たなくなります。どうにかして、この比率を補正しなくてはいけません。これは、日本だけの課題ではなく、先進国共通の課題ですが、欧米は外国から若い労働者を入れて、下の部分を補充しています。日本も恐らく労働市場を開放して、外国からの労働者を受け入れると思いますが、それと同時に、元気で教育を受けて年を取り、無理のない範囲で働きたいと思っている高齢者に働いてもらうのが先決だと思います。既に政府からもその方向に向けた政策、施策が打ち出されています。

17枚目のスライド。御存じのように、70歳までの就業機会の確保は、現在、努力義務です。この法案は2020年に成立しました。①から⑤までの多様な選択肢を参考にして、何らかの形で企業は70歳まで就業機会を確保するという方向に動いています。

私自身も長寿社会のまちづくりに千葉県の柏市で携わり、セカンドライフの就労プロジェクトを担当しました。まちの事業者を訪問して、シニアを雇ってくださいと言うと、一様にうちは年寄りの仕事はないと言われました。理由は、まず生産性が落ちること、もう一つは危ないのではないか、安全性が担保できないこと、あとは頑固だということでした。前の2つ、生産性と安全性に関して、いろいろな工夫ができます。テクノロジーで解決できる部分もかなりあると思われます。例えば高齢者の身体的機能の衰えを補完するテクノロジーや、高齢者にも安全な職場をつくるために鮮明に見える照明の開発など、いろいろな開発がなされています。これから増加する働く高齢者にどのように対応していくか、みんなが安全で、生産性を保持しながら働ける職場をどうつくっていくかは大きな課題です。安全性のチェックなど、消費者庁の役割も大きいと思われます。

3番目が、自律と自立です。非常に顕著な変化です。私の母の世代は、子供や孫と一緒に住んで面倒を見てもらうのが幸せな老後だと思っていました。ところが、団塊世代の辺りから、多くがそのような考えを持っていません。子供と一緒に住む高齢者は少数になっています。なるべく人に頼らないで自分のことは自分で、90歳になっても、家事は自分でやって生活したいと考えるシニアが増えています。そういうニーズに応えて、企業は自立を支援する様々なデバイス、製品、サービスを開発しています。

私は、鎌倉リビングラボを7年前に立ち上げました。20枚目のスライドに概念図がありますが、生活者・消費者のユーザーコミュニティを核にして、ユーザーと産官学が一緒になって、モノやサービス、そして、政策、施策を共創するオープン・イノベーションの場です。

最初の課題の洗い出しから、設定した課題のソリューションを産官学民で出して、それを整理して、これで行こうという解決策があったら、それを多くの場合は企業がプロトタイプを作り、それを実際の生活の場で徹底的に使ってみてテストします。

そうすると、あまり解決にならなかったり、少し使いにくいとか、この値段では幾ら便利でも駄目だとか、いろいろな難点が出てきます。そういう評価をして、改善しては実生活で使ってみるという過程を繰り返し、本当に問題を解決して、使いやすくて値段も手頃というものができたら市場に出します。

幾つか例を御紹介します。高齢者は車が運転できなくなっても、行きたいところには行きたいと思っています。今、都市部で高齢化しているのは、昭和40年代に開発された多摩ニュータウンのような丘陵地が多いです。坂道で、しかも凸凹があったりして自転車も使えないようなところですから、簡単に操作できる電動の乗り物があると便利です。しかも今の高齢者は格好が良くなくてはいけないのですね、車からあれに早く乗り換えたいなと思うような、そういうものを作らなくては売れません。

また、最近は多くの企業が見守りのデバイスの開発に注力しています。冷蔵庫を開ける頻度、トイレで血圧などの健康測定、ベッドにセンサーを付ける、お風呂で倒れたらすぐ栓を抜いて息子さんのところに通報が行くなど、ありとあらゆる工夫をしています。しかし、シニアに訊くと、そういうのは真っ平だと思っている人が多いですね。見張られているような見守りのデバイスは要らない、それよりも自分で見守りたいと。バンドエイドぐらいの薄いウェアラブルなセンサーで、心拍数や血液中の数値が出る。お風呂に入って倒れたという検知ではなくて、今、お風呂に入っても大丈夫かどうかが分かる、自分で判断できるデバイスをつくってほしいというのが、ユーザーからの声なのです。

3番目の例です。75歳以上の女性の4分の3は独り暮らしです。独り暮らしになったら、ソーシャルロボットと一緒に暮らすことをリアリティを持って語っています。まだAIなどが入っていないプリミティブなソーシャルロボットと6か月一緒に暮らしてもらって、このロボットがどんなことをしてくれたらいいかというニーズアセスメントをしました。男性と女性では違っていました。男性は、何々を調べてとか、何々を持ってきてとか、秘書や執事のようなロボットをほしいと思っていました。女性の場合は話し相手や相棒。こちらはテクノロジー的に難度が高いですね。その人の生活環境やライフスタイルを理解しておかなければいけない。洋服箪笥や冷蔵庫に何が入っているかも知っておかなければならない。

このように高齢者のニーズに応える様々な開発が行われていますが、ユーザーと一緒に開発していくことが重要だと思います。できても使いものにならないものがあまりにも多過ぎます。

最後は、「独り暮らし、認知症高齢者の増加」です。御存じのように、認知症の有病率は加齢とともに高くなり、人生100年時代とは、全ての人がいつかは認知症になることを想定して生きていく時代です。したがって、認知症になっても、社会の一員として自分らしく安心して暮らせる環境の整備は非常に重要な課題です。

そういうことも含めて、最後のスライドですが、日本のAge Techカオスマップです。テクノロジーだけではなく、いわゆるシステム屋さんなども参入しており、日本の基幹産業の1つになっていくことでしょう。消費者の立場からリスクや安全性をしっかり評価してチェックする必要があります。

以上でございます。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

続きまして、社会福祉法人全国社会福祉協議会の水谷様、よろしくお願いします。

○社会福祉法人全国社会福祉協議会水谷地域福祉部副部長 全国社会福祉協議会の水谷と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

本日は、私からは「地域の高齢者対応の現状と課題について」ということで、資料2に基づいて御説明します。

社会福祉協議会が地域の高齢者に対して実施している取組について、特に権利擁護支援に関する事業として取り組んでいる日常生活自立支援事業という事業や、成年後見制度、そして身寄りのない高齢者等への支援について、中心にお話をさせていただきたいと思います。

資料の3ページから社会福祉協議会について、少し紹介しております。御存じの委員の先生方もいらっしゃるかと思いますけれども、社会福祉協議会は、一番上のところにありますように、全ての市区町村、都道府県・指定都市、全国の段階に組織されている、民間非営利組織でございます。

地域福祉の推進を図ることを目的とした団体として、社会福祉法に規定されているところでございます。

また、もう一つの特徴は、下の構成メンバーというところを見ていただくと分かりますように、住民や住民の組織、当事者団体、社会福祉の関係者、それから福祉以外も含めて、幅広い関係者から構成されている団体であるということでございます。

4ページを見ていただきますと、社会福祉協議会の使命や活動原則等について説明をしております。

左下の社協の活動の特徴を見ていただくと、住民のニーズを把握して、そのニーズに立脚した活動を進めるということを書いております。

社会福祉協議会は、狭い意味の福祉の特定の課題ということだけではなくて、住民の暮らしを見て、今、これが課題だと考えることについて、住民や地域の関係者と協議し、協力しながら取り組むという特徴を持っております。

また、一人のニーズから地域全体の課題を考えて、住民と一緒に問題解決に取り組む。また、そうした活動を社会福祉協議会だけでやるのではなくて、幅広い公私の福祉関係者、多分野の主体と連携・協働するプラットフォームをつくりまして、その中から新たな活動をつくり出していくということをしております。

5ページ目以降のスライドでは、社会福祉協議会が実施する様々な活動を挙げております。

それぞれ数字を何パーセントとか、何か所とかと入れておりますけれども、社会福祉協議会は全国の全ての自治体にございますが、それぞれの組織の大きさとか、やっている事業というのは非常に多様でございまして、全ての事業を全ての社協で同じようにやっているというよりは、その地域に応じて、住民の方々のニーズに沿いながら実施をしているため、ばらつきがあることはお伝えしておきたいことです。

例えば、5ページの最初のところに、住民参加による地域福祉活動や地域づくりということを書いています。交流の場や居場所づくり、見守り活動、それから先ほど高齢者の働きたいというニーズについて、お話がございましたけれども、住民主体の生活支援サービスということで、住民どうしの支え合い活動、こうしたところにも高齢者の方にたくさん御参加いただいています。

6ページ目を御覧いただきますと、当事者組織の立ち上げや支援ということで、例えば高齢者で言いますと、家族介護者の集いでありますとか、認知症の家族の会とか、そういったものを組織したり、支援したりということもしております。

7ページ目のスライドに、相談支援や権利擁護ということで、様々な相談支援事業を公的な制度に基づくものも含め、社協で受託して実施しております。

こうした相談事業を通じて、高齢者の消費者被害の相談なども把握して、消費生活センターの方々と連携して支援するということもございます。

8ページ目に行きまして、ボランティア・市民活動センターということで、ボランティアをしたいという方の御相談をお受けして、マッチングをしたり、ボランティアの養成を行う。それから、福祉教育という取組も小中学校、高校等で行っております。

それから、下のところは、今、正に能登半島で災害ボランティアセンターが立ち上がりつつありますけれども、災害が発生した際に、被災した地域の人たちを支援するため、災害ボランティアセンターを設置するということもしております。

社会福祉協議会の組織と事業について、簡単ですけれども御説明をいたしました。

9ページ目以降は、社協の事業の中でも特に日常生活自立支援事業や、成年後見制度等についての御紹介をさせていただきます。

まず、10ページのところが日常生活自立支援事業の説明になっております。

こちらの事業は、認知症高齢者や知的障害者、精神障害者など判断能力が不十分な人の権利擁護に資することを目的として、自立した地域生活が送れるよう、福祉サービスの利用援助を行うというもので、社会福祉法の福祉サービス利用援助事業というのがございますけれども、そちらを基盤に国庫補助によって、全国の社会福祉協議会で実施されている事業になります。

ここだけでは分かりづらいので、11ページのところを見ていただきますと、具体的な援助の内容を書いております。

3つ大きくございまして、1つは福祉サービスの利用援助ということで、例えば、訪問介護や通所介護といった福祉サービスを利用したり、また、利用をやめるために必要な手続、それからサービスについて苦情があったときに、その苦情解決をするための手続といったことを支援しております。

手続の支援といっても、具体的には、地域にある福祉サービスについて情報提供するとか、本人の希望を聞き取って、それをケアマネジャーや介護事業者につなげるといったことを具体的には行っております。

2つ目のところが、日常的金銭管理のサービスということで、年金や各種の手当の受領に必要な手続、それから、いろいろな費用を支払う手続の支援をいたします。

また、⑤に書いてありますのが、最も日常的に行っていることですけれども、金融機関に、本人さんと一緒に、あるいは本人から委任を受けて、あるいは代理権という形で設定して社協の職員が行きまして、そこで本人さんの口座から預金を払い戻して、本人にお渡しするということをしたり、②や③にあるような、いろいろな支払いを行うということ、振り込みで行う場合には、その下ろした現金から、必要なところに振り込むという手続を支援しております。

3つ目が、書類等の預かりサービスということで、高齢者の方々が自宅で重要な書類を保管しておくと不安だということで、証書、権利書、契約書類、印鑑などをお預かりするということです。

これは、社協の金庫というわけではなく、金融機関の貸金庫などをお借りして、そこに入れておくということでございます。

一番下の四角にありますように、大体平均的な利用イメージは、1か月に1、2回ぐらい、こうした支援のために生活支援員という住民を中心として一定の研修を受けていただいた方々に、本人の自宅を訪問していただいて、これらの手続やお金を下ろしたり、お渡ししたりということを行っております。

利用料は、全国で実施主体によって異なりますけれども、1回1,200円程度ということでございます。生活保護を受給している方は公費補助がございます。

右のところにある、「定期的な訪問による生活変化の察知《見守り》」というところも非常に重要でございまして、1か月に1、2回は、本人に会いに行くということで、例えば、高齢者の方ですと、見慣れない買い物をしたものが家の中にないかとか、よく分からない請求書が送られてきていないかということ。それから、御本人の、例えば認知症のある方であれば、その状況の変化がないかといったことを見守る取組になります。

12ページは、日常生活自立支援事業の利用状況ということでございます。

現在、全国で大体5万6,000人ぐらいの方が利用されていらっしゃる。割合としては、認知症の高齢者の方が最も多いということになっておりますが、最近は精神障害のある方の利用割合が増加しております。

13ページ目を御覧いただきますと、日常生活自立支援事業の利用に至った経緯について、初回の相談者を調査したものでございまして、本人や家族からではなくて、例えば、地域包括支援センターやケアマネジャー、病院とか、それから福祉事務所のケースワーカーといったような、本人の支援者からの相談で利用につながることが多いということです。逆に本人自身は、支援の必要性を感じていなかったり、金銭搾取されていたり、消費者被害に遭われていても気付かない、あるいはSOSを出せない状況にありますので、この支援を始めるに当たっては、本人との信頼関係をつくり、意思をどう聞き取るかというところに時間を掛ける取組をしております。

14ページ目は、利用者のニーズについて、初回相談のときにどのような御相談があったかということを集計しております。

最も多いのは、公共料金や家賃等の滞納、収入に応じた金銭の管理ができない、また、同じぐらいですけれども、通帳や印鑑、郵便物等の管理ができないという相談がございます。

消費者被害ということで言いますと、知人・家族からと一緒になってしまっていますけれども、9パーセントぐらいの方が、こうした相談が入り口になっていることが分かっております。

15ページ目を御覧いただきますと、これも契約をするときに、先ほど公共料金等の滞納が多いことをお伝えしましたけれども、どのような滞納があったかということを、利用者の区分別に把握したものになります。

認知症高齢者の方は、家賃や水道料金、電気代等の滞納が多く、知的障害、精神障害の方では、カードローンや携帯電話の利用料の滞納が多いという状況でした。

16ページ目のところを御覧いただきますと、こちらは、日常生活自立支援事業の利用者、また、その世帯に見られる複合的なニーズということで、この事業の利用者の対象者は、一番下の青い丸のところにありますけれども、判断能力が不十分というところが、この事業の対象者ということにはなるのですけれども、これに加えて共通した背景として、社会的な孤立とか、孤独感をすごく感じていらっしゃる方が多いということを思っております。孤独・孤立が背景となって、その上にあるような様々なトラブルに巻き込まれてしまったりとか、問題を抱えてしまうことが起きていると思っております。

それらの課題の中には、多重債務であったりとか、訪問販売等による消費者被害などもありまして、一番下の右のところにありますように、これは、社会福祉協議会だけで解決が難しい課題が多うございますので、他機関と連携をする、また、SOSを発見するために、住民、身近な見守りをしてくださっている方と協働するということが大変重要かなと思っております。

17ページ目を御覧いただきますと、キャッシュレスのことについて、少し課題をお伝えしたいと思います。

こちらは、どちらかというと、高齢者よりは障害がある、知的障害の軽度の方などで多いのですけれども、様々な支払いにキャッシュレス決済を利用する人も増えていらっしゃいますけれども、従来は、現金を金融機関から下ろしてきて、例えば封筒に分けて本人にお渡しをして、これは食費、これは医療費ということで、家計管理をお手伝いしていたのですけれども、キャッシュレス化で現物が見えないということで、つい使い過ぎてしまって生活費が不足したり、多重債務を抱えてしまうといった方を目にすることが多くなっております。

特にスマートフォンを利用した後払い決済については、手持ちに資金の余裕がなくても、簡単に商品購入、ゲームを利用したりということができてしまって、固定費が払えなくなって、社協の職員が家賃の支払いを待ってもらうために駆け回ることをしたりということがございます。こうしたキャッシュレス決済の利用について、これから判断能力が不十分な人が安心・安全に利用できるように、どのような対策をしていくのか、そのための環境整備も必要なのかなと感じているところでございますし、消費生活センターとも、是非連携をしていきたいと思っております。

続いて、成年後見制度について、社協の取組をお伝えしたいと思います。

18ページ目は、成年後見制度の中で、法人後見、法人として後見人等を受任するということですけれども、これを社協で受任しているところがございます。

日常生活自立支援事業では、判断能力が不十分な人に対して、日常的な金銭の管理はお手伝いできるのですけれども、それ以上の大きな財産の管理や処分等はお手伝いができない。また、入所施設の契約などもお手伝いすることができないということで、成年後見制度につないで、社協がそのまま法人として後見人に受任するという取組をしております。

全国で、今、3分の1ぐらいの社協が、後見を受任しておりまして、だんだん1社協当たりの受任件数も増えている状況にございまして、このままどれぐらい増やせるのかというところは、これ以上難しいという社協もあるのではないかと思っているところでございます。

続いて、19ページでございますけれども、こちらは、後ほど御説明があるかと思いますけれども、成年後見制度利用促進の基本計画の図でございまして、この計画に基づいて、今、中核機関の整備が進められております。中核機関には、成年後見制度に関する相談を受け、専門職等とも連携しながら対応したり、後見人の候補者の受任調整を行ったり、市民後見人の養成や活動支援を行うなど、様々な役割が期待されております。21ページのところにございますとおり、中核機関の運営主体というところで見ますと、社会福祉協議会に委託している自治体がかなり多いということで、先ほどの日常生活自立支援事業とも一体的に取り組んでいます。

22ページを御覧いただきまして、「日常生活自立支援事業と成年後見制度との連携」というところでございます。

先ほどもお伝えしましたとおり、日常生活自立支援事業では、判断能力が低下してしまって、もう日常生活自立支援事業の契約内容が理解できない、日常生活自立支援事業でできる範囲を超えた支援が必要になるといった状況になった場合は、成年後見制度の利用をお勧めすることになります。

一方で、なかなか日常生活自立支援事業から成年後見制度への移行がうまくいっていないケースもございます。

23ページ目のところを御覧いただきますと、やや古い調査になりますが、平成30年度に私どもで調査をしましたところ、日常生活自立支援事業の利用者の中で、既にもう成年後見制度の利用が適切ではないかと思われる状態にあるが、申立てにつながっていないケースがあると回答した社協が4割を超えているということで、多くの社協が、なかなかつなぐことに難渋していることがありました。

申立てにつながっていない理由としては、最も多いのは、市町村長申立てが必要だけれども手続が進まないとなっており、その背景には、親族等の申立人が見付からないということがございます。

また、本人自身が、この制度を利用することを希望しなかったり、意思決定に時間が掛かるということも理由として挙げられております。

そうした課題については、先ほどお伝えした中核機関で、行政とも連携をしながら、できるだけ円滑に、必要な場合には、円滑に制度が使えるように支援をしているところでございます。

24枚目のスライドは、「日常生活自立支援事業、成年後見制度利用促進に関する課題」ということで、私どもで感じている課題を幾つか書かせていただいております。

日常生活自立支援事業につきましては、実施体制が、なかなかニーズに追いつかないという地域もございまして、相談があっても利用をお待ちいただかなければいけない地域がございます。

また、金銭管理を支援するという立場にあることから、消費生活全般のニーズ、例えば携帯電話を契約したいとか、家を借りたいとか、引っ越したいとか、家屋を修理したいとか、様々な御相談を本人から受ける、あるいはニーズに気付くということがありまして、どこまで対応するのかということで、専門員の悩みや負担につながっております。

また、金融機関の支店の統廃合や営業時間の短縮によりまして、先ほどもお伝えした、現金を払い戻して本人に届けるというサービスについて、影響が出ていることがございます。

成年後見制度利用促進については、法人後見の受任や中核機関として社協は取り組んでいるわけですけれども、後見人の担い手不足の問題ですとか、それから、司法と福祉の連携をもっともっと強化していかなくてはいけないというところを課題に感じております。

そして、日常生活自立支援事業と成年後見制度の連携については、本人の希望や状況に応じた適切な制度の利用を支援するという前提に立ちつつ、市町村長申立ての目詰まりになっているところを解消していく、あるいは後見人等の担い手を確保していくことが必要だと思っております。

25枚目は、地域における高齢者への支援事業の一つとして、身寄りのない高齢者への支援ということで挙げております。

頼れる身寄りのない方が増加しているということで、本人が亡くなった後の葬儀とか家財処分をサポートするような事業を、一部の社協で独自の取組として実施しております。

お元気なときには定期訪問して様子をお伺いしたり、入院することになったときには、付き添いや必要な物品をお届けするといったオプションを付けたりという内容で、幾つかの社協が取組を始めているということでございます。

また、26ページには、社協が、先ほど見ていただいたような身寄りのない方への個別の支援を行うだけではなくて、地域全体として身寄りのない方をどう支えていくのか、入院や入所が必要になった場合に、身元保証人がいない方にどう対応していくのかという課題に対して、地域の関係機関と話し合ってガイドラインを作るという取組も行っております。

最後に、「消費者安全確保地域協議会との連携」ということで、2つ事例を出しております。

1つは、大分県の宇佐市の社会福祉協議会ですけれども、宇佐市では、令和2年に成年後見制度利用促進に関する協議会を設置し、これを宇佐市見守り支援ネットワーク協議会と呼んでおるそうでございます。

市内の金融機関において、ATM操作とか、通帳の紛失等で、何度も来られる顧客への対応に苦慮していたことがあったのですが、一方で、こうした方々の情報を福祉関係者に伝えていいのかどうかということで、個人情報の観点から金融機関には非常に悩みがあったということです。見守り支援ネットワーク協議会を消費者安全法の消費者安全確保地域協議会を兼ねるものとして、自治体の要綱に規定をして、個人情報の共有を可能とするという位置付けをしたことで、安心して金融機関の方が情報提供できるようになったということです。

併せて、金融機関の職員を対象に研修を行ったり、情報提供する際のチェックシートを作成したりしているということで、この取組によって、まだ福祉側が把握していない軽度の認知症の方が発見できたりということで、効果が上がっているとお聞きしております。

最後、北海道の鷹栖町の取組ということで、これは社協だけではなくて、行政も中心となった取組でございますけれども、重層的支援体制整備事業を実施している自治体でございまして、ワンストップの相談窓口として、福祉だけではなくて消費生活相談も含めて、一体的に受け止める体制をつくっていらっしゃるということと、自治体として安全確保地域協議会を設置されていて、見守りの仕組みをつくっているということです。

少し社協の人に聞きましたところ、ワンストップ相談窓口で消費生活相談に訪れた方の中には、継続的な見守りが必要だというケースもあるそうで、そういう方々については、下の見守りの体制のほうにつなげるといったことで、重層的支援体制整備事業とも連携を図っているというお話を聞いております。

すみません、少し超過しましたけれども、御説明のほうは以上でございます。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

続きまして、成年後見制度について、厚生労働省の火宮室長、お願いします。

○厚生労働省社会・援護局地域福祉課火宮成年後見制度利用促進室長 厚生労働省社会・援護局地域福祉課の成年後見制度利用促進室長の火宮と申します。

それでは「第二期成年後見制度利用促進基本計画」の進捗状況につきまして、お手元に配付されている資料等に基づいて、御説明をさせていただきます。

資料ですと、3ページ目になります。

まず、第二期成年後見制度利用促進基本計画の経緯と概要について御説明いたします。

「成年後見制度の取組経緯」についてでございますけれども、御案内のとおり、成年後見制度は民法等の改正によりまして、平成12年に誕生した制度であります。制度そのものは法務省の所管となっております。

この成年後見制度が、十分に利用が進んでいなかったということがありまして、平成28年4月に議員立法で成年後見制度利用促進法が成立いたしました。

平成29年の3月に計画期間を5年間とする、第一期の基本計画を閣議決定して、これに基づき、成年後見制度の広報や相談を各地域で担う体制整備であったりといった、成年後見制度の利用促進に関する施策を、最高裁や関係省庁等と連携して進めてきたところであります。

こういった取組を進めてきた結果、成年後見制度の利用状況は、右上のグラフにありますとおり、直近データになりますと、令和4年12月末日で、約24万5,000人が利用している状況になっております。

例えば、利用が想定される認知症高齢者が、令和2年に600万人と推計されていることからすると、開きがある状況と見ております。

こういったことも背景に、第一期の基本計画が、令和3年度で最終年度となることがありましたので、成年後見制度利用促進専門家会議で、第二期の基本計画の検討を開始いたしまして、令和4年3月に、令和4年度から令和8年度を計画期間とする第二期基本計画を策定いたしまして、来年度が計画期間の中間年度に当たるため、中間検証を行うこととしております。

この計画を閣議決定する前に、消費者委員会のほうでも一度、パブコメ中の計画案の概要について御説明をしていると承知しております。

4ページ目になります。成年後見制度の申立件数について、御紹介させていただきます。

成年後見制度の申立件数については、最高裁のデータになります。総数は直近ですと、対前年比で約0.2パーセント減ではありますけれども、増加傾向が見られると考えております。

ただ、任意後見監督人選任の審判の申立件数は、対前年比で約12.1パーセント増となっておりますけれども、総数に占める割合で見ますと、2パーセント強という状況になっておりまして、法定後見と比べると、申立てが少ない状況と見ております。

5ページ目になります。

こうした経緯があって閣議決定いたしました、第二期成年後見制度利用促進基本計画の概要になります。

こちらの計画ですけれども、成年後見制度の利用促進に当たっての基本的な考え方と、成年後見制度の利用促進に向けて、総合的かつ計画的に講ずべき施策の2部構成としております。

まず、地域共生社会の実現に向けた権利擁護支援の推進、尊厳のある本人らしい生活を継続できるようにするための成年後見制度の運用改善、また、司法による権利擁護支援などを身近なものにする仕組みづくり、についての基本的な考え方を示した上で、具体的な施策として、成年後見制度等の見直しに向けた検討と総合的な権利擁護支援策の充実、尊厳のある本人らしい生活を継続するための成年後見制度の運用改善、また、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり、そして優先して取り組む事項として、掲げているような事項を盛り込んでおります。

この二期計画の内容は、一期計画を通じて把握された課題、例えば、一つには、成年後見制度は、判断能力が回復しない限り利用が継続してしまう、また、後見人等が本人の意思を尊重しない場合があるといったことがありましたので、そういったことへの対応として、成年後見制度の見直しに向けた検討と権利擁護支援策の総合的な充実といった内容を盛り込んでいたり、また、成年後見制度の運用の改善として、意思決定支援の関係を盛り込んだりといったことをしております。

また、後見人の報酬についても、実際の報酬額を事前に知ることができないといった指摘があったことから、こういった後見人への適切な報酬の付与といった内容も検討事項として盛り込んでおります。

また、次のパートで御説明しますけれども、地域連携ネットワークづくりにつきましても、小規模市町村を中心に、本人の権利擁護支援を適切に行う地域連携ネットワークの整備が進んでいないといったことがありましたので、地域連携ネットワークづくりの推進に係る事項を、この計画に盛り込んでいる状況でございます。

次に、地域連携ネットワークづくりに関する取組について、進捗状況を御説明させていただきます。

7ページ目になります。

成年後見制度利用促進施策に係る取組状況の調査結果でございます。これは、全市町村、全都道府県を対象に、令和4年4月1日時点の状況を調査したものでありまして、例年10月に調査をかけております。令和5年4月1日の状況は、現在調査を刈り取って集計中という状況でございます。

地域連携ネットワークとは、先ほどの全社協さんの説明の中でも少し触れられておりましたけれども、身近な市町村や、地域包括支援センター等の地域の相談支援機関、また、弁護士会、司法書士会等の専門職団体、医療関係者など、こういった方々・機関による協議会を構成いたしまして、支援していく体制づくりのことであります。

このネットワークのコーディネートを行う中核となる機関や体制というものが必要でありまして、これを中核機関と呼んでおります。

この中核機関の整備状況についてでありますけれども、第二期基本計画に掲げているKPIとしては、令和6年度末で全市町村に整備ということですけれども、現状は、そこにお示ししておりますとおり、令和4年4月時点で935の市町村、53.7パーセントが整備済みでありまして、それに整備見込みありといった市町村も加えますと、1,158市町村、66.5パーセントという状況になっております。

下のグラフになりますけれども、全市町村の3割強について、まだその整備について未定という回答を頂いておりますが、その内訳を見ますと、具体的な見通しは立っていないが検討中という市町村もありまして、具体的な検討を行っていない市町村というのは、その半分以下の272市町村になっております。

下の中核機関の整備状況、整備時期というグラフでいいますと、紫の部分が、具体的な検討をしていない市町村になるのですけれども、それが272市町村あるということです。

この中核機関の整備状況について、自治体規模別に見てみますと、人口規模が小規模な市町村ほど、中核機関の整備率が下がっているような状況でありまして、1万人未満の市町村では、整備済みといったところが5割に達していないという状況になっています。

さらに、1万人未満の137市町村が、具体的な検討を行っておらず、グラフで言いますと紫のところ、左のグラフと併せて見てみますと、中核機関の整備について、具体的な検討を行っていないのは、1万人未満の市町村が大半を占めているのではないかということが読み取れるところであります。

8ページ目になります。

次に、「市町村計画の策定状況」についてですけれども、こちらもKPIは、全市町村ということで掲げております。

この計画の策定済みといった市町村は全体の62.8パーセント、1,094市町村になっております。

策定見込みありの市町村も合わせますと、1,296市町村、74.4パーセントという状況です。

市町村計画は、ほかの福祉関係の計画と併せて策定するといったこともあり得るということで、自治体のほうにはお示しをしておりますので、そういったことで、中核機関の整備よりも取組状況が高い率になっているのではないかと見ております。

この市町村計画の策定が未定となっている市町村は、25.6パーセントの445市町村です。

そのうち具体的な検討もしていないというのが、264市町村、こちらもグラフの紫色のところになります。

さらに、これも自治体規模別で見てみますと、人口規模が小規模な市町村ほど策定率は低く、さらに1万人未満の147市町村が、具体的な検討を行っていないといった結果から、これを隣のグラフと併せて見てみますと、1万人未満の市町村が全体の具体的な検討なしの市町村の半数以上を占めているのではないかというのは、先に御説明しました中核機関の整備状況と同じような状況かと見ております。

次に、9ページ、「都道府県の取組状況」についてでございます。

こちらに都道府県の取組状況が様々ありますけれども、KPIは令和6年度末で全都道府県が実施するということを掲げております。

1つ目の都道府県による担い手の育成方針の策定状況でありますけれども、策定済みというものは、2の都道府県だけですけれども、策定見込みまで合わせますと、約6割という状況でありまして、全く検討もしていないという都道府県は7都道府県でございます。

次に、市民後見人の養成研修の実施状況でございますけれども、右のグラフのほうになりますが、こちらは、15都道府県が実施しておりまして、一方で、全く検討もしていないのは、13都道府県となっております。

次に、法人後見の担い手養成研修の実施状況ですけれども、こちらも実施済みのところが18都道府県である一方、全く検討していないのは16都道府県となっております。

都道府県単位の協議会の設置については、設置済みのところが19都道府県で、全く設置の検討もしていないのは3都道府県となっております。

それから、市町村申立てに関する研修については、30都道府県が実施しておりまして、全く実施をしていないのは4都道府県、意思決定支援研修については、16都道府県が実施をしておりまして、全く検討していないのは7都道府県、という現状にあります。

都道府県の取組は、市町村の取組を支援するものでありますので、都道府県における取組が進まないと、なかなか自らでは実施できない市町村の取組も進まないと考えられますので、都道府県における取組も進めていく必要があると考えております。

次に10ページ、これらの都道府県や市町村の取組を進めていくための厚生労働省における具体的な施策の概要でございます。

地域連携ネットワークづくりに関する厚生労働省の取組の概要ですけれども、全ての市町村において権利擁護支援の地域連携ネットワークが構築されることを目指しまして、中核機関の整備や市町村計画の策定といった、市町村の体制整備を推進する取組を実施しております。

第二期計画を踏まえまして、これまでの取組に加えて、更なる推進に関する取組として、都道府県の機能強化のための研修カリキュラムの作成であったり、取組推進のための補助事業の創設、また、都道府県交流会の実施、それから、今後は都道府県による研修実施を目的とした国による意思決定支援研修の実施、研修指導者の養成、都道府県の実施を推進する補助事業の創設といったことに取り組んできているところでございます。

次に11ページ、「成年後見制度利用促進体制整備研修の実施」についてでございます。

こちらは、体制整備に関する基本的な考え方を全国に浸透させるために、市町村、中核機関等向け研修、また、都道府県職員向け研修といったものを実施しております。

令和元年度から実施しておりまして、4か年で延べ6,373名が研修を受講したところでございます。また、令和2年度からはオンラインで実施したことにより、中山間地や島しょ部等からの参加者数も増加しました。さらに、令和4年度は、基礎研修は、ライブ配信を2回開催したほか、ライブ配信の収録動画を視聴可能なコースといったものも設けたことにより、参加者数が増加しております。都道府県の支援体制強化のために、市町村支援に関する事例を踏まえた演習といった研修内容の充実も図りまして、都道府県等職員向けの研修についても実施しております。

12ページになります。「権利擁護支援体制全国ネットの運営」についてでございます。

こちらは、市町村・中核機関等における相談体制の強化を図るために、相談窓口としてK-ねっとを全社協に設置しているところであります。専門職団体や自治体職員などのアドバイザーや専門相談員の助言を受けながら、K-ねっとの相談員が対応しております。

直近10か月の相談実績は192件でありまして、中核機関、市区町村行政からの相談が多い、また、体制整備に関する相談が約半数となっております。

13ページになります。「成年後見制度利用促進ポータルサイトの運営等」についてでございます。

こちらは、本人や家族、そういった当事者の成年後見制度の利用や、自治体、中核機関の取組が促進されるように、広報・相談強化の取組として、令和2年度よりポータルサイトの運営を実施しております。ポータルサイトの利用者の属性別に、トップページから必要な情報にたどり着けるようにしております。利用者、支援者のインタビューを含む制度説明動画や制度説明パンフレット、研修資料等も掲載しております。

さらに、令和4年度は、担い手育成の重要性を伝える冊子やチラシを作成しまして、全国の自治体に展開するとともに、市民後見人、法人後見の活動動画をポータルサイトで公開したところであります。

14ページ、15ページは、第二期基本計画のKPIの進捗状況について、右側に記載したものでございますけれども、こちらは、これまでの説明においても御説明した内容になりますので、ここでの説明は割愛させていただきます。

来年度は、第二期基本計画の中間検証の年度でもありますので、これまでの取組、その進捗状況を確認して、今後の取組につなげてまいりたいと考えております。

御清聴ありがとうございました。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

続きまして、新潟大学教授の上山様、よろしくお願いします。

○新潟大学法学部上山教授 では、よろしくお願いいたします。

本日は「成年後見制度の改正をめぐる議論の現状と今後の政策課題」というテーマで御報告をいたします。少し資料の分量が多いので、かいつまんでの御報告となりますことをお許しください。

2ページです。

具体的な内容は大きく3点です。現在、法務省が関与する成年後見制度の在り方に関する研究会で、民法改正に向けた議論が進められていますので、まずはこの改正の背景と、現行制度の課題の概要について触れます。

次に、この研究会での重要論点について、議論の具体的な方向性を紹介します。この箇所が本日の報告の中核になります。

最後に、こうした改正の動きを踏まえた上で、特に成年後見制度との関係で、今後の高齢消費者保護にどのような課題が生じるかについて、簡単に私見を述べたいと思います。

4ページに行きます。それでは、本題に入ります。

現在の法改正をめぐる議論には、2つの背景があります。1つは、障害者権利条約からの要請です。これは、法定後見に伴う本人の行為能力の制限などが、障害者の法的能力の平等に違反しているという指摘であり、主に理念的な批判であると言えます。

もう1つが、国の第二期基本計画の中に、現行制度の見直しが掲げられたことです。

こちらのほうは、先ほどの権利条約と同様の理念的な要請に加えて、特に利用者側からの現行制度の使いづらさに対する批判に応じるという側面があり、実務的あるいは技術的な要請が含まれています。

5ページです。基本計画について、もう一つ留意すべき点があります。それは、成年後見制度の位置付けになります。

基本計画の目的は、単に成年後見の利用件数を増やすことではなく、地域共生社会の実現にあるとされています。つまり、成年後見は、地域共生社会を実現するための権利擁護支援策の一つに過ぎないことになります。

こうした視点から、基本計画は、地域福祉との協働を視野に入れた民事法制と社会福祉法制の一体的改革の必要性を強調しています。

後ほど触れるように、現在、法定後見の適用領域を狭める方向で議論が進んでいますので、その受け皿となる社会福祉の仕組みの整備は、極めて重要な政策課題となるわけです。

6ページです。利用者側の最大の不満の矛先の一つが、終わらない後見です。現行制度では、本人の判断能力が回復しない限り、法定後見を終了できません。このため、利用者の多数を占めるアルツハイマー型認知症の方などの場合、御本人が亡くなるまで後見が続くことが通例となります。

現在、新規選任の8割程度が専門職後見人であるため、これは同時に、御本人の死亡まで、後見報酬の負担が続くということでもあります。

専門職後見人との関係では、本人と直接面会してくれないなど、コミュニケーションの不足に関する不満もよく聞かれます。

本人側が後見人の交代を望んでも、後見人の解任か辞任がない限り、後見人を交代できないことも問題視されています。

7ページです。障害者権利条約との関係では、2022年10月に公表された日本政府に対する総括所見への対応が課題となります。

総括所見は、代行決定制度を廃止して、意思決定支援の仕組みを導入すること。このために、民法を改正することを勧告しています。

具体的には、法定後見における制限行為能力制度と、法定代理権制度の見直しが問題になります。日本政府も総括所見の公表に先立つ建設的対話の中で、行為能力制度の撤廃も視野に収めた包括的な見直しをする旨の回答をしています。

8ページです。条約との整合性の点では、法定後見の開始要件の見直しも大きな論点になります。

現在の要件は、精神上の障害のために、事理弁識能力が不十分であることであり、医学的に評価された本人の機能障害の存在という属人的な要素のみに注目する医学モデルに基づいています。

ここでは、一定以上の判断能力の低下と、法定後見の必要性が機械的に結び付けられており、本人の資産状況や生活状況を踏まえた具体的なニーズは考慮されていません。

このために、常に過剰介入のおそれが生じることになります。また、そもそもスティグマを生みやすい精神上の障害という問題は、対象者の限定には不要ではないかとの疑問もあります。

条約からのもう一つの重大な要請が、法定代理人などによる代行決定型支援から意思決定支援への支援枠組みのパラダイム転換ですが、従来の民法学には馴染みの薄い意思決定支援という概念を、どのような形で民法の規範に取り込んで法制化をするかは、非常に大きな挑戦であると言えます。

10ページに行きます。

次に、改正の主要論点について、成年後見制度の在り方に関する研究会での議論状況を簡単に御紹介していきます。

在り方研究会では、2022年6月から今年2月まで審議を行い、本年度中に報告書を作成する予定です。

研究会は、民事法の研究者と専門職後見人の主要な供給母体である弁護士、司法書士、社会福祉士に加えて、当事者団体の代表者4名で構成されております。

当事者団体の参画は、障害者権利条約の要請にも沿うものであり、この研究会の大きな特徴と言えます。

12ページに行きます。第二期基本計画が、法定後見制度の主要な検討対象として挙げるのは、次の4点です。

まず、第1に適切な時期に必要な範囲・期間で利用できる制度の導入、または、それへの転換です。ここでは、法定後見の基本原則として、必要性の原則や補充性の原則を明示することが課題になります。

第2に、後述するテイラー・メード型の仕組みへの転換の関係で、現在の三類型の見直しが必須となります。

第3に、必要最小限の介入という視点の時間的な側面への反映として、有期制の導入が問題になります。

第4に、事案の変化などに即応した後見人の円滑な交代を保障するための仕組みづくりが課題となります。

13ページです。国連の障害者権利委員会は、事実上、法定後見制度の全廃を求めていますが、これは後見人の代行決定を正当化する法定後見という仕組みが、本人の自己決定権を侵害するものであり、障害者の法的能力の平等に違反する差別的な制度であるという認識に基づくものです。

もっとも私自身は、こうした理解は、いささか極端に過ぎると感じており、本人の保護のための最後の手段として、必要最小限の範囲であれば、代行決定も認められるべきだと考えています。研究会の大勢も同様です。

そこで鍵となるのが、必要最小限の介入という視点です。例えば、まず、法定後見人の法定代理権は、本人の具体的なニーズに合わせて、個別事案ごとにテイラー・メード方式で設定すべきだということになります。

少なくとも包括的な代理権を伴う現在の後見類型を、このままの形で維持することはできません。また、本人の意思に反する行政的な介入は、できる限り避けるべきであるという観点から、法定後見の開始には、本人の請求又は同意を原則とするべきだと指摘されています。

14ページです。取消権についても同様の議論が当てはまります。

もっとも制限行為能力者の行為を不確定有効として位置付ける日本法の場合、取消権の代行決定的な性格が具体化するのは、実際に取消権が行使されたときになります。

そこで、取消権者を本人に限定する、あるいは、後見人の取消権行使に一定の制約をかけるといったアイデアも検討されています。

なお、こうした取消権の限定は、直感的には、本人保護の著しい後退を招くおそれがあるように感じられると思いますが、後見実務上、取消権が実際に行使される事案は、かなり少ないと言われており、その実効性には疑義も示されているということを付言しておきます。

15ページです。

必要最小限の介入の視点は、期間の面にも反映します。最も重要な点が、判断能力が回復していなくても法定代理権などの具体的なニーズがなくなったときには、法定後見の終了を認めるべきだということです。

法定後見よりも本人に対する制約の少ない手段で、本人の支援が十分可能である場合も同様です。例えば、遺産分割協議のために法定後見人のサポートが必要だったが、協議が終了した後は、日常生活自立支援事業で十分な支援ができるといった場合が典型だと言えます。

また、強制的な必要性の見直しの機会を設けないと、既に不要となった後見が惰性で続いてしまうおそれがありますから、後見の最長期間を法定して有期制の仕組みとすべきだという意見が多数を占めています。これは、障害者権利条約12条4項の要請でもあります。

16ページに行きます。

意思決定支援の法制化というのは難しい課題ですが、後見人は代理権や取消権の行使に先立って、まずは意思決定支援を通じて、本人自身による契約の締結や、あるいはその解消などの可能性をできる限り追求すべきであるという点については、研究会の中でほとんど異論はありません。

実は、こうした考え方は、既に2020年に策定された「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」の中で示されているものです。

したがって、このガイドラインが望ましい行動として提示している意思決定支援の優先性を、後見人の法的な義務としてどのように明文化することができるのかという点が、議論の焦点になっています。

17ページです。

支援者の柔軟な交代を保障することについては、既存の辞任と解任に加えて、裁判所の権限によって、より適任の者に交代させる改任、これは改める任という表記の改任の仕組みを創設するという方向が有力です。

また、現在は、非違行為に対するサンクションとして、位置付けられている解任を見直して、解任事由を広げていくことで、柔軟な交代を実現するという方策も検討されています。

19ページに行きます。任意後見の検討状況に移ります。任意後見の最大の課題は、利用件数の少なさです。これまでお話ししてきたように、仮に法定後見の適用領域を狭める方向で改正が進むと、認知症高齢者の方などを、市場社会に包摂するための適切な代替手段の拡充が必須となります。

一般的な理解では、その最有力候補が任意後見なのですが、例えば、イギリスやドイツなどでは、既に600万件程度の任意後見の登録があるのに対して、我が国の人口は、これらの国よりも多いにもかかわらず、わずか12万件程度の登記にとどまっているという現実があります。

20ページです。そこで、任意後見の利用拡大策が喫緊の課題となるわけですが、ここでは、現在の厳格な要件を緩和することで、任意後見の利用コストを下げるとともに、任意後見の利用形態の選択肢を広げる方向が検討されています。

ざっくり言えば、利用者のニーズに応じて、現在よりも簡易な契約方法を選択できるようにしたり、任意後見人の監督の仕組みなども本人が選択できるようにしたりすることが議論されています。

具体的には、公正証書の作成を任意とすること、任意後見監督人の選任の有無を選択制とすること、任意後見監督人の人選やその報酬額を任意後見契約の中で本人が定めることができるようにすることなどが検討されています。

もっとも、これらは本人が後見人を自らコントロールすることができない状況で発効する任意後見契約の特性を踏まえて、本人保護のための重要なセーフガードとして、現行制度に導入されているものです。

したがって、こうした要素の安易な緩和は、制度の本質を悪い方向に変質させるおそれもあるので、私も含め慎重な立場を取る委員もおります。

21ページです。現在の任意後見実務上の最大の課題と言われているのが、移行型任意後見契約の未移行問題です。移行型というのは、本人の判断能力低下前から発効する任意代理契約あるいは財産管理契約と呼ばれる契約を任意後見契約と併せて結ぶ形態を指しています。

本来であれば、本人の判断能力低下後は、任意後見契約を発効させなければならないのですが、実際には、これを怠ったまま、任意代理契約による支援を継続している事案が珍しくありません。

この中には、任意後見監督人による監督を回避するために、意図的に任意後見契約の発効を避けている悪質な事案も含まれています。

そこで研究会では、受任者の申立義務を明文化すること、任意後見契約にも市町村申立権などを導入することなどの対応策が検討されています。

23ページに行きます。

最後に、仮に本日お話ししたような方向で、成年後見制度が改正された場合に、高齢者保護にどのような課題が生じるかについて、ごく簡単に私見を述べていきたいと思います。

まずは、繰り返しになりますが、法定後見の縮小を補う支援の受け皿づくりが重要です。当然のことながら、法定後見による支援が要らないということは、その人に権利擁護支援の必要性が全くないということを意味しているわけではありません。

したがって、法定後見とは別の形で、既存の法定代理権による支援や、行為能力の制限による保護を代替できる方策を確立することが必須となります。

24ページです。まず、法定代理権の代替手段を考える上では、地域の社会福祉の仕組みとの協働という視点が重要な鍵になると思います。

本人にとって、より制約の少ない本人の意思に基づいた支援手段としては、本人自身による契約を基盤とした仕組みが考えられます。

具体的には、既存の日常生活自立支援事業を質・量ともに拡充することが、まずは有力な方法となります。

これに加えて、近年、厚生労働省が進めている持続可能な権利擁護支援モデル事業が注目されています。これは、25ページに簡単な図がありますが、本人の意思決定支援を担う意思決定支援サポーターの関与の下で、代理権の付与を伴わない簡易な日常的金銭管理サービスを、事業者が実施するというものです。

事案に応じて監督・支援団体による準公的な監督をかませていくことで、事業者の横領などの不正行為の防止も可能な仕組みとなっています。

こうした仕組みに対して評価が難しいのが、近親者らによる事実上の後見の位置付けです。

本人をよく知る近親者によるインフォーマルな支援が、極めて貴重な社会資源であることは間違いないのですが、経済的虐待のリスクなどを考えると、例えば、不動産の売却などの重要な法律行為までも事実上の後見の射程に入れて、事務管理法理などで全て正当化することには躊躇を覚えます。

また、認知症高齢者らの支援を家族に丸投げする、悪い意味での日本型福祉のバックラッシュを招く懸念もあります。したがって、個人的にはこの評価は慎重に考えるべきだと感じています。

26ページに行きます。制限行為能力制度の受け皿としては、差し当たり民法自体による対応と、消費者法制の拡充による対応の二面が考えられます。

民法による対応としては、意思無能力による無効主張と、現代型暴利行為類型として民法90条による無効主張が選択肢となります。

個人的には、債権法改正時に見送られた現代型暴利行為の法制化が最も望ましい解決だと考えています。

私の理解によれば、判断能力不十分者が自ら行った全ての法律行為の効果を否定する必要はなく、判断能力の不十分性に関連して生じた、取引上の脆弱性に相手方が乗じた結果、本人が不当な不利益を被った場面に限定して、その行為の効果を否定すれば十分だと考えるからです。

もちろん、こうした対応は、脆弱な消費者に関する消費者契約法上の取消権を拡充していくことや、更に進んで可能であれば、つけ込み型不当勧誘事案に対する網羅的な受け皿規定を消費者契約法に規定することでも実現できますので、政策的には、こちらも極めて有力な選択肢であると思います。

ただし、民法90条であれば、親族らによる経済的虐待事案などにも対応できる汎用性があるので、ハードルは限りなく高いですが、この点はもう少し考察を深めていきたいと考えています。

27ページです。任意後見の利用拡大策としては、医療同意権や居所指定権といった人格的利益に関する決定権限や、現在の民法873条の3が認めている、死後の事務に関する応急措置的な限定的権限を、任意後見契約の対象範囲に取り込むことも一案ではないかと思っています。

理論的には、いろいろと難しい問題があるのですが、任意後見に関心のある身寄りのない高齢者層が実際に最も大きなニーズを感じているのが、これらの事項なので、これに直接対応できないことが、既存の任意後見の魅力を削いでいるのは事実でしょう。

さらに言えば、任意後見という信頼性の高い正規の手段によって、こうした中核的なニーズに対応することができれば、隙間産業的に勢力を伸ばしている一部の悪質な身元保証業者に対する牽制としての役割も果たすことになるのではないかと思います。

また、少し視点が変わりますが、任意後見はもともと重装備でコスト高の仕組みなので、幾ら要件を緩和して利用コストを下げていっても、通常の委任契約で同様のことができるのであれば、単純な市場競争では、任意後見に勝ち目は薄いようにも思います。

資産の少ない多くの高齢者にとっては、日常生活に使う一般的な普通預金や、せいぜい定期預金の管理ができれば十分であることを考えると、近時広がり始めた銀行取引における代理人届などによる簡易な代理制度に、適切な規制をかけることも重要な政策課題ではないかと思います。

28ページ、最後になりますが、これからの高齢消費者の支援、保護に当たっては、民法と消費者法制の有機的な連携や連動を考えることはもちろんですが、これに加えて、社会福祉法制や制度化されていない地域福祉との連携を視野に入れることが、有益ではないかと考えています。

ここでは、成年後見の運用における権利擁護の地域連携ネットワークと、消費者保護の見守りなどのためのネットワークとの連携なども必要かもしれません。

また、今後の認知症高齢者の支援を考える際には、消契法などによるピンポイントの事後的救済の保障に加えて、継続的な支援のベースラインの確立が課題になると思います。

つまり、状況的な脆弱性に陥りやすい人々に対する伴走型の支援を、どのように法的に担保していくかを考えることが大切であると感じています。

以上、雑駁な感想になりましたが、これで私の報告を終わります。

御清聴ありがとうございました。

○鹿野委員長 どうもありがとうございました。

これより、今まで頂戴した御発表、御報告に関して、質疑応答と意見交換を行いたいと思います。

時間は、15時20分頃までを目処にしたいと思います。

なお、地域ネットワークの連携に関しては、資料配付のみとなっておりますが、こちらに関しても、もし御質問があればお願いします。いかがでしょうか。

小野委員、お願いします。

○小野委員 小野でございます。先生方には御説明いただきまして、ありがとうございました。

地域で暮らします判断能力が不十分な消費者に日常的に寄り添うという意味では、成年後見制度の大切さもよく分かりましたし、また、それと連携した形で社協が担っておられます日常生活自立支援事業、中でも日常的金銭管理サービスとの連携が大切だと分かりました。

また、全社協の水谷様の御説明では、一方で、ニーズに体制が追いついていないといった課題なども整理いただきまして、改めてよく理解ができた次第でございます。

本日は、高齢化等への対応というテーマではありますが、どうしても消費生活上の課題を抱える当事者について考えました場合には、認知症などのある高齢者だけではなく、やはり知的障害とか精神障害といった事情を抱える消費者も多いと思っています。

そう考えると、改めてなのですけれども、高齢者だけの議論に限らないほうが現実的な対策を考える機会になるかと思っております。

そこで、水谷様に御教示をお願いしたいのですが、御説明の最後に、消費者安全確保地域協議会や、それから重層的支援体制整備事業との関係で、事例の貴重な御紹介を頂きましたが、支援の対象となっている方々というのは、やはり高齢者と、そうではない、例えば障害を持っている人と分けて検討されているのではなく、ニーズの有無で支援の対象者を決めて、そして地域で取り組まれていると思うのですが、そうした私の認識でよろしいかどうかというのを教えていただきたいのですが、お願いいたします。

○鹿野委員長 それでは、水谷様、お願いします。

○社会福祉法人全国社会福祉協議会水谷地域福祉部副部長 ありがとうございます。

2つの事例について、細かくどんな人が対象になっているかというところまで、把握をしていないところでございますけれども、おっしゃるとおり、高齢者だけではなくて、知的障害、精神障害を持つ人についても、同じ仕組みの中でニーズを発見したり、また、支援につないだりということが行われ得るのではないかと思っております。

また、日常生活自立支援事業のほうは、御存じのとおり高齢者だけではなくて、知的障害、精神障害の方も対象にしておりまして、また、手帳がないと利用できないとか、診断がないと利用できないという制約もございませんので、判断能力に少し不安があって、金銭管理や様々な手続に対して支援が必要で、それを支えてくれるような家族や親族が身近にいないという方を広く受け止めているかなと認識をしております。

すみません、ちょっとお答えになっておりませんけれども。

○鹿野委員長 小野委員、よろしいですか。

○小野委員 はい、結構でございます。ありがとうございました。

○鹿野委員長 ほかは、いかがでしょうか。

それでは、黒木委員長代理、お願いします。

○黒木委員長代理 大変貴重な御報告をありがとうございました。

まず、上山先生にお尋ねしたいと思っておりますけれども、消費者庁の令和5年度の消費者白書、これのテーマの1つとして、高齢化社会における消費者被害の問題というのが特集になっております。

その中で、ちょっとすみませんけれども、図表Ⅰ-2-2-16というところがありまして、そこでは、高齢者の消費生活相談の販売購入形態別割合の変化というのが年齢区分別に出ておりまして、この中では、85歳以上とかになってくると、圧倒的に訪問販売であると、店舗購入販売はほとんど減ってきている。

しかもその中で参考というところで、認知症等の高齢者という枠がありまして、これでは32.2パーセントが訪問販売という形になっております。そして、続いて電話勧誘販売という形で、先ほど秋山先生もおっしゃいましたけれども、独居で、かつ独りでいらっしゃる、そういう人を狙って、こういうようなターゲティング的に、そういう社会的に脆弱性の高い高齢者あるいは認知症を持っている人たちに対して、一種の事業者が極めて強烈に勧誘行為をして、トラブルを起こしているのではないかというのが、この白書でも見て取れると、僕は思っております。

そのような観点で考えたときに、意思決定支援というのは必要なのだと思いますけれども、例えば、特商法に基づくクーリング・オフとか、こういう話も、本人がクーリング・オフ期間内に認識して、取消権を行使する、その意思決定である、その支援だということになってしまうと、これは極めて、ある意味では特商法が持っているような消費者保護の規定が脆弱であるがゆえに、そこまで追いつかない人たちにとっては、やはり機能しない。

したがって、包括的な代理権を持ってしまうことによって、あるいは無効であるという形で、今の特商法とプラス、法定後見とかによって守っている部分が、過量販売取引に関しての消費者契約法の取消権が設置されたのも、こういう高齢者に対して、意味もなく山のように健康食品を買わせているという事例が報告されたことによって、改良されたところがありまして、その辺りのバランスについて、特に上山先生のほうで御意見があったら、教えていただきたいというのが1つです。まず、お願いします。

○鹿野委員長 それでは、上山先生、お願いします。

○新潟大学法学部上山教授 例えば、認知症高齢者あるいは認知症が発症しているかいないかに関わらず、身寄りがないために、訪問販売などのターゲットになりやすい人たちの保護の必要性というのは、当然、研究会の中でも想定して議論をしています。

そのときに、例えば、現在の仕組みですと、成年後見類型は、一切合切財産管理についての法律行為の代理権を後見人が持つと。そして、日常生活に関する行為以外については、全て取消権の制約を御本人が受けるという形になっています。この点が、実際に保護の必要な部分を超えて、過剰保護、過剰干渉になっているのではないかという認識が大前提としてあります。

そこで、もし実際に、ある認知症高齢者の方が繰り返し同様の訪問販売の被害に遭っているような場合には、その部分についてだけ、例えば、代理権や取消権を付与するという仕組みが考えられないかということが検討されていることになります。

今の研究会で、全部を意思決定支援によって賄おうとしているわけではなくて、現在、民法が認めている代理権や取消権についても、必要最小限の範囲では残す。ただ、その残し方、その要件の絞り方などをどうしようかというところで、今、悩んでいるところになります。

○黒木委員長代理 ありがとうございます。

そういう議論だということは分かっているのですけれども、消費者被害の現場にいる立場からすると、弁護士として、要するに、オオカミが世の中にいっぱいいるのに、羊も羊、しかも弱った羊を放置しておいたら、そこを守っているのが成年後見という側面が間違いなくあって、そもそも家に入れないみたいな形で成年後見というのは機能しているところがあります。

そうすると、オオカミがいっぱいいるというのが、このEUみたいな形で、ある程度その事業者に対するそもそもの規制が、きついところであれば、一定程度の意思決定支援というのは、理念としても正しいだろうと思うのですけれども、そこの辺りの消費者保護行政制度が弱い、先生もおっしゃったとおり、現代型暴利行為に関しては、民法で散々議論した挙げ句、結局、条文化できなかった。あるいは、つけ込み型に関しても、パラダイムシフト専門調査会、ここでもやっておりますけれども、そういう形でなかなか先に進まない。

そうなってくると、全部シールドをかけてしまうような法定後見というのがないと、緩めると、悪徳事業者は、そこにどんどんつけ込むのではないかという懸念があるのですけれども、半分意見みたいなものですが、その辺りについて、もう少しそこのバランスをどう取るのかということについて、何か先生の御提案があったらと思うのですけれども、一つ一つ、一々裁判を、例えば保佐型にして、保佐の場合は一つ一つ代理権付与をしてもらって動く、私は保佐もやっていますけれども、そういう形になるのだけれども、どうしても後追いなのです。

それで、悪徳業者はどこかに行ってしまったりとか、破産してしまったりとか、お金がなくなってしまっていますということになってくると、やはり事前規制という形での法定後見というのは、一定機能している部分があるのかなという気もしているのですけれども、その辺りなのですね。

○新潟大学法学部上山教授 御指摘はよく分かります。研究会の中にも弁護士会の代表の方がおられますので、障害者、高齢者関係を専門にされている弁護士の先生方は、今、私が申し上げたような形での御意見である一方で、消費者保護に取り組んできた先生方は、もう少し違った考え方をお持ちなのではないかということは、研究会の中でも確認しつつ進めているところであります。ですから、黒木委員長代理の御発言というのは、私としてはよく分かるところです。

その上でお答えに当たっては、まず、大前提として、幾つか確認しておかなければいけないことがあります。

1つは、現在、成年後見制度がどれだけ使われているかというと、これは御承知かと思いますけれども、総数でも25万件程度にとどまっているわけです。

今、御指摘いただいたような悪質な訪問販売の被害のターゲット数を想定した場合に、実際に法定後見制度でカバーできている分量というのは、極めて小さいものに過ぎないということをまず確認しておく必要性があると思います。

逆に言うと、先ほどのような消費者被害の行為類型として、ある程度限定された対象の保護のために、民法の法定後見制度を幅広く、例えば、100万人とか200万人とかというベースで利用することが望ましいのかというと、これはこれでまた難しい問題がある。

単純に、先ほど御紹介があったように日常生活自立支援事業ですら、実は、現在、6万件程度にとどまっているのは、支援者の数が圧倒的に足りない、専門員らが足りないという現実があります。

成年後見人についても、現在、新規選任の8割は専門職ですけれども、もう既に払底状況だという現実があります。

そうすると、法定後見でカバーするのだというのも、それはそれで、実務的には非常にハードルの高い話だということも考える必要があるかと思います。

あと、ここからは、私の研究者としての感覚になりますけれども、例えば、訪問販売のような、ある程度類型的な取引形態が問題になっているときに、一般法である民法を適用する形で対応するほうが望ましいのか、それとも訪問販売を直接想定した規制を行う、例えば何らかの形でクーリング・オフの行使の支援の仕組み等を、特別法の中に取り込んでいくという考え方もないわけではなかろうと思いますので、そこは政策的な判断として、どちらが社会的なコストとして望ましいかの分析も含めて、もう少し検討する必要性があるかと思います。

バランスに関する御質問の直接のお答えにはなっていませんけれども、私は、今日は一応、現時点での在り方研究会の基本的な議論の方向性をお話しするという立場で参っておりますので、今日のところはこれで御勘弁いただければと思います。

以上です。

○黒木委員長代理 ありがとうございます。

あと、もう一点よろしいでしょうか。

○鹿野委員長 はい。

○黒木委員長代理 今度は、重層的支援体制整備事業と、それから消費者安全確保地域協議会の関係なのですけれども、本日頂きました令和5年度の重層的支援体制整備事業実施自治体の中には、徳島県が1つも入っていないと思うのです。

たしか、去年の資料の中では、小松島市が、その検討をしていたのではないかと思うのですけれども、私としては、消費者庁の戦略本部を持っている小松島市では、消費者安全確保地域協議会は、非常に活性化しているという報告を受けているところでありまして、この2つの事業を、うまく小松島市みたいなところの実験フィールドにしてということが進められると良いなと思ったのですけれども、香川県はあっても徳島がゼロとなったのは、何か事情とかがありますかという点をお尋ねしたい、戦略本部を持っている徳島県だからこそ、全ての自治体、徳島県の基礎自治体には、安全確保地域協議会がありますので、その辺りも含めて教えていただければと思います。

○鹿野委員長 高坂様、お願いします。

○厚生労働省社会・援護局地域福祉課高坂地域共生社会推進室室長補佐 厚生労働省地域共生社会推進室の高坂でございます。御質問ありがとうございます。

まず、徳島県小松島市につきましては、令和5年度は重層事業の実施は見送られていると。これは、自治体ができる事業ですので、自治体の手挙げ方式で実施していただいているのですけれども、実施をするに当たって、私どものほうから申し上げておりますのは、単に事業を始めるというのではなくて、様々な分野の連携、庁舎内、庁舎外を含めてですけれども、連携の体制をしっかりつくって、そして、包括的な相談や、参加の支援、地域づくりに向けた支援というのを、しっかり機能する形で行えるような形をつくった上で予算を組んでくださいということを申し上げております。

自治体によって、その準備は区々でありまして、次年度から実施する予定だったけれども見送りますというケースも珍しくありませんので、そういうことで、5年度は手が挙がらなかったと認識しております。

なお、現在、6年度の実施状況を聞いているのですけれども、6年度には実施するということで、手が挙がっていると認識しております。

以上でございます。

○消費者庁内田地方協力課課長補佐 消費者庁の地方協力課、内田でございます。今の御質問につきまして、消費者庁からもお答えさせていただきます。

御指摘いただいた点は、消費者庁の未来本部で実施しております小松島市で、今年度、民間企業との連携という形でプロジェクトを実施していると承知しておりまして、現在、アンケートなども取って、その結果を取りまとめているところでございまして、そのプロジェクト自体は、今後、取りまとめていくというところでございます。

重層的支援体制整備事業の状況につきましては、今、厚生労働省さんのほうから御説明があったとおりかと思うのですけれども、既に設置している消費者の見守りネットワークの関係で言いますと、見守りネットワークの事務局は、消費者担当部局と福祉担当部局、その部局自体は別々なのですけれども、共同でその事務局をやっているという連携もやっているようでございまして、先生御指摘のような視点は、消費者庁も持っておりますので、引き続きどういった連携ができるかということは、検討していくものだと思っております。

以上でございます。

○黒木委員長代理 ありがとうございます。

令和3年10月1日に、両省庁から2つの連携を図るべしという通達も出ていると考えておりまして、非常に基礎自治体になれば、実際上はやっている人というのは、あまり変わらなくて、やりたい、住民を守ろうという観点は、彼らは全部持っていて、その点では、先ほどの独居の認知症高齢者というのは、いろいろな意味で災害弱者でもあると同時に、災害が起こらない平時であったら、基礎自治体では、そういう悪質事業者のターゲットになりやすい人たちだというフラッグが立っていると思うのです。

そういう形で、いろいろな形での複数の制度をうまく基礎自治体に落とし込んであげるということを是非考えて、令和3年10月1日の通知は、それをお考えいただいていたのだと思っておりますけれども、そういう形で、やっていただけると有り難いと思っているところです。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

大澤委員から、御質問が来ています。大澤委員御自身は、最初に申しましたように、所用のため、もうオンラインから退出されていますが、チャットで御質問を頂きましたので、私が代わりに読み上げさせていただきます。秋山先生に対する御質問です。

貴重な御報告をありがとうございました。途中で退室し、申し訳ございません。お話を伺う限り、高齢者として自立が難しくなる年齢が高くなっている以上、年齢で一律に高齢者の消費者保護を考えるのは難しい一方で、認知症の増加や、高齢者が決して高額取引をしたいと積極的には思っていないであろうこと(関心事項や就労意欲を見る限り)から、年齢ではなく、個々の高齢者の判断能力や財産状況によってサポートの内容が異なるように感じておりますが、そのような理解で正しいでしょうか、という御質問です。

御本人は、後に議事録で拝見させていただきたいということで伺っております。よろしくお願いします。

○東京大学秋山名誉教授 御質問ありがとうございます。

高齢者はもともと年齢で区切れるものではなかったと思いますが、近年、とみに多様化しています。90歳で全く判断能力に問題ない人もいれば、70歳でおかしい人もいるわけで、年齢で一律に区切るのは、あまり有効ではありません。法律においても実際の施策においても、多様化にどう対応していくか、大きな課題であると思います。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

オンラインからお手が挙がっています。今村委員、中田委員、柿沼委員の順番でお願いしたいと思います。

まず、今村委員、お願いします。

○今村委員 2つ質問をしたいと思います。

1つは、後見制度の利用促進の話と、もう1つは高齢社会についてで、利用促進について、先ほどの資料3の8ページに、市町村別に利用促進計画を作るということで、1万人以下の市町村では、実施率が低いということが言われているわけですけれども、今、市町村そのものの人口が減ってきて、こんな難しい問題を対応できる市町村自身が、人口が減ってしまった状態ではできないのではないかと思うのです。

これは、市町村単位とはいえ、1,000人を切っている市町村はかなりありますし、今から10年後には300人を切る、100人を切るという市町村が出てくる中で、絶滅市町村という状態になっていくことを考えると、市町村単位ということにも限界があるかと思うのですけれども、そこら辺を広域でカバーするような広域連合のようなものも考えられるかどうか、お聞きしたいと思います。

もう一つ、高齢社会をそちらに聞いていいのか、厚労省のお一人出ている方に聞けるか分からないのですけれども、認知症対策と認知機能の低下の話と、どう切り分けているのかということを、是非確認したいです。

認知症というのは、基本的に疾病と考えていますので、認知機能の低下とは別物だと、私は思っています。

そうすると、高齢化して、95、100まで来て認知機能の低下しているのは当たり前なのですけれども、それを認知症と呼ぶかというと、普通、お医者さんは呼ばないと思うのです。

その中で「幸齢社会」実現会議の認知症と言い切っているところで、高齢者の認知機能の低下の話を含めているのかどうかということを、是非確認したいところで、この消費者委員会で、今、議論しているのは、認知機能の低下した人を消費者としてどう守るかという話なので、この幸齢社会が、それを網羅する話なのか、疾病対策としての認知症をベースにしているのかというのは確認したいところです。

2点、お答えできる範囲でお願いできればと思います。

○鹿野委員長 厚生労働省に対する御質問ということで。

○今村委員 1問目は、後見制度の普及を担当されている促進室のほうからお願いしたいと思います。

○鹿野委員長 担当はそれぞれで異なるかもしれませんけれども、いずれも厚生労働省宛ての御質問ですね。お願いします。

○厚生労働省社会・援護局地域福祉課火宮成年後見制度利用促進室長 成年後見制度利用促進室です。

1番目の利用促進計画の市町村計画についての御質問ですけれども、市町村計画そのものは、先ほども申し上げましたとおり、ほかの福祉計画と一緒に作ったりすることも可能、例えば、障害者の福祉計画とかと連携させたり、また、地域福祉の計画と連携させたりということもありますので、その計画自体は、やはり市町村単位で作っていただきたいと思っているのですけれども、その取組、例えば最初に申し上げました、中核機関の整備といったものについては、広域で設置しているところもありますので、取組としては広域でやっていただくことも当然可能としております。

また、そういった市町村の取組がなかなか難しいといったこともありますので、都道府県のほうがバックアップするという取組のほうも、厚労省としても進めているところでございます。

それから、2点目の「幸齢社会」実現会議のターゲットの範囲については、申し訳ないのですけれども、直接的に関わっておりませんで、正確なところをお答えできませんので、お答えは差し控えさせていただければと思います。

以上です。

○今村委員 分かりました。

前者のほう、今、計画を作っているところでさえ、これから10年後に劇的に、また、高齢者人口も、人口も減っていくという中で、例えば、奈良県にある野迫川村とか、恐らく、これから100人を切るのです。そういう市町村が、これからどんどん出てくる中で、今までやってきたこともできなくなっていく中で、やはり対策を考えていただく必要があると思っています。

それと、2つ目の質問は、今、出席している方でお答えできないということであれば、是非、消費者委員会の事務局のほうで、これは、疾病対策としての認知症の話なのか、認知機能低下に対する消費者問題全体を包括している話なのかというのは、是非確認をしてほしいと思います。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

それでは、後日、お答えいただけるものについては、よろしくお願いいたします。

今、何かありますか、お願いします。

○厚生労働省社会・援護局地域福祉課高坂地域共生社会推進室室長補佐 今、成年後見室の火宮室長からもお話がありましたとおり、担当がまた別になりますので、事務局のほうから、お答えいただければと思っております。私どものほうの担当でもないもので、すみません、今、お答えするものを持ち合わせておりません。

○鹿野委員長 分かりました。それでは、後日ということでお願いします。

続きまして、中田委員、お願いします。

○中田委員 本日は貴重なお話をありがとうございました。

2点あったのですが、1つは、今村委員の、今、御質問された内容と全く同じ内容だったのですけれども、やはり人口1万人未満の市町村での地域連携のネットワークづくりが遅れているということで、もちろん市町村間の広域連携ということもあるのですが、可能性としては、民間企業との包括連携等の検討は、厚生労働省としては推奨するものでしょうか。

冒頭に、秋山先生から鎌倉リビングラボの非常に良い事例なども御紹介いただきましたので、その点について、まず、1つ伺いたいという点。

2点目といたしましては、こちらも秋山先生よりお話がありました高齢者が従来の高齢者のイメージと変化していてムービングターゲットであり、ライフスタイル及びニーズがすごく多様化している高齢者のニーズに、どのように応えていくかが課題であるという点とともに、水谷様からは、日常生活自立支援のサービスのきっかけが、御本人や親族ではなくて、ケアマネジャーであるとか、地域包括支援センターという当事者以外からの連絡がきっかけであるというお話があったのですけれども、消費者に対して、今後成年後見制度を利用促進していくためのコミュニケーションというのは、どのようなターゲット層に向けて行うことが効果的だと考えられているかということを、お聞かせいただければと思います。

○鹿野委員長 1つ目は、厚労省様への御質問ですね。お願いします。

○厚生労働省社会・援護局地域福祉課火宮成年後見制度利用促進室長 成年後見制度利用促進室でございます。

地域における取組のネットワークの民間企業との連携に関しての御質問でございますけれども、ネットワークについては、私の説明では、専門職団体や地域の相談支援機関といったところを例示として挙げさせていただきましたけれども、ネットワークの関係者については、地域で、それぞれつながる相手を考えていただいていいと考えておりますし、基本計画の中でも、生活支援等のサービス等のサービスに係る民間事業者との連携といったことも、例示として挙げさせていただいているところでございまして、民間企業とのつながりといったものも排除しているものではございません。

○中田委員 ありがとうございます。

○鹿野委員長 2番目は、水谷様に御質問ということでよろしいですか。

○中田委員 そうですね、是非お願いいたします。

○鹿野委員長 はい、お願いします。

○社会福祉法人全国社会福祉協議会水谷地域福祉部副部長 ありがとうございます。

日常生活支援事業の利用者に、どうつながるのかというところですけれども、非常に難しいところだと思っております。

先ほど御紹介した事例の中では、例えば、金融機関において、福祉の関係者がまだ気付いていないような軽度な認知症の方に気付いたりということがありますので、様々な場面で高齢者と接する機会のある、企業も含めたあらゆる主体との連携が今後ますます必要なのかなと考えております。また、判断能力が十分なときから、自らいろいろな情報収集をして、備えようという高齢者の方も増えていると思っておりますので、そこに対する情報提供とか、そういうことも社協としては大事になってくるのかなと思っております。

以上です。

○中田委員 ありがとうございます。

やはり顕在化していないニーズを、どのように顕在化させていくのかといったところが、1つの課題かなと感じておりますのと、今、水谷様から御説明いただいたように、もしかしたら、30代、40代の方々に、成年後見制度という理解を深めていくというのも、将来的な利用者を増やしていくためには、非常に有効なのではないかなと感じます。ありがとうございます。

○鹿野委員長 秋山様、何か付け加えることがありますか。

○東京大学秋山名誉教授 今、おっしゃったことだと思うのです。本人に情報提供し、教育するのが一番です。1つ前の世代は、年を取って分からなくなったら家族が面倒を見てくれる、誰かがやってくれるという観念があったから、自分事として考えていませんでした。現在は、子供には迷惑を掛けたくない、90になっても自分のことは自分でやるという自立志向です。

以前は「死ぬ」ということを話題にするのは縁起でもないと、すぐに話が終わってしまっていました。最後の段階をどう生きるかということも含めてです。人生100年になると、私も後期高齢者ですが、十分生きたなと感じるようになり、死ぬということがそんなに怖くないというか、日常生活でお茶を飲みながら食事をしながら話してもよいと思うようになりました。いろいろな情報を集めて、選択肢の中から人生の最終ステージを自らデザインして決める、寿命が短かった時代の人とは大分違う感覚だなと思っています。したがって、これからのターゲットは、面倒を見る人ではなく、自分自身がどう最後を生きるかを考える人に対して、情報を提供し、サポートすることだと思います。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

続きまして、柿沼委員、お願いします。予定していた時間がもう間もなく来ますので、柿沼委員を最後の御質問ということにさせていただきたいと思います。

それでは、お願いします。

○柿沼委員 柿沼です。手短になりますが、よろしくお願いいたします。

私のほうは、質問を1つと、それからコメントになります。

秋山先生に御質問なのですけれども、高齢者の見守りには、多様な人々の結び付きとか、コミュニケーションを行う環境づくりが必要であると思っております。

秋山先生の御説明から、就労期間が長くなった、望んでいる方が多いということですけれども、これにより民生委員とか児童委員のなり手不足なども、この頃よく問題化されておりますけれども、地域コミュニティが希薄化されていないかとの懸念も考えられます。

これは、逆に申し上げますと、消費者トラブルの発見について、なかなか発見しづらいというおそれがあります。地域コミュニティが適切に回り、行政につなぐ連携についてお考えがあったら教えていただければと思います。これが1点。

それから、今回なのですけれども、身元保証サービスについて、日常生活自立支援事業についてのお話がありましたが、この事業について、知っていらっしゃらない方や、また、きめ細やかなサービスを求められている方は、民間の身元保証サービスなどを検討する消費者もおられます。そういう方が契約後、実際にサービスを受けるまでに時間にかなり経過があります。社会情勢によっては、提供会社が倒産に陥る場合も考えられます。

また、消費者に不利な契約をさせてしまったりとか、実際に利用しようとすると別途費用が掛かったり、中途解約金が高額であったりなどのトラブルも、消費生活センターには寄せられています。

このようなことから、葬儀の互助会のように、身元保証サービスについては、このサービス費用について供託を行ったりとか、あとは協会を設置したり、監視機能をきちんと設けたり、標準約款などの作成も、今回お願いしたいなと思っていたのですが、今回この議論の中には入っていなかったのですけれども、1つコメントとして挙げさせていただきます。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

それでは、秋山様、お願いします。

○東京大学秋山名誉教授 高齢者が就労すると、地元で民生委員や社会福祉関係の任務を担う人が少なくなるかと言うと、必ずしもそうではないと思っています。

私の経験では、70歳を過ぎた人の大半は、できれば地元で働きたいと思っているのです。満員電車で通勤する現役のときのような働き方はもう卒業したいと。歩いて行ける、あるいは自転車で行けるぐらいの距離のところで働きたいと。しかも、年金もありますから、お金第一ではなくて、お金はもちろん有り難いが、自分が住んでいる町のために役に立てればうれしい。例えば、市役所の半端な仕事だとか、教員が疲弊している学校関係で何か手伝うことがあれば、少額の賃金でも、そちらを選びます。

そういう意味で、民生委員やいろいろな有償・無償のボランティアも含めて、地域の中で貢献する、社会とつながって役割を持って暮らしたいと願っている人は少なくないと思います。私たちは、健康寿命の次は、貢献寿命を延ばそうということを言っていますが、シニアが地元で活躍する就労やボランティアの機会を増やしていくことが大事だと思っています。

○柿沼委員 ありがとうございます。

お話を頂きまして、今後、貢献する高齢者が多くなるということを期待しておりますが、現行では、民生委員、児童委員のなり手が不足しているということですので、その辺りについて、良い方法などがあれば教えていただければと思いました。

以上です。

○鹿野委員長 皆様、御説明、御回答を頂き、ありがとうございました。

皆様からの御説明と意見交換を通じて、超高齢社会の現状を認識するとともに、関係する法制度や取組の現状と課題について理解を深めることができました。

本日の委員からの意見も踏まえ、また、私自身の意見も加えながら、若干まとめたいと思います。

まず、全体としてですが、秋山先生からも御指摘のとおり、高齢者一人一人の多様性や働くシニアの増加、高まる自立志向などを踏まえて、これまでは、ともすると画一的になりがちであったところの高齢者の見方を改める必要があると強く感じました。

一方で、独り暮らしや認知症高齢者の増加から生ずる消費者問題の深刻化を踏まえ、早急に抜本的な対応が求められていると感じております。

対応策を検討するに当たっては、デジタル化の進展やAIの出現等の社会情勢の変化を踏まえる必要があると思います。一方で、これらに起因する問題、あるいは、これらを用いた新たな消費者被害が出てきているところも重要ですが、他方で、新たなテクノロジーを使って高齢者をサポートするツールが出てきているのだという御指摘もありまして、しかも、それらは、ユーザーニーズを踏まえて開発が行われてきているということでございました。

このようなテクノロジーも含めて、しかもそれは民間の事業者とのタイアップという可能性もあると思いますけれども、それも含めて、制度と、そのようなテクノロジーの相互補完という可能性も意識しつつ、取組を進めるべきであると感じました。

また、成年後見制度についても、あるいは地域ネットワークについても、担い手不足が深刻な状況にあるということを、本日の議論の中でも確認させていただきました。制度や仕組みを維持するための担い手をどのように確保していくのかということが、重要な課題であると考えます。

2番目に、地域ネットワーク間の連携等に関して、今の問題とも一部重なるところがありますが、改めてまとめたいと思います。

まず、水谷様からの御報告を通じて、社会福祉協議会の活動、それから地域における高齢者支援事業の内容を理解し、消費者の観点からも、これらが重要な役割を果たしているのだということが確認できたところでございます。しかし、社会福祉協議会だけでは解決できない課題があるという御指摘も頂き、連携が重要であるということでございました。

そこで、連携に関してでございますが、1つ、今まではこういう問題について、複数の省庁がそれぞれの政策ごとに、言わば縦割り的な仕組みが存在していて、担い手も重複していたという問題があったように思います。

しかし、御説明によれば、この間、そのような課題を踏まえて、重層的な支援体制整備事業が進められてきているということでございました。ただ、これにつきましては、まだ緒に就いたばかりという感触を得ましたので、今後、これをより広く総合的な連携に発展させていくことを期待しているところでございます。

それから、その点でも質疑応答にも出てきたところでございますが、地域によって実施体制がかなり異なるということで、需要に追いついていないところもあるということでございました。先ほども申しました担い手不足ということもございますし、成年後見制度や自立支援の関係での連携というところなども含めて、うまくいっているところはあるけれども、地域によってはそれがうまく機能しておらず、不十分であるというところがあるように感じられました。

各地域に、基本的には自主的に動いてほしいところも分からないではないのですが、質疑応答でも出てきましたように、自治体の資源の制約ということがございますので、地域ネットワークの効率的な運用に向けたガイドラインの作成等はもちろんなのですが、今村委員などからも御指摘があったように、より広域での取組などが必要なのではないかと感じた次第でございます。自治体の連携努力に依存するだけでは、どうしても自治体間の格差が解消されないところがあると思いますので、それを補うような仕組みづくりということを、是非検討する必要があると思います。

3番目に、成年後見制度についても、本日、お話を頂きました。成年後見制度につきましては、その改正について、現在、議論が進められているということでありまして、その背景や課題とされているところ、あるいは改正の方向性について、まだ最終的に決まったわけではないけれどもということで、お話を頂いたところでございます。

大きなところで言うと、代行決定というところから、本人の決定を支援すると、そういう方向へと変わろうとしているというお話でございました。ただ、全てそちらに移行するということになると、本日の黒木委員長代理からの質問と議論でもありましたように、少なくとも消費者保護の観点からは、問題が出る可能性があります。それを補うような対策を講じるなどをしない限りは、成年後見制度の改正を進めて本人の意思決定支援ということに置き換えてしまうことについては、問題もありそうだということも議論されたところでございます。

いずれにしても、従来、高齢者等の消費者被害の防止や権利保護の観点から、成年後見制度は重要な制度でございましたし、この改正の動向についても、こちらでも注視していきたいと思っているところでございます。

その上で、制度自体の改正も重要なところなのですが、成年後見制度の更なる利用促進を図ることも重要であると考えております。この制度の利用促進のために、本日、厚労省からお話を頂きましたが、更なる広報の充実や制度運用の柔軟化を進めることが必要であるように感じました。

さらに、任意後見制度については、より一層利用が低調であるというお話があったところであります。

この点については、1つには、制度として利用を阻害する要因というのはどこにあるのかということを把握し、当該要因を可能な限り取り除くことが必要であると思います。同時に、本人保護に逆行するようなことにならないように留意する必要はあると思いますが、利用が促進されるような形での制度の見直しがなされるということに期待したいと思います。もう一方で、制度自体を変えるということだけではなく、利用促進のためにできることがまだあると思いますし、今も取り組んでいらっしゃるということですので、その点にも大いに期待したいと思っています。

4番目に、消費者法制度の在り方との関連での議論もありました。成年後見制度、任意後見制度や地域ネットワーク等の仕組みは重要なのだけれども、これらのみでは、消費者という観点での高齢者への対応は十分ではない。どうしても被害をゼロにすることは難しいので、それを補完するものとしての消費者法制が重要であるという御指摘もあったところでございます。

先ほども申しましたように、成年後見制度については、本人の自己決定を尊重する方向での改正議論が行われているようですが、その議論の動向を注視しつつも、高齢者等の消費者被害の未然防止、拡大防止、更には被害の回復などに関する消費者法制度の在り方あるいは運用の在り方について、更に検討することが求められていると思います。そういう意味での消費者行政が果たすべき役割の検討も行っていくべきだと考えております。

5番目に障害者についてです。本日は高齢化への対応を中心に御報告及び御意見等を頂いたところでございますが、小野委員からの御指摘と質疑応答にもありましたように、成年後見制度や地域ネットワークが見守る対象というのは、高齢者だけには限らないのでございまして、障害のある方など、日常生活に支援の必要な様々な消費者についても目を配り、対応を検討していくことが必要であると考えております。

なお、身元保証等高齢者サポート事業についても、柿沼委員からも言及がなされ、私も冒頭で少し触れたところでございます。

これについては、冒頭で言いましたように、消費者委員会から平成29年に建議を発出しており、この間、総理を議長とするところの会議における検討が進められてきたということでございまして、昨年の12月25日の会議において、一定の取りまとめが決定されたと承知しているところです。

その取りまとめでも、幾つか注目すべきところがあるように見ておりますので、本委員会としても、これらの対応に期待しつつ、注視したいと思います。また、これについては、日程調整ができれば、別途項目立てをして、ヒアリングの機会を設けることにしたいと考えているところです。

令和7年度から始まる次期消費者基本計画については、消費者庁を中心に策定に向けた準備が進められていると承知しているところです。

当委員会としては、本日、委員から出た意見も踏まえ、次期基本計画に盛り込むべき中長期的な課題等について検討し、取りまとめを行っていきたいと考えております。

本日御出席いただいた皆様におかれましては、お忙しいところ、誠にありがとうございました。


《3. 閉会》

○鹿野委員長 本日の議題は以上になります。

最後に事務局より、今後の予定等について、お話を頂きます。

○友行参事官 次回の本会議の日程と議題につきましては、決まり次第、委員会ホームページを通してお知らせいたします。

なお、前回の会議におきまして、法や執行体制の及んでいない事業者の対応について取り上げた際、次回の本会議において、海外OTAに対する規制の状況などについて審議する旨、お知らせいたしましたが、諸般の事情により、日程を再調整することになりました。こちらについても決まり次第、委員会ホームページを通してお知らせさせていただきます。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

本日は、これにて閉会とさせていただきます。お忙しいところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございました。

(以上)