第419回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2023年12月19日(火)10:00~11:50

場所

消費者委員会会議室及びテレビ会議

出席者

  • 【委員】
    (会議室)鹿野委員長、黒木委員長代理、今村委員、柿沼委員、中田委員、山本委員
    (テレビ会議)大澤委員、小野委員、原田委員
  • 【説明者】
    経済産業省商務情報政策局産業保安グループ 佐藤製品安全課長
    こども家庭庁成育局 鈴木安全対策課長
    こども家庭庁成育局 向母子保健課課長補佐
    消費者庁 北島消費者安全課課長補佐
    緑園こどもクリニック院長、NPO法人Safe Kids Japan理事長、第25期日本学術会議特任連携会員 山中氏
    東京工業大学工学院機械系教授、NPO法人Safe Kids Japan理事、日本学術会議連携会員 西田氏
  • 【事務局】
    小林事務局長、後藤審議官、友行参事官

議事次第

  1. 消費者基本計画の検証・評価・監視(子どもの事故防止)

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1. 開会》

○鹿野委員長 皆様、おはようございます。

定刻になりましたので、ただいまから第419回「消費者委員会本会議」を開催いたします。

本日は、黒木委員長代理、今村委員、柿沼委員、中田委員、山本委員、そして、私、鹿野が会議室にて出席しております。

大澤委員、原田委員、小野委員はテレビ会議システムにて出席されております。

星野委員は本日御欠席と伺っております。

それでは、本日の会議の進め方等について事務局より御説明をお願いします。

○友行参事官 本日もテレビ会議システムを活用して進行いたします。

配付資料は議事次第に記載のとおりでございます。もし、お手元の資料に不足などがございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願いいたします。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございました。


《2. 消費者基本計画の検証・評価・監視(子どもの事故防止)》

○鹿野委員長 本日は、消費者基本計画の検証・評価・監視の一環として、子どもの事故防止について御議論いただきます。消費者の生命・身体事故の未然防止のためには、事故情報を収集・分析し、これを活用することが重要であり、当委員会においても、平成29年8月に「事故情報の更なる活用に向けた提言」を発出しております。人口動態統計によりますと、0から14歳までの子どもの不慮の事故は病気を含む全ての死因の中で上位を占め、この傾向は変わっていないということが指摘されております。また、交通事故を除く事故発生場所は家庭内がほとんどを占めているということであります。

そこで、本日は、子どもの事故及び事故情報収集の現状や課題を確認するとともに、関係省庁における事故防止に向けた取組について御報告いただき、行政機関や関係事業者が対応すべき点などについて意見交換を行いたいと思います。

本日は、関係省庁として、こども家庭庁成育局安全対策課の鈴木課長、経済産業省製品安全課佐藤課長に御出席いただいております。

また、有識者として、緑園こどもクリニック院長であり、NPO法人Safe Kids Japan理事長、第25期日本学術会議特任連携会員でもいらっしゃる山中様、そして、東京工業大学工学院機械系教授で、NPO法人Safe Kids Japan理事、日本学術会議連携会員でもいらっしゃる西田様に御出席いただいております。

また、質疑対応のため、消費者庁消費者安全課北島課長補佐、こども家庭庁成育局母子保健課の向課長補佐にも御出席いただいております。皆様、オンラインでの御参加であります。お忙しいところ、どうもありがとうございます。

本日の進め方ですが、まずは山中様、西田様から日本学術会議において取りまとめられた報告書・意見の内容や、御自身の御研究に基づく御意見・提言等についてお話いただき、次に、こども家庭庁から子どもの事故防止に関する取組状況や、今後の取組予定、関係府省庁との連携状況についてお話いただき、さらに経済産業省から子ども用製品の事故防止等についてお話いただきます。

これら全ての御発表が終了したところで、全体としての質疑応答・意見交換の時間を40分程度取らせていただく予定です。

それでは、早速ですが、山中様、西田様、よろしくお願いします。

○山中氏 紹介をありがとうございました。Safe Kids Japanの小児科医の山中と申します。今日は消費者委員会で話をする貴重な機会を頂き、ありがとうございます。

それでは、私が作成しましたスライドを共有させていただきたいと思います。

今日の消費者委員会では、「こどものケガを減らす」という話を10分間、最初に私からさせていただいて、その後、西田さんから具体的な解決方法、予防方法をどのように進めているかという話をさせていただきたいと思います。

ここに書いてありますように、第25期の日本学術会議は今年の9月末で終了しまして、現在第26期が始まっております。第25期の子どもの成育環境分科会では、子どものケガを減らすためのシステムについて検討しました。そして、9月末に見解を発出いたしましたので、それについてお話をしたいと思います。

いろいろな対策を考えるためには、まずは実態を知る必要があります。以前は人口動態統計という死因統計のデータしか得られなかったのですけれども、最近ではいろいろなデータを知ることができます。例えば日本スポーツ振興センターの災害共済給付というシステムがあります。これは就学前の子ども、あるいは小中高の子どもたちが家を出て学校生活、保育生活をしてから家に帰るまでの間に病気になった、あるいはケガをして医療機関にかかり、5,000円以上の医療費が掛かった場合について災害共済給付金、すなわち保険金を支払うシステムです。小中高の子どもたちはほぼ100パーセント近くこのシステムに加入していますし、就学前の子どもたちは85パーセントぐらい加入しています。

昨年度の加入人数は1,600万人をやや下回る1,590何万人が加入しています。毎年、それぞれの施設で災害共済給付金を支給した発生件数、発生率が出ています。4から5年前までは年間に100万件の支給でしたけれども、最近は年間に80万から85万件です。2020年にがくっと減ったのは、コロナのために学校生活が制限されたからです。就学前の子ども、例えば保育所の災害共済給付の発生率を見ますと、下二桁がちょっと動くだけなのです。2.1とか2.2とか2.3、こども園もほとんど同じ、幼稚園も毎年同じです。就学前の子どもたちはコロナによる保育生活の制限がありませんでしたので、ずっと同じ発生数になっていることがお分かりになると思います。

この災害共済給付の90パーセント以上はケガによるものなのです。病気ではありません。コロナ以前は、小学校は5パーセント、中学校は10パーセント、高校は8パーセントと、ほぼ同じ発生頻度になっていることがお分かりになると思います。1,600万人ぐらいを対象としたデータです。

他のデータとして、例えば、東京消防庁は年間に70万件ぐらい救急出動、救急搬送をしているのですけれども、そのうちの12万件ぐらいは日常生活事故による救急搬送です。救急搬送数は毎年報告されているのですが、0歳の赤ちゃんは大体500人前後、1歳になると600人、2歳になると500人、ほとんど同じ数が発生しているのがお分かりになると思います。この情報はインターネットで簡単に見ることができ、毎年報告されています。

0歳の子どもがどこから落ちたかというデータも見ることができます。第1位はベッドです。御覧になりますように、毎年ほとんど同じ数、150から160人という数字が並んでいる。2番目は人から落ちた、3番目は階段、ソファです。0歳の赤ん坊が落ちるというのは、普通は歩けませんので、どこかに寝かせているのでしょうけれども、同じようなことが起こっている。

1歳を見ますと、これも同じ数字が並んでいます。1位は階段、2位は椅子、2歳も同じで階段、椅子です。子どもたちは、学校生活においても、あるいは一般家庭においても、学校関係者、あるいは保護者は、十分気を付けて子どもたちのケアをしているはずなのですけれども、データで見る限りはほとんど変化がないのです。いろいろなところで予防活動が行われていると思いますけれども、残念ながら効果がないということになります。

これらの事故に対して、交通事故はきちんとしたシステムができていて、きちんとした評価が行われているのです。例えば1970年、交通戦争と言われ、1万7,000人弱の人たちが交通事故によって24時間以内に死亡していました。そのため、対策基本法を制定して、以後、5年ごとに目標値を立ててきちんと対策を行っています。首相をトップとする中央交通安全対策会議が設置され、専門委員がきちんと目標値を立てて対策を行っているのです。

交通事故総合分析センターを設置して、そこにデータを集めて分析を行って、その結果によって法律を変えたり、いろいろな規則を変えたりしています。現在は、2025年までの第11次だと思いますけれども、年次計画で24時間以内の死者数を2,000人以下にするという目標が掲げられています。多分、来年1月の第1週には、前年度の24時間以内の交通事故による死者数は2,600何人とかと出るはずです。数値で評価が行われています。

交通事故対策はすごくうまくいっていると私は考えています。この図は昭和23年からの交通事故のグラフですけれども、近年では死亡数は毎年減っていますし、事故の発生件数も今は30万件ぐらい、ケガをした人は35万人と、きちんとしたデータを見ることができます。

もう一つが労働災害です。これは労働安全衛生法という法律に基づいてきちんとしたデータが出ているのです。全国の労働者の数は現在6,700万人ぐらいでしょうか。5年ごとに労働災害防止計画が立てられ、最近は労働災害による死亡数は1,000人を切って744人、休業4日以上という事故件数は少し増えていますけれども、これも数値で評価が行われている。この図が労働災害のデータですが、死亡数はどんどん減っています。きちんとした対策が取られているからです。

子ども、高齢者に関しては、何人ケガをしているのか、実態が全く分かっていないというのが現状です。外因による人々の健康被害として、きちんと考えなければいけないのではないかと考えております。

いろいろなところで、いろいろ取り組まれているかもしれませんが、疫学的な数値を見る限り、今の予防活動は機能していないのではないか、これを何とかしなければということで、私は37から38年、子どもの事故を予防するために活動してきたのですが、どれもうまくいっていない。その理由を考えてみました。

子どもがケガをしたとき、それぞれの立場の人がどういう対応をしているのか見てみましょう。

ほとんどの保護者、例えば1から2歳の子どもを持っている保護者は、「私が注意しているから、絶対にうちの子にはケガは起こらない」と考えています。一方、子どもがケガをすると、「私が見ていなかったから」と自分の責任にしてしまい、どこにも伝えない。あるいは「伝えると、自分が非難されるのではないか」と考え、伝えたくない。子どもが生まれて5から6年経って小学生になれば、乳幼児期のケガのことは忘れてしまい、次の予防につながる情報にならないのです。

救急隊は重傷のケガ人を運ぶのが仕事です。彼らはケガ人を安全に医療機関に運ぶことが仕事なので、予防のことはほとんど考えていない。病院の入り口で、医師にケガ人を引き渡すとき、医師に「重傷」とか「軽傷」という項目に丸をしてもらって帰るだけで、病院に搬送したケガ人に、どういう処置をしたのか、入院したのかなどの情報は全く得られない。

医療機関では、とにかく治療が大切ということでいろいろな処置をしているわけで、予防のことまでとても手が回らない、考えていられない。

学校や保育園では、いつも「安全を最優先、安全第一」と言っていますけれども、「人が注意すれば防げる、人の努力だけで予防できる」と考えているので、同じ事故が起こり続けている。

重傷事故では、刑事裁判、民事裁判になることがありますが、裁判の場では近くにいる人の責任だけを追及して罪状を決め、損害賠償金額が示されます。責任があると決めた裁判結果が、次の同じケガの予防につながったかという評価はされず、評価するシステムもありません。

行政は、現場と遠く離れているので、直接関与することはできず、管轄しているという立場から「事故が起こったので十分注意されたい」という通知を出すだけで、通知を出せば自分の役割は果たしたと考えています。環境や製品はそれぞれ管轄が決まっているので、管轄でないものには一切関わらない、関われないのです。

国会議員や地方議員は、一般論として「安全・安心」と言っていますけれども、票につながるわけではないので、それほど熱心ではない。

企業にはケガの情報は入ってきません。なぜなら、保護者は自分が注意しなかったせいで、製品や環境の問題とは思っていないので、事故の情報を会社に提供することはありません。事故の情報が入ってこないので、企業は安全に使用されていると考えています。多くの場合、厚い取扱説明書の中で注意事項を指摘しており、消費者はそれを守っていると思っている。製品を改善しても高くなると売れないし、収益につながらないので、製品の改良にはそれほど積極的ではない。

日本社会全体が、子どもの事故が起これば、「親の責任、親の不注意」と言っているだけで、こういう状況がずっと続いている。これでは、今後も何も変わらないのではないかと私は思っています。これは、あくまでも私の個人的な考えです。

欧米では、20年ぐらい前からAccidentという言葉を使わなくしているのです。英語のAccidentという言葉には、「予測できない、避けられない」という意味が含まれているのだそうです。先ほどデータをお見せしましたように、何歳になったら、どんな事故が起きるかはほぼ分かっているのです。そこで、欧米ではInjuryという言葉を使うようにしています。「事故」という言葉を使っていると、その意味が伝わらないので、私はInjuryの訳語として、「傷害」という言葉を使うようにしています。

人口動態統計の表を見ると、「不慮の事故」と書いてあるのですが、「不慮」と言ったら何もできない、たまたま運が悪い事故となります。そうではなく、予測でき、予防可能な事象として、「予期しない傷害」と言葉を変える必要があると思います。

いろいろなところで「事故を予防する」と言われています。例えば、事故予防のリーフレットを配って、何枚配ったという活動を「予防している」と思っている人がいますけれども、それは予防とは言えない。そこで、子どものケガを「予防する」ではなくて、子どものケガを「減らす」という言い方にして、「評価」という視点を入れた言葉を行き渡らせなくてはいけないと思っています。

子どもの死亡に関しては、チャイルド・デス・レビューという事業が2020年の4月から幾つかの地方自治体で始まりました。もともとは1980年頃から、子どもが虐待されて死亡した場合、それがきちんと検証されていないということで、アメリカで始まった検証システムです。現在では世界の数十か国で、子どもが死亡した場合には、その死を活かして次の予防に結び付けるためのチャイルド・デス・レビューという事業が行われています。事業というか、それが法律で決まっているのです。

この「チャイルド・デス・レビュー」と「死因究明」は違うということをお話ししたいと思います。死因究明というのは、その子どもなり、その人が亡くなった原因を調べて、調べたところで時間はストップしてしまうのです。チャイルド・デス・レビューは、死亡したことを検討し、次の死亡を予防するためにはどうしたらいいかという、死因究明から先の時間について検討するのです。

現在、モデル事業が行われているのですが、あまりうまくいっているようには見えない。チャイルド・デス・レビューというのは死亡個票など、死亡したデータを集め、行政が検証委員会みたいなところを設定し、そこに医療機関、警察、あるいは教育関係者など、いろいろな職種の人を集めてディスカッションする場なのですけれども、その検証委員会の場に警察の情報がほとんど入らないのです。これが一つの問題です。あと一つは、遺族の同意の問題です。虐待の場合はなかなか難しい。虐待した親が同意することはないと思います。

事故に関するチャイルド・デス・レビューでは、大体8から9割は予防できると言われています。事故による死亡に関しては、いずれチャイルド・デス・レビューの場で検証すれば、予防につながると思っています。この遺族の同意と、警察情報の開示の問題は法的にきちんと確保しないと、チャイルド・デス・レビュー事業はうまくいかないだろうと思います。

チャイルド・デス・レビューのモデル事業はそろそろ4年近く経つのですけれども、今までの検証事業の総括、どういう効果があったのか、どこが問題なのか、どういう限界があるのか、それらをきちんと評価する必要があるのではないかと私は考えています。

あと、事故の問題に関して、社会的なコストがこれまで検討されていないのです。社会的なコストとして莫大な費用が掛かっているということが分かれば、それに対する取組も行われるようになると思います。例えば、電気ケトルによるやけどでは、1年間に500万円もの医療費が掛かる。電気ケトルの構造を変えた湯漏れ防止機能付きのものしか販売できないようにすれば、やけどは起きない、起きても軽傷で済むのではないかと思っています。

これらの問題を整理し、2023年9月末に日本学術会議から見解を出しました。大切なことは、活動を評価する必要があるということです。私は子ども関係の事故の予防に関わってきましたが、交通事故と労働災害のようにきちんとしたシステムを作る必要があるのではないか。子どもだけでなく、高齢者も含めた「日常生活事故」としてまとめる。がんに対しては、がん対策基本法がありますので、それと同じように日常生活事故対策基本法という法律を制定することが必要ではないかと思っております。

あと、子どもに関しては、子どもの事故の全てに関与してほしいこと、それから、情報収集システムを構築して、情報を分析する研究機関を設置し、子どもの行動観察など基礎的なデータも収集して、地域でいろいろな傷害予防プロジェクトを展開していく。さらに、予防策が現場にうまく伝わっていない現状を改善するために、いろいろなメディアを使うことも考える。見解の最後に、日常生活事故対策基本法の制定が必要ではないかとまとめました。私からの話は以上です。御清聴ありがとうございました。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

続きまして、西田様、お願いします。

○西田氏 よろしくお願いします。それでは、私のほうも画面共有させていただきます。

私から、特に今、山中先生からデータの現状とか、課題についてお話があったのですけれども、これを予防につなげていくというところのお話をしたいと思います。

子どもに限らず高齢者もそうなのですけれども、生活機能、頭の機能とか、体の機能が変わっていく人たちへの安全を考えていく時代になってきていると思っています。今日は子どものトピックがメインかと思いますけれども、同じ問題が高齢者に当てはまると思います。昨日できたことが今日できなくなるとか、昨日できなかったことが今日できるという具合に変わっていく人に対して、どう安全の問題を扱っていく、これが非常に問われている。日本はここを切り開いていく必要があると思っています。

2006年に山中先生と一緒に提案したもので、消費者庁発足の3年ぐらい前かと思いますけれども、安全知識循環という考え方を提案しました。データを収集、分析して、それを安全の知識に変えて普及させていくという一巡するのが大事だということで提案をしています。こういう仕組みが消費者庁を中心に出来上がってきているかなと思います。これまでに、課題も見えてきているというところで、今日はその話をしたいと思っています。

この20年で何が変わってきたかということなのですけれども、技術の進化が相当あるかと思っていまして、メモリーも20年前は1テラバイト2万円もしたのが今200円以下とすごく安くなっていますし、AIもChatGPT、生成AIに代表されるものが、ただ同然で使えるような時代になってきている。それから、当時はクラウドサービスや、AI関連のサービスはほとんどなかったし、それから、iPhoneのようなものもあまり普及してなかったような時代だったかと思います。今、いろいろなものができるようになってきているということです。

まず、安全分野でできるようになったことです。事故データの分析技術に関しては、リスクアセスメントが進化しました。

私が参加したもので、経産省で作成されたリスクアセスメントのハンドブックがありますけれども、いわゆるR-Mapという傷害の大きさと傷害の件数で両方高いものはプライオリティが高いというような考え方があります。従来のいろいろな製品について行われているものです。これは遊具の例ですけれども、雲梯が上のほうにある、ジャングルジムよりも重傷度が高いとか、鉄棒のほうが重傷度が高いなど、製品ごとに分析できるような技術があります。最近はテキストマイニング、AIを使うことによって、鉄棒の中でもどの状況がまずいかということ、そういう状況まで踏み込んで細かく分析することができるようになっています。これは自由記述文を用いることで、落下して手をついて骨折したとか、鬼ごっこをして鉄棒をくぐろうとしたら気付かずに頭をぶつけたり、歯が折れたというような文章があるのですけれども、それを分析できるようになってきているということで、非常に細かい分析ができるようなってきている。

そうすると、予防に関して言うと、鉄棒が危ないから撤去というのではなくて、どのようにそれを対策したらいいか、例えば、周りで遊んでいるときに気付きやすいように、鉄棒の茶色のさび付いたような色ではなく、黄色にするとか、動線を工夫するとか、いろいろなアイデアが出てくるのです。そういう予防につなげやすくする技術が出てきているということです。

それから、情報の伝え方も進化しています。今メタバースということで、VRの環境などを使って、文章で伝えるのではなく分かりやすく、あなたの家に近いもの、例えば集合住宅なのか、一戸建てかを選んでくださいということで、それで年齢を入力すると、その家で起こりそうなものを教えてあげるということが可能になっています。従来の紙とか、そういうものとは違う情報の伝え方ができるようになってきているのです。

それから、最近、画像処理技術も進化していまして、家の中の画像を撮影すると、そこでどういう事故が起こりやすいかということを教えてあげることが可能になっています。画一的な情報を出してもなかなか分かりにくいのですけれども、あなたの家にテレビがあって、これが固定されていないから倒れてくるので、固定のためのこういうグッズを買うと、非常に安く簡単に対策ができますということを教えてくれるというようなことも可能になってきています。従来の紙とか通達などを超えたような情報の伝え方ができるようになってきているかなと思います。

さらに先の話ですけれども、カメラが今普及しているので、それを使うと、子どもが何をしているのか、炊飯器をのぞいてやけどが発生しそうですとか、電気ケトルをつかもうとしていますというようなことを、リアルタイムで認識して知らせてくれるというような、そういうものも技術的には可能になっています。

こういうものが今できるようになってきているところなのですが、ここからはできていないことです。いろいろできていないことがまだまだあると思っています。一つが、先ほどの例に関連しますが、テレビを固定すれば転倒の事故が減ります。テレビが転倒してきて亡くなるというのはアメリカで3週間に1人発生していますけれども、こういうものがなくなる方法を教えても実際はやらないのです。自分で設置するのが難しい、うちに限って倒れることはない、面倒くさいとか、いろいろな理由でやらない。だから、知識を伝えるだけの限界は結構あります。知らないだけではないのです。知ってもやらないことがたくさんあるということで、ここを今後対策していく必要があるのだろうと思っています。

それから、高齢者の事故、今日のトピックと少しずれますけれども、子どもの場合はいろいろなものを遊具化してよじ登って倒れてきてというのが多いのですが、高齢者の場合はいろいろなものができなくなるということで、いろいろなところにつかまって、ある意味で家具を杖化することで転倒事故が起きているということで、こういうところもデータから見えてきているので、高齢者の製品対策もしていく必要があると思っています。子どもの場合と同じような枠組みでできるのだろうと思っています。

それから、できていないことの3つ目です。いろいろな予防法が開発されているのですけれども、役に立つものと立たないものがあるのです。また、対策を実施する上で非常に努力が必要なものがあります。予防の情報の量を問う時代ではなくて質、使いやすくて本当に効果があるものというのを評価していくところが大事になってきていると思います。

これは私が勝手に整理したものですけれども、L3というのが人の努力をあまり必要としないもので効果が高いものと思っているものなのですが、ほとんどないのです。まだまだ個人の注意が必要だし、ポカミスとか、し忘れなどの、対応がほとんどできないものばかりなのです。こういうところは今後改善していくことが必要で、質を問う時代に持っていく必要があるのだろうと思っています。

そんな中、新たな試みです。できない理由が先ほどあると申し上げたのですけれども、それをきちんと調べて、できない人に関しては、例えばアンカーを打つのが嫌だという場合には、こういうものを使うと壁に傷を付けずに倒れない製品があるという情報を提供することで、そのユーザーのニーズに寄り添って情報を出すようなところも必要になってくると思っていまして、この辺りは今後の課題かなと思っています。

それから、転倒・転落に関して、これは高齢者の例ですけれども、いろいろなところにつかまれないから倒れるのです。デザインで工夫するというようないろいろなものが今出てきているのですけれども、こういう新しいデザインを評価する仕組みが必要ではないかと思っています。

今日、御参加されている経産省の佐藤さんと今一生懸命こういう方向でできないかということで相談を進めているのです。この資料は今年の春ということで少し古い資料なのですけれども、新表示制度、良いものが良いと分かるような、安全性に関して従来欠けていたものに対する、予防につながるような機能を持っていますということを明示化できるような表示制度を作ろうとしています。名前はまだ決まっていないのですけれども、新表示制度を作ろうということで今動いているところです。これは一例ですが、産業界を巻き込んで予防策をどんどん進めていくのは大事なのだろうと思っています。

これはまとめの資料です。今日申し上げたのは、細かくは先ほど山中先生が紹介された日本学術会議の見解でも書いてあるのですけれども、ポイントとしては、まず、伝え方の改善です。1枚紙で小さくしても、捨ててしまうし、読まないのです。知らないのか、できないのか、やらないのか、いろいろな理由があるのですが、そういうものに対して予防策を出していく。実は海外のWHOなども出しているのですけれども、支援者が行って付けてあげるとか、そういうのが大事だということを言われていまして、保護者に伝えるだけではなくて、保護者を支援してくれる人を育成するような方向に持っていく必要があるだろうと思っています。

データ分析に関しては、オープンデータ化されていないものはしていく。そう言うと、いつも難しいですとか、同意が取れていないとか、いろいろな課題が出てくるのですけれども、準オープン化でもいいです。こういう人に限って出しますというのもありだと思っていますので、いきなりオープン化ではなくてもいいのですが、是非オープン化に向けて一歩進めるというのは大事かなと思っています。

それから、繰り返しですけれども、予防の質です。効果がないものがありますので、実際には実行できない。例えば、補助錠もベランダに出るたびに何かやるというのでは、どうせやらなくなるに決まっていますから、そういう意味がないものとか、実行できないものではなくて、実行できるものをきちんと評価して、良いものを薦めていく。自動車でもAAAとか評価がありますけれども、そういう制度を作っていく必要があるのだろうと思います。

それから、予防を促す多様な政策ということで、情報提示だけではなくて、それこそ消費者庁さん、こども家庭庁さん、経産省さんなどと多様な政策をパッケージ化していく必要があるのかなと、一気通貫で分析から環境改善までつなげるような政策が必要なのだろうと思っています。

ということで、私のほうからは以上、これまで2009年以降の進んだ点、それから、課題についてお話をさせていただきました。御静聴ありがとうございました。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

続きまして、こども家庭庁の鈴木課長、よろしくお願いします。

○こども家庭庁成育局鈴木安全対策課長 こども家庭庁安全対策課長の鈴木でございます。

それでは、15分頂いていますので、資料に沿って御説明させていただきます。

資料の3、PDFで言いますと3ページになりますが、そこから始めたいと思います。

まず、1の「こどもを事故から守る!プロジェクト(こどもの不慮の事故の防止)」というページです。今年の4月1日にこども家庭庁が発足しましたけれども、成育局安全対策課の業務は、内閣府、警察庁、消費者庁、文部科学省など、様々な省庁から移管されてきています。令和4年度まで消費者庁さんが中心となって取り組んできました「こどもを事故から守る!プロジェクト」につきましては、当課のほうで引き取りまして、取組を行っているところです。

今見ていただいています3ページは、こども家庭庁のホームページに載っている資料ですけれども、「保護者に対する情報のつなぎ(こどもにとって何が危険で、どのように注意すべきか等に関する情報の提供等)」、それから、「地方公共団体、学校等の関係者に対する情報のつなぎ(他の関係者の取り組んでいる様々な事例の紹介等)」、それから、「事故原因となる製品、施設の改良の促進」、この3つを柱としまして、「予防」の観点に立って、「こどもを事故から守る」ことに取り組んでいることが記載されています。

そして、こども家庭庁が消費者庁さんから引き継いだ業務としては、「こどもの事故防止に関する関係府省庁連絡会議」、「こどもの事故防止週間」、「事故防止ポータルサイト」、「こどもの事故防止ハンドブック」、この4つがありますので、以下御説明させていただきます。

4ページ、まず、「こどもの事故防止に関する関係府省庁連絡会議」というものがございます。この会議は平成28年6月の関係府省庁申し合わせにより設置されています。その趣旨について御説明いたします。我が国では窒息や溺水、転落を始めとする事故等によって、14歳以下のこどもが毎年200人ほど亡くなっている。こどもたちの明るい未来のためにも防ぐことのできる事故を可能な限り防止することが必要である。こどもの事故を防止するためには、保護者の事故防止意識を高めるための啓発活動を効果的に実施することが重要であるが、それだけではなく、教育・保育施設等の関係者による取組、こどもの事故防止に配慮された安全な製品の普及等を総合的に取り組む必要がある。こうしたこどもの事故防止に向けて、関係府省庁が緊密に連携して取組を推進するため、「こどもの事故防止に関する関係府省庁連絡会議」を設置する。そのように言われております。

会議の目的は、こどもの事故防止に関連する関係府省庁の連携を図り、こどもの事故の実態及びこどもの事故防止に向けた各種取組等を情報交換する。併せて、効果的な啓発活動の実施、関係者の取組推進のための方策等について検討する、そのようになっております。

従来は年度末に1回開催されるぐらいだったそうなのですけれども、今年度は次に説明いたします「こどもの事故防止週間」に先立ちまして、7月13日に書面開催という形で開催しております。「こどもの事故防止週間」に併せての広報・啓発として、こどもの車内への閉じ込め防止や水難事故の予防、送迎用バスの安全、熱中症の予防といった内容のツイートをすることを決定したほか、こどもの夏休みを見据えた有用な情報発信について関係省庁で情報共有しております。

具体的な内容としましては、花火によるこどもの事故の予防、自転車の乗車用ヘルメットの着用、河川や海の事故も含めての水難事故の防止といったものです。こども家庭庁のホームページにも出ていますので御関心のある方は見ていただければと思います。

今、関係省庁と言いましたけれども、具体的な構成員につきましては、4ページの右側に書いてあるとおりでございます。こども家庭庁のほか、警察庁、消費者庁、総務省消防庁、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、海上保安庁と非常に広範な省庁が参加しています。現在、議長はこども家庭庁の安全対策課長、つまり私でございますが、今年の3月までは消費者庁の消費者安全課長が議長を務めていました。

5ページは「こどもの事故防止週間」です。これも消費者庁さんから引き継いだ事務ですけれども、令和5年度は「こどもの取り残し、置き去りによる事故の防止」をテーマにしまして、7月17日から23日までの1週間、事故を防ぐポイント等についてポスターやSNSなどを通じて広報・啓発を行いました。実施主体は先ほど説明しました「こどもの事故防止に関する関係府省庁連絡会議」のこども家庭庁ほか9省庁となります。今年度のテーマを「こどもの取り残し、置き去りによる事故防止」としましたのは、令和3年、4年と相次いだ送迎用バスの置き去り事故を踏まえてのことです。送迎用バスの安全対策につきましては、昨年10月に策定された「こどものバス送迎・安全徹底プラン」に基づき進めているところですが、自家用車での取り残し、置き去りについても時々ニュースになりますし、特に夏場の置き去りは熱中症の危険があり、命にも関わるということで広報・啓発に努めたところです。事故防止週間の前の7月13日に関係府省庁連絡会議を開催して、広報・啓発の内容について申し合わせをしたところです。

続きまして6ページ、3つ目が「事故防止ポータルサイト」ということですが、これも消費者庁さんから引き継いだものであります。

こども家庭庁のホームページの左側の部分、「こどもまんなか」というところの右側に「政策」というところがありまして、ここをクリックしますと、右側のようになりまして、その中の一つに「こどもの安全」というコーナーがあります。この「こどもの安全」というところをクリックしていただくと、次の7ページの左側のようになっております。この概要の下の赤で囲っている部分、「こどもを事故から守る!事故防止ポータルサイト」というのがございます。ここをクリックしますと、7ページの右、「こどもの不慮の事故を防ぐために」というコーナーに飛びます。ここを見ていただきますと、先ほど御説明しました「関係府省庁連絡会議」とか、「こどもの事故防止週間」、そういった情報が載っています。後ほど説明します「こどもの事故防止ハンドブック」もここに載っています。このほか様々な事故情報、それから、取組事例、応急手当の方法、相談窓口、そういった情報が掲載されております。

8ページ、「事故防止の取組事例」というところを赤く囲っていますけれども、今年の夏は水難事故が非常に多くありましたので、日本ライフセービング協会さんの御協力を頂きまして、この右側に、「守ろう!いのち、学び合おう!水辺の安全」、こういうライフセービング協会さんのホームページにリンクを貼らせていただきまして、直接飛べるようにいたしました。

9ページは先ほど少し言いました、「こどもの事故防止ハンドブック」であります。これもこども家庭庁のホームページから見られます。これは消費者庁さんが作成したもので、今もクレジットは消費者庁と下のほうに書いてありますけれども、これは16ページにわたりまして、0から6歳までのこどもに予期せず起こりやすい事故とその予防法、もしもの時の対処法のポイントをまとめたものであります。

次の10ページに一覧のようになっていますけれども、こちらはこどもの年齢、発達段階に応じまして、上からいろいろな種類、類型別に窒息・誤飲事故、水まわりの事故、やけど事故、転落・転倒事故、車中の熱中症も含めた車・自転車関連の事故、エスカレーター・エレベーターでの事故、刃物によるけがなど、様々な事故について非常に分かりやすく説明されています。

一例として11ページを見ていただきますと、ここは転落・転倒事故についてまとめてあります。年齢別に注意のポイントを示しています。先ほど山中先生や西田先生から御指摘があったような話もこういったところに出ているところであります。先ほど申し上げたとおり、これはまだ消費者庁さんが作った版のままですけれども、今後改訂するときはこども家庭庁において改訂作業を行うことになります。

12ページは関係省庁との連携ということで、先ほど説明しました「こどもの事故防止に関する関係府省庁連絡会議」において、関係省庁の事故防止の取組を報告していただいたり、関係省庁のSNSでの情報発信、これをリポストするなどといった取組を行っています。

13ページ、2の「教育・保育施設等における事故防止対策」となります。教育・保育施設等で発生した事故につきましては、平成27年4月から各施設事業者から自治体に報告されたもののうち、死亡事故といわゆる重傷事故については自治体から国、具体的には制度の所管省庁に報告することとなっています。13ページに載っていますのは8月1日に公表した令和4年教育・保育施設等における事故報告の集計であります。詳しいデータはこども家庭庁のホームページに掲載されていますので、御関心のある方は見ていただければと思います。

こちらは令和4年の数値なのですけれども、残念ながら今年に入っても死亡事故が発生しています。特に私どもこども家庭庁が発足する直前の3月には、睡眠中のうつ伏せ寝による死亡事故が発生し、また、4月にはすりおろしたリンゴを食べていての意識不明事故が発生し、その後亡くなってしまったわけです。いずれも0歳児の事故でした。もともと4月は進級や新入園などにより、各施設においても環境が大きく変わる時期であり、事故が起きやすいと考えられるので、注意喚起の必要を感じていたところですが、残念ながら事故が発生してしまいましたので、4月27日に、「教育・保育施設等における睡眠中及び食事中の事故防止に向けた取組の徹底について」と題して、こども家庭庁と文部科学省の関係課から自治体宛てに事務連絡を発出したところであります。内容については14ページに載せてあります。

次の15ページを見ていただきますと、睡眠中の死亡事故を防ぐために仰向けに寝かせることが重要、1人にしない、といった注意事項、それから、右側は当時の内閣府の子ども・子育て支援調査研究事業で作成しましたポスターです。

続きまして、16ページは給食では使わない食材、食べ物による事故も非常に多く起きていますので、このような注意事項等がガイドラインに沿って記載されております。

それから、危険な部分というと睡眠と食事、もう一つ、水遊びです。今年の夏もいろいろと水の事故がありました。17ページにございますのは、6月7日にプール活動・水遊びに関して、それから、併せて熱中症の事故の予防について、いろいろと資料を発出したものでございます。

最後の18ページにプール活動についての注意、例えばプールの指導を行う先生と、もっぱら監視を行う人とはちゃんと役割を分けること、そういったことが書かれております。

時間の都合もありますので、最後は非常に手短な説明になってしまい恐縮でしたが、こども家庭庁が発足した後に、地方自治体や各施設に注意喚起したものや事務連絡の内容などを紹介させていただきました。これでこども家庭庁の取組についての御説明を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

続きまして、経済産業省の佐藤課長からよろしくお願いします。

○経済産業省商務情報政策局産業保安グループ佐藤製品安全課長 経済産業省の産業保安グループ製品安全課長の佐藤と申します。本日は説明の機会を頂戴いたしまして、大変ありがとうございます。また、先生方や関係省庁の皆様には日頃より経済産業省の製品安全行政に御理解を賜りまして大変ありがとうございます。改めまして御礼申し上げたいと思います。

本日、お時間を頂戴しましたので2点、御説明を申し上げたいと思っております。

1点目が今ほど来、先生方や関係省庁からも御紹介いただきました、こどもの事故防止という点につきまして、また私どもは製品安全の担当部局でございますので、製品安全の観点からの取組を御紹介できればという点についてです。

もう1点、事務局よりインターネット取引の関係についても御説明をとお話を頂きましたので、そちらについても少し御紹介できればと思ってございます。

1ページ目は製品安全行政の全体像でございます。上の四角の中を御覧いただければと思いますが、経済産業省ではいわゆる製品安全4法と言っておりますけれども、製品安全に係る4つの法律の運用ですとか執行を進めるとともに、事業者の皆様の自主的な取組を促していくといったことによりまして、消費者の皆様を製品事故から守るための取組といったものを講じているところでございます。

少し具体的に申し上げますと、1ページ目の真ん中辺りの図表の中、青い点々で囲ってある部分でございますが、事前規制と書いてございます。製品事故の未然防止を目的といたしまして、対象となる製品を製造ですとか輸入されている事業者に対しまして、国に届出をしてもらうとともに、安全の観点からの技術基準への適合を義務付け、適合した場合には、我々はPSマークと呼んでございますけれども、真ん中辺りにPSCのマークがございますが、こういうマークを表示し、逆にこういうマークがないと販売してはいけませんといった規制を課しているといったところでございます。

また、事後規制とさせていただいておりますが、右側の赤い点々で囲った部分でございます。もしも重大製品事故が起きてしまった場合には、同じく製造・輸入事業者に対しまして、国に対して事故の報告義務を課すとともに、再発防止の観点からの原因究明等にも取り組んでいるといったところでございます。

こうした法律に基づく取組に加えまして、1ページ目の下に緑色の矢印があるかと思います。サプライチェーン全体と書いてあるものでございますが、こちらのとおり、事業者の皆様の自主的な取組を促し、かつそれと連携することによって製品安全の確保を図っていくといったところでございます。一例を申し上げますと、右上の白マルの製品安全対策優良企業表彰というものでございまして、我々はPSアワードと呼んでございますが、製品安全に積極的に取り組んでいただいている企業を毎年度表彰させていただいて、その取組を促していくという取組をさせていただいてございます。

2ページ目、今ほど申し上げました法律の概要を少し細かめに記載してございますが、ポイントとなる部分、一番上の黒マルだけ改めてでございます。製品安全4法は被害のおそれがある製品を指定いたしまして、製造する事業者さん、ないしは輸入事業者さんに対しまして、技術基準への適合などを義務付けているといったところでございます。

中ほどに法律の名前が4つほど書いてございますが、製品の特性に応じまして、それぞれの法律において規制を行っているといったところでございます。

3ページ目、参考と書かせていただいてございますけれども、具体的な対象製品の例でございます。4つの法律、電気製品であれば左上の電気用品安全法、ガスの製品であれば右上のガス事業法、LPガスを使う製品であれば左下の液石法、右下のその他の製品につきましては消費生活用製品安全法におきまして規制対象製品を定めておりますけれども、4法合計で493品目を規制対象といたしまして、技術基準の適合等を求めながら安全確保を図っているといったところでございます。

今の説明は製品安全の制度の概要でございましたが、4ページ目以降、昨今の課題と課題を踏まえた検討状況、取組状況について少し御紹介できればと思います。

冒頭に申し上げましたように大きく2点ございまして、1点目がインターネット取引への対応、2点目がこども用の製品への対応といったところでございます。これから申し上げます課題や取組の方向性につきましては、今年の1月から経済産業省の検討会で検討を進めるとともに、10月からは産業構造審議会製品安全小委員会という場に検討の場を移しまして、委員の先生方や業界団体にもオブザーバーとして入っていただきながら検討を進めてまいりました。実は昨日18日にも製品安全小委員会を開催させていただきまして、これから少し御説明申し上げますが、検討の方向性について了承いただいたところでございます。この審議会での議論を踏まえながら、経産省としても制度の具体化を今後図っていければと考えてございます。

5ページ目、大きな1点目でございますが、インターネット取引の関係でございます。インターネット取引における現状の課題と書かせていただいてございます。昨今の製品安全を取り巻く大きな環境変化、これはインターネット取引の拡大に伴うものという認識を持ってございます。下の図表にございますとおり、市場規模も右肩上がりでございますし、全体に占める割合も高まってきているところでございます。

一方、上の青い四角の中の2つ目の黒マルでございますけれども、インターネット上で取引される製品につきましては、事故ですとか違反事例も残念ながら起きてしまっていることが確認されてございます。

最後の黒マルで、今後も利便性などを考えますと、インターネット取引、インターネットの市場は拡大していくことが予想されると思ってございます。こうした中で、インターネット市場において安全な製品が流通する市場としていくことが必要かと考えてございます。

6ページ目、今ほど申し上げたことの一例でございます。重大製品事故、先ほども少し触れましたけれども、こちらはここ数年、年間1,000件程度起きてしまっているところでございます。こうした事故が起きてしまった製品について、どこで入手しましたかといったことをお伺いした際に、インターネット通販経由ですとおっしゃっていただいた割合を少しお示ししてございます。2019年は10.7パーセントという割合ではございましたが、2022年、昨年につきましては19.4パーセントという形で拡大してきているということを課題認識として持っているところでございます。

7ページ目、併せまして、インターネット取引を通じまして新たな取引形態といったことも起きていると認識をしてございます。昨今、インターネットモールなどを通じまして国内外の事業者が国内の消費者に対しまして、輸入事業者などを介さずに直接販売をするといった形態も出てきているという認識を持ってございます。イメージといたしましては7ページ目右下の海外からの直接販売の例という図表が書かれてございますけれども、こちらのイメージでございまして、紫色の海外事業者の方が、オレンジ色のインターネットモールなどを通じまして国内の消費者に直接販売をするといった形態でございます。

冒頭、制度の概要のところで申し上げましたように、製品安全の法律4法は、国内の製造事業者、ないしは輸入事業者に対しまして各種の規制を課すという法体系になってございますので、こうした右下のような流通形態におきましては、製品安全上の義務を果たすべき者がいない、国内に存在しないという形になってしまいまして、製品安全の確保上の課題が生じつつあるという課題認識を持ってございます。

8ページ目、今ほど申し上げたような課題認識を踏まえましての対応の方向性についてでございます。上のほう、まず、海外から直接販売された製品への対応といったところでございますが、初めの白マル、こちらは海外から直接販売する事業者につきましても、現行の製造事業者、輸入事業者と同じように、日本国内に製品を供給する一次的な供給者として捉えることもできるのではないかなと考えてございますので、こうした海外から直接販売をする方に対しましても、規制対象として明確化する方向で検討ができないかと考えているところでございます。

また、その際、その方が海外にいるといったことにも鑑みまして、実効性ですとか、迅速性を担保する観点から、海外から直接販売する事業者につきましては、国内に必要な対応を取る者、国内管理人と我々は呼んでいますけれども、その選任を求めていくということができないかと考えてございます。

また、下の表、インターネットモール等を通じて販売される製品への対応といったところでございますけれども、正に上の白マルでございますが、一部の大手ネットモール事業者におきましては、6月に製品安全誓約(Pledge)に署名されまして、自主的な取組を進めていただいているといったところでございます。こうした自主的な取組を最大限尊重しつつも、誓約に基づく取組をしていない、誓約に署名をしていないという事業者にも対応できるように、消費者の安全確保の観点からネットモールの事業者に対しまして、危険な製品が出品などされている場合には出品削除要請ができるような仕組みを制度的に確保できないかと考えているところでございます。

ここまでがインターネット関係の話でございまして、9ページ目以降が玩具などのこども用製品の安全確保についてでございます。

10ページ目、先ほど来、山中先生や西田先生からもございましたが、こども用の製品でございますので、使い方に非常に配慮が必要といったところございます。誤飲などが起きやすく、通常の製品よりも配慮が必要と認識をしてございます。

現状につきましては、事故が発生してしまっている製品につきまして規制対象としているといったところでございまして、直近では10ページ目の左側、青い枠の下でございますけれども、マグネットセットですとか、水で膨らむボールといったものにつきまして、今年の5月に規制対象として追加をさせていただいたところでございます。

玩具などによる事故の状況について見てみますと、こちらの一番上の黒マルでございますが、消費者安全調査委員会のほうで平成29年11月におまとめいただいた報告書でございますが、こちらによりますと、平成20年3月から29年9月までの間に、約10年間で7件の気道閉塞事故が起きてしまっているという報告を頂いているところでございます。また、この報告書の中でアンケート調査も実施いただいてございますが、それによりますと、玩具による誤嚥事故の経験があると回答されましたケースについて分析をいたしますと、誤嚥事故の8割ぐらいが3歳未満という年齢で発生をしているという傾向も明らかになっているところでございます。

12ページ、国際的にも玩具につきましては国際規格が設けられてございまして、特に上から2つ目辺りの黒マルでございます3歳未満につきましては、誤飲等の危険を防ぐために小さな部品ですとか、小球が存在しないようにという要求もなされているといったところでございます。

13ページ、玩具につきましては海外の多くの国で事故の未然防止の観点から安全規制が導入されてございます。真ん中に少し図表もございますけれども、こういった国・地域で玩具の事前規制が導入されているといったところでございます。日本について申し上げますと、これまでこの分野につきましては、業界における自主基準に基づく取組が行われてきたところでございます。一方で、冒頭の1点目の論点と連動してまいりますが、ネット販売などによりまして、海外からの製品の流入もしやすくなってきているといったことも踏まえまして、日本においても規制を整備しないと、海外からの輸入も含めまして、国内で流通する玩具等の安全性の確保が難しくなってしまうのではないかという課題認識を持っているところでございます。

14ページ、こちらは一つの例でございますが、事前規制があるEUにおいて、域内でリスクのある製品情報を加盟国間で共有するSafety Gateというシステムがございます。これで検索をいたしますと、2022年、昨年に基準違反で販売停止された玩具のうち、窒息等のリスクがあるものも非常に多くなっているといったところでございます。こうした製品が国内に入ってきたときに、その流通を規制することができないという課題認識を持った上で対応策について今検討しているところでございます。

15ページ目が対応の方向性でございますけれども、下の青い四角の中を御覧いただければと思います。こども用の製品につきましても事前規制を導入いたしまして、届出ですとか、技術基準にしっかり適合していただく。また、その際には必要な表示などをしていただくといった対応ができないかと考えているところでございます。その際、こどもの月齢を踏まえて危害を防止することができるように、対象年齢とか、使用上の注意といったことにつきましても付した上で販売を求めるといったことができないかと考えてございます。

具体的な対象製品につきましては今後の課題ではございますが、玩具につきましては先ほど少し事故の様態を御覧いただきましたけれども、ああいったことも踏まえまして、低年齢層の玩具から、まずは検討してはどうかと考えてございます。また、玩具以外の製品につきましては、先ほど来、事故の状況についての御報告も、関係の皆様からございましたが、ベビーカーですとか、抱っこひもといった製品を対象にしてはどうかという方向で検討ができないかと考えてございます。

最後に16ページ目、こうした取組を進めるに当たりましては、先ほども少し触れさせていただきましたが、現状、こども用の製品の安全確保を担っております、玩具であればSTマーク、玩具以外のお子様が使うような製品であればSGマークといったマークもございます。こうした民間の自主的な取組とも連携をさせていただきまして、双方が機能することで、社会全体としてこどもの安全確保が図れるような取組を進めていきたいと考えてございます。

最後に1点だけ、先ほど西田先生から新しい表示制度についても言及いただきまして、ありがとうございます。実は経産省の製品安全課は佐藤が2名おりまして、私以外のもう一人の佐藤がそちらも担当させていただいてございますが、そうした新しい表示制度を通じた誤使用などにも対応できるような、一定程度防ぐことができるような製品開発といった対応もしっかり検討していきたいと思ってございます。

長くなってしまって申し訳ございませんでした。経済産業省からは以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

以上で、皆様からの御報告が終了しました。

これより全体を通しての質疑応答と意見交換を行いたいと思います。先ほど40分と言っておりましたが、かなり時間が押しておりますので、35分ぐらいまでを目安に意見交換等を行いたいと思います。いかがでしょうか。

今村委員、お願いします。

○今村委員 今村です。御丁寧な説明をありがとうございました。

こども家庭庁と経済産業省さんにお伺いしたいのですけれども、こんにゃくゼリーの事件が結構子どもに起こっているのです。昔は厚生省で食品を一括していましたけれども、こども家庭庁に行った部分があっても目まぐるしく担当が変わっているので、あれは一体どこがどんな形で所管しているのでしょうかということが一つ質問です。

経済産業省のほうにお願いです。子どもの玩具ということで、窒息を起こす可能性のある規格基準について法整備を検討されているということなのですけれども、食べ物に対しても同じようにかけてもらえると有り難いかと思います。食品衛生法で所管するにはなかなか難しい面があって、どちらかというと、PL法でやらないとしんどいと思います。

2点、可能ならば回答いただければと思います。

○鹿野委員長 それでは、最初の御質問はこども家庭庁さんにお願いすればいいですか。こども家庭庁から御回答いただけますか。

○こども家庭庁成育局鈴木安全対策課長 経済産業省さんにと思って最初のほうを聞き漏らしました。失礼いたしました。

○今村委員 こんにゃくゼリーは今こども家庭庁さんが所管されているのかどうか、消費者庁に一時行っていたということですけれども、この食品での窒息問題というのはどこが所管されているのでしょうか。

○こども家庭庁成育局鈴木安全対策課長 当庁で扱っていますのは保育園などで食事を与えたときの、いわゆる施設内での事故を防止するためのガイドライン、こういったものについては当庁で持っておりますが、製品事故という観点で見ますと、引き続き消費者庁さんになるという認識でおったのですけれども、どうでしょうか。

○今村委員 目まぐるしく省庁の担当が変わっていっているので、そこを是非明確にしてほしいと思うのです。そうでないと、漏れ落ちていく可能性が高いと思うので、そこは是非今後の検討課題として考えてほしいと思います。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

消費者庁からお願いします。

こちらには音声が届いておりません。時間の制約もありますので、マイクの調子がまた良くなったときに、今の点について消費者庁からお答えいただくということで、2点目については、経産省からお答えいただければと思いますが。

○経済産業省商務情報政策局産業保安グループ佐藤製品安全課長 経済産業省でございます。今村先生からの2点目の御指摘は、食べ物の事故等についての御指摘だったかと思います。縦割り的なところを申し上げますと、経済産業省は食べ物の担当ではないところがございますが、いずれにしても政府全体として、子どものいろいろな事故を防止していくという観点では重要な課題かなと思ってございます。このタイミングでどこが担当かというのを私どもが十分に認識できていないところはございますけれども、担当でしっかり対応することによりまして、子どもの事故防止を図っていくのが重要かなと認識をしてございます。大変恐縮でございます。

○今村委員 食品衛生法、玩具も担当範囲に入っていて、おもちゃの安全性、特に添加物とかが入っていないかとかというのは食品衛生法の範囲なのですけれども、形というのは微妙なところなのです。ですから、是非そこら辺は厚生省や消費者庁との調整を取っていただいて、漏れがないようにしてもらいたいと思います。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

○経済産業省商務情報政策局産業保安グループ佐藤製品安全課長 経済産業省でございます。今ほど今村先生から御指摘いただきました玩具の化学的規制の部分、添加物ですとか化学物質の関係につきましては、先生がおっしゃっていたように厚生労働省ではございますが、私どもも厚労省と相談や連携をしながら、全体として玩具も含めて子どもの安全をどう確保していくのかという話はさせていただいてございます。御指摘ありがとうございます。引き続きしっかり相談しながら対応していきたいと思います。ありがとうございました。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

添加物というより、今村委員の御質問は、例えばこんにゃくゼリーにも関わるように食品の形など、特に子どもが食べるような食品が、その大きさとか形によって事故を引き起こすというようなことがあるのではないかという問題意識に基づいて、それについてどこが担当しているのか、あるいは経産省として、それをどのように取り扱っているのかという御質問だったように伺いましたが、それでよろしいでしょうか。

○今村委員 もともとは全部厚生省が所管していたのですけれども、表示が消費者庁に行って、今回規格基準も消費者庁に行くということと、ただ、おもちゃの規格というのは経済産業省が持っていて、食べ物の形というのが抜け落ちている可能性があるので、そこの注意点です。

○鹿野委員長 どうもありがとうございます。

黒木委員長代理、お願いします。

○黒木委員長代理 大変貴重な御説明をありがとうございました。

私はどちらかというと製造物責任法の欠陥という概念で今回の問題を考えたいと思って、そういう観点で質問です。

まず、欠陥概念として警告できているかというのが一つあると思いますけれども、この観点で、山中先生と西田先生に御質問させていただきたいと思います。

子どもの事故につきまして、メーカーは取扱説明書や包装に何歳以下の子どもは使用しないでくださいと書いてありますと言って責任を回避しようということがありますけれども、子どもの事故は警告をしたら防げるのかというところを、まずお尋ねしたいと思います。

その観点で、山中先生の発表の中で、これまでの事故のところで司法は現場の近くにいる人の責任を指摘するだけで、その指摘が予防につながったかは評価しない、それから、企業のほうはケガ情報が入ってこないといったような御説明を頂きました。

その観点で見解をまとめていただいているのですけれども、例えば見解の12から13ページに、自転車の後部座席の事故の状況を分析していただいていて、後部座席の評価を変えることによって子どもの事故部位が変わるということをおっしゃっています。仮に、このような事故情報が正確にレビューされることによって、どのように変わるということが分かる、チャイルド・デス・レビューとか、そういうような形で分かることによって、製造物責任法上の欠陥について新たな知見を踏まえることによって、被害者の事故からの救済といったようなことに、この制度が資するのかという辺りの見通しについて、これは山中先生の資料に基づきますので、山中先生にお話しいただければと思います。

以上2点、よろしくお願いします。

○鹿野委員長 山中先生、お願いできますでしょうか。

○山中氏 御質問ありがとうございました。

司法の点は、私は小児科医で司法の細かいシステムとかは知らないのですけれども、司法のいろいろな判決、例えば学校現場などで事故が起きますと刑事裁判、続いて民事裁判が行われるわけですけれども、どうしてもその場にいた教員と校長先生が有罪判決でおしまいになって、民事では賠償金の話になるわけです。そうすると、なかなかシステム自身に切り込めないというか、それが司法の制度なのかもしれませんけれども、直近過失という側にいた人が悪いというのが司法の原則だと聞いたことがありますが、確かにそれだけでは実際に予防につながっていないのです。予防につながったかどうかも司法というのは検証もしないというかできないしということで、司法だけで裁いていても、具体的な次の予防にはつながらないのではないかというのが私の個人的な感想なので、そのように私は理解しております。

あと、今までどちらかというと、先ほどからお話ししましたように、子どもの事故が起きると、見ていなかった親が悪いということですけれども、例えば自転車のスポークに足を挟まれる、これは自転車の車輪にカバーを付ければ予防できるわけですので、具体的に、特に重傷度が高い事例が必ず来る医療機関において事故の情報を集めて、そこの中から重傷度が高いものを優先的にピックアップして、なぜその事故が起きたかという発生メカニズムを明らかにすれば、製品を変えることができるのではないか。我々が今活動しているのは、目を離してもいい、あるいはあまり注意しなくてもいいような製品や環境を作ることが事故予防につながるのだと考えています。そういう意味で社会の考え方を、人の注意だけ、努力だけに頼ることから、少し技術の力を使って科学的な取組が必要ではないかというのが、私の基本的な考え方です。

以上でよろしいでしょうか。

○黒木委員長代理 ありがとうございました。

こちらとすると、製造物責任法という法律があって、そこの中の欠陥概念として、通常有すべき安全性を有していないという概念があって、例えば後部座席のスポークの話とかというのは、もしもそれがなかったら、それは欠陥ではないのかという指摘につながるのかなと思ってお尋ねしました。

それから、西田先生にも警告表示について御見解を頂ければと思います。先ほど申しましたけれども、子どもの事故について、メーカーは取扱説明書とか包装とかに何歳以下は使わないと書いておけば、それで責任がないというようなことを言っていますけれども、子どもの事故は警告表示で防げるのかということについて、西田先生の御見解も頂ければ大変有り難いと思います。よろしくお願いします。

○西田氏 西田です。御質問ありがとうございました。

今日はテレビの転倒の例を示したのですけれども、調査をすると、知らないでやらないというような場合は、注意喚起で効果があると思います。ちゃんと注意深く読むという層に対しては、ある程度の効果があるのだろうと思うのですが、実際はそういう人は少数だと思っています。そういう意味では警告とかマニュアルを整備して、それが予防につながるというのはかなり早計かなと、その効果がある層もいるのだけれども、少数だろうと思っています。

今、救済という意味では、製品改善、それから、実はWHOも言っているのですけれども、行って製品を取り付けてくれるサービスとか、そういうサポートをする仕組みがかなり必要だと思っていまして、そういう周辺の政策も必要だろうと思っています。

以上です。

○黒木委員長代理 ありがとうございました。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

先ほど今村委員から御質問があった点について、消費者庁で音声に不具合があるようなので、別ルートで御回答を頂きました。消費者庁の北島課長補佐からの御回答でございます。

食品衛生法でカバーされない食品の形などによる危険については、当庁の所掌ですというような御認識が示されました。

それから、もちろんPL法も消費者庁の所掌ということでございます。

大澤委員、お願いします。

○大澤委員 大澤です。よろしくお願いします。

私は民法と消費者法の専門家で、安全面は全くの素人なのですが、山中先生と西田先生の両先生に伺いたいことがございます。

特に山中先生の御報告の中で、先ほど黒木委員もおっしゃっていたことは私も法律を勉強している者として、確かにそうだなと頷くところがありました。結局、事故が起きたときに、そこに誰がいたのか、例えば学校事故だったら教師はどうしていたのかとか、家庭内だったら誰なのかとか、保育園だったら保育士はどうしていたのか、確かにどうしてもすぐそこにいた人がどういうことをすべきだったかという話になりがちで、肝心なことは仮に裁判で認められたとしても、その責任を踏まえて今後どうすべきか、今後に還元されているのかというのは、私も確かに疑問を感じます。それで、2点伺いたいのです。

1点目なのですけれども、私は事故データについて詳しいわけではないのですが、例えば自転車の後ろについている子ども用の座席に関しては、前に国民生活センターの見学に行ったときに、やはり注意喚起をしているのです。自転車を飾った上でやっているのを見たことがあって、国民生活センターがいろいろな商品についての商品テストをやっていて、私は大体隔年で学生と一緒に見学に行かせていただいていると、最近は子ども向けのおもちゃとか、あるいは自転車、現にこういう事故がありましたということで、こういう注意喚起をしましたと説明を受けることが増えたなと感じていました。

国民生活センターは相模原だと結構大きな施設で、いろいろ実験をやっているようですが、国民生活センターが今後例えばデータを改善したりとか、あるいはいろいろな省庁のデータを統一していって、それを国民に知らせるときに、国民生活センターが何かできることはないだろうかというのが質問です。

もう1点は、現場の中で特に気になっているのは、学校・保育園なのですが、学校・保育園は私の知り合いで学校の先生をしている人がいるのですけれども、非常に忙しくて、普通に子どもの世話をするだけでも大変で、しかも多分1クラス40人とか30人とかいるということで、例えばこういう事故が起きたときに、確かに消費者庁、こども家庭庁からパンフレット等で注意喚起がなされても、そこに一応気を付けてはいると思うのですが、現場の先生に、今後このように気を付けてくれ、こうしてくれというのもなかなか限界があるように思っています。そういったときに、小学校とか保育園の先生に対して、更に注意喚起するだけではなくて、何かもう少し、支援といっては何ですけれども、子どもの安全のために何かできるサポートというのはないだろうかというのがもう1点です。

感想になりますが、製品に関しては、先ほど黒木委員の御質問に対する西田先生と山中先生のおっしゃっていたことに非常に共感します。事業者も、例えば子ども向けのおもちゃ等に関して、これまでにあった事故などを踏まえて製品開発等を考えていただきたいと個人的に思っております。

以上2点になります。

○鹿野委員長 それでは、山中先生と西田先生、お願いします。

○山中氏 山中です。お答えします。ありがとうございました。

1点、国民生活センターはいろいろな情報分析をしています。学術会議の見解にも書いたのですが、現在、全国32の医療機関から重傷度が高いような傷害データ、事故のデータを集めているのですが、残念ながら非公開なのです。交通事故は交通事故分析センターで30万件の事故分析をしていますけれども、国民生活センターといいますか、日常生活事故、子どもや高齢者の事故を総合的に分析するセンターが必要だと考えております。個人情報の問題もあるのですけれども、数十万件のデータであれば、個人情報の問題は、死亡例は別ですけれども、クリアできると思いますので、情報の公開が必要ではないかというのを見解で述べたのはそういうことであります。

それから、学校現場にあれもしろこれもしろと言うのではなくて、先ほどからお話をしていますように、先生があまり気を付けなくても、目を離していても安全な学校の施設・設備を整えるというのを我々は基本的な考え方にしています。あまり教員に何かしてもらうということではなくて、例えば天窓が落ちて死亡すれば、天窓に柵を付けるとか、具体的な活動を少しずつやっていく。これが原則だと私たちは考えています。

以上です。

○大澤委員 ありがとうございました。

○鹿野委員長 西田先生、何かありますか。

○西田氏 私も補足になりますけれども、ちょうどスポークの外傷の話が今出ていたかと思います。あれは2011年に我々が実験をして、どこまで子どもの足が届くかと200人ぐらい測って、それで、SGマークが2011年で改定になったのです。その前後で事故が激減しました。ということで、製品の基準を直すとか製品改善をするというのは、かなりの効果があると思っていまして、その辺りで国民生活センターの役割も大きいだろうと思います。そのように促す方向に持っていくという役割はこれからも期待されると思っています。

保育所のサポートに関しては、なかなか現在の事故予防のガイドライン、これは、こども家庭庁さん、その前の厚労省さんが出したものですが、それが分かりにくいということで、こういうものを伝えていくためのツールも必要だと思います。実は保育園で役に立つ商品のグッズのデータベースみたいなものもないのです。何をどこで買ったらいいかよく分からないということがあるので、その辺りのサポートはあるのかなと思います。

以上です。

○大澤委員 ありがとうございました。よく分かりました。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

ほかにはいかがでしょうか。

○友行参事官 経済産業省さんが後の時間の御予定で11時30分に退出されます。経済産業省さん宛てに御質問がある先生を先に指名していただければと思います。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

それでは、経済産業省様に向けた御質問等があれば。

では、私から一つ手短に質問させてください。資料4の8ページの一番下のところで、制度措置の方向性ということが書かれています。自主的な取組を重視してこられたということなのですが、その下のところでは、危険な製品の出品削除の要請等をすることが適切だとされています。ここだけではないかもしれませんが、全体として安全問題についても自主的な取組を重視してきたけれども、それだけでは安全確保ができないという御認識があって、改めて、自主的な取組に加えて、一歩踏み込んだ法的な措置を取ることを検討されていると認識してよろしいでしょうか。8ページだけでなく、幾つかのところでそのように感じましたので、その点について御説明を一言お願いできればと思います。

○経済産業省商務情報政策局産業保安グループ佐藤製品安全課長 経済産業省でございます。御質問いただきましてありがとうございます。

今の8ページを例示で挙げていただきながら、自主的な取組に限らずという点の御指摘だったかなと思います。おっしゃるとおりでございまして、例えば今御覧いただいております8ページの下のほう、インターネットモール等を通じて販売する製品につきましては、上の白マルでは自主的取組について御紹介してございます。インターネットモール事業者、大手の皆様においてはPledgeの取組が進められておりますので、これで危険な製品につきましては出品削除がなされるということで期待されているところでございます。

一方で、Pledgeに署名していないようなモールの事業者さんなどもいらっしゃる、ないしはこれからも出てくる可能性もあるということでございますので、そういった事業者さんに対し、そういったインターネットモールで販売されているような製品で、仮に安全でないものがあるような場合への対処といったようなものを意識しまして、制度面から危険な製品の出品削除が要請できるような仕組み、制度といったものが必要ではないかという考え方で、我々としても検討を詰めているといったところでございます。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

柿沼委員、お願いします。

○柿沼委員 柿沼です。経済産業省さんにお聞きしたいです。

まず1つ目、PSマークとか、STマークの認知度について測っているのかというのを教えていただきたいと思います。

もう一つ、海外から直接販売する事業者に対して規制を検討しているということですけれども、国内管理人の選任を求めると先ほど言われていましたが、事故が起こった場合の補償について、そのような内容についても組み込まれる方向性なのか、そちらについて教えていただければと思います。

○鹿野委員長 それでは、経済産業省からお願いします。

○経済産業省商務情報政策局産業保安グループ佐藤製品安全課長 ありがとうございます。

1点目がSTマークとかSGマークの認知度でございます。こちらは民間の自主的な取組ですので、我々が認知度調査をやっているわけではないのですが、私どもの検討会の場などで、特にSTマークについては市場でのカバー率みたいなものを業界団体のほうから御紹介がありましたが、たしか6から7割ぐらいがカバーされているという旨の御報告があったように伺ってございます。逆に言いますと、3から4割については対象から外れているといったことでもありますので、そこも含めてしっかりカバーできるような仕組みが要るのではないかという問題意識を持っているところでございます。

もう1点、国内管理人のところですとか、あと、海外事業者から直接販売された場合の事故への対応といったところの損害賠償みたいな御指摘があったかと思います。これは正にこれから制度設計をしていく部分ではございますが、消費生活用製品安全法の規制対象製品に位置付けさせていただきまして、そういった製品を作っていらっしゃる事業者さんに対しましては国に対して届出をしていただくことになっているのですけれども、そのときには損害賠償への対応も含めて届出をしていただく。届出項目の一つにそういった対応が含まれてございますので、今後、制度を考えるに当たりましては、そういったことも意識をした上で検討したいと思いますし、対象になってくるのではないかと考えているところでございます。

私はこの後出てしまうので、一旦こちらで失礼申し上げたいと思います。大変申し訳ございません。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

それでは、黒木委員長代理、お願いします。

○黒木委員長代理 時間がない中で申し訳ありません。

山中先生がチャイルド・デス・レビューについてモデル事業を御指摘されていまして、その点、こども家庭庁にお尋ねしたいのですけれども、モデル事業の進捗評価はどうなっていますか。これは公開される予定なのでしょうか。どういう形になっているのか、その辺りのところについて教えていただければと思います。

以上です。

○鹿野委員長 それでは、こども家庭庁からお願いします。

○こども家庭庁成育局向母子保健課課長補佐 こども家庭庁母子保健課の向です。お世話になっております。

こども家庭庁でやっておりますCDRのモデル事業ですけれども、このモデル事業から得られた事故、例えば水難事故だとか、乳幼児突然死症候群の予防策などについて、自治体共有会議という場でモデル事業の中で連携を取って共有させていただいているところであります。また、令和4年度からはこどもの事故等の予防策を取りまとめております特設サイトを開設させていただいておりまして、そちらの中でもモデル事業から得られた予防策等を御紹介させていただいているところでございます。

○黒木委員長代理 ありがとうございます。

○鹿野委員長 皆様には御報告及び意見交換等に御対応いただき、ありがとうございました。

まだ御質問があるかもしれませんけれども、予定した時間を経過しましたので、御質問はここで打ち切らせていただきたいと思います。

ここで、本日頂いた御報告と委員からの御意見を踏まえて、それに私の意見も若干加えながら、まとめを申し上げたいと思います。

まず、全体を通じてですが、子どもの事故については再発防止を徹底すべきであり、そのための事故情報の分析、再発防止へ向けた仕組みを早急に構築することが必要だということが改めて確認されました。

個別に申し上げますと、有識者の山中先生の御発表からは、子どもの事故はいつも同じような場所で発生しており、その件数も大きくは減少していないという御報告があり、残念ながら予防活動はうまく機能していないのではないかという御指摘もありました。その際、交通事故防止対策との対比においても、現在の子どもの事故予防対策について、もう少し検討する必要があるのではないかという御指摘があったところでございます。

それと一部重複しますが、チャイルド・デス・レビューを機能させるための制度改善の必要性が指摘されまして、非常に共感するところが多かったところでございます。

それから、日本学術会議の取りまとめについても御紹介いただきました。「こどもの傷害を減らすためのデータ収集および利活用の促進」では、こども家庭庁に子どもの事故全てに関与する部署を設置すること、傷害情報を継続的に収集するシステムの構築とオープンデータ化、そして、分析・研究機関の設置、日常生活事故対策基本法の制定等が提言事項として掲げられているということでございました。これらの実現可能性について、関係府省庁において検討することが要請されているものと思います。

有識者の西田先生からは、技術の進展によりビッグデータを解析し、生命・身体の安全分野で活用することや、バーチャルな見守り支援システムなどについて御発表いただき、技術を安全分野に活用することの最新情報を御紹介いただいたところでございます。既に活用がなされているところもあるということで、この間の動きを紹介していただくとともに、なお課題が残っているということで御紹介、御指摘があったところでございます。

その上で、これらの技術を利用して、安全な生活への改良につなげるシステムを確立させることが必要であるという点、それから、特定のリスクを低減する製品の認証制度、コンセプト対応認証というようなことについても御指摘を頂き、大変参考になりました。

なお、このような技術を消費者の利益のために利活用するということは、本日のテーマである安全という面で非常に重要であることはもちろんなのですが、それ以外の面でも可能性を検討する意義があるように考えます。これについては後日、また改めて検討の場を設けたいと考えております。

それから、経済産業省におかれましては、消費生活用製品の安全確保に向けた検討会を開催し、本年6月に報告書を取りまとめられ、また、それを踏まえて10月からは審議会において更なる検討を続けていらっしゃるということでございます。

先ほど私のほうでも確認させていただきましたが、従来の自主規制の尊重ということだけでは安全確保が十分にはできない場面があるので、新たな法的な措置を導入することを現在検討されているということであります。その検討の方向性について評価するとともに、今後の動向について注視していきたいと思います。

また、インターネットを通じた越境供給の際の重大製品事故報告と、リコールへの対応方法とか、あるいは越境供給者への規制の実効性確保などについても検討されているという御報告がありました。インターネット取引の拡大など、環境変化を踏まえた製品安全4法における見直しの議論がなされているということでございます。この点も当委員会としても評価したいと思います。また、このような越境取引からもたらされるリスク対応については、これもまた本日の直接のテーマだけではない広がりを持った問題でもありますので、後日改めて別の項目の中でも検討していきたいと考えております。

それから、子どもの安全問題について一番関わりの深いのが、本年4月に新しく発足したこども家庭庁ですが、こども家庭庁からも、今までの活動の状況等について御説明を頂きました。今も申し上げましたように、子どもの事故については、特に今後、こども家庭庁の役割が大切になりますので、事故の未然防止、再発防止を含めて実効性のある取組を是非ともお願いしたいと思います。その際、関係省庁や関係機関との連携が不可欠だと感じております。本日も連携の例の御紹介があり、また、関係府省庁連絡会議を設けて情報共有とか、あるいは方策の検討をされているというようなことの御報告がありました。

省庁の組織替えがなされると、今までここで取り扱っていた問題がどこに行ったのだろうということが非常に分かりにくくなることもございますし、あるいは下手をすると、どこかの溝に落ちてしまうような危険性も一般的には考えられるところでございますので、せっかく子どもの利益のためにこども家庭庁を設置したわけですから、そのようなことのないように、是非とも十分な連携を今後も取っていただきたいと思います。

それから、より具体的に言いますと、チャイルド・デス・レビューについては厚生労働省が2020年度からモデル事業を実施しており、これがこども家庭庁に受け継がれたと承知しているところですが、こども家庭庁におかれましては従来のモデル事業の結果を分析し、今後の取組につなげていただきたいと思います。その際、本日、山中先生等が御指摘された点、うまく機能していない部分があるというような御指摘もあり、あるべき方向性についての御指摘もありましたので、それらも参考にしていただいて今後の取組につなげていただきたいと思うところでございます。

さらに、こども家庭庁では「こどもを事故から守る!プロジェクト」の柱の一つに、事故原因となる製品、施策の改良の促進を掲げていらっしゃいます。この点、当委員会も従来から意見書でその重要性を指摘したところでありますが、こうした取組や改善状況の把握も、是非とも積極的に進めていただきたいと思います。

なお、本日は子どもの事故に焦点を当てて御議論いただきましたし、この問題が重要であることは先ほど来述べているところでございます。しかし、子どもだけではなく、消費者全体の生命・身体の安全・安心も重要であるということは言うまでもないことでございますし、そこにも十分に目を向ける必要がございます。

そして、本日の御発表や意見交換の中には、子どもの事故以外においても汎用性のあるような事項の御説明や御指摘もございました。関係省庁におかれましても、制度改正の必要性とともに、今ある仕組みの事故情報データバンクや医療機関ネットワークの一層の利活用についても、更に少し幅広い観点からも御検討いただきたいと考えております。

当委員会としましては、本日委員から出た意見を踏まえ、次期基本計画に盛り込むべき中長期的な課題等について検討し、取りまとめを行っていきたいと思います。

以上をもって、私からのまとめとさせていただきます。

本日御出席いただいた皆様におかれましては、お忙しいところ、審議に御協力いただきまして、誠にありがとうございました。


《3. 閉会》

○鹿野委員長 本日の議題は以上になります。

最後に、事務局より今後の予定について御説明をお願いします。

○友行参事官 次回の本会議の日程と議題につきましては決まり次第、委員会ホームページを通してお知らせいたします。

○鹿野委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

皆様、ありがとうございました。

(以上)