第414回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2023年10月30日(月)10:02~11:59

場所

消費者委員会会議室及びテレビ会議

出席者

  • 工藤内閣府副大臣
  • 古賀内閣府大臣政務官
  • 【委員】
    (会議室)鹿野委員長、黒木委員長代理、今村委員、小野委員、中田委員
    (テレビ会議)大澤委員、柿沼委員、原田委員、星野委員、山本委員
  • 【説明者】
    消費者庁 尾原消費者政策課長
  • 【事務局】
    小林事務局長、後藤審議官、友行参事官

議事次第

  1. 工藤内閣府副大臣 御挨拶
  2. 古賀内閣府大臣政務官 御挨拶
  3. 第5期消費者基本計画策定に係る方針等について
  4. 委員からのプレゼンテーション②
  5. その他

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1. 開会》

○鹿野委員長 本日は、お忙しいところお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。

ただいまより、第414回「消費者委員会本会議」を開催いたします。

本日は、黒木委員長代理、今村委員、小野委員、中田委員、そして私、鹿野が会議室にて出席をしております。

オンラインにて、大澤委員、柿沼委員、原田委員、星野委員、山本委員が出席されます。このうち、今村委員は所用のため途中までの御出席と伺っています。

それから、山本委員は、途中から御出席と伺っております。

それでは、本日の会議の進め方等について、事務局より御説明をお願いします。

○友行参事官

本日もテレビ会議システムを活用して進行をいたします。

配付資料は、議事次第に記載のとおりでございます。もし、不足等がございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願いいたします。

以上です。


《2. 工藤内閣府副大臣 御挨拶》

○鹿野委員長 本日は、工藤内閣府副大臣、古賀内閣府大臣政務官にお越しいただいております。お忙しいところ、誠にありがとうございます。

それでは、まず、工藤内閣府副大臣より御挨拶を頂戴したいと思います。よろしくお願いします。

○工藤内閣府副大臣 おはようございます。遅参しまして、大変申し訳ございません。内閣府副大臣として消費者行政を担当しております、衆議院議員の工藤彰三でございます。よろしくお願いいたします。

消費者委員会では、高齢化やデジタル化の進展に伴って、複雑化、多様化する消費者問題への対応から、消費生活に極めて身近な案件まで、そして、多様な御議論を頂いていると承知いたしております。

自見大臣を補佐し、消費者行政が直面する課題にしっかりと取り組んでまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○鹿野委員長 ありがとうございました。


《3. 古賀内閣府大臣政務官 御挨拶》

○鹿野委員長 続きまして、古賀内閣府大臣政務官より、御挨拶を頂戴したいと思います。よろしくお願いします。

○古賀内閣府大臣政務官 皆さん、おはようございます。御紹介いただきました、参議院議員の古賀友一郎でございます。

この度、消費者行政担当の大臣政務官を拝命いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

そして、この消費者委員会については、414回という大変回数を重ねてやってきていただいていることに対しまして、本当に委員各位に、心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。

とかく役所の行政というのは、供給者といいますか、生産者、そうした単位で組織されていることが多うございまして、そういった意味で消費者行政の分野というのは、特徴的な分野だと日頃思っておりましたけれども、それだけに、やはり消費者目線、個々の国民目線という非常に重要な視点があろうかと思いますし、言わば、業界というものが、そうない分、個々の声なき声をちゃんと注視していくということが大変重要な分野ではないかと、こう思っておりましたし、先ほど雑談の中で、黒木委員長代理とも少しお話をさせていただいたのですけれども、消費者と生産者というのは、対立する関係ではなくて、やはりお互いに高めていくといいますか、そういった意味で賢い消費者といいますか、賢明な消費者の方々が増えれば増えるほど、それに応じたビジネスが発展していくということで、そういった意味で、本当はWin-Winの関係になろうかなと、このように改めて感じた次第でございます。

そういった意味におきましても、そういった我々を御指導いただく委員会でございますので、鹿野委員長を始め、委員各位におかれましては、御指導、御鞭撻賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げまして、御挨拶といたします。よろしくお願いします。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

お二人のお言葉を伺い心強く感じておりますので、どうぞよろしくお願いします。

副大臣、政務官は公務のため御退席されます。お忙しい中、誠にありがとうございました。

(工藤内閣府副大臣、古賀内閣府大臣政務官 退室)


《4. 第5期消費者基本計画策定に係る方針等について》

○鹿野委員長 それでは、議題に戻りたいと思います。

本日最初の議題は「第5期消費者基本計画策定に係る方針等について」です。

消費者基本計画は、消費者基本法第9条に基づき、政府が消費者政策の計画的な推進を図るため、長期的に講ずべき消費者政策の大綱及び消費者政策の計画的な推進を図るために必要な事項について定めた、消費者政策の推進に関する基本的な計画であります。

消費者基本計画は5年ごとに改定されておりまして、現行の第4期計画の対象期間は令和7年3月までとなっております。

本日は、第5期基本計画の策定に係る方針等について、消費者庁から御説明いただき、意見交換を行いたいと思います。

本日は、消費者庁消費者政策課から尾原課長にお越しいただいております。お忙しいところ、ありがとうございます。

それでは、約10分ほどで御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○消費者庁尾原消費者政策課長 消費者庁消費者政策課長の尾原でございます。

本日は、第5期の消費者基本計画の策定等について御説明させていただきます。

消費者政策の担当者として常に思っておりますのは、どうしたら良い消費者政策を進めることができるかという課題でございます。

これを考えるに当たって計画をどう使うかというところが、今日御説明をさせていただくところでございます。

初めに、1ページおめくりいただきまして2ページ目「消費者基本法について」というところがあります。

そもそも消費者基本計画は、消費者基本法に基づき策定されるものでございます。では、消費者基本法は、そもそも何の目的があるかというところでございます。

先ほど副大臣、政務官、鹿野委員長のほうからもありましたけれども、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差に鑑みて、消費者の利益の擁護及び増進に関して、消費者の権利の尊重及びその自立の支援、その他の基本理念を定めておりまして、基本的には、消費者の権利の尊重と、その自立の支援という両輪を回すことをもって、最終的には国民の消費生活の安定及び向上を確保するということを目的にしております。

その中で、次の3ページ目を見ていただければと思います。

消費者基本計画でございますけれども、消費者基本法の第9条に基づきまして、消費者政策の計画的な推進を図るために定められる消費者政策の推進に関する基本的な計画となっております。

現行計画が、令和2年度から令和6年度までの5か年で、今、あるわけですけれども、本日はその後、次期の令和7年度からの消費者基本計画をどうあるべきかという話でございます。

そもそも消費者基本計画の策定フローという左側のところを見ていただければと思いますけれども、素案は、消費者庁で作成をしまして、法定事項としまして、消費者委員会から意見を聴取、そして消費者基本計画案を消費者政策会議という右側に書いてある構成員、会長が内閣総理大臣、また、各大臣で構成される消費者政策会議で作成し、最後は消費者基本計画として閣議決定をすると、こういうプロセスになっております。

続いて、4ページ目でございます。

現行の令和2年度から令和6年度までの消費者基本計画の構成でございます。

第2章のところで、消費者政策をめぐる現状と課題を書いた後、第3章で政策の基本方針を定めております。

これに基づきまして、第5章、重点的な施策の推進、また、それを支えるための政策推進のための行政基盤の整備という形で第4章にまとめております。

5ページ目を御覧ください。

本日のところであります、令和7年4月から始まる第5期消費者基本計画の基本的方針案をお示しさせていただいております。

初めのポツ、高齢化の進展やデジタル技術の革新により、消費者を取り巻く環境に著しい変化が生じてきているところと、特に取引に関する法制度等につきまして、いわゆるパラダイムシフトが必要ではないかと。

このため、従来計画の思想を踏襲しつつも、改めて消費者利益の擁護・増進の観点に立ち返り、中長期的な未来を見据えた新たな消費者基本計画を策定していきたいと思っております。

具体的には、デジタル社会において誰もが不利益・不公正な取引にさらされる可能性に配慮した消費者利益の擁護、また、高齢化、孤独・孤立社会に対応した包括的な消費者支援の在り方、また、取引の普遍的な国際化への対応等の観点について、政府全体で対応に当たる事項を記載した消費者基本計画を策定していきたいと考えております。

下のところは、これまでの第4期までのポイントと特徴のところをまとめたところでございます。

続いて、6ページ目でございます。今後のスケジュール案でございます。

令和7年度からの5か年計画を想定しているわけですけれども、そうしますと、ちょうど今日、消費者委員会のこの場に基本的な考え方を御説明させていただいた後に、この後、来年の夏頃までには、消費者基本計画の素案を策定し、その後、広くパブコメ等を実施しながら、あるいは政府部内で調整をしながら、令和7年の3月末までには閣議決定に向けた取りまとめに行きたいと思っております。

最後に、7ページ目でございます。現行の消費者基本計画についての関連で御説明させていただきます。

現行の第4期消費者基本計画は、本体以外に計画の工程表という形で、毎年度フォローアップをすることになっております。

今年度、令和5年6月のところで、新しい試みをしております。具体的に言うと、このEBPMに基づく政策立案の試みとしております。

これは、具体的には工程表に記載する施策を、今年度は14施策に絞った上で重点施策と位置付けて、そして、14施策については、それぞれEBPMに基づいて、ロジックモデルを構築すると。

その際には、ロジックモデルを作るときに当たっては、きちんと新規KPIを充実させていくというものにしております。

EBPM、エビデンスに基づいた政策形成ということになるわけですけれども、その例としまして、例えば、今2つ、下のところに書いてありますけれども、1つは9番目「食品ロスの削減の推進に関する法律に基づく施策の推進」ということで、ミッションとしては、2030年度までには、2000年に比べて食品ロス発生量も半減するという目標があります。それに向かって、長期的な目標を達成するにはどうするかというのを、ある意味で逆算する形で中長期のところを達成するには、短期でどういうことをやる必要があるか、そのために、どういうインプットからアウトプットをしていくかという形でまとめております。こういう形で、14の施策についてまとめております。

今後でございますけれども、今次、消費者基本計画は、毎年度工程表を、これで見ていくという形にしておりますが、特に今年は、EBPMに基づく政策立案の試みをきちんとやっていくということになっておりますので、引き続き、我々は今度、EBPMというよりは、仮説と検証になります。ですので、この6月に定めたものが、きちんとそれがどうなったか、うまくいったのか、うまくいかなかったのは、それはどの辺りに問題があるかという辺りをきちんと検証した上で、来年の6月のフォローアップにつなげていきたいと思っております。

特に、今年度はEBPMを置いたこともございまして、例年とはやり方が違う。例年というか、昨年度までは、実は170ぐらいの施策を毎年度フォローアップするという形になっておったわけですけれども、今年度は14の施策に絞っています。これも作りっ放しではなくて、作ったからには、きちんとそれがうまくいったかどうかをフォローすると。正にPDCAサイクルのところをきちんと回すと。それが次期の消費者基本計画にもつながっていくということになっていくと。要すれば、こういう形で検証した上で、何が足りなくて、そのためには、どの辺りが課題だったかという、この仮説と検証を通じながら、次期基本計画につなげていければと思っております。

私からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

尾原課長から、第5期基本計画に向けた基本的な考え方や、EBPMなどについての御説明を頂きました。

それでは、質疑応答と意見交換をお願いしたいと思います。

今後、更にある程度の期間にわたって議論をするという機会もあると思いますが、本日のところでは、時間は10分程度でお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

今村委員、お願いします。

○今村委員 委員の今村です。

私はずっと厚生行政でこのロジックモデル、KPIのことをずっとやってきていて、なかなか難しい面があって、最終的なアウトカムは、今、設定していただいている分なのでしょうけれども、中間アウトカムとしてどのようなものを設定するかというのが、ものすごく難しいです。

特に難しいのは、設定した数字、全国値を集めるというところが非常に難しくて、例えば、厚生省ならば保健所があって、地方厚生局があって、何千人もの人が手伝ってくれるから数字が集まるというところがあるのですけれども、実際、最終的な全国モデルに対して中間アウトカムを数字として設定して数字を集めるというのは、なかなか大変なことなのではないかと思うのですけれども、そこら辺のところは、今後の目算として、どうお考えいただいているか、教えていただければと思います。

○消費者庁尾原消費者政策課長 ありがとうございます。

特に長期的なところでは、むしろ短期、中期のところの目標でどういうものがあるかというのがございます。

消費者庁におきましては、消費者庁自らで毎年度、消費者意識基本調査というものをやっておりましたりですとか、あるいはサンプル調査になるのですけれども、5,000サンプルぐらいのところで、ウェブ調査等を使いながら消費者の方の意識調査、あるいはどういう形でやられているかという辺りを比べていくというのはあります。

また、消費者庁だけではなくて、それぞれ各省であったりとか、あるいはその他民間の方のデータも踏まえまして、EBPMをやるために全国悉皆調査というのはなかなか難しいと思いますので、サンプル調査みたいになるかと思いますけれども、できる限りデータが取れるものを取っていくと。

仮に、取れないところは、むしろEBPMの大事なところは、データだけではなくて、その考え方が大事だと思っています。ですので、なかなか定量的に取れないところについては、定性的なところも含めて、それぞれ関係者の方々から、これがうまくいっているかどうか、その辺りも実際のことを聞きながら、やはり最後は、どうやったら政策がうまくいくかというところが大事だと思いますので、その辺りは、コスト的な予算との関係等もありますけれども、その辺りでしっかりとKPIを置きながらやっていきたいなと思っております。

○鹿野委員長 今村委員、お願いします。

○今村委員 ロジックモデルで施策を組んでいくと、全くおっしゃるとおりなのですけれども、そのコアになるような部分のKPIが作れなくなるという問題があって、すると、今度はKPIをベースにすると、ロジックモデルがうまく成り立たないという二律背反の面があって、どこまでその数字を作るために努力するかということが一番大きな問題になって、コロナのことでもロジックモデルをやらせていただいたのですけれども、やはり全国で何千人ものお医者さんが、結局入力しない限り無理ということになっていって、現場では大混乱したわけですけれども、そういう二律背反的なことがあるということは、是非やっていただければと思います。

以上です。

○消費者庁尾原消費者政策課長 今村委員、ありがとうございます。やはり政策担当者として、そこはすごく大事な話だと思います。やはりEBPMを進めながら、かといって、それが目的になってしまっては、最終的に大事なのは政策を進めることになりますものですから、その辺りのバランスも見ながら、我々としてはEBPMの取組をしていきたいと思います。

引き続き、御指導のほど、よろしくお願いいたします。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

ほかに御質問はございませんか。

小野委員、お願いします。

○小野委員 御説明ありがとうございました。

私は、7ページ目の消費者基本計画工程表にございます、KPIの例ということで、2つ目の消費者教育の推進及び消費者への情報提供の実施の目標値について質問をさせてください。

それぞれ、令和5年度の目標値が書かれてございますが、これを設定しましたプロセスについて教えていただければ有り難いです。

といいますのは、やはり無理のない目標設定とか、あるいは合理的な目標設定が必要かなと思います。先ほど尾原課長もおっしゃいましたように、数値だけではなくて、質的なところも押さえていかなくてはいけないということでございますので、どのようなプロセスでこういった目標値を立てておられるかお尋ねいたします。

○消費者庁尾原消費者政策課長 小野委員、ありがとうございます。

このEBPMを作るに当たりましては、むしろ消費者庁だけではなく、各省の担当者の方々や消費者委員会の皆様からの御意見を頂戴しながら、この辺りが重点施策になるかなという形で、今年度は14の施策を設定しております。

そう設定する中で、やはり政策担当者の皆さんとどういう形で、まずデータありきではなくて、やはりEBPMなので、特にロジックモデル、最終的な目標が、何が最後にしたいか、何が目標なのかというところを定めた上で、そこから逆算をしていく、そのために何が必要なのかと。

その中で、短期、中期のところはどこまでやれるか。もちろん、スタート地点として、予算のところもあります。何をインプットで入れられるか、予算要求して、あるいは制度の設計もあるかと思います。その辺りをやりながら、どういうアウトプットをしていくかというのを、ある意味、関係者間で議論をしながら作っていくという作業をしています。

例えば、消費者庁の中でありますと、やはり庁内全体でEBPMを進める部署がございまして、その中で担当課と議論をしながら、これを作っていくというのがございます。ですので、先ほどの今村委員の御質問とかもあるかと思いますけれども、初めにデータありきというよりは、初めは、まずロジックがあることが前提になっています。もちろん、そうする中で、何をKPIで置くかというのも大事になってきます。ただ、あまり初めにKPIはこれをするとやるよりは、何が大事で、何がそのために必要かという頭の訓練をしていくということがあります。

ここで大事なのは、消費者庁も若い役所です。まだできて、これでようやく15年目を迎えようとしている役所なのですけれども、それを特に若い職員が、そういうものを自ら考えて、それをブラッシュアップしていく過程と、ともすれば、一昔前の評価というのは、その分野の方からすると、そうではないと言われるかもしれませんが、どうしてもコストカット面に行く可能性があります。要は、これはもう不要だねと、そこではなくて、むしろEBPMの大事なところは、それをどう良い政策に打つかというのを、ある意味で、頭の体操をしながら考えていく作業だと思います。やはり前提は、行政も間違えるというところだと思います。これが認められないと、初めに結論ありきというEBPMは、すごく美しいのですけれども、何ら生産的ではないEBPMができます。要は誰もがそうだねと、ある意味で、そこの域内で閉じるのであれば、それは、けちを付けようがないのですけれども、ただ、それは将来の改善にはならないと。

特に今回、次期基本計画というのは、本当に超高齢化社会が、ある意味で、30年前にこうなるよと言われたものよりも早くそういうのが来ていると。

そうすると、一定の年齢層の方には、すごく脆弱性というところにさらされるリスクがすごく高くなってきていると。

また、デジタル化がこれだけ進むと、誰もがその脆弱性にさらされるというところがあります。

先ほど、今村先生が事例として、我々一人一人がどうしたらいいかという、答えがない中でやったようなものを、今度は消費者政策も、正に脆弱性が高くなっている中でどうしたらいいかと。

これをやっていくには、正に行政だけではなくて、関係者の皆様からお知恵を頂き、アイデアを頂き、議論をする中で作っていく必要があるかなと思っております。

そういう意味では、次期の消費者基本計画は、もともと法定事項として消費者委員会の皆様から御意見を頂きながら作っていくという位置付けになっておりますけれども、是非、これまで以上に消費者委員会の皆様と御意見を賜りながら、我々としては計画を作っていきたいと思っております。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

オンラインから、お二人、手が挙がっています。時間もかなり押しているのですが、お二人、星野委員、そして大澤委員という順番で御発言いただければと思います。まず星野委員からお願いします。

○星野委員 ありがとうございます。

何が課題だったかを調べていただくのが非常に重要だと思いました。それが、次期基本計画を策定する際の参考にもなるということで、非常にすばらしいと思いますし、これは、政府内で消費者保護行政の資源獲得にもなると、私は思っておりますので、是非進めていただきたいと思います。

2点ございまして、今村先生がおっしゃったように、非常にデータを取るところが難しいというところでございますが、足りないからやめるというのではなくて、やはり足りない場合に他省庁を含めてデータを結構持っていると思います。例えば、経産省は割賦販売業者に関する詳細なデータを持っておりますし、法務省もいろいろなデータを持っているところでございます。政府統計も取られておりますし、そういったものを積極的に活用されることの議論も、是非、どういったデータがあり得るのかということの整理も大事かと思います。

また、これは、ほかでもやられていることですが、巨人の肩に乗ると申しましょうか、他国の分析や、あと似たような省庁での事例だとか、先行研究もございますので、そもそもロジックモデルの作成とか、PDCAの回し方みたいなものに関しても、なかなか資源が足りないところで、人員も足りないところでございますので、ほかの様子も見られるということができますので、是非そういったことも御検討いただければと思います。

○消費者庁尾原消費者政策課長 星野委員、ありがとうございます。

他国の事例、それから、他省庁の先進例、是非我々も学ばせていただければと思っております。

その中で、きっと議論をしていく中で、他省庁さんが持っている行政データのところも、どういうものを使うと良くなるか、消費者政策は消費者庁だけの政策ではなくて、ある意味で、国、霞が関全体の消費者行政をどうするかという話でございます。特に消費者基本計画は、政府全体の閣議決定になってきますので、その辺り、是非各省とも連携しながら、データの充実にも努めていきたいなと思っております。引き続き、御指導のほど、よろしくお願いいたします。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

大澤委員、お願いします。

○大澤委員 大澤です。御説明いただき、ありがとうございました。

私は、このデータによる分析とか全くの素人ですので、見当違いであることを恐れて、2点申し上げたいと思うのですが、1点目ですけれども、もちろんデータの取り方にもよるのですが、今頂いた資料を見ていると、例えば、消費者教育のところでも、自分で解決ができる人が何パーセントぐらいで、これが増えていますとか、いろいろ数字が挙がっていて、他方で、この計画の中では、やはり消費者の脆弱性にも配慮するという話でしたので、こういうデータを取るときに、例えば、世代ごとにどういう違いがあるかとか、あるいは単純に年齢だけではなくて、当然消費者というのは、年齢だけではなくて社会経験の有無とか、取引経験とか、いろいろ多様性があるということを理解してやっていただきたいと思います。今更釈迦に説法かもしれませんが、そう思っております。

とりわけ外国人のことも言及されていましたので、やはり日本人と外国人との違いというところもあると思いますので、データの切り方というのは御留意いただきたいと思っています。これが1点目です。

2点目は、今、星野委員がおっしゃったこととも重なるところなのですが、私どうしても素人なので、データを取ってみて、データで、例えば、これはやはり必要な政策であるとか、そうではないとなるのではないかというのを、何となく危惧してしまうところがあるので、そういうことでは、恐らくないのだろうと思うのですが、余計な心配かもしれませんけれども、星野委員がおっしゃっていたとおり、例えば、他省庁にあるデータを使ったり、あるいは、例えば、日本ではデータ上、今、ここまで問題になっていないかもしれないけれども、他国では既に問題になっていて、これに対して政策を打たれているところもあると思いますので、是非、単純に消費者庁さんが集めているデータとかだけではなく、他省庁のデータですとか、あるいはデータだけではなくて、諸外国等で一体これについて、実際どういう政策をやっているかというのは、限られたマンパワーで申し訳ないのですが、その辺りまできちんと広く見ていただきたいと思います。

いずれも余計な心配かもしれませんが、以上になります。

○消費者庁尾原消費者政策課長 大澤委員、ありがとうございます。

本当に大事な御指摘を頂戴したと思います。データの取り方、どうしても平均的な消費者像を見たがるのですけれども、多分、次の消費者基本計画は、平均的な人で追いきれない人々、やはり属性であったり、あるいはデジタル化が進んで、あらゆる人が脆弱性にさらされるというところがあります。その辺りを、データでどう見ていくかというのは、大変重要な御指摘を頂戴したと思います。

また、諸外国の例も勉強しながら、やはり良い政策を打っていったりとか、今後、日本でも問題になるようなことというのは、海外でも既に起きていることであれば、当然何年か後に日本でも問題になるということが想定されるものも出てくると思います。

ですので、今、各国の消費者行政の中で何が課題になっているかという辺りもフォローしながら、次期の基本計画に臨んでいきたいと思います。引き続き、御指導のほど、よろしくお願いいたします。

○鹿野委員長 予定の時間が過ぎたのですが、黒木委員長代理。

○黒木委員長代理 時間のないところ、すみません。尾原課長、どうもありがとうございます。

第5期の消費者基本計画は、第4期で大きく工程表の作り方を変えて、EBPMを前面に出して、工程表もそういう形で出したという中で作っていくというもので、非常に注目度が高いと思っています。

その関係で、5ページに書かれている基本的方針のところですけれども、現段階では、高齢化の進展やデジタル技術の革新ということで、極めてまだ抽象的な視点が記載されていて、これ自体については何も異論はありませんが、次のスケジュールのところでは、春頃には骨子案の作成ということになっていますけれども、どれくらいの間隔でブレークダウンしていって、細かく、いわゆる基本計画に落としていくのか、消費者庁で考えていらっしゃる春までの間のスケジュール感、それとEBPMとかKPIを設定しながらという新しい第4期の工程表を、どうそこに連関させるのか、その辺りを一言お知らせいただければと思います。

○消費者庁尾原消費者政策課長 黒木委員、ありがとうございます。

次の計画というのは、令和7年度には始めないといけないので、令和7年3月までには閣議決定へ持ってくると。

そうしますと、来年の夏ぐらいには素案を作りたいなとやっていくと、素案を作るためには、骨子を春頃には作りたいという感じになっています。

ですので、それを作っていくために、もちろん肉付けをしていく必要もあるかと思います。消費者基本計画というのは、やはり基本的な考え方を示しつつも、やはり重要課題が、今、何であるかというのをお示しする。それを達成するには、どういう体制を作るかというところの基本を定めていく必要がある。

それぞれのところ、特に各省庁、霞が関全体で消費者行政の重要施策は何なのかというのを、今後、我々もきちんと勉強していかなければならないし、また、消費者委員会のほうでも、我々は御意見を頂くに当たって、多分、様々なヒアリング等をされるかと思います。それを我々もフォローさせていただきながら作っていきたいなと思っております。

工程表との関係でございますけれども、むしろ今年の工程表は、これまでと変えております。ですので、また一から来年度の工程表がどういうものになるかというのを議論するのではなくて、今の工程表をきちんとフォローアップしていくというところに注力していきたいと思っています。

もちろん、全くそれで決まりというわけではないのですけれども、今後、委員会の先生方とも、また、御意見を頂戴しながら、より良いものにはしていきたいと思っておりますけれども、やはり、今年初めてEBPMに基づく重要施策をやっていますので、ここは結果がどうなったかと。

今、様々な先生方から、やはりデータを取る難しさも御指摘を頂いたところです。そうすると、やはり出てくると、なかなか、こういうところの分野では難しいとか、多分そういうものも出てくると思います。それも含めて、また来年の、当然素案を作るところの過程において、工程表もどうだったかというのもお示ししていくという感じになると。

その上で、再度素案に基づいて、また、先生方から御意見を頂きながら、閣議決定に向けて進められればと思っております。

以上でございます。

○黒木委員長代理 ありがとうございました。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

よろしいですか、まだまだ御発言の御希望もあるかと思いますけれども、大分予定した時間も経過してしまいましたので、本日のところは、ここで意見交換は終了にさせていただきたいと思います。

御説明、御回答を頂きまして、尾原課長には、どうもありがとうございました。

本日、委員からは、EBPMに関する質問や御指摘が多く出ました。そこでは、データを取ることの難しさとか、あるいはデータを取る際の留意点なども含めて、御指摘等がありました。

その際、消費者庁だけではなくて、他の省庁にあるデータなども活用できるところは活用するなどの連携を取りながら、あるいは他省庁のやっている例なども、好事例などがあれば、それも参考にし、あるいは海外でも、このような作業を進めているところがありますので、そのようなところも参考にして、是非うまく進めていただきたいというリクエストがありました。

それから、御説明の中でも既にありましたように、データの数値だけが重要ということにならないように、大きな政策目標、そして、その下にあるより具体的な目標というところに向けて、どのようなデータを取っていくのが、一番効果が上がるのかということを検討していただくことが大切だと思います。これは新しい試みですから、なかなか大変なところがあるとは思いますけれども、是非頑張って進めていただければと思っております。

当委員会としましても、今後5年間を見据えて、政府全体として取り組むべき中長期的な課題について、消費者庁を始め、関係各省庁や有識者あるいは関係団体等からのヒアリングや意見交換などを行いながら議論してまいりたいと思っております。

私たちのほうで連携、協力できるところは協力させていただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

消費者庁におかれましては、お忙しいところ、審議に御協力いただき、ありがとうございました。どうぞ御退席ください。

(説明者 退室)


《5. 委員からのプレゼンテーション》

○鹿野委員長 続きまして、委員からのプレゼンテーションを行います。

前回の本会議から、第8次委員の皆様の専門分野や関心事項等について、お一人ずつプレゼンテーションをしていただいております。本日は、その2回目ということになります。

本日の発表者は、大澤委員、原田委員、山本委員の3名です。それぞれ15分程度で御発表いただき、全ての発表が終了したところで、前回と同様、全体としての質疑応答、意見交換の時間を取らせていただきたいと思います。

それでは、大澤委員、よろしくお願いします。

○大澤委員 大澤でございます。よろしくお願いします。今日は貴重な機会をくださいまして、ありがとうございます。

共有は、こちらでさせていただきます。

私は15分ということですが、なるべく簡潔にお話をさせていただこうと思っておりますので、よろしくお願いします。少しお待ちください。

では、始めさせていただきます。

私が関心を持っていることは、もちろん幾つかあるのですが、先ほど申し上げた脆弱な消費者などもあるのですが、今日は民事ルールと行政ルールをベストミックスという話に絞ります。

ただ、私は行政法の専門家では全くありませんので、今日の話は、具体的に行政ルールとして、例えば、今だと民事効しかないものに対して行政ルールを組み合わせるときに、具体的に、例えばどういう行政的な処分を加えるかとか、そういったことは専門家ではないのでよく分かっておりません。これから勉強させていただこうと思っています。

その点で、本日、特にお話をしたいことというのは、仮に、今、特定商取引法というのは、正に特定の取引類型に限定はされていますが、民事と行政ルールが、それぞれ1つの法律の中に入っているというものですが、そういったものを、今後、消費者契約一般を対象として、例えばですけれども、すごく極端なことを言えば、消費者契約法は、今、民事ルール、無効とか取消ししかないですけれども、ここに行政ルール、例えば、特定商取引法で入っているようなものを加えるというときに、消費者契約一般を対象として、この民事と行政のルールを組み合わせるというときに、その具体的なやり方というのは、もちろんこれからの検討課題だと思うのですが、そのときに行政機関、特に独立行政委員会も含みます、ここでは、第三者委員会的なものも含みますが、例えば、今、デジタルプラットフォームの分野ですと、官民協議会がありますけれども、こういったものも含めて、どのような役割が求められるかというところに関心を持っております。

今回、消費者委員会の委員を拝命したときに、1つ気になった点はこちらでございます。行政機関及び消費者委員会が、例えば、民事ルールしか今はない分野で、行政ルールが今後加わったときに、どういう役割を果たすべきかというところに関心を持っておりますので、その観点で、私が日頃研究しているフランス法を対象にということでお話をさせていただきます。

もちろん、実際にはフランスのようにというのは、なかなかいかないだろうと思っていますし、それが良いとも全く思っているわけではありませんので、あくまで参考として、どういう形でベストミックスを実現しようと模索しているかという例としてお話をします。

現状ですけれども、私から見た印象ですが、消費者庁が行っている、例えば景品表示法ですとか、特定商取引法に基づく法執行は活発に行われていると思っております。

ですので、例えば広告分野ですとか、特定商取引法もいろいろな分野がありますが、とりわけ景品表示法に関しては、消費者庁の尽力によりまして、不当な表示、誇大広告等を市場から排除するという努力が尽くされていると理解をしております。

他方で、民事ルール、つまり消費者契約法に基づく消費者保護に関しては、現状は、やはり適格消費者団体の尽力によってうまくいっているところがある、うまくと言っていいか分からないですが、適格消費者団体の尽力によるところが大きいと思っております。

例えば、不当条項の差止に関する判決というのは、今も複数たくさん現れていますが、これは全部個人訴訟ではなくて適格消費者団体による事前の申入れと、その後の差止によって行われているものになります。

そこで、今後考えるべき点としては、民事ルールによる消費者保護をするに当たって、行政機関は何もしなくていいのかというところを思っておりまして、もちろん行政機関、例えば消費者庁ですとか、今は、もちろん消費者契約法の立案ですとか、あるいは消費者への情報提供はなされていますけれども、果たしてそれだけにとどまるのかというところです。とどまるべきなのかということです。

特に、今、民事ルールしかない消費者契約法に、例えば、今、努力義務にとどまっているものを行政ルールとして練り上げていくか、そういったときに、消費者庁に今後どういう役割が期待されるか、あるいは消費者庁だけではなく、例えば、消費者委員会ですとか、その他の官民協議会的なものにどのような役割を期待されるかという点に関心を持っております。

フランスにつきましては、これは、消費者庁の昨年の懇談会のときにも少し紹介をさせていただいたところを改めて申し上げますと、日本と同じような体制になっているところと、そうではないところがありまして、上のDGCCRFというのが、これが日本で言うと消費者庁に相当すると思います。

ただ、消費者庁との違いは、このDGCCRFは、競争・消費・詐欺防止という名前が書いていることからも分かるように、消費者庁と公正取引委員会を合わせたような機関ということになると思います。

つまり、競争分野と消費者保護分野を1つの役所でやっているということで、職員がだんだん減らされているということですが、今、3,000弱ぐらいいるという状況です。

真ん中の国立消費研究所というのが、これが日本で言うと、国民生活センターに相当する機関です。果たしている役割もほぼ等しいことが行われています。ただ、商品テストのようなものは、恐らくこのINCというところでは行っていないのではないかと思っております。

最後の国立消費審議会というのが、これが諮問機関ですので、消費者委員会に近い立場だと思います。

このDGCCRFというのが、日本で言うところの消費者庁と公正取引委員会を合わせたものですという話をしたのですが、ここについて少し着目をしていこうと思います。

このDGCCRFが、実際、消費者契約の適正化のためにどういうことをしているかというと、これは、まず、1つは指導ということで、日本で言うと、消費者庁が行っている特定商取引法に基づく改善指示とか、そういったことに近いことを行っています。

改善指示により近いのは、どちらかというと、次の矯正ということで、これは消費法典という法典に基づく違法行為、違法条項の差止命令ですとか、改善命令をするということになっています。

その一方手前のものが指導というもので、指導に関しては、実を言うと、法的な根拠規定があるわけではないのですが、矯正に行く前の段階でやっているということになります。

そのときに、特に、例えば契約条項規制分野で言いますと、例えば、実際にある消費者向けの約款の中で、例えば、このキャンセル料が高すぎるのではないか、高額すぎるのではないかとか、責任の免除の範囲が広すぎるのではないかという、その条項が不当かどうかを判断するというのは、当然簡単なことではありません。

この簡単なことではない、例えば条項の不当性判断というのをどう行うかと、その参考になっているのが、後ほど説明します濫用条項委員会が出している勧告とか、そういったものを参考にしています。

あとは、DGCCRFは、以前、調査に行ったときに実際に聞いた話としては、事業者が実際に使っている約款は、とりわけ今オンラインで公表されているので、そういったものを閲覧して、実際にその中に不当な条項がないかどうかを日常的に調査しているということです。

もちろん消費者からの苦情も基にはなっています。ただしフランスの場合には、日本のように全国、日本で言うと消費生活センターのようなところが電話で苦情相談を受け付けていると、全国47都道府県でその他支部、町村が行っているということではありませんので、これは、DGCCRFというところの役所にある3939番という番号に一律に電話を掛けてということのようです。

そして、今まで矯正が二段階目ですが、そこから更に重いのが抑止である行政罰、行政罰金が科されています。

これは、先ほど申し上げた差止命令に従わないときの行政サンクションでもありますし、あとはフランスの消費法典にももちろん刑事罰がついていますので、その刑事罰を科してくださいということを検察官に送付するといったことも、この行政機関が行っています。

興味深い点としては、この行政罰金の対象になっているものの中には、日本では、特に消費者契約法では、そういう行政罰金はついていないですけれども、情報提供義務違反ですとか、あるいは不当条項のブラックリスト違反といったものも含まれています。

さらには、このDGCCRFは民事裁判所または行政裁判所に対して、濫用条項の削除ですとか、あるいは契約上の義務違反行為の差止請求ができるとなっております。

ただ、実際には裁判所への差止権限は、それほど行われていないということです。それは、なぜかと言いますと、先ほども少し申し上げましたように、やはり行政機関が、例えば、この条項は不当なのではないかということを判断することとか、あるいは、例えば誇大広告、あるいは情報提供義務違反を判断することがあまり簡単ではないと、むしろ非常に難しいので、なかなか裁判所に対する差止までは行われていないのが実情ということです。

そこで、特に契約条項分野で非常に活発な役割を果たしているのが、いわゆる第三者機関のような独立行政機関である濫用条項委員会というところで、こちらで、要は実際の消費者向けの契約ひな形、いわゆるモデル契約約款等に存在している濫用条項が調査されて、その中で特に濫用条項となり得るもの、要は不当条項となるものについて、法的な根拠を付けて、例えば、この条項、このキャンセル料は、日本で言うと消費者契約法9条1号にいう平均的な損害を超えているとか、そういう根拠を付けて勧告を出しています。

この勧告を出すためには、非常に精緻な検討が行われていて、そのために有識者、例えば民法、消費者法の研究者が、依頼を受けて報告書を作成し、もちろんこの委員の中には有識者も入っていますので、有識者、事業者代表、消費者代表、全ての利害関係人が入っている委員会ですので、そこで非常に精緻な検討に基づく報告書が作られ、しかも報告書の作成の中では、事業者を呼び出してヒアリングを行い、事業者を説得するようなこともしながら、このキャンセル料だと高すぎるのではないかとか、そういったこともしながら行っているということです。

この報告書及び勧告が、先ほど言った行政機関が、例えば行政罰金を下すときに非常に参考にされているということになります。

また、日本でも最近、ソフトローの活用ということが言われていますが、この勧告には法的な権限があるわけではありませんので、法的拘束力はありません。ですので、事業者は、この勧告を見て、自主的に契約書を改定しているということが実情のようですし、あとは、こういったソフトローである勧告を基に、例えば法改正につながるということも過去には行われています。

今後、この行政機関に民事ルールに基づく役割を期待するときには、やはり先ほど申し上げましたように、行政機関が契約内容とか契約締結過程のコントロールをすることがどこまでできるのかということを考える必要があると思います。

今、実際にフランスの話をしまして、その行政機関が随分契約内容とか契約勧誘過程に介入しているようにも見えるわけですが、もちろん、これについては全て好意的な評価を受けているわけではありません。

なぜかというと、民事ルールというのは、どうしても抽象的で要件が漠としています。そういった要件が漠としたものに関して、行政機関が判断することができるのかということで、実際、今、行政罰の対象になっているのはブラックリスト違反だけになっています。ブラックリスト違反なので、要は一般条項ではなくて、具体的な要件をもって不当とされているものに限られていますが、しかし、それでもやはり本当にこの情報が不当なのかどうか、分かりづらいというのが実情ですので、先ほど申し上げた濫用条項委員会の役割というのが非常に重要であると指摘されています。行政機関が恣意的な判断をするということは避けなければいけないということですが、しかし、逆に言うと、行政機関が、濫用条項委員会が出した報告書、勧告を見ながら、実際、例えば日頃インターネットを調査して不当条項がないかどうか調査しながら、それだけ時間を掛けて非常に注力しているというのが、ここは参考になる点ではないかと思っています。

民事ルールの充実化に向けてというのが最後のスライドですが、消費者契約法は、今、努力義務規定が非常に多くなっています。

これは、デジタル取引が増大していることを考えますと、デジタルの分野は、やはり日進月歩の分野でもありますので、いきなりハードなルールで行くのではなくて、まずは努力義務の規定を作って、それが実際どう運用されるかということを見ていくというのは1つの手法としてはあり得ると思います。ただ、本当にそれだけでいいのかというのは、個人的には疑問を持っております。

あとは、そこに幾つかつらつらと問題意識を書かせていただきましたが、時間もなくなってきましたので、あとで、できれば補足はさせていただきたいと思っています。

1つだけ補足をさせていただきますと、むしろ個人的には、確かに行政機関が民事ルールに関わる日が来るとすれば、正に特定商取引法がそうであるように、具体的なルールというのが求められるのですが、ただやはり民事ルールでもありますので、やはりその分野を広くカバーできるような、一般条項が必要なのではないかということが、個人的には思っていることになります。

最後に、今回の報告に関しまして、私がこれまで公表した論文等も掲載させていただきました。

すみません、早口で、かつ時間をオーバーしてしまったかもしれませんが、すみません、こちらで失礼します。よろしくお願いします。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

続きまして、原田委員、よろしくお願いします。

○原田委員 私もスライドを共有させていただきたいと思います。

それでは、始めさせていただきます。

私もそれほど時間は長く掛からない見込みでありまして、しかも、先日、消費者法学会でお話しした内容と重なっている部分がありますので、そこでお話を聞いてくださった方については、2度目になってしまうことをお許しいただければと思います。

私がお話ししたいことは3つありまして、1つ目に消費者概念が今後変わっていくであろう、あるいはもう変わっているかもしれないということ、2つ目に、それに応じて、消費者行政法と消費者民事法の関係も変わっていくであろうし、もう変わっているであろう、これは、先ほどの大澤先生のお話と重なると思います。

3つ目に、行政法として、今後何が起きるだろうか、あるいは何をすべきだろうかということで、とりわけ重要だと思われるエンフォースメントの問題について、簡単にお話しさせていただければと思います。

まず、最初に「消費者概念の変容」ということですが、今から20年くらい前までは、例えば、規制緩和とか規制改革といった議論の中で、なるべく行政機関は事後的に介入すべきである、つまり、市場に参入するところについては、自由にやらせるべきだという議論がかなり強く存在しておりました。

消費者法分野においては、その頃よく強調されていたこととして、消費者になぜ特別なルールが必要かというと、それは消費者に十分な情報がないからだという非対称性の問題がしばしば議論されていました。もちろん、消費者法が必要である理由は、この非対称性だけではないのですが、しかし、例えば、大村先生の消費者法の体系書、これは、初版は1990年代に出ていますけれども、その90年代からの説明ですと、まず、第一に十分な情報を持っていないということが、消費者法が必要であるということを論証する大きな手掛かりになっておりました。

しかし、最近では、情報を持っていたとしても、それだけでは消費者問題は解決できないかもしれないということが、いろいろな場面で強調されているように思われます。

大澤先生が今年出された教科書の記述によれば、ここにありますように、属性、知識、経験の有無など、消費者にはいろいろなタイプがあると。そして弱さと言っても、そこには契約相手方との関係での弱さ、先ほどの情報の非対称というのは、そういうことだと思いますが、それだけではなくて、人に内在する弱さがあるのだということをおっしゃっています。

この消費者の脆弱性と呼ばれるキーワードは、このところしばしば聞かれるわけですけれども、この消費者法を考える上で非常に重要な示唆を与えているように思われます。その示唆は幾つかに分けられるわけですが、まずは、脆弱性というところに着目すると、どのような脆弱性を持っているかによって消費者をグルーピングできて、そのグルーピングに応じた消費者法というものを考える必要性が見えてきます。例えば、若年消費者ですとか、あるいは高齢者ですとか、そういった類型ごとの消費者法というものを観念する必要性が出てくるでしょうし、次に、脆弱性というのは別に消費者だけではなく、中小企業でも、特に少人数でやっているような人たちというのは、消費者と似たような脆弱性を持っているかもしれないと考えますと、従来の消費行動を行う、行わないという区別で消費者法かどうかを区別していた基準を、もう少し広げるといいますか、人に着目して取引ルールの在り方というものを考えるべきだという見方につながるかもしれないという気もいたします。

さらに、これは次の山本龍彦先生がお話しになると思いますが、AIとの関係を考えましても、消費者というのは人である、人であるがゆえに、意思決定に誤りが生じることがもちろんあり得る。しかも、その誤りは、ときによっていろいろな方向にぶれていくということも、やはり脆弱性というところから出てくる考え方ではないかと思います。

もちろん、AIを使って消費者の意思決定を補助するということは技術的に重要だと思いますし、それによって解決できる消費者問題もあると思いますけれども、しかし、とはいえ消費者は人なので、人であることに伴って生じている脆弱性という問題をカバーするためには、幾らAIが発達しても、なお、特別なルールが必要なのではないかと思われるところです。

2番目に消費者行政法と消費者民事法の関係ということですけれども、これも伝統的にといいますか、20世紀から21世紀に変わるくらいの頃には、行政法というのは、主として事前-取引の前、しかもマクロ的な、つまり個々の消費者ではなくて消費者全体あるいは消費者という集団の規律を得意とすると考えられておりまして、それに対して民事法というのは、取引そのもの及び取引の後、事後でかつ個々の権利義務関係、ミクロの規律を得意とするというすみ分けが比較的明確になされていました。

これ自体は、今でも大まかにはそうだろうと思いますし、消費者法以外の分野では、今でも厳然としてそうなのだろうと思います。

ところが消費者においては、その後、20年の間に様々な動きがありました。まずは事前のマクロという行政法が得意とすると考えられていた分野に、団体訴訟が導入されます。これは消費者契約法を始めとして、幾つかの立法がされたところですけれども、差止訴訟という形での団体訴訟が導入されており、行政法の中に民事法的な仕組みが入ってきたと見ることができるのかもしれません。

その後、団体訴訟は更に発展しまして、事後的なのだけれども、しかし個々の消費者の被害を束ねるという裁判手続特例法ができるということで、団体訴訟が非常に発展してきている、これは消費者行政法の非常に大きな、ほかの分野にはない特徴と言えるかと思います。

他方で、従来、民事法が得意と考えられていた領域でも変化がありまして、これは先ほど大澤先生が御指摘になられた特定商取引法において、民事効規定と呼ばれる個々の消費者の取引に対して、特商法の規律を守っていない場合に、一定の民事上の効果が発生しますという規定が置かれるようになりました。

さらに、最近の消費者契約法の改正では、努力義務規定と呼ばれるものが出てまいりまして、これも取引のときといえば、取引のときかもしれませんけれども、取引の全般について、ある種のソフトロー的なものをつくり出そうという点では、どちらかというと、事前に属するようなものと言えるのかもしれません。

さらに、これは景品表示法だけですけれども、課徴金の仕組みが導入され、課徴金に加えて、不当な利益を得た事業者が消費者に対して返金措置を行えば、課徴金を減免するという仕組みが設けられております。

この仕組みは、実際にはあまり動いていないようなのですけれども、しかし、理念的には非常に重要な意味を持っているのではないかと思われるところです。

これは何を意味しているのかということなのですけれども、従来のすみ分けは、確かに今でも守られているようには思われます。

ところが、ここに挙がっているように、もともと行政法があまり念頭に置いていなかった消費者の個々の権利義務関係に対して、しかも消費者の被害が生じないように、あるいは被害が生じた場合には救済するようなルールが新たに設けられてきているというところに、少なくとも行政法側から見ると、大きな関心を持ちます。

このように消費者行政法は、従来は、個々の消費者ではなく消費者全体を対象に、しかも取引の前に事を納めるということを考えていたのが、最近ではそれに加えて、個々の消費者の被害が生じないように、あるいは被害が生じた場合に、それを救済するということも含めて行政法のカバーエリアが広がってきていて、それが一方では、課徴金と返金措置に表れていたり、他方では、民事効規定に表れていたりするのではないかと考えております。

それで、行政法のエンフォースメントはどうあるべきかということですけれども、ここにも書きましたように、この場合、違法行為を中心に考えまして、伝統的には事後規制と事前規制という分け方がされていました。

事後規制といいますのは、違法行為が行われた後に、行政側が一定の事実を調査して、その上で、例えば改善命令とか事業停止命令のような不利益処分を行うというモデルが想定されていました。

他方で事前規制といいますのは、市場参入の段階でチェックするものでありまして、典型的には許認可によって事業者の属性あるいは資格をチェックして、その資格を満たした人しか市場には入れさせないという規制を設けているのが、事前規制ということでした。

それで、2000年前後の規制改革の議論においては、事前規制から事後規制へという言葉がキャッチフレーズになって、それまで、例えば許認可制を取っていたものを事前届出制、事前届出制を取っていたものは事後届出制というように事前規制のほうを緩めていって、しかし事後規制のほうで厳しくやっていこうというアイデアが出されていたところです。

ところが、消費者法の場合には、そのような全体のトレンドとは別に問題がありまして、それは事業者の数が多いということと、他方で行政資源がものすごく少ないということです。

この事業者の数の多さと行政資源が限られているというのは、もちろんどの分野にもあることではありますが、特に消費者行政法においては、それが顕著であるように思います。

と申しますのは、例えば電力事業とかガス事業のように、一定の設備が必要な事業であれば、事業者の数というのはそんなに物理的には増えないと考えられますし、しかもそれらは一定の設備を作りますので、体質がそれほど自由ではありません。そうすると、行政側と中長期的に良好な関係をつくろうというインセンティブが、事業者側に働きがちです。

ところが、消費者法で念頭に置いている、例えば特商法の事業者では、別にいつ始めてもいいし、いつやめてもいいし、別に行政とうまくやれなかったら、例えば、ほかの地域に行けばいいとか、ほかの業種をやればいいというように、事業者の数が多いだけではなく、行政との中長期的な関係を築くことにも関心がない人たちが比較的多いと思われます。

そのような人たちを相手にする場合には、行政資源がたくさんあると、それができるのだと思いますが、しかし消費者行政法におけるリソースを考えましても、そんなに多いわけではない。もしかすると、他の行政分野に比べても、公務員とか働いている方の数というのは、そんなに多いわけではないということになるわけです。

そこで、では、仕方ないから自主規制に期待したいということがよく言われるわけで、消費者法においては、自主規制を活用しようということが、しばしば言われております。

ただ、この自主規制というのも、そんなにうまいツールとは限らないということでありまして、自主規制というのは、実は行政規制よりも制御が難しいものと見たほうが良いと思います。なぜならば、自主規制を動かしているのは基本的に民間の人たちなので、民間の人たちがうまく遵法的な活動をやってもらえるようなインセンティブ構造をきちんとつくっておかないと、うまく働かないでしょうし、そのインセンティブの最たるものが、自分たちがきちんとやっていないと、フォーマルな規制がやってくるかもしれない、法律ができるかもしれない、あるいは許認可の権限が行使されるかもしれないといったものなので、自主規制をやるためには、その背景にきちんとした規制体系を準備しておくと、そして介入をやろうと思えばできるのだという体制を取っておくことが非常に重要だと思います。

それとの関係で、現在の消費者法に恐らく一番足りていないのではないかと思われるのが、情報の把握でありまして、そもそも事業者がどこにいて、どんなことをしているのかということについての情報が、十分に把握できていないのではないかと思われるところです。

もちろん許認可制を取っていれば当然といいますか、把握していなければいけないはずなのですけれども、特商法においては許認可制を基本的に取っていませんし、届出制も取られていないものがほとんどではないかと思います。

ですので、せめて事前ないし事後届出を設けて、事業所を把握することが少なくとも必要ではないかと思われるところで、その点、食品衛生法が近時の改正で、届出制を導入いたしましたけれども、それに倣ってといいますか、少なくとも事業者についての情報を集めてくることについて、何らかの対策を取る必要があると思います。

この事業者に関する情報収集については、もちろん届出制というものを設けるということだけではなくて、情報通信技術を使って、AIですとか、あるいは自動的な登録の仕組みのようなものを作っていくことも中期的には考える必要があるかと思いますけれども、まずは、事業者の情報をきちんと集めてくるということが、まずは必要なのではないかと思われるところです。

もちろん、現在の消費者法においてもPIO-NETのように、まずい事業者に関する情報というのを集めるネットワークが既にありまして、それは、非常に有意義に機能していると思いますが、ここで言っている事業者に関する情報収集というのは、悪い情報だけではなくて、そもそも事業者がどこにいて、どんなことをやっているのかということについての最低限度の情報を把握することを、まずは考える必要があるのではないかということを申し上げた次第です。

私のほうからは以上です。ありがとうございました。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

山本委員は、既に参加していらっしゃいますね。

それでは、山本委員、お願いします。

○山本委員 慶應大学の山本でございます。どうぞよろしくお願いします。

画面を共有させていただきます。

それでは、15分ぐらいということですので、早速、始めたいと思います。

私はバックグラウンドが憲法学ですので、今のお二方の先生に比べて、非常に抽象的な、抽象度の高いお話になろうかと思います。

それから、より実態的な人権ですとか、そういった観点からのお話になろうかと思います。

私自身は「デジタル化と新たな消費者問題」というかなり大きなタイトルを付けさせていただきましたけれども、AIの発展を伴うデジタル化で新たにキーワードになりそうな、そういう言葉あるいは概念というのは何かと問われたときに、1つは認知なのかなと思っております。

これは、御承知のとおりですけれども、国家安全保障分野におけるキーワードも、近年、認知だとも言われているところであります。

戦争ですとか安全保障において重要なのは、情報戦、とりわけフェイクニュースとか、そういったものを組織的に拡散していく、それによってその国を混乱に陥れる、人を惑わしたり、混乱させるという、こういった認知戦、認知をいかに歪ませるかという、こういったことがポイントになってきているわけであります。

論者によっては、第6の戦場が認知領域であると、陸、海、空、それからサイバー、宇宙、その後に続く第6の戦場が認知領域ではないか、要するに、人の脳を制する、制脳権というのが重要だと言われてきたところで、このことをシンボリックに表している事象としては、2022年の1月にスウェーデンが心理防衛庁というものを設立したということも御承知のとおりかと思います。

この心理防衛庁というのは、個人の認知領域というものを保護する、ニューロ・セキュリティなどと呼ばれていますけれども、こういった認知戦に対する法的・制度的な対応が重要であるということを非常に端的に表しているのではないかと思います。

私自身は、マーケティングですとか、こういった消費者問題を扱う上でも、この認知ということが重要になってくるのではないかと。

事業者と消費者間の情報の非対称性、格差というものがこれまでも言われてきたわけですけれども、こういったことが今後は、その認知領域へのアクセシビリティも非対称性、格差になっていくようにも思われます。

事業者の側は、心理学等を含む、いわゆる認知科学といったものを駆使することができるし、こういった認知科学を駆使した、いわゆるABテストを行っていく、それによって、いかに人の認知過程に働き掛けるかということを考えていくように思います。

これは、そういったものを実際に使ったユーザー・インターフェース、UIの例えばデザインですとか、こういったことを積極的にデザインすることによって、人間のあるいは個人の認知バイアスを利用していく、こういったことを可能にするデータと資金というのが事業者側にあるということです。そういうことが、今後一般的に行われていくのではないかということでございます。

事例として、1つは、これまでも消費者庁、消費者委員会でも議論されたと思いますけれども、ダークパターンというものがあるということです。

これは、定義を幾つか挙げておきましたけれども、例えばカリフォルニアのプライバシーライツアクトですとか、コロラドのプライバシーアクトで、例えば定義されているのはユーザーの自立性、意思決定または選択を破壊または損なう、そういった実質的な効果をもって設計または操作されたUIのことを、ダークパターンと呼んでいる。あるいはより一般的に論文などで引かれている定義ですけれども、ユーザーを混乱させ、実際のプリファレンスとは異なる特定の行動を取らせるように、意図的にデザインされたUIとも言われています。この定義は、まだ世界的に、これという決定版はないように思いますけれども、こういったダークパターンというものが近年議論され、そして、一部においては、それを規制する立法が出されてきているということであります。

ダークパターンの問題はどこにあるかというと、一つはシステム1というもののハッキングにあるのではないかと指摘されているところであります。

このシステム1、システム2というのは、非常に有名な心理学者であるカーネマンの、いわゆる二重過程理論ということであるわけですけれども、人は、非常にファストで反射的な、そういう思考モードであるシステム1と、より熟慮、反省的で、かつ、論理的な思考モードであるシステム2と、このシステム1は、反射的なもの、ファストなものと、スローで熟慮的なシステム2というものを組み合わせながら、我々は意思決定をしていると言われているわけですけれども、この引用にあるとおりですけれども、ダークパターンというのは、システム1の意思決定というものを使うように、人々を駆り立てる。そういうものなのだと言われているわけです。

例えばよく言われているのは、解約を困難にするUIということです。Roach Motelと海外で言われる、つまりこれはゴキブリ、特定の商品名を言うとあれですけれども、ゴキブリ何ちゃらということですけれども、つまり一旦入ったら出られないというようなことですけれども、こういったUIというもの、これも皆さんも御経験があるように思いますけれども、なかなか解約しようと思っても、そのボタンまでたどり着かないといったようなことがあるということであります。

ここに書いてありますように、これも引用ですけれども、ダークパターンというのは、コソコソして、しばしば平均的な者には気付かれないのだと、そういったダークパターンというのは、全員が気付かずに持っている認知バイアスを利用しているのであると。誘導されていることに気付きにくい、これは後でもう一度議論をさせていただこうと思いますけれども、ここは1つ重要なポイントだろうと思います。

それから、近年、また議論と申しますか、一般によく耳にするようになったニューロ・マーケティング、これは、脳科学的な知見を活用して、消費者の無意識や感情というものを分析していく。特に生体反応というものを見ていくというような、そういうマーケティングの手法です。これもやはり人々の認知というものに着目して、そこに直接働き掛けるような、そういうマーケティングの手法というものが、このマーケティングの世界では、むしろ良いものと、効果的なものとして言われるようになってきているということであります。

それから、アテンションの搾取ということについても少し触れておきたいと思います。

これも近年よく使われるようになった言葉として、アテンション・エコノミーという言葉が、御承知のとおりあるわけであります。

アテンション・エコノミーというのは、オンラインプラットフォームのビジネスモデルと言われているものでありまして、具体的には、情報過剰な時代においては、我々が払えるアテンションですとか、消費時間というものが供給される情報量に対して圧倒的に希少となるために、アテンションとか消費時間というのが交換財として経済的に取引されるというビジネスモデルということであります。

我々は無料のオンラインプラットフォームというものを扱っているわけですけれども、本当に無料かというと、確かにお金は払っていないけれども、我々はアテンションを払っていたり、あるいはそこに時間を費やしている、エンゲージメントと呼ばれますけれども、こういったものを払っている。これが広告主に、いわゆる売られるということが1つのビジネスモデルとして成立しているということであります。

こういったアテンション・エコノミーというビジネスモデルの下で重要になってくるのは、どれだけユーザーのエンゲージメント、アテンションというものを奪われるかということが決定的に重要になってくるわけであります。

33行目にありますように、コロンビア大学のロースクールも、憲法の情報法も、反トラスト法もできるという、Tim Wuによれば、現在では情報の受け手の全ての時間が、かつては非商業的な時間であった友人とか家族と過ごす時間さえも、激しい奪い合い、競争の対象になってきている。我々の毎時間、実際には毎秒がそれを支配しようという商業的アクターの標的になっていると、こういう指摘もあるわけであります。

これは、結局、事業者、特にプラットフォームは可能な限り多くの時間、そしてユーザーの多くのアテンションを獲得するために、当該ユーザーが最も強く反応するものを、例えば、ものの閲覧傾向、閲覧履歴等々も個人データから予測していくことになっていくことになります。

ここでアテンションというのは、心理学の分野においては、このように言われているようであると。すなわち幾つかの選ばれた情報のストリームが脳へのアクセスを獲得するということ。複数の同時的に存在している対象や、思考の連鎖から、ある1つのものがクリアで鮮やかな形式で精神によって占領されること、やや分かりにくいですけれども、要するに我々の脳の機能というのは、当然無限ではない、有限ですから全てのものを我々は処理することが、脳においてはできないということになってくるわけです。

ですから人間というのは、外的世界の全ての情報にアテンションを向けることができない、その情報の多くを無視またはろ過して特定の情報にのみ、そのアテンションを向けている、脳の機能を集中させているということであるわけです。

10行目にあるように、有限の時間の中で、数多ある、とにかく溢れている情報の中のどれに、有限のアテンションを向けるのか、どれに脳の機能を集中させるのかというのは、このデジタル時代においては非常に重要な意味を持ってくるのではないか、タイムパフォーマンス、いわゆるタイパと言われるように、その時間というものをどう振り分けるのか、どういうコンテンツで情報に振り分けるのかということが、極めて重要な意味を持ってくる。場合によっては、何にお金を使うのかと同じように、何に時間を使うのかということが重要な意味を持ってくる。

しかし、そのアテンションというものが、場合によっては搾取されているのではないかという批判もあるところでございます。例えば、認知科学の知見を駆使したUXやUI、レコメンデーションという仕組みは、先ほど申し上げたシステム1、非常にファストな、反射的な思考モードに強く働き掛けて、意思を介在させない形でユーザーのアテンションを奪う傾向があると。

ある短尺系の動画プラットフォームというのは、動画の視聴データなどを使って、それぞれのユーザーがどのような動画にどの程度反応しているのかということを、詳細に分析して動画を出し分けているわけであります。

さらに、次の動画を見るために、縦画面を指でスクロールしていかなければいけないために、次にどんな画面が出てくるのだろうという高揚心というものも高まっていって、画面から離れるということが難しくなるとも指摘されています。

これは、個人的にも、私もこの短尺系の動画プラットフォームを、少し時間が空いたときに開いて見たりしますけれども、思った以上に見ている、見てしまっていると、場合によっては30分も40分もぼうっと眺めていることもあるわけですけれども、正にアテンションを奪われているという状況があるわけです。

これは、アメリカのジャーナリストは、こういったUXを究極のスロットマシーンですとか、非常にアディクティブな、中毒性が高いのでデジタル・コカインなどとも指摘しているわけですけれども、こういった、いわゆるショート系の動画というのが、いろいろなアプリにクローニングされている状況でもあるということであります。

こういったシステム1に対するはハックと申しますか、そこに着目をした様々な情報提供というものによって、Tim Wuによれば、我々は「囚われの聴衆」と化してきてしまっているのではないかと。自己決定と考えているものが、実は他者決定となっている部分があるのではないかと、こういう指摘もしているところであります。

「囚われの聴衆」というのは、日本では、31行目にありますように、非常に古い事件ですけれども、地下鉄の車内で商業宣伝放送、いわゆる広告を強制的に聞かされることとの関係で問題とされたわけですけれども、Tim Wuは、現在のプラットフォーム等の上では、ある種、自分がこれを望んでいると思えて、しかし非常に強力なレコメンデーションによって、あるコンテンツを見せられていると、強制的に聞かされているという側面もあるのではないかと言っているわけです。この「囚われの聴衆」という言葉は、後でも少し触れますけれども、ダークパターンにも1つ共通した、そういった性質というものが指摘できるのではないかと思います。

生成AIの話もしようと思いましたけれども、時間の関係で、ここでは省略をしたいと思います。

いずれにいたしましても、我々の認知というものが非常に強力に、その領域に働き掛けが行われてきているという状況にあるのではないかと、私自身は考えているということであります。

考えられる方向性を最後に少しだけ述べさせていただければと思います。

私は専門が消費者法ではないのですけれども、現行の消費者法の前提というのは、例えば1つは、基本的には対面型あるいは直接対話をするという、そういう直接対話型の契約締結過程を前提としているのではないかと。例えば、消費者の取消しを基礎付ける事業者の困惑惹起行為として、一定の物理的な空間に消費者の物理的な身体というものを拘束することを掲げているわけであります。事業者による不退去、出て行かないとか、あるいは出て行くことを妨害する退去妨害というものが、その1つとして挙げられているわけであります。

けれども現在は、特定のバーチャルな空間に我々は仮想的な身体というものを閉じ込められるということも問題になってきているのではないか。ダークパターンですとか「囚われの聴衆」というのは、いつの間にか特定の場所に閉じ込められているような、そういう状況もあるのではないかということであります。

それから、従来の消費者法においては、基本的には明確な被害意識の存在というものを前提にしていたのではないか。困惑というのは、困惑しているということを自ら意識することができるわけです。つまり、何か困ったと自ら思っているということですけれども、つまり気付く消費者問題というのがメインだった。

ところが、先ほどのダークパターンですとか、ニューロ・マーケティングというのは、被害を受けていることそれ自体に気付かない、あるいは被害意識が非常に低い問題、気付かない消費者問題というのが、実は非常に大きくなってくるのではないかということであります。ニューロ・マーケティングというのは、正に消費者の無意識的なインサイトに働き掛けるわけでありまして、消費者本人も認識していない欲求というものを刺激していくという、そういう側面があるのではないかということであります。

こういったところから、幾つか方向性としては、やはり消費者の認知過程を保護していく、ニューロ・セキュリティと、自律的な意思決定を支援していくというのは、大きな方向性としては重要なのではないかということであります。

幾つかマルを挙げさせていただきましたけれども、既存の消費者団体というのが、こういったデジタル技術の利用によって先鋭化しつつあるこの認知問題というものに、実際どこまで対応できているのかという問題が一つあるのではないか。

例えば、消費者団体は、デジタル化の消費者問題というと、ECサイトの取引トラブルといったようなことなどが従来念頭にあったのではないか、これも極めて重要な問題ですし、ここに着目をしてきたということは大変重要なことだったと思いますけれども、これは、言わば被害意識が存在するデジタル問題ということになろうかと思います。

今後考えられるアクションとしては4点、AIを含むテクノロジー、特に認知科学が消費者の行動及び意思決定に及ぼす影響の調査・検討と、立法事実の調査と書きましたけれども、ダークパターン等が消費者の心理・行動に対していかに作用するのかということをしっかり、正にエビデンス・ベースドで検討していく必要があるのではないか。

FTCは、やはり最近スタッフ・レポートを出しておりますし、こういった問題に対して組織的に向き合っていると思います。

それから、アテンション・エコノミーと呼ばれるビジネスモデル、これも非常に皆さんが共有しなければいけない構造的な問題だと思いますけれども、こういった問題が引き起こすようなアテンションや時間の搾取、これは必ずしもお金が取られるわけではないけれども、我々に非常に重要な自律的に生きるという、非常に重要なアテンションですとか時間というものを、言わば奪われているということをどう考えていくかということを検討していく必要があるのではないか。

それから、消費者の意思決定を支援するための技術というものを、やはりエンパワーしていく必要が、政府としてもあるのではないかということです。AIの不均衡とも言いますけれども、結局、今、AI技術というのは、事業者側が非常にそれを使うということですけれども、消費者側というのは、それに対して、非常に無防備な形で、相手はAIで武装してきているのに、我々はAIという武装を全く持っていない、裸でAIと向き合っているような状況ですから、例えば、AIエージェントのようなものを実装していくとか、そういった消費者を守るための技術というものの開発を支援していく仕組みづくりも重要ではないかということ。

それから、先ほどの消費者団体ですとか、市民社会というのは、まだ、アテンション・エコノミーも含む認知問題に対して、十分に対応できているとは、私自身の見立てでは言えないように思うというところであります。非常に努力をされているということは、本当に敬意を表するわけですけれども、こういった新たな消費者問題に対応するために、消費者団体等をエンパワーしていくということが重要なのではないかということであります。

リテラシーも重要だと思いますけれども、消費者団体による、例えばダークパターン等の監視ということも今後は重要になってくるのではないかということでございます。

すみません、少し時間が長くなりましたけれども、以上でございます。どうもありがとうございました。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

以上で3名の皆様からの発表が終了しました。これより、全体を通して質疑応答と意見交換をしたいと思います。少し時間が押しておりまして、申し訳ないのですが、11時50分までで今日のところでは打ち切りとさせていただきたいと思います。

それでは、質問等をお願いします。

中田委員と黒木委員長代理から、ほぼ同時に手が挙がりましたが、まずは中田委員、その次に黒木委員長代理ということでお願いします。

○中田委員

貴重なプレゼンテーションをありがとうございます。

原田委員からのプレゼンテーションで、最初に消費者概念の変容について言及されていらっしゃったと思います。10年前、2011年は情報の非対称性ということが非常に注目されていた中で、現在においては、人間、人に内在する弱さという消費者の脆弱性が、新たな課題として注目されていると。ただ、その脆弱性に関しては、すごく多様であるというお話がございまして、グルーピング、類型化して、それを分析して、それに見合った消費者法であったり、そのような対策を講じていくことが重要であるというお話であったのですが、類型化は、私もすごく重要だと思うのですが、どの程度類型化していくことで、より効果的な対策、消費者法を構築等できるとお考えでいらっしゃるか、教えていただければと思います。

○鹿野委員長 原田委員、お願いします。

○原田委員 ありがとうございます。

どの程度類型化するかは、なかなか難しい問題なのですけれども、類型化といいましても、いろいろな視点がもちろんありますし、何とも抽象的にしか答えられない問題なのですけれども、まずあり得るのは、若年消費者とか高齢消費者のような年齢による分け方、それぞれの置かれている状況にある程度類似性があるのであれば、それぞれについてルールを特別に設けるということが必要だろうと思いますし、あるいは年齢以外の要素としては、一人暮らしなのか、それとも子供がいるのかとか、そういった生活環境の問題に応じた類型化と、それに必要なルールの設定ということを考えていくこともあり得るだろうと思います。

類型化と申し上げましたのは、従来、消費者法というと、総体としての消費者がいて、その消費者に対してどういうルールを設定するかというような見方のほうが強かったので、そうすると、どちらかというと一般的ルールを志向するということになりやすかったと思います。ただ、一般ルールで行けるところはそれでいいと思いますが、そうではないところもあるということを認識することも、この場合には重要なのではないかと思っております。

以上です。

○鹿野委員長 よろしいでしょうか。

○中田委員 ありがとうございます。

○鹿野委員長 それでは、続きまして、黒木委員長代理、お願いします。

○黒木委員長代理 基本的には、山本委員に対する質問になると思います。

大変斬新というか、ものすごく大きな問題提起をしていただいたと思っています。この認知の問題を頭の中まで、例えばいろいろな形で法が制約するとなると、これはまたこれで大変ではないかと思います。その関係で、今、個人情報保護法とか、電気通信事業法でネット上のクッキーあるいはそれの利用に関するいろいろな議論が少しずつ進んでいると思っておりますけれども、そういった形の今あるハードローが少しずつ変わっていく、インプルーブメントしていくということ、あるいはそれにデジタル広告のターゲティング広告とか、そういったようなことで、どこまで非常に大きな深い問題意識が、今の法制度の中では対応可能なのかということについて、御知見がありましたら教えていただければ有り難いと思います。

○鹿野委員長 山本委員、お願いします。

○山本委員 ありがとうございます。

すみません、今、ちょっと接続がどうもおかしいようで、恐らく先生の御質問の途中の部分、私、聞くことができませんで、最後のところを伺って、非常に大きな問題だけれども、法的な対応としてどういうものが考えられるのかというお話だったかと思います。

ありがとうございます。これは、まず、私自身、認知の問題というのは非常に重要だと問題提起させていただきましたけれども、これに対して、例えば、有効な法的な対応をするためには、やはりまずは、私自身、調査ですとか、そういったことが重要で、立法事実というものをしっかり確認しておく必要があると感じましたけれども、実際にどういうユーザー・インターフェースであると、我々の脳というものがどう反応して、どういう行動になりやすいのかとか、こういったことをまず把握していく必要があるのではないかなと思っています。

それをまず把握できれば、こういったダークパターンというのは問題だと、ダークなのかホワイトなのかということの線引きが非常に難しい、多くのマーケティングといいますか、UIというのは、やはり、当然売りたいということがあるわけですから、一定程度、誘導的なものになってしまうわけですけれども、それは、マーケティングとして基本的には許されるだろうと。ただ、これを超えてダークであると、これはしかも法的に、例えば、これは違法であるとか、何かしら制裁が必要だといったものが何なのかということを、まず、見分けるということが重要なのではないかと思います。

他方で、先ほどの消費者団体をエンパワーしていくというところでいきますと、例えば、先ほどのホワイトパターンの公表とか、そういったことはあったと思いますけれども、ダークパターンみたいなものを規制するということになると、立法事実というものが必要になるわけですけれども、ホワイトパターンであれば、これを積極的に、例えば公表していく、あるいはそういったものを採用している企業というものの、例えばリストを公表していくといった形で、良いUIを使っているところを褒めてあげるという施策というものは、一つ考えられるのではないかと思います。

あとは、いろいろ個人情報の問題というものも、これは消費者委員会の管轄の問題に絡みますけれども、例えば、そういったディープなプロファイリングというものについて、これを統制するような法的な介入の在り方ということもあるのかもしれませんし、今、1つ何かということではありませんけれども、考えられるのではないかと思っております。

差し当たり、以上です。ありがとうございます。

○鹿野委員長 どうぞ。

○黒木委員長代理 ありがとうございます。

私がお話を聞いたときの素朴な問題意識として、人の認知の行動というものについて、何らかの形で国家が立法事実を徴収していくというのは、ある意味では、その人の思想信条とか考え方のパターンということに関して、いろいろな外部情報を通じて、こういう方はこういうパターン認識をするのですねということを前提として、こういうグルーピングをされた消費者というのは、こういうパターン認識をするから、これはダークパターンですという話になってくるのではないかと。

そうなってくると、ある意味では、極めてディープな思想信条みたいなところまで国家が入り込んでくるといったことになるのではないか。少しお話を聞いたときに、そういう形の反応というのは出てくるのか、出てこないのかも分からないのですけれども、そういう懸念があったものですから、その点について、山本先生の御知見もお示しいただければと思います。

○山本委員 ありがとうございます。

政府が直接こういった認知の問題を研究していくということについては、確かに先生おっしゃるように、正に憲法19条の思想・良心の自由、内心の自由というものも保障されているわけですから、問題というものもあるように思います。

そういう意味では大学ですとか、様々な研究機関というものが、もちろん倫理的な問題あるいは個人情報の問題をクリアした形で、こういった研究をしっかり積み重ねていく、そういった知見というものを政府がしっかり把握をして、共有していく、あるいはそういった情報というものを、様々そういった研究成果というものを、やはり1つ情報のハブとなっていろいろな研究機関と共有していくということは、一つ考えられるのだろうと思います。

この点は、非常に先生の御指摘のとおり、とても重要なことですけれども、しかし他方で、やはりこの問題は、指をくわえて見ていられるような問題でもないかなと思っているところですので、何らかのアクションは必要だろうと、私自身は思っております。

○黒木委員長代理 ありがとうございました。

○鹿野委員長 それでは、続きまして、オンラインからお二人、柿沼委員、星野委員からお手が挙がっているようです。

順に、まず、柿沼委員、お願いします。

接続が悪いですかね。そうしたら、時間の関係もありますので、先に星野委員、お願いします。

○星野委員 3名の先生方とも、脆弱な消費者をどのように保護すべきかという観点もありまして、大変興味深く拝聴いたしまして、原田先生、もちろん大澤先生のフランスのことも非常に参考になりましたし、あと、原田先生は消費者のグルーピング、山本先生は、無意識からの影響ということもお話があったと思いますが、私としましては、何回か申し上げているところでございますけれども、その手前でも、まだ一般消費者に対して行われていないことも結構多いかと思いまして、これも何度か7次のほうでは申し上げて恐縮なのですけれども、やはり消費者保護行政の行動経済学とか行動科学の利用というのは、諸外国でも非常に膨大な研究もありまして、それのエビデンスに基づく行政指導もされているということがございまして、前回私が申し上げた、OECD、既に2017年に、「Behavioural Insights and Public Policy」というタイトルで、各国の研究事例とか、その研究事例を基に政府の規制とか、施策がされたということに関する500ページぐらいにわたる膨大な報告書が出ておりまして、14章ありまして、そのうち2章が消費者保護と金融商品に関しての事例の章になってございます。

実際、前回、私のところで申し上げて、再度恐縮ですけれども、電力等供給事業者に対して、年間の推定請求額を表示すると、いろいろなプランがあって、なかなか悩むところでございまして、どのプランを選んだらいいのかというのが分からずに、とりあえず割引があるから加入してみましょうみたいなほうに導入するようなことに対して、そうではなくて、ちゃんと、こういった方だったら大体年間どれぐらいお金が掛かるのだというのを明示しろということがされているアイルランドのような事例もあるといった、行政指導等の具体的な事例がございますので、もちろん非常に消費者をグルーピングするとか、ダークパターンも非常に重要ですので、それは進めるべきかと思いますが、もっと手前のところで、一般的な消費者に関してできることもあるのではないかなと思っておりまして、これは、すみません、質問というよりは意見でございますけれども、是非、そのようなことを消費者委員会で議論したり、また、消費者庁にそのようなことをしていただくようなことを指導いただくのはいかがかと思っております。

山本先生がおっしゃった消費者の意思決定を支援するための技術開発というのは、多分ブーストと言って、認知科学ベースでかなり研究されていると思いますので、そのようなことを非常に考えるのは大事だと思いますし、また、山本先生が先ほどおっしゃったホワイトパターンを公表して、積極的にそれをしているプラットフォーマーを表彰するというのは、正に、私、前回申し上げたところにかなり近くて、非常に同じことをお考えになっているのだなと、意を強くしたところでございます。

すみません、意見となってしまいましたが、よろしくお願いいたします。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

今のは御意見、コメントということで伺いました。

柿沼委員、お願いします。

○柿沼委員 先ほどは失礼いたしました。

本日は海外から接続しており、通信不安定のため、ビデオオフで失礼いたします。

まず、大澤委員の説明ですけれども、日本との対比として大変勉強になりました。

質問ですけれども、5ページのスライド、指導、矯正、抑止に至る点についてですけれども、年間当たりの件数がどれくらいなのか、それからデジタル化に伴って増減や何か違いがあるのか、また課題が分かれば教えていただければと思います。

また、消費者被害を抑止するには、迅速性が求められると思います。しかしながら、消費者の苦情には、いろいろな考えによる苦情も含められており、見切り発車にならないように、行政規制を行うには十分な検討も必要です。よろしければ、フランスにおいての苦情や日常的なネット閲覧から指導等に至るまでの平均的な時間が分かれば教えていただければと思います。

それから、原田委員ですけれども、消費者の概念が変わってきていることについては、現場としてひしひしと感じております。今後、概念の変化についても検討が必要であると感じました。

必要である最低限度での会社情報についてなのですけれども、具体的にどのようなものが必要かを教えていただければと思います。

現在でも、PIO-NETにも事業者名などデータは取っており、そのデータを基に行政処分などを行っていると理解しておりますので、具体的にどういうものの蓄積が必要なのか教えていただければと思います。

最後に山本委員ですが、ダークパターンについてです。

現在、消費者被害に遭うのは、だまされる人が悪いとか、だまされた私が悪いと考える人が多い中、気付かれず、または甘い蜜によって呼び込まれる、それに気付かない消費者というのも多く見掛けるところでありますし、前回私が発表させていただいた調査からも、多くいることが分かっております。

認知については、心理学的な要素も取り入れていく必要性を感じました。消費者団体に期待されることについても理解できました。こちらは感想となります。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

それでは、大澤委員、原田委員、山本委員に対する質問ないしコメントを御発言いただきました。最後の山本委員に対する点はコメントと伺いましたので、まずは大澤委員、そして原田委員に、質問に対する回答を、できれば手短にお願いします。

○大澤委員 御質問ありがとうございました。

フランスの状況ですが、指導に関しては、2022年の活動報告書を見ると、2万2,610件の指導がされていますということ。いわゆる差止というか、行政による改善命令とか、そういったものは7,864件と、ホームページ上では公表されています。

あとは、行政罰金は1,643件と書いております。すみません、ぱっと見た限りでは、このぐらいになっております。

ちなみに行政罰が割と多いのは、例えば支払い遅延とか、どちらかというと、不当条項というよりは、そちらのほうが圧倒的に多いというのが実情です。

あとは、ホームページの調査をするのに、行政機関はどれぐらい時間を掛けているかというのは、恐らくそれはものにもよると思いますけれども、1つ申し上げると、濫用条項委員会がその報告書を作って、最終的な勧告を出すまでには大体1年ぐらい掛かっているというのは聞いたことがあります。大体1年に1件か3件ぐらい勧告を、業種ごとに出したりしていますが、そのためには1年ぐらい時間が掛かっているという話は、委員だった人に聞いたことがあります。

すみません、以上になります。全部答えられているか分からないのですが、時間もありますので、以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

原田委員、お願いします。

○原田委員 PIO-NETの情報の取り方について、改善すべきということではなくて、それとは別に、事前届出ないし事後届出という形で、事業者の情報を一般的に集めるべきという趣旨でお話しいたしました。

執行についての体制ですとか、どこを重点的に見ていくかということについて、全体の業界がどうなっているのかということが分かっていないと、そもそもリソースの振り方も決めることができませんので、全体としてどういう事業者がどれくらいいるのかということを、まず把握することが重要だということを考えております。

以上です。

○鹿野委員長 ありがとうございました。

まだまだ御質問等があると思いますし、私もこの機会に聞いてみたい点もあるのですが、先ほど申しましたように時間もありますので、これで今回の質疑応答は終わりにさせていただきます。

本日、御発表いただきました大澤委員、原田委員、そして山本委員におかれましては、それぞれの専門分野から、大変貴重な御指摘を頂きました。ここで指摘された点につきましては、委員同士でも認識の共有ができたものと思いますし、また、更に今後いろいろな形で議論をし、調査審議に役立てていきたいと思っております。お忙しいところ、どうもありがとうございました。


《6. その他》

○鹿野委員長 続きまして、次の議題は、消費者委員会下部組織の委員についてです。

消費者委員会の下部組織につきましては、第412回本会議におきまして、新開発食品調査部会を始め、3つの部会・専門調査会を引き続き設置するということを御確認いただきました。

その後、先般、公共料金等専門調査会につきまして、内閣総理大臣より、専門委員が任命されました。

そこで、消費者委員会令第4条、公共料金等専門調査会の設置・運営規程第2条第2項及び第3項に基づき、専門調査会に属すべき構成員につきまして、この度、参考資料1のとおり指名を行いましたので、御報告いたします。

また、そこに記載のとおり、座長につきましては、野村宗訓専門委員にお願いすることにいたしました。

加えまして、当委員会からは、小野委員と柿沼委員に、この専門調査会にオブザーバーとして御参加いただくことになりました。両委員におかれましては、よろしくお願いいたします。

以上、御報告です。

最後の議題に移りたいと思います。

最後の議題は、その他の事項といたしまして、消費者委員会に寄せられた意見書等の概要につきまして、事務局から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○友行参事官 それでは、参考資料の2を御覧いただけますでしょうか。

8月の1か月の間に、消費者委員会に寄せられた要望書・意見書・声明文等の一覧となっております。

8月ですので少し前の期になりますが、最初のほうの意見書については、SNSのチャット勧誘トラブルについての事柄が多く寄せられております。ちょうどこの時期、7次の委員会のときでございましたけれども、下部組織のワーキング・グループで、この件について議論が行われておりまして、それに関する御意見を頂いたところでございます。

補足ですけれども、SNSやチャット勧誘トラブルについての事柄につきましては、ワーキング・グループで報告書を取りまとめていただきまして、委員会から意見を発出しております。

チャット勧誘に関する意見書のほかには、特商法の抜本的改正を求める意見書ということで、特商法に関わることで2件ほど意見書として頂いております。

内容については、訪問販売、電話勧誘販売について、お断りの意思を示した者に対する規制でありますとか、通信販売に関してはクーリング・オフなどの規制を導入していただきたいということや、連鎖販売取引について開業規制、登録制などを敷いてほしいというような意見が中心となっております。

それから、消費者行政の在り方ということでございまして、生活衛生基準行政を厚労省から消費者庁に移管するという法改正がなされました。この4月からその体制になるわけなのですけれども、そのことについて意見書が1件来ております。

それから、日付で言いますと、8月24日に受け付けたものでございますけれども、これも7次のときの報告書でございまして、消費者団体に関する実態調査報告書をまとめていただきました。それについての御疑問、御質問という意見を頂いております。

あとは、その他ということで、1件でございます。

こうした意見書を消費者委員会のほうでは受領しております。団体様から頂いたり、個人の方から頂いたもの、両方ございます。

今回8月につきましては、団体から寄せられた意見などのほかに、個人から2件の意見が寄せられております。

内訳としては、取引・契約関係が1件、その他が1件となっております。

このように寄せられた意見等につきましては、消費者委員会が調査審議を行う上で参考とさせていただきたいと思っております。

以上でございます。

○鹿野委員長 ありがとうございます。

今の点につきまして、委員から何かコメント等ございますか。よろしいですか。

ありがとうございました。今、参事官からもお話がありましたように、これらの意見書等につきましては、今後の消費者委員会における調査審議において、参考にさせていただきたいと考えております。


《7. 閉会》

○鹿野委員長 本日の議題は以上になります。

最後に事務局より、今後の予定について御説明をお願いします。

○友行参事官 次回の本会議の日程と議題につきましては、決まり次第、委員会ホームページを通してお知らせいたします。

以上です。

○鹿野委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)