第399回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2023年4月20日(木)13:00~15:18

場所

消費者委員会会議室及びテレビ会議

出席者

  • 【委員】
    (会議室)後藤委員長、生駒委員、黒木委員
    (テレビ会議)青木委員、飯島委員、受田委員長代理、大石委員、木村委員、清水委員
  • 【説明者】
    同志社大学 新川名誉教授
    前・全大阪消費者団体連絡会 飯田事務局長
    金城学院大学生活環境学部教授、公益財団法人関西消費者協会理事長 丸山氏
  • 【事務局】
    小林事務局長、岡本審議官、友行参事官

議事次第

  1. 消費者団体の現状について(有識者ヒアリング)
  2. その他

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1. 開会》

○後藤委員長 本日は、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから、第399回「消費者委員会本会議」を開催いたします。

本日は、黒木委員、私が会議室にて出席、生駒委員も会議室にて御出席予定ですが、今のところ、まだ来られておりません。

受田委員長代理、青木委員、飯島委員、大石委員、木村委員、清水委員は、テレビ会議システムにて御出席です。

星野委員は、御欠席です。

開催に当たり、会議の進め方等について事務局より説明をお願いいたします。

○友行参事官 本日は、テレビ会議システムを活用して進行いたします。

配付資料は、議事次第に記載のとおりでございます。もし、資料に不備等がございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願いいたします。

以上です。


《2. 消費者団体の現状について(有識者ヒアリング)》

○後藤委員長 本日の最初の議題は「消費者団体の現状について」です。

消費者の権利・利益の擁護、増進のためには、消費者の声を聴く必要があることから、当委員会では、消費者団体の消費者の意見を反映する機能に着目し、調査審議をしております。

4月6日の第396回本会議において、消費者団体から、主な役割・機能、組織の現状や課題について御説明を頂きました。

本日は、消費者団体の消費者の意見を代表する役割や、海外の消費者団体の政策提言に関わる取組について、有識者の方から御説明いただき、御議論いただきたいと思います。

本日は、オンラインにて、同志社大学名誉教授、新川達郎様。

前・全大阪消費者団体連絡会事務局長、飯田秀男様。

金城学院大学教授、丸山千賀子様に御出席いただいております。

大変お忙しいところ、誠にありがとうございます。

本日は、事前に御用意いただいた資料を用いて、新川様、飯田様、丸山様の順にそれぞれ15分程度御発言いただき、全ての発表が終了したところで、全体としての質疑応答、意見交換の時間を45分程度取らせていただきます。

まず、最初に同志社大学名誉教授、新川様、よろしくお願いいたします。

○同志社大学新川名誉教授 ただいま御紹介いただきました、新川でございます。本日は、よろしくお願いいたします。

○後藤委員長 よろしくお願いします。

○同志社大学新川名誉教授 消費者団体についてということで、15分程度お話をさせていただきたいと思いますが、それに先立ちまして、お手元の資料の2ページ目のところにありますように、こうした消費者団体を含めまして、市民活動、市民団体というのが、現在、直面をしている、日本だけではなくて世界的な課題がございます。

一つは、こうした市民社会組織と、これらの活動を言っておりますけれども、それらが活動する場あるいは空間そのものが極めて限定されつつあるということがございます。

つまり、政府部門が様々な介入を通じて、市民社会が活動する分野というのを制限し始めている。善意から入っているところもあるのですが、そういう現象があります。

もう一つは、やはりマーケットの高度な発達ということ、グローバル化あるいはオンライン化等々でございます。

これらを通じて市民社会の組織が活動する、そうした領域というのが、極めて限定されてくるということがございます。

それと対応するかのように、市民社会組織自体が、今、様々なこれまでの活動の形式を変えなければならない、そういう場面に来ているのですが、残念ながら、それに十分対応できないで硬直化あるいは活動力の低下ということが見られます。

その中で団体活動あるいは組織活動というよりは、個人のレベルでの活動というところに、多くの市民が向かい始めている、そういう特徴があるということを申し上げておきたいと思います。

3枚目のスライドを御覧いただければと思います。

それでは、消費者団体、消費者運動というのはどうなっているのだろうかということであります。

ここは管見の限りでありますけれども、日本で何が問題なのか、端的に言えば、刷新されない組織、そのミッションや専門性ということについて、実はイノベーションというのが起こっていないのではないかということでございます。

経済社会あるいは公共部門というのが大きく変化をする中で、本来、それに対して何がしかの対抗措置を講じ、そして適用をし、更には変革し、新たな団体統合に向かうはずだったのですが、残念ながら日本の消費者団体や消費者運動はともに、伝統とその強みがあり、しかも既存の組織や制度による保障や制約というのがあり、その上で、なお専門性や活動領域の高度化及び偏りというのがある中で、新しい活動が極めて発展しにくい、そういう構図に陥っているのではないかということでもございます。

さて、今回、消費者委員会のほうから頂きました論点も具体的にお示しをさせていただきながら、私なりの考え方も申し上げていきたいと思っております。

1つは、消費者団体の消費者の意見、代表役割、これをどう考えるのかということであります。

消費者運動自体が、消費者の主張によって生まれたということについては、疑いの余地はないだろうと思っております。そして、その主張を実現する組織という目的も間違いないだろうと思います。

その限りでは、消費者を代表しているということになりますが、残念ながらその消費者というのは、国民、市民全体の消費者ではなくて、その一部ということになります。

消費者団体というのは、実はそうした一部の声かもしれませんが、それが持っている公共的な意義あるいは国民全体の利益に関わるような意義というのを見つけ出して、それを全体代表の意見に変換をしていく、それが大きな役割だろうと思っております。

消費者団体自身が、そうした市民的な役割、言ってみれば、我々の社会で基本的な価値、理念というものも共有し得る、そうした市民としての性格というのを消費者団体が持って活動していくことが求められていることだと理解しております。

さて、②としては、そういう消費者団体が、実際に政策提言という機能を、どういうふうに位置付けていったら良いのかということであります。政策提言機能そのものというのは、イコール公益的機能かというクエスチョンマークも付いていますけれども、政策という用語をどういうふうに理解をするのかということ、そして、そのときの公益ということをどういうふうに理解するのかによって、ここは様々なグラデーションがあり得ると思っております。

ただし広い意味では、政策提言機能イコール公益機能、そして、それが消費者団体の主要な機能の一つであるということについては間違いないだろうと思っています。

政策提言という言い方については、そのまま理解をしていただきますと、公共的な政策についての提言と理解されるかもしれませんが、もともとのアドボカシーという言い方からしてみますと、実は様々なレベルで公共的な政策の提言ということがされてきていることがあります。

具体的に言えば、消費者個人の権利の代弁といったようなところも重要な政策提言機能、アドボカシー機能でありますし、もちろん、もう一方の極では、具体的な国会によります立法、この立法を共同作業で作っていくという作業自体もアドボカシーであるということは間違いありません。

その間のグラデーションは、様々な交渉あるいは陳情、請願、要望など、いろいろな仲介もあります。これらも含めて、実はアドボカシーと言うことができるだろうと思っていますので、消費者団体が果たすべき政策提言機能というのは、実は単純に審議会等あるいはパブリックコメントや、その他のタウンミーティング等々で具体的な政策提言をするという場面に限られているのではないということを強調しておきたいと思っています。

さて、③として、こういう政策提言イコール消費者の代表の意見集約ということ、これが消費者団体の活動に期待されているのかということであります。

もちろん団体自身の期待というのもあると思いますし、同時に、その団体を支えている消費者、また、そのほかのステークホルダー、事業者の方も含めてですが、そういう期待もあると思いますし、社会の期待もあると思います。実は、様々な期待がそこに少しずつずれてあるのではないかと思っています。

少し具体的に言えば、やはり消費者の方々からすると、自分たちの声をそのまま伝えてほしいという、いわば代理人的な発想というのがあるかもしれません。

もう一方では、個別具体的な困り事を抱えている側からすれば、自分たちの権利というのを代弁してほしいというような、そういう機能も消費者の声としてはあるかもしれません。

さらには、事業者との関係で言えば、様々な交渉をしていくという意味での期待ということもあるかもしれません。もちろん、政府、行政に対する政策要望というような側面も当然あろうかと思っています。

様々なこうした機能というのを、実は政策提言、そして、消費者意見の集約ということで、本当は、消費者団体が果たしていかなければならないのですが、何もかもというわけにもいかないですし、それを未整理のまま垂れ流すわけにもいきません。

消費者団体が本来やるべきは、その中での優先順位付けや、そして、そこでの具体的な運動方針というのをどう設定するのか、ある意味での提言戦略が求められている、それこそが消費者団体に期待されていることではないかと理解をしております。

さて、④として、今後、こうした様々な消費者の意見というのをどういうふうに反映していけば良いのか、消費者団体の意見を中心にして、そこで集約されて、それを受け入れていくというような、そういうチャンネルだけでよろしいのか、恐らくそういう議論があるのだろうと思っています。

今、私たちの社会は、様々なコミュニケーション手段というのが豊富に用意をされ、逆に言うと、その中に埋没をしてしまっているという状況もあります。

翻って、多様な意見が出しやすい、そういう状況にもあって、その中でどういう取捨選択の仕方をしていくことが望ましいのかということであります。

論点としては、大きく2つあろうかと思っております。

1つは、本当にいろいろな意見が出てきて、もう一方では、その中で実は、これまで対応できてこなかったようなものが大量に生まれてきてしまっているということ。

翻って、こうした問題について俯瞰的に物事を見るような、そうした視点というのがなくなってきているかもしれない。そうした消費者の団体の動き方というのができなくなっている、そういう側面もあるのではないかということで、論点を2つ出しております。

ここでは、基本な考え方、動き方というのを変えていく必要があるのではないか。1つ目は、やはり単に消費者団体が意見を述べるだけという構図からどう脱却をするのか。

2つ目には、消費者団体だけではなくて、消費という問題は、実は、直接、間接に関わる様々な市民活動団体がございます。そこに少し書いてありますように、人権から多文化共生まで、いろいろな団体の参加をどう促していくのか。

そして、大きく3つ目は、やはり消費者団体も含めてですが、市民や国民との対話、これをどう実現していくのかということに論点を変えていく必要があるのではないかと思っています。

そのために、具体的に一つは、やはり対話型の行政への転換という機能をどう試みていくのか、双方向コミュニケーションということが、例えば、今日も関係の方がおいでですが、KC’s(消費者支援機構関西)などでも強調されています。こういうものをどう積み重ねていくのか。

2つ目のポイントは、従来なかなか声を上げてくることができなかった団体や、そういう人たち、特定のクラスターの方々ですが、こうした方々に対して、どう力付けをしていくのか、エンパワーメントという側面です。

そして、大きな3つ目は、やはり無関心層、ここの意見をどう集めるのか。具体的には、既に計画細胞や、あるいは討論型世論調査等の手法がありますが、無作為抽出型の参加、あるいはくじ引き参加とおっしゃる方もありますが、こういう手法も今後検討されて然るべきではないかと思っております。

さて、⑤として、消費者団体のほうにもう一度戻って、その担い手をどう考えていくのかということでありますが、なかなかNPO全体でも担い手が増えていかないというところがありますし、既存の団体の中での担い手不足ということも盛んに言われています。資源も枯渇しているという状況があります。なおかつ、次の世代の方々では、どの世代も実は共通しているのですけれども、既存の組織に対するある種の忌避感といいますか、嫌だという感情というのは、どうしてもあるようなところがございます。

対策として、1つ目には、やはりいかにして個人の自由な発想あるいはそれぞれの思いというのを実現できる、そういう環境を作るかということ。

そして、そのための2つ目には、既存の組織といえども、どういうふうにそうした声を受け入れていくような柔軟性というのを持ち得るのか。

そのためには、3つ目には、やはり活動あるいは具体的な提案、それぞれの思い、それをどう実現できるのかということを、その組織自体が自らのネットワークの中に組み込んでいくような努力というのが恐らく必要です。ある意味では、従来の組織活動という枠組みをどう壊して作り直せるかというところにかかってくるだろうと思っています。

もちろん、自分だけではそれはできませんので、恐らくいろいろな組織間の連携あるいは外部の個人との連携というのをどう作っていくのか、こういう課題に、恐らく直面してくることになるのだろうと理解しております。

その際に、⑥としては、新たに参加をしてもらうためには、どんな要素を持ってすれば広がっていくのだろうかということであります。

やはり、消費者問題の気付きというのをどう作っていくのかというのが、大きなポイントになりますし、その中で一人一人の意識や態度をどう変えていくのか、そして行動を起こすための環境をどう作っていくのか。

具体的には、そのためのビジネスモデルのようなものをどう構想するのか、そのビジネスモデルが働くような環境条件というのをどう整えるのか、エコシステムと、ここでは言っておりますが、そういう要素をどう整備していくのかというのが大きな論点になろうかと思います。

そういうものを通じて消費者団体というのを整備していかないと、なかなかこれからのいろいろな問題を解決していくのは、難しいだろうなと勝手に思っているところがあります。

10枚目のスライドで消費者政策決定の根本問題を指摘していますが、いろいろな団体や、あるいは個人の意見というのを適切に反映できないところでは、恐らく政府の政策決定をいかに合理的に組み立てるにしても、ゆがみ、不適切さというのが出てくると思いますし、そもそもが政府と専門家だけによる決定が、それ自体の持っている不合理さを内包しているということについては、指摘をされているところでもあります。

結局のところ消費者団体や消費者運動のないところで消費者政策の決定をするなら、消費者のものでない消費者政策ということになり、それにどこまで意味があるのかと、そんな議論も恐らく原理的にはあるのだろうと思っています。

11枚目のスライドでは、こういう問題を解決していくために、これからの消費者問題への政策提言機能をどう確保していくのかということであります。

課題は、いかにこれまでの偏りあるいは膠着状態というのを脱していくのかということ。そのための政策に関わる能力というのを、どう高めていくのか。

私自身は、1つは、やはり知識や技術、専門性、その人的な資源の提供というところが重要だと考えております。御承知と思いますが、プロボノという活動がございます。専門的な知識を持った人たちがボランタリーに市民社会あるいは公益のために活動をしていく、こういうところの力をどう活用するのか。

それから、大きな2つ目は、やはり必要な資源というのをどう適切に調達するのか、これも既に我々の世界の中では、クラウドファンディングを始めとして、お金や物あるいは人材というのを流通させる新しい仕組みができ始めています。

加えて3つ目には、政策提言につきましても、具体的な提言の場というのが政策対話や、あるいはNGO、NPOとの定期協議のような形で既にされているということがあります。消費者政策においても、こうした政策対話の場というのを定期的に成果の上がる形でどう確保していくのか。

そして、大きな4つ目は、消費者団体の活動ということについて、実際に政策提言ということを、どういうふうに団体機能として、あるいは権限として設定していくのかということが大きな課題です。訴訟については、適格消費者団体がございますが、実は政策問題について消費者団体の権限や機能があるかといえば、必ずしもそこは確立されていないということがあります。

時間になりましたので、最後にいたしますけれども、12枚目のスライドでは、こうした消費者団体を支える制度的な支援というのを、今まで申し上げましたような課題に応えていくために、具体的にこれから形作っていく必要があるのではないかということを示しております。私自身は、1つは、政府部門によらない中間支援の活動が必要であり、消費者団体というのを、より良く機能をさせていくための人的、資金的、知的、技術的な支援をするような機能というのが必要ではないか。

加えて2つには、こうした問題に応えていくことができるような消費者になっていく学習の場、教育支援と言っておりますが、学びの場をどう作っていくのかということが課題であり、これも中間支援と大きく関わるかと思っております。

そして3つには、消費者活動をしていかれるような市民や団体、個人であれ、集団であれ、その活動を支援するような仕組みが必要です。創業支援とでも言ったほうがいいのかもしれません。こういうものをどう作っていくのか。

さらに4つには、消費者団体の機能や権限について、これまでの団体制度あるいは法人制度が適切であったのかどうかを見直し、必要があれば制度改革をしていく必要があるのではないか。

終わりに、それらの課題に応えようというときに、恐らく消費者庁、消費者委員会、それから地方自治体の関わり方というのが重要になってくるのだろうと思っています。

行政が関わるその際にも、直接消費者団体に関与するのではなく、やはり先ほど申し上げました中間支援団体を中心に、教育機能や、あるいは創業支援機能のようなことを考えていく必要があるし、消費者団体が自主的に活躍できる環境条件を整備することが重要なのではないかと思っております。

すみません、若干時間をオーバーいたしましたが、私からのお話は、以上にさせていただきます。

どうも御清聴ありがとうございました。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

続きまして、前・全大阪消費者団体連絡会事務局長、飯田様、よろしくお願いいたします。

○前・全大阪消費者団体連絡会事務局長飯田氏 こんにちは。私は、表記されていますように、2021年の9月まで消費者団体の事務局に身を置いていた者です。そういう経験から改めて考えたことを、今日まとめて発言をさせていただきたいと思います。資料に沿って申し上げたいと思います。

1つ目ですが、いろいろな消費者団体があって、消費者の意見を代表する役割を担っていると、私は思うのですけれども、1つの団体が全ての消費者の意見、思いを代表することができるかというと、私は不可能かなと思います。

ですので、逆に言えば、それぞれの団体が自分たちの活動に即して、構成員の代表として、ちゃんと意見を発信するという役割をきちんと担うことのほうが重要ではないのかなと思っております。

ですが、何でも思いの丈を述べたらいいというわけではなくて、やはり消費者の代表として意見を述べるからには、その意見の妥当性、言い換えると公共性と言えるかもしれませんが、あるいは、ちゃんとした根拠を持った事実だとか、資料だとか、調査結果だとか、そういう根拠からちゃんと導かれたものとして発言をするということがないといけないと常に考えてきました。

ですので、その団体を代表して意見を述べる際には、やはり一定の見識の下に意見が発信されるということが求められる。それを団体の側から応えようと思うと、それぞれの団体で不断の研さんが必要になっていると私は思います。

次のスライドですが、そういう中で、今回のテーマにある政策提言機能というのは、それはそれで重要な機能なのですけれども、消費者団体の役割・機能という、そこに挙げた①から⑥ぐらい、6点ほど整理するとあるのかなと思っています。消費者の啓発・啓蒙あるいは被害の防止・救済、3つ目が企業社会への意見発信、あるいは言葉を変えて監視活動と言えるかもしれません。

特に企業社会との拮抗力をちゃんと確保すること。消費者団体がちゃんと対等に企業社会と意見交換なりをする、そういう力を持っていないといけないと思います。

4つ目が、行政庁への政策提言機能を持っていること。

それから、消費者団体同士の連携・連帯、これも重要な機能になるかなと思います。

もう少し膨らみますと、消費者団体だけではなくて、様々な社会的な運動との連携についても、やはり視野を持っておく必要があると思います。

ですので、政策提言活動というのは、消費者団体の役割・機能としては一部に過ぎないのですけれども、しかし、重要な役割・機能には違いないと思います。

4番目のスライドですが、そういうことから考えますと、この政策提言を消費者団体が行うということが、提言活動そのものは、その団体の存在意義に関わって、消費者団体の社会的な責務であると私は思います。

きちんとそれぞれの団体が、社会的な責務を負っているのだという自覚が必要だと思います。

ですので、それはそれぞれの団体で意見発信を継続的に、あるいは系統的に、ある場合には戦略的に行う必要があると思います。

現代社会では、発信の相手は2つあると思います。主に2つだと思います。

もちろん、消費者全体に対する啓蒙・啓発もあるのですけれども、施策提言なり意見発信という側面からすると、主な対象はそこに挙げた2つ。

一つは企業社会です。ここの監視活動なり、政策提言活動あるいは意見交換の場も必要かもしれません。これは、消費者団体としても必然的な役割と自覚すべきだと思います。

もう一つが行政庁ですけれども、行政施策のいろいろな問題につきまして、意見発信を消費者を代表してちゃんと行うこと、こういう役割を担う必要があるかなと思っています。

5番目のスライドですが、その意見反映の方法なのですが、様々な方法があるわけですけれども、日本の社会においては、必ずしもそれが制度的に保障されているわけではないとも思います。

1つ目は、行政庁ですが、議会だとか行政庁に対する、行政活動なり陳情、請願なり、こういうことをそれぞれの課題に即して行います。

それの基になるのが、情報公開の請求、これは欠かせない。ですので、情報公開の制度というのは、日本は極めて貧弱かなと私は考えていますけれども、もっともっと制度を充実させる必要があるかなと思います。

2つ目が、企業社会との関係ですが、これは、特定の企業という場合もあるかもしれませんし、企業者団体等の関係もあるかもしれません。定期的に意見交流だとか、ある場合には要請行動を行うという関係が必要かなと思います。

それから、③、④、⑤のところは、方法論になるのですけれども、いろいろなツールなり機会を通じて、国民あるいは住民に対しても意見発信を行うと、こういう機能をちゃんと担わなくてはいけないと思います。

その際に、SNSを活用した発信、私自身はあまり長けていないのですけれども、これからの時代は欠かせないツールになると思います。

したがって、この発信の仕方に消費者団体は熟達をする必要があると思いますが、現状、そんなに熟達している団体はいないのかなと思います。

もう一つ、5番目、特に日本の消費者団体のある意味特徴なのですけれども、諸外国の消費者団体との交流が極めて少ない。ですので、逆に諸外国の消費者団体の活動から学ぶ機会が極めて制約されていると私は思います。私自身も長けているわけではなかったのですけれども、やはりグローバル化をしている社会において、諸外国との連携というのは、今後欠かせないことになるわけなので、そこの交流なりを通じて、別途の可能性を追求する視点は欠かせないかなと思います。

次のスライドですが、国内において、国・自治体に求められる、逆に消費者団体の声をどう受け止めてもらえるかと、こういう視点から考えたことですが、現状、自治体等の審議会に様々な団体が参加をしていますけれども、この参加枠の拡大は欠かせないと思います。

少し前に、審議会への参加枠を広げるといった政策が出たことがあったかと思うのですけれども、多分、そのときから参加枠が拡大したというのは、あまりないのではないかと思います。審議会等への参加枠は、もっともっと広げるべきだと思いますし、そういう審議会だけではなくて、消費者団体がきちんと行政庁なり、自治体なりに意見表明をする場を設定すること。単に意見表明の場を設定して、意見を伺いましたということだけではなくて、やはりそれに対して、国や自治体がどういう見解なりを持っているのかという双方向の意見交換といいますか、そういうことが必要になっているのではないかと。そのためには、更なる充実した情報公開が必要かと思います。

かつて消費者保護基本法が、1968年にできて、その直後に、特に自治体のレベルですが、自治体がいろいろな消費者団体を組織したという歴史があります。ですが、50年ほど経って、ほとんど自治体が組織した消費者団体というのは、多くの団体が消えかかっている、そういうことになっているかと思います。

やはり官製の団体ではなくて、もっと違った視点から消費者団体なり社会運動を担う団体を組織することが、これから必要になっているのではないかと。そういうことを育成する事業を担うようなNPOですかね、そういうことが、日本国内でできないのかなと思っています。

情報に長けているわけではないのですけれども、例えば、デンマークで行われているフォルケホイスコーレのような、大人の学校と言われているものを日本国内でできないのかなということも思ったりしています。そういうことが国内で可能になる前提が、やはりあると思います。

現状、今の現役世代の人たちに、消費者団体に関心を持ってもらったり、参加していただくというのは、かなり制約がある。そのためには、やはり労働時間の短縮なり、賃金の引上げということが、前提条件として必要になっているかなと。消費者問題とは少し離れますけれども、こういうことが、やはり国民生活をどう支えるのかと、そういう視点からも言えるかなと少し思っているところです。

次のスライドですが、そういう形で、消費者団体の政策提言活動を強化する視点を6点挙げました。これまでのところと重複する点が多々あります。

1つは、継続的な消費者教育・啓発事業。これは、消費者団体が継続してやることによって、内部にスキルを蓄積することが必要かなと思います。

2つ目も同じようなことなのですが、調査活動を継続的にする。これがやはり消費者団体を鍛えるとも思います。

そういう意味で言うと、例えばですけれども、行政の側から調査活動を消費者団体に委託すると、これを継続的に行うことによって消費者団体を育てるということも、行政の視点としてはあり得るかなと思ったりしています。

3番目が、専門家や学識者との連携、協力あるいは参加の場をちゃんと作るということがどうしても必要かなと思います。

それから、SNS環境の整備と活用の熟達。これが、これからの時代は欠かせないと思いますし、多様な資源を活用するという点で言うと、クラウドファンディングの活用も一つの視野に入れるべきかなと思います。

最後は、諸外国との交流、これは欠かせないと思います。

そんなことで、いろいろ申し上げましたけれども、いわゆる日本の消費者団体が目指すべき像というのを、そこに幾つか挙げました。重複する視点が多分にあります。

1つ目が、企業社会との拮抗力をちゃんと確保する。そうした消費者団体が必要だと思います。

政策提言能力の継続的な確保をする、そういう力のある消費者団体が必要だと。

あるいは消費者の教育や啓発事業をちゃんと自前でできる、こういう力を持った消費者団体が必要です。

あるいは情報の発信の仕方に、きちんと時代の変化に即応して、SNS等の活用に熟達をした消費者団体が必要ですし、自分たちだけではなくて、専門家、学識者にちゃんと協力いただけるような、あるいは連携していただけるような、そういう団体が必要だということ。

諸外国とちゃんと対等に交流をし、あるいは議論ができる、そういう消費者団体が、これからの時代は求められているのではないかなと思っております。

勝手なことを申し上げましたが、以上、私の経験から申し上げました。

以上です。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

続きまして、金城学院大学教授、丸山様、よろしくお願いいたします。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 丸山と申します。

本日は、このような機会を頂き、ありがとうございます。

今回私は、海外の消費者政策の中での消費者団体の役割や、行政との関わりを中心に紹介するというお役目を頂きましたので、御報告させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

まず、2枚目に内容がまとめてあります。海外の消費者政策体制に関しましては、2022年に消費者庁の委託で、WIPジャパン株式会社がまとめた「海外主要国における消費者政策体制等に係る調査業務報告書」がございます。

この報告書は、海外の主要な国の消費者政策機関とその仕組み、最近の取組がまとめられており、大いに参考になります。

ただ、ウェブサイトや文書で公表されている情報というのは、公表側の理想がまとめられていることも多く、実態は少し違っていたり、現状がよく分からなかったりということもございますので、ここでは、私が現地で情報収集した調査結果なども併せながら御紹介したいと思います。

3枚目のスライドを御覧くださいませ。

「海外の消費者政策における消費者団体の役割」というところですが、海外で行政と消費者団体の連携体制が整っている国は、消費者のことは、直接消費者と関わりを持っている消費者団体に任せたほうが効率的で効果的だという考え方を持っています。

欧州などの消費者保護体制が進んでいる国においては、消費者問題は経済・産業に影響するため、産業の発展と消費者保護の両側面のバランスを考えて政策を運営することが、国の発展につながると考えていることが多いです。

次のスライドですが、例えば、イギリスの行政機関は、企業と消費者との問題が速やかに解決できれば、コストを抑えられ、ビジネスの効率も良くなるため、国としてメリットがある。そういった意味で、消費者問題の解決の手助けをする消費者団体は政策的に重要な役割を担っていると言っておられました。

消費者政策部門がビジネスの省の中に入っているというのは、消費者と企業側の立場の両方のバランスを取りながら、どのレベルまで消費者を守るべきかということを考慮する必要があるからです。

つまり、消費者政策部門と産業育成部門は二人三脚であると考えられており、消費者をどこまで保護するか、その裁量は行政の腕にかかっています。

なお、イギリスの消費者政策機関がインタビュー当時のBISからBEISに移っております。このことに関しましては、資料のほうに注記しておきましたので、御参照をお願いいたします。青色の文字のところです。

5枚目ですが、フランスの消費者政策機関ですが、これはDGCCRFと言いますけれども、消費者相談や消費者啓発は、消費者と直接接触することがない行政より消費者団体が行ったほうが効率的・効果的であるという考え方をしているとのことでした。

ドイツの考え方もこれらと同じ傾向のようなのですが、民間の組織に任せる傾向が強いようにも見受けられます。

次のスライドですが、これまでに私が欧米、アジア、オセアニア諸国を回ってきまして、行政の考え方には、幾つかの類型があると感じております。

この表を御覧くださいませ。

大きく分けると、①は政府主導で消費者保護を進めるというより、消費者団体やNPOが中心になっている。

②が、行政が独立した消費者団体と連携して政策の一部を担ってもらう。

③、消費者団体が行政の出先機関のようになっている。

④、行政中心で消費者団体の存在感が薄いというところです。

ドイツに関しましては、①の要素も少しあるように思いましたので、②から少し上のほうに寄っております。

次のスライドで、①についてですが、イメージとしては、アメリカが代表的です。アメリカは多種多様な消費者団体やNPOが活動する基盤ができており、消費者保護に関しまして、政府が担当するというより、各団体がそれぞれの役割を果たしているという感じです。

政府としましては、消費者保護は各州政府やそれらの団体に任せ、医療や食品安全性など、影響が大きい特定分野につきましては、FDAなどが対応しているというイメージです。

次に②については、イギリスやフランス、ドイツといった欧州で消費者政策が進んでいる国が該当します。

ただし、ドイツは消費者団体や関連組織に役割を分担し、政府はがっつり関わっていない可能性があります。

私が2014年に消費者政策担当の官僚にヒアリングをさせてもらったときは、しっかり関わっている印象を持ったのですけれども、2023年現在で、担当省が変わっておりますので、同じ状況ではないかもしれないと思っております。

その点につきましては、現在、調査中なのですけれども、アメリカと同様、連邦政府で産業政策を推している印象もありますので、程度の差はあれ、消費者団体や関連組織に任せているという点では、欧州の中ではアメリカに共通する点があるのかもしれないと思っております。

次に③ですけれども、アジア諸国にその傾向が見られるように思っています。例えば、マレーシアに1973年に設立されたFOMCAという団体があるのですけれども、そこはマレーシア各州の消費者団体の連絡組織です。政府との関わりが密接でありまして、一定の財政援助というのは、国営企業とか中央銀行からプロジェクトのための助成金などをもらっています。

また、省庁レベルの複数の常設諮問委員会のメンバーとして、政策を立案したり、実際に携わったりしているということで、政府に対して提言ができる立場にあるといいます。

ちなみにマレーシアには、ペナン消費者協会、CAPと言われている独立したアジアの中心的な団体もありまして、そこは行政とは距離を置いているということです。

次のスライド、香港のことですけれども、香港消費者委員会というところがありまして、そこが国で唯一の消費者団体です。

運営資金は、政府が95パーセント出資しています。雑誌が有名なのですが、その売上げは収入の2から3パーセントです。

この組織の活動は、消費者委員会条例というものに規定されておりまして、政府からの干渉は一切ないということでした。

出資を受けているという面では、政府の影響を強く受けるのですけれども、消費者政策に関する監視役なので、政府が消費者の利益に反するような政策を取る場合は、それを指摘して助言しなければなりません。

消費者委員会は中立機関として、政府に対する御意見番の役割を務めておりまして、その意見は尊重されているということです。

ただし、これらの情報も2013年当時のインタビューによるもので、あれからかなり香港は変わっておりますので、事情が変わっている可能性はあるとは思います。

④につきましては、日本が該当します。行政が行き届いており、消費者団体の出番が少なくなっています。政策的に、今、注目されている適格消費者団体は、弁護士中心の訴訟を武器として消費者保護政策を推進するために活動する団体ですので、一般消費者の生活に直接関わる消費者団体とは性質や立ち位置が違うものであると思います。

このカテゴリーにある国では、消費者団体は認知度が低い、予算が厳しい、人材を確保できないという理由で育っていないという状況にあります。

次に、12枚目のスライドになりますけれども、海外で消費者団体が政策的な役割を担っている事例の紹介のところに移ります。

どのような団体がその役割を担っているかにつきましては、時間の都合上、先進的な事例を紹介したいと思います。

政策提言をするためには、消費者相談や啓発を通して、消費者のことをよく知っている必要があるのですけれども、欧州ではこのような政策機能を担わせるために、消費者団体に支援をしています。

13枚目、イギリスに関してですが、まず、政策の一端を担っている消費者団体としまして、イギリスでは、シチズンズ・アドバイスという団体が消費者相談を担当しています。この団体は、市民への助言を行う民間の非営利団体です。相談活動を行う団体としては英国最大の規模を誇り、80年以上の歴史を持っています。

国民が無料で各種アドバイスを得られる慈善団体として認識されておりますが、資金源の6割は政府機関からとなっています。

シチズンズ・アドバイスは、消費者への助言及び情報提供、消費者教育業務に対して、公的資金配分を受けています。どのような金額かというのも、青色のところで書いておりますので、御参照くださいませ。青色ではなかったです、普通に書いてありますが、省略をさせていただきます。

14枚目ですけれども、政策提言の例です。イギリスの政策提言の例なのですけれども、2011年にそれまで12あった消費者保護に関する法律が整理されて3つになりました。

これらの消費者保護に向けた法律を改革するプロセスにおいて、消費者団体の意見を反映したということでした。

この改革が検討された当初、準備段階として、できるだけ多くの消費者団体の意見を聴くことが重視されました。

まず、非公式に消費者団体や企業や法律の専門家とのミーティングを個別に行った後、消費者団体や企業を一堂に集めて討議しました。

このときは、イギリスを代表する消費者団体であるWhich?を始め、相談業務を中心にしている消費者団体から意見を聴いたということでした。

15枚目のスライドで、Which?について御紹介しておきたいと思います。

Which?は雑誌が有名な独立した団体で『Which?』という雑誌を出しておりますけれども、この雑誌収入がメインになります。

そのほか、2014年の段階で、ビジネスとして成功したものに、住宅に関するアドバイスというのがございます。

これは、出版事業の利益を新しい事業へ回した例で、定年退職した高齢者、引っ越しをする人、住宅ローンに関するアドバイスが必要な人々を対象とした住宅市場をターゲットとするサービスです。

このオンラインページを立ち上げたことにより、ウェブサイトの閲覧回数が大幅に増えたということです。この分野が伸びたため、ブリストル支部を拠点とした運営を強化したということでした。

現在は『Which?Money』というマガジンを定期購読すれば、雑誌のほか、Money Helplineというサービスが受けられまして、一対一の電話相談が何度でも1回につき何分でもできる仕組みになっているようです。

次に、フランスにまいりますが、政策の一端を担っている組織としましては、国立消費研究所というINCという団体がございます。これは、公共企業なのですけれども、私企業の運営形態になっています。

活動内容は、日本の国民生活センターと似ていると思うのですけれども、従業員は会社員と同じということでした。少し不思議な仕組みになっていますので、16のスライドの青色のところに付けておきましたので、また御参照ください。

このINCは、国からの助成金が年々カットされるために、どんどん小さなオフィスに引っ越しており、欧州委員会のプロジェクトなどを獲得して資金を担っていると聞きました。

次に、17番目のスライドでございますが、政策提言をする消費者団体ですが、フランスには15の認可消費者団体がありまして、その中で純然たる消費者団体、これは消費者問題を専門に取り扱う団体という意味なのですけれども、フランス消費者同盟、UFCとCLCV(消費・住居・生活環境連合)という団体、この2つだけなのです。

UFCは雑誌が有名なのですが、活発に訴訟する団体で、日本の適格消費者団体のような一面と、一般的な消費者団体の面とを併せ持つような団体です。

UFCについても、18枚目のスライドに説明を挙げてあります。

この団体は、1951年に設立されたフランス最大の消費者団体で、ヨーロッパで最も古い団体です。

このUFCが始めた集団購買という新たなビジネスチャンスがありまして、現在、多くの団体に広がってきています。

集団購買というのは、UFCが2013年に最初に始めたプロジェクトで、ガス会社全社に対して入札をさせて、消費者に代わって一番安い業者と契約をするというものです。

消費者は、この契約に乗っかれば良いということになります。初年度に入札した会社は、一社だったそうなのですが、このプロジェクトは高く評価されました。

ガス会社と契約する際の契約書は、UFCで作りますので、一般的な契約内容より消費者の保護に手厚い契約内容になります。

消費者側に問題があった場合、UFCが代わって責任を持つことになります。

集団購買は、その後いろいろな団体で採用されています。インターネット契約や、ガスや灯油などのエネルギー、それから健康保険、学校用品などに広がっています。

ただし、この集団購買は、入札、交渉、競売などで納入業者を決める仕組みとなっていることや、独立性に問題が発生した場合は、認可団体としての資格を失うということが、会計検査院から問題として指摘されています。

次に、19枚目のドイツですけれども、政策の一端を担っている組織は、ドイツ消費者団体連盟、VZBVと言いますが、こちらが総括的に支部の消費者団体を取りまとめています。

それまで、3つの主要な団体が存在したのですけれども、2000年に1つに統合されて、ドイツ政府の支援団体を一極に集中させるという形を取ったようです。

これにより、VZBVを中心としたドイツ各州の16の消費者センター及び25の消費者団体が連携することになりました。

現在は、16の消費者センターと27の消費者団体及び9つの支援団体を統括するようになっているようです。

資金の大半は政府からのものです。ただし、ドイツも政権と消費者担当の政府機関が変わっていますので、新しいことは、現在、調査中です。

それから、消費者団体の運営上の工夫なのですが、VZBVは活動資金を補強するために、2010年にドイツ消費者保護基金というものを設立しました。

これによって、公共機関だけでなく、民間人、企業、各種団体も消費者保護に貢献することができるようになりました。現在、この消費者保護基金は、消費者教育活動に取り組んでいます。

次に、3番目、「行政は消費者団体を政策的に機能させるためにどのように関わっているか」というところですが、1つ目はアメリカです。21枚目のスライドになります。

アメリカでは、政府から支援を受けている団体はありません。その代わり、消費者団体は寄付者に対する税額控除や連邦政府からの委託事業が可能となる団体の地位を獲得できる制度があります。

実質的に、このようなNPOに対する優遇税制措置の恩恵を消費者団体も受けておりますので、間接的支援があるという見方がなされています。

次にフランスなのですが、これまで認可団体に補助金を渡してきたのですけれども、消費者団体という名前が付いた、消費者保護に対応していない団体に配分されていることが問題になっていました。

そのため、政策の方針としては、2021年に、ここ3年以内にプロジェクトごとの補助金に変えるという勧告が出されました。そのほうが、補助金が固定的な認可団体に限られず、効率的・効果的に資金を投入できるためということです。

23枚目のスライド、「4.海外と日本の違い」ということで、日本の現状を考えますと、消費者団体の存在感・影響力の弱さは、政策的な位置付けがはっきりしないことに起因していることが考えられます。

つまり、消費者団体の政策的な位置付けが不明確、消費者の認知度が低く、応援体制が整っていない。専門性を評価される機会が少ない。名誉・やりがいが不足している。国民の意識が消費者団体に向いていないというような状態になっています。

今後、行政の効率化や消費者の生活を向上させていくことを考えるなら、適格消費者団体以外の消費者団体にも支援を行い、役割を与えることも検討していくべきではないかと考えております。

報告は、以上となります。御清聴ありがとうございました。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

以上で皆様からの発表が終了いたしました。これより、全体を通しての質疑応答と意見交換といたします。時間は45分程度でお願いいたします。

委員の方々いかがでしょうか。

生駒委員、よろしくお願いします。

○生駒委員 皆様、御説明ありがとうございました。

私、丸山先生に御質問をさせていただきたいと思います。前半いろいろと日本の消費者団体の問題を御説明いただいたのですが、最後に海外の例をいろいろ教えていただきました。

今、日本の消費者団体の問題としては、手が少ないですとか、消費者の関心が薄いということが指摘されているのですけれども、海外、各国、かなりいろいろな活性化した状況をお聞きしたのですが、やはり同じような同様の問題が各国で起こっているのでしょうかという質問が一つです。

もう一つは、各国のいろいろな積極的な取組というのを聞かせていただいたのですが、丸山先生が今の時点でお考えになるところで、とりわけどういった活動と言いますか、対策を日本の今の状況に取り入れるのが有効であるか、そういったことについて、お聞きできますでしょうか。

○後藤委員長 お願いいたします。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 御質問いただきまして、ありがとうございます。

各国で、若い人に関心があるかどうかということですか。

○生駒委員 全般的に、日本では、とりわけ若い世代が、自分が消費者だという意識も薄いという状況があるのですが、各国ではいかがでしょうか。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 日本は、海外に比べると消費者問題という分野に、専門性とかステータス性があまり認められていないようなところがありますが、海外では消費者問題の専門家というのは、専門家として認められているのです。ですから、消費者団体に入るということは、専門性を身に付けているということの象徴でもあるといいますか、ですから、消費者団体にいたという、専門家の肩書きを持って、ほかの一般企業に移ることもあるようです。良いところに転職したり、オランダの例などですと、Googleに移ったという人がいました。コンスメンテンボンド(Consumentenbond)という、雑誌が有名な団体があるのですけれども、そこにヒアリングに行ったときに、わざわざ転職した人も呼んでくださって、「つい最近移ったのは彼です」と紹介されました。「なぜ移れたのですか」と尋ねたら、「消費者問題の専門家としての知識を評価された」ということをおっしゃっていました。

そういうことで、消費者問題に関する関心が高いのと、地位が高いといいますか、だから、関心は日本ほど低くはないです。もちろん、お給料がそんなに良いわけではないらしいのですが、普通ぐらいらしいです。弁護士さんが、消費者団体で働いておられたので、給料のほうはどうですかと、失礼ながら伺ったら、弁護士事務所にいたほうが給料は良いのですけれども、私はやりたいことをやると、社会に貢献したいということで、こちらにいますということをおっしゃっていましたので、そういう意味で、人材にはそんなに困っていないという印象はございます。

○生駒委員 若い層の方も、同じくでしょうか。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 そうですね、若い層も、そういう消費者問題の専門家になろうと思って入ってくる人が、一定はいます。そんなにたくさんいるかどうかは分かりませんが、私が回るのは、大体その国の主要な消費者団体なのですけれども、来る人がいなくて困るという話は、聞いたことはございません。

○生駒委員 学校教育の中でも、消費者問題は熱心に取り入れられているのでしょうか。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 学校教育でも取り入れられていると思いますけれども、それは、日本でも結構教育には熱心に取り組んでおられるのではないかなと思っております。その点に大きな差を感じたことはないのですけれども、消費者団体を志望する人、志向する人がいないという点においては、日本はかなり差があるなと感じております。

よろしいですか。

○生駒委員 ありがとうございます。

そうしたら、2つ目の質問で、諸外国でいろいろな策が取られているわけですが、今の日本の消費者団体の現状の中で、どういったことを取り入れると有効だとお考えでしょうか。いろいろ優先順位があると思うのですけれども、まず、これを取り入れてみたらどうですかという御提案がありましたら教えてください。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 一番簡単なというか、コストがあまり掛からないのではないかと思うところですと、例えば、フランスにCNCという全国消費者委員会という組織があるのですけれども、それは、DGCCRFという政府機関が議長を務めて、消費者団体と事業者からなる消費者議会で、認可団体が参加できるようになっているのです。毎年議題を決めて意見書を出しているという、そういうことがあります。

これに似たようなことも、多分日本でもやっているかもしれませんけれども、かなり消費者団体の数が少ないとか、限られているということがありますので、もう少し消費者団体の意見をくみ上げられるようなネットワーク作りというのを、日本でも行政の主導でやればどうかなと思うのです。

日本の場合、消費者団体の政策参画も形式的なものになっていると聞いたり、そういう印象を受けたりしますので、例えば、特定の団体の、特定の人たちが審議会委員になっているのですけれども、それは個人対応の範疇とか、その団体の代表という範疇ですので、もっと消費者団体全体として、政策の運営に参画するような体制を作っていけばどうかなと思います。

それで、いろいろな意見も出てきましょうし、その中で考え方とか方針の合う団体が協力とか統合をしていくことが、できることもあるかもしれませんし、広くいろいろな意見を集約できるのではないかと思っています。

よろしいですか。

○生駒委員 ありがとうございます。

日本でも消費者庁が消費者志向経営という企業の表彰制度を始めていますので、消費者の意を酌んだ経営、ものづくりに対して評価を与えるという動きは出てきているのですが、今、おっしゃったようなネットワーク作りは、日本でも必要かなとも思いました。ありがとうございます。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、清水委員、よろしくお願いいたします。

○清水委員 清水です。御説明ありがとうございました。

今の質問の関係でもあるのですが、丸山先生にお願いしたいのです。最後の海外と日本の違いというスライドのところで、まさしく専門性を評価される機会がないだとか、名誉・やりがい不足、国民の意識というので、本当に納得してしまいました。

私は、全相協の相談員の職能団体です。行政の消費者団体に対する意識というのは、今、適格消費者団体しか向いていないように思います。従来の消費者団体を大切にしていないのではないかと、私も地元で思うところでございます。

ただ、地元の消費者団体の方たちの高齢化ということもあるので、どうやってネットワークを作りながらやっていくのかなというのは、名古屋の課題ではあります。

名古屋市消費生活センターでは、最近少し明るい話題として、中学生が職場体験に来ていただいて、私も対話を積極的にしていますが、相談員になりたいとか言ってもらえて、何か力をもらったということがあります。コロナ禍で一時は中断しておりましたが、また再開して、職場体験に来ていただいています。今までは第2希望、第3希望という中学生が来ていたのですが、最近は第1希望で消費者行政に来てくれるという若者が増えてきました。うれしい限りです。

しかしながら、中学、高校、大学と進む中で、実態としてなかなか消費者行政に就職ということも難しいですし、消費者団体というのは、就職先ではないということがあります。

こういった若者が学校の中で消費者行政を知りながらやっていこうと思っても道がないです。こういったことからも環境整備というのは、どう考えたらいいのかというのと、私たちが今、若者のトラブルを多く聞いているのですが、もっと違うところで、一歩前で一緒に啓発をしていきたいと思っているのですが、なかなか一緒にやっていこうというきっかけもないのですが、今後、若者がどうやって消費者問題の分野に新規参入していくかという、何かきっかけとかアドバイスを頂けたら幸いでございます。よろしくお願いします。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 ありがとうございます。

まず、消費者保護に関わる人材への十分な賃金が必要かなと思うのです。消費生活相談員になっても、あまりお給料が良くないということで、なかなかなり手がなかったりとかするのですが、とても大切な、重要な仕事ですので、国家資格にはなったみたいですけれども、それなりのステータスと、お給料が払われるような仕組みづくりを、まずしなければいけないのではないかなと。

それに関連しまして、専門職としての採用枠みたいなものを作って、若者が公務員を希望する中で選んでもらうような仕組みづくりとか、そういうものも必要なのではないかなと思います。

そして、消費者団体とか、そういう消費者問題の専門家としてのステータスを得るためには、やはり、行政側が消費者団体に一定の役割を与えるといいますか、ちゃんと仕事があって、社会的意義が感じられれば、やはり目立ちますし、あと行政からもアピールしてもらえますので、そういった中で仕事として認識されるようになっていくのではないかと。

現状では、地位がはっきりしない、関心も集めない、お給料もあまりないということで、消費者問題の専門家としての将来性は尻すぼみのような感じになっておりますので、その辺を、もう少し国を挙げて取り組むことができれば変わると思うのです。

それをしなければ、消費者団体の人が頑張っても変わるものではないと思いますので、その辺を、今、こういうことを政策的に取り上げてくださるようになったということは、すごく大きな進歩だと思っておりますので、この流れで進めていただければいいなと思っております。

○清水委員 ありがとうございました。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、飯島委員、よろしくお願いいたします。

○飯島委員 飯島でございます。貴重な御報告を頂きましてありがとうございました。

消費者団体への行政の関わり方につきまして、先生方全員に、簡単で結構ですので御教示いただきたくお願いいたします。

御報告をお伺いして私が関心を抱いたこととしまして、まず新川先生につきましては、12ページで、中間支援組織を通じて教育や創業支援をすると御提示いただき、国・地方公共団体が直接関わるというよりは、中間支援組織を介在させることをお考えなのかと理解いたしました。

また、飯田様につきましては、企業社会への意見発信とか拮抗力の確保ということを印象深くお伺いしました。民民の市場の中で役割を果たしていくということや、消費者団体に対するNPOなどの支援といったことから、民の中でとお考えなのかと受け止めました。

それに対して、丸山先生は、比較研究として、政策を担っている組織と政策提言をする消費者団体とを分けて御紹介くださり、最後の23ページで、日本については、消費者団体の政策的な位置付けが不明確であるという問題を指摘してくださいました。ただ、消費者団体については行政の下請と化すことへの懸念も強い中で、政策的な位置付けに関してもう少し具体的に教えていただく形で、行政の関わり方について御教示いただけましたら有り難く存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

○後藤委員長 それでは、それぞれの方々にお答えいただくということで、まず、新川様からお願いいたします。

○同志社大学新川名誉教授 御質問ありがとうございました。

特に飯島先生から、今、お話がございました行政との関係で、消費者団体をどういう形で支援をしていけば良いのか、あるいは消費者団体の成長というのを考えていけば良いのか、活躍できる環境づくりをしていけば良いのかという観点で御質問を頂きました。そのときに、私自身は、やはり直接的な行政介入ということについては、必要な場面、現実にそれが求められている場面があろうかと思っておりますが、もう一方では、やはり市民活動それ自体の持っております様々なポテンシャルを抑制してしまう側面というのも大きいのではないかと思っておりまして、そこの関わり方の中に、ある種のバッファーゾーンを設けていく必要があるだろうと思っています。

そのバッファーとして中間支援ということを、今日は、特に強調をしていました。ある意味では、こうした中間支援組織というのが介在をすることで、行政と消費者団体、消費者運動との間に、ある種の障壁を作り、しかし、なおかつ双方がそれぞれの主張を的確にしていくことができる、市民団体が市民団体としての自主的な活動を続けることができる、そういう状態をどう作るかというときに、この中間支援の大きな役割があるだろうと思っています。

具体的には、こうした中間支援が、こうした消費者団体あるいは消費者運動を考えている一人一人の市民、それぞれの活動や、あるいはそれぞれの考え方というのを磨き上げ、そして、それを自分自身の行動に結び付けていけるようなチャンス、それをどう提供するかというところに、この中間支援の大きな役割があると思います。また、そうした教育活動をやっておられるたくさんの消費者教育に関心を持っておられる団体もいらっしゃいます。

ただし、そういうところは、極めて基盤が脆弱なところが多く、そういうところにどういうふうに支援ができるかというときに、行政が直接支援するのではなくて、こうした中間支援的なところが、例えば、各都道府県単位で活動してくだされば、理想だと思っています。しかも、それが別に消費者団体向けだけではなくて、市民活動一般の支援でも良いと思っていますが、同時にその中にこうした消費者活動に向けての支援ということが、きちんと位置付けられていくというのが大事かなと思っていました。

そういう方向で、これからの中間支援というのを考えていくことが、行政とそして市民団体との適正な関係というのを作り上げていく。そして、市民団体そのものの活動を活性化していく鍵になるのではないかと考えています。

とりあえず、以上です。

○後藤委員長 ありがとうございます。

それでは、飯田様、お願いいたします。

○前・全大阪消費者団体連絡会事務局長飯田氏 ありがとうございます。

いろいろ幾つかの視点から意見を申し上げたのですけれども、まず、僕は日本の消費者団体は、もっともっと研さんを積んで、自らの力を蓄える必要があると思います。

やはり社会的にきちんと評価されるような見識をきちんと持った団体が幾つも存在すると、そういう環境を自らの努力によって作る必要があると思います。

そういうことが、例えば、企業社会との関係でいうと、ちゃんとした拮抗力を確保しつつ、継続して確保するということにもなるでしょうし、行政庁との関係でも、政策提言能力をちゃんと評価されることにつながるのだと思います。

逆に行政庁から見たときに、そういう消費者団体を育てる観点も必要だと思います。そのためには、繰り返しになりますけれども、審議会への参加枠をもっと増やす、抜本的に増やすということだとか、あるいは意見表明あるいは意見交換を双方向でやれるような場を行政庁がきちんと作るということが求められると思います。

また、新川先生もおっしゃったのですけれども、いわゆる中間団体の役割も非常に重要で、日本の社会では、そういう役割を果たす団体は極めて限られているというか、もう皆無に等しいのかもしれませんが、僕が挙げたデンマークのフォルケホイスコーレのような役割を果たすようなNPOを日本社会できちんと位置付けて育成をする。それを通じて、消費者団体だけではないですけれども、いろいろな市民活動を支えるような人材を養成していくという視点が、中期的な視点では必要になっているのではないかと思いました。

以上です。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、丸山様、よろしくお願いいたします。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 政策的な位置付けとして、どのような役割があるかというところだと思いますけれども、海外のところで御説明しましたように、消費者教育、啓発とか相談業務を消費者団体に任せたほうが効果的・効率的ということが言われておりますので、日本でも、そういうところを消費者団体に一部任せるとか、そして、委託金を下ろすとか、私が今、理事の代表をさせていただいている関西消費者協会でも、そのような大阪府からの委託事業を請け負っているのですけれども、なかなかそれが安定的ではないというか、そういうところで、すごく消費者団体の存続そのものが不安定な状態になります。

そうすると、安心して活動できないですし、どんどんスキルアップしていこうと言っても、来年どうなるのだろうみたいなことにもなりますので、もっと消費者団体が安心して活動できるような基盤を整えるべきではないかなと思っているのです。それが1点です。

もう一つは、多数の消費者の意見を拾うという意味では、これは消費者団体よりも、もう少し広い消費者の意見を拾うという意味では、最近流行のSNS、そういったものも有効なのではないかと思っているのですけれども、これは、企業はよくマーケットリサーチに使ったりするのですけれども、政策運営側としても、どんな意見があるかというのを知るために使えるのではないかと、私はその辺、あまり詳しくないので、もし違っていたら申し訳ないのですけれども、そういうことをするのであれば、情報は玉石混合ですので、必要なものと、そうでないものを取捨選択するために、消費者問題の専門家、専門組織、こちらを通したら議論が整理されるのではないかなと思うのです。

ですから、消費者団体とか消費者問題の分析を取り扱うシンクタンクなども今後できればいいなと思うのですけれども、それが、また、消費者問題というジャンル自体があまり、お金を生み出さない分野になっておりますので、そういうことが可能かどうかというのは分かりませんが、個人的には、そういうビジネスチャンスはないのかなと思ったりもしています。ありがとうございました。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

飯島先生、よろしいでしょうか。

○飯島委員 どうもありがとうございました。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、受田委員長代理、よろしくお願いします。

○受田委員長代理 受田です。御発表ありがとうございました。

3人の先生方のお話をお聞きしていて、一つキーワードは、消費者全体を代表する意見というのが挙げられるのではないかと感じました。

そこで、素朴な疑問なのですけれども、それぞれのお立場で消費者全体を代表する意見というのは、どういうことをもって代表する意見とみなし得るのか、ここをお伺いしたいと思います。

一方で、代表することによって、ある意味、マイナーなと言いますか、代表的な意見とは違った視点からの意見が枠から外れてしまう懸念があると思います。

そういった多様な意見に対しては、全体を代表する意見との間に、もしかすると矛盾が出てくるように思うのですけれども、それをどういうふうに考えるかということを伺いたいと思います。

それらと関連するのですけれども、政策提言をしていく前提というのは、全体を代表する意見でなければならないのか、あるいはそうとも言えないのか、この観点から、それぞれのお考えをお聞きできれば幸いでございます。

以上です。

○後藤委員長 どうもありがとうございます。

それでは、新川様、よろしくお願いいたします。

○同志社大学新川名誉教授 御質問ありがとうございました。

全体を代表するという言い方自体が、様々な意味を持っているかと思います。一人一人の意見の集合、その多数、少数ということで代表という言い方をしている場合には、これは、ある種の個人の代理でしかありませんので、本当に全体が何を考えているのかということを集約するということにはなりません。

したがいまして、ただ単に同じ意見の人の数を計算して半数以上の多数の意見、半数未満の少数の意見というのに分かれると言っているだけのことになります。

さて、私たちが全体代表ということで考えなければならないのは、本当は、その意見そのものが持っている社会の中で選ぶべき方向として、それが適切なのかどうかを考えなければならないという点です。そこで導かれるのが、恐らく全体を代表する意見ということになります。

いわば、個人の意見の集合ではなくて、むしろ全体を見通した上で団体あるいは個人がその尺度に沿って持っているべきだと考える意見として、代表というのが出てくると考えています。

したがいまして、代表というのは、単なる数的な集合ではなくて、むしろ全体のこと、社会、公益を考えて、その尺度でもって自らが発出する意見と考えていただいたほうが良いのではないかと思います。

そうすると、実は多数派の意見であれ、少数派の意見であれ、その中に社会の中で私たちが考えなければならないと思っている意見があれば、それ自体が代表するべき意見として出してこられて然るべきではないかと思っています。そうでなければ、少数派の意見というのは、常に圧殺をされるということになってしまいます。

その点でも政策提言ということとの関係で言えば、やはり単純に全体を数的に代表するから、マジョリティだから政策提言ができるということでは決してないだろうと思います。正に少数派であるからこそ、そうした声というのが、社会の中で圧殺されてしまわないように、そうした声を大切に、その持っている社会全体の利益ということを鑑みて、政策提言をしていくということが、本来の政策提言の意味だと考えています。

言ってみれば、本当に私たちの社会が、ノーマライゼーションであるとか、あるいは最近のLGBTQの問題であるとか、こうした問題に直面したときに、本当の意味での公益ということを改めて考えさせられるというケースが多数ございました。

消費者問題も然りであります。いわば、本当に困った問題を抱えている少数かもしれませんが、その消費者のために社会全体が何ができるのか、そういう観点からの政策提言というのが、正に公益的ですし全体を代表する意見になるのではないかと、そんなふうに理解をしております。

お答えになったでしょうか。以上です。

○後藤委員長 ありがとうございました。

それでは、飯田様、よろしくお願いいたします。

○前・全大阪消費者団体連絡会事務局長飯田氏 ありがとうございます。

御質問に対する私の回答は、スライドの1番目に集約されているかなと思っております。

繰り返しになりますけれども、網羅的に代表するのは不可能に近いと思います。そうなのですが、それぞれの団体が研さんを積んだ上で、意見発信あるいは政策提言を発信するときには、我が団体の意見はこうですということだけではなくて、その意見がどういう客観性なり根拠をちゃんと持っているのかということが説明できなければいけないと思います。それが、できるだけ範囲の広い消費者の意見を代表するということを、頭のどこかに置きながら発信し続けるということが、やはりその団体の役割ではないのかなと思います。

ですので、意見発信をする際には、そういうほかの観点もあるのだということも承知した上で、ちゃんとまとめると、意見を述べるということが必要です。

そのためには、やはり日頃から異なる意見だったり、あるいは少ない割合の意見だったりするところと連携をしておく、お付き合いをしておく、一緒に議論をするという関係があれば、自分の団体だけの意見を述べるということだけではなくて、例えば、こういう意見もあるのだということが分かった上で発信をするということが可能になるのだと思います。そういう消費者団体同士の連携だとか交流だとかというのが、日常的にできていないといけないということだと思います。

発信された意見が、社会的な評価をちゃんと受けているかどうか、これは、なかなか検証し難いことなのですけれども、日本の消費者団体の場合は、日常的にあまり注目されませんので、例えばですけれども、何か消費者事件だとか事故が起こったときに、例えば、企業から意見が求められる団体あるいはマスコミからコメントを求められる団体というのが幾つかあるのだと思うのですけれども、そういう機会に日常的にはなかったとしても、幾つかの団体が認知をされていると、社会的な評価を受けているのだと捉えることも可能かなと思っております。

以上です。

○後藤委員長 ありがとうございました。

それでは、丸山様、よろしくお願いいたします。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 全ての消費者を網羅的に代表するというのは、不可能ですので、まず、先ほど申しましたような、相談とか啓発をしている消費者団体の意見であれば、困っているとか、また、教育されているような消費者の状態をよく知っている団体、そこが出す意見であれば、かなり幅のある意見が出てくるのではないかということで、代表するとみなすしかないのではないかと思うのです。

もう一つは、まずは、多数の消費者のところに焦点を合わせて、それ以外に入らなかった人々というのは、問題が出てきたときに、別途丁寧に対応していくというような形で進めていくのがよろしいのではないかと考えます。

よろしいでしょうか。

○後藤委員長 受田委員長代理、よろしいでしょうか。

○受田委員長代理 はい、分かりました。ありがとうございます。

○後藤委員長 それでは、大石委員、よろしくお願いいたします。

○大石委員 御説明、皆様ありがとうございました。

私からは、先ほどの飯島先生の質問と少し重なりますが、中間支援団体のことで、もう少し教えていただければと思います。

新川先生の御講演の中にも、それから飯田さんのお話にも、フォルケホイスコーレが入っておりましたが、今の日本の消費者団体は、まず、人材面でも経済的な面でも自分たちの活動をどうやって維持するかということも大変で、なかなか中間支援団体という構想がない状況です。これは、行政ということは考えられるのですけれども、例えば、企業の方の中で、先ほどプロボノの話もありましたけれども、何か消費者志向の一環として、こういう消費者団体に貢献するような、それは経済的であったり、人材的な面でもあるかと思うのですけれども、そういう可能性というのはあるのかどうかというのを、新川先生と、それから飯田さんにお聞きしたいと思います。

それから、丸山先生には、実際にフランスなどは、それがあるというお話だったのですけれども、そういう場合の企業の関わり方は、どうなっているのかというのも、もし、お聞きできればと思います。よろしくお願いいたします。

○後藤委員長 それでは、新川様からお願いいたします。

○同志社大学新川名誉教授 御質問ありがとうございました。

中間支援については、もちろん様々な中間支援の形態が考えられますし、既に日本国内でもいろいろなタイプのものが動いていて、なおかつ市民活動にとって本当に有効かどうかいろいろ議論のあるところです。

これが消費者団体にとって、あるいは消費者活動を志す人たちにとって、どのくらい有益になるのかというのは、まだまだ現実の問題としてしっかり立証していかないといけないところもあるのですが、今、これまでの日本あるいは世界でのこうした団体の活動から考えていったときに、やはり、消費者運動あるいはそれに関心を持つ人たちというのが、自らの力を付けていったりあるいは活動を活発にしていったりするときに、こうした支援の仕組みというのは必要だろうと思います。

それが政府や企業の補助金を直接もらって活動するということになれば、大きな制約というのがそこには考えられると言わざるを得ない。これも世界の趨勢で、そうなのですが、そうすると、いかにしてそうした政府の影響力というのを遮断して、なおかつ、本来の消費者活動、消費者運動に沿ったお金の使い方をしてくれるような、そうした個人、団体に資源を回していくことができるかということを考えるとすると、こうした中間支援型の組織というのが必要になってくることになると思います。

もちろん、作り方自体は、民間の資金でもって米国のように巨大な支援財団ができ上がるというようなケースもありますし、日本の場合のように、どちらかというと情報を仲介するような比較的お金を必要としないNPO支援の中間団体というのがたくさんできると、そういうケースも考えられます。

ただ、これからは、こうした分野へのお金の回り方や、あるいは人材の在り方ということを考えていく、そういう時期に来ているかと思います。まだ、消費者分野にそれがきちんと向いているとは言えないのですが、例えば、同じ内閣府ですが、休眠預金活用法というのがあって、かなり大きなお金が市民活動団体、社会福祉分野が中心なのですが、福祉団体に回るような仕組みが、今、動き始めています。

このように、お金の側面で言えば、新しい枠組み、仕組みというのが動き始めているということもあります。こうした経済的な支援の側面での中間支援の可能性というのが一つは出てきているかなと思っていますし、それは、今日もいろいろお話が出てきましたクラウドファンディングのお話だとか、民間の基金の造成であるとか、様々に考えられるかなと思っています。

もう一つは、やはり人的な側面です。学校教育もそうですけれども、現在の教育機関そのものが、非常に大きな制約の下にあります。私自身も大学に長くおりましたけれども、本当に社会に必要な教育、そして、本来は社会人基礎力として身に付けるべき教養というのを、必ずしも十分に教育するということができないで来てしまっているという現実があります。

その中で、どのようにこういう教育システムを充実させていくのか、ある意味では、外部から、こうした専門教育や、あるいはそのための資源というのを、学校教育機関にも提供していくような仕組みが必要です。そうすると、こういう中間支援的な活動というのが、併せて重要になってくるだろうと思っています。

もう一方では、御承知のとおり、本当に消費者教育をNPOベースで一生懸命やっておられる市民団体もたくさんいらっしゃいます。ですが、それぞれに大きな限界も抱えて、なかなか活動を広げられない。テキストや教材作り一つ一つに困っておられるという、そういう現実があります。

では、そういうところをどう伸ばしていけるのか、その活動というのをどれだけ広げて差し上げられるかというときに、こうした中間支援の仕組みというのが、もっともっと全国に広がっていくといいなと思っています。

現状は、もちろんこうしたNPO型の支援については、各都道府県、それから大都市レベルでは、NPO支援の仕組みとして、部分的にはありますが、当然御承知のとおり、十分という状況にはないということであります。

その点でも、こうした中間支援の仕組みというのを、今あるものも含めてどう強化するか、その中で、特に消費者問題のような、言ってみれば、従来の消費者行政、消費者団体の枠組みの中で盲点になってしまっている部分について、どういうふうに再度支援を活性化させていくのか、ここのところは大きなポイントかなと、個人的には思っていますが、こんなところでよろしいでしょうか。

○後藤委員長 ありがとうございました。

それでは、飯田様、お願いいたします。

○前・全大阪消費者団体連絡会事務局長飯田氏 勝手なことを申し上げたのですが、中間支援団体のようなもので、具体的な展望が私自身にあるわけではありません。皆さん苦労されているように、私も悩み続けた点の大きな柱です。

ですから、現状のところで一番近いのは、やはり消費者教育をどうやって充実させるか、ここに力をもっと注ぐべきかなと思います。まだまだ日本の消費者教育は貧弱です。

こういう中間支援団体もどきというと怒られるのかもしれませんが、例えば、インターン制度とか、そういう制度を活用して、もっと消費者団体なりNPO団体にインターン生が来て育っていくと、こういうことをやり続けることが、地道な一つの努力かなと思ったりしています。

あと、何回も繰り返しになるのですが、消費者団体に実際に身を置いている方々が、本当に必死になって勉強をしなくてはいけないと、僕は思います。

以上です。

○後藤委員長 ありがとうございました。

それでは、丸山様、いかがでしょうか。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 企業との関わり方ということでしたね。

外国の例を挙げますと、日本でもスマイル基金とかがあると思いますけれども、特定の団体ではなく、支援財団みたいなところに寄付をして、その使途は比較的自由に、特定の団体と、特定の企業の関わりが、そこできれいになり、関係がなくなりますので、そこを比較的自由に使えるようにということで、そういう仕組みにはなっているようです。

それから、中間支援団体ではないのですが、消費者団体でも企業からの寄付を受けるところがありまして、珍しいケースかもしれませんけれども、NCLという消費者団体、それからCFAという全体の連絡組織があるのですけれども、NCLというのは、アメリカで一番古い歴史のある団体なのですが、ここは、企業との意見交換会というパーティーみたいなものを設けて、パーティー券を売ることをしているらしいのです。

「企業は、自分たちと意見交換の場を得られるので、いろいろなアドバイスも受けられるということで、ギブアンドテイクなので問題はない。それを私たちは、消費者保護をするために啓発したり、助けたりするために使っているので、問題はない。」という考え方をしているようです。参考までに。

○後藤委員長 ありがとうございました。

○大石委員 ありがとうございました。

消費者団体も、今、おっしゃられたように、賛助会ということで実際に既に企業の方から活動費などの助成を受けているのですけれども、ほかにもいろいろな方法があるということで勉強になりました。ありがとうございました。

○後藤委員長 それでは、木村委員、よろしくお願いいたします。

○木村委員 木村です。御説明ありがとうございます。

私は、主婦連合会という消費者団体で活動している者でございます。

主婦連合会は任意団体でございまして、いわゆる法人格というのを持っておりません。

そこで、3人の先生に質問なのですけれども、消費者団体は、こういう法人格は必要なのかというところを、少し御見識を頂きたいと思います。

特に丸山先生には、海外の諸団体というのは、こういう法人格の制度はどうなっているのかというところを、お伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。

○後藤委員長 それでは、新川様からお願いいたします。

○同志社大学新川名誉教授 ありがとうございました。

法人格それ自体については、必要に応じて法人格があればよろしいというのが、多分、正しい答えだろうと思っています。

こうした市民活動についての法人格、いろいろ用意をされてきています。日本で言えばNPO法人あるいは一般法人、社団や財団ですが、その中には公益の財団、社団もあります。それから、もう少し組合的な組織で言うと、LLC、LLP、ワーカーズコレクティブ、もちろん伝統的な協同組合法もございます。また、社会福祉法人のような伝統的な組織もございます。

どの形式を取るにいたしましても、法人格の必要性ということに応じてだろうと思っております。

それでは、こうした消費者団体が具体的に政策提言をしていく場面で、こうした法人格というのが必要かどうか、これは、むしろ政策提言の場づくりというのを、どういう性質のものとして作っていくかということに関わってくると思います。

つまりは、実際に人格のある社団として権限あるいは権利を持っているということが前提になるようなケースを考えていきますと、そうしたところが、自らの権利ないしは権限に基づいて政策提言をしていくケースが考えられる、これは、適格消費者団体の司法上の権限と同様でございますが、これを立法や、あるいは具体的な政策形成や政策執行場面でどう考えていくのかということでは、意味が出てくるかなと思っております。

もちろん、そうした政策提言に至る以前の個人の権利の保護というような観点でも、こうした法人格があるほうが、例えば、財産上の権限行使というのが容易になっていく場合などでは、例えば、権限の委託、委任というのを受けやすくなっていく、そういう法人格の持ち方というのはあり得るのだろうと思っております。

現状の日本の法人格の仕組みからすると、殊更に、消費者団体向けの新たな仕組みが必要かということについては、既にあるものを活用すれば十分かなと思っているところもありますので、殊更には必要ないと思っております。

もう一方では、我が国の政策決定の仕組みや、あるいは特にこうした市民団体との交渉や協働の場づくりの中で、その位置付けや、あるいは発言の権限、そうしたものを改めて整理をして、既存の市民団体の位置付けということを改めて検討していく必要があるかなと思っているところです。

全体に関わることでもありますし、同時に、消費者団体それ自身が、政府、行政により良い提案をしていったり、あるいは個人の利益や権利の保護、権利回復の活動ができるかどうかということを考え、また、企業との交渉力というのをお持ちになっていくときに、必要な法人格や権利義務の履行能力ということをどう獲得されていくのかという観点で、検討する必要があるかと思います。

なお、この辺りは、消費者団体に関して、今後とも十分に検討の余地があると私自身は考えております。

そんなところで、いかがでしょうか。

○後藤委員長 ありがとうございます。

飯田様、いかがでしょうか。

○前・全大阪消費者団体連絡会事務局長飯田氏 ありがとうございます。

私が身を置いていた団体も任意団体でした。結論的には、法人格を持たないといけないとは思いません。どちらでも構わないと思いますが、支障が生じたときに、そういう判断ができれば、それでいいのではないかと思います。

以上です。

○後藤委員長 ありがとうございました。

丸山様は、いかがでしょうか。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 外国のことなのですけれども、法人格を持っていれば優遇措置があるというときは、それに合わせて取得しているようです。

そのほかは、事業をするときには、また別の法人格を作って、別組織にしてやっているようです。

日本で必要かどうかということに関しましても、法人格の必要性に応じて考えれば良いことではないかと思うのですけれども、外国では、法人格よりも認可されているかどうかというのが重要なところがありまして、特にフランスなど、今まで認可されていると、助成金をもらえましたので、ただ、そこに法人格の縛りはなかったように思います。ドイツも認定団体のリストみたいなものはないと聞いていますので、特に法人格は目立った点はないですけれども、そんな感じです。よろしくお願いします。

○木村委員 丸山先生、追加で質問なのですが、認可というのは、結構厳しいハードルがあるのですか。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 フランスの場合は、何年以内とか、届出はそんなに厳しくないのですよ。実は届出以降、1年以上存続していることとか、それから消費者保護のための実績があり、公共の活動を証明できること。

これは、出版しているとか、事務所があるとかなのです。出版物のリーフレットなどでも良いようです。

それで、少し厳しいのが、全国レベルの会員が1万人以上いることとか、地方レベルの場合も十分な会員を有することという基準になっているのです。

ただ、これは少し細かい話になるのですけれども、1981年に社会党政権になったときに、社会党に近いかなりの数の団体を認可することをしたらしいのです。ですから、実際に全国をカバーしていなかったり、消費者問題を専門に扱っているとは言い難い団体が認可団体になってしまったということで、ずっと問題になっていたみたいです。

それを是正するために、2021年ですか、会計検査院が認可団体に直接お金を渡すのではなく、プロジェクトにすると言っているような経緯があるようです。

以上です。

○木村委員 ありがとうございます。

○後藤委員長 それでは、青木委員、よろしくお願いいたします。

○青木委員 青木です。どうも先生方、ありがとうございました。

消費者団体の現状と今後の課題について、かなり広い観点から整理をさせていただくことができたと思っています。

1点すごく強く感じましたのは、やはり消費者団体の今後の育成とかを考えたときに、消費者教育のところへしっかりと立ち戻らないといけないというのを改めて感じております。

非常に知識、理解、そういう教育から、発言する、発信する、行動する、ここの部分を教育でしっかり育てないと、やはり消費者団体としての発信力あるいは行動力へつながっていかないとつくづく感じましたので、消費者教育について、いろいろ検討も消費者委員会でしておりますので、また、その辺にも取り入れていけたらなと、今日のお話を伺いました。

もう一点、お時間がないので申し訳ないですが、簡単でいいのですが、コメントを頂きたいなと思っていますのは、新川先生が出されました、エコシステムという概念のところなのです。

消費者団体の政策提言機能は、もちろん重要なのですが、新たな機能として、いわゆる社会課題の解決のようなところについては、事業者も、それから消費者団体も、あるイシューについては、コミュニケーション力ですとか、あるいは調査力とか着想とかを含めて、団体と統制政策という取組だけではなくて、社会課題を解決するための、もっと様々な連動の仕方というのが、エコシステム、生態系のような、非常に幅広い可能性がすごくあるのではないかなと思っておりまして、連動のさせ方、エコシステムという概念、こういう辺りへの動き方というので、何か先生方に、一言ずつコメントを頂ければ有り難いのですが、いかがでしょうか。

○後藤委員長 ありがとうございました。

新川様、いかがでしょうか。

○同志社大学新川名誉教授 ありがとうございました。

今、前段で教育のお話を頂きました。本当に消費者教育というのをやっていく上で、知識だけ講義の形で受けても全く使い物にならないというのはそのとおりで、ある種、アクティブラーニングであるとか、あるいはフィールドワークでといったような実践性を持った学び方、あるいは現場での教育、先ほど飯田さんからもインターンシップというのがありましたけれども、そういう教育をシステマティックにどう進めていくのかというのが大きな課題かなと改めて思いながらお話を聞いていました。

現実にはできていませんので、それをどうこれから実現していけるのか、正に教育や中間支援の大きな課題かなと思っております。

それから、エコシステムについて、本当に幅広くいろいろなことが考えられる概念ではあるのですが、私自身はむしろ、本当に一人の人が、自分自身でこんな消費者問題を解決したい、あるいは自分が抱えている、この商品のこの問題を何とかしたいと考えていったときに、実はその問題を解決できるような仕組みが社会の中にあるのが必要で、その辺を支えていくような企業の仕組み、あるいは行政の仕組み、そして、それに協力をしてくれる専門家の仕組み、また、それをみんなで応援してくれるような市民の意識、そういうものがエコシステムとして整っていくというのが大事かなと思っています。

したがって、消費者教育のエコシステムというのがあっても良いと思っていますし、消費者権利保護、権利回復のエコシステムというのがあっても良いかなと思っています。

そういうエコシステムというのを、消費者問題をめぐってどう準備できるか。なかなか一般的なネットワークというのは、あっても役に立ちません。ですので、こういう一つ一つの問題が発生したときに、それを解決しようとする新しい動きを起こすことができるようになる条件整備が大切になります。新しい消費者運動を制度的に支援する用意ができるのか、あるいはそれを作っていくのに必要な資源があるのか、あるいはそのための活動を起こそうとするときの手掛かりというのを提供できるのかがエコシステムの条件になります。そのような条件を整えていく上でも、そういう力を持った中間支援的な仕組みというのが、エコシステムとして次の段階では必要かなと思っているところです。

すみません、今すぐ目の前にでき上がっている仕組みでもありませんので、今後の課題ということで、お聞きいただければと思いました。

以上です。

○後藤委員長 飯田様、お願いいたします。

○前・全大阪消費者団体連絡会事務局長飯田氏 もう簡単に申し上げます。

消費者の直面する生活に関わる問題が、全て消費者団体が視野に置くべき問題であると考えております。

したがって、いわゆる企業社会の中での消費生活に関わる問題だけを視野に置くのではなくて、環境問題あるいは気候変動問題、あるいはもっと幅広く捉えると公正な社会をどうやって実現するのかという、こういう視野を持った消費者団体の活動が必要だと、私は捉えています。

以上です。

○後藤委員長 丸山様、いかがでしょうか。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 この点に関しまして、あまり良い情報を持ち合わせていないのですけれども、繰り返しになるかもしれませんが、消費者運動を盛り上げる、消費者団体を支えていくためには、まず、消費者の、一般市民の意識が大切だと思っているのです。

そのために消費者教育は大変重要ですし、また、こちらは繰り返しになりますが、行政が団体の役割とか立場とかを作って、消費者の認識を高めていくということも重要だと思うのです。

そして、消費者、市民が運動に関心を持って消費者団体を応援するようなシステムを作り上げていくことが、まず、大切かなと思います。

これは、やはり行政主導でないと難しいと考えますので、その点を、今後また検討していただきたいと考えます。

以上です。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、黒木委員、よろしくお願いします。

○黒木委員 ありがとうございます。

私は今、中間支援団体というか、中間法人だと思いますが、適格団体の副理事もしているという関係で、そういう観点で、先生方にお尋ねしたいのですけれども、新川先生には、やはりエコシステムについてお尋ねしたいのですけれども、エコシステムの中で、特に適格団体は、かなりの部分、生協に実際上は依存している上で活動しているところがあります。

生協自体は、この前の全国消団連の中でも事業活動を行う消費者団体という分類の中には入れてもらっていましたけれども、事業者団体という側面が強いわけでして、そういうような事業者団体との関係という形で、適格団体のような消費者団体を考えていくということについては、今後そういう方向性を強くしていくことによって、例えばほかのNPOとか、ほかの市民団体だということになるのだとすると、そこと適格団体との関係というのは、どのように考えていったらいいのかということをお尋ねしたいのが1点です。

それから、飯田先生には最後の8ページのところで、企業社会と拮抗力を確保できる消費者団体ということをおっしゃっています。例えば、消費者団体の中から、社外取締役を組織的に輩出していくのだと。そういう形で企業社会に対して積極的に提言する活動というものを考えるということはできないのか、できるのかということについてお尋ねしたいと思っているところです。

現在、プライム市場では、社外取締役を選任していかなくてはなりませんけれども、この人材というのは、ある意味では、1つのバスケットの中にいらっしゃって、なかなかほかのところから入ってこないという問題が指摘されているのですけれども、そういうことに関して、本当の意味で消費者志向経営をするのであれば、むしろ消費者団体は、そういうような企業社会と拮抗力を確保するという活動の一環として、きちんとした人を選任していって、こういう人たちを社外取締役のプールの中に入れろということも提言としてできるのではないかと思うのですけれども、その辺りのところについてのお考えをお尋ねしたいと思います。

最後に、丸山先生にも同じでして、外国の様々な、アメリカとか、そういうところでの企業と市民団体と消費者団体との関係で、例えば、企業社会において、そういうようなポジション、すなわち半分中に入ったような形で企業社会との間で連携していくような形で、自らステータスを上げるといったようなことをされている団体というのは、あるのか、ないのかということについて、お知らせいただければと思います。

以上です。

○後藤委員長 それでは、新川様よろしくお願いいたします。

○同志社大学新川名誉教授 ただいま、適格消費者団体についてお話を頂きまして、ありがとうございました。

適格団体自体が中間支援的な役割というのを持っている、と考えています。もちろん団体訴訟自体は、それはそれとして重要な機能なのですが、私自身は、そうした司法上の権能を持っているということ自体が、適格団体の大きなリソースだと思っております。

そして、そのリソースというのは、実は消費者の訴訟以外のところにも波及すると思っておりますし、それをてこにして、適格団体自体が中間支援的な機能というのを大いに果たし得る可能性というのを持っているのではないかと見ております。

個人的には、KC’s(消費者支援機構関西)の活動や何かに、少しだけ関わらせていただいていて、本当に活発に活動できる可能性はあるなと思っています。

ただ、残念ながら、やはりいろいろな資源の不足ということもあって、活動を制約されているというところもあります。この辺りをどう伸ばしていくのかというのは、正に適格団体が活躍できるような、そして、広く中間支援の組織が活躍できるようなエコシステムをどう作っていくのかということだろうと思っています。

今のところ、そのエコシステムが、先ほどもお話がありましたように、生協を中心にするような事業組織としてあるわけですが、ただし、ここにはもう少し企業あるいは企業団体も含めた支え方というのが必要です。

もう一つは、実は行政というのが意外に適切に関わっていないのではないか、エコシステムの中の主要な柱が1つ欠けているという状態があるのではないかと思っています。

その上で、なお、先ほど丸山先生からもお話がありましたが、こういう仕組みについて、中間支援的な活動について、幅広く市民の皆さん方の支持や支援があるのか、支えがあるのかということについては、やはり社会全体の責任ではありますが、同時にこうした中間支援団体の役割としても、どう幅広く支援を得ていくのかということの努力、これが必要かなと思っています。

そうすることで、実は適格団体が持っております制度上の優位性というのが、消費者問題全体に波及して、もっと大きく活躍できる、そして、最後のほうでおっしゃっていただいた、実は適格団体ではない、しかし消費者問題に関わるいろいろな団体への支援ということを、この適格団体がやっていける、あるいは連携をして、いろいろな問題に取り組んでいく、そういう可能性を適格団体が持ってくるということになるのではないかと思っています。

この可能性、中間支援の一つのコアとして、私自身も適格団体への期待はしているところでありますが、まだまだそのためのエコシステム自体が不十分というところがあって、これを今後どういうふうに構築をしていくのか、大きな課題と感じておりましたので、お話をさせていただきました。

お答えになっていれば幸いです。

○後藤委員長 ありがとうございました。

飯田様、いかがでしょうか。

○前・全大阪消費者団体連絡会事務局長飯田氏 社外取締役を消費者団体から輩出していく、これは方法の一つだと思いますが、企業社会との拮抗力を確保するというのは、少し意味が違います。やはりきちんと消費者団体が独自の政策提言能力によって、企業社会が、ある意味、耳を傾けざるを得ないような、そういう能力、力を持っていく、役割を果たしていく、こういうことにポイントがあると思います。

毎年1月に、世界の経済界が集まる通称ダボス会議というのがありますが、そこの近年の議論は、ステークホルダー資本主義をどうやって作っていくのかと、こういう議論に軸足が移っているように聞いています。

ステークホルダーは様々ありますけれども、消費者団体、消費者も1つのステークホルダーになるわけで、そことの関係で、企業社会がちゃんと認知し、対等に意見交換ができるような相手として消費者団体を認知すると、こういう関係が必要ですし、消費者団体から見ると、そういう政策提言能力を自ら培って持っていく、育てていくという、こういう機能がやはり必要と思っています。

以上です。

○後藤委員長 丸山様は、いかがでしょうか。

○金城学院大学生活環境学部丸山教授 企業社会の中で、ステータスを上げている団体はあるかという御質問だったと思いますけれども、先ほども申し上げましたとおり、消費者問題の専門家として、世間一般で結構高く評価されているという傾向が、欧米のほうではございますので、専門的知識の提供などで一目置かれているということは既にあります。例えば、新商品を見直す際に、先ほど御紹介したWhich?という団体とか、企業と意見交換をして、ここをこういうふうに直せばいいですよ、みたいなことを提案したということはあるらしいです。

ただ、あまり企業との関わりを積極的には持っていないようです。やはり消費者団体としましては、あまり企業と関わりを持つと独立性に問題が出てくるということで、そこら辺は、節度を持って接しているようです。

他方、敬遠されている消費者団体もありまして、先ほど御紹介したUFC、フランスの一番大きな団体なのですけれども、そこなどは、結構過激に告発するらしいので、嫌がられているそうなのです。

結構単独行動でぽんとやりますので、役所とか、ほかの団体からも眉をひそめられているというか、そういうこともあるようです。

○黒木委員 ありがとうございました。分かりました。

いろいろと可能性を模索している中で、企業社会、どういう形で消費者団体というのは、今後、持続可能なものを考えるかという一つの視点を頂いたと思います。

ありがとうございました。

 

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

ほかにございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

本日御出席いただきました新川様、飯田様、丸山様におかれましては、消費者団体の現状について、御説明、御回答を頂き、誠にありがとうございました。

本日は、消費者団体の消費者の意見を代表する役割の考え方や、海外の消費者団体の政策提言の取組などについて御説明いただきました。

多様な意見が出されておりますけれども、まず、消費者団体の政策提言機能について、これが消費者団体の役割の中でどのような位置を占めるのかということが議論されました。

これにつきましては、消費者団体の政策提言機能は、消費者団体の役割の一部になるけれども、その実施は団体の存在意義に関わる消費者団体の責務であると、こういう御意見が示されまして、委員の間でもこの点については、共有されたのではないかと思います。

それから、政策提言機能を発揮するためには、消費者全体を代表することが必要なのかということでありますけれども、消費者全体を代表するということは、どういうことなのかということも含めて、意見が取り交わされました。

3番目でありますけれども、消費者団体と行政との関わりということについても議論がなされました。これにつきましては、重要な論点だということで、いろいろな意見が出されましたが、一方で、行政側が消費者団体にもっと役割を与えるべきであるという、より強い行政のリーダーシップが必要であるという御見解があるようにお見受けいたしましたが、他方で、行政の下請というような位置付けになってしまうとか、あるいは行政の影響を遮断する必要があるということから、中間支援の役割の重要性ということも指摘されまして、中間支援団体への期待ということも非常に強く示されたと思います。

ほかにも重要な論点をたくさん出していただきまして、本当に有り難く思っております。

当委員会では、消費者の意見を反映する機能を社会的に維持・強化していくために、消費者団体に求められる役割や消費者意見の反映方法の在り方について、引き続き、検討をしていきたいと考えております。本日の御報告及び質疑応答というのは大変に参考になるものだと思います。御礼を申し上げます。

本日は、お忙しいところ審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。どうぞ御退席ください。

(説明者 退室)


《3. その他》

○後藤委員長 続きまして、その他事項といたしまして、消費者委員会に寄せられた意見書等の概要につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○友行参事官 資料といたしましては、参考資料の1と、それから国センの記者公表資料を参考資料2として表題のみ付けております。

消費者委員会に寄せられた分については3月分でございますが、先生方から頂いているお時間を大分超過しておりますので、個別の細かな内容については、本日は割愛させていただきます。

頂いた意見書につきましては、消費者委員会、それから事務局において十分中身を拝見させていただいております。

本日の御説明は、以上にさせていただきます。

○後藤委員長 ありがとうございました。

何か御意見がありましたら、よろしいでしょうか。

お願いいたします。

○黒木委員 何件もSNSに関する本人開示の問題についての意見書が次々と出てきております。特に3月20日付けで、日本弁護士連合会から消費者庁並びに消費者委員会を名宛人とした意見書が発出されております。

同様のものが3月28日にも、今度は関東弁護士会連合会から出ておりますので、やはりこの問題は、どこかで取り上げていただかなければならない問題だと思っております。

以上です。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

これらの意見書等については、今後の動向に注視するとともに、必要に応じて消費者委員会の調査審議において取り上げることといたします。


《4. 閉会》

○後藤委員長 本日の議題は、以上になります。

最後に事務局より、今後の予定について説明をお願いいたします。

○友行参事官 次回の日程につきましては、決まり次第、ホームページなどを通じてお知らせいたします。

○後藤委員長 予定より大幅に時間を超過してしまいまして、申し訳ありませんでした。

本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございました。

(以上)