第369回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2022年3月17日(木)10:00~10:56

場所

消費者委員会会議室及びテレビ会議

出席者

  • 【委員】
    (会議室)後藤委員長
    (テレビ会議)青木委員、飯島委員、生駒委員、受田委員長代理、大石委員、木村委員、黒木委員、清水委員
  • 【説明者】
    消費者庁黒木消費者制度課長
  • 【事務局】
    加納事務局長、渡部審議官、太田参事官

議事次第

  1. 消費者契約法及び消費者裁判手続特例法について(消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案)

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1.開会》

○後藤委員長 本日は、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから、第369回「消費者委員会本会議」を開催いたします。

本日は、私が会議室にて出席、受田委員長代理、青木委員、飯島委員、大石委員、木村委員、黒木委員、清水委員がテレビ会議システムにて御出席です。生駒委員は、少し遅れてテレビ会議システムにて御出席の予定です。

星野委員は御欠席です。

開催に当たり、会議の進め方等について、事務局より説明をお願いいたします。

○太田参事官 本日もどうぞよろしくお願いいたします。

配付資料は議事次第に記載のとおりでございます。お手元の資料に不足等ございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願い申し上げます。

以上でございます。


《2.消費者契約法及び消費者裁判手続特例法について(消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案)》

○後藤委員長 本日は、消費者契約法及び消費者裁判手続特例法について御審議いただきます。

消費者契約法は、消費者契約に関する民事ルールを規定するものとして、消費者裁判手続特例法は、消費者被害を集団的に回復する裁判手続を期待するものとして、いずれも消費者の利益の擁護を図るために重要な法律です。

当委員会では、昨年10月4日の第353回委員会において、「消費者契約に関する検討会報告書」について、10月25日の第356回委員会において、「消費者裁判手続特例法等に関する検討会報告書」について、それぞれ消費者庁に御報告いただき、審議してまいりました。

このたび、令和4年3月1日に、消費者契約法及び消費者裁判手続特例法の改正法案が閣議決定され、国会に提出されたと伺っておりますので、改正法案の内容について、消費者庁から御説明いただき、意見交換を実施したいと思います。

本日は、御説明者として消費者庁消費者制度課の黒木課長に御出席いただいております。本日はありがとうございます。

それでは、20分程度で御説明をお願いいたします。

○消費者庁黒木消費者制度課長 消費者庁消費者制度課の黒木です。本日は貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。

今、委員長から御紹介をいただきました、消費者契約法、それから、消費者裁判手続特例法の改正法案について御説明をさせていただきます。正式名称は、消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案ということでございます。お手元の資料の基本的には概要に沿って御説明をさせていただければと思っております。資料1ということになろうかと思います。

1枚目を御覧いただきますと、今申し上げました法律案の名前を書いております。内容としては、消費者契約法、それから、消費者裁判手続特例法、既存の2つの法律を改正する中身でございます。それを1つの改正法案として国会に提出をさせていただいたという状況でございます。

まず1枚目で、それぞれの施行日の関係だけ御説明をさせていただきます。それぞれの改正内容の詳しいところは、2枚目以降で後ほど御説明をさせていただきます。

消費者契約法につきましては、その1枚目の青い部分の一番下を御覧いただいたらと思いますけれども、原則、一部を除きまして公布の日から1年を経過した日の施行という内容で考えております。

それから、消費者裁判手続特例法につきましては、公布の日から1年半を超えない範囲で政令で定める日の施行ということで考えているところでございます。

おめくりいただきまして、概要の2枚目で、消費者契約法の改正案について御説明をさせていただきます。

今回の消費者契約法の改正案でございますけれども、消費者契約を取り巻く環境の変化を踏まえつつ、直近の平成30年改正の際に国会で示されておりました附帯決議に対応するということ、また、消費者が安全・安心に取引できるセーフティネットを整備するというコンセプトで改正案を考えたということでございます。

消費者契約法につきましては、委員の皆様方は既に御承知のところと思いますけれども、民事ルールを定めている法律ということで、民法の特別法ということになっております。具体的には、不当な勧誘行為があった場合に消費者が契約を取り消せるという取消権の規定でありますとか、あるいは消費者にとって一方的に不利益な契約条項などは定めていても無効であるということなどが規定をされている、そのような中身になっております。そういう意味では、民事ルールを定めておりますので、消費者契約法の何条に抵触するような行為があったら、例えば、行政処分の対象になるとか刑事罰の対象になるとか、そのような規定の性質の法律ではないということでございます。

それから、30年の改正の際に附帯決議で様々御指摘をいただいていました中の主なものをそこに挙げております。取消権についてでありますとか、あるいは解約料、キャンセル料についての消費者サイドの立証責任負担の軽減など、あるいは不当条項も追加していけないのかということなどについて御指摘があったということでございます。

これらを踏まえまして、青い部分が改正案の内容でございます。大きく4つの柱から成っております。

1つ目は、取消権の追加ということでございます。

具体的には3点で考えておりまして、1つ目は、消費者に勧誘することを告げずに、退去困難な場所へ同行して勧誘をするという行為を取消しの対象に追加するということでございます。これは、現行の取消権の規定の中で退去妨害という規定がございます。消費者が帰りたいと言うのに帰らせないという退去妨害をした場合に取り消せるということがございますけれども、退去妨害はしなくてもそもそも退去困難な場所に連れていっているということであれば同等に不当であろうということで新たに追加をするということでございます。

それから、取消権追加の2つ目としまして、威迫する言動を交えて、相談の連絡を妨害した場合ということを追加しようと考えております。具体的には、例えば、親に相談してから決めたいとか、あるいは子供に相談してから決めたいと言っている者を、いやいや、あなたももう大人なのだから一人で決められなくてどうするみたいなことで威迫をして、そういう連絡するのを妨害するという場合、これによって消費者が困惑して契約した場合は取り消せるということを新たに定めたいということを考えております。

それから、3点目といたしまして、契約前に目的物の現状を変更してしまって、原状回復を著しく困難にする場合です。これを拡充したいと考えております。これは既存の規定の記載が上のほうにありますけれども、取消権の最後のところに書いております、契約締結前の義務の実施ということで、契約が成立する前に事業者が、契約が成立すれば、その後、事業者がしなければならない義務を前もってしてしまって、消費者が断りにくくするという行為が現行で取消しの対象になっておりますけれども、それと同じように不当であるという場合として、必ずしも事業者にとっての義務でなくても、契約の目的となるようなものの現状を変えてしまって、例えば、きれいにパッケージされているパッケージを破ってしまって、中身をどうぞ見てみてくださいとして消費者が断りにくくするというものも同じような不当性があろうということで、これを新たに拡充していきたいと考えております。

それから、2つ目の柱でございます、解約料の説明の関係でございます。新たに事業者の努力義務の規定を設けたいと考えております。

消費者との関係では、解約料の算定根拠の概要を説明する努力義務です。

それから、差止請求権を持っております適格消費者団体との関係では、概要ではなくて算定根拠を説明する努力義務というものを新たに設けたいということです。ただし、営業秘密等は除くということを考えております。

それから、3つ目の柱としまして、不当条項の追加の関係でございますけれども、事業者の賠償責任を免責するような規定についてでございます。

「無効となる例」というところにありますように、法令に反しない限り、これが上限ですよという規定の仕方は、サルベージ条項と言われるというふうに検討会などでも言われておりました。サルベージ条項自体は、内容というよりは条項の決め方の問題ですので、必ずしもこの賠償関係に限定されないとは思いますけれども、その中でも実際に使われている例が多く、かつ、消費者にとって問題も多いというものが検討会で御議論されました。この賠償請求との関係で、消費者が賠償請求をしにくくする、しても無駄ではないかということになってしまう、どの範囲でできるのか実際のところが分かりにくいという規定というものを無効にするということでございます。

具体的には、事業者の軽過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていない一部免責条項というものは無効ということにするということの規定を新たに設けたいと考えております。

それから、4つ目の柱といたしまして、事業者の努力義務の拡充でございます。様々な場面で拡充を考えております。

1つ目としましては、現行の消費者契約法におきましては、契約の締結時、スタートの時点で勧誘するに際してはこれこれの情報提供の努力義務という形のものはございますけれども、出口の部分を視野に入れたものがないということで、一方で、消費者が解除しようという場面でどうやったら解除できるのか分からないという問題も多くなってきていると指摘されております。それらを踏まえまして、解除権の行使に必要な情報提供にもしっかり努めていただくような事業者の努力義務を新たに設けたいと考えております。

それから、先ほどの再掲になりますけれども、解約料の算定根拠の概要の説明の努力義務、これも出口の部分に関係する努力義務であると考えております。

それから、既存の勧誘時における情報提供の努力義務につきましても、現行の規定では、消費者の知識・経験を踏まえて情報提供をしっかりしてくださいということになっているわけですが、この知識・経験に加えまして、年齢と心身の状態というものも併せて総合的に考慮して情報提供に努めていただくという規定に拡充したいと考えております。

それから、3点目としまして、民法の改正において、定型約款の表示請求権の規定ができておりますけれども、そのようなものがあるということを一般の消費者で知っている方はなかなか少なかろうということもございますので、この定型約款の表示請求権に関する情報提供にも事業者のほうで努めていただく努力義務というのを新たに設けたいと考えております。

それから、差止請求権を持っております適格消費者団体との関係では、先ほど、解約料のところで申し上げました算定根拠の説明の努力義務と併せて、3つセットで事業者の努力義務の拡充をしたいと考えております。形としましては、適格消費者団体がこれこれの要請をすることができる、その要請に応じる事業者の努力義務という形で規定をするということでございます。

3つといいますのは、1つ目は、不当条項を含む契約条項の開示を要請することができて、その要請に応じる努力義務というもの。

それから、差止請求を受けて、それによって講じるべき措置がある場合に、講じた措置で何をしたのかということの開示を団体が要請することができて、これに応じる努力義務ということです。具体的には、契約条項は改善しましたと言いながら、改善したものを示していただけない例があるということが指摘されておりましたので、そのような問題に対応する形でこのようなものを加えたいと思っております。

あと一つは、先ほど申し上げました、解約料の算定根拠の説明要請とこれに応じる努力義務でございます。

続きまして、概要の3ページ目に移っていただければと思います。消費者裁判手続特例法の改正の内容でございます。

消費者裁判手続特例法は、施行されてから既に5年ほど運用されておりますけれども、その中で見えてきた課題などを踏まえまして、更にこの制度を、消費者の被害を救済しやすく、あるいは消費者が利用しやすい制度へと進化させ、また、制度を担う団体が活動しやすくなるような環境整備をするということで、今回の改正案を考えております。

この消費者裁判手続特例法につきましては、御承知のとおり、特定適格消費者団体が消費者に代わって集団的な消費者被害の回復を実現するための裁判手続に関する民事訴訟法の特例という形になっております。

特徴としましては、裁判が2段階の手続になっているという点が最も大きな特徴かと思います。

1段階目では、特定適格消費者団体が事業者との関係で、その事業者が一定の消費者に対して何らかの責任を負うかどうかということを争うという訴訟手続になります。この1段階目を共通義務確認訴訟と言っておりますけれども、ここで事業者の責任が認められたという場合に2段階目に移りまして、2段階目の簡易確定手続等ということです。こちらで初めてその対象の消費者が手続に参加してきて、自分はその対象であるということ、それから、ではあなたには幾ら払うのかというのを確定していくという手続になっているということでございます。

5年運用されておりますけれども、ちょっとイメージを持っていただくために、例としまして、1号事案というのが、医学部の大学入試の問題でした。女性とか浪人生が不当に点数調整されていたと、差別を受けていたという事案がこの制度で特定適格消費者団体によって取り組まれて、実際に解決まで至っているという例がございます。

ただ、その中で指摘されましたのが、改正案のほうに移らせていただきますけれども、現行の制度は、この制度に乗る請求の範囲が財産的被害に限定されているということがございます。したがいまして、先ほどの大学入試の事例でありますと、受験料を返せと、返す義務があるかないかという内容の訴訟になり、それが認められて、受験料相当額、他にもちょっと郵送料とかいろいろあるのですけれども、そういうものが認められて返されたということでございます。けれども、問題は、恐らく、不当な扱いを受けたことに対する慰謝料というのはどうなるのだという話でございます。現行の制度では、そのようなものは少なくともこの制度では救済ができないということになり、慰謝料も請求したいという方は、別途訴訟を起こしていただくとか交渉していただくということになっているということで、それは何とかできないのかというのが1点目でございます。

対象範囲の拡大として、1つ目に、対象となる損害に一定の慰謝料を追加していってはどうかということを考えているということでございます。

具体的には、基礎的な事実関係が共通であって、財産的損害と併せて請求される慰謝料ということです。先ほどの大学の例でいいますと、受験料と併せて、不当な扱いを受けたことの慰謝料とかそのようなパターンが当てはまるかと思います。

また、基礎的事実関係が共通で、事業者の故意によって生じる慰謝料ということです。これも入れていってはどうかと考えているところでございます。

それから、対象範囲の拡大の2点目といたしまして、現行の制度では、この制度による被告になり得る者が事業者ということになっております。そうしますと、個人であっても個人事業者という場合には当然対象になるわけでございますけれども、法人の事業体があって、その中で実質的に悪質商法などを差配しているような者などについては、必ずしもその人が自分の事業としてやっているわけではないという場合には被告にしづらい、できないという問題が指摘されておりました。したがいまして、悪質商法に主体的に関与するような者、それと知りながら関与するような個人は、一定の要件の下で被告になり得ることにするということを考えているのが2点目でございます。

それから、2つ目といたしまして、1段階目の共通義務確認訴訟で、現行では和解をする範囲というものが共通義務の存否に限られておりますけれども、そのような制限を外して、様々な和解ができるようにするという改正の内容を考えております。これが2点目でございます。

それから、3つ目といたしまして、この手続で消費者が入ってくるのは2段階目ということになります。そこでは、対象消費者にあなたが対象消費者であるということをいかに効果的に伝えるか、伝わるかということが大変重要になってまいりますので、この部分の充実をするというのが3つ目でございます。

具体的には幾つかございますけれども、最も大きなものとしましては、事業者にも消費者への個別通知を義務付けるということを考えております。

それから、消費者の氏名や連絡先などについての情報を、現行では2段階目になれば情報開示する手続があるということでございますけれども、これをより早期に可能にするという観点から、1段階目でも情報の保全ができるような制度を入れるということを考えております。

それから、団体から消費者への通知なども、今は公告の内容と通知の内容が全く一緒で、最初から大量の情報をどっと送ることになっておりますけれども、それは消費者にとってもなかなか分かりにくいということになりますし、団体にとっても負担が重いということになりますので、通知を簡潔に、必要な情報をお伝えし、詳細な情報とか大量な情報量になるものについては公告に誘導していただくということを考えております。また、それらの信頼性などを支えるためにも、行政の公表の内容も充実させていきたいということを考えております。

それから、4点目といたしまして、この制度で、次々と訴訟が起こる、起これば良いという問題ではないとはいえ、5年間で訴訟になったものは4件ということで、訴訟外で解決されているものも当然ございますので、もう少し広く、活用はされているわけでございますけれども、とはいえ、まだまだ限られた利用になっているのではないか。その大きな原因の一つといたしまして、特にこの2段階目における団体の負担が大変重い。しかも、その負担の内容というのは事務的な負担が大変重いということの指摘がございました。

具体的には、2段階目になると何百人、あるいは何千人、場合によっては何万人という消費者と連絡をし、あるいは連絡を取り合い、それぞれに振込をするという手続、そのような事務的な負担が重いということが指摘されておりましたので、この部分の負担軽減をし、支えるということで、特定適格消費者団体を支援する法人として、消費者団体訴訟等支援法人という制度を新たに導入したいと考えております。

それから、その他といたしまして、1段階目の和解が柔軟化することとの関係で、2段階目の申立てを裁量化するとか、あるいは申立期間が今は1か月以内にとなっているのが大変短すぎるのではないかという指摘もあったので、その辺をもう少し延ばすとかのことを考えたりしております。

あと、団体の認定の有効期間も3年から6年に延ばす等々の規定を考えているということでございます。

あと、消費者保護の充実とあるところに指摘をしておりますのは、消滅時効について、団体の活動に委ねていた消費者が中身の判断がされないままに手続が、例えば、1段階目の訴訟が却下されてしまった、あるいは取り下げられたという場合に、それだったら自分でやろうというときに消滅時効が既に壁になって何もできないということでは困るということで、そこに特例を整備したいということです。

あるいは2段階目の記録が誰にでも見られるような状況になっていると、カモリストを作られたりとかということになり、なかなか手続に入っていくのも躊躇するという御指摘もございましたので、記録の閲覧主体を制限する等の整備をしたいと考えております。

私からの御説明は以上でございます。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、質疑応答と意見交換をお願いいたします。時間は40分程度を予定しております。

清水委員、よろしくお願いいたします。

○清水委員 説明ありがとうございました。

最近の新プラ法とか消契法もそうなのですけれども、ほとんどが努力義務となっています。これは包括的なルールで、全ての事業者に対してということなので、まず努力義務からということなのでしょうか。逆に、義務としたとしても、先ほど御説明もありましたけれども、包括的な法律には罰則規定もありませんので、やはり罰則を、悪質な業者は業法、特商法とかでやっていくしかないのかなと思ってお聞きしておりました。

取消権について確認です。契約の取消権を追加ということで、第4条第3項で3つ規定をしていただいております。最近の相談を意識して入れていただいていると思いますけれども、勧誘することを告げずに退去困難な場へ同行というのは、まさしく今、若者がSNSで誘われて、もうかる話、バイトをやらないかと言われて、結局、投資とかお金を取られるというのが非常に多いのですが、そういう場合、成功者、勧誘者のタワーマンションに連れていかれてそこで勧誘されるようなケースがあるのですが、ここの部分は使えるのかなと思っております。そういう解釈でよろしいでしょうか。

そして、威迫する言動を加え、相談することを妨害ということなのですが、威迫というとなかなか狭いのかなと。脅して恫喝してなんてことは、今、被害相談の現場ではないのです。ただ、先ほどの説明の中で、例えば、よくあるのが、成人になりたての人に対して、あなたは親に相談するのかと、もう成人なのだから自分の頭で考えろ。今、今日だったら50%オフにするみたいに言われて勧誘されたことというのが、まさしく親に相談したいと言われたときに妨害されていると考えれば良いということなのですね。幅広く使えるということでの確認です。

最後に、契約前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にということなのですが、昔の相談だと、車で来て、さお竹3本1,000円と言っておきながら、呼び込むと切ってしまう。1万円ぐらいの高いステンレスのものが良いですという相談があったのですが、今はそういう相談はないのです。例えば、今の相談だと、生活レスキューの相談、水詰まりで詰まっているだけなので本当は流すだけでいいのに、トイレの便器の着脱までやってしまって、それを契約する前にどんどん作業してしまって、結果として、トイレの便器を外したので着脱6万円とか10万円とか言われる。契約を断れない状態でする、こういったケースに対応していただいているのかということなのですが、3点確認です。よろしくお願いします。

○後藤委員長 よろしくお願いします。

○消費者庁黒木消費者制度課長 ありがとうございます。

まず、1つ目の勧誘すること、退去困難な場所ということについての御確認ということであったかと思いますけれども、タワーマンションが退去困難な場所なのかどうなのかというのはその場合によるかと思いますが、ここで言っています退去困難な場所というのは、例えば、交通の便が悪いところとかで自力で帰るのが基本的に困難であるようなところでありますとか、あるいは足が不自由な方などを階段で上に連れていって、階段でしか下りられないようなところにというものはその人にとっては当然、退去困難な場所ということになろうかと思っております。他方で、今、委員に御指摘いただきました、勧誘者のタワーマンションとかに呼び出されてというときに、そこから帰れないというのは、場合によっては既存の退去妨害とかで捉える余地がもしかしたら高いのかなと思っております。今回の取消権を追加するという趣旨というのは、御説明のときにも述べさせていただきましたけれども、退去妨害はしていないのだと言い訳されても、そもそも退去が難しいようなところに連れていっているのだったら同じように不当であろうということで考えたということでございます。

それから、威迫する言動を交えてというものについて、親に相談して決めたいと言っている若者について、あなたももう大人なのだからと脅して、一人で決められなくてどうするみたいなことを言って連絡させないというものが当たるのかというのは、御指摘のとおりかと思っております。もちろん、若者に限らず、御高齢の方などが、いやいや、ちょっと子供に相談してから決めたいとか、あるいは配偶者に相談して決めたい等々の例も当てはまるとは思いますけれども、いずれにいたしましても、そのような場合に広く御活用いただければと考えております。規定としまして、相談の連絡というのは誰に相談をということは特に限定はしておりません。当該事業者以外のものと連絡したいと言っているのにその連絡を威迫して妨げたという場合でございますので、そういう意味では、様々な場面が該当し得ると考えております。

それから、3点目の目的物の現状を変更しというのが、かつての分かりやすい例として、さお竹屋さんなどが、売った後にはそのお家の長さに合わせて切って売るということなのでしょうけれども、それを先に切ってしまって、もう切ったのだから買ってもらわないと困るみたいなものがもともと想定されていて、契約締結前の義務を実施というものが既存の規定の中に既に取消しの対象になっているということでございますけれども、そのようなもので捉えきれないような相談があるということで、そのようなものを拾うということで、義務でなくても目的物の現状を変更しということではございますが、先ほど御指摘いただいたものがその契約の目的物なのかというと、多分、それはサービスの話になってくるので、ここで言っているのは、契約の目的物についての現状を変更しということかと思っております。

すみません、十分なお答えになっているかどうかはちょっとあれですけれども、取りあえず私からは以上でございます。

○後藤委員長 清水委員、よろしいでしょうか。

○清水委員 ありがとうございました。

要件が大事ということで、もう少し細かく見ていかなければいけないということだと思います。ただ、なかなか使うようにするためには、これから解釈とかをまた教えていただきながらやっていくしかないし、啓発だけではもはや今の相談の現場では救済できないので、こういうものをいかに事業者にきちんと伝えていく、きちんとした事業者よりも悪い事業者にどうやって伝えていくのかなというのが課題だと思いました。ありがとうございました。

○後藤委員長 それでは、大石委員、よろしくお願いいたします。

○大石委員 御説明ありがとうございました。

今の清水委員の御質問とつながるのですけれども、本年、もう間もなく4月1日から成年年齢が引き下げられるに当たり、やはり若年者の消費者被害の防止、それから、速やかな被害回復に向けて、こういう消費者契約法だけではないと思いますけれども、法的な何かの対処も必要であるということ。これは国会でも出されていたと思います。今、清水委員がお話しされた内容というのがまさしく、今回、未成年、若年者に向けても対応できる内容かなとは思うのですけれども、それ以外に、今回の消費者契約法の改正に当たり、未成年者取消権の代わりになるといいますか、それを意識して改正された部分がもしあれば是非教えていただきたいなというのが1点目です。

それから、清水委員もおっしゃっていましたけれども、私も相談員の方たちとお話しする中で、実際の相談現場で消費者契約法というのが、細かく規定されているだけに使いにくいというか、なかなか難しいという、使う場面が少ないということも相談員の方からお聞きしております。そういう意味で、もしかしたら28年、30年の改正に伴ってかなり細かくなり過ぎた部分を根本的に見直す時期に来ているのではないかなという御意見なども聞いたりしております。そういう今後の方向性につきましても、もし何か消費者庁で考えておられることがありましたら教えていただければと思います。

以上です。

○消費者庁黒木消費者制度課長 御質問、御指摘ありがとうございます。

まず、成年年齢引下げが4月1日からということでございますけれども、未成年者取消権の代わりになるものというものを意識してという御指摘がございましたけれども、未成年者取消権と同じものという御趣旨であれば、それはちょっとそういうことではないと思いますが、他方で、若年者などに多い被害の回復なり、あるいはその防止なりに資するような規定という御趣旨ということで御説明させていただきますと、まずは、平成30年の改正がまさに若年者に多そうな被害を想定して、デート商法でありますとか就職セミナー商法というか、そのようなものを想定したものが取消権として新たに追加されていたということかと思っております。ただ、30年改正もそうですが、そもそも契約法というのは別に年齢を区切って何歳しか使えない取消権とかという形で決められているわけではございませんので、今回の取消権、あるいは過去の既にある取消権も含めて、当然、若年の方にも使っていただけるし、御高齢の方にも当然使っていただけるというものかと思っております。

先ほど、清水委員からも御指摘いただきました今回の取消権の2つ目のものなどは、実際の例としても若者にも多いような被害のパターンなどでも使っていただける場面が多く想定されるのではないかというものになりますし、取消権以外の規定で申しますと、勧誘時の情報提供の努力義務について、今まで消費者の知識・経験を踏まえてとなっていたものについて、新たに年齢も考慮要素に加えているというものがあります。この年齢というのは、当然、まだ若い人であるとか、あるいは御高齢であるとかそういう要素をしっかり考えてその人に合った情報提供をしていってくださいという趣旨になろうかと思いますので、この辺りも当然関係するかなと思っております。

あと、解除権の行使に必要な情報提供というものも、例えば、サブスク契約とかそのようなものでなかなか解約の仕方が分かりにくいということが言われることも多いかと思います。そのようなものにつきまして、デジタル系の契約とかですと、どちらかというと、若い人のほうがより御活用になられていて、そのような場で解約の仕方がやはりそれでも分からないということが多いと思います。年齢の限定はもちろんしておりませんけれども、若者の方々に御活用いただける余地があると、影響する余地があるものであろうかなと思っております。

それから、2点目で御指摘をいただきました、契約法の規定がこれまで何度も改正を重ねてきていてということを踏まえて今に至っているということではございますけれども、そういう経緯も踏まえつつ、更に根本的な点から考えていくとかそういうことが必要なのではないかという御指摘であったかと思います。同様の御指摘は与党の先生方などからもいただいたりもしておりますので、将来的に重要な御指摘であると思っております。考えていく必要があろうかと思いますが、まずは今回、改正法案を国会に提出しておりますので、まずこれをできれば成立させていただき、また、その成立した暁には、その周知とか、先ほど清水委員からも御指摘がありました、事業者も含めてどういうものが問題があるということで新たに定まったのかということの周知などもしっかり努めてまいりたいと考えております。

以上でございます。

○大石委員 ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。

○後藤委員長 それでは、黒木委員、よろしくお願いいたします。

○黒木委員 黒木です。丁寧な説明をどうもありがとうございました。

質問を何点かさせていただきたいのですけれども、概要の2ページのところにも書いてありますが、平成30年の改正附帯決議、これがある意味では今回の報告書につながり、そして、今回の改正案につながっていったという時系列だと思っています。その観点で、今回の改正案は、平成30年の附帯決議でリクエストされていたことについてどれくらい改正をしているのか、まだ残っている部分があるのか、その辺りのところについての、まず、消費者庁の御見解を教えていただければと思います。大変大きな質問で申し訳ありませんけれども、その点をお願いします。

それから、多少今度は狭い話になりますけれども、改正法案の第4条第3項第4号で、その他内閣府令で定めるという、要するに実体規定でありながら政令委任の要綱が入っているという点で、法律家から見ると少し違和感があります。このような実体規定について政令委任をするということについては一般的な立法なのかということと、それから、どのようなものを今、内閣府令として考えていらっしゃるのかということがお分かりになりましたら教えていただければと思っています。

それから、概要のところでも書かれていますけれども、努力義務が2つの側面で考えられています。

まず一つは実体法のところで、3条のところについて幾つかの事業者の努力義務が書かれているのですけれども、このような努力義務が増えたことによって、例えば、当事者の交渉とか、あるいはその後の不法行為といったところについての違法性の考慮要素だという考え方で良いのかという点を教えてください。

それから、同様の努力義務が、今度は解約料のところの努力義務として出て、解約料の説明の努力義務として出ています。とりわけ、適格団体に対しての算定根拠、その他のところがありまして、これは報告書から考えると、報告書の中では平均的な損害についての考慮要素の例示とか、それから、立証責任の軽減といったところがここの努力義務に移ってきたのだろうと思っていますので、そうすると、やはりこれは事業者に対してとりわけ訴訟上は、訴訟上の信義則その他のところによって、ある程度詳細な反論をすることを要求するという法的効力というのが、積極否認とまでは言いませんけれども、単純否認では足りないよということとつながるという考え方ができるのか、その辺りのところを教えてください。

以上よろしくお願いいたします。

○後藤委員長 お願いいたします。

○消費者庁黒木消費者制度課長 御質問ありがとうございます。

まず1点目、契約法の30年の附帯決議にどれくらい対応しているのかという御質問でございましたけれども、私どもとしても附帯決議を踏まえて、そこで示されていた課題などについて有識者の方々に検討を重ねていただいて、その報告書などを踏まえて更に法制的に検討して考えたということですので、そういう意味では、それを踏まえて考えたものであると思っておりますけれども、ただ、何をしなかったということは別にないと思っておりますけれども、皆さんがその附帯決議から何を期待されるのか、あるいはそんなものではなかったと思う方にとってどのように見えるのかというのはまた別の問題かとは思っております。

すみません、ちょっとあまりお答えになっていないかとは思いますけれども、なかなか一概に何割ですとかと言えるような御質問ではなかったのかなと思っております。

それから、2点目の取消権の4条3項の4号として、改正法案の4号というものを新たに、もし新旧のほうを御覧いただけるようであれば3ページになりますけれども、4号を新設してという中のその4号の中に、内閣府令で定めるというワーディングが入っていると。具体的に言いますと、相談を行うために電話その他の内閣府令で定める方法によって事業者以外のものと連絡する旨の意思を示したにもかかわらずというフレーズの中に内閣府令というものがあるということでございます。民事ルールの規定の中で府令で定めるというものが入ることについて違和感があるという御指摘であったかと思いますが、必ずしも別に駄目ということではないと思いますし、要はフレームとしては別に法律で定まっていると。他方で、電話その他の内閣府令で定める方法というもの、その様々な方法が電子的な技術の発展などでいろいろ出てくると思いますので、その度に法律から改正しなければいけないということですとなかなか追いつかないということもございますので、この範囲であれば、どういうものが不当な行為、取消しの対象の行為であるのかというのは法律でしっかり定めていただいた上で、その具体的な手段という部分を府令で定めるということですので、可能なのではないかと考えております。

具体的に今々がっちりとこれとこれというふうに考えているわけではございませんけれども、そういう意味では、電話に類するようなツイッターとかでやり取りをするとかそういうものなども含まれる、あるいはライン通話のようなものも含まれるとかそのようなことを。すみません、具体的な個社名を挙げるのはよろしくなかったかもしれませんけれども、そのようなものなどが入っていくのではないかと考えておりますが、詳細は当然今後、府令を定めるに当たってしっかり考えていきたいと思っております。

それから、努力義務について、まず3条を踏まえてのお話であったかと思いますけれども、努力義務の規定というものが実際の交渉なり、あるいは不法行為に基づく損害賠償請求などをされる場面で考慮される余地があるのかという御指摘であったかと思いますけれども、民事ルールでございますので、最終的には裁判所で争われたときにそのような主張をされてそれが認められるかどうかということになろうかと思います。ただ、実際にこれまでの、今回の改正のものということではございませんけれども、これまでにも裁判例で努力義務の規定などがしっかり果たされていない、もちろんそれ一つだけではなくて、そういうことも考慮されて不法行為の判断がされたという例もあるやに伺っておりますので、当然、可能性としてはあり得ることであろうと思っております。

それから、解約料の算定根拠のほうの努力義務についての御質問をいただきましたけれども、立証負担の軽減、特に訴訟上でのその効果がどうなのかという御指摘がございましたが、今回の規定は、そういう意味では訴訟に限らず、差止請求自体が差止請求権は訴訟上でだけ行使できるものではなくて、訴訟外でも当然行使されるものでございますので、そういう意味では訴訟の場合に限定をせずに、解約料の算定根拠を説明するよう適格消費者団体が要請をできてこれに応じる努力義務という形で、場面をむしろ訴訟の場に限ることなくお使いいただけるような規定ということで考えておりますし、訴訟になる前にこういうやり取りをしたのだけれども、この説明がいただけなかったとか、事業者から十分な説明がされなかったということも踏まえて、当然、訴訟などをされるということになろうかと思いますので、それが事実上、裁判の中でどのように判断されるかというところについては、ある程度当然影響してくるでしょうし、あるいは活用するのは適格消費者団体ということでございますので、成立した暁には、その辺は十分に規定も踏まえてしっかり御検討いただいて御活用いただければと考えております。

○黒木委員 ありがとうございます。現段階での御説明として大変分かりました。

この後、法が成立した後、また消費者庁において立法者意思を表す形の逐条解説、その他の書籍を発刊されていくと思います。それはいろいろな意味での実務に大きな影響を与える極めて重要な書籍になると思います。その中では、昨年出ました報告書も踏まえて、 きっちりとした形で逐条解説というものを発刊していただきたいと思います。それは大変大きな意味を持っておりますので、お仕事が続いて大変だと思いますけれども、内閣府令を考えていただきながら逐条解説という形で、早めにそれをお示しいただくということを強く希望しています。とにかく前進していることは間違いないので、そういう形でやっていただきたいと思っております。これは意見です。ありがとうございました。

○後藤委員長 他にございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

○消費者庁黒木消費者制度課長 委員長、よろしいでしょうか。

○後藤委員長 お願いいたします。

○消費者庁黒木消費者制度課長 今、御意見ということで御指摘いただきました。おっしゃるとおりかと思っております。また、検討会は契約法もそうですし、裁判手続特例法のほうの検討会でも、こういう解釈をしっかり明らかにしていくべきとかこのような解釈であるべしという御指摘などもありますので、そのようなことも当然踏まえた上で、また改正法が成立させていただきましたら、その内容、あるいは国会での御審議なども踏まえて、しっかりとした逐条解説というものをなるべく速やかに整えていければと思っております。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

他にございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

御説明、御回答いただき、ありがとうございました。

消費者契約法につきましては、平成30年改正時の国会の附帯決議や、消費者契約に関する検討会報告書で示された事項を踏まえて、契約の取消権を追加し、解約料の説明についての事業者の努力義務を規定するなど、消費者被害の防止に向けた効果が見込まれることから、一定程度評価できると思います。

また、新しく規定された事業者の努力義務については、実効的な取組が行われるよう、消費者庁が今後作成する逐条解説等においてその内容を具体的に示した上で、積極的に周知、広報等を行うことを期待します。

他方で、困惑類型の脱法禁止規定や、消費者の判断力に着目した規定などの取消権の創設、「平均的な損害」の立証責任の負担を軽減するための積極否認の特則の規定や、所有権等を放棄するものとみなす条項を第10条に例示すること等の不当条項に関する規律など、報告書から法案化する過程で実現がかなわなかった事項もあるように見受けられます。そうした改正法案に反映されなかった事項についても、何が難しかったのかを明らかにしつつ、引き続きの課題として検討を行うことを期待いたします。

また、消費者裁判手続特例法につきましては、対象となる損害に一定の慰謝料を追加するなどの対象の拡大や、和解の柔軟化など、消費者裁判手続特例法等に関する検討会報告書で取りまとめられた内容について、おおむね対応がなされており、制度の利用拡大や、解釈の早期化が期待できる内容になっていると思います。

法案が成立した暁には、制度が適正かつ実効的に運用されるよう、所要の取組を進めていただきますようお願いいたします。

消費者委員会としましては、今後も消費者庁の取組を注視した上で、必要に応じて審議を行ってまいりたいと思います。

消費者庁におかれましては、お忙しいところ審議に御協力いただきありがとうございました。

○消費者庁黒木消費者制度課長 ありがとうございました。

○後藤委員長 どうぞ御退席ください。

(消費者庁退室)


《3.閉会》

○後藤委員長 本日の議題は以上になります。

最後に、事務局より今後の予定について説明をお願いいたします。

○太田参事官 本日もどうもありがとうございました。

次回の本会議の日程と議題につきましては、決まり次第、委員会ホームページを通じてお知らせいたします。

以上でございます。

○後藤委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)