第356回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2021年10月25日(月)13:00~14:48

場所

消費者委員会会議室及びテレビ会議

出席者

  • 【委員】
    (会議室)後藤委員長
    (テレビ会議)受田委員長代理、青木委員、飯島委員、生駒委員、大石委員、木村委員、黒木委員、星野委員
  • 【説明者】
    消費者庁黒木消費者制度課長
    消費者庁楢橋参事官(公益通報・協働担当)
    消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)和瀬企画官
    消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)戸塚参事官補佐
    消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)金山政策企画専門官
  • 【事務局】
    加納事務局長、渡部審議官、太田参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 消費者裁判手続特例法について(消費者裁判手続特例法等に関する検討会の報告書に係るヒアリング)
  3. 公益通報者保護法について(公益通報者保護法指針の解説に係るヒアリング)
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1.開会》

○後藤委員長 本日は、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから第356回「消費者委員会本会議」を開催いたします。

本日は、私が会議室にて出席、受田委員長代理、青木委員、飯島委員、生駒委員、大石委員、木村委員、黒木委員、星野委員がテレビ会議システムにて御出席です。清水委員が御欠席です。

開催に当たり会議の進め方等について、事務局より説明をお願いいたします。

○太田参事官 本日もどうぞよろしくお願いいたします。

配付資料は議事次第に記載のとおりでございます。お手元の資料に不足等がございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願いいたします。

以上でございます。


《2.消費者裁判手続特例法について(消費者裁判手続特例法等に関する検討会の報告書に係るヒアリング)》

○後藤委員長 最初の議題は、「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」、いわゆる「消費者裁判手続特例法」についてです。

消費者被害では同種被害が多発することがありますが、被害額が比較的少額であることや、消費者と事業者との間の構造的格差等が原因となって、消費者が被害回復のための損害賠償請求を断念し、泣き寝入りせざるを得ない場合が多々あります。

平成28年10月から施行された消費者裁判手続特例法では、特定適格消費者団体が個々の消費者を代表して事業者に対し訴訟提起することで、消費者被害の集団的な回復を可能とする新しい訴訟制度が導入されました。施行後約5年が経過しておりますが、実際に提訴された事例は多くなく、かねてより本制度の改善を図ることが課題であるとの指摘がなされておりました。

このようなことを背景として、消費者庁では、令和3年3月より消費者裁判手続特例法等に関する検討会が開催され、10月に報告書が取りまとめられたと伺っております。本日は、その内容について消費者庁から説明いただき、意見交換を行いたいと思います。

本日は、御説明者として、消費者庁消費者制度課の黒木課長にお越しいただいております。本日は、お忙しいところありがとうございます。

それでは、よろしくお願いいたします。

○消費者庁黒木消費者制度課長 消費者庁消費者制度課の黒木でございます。

本日は御説明の機会を頂きまして、ありがとうございます。

それでは、私から御説明をさせていただきます。

資料は2種類ございます。横置きものと、報告書本体と2つでございます。

最初に、横置きを簡単に御紹介させていただきます。

おめくりいただきまして、表紙の裏、2ページ目に、消費者裁判手続特例法の概要をお示ししております。適宜御参照いただければと思いますが、御承知のとおり2段階型の訴訟制度になっているというものでございます。

3ページに行っていただきまして、この制度を定めています消費者裁判手続特例法、平成25年に成立した法律ですけれども、その附則にも、法律の規定について検討を加えるというようなものが盛り込まれていたという御紹介をしております。

4ページ目に行っていただきまして、先ほど委員長からも御紹介いただきました消費者庁での検討会の概要をお示ししております。本年3月から9月末まで、全11回にわたって御議論いただいたということで、委員の皆様はそこにお示ししているとおりでございます。

5ページ目は、報告書の目次のようなものになりますので、後ほど報告書本体で御説明させていただきます。

最後の6ページはスケジュールでございます。検討会の報告書は9月末に座長一任になっておりました。その後、微修正等をいたしまして、10月8日に公表をさせていただいております。同日から1か月間、任意の意見募集をしている、現在も意見募集中であるということでございます。

報告書や、意見募集あるいは各種団体等との意見交換などを踏まえまして、今後、法制的な検討を進めていくという状況にございます。

それでは、資料1-2に移っていただきまして、報告書の御説明をさせていただきます。

おめくりいただきまして、表紙の裏に目次がございます。「検討の経緯」がございますが、その下に第1から第4までありまして、第1がいわゆる総論的な記載、それから第2、第3が各論の記載となります。また、第4ではその他ということで、他の制度との関係等、御検討いただいた状況が記されております。

1ページに行っていただきまして「検討の経緯」でございますが、これは先ほど委員長からも御紹介いただきましたので若干割愛をさせていただきます。

2ページに行っていただきまして、本検討会では、必要な見直しについては一刻も早く実現するという方向性の下で、特に急ぎ対応する必要があると考えられるものを中心に御検討いただいたということが記されてございます。本報告書の内容を十分に踏まえて必要な見直しを進め、本制度を進化させ、一層の環境整備を行うことが希求されているということでございます。

第1の総論的な部分ということで、3ページ以降の御説明をさせていただきます。

この第1の部分では、制度の意義、それから施行後の状況と課題をおまとめいただいております。

第1の1としまして、制度の意義、その中でも制度自体の意義が(1)に記されております。消費者団体訴訟制度は御承知のとおり被害回復制度と差止請求制度の2つございます。いずれも民間の独立した主体が担い手となることが最大の特徴であるということで、専門性をいかしながら、現場に近い立場で機動的な活動を行うことができるということと、また、複数の独立した主体が活動することで多様な活動の展開につながっているという分析が記されております。

中でも、この検討会で中心的に御議論いただきました被害回復制度につきましては、制度がなければ現実的に実現が困難な消費者被害の回復を効率的に図ることを可能にするものであるとともに、事業者による自主的な対応の促進といった波及効果も生み出していると考えられるとされております。

4ページへ行っていただきまして、「以上のとおり」という真ん中辺りでございますけれども、消費者団体訴訟制度は、多数の消費者被害の未然防止・拡大防止及び集団的な被害回復を図り、消費者利益の擁護を図るとともに、公正な市場の実現にも寄与するものとして、言わば社会的インフラの一つとも言えるということが示されているところでございます。

それから、制度の意義の中の2つ目、(2)といたしまして団体に期待される役割についても御議論いただいた状況が示されております。

結論的な部分だけ御紹介させていただきますが、5ページの上から7行目ぐらい、個々人よりも相対的に高い能力と資源を有する団体を介することで、個人の限界にとらわれず、個人の自由と利益双方の保護を実現していくというようなアプローチが考えられ、適格消費者団体及び特定適格消費者団体には、そのような役割の担い手としての活躍が期待されるとされております。

ただ、そのためには、団体による実績が積み重なること、また、団体自体及びその実績が周知されることが重要であるということですが、現状においては特にこの部分がいまだ不十分であるという分析もされているところでございます。

「したがって」というところになりますけれども、制度の改善や環境整備によって、消費者団体訴訟制度が、安定して活発に機能する状況を作り出すことが急務であるとされております。

2としまして施行後の状況、先ほど最初に委員長からも御紹介いただきましたが、5事業者に対して4件の訴訟が起こされている等々という状況が記されております。また、訴訟外でも、団体から消費者に対する返金の申入れを行うような活動もされているということで、被害回復制度が一定の機能を果たしていると評価できるとされています。

「しかしながら」とございますとおり、事案の数、種類、救済の規模のいずれにおいても広がりを欠いていると言わざるを得ないということで、現時点においてもなお、強力なてこ入れが必要なスタートアップの段階にあると言えるという分析が記されてございます。

7ページの3で、現状の要因と課題でございます。様々に要因と課題が記されておりますけれども、まず、制度の担い手であります特定適格消費者団体へのヒアリング結果等から明らかになった現状の要因として3点ほど挙げております。

マル1として、端緒情報の質、量が不十分であるという点。

マル2といたしまして、取組対象とし得る事案が限られている点。

マル3としまして、特定適格消費者団体が現実的に対応可能な範囲が限られる点。

このようなことが明らかになったとの記載がございます。それぞれ詳細につきまして、7ページに記載がございます。

8ページに行っていただきまして、制度が運用される中で把握された課題といたしまして、対象消費者への情報提供の実効性の確保が問題であるという点、あるいは時効に関する手当てについても指摘がなされております。

また、消費者アンケートの結果から分かってきた課題といたしまして、消費者がこの手続への加入を考える際に影響を与える要素として、解決までの期間が長いということなど、消費者の名前が閲覧されるということへの懸念などがアンケート結果から分かってきたということで、これらの点への対応も課題となるとされております。また、手続のIT化等も当然課題になるということで、記されております。

以上の総論を踏まえまして、まず第2で被害回復裁判制度の制度的な対応になります。9ページからでございます。

まず、1点目としまして対象となる事案の範囲でございます。

その中でもまず(1)としまして、請求・損害の範囲の見直しの議論の状況が記されてございます。問題の所在にございますように、現行法上はいわゆる拡大損害、逸失利益、人身損害、慰謝料は本制度の対象から除かれているということでございますが、この中でもとりわけ慰謝料については、第1号事案が大学入試の得点調整の事案でございましたけれども、その本質は本来、不当な差別的取扱いを受けたということで、慰謝料が中核的な請求になり得るものと考えられるのだけれども、現行法の下では受験料等の財産的損害の請求にとどまっていたというような問題の状況が記されてございます。

これらを踏まえまして、考えられる対応として、慰謝料はアといたしまして、画一的に算定される慰謝料について、すなわち11ページの1行目からでございますけれども、慰謝料として相当多数の消費者に同一額ないしは共通の算定基準により算定される額が認定されるような場合、このような慰謝料については本制度の対象とすることが考えられるとされております。

ただ11ページの下に行きまして、「もっとも」ということで、個人情報漏えい事案においては、なお慎重な検討を要するとの指摘があり、具体的には12ページに行っていただきまして、過失による個人情報漏えい事案については対象外とすべきという御議論がされております。

他方で、個人情報の意図的な目的外利用のような事案については、本制度の対象とすべきというような御議論の状況でございました。

この点につきましては、個人情報保護委員会から、個人情報漏えい事案であるか否かで対象を決めることは妥当でない等の御指摘もあったところでございます。

また、慰謝料について、今申し上げましたアと若干違う観点からの考え方、御議論の整理をイでしております。ア以外の考え方を提示する意見ということで、必ずしも積極的に慰謝料を対象にするということに賛成というお立場からではございませんでしたけれども、仮に画一的に算定される慰謝料を本制度の対象とするのであれば、現行法上対象となる財産的損害と併せて請求される場合に限って対象とすることが考えられるのではないかという御意見があったということでございます。

この点につきましては、そのようにアと違うような考え方をした場合の根拠は、事業者に追加的な応訴負担が必ずしも生じない、あるいは応訴負担に配慮する必要性が低いことなどから許容されていくと考えるのではないかということで、そうであれば、財産的損害と併せて請求される場合だけではなくて、事業者の故意により生じた慰謝料についても同様に対象にすべきではないかという御意見もあったということでございます。

マル2としまして慰謝料以外でございます。いわゆる拡大損害、逸失利益及び人身損害について。また、14ページに行っていただきまして、現行法で除かれております特別法上の規定による不法行為に基づく損害賠償請求について。これらについては引き続き検討すべき課題とすることが考えられるとされております。

それから、対象となる事案の範囲の2つ目、(2)ですけれども被告の範囲の見直しでございます。

現行法上被告というのは、法人又は事業を行う場合における個人とされておりますが、他方で、財産隠匿が疑われるような法人等の関係者で悪質商法の主導的役割を果たしたような個人について、本制度による責任追及をまぬがれさせることは公平の観点から妥当とはいえないのではないかという問題意識を踏まえまして、考えられる対応といたしまして、現行法上被告になり得る事業者でございますけれども、事業者が故意又は重大な過失による不法行為責任を負う場合において、当該事業者と故意又は重大な過失による共同不法行為責任を負う個人を被告となるものに追加することが考えられるとされたところでございます。

(3)直接的な契約関係にないが一定の関与をした事業者に対する請求。この点については、現行法上の解釈を明確にしていくということが記されておりまして、具体的には16ページのところで、契約当事者でない事業者、例えば景品表示法上の不当表示に係る不法行為に基づく損害賠償請求についても、現行法上の要件が満たされる場合には被告になり得るという解釈を明確化することが考えられるとされているところでございます。

16ページ、支配性の要件の考え方について、これも考え方の整理をいただいた部分ということでございます。この支配性の要件につきましては制度の成立当時から、この要件をあまり厳格に捉え過ぎると、制度の立法趣旨にそぐわない結論になりかねないということが指摘されていたということで、運用状況を踏まえて考え方をおまとめいただいたということでございます。

17ページの考えられる対応で、支配性の要件は堅持することが相当であるものの簡易確定手続における審理の工夫等によってもなお適切かつ迅速に判断することが困難であると認められる場合に限って、この要請に基づき制度の対象外とされるべきと考えられるというような考え方を明確化していくことが指摘されてございます。

それから、第2制度的な対応の2つ目の大きなまとまりとして共通義務確認訴訟、いわゆる第1段階目における和解について、でございます。

現行法上は、第1段階目の和解は共通義務が存在するか否かに対象が限定されております。その結果、例えば共通義務、責任を負うか否かという義務の存否にはあまりこだわらずに、解決金で和解をしようというもの、あるいは個々の対象消費者への支払額まで合意をするような和解、あるいはもうすっかり払ってしまうような和解等というものは、現行法上はできないことになっております。

この点につきまして考えられる対応として、和解の内容に係る制限をなくして、様々な類型の和解が可能となるような規定の整備をすることが考えられるとされたところでございます。

具体的には、法10条で和解の内容を限定している部分を削除することが考えられるであろうという点など、19ページに行っていただきまして、想定される様々な和解の類型ごとに、このような整備が必要ではないかということを述べていただいております。例えば解決金の支払いをするような和解をする場合には、共通義務の存否については和解の中でも判断をされていないということになりますので、当事者同士で不起訴の合意がされた場合においては、他の特定適格消費者団体も同様に、当該事業者との間で共通義務に係る訴えを更に提起することはできなくするような規定が必要であろうということなど、あるいは20ページに行っていただきまして、第三者への寄附をするということを合意する和解も想定されるところではあるけれども、寄附先は当事者である特定適格消費者団体とすることは利益相反の観点から避けるべきであって、公益的な主体とすることが適切である等の指摘がされております。

また、手続的な観点からは、第1段階目で様々な和解がされた場合に、その後の手続の進め方として、いわゆる第2段階目の手続を利用せずに終わる場合と利用する場合があるので、それぞれに規定を整備すべきであろうというようなことが指摘されてございます。

制度的対応の3点目で、22ページに参りますけれども、対象消費者への情報提供の在り方でございます。

本制度の手続の実効性を確保するためには、対象消費者に加入を促すための情報提供を効果的に行うことが重要であるという観点から、この通知を機能面から見直すということが指摘されておりまして、考えられる対応といたしまして、対象消費者への情報提供を機能面から分析した場合、1つ目としては、消費者が自分は救済対象になるのだということを自覚できるようにするための情報提供というものがあり、もう一つは、関心を抱いた消費者が、自分がその続手続に加入するかどうかを判断するため、あるいは加入手続を進めるために必要な情報をその消費者に届けるためのもの、2つあるであろうということで、前者の情報提供にはプッシュ型の情報提供、後者にはプル型の情報提供が適していると分析できるということでございます。現行法上ある、団体が実施している通知と公告のうち、通知に前者の機能、公告に後者の機能を担えるようにするということが考えられようということでございます。具体的には、通知において公告を確認するための情報が記載された場合には、現行の通知事項の一部を記載しないこととすることが考えられるとされております。

また、消費者への情報提供に関しての役割分担と費用分担の見直しについて、でございます。現行法上、団体は通知と公告、それから事業者は団体の求めに応じて公表、行政は公表という規定がございます。

これらについて、その中身など役割分担、あるいは費用負担の在り方を見直していくということで、考えられる対応のマル1としまして、団体が通知・公告をするという役割は引き続き維持されるべきであるけれども、事業者につきましては第1段階目で既に法的責任を負うことが確定している状態にあることからすれば、その確定した法的責任を果たすために相応の役割を担うことが合理的であるとされておりまして、特に先ほど申し上げました消費者に対する情報提供の1つ目の段階でありますプッシュ型の情報提供において、その役割を期待できるのではないかということでございます。

事業者が対象消費者への連絡手段に関する情報を保有している場合においては、事業者から対象者に個別連絡をするものとすることが考えられるとされております。

他方で、悪質商法事案などで事業者による個別連絡がなかなか期待し難い場合など、あるいはそもそも連絡手段に関する情報を持っていないような事案においては、事業者が個別連絡の役割を果たすことはできないということでございます。そのような場合には、公告への負荷が増すということでございますので、事業者が個別連絡の役割を担い得ない場合において、公告のための一定額を負担するものとすることが考えられるということが示されております。

26ページに行っていただきまして、行政の役割についても、特に団体による通知・公告の信頼性や真正性を担保する上で、より積極的な役割を果たすべきということで、公表事項や公表対応の拡張等を図ることが考えられるとされております。

また、マル3としまして、後に出てまいりますけれども、団体による通知・公告など、行政の公表を指定法人が受託できるようにすることが考えられるとされているところでございます。

(3)としまして、情報提供の実効性を高めるための方策として、27ページの考えられる対応のところで、一定の保全手続の導入等が指摘されているところでございます。

その他、4ポツ実効性、効率性、利便性を高める方策としまして、適格消費者団体と特定適格消費者団体の連携協力規定を明文化することが考えられるとされているところでございます。

30ページに行っていただきまして、(2)時効の完成猶予・更新に関する規律の在り方でございます。この点につきまして、31ページの「これらを踏まえ」というところになりますけれども、共通義務確認の訴え、第1段階目の訴えが提起されていることに基づく対象債権の時効に関する新たな規律を追加することが考えられるとされております。

(3)として、簡易確定手続開始の申立義務を免除する範囲ということで、現在も正当な理由がある場合に申立義務が免除されるとされておりますけれども、その解釈を明確化していくこと等が指摘されております。また、申立ての期間も現在、1か月ということで短いということなので、その期間を延長するというようなことが考えられるのではないかという御指摘でございます。

(4)手続のIT化につきまして、1点目は民事訴訟法等の裁判手続のIT化の検討が進んでおります。その帰趨に応じて、適切な対応することという点が指摘されております。

それとは別に、団体と消費者との間の手続のIT化のツールの開発等も考えられるということでございます。

34ページの(5)で、第2段階目の範囲確定手続における事件記録の閲覧の在り方につきましても、これは消費者アンケートから、そういうものが他人に見られることを望まない声が一定数あったということ。あるいは、そのようなものが比較的誰でも見られるという状況になりますと、いわゆるカモリストが作られるおそれもあるという点を踏まえまして、対象消費者の氏名や住所等の情報が合理的な範囲を超えて閲覧・謄写等の対象とならないようにすることが考えられるとされたところでございます。

大きく2つ目の各論、第3が36ページからでございます。いわゆる環境整備の問題でございます。

36ページの一番最後の行からございますけれども、本制度は現時点においては、自立的なサイクルが回り出す前のいまだスタートアップの途上にあるということで、強力なてこ入れのための支援が必要であるとともに、将来に向けて制度の持続性を保つための環境整備を行うことが必要という問題意識から、考えられる対応として、そのような問題に総合的に対応する方策として、消費者団体訴訟制度の実効的な運用を支える第三者的な主体を法的に位置付ける指定法人制度のようなものを導入することが考えられるということとでございます。

38ページに行っていただきまして、マル2としまして制度や団体に関する理解の促進についての御指摘、マル3としまして団体の事務負担の軽減についての御指摘もございます。事務負担の軽減としては様々ございますけれども、例えば特定認定の有効期間を適格消費者団体の認定の有効期間と同じく6年とすることなどが考えられるのではないかということでございます。

最後に40ページの第4でその他という点について若干触れさせていただきます。

まず、1として破産手続との関係ということで、特定適格消費者団体に一般的な形で破産申立権を認めるという方向性につきましては、慎重な検討が必要であるとされたところでございますが、他方で、この本制度に基づく手続が進んでいく中で事業者が破産状態に至ったような場合、具体的には第2段階目の手続から破産手続への円滑な移行を可能とするために、団体に破産申立権を認めるという方向性については一定の必要性、有効性が認められようということでございますが、その場合においても多々検討すべき点があるということで、将来的な検討課題とすることが考えられるとされたところでございます。

2につきましては、最初に述べましたように、本検討会では早急に検討すべきテーマに絞って御議論いただいたということで、検討対象外とされたものとして、訴訟外での協議の促進やオプトアウト方式の検討もございますが、それらも将来的な検討課題とすることが考えられるとされております。

私からは以上でございます。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

それでは、御質問等のある方は御発言をお願いいたします。なお、質疑応答の時間は20分間を予定しています。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

黒木委員、よろしくお願いいたします。

○黒木委員 私は、今回の報告書をもとにする消費者裁判手続特例法の改正それ自体は、現在の消費者裁判手続特例法による裁判手続の問題点を的確に捉えたものであり、日弁連の「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の見直しに関する意見書」(2020年7月16日)(https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2020/200716.html)にもかなり応えられています。そのため、早急に立法されることが望ましいと考えています。従って、今後の立法作業についてのその見通しをお知らせいただきたいというのが第一点です。

第2点目として、報告書の「第2 被害回復裁判手続の制度的な対応」の中の「被告範囲の見直し」で、事業者以外の個人を被告に含める場合の要件として、事業者が故意・重過失により不法行為責任を負う場合で、かつ当該個人も故意・重過失により共同不法行為責任を負う場合とされています。このように、二重に限定を加えるのは要件を定めたのはどのような理由によるものかを教えてください。

それから、第3点として将来的な検討課題が本報告書の第2のところに、「3ポツ対象消費者への情報提供の在り方(3)情報提供の実効性を高めるための方策マル2第三者の協力を得る仕組み」、「4ポツ実効性、効率性および利便性を高める方策、マル2行政機関が保有する情報、マル3事業者の財産に関する情報の取得、マル4第三者の協力を得る仕組み」等があげられています。

この将来的な検討課題については、極めて重要な提案がなされていると考えられますが、この検討課題を実際にどのような方法で、実現するつもりなのかについて説明してください。

第4点は、その他のところの破産です。これは将来の検討課題で、これは私の意見なのですけれども、私報告書では、特定適格消費者団体が、破産手続の申立権を有するか否かについて、将来の検討課題とされています。この点について、上記の日弁連意見書では、特定適格消費者団体が破産申立権限を有する改正をすべきであるとしています。また、委員個人ではあるが、この問題について、多比羅誠先生の記念論文集の中にある「破綻手続の課題と期待」という中で、特定適格団体による破綻手続申立ての可能性について論考を載せています。そこでは、差止請求ができる適格団体が、その事業自体を財産的にも停止させるということは、可能性があるのではないかと考えています。

さらに、衆議院では消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律 等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年6月4日)において、「十一これまで販売預託商法等によって多数の消費者被害が生じていることに鑑み、加害者の不当な収益をはく奪し被害者を救済する制度、行政庁及び特定適格消費者団体による破産申立制度並びに行政庁による解散命令制度の創設や、過去の被害事案の救済のための措置について、消費者裁判手続特例法の運用状況の多角的な検討を踏まえて、必要な検討を行うこと」との決議がなされています。

従って、この点について、早急に検討を始めていただきたいと考えています。

以上です。

○後藤委員長 ありがとうございました。

○消費者庁黒木消費者制度課長 4点、御質問あるいは御意見をいただいたかと思います。

1点目が今後のスケジュールについて、でございますけれども、最初に横置きの紙の最終ページでお示しいたしましたとおり、今、正に意見募集をしているということでございます。また、各種消費者団体あるいは事業者団体等との意見交換なども積極的に進めさせていただいているところでございます。

報告書を踏まえることはもちろんでございますけれども、それらの意見も踏まえて、目下、法制的な検討を進めているところということでございます。

以前にここでも御説明の機会を頂きました消費者契約法でも同じようなスケジュールで進めさせていただいておりますので、なるべくそれと遅れないような形で進めていければと考えているところでございます。

2点目でございます。被告の範囲の見直しの中で、事業者にも故意・重過失での不法行為責任、それから新たに範囲に入れるべきという個人についても二重に故意・重過失とされているという御指摘がございました。その意図はということでした。

それにつきましては、報告書の14ページから15ページにかけてのところに記載がございますけれども、まず問題の所在に書かれているとおり、今回の検討会で被告の範囲の見直しを検討されたそもそもの問題意識としては、いわゆる悪質商法において、その実質的な主導者あるいは背後者と言われる者について、現行法でストレートには被告にできないというのは問題なのではないかという問題意識であったということでございます。

そういう意味で、まず悪質商法というものを捉えるという観点から、事業者の故意・重過失による不法行為責任というものを捉え、また、その背後者あるいは代表者としても、普通に会社の役員等が全て入るということではなく、そこで主導的役割を果たした背後者でなど、財産隠匿が疑われるようなものを捉えるために、故意又は重過失を個人にもかけるべきであろうという御議論がされたというところでございます。

3点目、第4以外のところにも将来の課題とされている点があるというようなものについて、それから第4も将来の課題というものがあるということでございますけれども、そのようなことについてどのような検討を進めていくのかということにつきましては、正直言って現時点でいつからどうやって検討するということが決まっているわけではございません。まずは最初に述べました法制的な検討等を進めた上で、その後、残る課題についてどのような検討が必要であるかということを考えていくことになろうかと思っております。

4点目の破産との関係、御意見も含めて御指摘を頂きました。今、適格消費者団体の差止制度があるということを踏まえれば、破産申立権もあっても良いのではないか等々の御指摘でございましたけれども、差止めの場合は、ある事業者がしている一定の不当な行為とか不当な契約条項を使うべきでないのではないかという問題提起をするということでございます。

破産申立権ということになりますと、当該事業者の事業活動を止めることになってしまいます。その点につきましてはこの検討会でも、その担い手が団体であれ、あるいは場合によっては行政であったとしても、事業活動を強制停止させるような権限を創設するということであれば、その影響の大きさを踏まえて、具体的にどのような場合に必要であるのかを慎重に検討すべきという御意見もあったところでございます。

それから、本制度の特定適格消費者団体の関係で言えば、やはり制度の担い手としては、まず被害回復というものに資する、そちらにリソースを有効活用するという観点からは、破産申立てをして破産手続になった場合に、なかなか被害回復には至らないものも多いということも考えれば、そこについては慎重に考えるべきということでしたけれども、本手続との流れの関係では、一定の必要性、有効性が認められるとされました。いずれにしましても、破産制度全体との整合性とか、いろいろ考えなければいけないということかと思っておりますので、まずは将来的な課題ということで、将来的な課題の検討状況については先ほど申し上げたとおりでございます。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

○黒木委員 了解いたしました。ありがとうございます。

○後藤委員長 大石委員、よろしくお願いいたします。

○大石委員 御説明ありがとうございました。

黒木課長におかれましては、消費者団体をはじめ、いろいろなところで御説明いただいておりまして、大変有り難く思っております。

質問と言いますか意見に近いのですけれども、第3にあります特定適格消費者団体の活動を支える環境整備という意味で、消費者裁判手続特例法の制度について、周知と言いますか、まだ多くの消費者や国民に、この制度のことが伝わっていないのではないかということを一つ課題として感じております。

私自身は、NHKの解説番組で取り上げられているのを二度見ました。ニュース以外には、『視点・論点』のような難しい番組で取り上げていたのですが、なかなか一般の消費者が目にすることは少ないのでは、と大変残念に思っておりました。

そういう意味で、是非環境整備ということで、もっとこの制度そのものを広く国民に知らしめることも、是非入れていただきたいというのが1点目です。

あと、28ページのところに書かれている適格消費者団体と特定適格消費者団体との連携ということに関して、です。このほど新しく特定適格消費者団体が北海道で増えましたけれども、いろいろな地域で適格消費者団体に、若しくは更に適格消費者団体になるために活動している団体があると聞いています。御説明いただいたポンチ絵に、特定適格消費者団体になるための要件として、相当期間継続して差止関係業務を行ってきている、というようなことが記載してありました。この辺り、今後デジタル化が進む中で、お互いの団体同士が連携して、もう少し差止請求などもやりやすくなるのではないかと思ってはいるのですが、そういう意味で、この要件が今後緩和できるような方法があるのかどうかということを是非お聞かせいただきたいと思います。以上です。

○後藤委員長 ありがとうございました。

お願いいたします。

○消費者庁黒木消費者制度課長 制度自体の周知について、もっとしていくべきという御指摘はおっしゃるとおりかと思います。引き続き努めていきたいということとともに、この検討会でももちろんそういう取組が必要ということは指摘されておりました。37ページの消費者団体訴訟制度の運用を支える主体について期待される役割という中に、真ん中の「また」という辺り、一元的な情報提供による効率化とかノウハウの蓄積によって、消費者へのより効果的な情報提供の実現を図ることが期待される。あるいは、消費者にとって信頼できる情報提供の拠点となるポータルサイトのようなものの構築・運営の担い手になることも考えられるということで、このような制度が今後できていくということになった場合には、今までできなかったようなアプローチでの周知などもできていくのではないかと考えているところでございます。

それから、適格消費者団体、特定適格消費者団体の連携との観点で、特に特定適格の要件について御指摘がございました。

本検討会では、要件については、現状の規定から実態に合わせたものに若干修正をしていくというような御議論はございましたけれども、特定適格の要件そのものを大幅に緩和するというような御議論はなかったところかと思っております。

他方で、そのような本制度全体を支えるような環境整備がどんどん進んでいきますと、このような制度の担い手となることについても若干ハードルが下がっていくような効果も将来的には期待できるのではないかと考えているところでございます。

○後藤委員長 ありがとうございました。

○大石委員 ありがとうございました。よろしくお願いします。

○後藤委員長 ほかに御質問や御意見はございますでしょうか。

それでは、私から1つ支配性の要件のことなのですけれども、この報告書にお書きになっているとおりで、特に要望があるというわけではないのですが、東京医科大学の事案でも、入学検定料とか受験票の送付の料金などというものについては認められているのですけれども、受験のための旅費とか宿泊費についての請求については、支配性の要件を満たさないとして却下されているということで、やはり支配性の要件が厳格過ぎるという印象を持っております。そのように考えていたところ、この報告書で支配性の要件の考え方を明確化する必要があるとまとめていただきましたので、この方向で明確化する、厳格過ぎるところをより柔軟に考えるというような方向が出たら良いなと思っているのですが、明確化するということをお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○消費者庁黒木消費者制度課長 ありがとうございます。

これは必ずしも法改正に関する御指摘ではないかと思っておりますけれども、委員長の御指摘も踏まえまして、今後解説等をしっかり考えてまいりたいと思います。

ありがとうございます。

○後藤委員長 ありがとうございます。

それでは、木村委員、よろしくお願いいたします。

○木村委員 木村です。

御説明ありがとうございます。

私もこの報告書は消費者にとって大変利用しやすくなるということで、賛成いたします。

消費者にとって利用しやすく、そして消費者被害を更に抑制するための制度へということで、これまで対象とされていなかった慰謝料を対象とするということは、消費者の救済という面ではとても良いことだと思っています。これまで費用対効果とか、これは対象にならないのではないかとか、仕方がないと諦めていたことも含めて、先ほど大石委員からも話がありましたけれども、このような制度があるということが、消費者に広報されるとともに、被害が生じたときに消費者にとって使いやすいものであるようにと思っております。

今後、検討課題とされていることもございますけれども、まずは早急にこの報告書に書かれている必要な見直しを進めていただいて、消費者被害の救済が更に進められるということと、ひいては消費者被害の未然防止につながるということで、法制の検討をしていただければと思っております。

よろしくお願いいたします。以上です。

○後藤委員長 ほかにございますか。

特にございませんようですので、先に進めさせていただきます。

この報告書では、対象となる事案の範囲の見直し、共通義務確認訴訟における和解の柔軟化、通知・公告の在り方の見直し、団体を支援する方策として指定法人制度の活用など、多岐にわたる論点について取りまとめていただきました。本制度の施行からは約5年がたっておりますけれども、これまで提訴された訴訟件数は多いとは言えず、制度全体の更なる見直しが必要であると思われます。本報告書において提案されている内容をしっかりと法制化していくことが重要だと考えております。

消費者委員会としては、本件の重要性に鑑み、関係省庁による取組に対して必要に応じて審議を行いながらフォローしてまいりたいと思っております。

消費者庁におかれましては、お忙しいところ審議に御協力いただき、ありがとうございました。

○消費者庁黒木消費者制度課長 ありがとうございました。

(消費者庁黒木消費者制度課長退室)

(消費者庁参事官室(公益・協働担当)説明者入室)

《3.公益通報者保護法について(公益通報者保護法指針の解説に係るヒアリング)》

○後藤委員長 次の議題は公益通報者保護法についてです。

リコール隠しや食品偽装などの企業不祥事は、内部の労働者や取引先などからの通報で明らかになることが少なくありません。公益通報者保護法は、公益通報したことを理由とする公益通報者の解雇の無効、並びに公益通報に関し事業者及び行政機関が取るべき措置を定めることにより、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産、その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的とする法律です。

同法は、公益通報者保護制度の実効性を更に向上させる観点から、令和2年6月に改正されています。改正後の同法第11条第1項及び第2項では、事業者には、公益通報対応業務従事者を定めること、及び事業者内部における公益通報に応じて適切に対応するために必要な体制の整備やその他必要な措置を取ることが求められています。

同法において、これらの事項の適切かつ有効な実施を図るために必要な「指針」は、消費者委員会の意見を聴いた上で、内閣総理大臣が定めるものとされております。

前期の第6次消費者委員会は、本年7月に消費者庁から示された「指針」について、妥当であるとの回答を行っておりますが、その際、「指針の解説」に記載されるべき事項等について、附帯意見を述べておりました。10月13日に指針の解説が公表されましたので、本日はこれについて御説明を受けた上で、消費者委員会の附帯意見が踏まえられているか等について意見交換をしたいと思います。

本日の御説明者として、消費者庁において公益通報を担当されております楢橋参事官、和瀬企画官、金山政策企画専門官、戸塚参事官補佐にお越しいただいております。

本日は、お忙しいところ、ありがとうございます。それではよろしくお願いいたします。

○消費者庁楢橋参事官(公益通報・協働担当) ありがとうございます。消費者庁の楢橋と申します。公益通報担当の参事官をしております。

経緯につきましては、ただいま委員長から御紹介いただいたとおりでございまして、公益通報者保護法の改正に伴って、体制整備等に係る指針について、7月29日に消費者委員会から御意見を賜ったところでございまして、その際に頂いた附帯意見も含めて、これまで対応してきておるところでございます。

担当から説明させますので、よろしくお願い申し上げます。

○消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)和瀬企画官 担当企画官の和瀬でございます。よろしくお願いいたします。

お手元に配りさせていただいております公益通報者保護法の現行の概要、それから、改正法の概要が2枚目でございますけれども、そちらについてざっくり御説明をさせていただければと存じます。

まず、1枚目の現行法でございますけれども、左上の1ポツ、公益通報とは何ぞやということでございますけれども、労働者が、不正の目的ではなく、勤務先における刑事罰の対象となる不正を通報することでございます。

それから、公益通報者保護法でございますので、それが保護される必要がございますけれども、その保護の内容が2ポツ、解雇は無効、それから、降格・減給その他の不利益な取扱い、配置転換といった嫌がらせも含まれますけれども、そういったものは禁止されております。公益通報したことを理由として解雇や降格・減給その他嫌がらせをされた者については、裁判で争うことができるというものでございます。

3番目、下の枠囲みでございますけれども、通報先にはどういう先があるのかということでございますけれども、大きく分けて3つの通報先が法令上用意されております。

1つ目、3ポツの左上の青い枠囲みの中でございますけれども、マル1事業者でございます。この事業者は広い概念でございまして、国・地方公共団体も含みます。その事業者の内部で働く労働者の方々は、まず事業者に対して自浄作用を期待して内部通報を行うことができます。

2番目の通報先は行政機関がございます。それ以外にも同じ枠囲みがありますけれども、マル3報道機関等ということでございます。これらの先に対して、労働者の方々は任意に通報をすることができる。

ただし、通報する場合の条件の厳しさは、通報先によってグラデーションがございまして、それが3ポツの中の右側の枠囲みの中に記載されておりますけれども、例えばマル1事業者、いわゆる内部通報と言われるものでございますが、これは不正があると思料すること、エビデンス等がなくても構わないということです。思ったら、それで通報してよいということ。

一方で、行政機関に通報する場合には、不正があると信じるに足りる相当の理由があること。目撃した場合とか証拠がある場合など、外部に言いますものですから、思いつきで言われてもちょっと困りますよねというグラデーションでございます。

マル3報道機関等は、報道機関に言って、それがそのまま報道等されてしまいますと、その企業にも大きなダメージがありますものですから、それは不正があると信じるに足りる相当の理由があることに加え、例えば解雇されそうであるとか、生命・身体への危害が発生する事由があるといったグラデーションが用意されているということでございます。

これが現行法でございます。

次に、来年6月から施行される予定でございますけれども、改正法の御説明を申し述べたいと存じます。次のページをおめくりください。

こちらの改正法につきましては、現行法が施行されてから随分長いことたちますけれども、事業者の不祥事が後を絶たないということもありまして、被害の防止、早期是正を図ることが必要と社会情勢として判断されたということもありまして、そちらに記載しております大きく分けて3つの赤い枠囲みがございますけれども、そういった点で改正をしております。

1つ目、一番左の上ですけれども、まず、内部通報についての改正事項について御説明申し上げます。

内部通報につきましては、事業者自らが不正を是正しやすくするということ。それから、通報者の方々がより安心して通報を行いやすくするということ。これを狙った改正法でございます。一番左上の赤い枠囲みでございますが、事業者に対して、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備、窓口を設定するなど、調査、是正措置を行うことといったことを義務付けさせていただいております。具体的な内容につきましては、法第11条に基づき指針を策定させていただいております。

同じく11条の5項に基づき、先ほど委員長から御説明賜りましたとおり、あらかじめ消費者委員会の意見を聴くとされておりまして、それについて私どもは手続にのっとって御意見を聴かせていただいて、それで御了承頂いたものと理解しております。

それから、その下の赤い枠囲みでございますが、これも大きな変化でございます。内部調査等の従事者に対して、通報者を特定させる情報の守秘を義務付けております。これを漏えいした場合には、刑事罰がかかる。かなり重い規定の変更となってございます。

次に右に行かせていただきましてマル2外部通報、特に行政機関への通報を行いやすくするということでございますが、権限を有する行政機関への通報の条件を、信じるに足りる相当の理由がある場合、先ほど現行法がそうであったわけでございますけれども、この条件を改正いたしまして、氏名等を記載した書面を提出する場合には、いわゆるエビデンスがなくても、要するに身分を懸けて通報するならば、それは相当の理由があるのだろうと判断するという形で、通報を行いやすくする改正を行わせていただいております。

そうした各種の改正を行う中で、下の赤い枠囲みでございますけれども、権限を有する行政機関における公益通報に適切に対応するために必要な体制の整備、これを行政機関への義務として課すという改正が行われてございます。

それから、マル3の一番下、内部通報、外部通報の実効化を図るために、通報者がより保護されやすくなるような改正を行っております。

マル3の左側を御覧いただきますと、保護される人の範囲が来年6月から広がることになります。現行ですと、その事業者で働いている労働者が保護の対象でございますけれども、改正法では、退職1年以内の退職者、役員を追加して、更に通報のボトムラインを広げようということでございます。

真ん中でございますけれども、保護される通報の内容自体も、現行法は刑事罰に限定しておりますけれども、行政罰も対象とする改正が行われました。

保護の内容でございますけど、右側、現行はなかったものについて、通報に伴う損害賠償責任の免除というものを追加しております。

以上、御説明申し上げました改正の法令につきましては、来年6月1日に施行する予定と現時点ではさせていただいております。

ここまでが、現行法と改正法の概説ということになります。

資料2-2を御覧いただければと存じます。こちらが、私どもが今月の13日に公表させていただきました指針の解説でございます。

こちらにつきましては、せんだって消費者委員会から附帯意見として解説の立てつけ等についてかなり詳細な御意見を賜っております。その解説については、御意見につきまして私どもでほぼ全て踏まえさせていただいているつもりでございます。

例えば総論のところでございますけれども、解説を作成するに当たっては報告書及びガイドラインとの関係を整理することということでございます。例えば解説の3ページをおめくりいただけますでしょうか。3ページに「第2 本解説の構成」がございます。令和3年、今年の4月21日に公表させていただきました公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会の報告書、これを私どもは「報告書」と申し上げているわけでございますけれども、こちらの提言内容を基礎にして、「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」、これは大分古くて平成28年12月9日に公表したものでございます。一般的にこの業界では「民間事業者ガイドライン」と呼ばれているそうでございますが、この規定を盛り込んだものであるという形で明記をさせていただいております。

同じく、事業者に求められる義務的事項、指針の内容を具体化した例及び推奨事項を明確に区分することといった附帯意見も頂戴しておりますけれども、こちらについてもしっかりと記載させていただいております。同じ3ページの第2の表を御覧いただければ一番分かりやすいのではないかと思います。表の中に、マル1『指針の本文』というもの、これは見やすく、十分に分かりやすいものとすべきであるという附帯意見も頂いておりますので、そういった意味で、指針の本文もちゃんと記載したほうが良いだろうと。一々指針の本文を別にプリントアウトして、それと横にらみでやりながらこの解説を見るよりも、この解説の中にも指針の本文をしっかり入れたほうが読みやすいだろうということで、マル1で『指針の本文』も記載させていただいております。

それから、『指針の趣旨』マル2でございまして、マル3で『指針を遵守するための考え方や具体例』、これが附帯意見に書いていただいております義務的事項の位置付けでございます。

マル4『その他の推奨される考え方や具体例』、これが正に附帯意見で言及していただいております推奨事項でございます。

それを明確に区分することという形で、解説の本文の中も全てマル1、マル2、マル3、マル4と区分して記載させていただいております。

もともとかなり大部にわたる附帯意見を頂いておりますけれども、私どもとしましては星取り表も作りながら、附帯意見の取り漏れがないかということをしっかり確認しながら解説を作らせていただいておりますので、附帯意見についてしっかりと踏まえて作成させていただいたと理解しております。

ひとまず私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

○後藤委員長 ありがとうございました。

これで御説明は以上ということでよろしいですか。

○消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)和瀬企画官 はい。

○後藤委員長 どうもありがとうございます。

それでは、御質問等がある方は御発言をお願いいたします。なお、質疑応答の時間は20分間を予定しています。よろしくお願いいたします。

黒木委員、いかがでしょうか。

○黒木委員 メモをあらかじめ作っておりますので、それに基づいて御質問させていただければと思っております。

まず、先ほど言われた民間事業者ガイドラインのことを私はガイドラインと言いますけれども、ガイドラインとこの指針の解説を統合したということで、その前提でお話をお伺いしておりました。

ガイドラインでは、内部通報制度の意義等で経営トップの責務(3ページ)という項目を示していたが、指針の解説ではそのような項目が記載されていません。これは、なぜなのでしょうか。

○後藤委員長 それでは、よろしくお願いいたします。

○消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)金山政策企画専門官 それでは、金山から回答させていただければと思います。

御指摘の点に関しましては、我々も引き続き経営トップにおける体制の整備は非常に重要であると認識しております。その点については、まず冒頭の意義の中に書かせていただいております。2ページに「Ⅱ 事業者における内部公益通報制度の意義」と書かせていただいております。この中で、次の3ページを御覧いただければと思うのですが、その前段で意義を書かせていただいた上で、3ページ目の2行目、経営トップの責務として、法令等を踏まえた内部公益通報という形で、経営トップの責務の重要性についてはここにも改めて書かせていただいております。

それから、現状のガイドラインの中に書かせていただいている経営トップからのメッセージという内容については、少し項が変わっておるのですけれども、18ページを御覧いただければと思います。こちらは教育・周知の項目になるのですけれども、マル3の2つ目の黒マルの中に、矢じりで具体的なところを書かせていただいております。現行のガイドラインの中で、経営トップの責務として呼び掛けていくべき事項として書かれていることをここに記載させていただいております。

そういった意味で、現在のガイドラインの内容は実質的にわかれてしまってはおりますが、重要事項として記載を継続させていただいている次第でございます。

以上、御回答となります。

○後藤委員長 ありがとうございました。

○黒木委員 ぱっと見て分かるかどうかという点で、前よりも後退しているのではないかという印象を持ちましたので、その点を一言申し上げておきます。

それから、民間ガイドラインでは5ページで「中立性・公正性に疑義が生じるおそれ又は利益相反が生じるおそれがある法律事務所や民間の専門機関等の起用は避けることが必要」とされていて、事業者の顧問弁護士については避けることが必要であると考えてあったと理解しておりますけれども、指針の解説の12ページについての記載内容がよく分からないので教えていただきたいのです。いわゆる顧問弁護士を内部通報受付窓口にすることについては、顧問弁護士に内部通報することをちゅうちょする者が存在し、そのことが通報対象事実の早期把握を妨げるおそれがあることに留意する。顧問弁護士を内部通報窓口とする場合には、例えばその旨を労働者及び役員並びに退職者向けに明示することなどにより、内部通報受付窓口の利用者が通報先を選択するに当たって判断に資する情報を提供することが望ましいとされていて、これは顧問弁護士を通報窓口にすることに利益相反があるので、ガイドラインでは駄目だと言っていたのだと考えていたのですけれども、それを実質的には、このような対応をすればよろしいと変更したのでしょうか。

仮に変更したのだとすると、それはどういう理由でそのように変更されたのか。この点についてお尋ねしたいと思っております。

○消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)金山政策企画専門官 引き続き、金山から御回答差し上げたいと思います。

その点に関しましては、従前のガイドラインというのが、語尾が「必要である」というのは御指摘のとおりだと理解しておりますが、他方で、冒頭のところで、このガイドラインは推奨事項を記載したものであると整理されていたというのを一つ御理解いただければと思います。

その中で、今回この指針の解説の前段となって議論されていた検討会がございました。こちらの中でも従前から、顧問弁護士事務所を窓口とするべきかどうかという議論があったところでございますが、その中でも顧問先の弁護士事務所を利益相反のおそれがあるからということで一概に排斥するべきではないというような議論をいただいたところであります。ですので、今回の解説においても、法律事務所を一概に受付先の窓口としてふさわしくない、排除すべきであるという前提では記載していないというのは御理解のとおりでございます。

これまでのガイドラインとの整合性というところでございますが、まず先ほど申し上げたとおりガイドライン自体が推奨事項とされておりましたので、今回、前段で申し上げたとおり推奨事項と義務事項が両方混ざった形になりますので、そこが義務的事項で矛盾するような見え方になってしまっては混乱を生じかねないと判断しまして、先ほどの「必要である」という語尾を、全体として推奨事項であったので、今回の場合は「適当である」という記載にさせていただく形で、顧問事務所のところと、利益相反が生じる先を窓口とすることについての留意点を整理させていただいたという形になっております。

○黒木委員 分かりました。そこについても、もう少し表現等々を考えても良いのではないかというのが個人的な意見です。

あと2点ありまして、次に範囲外共有の防止に関する措置です。これについては先ほど言われました第6次の消費者委員会の令和3年7月29日付けの公益通報者保護法第11条第4号の規定に基づく指針の徹底についての回答の中で、範囲外共有の防止の徹底を図るために、事業者の組織において公益通報者を特定させる情報を共有する必要最小限の人的または部署の範囲を明確に定めることということと、次に公益通報者を特定させる情報を上記の範囲を超えて共有する場合には、共有の目的、範囲を説明した上で公益通報の同意を得るべきことを十分に明らかにする必要があると書かれておりまして、これを読むと、範囲外共有の防止に関する措置については、組織の問題と同意の問題と2つあったのではないかと思うのです。

これに対して、指針の解説の読み方が間違っていたら教えていただきたいのですが、16ページで、外部窓口を設ける場合、例えば公益通報者を特定させる事項は、公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できないなどのやむを得ない場合を除いて、公益通報者の書面や電子メールによる明示的な同意がない限り事業者に対しても開示してはならないとするなどの措置を講じることも考えられると書かれております。

これで考えると、指針の解説では同意を得るために共有の目的、範囲を説明した上で同意を得るという要件に緩和されているのではないかと読めるのですけれども、その辺りの読み方を教えていただければと思います。

○消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)金山政策企画専門官 御質問頂きましてありがとうございます。

その点に関して、まず附帯意見で付していただいております意見の内容について、今、黒木委員に御指摘いただいたとおり、この附帯意見の中では、まずはかちっと、例えばコンプライアンス部といった部署で共有すると。そういう事前に決まった範囲を超えて共有する場合には通報者の同意が必要だから、きちんとコミュニケーションを取って同意を取った上で、その範囲を広げていこうという世界観で附帯意見を付していただいているものと理解しております。

他方で、我々検討会の議論を通じまして、範囲外共有の範囲というのは公益通報対応業務を行う上で必要最小限の範囲であるという議論をさせていただいております。すなわち、その対応業務の過程の中で必要最小限の範囲というのは、事案の進展にも応じて範囲が縮小・拡大する、ある程度流動的なものであるという前提で考えておりますので、そういう意味で、必要最小限の範囲を超えて共有することは基本的にはあってはならない。通報者の保護の観点からも、それはあってはならないと思っていますので、基本的にはその範囲を超えて共有するというのは、同意を得ようが、何をしようが、共有してはならないということを前提に考えております。

そういった意味で、同意を得ることによって範囲が広がるという発想ではなく、調査の進展に応じて必要な範囲が広がってくるといった考え方ですので、まずその前提が、附帯意見の前提としている考え方と我々の指針の解説作成時の検討会での議論の理解が若干一致していなかった部分で、今御指摘いただいた疑問点が生じていたかと思いますので、まずこの点を説明させていただきました。

その上で、更に御指摘いただいた16ページのマル4の1つ目の黒マルですけれども、こちらについては限定された場面を想定しております。どのような場面かと言いますと、冒頭、まず外部窓口を設ける場合と設定させていただいております。外部の窓口の例えば業者若しくは法律事務所が、事業者にこういう通報があったよという共有をする場合において、例えば通報者が同意をしなければ、通報者が誰であるかということも含めて事業者に共有しないということも考えられる方策の一つであると書かせていただいております。

ですので、先ほどの議論からとの関係を申し上げますと、外部窓口の業者は本来必要があれば事業者に対して共有することは指針上はできるはずであるけれども、一歩進んで、より通報者を保護するために、事前に同意がなければ、指針上やって良いことも、一歩踏みとどまって慎重に同意を取ってから共有するというやり方もあるのではないかという、一歩進んだ手段をここでは書かせていただいているということになっております。

以上、説明させていただきました。

○黒木委員 分かりました。もう少し読み込みますけれども、私の個人的な感想ですけれども、何となくその辺りの関係が指針の解説を読んでもすっと入ってこないという感じがしたので、質問させていただきました。

続いて、レポーティングラインに関する記述が7ページの脚注11であって、公益通報に当たり得るとされていますけれども、これは公益通報そのものに当たるとすべきではないのかなと思っているのです。上司に対する通報や報告であっても公益通報として保護される。ただし、当該上司が公益通報対象業務従事者でない場合には、一般法理としての守秘義務を負うので、本法に基づく刑事罰つきの守秘義務は負わないというだけの理解と考えられるのではないかと思うのですけれども、その辺りはそういう読み方で良いのかということについてお知らせいただければと思います。

○消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)金山政策企画専門官 ありがとうございます。

御指摘の点は、正にその御理解で我々も相違ないものと思っております。

ここを「当たり得る」と書かせていただいた趣旨でございますが、上司への報告は多様なものがございますので、その中で別途、内部公益通報の要件を満たすものについては公益通報に当たり得るといった趣旨で書かせていただいております。なので、もちろん前提として、公益通報に該当する要件を満たす通報事実であれば、それが上司に行けば必ず公益通報に当たるというのは今、黒木委員に御指摘いただいたとおりかと思いますので、そこの理解に我々と相違はないと思っております。

○黒木委員 ありがとうございました。

あと細かな点ですが、この指針の解説とか内容ですけれども、教育とか周知について事業者の中でどのようにやっていったら良いのかということについて、もう少し書き込んだほうが良いのではないか。これは、そういう意見があったということの御紹介です。

それから、この指針とは関係ないかもしれませんけれども、これは私の個人的な疑問ですが、新たな執行を伴うことになりますけれども、消費者庁がこの執行体制について、どのような執行を考えていらっしゃるのかということも教えていただければと思います。

○消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)和瀬企画官 教育・周知についての御意見、ありがとうございました。

それから、執行につきましては御懸念のとおり、来年6月1日以降直ちに法令が適用されますので、執行が必要な状況に入ってまいります。

法の執行につきまして具体的にどうするかというのは正にこれからしっかり詰めていかなければならないところでございますけれども、手始めにというが、役所でなかなか人を増員してもらうのは難しいところでございますが、執行に向けて、担当者として、補佐2名、係長2名を要求中ですのでこういった増員もしっかり使いながら、執行に向けた体制を固めてまいりたいと思っております。

○黒木委員 ありがとうございます。

事業者に対する周知徹底も、是非よろしくお願いいたします。

以上で終わります。

○後藤委員長 ありがとうございました。

それでは、他の委員の方々、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

特に御発言がないようですので、本日御説明をいただきました「指針の解説」については、基本的には当委員会の附帯意見を踏まえて作成されていると考えてよろしいでしょうか。

委員の方々、御異議あれば御発言いただきたいのですが、黒木委員はいかがでしょうか。こういう取りまとめでよろしいでしょうか。

○黒木委員 委員長の取りまとめに反対はしませんけれども、少なくとも責務のところは項を分けてもらったほうが、一読したときになくなってしまったと思って、確かに本文を詳細に読むとそうなのですけれども、その辺りは少し考えてもらったほうが良いのかなと。特に中小企業、300名以下のところも努力義務としては入ってくるので、そのような経営者が本文をじっと見て、アンダーラインを引きながら読むかなという気は少ししました。これは感想です。

○後藤委員長 周知・広報に関しては、この解説以外に例えばハンドブックをお作りになるとか、そのような形で、黒木委員が問題となさっているようなところも含めて記載していただくということでよろしいですか。そのようなことを考えていらっしゃいますでしょうか。

○消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)和瀬企画官 御指摘ありがとうございます。また、委員長の御指摘もありがとうございます。

正に委員長が御指摘のとおり、私どもで本当に少人数で内部体制を作っておられる事業者の方々も含めて来年6月から対象になるものですから、5万人の大企業から、300人の本当に中堅・中小企業まで、一律にこれを実施することはなかなかの困難を伴うだろうということは、私どももよく理解しております。

したがいまして、これは正に周知・広報が非常に重要な案件だというようにしっかりと認識しておりまして、具体的には今も既に実行しておりますけれども、様々な説明会、それは大企業だけではなくて中小企業の皆様、それから国・地方公共団体の機関におきましても、国の機関から本当に市町村のレベルのところまで、なかなかきめ細かくしっかりと施行していくのは難しいだろうということはしっかり理解しておりますので、そういったところに対しても、相手先を分けて、しっかりと周知・広報していくつもりでございます。その予算も取っておりますし、そうした説明会の事務的なところを詰めている最中でございます。

それから、委員長御指摘のとおりパンフレット、ハンドブック、それからハンドブックよりも更に簡潔な内容を書き込んだリーフレットといったものも作成あるいは改訂してまいるつもりでございます。

更に分かりやすくという意味で、動画やeラーニングといったコンテンツも予算の許す限りにおいてしっかり作ってまいるという方向で今、内部で検討を鋭意進めておるところでございます。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

委員の方々から発言希望が出ております。

星野委員、よろしくお願いいたします。

○星野委員 御説明ありがとうございました。

非常に重要な課題だと思いますが、事務だけではなくてインセンティブとしてというか、例えば企業を動かすために北風だけではなくて太陽も出してあげることが大事かと思います。

例えば関連する話で、経産省などですと健康経営に関してホワイト500といった、大企業と中小企業を別々に幾つか観点を設けまして、よくやってくれた事業に対して表彰する形で出すだとかということは結構しております。

特にESG投資等、ソーシャル、ガバナンスとかが非常に重要なのに、それが可視化されていないということがございますので、こういった内部公益通報窓口とか、例えば関連会社とか取引先からの通報を受け入れるとか、様々な観点でプラスアルファのことをかなり積極的に、または中小企業においては努力事務ですけれども実際にされている企業に関して表彰するような制度を設けるとかといったことも、実質的にそういった企業がそういった窓口をつくるということに非常に大きな機を与えると思いますので、是非御検討いただければと思います。

○後藤委員長 ありがとうございました。

○消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)和瀬企画官 御指摘ありがとうございました。

私どもで、公益通報者保護制度の認証制度を御用意させていただいております。それは私どもとは独立したところに委託をして、そこの認証機関においてしっかりした公益通報体制を整備しているということが認定された事業体に対しては、公益通報者保護マークみたいなものがあって、英語でWhistleblowingと言うのですけれども、そのマークを様々な場面、IRの場面とその他で使ってよいという認証制度が用意されております。

これも、私どもの周知の限界なのかもしれないですけれども、現時点では、先ほど先生がおっしゃったような中小企業というよりは大企業に利用がかなり集中しておりますので、そういったものが周知・広報の結果、更に認証制度が進んでいって、公益通報者保護制度がしっかりとその事業体において運用されていれば、それは社会に対しても良いメッセージになるのだという認識が事業者様において広がっていくとよいなと考えながら行政運営をさせていただいておるところでございます。

○後藤委員長 ありがとうございました。

それでは、生駒委員、よろしくお願いいたします。

生駒委員、発言の御希望があったと思いますけれども、いかがでしょうか。

それでは、先に大石委員、よろしくお願いいたします。

○大石委員 ありがとうございます。

私の質問は、既に、後藤委員長から御質問いただいた内容とかぶりますので、簡単に申します。今回、具体例ということで、マル4のところでお示しいただいてはいるのですが、中小企業の方たちや一般の市民が、この解説を見ましたときに本当に分かりやすいかどうかという点については、やはりもう少し補足すべき点が多いと思っております。ハンドブックも別途、作成いただくということでしたし、動画も作成いただくということでしたので、具体的な例を出すことについては、なかなか難しい面はあると思うのですけれども、是非積極的に、分かりやすい資料を作成し、先ほどお話しいただいたように、なるべく機会を増やして周知いただくことが必要かなと思っております。

もう一点だけ、やはり中小企業の場合には、先ほど委員もおっしゃいましたけれども、企業のトップと言いますかリーダーがどれだけこのことを理解していただけるかということが重要と思いますので、例えば商工会議所などといった、企業のトップ、リーダーが集まるようなところで繰り返し周知いただくと良いのかなと思いました。

以上です。ありがとうございます。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

○消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)和瀬企画官 御意見ありがとうございます。

御指摘いただいた観点を踏まえながら、しっかりと周知・広報に徹してまいりたいと思っております。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

青木委員、よろしくお願いいたします。

○青木委員 御説明ありがとうございました。

趣旨は理解いたしました。公益通報者保護法なのですけれども、企業にとっては、これを限度とするにしても、特に対象としている以外のものも含めて、経営や組織運営に関してのむしろ内部通報制度という理解の中での拡充が、ガバナンスを考えたときには、公益通報と内部通報の違いなのですけれども、その辺については特に同じような扱いになっているのですが、何かお考えがあればお聞かせいただきたいと思っております。

○消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)和瀬企画官 御質問ありがとうございます。

内部通報というのは公益通報者保護法の制度の中の1つのカテゴリーだと認識しております。先ほど私が概説をさせていただきました資料1の1ページ目、現行法の「3ポツ通報先の保護の条件」というところがありますけれども、ここで労働者が自社の内部に対して通報する、これが内部通報。これが公益通報者保護法の1カテゴリーでございます。

それから、労働者が外部通報として行政機関や報道機関等に通報する場合、これも公益通報者保護法の3カテゴリーあるうちの残りの2カテゴリーでございます。

私からの御説明は以上でございます。

○青木委員 今の説明は、公益通報者保護の中に内部通報が含まれている。これは方法論の発想なのですが、むしろ公益通報とする対象以外のものも、内部通報というのは組織運営や経営のところを含めてかなり幅広い範囲で従業員あるいは関係のところからのいろいろな問題を吸い上げるという取組をしている事業者が大分増えてきていると思っているのです。そこの捉え方が、公益通報者保護法を中心にした捉え方と、実際にガバナンスというところで見たときには、公益通報者保護法が対象としていないものも含めて、企業運営あるいは従業員のことをやるという、もう少し幅広い形での相談体制を整備している事業者が増えてきていると理解していまして、今お伺いして、やはりそうなのだな、その違いがあるなと感じた次第です。

ですので、最低限、公益通報の整備という概念もあるのですが、一方で、ガバナンスというところで見ると、内部通報の窓口をもう少し広い範囲で事業者が取り組んでいくという捉え方もあるのではないかと私は思っておりますし、そちらがどちらかというと風通しがよい、そのような風土を作っていくために重要ではないかと思っております。きちんとした形ができる前に、いろいろな相談を受け付けるという体制から入っていくという捉え方もあるのではないかという意見です。

以上です。

○後藤委員長 お願いします。

○消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)和瀬企画官 今いただいた御意見につきましては、直接的には私どもは公益通報者保護法の制度担当でございますので、それを義務的事項として位置付けることはもちろん困難でございますが、配付させていただいております解説の11ページのマル4の1つ目の黒マルを御覧いただければと思いますけれども、推奨事項として、コンプライス経営を推進するとともに経営上のリスクに係る情報の早期把握の機会を拡充するため云々のところで、内部公益通報に該当しない通報についても公益通報に関する本解説の定めに準じて対応するよう努めることが望ましいと。対象通報となる事項の範囲も、法令違反のほか、内部規程違反等といったように、特に大企業を中心にそういった実態があるということも聞いておりますし、私どもとして義務的事項にカテゴリーすることは困難だと思っておりますけれども、そういったことも考え方としてはあるという観点で、推奨事項に入れさせていただいておるところでございます。

以上でございます。

○後藤委員長 ありがとうございました。

○青木委員 ありがとうございました。

○後藤委員長 委員の方々、御発言は以上でよろしいでしょうか。

それでは、生駒委員、よろしくお願いします。

○生駒委員 大変重要な件を御報告いただきまして、ありがとうございます。

事業者の方への周知・広報を充実させていかれるということは、今お聞きしてきたのですが、実際に通報する側のお勤めをされている方とか社員の方々に、このような充実した体制が取れているので、何かあれば是非通報してくださいということ、安心して通報できる環境にあるのだということを、今までいろいろな形で周知・広報されていらして、これからもということですけれども、今回このようなより充実した体制を取られるに当たりまして、より一般の方々の耳に届くような広報の方法をお考えなのかどうかというのを知りたいと思います。

せっかく制度が拡充して、皆さんが良い形で安心して通報なり相談がされるようなことが望ましいと思いますので、その点をお聞きしたいと思いました。

○後藤委員長 お願いします。

○消費者庁参事官室(公益通報・協働担当)和瀬企画官 御指摘ありがとうございます。

おっしゃるとおりでして、これは正に事業者様の体制整備の問題でもあると同時に、来年6月1日から通報候補者というのでしょうか、通報するかもしれない潜在的な方々へもしっかりとアピールをしていかなければならないと考えております。

そういった方々にも、制度が変わったのですよということをお伝えすることの重要性はしっかりと認識しておりまして、恐らく来月になると思いますけれども、私か金山がラジオ番組に出演させていただいて、ラジオのリスナーに来年6月1日からこういった法改正が行われるのですよということを柔らかい語り口で説明するような機会も頂いております。

それから、先ほど動画のお話が出ましたけれども、動画というのは事業者様向けだけではなくて、一般の方にも伝わるようなショートムービーを作って、それを何とか一般の方々に届けさせる方法はないのか。例えばヤフーのトップページとかにちょっとしたムービーがいろいろありますけれども、ああいったところに載せるやり方はないのかとか、そういったことも含めて、頭を柔らかくしてしっかりと広報を考えていこうということで、私のチームで今、検討を鋭意続けておるところでございます。

○後藤委員長 どうもありがとうございました。

委員の方々、特にほかには御発言がないようですので、私の取りまとめとしましては、今、御意見を出していただいているのですけれども、多くの御意見は、この「指針の解説」を今後周知・広報するという段階で留意してほしい事項に属するのではないかと考えます。

そういうことですと、この「指針の解説」自体は消費者委員会からの附帯意見を踏まえた形で作成されていると考えてよろしいと思うのですが、委員の方々、そこについて、その取りまとめでは問題だということがあれば御発言いただきたいのですが、いかがでしょうか。

特に御発言がないようですので、今、私が申し上げましたような形で取りまとめをさせていただきたいと思います。

繰り返しになりますけれども、今後の周知・広報が重要なことになりますので、消費者庁におかれましては、本日の委員からの意見を踏まえた上で、周知・広報活動に当たっていただきたいと思います。

消費者委員会としましては、本件についても必要に応じて審議を行いながらフォローしてまいりたいと考えております。

本日は、お忙しいところ審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。

(消費者庁退室)


《4.閉会》

○後藤委員長 本日の議題は以上になります。

最後に、事務局より今後の予定について説明をお願いいたします。

○太田参事官 本日も大変御熱心に御議論いただきまして、ありがとうございました。

次回の本会議の日程と議題につきましては、決まり次第、委員会ホームページを通じてお知らせいたします。

以上でございます。

○後藤委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)