第338回 消費者委員会本会議 議事録
日時
2021年2月4日(木)10:00~10:56
場所
消費者委員会会議室及びテレビ会議
出席者
- 【委員】
- (会議室)山本委員長
- (テレビ会議)生駒委員、受田委員、大石委員、片山委員長代理、柄澤委員、清水委員、新川委員、丸山委員
- 【事務局】
- 加納事務局長、渡部審議官、太田参事官、友行企画官
議事次第
- 開会
- 特定商取引法及び預託法における契約書面等の電磁的方法による提供についての建議案について
- その他
- 閉会
配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)
《1.開会》
○山本委員長 皆様、本日は、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。
ただいまから、消費者委員会第338回本会議を開催いたします。
本日は、生駒委員、受田委員、大石委員、片山委員長代理、柄澤委員、清水委員、新川委員、丸山委員がテレビ会議システムにて御出席です。木村委員が御欠席です。
まず、会議に先立ちまして、本日は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、3密を回避しながら、消費者委員会会議室及びテレビ会議システムにより会議を進行いたします。また、感染拡大防止の観点から、引き続き一般傍聴者は入れず報道関係者のみに傍聴していただいて開催いたします。
議事録につきましては、後日、消費者委員会のホームページに掲載いたしますが、議事録が掲載されるまでは、本日の会議の様子を、2月5日金曜日15時頃より、ホームページで動画配信いたします。
それでは、会議の進め方及び配付資料の確認につきまして、事務局よりお願いいたします。
○太田参事官 本日も、どうぞよろしくお願いいたします。
いつもと同様でございますが、発言時以外はマイクをミュートにしていただくこと、御発言の際にはあらかじめチャットでお知らせいただき、委員長からの指名の後、冒頭にお名前をおっしゃっていただくなど、よろしくお願いいたします。また、御発言の際は、可能な範囲でビデオ通話をオンにしていただければと思います。ただし、回線が乱れた場合にはビデオ通話をオフとしていただきますので、あらかじめ御承知おきください。
なお、資料は議事次第に記載のとおりです。お手元の資料に不足等がございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願いいたします。
以上でございます。
《2.特定商取引法及び預託法における契約書面等の電磁的方法による提供についての建議案について》
○山本委員長 最初の議題は「特定商取引法及び預託法における契約書面等の電磁的方法による提供についての建議案について」を御審議いただきます。
これまで審議を重ねてまいりましたが、委員の皆様の御意見を踏まえて、事務局に建議案を取りまとめていただいたところです。
事務局より、15分程度で御説明をお願いいたします。
○友行企画官 それでは、御説明いたします。
資料1を御覧いただけますでしょうか。「特定商取引法及び預託法における契約書面等の電磁的方法による提供についての建議」でございます。
1ページ目でございます。社会全体におけるデジタル化の推進の必要性や、新型コロナウイルス感染症への対応などを背景として、消費者庁においては、消費者の保護を損なわないようにするとともに他方での参照し、他法令の例も参照し、契約書面等の交付を義務付けている特商法及び預託法において、消費者の承諾を得た場合に限り、消費者に交付する契約書面等について、電磁的方法により提供することを可能とすることを検討されております。特商法及び預託法は、消費者トラブルを生じやすい特定の取引類型を対象として、取引類型の特徴に鑑みまして様々な規律を設けております。その中でも、十分な情報を提供してその合理的な意思決定の機会を確保して消費者トラブルを防止する観点から、契約書面等の交付を義務付けております。その書面がクーリング・オフ期間の起算点となるなど、消費者の権利行使・被害救済を図る上でも重要な機能を有しております。また、電磁的方法による提供を可能とすることについては、契約書面等の制度趣旨を踏まえ、取引類型ごとの契約の性質や実態等を考慮し、消費生活相談の関係者などの意見を聴取した上で十分に検討を行い、その機能が維持されるようにしなければならないということでございます。デジタル化は、消費者の保護を図る上でも重要でございます。デジタル技術を消費者の利益のためにも広く活用して消費者の利便性の向上を図る、デジタル技術によって消費者トラブルの防止及び被害救済を図りさらなる消費者の保護につなげることが必要でございます。特に、消費者のクーリング・オフな通知について、当該通知を電磁的方法によっても可能とするよう措置を講ずべきと考えます。
以上を踏まえまして、当委員会としては、2ページ目に参りますが、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)に対し、以下のとおり建議するということでございます。そして、本建議への対応について、大臣に対し、その実施状況の報告を求めるということでございます。
3ページ目でございます。建議事項1になります。消費者庁は、特商法及び預託法の内容、両法による規制の特徴、取引類型ごとの契約の性質や実態、契約書面等の交付の意義並びに消費者トラブルの実態を考慮して、その在り方について、以下の点について、消費生活相談の関係者等の意見を聴取して十分に検討を行い、必要な措置を講ずべきであるとしております。(1)消費者の承諾の取得の実質化でございます。消費者から得られる承諾は真意に基づく明示的なものでならなければならない。消費者に対し、承諾前において承諾の効果などについて十分な情報提供がなされることが必要ということでございます。(2)電磁的方法による提供の具体的方法でございます。一覧性を保った形で閲覧可能であり、かつ、消費者にとって容易に保存可能であることが必要でございます。(3)クーリング・オフ期間の起算点の明確化と承諾の取得に関する立証責任でございます。クーリング・オフ期間の起算点を明確にすること、消費者の有効な承諾を得たかどうかの立証責任は事業者側にあることを明確にすることでございます。(4)法施行後の実態把握と検討でございます。消費者取引の状況や法令等の運用状況について、その実態を把握して、法令に違反した事業者に対しては、迅速かつ厳正な法執行を行う。(1)から(3)で述べました措置の実効性を検証した上で、必要に応じ、見直しを含めた検討を行っていただきたいということでございます。理由のところでございます。1つ目は、特商法及び預託法の特徴を記載しております。
4ページ目に参りまして、2つ目でございます。契約書面等の交付義務について述べております。契約書面等を交付することについては、「すなわち」の段落でございますが、勧誘の段階と契約の段階のそれぞれにおいて、その商品やサービスなどについての取引条件について、所定の大きさの文字によって、必要に応じ、赤字で書くこと等、目立つ形式によって十分な情報を提供するという機能を持たせております。その交付時から起算して一定の期間はクーリング・オフを可能とすることにより、消費者に熟慮の機会を与える意味合いを有しております。最後の「特に」の段落でございますが、クーリング・オフとの関係では、その書面に不備があった場合にはクーリング・オフの期間が経過しないと解されております。3つ目でございます。電磁的方法による提供に係る懸念事項でございます。書面を一覧することができる、第三者が視認しやすいことが優れた点として認められるものと考えられております。「また」の段落でございますけれども、デジタル技術に関する消費者の弱みにつけ込んだ消費者トラブルが発生されることが懸念されます。「加えて」のところでございますが、デジタル技術・デジタル機器への習熟度によっては、契約が締結された事実や契約の内容が明確に認識されないといったことが懸念されます。
4つ目といたしまして、参入規制の有無でございます。特商法・預託法におきましては、参入規制が採用されておりません。そのため、行政や自主規制団体が全ての事業者の状況を把握しているわけでもございません。5つ目といたしまして、消費者保護のために実施されるべき事項でございます。ここに(1)から(4)を記載しておりますけれども、こちらを建議事項の中に含めております。(1)消費者の承諾の取得の実質化のところでございます。「また」の段落でございますが、承諾が取得されることによって契約書面等の電磁的方法による提供を可能とする場合には、消費者がその提供の意味を理解した上で承諾することが重要でございます。その前提として、情報提供が重要な意味を有することになり、消費者の年齢や判断力も考慮した上で、承諾の効果、電磁的方法の種類・内容、クーリング・オフの起算点についてあらかじめ消費者に対して十分な情報提供がされることが必要でございます。その点をガイドラインなどで明確化すべきであるとしております。(2)電磁的方法による提供の具体的方法でございます。
6ページ目に参りますが、一覧性を保った形で閲覧可能であること、提供されたファイルなどを容易に保存できるなどといったことも重要であると考えております。(3)クーリング・オフ期間の起算点の明確化と承諾の取得に関する立証責任でございます。(4)法施行後の実態把握と検討といったところでございます。
建議事項の2でございます。7ページ目を御覧いただけますでしょうか。消費者庁は、高齢者や障害者など、デジタルツールに不慣れな消費者やデジタルツールに慣れていながらもトラブルに巻き込まれやすい若年者等における被害の未然防止・拡大防止を図り、デジタル化を更に消費者保護につなげるという観点から以下の取組を行うことが必要であるとしております。1つ目といたしまして、デジタル技術を活用した消費者の保護でございます。消費者のクーリング・オフの通知について電磁的方法によることが可能となるよう措置する措置を講ずること。イといたしまして、デジタル技術を活用した消費者保護の取組を推進すること。(2)消費者のデジタルリテラシー向上に向けた消費者教育を一層充実・強化すること、(3)消費生活相談体制を含め、消費者のデジタル化を推進することでございます。理由といたしまして、1つ目でございますが、(1)電磁的方法によるクーリング・オフの通知でございます。(2)デジタル技術を活用した消費者保護の取組の推進でございます。「例えば」のところでございますが、検索機能や保管性を更に高める、難しい用語の解説をリンクでひも付ける、クーリング・オフ期間などについてリマインドを行う、メールなどで送付した場合の開封確認を行う、契約締結前後におけるサポート体制の充実という観点から問合せのためのメールフォーム等の設置やクーリング・オフのためのメールフォームも併せて消費者に送付するといったデジタル技術を活用した消費者保護の取組を一層推進していただきたいということでございます。
2として、消費者教育の充実・強化でございます。デジタルツールに不慣れな消費者が一定数存在いたします。また、大学生など学生において、若年者においてはデジタルツールを日常的に活用するがゆえに消費者トラブルに巻き込まれる可能性もございます。成年年齢引下げを踏まえた若年層に対する消費者教育の必要性が高いことなどを考慮し、デジタルリテラシー向上に向けた取組を一層強化していただきたいということでございます。「また」のところでございますが、トラブルの実態及び消費者教育の効果を不断に把握し、消費者に対し、適切な情報提供や実態に合わせた消費者教育を行うべきであるとしております。3として、消費者行政のデジタル化でございます。社会のデジタル化に対応した消費生活相談業務が行える環境を整備することが必要でございます。勧誘時、契約締結時において、消費者からの相談にきめ細かく対応するため、消費生活相談体制を含め、消費者行政のデジタル化を推進すべきでございます。
こういう形でございます。御説明は以上です。
○山本委員長 ありがとうございました。
それでは、御質問、御意見のある方は御発言をお願いいたします。質疑応答の時間は30分を予定しております。御発言、御回答はなるべく簡潔に行っていただくようによろしくお願いいたします。
この建議案は、委員の方々に意見を出していただき、そのコンセンサスとなったところをまとめたものです。しかし、例えば力点の置き方に関する御意見とか、更に補足する御意見をそれぞれお持ちのことと思います。そういった意見も含めて御意見をいただければと思います。
それでは、清水委員、お願いいたします。
○清水委員 ありがとうございます。
私は、消費生活相談員です。消費生活相談の現場では、消費者の実態を把握し、事業者と話合いを重ねて被害回復をしている。そういった消費生活相談員としては、今回の特商法におけるオンライン書面交付を可能とする改正には反対しております。これは全国の消費生活相談員の総意でございます。
この件につきましては、先日、私が所属しています全国消費生活相談員協会の増田理事長が申し上げていましたけれども、全国に緊急アンケートを取ったとことから明らかでございます。昨日も、この件で私の職場の行政職員と議論をしました。死活問題だと言われました。それほど消費生活相談員は特商法を利用しています。
この特商法は、悪質な取引や事業者を取り締まる法律です。若者の親からの相談で、契約書を見つけ、相談につなげていただいたケースは数多くあります。親からは私たち相談員に、なぜこんな取引を認めているのか、なぜ禁止しないのかと言われ続けております。連鎖販売取引、いわゆるマルチ商法や業務提供誘引販売取引、いわゆる副業といったものです。
また、あっせんの現場では、契約の不備をついて、私たち相談員は契約書隅から隅まで見て、何かないか、法定書面になっているかどうかを日々チェックしてあっせんに活用しています。クーリング期間が経過しても返金につながったケースは数多くあります。高額なリフォームだったり、水詰まりトラブルだったりするような相談でございます。
しかし、オンライン書面交付が可能とする改正がなされるなら、今説明があった建議のとおりだと思っています。同意取得の書面の重要性について、丁寧な情報提供、丁寧な説明、また、クーリング・オフの電磁的通知等、詳細に整備する必要があります。同時に、書面交付の事業者の立証責任や違反した場合の民事的効果の規定、取締りの厳罰化を要望します。
以上です。
○山本委員長 ありがとうございました。
丸山委員、お願いします。
○丸山委員 丸山でございます。
今回の建議されている内容については、異論はありません。確認したい、強調したい点についてコメントをさせていただければと思います。
まず、建議1に書かれている事項になります。承諾の実質化の部分で、理由のところに掲げられておりますけれども、5ページの承諾の取得の実質化のところで言及されている点ですが、実質的な承諾取得のためには、デフォルト設定での承諾取得は認められないと考えております。書面では「慎重であるべき」と書かれておりますが、デフォルト設置による取得などは認められませんので、消費者の実質的な承諾の取得のための法制はしっかりと考えていただきたいと思います。
第2点としては、建議1、(1)イの十分な情報提供の部分でございます。これも理由を見ていただければと思いますけれども、理由のところで言及されておりますように、クーリング・オフの起算点がどういった時点になるのかといった情報の提供も必要であると考えております。必要な情報提供がされない場合については、民事効にも結びつくようなルールの制度設計をしっかりと考えていただきたいと思っております。
次に、建議事項2になります。7ページですけれども、(1)アに書かれているクーリング・オフの通知を電磁的方法で可能とするということは、もちろんしていただかなければと思います。その上でなのですけれども、次のイのところに書かれている消費者の認識を高めるという観点から電磁的な方法やクーリング・オフ期間等についてリマンインドを行う、確認通知を行うといった点についても、これはこういった電磁的方法に転換するに当たって、消費者が交付に気付かないという懸念が多く示されましたので、是非必要な措置として考えていただきたいということを強調しておきたいと思います。
私からは以上です。
○山本委員長 ありがとうございます。
片山委員長代理、お願いします。
○片山委員長代理 ありがとうございます。
消費者庁において、特商法で義務付けられている契約書面等の交付について電磁的方法によることを可能とする法改正が検討されている中、今回の建議はそのことに対し、契約書面等の消費者保護・権利確保機能が維持されるために講じられるべき措置を詳細に指摘したものであり、今、丸山委員からも指摘がありましたけれども、大変重要な建議であると理解しております。その意味で、建議を出すことについては了解をいたします。
ただ、委員個人として、補足という意味で1点だけ意見を述べさせていただきたいと思います。
建議の前書きのところや建議1の前書きでも書かれています。例えば、前書きの2段落目の下から2行目のところに書かれていますが、特商法の対象とする取引類型といいましても、取引類型ごとに契約の性質や実態等は全く異なります。この点に関し、建議の中では、取引類型ごとの契約の性質や実態等を考慮しつつ、消費生活相談の関係者等の意見を聴取した上で十分に検討を行うことという指摘がなされています。
私は、今回、被害の多い特商法の全ての取引類型に最初から一気に契約書面の電磁的提供を可能とするという改正がなされることは、消費者被害を増大させるリスクが大きいものであると大変懸念しています。特に、訪問販売のような、そもそも取引が電磁的方法を用いて行われない取引については、他の取引類型と比較しても電子化の必要性が大きく異なるのではないかと考えています。
したがって、本建議の一番の目的であります消費者保護における契約書面の交付の重要性を踏まえた場合には、電磁的方法による提供が本当に必要とされる取引類型から実施を開始し、建議1の4に書いています法施行後の実態把握等の検討を踏まえて対象の拡大を検討するという手順を踏むのが本来は望ましいものであると、私個人としては考えています。
私も、電子化に反対するものでは決してありません。ただ、デジタル改革のワーキンググループの中でも、デジタル化はそれ自体が目的なのではなくて手段であって、本当に人に優しいデジタル化が推進されないといけないということが理念として述べられています。その理念を貫くためにも、国民が納得できるように、段階をきちんと踏んで、安心できる環境の下で、今回の建議で指摘したようなことについても本当に十二分に検討していただいて推進されていくことが非常に重要だと考えております。
以上、私の個人的な意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。
○山本委員長 ありがとうございます。
大石委員、お願いします。
○大石委員 大石でございます。
私も、今回の建議について思うところを発言させていただきます。
先ほど清水委員からの御発言にもありましたように、相談現場の皆様は、今回のこの特商法の契約書面の電子化については、相談現場で実際にいろいろな事例を見聞きされているからこそ心配されているということ、私も重々承知しております。
また、学校現場にしましても、現在、マルチなど、見えないところでいろいろ被害が増えていると聞いています。そのような中、来年4月から更に成年年齢の引下げが行われる中で、今回、特商法においても書面の電子化が行われることに対して、教育現場でも大変心配しているというか、困惑しているというところです。
ただ、今回のコロナのこともありまして、世の中でデジタル化が必要であるということについては、もちろん私どもは思い知ったところもあるわけで、デジタル化に進むことについて全く反対するものではないのですけれども、何度も申し上げますけれども、それぞれの相談現場、教育現場など、いろいろな現場で対応されている方が本当に安心してこの制度も受け入れられるような体制が整わない限りは、決して前に進むべきではないのではないかと思っております。
ですので、今回の建議に対して、消費者庁など担当省庁の皆様が何らかのその方法を検討し、回答してくださると信じておりますけれども、それが本当に不十分であった場合には、経過措置を残すくらいのつもりで何度でも建議を出して、現場の皆様が安心して認められる、認めていただけるように、この建議を出したつもりでおります。
特に、若者は、デジタル化に慣れているがために、自分では本当に承諾したと思わずに携帯電話などのボタンをどんどん押してしまって、知らない間に契約をしてしまっているということが現実問題で起きていますので、これはデジタル化が進む中大変重要な問題だと思っています。その点についても、教育面も含めしっかりと検討していただくことをお願いしたいと思います。
もう一点、建議の中では、開かれた場でということで、消費者生活相談の関係者等の意見を聞いて、と書いてあるのですけれども、実際には、事業者も大変大きな影響を受けるのだと思います。そういう意味では、事業者、消費者相談の窓口、消費者団体、専門家など、いろいろな人たちが集まった開かれた場で、しっかりと検討されてこなかったというところに、一つ、大きな、反対というか、不信感が生まれていると思いますので、仮にガイドラインの策定というようなことになった場合には、必ず開かれた場で綿密な検討をしていただくということ、是非これも要望したいと思います。
以上です。
○山本委員長 ありがとうございます。
柄澤委員、お願いします。
○柄澤委員 ありがとうございます。柄澤です。
この提言につきましては、ここまで検討した内容につきましてお取りまとめいただいたものとして御礼を申し上げるとともに、内容には賛意を示させていただきたいと思います。
コロナ禍におきまして、いわゆる社会的弱者の雇用が失われてきているなど、日本における格差がより一層拡大している現状でございます。ウィズ・コロナ、アフター・コロナにおいて、雇用の維持あるいは格差是正のメカニズムを機能させていくためには、生産性向上による経済成長が不可欠で、そのためには規制改革は非常に重要な論点だと思っております。また、新しい生活様式の下で、書面、押印、対面を原則とした制度や慣行を見直すことが求められていると思っております。
各委員が御指摘のように、確かに、特商法・預託法における取引は、消費者トラブルが生じやすい取引として、消費者に十分な情報を提供し、その合理的な意思決定の機会を確保することが、ほかの取引と比べても重要であることは論をまたないと思っております。
一方、むしろデジタルの力を活用して消費者に十分な情報を提供するために、事業者として創意工夫する余地はあるべきで、将来を見据えた消費者行政として、この機会を利用して、消費者の利便性、消費者保護の向上を図っていくことを目指していくべきだと考えております。
自社の例で大変恐縮でございますけれども、当社におきましては、デジタル技術を活用して、お客様が電磁的方法によって、商品案内や保険加入のみならず、契約のメンテナンスとか、更には事故時の連絡等も含めて一連のプロセスを完結できる仕組みを導入する予定でありまして、そのプロセスについては電磁的に記録され、お客様と当社の双方が確認できることになります。
問題は悪質事業者で、消費者庁におかれましては、この建議案のとおり、消費者保護のために実施されるべき事項として、消費者の確かな承諾の取得、電子交付の具体的方法の明示、法令に違反する事業者への迅速かつ適正な法執行を行っていただきたいと考えております。
最後に、提案ですけれども、特商法・預託法における取引において、なかなか難しいかもしれませんけれども、書面が他の取引と比べてより重要な位置付けを持つという認識のもとに、政省令等で、電子交付後も、消費者の求めに応じて書面交付を義務付けることも、検討できるのであれば検討いただければと考えております。
以上です。
○山本委員長 ありがとうございます。
受田委員、お願いします。
○受田委員 ありがとうございます。
コメントをさせていただきます。
まず、建議に関しましては、この方向で賛同いたします。
特にコメントをさせていただきたいのは、8ページにあります消費者教育の充実及び強化に関してでございます。下から3行目にありますように、消費者トラブルの実態及び消費者教育の効果を不断に把握するという点に関して、更に補足をしておきたいと思います。
トラブルの実態に関しては、不断に把握するという意味で、具体的に、例えば、PIO-NETに記された様々な事案、また、消費生活相談員の皆様の声を機動的に拾い上げていただいて、その変化に鋭敏であっていただきたいというのが一つです。
消費者教育の効果を把握する上では、アウトプットのみならず理解度というアウトカムの定点でのモニタリングが求められると思います。この方法論に関してはまだ未整備でございますので、その点についてもしっかりとしたその方法論の確立をお願い申し上げたいと思います。
今後、デジタルの波が消費者に与える影響は、光と影、両方あると思います。事業者と消費者との間に電磁的方法によるコミュニケーションが活発になり、光が更に強くなり影がなくなることを、是非この機会を通じて一層進めていただきたいと思います。
以上です。
○山本委員長 ありがとうございます。
新川委員、お願いします。
○新川委員 新川です。
ここまで建議の案がまとまりましたことを大変重要だと考えています。まず、この案については、この内容で結構かと思っておりますことを最初に申し上げます。
その上で、今回の改正全般を通じて気になっている点を総論的に申し上げたいと思います。
1つは、こうした電磁的な方法あるいはデジタル化に対する消費者の権利の確立や消費者保護という観点での対応が全体的にこれまできちんとできていたかということについて、改めて問題が指摘されたのではないかと思っております。今後の課題として、こうした新たな技術や社会経済の変化に対して、消費者の権利あるいは消費者保護という観点からどういうふうにこれに関わっていくのか、対処していくのかということを考えなければならないと思っております。
2つ目の重要な論点は、そうした点からも、こうした電子的な取引が中心になっていく社会の中で、具体的に、消費者に、財やサービスについて、また、契約内容について本当に正確な情報が伝わっていくのか、そういう情報がきちんと届いているのかという原則を確立していかなければならないと思いますし、同時に、消費者の権利からすれば、契約を変更したり、様々な修正をする際のアクセスの権利を明確にしていくことが重要ではないかと改めて思っております。これも今後の重要な検討課題かと思います。
それらを含めて、3つ目に強調しておきたいのは、こうした電子的な取引に関わって、体系的に消費者の観点からの議論をしていかなければなりませんし、そのための権利保護の在り方を考えなければならないということを、総論的には大変今回は痛感をしたということを申し上げておきたいと思っております。
一方では、個別に、今回の改正の各論点は、法改正が日程に上ってきたところで、当然なさねばならぬ作業ということで今回の建議に至ったということは、私自身も了解しておりますし納得もしているのですが、その中でも個別に気になりますのは、1つは、特商法・割販法等の持っております特定商取引の手法について、あえてこうした法律ができているという特殊性をきちんと理解してこの改正に取り組まなければならないという点は強調しておきたいと思います。何ゆえこういう法制ができているのかということ、それをある意味では一律にデジタル化ということでは、恐らくこの法律を作った趣旨、これを運用してきた実績をないがしろにすることでもあります。こういう点での留意を今回の建議の中でも繰り返し触れていますけれども、こうした点、そもそもの法制定の原点に立ち戻って、また、これまでの運用の積み重ねを踏まえて、今後の改正やその運用に向かうべきではないかと思っております。
2つ目に、今回の改正の中で、これは致し方のないところなのですけれども、従来の書面主義を、どういうふうにデジタルに変えていくのかという論点での議論が中心になってきました。これはこれで必要な議論をしてきたつもりではいるのですけれども、むしろこれからは書面主義に替わって電磁的な方法になるとすれば、従来の書面ではできなかったこと、あるいは、従来の書面でできていたことでデジタルではできないことをもう一度整理し直す必要が今回の改正の中でもあるのではないかと思っております。これは今後の課題になると思いますけれども、こうした書面の単純な置き換えという話ではないところにこの改正の意味はあると思っておりますので、こうしたデジタル化が特措法あるいは割販法等に関わってどういう意味を持っているのかということを丁寧に議論しないといけないのではないかと思っております。
以上、総論、個別論とあるのですけれども、いずれにいたしましても、消費者行政全般について、当消費者委員会も含めて、このデジタル化の問題について少し検討が遅れてしまったのではないかという反省を自分自身でもしているということを申し上げて、コメントにさせていただきたいと思います。
以上です。
○山本委員長 ありがとうございます。
それでは、生駒委員、お願いします。
○生駒委員 建議のおまとめをありがとうございます。皆様の御意見を練り込んでいただいた形で進めていただいて、ありがとうございます。
デジタル化は時代の要請で、これは止められるものではないと思いますし、事業者だけではなくて消費者にとっての利便性を上げるという意味では、これは時代の流れだと思うのですけれども、私は7ページ以降の第2の項目の部分が非常に重要なのではないかと思っています。書面のデジタル化と同じぐらいの強度で消費者に対して十分な情報提供をしていくことが、逆に、先ほど受田委員がおっしゃったのですが、デジタルの力を使って消費者の皆さんに情報を提供していくあるいは意見交換ができるような場を作るようなことが併せて必要なのではないか。同じ強度で、こういった消費者保護、消費者教育を進めていただきたいと思います。
例えば、PIO-NETに関しても、被害の実態は集められてはいても、それがどのように活用されているのかということを考えます。消費者からすると、この企業は大丈夫なのか、この商品は大丈夫なのかと思ったときに、どこに問い合わせてどうやって調べればいいのかというのが分からない。そういう被害の実態を見える化していく。具体的に被害がどのように起こってどのような被害だったのかということが消費者の方の手に届くような情報提供も必要なのではないかと思っております。
ですので、第2項目、2の教育の強化、3番目に「消費者行政のデジタル化」とありますけれども、逆に、そのデジタルの力を使って消費者を強力に保護していく、教育していくような流れを、これは付随的なものではなくてむしろこちらがメインなぐらいで、消費者保護及び教育のデジタル化を進めていただければと希望いたします。
○山本委員長 ありがとうございました。
皆様から御意見をいただいたところです。
今回の建議案の1段落目あるいは2段落目にありますように、社会全体におけるデジタル化の推進の必要性が、今般の新型コロナウイルス感染症への対応において更に痛感されている。その重要性については、委員の皆さんも一致をして認めておられたところです。
しかし、契約書面等の電磁的方法による提供の問題について言えば、それを進める場合にはきめ細かい検討が必要である。きめ細かいということの意味は、1ページの第2段落の後ろに書かれておりますけれども、従来、特商法あるいは預託法において書面交付が要求されてきた機能が維持されるようにしなければならない。そのための条件を建議事項1に、具体的に(1)から(4)、(4)は主には執行の手続の話になりますので、中身の話としては(1)から(3)になろうかと思いますが、そういった形で列挙しています。現在承諾に基づいて書面の電磁的交付が認められている法令がいろいろございますけれども、それに比べましてかなり厳しい条件をここに示しているつもりです。
それにつきまして、「きめ細かく」ということは、先ほど来、意見がありますように、消費生活相談の関係者等の意見を十分に聴取して検討しなくてはいけない。「等」ということですから、消費生活相談の関係者に限らず、事業者側もそうでしょうし、あるいは、もろもろの分野の専門家、法制度の専門家だけでなく技術の専門家も入ることになるのかもしれませんが、広く意見を聞いていただくことが必要かと思います。きめ細かく検討していただきたいという点です。
建議事項2に書かれているのは、広く検討していただきたいということです。今回、契約書面の電磁的方法による提供をするかしないか、あるいは、するとしてどのような方法によるかということが議論されているのですけれども、問題は、消費者にとって利便性があり、消費者の権利が守られるデジタル化を進めていかなくてはいけないということであって、そのような観点から言えば、電磁的交付をするかしないか、どのような方法によるのかということに限らず、更に広く視野を取って、消費者にとって利便性があり、権利が保護されるデジタル化を進めていただきたいということを述べております。
その中で一番具体的に言っている点は、クーリング・オフの通知について電磁的方法によることが可能になるようにということですけれども、それに限らず、先ほど来、委員からの意見にもございますように、デジタル技術は消費者のためにいろいろ使えるところがありますので、従来にも増してデジタル技術を使って消費者の保護あるいは利便性を増進する方向で検討していただきたいということです。
きめ細かくということと幅広くということをこの建議案の中で言っておりまして、具体的にそれぞれ各委員から御意見をいただきました。
それでは、建議案の内容については御了解いただけたと思いますので、これをもちまして、当委員会の建議とし、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)宛てに送付をしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
チャットに御入力いただけますか。事務局にそれを確認していただきます。
○事務局 全員了解でございます。
○山本委員長 それでは、全員からチャットを通じて了解をいただきましたので、建議案につきましては、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)宛てに送付をしたいと思います。
皆様におかれましては、建議の取りまとめに御尽力いただき、ありがとうございました。建議の中に書かれているとおり、これからが非常に重要です。大臣宛てに建議を出しておりますけれども、これに対してどのように対応されたかということについて、委員会は今後も報告をしていただいた上で議論、審議をしていくことになります。それだけ建議は重い意味を持っております。したがいまして、消費者委員会としてもこの問題には今後も十分注意をして取り組んでいかなくてはいけません。
それでは、この議題につきましてはこれぐらいにいたしまして、次に、消費者委員会に寄せられた意見等の概況につきまして、事務局より報告をいただきます。
《3.その他》
○太田参事官 それでは、参考資料1という横長のA3の資料がございますが、そちらを御覧いただければと思います。表題といたしまして「消費者委員会に寄せられた要望書・意見書・声明文等一覧」とございます。
これは、四半期ごとに消費者委員会に寄せられた要望書等をまとめたものを御報告しているものでございまして、今回は、令和2年10月1日から令和2年12月末日までに寄せられた意見を御紹介しております。合計で29件の御意見等が寄せられております。
分野ごとに簡単に御紹介させていただきますと、まず、取引・契約関係で17件の御意見を頂戴いたしております。上の方にございますように、電子決済サービスのセキュリティー強化、いわゆるお試し購入問題についての規制強化といった御意見をいただいておりまして、委員会でも御議論いただいたということでございます。それから1ページ目の下から2ページ目にかけまして、消費者庁におけるデジタルプラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備に関する検討会の論点整理が8月末に出されたことを受けて、そちらに関する御意見を複数いただいているということでございます。
2ページ目の中段辺りにございますけれども、同じく消費者庁における特商法・預託法の改正についての検討会の報告書が出されたことを受けて、実効性のある法改正を求めるといった趣旨の御意見をいただいているところでございます。
3ページ目の下に参りますと、本日御議論いただきました特商法・預託法の書面の電子化といったことについての御意見をいただいております。この後、1月以降になりますと、この件についての御意見が更に多数寄せられているという状況になってございます。
以上が取引・契約関係でございまして、4ページに参りますと、食品表示関係ということで6件の御意見をいただいております。個別商品についての表示の問題について、質問状、申入れ書などをいただいているということでございます。4ページの下に参りますと、消費者安全関係で1件ということで、新型コロナウイルス感染症のワクチンについての安全性についての御意見でございます。
5ページに参りまして、料金・物価関係で1件でございますが、電力改革について電力の容量市場制度の見直しを求める要望書といったものをいただいているところでございます。さらに、その他として4件ということで、各種の御意見をいただいているという状況でございます。
説明は以上でございます。
○山本委員長 ありがとうございます。
今の説明につきまして御意見等のある方は御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
今回は、現在、議論が進んでおります特商法・預託法の制度改正について、これは10月から12月までにいただいた意見ですので、主には販売預託の原則的な禁止等々について意見をいただいております。今日議論をした契約書面の電磁的交付に関しましては、12月24日と12月28日に、それぞれ1件ずつ、合計で2件が寄せられておりますけれども、これ以後、1月に入りまして、非常に多くの意見をいただいているという状況です。今日の資料では12月までを対象にしておりますので、そこまでは反映されておりませんけれども、これ以後、今日の前半のテーマに関する意見をいろいろいただいています。清水委員、お願いします。
○清水委員 先ほどの説明があった意見書なのですけれども、1ページのところに、11月9日、全相協がデジタルプラットフォームの意見書を提出しています。この件についても、消費者庁の骨子案が修正で後退したように思われます。今後も、当委員会で確認していく必要があるかと思いました。
以上です。
○山本委員長 ありがとうございます。
重要なテーマですので、今後、委員会としても審議をしていきたいと思いますが、ほかにいかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
委員会に寄せられた意見書、要望書等につきましては、今後とも全員で情報共有をするとともに、定期的に委員間で意見交換を行う機会をつくってまいります。
《4.閉会》
○山本委員長 それでは、本日の議題は以上になります。
最後に、事務局より、今後の予定について説明をお願いいたします。
○太田参事官 本日も、熱心に御議論いただきまして、ありがとうございました。
次回の本会議につきましては、日程が決まり次第、委員会ホームページを通じてお知らせいたします。
なお、2月10日、水曜日は、消費者団体ほか関係団体等との意見交換会を開催予定でございます。
以上でございます。
○山本委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。
お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございました。
(以上)