第311回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2019年12月13日(金)16:29~17:53

場所

消費者委員会会議室

出席者

  • 【委員】
    山本委員長、生駒委員、受田委員、大石委員、柄澤委員、木村委員、清水委員、丸山委員
  • 【説明者】
    環境省地球環境局地球温暖化対策課地球温暖化対策事業室池本室長補佐
  • 【事務局】
    二之宮事務局長、福島審議官、金子参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 行動経済学「ナッジ」の活用に向けた取組状況について
  3. その他
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○山本委員長 それでは、そろそろ時間になりますので、ただいまから第311回「消費者委員会本会議」を開催いたします。

本日は、片山委員と新川委員が御欠席です。

それでは、配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

○金子参事官 配付資料につきましては、議事次第の下に一覧がございます。

もし、不足等ございましたら事務局までお申出ていただきますようにお願いいたします。


≪2.行動経済学「ナッジ」の活用に向けた取組状況について≫

○山本委員長 本日の議題ですが「行動経済学『ナッジ』の活用に向けた取組状況について」です。

行動経済学や行動科学分野において、自発的に望ましい行動を選択するように促す仕掛けや手法を示す用語として用いられているナッジについては、EBPM等の観点から、昨今、各省庁などにおいても、その手法を活用した取組が広がりをみせております。

消費者委員会といたしましても委員間で様々な検討を行っていく中で、消費者政策の実効性の向上や情報発信の際に、このナッジの観点を活かすことが必要ではないかという議論がなされています。

そこで、本日は平成29年4月の日本版ナッジ・ユニットの発足に際しても、イニシアチブを発揮し、各省庁に先駆けて、それを活用した政策の推進に積極的に取り組んでいる環境省からヒアリングの上、意見交換を行いたいと思います。

本日は、環境省地球環境局地球温暖化対策課地球温暖化対策事業室の池本室長補佐にお越しをいただいております。

池本補佐におかれましては、お忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、大変恐縮ですけれども20分程度で御説明をお願いいたします。

○環境省池本室長補佐 ただいま御紹介にあずかりました環境省の池本と申します。よろしくお願いします。着座にて失礼いたします。

本日は、このような機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。

時間が限られておりますので、早速、資料の御説明に入らせていただきたいと思います。

ナッジ活用に向けた取組状況について御紹介させていただきます。

まず、ページをおめくりいただきますでしょうか。

1ページが、本日の説明の流れになっております。

1番目、2番目ですが、既にナッジについては、ある程度御存じだということで、事務局より伺っておりますので、この辺りは簡潔にまいりたいと思います。

初めに、イントロで、ナッジとは、そして、世界の動向。

2番目で国内の動向に移りたいと思います。

3番が、本日の御議論の中心になるかと存じますが、ナッジの活用について考慮すべき論点について、環境省あるいは日本版ナッジ・ユニットとして考えたものを幾つか取り上げさせていただきました。

それでは、御説明に入ります。

2ページ目で、イントロの、まず、ナッジとはということで、3ページ目を御覧いただけますでしょうか。

こちらが、まとめのスライドになっておりまして、ナッジは英語でなかなかまだ耳慣れない言葉ですが、肘で突っつく、あるいはそっと後押しをするといった用語でして、公共政策の部分では、ナッジを初めとする行動科学の知見、いわゆる行動インサイトの活用により、人々が自分自身にとってより良い選択を自発的にとれるように促す、手助けする政策手法ということになります。

人々が選択し、意思決定する環境をデザインし、それにより行動もデザインするということになってございます。

その中で、ナッジが受け入れられている理由としては幾つかありますが、まずは、選択の自由を残しているということ。また、費用対効果が高いことがあるということを特徴として、欧米を始め、今や世界で200を超える組織が、あらゆる政策領域に行動インサイトを活用していると、OECDで調査、報告がなされています。

我が国では、後ほど紹介しますが、2018年に初めて国家の成長戦略である、未来投資戦略ですとか、骨太の方針にナッジの活用を環境省事業とともに位置付けられ、また、2019年においても様々な閣議決定文書を初めとした政府の文書において位置付けられております。

ナッジとはということで、簡単に事例を御紹介しますと、左下が環境省の事業で行っております省エネのナッジでして、各世帯に省エネレポートを毎月の電気代あるいはガス代の使用量あるいは料金表の代わりに、こうしたレポートを送ります。

その中に、行動科学の知見が散りばめられているのですが、取り上げていますのは、大きく2つございます。

まず、右上で、同調性あるいは社会規範ということで、他の世帯との比較で、所属する集団内での他のメンバーの実態と望ましい水準の理解に役立てていただくということになっています。

また、右下ですが、得をするというよりも、人は損をするということのほうが2倍ないし5倍響くという、行動経済学のプロスペクト理論に基づくものですが、損失を強調したメッセージになってございます。

4ページ以降は、ナッジとはでして、ここはちょっと割愛させていただきます。御存じでない傍聴の方にあるいは会議資料が公表されると聞きましたので、参考として載せさせていただいております。

続きまして、世界の動向ということで、9ページ御覧いただけますでしょうか。

10ページからですが、まず公共政策の分野でナッジを本格的に取り入れたのはイギリスのキャメロン政権になります。2010年に内閣府のもとに行動インサイトチーム。いわゆるナッジ・ユニットというものが設立されて、様々な分野で行動科学の知見の活用がなされ、その後、現在半官半民のような形で、政府とパートナーシップを組みつつ、世界各国のコンサルティングもしながら、あらゆる活動をしている状況です。

具体例ですが、11ページと12ページになりまして、税の滞納、これはどの国も深刻な状況だというふうに伺っていますが、イギリスは従来、左上の茶封筒で督促状を送っていたのですが、まずそもそも開けてもらえないということで、左下の白い封筒に赤字で手書きで特別感を出すと、デビットさん、これはあなたにとって特別ですよということで、右上の棒グラフのように、まず、開封率が上がったと。

それで、開封率が上がって読んでいただいた後に、実際に納付していただく必要があるので、二段階目のナッジとしまして、次のスライドになりますが、督促状の中に一文加えております。10人中9人が期限までに税を払っていますよと。

そうした情報を、特にイギリスではというよりも、あなたの御近所ではというように、身近な人と比べるほうが、納付率が高まるといったことで、こうした取組で国会ですとか、マスコミですとか、市民の方々からこの効果というのを認められて、イギリスではナッジの活用が爆発的に広がったと聞いております。

おめくりいただきまして、少し遅れること、アメリカのオバマ政権になりますが、こちらも省庁の横断的な組織として社会行動科学チームというものが発足されて、大統領令も出されて、国家の優先事項に、この行動科学の知見を適用しようということで取組をされています。

トランプ政権になりましても、行政の効率改善といった課題は共通の課題として残っていますので、オバマ政権ほどではありませんが、この行動科学の活用というのは今も続けられていると聞いております。

こうした取組をまとめたものが、14ページになりますが、2年前のノーベル経済学賞のナッジの分野での受賞が更に後押しとなって、各国で行動科学の知見というのが広まっているところです。

このOECDの調査ですが、この時点では、日本では、この後紹介します日本版ナッジ・ユニットあるいは環境省のナッジ・ユニット、そして自治体初のナッジ・ユニットである横浜市の行動デザインチームの3件が登録されているところです。

世界の動向の最後のスライドになりますが、15ページですが、ナッジは、基本的には余りお金をかけずに、薄く広く効果を求めるといった側面がありまして、こちらはアフリカで手洗いの習慣のないところに、子供たちに石けんを渡すと、中にはミニカーなどが入っていて、使い終わったら持っていっていいよという形にすると、恐らく使い過ぎなところもあるかもしれませんが、結果として手洗いの習慣が根づき、感染症の予防に効果があったというような事例もあります。

こうした世界の動向を踏まえまして、我が国の動向ですが、17ページから、まず、環境省のナッジ・ユニットについてです。

おめくりいただいて17ページが、エネルギー業界におけるナッジの起源と言われているもので、10年ほど前のカリフォルニアの大停電で電力会社が各世帯に節電を促しましたと。

御覧いただいている3つのタグの表現は、従来であれば、正攻法と考えられていて、こうすれば効くのではないかということで呼び掛けたのですが、いずれも効果がなくて、効果があったのは、次のスライドになりますが、右側のオレンジのタグにありますように、御近所さんもやっていますよと、エアコンの代わりに扇風機を使って節電しますというようなメッセージが唯一効いたということで、自由の国アメリカでも、他人の目を気にするのかなということで、他人の目を気にする日本だったらどうだろうというようなきっかけで、日本でこうした取組を始めるようになったのです。

おめくりいただきまして、私が2013年から15年間、人事院の制度で2年間アメリカに留学しておりまして、ハーバードの公衆衛生大学院で、公衆衛生の分野ですとか、公共政策の中で、あるいは民間の中で、ナッジを始めとする行動科学の知見が実際に根づいている、社会実装されているというものを目の当たりにしまして、留学の成果の社会への還元と、私のそもそもの思いであった人々のより良い選択を後押しするような人間になりたいと思って留学したものですから、留学の成果を還元ということで、府省庁に先駆けて、環境省内で、まず、プロジェクトチームを作って、霞が関、永田町はよくPTと言うのですが、私は理系の人間なもので、PTというと元素記号で白金なのでプラチナと。

これは、部局内に呼び掛ける際に、このメンバーに入ると、あなたはプラチナメンバーになれますよと、これもちょっとしたナッジをきかせた形でいろいろと省内で取り決めをしまして、その後、関係者との調整ですとか、財務省の予算要求等を踏まえて、2017年4月に、20億円の予算事業とともにこの日本版ナッジ・ユニットで、行動科学チームという、人々により良い選択を促すためにベストを尽くす集団ということで発足させていただきました。

まず、環境省はナッジ・ユニットで何しているかと言いますと、20ページで先ほど御紹介したような省エネレポート、これは、今、3年目に入っていますが、これまでの結果では、平均して2%の節電あるいは節ガスというような状況で、各世帯で毎月2%の省エネというと、電気、ガスでいうと、100円、200円の世界なのですが、これは、日本全体で、仮に2%の効果が得られるとした場合には、同じだけの省エネあるいは省CO2効果を得るために、数兆円分の最新の省エネ家電ですとか、太陽光パネルを補助する必要があると、この辺りが、世界各国でナッジが、費用対効果が高いと言われているゆえんではないかなと思っております。

21ページですが、こうした状況を踏まえて、まず、2018年に成長戦略あるいは骨太の方針に位置付けられました。

さらに、次のページで、ナッジは、日本ではまだまだ始まったばかりですが、ノーベル賞を受賞したセイラー教授がナッジという本を書いたのが2008年で、世界でも10年以上も事例の蓄積があります。

10年もやってきますと、いろいろと問題点が分かってきまして、ナッジというのは、心にいかに響かせるかという政策手法ですので、響く人もいれば、響かない人もいると、当然ですが、中には個人差もあるということで、ナッジの世界では、カスタマイズとか、ふだん言う言葉と同様に使う言葉として、パーソナライズという表現がはやっておりまして、一人一人にどう働きかけるというのが、今、国際的なテーマになっています。

そのために、環境省事業でも、各世帯のエネルギーの使用実態を属性情報とともに収集して、それを解析して、一人一人に合った形でフィードバックすると。その際に、AIなどの先端技術を使った取組をやっておりまして、金融×テクノロジーでフィンテックですとか、ヘルステックですとか、エドテックとか、いろいろありますが、それに倣って、行動インサイト×テクノロジーということで、バイテックというふうに名付けて、国内外で発信しております。

具体例としては、次のスライドになりますが、エコドライブのナッジです。スマホのアプリで、運転行動、運転特性を記録できるようなっておりまして、運転終了後に、例えば、右側の画面のように、急ブレーキ、急発進あるいは速度を一定に保てたかということを点数表示したりですとか、真ん中の画面のように、アプリのユーザー間でのランキングを示したり、あるいは行ったり来たりで恐縮ですが、右下の画面のように、こうした運転をしていると燃費が何パーセント悪化しますよといった表現を散りばめて、正に今、公道で実証中という形です。

このバイテックというのは、先般のG20の会議でも発表させていただきまして、各国の好評を得て、行動科学の重要性というのは、成果文書に位置付けさせていただきました。

それに前後して、2019年の閣議決定文書等にもバイテックという言葉が位置付けられて、今、政府一丸となって進めているところでございます。

具体的には、次のスライドに書いてあるような文書に位置付けられたという形になっております。

続きまして、日本版ナッジ・ユニットが何をしているかですが、26ページになりまして、行動科学の知見は、エネルギー・環境に限ったものではなく、様々な分野で、健康・医療ですとか、教育ですとか、徴税ですとか、差別の撤廃等々、働き方改革、いろんなところで使われていますので、環境省内だけでとどめておくのはもったいないと思いまして、各省庁に働き掛けました。

また、ナッジの受け手である、国民あるいは消費者の方々の意見もとても大事ですので、消費者団体の方々にヒアリングをさせていただいたりとか、また、海外で言われているのは、政治家をうまく巻き込んでやるべきということもあったので、つまり、産学政官民という形でオールジャパンという形で実施させていただいています。

既にノーベル賞の後押しもあって、スライドの真ん中にあるような、もう10を超える府省庁の方々に参加していただいている状況です。

会議の開催状況については、次のページ以降にまとめておりますので、御参考として載せております。ここは割愛させていただきます。

こうした取組を踏まえて、現在、国内でどうなっているかというのは、32ページにまとめさせていただきました。

産学政官民、それぞれの立場で、様々な役割があるかと思いますが、官の部分が中央にありますが、いろいろな府省庁、さらには自治体の中でもナッジ・ユニット、あるいはナッジ・ユニットは作らずとも、ナッジというものを、冒頭お話がありました、EBPMの観点で取り入れている自治体が増えているところでございます。

具体例として、次のスライドに一覧をまとめていますが、33ページで、こちらが日本のナッジ・ユニットということで、環境省に始まり、次いでオールジャパン日本版ナッジ・ユニット、次に自治体発の横浜市ということで、省庁あるいは民間でも、こうした取組が、今、広まっているところです。

まだ勉強会ですとか、ナッジというものを職員の方々に知っていただくというようなところのステージのところが、まだ多いのですが、中には、既に政策として取り入れているような自治体もありまして、34ページが足立区です。ついつい野菜を取り入れるような習慣ということで、区内の飲食店に協力を仰いで、最初のお通しを塩辛から野菜に変えてもらったりとか、野菜たっぷりメニューを用意してもらったりということで、因果関係の説明は難しいのですが、都内ワースト1位だった健康寿命というものが延びて、都との平均も縮まったということです。

また、時間の関係で、事例は大分飛ばせていただきますが、特にきれいに効果測定をして、効果が明らかなナッジをすることが重要という観点から、36ページになりますが、八王子市では、大腸がん検診で、従来は左側のリーフレットで、今年受診していただけたら来年度キットを送ることができますという表現を、今年受診していただかないと送ることができませんということで、得を損に変えることで受診率が上がったというような事例もございます。

駆け足になりましたが、最後、3番の37ページ以降が、本日の御議論に資すればと思ってですが、まず、公共政策としてのナッジということで、どのようにナッジをデザインすべきかということを、ノーベル賞を受賞したセイラーとサンスティーンの本の中から幾つかキーとなるところを抽出したのですが、本の中では、トランスペアレンシーという言葉がたくさん使われていまして、まず、透明性。

ありきたりなのですが、まとめると、下のように、効果をきちんと評価し、エビデンスに基づく政策立案を実施して、透明性を高め、説明責任を果たすことが重要と。これは、ナッジに限らず、公共政策全般に言えることなのだと思いますが、ナッジにおいても、やはり重要だという考えで、今、実施しております。

続きまして、次の39ページですが、日本版ナッジ・ユニットの連絡会議の中での意見で、ナッジには、既に特定の目的を達成したいという気持ちを持っている人の行動を後押しするものと、そういう思いを持っていない人に対して行動させると、2つの話があって、前者はやろうと思っていることをサポートするので、比較的政策的介入の妥当性の説明がしやすいのですが、後者は、しようと思っていないわけですので、それが、個人にとって良いことなのか、社会にとって良いことなのか、一番良いのは両方にとって良いことですが、その倫理的な配慮の検討が必要かなと思っています。

また、次のスライドですが、良いナッジ、悪いナッジ、何が良い、悪いというのは、大分主観的な話でありますが、ノーベル賞を受賞したセイラー教授は、良いナッジを広めるべきと。

人々の賢い意思決定や、向社会的行動を難しくするような悪いナッジをスラッジ、ヘドロですとか、汚泥と名付けて、スラッジを一掃しようと。

良い、悪いというのは、なかなか難しいところですが、それについても議論をしておりまして、41ページになりますが、まず、ナッジの受け手にとって良いナッジか、社会にとって良いナッジか、一番良いのは両者にとって良いナッジですが、一方にのみ良い場合にはどうすればいいかと、これは、個別のケース・バイ・ケースになるかもしれませんが、あるいは、そもそも何が良い、悪いかと。

それで、議論していますのは、経済の語源になったともされる、経世済民という言葉で、経済というものに省略される過程で、世と民というのが漢字上は消えましたが、この世のソサエティーと民のピープルというのは、ナッジの世界では重要ではないかと考えております。

少し割愛させていただきますが、45ページで効果的なナッジということで、面白さがあるので、いろいろやってみようということで、取っ掛かりはいいのですが、やっているナッジが、本当に効果があるかどうかというのは、やはり重要かなと思っております。

イギリスのナッジ・ユニットが、効果的なナッジに共通するものとして、フレームワークのEASTというものを出しているのですが、このEASTというのは、あくまで効果的なナッジに見られるものであって、これを使ったから、例えば、損失回避ですとか、社会規範、同調性を使ったから目的とする課題に対して効果的かどうかは分からないので、一つ一つ効果を確認しなければいけないのかなと思っております。

その辺りをまとめたのが47ページで、使おうとするナッジが、適用する課題に本当に効果があるのかどうかと。ナッジは、人の心にどう響くかどうかが鍵ですので、海外でうまくいったからといって、日本でうまくいくわけではありませんし、日本のある自治体でうまくいったのが、他の自治体でもうまくいくとは限らないということで、キャラクターの吹き出しに書いていますが、少なくとも国内で事例がないような場合は、例えば、環境省のナッジ事業のように、まずは、国がエビデンスを自治体に示して、国全体の結果と個々の自治体での結果が同じになるとは限らないのですが、何もないよりはいいかなと。

どうしても各自治体で毎回エビデンスがあるかどうか、効果検証をしてからとなると、やれる自治体もあれば、そうでもない自治体もあって、例えば、隣の自治体でうまくいけば、大体うまくいくのではないかと、ただ、隣の自治体と違う場合も、いろいろケース・バイ・ケースで難しいのですが、そこは、少し議論として、EBPMという観点で、どこまでエビデンスを作るのか、あるいはすぐに使うのか、その判断が、今、難しいという議論をしています。

最後に、ナッジを超えてということで、ナッジの先を国際社会では議論していまして、ナッジというのは、行動科学の知見の1つにすぎなくて、ここに紹介しているのは、ブースト、少し気づきを与えて、教育に似た概念なのですが、自らの生活習慣を省みて、実際に意識して行動してもらうような新しいタイプの行動インサイトのアプローチですとか、他にもゲーミフィケーションとか、いろいろありますので、ナッジに限らず、行動を理由とするような社会課題に対しては、行動科学の知見はどう活用できるかというのは、議論をしなければいけないのかなと思っております。

最後になりますが、51ページで、ナッジが万能の魔法だったり、魔法の杖だったりというふうに考えられるような節もあるのですが、国際的には、従来の規制だったり、補助金だったり、税だったりといったような伝統的な政策手法にとって代わるものではなくて、それを補完し合うものと。

従来の施策の効率性、実効性を高めるために、このナッジというものをうまく使って、人々のより良い選択を促そうというのが、国際社会になっていますので、この流れは、我が国にとっても重要かと思っていますので、ここのジグソーパズルというものを意識してやっているところです。

駆け足になりましたが、御説明については、以上です。

○山本委員長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明の内容につきまして、御質問、御意見のある方はお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

それでは、清水委員お願いします。

○清水委員 清水です。ありがとうございます。

非常に興味深いのですが、私、地方で消費生活相談員をやっています。

40ページのところなのですが、毎日毎日スラッジと闘っているのですけれども、例えば、今、消費生活センターではインターネット通販の苦情がベスト10を占めていて、その中でも定期購入というのが非常に多いのですね。

正しく悪質業者と言ってはいけないのですけれども、そういう人たちはナッジを利用して、皆さん買っている、今すぐ買いましょう、買わないと損をするという広告がインターネットであふれていまして、昨日も私、10件ぐらい相談をとったのですが、そのうちの7件が、その広告に踊らされて、消費者が良い選択をできればいいのですが、悪い選択をしてしまっているという現実があります。

そこで、ここのスラッジを一掃するような働き掛け、ぜひ、御教示というか、どうやったら、消費者行政において、法律改正とかそういうのも、こういうナッジを考えて消費者というのは、こういう行動をするというところを入れて改正が必要だと思うのですけれども、今、正しく振り回されている現場の悩みとして、何かアドバイスをいただければ有り難いなと思います。

○環境省池本室長補佐 ありがとうございます。

このスラッジという名称を提唱したセイラー教授は、スラッジコンテストをやったらいいのではないかとも言っていて、なかなか日本で、そこまで、特定の企業を名指しでというのは難しいのですが、環境省あるいは日本版ナッジ・ユニットでは、ベストナッジ賞というものをやっていて、ナッジのあるべき姿というものを提示しているのですが、また、スラッジの例として、欧米、欧州での消費者保護政策に詳しい有識者も交えて議論をしたりもしているのですが、定期購読ですとか、日本でもインターネット通販で、購入する際に、知らず知らずのうちにメールマガジンとか、ニュースレターを購読するとかにチェックが入っていて、わざわざ自分で外さなければいけないとかがありますが、そうした問題は、やはり欧州でも問題になっていまして、消費者の経済的な損失を伴うものは、やはり駄目だと指令が出ていたりします。

ニュースレター、メールマガジンの購読程度と言ってしまってはあれなのですが、その辺りは、まだグレーゾーンと言いますか、明確には規制されていないわけです。

例えば、この連絡会議の中で議論をしたのは、自治体のふるさと納税、正に今、年末ですが、ふるさと納税の中で、ワンストップ申告のために必要な書類の送付を希望するか、しないかとなっていて、大抵の自治体は、送付してほしい、送付してほしくないというのが空欄になっているようなチェックボックスなのですが、ある自治体では、送付してほしいに、あらかじめチェックが入っていて、ただ、一部の自治体では、事務手続が大変なのか、送付希望しないにあらかじめチェックが入っていたりして、そうしてみますと、その消費者は、その自治体に対してわざわざ寄附をするにもかかわらず、必要な手続を更に自分でしなければならないといったことで、それは、若干スラッジではないかみたいな議論をしていまして、何がナッジか、何がスラッジかというのは、正に今、議論をしているところなのですが、なかなか具体的にどうすればいいか難しいのですが、少なくともうそはつかないというのが、特に公共政策ではそうですが、本当はやっていないのに、みんなやっていますよというのはいけないことですし、みんなやっていますよということが、効果があるとしても、やっていないことをやっているというのはいけませんので、そういったことで、実際、今、ナッジの倫理規定と、倫理審査というほどではないのですが、ガイドラインと言いますか、手引というようなものをチェックリストのようなものを、今、作っているところでして、そういったことを発信することで、まず、自治体だったり、ナッジを使おうとするような事業者に対して、何らかの示唆になるのかなということで、これは、一つ一つ一緒になって潰していくしかないのかなと、今、考えているところです。

○清水委員 ありがとうございます。

被害の未然防止が、私たちの使命です。同じ被害が繰り返し、1年も2年も続く現状があると、消費生活相談は疲弊してしまいます。また、ぜひ、こういう手法が、法律改正にもつながればいいと思っています。

ありがとうございました。

○山本委員長 ありがとうございます。

その他、いかがでしょうか。

それでは、丸山委員、お願いします。

○丸山委員 お話、ありがとうございました。

お話を聞いておりまして、結局、行動科学の知見を利用して、施策の提言であるとか、あるいは問題状況の改善をするときには、やはり何が問題かを見極める着眼点が非常に重要であり、かつ、それに対して実証とか実験をしていくということが、非常に重要ではないかということが分かりまして、大変勉強になりました。

お伺いしたい点としましては、イギリスのBITチームとかは、結構ランダムに、割といろんな試み、実験をして、実験データも上げているイメージがあるのですけれども、日本の場合については、どういった施策とか、問題状況に、こういった実験、ナッジ・行動科学を含めて、そういった知見の検証を予算もかけて入れていくのかと、選択をするときに、どういう形で、これを利用しようという選択をしているのかという点。

それから、地方自治体の例というのを挙げていただいたのですけれども、この例というのは、そういった行動科学の専門的な知見を参照しようということを、どの段階で、なぜできたのかという辺りの情報がおありでしたら。今回は、行動科学の知見を参照して、こういう試みをやってみようと決定できたのかを、少し詳しく教えていただければ有り難いと思いました。

○環境省池本室長補佐 ありがとうございます。

まず、環境省で適用しようとしたのは地球温暖化対策になります。

例えば、私たちの身の回りで省エネ機器ですとか、最新の技術というのがいろいろと導入されて、例えば、LEDですとか、家電製品も省エネタイプになっていますが、結局、最後にそれを使うのは、私たち一人一人ですので、いかにハードの面をそろえたとしても、最後は人々の行動、ソフトの面までアプローチしないと、温暖化対策は、既にいろいろと激甚災害等が起こっていますが、喫緊の課題ですので、うまくいかないのではないかということで、ソフトなアプローチということで、このナッジというのを適用しようと考えたのが1つです。

環境省でやっておりますのを列挙しますと、御紹介した省エネのナッジですとか、エコドライブに加えて、これから、どうエコバッグを利用してもらう、あるいはレジ袋を辞退してもらうかとか、あるいは環境と健康のシナジーを生み出すようなナッジということで、睡眠時間をどうしたら30分増やせるかと、早く寝れば電気も消えて省エネになるし、健康にも良いというような観点なのですが、いろいろなテーマでやっています。

各省庁がそれぞれの施策の中で、一個一個試しているというのが現状ですが、特にセイラー教授がナッジというものを適用すべきとして挙げているのが、環境と健康でして、選択の結果がすぐに現れてこないようなもの、例えば、今日節電したからといって温暖化が止まるわけでもありませんし、今日たくさん歩いたからといって、メタボだったり、健康が改善されるというわけではないので、行動の結果が必ずしも成功するとも限りませんので、そういった課題にこそ、ナッジというものをうまく活用すべきではないかと言っています。

各省庁、主に環境省、ナッジ・ユニットというものを作っているのは、環境省と経産省ですが、農林水産省の中でもEBPMという観点の中でナッジというものをテーマに挙げていたりですとか、それぞれの思い思いで、今、やっているというのが現状だと思います。

自治体の中で、初めに精力的にやり始めたのが横浜市でして、私も立ち上げに関わらせていただいたのですが、8人のコアメンバー、いろいろな部局横断でいまして、そこで市内の有志の勉強会を夜間にやったり、そうした過程で、市長、副市長の同意を得られて、市内全域に広まって、さらに、その勉強会には神奈川県内あるいは他の県の自治体の方々も招いて、まず、ナッジというものを知ってもらって、身近なもの、例えば、通知文を送る際の表現を少し変えてみたりといった身近なところから横浜市を始め、今、いろんな自治体がやっているところです。

横浜市は、環境省の事業にもフィールドとしてお手伝いいただいているのですが、そこでやろうとしているのは、食品ロスのナッジです。学生食堂で、いかに食べ残しを防ぐかと、学生食堂で得られた知見を全国に使おうと思っているのです。

そういう形で、自治体独自でやっている場合もありますが、国、環境省と連携してやっているという形で、今、一つずつ事例を作っている状況です。

BITは、彼らが掲げるテーマとして、徹底した実証主義というものがありますので、毎年レポートを出していますので、それに倣って、私どもも、今年の3月に2年間の活動報告書というのを出させていただいていて、それは毎年出そうと思っています。その中で事例というものも紹介していきたいと思っています。

○山本委員長 よろしいですか、ありがとうございます。

それでは、受田委員、お願いします。

○受田委員 御説明ありがとうございました。大変興味深く拝聴させていただきました。

私は、この消費者委員会の中で、特に前期2年もそうだったのですけれども、食品の表示であったり、特定保健用食品、特保の関係の議論をいたします新開発食品調査部会、こういった部会の部会長を仰せつかって、いろんな議論を展開しておりました。

特に、印象深かったのが、昨年の食品表示部会において、食品表示の在り方のグラウンドデザインを作っていこうということで、かなり野心的な議論を展開していったのですけれども、その中で、委員の意見として行動経済学に基づいて、特にナッジをうまく活用することによって食品表示のあるべき姿へ導いていけないかというようなことが提案されていきました。

これは、どういうふうに実現していくかというのが、これから私個人としても、また、食品表示を議論する部会においても大きな宿題になっております。

そんな中で、今日のナッジのお話をお聞きして、幾つか質問があるのですけれども、まず、今まで成功している事例というのは、確かに消費者もそうですけれども、行動経済学的に非常に心をつかむような何かが落とし込まれています。

この新規性というのが、あるべき行動へ導いていくということは十分に理解できるのですけれども、新規性であるがゆえに陳腐化するということがあって、ナッジの1つの問題というのは、恐らくこれがずっとブームになっていったときに、ユニークさが失われるがゆえにナッジとしての目を引かないということがあるのではないか。

そういうところを、例えば、表示というルールとして一定の期間、これを社会に浸透させていき、皆さんに使っていただくという視点からは、当然、最初に念頭においておかないといけないのではないかと思うのですけれども、この陳腐化に対する防止策ということをどういうふうに考えていったらいいかというのが1点です。

それから、もう一点は、健康と環境に関して、これが非常に効果的であるということは、今の事例を拝聴していてもよく理解できます。

特に私も興味を持って拝見をしている事例として、自治体の中にも入っておりました、八王子市とか、神戸市などの事例もあって、こういう事例は、大体お金のキャッシュフローがナッジとうまく組み合わさっているというケースです。

ソーシャルインパクトボンドが、この中に組み込まれていて、このキャッシュフローがナッジのモチベーションに更になっていっているような気がいたします。

伺いたいのは、今、政策的に見ていくとEBPM、ここが1つモチベーションになっていて、KPIの実現におけるトライアルズアンドエラーズに、このナッジがうまく奏功していくような、そういうような仕組みが結構あるのではないかと思うのですけれども、実際に、国としてのEBPMの中で、KPIを明確にしてナッジが、この全体をうまく回していっているスパイラルというか、サイクルというか、このサイクルが明確に見えるような事例というのは、先ほどの環境省の事例以外にも、健康の部分で、やはりモデルとして挙げられるようなものは、他にも幾つかあるのでしょうか。

伺いたいのは、KPIを実現していくところでナッジが効果的に奏功しているかどうかというような事例です。

済みません、長くなりました。

○環境省池本室長補佐 ありがとうございます。

まず、1つ目ですが、陳腐化の防止策ということで、この10年以上のナッジの蓄積の中で、あるいは、ナッジという表現が出る前から、私たちの身の回りには、例えば、ビジネスの世界ではマーケティングという観点ですが、例えば、買ってほしいものを目の高さに置くとかということはありましたので、10年以上も前からいろいろな事例の蓄積があるのですが、やはり長続きがしないというのが、共通する問題点としてあります。

若干、例外的なものがあって、御紹介した省エネナッジは、カリフォルニア等では10年以上も効果が続いていたりして、それは例外的なのですが、やはり、飽きてしまって、慣れてしまいます。

そういうことで、どうしたらいいかというのは、今、長期的に効果を持続する、あるいは増強させるためには、どうしたらいいかというのも、1つ課題として取り組んでいるのですが、いろいろと見せるものを変えるですとか、おもしろさ、ゲーミフィケーションなどと呼んだりしていますが、遊びの要素とかをいろいろと活用するといいのではないかと。

ただ、なかなかこれがという万能薬というのは、まだ見つかっていないというのが現状かなと思っています。

表示の観点では、環境省でも、省エネ製品に星が幾つみたいなラベルがあったりして、今、楽天さんと協力して、再配達防止のナッジに加えて、これから商品の閲覧ページに、そういう星の情報が、あるいはどういう情報があったときに、購買行動がどう変わるかといったような実験も、今、やっているところでして、ラベルそのものを知っていただくという、認知度を高めるということもとても重要ですが、いかに分かりやすく短時間で理解していただけるような表現はどういうのがいいのか、そこはいろいろとビジネスの世界でいうABテストあるいはEBPMで言っているようなランダム化比較試験みたいな形で、何が効果があるのか、ないのかという因果関係をもとにしっかりやらなければいけないのかなと思っております。

2つ目のEBPMにおいて、その実現においてナッジというのが、どう功を奏したかと。健康の分野で、不勉強で申し訳ないのですが、余りがん検診とかの以外でうまくいった事例というのは、余り国内で存じ上げていないのですが、EBPMの実現のためにナッジというよりかは、なかなか難しいところがあるのですが、ナッジというのは、あくまで政策手法の1つで、アプローチの1つですので、ナッジをすることが目的になってはいけないと思うのですが、ナッジをすることで、実際のがん検診の受診率とか、そちらの目的をどう達成するかという筋道の1つとしてナッジというのがあるのかなと思いますので、なかなか難しいところではあるのですが、済みません、お答えになっていないかもしれませんが。

○受田委員 済みません、何か漠然とした質問になってしまったのですけれども、EBPMの関係でKPIというのが、国の関係あるいは自治体でも、例えば、まち・ひと・しごと創生総合戦略においてKPIがいっぱい散りばめられているのです。

あれは、自治体から見ると、達成しなければいけないという目では見ているのですけれども、本当は国として達成できなかったときに、その理由を明確にし、改善を更に図っていくためにKPIを掲げると、そういう趣旨で設定をしていると理解しています。

つまり、そのときの情報の発信であったり、様々な働きかけの部分がもう一工夫あれば、KPIの達成に至るという、そういうふうに政策をうまく回していくときに、このナッジというのが、これまで余り重視されていないとすると、相当な効果を持っているのではないかと。

そういうときに、具体的なモデルがあれば、自治体を含め、相当これが効果的に活用されていって、野心的KPIが設定できるようになるかもしれないので、非常に政策誘導していくときにも、奏功していくような気もしていました。

そういうところもあって伺いました。

○環境省池本室長補佐 補足の御説明ありがとうございます。

やっとと言いますか、理解いたしまして、私たち行政がしている広報、普及啓発というものは、環境省に限らず、あるいは自治体、省庁に限らず、どこの部署でもやっているようなもので、それは広い意味ではナッジなのかなと思っています。

ただ、それが、本当に効果のあるナッジなのか、ないナッジなのかというのは、やはり、なかなか皆さん効果測定などをしていないような状況でして、ふだんやっているような広報、普及啓発の中で、あるいは知ってもらう、あるいはこうしてほしいという中でナッジを使って、効果が高まるのではないかという視点は、私どもも持っておりまして、実際に、正にこれからしようとしていますのが、来年の7月1日からレジ袋の話が本格的に施行になりますが、その前に制度を知っていただいて、できれば、エコバッグを使っていただきたいということで、どうした表現を見せる、説明の際に、どうした表現を使うとライフスタイルが変わるかというのを、これから実証して、その結果を踏まえて、環境省の広報の中で取り入れてという形で、それは、これからになりますが、EBPMの事例としてお示しできるのかなと思っております。

○山本委員長 それでは、生駒委員、お願いします。

○生駒委員 御説明ありがとうございました。

私は、長年雑誌の仕事をしてきていますので、このナッジの手法というのは、先ほどもおっしゃったのですけれども、もう既にマーケティングとか、広告のコピーライティングとかでずっと使われてきた手法だと思うのですが、そういった手法を、なぜ今、公共の機関、政府ですとか、自治体で使うように考え始められたのかなと思うと、また、ナッジという理論自体がなぜ10年前から出てきたかということを考えると、背景には、地球の温暖化であるとか、21世紀に入って生活様式をパラダイムシフトしないと、多分もたないという危機感があるのかなと思っています。

ですので、効果的に活用していく分には良いかなと思うのですが、やはりある種洗脳的な効果も持っているものですから、先ほどもおっしゃったのですけれども、悪用されるとちょっと怖い力も持ちかねないということと、まず、質問としては、日本人は、割と長い物には巻かれろという気質があるものですから、割とナッジは効きやすいのではないかなと思うのですが、消費者委員会に、実際に、今回から入らせていただいて考えていますのが、やはり消費者がもう少し自立した意識というか、自分で考える力、判断する力を持つようになれたら良いなと思って、この消費者委員会の中でもいろんな意見を、皆さんの御意見をお聞きしながら、何かステップが踏めれば良いなと思っているのですが、このナッジの考え方と、今、申し上げたような一人一人の個人が判断して考える力みたいなものの兼ね合いというのは、池本様は、どのようにお考えでしょうか。

○環境省池本室長補佐 ありがとうございます。

ナッジというものを3ページで定義させていただいたのは、人々が自分自身にとってより良い選択を自発的にとれるように、あくまで手助けすると、私の本当に実現したいことというのは、一人一人が考えてと、委員のおっしゃることそのものだと思っています。

そうした点で、今、着目しておりますのが、本日の御説明では割愛してしまったのですが、50ページに書かせていただいたブーストという概念で、これは、人によっては教育的ナッジと呼ぶ人もいるのですが、やはり、ナッジで最初にちょっとした後押しをして何かをしてもらったとしても、これまで議論がありましたように、長続きしないと。行動変容ステージ理論というものがありますが、無関心の方が関心を持って実践して、それを維持するという中で、主体性と言いますか、自主性がないと長続きしないのではないかというのが、このナッジの世界でも言われていまして、このブーストという概念があるのです。

例えば、教育に似た概念なのですが、環境学習で、地球温暖化の現状を認識して、熱中症だったり、猛暑だったり、激甚災害だったりと。まず、自分ごと化をしてもらうと。その中で、自分として何ができるかというのを考えてもらう、これも教育的ナッジあるいはブーストというものだったりとか、例えば、いろいろと自分自身でどういう医療が良いのかというのを患者自身が自分で選べるようになるというものがブーストの目的としてあったりとか、もっと身近な例では、毎日にどういったものを食べるのが、自分の健康にとって良いのかというような栄養指導みたいなものをブーストということで、目指すところは、自主的に考えていただかないと長続きしないのではないかということで、そちらを重視したいなと、今、考えております。

○生駒委員 一言だけ、済みません。

私は、ファッションであるとか、雑誌という領域から来て、エシカル消費というのを、この消費者委員会の中でも推奨していきたいなと思っているのですが、私も参加させていただいて、今まで、日本の場合、消費者というのが被害者の立場を守る、消費者が被害者になったときの立場を守るという考え方とか、そういう意味合いというのはあると思うのですが、エシカル消費と考えたときには、消費者が加害者にもなり得るということを知らせていけたら良いなと思っているのです。

ですので、ナッジの効果の中で、やはり、消費者が自分の立ち位置というか、そういうものを割と客観化できるような働き掛けもしていただけたらいいかなと思っています。

結果として、消費者が地球にとって、あるいは社会にとって良い活動、消費を通して社会や地球を良くしていくことをしていけることが理想だと思うのですけれども、実際には、その逆ということもあるわけですね。

さっきナッジとは、割と極端な言い方をして、皆さんをはっとさせるようなこともあると見ましたので、そういうこともある意味、皆さんに目覚めていただくきっかけを作る動きになればいいなと思いました。

○山本委員長 ありがとうございます。

その他に、いかがでしょうか。

それでは、大石委員、お願いします。

○大石委員 御説明ありがとうございました。

私は、割と環境に関心があるので、省エネ行動に、このナッジが結構効果的であったという、先ほどのお話、とても関心を持ったのですけれども、やはり継続性というところで、たまたま今回の例では長く継続性が見られたということだったのですけれども、同じ省エネを促すにしても、もともと全然関心がない人、それから、ある程度かなり頑張って、それでもまだもう少し頑張ろうと思う人とか、対象がすごく分かれてくるでしょうし、また、その対象によって、同じナッジであっても、提供する言葉であるとか、それから、情報のツールなどが変わってくるのかなと思っていて、多分、そういう研究もされていると思うのですけれども、より良いナッジの方法みたいなものというのが、もしも省エネ関連ででもあれば、ぜひ教えていただきたいのが1つ。

あと、御説明をいただいた資料の22ページのところに、AI、IOTの先進技術の活用を通じた効果的な行動変容というのがあって、最終的には、一人一人に合ったパーソナライズした働きかけが一番効果的であるということなのですけれども、ということは、逆に言うと、一人一人の個人情報と言いますか、そういうものがあって、初めてこれというのは成り立つわけで、今、いろいろなところで個人情報のことが問題というか、これから重要視されますけれども、大変効果的であると同時に、どうやって個人情報も含めた管理をしていくかというのが、とても難しい課題があるのではないかなと思って、お話をお聞きしました。何か、そこら辺の問題意識ですとか、解決策などがあれば、教えていただきたいと思います。

以上です。

○環境省池本室長補佐 ありがとうございます。

いただいた2つの御質問は密接に関連しているかなと思いまして、やはり、ナッジをしていく中で、ナッジが心に響く人もいれば、響かない人もいると、なかなか無関心な方々に対しては難しいといったこともあります。

一方で、ナッジというものは、省エネナッジは2%、がん検診も7%ということで、それを多いと見るか、少ないと見るかは人によって違いますが、それ1つで全てが改善するというほどのものではないということで、やはり補完的なのかなということで、そういうのは、これまでどうしてもみんなに対して同じメッセージをして、お金をかけずに、薄く広く効果を得るためというのが、やはり手軽にできる、大きくインフラ等を変えずにやれるのがナッジだったので、そうした点からの限界なのかもしません。

一方で、パーソナライズすればするほど、いろいろとコストがかかりますので、そこは費用対効果というのを見極めなければいけないかなと思っています。

そこで、損益分岐点と似たような考え方で、どの辺りがほどよい加減なのかというのを見極めたいと思っております。

その省エネのナッジは、いただいた2つは関連しているので、まとめて御回答させていただきたいと思いますが、例えば、省エネのナッジの際も、エコドライブのナッジあるいは他のナッジもですが、個人情報をとる際に、やはり同意を得てからとるようにしております。いろいろとナッジを使ったやり方として、今回は紹介していませんが、臓器移植の提供を促すために、日本では賛同する場合に、自分で免許証の裏などにチェックして選択するとか、オプトインという方法ですが、諸外国によっては、デフォルトが、初期設定が臓器移植に同意していて、嫌だったら嫌だと言ってくださいと、変えるのが面倒くさいという人間の深層心理を突いたものなので、ここはナッジの中で、一番倫理的な議論、物議を醸しているところなのですが、調査のやり方、個人情報のとり方もオプトアウトのやり方もあり得るのですが、環境省では、まず、同意をいただいた方々で、お教えいただいた一人一人に合ったメッセージ、働き掛ができますよということをちゃんと教えた上で、実験に参加していただいて、情報を得るように、今、しています。

個人情報は、特に大変重要かなと思っておりますので、気を付けております。

○山本委員長 ありがとうございます。

その他に、いかがでしょうか。

では、木村委員、どうぞ。

○木村委員 御説明ありがとうございます。

38ページのところで、ナッジの評価が効果に左右されるとあるのですけれども、先ほど、いろいろ話がされていまして、評価をどのようにしていくのか、はかり方というのが、2%だったり、いろいろあると思うのですけれども、効果があるというのは、どういうふうに判断されるのかというのが、よく分からなかったのが1点目です。

2点目は、49ページにナッジの先というのがあるのですけれども、もし、国際的に検討されているナッジの先というので紹介していただける点があったら教えていただきたいと思います。

よろしくお願いします。

○環境省池本室長補佐 ありがとうございます。

御紹介したように、効果のあるナッジ、ないナッジというのがある中で、やはり効果のあるナッジをしたいと思っています。

いろいろと政策のKPIを定める際に、その指標、最初に掲げた目標に対してどれだけ達成するかと。例えば、省エネレポートであれば、諸外国も1.5から3%という効果でしたので、日本のナッジで2%というのを掲げて、実際に2%だったのですが、そういった達成すべき目標に到達しているかというのを統計学的な手法を使って因果関係を明らかにして、なるべくエビデンスのレベルというものが高いと言われるような手法で、なるべくランダム化比較試験という統計手法を使ってやっているのですが、お答えになっていますでしょうか。

○木村委員 はい。

○環境省池本室長補佐 それで、2つ目のナッジの先ですが、これは、正に議論し始められたばかりのもので、私は、ビヨンド・ナッジという表現を使いましたが、中にはナッジ2.0だったり、ナッジプラスだったり、セカンド・ジェネレーション・ナッジだったり、人によって違うのですが、意図するところは、49ページに書かせていただいたような、2つ目のポツの中の、それぞれの項目、こういったことが明らかになってきたので、やはり、ナッジだけでは難しいのではないかということがきっかけなのかなと。

実際の中では、どういったことが行われているかと言いますと、1つの例として御紹介したのがブーストであったり、こういった各国の事例を取りまとめているのはOECDがまとめているのですが、その中でナッジ以外の行動インサイトの手法というのが紹介され始めているところで、いろいろな手法を使って、ただ、どの国も、イギリス、アメリカ、他の国に先駆けてやっていますが、どの国も最近始めたようなところも多いですので、事例の蓄積をしているような段階なので、何がナッジの先かという結論めいたものまで踏み込んでいるということは、なかなかないのかなと思っております。

○木村委員 ありがとうございます。

ナッジには問題点などもいろいろあると思いますので、例えば、良いことばかりではなくて、悪用されると、先ほど皆様からいろいろ意見がありますけれども、バイアスがかかっていますので、意図的な誘導があったりですとか、世論の操作みたいなものもされる可能性もあると思いますので、是非、そういったことも含めて消費者被害が少なくなるような政策ができればと思っております。

○山本委員長 それでは、柄澤委員、お願いします。

○柄澤委員 私から質問は2点、1つは、池本さん個人の御見解で良いのですけれども、環境政策、このナッジを活用しようとするときに、行動経済学を使ったときに、人の内的動機をどう引き出すかという観点において、例えば、池本さんなどは、個人を内的動機の原点に立ち返れば、本来の利他的なものとか、利己的なのか、あるいは先ほど少し損失回避性を言われていましたね。ああいうものも含めて、どのように環境政策の中では、内的動機のそもそもの原点を定義付けて考えられたのかなというのが1つ。

もう一つは、必ずしもナッジではなくても、行動経済学全般を使っていった場合に、一番重要なのは、ここにも書いてありますけれども、正しい情報提供をやっていく、ナッジを引き出すためにも、しっかりとした情報提供がなされているのかどうかというのは、これは透明性にも関わってくるのですけれども、環境でこんなことが必要なのだ、あるいはプラスチックでこういう問題が起きるのだとか、そういうのを知らないでいた。それに対して、どのように情報をやっていくのか。それが1つ。

もう一つは、これは社会規範なのでしょうけれども、例えば、プレッシャーを環境政策の中でどのように与えようとされるというか、一定の社会プレッシャーは必要だと思うのです。消費者問題も特にそうだと思うのですけれども。

3つ目が、ランキング化みたいなもので、今週、昨日まで西海岸にいまして、ウーバーの幹部や何かと話していると、やはりドライバーとお客さんのランキングをして、それが1つの消費者行動というか、利用者行動、利用者がより良い選択をする材料にすると。これは、また、個人情報の問題もあって、中国や何かみたいになると困るのですけれども、我々企業の立場からとってみても、ランキング化されるというのは、1つのインセンティブになる、ナッジの1つになると思っているのですけれども。

その2点について、お願いします。

○環境省池本室長補佐 ありがとうございます。

私個人の考え、余り環境省の人間が言うのが適切かどうか分かりませんけれども、いろいろ皆さん優先順位というのがある中で、環境に良いことをしてくれたらいいなというスタンスで、やはりいろんな人がいるのかなと思っていますので、そこは利己的であるべきだったり、利他的であるべきだったりとか、得の方が良いという人も恐らくいるでしょうし、損という人もいるでしょうし、一般的な省エネナッジをしている中で、やはり、いろいろと比較したのですが、自分の1年前と比較するのと、他人のを比較する場合には、他人と比較した方が効果が高かったですし、得するよりも損する方が多かったといったことがあるので、日本人でも省エネのナッジの観点で言えば、損失を強調したり、あるいは他の世帯を強調したりというのが、平均としては効いたのですが、深掘りはこれからしていくのですが、効いた人もいれば、効かない人もいたりというのはあり得ますので、余り日本人とはこういうものだと決めつけると、かえって多様性の世界の中で思ったような政策効果が生まれないと思っていますので、いろんな人がいて、いろんなアプローチがあって、環境に良いことをしてくれたらうれしいなというぐらいのスタンスでいます。

2つ目ですが、やはり情報発信の部分でナッジが生きてくるのかなと思っております。

実際、日本版ナッジ・ユニット連絡会議に参加している省庁の中では、広報の部門の方が圧倒的に多くて、広報普及戦略、日々使っている中で、いかにどう知っていただくか、あるいは知っていただいた上で求めるように、ルールどおりに動いていただくかということは、各省庁悩んでいるところで、ナッジというのをうまく活用していけたらいいなということは、会議の内外では伺っているところです。

○山本委員長 ありがとうございます。

その他、よろしいですか。

それでは、お願いします。

○生駒委員 感想になってしまうのですけれども、今、柄澤委員がおっしゃったように、正に正しい情報がきちんと消費者に届くというのは大切なことかなと思っています。

その上で、ここにナッジの先というページが49ページにありましたけれども、私も先ほど申し上げさせていただいたことが、ここに書かれていたのですけれども、一人一人が自らによって、より良い選択を自発的に選べるか、自らの判断でより良い選択ができるように自身の行動習慣を見つめるきっかけや気づきを与える、リテラシーを高められるか、それがナッジの次につながる役割なのかなと思っております。

ですので、やはり、より良い判断ができるためにも、私もとりわけエシカルとか環境問題に関しては、私たちは関わっているので分かっていることも、一般の方には、まだ伝わっていないということはすごく感じますので、そういったことも広める1つの方法としてもナッジが役立つといいかなと思いました。

○山本委員長 ありがとうございます。

よろしいでしょうか。

本日は、非常に有益なお話をいただき、ありがとうございます。

私も感想程度になってしまうのですけれども、一方でナッジは、非常に重要な意味を持っていると思います。

つまり、政策の実現という観点から言うと、従来、他の手法では実効的あるいは効率的に実現できないような政策の実現ができるというメリットがあると思います。

もう一つは、情報提供としてのナッジと言いますか、気付かせるとか、あるいはパーソナライズされた、それぞれの個々人に合わせた情報を提供して、個々人の行動を促していくという、積極的な意味があるだろうと思います。

他方で、ナッジを使う場合に、いろいろ留意しなければいけない点も、今日は御指摘をいただき、また、委員の皆様からも、その点について御指摘をいただいたと思います。

1つは、御発表の中で、正に言われましたけれども、ナッジは、公共政策を実現するための手法として使われるものであるとすれば、やはり公共政策に関するもろもろの原理原則や、手続は守っていかなければいけない。つまり、ナッジを導入するときに、やはり、それは1つの公共政策上の決定であるということを踏まえて、決定の手続をとらなければいけないということがある。

もう一つは、先ほどから何度か話が出ておりますけれども、49ページ、50ページの辺りに書かれている、それぞれの個人の行為主体性の維持を目的とし、あるいは行為主体性を発揮させるという部分が非常に重要であるということからいたしますと、ナッジを導入する分野であるとか、あるいはナッジの方法には留意する必要があるでしょうし、さらに、ナッジを超えたもろもろの情報提供とか啓発といったようなことを併せてやっていかないと、行為主体性の維持・増進という点からいっても問題でしょうし、ナッジの効果という点からいっても長続きしないという問題があると、御指摘をいろいろいただいたのではないかと思います。

非常に有益な話であり、また、今後、私たちとしても考えていきたいと思っております。

池本補佐におかれましては、お忙しいところ、審議に御協力をくださいまして、ありがとうございました。

(環境省池本室長補佐退室)

≪3.その他≫

○山本委員長 それでは、続きまして、その他といたしまして、消費者委員会に寄せられた意見等の概要につきまして、事務局より御報告をいただきたいと思います。

○金子参事官 それでは、お手元の参考資料1に基づきまして御説明をしたいと思います。

消費者委員会に寄せられた要望書、意見書、声明文等について、3カ月ごとに一覧にして御報告をしているものでございまして、今回は7月から9月までに寄せられたもの、計22件について、その概要を御報告ということでございます。

まずは、最初の1ページ目でございますけれども、全体で22件のうち取引・契約関係に関わるものが12件ございました。

内訳を申し上げますと、最初にあります、販売預託商法について、我々は、8月に建議、意見を出しましたけれども、それに関して、関係法令の改正等を求めるような意見が2件。

その1つ下、クレジット過剰与信規制について、経産省の審議会のもとで進められている割販法の見直しと言いますか、それに関わるもので、クレジット過剰与信規制の緩和に反対という意見、それに類するものが計6件ございました。

その他ですと、3つ目、かんぽ生命の保険販売に関わるものも2件ございまして、全容解明や、制度の不備等がある場合には、それを補うような施策であるとか、そういったものを求めるような意見ということでございます。

その他の意見としては、3ページ目の真ん中、金融審議会のもとで決裁法制、金融サービス仲介法制に関する議論が進められていることに関して、例えば、6.のところにポストペイサービスについての意見が述べられていますけれども、先ほどの割販法と同じように、過剰与信につながらないような留意が必要ではないかと、そういった意見です。

次の裏面の4ページに移っていただきますと、オンラインプラットフォームの取引に関しての消費者保護に関しても意見をいただいているところでございます。

以上が、取引関係ということで、次の項目としては、食品表示の関係で2件ほどございますが、これは、いずれもゲノム編集食品に関わるもので、表示届出について何らかの義務を課すべきではないかと、そういったような意見をいただいているところでございます。

次の項目、6ページ目でございますけれども、安全に関するものも1件いただいておりまして、これは安全に関する事故情報の一元化であるとか、データの分析、原因究明といったものを更に進めるべきという意見でございます。

その下の項目、地方消費者行政に関しては、特商法の地方における執行力の強化を進めるべきではないかという意見。

その下、公益通報につきましては、6月のG20大阪サミットにおいて、効果的な公益通報者保護のためのハイレベル原則というものが採択されているので、それを踏まえたような実効性の向上であるとか、そういったものを期待するという意見。

その次、7ページ目では、集団的消費者被害救済制度に関するものということで、これは、消費者裁判手続特例法を定めたときに、附則の中で3年後見直しの規定が置かれまして、それが今年の10月ということになるわけなのですけれども、それに向けての視点ということを提言いただいているものでございます。

以上、主だったものを御説明しましたが、その他にも4件ほどございまして、それは資料のとおりということでございます。

私からの説明は、以上でございます。

○山本委員長 ありがとうございました。

時間を既に少し過ぎてしまっているのですが、しかし、重要な点ですので、御意見のある方は、御発言をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

清水委員、お願いします。

○清水委員 3ページの日弁連の9月13日の意見なのですが、やはり、消費生活相談の現場では、金額が少額なトラブルが数多くあります、この御意見に賛成いたしますし、強化というような形が必要だと思います。

クレジットカード会社は、非常に加盟店指導だとか管理だとかが進んでいますが、キャッシュレスの時代で、資金決算移動事業者等がクレジットカード会社並みに規制が進めば、そんなにトラブルにならないのではないかと思っていますので、業界団体の方たちも、事前に、法規制も大事ですが、自主規制というのも強化されていってほしいなと思っています。

先日、別の機会でキャッシュレス決裁の業界団体の話を聞きましたが、その点はすごく考えていらっしゃって、急速に業界団体で検討しているという話も聞きましたので、ここは注視していく必要があるかなと思っております。

ありがとうございます。

○山本委員長 ありがとうございます。

相談現場からの大変重要な御指摘であったと思います。

さらに、いかがでしょうか。

それでは、受田委員、お願いします。

○受田委員 今、寄せられた要望、意見の中に、ゲノム編集の話がございました。

この2件に関しては、表示を強く求めるという御意見かと思っております。

また、中に要望として具体的に書かれていますけれども、今回のゲノム編集食品の表示をめぐっては、科学的検証の仕組みに立脚をして表示を進めていくという方向で、社会的検証という仕組みでのゲノム編集食品の表示については、現状、義務化することについて難しいというところで、今日に至っております。

御存じのとおり、社会的検証で、原料原産地表示の義務化というのは、既に法律として進んでおります。こういった寄せられた意見、食品表示部会においてもかなりいろんな議論をしてまいりましたけれども、寄せられた意見に関しては、しっかり受け止めまして、今後、食品表示部会において科学的検証と社会的検証の仕組みという、そもそも論のところを議論していく部分でしっかりと皆様の御意見をいただくようにしていきたいと思っております。大変参考になる意見かと思います。

○山本委員長 ありがとうございます。

その他、種々御意見をいただいておりまして、これらは、いずれも消費者委員会として、タイミングはいろいろになるかと思いますが、しかし、それほど長いスパンを置かずに対応をしなくてはいけない種々の課題を御指摘いただいているものと思います。

こういった意見書、要望書等につきましては、今後もこの委員会、全委員で情報共有をし、定期的に委員間で意見交換を行う機会を作っていきたいと思います。

また、委員間で議論をする際にも、参考にさせていただきたいと考えております。

それでは、その次のテーマですけれども、漁業法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う特商法施行令の改正のための手続について、事務局から説明をお願いいたします。

○金子参事官 それでは、まず、参考資料2-1に基づいて御説明をしたいと思います。

特商法の適用除外になる法律について、消費者委員会で審議をすることになっているわけなのですけれども、比較的軽微な改正に関わるものなので、手続をどうするかということをお諮りするものでございます。

この2-1の資料の最初のところに経緯を書いてございますけれども、2行目辺りから訪問販売、通信販売、電話勧誘販売等について、他の法律の規定で消費者の利益の保護が図られるということが認められる場合には、特商法の適用を除外しているということで、その除外する品目については、7行目辺りですけれども、特商法の施行令、政令の中で別表第二というものがございますけれども、その中で一覧にしているものでございます。

具体的にどうなっているのかというのが、次の参考資料2-2でございますけれども、現行のものが下の欄に書いてございますけれども、特定信用事業代理業者、これは預金とか貸付等の契約を漁協にかわって代理をして契約をする事業者を想定しているものですけれども、それが1つ。

もう一つ、特定信用事業電子決済等代行業者、これは例えばアプリ等で預金の情報を取得して、家計簿のようなもので表示をしたりとか、あるいはアプリから決済の指示を出すような、そういったものを取り次ぐ事業者でございます。

最後のほうに書いてございますけれども、指定紛争解決機関、その3つが提供する役務について適用除外ということが認められているわけでございます。

それを今回、施行令を改正することになった経緯でございますけれども、平成30年12月に漁業法等の一部を改正する法律が成立いたしまして、その中で、水産業協同組合法についても改正が行われることになったということでございます。

その結果、参照している条文について、条文番号の変更は行われたのですけれども、内容については全く変わっていないというものでございます。

ですので、新旧対象の形で示しているものでも、参照条文のところだけが変更になっているということでございます。

次のページ、参考資料の2-3でございますけれども、特商法の関係する条文を引いてございますけれども、この政令の制定または改廃の立案をしようとするときには、消費者委員会に諮問をしなければならないということになってございます。

これまでの前例を見ましても、こういう条文番号の変更のみとか、そういう軽微なものにつきましては、諮問答申のプロセスを省略した形で、こういう形で報告をするのみで御了承いただいておりますので、それに準じて、今回もそのような扱いをさせていただいていいかどうかということをお諮りするものでございます。

以上でございます。

○山本委員長 ありがとうございました。

ただいま、御説明がございましたとおり、特商法の施行令につきまして、内容に関わる改正が行われる場合には、諮問答申という手続をとることになりますが、今回は条文の番号が変わっただけで、内容に関わる変更はないということでございまして、このような形式的な改正につきましては、何年か前から消費者委員会のほうで方針を決めまして、諮問答申の手続は省略することにしておりまして、今回もそのような扱いでよろしいかどうかを確認したいと思いますけれども、よろしいでしょうか。

(委員首肯)

○山本委員長 ありがとうございます。

それでは、本件につきましては、諮問答申の手続は省略することといたします。

なお、諮問答申の要否につきましては、今後も形式的な改正であると思われる場合であっても、その都度、委員会で今のように確認した上で、委員会として手続省略の可否を判断するという形で諮っていきたいと思います。全くこの場に出さないという扱いはせず、あくまで諮問答申は経ないけれども、確認はここでするということでございます。

最後の議題ですけれども、消費者委員会下部組織の委員についてです。

消費者委員会の下部組織につきましては、第309回委員会におきまして、新開発食品調査部会を始め、4つの部会、専門調査会を再開することを御確認いただきましたけれども、先般、新開発食品調査部会の下に設置されている新開発食品第一調査会及び公共料金等専門調査会につきまして、内閣総理大臣より臨時委員及び専門委員がそれぞれ任命されました。

そこで、消費者委員会令第1条第2項、公共料金等専門調査会の設置運営規定第2条第2項及び第3項に基づきまして、部会に属すべき臨時委員及び専門委員、専門調査会に属すべき構成員や座長につきまして、先般参考資料の3-1から3-3のとおり指名いたしましたので、御報告いたします。

また、第309回委員会におきまして、新開発食品調査部会の部会長として、受田委員を御指名したところですが、先般、受田部会長より、部会長代理を木村委員にお願いする旨の指名が行われたということです。

それから、公共料金等専門調査会につきましては、野村宗訓専門委員に座長をお願いすることといたしました。

加えまして当委員会からは、大石委員と新川委員に担当委員として専門調査会にオブザーバーとして御参加いただくということになりました。

以上、御報告をいたします。


≪4.閉会≫

○山本委員長 本日の議題は以上になります。

最後に事務局より今後の予定について御説明をお願いいたします。

○金子参事官 次回の本会議の日程、議題につきましては、決まり次第、委員会ホームページ等を通じてお知らせいたします。

以上でございます。

○山本委員長 それでは、本日は、これにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)