第301回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2019年6月28日(金)15:00~15:53

場所

消費者委員会会議室

出席者

  • 【委員】
    高委員長、池本委員長代理、大森委員、蟹瀬委員、樋口委員、増田委員、山本委員
    (高委員長の「高」は、正しくは「はしごだか」)
  • 【説明者】
    名古屋学院大学佐久間教授
  • 【事務局】
    二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官、友行企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 預託等取引契約に関する消費者問題について
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○高委員長 それでは、定刻になりましたので、第301回「消費者委員会本会議」を開催させていただきます。

お忙しいところを御参集いただきまして、ありがとうございます。

本日は、受田委員、鹿野委員、長田委員が御欠席となります。

なお、樋口委員は、若干遅れての出席ということでございます。

それでは、配付資料の確認につきまして、事務局よりお願いいたします。

○坂田参事官 議事次第に配付資料を記載しております。

もし、不足がございましたら、事務局までお申出いただきますようお願いいたします。

なお、本日、メインテーブルでは、ペーパーレスの観点からタブレット端末を併用しておりますので、よろしくお願いいたします。

以上です。


≪2.預託等取引契約に関する消費者問題について≫

○高委員長 本日の議題は「預託等取引契約に関する消費者問題について」でございます。

我が国では、物品・権利を販売すると同時に、当該物品等を預かり、第三者に貸し出すなどの事業を行うとして、利益の還元と、最終的な物品等の返還または物品等の一定価格での買取りを行う商法を悪用し、多数の消費者に高額かつ深刻な被害をもたらす事案が繰り返し発生しております。

消費者委員会では、平成30年8月の第284回委員会において、ジャパンライフ事件の被害実態と預託法の問題点等についてヒアリングを行うなど、様々な観点から委員の間で検討や議論を重ねてまいりました。

本日は、まず、本件についての調査を開始した背景や当委員会の問題意識などについて、事務局より説明をお願いいたします。

○友行企画官 それでは、資料1を御覧いただけますでしょうか。

「販売預託商法に関する消費者問題について」でございます。

問題意識といたしまして、1つ目でございます。我が国では、2040年ごろに向けて高齢者人口が増加し、高齢化率も約40%まで高まることが予測されております。

2つ目といたしまして、高齢者は、一般的に、若年者に比べて判断能力が低下し、高齢世帯に占める一人暮らしの割合も増加し続ける見込みであることなどから、消費者被害に遭いやすい環境に置かれているということでございます。

3つ目でございます。昨今、物品等を販売すると同時に、当該物品等の預かり、第三者に貸し出す等の事業を行うとして、利益の還元と、最終的な物品等の返還または一定価格での買取りを行う商法(いわゆる販売預託商法)を悪用し、取引高に見合う商品の保有や運用等の実態を欠く状態で事業を継続し、最終的に多数の消費者に高額かつ深刻な被害をもたらす事案が発生しております。

4番目でございますが、被害者の多くは高齢者であり、販売預託商法による消費者被害への対応は、高齢者の保護、ひいては我が国全体の安心・安全にも直結する課題であると、こういった問題意識でございます。

これらを踏まえまして、現時点での論点整理(案)でございます。

1つが、販売預託商法は、事業者が配当を実行している間は、契約者において取引の問題性を認識しにくいこともあり、現行の法律では悪質な販売預託商法に対処し切れないため、新たな法制度が必要ではないかということでございます。

例えば、以下のような内容を含む制度整備を行うことが必要ではないか。

マル1といたしまして、物品等を販売することから始まる預託取引を規制対象とすること。

マル2といたしまして、早晩破綻することが経験的に明らかな類型の取引形態を禁止し、罰則規定により担保すること。

マル3といたしまして、被害が拡大する前のより早い段階で取締りを実施することができる要件を設定すること。

マル4といたしまして、被害者に泣き寝入りをさせないためにも、犯罪収益を没収し被害回復につなげる仕組みを導入することでございます。

2番でございます。警察庁及び各都道府県警察において、引き続き重点的な取締りを推進すること。

3つ目でございます。被害に遭いやすい高齢者等への消費者教育及び適切な情報提供をすること。

以上でございます。

○高委員長 ありがとうございました。

以上、事務局から説明をしてもらいましたけれども、これが当委員会の問題意識であり、とりあえずの論点の整理であるということでございます。

本日は、議論を更に先に進めたいということで、現物まがい商法について、名古屋学院大学の佐久間修教授より、その欺まん性と現行の刑事規制の限界という観点から御説明をいただき、今後の議論や検討の参考にさせていただきたく思います。

佐久間教授におかれましては、お忙しいところ御出席をいただきましてありがとうございます。

恐縮でございますが、15分程度で、御説明をいただけますでしょうか。

○名古屋学院大学佐久間教授 それでは、報告させていただきます。まず、現物まがい商法という名称ですが、刑法ではこのように呼ばれておりますが、特に悪質な詐欺的商法に限って、この問題がどのように取り扱われているかを、雑ぱくではありますけれども、その概要を御説明したいと思います。

お手元のペーパーに沿って進めさせていただきますが、まず最初に、金融商品取引や資産運用の奨励などが、各種の投資として身近なものになった現在、リスクの大きい取引に誘い込まれた一般消費者が多大な被害を被る事例が増えております。

特に詐欺的商法の1つとして、その典型とされる現物まがい商法が問題になったのは、かつての豊田商事事件からでした。豊田商事事件を契機として制定された特定商品預託取引業法、刑法では、預託法ではなく、こうした略称を用いますので、このように呼ばせていただきますが、この法律は、当初から法規制として十分であるかという疑問が提起されておりました。

もちろん、現行の刑罰法規が抑止力を発するかどうかは、当局の取締姿勢によっても大きく左右されるわけです。このことは、皆さんも御存知のように、児童虐待をめぐる児童相談所の対応などにも表れているところです。

さて、現行の法規制をめぐっては、先ほど申し上げたように、特定商品に限定したことを含めて、刑法学者の間では、最初から不十分なものであるという評価が一般に定着しておりました。各種の文献を挙げることができますが、ここでは省略させていただくとして、その理由は、詐欺的商法の対象となった商品を個別に指定していく方式では、悪質な事業者が法制度の間隙を縫って、新たな対象商品を利用するため、結局は、後追いになってしまうということがあります。また、被害が拡大してからようやく対応することになるという問題も、多くの学者から指摘されています。

それどころか、一定の商品に限定することによって、かえって「別の物品なら大丈夫、同じような商売をやっても良い」という誘い水にさえなってしまうという意見もみられます。

しかし、こうした批判に対しては、従前の刑法典の詐欺罪による規制で十分とする反対論も、根強く存在しています。実際、豊田商事事件では、最終的に詐欺罪の規定を適用して犯人らを処罰いたしました。

しかし、それが被害の拡大を防止することになったかというと、全くそうではなく、完全に破綻する状態まで警察は待たざるを得なかったという実態があります。

それが法の不備であったとすれば、今後はどのような対応が必要になるかという点ですが、現在の取引社会では、利殖詐欺や投資詐欺など、いろんな名称の取引が混在しています。利殖詐欺という名称は、どちらかといえば、マイナスイメージが強いのかもしれませんが、この種の詐欺的行為については、被害者が資金を拠出したことで一定の配当が得られればよいし、何らかの利益があったならば、それでも欺いたと言えるのかという問題が出てまいります。また、仮に被害者が取引内容について、若干誤解していたとしても、そのことについて、犯人側が「まさかそう思っているとは考えていなかった」といったような言い訳、つまり「故意がなかった」という言い訳を認めてしまうことにもなりかねません。

実際、犯人が取引の口実にした事業の実態が全く存在しなかった場合にも、投機としては正当であるという言い訳が通用する場合も出てまいります。

もっとも、今回問題となっている現物まがい商法では、そもそも取引の対象となった特定商品を購入することなく、つまりは、最初から購入する意思がないうえ、被害者が拠出した資金で購入した商品やサービスを運用すると言いながら、実際には、そういった運用の意思もありません。さらに言えば、およそ運用が行われないわけですから、全く利益を生み出さないにも関わらず、大きな利益が得られるように被害者に申し向けている点では、二重の意味で欺いていると言うことができます。

一部には、幾分はプラスのイメージがある投資活動に関わる詐欺と考えた場合、これらを余り厳しく取り締まることで、かえって新たなビジネスの芽を摘んでしまうという消極論もあるようです。しかし、二重の意味で顧客を欺いている詐欺的商法が合法的事業として許容される余地などないわけですし、仮に、新規のビジネスを阻害しないという配慮を持ち出すとしても、それによって現物まがい商法を容認する理由には、到底なり得ないと思います。

さて、次のページに移っていただきまして、3の項目になりますが、悪質事業者をどのようにして排除するかの問題に入ります。当然のことながら、全ての投資行為を禁止するわけにはまいりませんので、その中で、特に悪質な詐欺的行為をどのように排除していくかですが、投資詐欺を規制する方法として各種のものが想定されるところ、例えば、入口の段階で参入規制を設けるか、それとも、原則として自由に参入を認めつつ、行為規制にとどめるかといった問題がございます。

先ほど述べたように、現物まがい商法の欺まん性からすれば、既に入口の段階で悪質な事業者を排除しておく必要があります。そうすることで、その後の被害発生を防止したり、その拡大を防ぐことができるわけです。もともと違法な詐欺的商法なわけですから、早い段階から監視を行うことで、正当な事業者と悪質な事業者を分別する必要があろうかと思います。

さて、その際、参入規制を導入するとして、それが監督権限の強化にならなければ、ほとんど意味がないといえます。

実際には、それぞれを監督する省庁・機関の人的および物的な資源の限界もありますので、その有効利用を考えるならば、なるべく入口の段階では簡略化した手続を採用しつつも、参入した事業者に対しては、定期的な事業報告書などを提出させることにより、少しでも異常があったならば警察と連携して対応するという、なるべく簡便な方法で規制することが望ましいのかもしれません。

もとより、全ての脱法的行為を取り締まることは不可能です。そのようなことをすれば、良質な事業者まで排除する恐れがありますので、そうした厳しい規制はできないわけですけれども、仮に詐欺的商法に限定して参入規制や行為規制をするのであれば、特に問題は生じないかと思います。もし、それさえできないという意見があるとしたら、悪質事業者を野放しにしろと言うに等しいでしょう。

その際、実効性のある法規制になるかどうかは、やはり、担当する部局の姿勢にも左右されますが、直ちに営業停止や関係者の処分に至らなくても、警察による犯罪捜査が始まることで、それがマスコミなどの報道を通じて、一般国民の注意を喚起することにもなります。これによって、新たな被害を防ぐという効果も期待できるでしょう。

他方、仮に、相当な範囲まで被害が広がったとして、その損害回復に当てるべく、犯罪収益を没収したり、利益剥奪処分を行うことで、不法な利益の獲得を目的とした犯行を未然に防止することが可能になります。

なお、個別の被害者による民事的な救済方法としては、損害賠償請求訴訟などが考えられますが、現実には、あまり機能していないようです。その意味では、民事救済制度からこぼれ落ちた被害者を救済する必要性もありますし、民事手続では回収できなくても、刑事手続であれば、不法収益の隠匿を防止したり、これらの財産を没収して被害者に返還するなど、より実効性のある被害者救済を図ることができるかと思います。

特に、刑事法には、犯罪収益移転防止法がございますので、かつては「逃げ得」になっていた犯人らについても、これを防ぐことが可能となりますし、そうした制度を利用することで、この種の犯行を未然に防止できる場合も多いかと思います。

とりわけ常習的な犯罪集団は、海外での資産隠しやマネーロンダリングなど、被害者が取り戻すべき資産を分散させることで、損害回復を困難にしてきたケースが多いとされます。そもそも、従前の強制執行制度がほとんど機能してこなかったと言われ、だからこそ、刑法典を改正して強制執行妨害罪などの規定を拡充したにも関わらず、なお十分ではないという指摘さえあるくらいです。

また、2013年には集団的消費者被害救済制度が設けられましたが、これについても、予想されたようには機能していないと言われております。

次のページに移ります。

こうした救済制度が期待されたにも関わらず、詐欺的商法の被害者から、積極的に被害があったのを申し出ることが難しいという状況は、先ほど冒頭でも説明されましたが、高齢者が被害に遭ったとき、これをむしろ恥として隠す傾向があるからです。その点でも、なかなか被害を捕捉できない、あるいは、被害者が申し出ないため、およそ民事救済では不十分という事情も考慮する必要があると思います。

さらに、これらの救済制度は、そもそも合法的な事業者を想定した仕組みでしかありません。その意味で、どこまで機能するかという疑念は、当初から存在したわけですし、刑事法の領域では、かつて悪質商法の典型とされた豊田商事事件の残党が、その後、全国に散らばって、同じような現物まがい商法を繰り返してきたと言われており、これらの犯罪者集団に対しては、前述した民事救済制度は、ほとんど機能しないのではないかと思います。

こうした組織的犯罪集団が犯行の主体になっているとすれば、やはり、刑事手続による犯罪収益の没収や、それらを損害回復に充てるシステムが必要となってまいります。

その際、現物まがい商法ないし預託業に関して、新たに犯罪収益の没収制度を創設するよりは、現行法である組織的犯罪処罰法の中にある、各種の犯罪収益移転防止のシステムを利用すれば、警察との連携も強化できるのではないかと考えられます。

ちなみに、組処法と略称される法律の犯罪収益没収については、同法の2条2項1号のイで、4年以上の懲役刑を規定した犯罪であれば適用対象となりますので、これも御記憶いただければと思います。

以上のような考え方に対しては、なお刑事規制に消極的な見解もみられますし、そうした反対論によれば、刑法の詐欺罪の適用をもう少し拡張すれば、十分対応できるのではないか、むしろ捜査機関が早期に動くことで、十分に被害の拡大を阻止できるという意見もございます。

しかし、御承知のとおり、日本の刑法典の詐欺罪は、その法定刑が10年以下の懲役刑となっております。そういう意味では、窃盗や恐喝などと法定刑の上限が一緒という点で、かなり悪質なケースが想定されており、警察などの取締当局からしても、軽微な詐欺や境界事例に当たる詐欺的商法については、直ちに詐欺罪で立件することについて、かなりの障害があるわけです。

ちなみに、参考資料ということで、諸外国の刑法典を幾つか挙げさせていただきました。それらの詐欺罪の規定を御覧いただけるでしょうか。特に日本の刑法に大きな影響を与えたのはドイツ刑法典であり、現在でも、刑法学者の大半はドイツの議論を参考にして議論をいたしますが、ドイツでは、刑法典の263条に一般的な詐欺罪の規定がございます。すなわち、「違法な財産上の利益をみずから得または第三者に得させる目的で、虚偽の事実を真実に見せ掛けることにより、または真実を歪曲もしくは隠蔽することにより、相手方に錯誤を生じさせまたは維持させることで、他人の財産に損害を与えた者は、5年以下の自由刑または罰金に処する」となっています。つまり、その法定刑は、日本の詐欺罪の半分の5年以下となっております。

ただ、特に犯情が重いケースに関しましては、同法の第3項において、6月以上10年以下の自由刑とすると書いてあるのですが、レジュメに書いたように、幾つかの絞りを掛けており、かなり悪質なケースに関した加重事例とされているわけです。

では、それ以外に詐欺罪の規定はないのかというと、その下をみて下さい。条文は省略してありますが、263条のa、264条、264条のa、265条、265条のa、265条のbと、それぞれコンピュータ詐欺、補助金詐欺、投資詐欺、保険の濫用、給付の不正入手、そして信用取引詐欺などといった類型を個別に設けております。

ただ、これらのいずれも、その法定刑は、5年以下の自由刑から3年以下の自由刑、場合によっては1年以下の自由刑ということで、非常に軽い刑になっております。

さて、もう一つの例として、フランスの刑法典を挙げておきました。次の4ページにまたがっておりますが、近年になって大きな法改正が行われた結果、この規定が出来上がったとされます。それ以前は、非常に雑多な、およそ詐欺罪と言えないものも含めた、様々な規定の集合体でしたが、この法改正によってようやく整備されたといえます。今、ここに挙げられた313-1条と呼ぶべきものが詐欺罪の一般規定ということになります。フランス法でも、その法定刑は5年以下の拘禁刑もしくは37万5000ユーロ以下の罰金またはその併科で処罰されることになっております。

もちろん、加重的詐欺という類型もありますが、これも7年以下の拘禁刑または75万ユーロ以下の罰金刑またはその併科になっておりまして、そのほかにも、幾つかの特別な詐欺類型があるとはいえ、やはり、それほど重い法定刑にはなっておりません。

このように、ドイツ刑法典などでは、詐欺罪の法定刑が5年以下の自由刑にとどまっており、日本の刑法の半分であることに加え、補助金詐欺や投資詐欺といった類型を別途設けているため、より実態に即した刑事規制が可能になっております。

日本でも、かつて損保協会が動いて、保険金詐欺の類型を作ろうとしたようですが、最終的には、実現しなかったようです。そうしたこともあって、日本では詐欺罪といえば、もっぱら246条が適用されるため、そのほかは準詐欺罪があるだけという状態になります。

とりわけ投資詐欺については、ドイツ刑法で特別規定を設けた趣旨として、個人の財産権保護も考慮するけれども、資本市場の保護といった公共的利益を目指したものと学説では説明されています。

そうした違いもあり、しかも日本では、しばしば投資と投機が同一視されることもあって、仮に財産的損害が生じても、被害者にはそのリスクが分かっていたではないか、あるいは自己責任ではないかといった議論も散見されます。また、当事者が利殖目的であること、もっぱら投下資金の回収を重視しているため、実際の事業内容には関心を持たないことも多く、そもそも欺かれていないという指摘も少なくありません。

そうした点でも、詐欺罪における欺く行為と被害者の錯誤という要素が欠けるため、詐欺罪としての立件が困難であり、それが法定刑の重さも相まって、警察当局が直ちに動き出すのが難しい場合がございます。

近年、特殊詐欺と呼ばれる分野については、警察も積極的に動いております。これは、マスコミ報道でもお分かりのように、一日1億円の被害が出ており、被害者の多くが高齢者であったり、社会的弱者であること、しかも、追い込み型とか圧迫型とか呼ばれるように、純然たる詐欺というものでなく、相手方をパニック状態に陥れて、それでお金を引き出すという方法が採られることも多いとされます。

そういう部分では、窃盗や恐喝に近い部分もございますので、法定刑が重くても良いという考え方も十分成り立つわけです。そうした発想に立った外国の立法例としては、イギリス法やアメリカ法がございます。こちらでは、むしろ、10年ぐらいの法定刑を想定しつつ、窃盗罪などと同じく、相手方から物を奪うという部分に着目した規制が行われてきたといえます。

しかしながら、日本では、そのような侵害の形態に着目するのでなく、むしろ、財産的損害がなければ重く処罰する必要はないとして、従来から典型的な詐欺とされた釣り銭詐欺とか、寸借詐欺のようなものについても、軽微な詐欺だから処罰しなくて良いといった解釈論さえ、一部ではみられます。

最後の「おわりに」の部分になりますが、近年の判例は、これらの特殊詐欺を想定して、詐欺罪の成立範囲をかなり広げてまいりました。自分の名前で銀行口座を開設した後、直ちにその通帳を含めて他人に譲るような場合、あるいは、他人に譲ることを前提にして航空機のチケットを自分の名前で入手する場合、あるいは、やくざがやくざであることを隠してゴルフ場を利用した場合、たとえ利用料を払っていたとしても、詐欺罪に当たるとして、かなり財産的損害から離れたものにまで詐欺罪の成立を認めるようになっています。しかし、こうした拡張傾向もいまや限界に達していると批判されています。

学説の多くは、幾ら特殊詐欺であっても、ここまで広げることを疑問視しており、組織的詐欺の事例にあっても、末端の人間は犯行の全容を理解していないにもかかわらず、詐欺罪の共同正犯として処罰することに対しては、かなり抵抗もございます。

その点でも、詐欺罪の適用範囲を更に拡張することで、現物まがい商法に対応できるといった主張は、かなり無理があるわけですし、そもそも刑法典が明治40年に制定されたものであり、その当時の経済状況を想定した詐欺罪の規定を使って、どこまで対応できるのかを考えた場合、そもそも無理なのではないかと思います。

先ほど、寸借詐欺とか釣り銭詐欺などと申しましたけれども、明治40年当時の経済状況では、むしろ一回的な詐欺を想定していたと考えられます。ところが、近年では、現物まがい商法もそうですが、継続的な取引関係の中で財産的損害が拡大していく場合が多くなっています。そのような取引形態では、どこに欺く行為があったのか、あるいは、どの時点で財産的損害が発生したかについて、顧客も分からないし、まして、外部の人間が取り締まろうと思ったときにも、それが分かりにくい構造になっています。

そうした違いがあることに加えて、最近では、先般の金融庁の試算で問題になったように、老後2000万円が必要であるとして、高齢者も積極的に資産形成をやるべきであるといったような、投資圧力が強まっています。高齢者も将来の不安を抱える中で、悪質な投資詐欺に遭いやすい環境が広がっていますが、そういう事情が余り考慮されていないのではないかと思います。

今でも豊田商事事件の残党が暗躍しているかは不明ですが、仮に悪質な事業者が、最初から金銭をだまし取る目的で、架空の商品を持ち出して、多大な運用益が得られると称して、多額の出資を募ったような場合を考えてみるならば、これを早期に取り締まるのは当然でしょう。それが新規のビジネスを阻害するというような反対論は、あたかもお年寄りからお金をだまし取るのが新規のビジネスだと言っているのと等しいわけですし、到底、容認できない主張でしょう。むしろ、今後は、悪質な事業者とそうでないものを分別することを心掛けるべきであろうかと思います。

なお、立法例としては、いろな方法が考えられますが、一例として、レジュメの末尾に掲げたようなものも有り得るかと思います。ただ、あくまで1つの例ということで御理解いただければと思います。

長くなりましたが、以上で説明を終わらせていただきます。

○高委員長 ありがとうございました。

それでは、只今の御説明に関しまして、御質問、御意見のある方は、どうぞ御発言ください。

どうぞ、池本委員長代理。

○池本委員長代理 御説明ありがとうございました。

非常に我々も問題点として感じているところを的確に押さえていただけたかと思います。

詐欺罪というときに、特に本件のような場合に、現物商品がないのに、あるかのように装って販売し、預託をするということそのもので、もう既に欺いている、本当は、その個別商品、財物の取得の時点でも詐欺が成り立つのではないかと思うのですが、どうも実務的には、そこはなかなか取り上げてくれない。商品に関心があるのか、それとも配当が中心だというのか、あるいはそこについての契約者側の認識と事業者の認識、故意があるかどうかという、そこがなかなか立件されないというのが、どの辺りに原因があるのか。

それから、いわゆる償還不能詐欺、後で配当します、あるいは最終的には元本以上の利益になりますというけれども、償還不能に陥っていると、これはなかなか、いつ破綻するか分からないし、少なくとも契約者は、それがちゃんと運用したもので配当されているのか、後の人のお金がただ回されているだけであるのかというのはみえませんから、結局、被害者が申し出をしない、利益配当を受けている限りは、自分が被害者だとは認識できないし、騒ぎ立てて逆にそれで破綻しては困るから静かにしているしかないという、やはり償還不能ではやっていけない、個別の財物を取得する時点での詐欺ということが、本当はできれば良いと思うのですが、なかなかできていない。そこが、なぜかという点をお伺いしたい点が、まず、1点です。

だからといって、今の刑法の詐欺罪そのもので、この部分を取り上げるのだというのを言っても、非常に範囲も広いですから、そこを先生おっしゃっているところの、現物まがい商法を一定の要件付けをして、商品がないのに、あるかのように装って取引を続けることそのものが罰則対象になるという特別法として、正に個別財物取得を立件しにくい代わりに持っていくということになるのだろうと思うのです。

ただ、それにしても、個々の被害者は、自分に配当が来ている限りは、なかなか被害者だと言って名乗り出てくれない。結局、行政が監視して、あるところで実態が把握できれば、行政処分の方法か、あるいは罰則にもっていくかというところになろうと思います。

そこで、2点目の質問事項ですが、商品を販売し、預かって運用するというのが、場合によっては一定の範囲、一定の規模であれば生業として成り立ち得るもの、あるいはあるのかもしれない。それで、一定の状態になると、それはもう犯罪状態になっているというときに、刑法の罪刑法定主義的なところで、どういうふうな要件立てをすれば良いのか、先生も最後の辺りで少しお書きいただいているのですが、特に、商品がないというのはともかく、取引高に見合うだけないではないか、いや、調達中である、調達がなかなか予定どおりいっていないだけだとか、特に、その辺りも、いわば事業者側の弁明が故意にも関わってくるので、その辺りをどういう形で要件立てをすれば、客観性が保てるのか、ちょっと2番目は、なかなかお答えが難しいところかもしれないのですが、何かヒントを教えていただければと思います。

○名古屋学院大学佐久間教授 御質問ありがとうございました。

まず、1点目についてですが、種々御指摘になられたことは、むしろ、過去に詐欺罪として立件されてこなかった理由を、正に言い当てられているわけです。特に詐欺罪では、財産的損害が明らかでない場合、警察としては、詐欺の被害届が出てから動くことが結構多いのです。

というのは、従来から取引関係については、いわゆる民事不介入の原則というものがありましたし、警察が早期に規制しようとしたとき、かつて豊田商事事件でも関係者からクレームを付けられたことがあって、それ以上の捜査を手控えてしまった例があったくらいです。そういう意味では、実際に警察が動かない理由としては、外部からは損害がなかなか分からない、あるいは、商品が用意されていなくても、それは投資のためだからと言われたら、被害者の側もはっきりと把握しておらず、欺かれたとは言えないということで、詐欺罪として立件が困難な理由が、正しくそこにあるのです。

それではどうしたら良いかですが、御質問の第2点目に関わってまいりますけれども、詐欺罪とは別の犯罪として、行政庁が業務停止処分や間接的な罰則を使うことで規制するためには、どういう形の法律を設けておけば、刑罰法規の明確性等も確保した上で、より有効な規制になると言えるかです。その際、現物まがい商法がどのような性格のものかを考えたとき、確かに、これから商品を調達する場合もあろうかと思いますが、そうした場合であれば、あらかじめ調達計画を立てているはずですし、あるいは既に手配済みということもあるでしょう。しかし、そういった事実が全くない状態で、商品を購入して運用することで利益を生み出すと申し向けている場合、仮に利殖目的であったとしても、顧客の方はどのように受け止めているでしょうか。顧客は、少なくとも購入する商品が引き当てになるから、拠出した資金が完全に消えてなくなるわけではないと考えていると思います。

そういう意味では、これはある論文にも書いてありましたが、実際には先物取引であるにもかかわらず、現物取引であることを装って相手方を危険な取引に引きずり込んだのであれば、これは詐欺にあたると。現物まがい商法も、これと似たところがあって、運用すべき商品がない、つまり現物が全く存在しない以上、もし何かあっても現物は残ると考えた顧客からすれば、全く商品が調達されておらず、将来も商品がないとすれば、多分、自分の理解と違うと言うでしょう。

そういう場合に限ってみれば、最初から顧客を欺いて資金を拠出させており、詐欺罪にほかならないと言えます。しかし、先ほども申し上げたように、警察が詐欺罪として立件する上では動きにくい部分もあるので、むしろ、詐欺罪の前段階に当たるものを、別途に独立した罰則にしておき、仮にそれが詐欺に移行したのであれば、その段階で直ちに警察が詐欺罪として摘発できるような段階的構造をとるのも1つの方法ではないかと思います。

これで明確性を確保できるかは、具体的な規定の仕方ないし規定ぶりにもよってくるかと思います。

○高委員長 ありがとうございました。

大森委員、どうぞ。

○大森委員 ありがとうございました。

詐欺を罰する法律というのは、各国に用意されているけれども、日本は10年以上の大きい罰則で、あとは大体5年ぐらいという違いを教えていただいたのですが、どうしてそういう違いがあるのかなというところも疑問なのですけれども、一番不思議というか、疑問に思うのは、ドイツではコンピュータとか、投資とか、個別に対応する規定を設けているけれども、日本では、損保協会が保険金詐欺の類型を作ろうとしたけれども、結局、実現しなかったと。その辺りは、どういう事情によってそうなるのでしょうか。

○名古屋学院大学佐久間教授 ありがとうございます。

正確に申し上げるべきだったのですが、日本でもコンピュータ詐欺の類型は別にございます。名称は電子計算機使用詐欺となっておりますが、これは、新たに昭和62年の段階でアメリカの規定に倣って作られました。

それ以外には、準詐欺の規定があるとはいえ、少なくとも、現行刑法典には、投資詐欺とか、補助金詐欺とか呼ばれる類型はないのです。なぜかというと、日本では、刑法典とは別に特別法の中で、例えば補助金適正化法などに罰則があり、そのほかにも不正競争防止法の中には、刑法典の詐欺に極めて近い前段階のものを処罰する規定があります。具体的には、商品の原産地や数量を偽ったりする場合、虚偽表示として処罰されています。これも本来は詐欺に当たるものですが、その前段階として不正競争防止法で禁止しておりますので、刑法典が出るまでもないとされています。そうなった背景には、それぞれを所管する省庁の思惑もあろうかと推測するのですが、日本では、なかなか新しい詐欺罪が実現しなかったわけです。

保険金詐欺の類型を設けることについても、多分、そういった抵抗が大きかったのではないでしょうか。

○高委員長 ありがとうございました。

他は、ございますか。

どうぞ、増田委員。

○増田委員 反対する意見の中で、将来詐欺的ではない新しい形態のビジネスが出てくる可能性があるため、そうした場合に規制が掛かることは得策ではないという意見があるのですが、そういうことについて先生から、一部お話をいただきましたけれども、お考えを教えていただければと思います。

○名古屋学院大学佐久間教授 恐らく、そのようにおっしゃる方々は、参入規制として、入口のところでかなり厳しい要件を設けると業者が尻込みして、それこそ新しいビジネスの足かせになるというか、ハードルを高くしてしまうのはよくないと考えるのでしょう。そうであれば、参入する段階では届出に近い簡便なものにしておいて、その中には悪質事業者も混じっているわけですから、その場合は定期的な事業報告書などをチェックすることで、実際に商品を購入ないしサービスを提供、更にそれらを運用して利益を上げているかを見て、およそ実体を伴わない場合に警察と連携して規制するということであれば、それほど合法的な新規ビジネスの障害にならないと考えていますが、いかがでしょうか。

○高委員長 今の質問と、それから、先ほどの池本委員長代理の質問にもあったのですけれども、要件付けをどうするのかというところで、きょう先生に御紹介いただいた2ページ目のところに、参入規制については、詐欺的商法に限定して参入規制を設けると書かれているのですが、その限定というのは具体的に、今回のジャパンライフのケースなどを念頭に置いた場合、どのような要件を設ければ、許容できるとお考えでしょうか。我々も悩んでいるところですので、お願いいたします。

○名古屋学院大学佐久間教授 ありがとうございます。

もちろん、私が取引の実態をそれほど知らないものですから、正確に申し上げられるかどうかは心許ないのですが、詐欺的商法という場合、現物まがい商法のように、幾つかのうそを積み重ねております。仮にこれから商品を調達するにしても、当然それに向けたしっかりとした事業計画があれば、それをうそとはいわないわけです。しかし、それらが全て虚構であり、全てが「つくりもの」あるいは「まがいもの」であったことになりますと、それも投資のためだから許される、何でも良いではないかという意見があるとしたら、それは違うのではないでしょうか。そうした詐欺的商法は、出資法などの規制を免れるためにその種の方法をとっており、いかにも商品の運用で事業を行うかのようにみせ掛けているわけですから、むしろ脱法的行為なわけですね。そうであれば、当然規制すべきであり、反対に、正当な出資や投資であれば、出資法などの規制はあるとしても、そちらのルートでやるべきものなのに、あえて別の取引を仮装するだけでなく、全く実体のないものを申し向けたとすると、それは規制するべきものであると思います。ただ、それをどうやって絞るかの問題は残りますが…。

例えば、先生のおっしゃる場合として、多分、まだ当初の段階では、商品が調達できていない場合があり、その段階で全部アウトにするわけにはいかない。そうだとすると、最低限一定の期間内には、必ず商品を調達できるような計画や手順を示すなどの条件を付けなければ、まだ調達できないという言い訳を続けることで、その後も事業だけは拡大していったが、肝心の商品は全く手元にない状態が続くことになりますので、こういったものを捕捉できる規定が必要となります。それは、結局のところ、規定の仕方によるのではないかと思うのですが、曖昧なお答えで済みません。

○高委員長 蟹瀬委員、どうぞ。

○蟹瀬委員 ありがとうございます。大変よく分かりました。

私は先生のお話をお聞きしながら、2つお聞きしたいと思ったことがあったのですが、1つは、今、高委員長がお話になった、参入規制の中で、人間が判断するわけですから、悪質というものをどう判断するかということ。。

どこかの省庁が担当してやるとしたときに、人力と予算をどこまで掛けていけるかというということ。やはり、悪質を見付けるために担当者が要るようになるわけですね。その辺りのところでの参入規制というもの、これは、今、委員会でも非常に問題になっているのですが、どう作っていくのか。全員参入で一応登録させるのだということになると、悪いのを見付けるのは、数的にすごく大変になりますね。

悪い人たちだけを見付けようとすると、では、誰が悪いという判断をするのかとか、そこの判断の仕方が大変難しいと思うのです。

ですから、レポートを出させるとか、いろいろな案はあるかもしれないのですが、悪い人たちは悪いレポートを書きますので、そこで、それだけでは判断できないと。

そうしますと、先ほど先生がおっしゃったように、明治40年にできた刑法の中では当てはまらない詐欺がいっぱい出てきているのだから、詐欺にしての特別法とか、適応しても掛かってこないものもある。なので、今、ざっぱに詐欺というふうになっているものを、もっと他の国のように、たくさんの類型を作ってやったほうが良いのか、その辺りのところの先生のお考えはどうなのでしょうか。

○名古屋学院大学佐久間教授 御質問ありがとうございます。

これは、今後、刑法全体をどうしていくかの問題にも広がりますので、ちょっとお答えしにくいのですが、もともと日本の刑法は、非常に広範な適用範囲を想定した一般規定を設けるという点に特徴があったのです。

例えば、諸外国の中でも、ドイツではそこまで個別的な規定になっていませんが、フランスなどでは、極めて個別的な処罰規定を、それこそ日本の何倍もの条文を設けて規定しています。

ただ、条文が複雑になってくれば、それだけ運用が難しくなるという意味で、幾ら個別的な規定を設けたとしても、運用をする当局にとって使いにくいものであれば、結局、規制の実は得られないので、そういう意味では、日本の刑法は、それなりに工夫して、基本法典である刑法に一般的規定を設けることで、最終的な手段として残しておく一方、特別刑法では、早い段階で個別的に取り締まるための罰則を設けて対処してきたといえます。そして、特別法の規定ではどうしても対応が無理になってきた段階で、刑法典に格上げするという流れでやってきたのです。

このように考えた場合、今回の預託法で問題となる悪質事業者をどのように排除していくかについては、どこが担当部局になるかは分かりませんが、確かに物的・人的な能力の問題もありますので、仮に参入規制を設けるとしても、むしろ、一応全ての事業者に届出ぐらいはしてもらうとして、これは取締当局が実情を把握するために出してもらうものであって、その後は、事業の実体があるかどうかをきちんとした書類で示してもらうことになるでしょう。なるほど、事業者にとって一定の負担になるかも知れませんが、例えば総務省の関係では、インターネット関連事業者には、非常に細かな書類を提出させることもありますが、これらのデータの多くは電子化されておりますので、それに見合った書式ないし定式化したものを用意することで、できる限り省力化をする一方、その中に少しでも異常があったら、関係省庁だけでなく、過去の警察のノウハウを使わせていただいて、異常を元に手繰り出した犯人たちを摘発するといったような連携プレーも可能でしょう。その意味で、入口規制とは申しましたけれども、最初は比較的に形式的なものから始める、そうすれば、新規事業者の参入を不必要に阻むことにならないと考えております。

○高委員長 ありがとうございます。

他は、ございますでしょうか。

樋口委員、どうぞ。

○樋口委員 先生のお話の趣旨には賛成なのですけれども、配布資料の一番最後の行には触れられませんでした。この部分では、先生がお書きになっている1つの提案といいますか「例えば」ということで「現物まがい商法の欺まん性を織り込んだ罰則」ということをお書きになっているのですが、この点について伺いたいと思います。私も法律は素人なのですが、例えば、出資法ではかなり厳しい規制があって、ここにお書きになっているように、たとえ現物で装っていても事実上の出資を募っている場合、それは出資法違反ということで捉えることもできるのかなと思ったのです。

したがって、例えば、出資法の中にこの規定を盛り込めば、出資まがい行為で、ただ、結果的には出資に等しい行為をしているときには、出資法違反ということもできるし、それから、もう一つは、犯罪収益を没収するという話もきちんと整理ができるかなと、ちょっと素人的に思ったのですが、その辺りはいかがでしょうか。

○名古屋学院大学佐久間教授 ありがとうございます。

誠にもっともな御指摘だと思いますし、実際には出資を募るということであれば、本来は出資法で規制すべきでしょうが、なぜ今までそうした規制が十分に機能してこなかったかを考えねばなりません。むしろ、悪質事業者は、出資法による規制の間隙をつく工夫をしてきたわけです。だからこそ、全てに出資法を適用することはできず、最終的には、詐欺罪を使わざるを得ない事態にもなったわけです。したがって、仮に出資法を使うとしても、まずその穴を埋めなければなりませんが、法の目的からして十分な規制になるかは疑問です。

しかも、出資法の罰則を拡大するとき、それがかえって出資に関わるビジネスの足かせとなり、そちらの方で不都合が生じないかという懸念があります。そうであれば、むしろピンポイントで現物まがい商法だけに絞った罰則を設けたほうが、より影響が少ないのではないでしょうか。また、出資法の改正ともなりますと、そちらの担当省庁とのすり合わせも必要になってくるため、法改正が大変かなという感じもあります。その辺りは、私にもよく分からないのですが、とりあえずは、なるべく絞り込んだ形で、しかも出資法では捕捉できなかったものを拾うという限度で、このような提案にさせていただきました。

○高委員長 他は、ございますでしょうか。よろしいですか。

いろいろ貴重な御説明、御意見をいただきましてありがとうございました。

少し整理をさせていただきますと、先生のお考えというのは、現物まがい商法、この悪質事業者に対しては、これまで刑法の詐欺罪等があっても、なかなかうまく使えない。出資法についても、最後に説明がございましたけれども、これもなかなかうまく機能していないと。だから、むしろ、ピンポイントで焦点を絞って、現物まがい商法をターゲットにした具体的な法律を作るべきだということだったと思います。

それから、冒頭に説明がありました預託法についても、商品指定制ということで、これにも限界があると指摘をいただきました。

2点目は、参入規制のところの話だったと思いますけれども、これは、届出制のような簡単な仕組みで、まず、どのような事業者がいるのかを把握するため、導入を考えるべきではないかという御指摘をいただきました。

もう一点は、余り議論になりませんでしたけれども、現物まがい商法では、民事救済に限界があると、用意していただいた資料の中に記されております。集団的消費者被害回復訴訟制度についても、限界があると指摘されております。

これを踏まえ、刑事手続を用いて財産没収、それから被害救済、これを考えるべきではないかという貴重な御意見もいただいたと思っております。

私ども委員会としては、これまで、豊田商事以降の現物まがい商法、安愚楽牧場、ジャパンライフ、こういった問題を広範囲に調査、審議しておりまして、これまでの結果と併せ、本日、先生から御報告をいただいた内容を踏まえ、何らかの形で現物まがい商法あるいは販売預託商法と言ったら良いのでしょうか、そういった悪質商法を撲滅するための施策の検討に活かしていきたく思っております。

本日は大変お忙しいところ、貴重な時間をいただきまして、また審議に参加をいただきまして、ありがとうございました。


≪3.閉会≫

○高委員長 本日の議題は、以上になります。

最後に、事務局より、今後の予定について説明をお願いいたします。

○坂田参事官 次回の本会議は、日程が決まり次第、委員会ホームページを通じてお知らせいたします。

この後、委員間打ち合わせを行いますので、委員の皆様におかれましては、委員室にお集まりいただきますよう、お願いいたします。

以上です。

○高委員長 それでは、本日は、これにて閉会といたします。

どうも活発な御議論をありがとうございました。

(以上)