第300回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2019年6月21日(金)14:00~14:45

場所

消費者委員会会議室

出席者

  • 【委員】
    高委員長、池本委員長代理、受田委員、大森委員、蟹瀬委員、長田委員、樋口委員、増田委員、山本委員
    (高委員長の「高」は、正しくは「はしごだか」)
  • 【説明者】
    消費者庁太田消費者調査課長
  • 【事務局】
    二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 消費者白書について
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

  • 議事次第(PDF形式:67KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料】 平成30年度消費者政策の実施の状況、平成30年度消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果の報告(概要)

    ※資料は消費者庁ウェブサイト(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/#white_paper_2019)の
    【概要】令和元年版 消費者白書[PDF:10.1MB](https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/pdf/2019_whitepaper_summary.pdf)を御参照ください。

≪1.開会≫

○高委員長 それでは、時間になりましたので、第300回「消費者委員会本会議」を開催いたします。

お忙しいところを御参集いただきまして、ありがとうございます。

本日は、鹿野委員が御欠席となります。

それでは、最初に、配付資料の確認につきまして、事務局よりお願いいたします。

○坂田参事官 議事次第に配付資料を記載しております。

もし不足がございましたら、事務局までお申し出いただきますようお願いいたします。

以上です。


≪2.消費者白書について≫

○高委員長 ありがとうございます。

本日の議題は「消費者白書について」でございます。

消費者基本法では、政府は毎年、消費者政策の実施の状況に関する報告書を国会に提出しなければならないと規定されております。また、消費者安全法では、内閣総理大臣は消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果を国会及び消費者委員会に報告するとされております。この消費者基本法に定められた実施状況報告と、消費者安全法に定められた消費者事故等の情報の取りまとめ結果等をまとめた令和元年版の消費者白書が今般閣議決定されたとのことでございますので、本日は消費者庁からその概要について御報告をいただきたいと思います。

本日は、消費者庁太田消費者調査課長にお越しいただいております。お忙しいところ、御出席いただきありがとうございます。

それでは、恐縮でございますが、20分程度で御説明をお願いいたします。

○消費者庁太田消費者調査課長 ただいま御紹介にあずかりました、消費者庁消費者調査課長をしております太田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

令和元年版の消費者白書でございますが、冒頭に委員長から御紹介いただきましたとおり、消費者基本法及び消費者安全法に基づく法定白書という位置付けでございまして、平成25年から現在のようなスタイルの法定白書という形で作成を開始し、今回で7回目になります。6月18日の火曜日に閣議決定をされまして、国会報告、公表がされております。

1ページ目は全体の構成をお示ししております。大きく2部構成になっておりまして、第1部におきましては、本年9月に消費者庁と消費者委員会が設立10周年を迎えることを踏まえまして、「消費者庁及び消費者委員会設立10年」という特集テーマの下、取りまとめを行ってございます。

内容は、第1章といたしまして、消費者庁、消費者委員会の取組の背景となる社会経済情勢の変化、消費者問題の変遷をまとめてございます。

それを踏まえまして、第2章では、消費者庁、消費者委員会の10年ということで、両組織の設立の経緯、この10年間における両組織の取組、これまでの取組の評価と課題についてまとめております。

最後の第3章は、今後の消費者政策の在り方についての展望ということで、新たな課題を踏まえた今後の消費者政策の方向性についてお示ししているという構成となっております。

第2部は、これは例年同様の構成をしておりまして、消費者安全法に基づく国会報告、消費者基本法に基づく国会報告として関係省庁の取組を含む政府全体としての消費者政策の動向についてお示ししてございます。

その他、最近の消費生活相談の概況でありますとか、消費者被害・トラブル額の推計結果などについてもお示しをしているという構成となっております。

以上が全体の構成でございまして、以下、そのポイントとなる部分につきまして、かいつまんで御説明をさせていただきたいと思います。

順番が前後するのですが、まず、第2部のポイントということで、2018年度における消費者問題の概況につきまして御説明をしたいと思います。

2ページ目は、【消費者安全法に基づく国会報告】です。

こちらでは消費者事故等に関する情報集約及び分析の取りまとめ結果につきましてお示しをしております。こちらのグラフに掲げてございますように、消費者安全法の規定に基づきまして消費者庁に通知された事故等の件数は、全体で11,616件となっております。

内訳を見ますと「生命身体事故等」につきましてはおおむね横ばい傾向が続いているということでございますが、「財産事案」につきましてはこの2年ほど増加傾向にあるということでございます。「財産事案」についてでございますが、右側に表を付けておりまして、こちらは消費者安全法の規定に基づきまして注意喚起を実施した事例でございますけれども、こちらにお示ししておりますように、架空請求に関する御相談、そういった通知が多かったということで注意喚起も2件ほど行っております。さらに多かったのが、「スマホをタップするだけでお金が稼げる」などと称して、怪しげな情報商材を売りつけるという悪質な商法が非常に広がってございまして、こちらも法律に基づく注意喚起を行っております。

2018年度でございますが、消費者安全法に基づく注意喚起は全体として12件行っておりまして、これまでの10年間で累計71件の注意喚起を行ってきておりますけれども、昨年度は過去最高の件数になってございます。

3ページ目に「2018年の消費生活相談の概況」についてお示ししております。

図表としてスカイラインのチャートをお示ししてございますけれども、縦軸に相談件数、横軸に平均既支払額をとって、それぞれお示ししてございますが、件数ベースで一番多かったのが「商品一般」ということで、一番左に細い棒で24.5万件とお示ししておりますけれども、こちらが件数としては一番多く、内訳としてはほとんどが架空請求でございます。

他方、金額ベースでみますと、緑色でお示ししております「金融・保険サービス」が大きくなってございます。

なお、架空請求関係につきましては、平均支払額で見ますと0.7万円ということで非常に少額になっておりますけれども、これはあくまでも全く支払わなかった方を含めた相談者全体の平均でございまして、実際に支払ってしまった方の被害金額は、最近は例えば10万円から50万円の金額帯が増えているなど、近年は高額化しているという傾向が見てとれます。

続きまして4ページ目は、「最近注目される消費者問題」ということで、トピック的に幾つか御紹介したものでございます。

まず、左側のグラフは、2018年は非常に自然災害が多かったということで、災害に関する相談が非常に多く、2016年の熊本地震のときのよりも件数が1.3倍に増えてございます。相談の内容としましては、「壊れた家の工事の請求額が非常に高額であった」といったことや、「義援金詐欺のようなことがあった」といった相談が多かったということでございます。

右側にお示ししておりますのは、SNSが何らかの形で関連している相談ということでございまして、2014年以降は一貫して増加してございます。最近では若年層だけではなく、40歳代、50歳代、60歳代といった中高年層でも相談が非常に増えてきておりまして、相談の全世代化が進んでいるという傾向が見てとれます。

さらに5ページ目では、左側のグラフにございますように、暗号資産、いわゆる仮想通貨でございますけれども、それに関する相談も近年非常に増えております。2016年から2017年にかけて非常に増加したわけでございますけれども、さらに2018年は、2017年の1.7倍の増加となっております。この間、暗号資産業者における不正流出事案などもございまして、様々な相談が寄せられたということでございます。

さらにその右側にございますように、「情報商材」に関する御相談でございますが、2013年から2018年にかけて、相談件数が約10倍に増加しているということでございます。

6ページ目が、こういった消費者被害・トラブルが日本全体としてどれぐらいの規模で発生しているのかという規模感をおおまかにつかむために、毎年、消費者庁において推計を行っているものでございます。左側の表の真ん中あたりに赤枠でくくった部分がございますけれども、「既支払額(信用供与を含む。)」のベースで見ますと、2018年は約5.4兆円ということで、残念ながら2017年から5000億円ほど増えているという結果でございます。

増えた要因でございますけれども、消費者被害・トラブルの発生率自体はおおむね横ばい傾向にあるということでございますが、右側のグラフでお示ししておりますように、平均契約購入金額、あるいは平均既支払金額が高齢者を中心に2018年は増加しており、これが全体の金額を押し上げたということございます。

7ページ目以降が、第1部の特集テーマに関わる部分でございまして、ここでは消費者庁及び消費者委員会の取組の前提となる消費者を取り巻く環境の変化についてお示ししております。

ポイントだけかいつまんで申し上げますと、家計消費の動向につきましては低迷が続いているわけでございますが、その中身につきましては通信を始めとしまして、サービス分野の支出を中心に非常に増えている。中身については大きく変わってきているということでございます。

さらに8ページ目にございますように、少子・高齢化、さらには世帯の少人数化が進む中で、相談内容につきましても高齢者に関する消費生活相談が非常に増え、消費者庁の発足時である2009年から2018年にかけて約2倍に増えているということでございます。

相談の内容としましても、引き続き、架空請求に関する相談が多い他、黄色で塗り潰しているところにございますように、高齢者においてもインターネット関係の相談が多くなってきてございます。

9ページ目につきましては、情報化の進展の関連でございますが、電子商取引の市場規模が拡大する中で、相談の内容につきましてもこれまでのデジタルコンテンツといったものから通信販売でやりとりされるような商品、健康食品とか化粧品等々といった具体的な商品に関する相談が増えてきているということでございます。

10ページ目は国際化です。この間、越境取引が進んできておりますので、それに関する相談も増えてきておりますし、さらには訪日外国人がこの間に爆発的に増えているということでございまして、これに対応するために国民生活センターにおきましても「訪日観光客消費者ホットライン」を開設して活動しているといったことを御紹介しております。

11ページ目が、消費者問題の変遷ということで、長期の相談件数と主な消費者問題の推移をお示ししておりますけれども、このように消費者問題が多様化・複雑化しており、悪質商法の手口が巧妙化しているということでございます。

このような中、2018年の特徴的な変化として、相談件数が11年ぶりに100万件を超えたことが挙げられます。その主な要因としては、赤枠で囲ってございますけれども、架空請求に関する相談が25.8万件ということで、全体を押し上げております。こういった問題に対して、消費者行政としてしっかりと対応していくことが必要だということを白書の中で指摘しております。

12ページ目以降が消費者庁及び消費者委員会の10年間の取組について記載したものでございます。

12ページ目が、両組織の設立時の経緯や理念について整理したものでございます。こういった設立時の理念、原則を踏まえまして、消費者政策、消費者行政の更なる進化を図っていくことが必要だということを白書全体として指摘しているということでございます。

13ページ目が、「消費者庁のこれまでの取組」ということでお示ししておりまして、図の左側に(1)から(6)ということで消費者行政の一元化、地方消費者行政の充実等々、掲げてございますけれども、設立時にこういったことを新組織が果たすべきだというような期待が表明されたわけでございます。こういった期待に対して、この10年間でどのような取組で成果を挙げられたのか、どういったものが課題として残っているのかということを、白書の中で取りまとめを行ったということでございます。

以下、この6つの柱に沿って、この10年間の取組について記載しております。委員の皆様には既にお詳しいことが多いと思いますので、かいつまんで流すような形で御紹介したいと思います。

14ページ目が、行政の一元化ということでございまして、消費者庁の予算額の推移、定員の推移などについてお示ししております。財政状況が厳しい中でございますが、必要な予算、定員を確保してきたということでございます。

15ページ目が、関係法令の所管ということでございまして、この間、社会経済情勢の変化に応じて、必要な法律の制定や改正を行い、そういった法律に従って法執行をしっかり行ってきたということでございます。さらに、こういった所管法令、制度の実効性の向上や法執行力の更なる強化を図っていくことが課題であるということを指摘しております。

16ページ目が、徳島県に設置されました消費者行政新未来創造オフィスについてでございます。設置から間もなく2年が経過ということでございますけれども、様々な成果を出してきているということでございますので、しっかりと検証した上で、今後、全国展開を図っていくということでございます。

17ページ目が、地方消費者行政の充実という課題でございます。地方に出先機関を持たない消費者庁にとって、地方消費者行政の充実は非常に重要な課題であり、消費者庁の発足以降、非常に力を入れて取り組んできたということでございます。その成果として、左側でお示ししておりますように、相談体制の空白の解消、適格消費者団体の空白地域の解消等々、一定の成果を挙げてきたということでございます。

他方、課題といたしましては右側のグラフにございますように、赤い折れ線の地方交付税措置の額に対して、地方の自主財源の割合が灰色のチャートで示しておりますように48%という状況でございますので、こういった地方の一般財源に裏付けられた地方消費者行政の予算の確保が課題になっているということでございます。

18ページ目が相談体制の整備の件でございますが、空白地域は解消されたわけでございますが、更に消費者のアクセスを改善していく必要があるということでございまして、消費者ホットラインの「188(いやや!)」の認知度、これは番号を知っているかどうかということでございますけれども、だんだん数字が上がってきているのですけれども、まだまだ全体としては9.2%という状況でございますので、更なる認知度の向上、その利用促進を図っていく必要があるということでございます。

19ページ目が、府省庁横断的な政策の推進ということで、ここでは事故情報の集約・分析・発信について記載してございます。

消費者庁に事故情報を一元的に集約しまして、その情報を事故情報データバンクに登録してございますけれども、現在までに24万件近くの情報を収集しておりまして、注意喚起などに活かしているということでございますが、更にその情報を有効活用して発信力を強化していくことが課題であるといったことを指摘しております。

20ページ目が、事故情報の分析・発信との関連で、消費者安全調査委員会の活動について記載しております。これまでに16件の調査等を行い成果を出していただいているということでございます。

21ページ目が、調整機能の発揮ということでございまして、消費者基本計画や、各府省庁と連携して行った取組といったことを通じて、政府全体として消費者政策の取組を進めているということでございます。現在、第4期の消費者基本計画の策定に向けた検討が進んでおりますけれども、こういった消費者行政における、いわゆる司令塔機能の更なる強化が必要であるといったことを指摘してございます。

22ページ目が、制度の一元化という観点から、代表的な事例として食品表示制度の一元化を御紹介させていただいておりますけれども、こういった形で各府省にまたがる制度を一元化することによりまして、消費者にとっても、更には事業者にとっても分かりやすい制度にしていく必要があるということでございます。

23ページ目が、消費者市民社会の実現といったことの関連で、消費者教育について御紹介しておりますけれども、2022年の成年年齢の引下げを目前に控えておりますので、特に若者への消費者教育の強化に取り組んでいるということでございます。

24ページ目が、食品ロスの削減ということで、今国会におきまして食品ロスの削減の推進に関する法律が成立いたしましたけれども、それに基づき実効性のある取組を進めていくといったことを御紹介しております。

25ページ目が、消費者等に対する周知・啓発、情報提供ということでございますけれども、ウェブサイトでありますとか、SNSなどの様々な情報発信ツールを活用して、消費者への情報提供を行ってきておりますが、利用者数やフォロワー数などにつきましては、今後まだ更に拡大する余地があると思っておりまして、更に努力をしていくことが必要だといったことを指摘してございます。

26ページ目が、消費者の意見を政策に反映させる仕組みということで、消費者団体との連携の取組などについて御紹介しております。更に今後とも、消費者団体等への支援、連携強化といったことに取り組んでいくことが必要だということを指摘しております。

27ページ目が、産業活動も活性化する必要があるということでございまして、ここでは消費者志向経営の取組などにつきまして御紹介しておりますけれども、消費者に加えまして、事業者との連携強化を図ることによって、そういった消費者政策を効果的に推進していく必要があるのだということを御紹介しております。

28ページ目につきましては、消費者委員会の取組についても御紹介させていただいておりまして、これまでに建議20件、提言16件等々、非常に積極的に御審議いただきまして成果を挙げていただいているということでございまして、こういった御審議の成果につきまして消費者政策に反映して、消費者からの意見を政策に反映させる仕組みとして、非常に大きな役割を果たしていただいているということを書いてございます。

以上が、この10年間の取組につきましての概観でございまして、29ページ目以降に、10年間の取組をどのように評価するのかということについて御紹介をしてございます。消費者庁で「消費者意識基本調査」を行っておりますけれども、そちらの2012年の調査結果と直近の2018年の調査結果を比較しまして、その間、消費者政策の主要な目標に関する消費者の評価にどのような変化があったのかということを御紹介しております。

全体として2018年の調査結果が肯定的な評価が増加傾向にあるということでございます。特に、一番右側にございます「地方公共団体の消費生活センター、消費生活相談窓口は信頼できる」という御答えの増加幅が一番大きくなっているということでございまして、この10年間の取組が一定の形で評価いただけているのではないかということでございます。

他方、その左側の「行政から消費者への情報提供や啓発が十分になされている」といった設問につきましては、まだまだ低い評価にとどまってございますので、こういったところを踏まえまして、更にしっかり取組を進めていく必要があるのだということを指摘してございます。

30ページ目は、消費者庁の取組についての認知度と、認知していただいている方についてその評価を聞いたものでございます。青棒が2012年の調査で、赤棒が2018年の調査でございます。全体として、取組の認知度は向上しているということでございます。ただ、全体としてまだまだその水準自体は低いということでございますし、さらに政策ごとにばらつきがあるということでございますので、これを更に引き上げるべく、一層の努力が必要なのではないかということを指摘してございます。

31ページ目が、今後の消費者政策の在り方の展望ということでございまして、消費者政策においてどのようなことが新たな課題になってくるのかということでございます。

こちらにつきましては、消費者へのアンケートなども参考にしながら、高齢化、情報化、国際化といった変化への対応が今後更に重要になるということで、白書の中におきましては、マル1新技術を活用した新たなビジネスモデル、いわゆるデジタルプラットフォーマーのような問題でございますが、そういったものにしっかり対応していく必要があるのではないかでありますとか、マル2消費者問題の国際化や、マル3トラブルに巻き込まれやすい消費者の増加などにしっかり対応していく必要があるのだということを記載してございます。

さらに32ページ目は、現在、国際的にも国内におきましても、持続可能な開発目標、いわゆるSDGsの実現が大きな政策課題になっているわけでございますが、そのSDGsの実現に向けて、消費者政策として貢献できることが大きいのではないかということでございまして、ここでは「エシカル消費」と「消費者志向経営」について御紹介しておりますけれども、こういった取組を効果的に行うことによって、SDGsの実現にしっかり貢献していく必要があるとしています。

ただし、いずれにつきましても、消費者の関心や認知度がまだまだ低い状況にありますので、今後にそれを更に引き上げるべく、更なる取組を進めていくということでございます。

33ページ目が、今後の消費者政策の在り方ということでございますが、今後の方向性として、マル1消費者の利便性向上と消費者保護の間で適切なバランスを確保すること、マル2消費者被害に遭いやすい消費者の保護により積極的に対応すること、マル3消費者への自立支援や啓発強化、マル4消費者、事業者、行政の協働を促進することという、4つの大きな方向性をお示ししております。

こういった方向で消費者政策を進めていくために、規制的な手法でありますとか、支援的な手法、さらには、新しい手法といたしまして協働促進的な手法といったものを適切に組み合わせることによって、その政策効果を挙げていく。これによりまして、消費者に身近で頼りにされる消費者行政を目指していくことが必要だということで、白書の結論としているということでございます。

最後の34ページ目は、【消費者基本法に基づく国会報告】でございます。政府全体としての消費者政策の実施状況につきまして、詳細に御紹介しております。

私からの御説明は以上でございます。

○高委員長 ありがとうございました。

ただいまの白書の内容の説明に関しまして、質問、御意見、あるいは感想がございましたらどうぞ御発言ください。

大森委員、どうぞ。

○大森委員 ありがとうございました。

消費者行政を進めていく上で、いろいろな消費者団体との連携とか、消費者団体同士の協力は欠かせないかと思うのです。そこでちょっと気になるのが26ページの「地方消費者フォーラム」が、2017年から2018年にかけて開催のやり方をがらっと変えました。今まではいろいろなブロックごとに8カ所で開催されていたものが4カ所になりました。これまで何回かブロックで開催するうちに、その地域の消費者団体間で自主的にテーマを挙げたり、どういう開催にするとか、実行委員会形式で連携しながら持ち回りでいろいろな地域で開催してきたところですが、今回、半分になりまして、合計の人数ですけれども、これは半分ではないのですよね。半分より大きく減っているということで、これは消費者団体の連携とか、消費者団体を育てていくという上で、とても気になる形になっているなと思いました。

さらに、30ページの「消費者庁の取組で知っていること」という中に、リスクコミュニケーションというのが非常に低い割合であります。これも形骸化しているのかなという気がします。

「エシカル消費」は消費者庁と都道府県、行政との共同の開催で、全国の何カ所かで開催されているようなのですけれども、私の印象からすると、消費者団体の自主的な活動が減って、トップダウン方式のものが増えている気がして、この辺りがとても心配です。活発な消費者団体を育てることが消費者行政の推進につながるので、この辺りはもう少し消費者団体と協力しながら、元気な内容に変えていけばどうかなというのが私の意見です。

○高委員長 ありがとうございました。

データに基づいてそういう解釈をしたのですが、実態はそのとおりなのでしょうか。

○消費者庁太田消費者調査課長 私は直接の担当課ではないので、あくまでも伝え聞いているところで申し上げますと、フォーラムの件数が減っている件につきましては、これまで10年ほど、いろいろな取組を進めていく中で、ある程度一巡をし、大森委員から御指摘がありましたように、地方の消費者団体の間での自主的な交流がそれなりに進むようになったでありますとか、あるいは自治体の主導でそういった取組が自律的に進められているといった状況にございますので、そういったことを踏まえまして若干の重点化を図ったということです。

さらに、この間、消費者庁としての取組も増えておりまして、例えば「エシカル消費」に関連しまして「エシカル・ラボ」といった別の形で、地方でそういった会合を開催しているということもございますので、重点化を図りつつ、より多様な展開を図っているということの中で、こういう形で少し数を絞ったと聞いております。

リスクコミュニケーションの認知度につきましての御指摘は、非常にごもっともなものでございまして、リスクコミュニケーションはいろいろと各地で開催しておりまして、開催の件数自体は年間かなりの件数をこなしているということでございますけれども、食品の安全性に関する意識といったものが、当時の震災の直後よりはやや薄れてきている中で、そういった取組に関する情報が消費者に十分伝わりにくくなっている面もあるのではないかと思っております。開催回数自体は、2018年度でも年間で171回行っておりますので、開催自体はむしろ増やしているのですけれども、その辺りをいかに効果的にお伝えするかというところを、更に工夫していく必要があるのではないかと考えております。

以上でございます。

○高委員長 どうぞ。

○大森委員 私が申し上げたいのは、トップダウン方式ではなくてもう少し消費者団体を動かすような形で巻き込んでいけばどうかというのが一番の肝なので、その辺りをまた考慮していただけたらと思います。

○消費者庁太田消費者調査課長 はい。御指摘を踏まえて取組を進めてまいります。

○高委員長 ありがとうございました。

他にございますでしょうか。

増田委員、どうぞ。

○増田委員 白書そのものについてなのですけれども、新しい特集や、消費者庁10年についても書いていただき、とても良い白書だと思います。この白書という形になったこと自体が国民に対しての情報提供のあり方として分かりやすくなったと思っておりますし、私は様々なところで活用させていだいており、大変この白書が好きです。役に立っていることをまずお伝えしたいと思います。

また、いろいろと工夫されていて、相談件数の表も、今回、各年度ごとに特徴を記載されました。どういうことがあってこういう相談件数になったということが一目で分かります。そういう工夫を隅々のところでされていると思います。そういう意味では、白書そのものについてはとても評価したいと思います。

良い白書なので気が付いたのですけれども、架空請求がここ10年に比べてすごく多くなっている。架空請求対策パッケージを作って、それが去年の初めに始まりましたが、結果的には増えているという状況です。パッケージを公表したということは全ての国民に対してのアピールになるので、すごく良いことだと思うのですが、時期的に遅かったのではないかと思います。効果が出てくるのはこれからかなとも思いますし、また、消費者教育と一体となるものなので、今後に期待したいところではありますけれども、効果について何かの情報がありましたら教えていただけますか。

○高委員長 お願いできますか。

○消費者庁太田消費者調査課長 時期的に遅かったのではないかというところにつきましては、御指摘を踏まえて更に迅速に対応できるように、取組をしっかり進めていきたいと思っております。

架空請求対策パッケージを策定したにも関わらず相談が増えているというところにつきましては、両面から言えるのではないかと思います。こういった形で注意喚起や情報提供を行っている中で、架空請求が自分のところにも来たのでその情報を共有するということでお電話をいただいているということもあると聞いております。

他方、架空請求を行うようなグループが、こういった葉書でやっていたのが今度は封書で送ったりと、手をかえ品をかえ、いろいろな手段を講じてやってくることがございますので、それによって増えているという両面があるのだと思っております。消費者行政としましては、そういった新たな手口に対して、効果的に迅速に情報提供と注意喚起を行っていくことによって、実際に被害に遭われる方が少しでも少なくなるように、しっかり対応していくことが必要であると思っております。

以上でございます。

○高委員長 ありがとうございました。

他にございますでしょうか。

蟹瀬委員、どうぞ。

○蟹瀬委員 ありがとうございました。

とても分かりやすい白書で、これを今後使って是非いろいろと教育をしていっていただきたいと思っています。本体も、テレビを見ながらでも見ようかなぐらいのまとめ方がとても分かりやすくされていて、昔の白書は字が小さくて読めなくて、失礼ですけれども「出来上がりました」という感じだったのですけれども、今回は使えるなという感じで、活用ができるようにまとまっているなというのが私の感想です。

今、全体をここで説明していただいて、10年前の消費者問題と今は非常に違っているということが、とてもよく分かると思います。例えばインターネットが新市場を創っていたり、デジタルプラットフォームの世界で10年前と全く市場ができていて、大きな変化だけではなくて非常に複雑化しているということを消費者庁がしっかり伝えていっていただきたい。特に3カ所あります。

1カ所は、関係行政機関なのです。今の世の中では、1つの省庁では問題を解決できない状況になってきているということをしっかりと把握していただくために、21ページに関係行政機関の連携というふうにきっちりとうたってございます。いつも、うたっていらっしゃったと思うのですけれども、いつも以上に、ここが一緒になって大きなタッグを組まないと問題が解決しない、あるいは問題を未然に防げないという形になるかと思います。まず関係省庁の方々に、太田課長から是非強く皆様に伝えていただきたい。問題が起こったら一緒に解決しなければいけないそういう時代になったということです。

それからもう一つ、もちろん消費者団体があります。消費者団体の方々にも、このスピード感でもって問題が起きているということを、地方の隅々の方まで分かるように伝えていただきたい。

3番目が私が一番関係しているところですが、32ページの「消費者志向経営への関心」の中で、「関心がある」というのが41.5%しかありません。ここが解決されない限り未然に問題を防ぐことができないのです。ここが大変低いです。低い理由は、多分、消費者問題が非常に複雑で分かりにくいということもあるかと思いますが、こういう白書ができてとても分かりやすくなっておりますので、いろいろな企業の方々に見ていただいて、消費者志向経営とは何かということをしっかり考えていただいて、タッグを組んで一緒に消費者を守るための未然の方法と、起こったときの解決方法を一緒に考えるというスタンスを、今後の5年ぐらいの間で作っていただければ、この複雑化するスピードにある程度は対応できるのではないかと考えていますので、是非この辺りをお願いしたいと思います。

以上です。

○高委員長 担当ではないかもしれませんが、お願いします。

○消費者庁太田消費者調査課長 3ついただいておりますけれども、まず、関係行政機関との連携につきましては御指摘のとおりでございまして、これまでもいろいろ府省庁連携などで機動的にやってきているところでございますけれども、更に今後とも取組を強化する必要があると考えております。

さらに、消費者委員会からの建議でありますとか、提言というのも、各府省庁の連携を促すのに非常に有益だと思っておりまして、そういった御意見などを踏まえながら、消費者政策を関係府省庁と連携して進めていきたいと考えております。

消費者団体との連携についても同様でございまして、こういった消費者問題の解決に当たりまして、消費者団体からのお力添えというのは非常に重要でございますので、こういった白書の情報などもしっかり提供させていただいて、しっかりと連携を進めていきたいと思っております。

消費者志向経営は、残念ながら消費者の関心がまだまだ十分ではないというところは非常に耳の痛いところでございまして、しっかり認知度を高めるべく取組を進めていきたいということでございまして、現在、消費者志向経営の自主宣言ということで参加していただいている事業者数が111社でございますが、更に参加企業数を増やしていくことによって、全体として消費者への認知度を高めていきたいと考えております。

以上でございます。

○高委員長 どうぞ。

○蟹瀬委員 もう一つだけ言い忘れましたが、2番目に消費者団体と申し上げましたけれども、ここに大学とかも入れていただいて、これは大森委員の専門分野なのですけれども、若い人たちが消費者問題とは何なのだ、消費者志向経営とは何なのだということに早く気がついていただいて、SDGsもそうなのですが、声を上げれば気になって一生懸命に勉強してくれるという人たちがいますので、こんなに分かりやすい白書でしたら、若い子たちに気になるところだけを読んでいただいても良いかと思うのです。そういうのを是非学校の中でも読めるような状態というか、先生たちに是非配付していただいて、教育の場で役立てていただければと思います。

○消費者庁太田消費者調査課長 ありがとうございます。そのようにいたします。

○高委員長 他にございますでしょうか。

受田委員、どうぞ。

○受田委員 白書の印象として、極めて明快に、また特徴的な取りまとめも含めて御紹介をいただいておりますので、今度はこれをどう活用するかというところがポイントになるのは、他の委員もおっしゃっておられるとおりで、私もそう思います。

その中で、この白書はウェブでも閲覧できるという仕組みになっていますよね。

○消費者庁太田消費者調査課長 はい。

○受田委員 ウェブでの閲覧ができるということは、逆に言うと、それをどれぐらい読まれているか、どこを見ているか、デジタル解析でアイトラッキングを含めてそれを解析することが可能かと思うのですけれども、それに関してはどういうふうに調査をし、データとして公表するようにしているのかを教えていただけますか。

○消費者庁太田消費者調査課長 ありがとうございます。

御指摘のとおりで、消費者白書につきましては概要版、全文ともに、消費者庁のウェブサイトに掲載しておりまして、アクセス件数はいろいろな定義の仕方があるのですけれども、ヒット数という観点でいいますと平成30年度は約800万件、ページレビュー数でいうと平成29年度に約300万件、平成30年度には約490万件になっておりまして、比較的近年は非常に増えてきているという傾向にございますので、更に増やしていけるようにしっかりと周知活動をしていきたいと思います。

○受田委員 ありがとうございます。

実際にどのページをどういう形で閲覧しているかというアイトラッキング的な技術を駆使していけば、更に解析を属性ごとやあるいは地域ごとというところで、要はどれだけ読まれどれだけ理解された可能性があるかというところまで、この白書の効果を検証することができるように思うのです。特にどのポイントがターゲットにちゃんと伝わっているかどうか、そこら辺りまでを解析し報告していただくようになると、更に有効になるのではないかなと感じます。

○消費者庁太田消費者調査課長 御指摘ありがとうございます。

そこまでの詳細な分析までは現状のところまだできてございません。ただ、御指摘を踏まえまして、今後にどういったことができるかということはしっかりと検討していきたいと思います。

ありがとうございます。

○高委員長 他にございますでしょうか。よろしいでしょうか。

(委員首肯)

○高委員長 この白書は消費者問題の現状と課題、消費者政策の実施状況といったものについて、体系的に分かりやすく説明することを目的として作成されているものでございますので、私もそうですけれども、委員の関心は非常に高いものがございまして、いろいろ意見を申し上げさせていただきました。

今回は1部と2部に分けまして、1部では、消費者庁及び消費者委員会の創立10周年の特集ということで整理をしていただいておりました。その中で、これまで10年間の行政の進捗、推進といったものに寄与してきたということを整理していただくと同時に、市場のデジタル化とか技術革新といった新しい変化が進み、我々を取り巻く環境が大きく変化してきていることを、非常に分かりやすく整理していただきました。

ここから感じますことは、従来の、例えば、悪質商法を始めとする問題もしっかりと対処していかなければいけないけれども、今までの発想を全く変えながら取り組んでいかなければいけない課題も次々と出てきているという認識を新たにしました。

そんな中で、先ほどありましたけれども、消費者志向経営というところはもっと力を入れていただきたいと感じております。こうした取組みに着手することがマーケットの競争力になる、またそれが実感できるようにすること、これらも、是非いろいろなところで、今回の白書を、我々も使いたいと思うのですけれども、消費者志向経営については認知度が低いようですので、これを何とか高めていくために、使っていただければと思いました。

最後に、同じくその活用に関してですけれども、これはいろいろなところに紹介をしていく媒体、ルート、こういうのを積極的に使って広報していくわけでしょうが、先ほどの蟹瀬委員の指摘を聞きましてなるほどなと感じました。確かに大学にも周知しなければいけないなと思いました。これは私もやらなければいけない話なのかなと反省しております。消費者団体、消費者だけではなくて、他のいろいろな団体、大学、あるいは高校もそうなのかもしれませんけれども、積極的に広報していただければならないと思いました。

それから、受田委員の御指摘を聞いていて、なるほどなと思ったことですが、デジタル化が進む社会にあっては、何となくヒットしたかどうかだけではなくて、そこまでのことはまだ厳しいかもしれませんけれども、デジタルプラットフォーマーたち、そういった方々がやっておられるようなことにも取り組んでいく必要があると感じました。例えば、どういう話題についてカーソルを動かしているかが分かれば、どういう人がどこに関心を持っているのかも分かってきます。まだ時期尚早とは思いますが、そういった技術も、今後、導入を検討することがあっても良いのかなと感じました。

いろいろ申し上げましたけれども、今回の白書につきましては、本当にすばらしく要を得た分かりやすい報告書になっていると感じました。これは委員の総意でございます。執筆、編集、作成に当たられました皆様の御努力、御苦労をねぎらいますとともに、委員会としてもこれを積極的に活用させていただきたいと思います。

以上をもちまして、本議題を終えさせていただきます。

御説明、どうもありがとうございました。

どうぞ御退席ください。

○消費者庁太田消費者調査課長 どうもありがとうございました。

(消費者庁太田消費者調査課長 退室)


≪3.閉会≫

○高委員長 本日の議題は以上となります。

最後に、事務局より今後の予定について御説明をお願いいたします。

○坂田参事官 次回の本会議は日程が決まり次第、委員会ホームページを通じてお知らせいたします。

以上です。

○高委員長 ありがとうございました。

本日はこれにて閉会といたします。ありがとうございました。

(以上)