第299回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2019年6月13日(木)14:20~16:33

場所

消費者委員会会議室

出席者

  • 【委員】
    高委員長、池本委員長代理、受田委員、大森委員、蟹瀬委員、鹿野委員、長田委員、樋口委員、山本委員
    (高委員長の「高」は、正しくは「はしごだか」)
  • 【説明者】
    経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ 正田商取引監督課長
    公共料金等専門調査会古城座長
    消費者庁太田消費者調査課長
  • 【事務局】
    二之宮事務局長、坂田参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 産業構造審議会 商務流通情報分科会 割賦販売小委員会中間整理について
  3. 消費税率の引上げに伴う定形郵便物等の上限料金の改定について
  4. 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループの報告について
  5. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○高委員長 それでは、時間になりましたので、第299回「消費者委員会本会議」を開催いたします。

皆様、お忙しいところを御参集いただきまして、ありがとうございます。

本日は、増田委員が御欠席となります。

最初に、配付資料の確認につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

○坂田参事官 議事次第に配付資料を記載しております。

もし不足がございましたら、事務局までお申し出いただきますようお願いいたします。

以上でございます。


≪2.産業構造審議会 商務流通情報分科会 割賦販売小委員会中間整理について≫

○高委員長 ありがとうございます。

本日の議題は「産業構造審議会 商務流通情報分科会 割賦販売小委員会中間整理について」でございます。

ICTの進展に伴う決済テクノロジーの進化を背景に、決済分野においてフィンテック企業の事業展開が拡大しております。また、IT系・SNS系企業やECモール系企業など、異業種からの決済分野への参入も含め、「業」の垣根を越えて多様な決済主体・サービスが登場しております。特に、従来型のクレジットカードサービスとは異なる少額・低リスクのサービスなど、消費者ニーズにきめ細かく対応したサービスが拡大していくところでございます。

また、未来投資会議における経済政策の方向性に関する中間整理を踏まえ、機能別・横断的な法制へと見直すことを通じ、フィンテック企業等の新規事業者の参入を促進していくことが求められております。

一方で、成年年齢引下げ等の時代の要請を受けた消費者保護の課題など、割賦販売法制をめぐる内外環境は大きく変化しており、こうした新たな時代における割賦販売法制の在り方について検討されることが求められております。

これらを踏まえ、今般、経済産業省において「産業構造審議会 商務流通情報分科会 割賦販売小委員会」を開催し、5回の審議を経て、テクノロジー社会における我が国の割賦販売法制の在り方についての中間整理が取りまとめられたということでございます。

本日は、この内容について経済産業省からヒアリングを行い、意見交換を行いたく思います。

本日は、お忙しいところ、経済産業省商務・サービスグループ、正田商取引監督課長にお越しいただいているところでございます。御出席、ありがとうございます。

それでは、大変恐縮でございますけれども、20分程度で、まず中間整理の内容の御説明をお願いいたします。

○経済産業省正田商取引監督課長 経済産業省の正田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

ただいま、趣旨につきましては委員長から御説明をいただいているところでございますので、早速、中身に入らせていただきたいと思います。

1ページ目でございます。皆様方御承知のとおり、決済テクノロジーが非常に進化しております。ここにもありますとおり、左側のところでスマホ、クラウドサービス、AI、ビッグデータ、ブロックチェーン、こういったものが進化することによりまして、様々な決済テクノロジーが出てきている。その中で、右下のところですが、決済サービス・主体が非常に多様化しております。先ほどもございましたが、IT系とかSNS系、ECモール系、コンビニ、携帯キャリア、こういったところの企業の方々も決済分野に参入しているという状況になってございます。正に様々な決済サービスが出てきていて、主体も多様化している。

これにつきましてはクレジットカード分野、包括信用購入あっせんということですが、この分野においても少しずつこういったような動きが出てきているという状況でございまして、従来型のクレジットカード会社だけではない主体も視野に入れなければならないということでございます。

2ページ目、今回の小委員会におきまして検討した際の基本的な考え方でございます。ポツが4つぐらい真ん中に並んでおりますけれども、今申し上げましたように、ビッグデータ、AI等、技術のありようは日々進化しております。特に決済取引の分野では、この技術革新が本当に著しいというところです。

その際、2番目のポツですが、こうした技術革新というものを適切に取り込んでいくより柔軟な規制体系でないと、なかなかこのテクノロジーの変化に相応した規制体系が守っていけないというところがございまして、こういったものを今後は考えていかなければいけない。

具体的に、大きく3つほどございまして、1つはリスクベース・アプローチということで、そのサービス、事業、こういったもののリスクに応じまして、それに相応した規制を課していく。これはいわゆる比例原則というところではございますけれども、必要な、そして十分な規制を課していく。もう一つは、性能規定ということで、その手法ややり方について、事細かに行政や政府が決めるのではなくて、結果責任といいますか、一定の結果を確保するという前提の基に、事業者はその規制を守る方法については創意工夫をしながら、より適切で高度な手法を行っていただく。それからもう一つ、今回、御説明の中心ではございませんけれども、RegTech/SupTecということで、これも監督、被規制者側での規制対応に技術を取り込んでいくということでございます。

こうしたものを踏まえまして、最後のポツにありますけれども、テクノロジー社会を前提とした新たな安心・安全ということで、こういったテクノロジーを適正に用いることによって、消費者保護をより精緻化するというアプローチができるのではないか。

一番下は、未来投資会議からの要請ということで、先ほどあったところでございます。

3ページ目、ではどういうサービスが出てきているかということですが、代表的な一つのものといたしましては、この左下の枠にございますが、新たな少額サービスが出てきております。従来のクレジットカードの取引とは異なって、インターネットなどを通じて少額分野で、その取引履歴などに基づいて与信審査を行い、それによって少額の与信をする。従来的な数十万円のクレジットカードの買い物ではなくて、趣味とか衣類あるいは雑貨、日用品、こういったものを中心に日常的な用途として支出をすることについての後払いサービスを行うというところが出てきてございます。

こういったところにつきましては、3ページ目の右下のところですが、非常に少額の支払いであるということ。もう一つは、テクノロジーを用いて、先ほど申しました取引履歴などを用いて、より高度なリスク管理ができているという少額・低リスクのサービスが出てきております。

こういったものに対しまして、4ページですが、リスクベースのアプローチということで、割賦販売法上の規制につきまして、これについては一律の重い規制が基本的には課されているところでございますけれども、様々ございます。ここにもありますけれども、クレジットカード番号等の適切管理、取引条件の表示義務、いわゆる書面交付のようなもの、それら苦情処理、資本要件、体制整備と、いろいろなものがございますけれども、こちらをリスクに相応した規制としてはどうかということでございます。

そういったことをやるに当たって、右側でございますが、セーフティーネットとして執行強化、事後規制の在り方、新成年対応の充実、こういったものをきっちりやっていってはどうか、こういうことでございます。

これが1番目のリスクベース・アプローチについて議論をした考え方でございます。

与信規制に関する議論を行いました。これについて、5ページから書かせていただいております。

現在は、割賦販売法上、支払可能見込額調査が義務付けられておりまして、左側の真ん中辺りですが、支払可能見込額というものは、御承知のとおり、年収プラス、必要に応じて預貯金、そこからクレジット債務を引いて、また生活維持費を引く。これが支払可能見込額、与信額であるということで、この与信審査というものが法律上義務付けられているところでございます。

これに対して、テクノロジーが進化する中で、6ページ目でございますけれども、非常に様々な与信手法が出てきております。1つは、左側と真ん中のところで、「クレジットカード会社における与信審査の例」と書いておりますけれども、非常に多様な要素を考慮いたしまして、これまでのデータあるいは蓄積に基づいたスコアリングモデルを使って精緻に審査を行っております。

例えばどういう項目かといいますと、左下のところでございますが、年収とかクレジット債務とか、こういったことだけではなくて、様々なデータを解析することによって審査を行う。あるいは右側のところですが、これはレンディングの分野でございますけれども、既に皆様御承知かもしれませんが、AIなどを用いたJ.スコアのやり方、みずほさんとソフトバンクさんなどが行っておりますが、J.スコアのやり方、あるいは、トランザクションレンディングということで、楽天さん、それ以外にも世界的にもそれぞれ米国などのような例が書かれておりますけれども、様々な与信手法がテクノロジーを前提として出てきているということでございます。

7ページ目、正に先ほど申しました少額の決済分野で、さらに技術革新による与信審査が出てきている。左側の枠の中ですが、例えば<例1>、これはECモール系のところでございますけれども、支払能力、あるいは約束をどういうふうにこの人は履行するか、あるいはこの人はどういった趣旨嗜好を持っているか、そういったものをビッグデータ、あるいはAI解析によりまして、この人であれば何千円までなら与信ができる、数万円の範囲ですけれども、何万円になったら与信ができる、こういったことを行動分析によって解析いたしまして与信の能力を判断できるということになってございます。

同じように<例2>と書いておりますけれども、これは通信キャリアのキャリア決済の例でございますが、契約年数や料金の支払状況、支払うタイミングまで含めて、そういったことを解析することによって同じように与信審査ができる。

あるいは、<例3>のところですけれども、商品の特性あるいは利用実績、こういったものを用いまして与信審査ができる。

要すれば、7ページの右側にございますとおり、今までは年収とか家族構成、居住環境、クレジット債務といった、静的な、一定時点における情報を基に支払可能見込額調査を行っていたわけですが、技術が進展し、活用できるデータが飛躍的に増大する中で、こうした動的なデータも用いて与信審査ができるようになった。

こういう中でどのように予算審査をしていくかということですが、8ページ目の右下の枠で基本的な考え方を示させていただいておりますけれども、こうした技術やデータを活用して支払可能な能力を判断できる場合には、これまでのような支払可能見込額調査という画一的な規制によらず、これを支払可能見込額調査というこれまでの調査方法に変えることができるとすべきではないかということでございます。

その際、いろいろ論点がございまして、9ページからですが、割賦販売小委員会においては委員の先生方から、その場合にもきちんとチェックができる体制が整っていなければいけないのではないかということでありました。9ページのポツが3つありますが、一番上のところ、まず行政が事前にきちんとチェックをする。それから、事後的にも、行政等の第三者が定期的なレポート等によりすることはどうか。特に先ほど申し上げましたとおり、性能規定という考え方を基本といたしますので、政府が事細かにこの方法でやりなさいということではなくて、むしろ真ん中のポツのマル2とありますが、延滞率あるいは貸倒率などを一定の水準にする、一定の範囲にするといった目標を持つことによって、それを達成する手段については技術革新をしながら、より精緻な方法を求めていくということで、この与信テクノロジーについても進化をしていくことを促すことが考えられるのではないかということでございます。

特に議論がありましたのは10ページでございまして、その際、指定信用情報機関の信用情報の使用・登録ということが突然出てくるのですが、先ほど申し上げましたとおり、支払可能見込額調査の場合には「年収+預貯金-クレジット債務-生活維持費」、これが与信をして良い額だということでございます。その際、クレジット債務につきましては、自社債務のみならず他社債務というものがございますので、その際には指定信用情報機関、今は株式会社CICというところですが、こちらに登録されている信用情報を使用しなければならないということが法律上書かれております。

他方で、この左側にございますとおり、先ほど申しましたとおり、ビッグデータ、あるいはAI分析、過去データ、こういうものによって支払可能な能力を判断できてしまうわけですので、その際には、既に判断できるという状況にあるにも関わらず、更にそこに指定信用情報機関の信用情報を使用する必要はないのではないかということで、この使用の義務を一律には課さないということではどうか。

もう一つは、指定信用情報機関の信用情報の精度を構成するためには、右側にありますとおり、信用情報をそのクレジットカード会社、あるいはこういう小規模の方々も含めてですけれども、包括購入あっせん業者が信用情報を指定信用情報機関に登録しなければならないわけでございますけれども、ここにつきましては、いろいろ議論をしました結果、一部の例外的なものを除きまして、基本的にはこの信用制度というのは重要な制度でございますので、引き続き登録の義務は課すということで考えてございます。

その際、一部を除くといったときに、右上ですが、緑のところで書いてございますが、先ほど見ていただきました少額・低リスクサービスで、かつ指定信用情報機関の信用情報を使用せずとも与信ができてしまう場合、これは今のSNSあるいはECモール系などでもありますけれども、こういったところの特段指定信用情報機関の信用情報を使用せずとも、ビッグデータ、AIによって与信の審査ができてしまう。こういったところにつきましては一部義務を課さない。これは幾つか理由がその下に書いてございますけれども、一言で言ってしまうと、こういった少額・低リスク、数千円とか数万円の範囲でございますけれども、これにつきまして使用はしないのだけれども、他人が使うためにあなたはコストを掛けて他人のために登録をしなさいという義務をどこまで掛けるかということがございます。

この点を考えますと、法律上の義務として課すのはどうかというところがございますので、この辺りにつきましては一定の考慮が必要であり、他方で、先ほど申し上げましたとおり、原則としてはこの登録の義務を課すことによりまして、信用制度というのは大宗においてきちんと整備していくということが必要ではないかということでございます。

11ページは、今まで申し上げましたことを整理させていただいております。ビッグデータ、AI等によって与信審査ができる場合には、支払可能見込額調査に換えることができる。その際には、事前・事後チェックとしてプレッジ・アンド・レビューということで、事業者がプレッジをし、レビューをする。それから、指定信用情報機関の信用情報の使用と登録の義務については、今申し上げたようなところでございます。

一定の共通認識といいますか、一定の理解というところは委員の方々の中であろうかと思うのですけれども、12ページにありますとおり他方の意見もございました。支払可能見込額調査全般に関する意見といたしましては、技術やデータを用いた新たな与信審査手法が、支払可能見込額調査に代替し得る性能を確保できるかをよく見る必要がある。あるいは、指定信用情報機関の信用情報の使用・登録義務に関しましても、仮に技術・データによりまして支払可能な額は判断できる、能力が判断できるという場合であっても、さらにそこに使用と登録は必要ではないかと、こういった御議論があったところでございます。

それから、13ページに参りまして、ちょっと向きの違う議論ではありますけれども、3つ目の問題といたしまして、「時代の要請を受けた消費者保護の課題」ということで、2つありますが、その中のうち1つ目は新成年への対応ということで、13ページはファクトでございます。14ページはクレジットカード会社による取組ということで、以前にもこちらの委員会で御説明させていただいたような内容がございまして、14ページの一番下でございますけれども、先ほどのリスクベース・アプローチへのセーフティーネットという観点も含めまして、新成年への対応を更に充実させていく必要があるのではないか。こういう議論をさせていただきました。

15ページでございますが、「時代の要請を受けた消費者保護の課題」の2番目の問題といたしまして、書面交付の問題がございます。これにつきましては、簡単に言いますと、書面交付を電子化していくということについてどう考えるか。上の青枠のところにポツが3つございますが、先般、平成28年に改正され、去年の6月に施行されました改正割賦販売法におきましては、この改正の際に、クレジットカード取引における加盟店が行う書面交付の義務に関しまして、以前は書面で行わなければならないというのが基本だったわけでございますが、これを情報提供するということにいたしまして、そこのところは電子化することも可能であると。ただし、利用者が書面を要求した場合にはこれに応じなければならないというような体系に変更いたしました。

いろいろこのページで書いておりますけれども、一言で申し上げますと、包括信用購入あっせん業者に関しても、書面交付の義務、取引条件の表示、これは利用者と契約する際に、あなたの限度額は何万円ですよというもの。それから、書面交付としては、毎月の請求額とか、こういったものがあるわけですけれども、この包括購入あっせん業者、クレジットカード会社が行う取引条件の表示や書面交付に関しても、さきの割賦販売法改正によって加盟店に対して行いました書面交付の電子化という範囲で、これを認めることとしてはどうか。

さらにもう一点、「考え方」という右側の上のところですけれども、スマートフォンやパソコン完結型のサービスについては、完全電子化を考えてはどうかということでございます。

これにつきまして、書面交付の電子化の議論をいたしますと、デジタル・ディバイドという問題が出てまいりますが、さすがにスマホ・パソコン完結でサービスの提供を受けている方がデジタル・ディバイドということはなかなか考え難い。逆に、紙をもらうよりも電子的にもらったほうが良いという利用者の利便性もございますので、こういったものを考えてはどうかということでございます。

その次のページからは、「審議会でのその他の議論」ということで、こちらは簡単に申し上げますけれども、大きく3つほどございます。1点目は、決済関連の法制について横断化すべきであるという議論が以前からなされておりまして、こういったものは以前の成長戦略などでも述べられているところでございますけれども、これにつきましては18ページに、これはいろいろ議論や資料があったわけでございますけれども、結論だけ申し上げますと、割賦販売法・資金決済法・銀行法等、こういった関係各法におきまして法制的な横断論というのは今後具体的な検討を進めていってはどうか。

他方で、先ほどからございます未来投資会議の中間整理という中では、フィンテック企業等の事業環境の整備ということがございますので、先ほど申し上げました少額・低リスクのサービス、これが特にフィンテックが担う分野でありますけれども、ここについての規制の在り方について、リスクベースのアプローチの考え方とか、先ほどの性能規定による与信審査手法の導入とか、こういったことを考えていってはどうかということでございます。

他方、金融スタディーグループでも、これは我々ではありませんが、金融庁の金融スタディーグループにおいても、こういった少額分野での規制の、彼らの場合はリスクベースというよりは「柔構造化」というワードを使っておりますけれども、同じ考え方でございまして、リスクに応じた規制を考えていっているということでございます。

2番目といたしまして、「決済情報の利活用」ということで19ページでございます。これも金融庁の銀行法の分野の議論が進んでおりますけれども、先般の銀行法改正におきまして、銀行等にAPIを開放することを努力義務化したわけでございますけれども、これによって、フィンテックを中心としたいろいろなサービスが利用者利便という観点から生まれてくる。そういったものを促進するという観点も踏まえまして、これを進めていくということでございます。我々の場合は、別にこれを見習って法改正をするということではないのですけれども、そこはまだまだいろいろ議論があろうかと思いますが、こういったオープンAPIを進めていく。

21ページ目、先ほど少し申し上げましたRegTech/SupTechということで、監督検査、それから被規制者側での規制対応にどのように技術を取り込んでいくかということで、22ページでございますが、経済産業省におきまして、平成30年度に検討会を開催いたしましてこのRegTech/SupTechを導入していくためのロードマップの作成というものを行ったところでございます。

以上のようなところでございます。ありがとうございます。

○高委員長 どうも御説明ありがとうございました。

それでは、ただいまの中間整理の内容に関しまして、御意見、御質問がございましたらどうぞ御発言ください。

大森委員。

○大森委員 成年年齢引下げの対応ということで議論があったという御報告をいただきました。資料1-2の37ページに【図34】というのがありまして、「成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議」工程表というのが記載されています。それの施策の内容というところで、「若年者に対する支払可能見込額の調査を一層適切に行う取組を推進」と書いてあります。どのように一層適切になったのか、今の御報告だけでは分からなかったので、具体的に教えていただければと思います。

○経済産業省正田商取引監督課長 非常に盛りだくさんで、言い訳がましくて恐縮ですが、3カ月ちょっとぐらい議論をしたものですから、完全に細かなところまで議論をし切れているわけではないのですけれども、ここで施策内容に書いてあります支払可能見込額調査、この与信審査をしっかり適切にできていくようにどのように取り組んでいくかということが、ここでのテーマとして、一つの方法として具体的にどのようにやっていくかということは課題ではあったのですけれども、具体的にどう充実させていくのかということについて、正に議論をこれからもっともっと詰めていかなければいけないところでございまして、来週の月曜日にも関係省庁連絡会議がございまして、こちらでこの工程表を改定していくということになってございます。

その際には、特に右側の2018年、19年、20年、21年と、施策内容の具体的なところが書いてあるわけですけれども、ここのところにもう少し今後どうやっていくかというところを改定して述べていこうと思ってございます。

ちょっと先出しになってしまいますけれども、具体的にはクレジットカード会社における取組というものの実態調査をきちんとやっていく。その中でどういった与信審査をやっているかということを明らかにした上で、その取組をまとめて公表し、先進的な事例について事業者にフィードバックする。それによって、それぞれの事業者における取組というものをより一層前に進めていただく。月曜日の先出しになってしまいますけれども、そういったことを考えておりまして、もちろん小委員会で議論した部分もございますけれども、他方、関係省庁としての経済産業省といたしましても、今、申し上げたような取組の充実をまずは図っていきたい、こういうことを考えてございます。

○高委員長 どうぞ、大森委員。

○大森委員 今のところでは余り具体的な方策というのが分からなかったのですけれども、支払可能見込額調査というのは一応機能して、それ以前の多重債務というのはかなり減ったという実績があるので、それをまだこれからどういうふうになるか分からないようなITを中心としたものに変えるということに対して、とても不安があります。

私とすれば、今まであった支払可能見込額調査に加えて、若年層というのは収入も少ないし、低額で借りるということが多いのですから、その低額の融資というところをもう少し徹底的に見ていただくことと、あと、奨学金なんかを借りている若者も多いので、その分は支払見込額とかにも含まれていないので、それも含めて若年者にどう対応するかということが進まないうちにルールを変えるということに対してとても不安なのですけれども、その辺りはいかがでしょうか。

○経済産業省正田商取引監督課長 全体といたしまして1点だけ、事実関係としては、あくまでもクレジットとしてですので、学生の奨学金とおっしゃられましたけれども、奨学金の貸付については割賦販売法の中ではあれですけれども、御質問の趣旨といたしましては、先ほども御説明申し上げましたが、非常に膨大なデータを用いて、そこのところのチェックはきちんとやらなければならないということは、小委員会の委員の先生方から非常に御指摘をいただいたところで、そこはしっかりやっていかなければならないのですが、非常に膨大なデータを用いることによって、与信の仕方を精緻化できるというところはあります。方法のところは適正にしなければならないのですけれども、そこのいろいろなデータを用いて与信を精緻化することによって、消費者保護が精緻にできるというところがございます。

これまでのように、それができない方は今の支払可能見込額調査でやっていただかなければならないのですが、利用申込者の自己申告による年収、私は2000万円ですとか1000万円です、500万円といったもの、それから預貯金の額、それからクレジット債務を引いて、生活維持費についても省令で決まっている何百万円という額を引く。この式だけではなくて、より精緻に様々なデータを用いることによって、この与信という手法は進化できるのではないか、より消費者保護が進むのではないかということを我々としては考えまして、こういったような議論をさせていただいているところでございます。

○高委員長 大森委員、どうぞ。

○大森委員 様々なデータでいろいろなことが把握できるということは確かだと思うのですけれども、それが消費者保護につながっているかというところで、私は以前から疑問に思っています。というのは、私もカードを使いますが、どんどん借りてどんどん返すと自動的に与信額を増やしてくださるのです。そのときに、増やしますかという問い合わせもなく、この人だったらもっと貸してもちゃんと返すだろうというカード会社の判断で、一方的に与信が増やされます。そういうことをみると、消費者保護というよりもカード会社の都合が優先しているような気がして、その大きなデータがあるから消費者保護につながるという考え方は慎重にする必要があるのではないかと思います。

○経済産業省正田商取引監督課長 今の点ですが、もちろん消費者保護というのが割賦販売法上で極めて重要な概念ではありますが、事業者の利害が先行しているのではないかという御指摘に関しましては、事業者は貸倒れが起きますとすぐにPLにはねる問題でして、彼らの事業構造上もそれほど簡単に与信額を上げるという構造には、これは割賦販売法の法目的ではありませんで、実態上の問題としてですけれども、事業者側から見ますと、そこのところは貸せば貸すほどもうかるということではなくて、貸倒れのリスクというのは事業上の実際の収益に直接に影響する問題ですので、そこのところは事業者側でも簡単に彼らの中でも上げているという実態ではないのではないかと思ってございます。

他方で、御指摘のようなところはございますけれども、その場合にも、額を上げていく場合にも、事業者の側ではきちんと与信審査を行って、我々もこの議論をするに当たっては、主なクレジットカード会社、あるいは小規模のフィンテックの方々からも、どういう与信審査をやっているのかをお聞きしておりますけれども、そういった中でも、全ての人の額を上げていくということはありませんし、逆に下がっていく人もおりますし、そういった形で慎重審査をしているという実態は我々は認識している中で、こういった議論をさせていただいているところではございます。

○高委員長 よろしいでしょうか。御懸念はあろうかと思いますが。

○大森委員 はい。

○高委員長 他にございますでしょうか。どうぞ、長田委員。

○長田委員 ビッグデータを利用してAIが判断をしていくというところで、私、別のところでAIの利活用についての議論にも参加していますけれども、AIがなぜそう判断したのかというのを結果的に後からログで解析することは非常に難しいと聞いています。どういうデータをそこに入れていったのかという事実はもちろん分かるけれども、最終的な判断を後から見返すことの難しさというのが指摘されていて、AIとはそういうものです、ディープラーニングをしながらやっていくものだというふうによく言われているのですけれども、新しい与信の仕方について第三者機関でも見ていきますということが書いてあったと思うのですけれども、それは現実的に何か手法があってできるということなのか、教えていただきたいと思います。

○経済産業省正田商取引監督課長 正に今御指摘があったところは、説明させていただいたページの9ページのところの議論だと思うのですけれども、御説明の際にも申し上げましたが、その手法については性能規定の考え方によって手法を考えていただくと。ただ、そこで手法が正しいかどうかということと同時に、延滞率あるいは貸倒率、もちろんこれで良いかという議論はまだありますけれども、今、考え得るものとしてはこの延滞率、貸倒率というところですが、これを一定の水準、範囲に収めるという目標といいますか、決まりごとを作ることによって、それを達成していただくということによって、与信審査が不適正でないということをきちんと確保していくということだろうと。

他方、今、御指摘がありました手法につきましては、今のAI解析水準によって、到底これはAI解析とは言えないという水準のものはまず分かると思います。さすがにこれだけの情報しかインプットしていないものについて、これをAI解析というのかというのは、そこは現在の技術水準の中でも明らかに分かることだと思いますし、そういうものはまず排除されると思います。

では、最新のAIの技術というのが本当に正しいかどうかというのは、これは技術革新の最先端の問題でございますので、そこの部分についてはこの延滞率ということできちんと見ていくということで担保をしながら、その手法についてはどういう変数をその解析に入れるかとか、そこのところについては性能規定の考え方に基づきまして、そこの事業者での創意工夫をする。ただ、結果はきちんと担保していただく。それによりまして、このAI解析というものも多分進化します。10年後には、AI解析による与信審査を進めていくことによってAIエンジンもきちんと進化するでしょうし、それと同時に消費者保護も進化していくのではないかなと考えております。

そういう意味では、今、AI解析について御指摘があった点については、そのような形で最低限のところは守り、最新のところについて、あるいは全体についてですけれども、そこは結果としての延滞率というところをきちんと見ていくことで考えていきたいということでございます。

○高委員長 どうぞ。

○長田委員 10ページの指定信用情報機関の信用情報を使用しないで与信する場合は登録義務を課さないというところなのですけれども、そういう手法を採るところがいっぱい増えた場合、結局、信用機関情報の情報の精度が下がるのと、いろいろなところでたくさん少額で借りて、それが何も登録しないままになっていくということが、とても一般人からすると怖い気がするのですけれども、そこをどういうふうに考えていらっしゃるのか、教えてください。

○経済産業省正田商取引監督課長 ここにつきましては、もちろん理論上といいますか、考え方としては膨大に増えていくというようなイメージがあるかもしれませんが、信用情報における大宗というのは現在のクレジットカード取引、いわゆる従来型の取引における与信情報、信用情報というのが大宗を占めるという状況は変わらないということだと思いますので、そこの大宗のところは、これは御指摘のとおり、信用情報の信頼性という観点からはしっかりやっていかなければならないということではありますけれども、他方、御説明の際にも申し上げましたとおり、自分では使わないという方に、とにかくあなたは他社が使うためにコストを払って登録をしなさいということをどこまで課すのかというのは我々もちょっと悩ましいところではございます。

その際に、そういった観点も含めて、最小限の信用情報の全体の登録情報の信頼性を確保するということを担保しつつ、そういった事業者における状況も考え合わせた上で、何とかバランスが取れるところはこういった考え方が一つあるのではないかということで中間整理をさせていただいたということでございます。

御承知のとおり、私もそうですし、皆様方も一体幾ら払ったのか、幾ら払っていないのか、これは全部、指定信用情報機関に登録はされてございます。ただ、そのときに数千円とか数万円と、正に少額のところについてどこまで登録を細かくしていくかというところは少し考えていかなければいけないなというところでございまして、そこのところについては、中間整理はこういう整理をいたしましたが、引き続き検討しなければならない課題だと認識しております。

○高委員長 ありがとうございました。

どうぞ、池本委員長代理。

○池本委員長代理 私は、割賦販売小委員会の委員でもありますので、余り重複した議論は避けたいと思いますが、認識を共有していただくという意味で確認的な点が1つと、それからこれからの進め方の点と、2点質問させていただきたいと思います。

まず、今、御説明があったところにも関係するのですが、従来の年収とクレジット債務額と生活維持費という画一的なこの方法しか採用してはならないということを、もっと多様な分析の仕方を許容していくという考え方そのものは合理性があるのかなと思うのですが、もう一方で、多重債務防止のためには、各社が独自判断ではなくて、業界全体でこの消費者がどれだけクレジット債務を抱えているのかという客観的な数字を確認した上で、与信審査をするというのが平成20年改正の基本の考え方だったのではないかと思うわけです。

そうした場合に、各社が様々な情報を入れて与信判断をするときに、その消費者の業界全体での債務額も把握した上、それも一つの情報として、正に不可欠の情報として入れた上で、そのほか多様な情報を入れて与信枠を判断するということであれば、非常に合理的なものだと思うのですが、AIを活用して、ビッグデータを活用しているから、他社の情報は見なくても良いという判断に至るというところが、もう一つどう理解すれば良いのか分からない。とりわけ、他社の情報を見なくても、それ以上のより精緻な、しかも多重債務防止も兼ね備えた分析方法であるとなると、どういう情報をどう分析しているかという事前の審査が大変重要になってくると思うのですが、果たしてそれが可能なのかどうか、先ほどの長田委員の質問にあった、その辺りの考え方についてもう少し補足説明をしていただきたい。これが第1点です。

2点目は、今、御説明いただいた資料では、12ページに真ん中から下辺りで、現在の指定信用情報機関の使用・登録に関して、2番目のポツ、3番目のポツ辺りに、例えば登録義務について数千円とか1万円という少額のものをその都度登録していくとなると、非常にコストが掛かってしまう。ある程度まとまった金額以上になったときに登録するとか、あるいは延滞情報も1回遅れたらすぐに載せるではなくて、少しまとめて登録をするというふうにして、コストとの見合いで、今の信用情報機関の運用の見直しという選択肢があるのではないかという考え方。

あるいは、3番目のポツにありますが、これは業界の関係の方から、今の信用情報機関というのは加入の手続に時間を要するし、24時間の照会・登録ができない。例えば、ネットでカード利用を申し込んでも、カードの発行が深夜では照会ができないので使えない、そういう不便だという意見が出たと思います。

だとすると、信用情報機関を使わなくてよくする選択肢へ進む前に、信用情報機関がもっと利用しやすく、費用にも見合った形で、コスト削減も含めて、その指定信用情報機関の運用改善の議論を大至急やった上で、それでも指定信用情報機関を使わなくて良いという選択肢に進まなければいけないのか、あるいは進むだけの別の先ほどの行政的な審査に耐え得るのかという議論に進む必要があるのではないかと思うのです。そこでお伺いしたいのは、ここに書いてあるような指定信用情報機関の運用の在り方の検証、改善のことは、現在、あるいは近い時期に実施される予定があるのでしょうか。その点についてお伺いしたいと思います。

○高委員長 お願いします。

○経済産業省正田商取引監督課長 1点目に御指摘がございましたが、支払可能見込額調査をデータを用いた形での与信審査に置き換えるということを許容していく際に、この指定信用情報機関の信用情報を使用しなくて良いのかといった点だと思います。先生の言葉を借りますと、他社の債務状況を見なくても良いのかという御指摘だと思いますけれども、御承知のとおり、割賦販売法につきましては、支払可能見込額、与信できる額というのを算定しなさい、調査をしなさいという義務はかかっているわけでございますけれども、他社の債務を見ることによって、この人は債務が大きいからそれ以上与信をしてはいけないとか、これこれの債務額があると、それ以上については与信を控えなければならないとか、こういった規制は全くないわけでございます。あくまでも支払可能な額、その方が支払ができる額を算定しなさいという義務がかかっているわけでございます。

その意味では、AIやビッグデータにより解析ができることによりまして、支払可能な額を判断できる場合には、ここについては、今割賦販売法で課されております支払可能な額を調査するということと同等のことを指定信用情報機関の信用情報を使用せずともその義務が果たせるわけでございますので、そこに加えて指定信用情報機関の信用情報を使用しなければならないというふうにする必要があるのかというのが今回の議論でございまして、その点についてはそれ以外の御意見もございましたので、そういったことも含めて全体として今後よく考えていかなければならないと思ってございます。

もう一点、12ページの関係でございますが、登録の仕方です。こういったものを合理的に行っていくことによって、そういった運用を見直すことによって、いきなり登録をしないとか、そういったことではなくて、そこのところは運用見直しでできないかということでありますけれども、この点も正にこの12ページに書かれたような御意見をいただいたところでございますので、最終的には中間整理の中でも、制度見直しを考える場合にも小委員会で出された意見も踏まえる必要があると明記されておりますので、ここのところは検討課題として考えていきたいと思います。

ただ、まとめる場合であっても、何でもシステムを接続してそれを登録するということになりますと、どうしてもコストが掛かりますので、事業者側に規制によって課すコストと、それによって得られる便益、どこまで数千円とか数万円の情報が与信審査をする際に必要になるのかという点、その他、実際にこれをプライバシーも含めてそういった情報を登録することとの関係、そういったものの中で、どれだけのコストを掛けるか。逆に言えば、今、先生から御指摘があったように、コストを削減することで対応できるのかどうか、そういったことはよく考えていかなければならないと思ってございます。

また、指定信用情報機関の検証・改善、12ページの一番下のところでございますけれども、こういったところにつきましては、小委員会でもいろいろ御議論をいただいたところでございますので、こういったものは、この制度としてどのような与信審査の制度であるべきかという制度論と、また同時並行的に恐らくは検討はしていかなければならないところであろうと思ってございます。

以上でございます。

○池本委員長代理 今、御説明があった点の確認なのですが、指定信用情報機関の運用改善に関する課題というのは、割賦販売小委員会の中で検討するという趣旨なのでしょうか。それとも、指定信用情報機関もしくは認定割賦販売協会、事業者団体の側で、外部委員を入れるなどして、そちらで検討を予定されているということなのでしょうか。それともまだ、いずれも現時点では未定ということなのか。現状はどこまで決まっていて、どういう手当てがあるのかということを確認したいのです。

○経済産業省正田商取引監督課長 単刀直入に申し上げますと、具体的にどの場で検討するかということまでは今の時点では決まってございません。ただ、これだけの御指摘をいろいろいただいておりますので、そこの内容については、どういった場でどのタイミングかというところは、これから考えなければならないのですが、そういった議論はいずれかの場で行うことが必要であろうと考えてございます。ただ、その具体的な場、時期については、まだ検討をしているという状況でございます。

○高委員長 よろしいですか。

では、蟹瀬委員。

○蟹瀬委員 ありがとうございました。

先日、読み物をしておりましたら、中国が顔認証で商品が買えるようになってきたという記事が出ておりました。つまり、中国においては個人情報が全て握られている。なので、顔認証で物が買えるようになってきたのです。それだけ時代が動いているということは、私もよく理解しております。

ただ、今の御説明によりますと、AIというものを余りにも信用し過ぎているというか、そこの立場に立って物事をおっしゃっているというふうに理解をしておりますけれども、確かにAIの技術によって与信というのが進んでいくかと思いますが、例えば今言われた少額の人たちの与信は厳しくしなくて良いのだというときに、先ほど長田委員が言いましたけれども、累積というものがあります。少額の累積というのがあって、その累積があちこちでやっていますと、既にそこはスルーをしていくわけですね。そして、私たち消費者委員会で多重債務の方々の例をみますと、高額で物を買う方ではなくて、少額で物を買う方、あるいは少額でお金を借りる方の多重債務が増えているわけですね。

そういう面から見ると、経済界から見ると、この在り方は経費削減ということは言えるかと思いますが、消費者視点から見ると、割と危険かなというか、混乱を招くかなという感じはちょっとしかねないというところが一つあります。

もう一つ申し上げますと、つい昨日でしたか、うちの社員、「社長、PayPayに入ってください。PayPayに今入ったら500円もらえます」と。みんな踊らされていますね。そして、説明してくれました。PayPayだと、デビッドでも、カードでも、プリペイドでも、好きなもので払えますよと。そうすると、ものすごく複雑な支払方法があたかも簡単なように伝えられているのですけれども、私にとってはどこで何に払ったか全く分からなくなるなというような懸念もあって、この与信の仕方というものがどのぐらい明確に正確にやってもらえるのかというのが、これからの不安な要素にもなっているということをお伝えしておきたいと思います。

○経済産業省正田商取引監督課長 2点あったかと思うのですけれども、我々がAIを信じ切っているとか、そういうことではもちろんないわけでございまして、もちろん10年後に今の状態を見たら、あの時代のAIというのはまだまだ進化を遂げられる余地があったなというふうに、技術というのは全てそういうことだと思うので、それは今のAIを全て信じているということではないのですが、ただ、支払可能見込額調査と言われる足し算と引き算の式から、さらに精緻な要素、これは運用の仕方によると思います。これは小委員会の中でも、この適正性が確保されれば、与信の精緻化や消費者保護の精緻化になっていくのではないかという御指摘はいただき、そのように報告書にも書いてございますけれども、そこのところは与信の仕方というのは、別にAI解析をしているから良いということではなくて、それによって適正性が担保されるようにということは十分に考えていかなければならないのではないかと思ってございます。

あと、累積の問題もございましたけれども、例えば少額の分野につきましては、累積がそのままではなくて、例えば個社の名前を出すのはどうかと思いますけれども、ネット上のフリーマーケットのような形で、買い物をして、それは後払いにできますよと、こういったようなサービスなどが例えば考えられるわけですけれども、そういった場合にも、例えば実態においては、そもそも後払いができなくなるだけではなくて、履行しないことによってサービス停止まで行われるというようなこともあります。

そういう意味では、どんどん次々多重になっていくような形態であるかというのは、もう少し我々も実態をよく検証しながら、議論を更に深めなければいけないだろうなと感じてございます。

ただ、今までのように、数十万、何百万、月額給与では払えないという範囲ではなくて、今、与信をされる範囲も、例えばM社さんが後払いサービスを始めましたが、まず1,000円です。これを1,500円にします。2,000円にします。これをやりながら与信の額を少しずつ確定していきます。そういった中で、さすがに、もちろん年齢などもありますけれども、我々は少額と言っているときに大体数万円の範囲までということで認識をしておりますけれども、これは小委員会でも議論しましたけれども、事業者はそれも保守的で、数千円いう単位から始めます。この数千円を事業者さんはAI解析しています。

彼らとしても事業構造として貸倒れをしないかということで、いかにコストを掛けながら分析しているかということですけれども、そういったところからでの与信という範囲になりますので、それによって累積で何十万、何百万などで払えなくなるようというような従来方の多重債務というのは少し考えにくいかなということで、こういったような議論をしております。ただ、御指摘いただいたとおり、もう少しそういったところの実態を検証していく必要があろうかなと思ってございます。

○高委員長 どうぞ。鹿野委員。

○鹿野委員 ありがとうございます。

今回、科学技術の進展に伴って新たな技術を利用して与信審査を柔軟化していこうという、そのこと自体はある程度分かるところがあるのですが、もう既に皆さんがおっしゃったとおり、この平成20年改正の背景には、過剰与信による多重債務問題の増大ということがあり、これを解決するために20年改正で支払可能見込額調査等が盛り込まれたということがございますので、この経緯を踏まえて、その趣旨を没却するようなものにならないようにする必要があります。もちろん先ほどから何度も適切性が前提だという御説明があるので、そういうことは考えていらっしゃらないとは思いますけれども、余りにもコストバランスを強調し過ぎると、消費者の利益がないがしろにされて、結局、また元のような問題が起きないとも限らないので、その点は十分に配慮していただきたいと思います。

もう一つ、具体的にはその適切さをチェックするために、9ページのところで事前・事後の審査をするのだというようなことが書かれているのですが、具体的にここでどこまでの審査ができるのかということにも関わってくるのだろうと思います。この与信手法の適切性ということについて、およそいろいろなデータを前提にして判断をさせるのだということなのですが、その基礎とされる情報が十分で適切なものであるかということについても、どこで担保されるのかということが心配でございます。

既に、このような手法を用いた与信は行われているということを、6ページでしたか、御紹介いただいたのですが、ただ、6ページのところでは、従来の支払可能見込額調査という割賦販売法の現在の調査を行いつつも、更にプラスとして他の要素を踏まえて判断しているのだということで、その限りではより精緻なというか、よりきめ細かな審査がなされているということだったのだろうと思います。けれども、今回、御説明いただいたのは、従来の指定信用情報機関の信用情報の使用をしなくても良いということで、これは池本委員も先ほどおっしゃったように、それに代わってということですから、それをしなくても適切なのだということが担保されていないと困るわけですね。まだ具体的なやり方等については、今後更に検討するということでもございましたが、その点を是非慎重に御検討いただければと思います。

○経済産業省正田商取引監督課長 2点あったかと思います。

1点目は、平成20年改正の多重債務問題の趣旨を没却しないように、適切性の確保は大切だということでございます。コストバランスに余りに重きを置くのは消費者保護の観点からどうかということでございますけれども、この点につきましては、当然のことながら趣旨を没却するということはないようにしなければならないということでありますが、他方で、これだけ技術進展がある中で、どのような与信審査手法が良いかというのは、また別の視点から検討を加えなければいけない。このやり方が技術進展あるいは消費者保護をめぐる環境変化の中で、現在も、あるいは10年後も20年後も普遍のものであるかということを考えますと、そこのところは社会変化に合わせて、適正な方法、あるいはより精緻な方法、そういったものは考えなければならないということでございまして、ここのところを我々も思い悩みながら検証しているということでございます。

コストバランスということでございますが、他方で、規制法でございますので、そこのコストということよりは比例原則という規制法上の原則をきちんと踏まえながら必要にして十分な規制を考えていくということかと思ってございます。

それからもう一点、事前・事後チェックは十分かつ適切かというところについてでございますけれども、ここのところは正に御指摘がございましたけれども、ちょっと重複になってまいますので御説明は簡単にではございますけれども、例えば延滞率などを使ってきちんと結果の責任も負わせていく、その説明責任も負わせていくといったことも考えながら、その手法自体が正しいかどうかという点、最低限のチェックは必要なことでございますけれども、そういったことを事前・事後でしっかりやっていく。その中で、指定信用情報機関の信用情報を使用しなくてもそれが担保できるという事業者につきましては、そういう手法を認めていくという基本的なことを考えながら、ただ、いろいろ留意すべき点は御指摘の観点も踏まえて考えなければならない点はありますので、引き続き検証していきたいと考えてございます。

○高委員長 よろしいでしょうか。

基本的に過剰与信規制の緩和というのは、この方向は、政府の全体的な方針から考え、なかなか変えられないであろうと思っております。ただ、今、委員からいろいろ指摘がありましたけれども、懸念もありまして、私自身も幾つかありますので、まとめさせてもらいます。

1点目は、いずれの委員からも出ましたけれども、全体としての債務総額の把握が困難になっていく。そうすると、平成20年の改正の意図、多重債務の防止の目的が形骸化していく。その懸念は依然として残るということです。

それから、独自審査ということで、それぞれがAI等の技術を使ってやっていくということですけれども、その信頼性をどう確保するのか。そのために、別に既にある信用情報機関の情報を使うことも十分有り得るのではないかということですけれども、最終的には延滞率を見ながら、これを確保するという御説明いただきました。ただ、信頼性を確保するというのは、単純に言うと、AIの審査というのは情報量に比例して決まっていくわけです。そうすると、膨大な情報を集めることに伴う別の問題も出てくると思います。例えば、SNS上の発言とか、どういう人と付き合っているのか、人脈とか、先ほどの例の中にはどういう職業についているのかとか、そういう様々な個人データからスコアリングをやって与信審査をする。これには、プライバシーの問題をどう考えるのかという別の問題が出てくることになります。これをどうするのかも、御検討いただければと思っております。

それから、4番目ですけれども、AIの審査というのは性能だけを見るのではなくて、AIの審査そのものが一体どうなっているのか、そこで用いられるアルゴリズムについて、利用者の人たちに分かるように説明していかないといけないと思います。

これまでの支払可能見込額の計算であれば、これは誰でも大体分かります。年収が足りないからだとか、あるいは生活維持費、こういうところで問題があるのだということを自分自身で確認できますので、その意志さえあれば、これを改めることができます。ところが、アルゴリズムがどうなっているか、説明してもらえなければ、審査で低いスコアが付いた人は、どのような努力をしたら良いのか分からないことになります。言い方を換えれば、あるセグメントに分類された人は、差別的な扱いを受け続けるということになります。こういった議論も一つ要るのではないかと感じています。

最後ですけれども、フィンテック企業、今回こういう分野に入ってこようとされる、少額で貸付を行おうとしている、クレジットビジネスをやろうとしている方々というのは真面目な方が中心なのでしょうけれども、予想もつかないような人たちが入ってくる可能性もあると思います。

たまたま、私のところにメールが届いたのですけれども、「一般のクレジット審査で落ちた方」ということで案内が来たのですが、実際のところ、私はどこかで落ちているわけではないのですが、その案内メールによると、どこかの与信審査で落ちた方は、どこでやっても落ちます、同じ審査方法ですから、しかし、クレジット審査にパスする裏技があります、うちに相談してください、こういった案内が来ました。

ですから、事業者の利益だけを考えてやっているわけではないという健全な事業者もいるでしょうけれども、これだけ規制が緩和されると、いろいろな人たちがそこに入ってくる、群がってくるという問題がございます。この点も御検討していただきたく思います。

今後、最終取りまとめに向けて議論が進んでいくと思っておりますけれども、その際には、本日の議論も、あるいは懸念も参考にしていただければと思います。当委員会としては、これは非常に重要なテーマ、課題でありますので、今後も必要に応じてヒアリングを行うとともに、委員の間でも引き続き議論をしていきたいと思っております。

本日は、お忙しいところ、中間整理の御説明と審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。どうぞ御退席ください。

(経済産業省正田商取引監督課長 退室)

(公共料金等専門調査会古城座長、消費者庁太田消費者調査課長 入室)

≪3.消費税率の引上げに伴う定形郵便物等の上限料金の改定について≫

○高委員長 次の議題は、「消費税率の引上げに伴う定形郵便物等の上限料金の改定について」でございます。

本年、10月1日から消費税率の引上げが予定されているところでございますが、消費税率引上げに伴う各公共料金の改定への対応につきましては、物価担当官会議申合わせに沿って行うこととされております。

今般、総務省において消費税率の引上げに伴う定形郵便物等の上限料金の改定が検討され、物価問題に関する関係閣僚会議に付議するに当たり、6月3日付で消費者庁長官から消費者委員会宛てに意見を求める付議がなされております。これを受けて、公共料金等専門調査会で意見の取りまとめが行われたということでございます。

本日は、公共料金等専門調査会の古城座長にお越しいただいております。古城座長におかれましては、お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。

最初に、座長から審議経過と専門調査会の意見について御説明をいただきたいと思います。その後、意見交換を行った上で、委員会としての意見を取りまとめたいと思っております。

それでは、まず、座長、よろしくお願いいたします。

○公共料金等専門調査会古城座長 まず、審議経過についてお話しいたします。6月7日に専門委員会を開催いたしまして、総務省からヒアリングを行い、改定案の妥当性について検討の上意見を取りまとめました。資料を皆さんに配付してあると思いますが、これが取りまとめた意見です。

今回の値上げは、消費税率を8%から10%へ引き上げることに伴い、郵便料金を引き上げるということになります。そのうち、消費者庁がこれに妥当だというふうに意見を述べることができますのは、第一種郵便物のうちの25グラム以下の定形郵便物、それから、現在はないのですけれども、25グラム以下の信書便物、もし民間の企業が参入してきて同じものを出したときにこれに当たります。これの上限規制がございますが、それは現在82円ですけれども、消費税が上げられた場合に84円に引き上げなければならないということで、こういう内容の改定案が出てきております。

改定案の具体的な内容は、意見の1ページに整理してありますので、御覧ください。

結論を述べますと、ここの結論部分にございますように、「改定案の内容は、消費者税の円滑かつ適正な転嫁の観点から妥当であると認められる」となっております。

2で、その理由を整理しております。2の最初の○は、消費税転嫁の場合の検討基準ということです。ここにございますように、消費税転嫁の場合は、もともと事業上の理由で値上げされるわけではなくて、消費税が来ますので、それを転嫁するために値上げしてくださいということなので、もし値上げ内容が転嫁分だけで便乗を含まない場合は、原則としてそれだけで審査をするということになりますが、ここにありますように、これは円滑な転嫁を可能にするための要請になります。

その後ろにもう一つ、適正な転嫁というのがございます。これは、普通はそうなのですけれども、もともとの料金はもっと値下げ余地のあるものになっているのに放置されていたと。それにも関わらず消費税を淡々と値上げするのではおかしいので、もともとの料金が明らかに割高な場合は、そこを是正して上でないと転嫁を認めませんということになります。

こういう2通りの基準で行うことがもう基準として書かれておりますし、伝統的にそういう運用でしたので、今回もそれに基づいて判断しております。

2番目は、各案件について個別の判断が書いてあります。第1点に、もともとの料金が適正なものより過大だということについては、総務省から日本郵便会社の過大な営業利益及び利益剰余金が生じていないこと並びに業績推移の見通しについての説明がございました。この説明を聞くと、中身、コストまでさらって判断できるわけではないのですけれども、ざっと見た感じではおかしいところはないと思いましたので、もともとの料金が不適正だということはないというのがマル1です。

マル2については、値上げ分が改定前の上限料金に108分の110を乗じた料金の設定が行われていること、便乗値上げがないということを確認いたしましたということです。

マル3は、便乗値上げはないのですけれども、細かな話で、本件でもそうですが、108分の110を乗じると83.5円でしたという場合に、これを84円にすると、消費税値上げ時に、意図したのではないけれども、便乗して収入増が図られているという問題があって、これは適正に処理されていますかということです。

端数処理の点につきましては、切り上げられている結果、便乗収入増が意図した形ではないのですけれども、出ています。これについては、総務省はその他の料金の端数処理のときに切り捨てもやって、全体としては便乗が出ないように処置しますという消費税転の規制方針についての説明がございましたので、そのようにして端数処理も妥当だということがマル3で書かれておりますように確認できましたということです。これが結論を導いた理由です。

留意事項は、ここのところに書いてありますように、総務省の説明どおりに後の処理をやってくださいねという念押しを述べているという内容です。

以上です。

○高委員長 ありがとうございました。

ただいまの説明に関しまして、御意見、御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。特に大きな問題はないと思います。

○蟹瀬委員 私も出ていましたので、よくお聞きしたのですけれども、今、総括原価方式で言うとこれで正しいのだと思うのですが、あの時に出ていました一番利用者の多いところを安くして、全体として便乗しないようにするという発想がありましたよね。そうすると、25グラム以下のお客さんが一番多いとするならば、単純に82円のとき108%で割ると、その原価に対して110を掛けると83.21ぐらいになりますから。

○公共料金等専門調査会古城座長 83.52です。

○蟹瀬委員 多いですよね。そうすると83.21だったら83円で良いじゃないかという議論がそこにあったかと思うのですけれども、その辺りはどういうふうになりましたでしょうか。

それからもう一つ、総務省の方はこれは私たちが決めていることではなくて、この範囲なら良いよという提案をするだけであって、実際に決めるのは事業者ですというお答えがあったと思うのです。その2点をお願いします。

○公共料金等専門調査会古城座長 第1点は、83.5円ですから、これが消費者にとっては一番大きいので、ここを83円にして、他の郵便物について切上げ処理をして、全体としては丸めてくれという話もできそうなのですが、83.52なので、一応四捨五入という常識的な基準を採りますと、そこは上げるのも構わないだろうということです。

第2点は、確かに上限料金で、今、蟹瀬委員がおっしゃったことを総務省がそれもそうだと思ったら、全体の料金を丸めるときに、信書を83円にして、ほかのところをもうちょっと切上げ処理してバランスを取ってくれというふうに行政指導をして、事業者もそういうふうにやる可能性はまだ残っております。

○蟹瀬委員 何度も済みません。あの時に私が気になったのは、古城座長が切り上げてしまうと30億円ぐらいの利益が上がりますよねという会話がそこでありましたよね。ですから、今の83.5幾らというのは82円に対してそれを2%上げたときの感じですよね。逆に言うと、原価は幾らはなのだというところから計算して110にすると、切り下げるという数字が出てきませんでしたか。

○公共料金等専門調査会古城座長 それは出てきます。

○蟹瀬委員 ですから、原価を上げないという発想であれば、端数という考え方ではなくて、その辺りの原価をベースに110上げれば83.21円なのだから、切り下げて83円で良いんじゃないかということが議論されたかと思うのですが、その辺りは。

○公共料金等専門調査会古城座長 それは、最初の消費税の妥当性の審査基準で、円滑かつ適正な転嫁という、円滑な転嫁というのは、何も見ずに、ともかく消費転嫁だったら許してやれということです。適正というのは、もともとの原価も正しいかというのを多少は見ますよというのですけれども、このバランスであっさりみるという考え方なのですね。明らかに妥当性がないのだったら、この機会に是正を要求するけれども、懐の底まで徹底してやるというのは円滑にできないので、それはちょっと難しいということ。これから続々と消費税転嫁の内容が出てきますので、この程度の審査で処理していくということだと思います。

○高委員長 御理解いただけませんか。

○蟹瀬委員 しつこいことを言いましたけれども、基本的に小売の世界では1円の攻防というというのがあります。1円上げるか上げないか、これによって攻防していくというやり方が非常にあるので、皆さんにとっては82円が84円になろうが、83円になろうが、大して違わないじゃないかと思われるかもしれませんが、やはり商売の世界では1円がとても大事なので、改めて言わせていただきました。

○公共料金等専門調査会古城座長 分かりました。

○高委員長 他ございませんでしょうか。よろしいですか。

では、専門調査会報告について、委員会としての意見案を配付してください。

(意見案配付)

○高委員長 この意見案でよろしいでしょうか。

皆様の御了解をいただいたということで、この意見案を消費者庁長官及び総務省宛てに、意見として送付させていただきたいと思います。

それでは、上限料金改正の審議は以上とさせていただきます。

○消費者庁太田消費者調査課長 消費者庁でございます。

短期間のうちに御意見を取りまとめていただきまして、誠にありがとうございました。いただいた意見を踏まえまして、今後の手続をしっかり進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○高委員長 ありがとうございました。

古城座長におかれましては、お忙しいところ、御出席、御協力いただきましてありがとうございました。

(公共料金等専門調査会古城座長、消費者庁太田消費者調査課長 退室)

≪4.消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループの報告について≫

○高委員長 最後の議題は、「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループの報告について」でございます。

消費者委員会は、これまで消費者契約法や特定商取引法といった取引分野における個別法については、専門調査会を立ち上げ、必要な見直しの検討を行ってきましたが、委員の間で議論の結果、市場の公正を実現するためには、個々の法制度を見直すだけでなく、中長期的な観点から、消費者法(取引分野)におけるルール形成の在り方やルールの実効性確保に資する方策、そして事業者、事業者団体、消費者、消費者団体及び行政等の各主体の役割や連携方法を検討することが重要ではないかという結論に足りました。

そのため、平成30年2月の第266回委員会本会議におきまして、ワーキング・グループ設置を決定し、座長は鹿野委員にお願いいたしました。そこから計21回の会合を開催して議論を行い、本日、報告書を取りまとめたということでございます。

それでは、鹿野座長及び事務局から、審議経過及び報告書の内容について簡単に御説明いただきたいと思います。合わせて20分程度で御説明をお願いいたします。

まずは、鹿野座長から御報告をお願いいたします

○鹿野委員 今、高委員長から御説明がありましたところと一部重複するかもしれませんが、私のほうで簡単にこの間の検討の経緯をお話しさせていただきたいと思います。

まずは、この報告書の1ページの「はじめに」のところに趣旨と問題意識が書かれているのですが、かいつまんで申し上げますと、市場の公正の確保というのは、消費者にとってはもちろん、事業者にとっても非常に重要であり、既に多くの取組が行われてきたわけですが、依然として消費者の取引被害というのは後を絶たず、むしろ社会の高齢化、グローバル化、情報通信技術の一層の普及といった社会情勢の変化に伴いまして、消費者被害の複雑化、深刻化に拍車がかかっているという状況がございました。

このような事態を踏まえて、先ほど御紹介がありましたとおり、中長期的な観点から市場の公正を実現するための考え方や方策を整理しておく必要があるということで、このワーキング・グループが立ち上がったところです。

なお、既に平成15年には、ここにも書いてございますとおり、「21世紀型の消費者政策の在り方について」と題する国民生活審議会の報告書が取りまとめられ、取引分野を含む消費者政策についてのグランドデザインが示されておりましたし、それに基づく取組がその後、進められてきたということがございます。

しかし、この国生審の報告書から既に15年余りが経過しており、今、改めてこの間の施策の達成状況や社会情勢の変化を踏まえて、グランドデザインの在り方を再検討する必要があるということで検討を進めてまいりました。

審議の経緯につきましては、この報告書の後ろに参考資料2というものが付けられているところでございますが、ここにもありますとおり、ワーキング・グループでは、平成30年3月1日の第1回会議以降、多方面にわたる有識者、関係団体等からヒアリングを行いまして、平成30年8月には中間整理を取りまとめたところです。その中間整理では、各論点についてヒアリングで指摘された点を中間的に整理するとともに、今後のワーキング・グループにおいて重点的に検討するべき論点をまとめました。そして、同年9月以降は、その中間整理で重点的に検討すべき論点として掲げた点を中心に、さらに有識者、関係団体、関係省庁からヒアリングを行った上で検討を重ね、その検討結果を本報告書として取りまとめたということでございます。

この報告書の内容の詳細については、この後、事務局から説明していただきたいと思いますが、ポイントのみをかいつまんで申し上げたいと思います。

本報告書では、先ほども申しましたように、中長期的な観点から、消費者法の中でも取引分野を中心にして、市場の公正を実現するためのルール形成の在り方や、ルールの実効性確保のための方策、また、事業者、事業者団体、消費者、消費者団体及び行政等の各主体の役割や連携方法について検討を行い、その検討結果を取りまとめというものでございます。

資料3-1という概要図にもございますとおり、一言で申しますと、ルールのベストミックスと担い手のベストミックスの重要性と、その際に留意すべき観点等について整理をしました。

さらに特徴的な点としましては、この概要図の左下のところに少し書いてありますけれども、消費者像についても再検討を行いまして、従来、情報を与えられれば合理的な判断ができるという、いわば合理的な人間を前提とした情報モデルというものが強調される傾向があったわけですが、もちろん情報を正しく適切に提供させることが重要なことについてはそのとおりなのですが、その情報モデルだけではなくて、生身の消費者の脆弱性という点にも焦点を当てまして、それも継続的な脆弱性のみならず、誰もが陥り得る一時的な脆弱性にも配慮すべきだというような考え方なども示しているところであります。

本報告書は、今後の政策を進めるに当たっての考え方を中長期的な観点から取りまとめたものであって、具体的な法改正について直接提言、提案をするものではございません。ですが、それだけに関係省庁において、本報告書が示している考え方を踏まえて、今後、具体的な政策等についての検討を進められることを期待しております。

また、その後押しを受けて、事業者、事業者団体、消費者及び消費者団体といった関係主体がそれぞれの役割を果たすこと、そしてそれらを通じて健全な市場の確保が推進されることを期待しているところでございます。

それでは、ちょっと長くなりましたが、事務局に内容をお話しいただきたいと思います。

○消費者委員会事務局担当者 引き続きまして、事務局から御説明させていただきます。今御紹介がありましたとおり、資料3-1が概要になっておりまして、資料3-2が報告書本体になっております。報告書本体はかなり大部になっておりますので、ここでは資料3-1の概要に基づいて、個別のポイントについて御説明させていただきます。

見ていただきますと、今、座長からお話しいただいたとおり、この報告書にはサブタイトルがついておりまして、「公正な市場を実現するためのルール及び担い手のベストミックスを目指して」ということであります。

ワーキング・グループの目的につきましては、今正に御説明いただいたところですので割愛させていただきます。

大きく2つの柱がありまして、緑の左側がルール形成の在り方、右の青側がルールの実効性確保~担い手のベストミックス~となっております。

まず、緑のほうから御説明させていただきます。これも更に3つに分解しておりまして、観点ごとに分けております。1つ目の観点が「ルールのベストミックス」ということで、被害の予防・救済という目的を実現する手段として、どのように組み合わせることが最善かという観点から検討することが重要であるということで、民事ルールや行政規制のほか、民間がつくる自主規制についてもベストミックスすることが重要であるということが指摘されています。

真ん中の矢印のところですが、「社会情勢の変化への対応」ということで、ここでは主に2つ挙げております。1つ目の○ですが、トラブルが多発する類型について、具体的な規定を追加しつつ、受け皿となる包括的な規定を置くなど、事業者の予見可能性や相談現場での実効性も図りつつ、社会への変化に対応できるようにすることが重要であるという観点です。

もう一つの観点、次の○ですが、こちらはオンラインプラットフォーム取引等のデジタル時代の市場では、個人情報保護、消費者の主体的な選択の確保等の新たな課題への対処や、ハーモナイゼーションの推進等、グローバルな観点からのルール形成が重要であるという観点が示されております。

最後の矢印ですけれども、「消費者、事業者の行動の実態の反映」ということで、2つポイントを挙げております。1つ目のポイントが、先ほど御紹介いただきました、従来の平均的な消費者像を見直すということで、情報力・交渉力の格差だけではなく、継続的・一時期的な脆弱性、これは様々な要因から被害に遭いやすい状況に置かれることとしておりますが、これも前提にすることが重要であるという観点になっております。

次の○ですが、ルール形成のプロセスについてですが、こちらにおいても被害事例の収集・分析方法を向上させるとともに、具体的な被害事例に限らない被害実態の把握方法として、被害発生の蓋然性の考慮とか、行動経済学・認知心理学等の活用などを指摘していますが、こういったものが重要であるという観点になっております。

次に、右側、青いほうに行っていただきまして、担い手のベストミックスです。行政と民間の各関係主体が適切に役割分担・連携できるメリハリのある仕組みづくりが重要であるという提言になっております。

上から下に向かって担い手ごとに記載がありまして、まず一番上が事業者、事業者団体の自主的取組です。矢印の右側にありますが、こういった自主的取組を競争力に変えるための方策が重要であるという指摘です。

具体的なものとして2つポイントを挙げておりますが、1つ目の○が、課徴金算定において行政への協力やコンプライアンス体制等を考慮するなど、事業者に自主的取組へのインセンティブを付与する仕組み作りが重要であるというものですとか、2つ目の○ですが、事業者の自主的取組を支える適切な人材の育成、活用も重要であり、資格制度の普及・活用や民間の取組への支援が必要だという観点が示されています。

2つ目の主体ですけれども、消費者、消費者団体等の主体的な行動ということで、矢印の右側ですが、こういった行動を執るための支援のための一層の環境整備が重要であるという指摘です。具体的な内容を○で書いておりますが、取引の複雑多様化、高齢化、成年年齢引下げ等の社会情勢の変化からすれば、個々の消費者の取組だけでなく、基盤となる消費者団体、地域のネットワーク、教育機関等の活動の普及・促進が必要であるという指摘になっております。

次の主体としまして、適格消費者団体・特定適格消費者団体による不当な取引行為の是正・排除ということでして、矢印の右ですが、適格消費者団体等の役割強化が重要であるという指摘です。

具体的にここではポイントを2つ挙げておりまして、1つ目の○ですが、不特定多数の消費者の利益を保護するという役割や厳格な認定要件・義務に見合った権利を与えることが重要であるということで、差止対象の拡大が指摘されております。

2つ目の○で、剥奪された違法収益を活用する等して、設立・認定の促進、人的体制・財政基盤の整備のための支援をすることが重要であると。ここは団体の実情を踏まえた指摘になっております。

最後の主体ですが、行政ということで、行政による悪質商法等に対する法執行ということで、右側ですけれども、行政による対応の徹底化が重要であるということです。○で2つ指摘しておりますが、1つ目の○が民間の力では対処困難な悪質商法等に対しては、実効的な行政規制の整備、違法収益の剥奪や制裁金の強化等により、行政が厳格に対応することが必要であると。

犯罪行為に対しては、厳格な刑事罰による抑止、犯罪収益の没収やそれによる被害回復の仕組みの拡充が重要である。こういった指摘になっております。

このような形で、各担い手がそれぞれの役割をより高めて、かつ連携していくということで、メリハリのある仕組み作りをしていこうということになっております。

以上が報告書の概要になります。

○高委員長 ありがとうございました。

ただいま説明いただきました報告書の内容に関しまして、御質問、御意見はございますでしょうか。よろしいですか。

では、最初に蟹瀬委員から。

○蟹瀬委員 大変お疲れさまでございました。よく分かるのですが、一つお聞きしたいのは、平成15年のグランドデザインを新しいグランドデザインに変えたという点は、ここに書かれているものが全てということですか。要するに、グランドデザインといったときに、平成15年ではどういったグランドデザインがあって、何が今度新しくなったのかが分かれば教えていただきたいです。

○高委員長 よろしいですか。お願いします。

○鹿野委員 平成15年のグランドデザインの内容については、この報告書の1ページの注1のところで、どういうことが取り上げられていたのかということが書かれているところです。ただ、同じグランドデザインという言葉は使っていますが、平成15年のグランドデザインのほうが範囲が広くて、今回のワーキング・グループで取り上げたのはあくまでも公正な市場に関わる部分で、そこに関する基本的な考え方を整理したということで、まず範囲が違うというところがございます。

それと、変更したのかという点については、元よりワーキング・グループの作業は平成15年報告書を検証するとこと自体を目的とするものではないのですが、達成状況という意味では、平成15年のグランドデザインで示されたことのうち、大分実現されてきた、消費者保護が進められたというところがあるのです。しかし、一方で、先ほども人間像、消費者像のことを申しましたけれども、当時考えられていたような消費者像だけで果たして良いのかということなどについても再検討を行って、少し新たな視点というものも加えた、そういう違いもございます。

○高委員長 ありがとうございました。よろしいですか。

○蟹瀬委員 狭くなったというふうにおっしゃったので、前の平成15年に出されたグランドデザインに関してはうまくいっているところはそのままにして、新たにこれを加えたという考え方で良いのですよね。

○高委員長 新たに加えたという説明で良いでしょうし、あるいは環境がこの15年で大きく変わったということで、今の問題に対して取引分野でこういう動きをするべきだという提言があったということです。

○蟹瀬委員 消費者像が変わったというのは、私は、非常に分かりやすくて、そういうことで見直しが入って、新しい消費者像を描いていくのだなということは分かったのですが、15年前に民事ルールと行政規制と自主規制はあったのではないかと思うのですね。それが今、3つの輪になっているのです、重なっているのですが、昔は3つこういうふうに分かれていたという発想なのか、3つこうあって重なっていたのだけれども、全然やっていなかったという発想なのか。要するに、新しいところはどこにあるのだろうということをお聞きしたかっただけです。別に文句を言っているわけではなくて、そこが見えないかな。そこを明確にしないと、次に何をやって良いかわからないわけですね。

15年に3つの輪が重なっているのであれば、この3つの輪の重なり方が弱いというのでミックスしていかなければいけないという提言であれば、すごく分かりやすいのですけれども、3つの輪が重ならなくて、3つばらばらにあったと。行政もやるし、自主規制もあるし、民事ルールもあったけれども、全然動いてなかった。だから、これを3つ合わせなければいけないのだという発想であれば、この図がすごく分かりやすいので、その辺りのせっかくこれだけの知識人が集まって御提案いただくのだから、もう少しその辺りが分かりやすいと良いかなと思ってお聞きしました。

○高委員長 どうぞ、鹿野座長。

○鹿野委員 必要があれば事務局で補足していただきたいのですが、平成15年のときも、民事ルール、行政規制、自主規制、その3つが必要だということは考えられていたのだとは思います。ただ、それが互いに連携し合ってうまく機能するようにというところを意識してその方策を更に追求しましょうということで検討を進めてきたものと思っています。それは右側のところにも関わるのですが、例えば民間の消費者団体の力を活用して不適切な事業者の行為を防ぐ方策ということで、消費者団体訴訟制度というものが作られたのですね。そして、そういう制度が必要だということは平成15年のグランドデザインにも示されていて、それが実現したということでございます。

しかし、その制度は作られたのだけれども、果たしてこれが十分に機能しているといえるか。活用されていないわけではないのですけれども、よりうまく活用されるような方策が検討されるべきではないかということもありまして、そのような角度からの更なる検討もしております。あるいはまた、景表法において課徴金制度が導入されたということでありまして、これも新たな法改正による画期的な点だとは思うのですが、これについても制度ができたからもうこれで終わりということではなくて、その趣旨を踏まえてより一層改善するところがあるのではないかというようなところも検討しました。若干の例を挙げただけですけれども、そういうところを踏まえてこの整理をしたということでございます。

何か事務局から補足がありますか。

○消費者委員会事務局担当者 事務局から補足で御説明させていただきます。

今、座長や委員長から御説明されたところが正にそのとおりなのですけれども、例えば、資料3-2の報告書本体でいきますと、6ページ以下の2.で、「消費者政策を検討する上で重視すべき観点」と、この報告書の全体像を示したところもあるのですが、そこの第1段落でも記載しておりますが、先ほど来出ております国生審の報告書の段階では、当時の時代背景もありまして、事前規制から事後チェックへという形、市場のメカニズムをどんどん活用しようというところに重きが置いてあったところもありまして、その後の動きですとか、今、御説明があった新しい制度などが、実際、その後、どういうふうに運用されているのかというのも踏まえて、この報告書では取引分野ということでありますが、その中で更に柔軟に、あるいはいろいろな多角的な観点から検討したというところが挙げられるかと思います。

以上です。

○高委員長 ありがとうございました。

是非、じっくり読んでいただければと思います。

○蟹瀬委員 私、じっくり読ませていただくのですけれども、気になったのは、これが人に渡ると、変わらないじゃないかという見え方がどうしてもしてしまうのですね。ポイントを押さえて書いていらっしゃるのはよく分かるのですけれども、これを読まなければ分からないというのは酷だと思うのです。そうすると、これ1枚になるので、もう少し変わったところがちゃんと分かって、何でミックスしなければいけないかということがきちっと分からないと次へ行かないと思うのです。いろいろな協力をしていただくところも含めて。ちょっと気になったのがそういうことです。

こういう言い方をしたら失礼なのですけれども、私は実務者なので、この1枚を持って社員と話をするわけです。そうすると、これを読めということはなくて、これを見て、どことどこがこう変わっているのだから、こうやってほしいのだというふうに話をします。

ところが、この絵を見ると、変わっているとぱっと思ったのは、消費者像が違う。これはもう明快だなと、これはすごく分かったわけです。他のところは、今までずっと消費者委員会でやっていることが書いてあるのかなというようなイメージがどうしても強かったので、せっかくここまでなさったら、もうちょっと強弱ポイントを付けたほうが、何を次に動いたら良いか、これについて考えたら良いかというのが分かりやすいのではないかと思って、いろいろな質問をさせていただきましたということです。

○高委員長 ありがとうございます。これから変更するというのは難しいかもしれませんけれども、例えばルールのベストミックスのこの3つの円が、平成15年のときの3つの輪がかなり離れていたと。それが移行することでこうなったというのことが分かるようにして欲しいということですね。

○蟹瀬委員 そうですね。小さいのがあって、ぴっとこうなるとか、特にこの赤字で書いてあるところがもうちょっと大きくなるとか。

○消費者委員会事務局担当者 御指摘ありがとうございます。おっしゃるところは正にそのとおりだと思います。これ自体はこういう形で作っておりますが、今後、対外的にアピールするときなどは分かりやすいように工夫したいと思います。

もともとは必ずしも国生審の報告書を検証するワーキング・グループというよりは、それも含めて広く取引分野について検討しようということもありましたので、こういう形になっておりますが、今後、PRするときなどは工夫したいと考えます。

○蟹瀬委員 はい。素晴らしい先生たちのワーキング・グループだったので、是非それが活かされるようにお願いいたします。

○高委員長 御意見、ありがとうございました。

池本委員長代理。

○池本委員長代理 池本でございます。

今回の提言は、特に今の資料3-1で言うと、右側の「ルールの実効性確保~担い手のベストミックス~」にかなり具体的な提言が入っていると思っています。

従来からコンプライアンス経営の推進とか、最近であれば消費者志向経営の推進とか、言葉ではそういうことが言われているのですが、それを誰がどういうふうにすれば実効性が高まっていくのかというところを踏み込んで議論して、例えば事業者団体の自主的取組で言えば、その取組をしたことが評価される仕組みを用意することというのと、それから単に宣言するだけではなくて、事業者の中に消費者問題の専門家をきちんと育成、配置していく、これが今弱っているのではないかという指摘です。

そして、同じような意味で特に私は重要だと思うのは、2番目の消費者、消費者団体の主体的な行動というところが、最近は消費者教育推進法が制定されて、学校や地域社会で消費者教育を強化していこうということはしばしば言われているし、非常に大事なことなのですが、一人一人の消費者が行動するといってもなかなか続かない。他方で、1970年ころに消費者団体の育成支援ということが言われて、その後ずっと尻すぼみになってきている今、行政だけではできない、官民連携でやっていこうという民の主体がもう実在しないではないか。改めて今、民間の消費者団体の育成支援ということを、いわば持続可能な団体として地域の中で位置付けていくということが大事であると。これはやはり10年、15年前にはここまで切実な状態ではなかったことを指摘しているというところで、この辺りは今後、消費者庁でも重要な視点としていろいろな場面で取り組んでいただきたいという課題になるのだろうと思います。

それ以外の各項目について、それこそいつまでにこれをこうやれという趣旨の提言ではないので、様々な施策の中で考えていただきたいのですが、実は先ほど別の機会で議論していたら、消費者庁が消費者団体基本調査という、消費者団体は全国にどのぐらいの構成員でどのくらいあるかというのを平成26年ころに調査をした後、この数年実施していないということも聞きました。まずそういうところも含めて、消費者庁も目を向けていただきたいようなことが、いろいろな観点で生まれていると思います。そういうことも参考にしていただければ良いなということを補足的に発言させていただきました。

○高委員長 ありがとうございました。

長田委員。

○長田委員 本当によく取りまとめていただいたと思っています。21世紀型の消費者政策の在り方についての議論をしていたころの消費者のイメージというのは、もう「保護から自立へ」で、いや、自立だけでなく支援を入れてください、そんな簡単に自立とほっぽられても困りますというのを消費者団体はすごく議論をした覚えがありまして、その後に基本法の改正とか、公益通報者保護法ができたり、適格消費者団体が生まれたりというふうに、様々変わってきましたけれども、これだけ15年以上が経って見返してみると、そこで今回手を入れなければいけない課題がたくさん見つかったということだなと思っています。

事業者の自主的取組のところは、取引の分野以外でも、安全の分野にしろ、様々なところで消費者のために頑張っている事業者さんたちが、なかなかそれが評価に具体的につながらなくて、大臣からの表彰などを受けても、だからそれがどうなのだというところで、やはりコストとの関連とか何かで、皆さんすごく悩んでいらっしゃるというお話を、事業者や事業者団体から伺います。そういうものがインセンティブの付与も含めて、きちんとそれが競争の中で評価されていくということがとても大切だなというのは様々な分野で思っておりましたので、書いていただいて良かったなと思っています。

そして、消費者団体は、池本先生御指摘のとおり、とても大変な状態になっていて、それをどう解決していくのかというのはすごく大きな課題です。適格消費者団体も空白地域をなくすようにということは、消費者庁の様々な文書にも書いてありますけれども、生み出すのも大変だけれども、継続していくのに本当に各団体が非常に苦労しているというのも具体的によく見させていただいてきましたので、ここは是非実現を何とか消費者庁で真剣に考えてもらいたいなと思いますし、行政による法執行はこの分野以外でもどうなっているのだと思うところはいっぱいあると思いますので、そこもきちんと議論していただきたいということで、今回、こうやってまとめていただいた報告書を受けて、より具体的に、もしかしたら早急に取り組んでいただかなければいけない分野というものを、また次期の消費者委員会になるかもしれませんけれども、きちんと検討していっていただければ良いなと思います。

以上です。

○高委員長 ありがとうございます。

受田委員。

○受田委員 大変お骨折りをいただいたことに敬意を表したいと思います。ありがとうございます。

特に、先ほどルールのベストミックス、左側のほうのお話がずっとあって、脆弱性というところに、特に継続的な脆弱性に対して一時的な脆弱性という点をこの中に反映をされているというところは非常に特徴的だと感じております。

本文を拝見しますと、12ページのところに一時的脆弱性の考慮の必要性に関する具体的な記述がございます。ちょっと確認をしたいのですけれども、パラグラフ2つ目の「しかし」というところから入りまして、真ん中辺りに「例えば」ということで、一時的脆弱性の説明がございます。

この中に時間的に切迫した状況や緊張した状態というのがあって、さらに、その下に具体的な外国人が言語の障壁や云々というようなコメントがあるのですけれども、この中に、いわゆる災害に被災した際によくそれに乗じたいろいろな悪徳な商法が出てきて、それがそれこそ統計的にも相当増えているという実態がございますけれども、そういった災害に遭った際の被災者も含まれる、そういう理解をしてよろしいのでしょうか。

○鹿野委員 そのように考えております。ここで記載しているのは一つの例えでございまして、要するに、普通は元気にしているし、正常な判断ができるという人でも、場合によっては非常に困って切迫した状況に置かれることがあり、それにつけ込んだ悪質な商法がかなりいろいろな場面で見られるということであります。正に受田先生がおっしゃったように、災害に遭ったというのもその典型的な例ではないかと思いますけれども、そういうところにも目を向けるべきだという趣旨を含んでございます。

○受田委員 ありがとうございました。その下に外国人のこともあったので、昨今、非常に問題になっているというところから、脚注のところでもそういう表現があったら良かったかなという感想でございました。

○高委員長 ありがとうございます。

他はございますでしょうか。

○蟹瀬委員 最後に一つ。このベストミックスの中で一番大事なのは、企業ときちんと一緒に手を携えて消費者を守るという世界を創ることだと思っています。どうしても、企業は行政と対立をする、あるいは消費者と対立する。自分たちを守る。そういう姿勢で、いろいろ問題が起こると取り組んでくるわけですね。

コンプライアンスの問題ですとかインセンティブを与えるという問題は大変良いかと思うのですけれども、消費者志向経営というところで消費者庁が表彰してくださったりして、少しずつ消費者志向経営に対しての波は出てきていると思うのですけれども、言葉だけが実は動いていまして、会社の中ですごく進んでいる会社は、トップがCPO、chief people officerというのを作ったりするのですね。つまり、人々に対して何をするか、あるいは社員も含めてですが、どういうふうに消費者に対して見るかというようなことを見る役員を作っていく。

トップダウンで事が決まっていって、社風というものが全部に影響してきますので、例えば経団連なら経団連でそういうふうな提案ができないかとか、もしそういうことが本当にできれば、どうしても企業の中でお客様相談ということをやってくださっているのは、本当にお店の店頭で立っている方たちと一緒で、経営陣と非常に遠いところに実はいるのですね。ですから、経営陣から遠いところではなくて、経営陣の中にそういう人がいて、経営陣がそこをきちっと見ていくという企業が実は幾つもありますので、それをもっと広げていく策というのを具体的に提案ができていけば良いかなと私は感じました。

ですから、表彰するとか、それだけのことは、もちろんしないよりしたほうが良いので大変大事なことだと思うのですが、うねりを作るためには、今、経済を動かしている人たちときちっと話をして、消費者をどう見ていくか。前から申し上げておりますけれども、消費者を守ることは企業を守ることであるということの視点をいかに広げていってもらうかというのが大事なような気がしますので、是非それもどこかでお話をしていただければ良いかなと思っています。

○高委員長 ありがとうございました。

山本委員。

○山本委員 先ほど蟹瀬委員から少しインパクトが弱いのではないかという御指摘がございましたけれども、蟹瀬委員御自身が御指摘になったように、恐らくこの報告書の意味は、一つ一つのワードを捉えれば今までも言われてきたことなのだけれども、それらの間の関係をきちっと考えて、それらをミックスさせていくことが重要であるということを強調した点に意義があるだろうと思います。

その点は、自主規制、行政規制、民事ルール、ここの部分はベン図で非常に明確に示されているところですけれども、例えば右側の適格消費者団体、特定適格消費者団体の話が出てきますけれども、これについても、こういった団体と行政との間の権限とか、あるいは体制であるとか何かがどのような関係にあって、今後どのようにそれを組み合わせていったら良いかという視点がここに入っていますし、その下のところに法執行の部分に関しましても、違法収益の剥奪とか制裁金とか被害回復というのは、個々のものとしてはそれぞれ出てくるわけですけれども、これらがどういう点が違って、どういう点が共通していて、したがって、これらの組み合わせをどういうふうに考えていくかというところが重要であるということを指摘していて、特に最後の点は余り一般的には言われていなかったことなのではないかと思います。

ですから、もしこの図を使って説明するときは、そういう形でそこのところを強調して説明されるとよろしいのではないかと思います。

○高委員長 ありがとうございました。

樋口委員。

○樋口委員 この議論に私も参加していましたが、この報告書はその議論の中でもたびたび指摘があったのですが、目先の答えを出すという意味ではなくて、中長期的なルールの考え方をきちっと整理をしていこうということだと思うのです。

そういう意味では、憲法とは言いませんが、基本法と同じように、非常に基本的な点が指摘をされているということだと思います。

各論の中では、例えばオンラインプラットフォームの話のように、今後、どういう形で議論していって良いかということが非常に焦点になっているものもありまして、注を細かく読んでいきますと、そういった点、あるいは民間の自主的取組の具体的な在り方とか、課徴金の問題とか、いろいろ指摘がある。特に、皆様からも御指摘がありましたけれども、脆弱性の問題を超高齢社会の中で非常に基本的な課題としてどう考えていくのか、あるいは一時的な脆弱性の問題というのも今委員からも御指摘がありましたけれども、これから非常に大きな事項になってくる。

そういう意味で、非常に基本的なことを整理していただいた。私は直接には絡んでおりませんが、事務局及び座長からこういう方向性を示していただいて、私もそういった基本的なことをこれから委員会としても是非議論を続けていっていただきたいと思っております。

直ちに議論しなければいけない問題も幾つかあろうかと思いますけれども、是非この報告書がそういったことに貢献をするということになれば良いのではないかなと思っております。

以上です。

○高委員長 ありがとうございました。

この報告書の内容についての発信方法については改善の余地があるのではないかという、有り難い御意見をいただきましたので、そこは工夫していただくということで、報告書そのものについては皆さんから評価をいただいたと思いますので、今一度まとめさせていただきます。

ワーキング・グループ報告書の中では、中長期的な観点から市場の公正を実現するための消費者法(取引分野)におけるルール形成の在り方やルールの実効性確保に資する方策、そして、事業者、事業者団体、消費者、消費者団体及び行政等の各主体の役割や連携方法について適切な取りまとめが行われたものと言えると思います。

これを踏まえ、消費者委員会としての意見をまとめたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。

ありがとうございます。

それでは、事務局から意見案をお願いいたします。

(意見案配付)

○高委員長 事務局から簡単にこの意見案について説明をいただけますか。

○消費者委員会事務局担当者 今、追加資料として配付させていただきましたのが、このワーキング・グループからの報告を受けた消費者委員会としての意見になります。タイトルが「消費者法(取引分野)におけるルール形成の在り方等に関する消費者委員会意見」です。

まず、1.以下が内容ですけれども、1.はこの報告書の提出を受けたという事実関係になっております。

2.ですけれども、「本報告書においては、中長期的な観点から、市場の公正を実現するための消費者法(取引分野)におけるルール形成の在り方やルールの実効性確保に資する方策、そして、事業者、事業者団体、消費者、消費者団体及び行政等の各主体の役割や連携方法について、適切な取りまとめが行われたものと考えており、関係省庁において、今後、消費者法(取引分野)の制度の整備その他の政策を立案・実施するに当たって本報告書がする観点を踏まえること、本報告が指摘するような民間の取組について、その普及・促進に向けた支援を行うこと、及び、それらの政策を実施する上で関係省庁間の連携を一層推進することを求める。特に、消費者庁においては、消費者行政の司令塔・エンジン役として、各府省庁の縦割りを超え幅広い分野を対象とした横断的な政策の企画立案等を行っていくこと、及び、関係省庁間の連携強化の取組を推進することが求められるところ、それらに当たり、本報告書を踏まえられたい。」

次に3.ですけれども、「また、事業者、事業者団体、消費者及び消費者団体等の民間の主体においても、本報告書を踏まえ、各自の役割を改めて意識し、更なる活動と連携が展開されることを期待したい。」

4.ですが、「そのため、関係省庁においては、所管団体等に本報告書の内容を広く周知し、その内容が広く活用されるよう努められたい。」というものです。

5.が自主宣言のようなものになっておりまして、「なお、消費者委員会においても、今後、本報告書に盛り込まれた内容を踏まえ、関係省庁の取組を注視し、消費者政策について調査・審議を行うとともに建議等を発出していく。」というものになっております。

説明は以上です。

○高委員長 ありがとうございました。

ただいまの意見案はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、賛同いただいたということで、この意見を消費者長官及び関係府省庁宛てに送付したいと思います。ありがとうございました。


≪5.閉会≫

○高委員長 本日の議題は以上となります。最後に、事務局より今後の予定について説明をお願いいたします。

○坂田参事官 次回の本会議は日程が決まり次第、委員会ホームページを通じてお知らせをいたします。

以上でございます。

○高委員長 ありがとうございました。

それでは、これにて閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

(以上)