第297回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2019年5月30日(木)13:59~15:47

場所

消費者委員会会議室

出席者

  • 【委員】
    高委員長、池本委員長代理、大森委員、鹿野委員、長田委員、樋口委員、増田委員、山本委員
    (高委員長の「高」は、正しくは「はしごだか」)
  • 【説明者】
    消費者庁加納消費者制度課長
    消費者委員会事務局担当者
  • 【事務局】
    二之宮事務局長、坂田参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 「公益通報者保護専門調査会報告書」に関する意見募集の結果について
  3. 消費者行政新未来創造プロジェクト検証専門調査会報告について
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○高委員長 それでは、時間になりましたので、第297回「消費者委員会本会議」を開催いたします。

本日は、受田委員、蟹瀬委員が御欠席となります。

最初に、配付資料の確認につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

○坂田参事官 議事次第に配付資料を記載しております。

もし不足がございましたら、事務局までお申出いただきますようお願いいたします。

以上です。

○高委員長 ありがとうございます。


≪2.「公益通報者保護専門調査会報告書」に関する意見募集の結果について≫

○高委員長 最初の議題は「公益通報者保護専門調査会報告書」に関する意見募集の結果についてでございます。

公益通報者保護法に関しては、平成30年1月15日付で内閣総理大臣から諮問を受け、公益通報者保護法の規律の在り方や行政の果たすべき役割などに関わる方策について専門調査会で審議を行い、昨年12月に報告書を取りまとめ、委員会から答申を発出いたしました。その後、消費者庁において報告書の個別論点について本年1月から3月まで意見募集を行い、その結果が先般取りまとめられたということでございます。

本日は、その意見募集の結果について、消費者庁から御説明いただき、意見交換を行いたく思います。

本日は、消費者庁加納消費者制度課長にお越しいただいております。お忙しいところ、御出席ありがとうございます。

それでは、大変恐縮でございますが、意見募集の結果について20分程度で御説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 消費者庁の加納です。どうぞよろしくお願いします。

お手元に、資料1としまして「意見募集の結果について」と別紙をお付けしていると思いますので、それに基づきまして概要を御紹介したいと思います。

意見募集の期間や提出方法等は記載のとおりでありまして、「3」の結果でありますけれども、意見提出者数87件ということで御意見を頂戴したところであります。

寄せられた御意見の概要はこれから御紹介したいと思いますが、総じて言いますと、速やかに答申ないし専門調査会報告書に沿って法改正を実施すべきである、あるいは各論点について答申や報告書以上に最大限の法改正を実施すべきであるという趣旨の御意見も多数寄せられました。一方で、報告書の提言を超える法改正に対しては強い反対を示す御意見や、あるいは報告書で取りまとめられた内容についてもさらに慎重な検討を要するといった御意見もみられたところであります。

この時期に意見募集を実施した理由でございますけれども、この公益通報者保護法が非常に重要な法律であると同時に、社会に対する影響もそれなりのものがあると考えられるところでありまして、できるだけ広く社会全般から意見をお聞きする機会を設けるのが適当であろうと考えたところになります。

それでは、論点に沿って、幾つかかいつまんだ形ではございますけれども、御紹介したいと思います。

まず、別紙の1ページでありますけれども、報告書全体に対する御意見としましては、「主な御意見の概要」の最初の●印にありますように、報告書の内容についておおむね妥当なものと考えていただいているという御意見もありますが、他方で、2つ目の●にありますように、事業者の実務に大きな影響を与える論点が含まれているということで、事業者の事情も踏まえた検討が行われることを希望するといった御意見もあります。

2ページに行きまして、「法改正に向けた要望」として、一方で、消費者庁は提言された事項について後退することなく早急に法改正に向けて取り組むべきであるといった趣旨の御意見もありますが、他方で、下から2つ目の●のところでありますけれども、法制化に当たっては、机上の理論や安易な規制強化に流れることなく、通報者、通報受付者、事業者などの多様な観点から検討を行い、実務感覚のある、地に足のついた着地点を見出すべきであるとか、法制化に当たっては、一律に事業者に義務を課し、制裁規定を置くことで不祥事や不利益取扱いを防止するという発想ではなく、自浄機能を高める努力をしている事業者の自主的な取組を後押しし、また、自浄機能が十分でない事業者の体制構築を応援するような制度とすべきであるといった御意見もあるところであります。

個別の論点につきまして、まず、「退職者」というところでありますが、「主な御意見の概要」というところの下から2つ目の●印にありますように、退職者を不利益取扱いから保護する通報者の範囲に含めつつ、退職金不支給、再任用拒否といった不利益取扱いからの保護を求めるといった趣旨の御意見があります一方で、慎重な意見として、保護する通報者の範囲に含めるべきではないと。その理由でありますが、退職者が不利益を受ける場面はほぼないまたは特別な取扱いをしている一部の事業者との間に限られることから、一般法理に委ねるべきである。仮に含めるとしても、過去の事実関係の調査や認定が困難な場合も想定され、事業者に無用な負担を課すことになりかねないといった趣旨の御意見。

あるいは、退職者に対する不利益取扱いについて、報告書においても「おそれがある」との記載にとどまるなど、法で保護しなければならないほどの状況が発生しているとは考えにくいといった御意見もあります。保護の対象とする退職者の範囲について、期間制限を設けるべきでないという趣旨の御意見がありますが、他方で、その次の●印にありますように、事業者において退職者に該当するか否かの確認に不合理な負担を掛けないためにも、退職後、一定期間内の者に限定すべきであるといった趣旨の御意見があり、その退職期間につきましても、3年以内という意見に賛成という御意見もあれば、上から3つ目の●印にありますように、2年以内に限定すべきである、あるいは、下から2つ目の御意見にありますように、退職後1年以内にすべきであるといった御意見もみられるところであります。

4ページの「(2)役員等」について、役員等を通報者の範囲に含めることについて、諸外国の法令も引用しながら、賛成であるといった御意見がある一方で、保護の対象とする役員等の範囲というところでありますけれども、その上から3つ目の●印ですが、保護の対象とする役員等の範囲について、監査役、担当役員、社外取締役を除外すべきであるといった御意見や、その次の●印の御意見のように、会社法上の取締役や監査役を保護の対象に含めることは、取締役や監査役の職責放棄を認めるものであり、株主が責任を追及することができなくなるため、会社法と矛盾するのではないかといった御意見があります。こうした辺りは、専門調査会の報告書においては、どの範囲の役員を保護の対象とするかということについて、法制的・法技術的観点から検討すべきであるという取りまとめがされているところでありますけれども、そういった検討をするに際しまして、こういった会社法との関係や、役員といっても種々多様なものがあるといった御指摘は参考になるものと考えております。保護の内容について、一番下の●印にありますように、解任自体を無効とすべきであるといった御意見もあるところであります。

5ページにありますように、法人の役員が様々であるという実態を踏まえまして、対象の範囲や保護の内容をどう定めるかについては十分な議論・検討が必要であるといった慎重な御意見もあるというところであります。

6ページに飛びますけれども、「通報対象事実の範囲」に関する御意見でありますが、「(1)刑事罰の担保による限定」を外すことについて、積極的な御意見も多数みられるところであります。下から2つ目あるいは1つ目の●印にありますように、刑事罰の担保による限定を外すべきとか、単に法令違反行為を対象とすべきであるといった御意見もみられるところであります。

一方で、7ページの刑事罰の担保による限定を外すことに慎重な御意見でありますが、行政措置の対象となる規制違反行為の事実について、その範囲が広すぎる、予測可能性を害するのではないかといった趣旨の御意見もあるところであります。また、同じように、その次の●印にありますが、行政指導の対象となる規制違反行為については反対の御意見もあるところであります。法目的による限定につきまして、この際、現行法の法目的の限定を外すべきであるといった御意見もあるところではありますが、法目的の限定を外すことに慎重な御意見もあるところであり、その他の意見という「(2)法目的による限定」の枠の最後の●ですが、法目的の限定を外す方向であれば、法を消費者庁が所管することの是非についても議論が必要であるといった御指摘もみられたところであります。

8ページでありますけれども、外部通報の保護要件に関する御意見の「(1)2号通報の保護要件」でありますが、2号通報、行政機関に対する通報の保護要件を緩和することについて、積極的な御意見も多数みられたところであります。

他方で、9ページでありますけれども、慎重な御意見として、幾つか御指摘があったところであります。内容的には、濫用的な通報に対する懸念とか、あるいは国のガイドラインによって対応できるのではないかといった御指摘もありますが、もう一つ、私どもとして無視できないなと思いましたのは、3つ目にありますように、行政のキャパシティーの問題という点でありまして、調査すべき通報が調査されず、3号通報へと移行することになれば、事業者の受ける損害は小さくないといったことでありますとか、憶測による通報に基づき、行政機関が報告徴求や立入検査を実施した場合の事業者の負担の増加という点についての御指摘があるという点は注意しなければいけないのではないかと考えているところであります。具体的な緩和の方法につきまして、積極的な御意見として、1号通報と同じ要件にすべきという御意見も多数みられているところであります。

他方で、10ページの消極的意見にありますように、最初の●印でありますけれども、一定程度の予測可能性を確実に担保するという観点から合理的な緩和方法を見出すべきであるといった御指摘もあるところでありまして、この点も、この2号通報の要件緩和をするのであれば、専門調査会の報告書によりますと、その具体的な緩和方法について法制的・法技術的観点からなお検討をすべきであるという取りまとめがされたと認識しているところでありますけれども、こういった予測可能性の担保といった点などは参考にすべき御意見ではないかと思われます。

11ページのいわゆる特定事由について、追加に積極的な御意見も多数みられるところでありますが、他方で、上から4番目の●印にありますように、内部通報制度を導入していない事業者について、3号通報の特定事由を充足すべきことは当然であるという御意見でありますけれども、その体制不備を理由とした3号通報を回避するためだけの形式的な体制整備の増加を懸念するといった御意見もあるところであり、これはその3号通報の特定事由を追加するのは良いのですけれども、その3号通報を回避するだけの形式的な体制整備の増加につながってはかえって元も子もないという御指摘であり、この3号通報の特定事由の追加を検討する際には重要な御指摘であると思います。他方で、特定事由の追加に慎重な御意見としまして、11ページの一番下の●印にありますように、内部通報体制の整備の有無に関する客観的な判断は難しいのではないかといった御指摘。あるいは、12ページにありますように、特定事由に対して追加すべきでない、その理由として、2号通報を前置すべきであるといった御指摘もあるところであります。特定事由の中でのいわゆる財産に対する危害を特定事由として追加するということに関しまして、回復の困難性や多数性など一定の要件が認められる場合を追加することに賛成であるといった趣旨の御意見も多数あったところでありますが、他方で、慎重な御意見として、立法事実を十分に確認の上、重大かつ極めて悪質な事案で、対応に緊急を要するもののみを対象とすべきであるとか、こういった御意見もあるところであります。同種の御意見は、一番下の●印で、その回復の困難性に関しまして、旅行業者や貸衣装業者の一部が実質的な経営破たん状態に陥っていながら、それを秘匿して消費者と新規契約の締結を継続していたようなケースに認められると考えるといった具体例を念頭に置いた御意見もあり、今後の検討においては、参考にさせていただきたいと思います。

少し飛びまして、15ページの「通報体制の整備」に関する御意見でありますけれども、積極的な御意見もあるところであります。

他方で、16ページでありますけれども、慎重な御意見もあるところでありまして、慎重な御意見の1つ目の●印にありますように、事業者ごとに規模、業種・業態等が大きく異なることから、通報体制の整備・運用について、いわゆる内部統制システムの一環として、会社法の規律に基づく各社の取締役会の判断・設計に委ねることが合理的ではないかといった趣旨の御意見とか、内部通報体制の整備義務は導入を見送り、認証制度を通じて内部通報制度を設置していることが評価される価値観を確立し、企業による自発的な内部通報体制の整備を促すべきであるといった御意見もあるところでありまして、規制を強化するのか、自主的な対応を促していくのかといった手法に関する価値観の対立とでもいいましょうか、そういったところがまだあるのではないかと思われるところであります。

この通報体制整備に関する義務の履行を確保するための措置という、18ページのところでありますけれども、行政措置の導入に積極的な御意見もみられるところではありますが、それに対して行政措置等のペナルティーは必要ではないといった趣旨の御意見もあるところであります。

19ページの守秘義務に関する論点でありまして、これは専門調査会の報告書においては、通報受付担当者個人に対する守秘義務の導入については慎重な検討が必要であるという取りまとめがされたかと認識しているところでありますけれども、なお、導入に積極的な御意見も強く多くみられたところであります。それに対し、慎重な御意見の理由でありますけれども、19ページにありますような、端的に言いますと、担当者への萎縮効果についての懸念が大きいところかと思います。

23ページでありますけれども、「不利益取扱いをした事業者に対する行政措置、刑事罰」に対する御意見でありまして、「(1)行政措置」の最初の●印にありますように、積極的に導入すべきであると。2つ目の●印にありますように、その内容としては、是正命令制度の導入なども不可欠であるといった意見も多数あります。

他方で、消極的な御意見もあるところでありまして、それが24ページの真ん中辺りでありますけれども、まず、行政措置の導入自体は積極的としても、その措置の種類や導入の方法に慎重な御意見という点でありまして、最初の●印、導入すること自体に反対はしないがということではありますが、私どもが無視できないなと思いますのは、通報対象事実に関する専門的な知見がなければ不利益取扱いに係る調査であっても運用することが難しいのではないかといった御意見や、行政措置の導入に慎重な御意見の●印ですけれども、通報を契機とした不利益取扱いと通常の人事措置の判断は難しいため、消費者庁が調査や事実認定を適切に行える体制が整備されるまで行政措置を導入すべきでないとか、その次の●印にありますように、行政措置を実施する際の調査や事実認定を慎重かつ十分に実施する体制を構築できるのか疑問であるといった懸念も示されているところであり、こういったところにどう対応していくかというのは重要な課題であると認識しているところであります。

最後、もう一点だけ、25ページでありますけれども、「立証責任の緩和」に関する御意見でありまして、この点も、専門調査会では、今後、必要に応じ検討を行うべきとされたと認識しているところであります。

26ページにありますように、その立証責任の転換については、積極的な意見が非常に多数みられたという点であります。他方で、転換に慎重な御意見もあったところでありまして、例えば、●の2つ目にありますように、実務上、解雇における立証の大部分は既に事業者が担っているため、法律上で立証責任を転換しても効果が薄いのではないかと。むしろ制度を悪用する従業員による濫用的通報を誘発するおそれが多いのではないかといった御指摘もあったところであります。

個別の論点の御紹介は、以上でございます。

総じて言いますと、規制強化か自主的取組の尊重かという、いわば一種の価値観の対立のようなところがまだみられると思います。また、その御意見をそれぞれが出される際の前提として、どういう事案に対する手当てが現行法は足りず、どういう事案を念頭に置いて手当てを講ずべきかというところについての共通認識をしっかり構築していく必要があるのではないかと。こういう事案について現行法では足りないから、こういった手当てを講ずるのですといったところの念頭に置いている事案や手当ての必要性についての共通認識を更に構築していくようにいろいろと調整をしていく必要があるのではないかと思われるところでありまして、私どもとしては、こうした様々な御意見をいただきましたので、これを十分に受け止めて、更に引き続き検討して、しかるべきタイミングで法改正を含めた必要な措置を採るということにつなげていきたいと考えているところであります。

雑ぱくでございますけれども、御説明は以上であります。

○高委員長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明に関しまして、御質問、御意見がございましたらどうぞ御発言ください。

どうぞ、池本委員長代理。

○池本委員長代理 御説明ありがとうございます。

今回の、この1月下旬から3月下旬まで、約2カ月間の意見聴取、これを公益通報者保護法専門調査会報告書の取りまとめとの関係で、どういう趣旨でどう受け止めれば良いのかというのは、私どもは理解しかねるところがあったのです。その関係で、今回の意見で集められたものをどう今後評価していくのかということに関連しますので、お伺いしておきたいと思います。

専門調査会は、その前に消費者庁の中でも検討会が行われ、様々な論点について、事業者側と労働者、市民の側とで意見の対立がたくさんあって、その途中では、意見募集なども行われたりして、そういう論点や対立点も見据えた上で、専門調査会では、学識経験者、労働者側委員、更には事業者側委員、審議の中間では事業者団体のヒアリングなども行った上で、おおむね3つに結論を分けました。おおむね一致できるものについては、何々をすべきであると書き、おおよその方向性は出たけれども細かい要件の詰めや選択肢の関係で、「法制的・法技術的な観点から整理を行い」これこれをすべきだという少し宿題を残した論点と、3番目には、必ずしも方向性自体について意見の一致まではみられなかったので「今後必要に応じて検討する」という、3つの色分けを付けて報告書の取りまとめをしていたと思います。

ところが、今回の意見募集が、その提言部分全体についてそっくり意見を求めますということだったので、今、御報告を受けた中でいうと、意見の一致を見ていたことについても、改めて賛成・反対がばらばらと出て、また同じ論争を蒸し返しているような印象も受けますし、法制的・法技術的な観点の整理について、一段踏み込んだ、理由付けも含めた意見が出ているようにも思われますが、細部を細かく読み切れていないのですが、その辺りの意見を取った中で、法制的・法技術的な観点からの整理に資する意見として蓄積できたということになるのか。

今後必要に応じて検討ということで、専門調査会段階では、今回、同時には見送りかなという感じだったところも、同じレベルで意見募集をして賛成・反対を採っておられる。この取扱いと、方向性が出ているけれども意見がまだ対立していますというものの取扱いと、全部一緒のように見えてしまうのです。その辺り、消費者庁としては、もとの専門調査会報告書とこの意見募集との関係をどういうふうな位置付けで受け止めて、今後、進めようとされているのかという基本のところでお伺いしたいと思います。

○高委員長 ありがとうございます。

御説明をお願いできますか。

○消費者庁加納消費者制度課長 専門調査会は専門調査会で取りまとめられたと思いますので、それは専門調査会の委員の方々のコンセンサスとしてはこうだったというものだと思います。

他方で、意見募集を実施したことについては、専門調査会には必ずしも関わっていない事業者や事業者団体、あるいは、例えば、報道機関など、そういった方なども含めて幅広い方の意見を聞いて、それも参考にする必要があるのではないかと考えたというのが一つであります。

専門調査会の取りまとめは、いろいろと賛成・反対がある中で取りまとめられたものということで、それはそれで尊重すべき御意見だと思いますが、他方で、専門調査会の取りまとめ自体に対しても批判的な御意見があると認識しておりまして、そうした専門調査会の取りまとめに対する批判的な御意見は、何がその理由なのかということについて、しっかり私どもとしては把握しておきたいというのもあります。

また、法制的・法技術的検討というのは、個別の要件の細目に係るところが多いのは事実でありますけれども、例えば、先ほど紹介した2号通報の要件を緩和するといったことを考えるに際し、1号通報と同じような要件で良いのだという割り切った意見もある一方で、それに対して慎重な意見もある。これは専門調査会の議論の状況もそうであったと思いますが、仮に中間的な要件設定を考えるとした場合には、どういう事案を念頭に置くのかとか、そういうところを整理しないと、適当に決めるということはできません。また、その緩和した場合にどういうメリット・デメリットがあるのかということもしっかりと把握しないと法制的検討はできませんから、そういう意味で、要件緩和をするならすると、例えば、それは一つの例でありますけれども、そうした場合に、どういう事案を念頭に置くのか、仮に緩和した場合にどういったメリット・デメリットが有り得るのかということについては、意見を聞いておかないといけないのではないかと。その法制的な検討を進めるに際して、素材がないとその検討は進みませんので、そういう意味で意見を聞いておくべきであろうと考えたところであります。

パブコメでいただいた意見がそれで全てなのかというと、それはそうとも限りませんので、具体的にどうなのかというのは、いろいろと更に個別に事情をお伺いしたりするといったことが場合によっては必要になってくるかとは思いますけれども、細かいところでどこまで保護の対象になるかならないかということが決まるわけですので、そういった線の引き方については、具体的な事案を念頭に置きながらの検討が必要ではないかと。そういう観点で、こういう意見募集もして、さらにそれ以外のいろいろなヒアリングなどもしながら検討していきたいと考えています。

○高委員長 どうぞ。

○池本委員長代理 今御説明があった中の法制的・法技術的な観点から整理を行うというところについて、どういう具体的な要件設定をすべきか、そのための立法事実、根拠事実、あるいは関連する制度等のことについて聞きたいというのであれば、そういう論点提示をしておけば、そこについて集中した意見が出たのではないかと思うのですが、調査会で各分野からの意見も聞いていろいろな意見が一致したことについても、それ以外の意見も聞いておく、いろいろ意見がございましたというもの、あるいは今後必要に応じて検討についても賛成・反対がやはりあります、それは当然あったからそういうふうにしたのですが、全部がパラレルになっていて、意見募集の趣旨が、意見を出す側にとってもぼけてしまっている、あるいは集約する上でもそこがぼけてしまっているのではないかということを危惧しているものですから、そこをお伺いしたいのです。

○消費者庁加納消費者制度課長 例えば、2号通報についてだけ意見募集をするということも場合によってはあるかもしれませんが、ただ、論点は多岐にわたっておりまして、例えば、法制的・法技術的な検討を要するというのも、専門調査会の報告書でも7から8カ所ぐらいはあったと思います。そういうものについては、聞くのだったら7から8カ所についてもちゃんと聞くのだという話になりましょうし、他方で、先ほども申し上げましたように、専門調査会の取りまとめ自体に対して批判的な御意見もあると認識しております。

○高委員長 具体的に、今日いただいた資料のどこにそういう記載があるのか、教えていただけませんか。

○消費者庁加納消費者制度課長 それは必ずしもこの資料というわけではないですが、例えば、いろいろなシンポジウムとか、そういうところに出たりしますと、専門調査会の取りまとめ自体について批判的な御意見もお聞きします。例えば、やはり罰則規定については必要ではないかといった御意見も聞くわけでありまして、そういった御意見は、それはどういう点にこだわっておられるのかという点について、きちんとこういった形でパブコメという形で意見を聞いておきたい。その御意見もしっかりと吟味していきたいと考えているところでありまして、あと、メリハリの付け方は確かに工夫の余地はあったかもしれませんが、専門調査会の報告書について、全体として世の中がどう受け止めているのか、聞く機会は設けておくのが良いのではないかと思います。

○高委員長 他、御意見はございませんでしょうか。

どうぞ、樋口委員。

○樋口委員 今回の調査の位置付けなのですけれども、私は全く理解ができないのですが、確かこの専門調査会には消費者庁は参加していますし、実質的に様々な局面で消費者庁の行政としての意見を述べる機会があったのではないかと。最終的な報告書をまとめる際も、消費者庁は審議官以下同席しておられて意見も述べているのではないか。確かにその中ではよく意見を聞いてということはありましたけれども、基本的には専門調査会の議論を尊重しながら、行政として何ができるかということを検討していただくというのが、本来の専門調査会と消費者庁の基本的な関係ではないかと思います。

これまでもそのような形で、消費者契約法あるいは特定商取引法、立法の過程で内容がいろいろな事情で変わったり、国会でいろいろな議論があったりということは当然あるわけですけれども、そういうスタンスでやってきたわけでありまして、そういう流れの中で、今回の調査が、池本委員からもお話がありましたけれども、必ずしもよく理解できないような気がするのですね。論点があることは十分承知した上で専門調査会として意見をまとめ、それは委員の意見ではありますが、事務局を補佐している消費者庁が、十分その点について事前に把握をして委員に伝えるという義務があったはずでありまして、報告書が出た後で、世の中にこういう意見があると、もちろん意見はあったはずですが、それこそ消費者庁が事前に把握をし、事務局を補佐する立場から、消費者委員会の事務局にもそういうことを伝えなければいけないということではなかったのかと。

今後については、お話では、しかるべきタイミングで法改正を含めた必要な措置を採るというお話でした。そのしかるべきタイミングというのはどういうスケジュールをお考えになっているのか、法改正を含めた必要な措置というのはどういう中身を想定しておられるのか、現時点でその点についてお話を伺いたいと思います。

○高委員長 お願いできますか。

○消費者庁加納消費者制度課長 この専門調査会で、消費者庁が一定の関与をしたといいますか、それはそのとおりでありまして、いろいろと資料もお出ししていたと思いますし、いろいろと委員から御質問があった場合には消費者庁の担当者がそれに対して答えるという形で議事が進行されてきた、それはそうだと思います。他方で、この専門調査会の取りまとめは、これは消費者委員会の取りまとめであると。消費者庁ではなくて、消費者委員会の取りまとめであると。そこはやはり一線が引かれているものだと思います。消費者庁と消費者委員会との関係はそういうものであると。

消費者庁が事務局とどういう関係にあったかということについて、この場でいろいろと言うのは控えたいと思いますけれども、それは消費者庁としてはいろいろと消費者庁としての考えがあり、委員会事務局としては事務局としてのお考えがあって、それでいろいろと調整をしていただいて、最終的には専門調査会として取りまとめられたものと思いますので、それはそういう手続がとられたものであることは事実でありますけれども、あくまでも取りまとめ自体は専門調査会としての取りまとめと認識しています。

問題は、この公益通報者保護制度というのは、これまでの消費者契約法や特定商取引法とはちょっと毛色が違うといいますか、単純に消費者・事業者サイドと分け切れるものではなくて、例えば、労働の問題とか、通報を受け付ける側として大きいのは、報道機関、マスコミでありまして、そういうマスコミの方々がどういうふうにこれを受け止めておられるのかとか、最終的にはこれは法律ということになりますので、幅広くいろいろなところに影響が波及するものだと思いますから、それは広く意見を聞いていく機会を設けていくのが適当だろうと。

確かに、幾つかの立法をする際に、この消費者委員会でいろいろと審議をいただいたということはこれまでにございます。消費者契約法もそうですし、それ以外にも様々な立法を私もやりましたが、こちらで専門調査会を取りまとめていただいて、それを基に立法をしてやってきたというのはそのとおりであります。

ただ、その際においても、例えば、消費者契約法においてもそうですが、あるいは、私が担当したものであれば、景表法の課徴金制度や集団的消費者被害回復のための訴訟制度など、そういったものについては、専門調査会の取りまとめの後でそれぞれパブコメはやっています。幅広く意見を聞いた上で、その意見を精査して、その意見の中でなるほどと思われるところがあれば、それに対する手当てを考えた上でやるという手順を尽くしてやっていますので、今回も、意見を聞いてやるということは、この制度はとりわけ単純な消費者問題ではない側面がありますので、やっておくのが適当であろうと。

最終的に、こういった立法というのは、国会とか、そういったところでどういうプロセスを経てこういう法案になったとかというのは検証されますので、こういうふうな手順を尽くして、こういう意見に対してはこういうふうに考えましたというような説明がきちんとできるという段階で初めて法案が出せるものだと思いますので、そういった検討は丁寧にやっていく必要があると。

法案の提出時期やその内容ということですが、それは今の時点では何とも言えません。こうした御意見なども含めつつ、更に法制的・法技術的な検討ということで課題が残されているところも多々あるわけでありまして、細かいところと言われるかもしれませんが、細かいところの線の引き方が重要になってきますので、そういう細かいところをなぜこういうふうに線を引いたのですか、これを入れなかったのはなぜなのですか、これが入るのはなぜなのですかということについて説明が尽くせるように、きちんと中身を詰めるといった作業をしていきつつプロセスを進めていくしかないと思っておりまして、現時点で、こういった内容であるとか、この時期に法案を提出する見込みであるというのは、私の立場からは何とも言えません。

ただ、私としては、この公益通報者保護法は非常に重要な制度であり、その実効性強化を図ることは消費者庁にとっても重要な課題であるということで、消費者庁としては、今までガイドラインの改正や認証制度の導入など、いろいろとツールを尽くしてやってきたつもりでありますけれども、最後の仕上げと言うべきこの法改正についても、何らかの形でやっていきたいとは思っております。

○樋口委員 今の制度課長の御説明は、私は必ずしも納得できないと思っています。なぜかというと、労働やマスメディアの御指摘がありましたけれども、専門調査会の中でもそういった議論はいろいろ行われてきましたし、それだけ重大な事項があるのであれば、専門調査会の説明者として消費者庁も説明していましたから、その時点でその点について問題提起をすべきであって、もちろん全ての関係者が専門調査会のメンバーであったわけではありませんけれども、有識者として専門調査会の方々が判断をするに当たって、そういったことを消費者庁が事務局を補佐する立場で十分説明すべきであったのではないかと。それを事後におっしゃるのはおかしいのではないかというのが1点。

それから、細かいところとおっしゃいましたけれども、細かいところあるいはその実態に即してというところについて課題があるのであれば、それをあらかじめフォーカスをして、それを消費者庁の実務的なところに委ねる必要があるというならもちろん委ねるべきでありますが、細かいといっても、それが全体に関わるのであれば、むしろ専門調査会で議論すべきではなかったかと。そういう意味では、消費者庁の御方針に一貫性がないように思います。

あるいは、これは消費者委員会の存亡に関わるところでありますけれども、消費者庁と消費者委員会の関係ということについて、是非もう少し検討し直していただきたい。もちろん消費者庁と消費者委員会が同じ意見を言うという立場には立っていないことは十分承知をしていますし、消費者委員会が、外部の目で物事を考えていくということは当然だと思いますが、重要な論点について事後的にそういう御説明があることは私は納得できない。そういうことがあるならば、消費者庁が、十分検討時間があったわけですから、その時点で委員会の場でも公の発言を多々やっていますし、最後に審議官が確か御発言になられましたけれども、そのときも、例えば、こういう論点が明確にこの専門調査会では行われなかったから、これについては消費者庁が今後検討していくというスケジュールを示すべきであって、そういったことがないままに、もちろん意見を聞くということはおっしゃっていましたし、そういう文章が最終的な報告書の中に入っていることは間違いないと思いますけれども、その辺りの手続をきちんとしていかないと、専門調査会が今後開かれるに当たって、その専門調査会の意義あるいは消費者委員会の意義が問われることになりかねないということで、今の御発言については、私は非常に懸念しております。

○高委員長 よろしいですか。

○消費者庁加納消費者制度課長 反論というわけではないのですけれども、先ほど申し上げましたとおり、専門調査会の取りまとめが得られた後にパブコメをするというのは、別にそんなに珍しいことではなくて、私は今まで専門調査会で報告書を出していただいて幾つかの立法をやりましたけれども、それらにおいては、専門調査会の取りまとめがされた後にいずれもパブコメをやっています。それは、専門調査会では拾い切れなかった意見があるかもしれないから、そういったことについてもできるだけ漏れのないように幅広く意見を聞くという観点でありまして、特に今回だけ珍しいというものではありません。通常のことであります。

消費者委員会と消費者庁の関係というのは、私もなかなか難しいところがあると思います。それはそれで、いろいろな議論を踏まえた結果、今の消費者庁と消費者委員会の関係になっているわけでありますから、それについて直ちにどうこうという話ではないのだろうと思います。今の消費者庁と消費者委員会との関係で、相互に協力をして、できるだけ良い制度を作るようにお互いに努力をするということに尽きると思います。その中でお互いに何ができるかということを考えるべきであって、批判を応酬し合うというのは不幸であると。

確かに、消費者庁がこの専門調査会でいろいろと資料もお出しして説明もして、そういう中で取りまとめられたという意味では、関与はしております。関与はしておりますが、この専門調査会の報告書を読みますと、それでもやはりまだ詰め切れていない論点が残っているように見受けられます。それが端的にあらわれているのが、法制的・法技術的に検討を要するという幾つかの項目であります。では、具体的にこれはどういうふうに条文化するのですかということに関する手掛かりが、現状においてはありません。それは、何らかの事案とか、先ほど申し上げましたように、具体的にどういう事案を想定して、現行法のどこが落ちているのかということをしっかりと見極めた上で、様々な類例とか、そういったものに照らしつつ、こういった制度的対応が良いのではないかということを丁寧に構築していくしかない。これは他の立法も恐らくそうだと思いますけれども、この立法についても基本的には同じであると思いますので、そういった手順を踏んで積み重ねをしていくといったことがない限りは、結局は物にならない。この法律に限らず一般的にそうだと思いますけれども、そういうことだと思いますので、そこはしっかりやっていく必要がある。

これは消費者委員会の意見を軽視するとかないがしろにするとかということとは全く別の話でありまして、消費者委員会の報告書で出された専門調査会を最大限尊重するというのは当然でありますが、それを実現するためには何をしなくてはいけないかというのも他方で考える必要があるということを申し上げたいと思います。

○高委員長 専門調査会の報告書の内容を実現するために、今、検討されているという解釈でよろしいですね。

○消費者庁加納消費者制度課長 専門調査会の内容を最大限尊重したいとは、私というか、消費者庁としては常々そういう認識であります。ただし、そのためには詰めなければならない点がまだあるという認識です。

○高委員長 ありがとうございます。

長田委員。

○長田委員 今更の話ですが、先ほどから景品表示法の課徴金のところでもパブコメをやりましたとおっしゃっていましたけれども、あれは、専門調査会の報告書に対してではなく、消費者庁でまとめられた案に対してのパブコメをやられたのではないかと記憶しているのですね。だから、今までもやりましたという御説明は、法改正に向けて何か考え方みたいなものを出されたものについて意見を聴取されたのではないかと記憶しておりますので、そこはちょっと違うのではないかということを申し上げたいと思います。

○高委員長 お願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 景表法の課徴金のときはそうだったかもしれませんが、消費者契約法のときは専門調査会の取りまとめでそのままパブコメをやりましたね。そこは、出入りはあったかもしれません。

ただ、共通しておりますのは、景表法もそうですけれども、基本的には専門調査会の答申を受けて、できるだけそれを実現するという方向でやったつもりです。その内容についてパブコメをやったと認識しています。

○長田委員 今回のパブコメの結果で、先ほどからおっしゃっている、例えば、マスコミ、メディアがどう捉えているかという意見が聴取できたのでしょうか。この概要を拝見してもそれは分からないのですけれども、そこを教えてください。

○消費者庁加納消費者制度課長 具体的にどういうところから個別にあったかということについてはこの場では差し控えたいと思いますけれども、幅広く御意見を頂戴したと。この中では、私どもが念頭に置いていた、こういうところからも意見がくれば良いかなと思っていたところから来ていないものもありますけれども、ただし、こういう機会を設けたからこそ、今までにはない意見も来ている。今までの専門調査会ではなかったけれども、なるほど、こういう観点もあるのだなという御意見があったのも事実であります。

○高委員長 よろしいですか。

今、消費者契約法専門調査会の中間とりまとめに関する意見募集をやったのですけれども、最終のものもやっているのですか。最終のものはないですよね。最終的にこちらが出した答申に対して。

○消費者庁加納消費者制度課長 答申に関して、意見募集をやっていると思います。

○高委員長 では、ちょっとお伺いしたいのですけれども、今、新しいいろいろな御意見が出てきたという話なのですけれども、私が見る限りほとんど専門調査会の中で議論された内容がもう一回出てきていると認識しておりまして、しかも、意見募集の件数ですけれども、2カ月間でこれだけの数、多いという意味ではなくて、例えば、消費者契約法専門調査会のときの中間取りまとめのときの意見募集は2,450通です。特商法の専門調査会のときの意見募集も、これらは2カ月ではなくていずれも1カ月ですけれども、1カ月で4万315通です。それぐらいいろいろな意見が出ている中で、今回のものは極端に数が少なく、要するに、ほとんど議論が尽きているから数がそれほど出てこなかった、しかも2カ月も掛けてこの程度ということであれば、そんなに新しい知見を得たというものはないのではないかと思うのですけれども、具体的にどういう指摘が重要であったとおっしゃっているのか、教えていただけませんか。

○消費者庁加納消費者制度課長 それは幾つかありまして、先ほど御紹介した中でも何点か指摘させていただいたつもりですけれども、例えば、役員とか、いろいろと御意見が出ました。役員としてどこまで対象を広げるべきかという論点がありますが、例えば、4ページでいうところの上から3つ目の御意見とか、内部通報体制構築に関する御意見で、16ページの慎重な御意見ということで申し上げた●印の2つ目の御意見とか、他方で、総論的な御指摘になりますけれども、1ページの一番下にあるような●印にある御意見とか、こういったところは専門調査会の御意見では余りみられなかったのではないかと。割とユニークといいますか、個人的に面白い御意見ではないかと思いました。

○高委員長 では、幾つか新しい意見はあったということですね。

○消費者庁加納消費者制度課長 幾つかというか、その意見の内容が面白いものがありました。

○高委員長 解釈の問題と。

○消費者庁加納消費者制度課長 いちいち言っていたら切りがないのですけれども、1ページの一番下にある御意見というのは「2号通報及び3号通報のチェック機能」という言い方なのですね。こういう発想はなかなか面白いなと思いますね。専門調査会でもあったのかもしれませんけれども、専門調査会の報告書の中を見る限りでは、余りこういう発想はないのではないかという気がします。これは総論的な視点なのですけれども、非常にユニークかつ面白い御意見だと思います。

確かに件数が少なかったというのは事実でありまして、それをどう見るかというのはいろいろあると思います。現時点ではそれだけ世の中の関心が少ないということの裏返しかもしれませんが、他方で、こういう期間を設けておくことがプロセスとしては重要だと思います。

○高委員長 分かりました。

他、御意見はございますでしょうか。

どうぞ、大森委員。

○大森委員 加納課長、もし大企業で内部の重篤な問題があるとき、加納課長は現状の制度の中で通報できますか。私は、今の状況ではとても恐ろしくて通報できないなと思っているのですよね。もう少し法律でしっかり縛っていただかないと。

今まで私たち消費者の被害拡大を防止したのは内部の告発のおかげで、消費者の安全が保たれているというところが多いわけですが、結局、告発者が会社を潰したり、失業したりたということがあって、そういうことを無くそうということで公益通報者保護制度という法律ができました。

私は素晴らしいなと思って、できたときは本当にがさがさだけれども、どんどん良くなって使いやすいものになるのだろうと、一消費者としてとても期待していたのです。消費者庁もいるし、消費者委員会もいるし、一般消費者もいろいろ意見を挙げていくと、どんどん使いやすいものになっていくのだろうと期待していたわけです。できてから大分たつけれども、あまり改正が進まず、それで今回の取りまとめを尊重するけれども法案の提出とか内容については未定だというのは、とても残念に思います。

消費者庁の役割として、いいかげんな制度や法律を作って混乱するというのも消費者庁の信頼を無くすかもしれませんけれども、こういう良い制度を有効なものに育て上げていくこともとても大切な仕事なので、その辺りをもたもたされても一般消費者からは信頼を無くすことにつながるので、是非使いやすい制度に一日も早く仕上げていただきたいなと思います。

お願いです。

○高委員長 どうぞ。

○消費者庁加納消費者制度課長 エールだと思って受け止めさせていただきますが、現在の公益通報者保護法が、完全無欠といいますか、完璧な制度で、全く修正の余地なしと思っているわけではありません。やはり手直しするべきところはあるのだろうと思いますが、他方で、この公益通報者保護制度がどうにもならない法律かというと、それはそれでまた極論でありまして、一定程度、法令遵守ないし違法行為の是正につながっているという側面もあるのだろうと。良いところは伸ばして、悪いところは直していくとやっていくのが合理的な対応だと思います。

大森委員が規制を強化してと一言ちらっとおっしゃったのですけれども、それも一つの手法であるとは思いますが、他方で、規制の強化ではなくて自主的な取組の促進をもっと重視してくれという意見があるのも事実なわけですね。そっちのほうがうまくいくのではないかと。それに対してどういうふうに仕組んでいくのが良いのかというのは、よく考える必要があると思います。

私どもとしては、自主的な取組を促進するということでガイドラインを作ったりとか、認証制度を運用するとか、そういうものをやっているつもりなのですけれども、それでどうなのかと。さらに自主的取組ということにもっとウエイトを置くべきなのか、それともそれはそれに委ねつつ、規制という形でしっかりと縛りを設けていくという発想も当然あるわけであります。ただし、それをするにはある程度のメリハリといいますか、どういうことを念頭に規制を設けるのですかというところの整理がないと、それは結局うまくいかない。

もたもたしているのではなくさっさとというのは、お気持ちは十分理解するのですけれども、他方で手順は踏まないといけませんねというのが、今の時点で私が申し上げられることです。

ただ、この制度が重要でないと考えるのだったら、そもそもこういうことはしないわけであります。諮問だってしないし、そのほかの取組だってしないわけであります。そうではなく、私どもとしては、できる範囲のことはしてきていると。更にこういったこともやっていくべきであると。ただ、それには手順を経て、プロセスを経て、慎重な検討を積み重ねていく必要があるということでありまして、そこは引き続き努力を重ねていくしかない。

今時点で言えるのは、それだけであります。

○高委員長 ありがとうございました。

よろしいですか。

鹿野委員。

○鹿野委員 私からもお願いということになると思いますが、一言申し上げます。一般論としては、自主的な取組でうまくいくようなところについてはそれを促進し、それが不十分なところについてどのような規制等をかけていくのかを検討するという発想自体は理解できるところではございますが、この公益通報者保護法については、これが制定されて、残念ながら十分にうまく機能していないところがあるということです。一方で自主的な取組を促すということも行われてきたのだとは思いますけれども、その限界を踏まえて、この専門調査会での検討が行われたのではないかと思っているところです。その点も十分に踏まえていただければと思います。

専門調査会の報告書は最大限尊重し、必要な対応をしていくということは先ほどおっしゃいました。また、そのときにどういう事案を念頭に置いて手当てを必要とするのかということを具体的に考えていかなければいけないということもおっしゃいました。そのこと自体は否定するものではなく、あえて言うと、専門調査会でそれをやらなかったのかというと、それはやったのではないかとも思っているのですが、ともあれ、そのこと自体は否定するものではありません。けれども、先ほど委員もおっしゃったように、これについてはずっと同じような議論を繰り返しているわけでして、それがいつまで続くのかという気がしているところでございます。もちろん、早目に手当てを講ずるということがしやすいものと、関係各位の理解を更に求める必要があるものといろいろあるかもしれませんけれども、できるだけ速やかに、先ほどおっしゃったように、この報告書の趣旨を踏まえて、御検討を進めていただければと思います。

要望ということです。

○高委員長 ありがとうございます。

山本委員、ございますか。

○山本委員 今まで出された意見については、私も同感というところがありますので、その点については繰り返しません。

1つ伺いたいのですけれども、専門調査会の答申が出されてから約5カ月たっています。このパブコメがその間に行われて、その締切りが3月末だったと思います。そこの時点から2カ月がたっています。パブコメの件数自体は、先ほど話がありましたように、87件ですかね。他のパブコメの場合に比べてそれほど多くの数ではありませんので、それを分析するのにそれほど時間がかかるとは思われません。

つまり、この5カ月あるいは2カ月の間に、消費者庁で、具体的にどのような論点について、どのような選択肢、有り得る選択肢をお考えになって、どのような検討をされたのかということをお伺いしたいと思います。それは消費者委員会の専門調査会の意見を受けてという部分もあるでしょうし、先ほど少しお考えになった後でパブコメの中で特に注目すべきという意見を3つほど挙げられたのですけれども、それに関することもあろうかと思うのですけれども、そこのところを少し伺わないと、パブコメをしましたという場合も、必ずその後にパブコメをした主体はそれについてどう考えるかということを言うわけですよね。ですから、この5カ月ないし2カ月の間に、具体的にどのようなことを御検討されたのかということをお伺いしたいと思います。

○高委員長 お願いできますか。

○消費者庁加納消費者制度課長 まず、私は、3つほど、注目すべきといいますか、ユニークな御意見と申し上げましたけれども、他にも幾つかあるにはあります。それをぱっと言われてぱっと答えろと言われると、目についたものということでぱっと適当に答えましたけれども、意見を子細に読みますと、なるほど、こういう着眼点があるのかという意見は他にも幾つかあります。そういった御意見を踏まえながら、私どもとして今まで認識していなかった論点への気付きを与えていただいたものと考えて検討を進めていくと。

具体的にどういう検討をしてきたのかという御質問かと思いますけれども、私どもとしては、専門調査会の内容をできるだけ法制化するためにはどうするかという検討を重ねてきているということに尽きます。

具体的にどうするかということについては、現時点でこの場で申し上げることができる内容はまだありませんけれども、それぞれ個々の論点について、法制的・法技術的な観点から検討するというものについて、どうするのかと。例えば、役員についてどの範囲かというのがあります。役員も非常に様々な役員がありますから、取締役もあれば、執行役もあれば、監査役もあれば、監査等委員もあれば、そういったものの中でどれを入れてどれを入れないのかというのは、法人制度もたくさんありますので、会社だけではありません。様々な法人がありますので、それのうちどこに線を引くのかというのを、ああでもない、こうでもないと言っていろいろと考えると。その際に、どこまでにニーズがあるのかとか、どこまで保護の対象とすべきなのかといったことの比較衡量をシミュレーションをしながらやっていく。

あるいは、例えば、行政措置の論点についてもありますけれども、これも具体の事案でどういうふうになるのかということを考えないと、どういった落とし穴があるかというのは分かりませんので、例えば、ある事案があったと。その事案について具体的な行政措置をするとしたら、こういった調査をして、こういうふうな事実認定をして、こういう勧告や公表をするのだろうということをシミュレーションしながら整理をしていく。そういった検討の中で、まだ難しい点があるのではないかということを思うときもありますし、こういうふうなことを考えればうまくいくのではないかと整理できることもありますから、それを繰り返すと。

さっき鹿野先生がそういった論点については専門調査会の中で検討されているはずとおっしゃって、それであればそれに越したことはありません。ただ、そこがはっきりしない点が残念ながら残っているというのもやはり否定できないところであります。例えば、消費者契約法の専門調査会、先ほどパブコメをやるとか何とかありました。私も、その専門調査会のときには、消費者庁から出て議論もやりました。説明者となったわけでありますけれども、その報告書では、こういう事例を念頭に置いて手当てをするのだということを取りまとめの最後に付けるわけですね。あるいは、なぜ手当てをするのかということで、こういうデータがあるからこうなりますということを付けたりするわけですけれども、そういうものに相当するものが今回の公益通報専門調査会では残念ながらない。ない中で検討しなくてはいけない。例えば、行政措置について、重大かつ悪質な事案についての勧告・公表というものを措置すべきと取りまとめでは書いてありますが、その重大かつ悪質な事案はどういう事案を念頭に置いているのか、ここをはっきりさせないと、手当ての講じようがないわけであります。そういうところをしっかりと詰める必要がある。

ただ、それをやらないと言っているわけではありません。そういうものを詰めた上できちんと制度化をすべきであると今のところ私としては思っていますので、引き続きそういった作業をやっていきたいと思っています。

○山本委員 済みません。私が伺ったのは、この5カ月ないし2カ月の間に具体的にどの論点についてどのような検討をされたのかということを伺ったのであって、御意見を伺ったわけではなく事実を伺ったので、その点についてお答えいただきたかったのですが。

○消費者庁加納消費者制度課長 それをまともに答えると、とても短時間で答えるのは困難であります。論点はたくさんあります。この専門調査会で提示された論点、それぞれの論点について、先ほど申し上げましたように、例えば、役員の範囲をどうしますか、行政措置を導入する場合にどういう事案を念頭に置きますかということを、具体的な事案を念頭に置きながら整理・検討しているということでありまして、例えば、役員だったら、監査役がありますね、監査等委員がありますね、執行役がありますね、それについてどうかということをこの場でお話しするのですかというと、それはとても。

○山本委員 だから、それをやっておられて、一応の案を得られて、どこまでお話しできるかという問題はありますけれども、内部で一つ一つの法人制度について検討していますということですね。

その話自体は専門調査会の場面でもお話は出ていましたし、事前の準備の段階でも私は伺っていますので、そのこと自体は私も認識しているつもりなのですけれども、その点について検討を進められているということなのですね。

○消費者庁加納消費者制度課長 そういうことです。そういうことですが、具体的に線を引くというのは結論を出さないといけないですよね。ここだと。その整理、何でこういう線を引くとするのかという理由がはっきりしないといけないわけですから、その理由が何なのだろうかというのを考えているというところです。

○高委員長 他、よろしいでしょうか。

いろいろ委員会から意見が出ましたけれども、3点ほど整理をさせていただきます。反論もあろうかと思いますけれども、こういうふうに私どもとしては考えております。

まず、1点目は、今回の意見募集で出された意見というのは、新しい意見もあったということですけれども、これは解釈の問題になると思いますので、専門調査会で大体議論された意見と同じであろうと、そういうふうに見受けられるというのが、1点、申し上げたいことでございます。

○消費者庁加納消費者制度課長 それは、消費者委員会の御意見としてということですよね。

○高委員長 そうです。

もともと賛否両論があって、様々な意見があって、対立するということではございましたけれども、専門調査会の場では、公の場で、皆さんが見ている場で十分に議論していただいて、さらに、各界からのヒアリングも行った上で、優先順位を付けて方向性も示してまとめた。先ほどの新しい御指摘の中で、これは新しい御指摘ではないのでしょうけれども、刑事罰を導入すべきだというのは、こんな意見もあったという御発言をされていましたけれども、専門調査会の中では、そう主張される方とそれに反対される方、その両方をバランスさせながら、何とか妥協できるところを見付け出して整理してきたと私どもは理解しております。

今日御説明いただきましたように、公益通報者保護法はいろいろな利害関係者があって非常に難しい法律であると思っております。ただ、今日御説明がありましたとおり、消費者庁においては、この意見募集の結果を踏まえて引き続き関係者間の意見調整を行うということでございますので、消費者委員会としては、改めて報告書の内容を最大限尊重しつつ具体的な検討を深めていただいて、法技術的に検討すべきところなど、詰めるべきところは早目に詰めていただき、早期の法案化に向けて積極的に取り組んでいただきたいと考えております。

いただいた意見についていろいろと検討を進めているということでございますので、今後もその進捗や取組について私どもとしても注視しておりますので、定期的に、しかも余り間隔を置かないで対応状況についてヒアリングを行っていきたいと思っておりますので、引き続き御協力をよろしくお願いいたします。

消費者庁におかれましては、お忙しいところ、意見募集の結果について御説明いただき、ありがとうございました。

どうぞ御退席ください。

(消費者庁退室)

≪3.消費者行政新未来創造プロジェクト検証専門調査会報告について≫

○高委員長 次の議題は、消費者行政新未来創造プロジェクト検証専門調査会報告についてでございます。

消費者委員会は、まち・ひと・しごと創生本部決定でございます「政府関係機関の地方移転にかかる今後の取組について」に基づきまして、消費者庁や国民生活センターの徳島県での取組につき、消費者行政の進化等の観点から成果を検討し、提言・助言を行うとともに、3年後目途の消費者行政新未来創造オフィスの取組の検証・見直しに当たっての意見を述べることとされております。そのため、平成29年11月、第259回委員会本会議におきまして、専門調査会の設置を決定し、座長は樋口委員にお願いしたところであります。そこから計10回の会合を開催して議論を行っていただき、本日、報告書を取りまとめたということでございます。

それでは、樋口座長及び事務局から、審議経過及び報告書の内容について簡単に御説明をいただきたいと思います。合わせて20分程度で御説明をお願いいたします。

まずは、樋口座長から御報告をお願いいたします。

○樋口委員 樋口でございます。

消費者行政新未来創造プロジェクト検証専門調査会につきましては、委員長からただいま御紹介がございましたとおり、平成29年12月に専門調査会において検討を開始し、これまで全10回にわたって議論を続けてまいりました。今般、報告書という形で議論の取りまとめをいたしました。

今回の新未来創造プロジェクトというのは、我が国の行政の歴史においても、非常にユニークといいますか、これまで前例のない形の行政の在り方の一つであったと思います。そこで、私どもとしましては、十分慎重に議論を進めてきたわけでございます。

早速でございますが、報告書の詳細につきまして事務局より説明をしたいと思います。

よろしくお願いします。

○高委員長 お願いいたします。

○消費者委員会事務局担当者 事務局から御説明させていただきます。

資料2-1が報告書の概要になっておりまして、資料2-2が報告書本体になっております。

ここからは、資料2-1の概要で御説明させていただきます。

まず、おめくりいただきまして、「はじめに」ですが、見出しの右側に報告書のページ番号も記載しておりますので、適宜御覧いただければと思います。1点目ですが、本専門調査会は、今し方御紹介がありましたとおり、平成29年11月に設置され、下記審議経過のとおり、消費者庁、国民生活センター、徳島県、その他の関係者からのヒアリングを実施し、議論したということであります。2点目ですが、専門調査会の多くは徳島県で開催し、東京の会議室とテレビ会議接続したということです。

次に、2ページですが、「本専門調査会における検証の対象及び観点」になります。

まず、「第1.検証の対象」ですが、消費者庁につきましては、各プロジェクトやオフィスでの働き方改革に関する取組を検証対象としました。2点目ですが、国民生活センターにつきましては、研修事業と商品テストを検証対象にいたしました。下の※印で書かれておりますが、東京で行われているもの、国会対応以下につきましては、対象外としております。

「第2.検証の観点」ですが、こちらは消費者行政の進化等の観点に基づいて検証したということです。それを、マル1からマル4の形で、具体的な視点、重視する視点を挙げております。マル1が目的・目標との関係でどれだけの成果が上がっているか、マル2がその成果が国・全国の地方公共団体の消費者行政に展開・活用できるものとなっているか、マル3が実際に展開・活用されているか、マル4が徳島県で取組が行われた意義が発揮されているかといった点になっております。これらの検証の対象・観点は、下にあります参考で挙げておりますが、いずれもまち・ひと・しごと創生本部の決定に基づいております。

おめくりいただきまして、3ページでございます。「各取組の概要」、全体像をお示ししたものです。

「消費者庁の取組」につきましては、大きく3つに分けておりまして、左側の一番上の◆ですけれども、全国展開を見据えたモデルプロジェクトということで、以下のようなものがございます。右側の上の◆ですけれども、基礎研究プロジェクトということで、基礎的な研究をするというものはこのようなものがございます。最後、◆ですが、オフィスの働き方改革に関する取組になっております。

下の枠で「国民生活センターの取組」ですが、先ほど申し上げましたとおり、研修事業、商品テストというものがございます。

4ページに入っていただきまして、具体的な中身になってまいります。

まず、「消費者庁の取組の検証」についてですが、先ほどの全国展開を見据えたモデルプロジェクト、基礎研究プロジェクト、働き方改革に関する取組ということで縦に作っておりまして、横に先ほどの観点の具体化のマル1からマル3に応じて、成果、展開・活用可能性、展開・活用状況ということで分けております。

まず、モデルプロジェクト、一番上のものからですけれども、成果に関しましては、効果的な普及・啓発方法のモデルケースが示されたというものです。具体的には「社会への扉」を活用した消費者教育授業の実施や見守りネットワークの構築、公益通報受付窓口、消費者志向経営といった取組が普及されているというものです。また、2点目ですが、その取組の中で教材等が作られたというものなどもございます。下の※印に記載しておりますが、調査対象によっては徳島県の地域性に適さないものもあったということを指摘しております。具体的には、シェアリングエコノミーに関する実証実験等について、徳島県における民泊の利用実態調査で、サンプル数が少なく十分な結果が得られなかったということがあったことを指摘しております。右側の観点マル2に行きますが、1点目は消費者庁が普及・啓発方法を検討する際に有益な基礎資料にできること、2点目が全国の地方公共団体が参考にできるなどといったことを指摘しております。その右側で、観点マル3、活用の状況などについて、1点目が、事例集等の公表や徳島県以外での働き掛けを行っているということが確認されています。ただ、プロジェクトによってはその段階にまで至っていないものもあるということでした。このような公表や働掛かけを行っているものでも、多くは具体的効果が見える段階にまでは至っていないということです。次に、2点目ですが、このような全国展開・活用について国の計画に位置付けて具体的な工程を示す必要があるということを指摘しております。

次の段で、基礎研究プロジェクトについて、また左からですけれども、成果といたしましては、新しい知見・データなどが得られたということを指摘しております。右側で、その活用可能性ですが、施策の立案・実視で活用できるものであると指摘しております。さらに右側、観点マル3ですけれども、幾つかのプロジェクトはまだ進行中ですが、今後、分析の結果を活用することが重要であるということを指摘しております。

最後、働き方改革に関する取組ですが、成果といたしましては、1点目で東京より休暇取得が多く超過勤務が少ないという成果や、休暇取得で地元事業者の工場見学等がなされたということです。これにつきましては、更に業務時間短縮で生まれた時間で地域貢献等に期待ということを指摘しております。その活用可能性ですが、東京等でも参考にできるものであると指摘しております。観点マル3ですが、実際に東京でLAN更改等を実施ということで、有線LANだったものを無線LANを導入して、ペーパーレス会議等を行えるようにしているということでした。

一番下の左右に分かれた枠ですけれども、徳島で行われた意義について、知事の強いリーダーシップの下、様々な関係者の積極的な協力により、オフィスの物的人的体制の整備等、関係者への働き掛けの円滑化、調査対象者の確保などが行われたということです。右側で、徳島で行う上での課題ですけれども、1点目が本州等とのアクセス面、2点目が東京の様子・状況が分かりにくいこと、3点目が県外の有用な人材・組織の協力が得られるかといった課題が指摘されています。

5ページが、「国民生活センターの取組の検証」です。

「1.研修事業について」として、成果と課題に分けております。まず、左側の成果ですが、関西、中国・四国を中心とした一部の受講者の移動の負担が軽減されたこと。オリジナル研修で受講者が増したことなどを指摘しております。これらを踏まえると、徳島県での研修実施に一定のニーズがあること等を明らかにしたということを指摘しております。右の課題ですけれども、まず、1点目に、受講者数について、相模原・他の地域での開催に比べて受講者数が少ないこと、徳島県からの受講者数が減少していることなどを指摘しています。2つ目の○で、関西、中国・四国からの受講者の一部も移動の負担が重いということが指摘されています。例えば、四国の愛媛県内から参加する場合でも、地域によっては鳴門市の会場よりも相模原事務所のほうが移動時間は少ない場合があることなどが指摘されています。3つ目が運営の効率性、4つ目が研修内容の充実性についても課題があるという指摘がされています。右側が小括ですけれども、今後も継続する場合には、研修事業全体の効果的・効率的な運営のために、徳島県で実施する研修の内容・場所・体制・方法・回数等の見直しが必要であると指摘しています。

下の「2.商品テストについて」です。まず、成果としては、徳島県内での実証フィールド調査で地域に即した問題状況の把握等がなされたという形で、徳島県を実証フィールドとして活用できるテーマがあることを明らかにしたと指摘しています。右の課題ですけれども、1点目は実証フィールド調査が必要な調査が限定的であること、2点目が地域的特性の影響補正の必要があること、3点目で効率性ということで、試験は県外で実施するなど県内で工程が完結しなかったことなどを指摘しています。右の矢印にいきまして、小括ですが、これらを踏まえ、商品テスト全体の効果的・効率的な運営のために、今後も人員を常駐させ続ける必要性の検討も含め、必要が生じた都度実証フィールド調査等を実施する方法によることも視野に入れた見直しが必要であることを指摘しております。

最後に、「おわりに」のページです。

まず、「消費者庁について」、まとめになりますが、本報告書作成時点で、全体として見たときには、今後、国及び全国の地方公共団体における消費者行政に展開・活用できる可能性を有する成果を上げているという意味で、消費者行政の進化に寄与している。もっとも、展開・活用に向けた具体的な取組が開始される段階にまで至っていないプロジェクトもあるため、今後そのような具体的な取組を実施していくことが重要であるとしています。また、今後の取組・オフィスの在り方を検討することも重要であると指摘しています。これら上記各事項を実施する上で、中央組織としての東京の消費者庁の体制・機能強化が必要となると考えられ、その場合には対応を検討すべきであるとしています。

次に、「国民生活センターについて」、徳島県での取組については、研修事業において徳島県において研修を実施することについて一定のニーズがあること等を明らかにしたことや、商品テストにおいて徳島県を実証フィールドとして活用できるテーマがあることを明らかにしたことなどの点で、消費者行政の進化に寄与したとしています。「もっとも」ということで、研修事業については、受講者数、運営の効率性、研修内容の充実性について課題があり、特に受講者数との関係では成果として不十分と言わざるを得ないとしています。また、商品テストについては、実証フィールドの活用が必要なテーマが限定的であること、調査結果への地域的特性の影響の補正が必要であること、及び、商品テスト全体の効率的な運用への影響が懸念されるといった課題があるとしています。そのため、それぞれ見直しが必要であるということです。全国各地での研修の充実等を踏まえた見直しや調査結果への地域的特性の影響の補正などを行うに当たっては、中央組織としての東京・相模原の国民生活センターの体制・機能強化が必要となると考えられ、その場合には対応を検討すべきとしています。

最後に、「消費者委員会について」ということで、これら地域に密着したフィールドで消費者政策を展開し、第三者的立場に立つ消費者委員会が検証するという政策推進の一つのモデルが構築されたことにも意義があったとしています。今後もこういった取組を注視することが重要であることを指摘しております。

簡単ですが、説明は以上になります。

○高委員長 ありがとうございます。

ただいま消費者行政新未来創造プロジェクト検証専門調査会の報告書の内容について、概要の説明をしていただきました。これに関して、御質問等がございましたら、どうぞ御発言ください。

どうぞ、増田委員、お願いいたします。

○増田委員 報告書をありがとうございました。

徳島県の今回の実証実験をしたことについての評価ということでは、報告書のとおりだと思います。

ただ、実証実験と今後ということを考えたときに、徳島というところだからこそできたというよりは、徳島でできたということの理由は知事の強いリーダーシップが大きなパワーになっていたと思うので、そういうパワーがあれば他でもできるということが実証実験として分かったと思います。そういう意味で今後の展開をどうするかというところが一番大事ではないかと思っています。消費者庁は地方に手足がないということもあり、消費者庁の強化ということと地方消費者行政の強化、消費者庁と地方との連携ということを考えたときに、いかに今回の実証実験を他で展開することができるかということを、今後、十分に考えていく必要があると思っています。

国民生活センターですけれども、研修に関しては、非常に人気のある研修もあったということがありますけれども、それが普遍的なテーマではなく、今、求められていたものということもあろうかと思いますし、そこに行ってくださった講師の方が非常に良かったということもあると思いますので、そういう方は多分地方で発掘するといろいろなところにいらっしゃるのではないかと思います。したがって、徳島でなくてはできないこともあるかもしれませんが、地方における講師の発掘とか、その地域の消費生活相談員や行政職員が参加しやすくするために、いろいろな地域で開催するという展開をしていただきたいと思っています。

以上です。

○高委員長 御意見ということで伺いました。ありがとうございます。

他、ございませんでしょうか。

どうぞ、長田委員。

○長田委員 今の増田委員の御意見に私も賛成で、この概要というか、報告書を見ても、例えば、国センの研修は、ちょっと表現はあれかもしれないけれども、徳島で開催するニーズがあったというよりは、むしろ地方の様々なところで開催をするニーズは多分あるだろうと展開していっていただかなれば、徳島だけにニーズがあるわけではないだろうということは我々が意識しなければいけないことだと思っています。

今回消費者委員会に求められているのはこの新未来創造プロジェクトの検証ということですけれども、これを今後より大きく消費者庁が活かして、消費者庁や国民生活センターがより大きくなっていくためには、全体の消費者庁や国民生活センターの在り方についてもきちんと見ていかなければいけないなと思っています。

以上です。

○高委員長 ありがとうございます。

池本委員長代理。

○池本委員長代理 池本です。

今回の評価の視点と実際どうだったかということとの関係で、2点ほど申し上げたいと思います。

まず、消費者庁の全国展開を見据えたプロジェクトの評価の視点ということでいいますと、概要版でいえば2ページとあるところに、「消費者行政の進化等の観点」の消費者行政というのは、徳島における消費者行政ではなくて、最終的には、徳島で先駆的なプロジェクトをまずは実証的にやってみて、それを全国でどう活かしていくか、どう全国展開をしていくか、それが全体としての消費者行政の進化の観点だという議論の整理で進めてきたものだったと思います。

その中のマル1は、目的・目標との関係でどれだけの成果が上がっているかというのは、これは徳島オフィスあるいは徳島県における成果がどうだったかを評価したものでした。マル2は、その成果が全国でも使える中身として作られて成果がまとめられているか。例えば、事例集や報告書などが、単に徳島がこうでしたというだけではなくて、全国で活用できるものになっているかどうか。マル3は、実際に全国展開したかどうか。このマル3は、徳島オフィスがやるということではなくて、消費者庁が全国展開をどう取り組むかという課題です。消費者庁が徳島オフィスでやった成果を全国展開でどう広げていったかというマル1からマル3を含めて、消費者行政の進化等の観点で検証・評価をするということで進めてきたものであるということを確認しておきたいと思います。

マル1徳島オフィスあるいは徳島県における成果という点では、それぞれの課題、もちろん最終結論まで行っていないものも若干ありますが、それぞれの課題について一定の成果が挙がっているという評価でした。

それに対して、マル2の全国で活用できるものとして成果が取りまとめられているかという点は、課題によってはそこまでいっているものがあるけれども、まだそこまでいっていない。そうすると、もう少し時間が必要かもしれない。それが、半年なのか、1年なのか。もう少し時間が必要だというような評価で、その意味で、今あるプロジェクトについて言うと、もう少し継続して最終的に全国で使えるものにまでまとめてほしいという意見が多数だったと思います。

それに対して、マル3の全国展開は、消費者教育の実践の「社会への扉」の活用を現実に各地でも消費者庁からの働き掛けで進めているというのは評価できましたが、ほとんどの課題はできていない。この課題は、徳島オフィスの体制を充実せよということではなくて、消費者庁そのものの体制を強化していかないとやはりできないことだなという意見で取りまとめができていたと思います。そこはやはり確認していかないといけないし、徳島で、今後、全国展開を見据えた課題を何かまた新しく追加するのか、あるいは今ある課題を最後までやり遂げることをまず優先するのかを考えるときに、それを受け止める消費者庁本庁の側の体制とリンクさせなければ、単純に徳島で作ったそれがいつか消費者庁で展開できると良いねということであっては、非常にもったいない話で、本来の意味の消費者行政の進化にはつながっていないという評価にならざるを得ない。

そういう意味で、全国展開をする本庁の体制あるいは具体的な推進計画を本庁の側でも進めていただきたいということ、これがまずは1点です。

国民生活センターの研修や商品テストは、全国展開を見据えたという先ほどのマル1からマル3というような観点での評価の仕方とは違います。ただ、これも、徳島において研修あるいは商品テストの実証フィールドとしての実績が上がったかどうかという、徳島においてどうかということと、全国の国民生活センターが行っている研修事業や商品テスト全体の中で、徳島でこれを実行したことが全体としてのレベルアップあるいは充実につながったかどうかという、徳島における成果と、全国で見た成果と、2段階で評価する必要があるという形で取りまとめをしてきております。その意味で、徳島においては、徳島で実施したということが徳島の方あるいはその周辺の方にとってもプラスになったという評価がありましたし、商品テストも、徳島県あるいは地元の消費者団体の協力によって、100カ所の家庭の現物、自宅にあるものを見せていただいて調査をしたというような成果は上がりました。しかし、国民生活センター全体のことでいうと、例えば、研修でいうと、これは交通手段との関係で、参加率がどうしても確保できないということになると、今の状態で徳島でこれまでと同じこま数をやっていったのでは、国民生活センター全体の研修事業の成果ということでいえば、むしろマイナスになってしまうのではないか。そういうことが、今後、相模原と地方の各地でやるものと徳島との全体を見据えながら、回数等を見直す必要があるということになっています。商品テストについても、商品テスト全体の中のこの部分は徳島でやった成果があったけれども、商品テスト全体の事業としてどうかというと結局分散してしまっているとすると、そもそも常駐する形で商品テスト事業をやっていくのが適切なのかということを含めた見直しをする、という取りまとめになっているかと思います。

その意味で、徳島における成果、全国あるいは消費者庁における取組という2つの観点、その総体としての消費者行政の進化がどうかと読み取っていただきたいと思います。

以上です。

○高委員長 ありがとうございます。

どうぞ、大森委員。

○大森委員 私は、オフィスができたことで消費者行政の推進につながったと思っています。消費者庁自身、やることがとても多くて、東京だけでしたら、基本計画やいろいろ日々の省庁との話合いとか、流れていることがあって、消費者庁として真剣に考えて対応しないといけない問題の時間をどうしても十分に取れないということがあったと思います。

今回、とても成果が挙がったことの一つとして、高校の成年年齢引下げ対応のプロジェクトがあったと思うのですけれども、徳島の全高校で「社会への扉」の教材を使った授業を実施した。これは徳島でなかったらできなかったと思います。私立は無理とか、いろいろな状況があって、全高校に実施するということはなかなか難しかったと思います。事例集を作って、東京との連携もとても良くて、あとは東京のほうが拡げる作業として全国の教育委員会や知事を訪れて「社会への扉」を配付していったということで、非常に成果が挙がったと思っています。

ただ、徳島がフィールドとして適当でなかったという内容もあったと思いますので、計画は徳島であっても、フィールドは徳島に限定する必要はないのではないか。全国にいろいろな適格消費者団体もあるのですから、その辺りと協力しながら、ふさわしいフィールドを使っていろいろな実験ができるのではないかと思います。

プロジェクトの選定もですけれども、タイムスケジュールとかをきっちり立てて、結構たくさんの量をやっていますけれども、量より質でちょっと絞り込んで、先行研究や先行事例なども十分に調査した上で、もうちょっと実りのあるものができたのではないかと思っています。中には先行事例のあるものの焼き直しに終わったのではないかという残念なものもあったので、その辺りは今後検証していただけたらと思っています。

以上です。

○高委員長 ありがとうございました。

他、ございますでしょうか。

よろしいですか。

いろいろ将来に向けてこうすべきではないかという御意見をいただいたり、あるいはこの報告書の内容についてもう一回分かりやすい言葉で説明をいただいたり、皆さんの説明、意見、ありがとうございました。

ただ、この報告書は消費者行政を進化等の観点から評価・検証するというものでございます。その報告書として、求められたことに十分に応えているか、適切に取りまとめがなされているかということをここで判断していただくということが委員会に期待されていることでございます。

適切な取りまとめが行われたというのは、ここに書いてありますので、もう一度申し上げますと、消費者庁及び独立行政法人国民生活センターの徳島県での取組について、消費者行政の進化等の観点からの成果の検証、提言・助言、及び、検証・見直しに当たっての意見として、取りまとめが適切に行われたものといえるかということですけれども、この部分については、皆さんに御賛同いただけるのではないでしょうか。ここで御賛同いただけるということでございますので、この報告書の内容を踏まえまして、消費者委員会として消費者担当大臣宛てに提言を発出してはどうかと考えております。いかがでしょうか。

よろしいですか。

それでは、事務局から提言の素案が出ておりますので、お配りしたいと思います。

(提言案配付)

○高委員長 それでは、事務局から、簡単にこの提言の内容について説明をお願いいたします。

○消費者委員会事務局担当者 提言につきまして、今、机上にお配りしたもので1.から5.までございます。

1.は、先ほどから御指摘いただいております、前提となるまち・ひと・しごと創生本部の決定を指摘したものになっております。

2.は、経緯を示しておりまして、消費者委員会としては、創生本部決定を踏まえ、消費者行政新未来創造プロジェクト検証専門調査会を設置したことや、徳島県で開催してきたことなどを指摘して、今般、この報告書の提出を受けたということを指摘しております。

3.は、今しがた御賛同いただいたということで、同報告書では、消費者庁及び国民生活センターの徳島県での取組について、消費者行政の進化等の観点からの成果の検証、提言・助言、及び、検証・見直しに当たっての意見として、適切な取りまとめが行われたものといえるというものです。

4.は、消費者庁においては、消費者庁及び国民生活センターの徳島県での取組の検証・見直しを行う際には、上記報告書の内容を踏まえることを求めるとしたものです。

先ほども皆様から様々な御意見をいただきまして、5.で指摘をしておるのですが、「なお」ということで、当委員会は、今後、引き続き、消費者行政新未来創造オフィスにおける消費者庁及び国民生活センターの取組の状況並びにそれらの取組の成果の国及び全国の地方公共団体の消費者行政への展開・活用の状況を注視するとともに、国及び全国の地方公共団体の消費者行政を発展させるための政策の在り方についての検討も進めていくということを指摘したものです。

説明は以上になります。

○高委員長 ありがとうございます。

皆さん方からいろいろ先ほど発言いただきましたけれども、5番目のところにきちんと事務局で盛り込んでいただいております。

この提言案について、御意見はございますでしょうか。よろしいですか。

○高委員長 それでは、委員の皆さん方から特段修正の御意見はないということでございますので、原案どおり提言を取りまとめ、消費者担当大臣宛てに発出したいと思います。

それでは、必要な修正を行いまして、当委員会の提言とさせていただきたいと思います。よろしいですか。


≪4.閉会≫

○高委員長 本日の議題は、以上となります。

最後に、事務局より今後の予定について説明をお願いいたします。

○坂田参事官 次回の本会議につきましては、6月6日、木曜日、14時からを予定しております。詳細につきましては、委員会ホームページを御参照願います。

なお、この後、委員間打ち合わせを行いますので、委員の皆様方におかれましては、委員室にお集まりいただきますようお願いいたします。

以上です。

○高委員長 それでは、本日はこれにて閉会といたします。

お忙しいところを御参集いただきまして、ありがとうございました。

(以上)