第253回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2017年8月8日(火)13:59~15:25

場所

消費者委員会会議室

出席者

  • 【委員】
    河上委員長、阿久澤委員、大森委員、蟹瀬委員、鹿野委員、中原委員、長田委員、樋口委員、増田委員
  • 【説明者】
    消費者契約法専門調査会後藤座長代理
    消費者委員会事務局担当者
    消費者庁廣瀬消費者制度課長
    消費者安全専門委員会山本座長
  • 【事務局】
    黒木事務局長、丸山参事官、友行企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 消費者契約法専門調査会の報告について
  3. 消費者安全専門調査会の報告について
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○河上委員長 皆様、お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございます。

ただいまから「消費者委員会の第253回本会議」を開催いたします。

本日は、池本委員が御欠席となっております。

それでは、配付資料の確認につきまして、事務局からお願いいたします。

○丸山参事官 お手元の議事次第の下部に、配付資料一覧を記載しております。

資料1-1から資料2-2、参考資料となっております。

もし不足がございましたら、事務局までお申しつけいただきますよう、よろしくお願いします。


≪2.消費者契約法専門調査会の報告について≫

○河上委員長 それでは、最初の議題でございます。

最初の議題は「消費者契約法専門調査会の報告について」であります。

消費者契約法専門調査会につきましては、平成27年報告書において、今後の検討課題とされた論点のうち、消費者契約法の一部を改正する法律案に対する附帯決議において、明示された論点及び「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書」等の内容を踏まえて、優先的に検討すべきとされた論点について、平成28年9月から平成29年8月まで、計23回の会合を開催して、議論を行っていただきまして、8月4日、報告書が取りまとめられたというところでございます。

本日は、同専門調査会の後藤巻則座長代理及び専門調査会の調査・審議に御協力頂いた、消費者庁にお越しいただいております。

後藤座長代理及び消費者庁におかれましては、お忙しいところ、どうもありがとうございます。

まずは、後藤座長代理から、報告書の内容について、御報告をお願いしたいと思います。全体で15分程度で、よろしくお願いいたします。

○消費者契約法専門調査会後藤座長代理 ただいま委員長から御紹介頂いたとおり、消費者契約法専門調査会では、8月4日に報告書を取りまとめましたので、その内容を御紹介させていただきます。

消費者契約法専門調査会では、平成27年12月、速やかに法改正を行うべき内容を含む論点について、取りまとめを行いました。平成27年の報告書において、今後の検討課題とされた論点のうち、消費者契約法の一部を改正する法律案に対する付帯決議において、明示された論点及び本年1月の「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書」の内容を踏まえて、優先的に検討すべき論点等について、審議を重ねてまいりましたが、今般、報告書の取りまとめを行いましたので、本日、御報告させていただく次第です。

資料1-2が消費者契約法専門調査会の報告書です。

表紙をめくったところに目次がございます。

「はじめに」では、これまでの審議経過を記載し「第1 見直しの検討を行う際の視点」を示し「第2 措置すべき内容を含む論点」として、審議の結果、示された措置すべき事項を記載しています。「第3 上記以外の論点」として、今後の課題などを記載しています。

個別の論点に関する内容につきましては、事務局より説明をお願いいたします。

○消費者委員会事務局担当者 それでは、事務局から説明いたします。

説明は、資料1-1の概要を使って、説明していきます。

1ページ、最初のマルですけれども、平成26年8月の諮問に対して、検討を行ってきたところです。

2つ目のマルが審議経過ですが、先ほどもありましたように、27年12月には、平成27年報告書を取りまとめ、28年1月には、一次答申をしたところです。また、28年9月には、専門調査会の審議を再開し、それから23回の審議を行ってきたところです。そこで検討を行った結果、29年8月4日に平成29年報告書を取りまとめております。

次のマルですが、報告書の内容です。

まず「第1 見直しの検討を行う際の視点」です。基本的には、平成27年報告書を踏襲しているところですが、特に平成27年報告書から変わった点としましては、2つ目のポツでして、高齢者のみならず、若年者を含めた幅広い年代において、消費者被害が生じていること、その消費者被害に対処するための法整備を行い、その実効性を確保することが示されています。

次に2ページに、「第2 措置すべき内容を含む論点」について、記載されております。

1つ目が不利益事実の不告知です。これは、相談現場ですとか、訴訟における故意の立証の困難があり、それに起因する問題に対応するために検討をされてきました。

内容としましては、主観的要件に「故意」に加えて「重大な過失」を追加するという内容になっております。

次に、2番目として、合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型です。これは、困惑類型の取消権について、以下のものを追加するという内容です。

1つ目がマル1として、「消費者の不安を煽る告知」です。想定事例にありますように、不安を抱いている学生に対して、「あなたは一生成功しない」などと不安を煽って、セミナーの受講を契約させるといったものが想定されております。

もう一つがマル2にあるように、「勧誘目的で新たに構築された関係の濫用」という点です。これは、いわゆるデート商法などを想定しているものでして、勧誘に応じさせる目的で、新たに緊密な関係を築いて、その関係を利用して、契約の締結を迫ることを想定しています。

次は、3番目として、「心理的負担を抱かせる言動等による困惑類型の追加」です。これは、1つは、消費者が意思表示をする前に、事業者が履行に相当する行為を実施して、契約を強引に求めること、これが1つです。

もう一つが消費者に契約の締結を目的とする行為を事業者が実施したにもかかわらず、当該消費者が契約の締結の意思表示をしないことによって、損失が生じることを正当な理由がないのに強調して告げるような場合、これらに対して、取消権の規定を追加するという内容になっています。

前者の想定される事例としては、例えばガソリンスタンドに立ち寄ったときに、頼んでもいないのに、ワイパーを交換された上で、代金を請求されたというものです。後者の例としては、消費者のために、事業者が説明などをしたにもかかわらず、消費者が契約をしないときに、事業者が「費用や時間をかけて説明したのに、契約しないとはどういうことだ」と言って、消費者を責めて、契約を迫ることが想定されております。

次は、4番目でして、「平均的な損害の額の立証に関する規律の在り方」です。これは、消費者による平均的な損害の額の立証が困難だという問題意識から検討されたものです。

内容としましては、平均的な損害の額に関して、消費者が事業の内容が類似する同種の事業者に生ずべき平均的な損害の額を立証した場合には、その額が当該事業者に生ずべき平均的な額と推定される規定を設けるという内容になっております。

次は、5番目でして、「不当条項の類型の追加」となっています。これについては、2つの類型の追加を内容としております。

1つ目がにありますように、後見、保佐、補助の開始の審判を受けたことのみを理由として、事業者に解除権を付与する条項を無効とする内容となっています。例えば賃貸者契約で、賃借人が後見開始の決定を受けたことで、事業者が契約を解除できるという規定が想定されています。

もう一つがマル2でして、これは、現状の消費者契約法8条で、事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効とする規定があるわけですけれども、これを潜脱することを可能にするような事業者の決定権限付与条項を無効とする規定を設けるということです。

例えば会社の調査により、会社に過失があると認めた場合に限り、損害賠償責任を負うというものが想定されているところです。

そのほか、マル3マル4に書いてあるように、「サルベージ条項」ですとか、「事業者の軽過失により消費者の生命又は身体に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項」については、逐条解説に記載するという内容になっております。

次に、3ページです。「第2 措置すべき内容を含む論点」の続きですが、6番目として、「条項使用者不利の原則」についてです。

これについては、3条1項を改正して、事業者が条項を作成するに当たって、条項の解釈について疑義が生ずることのないよう配慮するよう努めなければならないという旨を明らかにする内容になっております。

次に、7番目として、「消費者に対する配慮に努める義務」ですけれども、これも3条1項を改正して、消費者に対する情報提供について、個別の消費者の事情を考慮することとしています。具体的には、当該消費者契約の目的となるものの性質に応じ、当該消費者契約の目的となるものについての知識及び経験についても、考慮した上で、必要な情報を提供するよう努めなければならない旨を明らかにする内容になっております。

次が「第3 上記以外の論点」です。

1つ目が「勧誘要件の在り方」ということで、これは、事業者による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであっても、そのことから、直ちにその働きかけが「勧誘」に当たらないということはできないという最高裁判決が出ておりますので、このことを踏まえて、今後の課題として、検討を行う内容になっています。

もう一つが「約款の事前開示」というところで、契約条項について、消費者が消費者契約の締結に先立ち、容易に知ることができる状態に置くことが事業者の抽象的な努力義務として求められること自体は、一定のコンセンサスがありましたが、具体的な開示の方法ですとか、態様については、意見が分かれたというところで、今後の課題ということになっております。

そのほかの今後の課題ですけれども、「その他の今後の検討課題」の枠に書かれているようなところが挙げられています。例えば「判断力の不足等を不当に利用した不必要な契約の締結に関する取消権」などが、課題として挙げられております。

最後の枠囲みですけれども、措置すべき内容を含むとされた論点については、消費者と事業者から幅広く意見を聞く機会を設けるとともに、法制的な見地から、更なる検討を行って、必要な措置を取ることが求められること、また、改正法案が成立した場合には周知活動ですとか、解釈や問題事例等について、逐条解説等で明確化を図ることも必要という内容になっております。

説明としては、以上です。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの報告内容について、御質問、御意見のある方は、発言をお願いいたします。

どうぞ。

○樋口委員 報告書は、専門調査会で十分な御審議を尽くされてまとめられたものですので、敬意を表したいと思いますが、内容を拝見して、幾つか気になる点がございます。

当委員会では「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ」の場で、昨年から本年1月にかけて、検討を行ってきました。そういった検討との関係というところで、今後、どういう方向性があるのかということが、必ずしも報告書自体からは読み取れない点でございます。

幾つか具体的に申し上げますと、例えば報告書の6ページの部分です。大きな項目の「2.合理的な判断をすることができない事情を利用して、契約を締結させる類型」の中の、先ほど今後の検討課題にも挙げておられました項目、すなわち資料1-1の概要で、「判断力の不足等を不当に利用した不必要な契約の締結に関する取り消し権」と書いてある部分です。成年年齢の引下げに当たっては、新成人ということだけではなくて、より広く若年層(若年成人)を捉えて、きちっとした仕組み、法的な仕組みが必要ではないかという議論が、有力な意見としてあったのではないかと思います。

また、この問題は、超高齢社会という現在の状況において、これも先ほど概要のところで御認識を述べておられましたが、高齢者についても緊急性が非常に高くなっているのではないかと思います。

とりわけ、成年年齢の引下げに関して、民法の改正の議論が行われているところでもございますので、こういった点について、6ページの下から4行目のところでは、重要な課題として進めていくことが適当であるということでありますけれども、できるのなら、できるだけ早期に、緊急の課題でありますので、方向性をお示しいただくことが重要ではないかと思います。

同じように、ページでいいますと、本文の15ページになりますけれども、項目では「7.消費者に対する配慮に努める義務」というところがございまして、ここでも、15ページの(2)のところで「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書」ではという書き出しで始まっていますが、正にワーキング・グループ報告書の中で提起された問題としまして、消費者(若年成人)の需要及び資力に適した商品及び役務提供の配慮義務という課題を、本報告書では、必要に応じ、検討していくということなのですけれども、このことを含めて、年齢等に基づく情報提供や配慮義務は、必要性が非常に高い状況が既に生じているのではないかということもございます。

専門調査会は、成年年齢の引下げに関する議論が行われる前から、検討を進めておられて、全体としての法体系について、多数の項目について、御検討を頂いている状況でございますが、こういった喫緊の課題がいろいろ出てきている状況を更に踏み込んで検討頂ければと思っています。

課題という意味では、先になりますけれども、16ページの約款の事前開示の部分です。これについても、新民法の定型約款との関係で、必要に応じ、検討を行うべきであるというところで、報告が終わっているのですけれども、私としては、必要に応じ検討、あるいは重要事項として、検討していくというところを、早急にきちっと明らかにしていくことが、消費者の利益につながるのではないかと思っております。

専門調査会の検討経緯を踏まえない議論で、大変恐縮でございますけれども、成年年齢引下げ対応ワーキングの検討に参加した立場から言いますと、そういった点、あるいは新民法との関係について、早急に方向性を示していただければと思う次第でございます。

○河上委員長 この点について、事務局からお答えになりますか。どうぞ。

○消費者委員会事務局担当者 今後の課題については、先ほども樋口委員から御指摘がありましたように、6ページの2の(4)については、重要な課題ということで、多少ほかの論点とは、論点の位置付けが違う報告書の内容にはなっております。

○河上委員長 ほかにございますか。鹿野委員、どうぞ。

○鹿野委員 多大な時間と労力をかけて、報告書をまとめていただいたことに、まずは感謝したいと思います。

その上で、今、樋口委員からもお話がありましたけれども、基本的に私も賛成でございます。

まず、6ページのところについては、先ほど「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書」との関連も含めて、樋口委員から御指摘がありまして、今、担当者から、ここについては、ほかのところとは表現も変えて、重要な課題として今後も検討を進めていくと表現されていることが説明されました。本委員会としても、この点については、喫緊の課題と受け止めて、今後の検討の必要があることをここで確認できればと思っているところです。

2番目も、樋口委員と同じところなのですけれども、14ページに記載されたところについてです。先ほど樋口委員からは、特に15ページを指摘して、お話があったのですけれども、内容的には14ページから続いております。そして、14ページの下から4行目のところに「『知識及び経験』と『年齢』とでは考慮要因として重複する側面があるため」ということで、消費者に対する配慮に努める義務の中に「年齢」という言葉を入れなかったという経緯が記載されているところでございます。

ただ、年齢が知識、経験と重なる場面があることは確かなのですけれども、重ならないこともあるわけです。特に高齢者などについては、ある意味、人生における知識、経験というのは、少なくとも一旦は取得したかもしれませんけれども、現時点では、判断力が低下しているということもあります。高齢者について、その判断力の不足につけ込まれた被害というのは、現時点でも、非常に多く報告されているところであります。

この努力規定の中に、年齢も盛り込むべきだったのではないかという思いを強く持っております。趣旨としては、高齢者だけではなくて、若年者も含めてですけれども、年齢に対する配慮も、今後の課題として、明らかにしていくべきではないか。報告書は報告書として尊重しますが、今後に向けた課題として、その点をここで確認させていただければと思います。

第3点は、約款の事前開示で、報告書の16ページから17ページにかけてです。これも、報告書には今後の課題として必要に応じて検討を行うべきだと書かれています。約款の規定が今回民法に入れられることになったことについては、それ自体にいろいろな経緯があって、ご存知のような形で盛り込まれることになったのですが、特に約款の事前開示のルールに関しては、少し誤解を招きかねないところもあると考えております。

私自身は、民法自体も、請求がなければ事前開示しなくてもいいというメッセージを示しているわけではないと考えており、あくまでも一般法としての民法のルールとして、最低限のルールを明確化したにすぎないものだと考えてはいるのですけれども、ただ、場合によっては、それが誤解されるおそれもあると危惧しています。そこで、特に消費者契約については、事業者側に、開示をするように努めるべきことを明確化することが、適切だと考えているところです。

消費者契約についても、絶対にこれこれの形で、具体的に開示しなさいということまで書き込むことには、難しい面があるのかもしれませんけれども、報告書には御検討の経緯が16ページのところに書かれていますが、少なくともこういう形で、努力規定の中にこれを盛り込むことについては、今後、引き続き、検討が進められるべきではないかと考えているところです。

以上、意見です。

○河上委員長 ありがとうございました。

ほかにはいかがでしょうか。増田委員、どうぞ。

○増田委員 報告書としてまとめていただくには、大変な御努力があったと思います。ありがとうございました。

私も、今、委員の先生方がおっしゃられたことに同じ意見でございますが、意見として述べたい部分がございます。

民法改正ありきという前提で、成年年齢のワーキングがありました。その中で、いろいろな意見もありましたけれども、ワーキングの報告書がまとめられ、それを踏まえて、消費者契約法の検討がされたと考えます。内閣総理大臣の諮問を受けて、検討が始められたわけですけれども、成年年齢が引下げられることを前提に、専門調査会が行われたはずであるにもかかわらず、成年年齢の引下げの手当については、まだ十分ではないと考えております。そういう意味で言うと、今後、必ず検討を続けていただきたいという点があります。

消費者に対する配慮に努める義務についてですけれども「年齢」を削除したことについては、私は、今でも納得がいきません。この文言を解釈する場合は、当然年齢も配慮すべきとなるのだろうと思うのですけれども、読んだときに、それが分かりやすい文言ではないと思うのです。鹿野先生がおっしゃられたとおり、高齢者になって、今までの経験、知識が全く役に立たない状態になるということは、普通です。判断力が年齢とともに落ちていくということや、若者などに対する説明においても、どういうレベルの情報提供をすべきかということの1つの判断要素として、年齢は非常に分かりやすい要素だと考えますので、この年齢を考慮要因とすべきであったのではないかと思っております。

もう一つ、約款の事前開示につきましては、契約をするという前提からすれば、当然のことだと思いますし、今、適切な取引を目指す事業者であれば、十分におやりになっている状況であり、これを取り入れたからといって、とりわけ、大きな負担になるはずではないと思います。

そういう中で、過剰な防衛という感じがすごくありまして、そういうことを配慮して、今回、約款の事前開示が次の課題となってしまったということについて、大変残念に思っております。

今後、再度改正を検討するというタイミングが5年、10年先になることになりますと、これまで話合いをしたことを、初めからやらなくてはいけないことも考えられますので、継続した検討を、どこかでやっていただかなくてはいけないのではないかと考えています。

以上です。

○河上委員長 ありがとうございました。

ほかにはいかがでしょうか。よろしゅうございますか。どうぞ。

○樋口委員 恐らく報告書をまとめるに当たっては、様々なお立場の方の議論が尽くされたのだと思いますけれども、私どもの委員会の意義として、消費者の立場に立って、市場において、新しい時代に即したルールを作らなければいけないと思っております。

特に高齢者の方が非常に多くなってきたり、あるいは成年年齢が引き下げられて、新しい成人が増えるという社会の激変に対して、法制度の整備、もちろんそこが基本にあるわけで、さらに併せて、それに対して事業者、あるいは消費者がそれを十分に理解して、新しいルールを作っていくという考え方が基本にあるべきではないか。

そうしますと、私は経済学が専門なので、経済学の観点から言うと、経済の現状には、従来の伝統的な市場経済の考え方は通用しなくなって来ていると思いますし、それと併せて、法制度についても、従来の発想では問題が解決できないという事態が生じていると思います。

非常に心配しておりますのは、報告書では、検討するという部分がかなりありますが、検討するということは、答えを意味していないということです。消費者の立場から考えると、検討してくれているということだけでは、なかなか問題が解決に至らないので、その間に被害が拡大する、あるいはいろいろな矛盾が生じることがあると思います。報告書が、検討課題とされている問題は一刻を争う問題ではないかと思います。

私も、御苦労されてまとめられた報告書が基本であるということについては、全く異論はありませんが、その上で、緊急な課題が何なのかということについて、当委員会においても、認識を持つべきではないかと思っておりまして、また、専門調査会でも、新しい市場経済のルールを形づくるという観点からも、思い切って踏み込んだ御検討を頂けないかと強く思っている次第です。河上委員長には、是非、その辺のリーダーシップを執っていただければと思います。

○河上委員長 ほかにはよろしゅうございますか。蟹瀬委員、どうぞ。

○蟹瀬委員 1つだけなのですが、約款の事前開示に関してですが、約款は、とても小さな字で書いてありまして、大変な量が書いてあることが大体多いわけです。契約した後に約款が来て、まず契約した人がそれを細かく読んでいくということがなくて、事故が起こった、事件が起こったときに、初めて約款に書いてあるではないですかと相手側から言われることが多い。

私も何件か保険の関係で、後から約款が来て、いろんな事故が起こって、約款で縛られていて、補償がされなかったことがあります。そういう経験からしますと、なおさらのことで、事前に約款の内容の一番大事なところだけは、請求をされなくても説明をしなければいけないということが、高齢者に対しても、若者に対しても、必要なときになってきているのではないかと思います。

自分の体験から言うと、早くに約款を、豆粒のような字で書かれたものを、読める力があればよかったこともありますので、事前開示ということに関しての大きな意味で、全部ということではないかもしれませんが、請求されただけではなくて、契約をする前に、ちゃんと約款の一部でも、一番大事なところは、きちんと説明をしましょうということを、ぜひ進めていただければいいと思っています。

私からの要望です。

○河上委員長 ありがとうございました。

ほかはよろしいですか。

後藤先生は、消費者契約法について、厚いコメンタールなども書いていらっしゃる我が国屈指の専門家でございますけれども、座長代理として、今回、御意見をおまとめになる過程で、御感想などがあれば、一言、お願いします。

○消費者契約法専門調査会後藤座長代理 ありがとうございます。

専門調査会で議論をまとめていくというのは、非常に大変なことだと思っていまして、この報告書につきましても、ただいま、頂いたような種々の御疑問とか、課題につきましては、私も問題意識を共有しているところです。

報告書としてまとめるというのは、コンセンサスを得たところをまとめていくとせざるを得ないところがありまして、そういう意味で、今、いろんな感情が混じり合っているような状況ですけれども、本日、委員の皆様方から頂いた御指摘というのは、貴重な御指摘を頂いたと思っていますので、この御指摘を生かすという形で進んでいただけたらと思います。どうもありがとうございました。

○河上委員長 ありがとうございました。

私もずっと専門調査会に参加させていただいておりまして、時に歯がゆい思いをして、言い過ぎたこともあるのですけれども、いずれにしても、ここまでまとめていただくに当たっては、山本座長、後藤座長代理、大変御苦労されたと思いますので、心からお礼を申し上げたいと思います。

ただ、今、報告書の内容についての御報告を頂いたということでありますけれども、今後、消費者委員会として、この内容を受けて、どういう形で答申を発出するかということについて、さらに検討をしないといけないのですが、本日の議論では、報告書に関しまして、様々な御意見を頂戴いたしましたので、消費者庁に留意頂きたい項目を条件のような形にした上で付加して、答申を出させていただこうと思います。

事務局から、答申の素案を出していただいておりますので、それをまずお配りしたいと思います。

(答申書(案)配付)

○河上委員長 大体よろしいでしょうか。

それでは、事務局から、簡潔に答申案の内容を説明願います。

○丸山参事官 お配りしております答申書(案)でございます。

「平成26年8月5日付け消制度第137号をもって当委員会に諮問のあった、消費者契約法(平成12年法律第61号)の契約締結過程及び契約条項の内容に係る規律等について、次のとおり答申する。

別添『消費者契約法専門調査会報告書』の内容を踏まえ、措置すべき内容を含むとされた論点のうち、法改正を行うべきとされた事項については、速やかに消費者契約法の改正法案を策定した上で国会に提出し、改正法案が成立した場合においては、現行法の内容及び改正法の内容について幅広く周知活動を行うこと及び解釈の明確化が必要な点については逐条解説等において明確化を図ることなど、必要な取組を進めることが適当である。

なお、当委員会は、専門調査会における報告を受けて、ぜい弱な消費者の保護の必要性等現下の消費者問題における社会的情勢、民法改正および専念年齢の引下げ等にかかる立法の動向等を総合的に勘案した結果、特に以下の事項を早急に検討し明らかにすべき喫緊の課題として付言する」としております。

「1 消費者契約における約款等の契約条件の事前開示につき、事業者が、合理的な方法で、消費者が契約締結前に、契約条項(新民法548条の2以下の『定型約款』を含む)を予め認識できるよう努めるべきこと。

2 合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させるいわゆる『つけ込み型』勧誘の類型につき、特に、高齢者・若年成人障害者等の知識・経験・判断力の不足を不当に利用し過大な不利益をもたらす契約の勧誘が行われた場合における消費者の取消権。

3 消費者に対する配慮に努める事業者の義務につき、考慮すべき要因となる個別の消費者の事情として、『当該消費者契約の目的となるものについての知識及び経験』のほか、『当該消費者の年齢』等が含まれること」としております。

説明は以上です。

○河上委員長 ありがとうございます。

それでは、答申案について、御意見のある方は、発言をお願いいたします。いかがでしょうか。

これは、委員間打合せの中で、ある程度議論をさせていただいたものでございまして、その後も最終的な取りまとめ案について、情報交換をした結果でもあるわけですけれども、もしこの段階で、これだけはという御意見があったら、お願いいたします。

私から少しだけ御説明を加えさせていただきますけれども、専門調査会と親委員会との関係において、特に専門調査会の報告書を否定するとか、そういう意味合いのものではないことを、まずもって御了解頂きたいと思います。

むしろ専門調査会は、もともとのミッションにかなり忠実に議論をされて、得られたコンセンサスのところを、精一杯取りまとめていただいたと認識しております。

ただ、その後に現れた民法の改正でありますとか、成年年齢の引下げ、これは、今回の法務大臣の会見では、この秋にも法案を提出するということですけれども、こうした現下の情勢の変化を考えたときには、そんなにゆっくりと更に検討を続けてという状況ではないという認識を、本委員会としては持ったわけでございます。

特に新成人に関して、未成年者取消権がなくなるということで、言ってみれば、セーフティーネットをどういうふうに張るべきかが、喫緊の課題であります。18~19歳の子たちが被害にたくさんあったり学校にマルチが蔓延してからでは遅い問題でありますので、その意味では、早急に措置を要する喫緊の課題として、こういうものを特に指摘させていただくべきことを、委員会として申し上げたものでして、報告書と併せて、この委員会の意見をしっかりと受けとめていただきたいと考えているところでございます。

特にこれでよろしいということでありましたら、案をとりまして、これを消費者委員会としての答申としたいと考えます。よろしいでしょうか。(「異議なし」の声あり)

どうもありがとうございました。

それでは、そのような形で、答申をまとめて、内閣総理大臣宛てに、これを発出したいと思います。

後藤座長代理及び消費者庁におかれましては、お忙しい中、審議に御協力を頂きまして、誠にありがとうございました。

(消費者委員会事務局担当者退席)

(消費者庁廣瀬消費者制度課長退席)

(消費者安全専門調査会山本座長、消費者委員会事務局友行企画官着席)

≪3.消費者安全専門調査会の報告について≫

○河上委員長 次の議題に移らせていただきます。

次の議題は「消費者安全専門調査会の報告について」であります。

消費生活において生じた生命・身体に係る事故等に関する情報は、消費者庁において、一元的に集約されておりまして、消費者庁の事故情報データバンクには、平成29年末時点で、約20万件の事故のデータが蓄積されているということであります。

消費者庁では、これらのデータを踏まえて、消費者に対する注意喚起を行うなど、事故情報の活用について、一定の取組を行っておられるということであります。

消費者委員会では、事故の未然防止につなげていくため、これらのデータの一層の活用を図ることが可能ではないかという問題意識に立ちまして、消費者安全専門調査会において、データ分析の専門家等である専門委員に、それぞれの専門の見地から、具体的に分析手法等の検討をしていただきました。この度、その報告書が取りまとめられたということでございます。

本日は、同専門調査会の山本隆司座長にお越しいただきまして、御説明を頂くことになります。

山本座長におかれましては、お忙しいところ、御出席頂きまして、誠にありがとうございます。

それでは、報告書の内容について、山本座長から、20分程度で御報告をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

○消費者安全専門調査会山本座長 消費者安全専門調査会におきましては、今年の1月以来、会合を重ねまして、7月31日の会合におきまして、報告書を取りまとめたところです。

取りまとめに当たっての考え方を、私から簡単に説明をいたしまして、その後、報告書の内容の詳細につきましては、事務局から説明をしていただくことにいたします。

消費者事故の実効的な収集と活用という点は、消費者庁及び消費者委員会が発足をした1つのきっかけになったことでございます。

ただいま、河上委員長から説明がございましたように、消費者安全法が制定をされ、事故情報データバンクができまして、その下で、消費者庁におきまして、消費者に対する注意喚起など、事故情報の活用についての取組が行われてきたところです。

ただ、昨今と申しますか、その当時から比べましても、情報技術は格段に進歩しておりますし、それに伴いまして、消費者側のそういった情報技術の使い方も変わってきているということがございますので、そのような中で、こういった情報技術をより実効的に、うまく使って、こういった事故情報を活用していくことができないだろうかということを、専門調査会で議論したところでございます。

具体的には、テキストマイニング、人工知能、統計的処理といった手法を活用することが有効ではないかと考えまして、それぞれの分野の専門家の方を集めまして、専門委員として、具体的に事故情報データバンクに登録をされている事故に関するデータを使いまして、具体的に分析手法の検討、今後の課題等を取りまとめてまいりました。それが今から報告をいたします報告書の中に盛り込まれております。

消費者委員会におかれましては、この報告書を受けまして、消費者庁のみならず、関係省庁にも働きかけていただきまして、事故情報が更に活用され、消費者被害の未然防止、拡大防止に向けた取組がより一層進みますよう、御尽力頂きたいと考えております。

それでは、事務局から、報告書の内容の詳細について、説明をお願いいたします。

○友行企画官 それでは、報告書の内容について、御説明させていただきます。

御説明は、お手元の資料2-1の概要でさせていただきたいと思います。

ページをおめくりいただきまして、目次と、1ページ目右肩に、ページ数が振ってありますので、御覧頂けますでしょうか。

1ページのところでございますけれども、オレンジ色の四角で囲んだところが、報告書の取りまとめの問題意識や、検討の経緯でございますが、ただいま座長からも御説明がありましたので、この部分につきましては、省略させていただきます。

その下の左側の四角囲みのところでございますが、本消費者安全専門調査会の座長、委員の方々でございます。このように、データ分析等の専門家にお集まりいただきまして、実際にデータを精査していただきまして、検討、分析を行っていただきました。

右側が開催実績でございます。1月から7月まで、このように開催しております。

2ページでございますけれども「第2 事故の未然防止等のための事故情報の更なる活用に向けた実際の分析」でございます。

最初の1番でございますが、専門委員における分析でございまして、(1)事故情報の流れから見た効果的な仕組みの構築というところで、検討していただいております。

(ア)目的でございますが、事故情報データバンク、それに関わる消費者、国民生活センター、病院などの公的機関、製造業者、消費者庁、各省庁を含む全体をシステムと捉えまして、事故の未然防止・拡大防止に向けて、システム全体の情報の流れを検討していただきました。

その検討の中で(ウ)検討結果のところでございますが、2つの課題を抽出していただいております。1つが活用できる事故情報を作る、もう一つが事故情報活用のシステム化でございます。

この2つの課題につきまして、それを解決するための具体策として、様々なアイデアを提案頂きました。全てをこの場で御発表することはできませんが、幾つかを御発表したいと思います。

ここの概要にございますように、1つ目がマル2解決案の具体化のところの1)事故の簡潔表現モデルとありますが、事故を分かりやすく表現することを工夫してはどうかということでございます。消費者庁などが事故情報を発表する際に、要因ですとか、特性、制約、結果に分解しまして、簡潔に表現するといったことを御提案頂いております。

もう一つが事故を疑似的に体験するような、消費者事故の体験型テーマパークの話などということで、そういったことを具体的に提案していただいております。

3ページ目にいきまして、次は(2)事故情報データの品質向上に向けてということでございます。

目的としましては、事故情報データバンクに登録されている事故情報に関して、収録されている項目や分類の状況を確認することにより、データの品質を検証することで行っていただきました。実際に、いろんな参画機関から、事故情報データバンクにデータが集まってきているのですけれども、それらの入力されているデータを、入力項目ごとに、細かく先生に検証をしていただきました。

その結果、多くの御提案を頂いております。詳細は、報告書に盛り込んでおりますけれども、その中の非常に重要な点から御説明いたしますと(イ)検証結果でございますが、項目の収録状況を見ますと、項目によっては、空白が多くなっているということで、研究者や利用者のニーズ等を把握して、入力を推奨する項目を明確にすべきではないかという御提案を頂いております。

収録形式や不統一なものにつきましては、例えば定型フォーマットとすることですとか、少なくとも必須項目とするものを決めるなどの対応が、必要ではないかという御提案を頂いております。

非常にたくさんの御提案を頂いておりますが、細かいところにつきましては、報告書に全て記載しております。

4ページでございます。(3)事故情報の活用等のあり方についての言語解析技術でございます。

(ア)目的としましては、1つ目が事故情報データバンクに登録されているデータについて、分類項目の網羅性などを明らかにしていただきました。分析結果は(ウ)のところの左側の表のところにございます。事故情報データバンク全体と幾つかの参画機関につきまして、ここに例示を挙げております。

辞書サイズというのは、項目の数でございまして、19万8,000のデータが入っていることを、全体のところで示しております。網羅率といいますのは、空白のデータがどのようになっているかということを表しているところでございまして、1の場合は、空白が0でございますが、それ以外の数字の場合は、何らかの空白があるということでございます。

そういったような形で、全体的にデータの網羅性などを明らかにしていただいた上で、その後、子供において、頻度が高く、注目度が高いと考えられる重大事故を抽出していただきました。

自由記述の部分に、言語化技術を使っていただいております。事故情報データバンクの中に、どのような単語が含まれているとか、名詞と動詞の関係などを精査していただきまして、その結果は(ウ)分析結果の右側の表のところに、例示として挙げております。ここにありますのは、少し字が小さいですけれども、発生場所、施設用途としては、店舗、商業施設、傷病内容としては、骨折といった、こういった事故が、子供において、頻度が高く、注目度が高いと考えられる事故ということで、1つ抽出されております。

その他の特徴的なグループといたしましては、中学生の化粧石鹸による皮膚障害等、幾つかのグループを抽出していただいているということでございます。

その次の分析でございますが、5ページのところでございますけれども(4)事故情報データ分析という表題でございます。

(ア)目的のところで、頻繁に発生する事故には、一定のパターンが存在する。そのパターンを発見することで、頻繁に起こる事故の特徴を明らかにするという目的で、分析を行っていただいております。

事故データの事故概要ですとか、商品などの分類などから、頻繁に共起する名詞を抽出していただきまして、それをグループ化していただいております。14のカテゴリーに分類していただいておりまして、その14個の分類カテゴリーの全体の状況につきましては、報告書本体に掲載しておりますが、そのうちの2つのものについて、ここで御紹介しております。

1つが9歳以下の重傷・死亡事故に多い事故のパターンでございまして、見ていただきますと、テーマパークですとか、滑り台における事故、乗り物に乗っているときの事故などが抽出されておりまして、9歳以下の重傷・死亡事故におきましては、乗り物や遊んでいる最中の事故の事例が頻繁に発生していることが想定されております。

高齢者になります。例えば70歳代の重傷・死亡事故につきましては、バス停で停車中の転倒骨折といったようなパターンということでございまして、高齢者の場合には、バスですとか、医療ですとか、保健のサービスに関する事例などが見られることが想定されております。

次は、6ページにまいりまして(5)テキストマイニングを用いた事故データの分析の思考と考察のところでございます。

(ア)目的でございますが、子供や高齢者の製品事故に関しまして、対策が必要な重要領域、この場合は、製品名でございますが、それを抽出していただきまして、優先度をつけるという分析を行っていただきました。

(イ)分析手法でございますが、事故内容詳細の記述内容から、テキストマイニングを使って検討していただいておりまして、製品ごとに当該事故情報の出現頻度を算出していただいております。

(ウ)分析結果のところ、9歳以下の事故データと、右側のところは、60歳以上の事故データの分析結果となっております。

9歳以下のところでございますけれども、事故の件数は少なかったとしても、事故が一度起きると、重症化するものをグラフ化していただいておりまして、比率の高いものから、パワーウィンドウですとか、ウォーターサーバーにおけるコックに関する事故などが、品目として並んでおります。

60歳以上の事故データにつきましては、バスですとか、はしごに関するもの、手すりに関するものといったことが抽出されてきております。

このように、先生方に、実際にデータを御覧頂きまして、分析していただいておりまして、報告書の中では、分析の目的ですとか、分析の手法、分析結果について、細かく記載していただいております。分析手法を使うときの留意点でございますとか、分析結果を見るときの留意点につきましても、細かく記載していただいておるという状況でございます。

以上が、専門委員の先生方の分析のところでございます。

7ページにつきましては、民間事業者に分析を施行していただきました結果をまとめております。

こちらは、自由記述部分をテキストマイニングしていただきました結果でございまして、事故情報を俯瞰的に見ることを、1つやっております。

その結果につきましては(ウ)分析結果で、図のところで見ていただきますと、係り受けという表示をしておりますけれども、事故情報を可視化するという目的で、こういう図表を作成していただいております。

もう一つは、SNS活用の可能性というところでございまして、SNSに消費者が直接書き込んだ文字情報を、事故の端緒情報として収集することで、分析や注意喚起の活用が可能であるかどうかを、検討することもやっていただきました。今回は、Twitterへの投稿を見たという分析も行っております。

8ページにまいりますが「第3 事故情報の公開について」でございますけれども、ここでは、事故情報の公開の意義ですとか、事故情報公開における留意点につきまして、整理していただいております。

9ページのところでございますけれども、こちらは「第4 海外における事故に関する情報の活用等」でございまして、アメリカが中心になっておりますけれども、海外でどのような形で、事故情報を収集したり、分析したりといったことを整理しております。

アメリカにおきましては、消費者製品安全委員会というところが、全国の病院の中から、100施設余りを抽出しておりまして、これらの病院が取り扱った傷害に関する情報を、全米傷害電子調査システムというところで公開しております。

情報の入力作業は、CPSCから訓練を受けた病院スタッフが実施しているところが、特徴的となっております。

10ページにまいりますけれども、ここからが提言の部分でございまして「第5 事故情報の更なる活用に向けた提言」ということで、まとめております。

全体といたしまして、5つの提言を行っております。

1のところでございますけれども、事故情報データの品質の向上でございます。

(1)入力方法の整理でございます。

アとしまして、入力項目の検討でございますが、事故情報データバンクの目的、利用者のニーズ等を踏まえまして、入力を推奨する項目を明確化すべきではないかを提案しております。

ウでございますが、入力項目の定義の明確化でございまして、事故情報データバンク全体では、分類に揺らぎが見られるため、入力項目の定義や分類方法を明確化することが必要ではないかということを提言しております。

エのところでございますが、入力項目の精査といたしまして、事故の情報の対策の検討や未然防止等に資するよう、入力項目を必要に応じ、見直し・更新することが必要ではないかということでございます。

右側のところ、(4)事故情報データバンク参画機関の連携・情報交換でございますけれども、入力参画機関において、データ品質向上の目的、重要性を共有して、具体的な方策の検討に際し、連携・情報交換を行うことが重要ではないかということも指摘しています。

2つ目でございますが、新たなデータ分析の活用でございます。

(1)新たなデータ分析技術の活用でございますけれども、事故情報データバンクで、現時点で既に20万件の事故情報が登録されております。自由記述を含むこれらの情報を、限られた人員で網羅的に分析することは、困難ではないかということが予想されます。今回、安全専門調査会の中で、専門委員が行っていただいたように、言語解析技術等のデータ分析技術を活用いたしまして、事故の傾向把握ですとか、分析対象とすべき事故の絞り込み等へ活用することは、より深い分析を支援するための方策として、有効ではないかと考えられます。

(2)SNS上の事故情報の分析でございますが、SNS上の事故情報を分析の対象とすることも、一定程度有効ではないかと考えられます。

(3)消費者安全専門調査会における分析結果の検討のところでございまして、専門委員による分析結果を踏まえまして、更に調査分析を実施してはどうかということでございます。例えばこれまでの注意喚起や関連製品の調査・対策の有無ですとか、今後の事故の広がりの可能性の検討等でございます。

12ページでございますが、3点目といたしまして、事故情報を伝達する新たな仕組みの構築でございます。

(1)新しい事故情報の公表といたしまして、アのところ、事故を分かりやすく表現する方策といたしまして、例えば事故の特性に着目した公表が重要ではないかということでございます。

イでございますが、消費者に届きやすい方策といたしまして、情報提供の媒体の工夫ですとか、情報提供の内容、情報提供のルート、継続的な情報提供の重要性などを指摘しております。

13ページのところでございますが、4番のところで、事故に対して講じた施策の効果の評価のところでございますけれども、事故に対して、施策を講じた場合、その後の事故件数の推移を継続的に把握する等、その効果を検証し、必要に応じ、施策の見直しを実施することが必要ではないかということでございます。

5番目といたしまして、事故情報の公開の促進でございますけれども、事故情報は、社会で広く共有するものとの認識に立ち、可能な範囲で公開を促進する方向で検討してはどうか。

その場合、事故の原因の究明等を行っている研究機関等に対して、公開する内容を限定して公開し、併せて公開範囲の拡大について検討するなど、段階的に公開を行うことも考えられるのではないかということです。

医療機関ネットワークの情報につきましては、より有効に活用することが可能となるよう、個人情報の取扱い等に十分に留意した上で、研究目的等に応じた、情報提供の可能性について、検討してはどうかといったようなことでございます。

以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの報告内容について、御質問、御意見のある方は、発言をお願いします。

本委員会からは、大森委員と樋口委員と長田委員、中原委員が出ていらっしゃいましたが、 何かございましたらどうぞ。では、大森委員。

○大森委員 すごくたくさんの情報が集まっているのだということが分かったですけれども、これまで一般の消費者にとって、分かりやすく情報が発信されることが少なかったと思うので、今回の研究は、とても意義のあることだと思います。ビッグデータ化されて、いろんな人が見て、うまく発信できたらいいと思いました。

研究結果報告で終わるのではなくて、実現に向かって、すぐに進められるような実行部隊とか、タイムスケジュールが立てられるといいと思いました。

○河上委員長 ありがとうございました。

ほかにはいかがでしょうか。長田委員、どうぞ。

○長田委員 既に集まっている事故データをいろいろ分析していただいた結果は、とても興味深くて、ただ、今の事故データの限界というか、それぞれいろんな立場の人たちが書き入れているという今の状況というのが、またここに指摘されているような様々な課題を生んでいるのだということも再認識しました。

PIO-NETに入ってくるものは、相談者の申告ですし、消防などからの火災の情報などは、ある程度正確なものが来るかもしれないし、事業者は事業者で、我が社の製品がその火災のそばにあったということでも、事故情報として上げてきているということもあって、それらをうまく整理しながら、ビッグデータ化しながら、それを事故情報として、国民に向けて、分かりやすく提供していくという手法の研究を、具体化も含めて、検討していただきたいと思いました。

その前に、どうやって事故情報をより正確に集めていくかというところで言えば、今の日本の医療機関からの情報などは、まだまだ集め方が不十分だし、今、個人情報保護法の関係で、国民生活センター、消費者庁がやっている医療機関情報の収集も、いろいろ課題が挙がってきていると聞いておりますので、もうちょっとアメリカのようなきちんとした仕組みがあるといいと思いました。

あと、もう一つは、なぜ医療機関からの情報がより欲しいというところは、この報告書の中にも書かれていますけれども、保護者が自分の目を離したという発想で、なかなか情報が上がってこないというケースもあると聞いておりますので、そうではなくて、もうちょっと第三者的な目から、事故情報が収集できるということも、意義があるのではないかと思っていますので、そこも含めて、今後、検討が進めばいいと思いました。

以上です。

○河上委員長 ありがとうございました。

樋口先生、どうぞ。

○樋口委員 大変意義のある報告書をまとめて頂いたのではないかと思っております。私自身も、AIですとか、こういう新しいIT関係の技術が出てくる中で、今回の検討において新しい可能性が示されたということで、大変勉強になりました。そういった新しい情報をいかにうまく皆さんに伝えていくのかというところも、今、御指摘がありましたけれども、重要ではないかと思います。

そういう中で、これからの課題として、情報をある程度グローバルに交流をさせていけることができるように、あるいは活用していくことができるようにという考え方に基づいたシステムづくりというのは、非常に重要ではないかと思っております。

それぞれの機関が有する情報の形態が違うとか、今回、専門委員の方に御指摘頂いた各機関の情報入力の様式が違うといったことは、簡単なようで、実は意外に大きなネックになる可能性があると思っています。その意味では、国際的な情報の交流、活用の仕組みづくりは、大変な仕事にはなると思いますが、ぜひここを工夫して、世界的規模でデータを共有し、対応や活用ができるというシステムに向けて、報告書を踏まえて、日本の行政や関係機関が、率先してしっかりとした取組をしていただきたいとの感想を持ちました。

以上です。

○河上委員長 ありがとうございました。

中原先生、お願いします。

○中原委員 膨大な情報を分析するための技術について、いろいろと教えていただきまして、大変勉強になりました。分析によって、複数のキーワードに関連があることなどが浮かび上がってくるということで、ただ、最終的にその関連性の具体的な意味ですとか、どちらが原因でどちらが結果かなどということは、最後は、人が見ないと分からないところもあるのではないかと感じましたけれども、そういった作業を行うための前提として、どういうふうにアプローチしていくかを検討するために、いろいろな技術が使えることがよく分かりました。また、情報を集めるときのいろいろな問題点、様式が統一されていないとか、欠けている項目があるとか、そういった今後の情報収集に向けての課題も明らかになったと思います。この検討結果を、事故情報の収集と分析に、今後、生かしていただければと思います。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

私も大体出席したのですけれども、「目からウロコ」のようなご報告を受けて、とにかくAIによる解析技術は、すごいと思いました。この報告書をぜひ多くの方に読んでいただければ有り難いと思います。思いもよらなかったところで、事故の抑止のための政策的な新しい視点が手に入りますし、逆に、一旦起きてしまった後、注意喚起などをした後の効果が、どういうふうに表れたかという、いわば効果評価などのところでも、大変うまくこれを使う可能性があるということがよく分かりました。

ただ、このことは、私が人間だから少し悔しかったのですけれども、やはり、最後には人が見ないとだめだというところが嬉しくて、雑多な情報を読み取る人の感性を磨くことが大変重要だということも、痛感させられました。いろいろある必要な要素を見付け出して、それを消費者問題とか、消費者政策の1つの要素として、翻訳し直すという力が必要ということです。そして、そういう翻訳力を持った人が、情報を扱うことで、結果として、情報の質を高めることにもつながるのだということを、痛感させられました。

山本座長には、大変なお役目をお願いして申し訳なかったのですけれども、山本座長の観点から、取りまとめをしていく過程で、御感想のようなものがあったら、最後に一言お願いしたいのですけれども、いかがですか。

○消費者安全専門調査会山本座長 今、各委員から御指摘のあった点が、まさに重要ではないかと思った点でございますので、それを若干付言する形で、申し上げたいと思います。

大森委員から御指摘のありました、今後の具体化という問題でございますけれども、これに関しましては、報告書の中でも、割とすぐに手をつけられるような問題、例えばデータの出どころによって、入力項目が違っているということを、はっきりと示すといったことから、これは樋口委員が指摘されましたが、国際的な連携という、かなり大きな話まで、いろいろな論点が入ってございますので、これらをどういう順序で、あるいは費用等との見合いで、どういうふうに進めていくかという点は、これから消費者委員会あるいは消費者庁等と関係機関の間でよく話をして、具体的なスケジュールを考えていくべきではないかと思います。

長田委員から御指摘のございました点ですけれども、この調査をするに当たりましても、いろいろな情報の出どころによって、目的が違っているということもありますし、それぞれの制度といいますか、入力の仕方の癖といいますか、そういったものもあるということで、そういった情報の出どころによって、情報の特性が違うという点は、よくわきまえた上で、情報を分析しなくてはいけない。

一番極端な例でいいますと、SNSの話が出ていましたけれども、これなどは、本当に重大な事故については、SNSでもって情報を伝えるということはあまりなくて、むしろ手前のインシデントのような段階のものが非常に多いとか、これは当然予想がつくことですが、若い人は非常によく使うという特性がありますので、そういった特性をよくわきまえた上で、分析をしなくてはいけない。

ただ、他方で、これまで、データバンク全体として利用していくという視点が、それぞれの機関において、必ずしも十分に認識をされていなかったのではないかということがありますので、まずはそれぞれの関係する機関が集まって、統一的な視点からと申しますか、全体として、その情報を利用する場合、どういったところを補っていくことが必要かということを、よく議論していくことが必要なのではないかと思います。

樋口委員が言われました、国際的な問題は、非常に大きな問題で、私も意外に思ったのですけれども、国際的な取組が、研究機関のレベルでも、それほど進んでいるわけでもないようです。ただ、国際化の問題は、あるきっかけがあると、急に進むこともありますので、研究機関のレベルあるいは政府機関のレベルで、国際的な動向を見ながら、それに対応するような体制をとっていく必要があるだろうと思います。

あと、中原委員あるいは委員長が言われました点は、この検討会の中でも、しばしば指摘をされた点ですけれども、結局、大量のデータから、まずこのあたりが問題だという絞り込みを行うという段階では、情報技術は非常に役に立つわけですが、最後のところ、絞り込んだ後の細かい分析は、人間が入ってやらないと、やり切れないところがあります。したがって、情報技術を使えば、全て人の目が要らなくなるわけではなくて、あくまで人の目と情報技術とがうまく協働して、事故情報に役立てていくということではないかと思います。

河上委員長が言われた点ですけれども、特に報告書の概要の13ページの4のところにあります、施策の効果の評価とか、あるいは12ページの3の(1)のイの一番最後にあります、継続的な情報提供のように、長期的な傾向を分析する。ある施策を行ったことによって、事故が本当に減っているのかどうかといった分析をするとか、あるいはある事故情報があったときに、それがどういう施策に結びついていったのかということを、情報技術を使って簡単に分析ができるようにする、あるいは簡単に分かるようにするという、時間軸を取り入れた視点が非常に重要である。そのときに、情報技術がうまく使えるのではないかと思いました。

私が全体として感じていたことは、それぞれの委員が言われたことですので、以上としたいと思います。

○河上委員長 ありがとうございました。山本座長にきれいにまとめていただきましたので、助かりました。

それでは、ほかによろしいですか。

では、消費者安全専門調査会の報告書について、様々な事故情報の更なる活用に向けた検討や提言がなされておりますが、事故情報を一層活用して、事故の未然防止等につなげるという観点から、本報告書の内容を踏まえて、委員会としての提言をまとめて、消費者担当大臣宛てに発出してはどうかと考えますけれども、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。

それでは、事務局から報告書の提言部分を参考にして、素案を作って頂いておりますので、お配りしたいと思います。

(提言(案)配付)

○河上委員長 事務局から、簡単に提言(案)の内容を説明願います。

○友行企画官 お手元の追加資料を御覧頂けますでしょうか。

「消費生活において生じた生命・身体に係る事故等に関する情報は、消費者庁において一元的に集約され、消費者に対する注意喚起を行う等、事故情報の活用については、一定の取組が行われている。

しかしながら、消費者委員会においては、消費者庁が事故情報の分析を深め、事故情報の一層の活用を図ることにより、消費者にとってより有益な注意喚起が可能ではないか、より事故の未然防止等に資する対応を実施することが可能ではないかとの問題意識に立ち、消費者安全専門調査会を立上げ、今般、同専門調査会から『消費者安全専門調査会報告書~事故情報の活用等の在り方について~』の提出を受けた。

同報告書においては、事故情報の更なる活用に向けた適切な検討や提言がなされていると考えており、事故情報の一層の活用を事故の未然防止等につなげるとの観点から、消費者庁に対し、同報告書の内容を踏まえ提言する。また、本提言への対応について、必要に応じて、今後、消費者庁から報告を求めることとする。

なお、提言への対応に当たっては、特に、以下の点に留意すべきである。

まず、提言内容の取組に当たっては、事故情報データバンクに関与する様々な関係者、例えば消費者、事業者、データバンク参画機関、関係行政機関が連携・情報交換を行うことが望ましい。

また、事故情報の分析の質を高めるためには、様々な事故情報から、重要な点を見付け出し、事故の未然防止等の消費者問題の解決につなげていく力(翻訳力)を高めていくことが必要である。

更に、将来的な課題ではあるが、事故情報の収集、分析等に係る、国際的な連携を進めていくことも重要と考えられる」としておりまして、以下のところは、専門調査会の提言部分のところを抜粋した形になっております。

以上です。

○河上委員長 ありがとうございます。

このような提言(案)でございますけれども、御意見のある方は、発言をお願いいたします。いかがでしょうか。特によろしいですか。

特段、修正の御意見はないようですので、原案どおり、提言を取りまとめて、消費者担当大臣宛てに発出したいと思います。

この報告書は、消費者担当の機関だけではなくて、いろいろな事故情報を収集しているところ、あるいは情報を提供しているところにとっても、意味のあるものだと思いますので、関係機関に対しても読んでいただけるように、連絡をしたいと考えております。


≪4.閉会≫

○河上委員長 それでは、本日は、これにて、閉会とさせていただきますが、事務局から、今後の予定について、簡単に説明をお願いいたします。

○丸山参事官 時間の本会議の日程、議題につきましては、決まり次第、委員会ホームページ等を通じて、お知らせさせていただきます。

なお、この後、委員間打合せを行いますので、委員の皆様におかれましては、委員室までお集まりください。

○河上委員長 山本座長におかれましては、お忙しいところ、審議にお越しくださいまして、ありがとうございました。

それでは、これで閉会とさせていただきます。皆様、お忙しいところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございました。

委員間打合せのため、35分ぐらいに、部屋にお集まりいただければと思います。

(以上)