第171回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2014年9月9日(火)16:02~17:42

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

 有村内閣府特命担当大臣、赤澤内閣府副大臣、越智内閣府大臣政務官
【委員】
河上委員長、石戸谷委員長代理、阿久澤委員、岩田委員、齋藤委員、高橋委員、夏目委員、橋本委員、山本委員、唯根委員
【事務局】
黒木事務局長、井内審議官、大貫参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 有村内閣府特命担当大臣、赤澤内閣府副大臣、越智内閣府大臣政務官ご挨拶
  3. 不招請勧誘禁止規制に関するヒアリング
    先物取引被害全国研究会 斎藤 英樹 代表幹事・弁護士
    全国証券問題研究会 近藤 博徳 代表・弁護士
    全国証券問題研究会 大迫 惠美子 幹事長・弁護士
  4. 個人情報保護について
  5. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○河上委員長 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会第171回本会議」を開催いたします。

本日は、有村内閣府特命担当大臣、赤澤内閣府副大臣、越智内閣府政務官がお越しになっておられます。

まず、開会に当たりまして、有村大臣より御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。


≪2.有村内閣府特命担当大臣、赤澤内閣府副大臣、越智内閣府大臣政務官ご挨拶≫

○有村大臣 委員長ありがとうございます。このたび消費者担当の内閣府特命担当大臣を拝命いたしました参議院議員の有村治子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

消費者委員会の本会議の開会に当たり、河上委員長の御指名をいただいて一言御挨拶を申し上げます。

組閣に際しまして安倍総理からは、真に消費者目線に立った行政機能の強化を図るとともに、主体的で自立した消費者を育成し、公正で持続可能な社会環境づくりに励むようにとの御指示をいただきました。このため、消費者行政の司令塔及びエンジンとしての役割を担われる消費者庁、また消費者行政の中核的な実施機関である独立行政法人国民生活センターと密接に連携していただいて、消費者委員会の皆様には真に消費者目線に立った行政機能の強化に御貢献をいただきたいと存じる次第でございます。

また、消費者委員会には、主体的で自立した消費者を育成し、公正で持続可能な社会環境づくりを行うために、消費者問題について積極的に調査審議を行っていただき、消費者行政全般に対する実効性・信頼性のある建議を御提言いただきたいと考えます。委員の皆様におかれましては、河上委員長を筆頭に御支援、御協力を賜りますよう、心を込めてお願い申し上げる次第でございます。

本日の委員会におきましては、商品先物取引に関する不招請勧誘の禁止の緩和の是非、個人情報保護のあり方について、活発な御審議がいただけるものと理解しております。消費者と事業者の皆さんとの間にある情報量、交渉力の格差などを十分に御考慮いただきながら、消費者が安全で安心して暮らしていける社会を構築するための環境整備に向けて、活発な御議論をいただけるように心を込めて御期待申し上げます。

消費者行政を発展させることが日本全体の発展につながる、損得勘定ではなくて、日本の新しい時代をつくるのだということで、大事な、貴重なお時間を割いてここにいてくださる皆様に、改めて心からの敬意と、その専門性を発揮していただくように御期待申し上げ、任に着きました私、有村の御挨拶とさせていただきます。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

続きまして、赤澤副大臣より御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○赤澤副大臣 失礼いたします。9月4日に内閣府副大臣を拝命いたしまして消費者問題を担当することになりました、当選3回の鳥取2区選出の衆議院議員で赤澤亮正と申します。どうか皆様、よろしくお願い申し上げます。

有村大臣の御指示をしっかりいただいて、私も消費者行政が直面するさまざまな課題にしっかりと対応してまいりたいと思っております。当委員会においては、河上委員長、石戸谷代理を初め、多くの皆様、消費者問題についての大変な見識をお持ちであると。昨日、この消費者委員会の本会議ということで、黒木事務局長以下から、委員の先生方はいかに専門性の高い立派な先生方であるかという丁寧な説明を受けておりますので、大変頼もしく感じております。忌憚のない御意見を賜って、消費者行政が少しでもよくなるようにお力をかしていただきたいと思います。私どももしっかり職責を果たしてまいりたいと思うので、どうかよろしくお願いいたします。

簡単でございますが、これで御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

続きまして、越智政務官より御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○越智政務官 皆様、こんにちは。先般、内閣府大臣政務官を拝命いたしまして消費者問題を担当することになりました衆議院議員の越智隆雄と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私は、赤澤副大臣とともに有村大臣をしっかり支えて消費者行政を進めていく立場でございます。いろいろな形で御示唆、御指導いただけたらありがたいと思います。

また、皆様におかれましては、さまざまな消費者問題につきまして熱心に御議論いただきまして、消費者行政についていろいろな御意見を私どもに賜れたら大変ありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

簡単でございますが、御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

○河上委員長 どうもありがとうございました。本日いただいた御発言を踏まえまして、消費者委員会として、今後もより一層充実した調査審議を行ってまいりたいと思います。

有村大臣、赤澤副大臣、越智政務官におかれましては、御出席をいただきまして本当にありがとうございました。

○有村大臣 お名残惜しゅうございますが、御縁に感謝いたします。よろしくお願いいたします。

(有村大臣、赤澤副大臣、越智政務官退室)

○河上委員長 それでは、配付資料の確認につきまして、事務局からお願いいたします。

○大貫参事官 本日の配付資料です。議事次第の下の配付資料の欄に書いておりますが、資料1、1-1から1-7までです。「不招請勧誘禁止規制関連資料(先物取引被害全国研究会提出資料)」です。資料2、2-1と2-2までです。「不招請勧誘禁止規制関連資料(全国証券問題研究会提出資料)」です。資料3、3-1から3-2までです。「個人情報保護関連資料」。最後に、参考資料として「委員間打合せ概要」。以上です。

不足のものがございましたらば、事務局までお申し出いただきますようお願いいたします。

≪3.不招請勧誘禁止規制に関するヒアリング≫

○河上委員長 次の議題は「不招請勧誘禁止規制に関するヒアリング」であります。

経済産業省及び農林水産省は、本年4月5日に商品先物取引法施行規則等の改正案を公表いたしました。これについて当委員会は、4月8日、両省に再考を求める意見、すなわち「商品先物取引法における不招請勧誘禁止規制の緩和策に対する意見」を公表したところであります。

本日は、商品先物取引や証券取引による被害の救済に取り組む全国各地の弁護士によって結成された先物取引被害全国研究会及び全国証券問題研究会に御出席いただいております。先物取引被害全国研究会、全国証券問題研究会におかれましては、お忙しいところを御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本日は、皆様から商品先物取引の被害の実態等について御説明をいただき、その後、意見交換をお願いできればと考えております。

まず、先物取引被害全国研究会代表幹事の斎藤弁護士から15分程度で御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○先物取引被害全国研究会斎藤代表幹事 御紹介いただきました先物取引被害全国研究会の代表幹事を務めております斎藤英樹と申します。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。

お手元のほうに最近の商品先物取引に関する紛争事例の資料として、資料1-1から資料1-7まで御用意させていただきました。

資料1-1は、大手の先物業者に関する不祥事ないし紛争事例についてのまとめでございます。

それから、その具体的な個別係争の案件について1件ずつ、各地の弁護士のほうから、現在あるいは最近判決をとったもの、現在継続中のものを含めてアンケートで回答していただいたものにつきまして、一覧表にしたものが資料1-2になります。

それから、資料1-3につきましては、京都の弁護士からの個別事例の報告となります。

それから、資料1-4につきましては、私が担当している最近の受任事件の報告となります。

それから、資料1-5は、大阪の研究会メンバーが受任している係争の案件でございます。

それから、資料1-6のほうは、先ほどの業者のD社以外に関する全般的な係争についてアンケートをとった最近のものでございます。

1-7が、1-6につけております個別の事例についての表になっております。

こちらの資料に基づきまして御報告をさせていただきたいと思います。

商品先物取引につきましては、過去から非常にトラブルが多くございまして、それによって法規制が順次重ねられてきているところでありますけれども、訪問電話勧誘規制が平成23年1月に施行され、それでトラブルが減少したと言われておりますけれども、それでも現在もなお、同種のトラブルがかかっているというのが現状であります。

訪問電話勧誘が規制されておりますので、個人の顧客に対して直接訪問もしくは電話することができなくなっているわけでありますけれども、これにかわって行われておりますのが不招請勧誘の例外とされている取引、例えばこのD社に関するものであれば、金の地金取引を広く広告しておりますので、こちらの金地金を投資もしくは分散投資の一つとして購入したいという形で取引を始めたところ、通常の先物取引に勧誘されて、その中でまたトラブルとなったというものが1つであります。

それから、訪問電話勧誘の規制の例外としまして、スマートCX取引と言われております取引、証拠金を預けていて下落した場合に、それがある程度まで下がると自動的に決済するという形で、預けた証拠金の中で損害がとまるものということで、これが許容されておりますけれども、そういう損失限定の取引を勧誘しつつも、これの取引をすぐ通常の先物取引に切りかえて勧誘する。その結果、スマートCXを始めたけれども、わずかの期間で通常の先物取引を勧められて、その中でかなり頻繁な売買を行う、あるいは一任的な売買を行うという形でトラブルとなっているという2つのパターンに分けることができると思います。

資料1-2は、D社に係っている案件のものですけれども、今回アンケートをとりましたところ、21件、こちらの研究会のほうに報告が上がってきております。取引の判決が出ているものがございますので、こちらの判決が出ているものにつきましては、平成23年1月よりも前の取引に係るものであったりしますけれども、配付資料をご覧いただきますと、平成21年の改正が成立したころ、7番以降は平成21年以降に取引が開始されているものでございますし、12番以降は平成23年1月に施行がなされて以降の取引のものであります。

この中で勧誘の態様というのをご覧いただければおわかりだと思いますけれども、例えば12番の勧誘態様は、金地金の資料請求をしたところ、金地金を購入させられ、さらに先物取引勧誘となったというものであります。こちらにつきましては、広島地裁の26年6月4日に現実に判決が出ております。判決の要約に書いておりますけれども、金地金購入後間もない時期に、先物取引を開始して、購入したばかりの金地金を売却して、これを証拠金に充てているという経緯からして、それを投資家のほうが積極的に求めたものであるということは考えられない。担当者からの積極的な勧誘があったと認定されておりまして、こちらにつきましては、まさに訪問電話勧誘を規制した不招請勧誘禁止の規定に違反する行為であると判示がなされております。

それ以降もこの取引につきまして勧誘態様をご覧いただきますと、ほとんどが金地金取引資料を請求したものの、先物取引の勧誘をされているというものが圧倒的なものになります。職業をご覧いただきますと、個人事業主の方もおりますけれども、中には無職で年金生活に入っている中で金地金の資料請求したものの、先物取引を勧誘されて大きな被害を受けたというものが多数ございます。このように、商品先物取引についてのトラブルは、従来のものが形を変えて、現在も生じている。訪問電話勧誘を厳しく規制して、その結果トラブルは減っておりますけれども、こちらを脱法的に勧誘するような形で現在もトラブルが起こっているというのが現状だろうと思っております。

D社というのは非常に大手の業者でありますけれども、それ以外の業者につきましても同じようにトラブルが現在起こっているということで、まとめさせていただきましたのが資料1-6になります。先ほどと共通してですけれども、こちらに書いておりますように、金地金取引以外にも白金の地金取引が勧誘されているケースでありますとか、先ほどのスマートCXなどの勧誘を行った後に、非常に近い時期に通常の先物取引に進めていったものが多数ございます。

私が担当している、まさに最近受任した案件でありますけれども、資料1-4にそのあらましが書いてございます。こちらの方は女性の60代の方ですけれども、今年の5月12日に取引が始まって、6月13日、わずか2カ月でありますけれども、約350万円のお金がなくなってしまった。

もともとは、当初、勧誘目的を告げずに電話で勧誘されて、最初は断っていたわけでありますけれども、損失限定取引をどうですかと勧められて、非常に熱心な勧誘に負けて1口だけやってみようと。若い外務員の方が来られたのでやって上げることになったわけですけれども、その翌日に3口に増やしませんかと。通常の取引であっても、売りと買いのバランスを立てるような取引をすれば、これは安全に取引ができるのだと言って、売りと買い、先物取引で両建て勧誘と言いますけれども、法律上禁止された両建て勧誘を行って、翌日から通常の先物取引に誘導している。

取引が適正にされていればよろしいわけですけれども、ほぼ毎日のように取引勧誘がなされて、御本人は仕事が忙しいので取引をやめたい。もうそんなにもうける必要もないのでやめさせてくれと言っても、なかなかやめさせてくれずに、結局、追証拠金等が発生し、苦情申し入れの中で消費生活センターに相談して、ようやく取引を終了させてもらったという事例でございます。

このように、過去生じていた先物のトラブルが現在、形を変えて、このスマートCXであっても通常の先物取引を勧誘するような事例が現在も起こっておりますので、我々、研究会のメンバーとしましては、訪問電話勧誘の規制をきちんと維持していただきますとともに、現在、このような脱法的になされているような実態をよくご覧いただいて、規制についてきちんと維持していただくような形でお願いしたいと思っております。以上です。

○河上委員長 ありがとうございました。

続いて、全国証券問題研究会代表幹事の近藤弁護士と幹事長の大迫弁護士から、同じく15分程度で御説明をお願いしたいと思います。

○全国証券問題研究会近藤代表 皆さん、こんにちは。全国証券問題研究会の代表を務めております弁護士の近藤と申します。よろしくお願いします。

私からは、まず全国証券問題研究会という団体について、簡単に御紹介したいと思います。この団体は、金融商品取引被害の救済に取り組む全国の弁護士によって結成されている研究団体です。平成4年2月に第1回の研究会を開催しまして、先日、9月5日、6日に第50回の研究会を開催いたしました。

平成4年当時急増していた個人投資家によるワラント取引被害の救済をきっかけに結成されたものです。当初は、ワラント取引被害の救済に理論面や実践面で尽力して、多くの被害救済判決を獲得しました。その後、適合性原則、説明義務に関する判例法理を形成していると考えております。

平成6年以降、証券取引被害判例セレクトという判例集を研究会の開催にあわせて発行しておりまして、現在47巻まで発行しております。それと、全国証券問題研究会のホームページも開設しておりまして、これまで研究会のメンバーが獲得した勝訴判決を中心に掲載しております。

本日は、市場デリバティブ取引における勧誘に端を発する被害の状況についてという内容で調査をしまして、その御報告をしたいと思いますが、資料は2-1と2-2という2つになります。

まず、資料2-1は、1番目が全国証券問題研究会のホームページにあります、判例のデータベースより集計をしました被害状況、判例の状況ですね。過去7年間の商品ごとの判例、裁判例の集計をしたものです。この表にありますとおり、オプション取引に関する判例は1件、デリバティブ取引に関する判例は4件となっております。オプション取引の判例は説明義務違反に関するもので、この事件の顧客は、それ以外にもオプション取引を行った経験がある方ですので、勧誘自体は問題とはなっていません。また、デリバティブ取引に関する判例の事案は、商品はクーポンスワップ、通貨オプション等、被害者は全て法人、個人の方の事件はありませんでした。

表2は、東京投資被害研究会という団体が行った110番の集計結果です。この団体も、東京で業務を行っている投資取引被害救済に関わる弁護士が結成されたグループです。この110番は1日だけの開催であったり、あるいは実施の時間帯や広報などの関係もありまして、相談件数には年度によりばらつきがありますが、デリバティブ取引に関連するものは非常に少ないものとなっています。商品先物、海外先物、FXなどは相当数ありましたが、110番を始めた平成21年以降の相談件数は、表のとおりかなり減少しております。むしろ、未公開株の売買のような詐欺的金融商品被害が多くなっているという状況です。

資料2-2は、現在のFX取引に係る紛争類型の概要というものでして、これは全国証券問題研究会のメンバーが作成した報告であります。これにありますように、FX取引においても不招請勧誘が禁止されて以降、勧誘に起因する相談被害はほとんど見られなくなり、むしろ現在はシステムトラブルに起因する紛争が中心となっているとされております。

全国問題研究会では、先ほどお話したように、年2回、研究会を開催しておりまして、その時々に問題となっている金融商品あるいは取引の手法などを取り上げて、商品の仕組みや取引に関する公的な問題を解明するという研究を続けております。これまで、この問題を取り上げて議論してほしいという会員の意見で、ワラント、投資信託、オプション取引、仕組債、過当取引、説明義務、適合性原則など、さまざまな商品や取引や法的義務などについて議論してきましたが、その中で市場デリバティブ取引について、勧誘に起因して大きな被害あるいは多数の被害が発生し、被害救済のために議論が必要だという意見が出たことは、私の記憶する限りではなかったと思います。

9月5日、6日に全国証券問題研究会の大会が開催されまして、全国各地から200名近い弁護士が集まりました。その際に、市場デリバティブ取引被害についても若干意見交換を何人かの弁護士としてみましたが、そういう事件を今、扱っている、あるいは周辺の弁護士でそういう案件をやっていると聞いたことがある方はおりませんでした。私自身、東日本大震災などで、日経225オプション取引で多数の損害をこうむったとおっしゃる何人もの方から相談を受けたことがありましたが、その中で、勧誘に起因して適合性原則違反とか説明義務違反という問題になる可能性があると考えられる事案は一つもありませんでした。

このようなデータあるいは私も含めた弁護士・実務家の肌感覚からの話になりますが、市場デリバティブ取引で勧誘に起因する証券関係の投資被害事例というのは、実態としてかなり少ないのではないかというのが私どもの意見です。

○全国証券問題研究会大迫幹事長 続きまして、全国証券問題研究会の幹事長を務めさせていただいております大迫のほうから、若干御説明申し上げたいと思います。私は、実は先物取引被害研究会では元代表幹事ですので、両方の立場から被害実態を見ておりまして、その立場で意見を申し上げたいと思います。

今、2つの報告がありましたように、先物取引被害では不招請勧誘をもとにして発生する被害というのが大変多くございます。それに対して、証券のほうでは、不招請勧誘がもとになって被害が発生しているという事実は全くないと理解しております。これは、1つはそれぞれのビジネスモデルが全く違うからだということが言えると思います。不招請勧誘を行っている商品先物のほうでは、これは勧誘により、どういう顧客が掘り起こされるか、これが被害に密接な関係にあると思いますけれども、言ってみれば不招請勧誘によって掘り起こされる客を相手に商売しているのが商品先物取引であると、今まではそうであったということが言えると思います。

どういうことかといいますと、この取引の危険性を全く知らない人、そしてこの取引を聞いたこともない人、そういう人に対して専門家が誰も見ていないところで勧誘をする。それによって取引を始める人、これが不招請勧誘によって顧客になる人という層になるわけです。

こういう人ばかりが商品先物取引の顧客になっている厚い層をつくっているものですから、どういうことになるかというと、実際に取引が始まったときに自分で判断ができない。上がる要因もわからないし、下がる要因もよくわからない。そして、実際にどのような値動きをしているかも知らない。こういう人が取引を始めると、必ず外務員にすがって取引をするしかなくなってしまうわけですね。つまり、始めるときも知らなかった、始まってからも全てお任せでやるしかない。こういう顧客が不招請勧誘で掘り起こされるわけです。そうしますと、どうしても手数料稼ぎのほうに誘導されていく危険性が高まってしまう。これが商品先物取引被害の本質的な部分だろうと思っております。

それに対して証券のほうでは、ほとんど不招請勧誘によって取引を行っていない。それは、客層も非常に多いですし、1人の客に対して外務員が張りついて電話でずっと誘導していくというビジネスモデルがとりにくい。しかも、これは手数料が全然違うということもあると思います。商品先物のように外務員が張りついてお客から利益を取っていこうと思うと、どうしても高額な手数料を設定しなければいけない。御承知のように、商品先物取引被害の場合と証券の場合とでは、手数料率が全く違います。これが2つの業界で不招請勧誘取引の持っている意味の違いを生んでいるのだろうと思います。ビジネスモデルが本質的に違うということがあって、この先物のほうの不招請勧誘に起因する被害の多さと、証券のほうにはほとんど見られないという差が出ていると思います。

御承知のように、今、金融商品のほうの市場デリバティブ、これはネットで始める人が圧倒的に多いです。そして、手数料の競争になっております。手数料が安いところを自分で探して、ネットで積極的に取引をしていく。こういう人たちが圧倒的な顧客層をつくっているわけです。このように不招請勧誘で始めてしまう場合と、そうでない場合とで、やってくる顧客に質的な違いが出てしまいます。ここが本当に大きな問題だろうと思います。今、ここで商品先物取引を不招請勧誘を展開することで顧客層をふやそうとすれば、再びそういう受け身で外務員の言いなりになりやすい特殊な層をふやしていくだけに終わるだろうと思っております。非常に被害もふえるだろうと懸念しております。以上です。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

それでは、御質問、御意見のある方は発言をお願いいたします。いかがでしょうか。石戸谷委員、どうぞ。

○石戸谷委員長代理 御説明ありがとうございました。

最初に、誤解があるといけませんので申し上げておきますが、被害者側のほうが来ていて、業界が来ていないので、一緒にやればいいじゃないかという声があるといけないので、初めにお断りしておきますけれども、そのほうがいいというのは、話がわかりやすいと考えておりましたが、お受けいただいたのが証券研究会と先物研究会ということでありますので、誤解のないようにお願いしたいと思います。

それで、先物研究会のほう、具体的な資料で御説明ありがとうございました。それで、ちょっと補足的に先物研究会の活動歴といいますか、証券研究会の冒頭にお話がありましたような概要をちょっと補充していただいて、その上で今回の政省令案で理解度確認とか熟慮期間とかアラート、いろいろ入っていますが、その辺を従来の活動歴から見て、どういうぐあいに評価しておられるのかというのを具体的な材料を出していただきましたが、もうちょっとかみ砕いた形でお願いできればと思います。

○先物取引被害全国研究会斎藤代表幹事 先物取引被害の全国研究会は、昭和50年代から長く活動している研究会でございます。証券の研究会と同じく、各地の先物取引被害、特に先物が少なくなってからは、未公開株とかファンド型の被害とか、いわゆる投資詐欺のトラブルについての被害救済あるいは防止についての活動に取り組んでいる弁護士でできている研究会になります。毎年2回、定例会を開催して、大体200名あるいは250名ぐらいの参加者を得て、それで各地の実情とか最近の先物取引あるいは投資被害取引についての研究、あるいは裁判例の報告、あるいは法制度の改善等を議論して意見を申し上げるということでやっております。

それで、先物取引被害研究会としましては、本件の不招請勧誘禁止の緩和の問題につきましては、先ほどの被害実態の中でも若干申し上げましたように、こちらはもともと無差別的な訪問・電話勧誘によって顧客となり、相当部分が損失を受けて退場していくという形でトラブルを長年発生させてきたという経過がありますので、ぜひともこれは維持していただきたいと思っております。

それで、経産省あるいは農水省のほうから、先物取引に関して理解を確認する書面を改善することによってトラブルを防止することができるのではないかという提案がなされているように聞きますけれども、先ほどのトラブルのアンケート結果の中でも出ておりますように、外務員のほうが一応の説明は当然するわけですね。先物取引自体は当然リスクのある取引でありますし、投機性が高い取引でありますけれども、訪問・電話勧誘によって個別のものとして説明しておりますので、通常の先物取引の説明を行うだけでは、その後の被害を避けるということは全然できていない。

各裁判例の中でも拝見していますと、外務員が記載内容を誘導したり、あるいは幾ら投資するお金があるかという金額についても、水増しして記載させるということが非常にたくさんこれまでも起こっておりましたし、現在もそのような状況にありますので、書面でもって確認したということが、その後の勧誘あるいは不当な頻繁な勧誘を避けるものには全くならない。

特に、先ほど大迫弁護士のほうからもありましたように、手数料が非常に高い業界でありますので、通常の正常なところであれば、手数料を安くして競争して、自分でそれを選んでもらう。そういう形になると好ましいわけですけれども、先物業者の手数料は非常に高額な状態で、それが固まっておりますので、ネット取引のような手数料を競争するような環境になくて、必然的に頻繁な取引、通常の先物取引で建てたり、落としたりということにどうしても誘導されやすい状態にあるので、経産・農水省のほうが熟慮期間を設けるとか理解度の確認を求めることによって、過当な取引をとめるということには全くならないと考えております。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

ほかにはいかがでしょう。唯根委員、どうぞ。

○唯根委員 御説明ありがとうございました。私も相談現場で被害者の方々と随分お話を伺ってきてご報告戴いたこういう裁判にまで行く方々の被害額からしますと、数百万円の金額での被害で裁判までは考えられないであきらめている方々をたくさん見てまいりました。

今、高額な手数料ということの御説明があったのですが、法規制の改正される前と改正された後で、確か業界では手数料額について見直すようなことを言っていらしたと思うのですが、被害の中で手数料については変化はなかったのでしょうか。改善されたりしていませんか。もし御存じでしたら教えていただければと思います。

○先物取引被害全国研究会斎藤代表幹事 法改正によって、従来、一律で定められていた手数料につきましては自由化がなされて、各社が手数料額をそれぞれに定めていると聞いております。全部の会社を整理して比較はしておりませんけれども、ネット取引の中で定められている手数料と、いわゆる外務員が勧誘する対面営業による手数料というのはものすごく開きがあって、ネット取引はその外務員を使いませんので、非常に安く手数料が設定されているけれども、外務員によって対面営業で行うものについては、価格競争といいますか、手数料競争はさほど働いていていないと理解しております。

そのために、1回取引をすると1万円とか1万数千円とかになるものを、1日に何回も建て落ちをする、あるいは今日建てたものを次に落としたりということを繰り返すことによって、手数料がどうしても累積していきますので、預けている証拠金の相当部分が手数料でなくなってしまうという手数料稼ぎと指摘されるようなトラブルといいますのは、過去においてもありましたけれども、現在も同じような傾向ではないかなと理解しております。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。石戸谷委員、どうぞ。

○石戸谷委員長代理 具体的な取引事例がないと、手数料稼ぎと言っても、全然イメージがわかないと思いますので、損失全額が手数料になったというのはそんなに珍しくないと思いますけれども、具体的な事案みたいなものを出しながら説明していただくと、聞いているほうがよくわかるのではないかと思いますが、ちょっと補充をお願いします。

○先物取引被害全国研究会斎藤代表幹事 本日お配りした幾つかの事例の中で、手数料とかを明示しているものとして資料1-3がございますので、こちらの御紹介をさせていただきますと、これは京都の弁護士が担当した案件で、委託者が70代の男性で、従業員持ち株会の株式購入経験はあるけれども、現在、無職の年金生活者だということです。もともとは、この件につきましては損失限定取引を勧誘されて、それ自体は2枚を2回建てただけだということであります。

その後、通常取引に移行するように勧められて取引を行ったけれども、移行するまでにわずか4日間しかなかった。通常の取引に移行した後、こういう両建て取引、あるいは売りと買いを同時に建てるような状態で取引が続いたり、あるいは1回買いを建てたのを落として、また買いを建て直すものを直し取引と言いますけれども、その日に建てては落とすという、特定売買という呼び方をしておりますけれども、そういうものが8割以上を占めていて、現実に出た1,550万円のうち、手数料自体で1,100万円を占める。損失の中の手数料が75%を超えるような状態という形でのトラブルという報告がなされております。

このような形が稀かといいますと、むしろ取引で出た損の大半が手数料で消えてしまっているということはたくさんございます。これだけが特殊というのではなくて、非常に高い手数料になっている取引を頻回に繰り返しますので、その部分が手数料で消えてしまっている。中には、売買自体では十分利益が出ているのだけれども、手数料を負担したことによって、手数料のほうが利益を超えた形になって、100%以上といいますか、ほとんどが手数料で消えてしまうというケースもまれではございません。大体、以上です。

○全国証券問題研究会近藤代表 余り具体的ではないですけれども、最初に大迫弁護士が話をされた証券取引と先物取引のパターンの違いというのを、私の経験も踏まえてお話をしたいと思います。

例えば資料1-4をご覧いただきますと、先ほど斎藤弁護士からも紹介ありましたが、この方は取引期間が2カ月間で被害額350万円ということになっております。つまり、勧誘を受けて取引を始めてすぐに回転売買に入って、たった2カ月間で350万円の損害を出したという内容です。証券取引でも、過当売買、回転売買というのがありますけれども、口座を開いてからわずか2カ月でこの損害が発生するというケースはありません。

過当取引になって裁判になりまして、勝訴判決が出て判例になっているケースを見たり、私自身が経験した例を言いますと、口座を持っていて、しばらくは安定株とか投資信託とか、そういうものを長期保有している。それが10年とか続いているときに、あるとき担当者が変わって、その担当者が多数回の取引を始めるようになるケースですね。回転売買は、確かに証券会社も過去にやりましたが、それは不招請勧誘で始まるものではなくて、個々の外務員の個性で始まることが多い。そういう意味では、先物取引の被害とは全く性質が異なると思います。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。石戸谷委員、どうぞ。

○石戸谷委員長代理 先物も判決がたくさんあって、ひどい事案も確かにある。だけれども、それは昔の話で、今は変わったのだという論点があるわけですけれども、そこのところの、裁判をやると証人尋問をやったり、勧誘の実態とか個別に皮膚感覚でわかると言いますか、先ほど具体的な数字は出していただきましたけれども、その辺から見て、この論点についてはいかがですか。

○先物取引被害全国研究会斎藤代表幹事 トラブルが多かったのは過去の不祥事であって、最近は随分改善されたのだという指摘を経産省などから受けることは当然ありますけれども、我々弁護士の感覚として、確かに一昔前であれば渡すべき委託者のガイド、それすら渡さないようなひどいケースもあって、あるいはもう取引をやっていないのに取引を建ててやめることができない、そんなひどい勧誘もありましたけれども、さすがに最近、法規制が強化されて、あるいは書面を交付しないと行政処分を受けたり、たくさんトラブルを起こせば業務改善命令や取引停止処分を受けるような行政処分が強化されている中では、書面自体を渡さない、あるいは一切説明しないというケースは随分減ったのではないかと思っております。

しかし、勧誘につきましては、先ほどの訪問と電話によって、全く未経験な人を勧誘して顧客に勧めてきた経過につきましては、なかなか改まっていない。何となれば、先ほどの金地金の取引を分散投資として求めているような人に、通常の先物取引を勧誘して頻繁な取引を誘導する。あるいはスマートCXという例外規定として許容されている取引を、初心者にやってもらう。

それを1年2年と長いことやってもらって、自分でもっとたくさんやりたいという人に勧めるのであればいざ知らず、わずか1週間とか、極端には、先ほど報告しましたように、翌日から通常先物を勧めるということを見ますと、手数料稼ぎを優先させたような勧誘実態であろうと思いますので、その被害実態の大きなところは変わっていないと理解しております。

○全国証券問題研究会大迫幹事長 続きまして、被害実態が変わっていない例として私どもが大変気にしておりますのは、入り口のところを脱法的に始めたものについて、取引内容が、昔と変わらず両建ての状態が続いているものがほとんどなくなっていないということですね。両建てというのは、売りと買いを両方持っているという状態なものですから、お客にとってはほとんど利益が出ない、お客自身の口座の中で相殺勘定が行われているような状況をつくっているわけです。ですから、お客は利益が出しにくくなっている。

にもかかわらず、なぜするかというと、先物取引は値が上がっているときには、買い玉というものを動かしていけば利益が出る。値が下がっているときには、売り玉というものを動かしていけば利益が出るようになっているわけです。ですから、両方持っていると、必ずどちらかでは利益が出ているわけですね。ですけれども、総額では利益が出ない。この状態をつくっておいて、外務員が利益の出ているほうを、今、こっちの利益が出ているので利益を確定しましょうと言って売り買いをさせるのですね。逆に下がってくると、売りのほうを売り買いさせる。

このように外務員が働きかけて、今、利益の出ている、こちらを動かしましょうと言いやすい状態をつくるために両建てをさせると私は思っておりますが、そういう取引の内容が今も昔とほとんど変わっていない。今も、業界の人たちは、両建てによって常に売り買いをさせる体制をつくりながら商売をしているという、その取引の内容が昔と変わっていないというところが、業界そのものの体質が全く変わっていないと推認させるところだと思っております。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。

今、実際に問題になっているような事件というのは、取引の時点は1年ぐらい前あたりが念頭にあるのですか。もう少し最近に近いですか。

○先物取引被害全国研究会斎藤代表幹事 今回、ヒアリング等のお話がありましたので、現時点で係争案件として抱えているものがどれぐらいあるかというのを、メーリングリスト等によって、現に受けているものがどれぐらいあるのかということでアンケートを集めましたので、基本的には過去のものになると物すごくたくさんあるわけですけれども、現時点で裁判が係争としてかかっている、あるいは最近受任して、現在継続中であるというものを集めた結果でありますので、ここ最近、どんな傾向にあるかというのを非常に端的にあらわしているような事案であろうと考えております。

○河上委員長 ただ、具体的な契約の締結の時点というのは、もうちょっとさかのぼっていくということになりますか。

○先物取引被害全国研究会斎藤代表幹事 判決が出ているものは、当然、判決が出るまで1年数カ月であったり、2年近く要するものであったり、そもそもこの先物業者の取引ですと、古くは2001年から2010年と取引期間が非常に古いものも中には入っておりますけれども、そのナンバーの7、8以降ですと、平成21年以降の取引であったり、あるいはナンバー12になりますと、まさに法改正がなされた平成21年以降、勧誘がなされて取引が行われて、それが裁判までなっていたり、あるいは現に裁判としてかかっているものがございます。

○河上委員長 法改正以降も、現在の取引状況が浄化されて、よくなっているのだということには必ずしもならないという御認識でよろしいですか。

○先物取引被害全国研究会斎藤代表幹事 そのように理解しております。

○河上委員長 もう一点、事業者の方からヒアリングをしますと、実際にこういう先物取引をやってみたいと考えているのだけれども、どうやったらいいのかわからない、そういう人も中にはいるのだ。私どもがお声がけをすることさえ許されないというのはいかがなものか。つまり、再勧誘禁止の規定があるのだから、そこをきちんとやっていれば、お声がけぐらいはさせていただいてもいいのではないかということをしきりにおっしゃっているのですが、こういうことで再勧誘禁止の規定があるから不招請勧誘禁止は要らないのではないかという議論に対しては、何かお考えはございますか。

○先物取引被害全国研究会斎藤代表幹事 再勧誘禁止の規定は、たしか平成17年以降の改正等で盛り込まれているのかと思いますけれども、先物の業者の勧誘というのは、電話1本で勧誘して、やりませんと言ったらすぐ撤退されるような甘いものではないというのが我々の認識で、どうですかと言って、今、時間がないと断られても、近くまで寄りましたと訪問・電話によって勧誘して、それで契約をかなり熱心にといいますか、強引に勧めるようなケースが非常に多いという認識でおりますので、その再勧誘禁止によってトラブルは全く起きない状態になっているかといいますと、全くそうではない。

特に、高齢者であったり、投機取引の経験に乏しい方は、話だけ聞いてくれと言われれば、断れずに話を聞いて、なおかつこんなもうけ話があるという形になって、抽象的な意味ではリスクのある取引ということは御存じですけれども、まさか最初預けたお金が全部なくなるだけじゃなくて、100万円あるいは300万円で始めたものが、1千数百万円とか3,000万円とか、手元で置いているお金をほとんど注ぎ込んでしまうということまでは想定しておりません。専門家は専門家として、自分のために適切なアドバイスをやってくれるという信頼のもとに始めますけれども、それだけ頻回な、あるいは高額な手数料になる取引になるとは、契約時点では想像しておりませんし。

それは、取引を始めて、初めて投機性の高さとか手数料の高額さというものを実感しますので、自分で相場情報を判断できないような人が本来入るべきではないというのが、そもそもでありますから、こういうトラブルをきちんとなくすという意味では、訪問電話を厳しく規制していただく必要がある。現に、訪問・電話まで規制するのは厳し過ぎるという御意見はありますけれども、広告あるいは宣伝すること自体は全く禁じられておりません。セミナー形式で先物取引を勧誘する目的で講演会を開催するというやり方をやっている業者は現在もありますし、訪問・電話によって勧誘しなければ、そもそも勧誘ができないというのは、現状とは全く違うのではないかと考えております。

○河上委員長 ありがとうございました。

石戸谷委員、どうぞ。

○石戸谷委員長代理 ありがとうございました。

もう一つの論点として、証券取引所では既存顧客には商品デリバティブの勧誘もいいと。そうすると、横並びで商品取引所でも既存顧客であれば勧誘はいいということにならないのかという考え方があるのですけれども、それについてはどういう具合にお考えか。

○先物取引被害全国研究会斎藤代表幹事 今回御報告した形で、高齢の方であったり、多少お金を持っておられる方は、有事の金ということで金地金取引などを購入される方は結構多いようであります。ただ、それは金で値上がりするとか、そういう売ったり買ったりするために購入している方はほとんどなくて、分散投資の一環としてお買い求めになるわけですけれども、そういう分散投資を求める、安定的な投資ということで求めている人をターゲットにして、これを証拠金に入れさせて勧誘するような形のトラブルが、この大手業者の方では大半がそのようになっております。

そうしますと、金地金取引をやっている方であれば先物を勧誘していいのではないかといいますと、そもそも始めた動機が、投機取引をやろうとして入った人と、分散投資あるいは有事の金ということでやった人の投資意向とは全く違うものでありますから、これを既存顧客であるから投機取引を勧誘してよいというのは全く違うと思いますし、脱法的な今回のような勧誘態様を見ますと、証券のような長い取引をやっているお客にリスクのあるものを紹介してトラブルになっているというのとは、また質的に違うのではないかと思います。

○河上委員長 大迫幹事長、どうぞ。

○全国証券問題研究会大迫幹事長 今の点につきましては、総合取引所のほうにも同じことを聞いたことがあるのですけれども、金融庁の見解では、金融庁の業者のほうは、金を持っていても、これは金融商品ではないので既存顧客とは考えないのだという御回答でした。一応、金は商品だということかもしれませんけれども、私自身が東京地裁でとった裁判例の中では、金地金から勧誘された人に対する適合性の判断として、金地金は貯蓄商品であると。ですから、投機取引の基礎となるものと全く異質のものであるという判断をいただいておりますので、地金を商品取引の基礎的な商品だと考えるのは強引過ぎるお話だろうと思っております。

○河上委員長 ありがとうございました。

高橋委員、どうぞ。

○高橋委員 お時間ないところすみません。御説明ありがとうございました。

被害者の属性について、お伺いします。今回、農水・経産省のほうでは理解度確認テスト、熟慮期間のほかに、高齢者を保護するということで70歳以上ということを言っておられるわけですけれども、今日提出していただいた資料のうち、大手先物業者の最近の係争の資料1-2を拝見すると、70歳以上は21例中2例です。それから、資料1-7のほうで、その他先物業者の係争を拝見しても、29例中2例という形になっています。ですので、高齢者の線引きが少し気になっているということと、最近の傾向として、若い人の被害がふえていると考えていいのか、高齢者は泣き寝入りが多いと考えたほうがよいのか、その辺、御示唆いただけると助かります。

その他、属性の点で、職業とか地域とか、何か気にしておくべきことがあれば教えていただきたいと思います。在宅の人は非常に少ないわけなので、そういう意味で高齢者とか主婦が、FXなどで当初は被害に遭ったわけです。また、固定電話も契約者が非常に激減している中で、固定電話は高齢者中心と言われておりますけれども、携帯を使った電話勧誘、スマホなどモバイル系のトラブル等が今後問題になるのかどうか、そのあたりについて少し教えていただけたらと思います。

○先物取引被害全国研究会斎藤代表幹事 先物取引での被害者の属性、年齢層がどの程度に分布しているかというのは、今、御指摘いただきましたように、70歳を超える方が主流といいますか、大半を占めるというのではむしろなくて、圧倒的に70歳より下の中高年者の方が非常に多いのではないかと思っております。70歳以上の方に一定の勧誘規制の歯どめさえ設ければトラブルは全く起きないのだというよりも、むしろ70歳以下のほうが退職金を持っておられる、あるいは年金生活に入って貯蓄がある程度あるという形で勧誘のターゲットになってしまっているという現状もありまして、それを70で切れば十分委託者保護が図れるかといいますと、全くそうではないという印象を持っております。

それから、地域性につきましては、どの地域が多いというのはございませんけれども、先物業者の勧誘の話を聞きますと、結構田舎のほうまで訪問とか電話勧誘して、直接やってこられるという形のものがあります。

確かにおっしゃるように、高齢者は固定電話を現在も使っていて、連絡としては携帯電話をお持ちですけれども、当初の勧誘は固定電話を経由したものが非常に多いのかなという印象を持っております。高齢の方は、自分で手数料を比べられるような人、ネット取引で相場情報が見られるような人はほとんどおりませんで、どうしても外務員の勧めだったり、情報にほぼ依拠せざるを得なくなってしまって、その取引が頻繁であったり、過当であったりするのかという判断でさえも十分できない中でお任せ状態になって、非常に過当な頻繁な取引をとめることができていないという現状ではあろうかと思います。以上です。

○河上委員長 大体時間になっておりますけれども、ほかにこれだけはという御意見等がありますか。よろしゅうございますか。

本日は、皆様から御報告を頂戴いたしまして、意見交換を若干させていただきました。先物取引に関するトラブルの実態が大変よくわかりました。今後の委員会の審議の参考にさせていただきたいと思いますし、不招請勧誘禁止のルールが簡単に骨抜きにされないように、委員会としても頑張りたいと思います。

先物取引被害全国研究会及び全国証券問題研究会におかれましては、お忙しい中、審議に御協力いただきまして、まことにありがとうございました。

(先物取引被害全国研究会・全国証券問題研究会退室)

≪4.個人情報保護について≫

○河上委員長 次の議題は、「個人情報保護について」であります。この件につきましては、政府が本年6月に決定いたしました「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」というものがございまして、これに対し、当委員会は7月15日付で「『パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱』に関する意見」を公表いたしました。

7月の意見書では、いわゆる名簿屋等により販売された個人情報については、大綱が示す対策だけでなく、早急に実効的な対策のあり方を検討する必要があるといたしまして、5つの視点を提示しておりました。当委員会は、本視点に基づいて8月19日に開催した第169回本会議で、経済産業省、消費者庁からヒアリングを行ったほか、二度にわたって有識者ヒアリングを行うなど、引き続き調査審議を行ってまいりました。

今般、本視点に係る制度改正のあり方をより具体的に述べるものとして、「いわゆる名簿屋等に関する今後検討すべき課題について意見(案)」を取りまとめました。

それでは、意見(案)について、担当委員であります山本隆司委員から御説明をお願いいたします。

○山本委員 それでは、お手元の資料3-2にポンチ絵がございますので、主にはこれに沿って説明いたしますが、適宜、資料3-1の意見書の本文のほうも参照していただきながらということになります。

まず、この意見をまとめるまでの経緯につきましては、今、委員長からお話があったとおりでございます。便宜、6番目の項目、最後のいわゆる名簿屋等に対する業規制というところから入りたいと思います。先ほど委員長から御説明のございました前回の意見におきまして、5項目列挙したという話がございましたけれども、一番最後にいわゆる名簿屋に対する規制という項目が挙がっておりました。これに関しましては、今回の意見におきまして結論としましては、名簿屋等に対する業規制という形で、現時点において導入することはなかなか難しいであろうという結論でございます。

名簿屋に対する業規制というのは、例えば名簿屋を対象にして登録制のようなものを設けて、その登録を受けた業者に対して監督・規制を行うといったことがイメージされるわけですけれども、これをやろうといたしますと、名簿屋等の実態がはっきりとわからないと、名簿屋を定義して登録等の対象を確定することができませんが、現時点において、名簿屋を明確に定義して規制をかけるのはなかなか難しいのではないかということと。

それから、まずは具体的にどのような規制の内容を考えるべきかということから話を始めませんと、いきなりいわゆる名簿屋について登録制等を設けて規制をかけるといっても、どういう規制をするのだということがはっきりしませんので、まずは今回の意見に関しましては、具体的に個人情報を保護するために、どのように事業者の行為・行動を規制するかということについて意見を述べることにいたしまして、今後、名簿屋等の実態がはっきりし、あるいは今回の行為・行動の規制をしても、なお不十分であるということが判明した段階において、また改めて、この名簿屋について検討するということが適切であるという意見になっております。

もちろん、今後継続的に研究することは重要なことかと思いますが、現時点において名簿屋業を規制するというやり方は、なかなか困難であろうということでございます。

そこで、今、行為・行動の規制と申しましたけれども、これをどういうふうに具体的に行うかということについて、順次説明いたします。ポンチ絵で申しますと、大きく3つのグループに分かれるであろうと思われます。

第1のグループが項目番号の1、第三者提供時のオプトアウト手続の適正化と提供を受ける側の事業者の責任の明確化という項目でございます。オプトアウト手続と申しますのは、意見書の本文の3ページに現行法の内容として説明されております。

つまり、事業者が個人データを第三者提供する場合、ほかの事業者に対して個人データを提供する場合に、現在の個人情報保護法におきましては、本人の同意を得ることが原則であるのですが、その次の規定において、事業者が「本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止する」、これがオプトアウトということですけれども、本人が求めれば第三者に提供しませんということにしている場合であって、所定の事項を「あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき」には、同意が要らない。要するにオプトアウトができますということを本人が容易に知り得る状態に置いていれば、本人が明確に同意しなくても提供できることになっております。

ただ、現状、これがどのように運用されているかと申しますと、今の意見書の本文3ページの真ん中ほどに「しかし」というところがございますけれども、事業者が自分のホームページにおいてオプトアウトができますということを示す。それをやれば、「本人が容易に知り得る状態に置いている」と解釈されています。そうなりますと、本人がそれぞれの事業者のホームページをくまなく見て、それでオプトアウトが適切にできるか。これは現実的にはほとんどできないわけでございまして、これではオプトアウトができると言っても、それはほとんど形骸化した状態になっていると言わざるを得ないということでございます。

この点につきましては、今の3ページの続きのところですけれども、先ほどの政府のパーソナルデータに関する大綱におきまして一定の対策が示されております。そこで示されている事柄と申しますのは、今の意見書の3ページの「この点について」という段落の部分でございます。今度、この大綱の中で考えられております独立の個人情報保護を専門とする第三者機関に対して第三者提供を行おうとする事業者は、データに関して届出を行う。第三者機関がその届け出られた事柄を公表するということを提案しております。

念のため申しますと、ここで届出の対象とされておりますのは、生のデータそのものではございません。こういう内容が含まれているデータということを示すということでございますので、生のデータをそのまま示すという趣旨ではもちろんございません。

こういった措置は、確かに現状のオプトアウトが完全に形骸化している状態に比べますと前進でございます。これは第三者機関に問い合わせれば、どのようなデータがあるかがわかるということになりますので、個別の事業者のホームページで探索することはしなくてもよくなるということでございます。ただ、当委員会の意見といたしましては、これは本文で申しますと4ページ、ポンチ絵で申しますと、先ほどの1という項目の一番右側の緑色の部分に書かれているところでございます。

本人の同意なしに個人データの第三者提供を行う側の事業者、提供しようとする側の事業者だけでなくて、その個人データの提供を受ける側の事業者にも、第三者行政機関への届出義務を課して、届出を受けた第三者機関が届け出られた事項を公表することを制度化すべきであるという意見でございます。大綱の中で示されているのは、あくまで提供元が届出をするだけでございまして、データが行った先のことはどうなるかというところまでは第三者機関に届け出ることになっておりませんが、委員会の意見といたしましては、そこまでやるべきではないかということでございます。

これがいわば第1ステップですけれども、意見書の本文の4ページの中ほどに「このように」と書かれているところがございまして、これが第2段階でございます。今のように、第三者機関への届出を義務づけた上で、本人がオプトアウトするか否かを選択する機会を実質的に保証するように、第三者提供を行う事業者は、この本人への通知とか、あるいは今の第三者機関による公表から第三者提供を実際に行うまで、一定期間を置くものとするということを提案しております。すぐ提供してしまうというのではなくて、一定期間を置いて提供していただく。それによって、その期間の間にオプトアウトができるようにするということを言っております。

さらに、第3段階になりますが、4ページの「もっとも」という一番最後の段落、それから、これはポンチ絵にもございます。先ほどの1の項目の緑色の欄の2番目の○でございますが、さらに、オプトアウト規定によって本人の同意なしに個人データの提供を受けた受領者に対して、本人が自己の個人データの利用停止又は提供を求める請求権を認めることも提案してございます。

要は、第2段階までですと、提供元の事業者に対して本人がオプトアウトするということですけれども、それでは本人がたとえ第三者機関が公表するといっても、第三者機関に対して常に問い合わせをするとか、あるいは第三者機関のホームページを見て、自分のデータがありそうだということを常に探して適切にオプトアウトができるかというと、それも現実には難しいとすれば、提供が行われた後で提供を受けた事業者に対しても、そのデータの利用停止あるいは抹消を求められるとすべきではないかということを提案しております。これが第1のグループでございます。

次に、第2のグループ。これは、今、申し上げたのは、制度を使って情報が普通に流れていく場合を想定したわけですけれども、もともと不正に個人情報が取得された場合にどうするかということが、第2グループの意見として書かれております。これがポンチ絵で申しますと、第2の不正取得された個人情報の流通の防止と、その裏の3番目の個人同意原則によらずに流出した個人情報の利用停止・消去という項目でございます。

これについて若干説明しますと、現行の個人情報保護法の規定によりますと、これは今のポンチ絵の表側の2の黄色くなっている部分に第17条と書かれていますけれども、偽りその他不正な手段によって個人情報を取得してはならないということが書かれております。ただ、この問題といたしましては、もともと偽りその他不正な手段で取得された。ところが、先ほどのオプトアウトの手続などを使って、それがほかの事業者に対してどんどん譲渡されていったときに、譲渡先の事業者が果たして偽りその他不正な手段によってデータを取得したことになるのかどうかというと、基本的にそういうことは非常に難しい。

要は、不正取得したもとの事業者は、確かにこれは法律に違反したということが言えるわけですけれども、その先の事業者、その譲渡を受けた事業者は、特に法律上は規制されていないということになります。ぎりぎりで言えば、その事業者も本当にわかって受け取ったということがあって、それが証明されれば、偽りその他不正な手段によって取得したと言えるのでしょうが、それは現実には非常に難しいということがございます。

そこで、消費者委員会の意見としては、今のポンチ絵の第2項目の緑色の欄でございますけれども、データの提供を事業者間で行おうとする場合には、そのデータを提供する事業者と、それを受け取る事業者の双方に一種の義務を課す必要があるのではないか。要するに、不正取得されたデータではないということを、提供を受ける側が確認する。それから、提供する側の事業者は、これが不正取得されたものではないということをはっきり示す。そういう義務を課すべきだということを言っております。

ポンチ絵で申しますと、次の第3項目に移ります。裏側のほうです。そうは言っても、不正に流れてしまうことが考えられます。不正取得されたデータが業者間で流れてしまうことが考えられます。現在の個人情報保護法におきましては、今の第3項目の黄色のところでございますけれども、不正取得した事業者に対しては、本人から利用停止とか消去を求めることができることになっております。つまり、ここでも不正取得をしたもとの事業者に対しては、個人、本人がそれを消してくれ、あるいは利用停止してくれということが言えるわけですけれども、流れていってしまった場合に、流れていった先の事業者に対しては、はっきりと本人から何らかの請求ができるということが規定されておりません。

そこで、この消費者委員会の意見といたしましては、緑色の欄でございますけれども、適法な手続によらず、要するに違法に取得されたデータにつきましては、全ての事業者に本人からの利用停止又は消去の請求に応じることを義務づけることにしております。要するに、不正に取得されたデータがどんどん流れていってしまった場合に、その流れていった先の事業者に対しても本人がそれの利用停止を求める、あるいは抹消を求めることができるようにすべきである。

さらに、そうは言っても、今回の大量流出事件のようにいっぱい流れた場合に、本人が全部それを一々請求するのかというと、それも難しいところがございますので、そういった特に大量にデータが流れてしまった場合を想定いたしまして、行政庁、これは現在で言うと主務大臣ですし、先ほどの政府の大綱で申しますと第三者機関が権限を持つということでございますけれども、こういった行政庁が適切な措置を命令できる。要するに、利用停止を命令するといった制度をつくるべきだという提案をしてございます。

最後が第3グループでございますが、これが項目で申しますと、先ほどのポンチ絵を見ていただきますと4と5の項目でございます。これは、以上述べたような規制・規律を実効的なものにするための、いわば基盤となる制度に関する意見でございます。

まず、第4項目のほうからでございますけれども、個人データのトレーサビリティの確保でございます。これに関しましては、現在の個人情報保護法で関係する規定があるかと申しますと、24条におきまして、黄色のところにございますけれども、個人情報の取り扱い事業者が保有個人データに関して一定の事柄を公表しなくてはいけないことになっております。それから、事業者は、本人から請求があった場合に、その本人のどのような個人データを持っているかということを開示する義務がございます。

ただ、真ん中のだいだい色になっている部分でございますけれども、この開示の対象あるいは公表の対象からは、例えば個人データをほかの事業者から受け取った場合に、提供元の事業者、どの事業者からその個人データを受け取ったのかということについて開示する、あるいは公表する義務までは定められておりません。

あくまで、そのデータがどういうものかというところまでは公表義務、開示義務の対象になっていますけれども、そのデータがほかの事業者から入手されたという場合に、どの事業者から入手したかということまでは公表の対象になっていません。あるいは、そのデータをさらにほかの事業者に対して提供したという場合に、どの事業者に対して提供したかということまでは公表・開示の対象になってございません。

そこで、消費者委員会の意見といたしましては、最後の緑色の部分でございますけれども、今、申しました保有個人データの取得手段、取得元あるいは提供先についても、原則として公表あるいは開示を義務づける。公表・開示の対象を広げよということ。

それから、第三者機関に対して、それらの事柄を届け出て、第三者機関が公表する。これは、先ほど申し上げたことと重複する事柄でございます。一次的には事業者がやるべきなのですけれども、それだけでは個々の消費者が全ての事業者についてチェックすることはできないので、先ほど申しましたように、第三者機関への届出もあわせて義務化すべきであるということでございます。

最後、5でございますが、ここで申し上げていることは、今回の流出事件でもそのようなことがあったと漏れ聞いておりますけれども、例えば提供されたデータの一部だけを抹消する。そうすると、これは提供されたデータではなくて、自分がつくったデータですと言えるとすると、これは規制の意味が全くなくなってしまうということがございます。あるいは、データを受け取って、その後でそれを加工する。例えば、年齢に関するデータを受け取った後で、10歳代、20歳代、30歳代という大括り化をする。

そうすると、これは提供されたデータではなくて、自分がつくったデータです。ですから、以上述べたような規制の対象になりませんと言えるとすると、これは規制の意味がなくなってしまいますので、それで5の緑色の部分でございますが、第三者提供を受けた個人データがなければ新たな個人データを作成することが社会通念上不可能であった場合、新たな個人データも第三者提供を受けた個人データとみなして、制度を適用すべき。

これは、日本語としては非常に難しくて、何を言っているかわからないということかもしれませんが、趣旨は今、申し上げたようなことで、少し加工する。いわゆるクリーニングをすれば、新たなデータになって自分がつくったデータになりますから、提供を受けたものではありませんといった主張を封じる。それも、依然として提供を受けたデータであるとして規制の対象とする、規律の対象とするということでございます。

以上が意見の概要でございますけれども、なおこれを制度化するといたしますと、細部、詰めなくてはいけない部分があろうかと思いますけれども、まずはどのような方向で今回起きた事件に対して制度的に対応すべきかということについて、消費者委員会として具体的に制度の提案をこの時点で行うのが適切であると考えて、今回、意見(案)を提示している次第でございます。以上です。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

それでは、御意見、御質問のある方は発言をお願いしたいと思います。石戸谷委員、どうぞ。

○石戸谷委員長代理 内容について、ぜひこれで採択をお願いしたいと思います。

7月15日の消費者委員会の意見は、大綱が個人が特定される可能性を低減したデータについて、同意を得ずに提供を行うことが可能とするという新たな制度を、いわば立派な2階建て、2階部分をつくりますというものに対して、それを設計するのだったらこういうふうにやってくださいという意見でありました。ところが、その後、ベネッセの問題が出まして、2階の前に、まず基礎の部分と1階の部分に大きい問題があるのではないかというのが露呈したのに対して、2階をやるのであれば、1階と基礎の部分をきちんと同時にやらないといかないでしょうというのが今回の意見という関係になるかと思います。

2,000万件を超える空前の大量の個人データの流出事件でありまして、ここで露呈した問題に対して対応しないまま、2階部分だけということはあり得ないということで、短期集中的に山本委員を中心にして議論して、十分実行可能な案としてまとめたものであります。何とか対応しなければいけない問題であるということはわかりつつ、具体的にどうするかという具体案が全然出てこない中で、委員会のほうとして、十分実行可能な案として提示するものでありますので、ぜひこれを採択して、実現に向けて進めていただきたいと思います。

○河上委員長 ありがとうございました。

ほかにはいかがでしょうか。では、齋藤委員から。

○齋藤委員 今、説明のあった案はこのとおりだと思いますので、ぜひ実現に向けて動いていただきたいと思います。

私は、ポンチ絵の6項目に書いてあります、いわゆる名簿屋等に対する業規制というところに向けていくためには、何をしなければならないかということで補足意見を申し上げたいと思います。3つ申し上げます。

1つは、民間の情報と行政の情報の双方を対象としなければならないということ。名簿屋においては、この双方の情報が混在あるいは融合している可能性が多分にあると思います。

2番目ですが、現行の個人情報保護法の適用除外になっている報道、著述、学術研究、宗教、政治のための利用をどうするかという点が、名簿屋行為を議論するときに避けて通れない可能性が大だと思います。これらの目的なら、犯罪によって持ち出された情報を使ってもいいのかということです。合法的に使えることにするのでしょうか。それから、そこからさらに流出したときにどうするのかという検討も要るような気がします。

3番目ですが、規制の仕方が明らかになった段階では、ぜひ罰則の網がかかるようにしていただきたいと思います。ベネッセのケースでは、新聞などで見る限り、不正競争防止法を適用し、営業秘密侵害罪で犯人を処罰するのではないかと思われますが、この犯人から転得した者、さらに再転得、3回、4回と重ねていったときに、不正競争防止法でどこまで追いかけられるか。何回も追いかけることはできない可能性があると思います。その場合、犯罪のひもがつながっているのであれば処罰の対象にできる限りしてほしいというのが私の思いです。以上3つ申し上げました。

○河上委員長 ありがとうございました。特にこの意見に関しては、よろしいということで結構ですね。

○齋藤委員 5番目から6番目に向かって検討が進むときに、多分、今のことを避けては通れないと思っております。

○河上委員長 はい。岩田委員、どうぞ。

○岩田委員 内容については、委員間打合せで議論しましたり、委員間でメールで意見のやりとりをしましたので、これでいいと思います。

石戸谷先生が言われた1階建て、2階建てのことですが、それを別の言葉で言いたいと思うのですけれども、今回の推進戦略本部が出された制度改正大綱というのは、その狙いは規制緩和にあったと思うのですね。規制緩和をすることによって、ビッグデータを経済の活性化に使おうという国の政策だったと思うのですが、車の両輪が必要だということにベネッセの事件で改めて気がついたわけです。ですから、規制緩和と個人情報の保護ということは車の両輪で、同時に並行して進めないといけないと思います。

そして、今、若干懸念しておりますのは、この部分については継続して検討すべき課題ということで、先に送るような形の表現で大綱は終わっています。それに対して、当委員会としては、それではだめだということを言っているわけですが、意見(案)の2ページの下から7行目、「今後、内閣官房における現行法の改正のための作業が、本意見を踏まえて行われることにより、消費者の理解と安心の確保がもたらされることを期待する」と書いてあるところです。ですから、大綱を受けて、現行法の改正の検討が関係部門で今、進んでいると思いますけれども、この委員会提案を先送りしないよう、同時に同一の国会に一つの法改正の体系として提出していただきますよう、重ねてお願いしたいと思います。

以上です。

○河上委員長 ありがとうございました。

ほかには何か。夏目委員、どうぞ。

○夏目委員 この意見につきましては、賛成でございます。大綱の検討のところでは、具体的なものが国民に示されないという状況の中で進められていることに対して、委員会でより具体的な提案がされたということは、自分たちが評価するのはおかしいのですけれども、ぜひ今後、生かしていただきたいと思います。

その上で申し上げたいのは、今回の事件を見ていて思ったのですけれども、どんなに法整備やシステム整備をしていっても、要するに使う側、つまり事業者側のコンプライアンス、それから企業としてのマネジメントができていなければ、そこから漏れるものはとても大きいし、国民に大きな影響を与えるということでございます。今回の意見は、あくまでも7月の意見に続く2次意見ということで、具体的なものを出したわけでございますけれども、あわせまして、事業者にはより強い倫理観を持って、個人情報にかかわるということの大事な視点を忘れてほしくないと願うところでございます。

意見でございます。

○河上委員長 ありがとうございました。

ほかにはいかがでしょうか。特にございませんか。よろしいですか。

非常に短期間に集中的に作業を皆さんにしていただきました。特に山本委員には、外国からメールをたくさんいただいたり、やりとりをして、皆さんにお忙しい思いをさせてしまいました。ただ、急を要することでありまして、機動的にこういう形で意見をまとめていただけたということに、お礼を申し上げたいと思います。

それでは、本意見(案)の「(案)」をとらせていただきまして、皆様の御了解をいただいたということで意見を取りまとめ、現行法の改正を担当している内閣官房、及び現行法を所管している消費者庁に宛てて、これを発出したいと思います。

なお、本意見につきましては、本委員会終了後、19時ぐらいをめどに消費者庁記者会見室において、私のほうから記者会見をさせていただきます。

本日の議題は以上になります。


≪5.閉会≫

○河上委員長 最後に事務局から、今後の予定について説明をお願いいたします。

○大貫参事官 次回の本会議の日程、議題につきましては、決まり次第、委員会ホームページ等を通じてお知らせいたします。

なお、この後、19時をめどに消費者庁記者会見室において報道機関の皆様を対象とする委員長記者会見を行いますので、お知らせいたします。

この後、委員間打合せを開催いたしますので、委員の皆様におかれましては委員室のほうに御移動いただくよう、お願いいたします。

○河上委員長 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)