第112回 消費者委員会 議事録

日時

2013年2月12日(火)17:10~18:34

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
 河上委員長、山口委員長代理、稲継委員、川戸委員、
 夏目委員、細川委員、村井委員、吉田委員
【説明者】
 山田茂樹  消費者委員会事務局委嘱調査員
【事務局】
 原事務局長、小田審議官

議事次第

1.開会
2.消費者安全専門調査会の報告について
3.消費者契約法について
○説明者: 山田茂樹 消費者委員会事務局委嘱調査員
4.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:8KB)
【資料1】 消費者事故未然防止のための情報周知徹底に向けた対応策についての建議(案) 【資料2】 「消費者契約法シンポジウム」開催概要報告(PDF形式:293KB)
【資料3】 インターネット取引における消費者契約の現状I~広告及び契約の成立~(PDF形式:310KB)
【資料4】 インターネット取引における消費者契約の現状II~規約の成立要件と有効要件(不当条項)~(PDF形式:41KB)
【参考資料】 委員間打合せ概要(PDF形式:68KB)

≪1.開会≫

○河上委員長 時間になりましたので、始めさせていただきます。
本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会(第112回)」会合を開催いたします。
本日は、所用によりまして、小幡委員、田島委員が欠席の予定となっております。
それでは、配付資料の確認をお願いいたします。

○原事務局長 配付資料ですけれども、議事次第の下の段に一覧を書いております。
資料1の関連が、「消費者事故未然防止のための情報周知徹底に向けた対応策について」建議(案)、その関連の資料ということで、枝番をつけて、資料1-1、1-2、1-3とおつけしております。
資料2は、2月2日に開催いたしました、消費者契約法のシンポジウムの開催概要の御報告です。
資料3、資料4は、「インターネット取引における消費者契約の現状」ということで、これは、山田茂樹消費者委員会事務局委嘱調査員、消費者庁の山田さんから御提出いただいた資料で、後ほど御説明に使わせていただきます。
参考資料といたしまして、一番後ろに、委員間打合せを2月5日に開催しております。その概要をおつけしております。
それから、黄色い紙をつけておりますが、第7回の地方消費者委員会を米沢で3月2日に開催予定ということで、その御案内のチラシをつけております。
資料は以上です。不足がございましたら、お申出いただければと思います。

≪2.消費者安全専門調査会の報告について≫

○河上委員長 まず初めに、「消費者安全専門調査会の報告について」ということでございます。
前回の第111回消費者委員会において、消費者安全専門調査会の報告書について松岡座長から御説明をいただきまして、意見交換を実施したところであります。本日は、この報告を受けて、消費者委員会としての意見表明を行いたいと思います。お手元に、資料1-2として、「消費者事故未然防止のための情報周知徹底に向けた対応策についての建議(案)」を配付しております。
それでは、担当委員の夏目委員から説明をお願いいたします。

○夏目委員 それでは、ただいまから、建議(案)につきまして説明をさせていただきます。
資料1-2の表書きにつきましては、今、委員長から説明があったところでございますので、私は資料1-1に基づいて説明をさせていただきたいと思います。また、資料1-3は調査会報告書の概要でございますので、適宜、ごらんいただければと存じます。
消費者委員会では、平成24年4月に第2次の消費者安全専門調査会を立ち上げ、消費者事故の未然防止・拡大防止のための対応策として、主に製品リコール情報を含む注意喚起情報の周知徹底の方策を検討してまいったところでございます。
専門調査会では、関係する行政や事業者へのヒアリングを重ね、また、消費者の実態調査を行った結果、生命・身体・財産に被害を及ぼす可能性のある製品の情報が消費者に行き届いていないという状況、また、消費者もその情報を受け取っても必ずしも行動しない方がいるという状況がわかりました。さらに、リコール製品など、危険のある製品に関する情報を入手できていない消費者が増えてきているという報告もございました。
これらのことから、消費者安全専門調査会ではその対応策として、行政に対しての方策案、また行政のみならず、製造、輸入販売事業者、関係団体、報道関係者、消費者の方々に向けての課題提起と改善の方向を示した報告書をまとめたところでございます。
同委員会としては、この報告書を受けまして、本日の委員会での審議の結果、内閣府特命担当大臣及び経済産業大臣のほか関係各大臣に対する建議案を作成いたしました。
それでは、資料1-1につきまして、説明させていただきます。
建議案についてはお手元にお配りしておりますが、7項目ございます。内容別にポイントをまとめると、概要のほうに書いてある3つになるわけでございます。
1つ目が「リコール情報を含む注意喚起の情報を消費者に届けるための方策」、2つ目が「特にリコール情報を必要な消費者に届けるための方策」、3つ目が「情報を受け取った消費者が、自ら危険を認知し、危険回避の行動を取るための方策」となります。
まず、最初のリコール情報を含む注意喚起の情報を消費者に届けるための方策ですが、これは建議事項のマル1、マル2、マル3になります。
消費者庁は、「マル1 消費者安全法により事故情報が通知、収集される行政機関を通じたルートについて、情報発信のルートとしても活用できるよう、双方向の流れとする体制を整備し、広く多様なルートを活用するための検討を行うこと」。
消費者庁は、「マル2 関係各省庁が独自に持っている情報提供のツールや媒体の把握に努め、消費者の属性に応じて、そのツールに伝えるべき情報の掲載や紹介を積極的に求めること。また、関係各省庁は、独自に持っている情報提供のツールや媒体について、消費者庁からの協力要請に積極的に対応すること」。
「マル3 消費者安全法第10条において設置が規定されている消費生活センターを、安全に係る情報伝達を扱う情報提供の拠点とする位置づけを図り、さらに情報の重要度合がわかるように発信する情報内容を検討の上、伝達を行っていくこと」。
この3点は、主に消費者庁に対し情報発信を行う際に、行政が既に持っている情報伝達のルートやツールを連携して有効に使っていただきたい。また、地方自治体の中で、消費生活センターが核になって情報を伝えていただきたいということでございます。
第2に、特にリコール情報を必要な消費者に届けるための方策ですが、これは建議事項のマル4、マル5、マル6になります。
経済産業省は、「マル4 販売事業者等の実態をより調査し、リコール対象製品を購入した消費者への情報提供に係る消費生活用製品安全法に定められた義務等の具体的かつ効果的な実施方法について検討を行うこと」。
消費者庁は、「マル5 リコール情報サイトについて、情報提供のための基本的な方針を検討し、掲載情報の充実を図ること」。
消費者庁は、「マル6『リコール情報メールサービス』と『子ども安全メールfrom消費者庁』との連動を検討すること。また、他省庁や独立行政法人が行っているメールマガジンとの連携も有効であることから、連携に向けて協議を行うこと。関係各省庁は、消費者庁からの協力要請に積極的に対応すること」。
この3点につきましては、特に「リコール情報を必要な消費者に伝えるために」ということで、リコール製品を買った消費者の情報は販売した事業者が持っていることが多いことから、経済産業省は、販売事業者に対して消費者への情報提供の協力が得られるように検討を行っていただきたいということ。さらに、消費者庁は、昨年立ち上がったリコール情報サイトについて、内容をもっと充実させると同時に周知を継続して行っていただきたいということでございます。
第3に、情報を受け取った消費者が、自ら危険を認知し、危険回避の行動をとるための方策ですが、これは建議事項のマル7になります。
消費者庁及び関係各省庁は、「消費者の日常生活における危険認知や回避能力の向上のためにも、製品安全に係る消費者教育・啓発の一層の充実をはかること」。これは、リコール情報を知って対象製品が身近にあっても、必ずしも行動しない、対応を取らない消費者がいるということも調査で明らかになっておりますので、製品安全に対する意識の向上のためにも消費者教育も重要であるということでございます。
以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの夏目委員からの説明に対して、御意見のある方は発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
山口委員長代理、どうぞ。

○山口委員長代理 専門調査会にも参加させていただきましたけれども、メーカー出身の方々も含めて大変熱心に議論をされていました。例えば、有名なパナソニックのファンヒーターの問題などがあったとき、メーカーは本当に大変な費用をかけてその回収を図られたわけですけれども、なかなか回収が難しかったという事情。これはブリヂストンの自転車についても同じようなことで、苦労話が生々しくありました。
そういうことを考えますと、メーカーが、自分のつくった製品に消費者事故を起こしかねないような問題点があることがわかって、それをリコールとして情報を流そうとしても消費者になかなか伝わらない。それが商品を回収するところまでつながらないというところで、どういうふうにしたら効果的に製品の回収ができるのか。あるいは、最後に夏目委員がおっしゃったように、消費者がこれは危険だから使わないようにしようと。それは面倒は面倒なのですが、メーカーなり販売店に連絡をして、欠陥がある、事故を起こしかねない製品を、取り替えてもらうといいますか、修繕してもらうという手間をかける気になるように、どうしたらいいのかというのはなかなか難しいことではありますが、報告書に大変詳しく書かれておりますので、それを踏まえた建議として今回は非常に重要だと思います。
特に、資料1-2の建議の文章の2ページの一番下の「事業者等を通じての情報周知の方策」のところの、特に販売事業者の責任といいますか、役割の点が今回の建議の焦点ではないかと思っております。3ページの一番下に消費生活用製品安全法の38条2項の条文があります。ここを読みますと、「消費生活用製品の販売の事業を行う者は、製造又は輸入の事業を行う者がとろうとする前項の回収その他の危害の発生及び拡大を防止するための措置に協力するよう努めなければならない」と書いてあります。
販売店は自ら消費者にその危害の発生や拡大を防止するための措置をする義務があると思われるのですが、ここでは協力義務にとどまっているわけです。これでいいのかということで、かなり議論もなされましたし、委員会でも議論したところであります。例えばビックカメラからヒアリングをされたわけですけれども、いわゆる量販店などはメーカーよりもよほど大きい力を持っていますし、また、買った方々、消費者についての個別の情報も相当把握しています。メーカーが消費者が持っているという情報を把握するより、量販店などの販売店のほうがもっと持っているという現実があります。
その実態を経産省はよく踏まえて、私は、この38条2項の法改正も含めて検討する必要があるのではないかと思いますが、今回の建議においては、そういう法改正も含めて、消費生活用製品安全法に定められた義務などの具体的かつ効果的な実施方法について検討を行うことということで、経産省は、どういうふうな形で量販店を含む販売事業者の効果的なリコール対策についての在り方を検討されるか。経産省の検討の在り方については一応お任せした上で、その様子を見た上で、必要であればまた次の対策を消費者委員会としても提起しなければいけないのかもしれませんが、とりあえずは経産省も問題意識をお持ちだということでありますので、今後、特に販売店のリコールについての対応の在り方を注視していきたいと思います。そういう意味でこの建議のポイントを踏まえて、建議については賛成だということであります。

○河上委員長 販売店の責務に関する義務化を見送った最大の理由はどこですかね。

○山口委員長代理 私の理解では、既に経産省のほうが積極的に取り組む姿勢を見せていただいている、あるいは検討中だということも、この専門調査会の審議も踏まえてそういう気になっておられるということであります。あえて法律改正ということまで言うと、さらに時間がかかるかもしれないので、今、取りかかられている経産省の状況を見た上で、なお必要であればというところでお答えを見るということで、きょう建議をすれば8月までの間にフォローアップの機会もあるでしょうから、その中で経産省の検討の状況もお聞きすることができるだろうと。建議のためにどういう内容がいいかということで時間をかけるよりも、とりあえずこの内容で建議をして経産省の動き方を見たい。具体的には7月、8月までにその検討成果を聞きたいということで、きょう出すことに意味があると思います。

○河上委員長 ほかに何か御意見はございますか。
細川委員、どうぞ。

○細川委員 前回も発言したのですけれども、こういう問題は社会全体で、より安全な社会の実現、そのために、自分が当事者ではなくても、我々は何ができるかという視点が非常に重要だと思います。消費者委員会のミッションとしては、省庁に意見を言うというところでの権限しかないので、きょうのこの建議項目には民間団体等は入っていませんけれども、そういったステークホルダーと言いますか、そういう人たちの努力が必要だと思います。
そういう意味で、例えば報道の在り方のようなものも是非マスコミの方には検討していただきたいし、なるべく人に注目される形で、いわゆる社告という形でリコールを出そうとすると、社会面の一番下、見る率が一番高いところに入れなければならないわけです。そうすると、広告料としての料金が非常に高い。大手ならまだしも、中小企業では全然その金額が払えないということになりますし、新聞など社会の公器をうたっているのであれば、広告料と同じ金額を取るというのはどうかと思います。あるいは、インターネット社会ですから、我々がインターネットをやるときはまず検索エンジンにかけることが多いわけです。検索エンジンを提供している会社は、こういったリコールのバナー、リンクを例えば安く提供するとか、無料で提供するとか、それぞれができる社会的責任といいますか、そういうところでの協力が必要ではないかと思います。
何年か前、大型回転ドアで子どもの死亡事故があったとき、たしか民間で協力し合ってプロジェクトをつくって原因究明をした。それは非常に評価されて、NHKがそういう特集を組んだのを見たことがありますけれども、まさに民間でよりよい社会実現のためにこのリコール情報は何ができるか、そういう視点も必要ではないかというふうに感じます。

○河上委員長 特にこの原案に関する修正ということはないですか。

○細川委員 はい。

○原事務局長 今、細川委員から、たくさんステークホルダーがいるだろうという発言がございました。建議は行政に対してですけれども、報告書の中には、製造、輸入業者、販売業者、報道、消費者への提言は盛り込んでおりますので、是非、そちらも参考にしていただきたいと思います。

○河上委員長 建議の7辺りは、消費者についての危険認知とか、回避能力の向上のためにさまざまな手法を使ってほしいということが書かれています。
ほかに何かございますか。
夏目委員、どうぞ。

○夏目委員 説明させていただきました建議先が各省庁でございますので、今、山口委員長代理、細川委員からお話がございましたことは報告書の細部に書かれております。関係各省庁を通じまして、その先にある事業者や消費者にきちんと伝えていただくことが必要だということを考えて、私ども、このタイミングで建議をし、今までやってきたリコール情報の出し方についてやはりしっかり継承して、さらなる充実を図っていただきたいという趣旨でこの時期に出させていただいたところでございます。

○河上委員長 よろしいでしょうか。基本的にはこの建議案で御異論はないということですので、「案」を取らせていただくことにしたいと思います。
皆様の御了解を得たということで、消費者庁及び消費者委員会設置法第6条に基づきまして、内閣府特命担当大臣(消費者)及び経済産業大臣等関係各大臣宛てに建議を発出したいと思います。
また、6か月後のフォローアップの中で、対応がきちんとなされているかどうかということについての確認もしっかりとやっていきたいと思います。
なお、本建議につきましては、委員会終了後、19時10分くらいを目途に、消費者庁記者会見室において私から記者会見をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

≪3.消費者契約法について≫

○河上委員長 続きまして、「消費者契約法について」ということであります。
消費者委員会では、消費者契約法に関する調査作業チームを平成23年12月に設置いたしまして、毎月、討議を重ねておりますけれども、その論点整理を兼ねた中間報告として、去る2月2日(土曜日)に「消費者契約法シンポジウム」を開催いたしました。
まず、その概要について、事務局から報告がございます。

○原事務局長資料2として準備をしております「消費者契約法シンポジウム」ということで、今、委員長がおっしゃられたとおりの経緯でシンポジウムを開催しております。
2月2日(土曜日)の13時から16時30分、主婦会館プラザエフの会場で、159名の参加者ということで、大変多くの方々にお越しいただいております。来ていただいている方は、相談員の方、消費者団体、弁護士、事業者、学者の方、報道と大変多岐にわたる分野から御参加をいただいておりました。
全体テーマは「消費者契約法の課題を考える」としておりまして、委員会としては平成23年8月に、消費者契約法の改正に向けた検討を至急始めるべきだという提言を出しております。それを受けまして、一昨年の12月に消費者契約法に関する調査作業チームを設置いたしまして、毎月、討議を重ねてまいりました。昨年9月から、論点ごとに検討を重ねるというスタイルにいたしまして、どういった検討をしているかという概要は、委員会の場でも資料として提出してまいりました。ちょうど中間点になるということで、中間報告という位置づけで、今回、行っております。
前半は基調報告、後半をシンポジウムの形式で行いました。前半の基調報告のところでは、冒頭、河上委員長から、「消費者契約法の見直しに関する諸課題」ということで、大きな問題ということで、マル1、マル2、マル3、マル4、マル5とあります。これは大変大きな課題で、こういう課題がありますということの提示にとどまっておりますけれども、今、債権法改正が法制審で進んでおりますので、それと消費者契約法の関係。特にマル2に書いてございます約款規制についての考えをどうするかということ。マル3として、見直しの背景となる思想・介入根拠、マル4として、暴利行為論をどういうふうに考えていくか。マル5といたしまして、特定商取引法、割販法、金融商品取引法などの規律との調整問題があるということ。
個別の論点として、イ)から掲げておりますけれども、「契約締結過程に関する規定」ということで、消費者契約法の4条に規定されている誤認類型取消権及び困惑類型取消権についての要件・効果の見直し、5条の要件、7条の期間制限、追認規定などについての見直し、こういった契約締結過程についての見直しについての問題提起がございました。
ウ)は「約款規制」としておりますけれども、約款については、債権法改正のほうでもこれが大変大きな議論になっております。もちろん消費者契約法でも、当初、消費者契約法を策定するときもこの話は課題としてはありました。その裏のページですけれども、約款による取引について、約款が契約内容となるための要件を明らかにする、不意打ち条項との関連ということで、これは沖野先生が御報告者ですが、債権法の改正にもかかわっておられますので、両方を見ながら論点をお話しになりました。会場からも御質問を出していただいたのですが、約款について聞きたいという方の御意見が大変多かったということです。
エ)については、「不招請勧誘・適合性原則」ということで、勧誘・販売行為について、こういった考え方をどのようにしていくのか。これも非常に大きな検討課題だというお話がありました。
オ)として「不当条項リストの補完」ということで、これはブラックリストとグレイリストの話です。グレイリストについて、これも消費者契約法を策定するときからの課題ではありましたけれども、どういうふうに考えるかという検討提起がありました。
カ)として、この後、司法書士の山田さんから御報告いただきますけれども、この10年、インターネット取引が非常に大きく登場してきておりまして、この現状と課題をどう反映していったらいいのかということの検討の提起がありました。
休憩をはさんで後半はパネルディスカッションということで、4つの論点でディスカッションを実施しております。
主な意見をまとめたのが、マル1といたしまして、「消費者契約法の見直しの必要性について」。これは、相談員の方々からは是非お願いしたいと。日弁連からも改正を求める意見書が出ておりますし、事業者もウィン・ウィンの関係をつくれればという形で、萎縮させないような形での議論が必要という御意見が出ました。
マル2は「民法改正(債権関係)と消費者契約法の関係について」ですが、法務省の筒井参事官にも御参画いただいておりました。今の法制審の考え方として、民法改正における消費者概念の導入については、個別具体的に特則という形で盛り込まれる方向にはないということでした。ほかにもいろいろと論点はありますけれども、特に約款のことを強調されまして、現在の民法では約款に関する規定はないのですが、今後、どういうふうに考えていくのかということについてはかなり力説されておりました。
マル3として、「契約締結過程の規律について」ということで、1つ目のポツに書いておりますけれども、法第4条の「勧誘」について、現在の消費者庁の解説では広告はこれに含まれておりませんけれども、これについてどういうふうに考えていくのか。特に3つ目のポツに書きましたけれども、IT化などの社会状況の変化、消費者契約法制定後の高齢化の進展、こういった全体の状況の変化を見て個々の規律についても考えていくべきだというお話でした。
マル4の「不当条項の見直しについて」ということについても、いろいろな議論が出たということになります。
それから、アンケート調査も御紹介しております。2つ目の「基調報告の内容は、参考になりましたか?」というところで、「大変参考になった」方が65%ということで、企画をした側としてはうれしく、タイムリーでよかったなというふうに感じております。
3に「パネルディスカッションの時間は適切でしたか?」には、「ちょうどよい」と書いておられる方が多いです。実際は、本当は短かったのだろうと思いますけれども。
4の「パネルディスカッションの内容は参考になりましたか?」というのも、「大変参考になった」「やや参考になった」という方が多くおられます。
コメントについてはそれぞれそこの欄に紹介してありますが、一番後ろのページに全体を通しての感想を書いていただいております。「消費者契約法に関しての要望」というところの1つ目ですが、「特にインターネット契約によるトラブルについては早急に改善してほしい」という御意見がありました。
「シンポジウムに関しての要望」の中に入っておりますけれども、2つ目のポツに「基調報告は早口で聞き取りにくかった」というのがありまして、ちょっと申しわけなかったのですが、基調報告は大変大きい課題なのに15分でお願いをしておりました。資料はしっかり準備していただいたので補っていただけたかなと思いますが、全体的には時間は短かったのだろうと思っております。
「大変参考になった」という御意見が多くて、いい時期に、どういう課題があるのかということの報告ができたのではないかと思います。
事務局からは以上です。委員長から補足をお願いしたいと思います。

○河上委員長 大体お話しいただいたとおりで、これは、テープ起こしのようなものを何らかの形で公表するという方向で考えたほうがいいでしょうか。それとも、現時点では概要という形での公表で、これでおしまいにしたほうがいいのかという辺りですけれども、どうですか。会場の皆さんからは是非、報告内容を公表してほしいという声がありました。最終的に6月ぐらいに報告書をということを考えているので、その時点でもいいということかもしれませんが、場合によっては公表の方法をまた相談させてください。
全体としては、短い時間で包括的に課題を扱ったということもあって、しかも、それが法改正と直接結びついておりますので、議論そのものが法技術的な議論が多かったと思います。ですから、専門外の方にとってみると、もう少し時間をかけて具体的にお話をしないと難しかったかなという反省がございます。それにしても非常に熱心に聞いていただいて、大変ありがたかったと思います。
現在、法務省で民法改正の中間論点の取りまとめというのが進行しておりまして、2月末ぐらいにはそれが出てきます。そこから後、債権法の改正への具体的作業というふうに進んでいきますけれども、それにおくれをとらないようにといいますか、ある程度調整が必要になりましょうから、法務省とも十分連携し、消費者契約法の見直し作業も続けていきたいと思います。今回は、相談例あるいは裁判例なども参考にしながら、現時点でこの辺りは検討しておく必要があるのではないかという検討課題を示した段階ですので、今後、さらに広い関係各層と議論をしながら、消費者委員会として議論を続けていける体制になればいいなというふうに考えております。
この点について、御質問はございますか。

○山口委員長代理 私も大変よかったと思います。せっかくこれだけの学者の先生方と実りある議論をしているわけですから、できれば事業者にも参画していただいて、オープンの場で議論できればというふうにずっと前から思っていました。その意味では中間取りまとめのこういう形のものができたのはよかったと思います。私は特に意味があったと思うのは、冒頭に野々山国民生活センター理事長がその必要性について発言をされましたし、最後には消費者庁の阿南長官が、この改正の必要性等についてもコメントをされました。今後、法改正の担当者になるであろう消費者庁制度課の担当課長も御発言されましたので、そういう意味では非常に意味があったと思うし、消費者契約法の改正についての、リアルな、やらなければいけないという雰囲気を盛り上げるには大変有意義だったと思います。
その意味で、検討の経過をできるだけ早く、全部を出す必要はないかもしれませんが、最初の理事長の発言から最後の長官の発言まで、冊子でも何でもいいからまとめて、それを消費者委員会のネットにも流すと。改正作業についての意見を皆さんから聞き取るぐらいの時間的余裕をつくって、この検討会の成果物は、6月か7月か8月かわかりませんが、何らかの形で取りまとめをします。そのときにこのシンポジウムの成果を外に出して、何か意見があるなら、パブコメというほどではないにしても、意見を出していただいて、それを踏まえて最終報告書に生かすような工夫もしたらどうか。今後の研究会を、今までのような形でクローズドでやるのか、どういう形でオープンにするかも含めて、早急に検討が必要だと思います。

○河上委員長 夏目委員、どうぞ。

○夏目委員 私も参加させていただいて熱気あふれる会場の雰囲気を見ていますと、皆さんがいかにこの論議に注目していたかということが強く伝わってまいりました。非常に限られた時間ですので、全員が理解するというのはなかなか難しかったというふうに思います。委員長が挙げられた大きな5つの課題、その一つひとつでシンポジウムを行ってもいいくらいの内容であったと思います。
調査作業チームが非常に意欲的に作業を進めてくださって今回のシンポジウムがあったわけですけれども、その過程において、透明性に欠けているという御批判は外からは随分あったわけでございますので、今後の進め方、今、山口委員長代理がおっしゃいましたけれども、検討が必要ではないかというふうに思います。少なくとも今回のシンポジウムの報告書は、ネットでもオーケーなので是非上げていただければ、より皆様にお伝えできる。また、シンポジウムに参加できなかった方にもそういう機会を提供できるのではないかと思いますので、御検討いただければと思います。とてもすばらしいシンポジウムだったというふうに思います。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
なお、消費者契約法の見直しを検討するに当たりましては、平成12年の制定当時からの取引環境の変化というものを十分考慮する必要がございます。その中でも大きな変化の一つとして、IT化という問題がございます。
調査作業チームでは、インターネット取引の現状も含めて議論を行っておりますので、本日は、その内容を、司法書士で当委員会事務局の委嘱調査員も務めていただいております山田さんから、時間は限られておりますけれども、簡単に御説明をいただきたいと思います。
説明時間は20分以内ということでお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○山田茂樹委嘱調査員 ただいま御紹介いただきました委嘱調査員の山田と申します。限られた時間ですけれども、よろしくお願いいたします。
きょう使用する資料を先に確認しておきたいのですが、まず、資料3は、インターネット広告に主に特化した報告資料という形になります。ちょっとクロスしてしまっているのですが、机上配付のみの資料が、参考4と書かれているほうが資料3に関連する資料という形になります。もう一つ、インターネット取引の規約のほうになるのですが、それが資料4というレジュメ。そして、資料につきましては、これも机上配付のみでございますが、資料3という形になります。時間配分としては6・4ぐらいの割合で、インターネット広告に関するものについて6割程度、規約に関するものについて4割程度という形でお話を進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
資料3の「インターネット取引における消費者契約の現状I」に従って、お話を進めていきたいと思います。委員長からもありましたように時間が20分と限られていますので、法律的な部分に関しては基本的には省略させていただきます。実際の現状に特化してお話を進めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
まず、インターネット取引における現状ということで、PIO-NET情報の話からいたしますと、昨年度、通信販売の相談のうち、実に67%弱がインターネット通販に関するものという形になっております。インターネット取引に関する相談は、件数としてはかなり大きな割合を占めているというのが現状としてございます。これをふまえ、問題の所在について説明させていただきます。 これは、インターネット取引に限ることではないですが、やはり一番大きな問題は、現行の消費者契約法の建付けが、あくまでも勧誘に際して例えば誤認行為があった、あるいは困惑行為があった場合には取消し対象となっていまして、広告は勧誘ではないから消費者契約法の適用対象外であるという解釈がとられています。しかし、インターネット取引というのは、インターネット広告を見て消費者が意思形成をして契約するという形になるわけですから、現状の消費者契約法では、仮に広告について誤認するような表示があったという場合であっても、現行の消費者契約法で救済するのは困難であるという実態があります。
次に、問題の所在のイ、「インターネット取引における検討課題」というところを見ていきたいと思います。今回の報告では、インターネット取引の広告に関する特別法の整備状況は、トラブルの実体として比較して十分であると言えるかどうかという点と、インターネット取引において広告が起因となってトラブルが生じた事例として、具体的にどのような事例があるのか。さらに、いわゆるリアル取引(対面取引)との比較において、インターネット取引における広告にはどのような特徴が見られるか。この3点でまずは広告について見ていきます。
一番上の「特別法の整備状況はトラブルの実体と比較して十分であると言えるか」、ここについては法律の規定の話でございますので、詳細については省略いたします。
ただ、一つ申し上げておきますと、現在の広告表示に関するいわゆる3階部分に関する法律は、行為規制はありましても、民事規定が規定されているものはございません。そういう意味では、全体として法律としては必ずしも十分ではないと考えております。
次に、資料3の2ページの2、「インターネット広告について」という形で具体的な中身に入っていきたいと思います。
まず、(2)の「広告の分類」という形になりますが、インターネット広告はどういったものがあるでしょうかということで、アが「媒体による分類」としております。ここでは、先ほど細川委員のご発言にもありましたが、検索サイト上の広告、SNSの場合の広告、事業者以外の個々のWeb、アフィリエイトですとか、アドネットワークというのがありますが、そういったような広告媒体。そして、3ページ目に移りますが、自社サイトで広告をする場合、最後に、電子メール広告でやる場合。主にこういった形で媒体に関しては分けられると思います。
3ページの「イ 主な広告手法による分類」というところですが、昔から言われているところの広告というのはマス広告と言われまして、不特定多数向けに広告を打ちますという広告です。これはリアル取引でも通常ある種類の広告であるわけです。しかし、今回、特に注目していただきたいインターネット特有のものである、(イ)のターゲティング広告です。
ターゲティング広告とは何かといいますと、全くの不特定多数ではなく、広告主において、特定の対象にねらいを定めて広告をする。こういう広告手法でございまして、現在のインターネット広告においては何らかのターゲティング広告の手法が用いられていることが多い、こういうふうに言われています。ターゲティング広告の種類といたしましては、行動ターゲティング広告、検索連動型広告、属性ターゲティング広告などの広告方法があります。次のページにいきまして、その主なターゲティング広告の概要を見ていきたいと思います。
まず、行動ターゲティング広告と検索連動型広告というのが並んでいますが、先に検索連動型広告から見ていきたいと思います。机上配付資料の資料4、参考1というのを見ていただきたいのですが、これはこの後のまとめでも申し上げますが、通常の多くの消費者の方が、何か物を買おうとか、何かを探そうというときに、まずどこからスタートするかというと、多くの場合、検索サイトで自分の興味があるキーワードを打ち込んでサイトを探すというのが通常の方法です。
検索連動型広告というのは、参考資料ではGoogleの画面を参考にしていますが、例えば「内職」というキーワードで検索をすると、ダーッと画面が出てきます。この画面で言いますと、検索結果の部分ではなく、上のほうに黄色で配色がされている部分に小さく「広告」と書いてあると思います。こういった部分。あとは、右側のほうにやはり「広告」と書いて出てきます。これらがいわゆる検索連動型広告という形になっています。下のほうに、Yahoo!の場合に同様にやった結果が出ていますが、ここでもマルがくれてあるところ、ここがいわゆる検索連動型広告になります。
検索連動型広告は何かといいますと、特定のキーワードを登録しておいて、ユーザーがそのキーワードを入力した場合、画面上に広告主のWebが掲載される。こういう仕組みでして、広告主としては、自社商品がどういうキーワードを入れたら検索されるだろうかということを考えながら、基本的に入札制でキーワードを設定してやっていく、こういう方法になります。ですから、検索連動型広告は、あれが欲しいけれどもどうしょうか、これが欲しいけれどもどうしょうかという、ある意味、能動的な消費者向けの広告と言えると思います。
それに対して行動ターゲティング広告といいますのは、少し趣を異にいたします。難しい定義が書いてありますが、一般的には、「行動履歴情報から利用者の興味・嗜好を分析して、利用者をクラスターに分類し、クラスターごとにインターネット広告を出し分けるサービスで、行動履歴情報の蓄積を伴うものを言う」などと説明されます。
例えば私たちが検索サイトであるワードで検索をする。あるいは、無料のWebメールで特定の件名を入力する、文章中に特定の表現を使ったりしていると、初めて訪れたいわゆるパートナーサイトのWebサイト広告欄のところに、たとえば、温泉というキーワードで検索などを繰り返したりしていれば、温泉ならここが何とかだというような広告があらわれる。これはもちろん、一定のアルゴリズムでやる形になっておりまして、例えば私、山田が温泉のことを調べたらしいと。そういった個人情報はわからないわけですが、特定の温泉について検索を繰り返したり、メールで使用する人に関しては、この広告だというふうに行動をまさに分析した上で最適な広告を出す。こういう形の広告方法が行動ターゲティング広告になります。
ですから、行動ターゲティング広告の場合は、特に今、何かを探そうと思わなくても、前に何かを調べたという形跡があれば、何かのときにフッとその広告があらわれる。いわば潜在的な消費者に対して働きかける広告だと言うことができるかと思います。
5ページは属性ターゲティング広告という形になります。これは今、SNSということで、フェイスブックであるとか、ツイッターであるとか、LINEですとか、さまざまなソーシャルネットワークサービスがあります。実はこれは登録するときに、例えば年齢、性別、居住地、趣味、好きな映画、好きな食べ物など一定の情報を入力することになります。もちろん、すべてが入力必須事項ではありませんが、そういったものをSNSサイトとしては大量に持っているわけで、SNSサイトに登録している消費者向けに、どこに住んでいる年齢何十歳代の例えば性別・男性に対してはこの広告だというふうに、そこまでターゲットを絞って広告を打つことができますと。これが属性ターゲティング広告という形になります。
それから、やや違うものとしまして、アフィリエイト広告というのがあります。これについては、御承知のことかと思いますが、ある事業者の商品をブログとかで紹介して、もしこの商品が欲しければこちらですと、クリックをするように用意されています。そこでクリックをして、そこのサイトから商品を買うとその報酬がもらえますという、広告手法のことです。
「検索サイトと広告主との関係」というところを見ますと、検索サイト、先ほど見た検索連動型広告等につきましては、広告主との関係はどうなっているのかということになりますと、何でもかんでも広告主の依頼にしたがって、広告を掲載するということではなく、景表法などの法令上の問題はないかというように審査をするものとされています。広告の報酬の種類としては、いろいろ種類がありますが、一般的にはクリック報酬が特に検索連動型の場合には多いと思われます。
今、広告に関しての種類の説明をしたところで、インターネット取引の現状という形で実際の被害事例とともに見ていきたいのですが、レジュメの5ページになります。
恐らく一般的な消費者の行動はこうであろうというのが、6ページの図であります。このように何か欲しいというときに、検索サイトなりで検索し、その結果、さらに第三者のWebを見て、そこで意思形成をして申し込むというマル2のパターン。あるいは、そのまま検索サイトの結果、特定の事業者のWebにたどり着きまして、その広告を見て契約の意思形成をするパターンなどがあります。
これを念頭に置いていただいた上で、具体的な相談事例の分析というところで、6ページの(2)に入ります。ここでは具体的な相談事例ということで、PIO-NETを分析してみますと、虚偽広告あるいは不利益事実の不表示、不退去とか退去妨害とかではないのですが、威迫的あるいは執拗な勧誘のメールによるトラブルというものもあります。これはいずれも、もし勧誘という形であるならば現行の消費者契約法の4条で対応できるかもしれないパターンですが、しかしながら、冒頭申し上げたとおり、そもそも広告であるということからすれば消費者契約法の適用はないという問題点が挙げられます。
7ページ目に移ります。さらにもう少し見ていきますと、例えば在宅ワーク、美容整形トラブル、パチスロ攻略法、情報商材トラブル、サプリメント購入など、いろいろな類型においてまず特徴的なことは、検索サイトによる検索結果で選択をしたというもの、検索サイトにおける検索連動型広告を見てアクセスした、あるいは、メールマガジンに掲載された広告からWebにアクセスしたという事案が見られます。
PIO-NETの相談概要を見ていった中で幾つか目についたのは、なぜそのサイトにしたのかというところに関して見ると、検索サイトでの検索の結果、上位に表示された。上位に表示されたのだから、それはしっかりしたところだろう、良いモノだろう、こういう形で消費者の選択動機になったものが少なからず見られたというところがあります。
そういったところを踏まえまして、8ページの5まで少し飛びます。「立法を考えるとした場合の留意点」というところで、今回の報告に関してのまとめということで考えていきたいのですが、まず、広告の意義です。
インターネット広告に関しましては、非対面取引ですので、広告が消費者の意思形成に与える影響が極めて大きい。言いかえてしまえば、むしろ広告によって形成されてしまいます。括弧で書いてありますが、しかも、実際にその商品の内容だけではなく、その事業者がしっかりしたものかどうか、大きなところかどうかということについても、専らWeb上で判断するしかないとも言えます。
例えば、具体的に私が過去にやった事件でも、Web画面上は100人以上の従業員がいそうで、都内の一等地の超高級ビルを借りていて、非常に立派だなというふうに見えるわけですが、現地調査をしたところ、実は単にバーチャルオフィスを借りているだけで、従業員の実体が全くなかったとか、そういった事例もあります。
インターネットですから、そういう虚偽の状態をつくり上げることは極めて容易です。そういったところが問題の1つ目です。
それから、事業者から見た場合、ターゲティング広告というのは、自社製品はどういう層であれば買ってもらえるのか、その辺を周到に検討した上で広告を打つわけです。それは例えばリアル取引で言うと、顧客名簿をどこからともなく入手して、うちのこの商品はこの人たちだったら買いやすいだろうという形で、じゃあ営業に行けというものと実質的に余り差はないのではないかという感じがいたします。
消費者側から見たターゲティング広告も、不特定多数向けのマス広告ではなく、ある意味、購買層であると、ターゲットを絞られて広告が打たれるということからいたしますと、不特定多数のマス広告に比べて、消費者に対して与える影響力は大きいのではないかということも言えるかと思います。
先ほども触れましたが、検索結果等が与える事業者に対する認識ということで、ここも皆さん御承知のことかと思いますが、検索上位に来たから優れているからといって、必ずしも、ユーザーからの評判がいいとは限りません。インターネット上の検索上位に表示させる方法というのは技術的にさまざまあるわけです。必ずしもその辺りの御認識がない消費者の方もいらっしゃるわけで、検索上位に表示されたのだから信頼できるという、検索の結果が消費者にとっての信頼の指標になっているということが挙げられるかと思います。
そうした問題点に加えまして、ややこの先の話にもなりますが、さらに関連する問題点として2つほど御紹介しておきます。
一つは、仮に勧誘を取り払って広告も対象にしましょうとなった場合でも、実はまだ課題がございます。それが9ページの(2)のアになります。今のインターネット広告は、先ほどもアフィリエイトなど紹介いたしましたが、広告を打つ方が必ずしも当該事業者とは限らないわけです。現行法の消費者契約法5条には「媒介の委託を受けた第三者」に関する規定がありますが、同条では到底対象としきれない第三者が広告を打っているところがあり得ます。
そして、「イ 第三者の『評価』が指標となることの危険性」ということで、これは、以前も、口コミサイト、最近では、ペニーオークションに関するブログなどのいわゆる、ステマと呼ばれているステルスマーケティングの問題が出ましたが、ここに至っては事業者とブロガーとの関係が全く見えない。見えないけれども、実際はつながっている可能性がある。さて、ここのところを法律でどうとらえるのか。
消費者庁の「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景表法上の問題点及び留意事項」では、一定の関連性があれば景表法上は事業者の表示であると考えられるという表現はありますが、実際、そういう関係があるかどうかというのは極めて難しいわけです。この辺りも、実際のところ大きな課題になってくるのではないかと思っております。
次に、資料4にいきます。まず、1ページの2、検討課題」から先に見ていきます。
ここで検討したのは、インターネット取引において規約はどのような状態で開示されているのか。いわゆる成立要件の問題。2番目として、インターネット取引における規約において他のリアル取引と比べ、特徴的な事項は認められるのかという点でございます。時間の関係がございますので、特にインターネット取引に関するところでは、(1)の成立要件に関する部分について、具体的なものを見ていただきながら報告させていただきたいと思います。
ここでは、2ページの「2 規約(約款)の認識可能性」というところから御説明したいと思います。
これは非常に大きな問題でして、パソコン上における規約の表示は紙ベースの規約と比べて、認識の程度において差異は認められるのかという極めて根源的な問題という形になります。私などは、今、こういうふうにパソコンの端末を持っていますけれども、例えば規約をこの画面上で見ろと言われるのと、それをプリントアウトして、指で追いながら赤鉛筆で線を引きながら見るのとどちらが頭に入るかというと、私は紙でやったほうが入るわけです。それは世代の違いであるとか、個人差もあるのかもしれませんが、しかし、調べてみると、紙媒体とパソコン媒体では、紙媒体のほうが文章の理解度が高いのではないかという報告もあるにはあります。そうすると、インターネットの規約の成立要件を考えていくに当たっては、そういった根源的なフォーマットの部分を考える必要もあるのかどうかというのが1点目でございます。
3ページの(2)、規約がどこに置いてあるのか。これはいろいろなバリエーションがあります。ここではア~オまでありますけれども、アというのは、そのサイトを開いたトップページでいきなり「規約」というタブがあって、そこをクリックすればここに書いてあるという、いわば一番わかりやすいパターンです。
イに入りますが、トップページにはあるけれども、最下部の奥のほうに規約タブがありますということで、資料3は某旅行会社のサイトですが、参考マル1、ここがトップページの一番頭ですと。規約はどこにあるのかなとスクロールをどんどんしていきます。ページをめくっていただきます。まだありません。下のほうに行きますと、規約集というのが2ページのところで出てきます。ここをクリックいたしますと、3ページですが、規約タブというところで、さまざまな規約がありますという形になります。こういうパターンのものがまず一つあるという現実です。
あとは、同じような形ではありますが、やや規約が見にくいというものもございます。それが参考マル2です。トップページから下がっていっていただきますと、先ほどと同じように、一番下の欄に利用規約というのがあります。これはカラーコピーだとさらに見にくいのですが、実際のWebを見ても薄グレーで書いてありまして、これはなかなか認識しづらいといったようなものもあります。
ただ、このサイトにつきましては、裏のほうを見ていただきますと、実際に登録するときには、個人情報を入力した後に、かなりわかりやすい文字で「規約とプライバシーポリシーを確認してください」という文字があらわれている。
今度は資料3の参考マル5をごらんください。これはある成人向けサイトですけれども、真ん中部分にマルが書かれてありますが、ここの部分だけが独立してスクロールする、こういう形式でございます。これをスクロールしていきますと、真ん中のところだけ画面がどんどんスクロールしていきまして、規約タブにたどり着く。これが、マル5の別ウィンドウに規約があるというものです。
次に、「エ トップページから一定のタブをクリックして別ページに規約を置くもの」ということで、これがなかなか難しいところがございまして、規約を見るためのタブは、規約と書いてあればいいのですが、調査した中では、御利用ガイドと書かれていたり、ヘルプと書かれていたり、企業概要の中にあったり、情報公開の中にあったりということで、どこを見たらいいのかわからないというものがそれなりに見受けられました。私などはよく困るのですが、あるサービスの規約を見たいときにどうするかというと、それこそGoogleやYahoo!の検索サイトで、キーワードとして、企業名および規約を入力したうえで、検索して、その検索サイトの結果から規約を探す。こういう本末転倒的な調べ方をしないと規約にたどり着けない、こういったものがあります。
認識可能性のところで、参考マル3のあるサイトを見ていただきたいのですが、これは食品関係の某サイトです。実はここのサイトでは、御利用ガイドというところをクリックしますと、わかりやすく利用規約が示されてはおりますが、この御利用ガイドを見ないまま商品を買ってみようということで、ぎりぎりまでやってみたのが裏面からのものです。結論といたしましては、最後のページまで見ていただくとわかりますが、常に御利用ガイドというタブは表示され続けていますので、いつでも見ることはできるのですが、御利用ガイドというタブの先に規約が表示されているということに、気づかなければ気づかないまま注文までできるというサイトでした。
最後が、「オ 申込フォーム画面にまで進むと『規約』を確認できるもの」という形で、参考のマル4をごらんください。これは、トップページからいずかをクリックしまして、何らかの申込みをする意思を形成して申込みフォームへ移動いたしますと、最終的な確認画面へというタブよりもその上のほうに規約が表示される。つまり、最終的なオーケーを出す、申込みをする直前には一応規約を見るような道になっている。こういう現状があるという形になります。
4ページは、これは資料をおつけしていませんが、かなり悪質なサクラサイトの事例もありました。最近のサクラサイト商法は、SNSから誘導されていってサイトに登録させられるという事案が実際あるのですが、これですと、そのままそのとおりにやっていったサイトを見ている限りは規約を見ることができない。全く別のURLのサイトに規約が表示されていた、このようなひどい事案もあります。
ほかに注目する点として、「規約の読みやすさ」「消費者が実際に申込を行う際の規約の『告知』あるいは『同意』」というのがありますけれども、いずれにせよ表示の仕方でわかったことは、表示の仕方自体、少なくともこういった複数のパターンがあるわけで、必ずしも規約が見やすいものばかりではないということが指摘できるのではないかと思います。
不当条項の分類が5ページ以下にありますけれども、こちらは時間のほうもありますので、説明は省略させていただくという形にしたいと思います。
以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの報告について、御質問、御意見のある方は発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
山口委員長代理、どうぞ。

○山口委員長代理 御説明、ありがとうございました。最初の広告ですが、ターゲティング広告は要するにネットを見ている人の特性に応じた広告ですから、一般の不特定多数の広告と違ってかなり影響が大きいと思いますけれども、これについてこのまま放っておいていいのか。それとも、イギリスなどでは一定の制約、自主規制ルールをつくっているようですが、その辺の必要性があるのか。その辺はこれから議論しなければいけないところだと思いますが、どう考えられるか。
それから、いわゆるアフィリエイト等の、本当はスポンサーからお金をもらって情報を流しているという場合、アメリカでは、スポンサーからお金をもらっているという場合は、それを表示しなければいけないということが義務づけられているようです。そこまでやるのかどうかも含めて、かなりいろいろ議論が出ていると思いますが、そういう点はどうなのか。
今の規約の関係ですが、消費者はほとんどこういう規約などは見ないで、商品をポンポンとクリックして契約していると思いますが、これについてはどういう対応が考えられるのか。どういう対応が考えられるかだけでも結構ですから、何かあればお願いします。

○山田茂樹委嘱調査員 まず、1点目のターゲティング広告に関して、規制なり何らかの考え方ができるかという点ですが、ここで個人的に気をつけなければいけないと思っていますのが、もともと広告は勧誘の対象から外すということに関する問題点については、マス広告であれターゲティング広告であれ、同じ話だと思われます。もし、ターゲティング広告は集中して特定の消費者層を狙うわけだから、これは特別扱いしようという話になって、マス広告は対象から外していいという話になってしまうと、2月2日のシンポジウムで丸山先生の報告にもあった、広告全般に関する議論をやや縮小させてしまう危険性がある。ターゲティング広告は確かにネットでは特有のものですが、消費者契約法の改正の議論をしていく中では、だからといってターゲティング広告だけ特別に何かをしましょうというふうにやることが妥当であるか否かは、注意して検討していく必要があるのではないかと思っています。
しかし、そうなると、ターゲティング広告は広告全般に関する消費者契約法の改正がなされるまで何もしなくていいのかという形になるわけです。ここのところは、まず一つは、線引きが、どの程度の絞り方だったら勧誘に近いとか、どの程度だったらマス広告に近いのか、その辺りが極めて主観的になってしまうと思います。ターゲティング広告はこういう行為規制をしましょう、マス広告はこの程度にしましょうという分類を仮に行為規制でやった場合、ターゲティング広告の定義をどうするのかというところが、ターゲティング広告には幅が余りにもあり過ぎて、このあたりの定義づけないしは対象広告の絞り込みで行き詰るような気がします。ここのところは、今すぐこうしましょうというアイデアを持ち合わせているわけではないですが、現実問題としてはかなり難しいところがあるのではないかと思っているところです。
2番目のアフィリエイトに関する点ですけれども、ここはアメリカのような形で、これは広告ですと。例えば今回の一連のステマの事件に関しても、これは広告ですというふうに書いてあれば、それは広告という前提で消費者は見た可能性はあります。これは難しいことかというと、表示をしなさいというふうにしてあれば、一定の効果はあるのかと思います。これは、考え方としては十分に今後も考えられるのではないかと思っているところです。
3点目の、最後に御説明した規約ですが、これは、現在の債権法の改正で約款の組入要件に関する議論がなされているところであり、約款の組入要件として、約款使用の合意に加え、契約締結時までに相手方が合理的な行動をとれば約款の内容を知ることができる機会をあたえていることが、中間試案たたき台では挙がっていたかと思います。そういたしますと、実はきょう、説明を省いてしまったのですが、経済産業省の資料が、資料4の10ページの(2)に、経済産業省の「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」というものが昨年の秋にも改定されているのですが、この中で「利用規約の契約への組入れと有効性について」という形で考え方が示されております。
ここでも、規約の内容を事前に容易に確認できるように適切にサイト利用契約をウェブサイトに掲載して開示されていることという要件と、利用者が規約によることを同意している、この2要件を規約の組入要件として、その場合は有効としましょうというのがありますので、この辺りの考え方を参考にすると。差し当たり、先ほど報告したように、どこに規約が書いてあるのかわからないということ自体は、現在の経産省の準則から考えても、成立要件のところでやや問題があるかなと思っていますので、この辺りを基準にして検討を進めてみるというのも現実的ではないかと思っております。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
これはなかなか難しくて、実際にどの辺にどういう問題があるのかということ自体を理解することが大変難しい。これはIT固有の問題なのか、それとも、例えば広告一般の問題なのか、あるいは約款の問題なのか。インターネットだから問題が先鋭化しているだけのようにも見えますけれども、実際はもっと根深い一般的な問題と結びついていることもあるので、それぞれの問題の位置づけ方はちょっと気をつけないといけないと思います。先ほど、広告の問題がありましたけれども、ITだけの問題にして局面を矮小化してしまう危険もございますから、扱い方は気をつけないといけないと考えています。
ただ、今回こういうふうにやっていただいて、確かにIT化に伴って、今まで余り目立たなかった問題が、消費者取引の中に非常に先鋭化して出てきていることは確かなので、何らかの対応をしたほうがいい。それは消費者契約法で対応したほうがいいのか、それとも、山口委員長代理がおっしゃったように、それはそれとして、今早急に、ITに関してだけでも手を打つべきことはないのかということも一緒に考えていかないといけないだろうと思います。
非常に興味深い報告をしていただきました。

○山口委員長代理 ちょっとよろしいですか。

○河上委員長 どうぞ。

○山口委員長代理 私は、これまでの広告のパターンとは全く質が違っていると思います。先ほど、山田さんは旅行のことをおっしゃいましたけれども、具体的な例を言いますと、妊娠したかどうかを調査できるような薬局で買うと、そういう関心があると見られて、すぐ、ベビー用品の宣伝が来るとか、それは消費者から見ると便利だと思うのです。どこか温泉に行きたい、あるいは、歴史に関心がある、医療関係の勉強をしようかなといったら、そのニーズに合った広告がバババッと来るのは、とても効果的だと思いますが、逆にそれは、消費者にとっては影響を受けやすいところがある。こういうツールというのはこれまでなかったのではないかと思いますが、便利さは逆に何かの問題の温床にもなると思います。
この辺は、我々の年代はなかなかネットに親しみにくいのですが、私どもの子どもの世代は、びっくりするぐらい平気でネットで買物をします。あるいはオークションで、要らないものをネットに載せて「買いませんか」と。3,000円ぐらい入金があるので、これは何かと聞いたら、ネットで売ったんだと。もう平気でそれをやっています。ネットで実物を見ないで買う、あるいは売るという感覚が私にはわからないのですが、それを今の20代、30代の若い人たちはやっていまして、この中でトラブルが確実に起こっているところについては関心を持たないといけない。温かく見守るだけではまずい部分があるなという気がしています。

○河上委員長 消費者契約のスタイル自体も変化しているということでしょうか。山田委嘱調査員におかれましては、お忙しい中、審議に御協力いただきまして、まことにありがとうございました。まだ議論は続きますので、今後ともよろしくお願いいたします。
本日の議題は以上でございます。お忙しい中、審議に御協力いただきまして、まことにありがとうございました。

≪4.閉会≫

○河上委員長 最後に、事務局から、今後の予定等について御説明をお願いいたします。

○原事務局長 次回の消費者委員会は、2月26日(火曜日)を予定しております。委員会の開催に先駆けて、16時から17時30分まで、今度は適格消費者団体との意見交換会の開催を予定しております。消費者支援ネット北海道、埼玉消費者被害をなくす会、消費者ネット広島、消費者支援機構福岡、大分県消費者問題ネットワークということで、地方の適格消費者団体の方にお集まりいただく予定です。
その後、17時30分より委員会を開催いたしますが、議題等につきましては、改めて御案内したいと思います。
それから、先ほど御紹介しましたけれども、3月2日(土曜日)に「第7回地方消費者委員会」を山形県米沢で、テーマは「食品表示の在り方について」ということで開催いたします。是非、これも広く広報していただければと思います。
また、先ほど委員長から発言がありましたが、本日、19時を目途に消費者庁の会見室において、「消費者事故未然防止のための情報周知徹底に向けた対応策についての建議」に関する委員長会見を報道の方を対象に行いたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○河上委員長 これで、本日は閉会とさせていただきます。
お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)