第111回 消費者委員会 議事録

日時

2013年1月29日(火)16:00~18:43

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
 河上委員長、山口委員長代理、稲継委員、小幡委員、
 川戸委員、田島委員、細川委員、村井委員、吉田委員
【説明者】
 法務省  筒井大臣官房参事官
 松岡 猛  消費者安全専門調査会座長
 消費者庁  片桐表示対策課長
【事務局】
 原事務局長、小田審議官

議事次第

1.開会
2.民法(債権関係)改正中間試案について
○説明者: 法務省  筒井大臣官房参事官
3.消費者安全専門調査会の報告について
○説明者: 松岡 猛 消費者安全専門調査会座長
4.健康食品について
○説明者: 消費者庁 片桐表示対策課長
5.公共料金について
6.その他
7.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:8KB)
【資料1】 民法(債権関係)部会の審議状況(法務省提出資料) 【資料2】 「消費者事故未然防止のための製品リコール案件等の注意喚起徹底策」について(消費者安全専門調査会報告書)
(資料2-1) 消費者安全専門調査会報告書(概要版)(PDF形式:437KB)
(資料2-2) 「消費者事故未然防止のための製品リコール案件等の注意喚起徹底策」について 消費者安全専門調査会報告書
【資料3】 「健康食品」の表示等の在り方に関する建議(案)関連資料 【資料4】 特定保健用食品について~消費者委員会からの声明~(PDF形式:110KB)
【資料5】 景品表示法と健康増進法との執行面における連携について(消費者庁提出資料)(PDF形式:128KB)
【資料6】 公共料金等専門調査会・家庭用電気料金の値上げ認可申請に関する調査会(これまでの経緯と今後の流れ)(PDF形式:93KB)
【資料7】 新開発食品調査部会関連資料(PDF形式:405KB)
【参考資料】 委員間打合せ概要(PDF形式:64KB)

≪1.開会≫

○河上委員長 時間になりましたので、始めさせていただきます。
本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会(第111回)」会合を開催いたします。
本日は、所用によりまして、夏目委員が欠席の予定でございます。
それでは、配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

○原事務局長 配付資料ですけれども、議事次第の下の段に一覧を載せております。
資料1の関連が、「民法(債権関係)部会の審議状況」ということで、法務省から御提出いただいた資料です。
資料2は、「消費者事故未然防止のための製品リコール案件等の注意喚起徹底策について」ということで、消費者安全専門調査会の報告書、概要と本体になります。
資料3は、「『健康食品』の表示等の在り方に関する建議」(案)関連資料。
資料4といたしまして、「特定保健用食品について~消費者委員会からの声明~」。
資料5といたしまして、「景品表示法と健康増進法との執行面における連携について」、消費者庁から御提出いただいた資料です。
資料6といたしまして、公共料金等専門調査会・家庭用電気料金の値上げ認可申請に関する調査会の関連の資料。
資料7といたしまして、新開発食品調査部会の関連資料。
参考資料といたしまして、この間、1月22日に委員間打合せを行っておりますので、その概要をおつけしております。
不足がございましたら、審議の途中でもお申出いただければと思います。
それでは、よろしくお願いいたします。

○河上委員長 きょうは盛り沢山な内容ですので、審議については御協力をお願いしたいと思います。

≪2.民法(債権関係)改正中間試案について≫

○河上委員長 まず初めに、「民法(債権関係)改正中間試案について」ということでございます。法務省におかれましては、お忙しいところを御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
本件につきましては、法務省の法制審議会において、民法改正に向けた議論が積み重ねられています。平成23年8月の消費者委員会においては、法務省より、法制審議会における中間的な論点整理についてヒアリングを実施させていただきました。それを受けて消費者委員会では、「消費者契約法の改正に向けた検討についての提言」を行いまして、民法(債権関係)改正の議論と連携しつつ、消費者契約法改正の検討作業に着手することを消費者庁に求めました。その後、本格的な調査審議を行い得る体制が整うまでの間、事前の準備作業を行うことを目的として、消費者委員会のもとに「消費者契約法に関する調査作業チーム」を設置いたしまして、毎月、討議を重ねておりますが、法制審議会の民法(債権関係)部会では、現在、民法改正の中間試案のたたき台が固まってきていると伺っております。
本日は、中間試案のうち、消費者概念の導入、約款規制等、消費者法と特に関連するであろう内容を中心に、法務省より御説明をいただきたいと思います。
それでは、説明をお願いいたします。説明時間は、短くて恐縮ですけれども、20分程度でお願いいたします。

○法務省筒井大臣官房参事官 法務省の筒井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私は、現在、法務省が進めております民法(債権関係)の改正作業の現場の責任者をしております。先ほど、河上委員長から御紹介がありましたように、民法(債権法)の改正につきましては、2009年10月に法制審議会に対する諮問が行われまして以来、3年余り、審議が進んできておりまして、今月中を目途に中間試案の取りまとめが行われる段取りになっています。その具体的な検討状況については後ほど御説明しますけれども、まず、ここに至るまでの審議状況について、ごく簡単に御紹介しておきたいと思います。
お手元に資料1-1と1-2を配付させていただいております。まず、資料1-1に沿って、法制審議会における審議の状況について簡単に御説明させていただきます。
資料1-1の2ページ、「民法(債権関係)部会の審議事項」という紙がございます。ここに、法制審議会に対する法務大臣の諮問内容を全文掲載しております。
これによりますと、今回の見直しの対象範囲は民法のうち「債権関係の規定」であり、その中でも「契約に関する規定を中心に」見直しを行うこととされております。基本的に「民法第三編 債権」が中心ですが、債権関係の規定としてはそれだけではなく、民法総則にも、法律行為、意思表示、代理、消滅時効といった規定がありますので、これらの規定も合わせて見直しの対象としております。
また、「契約に関する規定を中心に」ということですので、不法行為などは主たる検討対象とはしないこととされています。
これらの規定の見直しを行う専門の部会として「民法(債権関係)部会」が設置されて、3年余りの審議を続けてきたところでございます。
この見直しをする際の見直しの観点、改正の必要性として、諮問文には2つのことが書かれております。一つは、社会・経済の変化への対応ということであります。明治29年制定以来、百十数年が経過していますので、この間の社会・経済の変化への対応を図る、いわゆる現代化を行うという趣旨であります。例えば、法定利率は現在、民法は年5%と定められていますけれども、これが現在の金利情勢に照らして高すぎるということはしばしば指摘されているところでございます。
また、先ほど、河上委員長からも約款について言及がございましたけれども、約款に基づく取引の重要性は、今日、非常に高まっております。それにもかかわらず、民事の基本法である民法には約款に基づく取引についてのルールが全く書かれていませんので、現代化の一環として対応を図っていく必要があるのではないかという問題意識でございます。
それとともに、もう一つの見直しの観点として、国民にわかりやすい民法にするということが書かれております。これは、現在の民法が国民にわかりにくいものになっているという現状認識があるからです。その主な要因の一つは、現在の生きた取引ルールが民法にきちっと書き込まれておらず,非常に不親切な条文になっていることであると言われております。民法制定以来110年あまりの運用の中で形成された重要な判例法理を明文化し、不明確な規定の見直しを行うことなどによって、基本的な取引ルールが民法を読めば書いてあるという状態にする必要があるのではないか、こういう問題意識に基づくものでございます。
レジュメの次のページに進んでいただきまして、民法(債権関係)部会のスケジュールについて御説明いたします。
民法(債権関係)部会では,その検討対象とする民法の範囲が大変に広い上に,この見直しが国民生活に与える影響も大変大きいであろうと予想されましたので、審議を始めるに当たって、最初からゴールの時期を設定するというやり方はしないで、十分慎重に、必要な時間をかけて審議をしようということで、当初は目標とする答申の時期を設定しませんでした。その代わり,全体のスケジュールを3つのステージに分けて、そのステージごとに目標とする時期を設定してこれまで審議を進めてまいりました。
第1ステージでは、この検討対象とする範囲にどのような論点があるかという論点整理を行ってまいりました。これにおよそ1年半をかけて、平成23年5月に「中間的な論点整理」という文書を取りまとめ、これを公表して、最初のパブリックコメントの手続を実施しております。
第2ステージでは、中間試案の取りまとめを目指すということで審議を進めてまいりました。平成23年7月ごろから審議を再開いたしまして、昨年の11月までに、「中間的な論点整理」で検討対象とされた論点についての一巡目の審議を終えました。その後、若干の補充的な審議を行った後、昨年12月から中間試案の取りまとめに向けた審議に入っております。
中間試案の取りまとめに向けた審議では、全体を4分割して、中間試案のたたき台を順次示すという手順で作業をしてまいりました。現在のところ、やや作業が遅れまして、全体を5分割してたたき台を提示するという形になっておりますが、それを我々事務当局から部会に順次提示して、それについて審議をしていただいております。今後は、審議経過を踏まえてたたき台の改訂作業を行って、本年2月末を目途に中間試案の取りまとめを行うことを目指しています。おおむね予定どおり、あるいは3月に若干ずれ込むかもしれませんけれども、中間試案の取りまとめが行われる見通しとなっております。
この中間試案が取りまとめられました後は、2度目となるパブリックコメントの手続を行って、広く国民の御意見を伺った上で、第3ステージで改正要綱案の取りまとめに向けた審議を行っていきたいと考えております。
この部会の審議事項は大変に広く、論点が多岐にわたっていたために、ボリュームが大きすぎるのではないかという指摘もありましたが、中間試案の取りまとめにあたっては、最終的にゴールを目指すことが可能な論点に絞り込むという作業も行っております。ある程度の論点の絞り込みが行われつつあります。
第2ステージの議論の中では、議論をすればするほど,甲案、乙案、丙案といった形で意見が枝分かれしていく傾向がありがちでしたが、立法を目指す審議会である以上、最終的には結論を一本化しないことには立法として結実しません。中間試案のたたき台を提示するに当たっては、意識的に、この案であれば、ベストではないにしても多くの方が賛同していただけるのではないかといった観点から、一本化した提案をし、それについてなお反対意見がある場合には、そのような反対意見があることを注で紹介するといった方法を使いながら、できる限り一本化した意見の取りまとめを行うという方針で審議を進めてまいりました。
それでは、この部会では,現在、取りまとめに向けてどのように審議が進んでいるのかについて、幾つかピックアップして御紹介していきたいと思います。
まず、資料1-2の1ページの【1】で、公序良俗という論点を紹介しております。【1】と【2】は、先ほど申し上げた「わかりやすい民法」という観点から、現在の判例法理を明文化するかどうかといったテーマを扱ったものでございます。
まず公序良俗に関しては、(1)として、若干の字句の修正に関する改正提案がありますけれども、(2)として、暴利行為に関するルールを設けることが提案されています。現在の民法90条、公序良俗に関する規定ですが、この条文は、「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」と書かれています。法律行為というのは基本的に契約であると置きかえてよいと思いますけれども、その契約について,明文の規定はないけれども無効とすべき事由がある場合には、裁判所は,これまでこの民法90条を使って無効という判断をしてきました。しかし、条文に実際に書かれているルールは、公の秩序、善良の風俗に反するということですから,この条文から,一方の当事者を保護するために契約を無効とするという法理はとても読み込むことができません。これでは,国民はルールを知ることができない状態に置かれているという問題があるわけです。
そういった観点から、これまで判例が形成してきたルールのうち、暴利行為と呼ばれているものを明文化してはどうかということが議論されてまいりました。暴利行為というのは、注のところを先にご覧いただきますと、「相手方の窮迫、軽率又は無経験に乗じて著しく過当な利益を獲得する法律行為は、無効とする」と書かれています。これは、昭和9年に大審院が判示した定式をそのまま条文化するという改正提案です。昭和9年に大審院がこういった内容の判示をし、それが今日まで判例法理として発展してきたという経緯がございます。こういった暴利行為と呼ばれるルールが裁判所に行けば適用されるわけですから、これを明文化する必要があるのではないかということが議論されてきました。
もっとも、昭和9年の大審院判決の後、すでに相当の年月が経過し、現在の判例法理はもっと進んできているので、現在の判例の成果を多少なりとも盛り込んだほうがよいのではないかという議論がされています。ゴシックで書かれているところを本文と呼んでおりますが、この本文の案は、そういう観点を踏まえて提示されているものです。また、ここでは、言葉自体もわかりやすいものにしようという観点から、「相手方の困窮、経験の不足、知識の不足その他の相手方が法律行為をするかどうかを合理的に判断することができない事情があることを利用して、著しく過大な利益を獲得し、又は相手方に著しく過大な義務を負担させる法律行為は、無効とする」という案文が提示されています。もちろん、これがすぐに条文になるということではありませんけれども、こういった内容の規定を盛り込むかどうかということを、今後、議論していくことが提案されているわけです。
ここで提案されている案文を読んで、これでものすごくわかりやすくなったと言ってもらえるかどうかという問題は、なおもあるとは思いますけれども、少なくとも公の秩序、善良の風俗という現在の条文だけでは、一方当事者にとって著しく不利益になる契約の効力が否定され得るというルールを読み取ることは非常に難しいわけですから、その法理を何らかの形で明文化する意義は少なくないのではないかと私は考えております。
次に、【2】の錯誤に関する規定です。資料1-2では2ページに参照条文を掲げておりますが、錯誤に関する現在の民法95条は「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする」という規定になっています。しかし、この「要素に錯誤」とは何かということが、条文からは全くわかりません。また、錯誤というのは、実際に紛争となる場面は、単なる言い間違いなどではなく、前提となっている事実に誤認があった場合、いわゆる動機の錯誤と言われているものが圧倒的に多いわけでありまして、消費者相談の現場でも取り扱われる実例は、ほとんどが動機の錯誤であると聞いております。
この錯誤に関しては、どういった要件があると要素の錯誤になるのか、また、動機の錯誤はどのような場合に要素の錯誤となり得るのかということについて、既におおむね判例ルールが確立されていると言われています。そうであれば、確立された判例法理を条文上明記すべきではないかということが、ここでは議論されております。
資料1-2の1ページに戻っていただきますと、95条を次のように改めるという考え方が提示されております。まず、要素の錯誤に関しては、「(1)意思表示に錯誤があった場合に、表意者がその真意と異なることを知っていたとすれば表意者はその意思表示をせず、かつ、通常人であってもその意思表示をしなかったであろうと認められるときは、表意者は、その意思表示を取り消すことができる」という案が提示されています。「表意者がその真意と異なることを知っていたとすれば」から3行目の「認められるとき」までが、要素の錯誤に関する判例法理を明文化したものです。
次に、(2)がいわゆる動機の錯誤についての判例法理を明文化したものです。その表現ぶりは、まだまだ精査していく必要がありますけれども、目的物の性質、状態その他の意思表示の前提となる事項に錯誤があった場合に、一定の場合には、(1)の錯誤があった場合と同様に扱う、要素の錯誤となり得るという判例法理を明文化することが提案されています。
この動機の錯誤に関しては、「ア 表意者の錯誤が法律行為の内容になっているとき」、これが一般的な理解に従って判例法理を書き表したものですが、他方、イでは、新たなルールをつけ加えています。「イ 表意者の誤った認識が、相手方が事実と異なることを表示したために生じたものであるとき」。これは、いわゆる不実表示と言われている法理を新たに明文化するものです。
不実表示に関しては、民法(債権関係)部会の審議が始まる前、学者グループによる立法提言が議論されていたころは、消費者契約法にある不実告知の規定を一般法化して民法に規定するなどといった議論がされていましたけれども、法制審議会の議論におきましては、消費者契約のルールとしてではなく、これまでの判例法理の中に、当事者の一方が誤った事実を告げたことによって、相手方を誤信させて意思表示がされたといった場合については、動機の錯誤のサブルールとして、比較的緩やかな要件のもとで動機の錯誤が認められるという法理がある。そういう理解の下で、そのようなルールがあるのであればそれを明文化すべきではないかといった形で審議が進んでまいりました。そのような審議の経緯を反映して、不実表示に関しては、今回、(2)のイという形で、動機の錯誤のサブルールとして明文化してはどうかという提案がされているわけです。
以上が錯誤に関する議論の状況でございます。
資料1-2の2ページ、【3】「保証人保護の方策の拡充」ですけれども、これは、先ほど申し上げました民法の現代化、社会・経済の変化への対応という観点からの論点の一つです。今日の社会状況の中で、保証人保護の方策の拡充が必要であり、特に一定の類型の個人保証については禁止すべきではないかといった議論が、弁護士会を中心として強く主張され、議論されてきたところでございます。
ここでは、まず「(1)個人保証の制限」で、「次に掲げる保証契約は、保証人が『いわゆる経営者』であるものを除き、無効とするかどうかについて、引き続き検討する」という取りまとめの案が提示されています。次に掲げる保証契約としては、アとして貸金等根保証契約。これは既に民法上にある貸金等債務を主たる債務とする根保証契約のことです。次に、イとして、債務者が事業者である貸金等債務を主たる債務とする保証契約であって、保証人が個人であるもの。これらを対象として個人保証を禁止した上で、しかし、経営者保証については、禁止の対象からは除外し、別のルールによって保護を図っていくことが提案されています。
ここでは、「引き続き検討する」と書かれていて、一見すると先送りであるかのように見えるかもしれませんけれども、決してそういうことではありません。除外すべき「経営者」をどのように定義するかということについて、まだ議論が十分煮詰まっていないので、そういった点をさらに引き続き検討するという趣旨です。
次に、資料1-2の3ページでは、【4】約款・不当条項規制という論点が取り上げられています。約款に関する規定を民法に設けることが、第9で提示されていて、それとの関連で、第10で不当条項規制としてのルールが提示されています。
今日では約款に基づく取引が幅広く行われていますけれども、約款は、実際には誰も読まないし、内容も知らないわけです。それにもかかわらず約款がなぜ契約の内容になるのかは、民法の一般原則との関係で、必ずしも容易に結論が出ない問題があります。どういう要件を満たせば約款が契約内容になるのかについて、これまで裁判例などでは、黙示の合意を緩やかに認定して、これを契約内容にしてきたと言われておりますけれども、これほど約款に基づく取引が増えている中で、黙示の合意だけに依拠して判断をするのでは不安定である。約款に関して、どのような場合に契約内容になるのかについての安定したルールを定めることによって、取引の安定を図っていくことが必要ではないかというのがここでの問題意識であります。
ここでは約款の定義として、「約款とは、多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定めることを目的とするものをいう」という案を提示しています。これは、約款とは何かという一般論に対する答えそのものというよりは、次の組入要件の対象とする約款とはこういうものではないかという観点から定義づけたものです。
次に2として、約款が契約内容に組み入れられるための要件としては、「契約の当事者がその契約に約款を用いることを合意した」ことが最低限必要であるとしています。約款に含まれる個別条項の内容までは知らないけれども、しかし、約款を用いる契約であることは、黙示であっても合意している必要があるということです。その上で、その約款を準備した者(約款使用者)が相手方に対し、契約締結時までに、合理的な行動を取れば、相手方が約款の内容を知ることができる機会を与えるということを最低限の要件とする案が提示されています。この点についてはまだ意見が分かれており、異なる案が注として書かれています。
また、不意打ち条項。約款の中におよそ想定されないような条項が組み込まれていた場合には、一定の要件のもとでその条項の効力を否定するといったルールが用意されています。
4として、約款の変更に関する新たなルールを設けるかどうか。ここは、まだ議論が十分に煮詰まっていませんので、「引き続き検討する」と書かれています。
最後に、資料1-2の4ページですけれども、「消費者に関する規定」の議論をご紹介します。この点についても、民法(債権関係)部会では議論がされてまいりました。ただ、この論点は、中間試案のたたき台の(5)に含まれる予定でして、まだ審議前で、資料を作成中ですので、今日のところは中間試案のたたき台をお示しすることができません。そこで、第2ステージで、法制審議会の部会で審議された際の部会資料をもとに、この議論を紹介したいと思います。
民法(債権関係)部会では、民法上のルールの主要な適用対象は消費者契約であり、消費者に適用されることを十分意識して、ここまで議論を進めてまいりました。その上で、さらに消費者特有のルール、消費者契約の特則を設けるかどうかについては、それを抽象的に議論するのではなく、個別具体的に、このルールについては消費者の特則を設ける必要があるのかどうかという形で議論を進めていこうということで、ここまで審議してまいりました。
その過程では、例えば消滅時効に関して、当事者の合意によって時効期間を長くしたり短くしたりすることができるルールを設けるという提案があり、もしそのようなルールを設けるのであれば、消費者については、消費者が不利になるような合意を阻止するために、消費者契約に関しては、消費者が不利になる方向の合意をしても無効であるという、特別ルールを置く必要があるのではないかということが議論されてきました。
ただ、時効期間を合意によって変更するというルールについては、中間試案では、今のところ盛り込まない方向で議論が進んでいますので、結果的に、消費者の特則についても論点からは落ちています。このような形で、消費者に関する特則は、個別論点の検討結果として、現在のところ、ほとんど議論の対象として残っておりませんので、そういった経緯から、今の時点では、消費者に関する特則を民法に設けるという論点は、ほぼなくなっているというのが現状であります。ですから、今回の改正の中で、消費者契約だけに適用される規定が民法に設けられる可能性は、ほとんどなくなってきていると私は理解しております。
一方、そういった個別の規定ではなくて、消費者契約をはじめとして情報格差、交渉力の格差がある当事者間における契約に一般的に適用されるような、解釈上の留意点に関する規定を設けることについては、別に議論されております。それがここのページに取り上げている(1)で、「消費者と事業者との間で締結される契約(消費者契約)をはじめ、情報、交渉力等の格差がある当事者間で締結される契約に関しては、その格差の存在に留意してこの法律(民法)を解釈しなければならない旨の規定を設けるという考え方」というのが提示されています。
これは第2ステージの審議過程での提案ですので、中間試案に盛り込まれるかどうかというのは未定ですけれども、こういった総論的な規定を民法に設けるべきではないかという考え方が主張され、これまでのところ議論の対象とされているところでございます。
非常に雑駁な報告になりましたけれども、現在の審議状況を報告させていただきました。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明を前提にして、御質問、御意見のある方は発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
山口委員長代理、どうぞ。

○山口委員長代理 御説明、ありがとうございました。実は、法務省民事局の参事官をやっていた司法研修所で私の同期同クラスで、修習地も同じ福岡だった原田晃治という審議官が10年前に急死しました。それは、会社法の改正作業が頂点になって非常に忙しく、彼自身、心臓の病気を抱えていましたけれども、毎日帰りが夜中の2時、3時というような状態が続いておりまして、心臓病で亡くなりました。筒井さん、あるいは民法改正作業の関係者も、毎週のように法制審も開かれているようですし、命を大事に、健康を大事に、健全な法律をつくっていただくように是非お願いしたいと思います。
その上で、4つ、意見なり質問をさせていただきたいのですが、まず第1番目は、公序良俗に関する暴利行為の規定、これは是非盛り込んでいただきたいと思います。今、消費者委員会でも議論をしているところですが、高齢者の詐欺的投資勧誘に伴う被害が多発していますし、高齢者がたくさんの金融資産を持っていることもあって完全に悪い連中のターゲットになっている。そういう観点から、どうしたらいいのかというのはかねてより議論をしていまして、高齢者に取消権を別途付与してはどうかという議論も出ているわけですけれども、1項の(2)の暴利行為の規定、これは是非、このような内容で実現していただきたいと思います。
2番目は、保証人保護の観点ですけれども、これも是非このような内容で実現していただきたいと思います。アメリカに行って消費者被害の実情などを調べてみますと、借金して担保提供をした場合、不動産を担保物件として取られた場合には、例えば1億円借金して自宅を競売に付したら、6,000万円でしか売れなかった。このためなお債務が4,000万残ったということになると、この4,000万の借金が日本の法律では取立てを受けるわけです。当然、個人保証なりしているから残るのですが、アメリカでは、担保で外れたら原則あとは取立を諦めるという運用になっている。これが、個人事業的な形で会社をやっていて倒産した場合、事業の再生に非常に役に立っている。
ところが、日本の場合には、個人事業者が株式会社なり有限会社として借金した場合、必ず経営者が連帯保証させられます。結局、すっぽんぽんになってもまだ借金が残っている。個人破産か何かしない限りは永遠に追及を受けるということで、なかなか再生がしにくいという実情があります。日本の経済の再生のためには、安倍首相がおっしゃっている日本を取り戻すためにも、1項のア、イ、特にイは実現の必要性が強いのではないかと思いますので、その点、是非よろしく検討をお願いいたします。
3番目に、消費者契約法との関係ですが、実は今、消費者委員会で消費者契約法の実体法の改正はどうあるべきかということで、いろいろ議論をしているところです。民法の法律の改正案がいつ国会に上程されるかにかかってきますけれども、消費者契約法の改正との関係もあって、私などは個人的には、民法の改正案が上程されるときには消費者庁から消費者契約法の改正案が同時に上程される、あわせて審議というのが一番理想的ではないかと思っていますが、その辺についてどういうふうにお考えなのか。これは消費者庁の事情でもありますので、答えにくいかもしれませんが、差し支えのない範囲で御意見なり状況を教えていただければと思います。
最後に、4点目です。先ほど、年5%の法定金利が高すぎないかという議論があるということでしたけれども、これは、それこそ私が弁護士になる30年以上前から年5%ということで確定しておりまして、法的安定性の点から、いろいろ問題はあるかもしれませんが、広く知られている安定的な金利であります。プライムレートプラス何%などということになると、本当に法的安定性を欠くのではないかと思います。韓国などでは、判決の執行力を強めるために、判決後は20%という金利を特別に定めているという実情もございます。せめて5%というのは維持すべきではないかと思いますが、今、どういう議論の状況になっているのか。
以上、4点、教えていただければと思います。

○法務省筒井大臣官房参事官 まず、公序良俗のところの暴利行為の規定を盛り込むという方向の御意見をいただきました。ありがとうございます。私も先ほど報告したとおり、このような規定を充実させていくことは今回の改正の中心的な目的の一つであって、大変重要な点ではないかと考えております。実際にどのように規定するかといったところについては、まださまざまな意見があり、濫用の懸念を指摘する意見も一方にあるわけですけれども、さまざまな意見に留意しつつも、できる限りこういった規定を設ける方向で努力していきたいと考えております。
次に、保証人の保護についての御意見をいただきました。保証人保護についても大変重要な課題であると思っております。法務省の施策だけでなし遂げることができる課題ではありませんけれども、保証をめぐるトラブルを改善するための施策を、政府の他の機関とも連携して行っていかなければいけないと思っております。その一環として、民法としてできることを是非とも実現していきたいと考えております。
また、消費者契約法と民法の改正の連携という御指摘をいただきました。消費者契約法についてコメントする立場にはありませんし、民法の改正法案の国会提出時期についても確かな見通しが立っている状況ではありません。まずは私自身の職責として、今回の中間試案を、より多くの方に支持していただける内容のものとして取りまとめていくことが重要であろうと考えております。よりよい民法の改正法案をまとめていくことに全力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。
それから、法定利率の見直しについての御意見をいただきました。私は先ほど、5%が高すぎるのではないかという問題意識を申し上げましたけれども、山口先生から御指摘がありましたように、その適用される場面はさまざまでありまして、遅延損害金に関して5%でも安いと思える事案が決して少なくないというのは、御指摘のとおりだと思います。そのような意見は部会でも出ておりまして、今後も留意していかなければならないポイントであると思います。
現時点での議論状況では、5%という数値は引き下げるべきであるという意見が優勢であるように思います。それは、相手の支払能力さえ確かであれば、すぐに払ってもらわなくても、つまり和解交渉などをすぐにまとめなくても、時間がたてばたつほど損害金の額が膨らんでいって、直ちに損害賠償の支払を受けるよりも有利な運用ができるという現状に対しては、それは問題解決をこじらせているし、決して正常な事態ではないであろうという問題意識があるからです。現状として、そういう病理現象が生じていること自体は、確かだろうと思います。
ですから、当事者間の合意によってアレンジできるところはそれで対応していただくこととして、そうではない場合に適用される利率としては、現在の金利情勢を考えれば、もう少し低いほうがよいのではないかというのが、現時点での多数意見ではないかと思いますので、そういった案を国民に提示して、さらに意見を募集した上で、検討を深めていきたいと思います。
また、法定利率に関しては変動制の導入が議論されています。やはり金利情勢というのは刻々と変わりますので、固定金利であれば、いずれまた改正が必要な時期が来て、それについて、そのときどきの政治情勢の中で適時に改正できるかどうかというのは必ずしもわからない。そうだとすると、取引社会に対して安定した利率を提供していくためには、変動制の導入が必要ではないかという議論であります。既にドイツやフランスでは変動制が導入されていることも、もちろん参考にはなると思います。
ただ、日本においては、余り細かい変動制は恐らく好まれないであろうと、私もこれまでさまざまな意見を伺ってきて感じております。そこで、中間試案のたたき台では、1年に1回、それも0.5%刻みで変更が必要になった場合に限って、利率が変動するというルールを提示しております。そのような比較的安定性の高い変動制を導入するのであれば、多くの賛成が得られるのではないかと考えておりますけれども、まだまだ議論が必要であろうとも認識しております。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。
利息一つとっても、将来、損害賠償請求をしたときの中間利息の控除をどうするのかとか、変動した場合のいろいろな問題がありますから、必ずしも動けばいいという話でもないですし、なかなか議論が大変な状況だということは理解しております。
ほかに何か。小幡委員、どうぞ。

○小幡委員 私も法科大学院で行政法を教えておりまして、民法改正もいよいよということで、本当にこれは大変な作業だと思います。パブコメの中間試案がこの2月ということですね。消費者契約関係はそれを個別には取り上げないということでしたが、今、山口委員長代理からもございましたように、消費者庁の作業との問題もあろうかと思いますので、その後の見通しをお聞かせいただければと思います。

○法務省筒井大臣官房参事官 債権法改正の中間試案がこの2月末、または3月上旬に取りまとめられました後は、パブリックコメントの手続を実施することを予定しておりますが、直ちに開始するのはやや困難で、恐らく4月以降の日程でパブリックコメントを行うことになると思います。中間的な論点整理のときよりも、論点はかなり絞り込まれていますが、それでも相当のボリュームがありますので、パブリックコメントの期間も1か月というわけにはいかないと思いますし、それを取りまとめるにも一定の時間がかかると思います。すぐに次のステージが起動するわけではありませんけれども、そういった形のパブリックコメントを経た上で次のステージを進めていきたいと考えております。
次の第3ステージの日程がどれぐらいかかるのかというのは、寄せられた意見次第でもありまして、中間試案に対して多くの支持が得られ、それを早く実現すべきだという声が高まってくれば、我々は全力で早く進めるように努力していきたいと考えておりますけれども、もっと時間をかけてじっくり検討せよということであれば、それなりに時間がかかるのかもしれません。私としては、より多くの支持が得られる中間試案を提示して、ある程度のスピード感を持って合理的な期間の中で実現できるスケジュールを考えていきたいとは思っておりますけれども、まだ、その見通しをお話しできる段階には来ていないと思います。
消費者契約法との連携について、山口委員長代理とともに重ねて御指摘をいただきました。連携が必要であるというのは、全くそのとおりであると私も思っております。私どもの審議会にも、消費者庁から関係官に議論に参加していただいております。そういった形のほか、様々な機会を通じて意見交換、意思疎通を図りながら、今後も議論を進めていきたいと考えております。

○河上委員長 細川委員、どうぞ。

○細川委員 御説明、ありがとうございました。民法改正というのが議論になって、いわゆる消費者契約のような、弱者と強者という対等な関係でない人間関係の規律が民法に入る可能性があるといったときに、消費者問題をやっている人はかなり驚いて賛成したわけです。ところが、専門家からは逆にそれは反対だという声が大きかったわけです。民法というのは重要な法であるがゆえに硬直的だし、テクニカルなことを書くよりも、いろいろなものに対応できるように抽象的になっているわけだから、それにかえって入れ込むと硬直的になるという意見がかなり多くて、私は不思議な議論だなと思いましたけれども、どうもそちらの方向になってきているような感じがします。
ですが、社会はどんどん動いていって、法律に書き込んでいないと裁判官は消費者の視点に立った解釈はしてくれないという声もいまだにある中で、こういうものをどういうふうに考えたらいいのかというふうに思いますけれども、例えば、これは本当に私一人の勝手な考えですが、アメリカではリステイトメントというのがあります。今、これこれは判例でこういうふうにされているから、社会でこれが妥当なんだというようなものを、社会的な権力というか、そういうところが出していく。
そういう意味で言うと、日本も、法律は国家がつくるというだけではなくて、社会がつくり上げていくと。いわゆる共同規制のような概念をとって、民法はこういうものであるけれども、現代のこの社会においてはこういう解釈が一般的にされているという、第二の民法と言ってはおかしいかもしれませんけれども、何かそういったものをつくる。しかも、それがある程度裁判官を拘束する社会的な合意みたいなもの、そういった判例法理の制定法化というか、そのようなものができていって、大事なものは守りながら、その社会に合った法理をみんなでつくっていく。何かそのようなものができないのかなというふうにちょっと感じているものですから、済みません、ちょっときょうの趣旨と違うかもしれませんけれども、発言させていただきました。

○法務省筒井大臣官房参事官 貴重な御意見、ありがとうございます。消費者に関する規定を民法に設けるかどうかということについて、私は、こうでなければならないという考えは特に持たずに、多くの方にざっくばらんに議論していただきたいテーマだと、当初から考えておりました。民法は、制定から百十数年間にわたり、大きな改正を経ないで今日に至ってしまいましたので、その改正が非常に困難なのではないかとか、また、現在の民法は条文数も少なくシンプルな規定になっておりますので、民法というのはこういう抽象的な規範だけを書いておけばいいのではないかとか、さまざまな、ある種の固定観念というのがあったと思います。それでよいのかもしれませんし、しかし、新しい民法は違うのかもしれない。そこは議論をしていけばよいことではないかと当初から思っておりました。
消費者契約、消費者の特則を民法に置くかどうかということも、私はこの部会における審議の当初から申し上げてきたのですけれども、最初から消費者に関する規定を置くとか置かないとか、事業者に関する規定は置かないとか、そういうことを抽象的に決めるのではなく、まずは個別に、実際上どんなルールが必要なのかを議論してみましょうということで、ここまで審議を進めてまいりました。
結果的には、先ほど申しましたように、やはり固定観念が影響したのかもしれないし、あるいは別の理由によるのかもしれませんけれども、現在までのところ、特別な個別のルールとして、消費者に関する特則を民法に置くという具体的な提案は、ほぼ残っていないというのが現状です。
また、細川委員からは、不正確な理解かもしれませんけれども、リステイトメントなどを通じて生きたルールを法文の中に取り込んでいくといった観点からの提案をいただきました。それは大変重要なことではないかと私も思っておりまして、先ほど言ったことの繰り返しになるかもしれませんけれども、やはり裁判所に行けば適用されるルールが確立されているのであれば、それはできる限り条文という形で書いて、多くの人が容易に見ることができるようにすることが大変重要ではないかと考えております。今回の改正の中でも、ついついプロの法律家同士の議論では、それは解釈に委ねておけばよいという議論が出てまいります。確かにそれはそれで一理あって、それが有用な場合もあるとは思いますが、しかし、確立されたルールがあるのであれば、できるだけ法文化して、法律の専門家でない方にも見えるようにすることが大切ではないかと考えております。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。

○山口委員長代理 先ほど、会社法改正の作業のことを申し上げましたが、私は会社法は大嫌いでして、やたら括弧書きがあって、読んでいても頭に入りにくい法律なのです。立法当事者に聞くと、とにかく理論的にきちっと整合性がとれるようにつくったからああなったんだとおっしゃるけれども、少なくとも民法は一般市民が見てわかるような条文にしていただかないと、という感じがします。その意味で2,000条とかいうふうに長大すぎることにならないように、できるだけシンプルに、一般人が読んでもわかるような、愛ある条文にしていただくようにお願いいたします。

○法務省筒井大臣官房参事官 ありがとうございます。多くの方に分かる条文にすることが大切であるというのは全く同感です。法律の書き方は、その法律の名宛人が誰かというのが大事だろうと思います。会社法も、本当は広く多くの人が読む法律であったのに、わかりにくいものになったという批判があるのかもしれませんが、山口委員長代理から御指摘があったように、民法は、多くの一般国民が読むことのできる法律でなければならないと思います。できる限りわかりやすいものにするように、括弧書きは避けるというのが具体的な御提案であったと思いますけれども、そういったことにも十分気をつけながら、作業を進めてまいりたいと考えております。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
どうもありがとうございました。私も民法が専門なもので、申し上げたいことが幾つかあることはありますけれども、きょうはこれでお話を伺ったということにしたいと思います。
大変な分量の作業で、実は法制審での議論は公開されていますけれども、あの資料を読みこなすだけの国民は非常に限られているという気がします。その意味では、何が論点になっているかということをシンプルに提示して、それのメリット、デメリットをできるだけわかりやすい形で情報を発信していただく。国民のための民法ということであれば、国民自身が、今、改正で何が問題になっているかというのがわかる形で、今でも大変だと思いますけれども、情報を整理して出していただくよう是非お願いしたいことでございます。
2点目に、消費者契約法、その下には業法としての特定商取引法のような法律があって、民法というのは、言ってみれば一番抽象度の高いところでの受け皿になっておりますので、消費者契約法で受けきれなかった問題については、民法で受けとめていただく必要があるということでございます。民法における権利主体である「人」というのは、まさにモデルは自然人でして、消費者というのは、その自然人が社会生活を行っているほとんどの場面です。その意味で、民法の中に消費者の利益を守る考え方を基本に据えていただく必要があって、消費者契約法でも特則は、もちろん、用意すべきはするということにするにしても、民法と消費者契約法はできるだけ親和的な発想のもとで営まれる必要があるのではないかと思います。今後の立法作業の中で、民法レベルでも消費者権益に対するしっかりとした配慮を徹底していただきたい。
今回の改正で民法典が事業者法化してしまうのではないかとか、グローバルスタンダードに合わせればという話になると、生きた一般市民のやる契約とはどうしてもかけ離れてしまう可能性がございます。民法でそこを手当することが難しいのであれば、消費者契約法で留保することもやっていかないといけません。その意味でも、民法での作業と消費者契約法に関する作業と密接にすり合わせながら、これはどちらで受ける、どちらがこの分担をやっていくというようなことが協力してできるように、連携関係を是非持っていただきたいというのが第2点であります。
3点目は、御承知のように消費者教育推進法という法律ができ上がりました。消費者教育の中の一つの大きな課題が法教育でございまして、消費者がどういう権利と責務を持っているのかということを、しっかりと小さいころから身につけてもらう必要があるということがございます。わかりやすさと厳密さというのは二律背反するところがあって大変ですけれども、消費者が読んだときに、そんなに苦労なくその趣旨がわかるような表現といいますか、書き方についても是非いろいろと工夫をお願いできればということを感じております。
今後、また審議が進んでいって、消費者との関係で論点が出てまいりましたら、消費者委員会にも情報をいただいて、この場で議論できれば大変ありがたいと思います。消費者委員会で、現在、消費者契約法についての論点の洗い出し作業をしておりますので、その点に関してもいろいろと御協力をいただければありがたいと思います。きょうは本当にありがとうございました。

○法務省筒井大臣官房参事官 ありがとうございました。

≪3.消費者安全専門調査会の報告について≫

○河上委員長 続きまして、「消費者安全専門調査会の報告について」に移りたいと思います。
本日は、消費者委員会のもとに設置しております「消費者安全専門調査会」の松岡座長にお越しいただいております。お忙しいところをまことにありがとうございます。
消費者安全専門調査会においては、平成24年4月から、消費者事故の未然防止のためのリコール等注意喚起情報の周知徹底に係る方策について御審議をいただき、去る1月11日の第21回専門調査会において最終の議論が行われ、その後、報告書が取りまとめられました。
本日は、報告書取りまとめの労をとっていただきました松岡座長から、同報告書について御説明をいただきまして、その後に意見交換を行いたいと思います。
それでは、松岡座長、お願いいたします。

○松岡消費者安全専門調査会座長 松岡でございます。よろしくお願いいたします。
消費者安全専門調査会につきましては、委員長からの御紹介のとおり、昨年4月より11回にわたって会合を重ねまして、このたび、報告書を取りまとめたところでございます。取りまとめに当たっての考え方をここで簡単に御説明いたします。
この専門調査会では、初めに消費者委員会から、調査審議のテーマとしまして「消費者事故の未然防止のための方策について」ということが提示されました。世の中には安全にかかわる注意喚起の情報が数多く出されていますが、それにもかかわらず、引き続きいろいろな事故が発生しております。どうも安全にかかわる情報が行き届いていないのではないか、どうすれば事故の防止に結びつくような情報の発信ができるのかという疑問が出てまいります。こういった疑問に基づきまして、具体的には、製品のリコール情報や安全にかかわる注意喚起がきちんと消費者に届く方策について、有識者の委員の方々と調査審議を行ってきました。
審議においては、消費者アンケートを実施した結果、危険のある製品回収情報を入手できていない消費者が増加している現状を確認し、また、行政機関以外にリコールに取り組んでおられる製造事業者の実際の組織についてのヒアリングも行いました。この結果、事業者の方々は大変苦労しながら、その対策となる消費者に情報を届けている実情であることがわかりました。さらに、実際に情報が届いていても行動しない消費者もいるという報告もありました。その結果、委員全員が真剣に討議を重ね、方策をまとめたものでございます。
また最後に、残された課題としまして、製品や食品など多種多様なリコールの全体について、リコールへの自主的な取組みのためのガイドラインや、国内・国際の規格の策定、法令運用の改善などによるリコールの効果を上げる方法、さらに、事業者、行政それぞれの責務を定めた包括的な法整備にかかわる問題についても提案がなされましたが、今回はそこまで詰める時間的な余裕がありませんでしたので、これは消費者委員会において、今後、引き続き検討をお願いしたいと思っております。
消費者委員会としてこの報告書を受けまして、消費者庁のほか関係各省にも働きかけていただき、消費者被害の予防、拡大防止につながるよう御尽力をいただきたいと考えております。
報告書と具体的な方策につきましては、事務局から説明をお願いいたします。

○原事務局長 座長、どうもありがとうございました。
資料2-1資料2-2を準備しております。これを使いまして、10分程度で説明させていただきたいと思います。
まず、資料2-2をごらんになってください。これが報告書の本体ですが、あけていただくと目次となっています。目次の1、「本報告書における主な提言事項について」、これは後ほど説明させていただきます。2が「問題意識」、3が「現状について」、4が「専門調査会における検討」、5が「事業者、報道関係者、消費者における課題」、6が「行政機関への提言」、7が「今後の課題」ということで、6と7を中心に説明をしていきたいと思っております。
資料2-1に戻っていただいて、概要を使いまして説明したいと思います。2ページですけれども、昨年4月から11回にわたり専門調査会で検討いたしました。大きなテーマとしては「消費者事故の未然防止のための方策についての各種検討」ですけれども、その下に書いておりますように、特に「製品リコール案件等の注意喚起情報の徹底策について」ということでの検討を進めてまいりました。これについては、第1次消費者委員会の消費者安全専門調査会の報告書でも同様の指摘がされたところでありまして、そこについて深掘りをして審議をしたということになります。
3ページに、主な提言事項ということで書いていますけれども、趣旨は今、お話したことになります。後ほど説明させていただきます。今後の課題については、主な提言事項をお話しした後、また戻ってこのページについては御説明したいと思います。
それでは、4ページをあけていただきたいのですが、これは問題意識の部分です。平成19年度から平成23年度まで5年間並べておりますが、事故件数全体は減少傾向にはなっておらず、リコール未対策品による重大製品事故が年間100件発生していて、減少傾向にはなっておらず、大変多いことがおわかりになると思います。
5ページを見ていただきたいのですが、製品回収、注意喚起にかかる情報周知についての調査結果ということで、これは昨年の10月に事務局で調査をしたものです。「過去5年以内に、御自身または御家庭で回収の対象になったことがありますか」というと、ある方が1割いらっしゃいました。その方々はどのようなことでその情報を知りましたかというところで、新聞の社告、メーカーからのダイレクトメール、直接の連絡が多いわけですけれども、販売店からの連絡も合計17%ということで、販売店からの連絡で知っていらっしゃる方が多いということがわかりました。
6ページですが、情報周知のためにはよく新聞社告が使われているし、それで認識する方も多いわけですけれども、全体的には新聞を読む方が少なくなってきている。特に若い方が余り読まなくなってきているのではないかということは指摘されるところですが、右側を見ていただくと、危険のある製品回収情報について必要な情報を入手できているかという質問に対し、「出来ていると思う」「どちらかというと出来ていると思う」と回答したものは、平成18年の66.1%から平成24年は43.5%ということで、やはり確実に注意情報が手元に届きにくくなっていることが認識されているのではないかと思います。
7ページは、製品回収情報について、普段目にするものは、社告が多かったわけですけれども、メーカーからの連絡(15.0%)、販売店からの連絡も7.4%とあります。どのような手段や媒体で入手できるとよいと思いますかという回答には、メーカーからの連絡が45.7%、販売店からの連絡は32.0%と、直接知らせてほしいという方々が大幅に増加してきているのではないかと思われました。
8ページは、専門調査会におけるヒアリングの状況です。経済産業省、消費者庁、厚生労働省、製造事業者としてはブリヂストンサイクル、地方自治体として厚木市、長崎県大村市、販売事業者としてビックカメラ、報道関係者として産経新聞社ということで、いろいろな主体にヒアリングをしました。ここでいろいろな検討したのですが、それを「警告を認知したかどうか」「リスクを理解したかどうか」「リスク回避の行動をとったかどうか」ということで、認知と理解と行動という3段階に分類して、それぞれの主体がどういうことができるかということで専門調査会の委員の方の議論を整理していきました。その結果、特に行政にお願いをしたいということで、9ページ以降に、整理をしております。
まず1番目が、「各省庁を通じての情報周知」ということで、「現状」の2つ目のマルに書いてありますけれども、消費者安全法により事故情報を通知するルートがありますが、現在は情報収集にしか使われていません。これを、対応策のほうに書きましたけれども、双方向の流れとして活用して、このルートで情報を発信していってはどうかということ。2つ目のマルでは、関係省庁ヒアリングを行いまして、母子手帳を使ったりといういろいろな工夫もありまして、消費者の属性に応じてきめ細かく提供していってはどうかということを提言しております。
10ページは、「地方自治体を通じての情報周知」ということで、地方自治体によっては、製品リコールをどこが情報発信をするのかということが明確になっておりません。ですから、対応策のところで、消費者安全法第10条において消費生活センターの設置を規定しているわけですから、安全にかかわる情報伝達についても、消費生活センターを拠点として位置づけを図って伝達をしていく必要があるのではないかと提言いたしました。
11ページは、マル3として「事業者等を通じての情報周知」です。先ほどのアンケートにもありましたように、販売事業者がかなり多くの顧客情報を持っているという現状もありますので、対応策に書きましたように、販売事業者に対し、消費者への情報通知をより強く求めていくことが極めて重要ではないか。リコール対象製品を購入した消費者へ情報を提供する義務の具体的かつ効果的な実施方法について検討を行っていただきたい、といたしました。
12ページですが、「リコール情報サイトの充実による総合窓口化の推進」です。消費者庁にリコール情報サイトが、昨年4月、開設されていますけれども、消費者委員会の先ほどの調査結果によると、こういった行政機関の情報提供サイトを知らないと回答したものが83.4%です。まだまだ認知度が全く不足しているという状況です。対応策にも書きましたように、消費者庁のリコール情報サイトの充実、継続的に周知を行う。その際は消費者にわかりやすい形での情報提供をお願いしたい、ということを提言しております。
最後、5番目ですけれども、「製品安全に係る消費者教育の充実」を13ページに挙げております。先ほど、認知と理解と回避というふうにいたしましたけれども、認知していてもリスク回避をしていない消費者もいるということです。これについては、「現状」の一番下に書きましたように、消費者教育推進法が昨年8月に成立しています。消費者教育推進法の中で製品安全にかかわる教育・啓発も是非充実を図っていっていただきたい、と提言しております。
3ページにもどっていただきたいのですが、一番下に今後の課題を掲げております。先ほど申し上げた提言については、これらの諸方策の具体化に取り組むことを要望しております。「そのほか」と書いておりますが、後半3回ぐらい、リコール促進法、リコール基本法、こういった法律の提案が調査会の中でなされました。ただ、時間も十分とれなかったこともありまして、今後の課題として、「リコールへの自主的な取組みのためのガイドラインや国内・国際の規格の策定、法令運用の改善など、リコールの効果を上げる方法について検討し、さらに事業者、行政のそれぞれの責務を定めた包括的な法整備に係る課題についても検討されることを要望する」といたしました。
一応こちらが報告書の全体ということで、参考資料をつけた形で報告書としての体裁は整えたいと思っております。
事務局からは以上です。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
この委員会に関しては、消費者委員会の親委員会から、小幡委員、夏目委員、村井委員がそれぞれ担当委員として調査審議に参画してくださっております。小幡委員、村井委員、何か補足的に御発言があればお願いします。

○小幡委員 本当に松岡座長をはじめ、たくさんの委員の皆様方、非常に熱心に御議論をいただきまして、ありがとうございました。後半のほうで、しっかりしたリコール基本法やリコール促進法というのをつくるべきではないかという委員の方々が大変多くいらっしゃって、そういうふうに進むとよいかなと私も思ったりはしていたのですけれども、時間的なこともありますし、リコール基本法ということでどこまで含められ、どの程度包括できるものになるかという辺りがなかなか難しいところでした。そこが今後の課題となってしまったというところが、恐らくこの調査会のメンバーの方々も若干心残りであったのではないかと思っております。今後も、消費者委員会のほうで引き取って進めていく、あるいは、また調査会にお願いするかもしれませんが、いずれにせよ進めていきたいと思っております。

○河上委員長 村井委員。

○村井委員 担当委員として拝命を受けていたのですが、時間的な問題で、一度も調査会に出席できずにまことに申しわけございませんでした。
私も食品事業者のトップとして、私どもの製品においても、いかに今の消費者の方にリコール等の情報をお伝えすることが大変なのか、日々実感しております。高額な費用をかけて社告を出しても伝わるとは限らない場面も承知しております。ただ、幸い私どもの場合は冷凍食品であり、買回り品ですので、販売店にご協力いただいて店頭での告知をすることでかなりの部分はカバーできております。しかしながら、多種多様な製品群の場合、日々お店に消費者がお出でになる訳でもありませんので、どうしたら伝えられるのか、大変難しい場面が多いと思います。
消費財には様々なものがあり、リコールの場合、既に法的にも裏打ちされているものとそうでないものがございます。現状、食品分野では事業者間格差が大きく、事故が起きたときに大手事業者であれば対応できても、中小の事業者の場合は、本当にリコールの対応ができるのか、様々な問題を抱えていると思います。いずれにしましても、今回、いただいた御提言の部分は可及的速やかに実行に移していくのが大事だと思いますし、今後、もう一段何をしていけばいいのかという点につきましては、大変重たい課題として受けとめさせていただいております。

○原事務局長 済みません。一つ、言い落としたことがありまして、補足させていただきたいと思います。
今回、消費生活用製品が中心の議論になっておりまして、食品はほとんど深掘りをした議論ができていません。事業者間格差の話が出ましたけれども、業態間の格差もあります。食品は、単純な誤記と言うのでしょうか、誤った記載、アレルギー物質が混入してしまったとか、食品衛生法違反とか、いろいろなタイプがあります。やはり食品については再度、深掘りをしていく必要があるということは委員から意見として出ておりましたので、補足させていただきます。

○河上委員長 松岡座長、何かございますか。

○松岡消費者安全専門調査会座長 村井委員の御意見、どうもありがとうございました。是非、消費者委員会としてもいろいろと進めていっていただければと思います。
ちょっと補足してつけ加えますと、事業者でも対応に格差がある。非常によくやっている事業者とそうでないところがある。それと、問題なのが輸入業者です。責任の所在が明確でなくなってしまいやすい業界だということです。もう一つ強調したいのは、販売事業者です。販売事業者の方は、現状では、リコールを自分たちの責務として余り深くとらえていないのではないか。社会的にも責務があるという認識を持っていただける方向で進めていっていただければと思っております。
以上でございます。

○河上委員長 ほかに、委員の方々から御質問、御意見は。
山口委員長代理、どうぞ。

○山口委員長代理 私も何回か傍聴させていただきましたが、大変熱心に御議論いただいておりまして、敬意を表します。3点、質問させていただきたいと思います。
まず、資料2-2の15ページに、医療・介護ベッドに関する注意喚起がズラッと並べられております。確かに介護ベッドに伴うお年寄りの死亡というのは繰り返し起こっておりまして、関係省庁でもそれなりの啓発はしているけれども、必ずしもこれが知られていないというショックなデータが出ております。消費者庁としても、どういうふうにしたらこういう介護ベッドが、使い方によっては危ないということをユーザーに知ってもらえるのか。その辺で頭を悩ませていると思いますが、具体的にどういうことをしたら効果的になるというふうにお考えなのか。それが一つです。
もう一つは、22ページに、事業者、報道関係者における課題ということで整理していただいていますが、今、松岡座長もおっしゃったように、輸入事業者についても問題点があるかと思います。特に販売事業者については、ビックカメラのヒアリングをなさいましたけれども、きょうびは大手量販店は消費者の情報をポイントカードその他で細かく掌握しております。もし危険な商品があった場合、製造メーカー、事業者団体よりもむしろ販売事業者が顧客のデータを持っている場合が多い。
そうなると、消費生活用製品安全法の具体的な条文がちょっと確認できないのですが、確か製造事業者は消費者に対して通知などの義務があるかと思いますが、販売事業者については義務づけられていないと思います。おばあちゃんが一人で細々とやっている田舎の小売店を考えますと、そういうところに義務づけと言ってもなかなか難しいところがあって義務規程が法律化されなかったのかもしれませんが、先ほど申し上げましたような販売事業者の実情を考えれば、わかった範囲では、事故情報について買った人に通知するとか、少なくとも店頭には大きな注意喚起の表示を出すとか、その辺、法律改正の提案がなされてしかるべきだったのではないかと思います。2ページの提言事項には、法律改正をしたらどうかということまでは書かれておりませんが、その辺についてはどういう議論がなされたのかをお話しいただければと思います。
最後に、これは原事務局長もお話しになりましたが、リコール推進法なりリコール基本法のような法律をつくってはどうか、という議論が複数の委員からなされておりましたが、結局、何が問題で今回の提言のところまで至らず、今後の課題に残ったのか。この辺も差し支えのない範囲で教えていただければと思います。

○松岡消費者安全専門調査会座長 まず、介護ベッドのお話ですが、これは、具体的にどうしたらいいかという議論は委員の中でもたくさん出ました。報告書には具体的に介護ベッドについては書いていないのですが、類似のほかのものについては、委員から出た意見というのが、例えば24ページ以降、「行政機関への提言」という四角く囲った提言の下に、「審議の過程における具体的な指摘事項」ということで、かなり具体的な内容を各項目について書いてありますので、これは非常に参考になるかと思います。
介護べッドにつきましては、実はリスクに関する情報が少し具体性がないのです。つまり、余りにも生々しい事故の状態をお知らせするのを控えたいという意味合いがある。これはすべてのリコール情報についてそうですが、悲惨な状態を表示するのが避けられる傾向にある。漫画的な情報とか、オブラートに包んだような情報で、実際の消費者がそれを見たときにリスクをよく理解しにくいということがあって、大したことはないのかなと思ってしまうということがかなり問題だということで、この辺はだいぶ議論に出ました。その辺の書き方がなかなか難しいので、報告書でも詳しく書けていないのですが、そのようなことに関することは具体的な指摘事項の中で幾つか書いてあります。
次に、22ページの販売事業者の件です。確かに現在は販売事業者には義務化がされていないということですが、一つの考えでは、販売したということで要するに民法上の契約の義務があるので、何か不具合があったときにはちゃんとお知らせしなくてはいけないということで、当然、リコールの当事者になっていただきたいという意見が多く出てきました。ただ、現状の法律を変えるとなるとなかなか難しいのではないかという意見もあって、法律化をしろという意見までは到達できなかった。この辺は、法律的な面というか、現状に対する改革をどうしたらいいかということがなかなか難しいということです。
それから、委員の中には、法律だけをつくっても実効性がない。それ以前にいろいろとやることもあるから、法整備の問題プラス、ガイドラインとか、規格とか、外国の対応とか、いろいろ調べて、全般を見て進めていくのが順当なのではないかという意見もあったということです。ただ、法整備が非常に大事な問題であるので、是非、検討していただきたいという意見も多くありました。
事務局長、補足でお願いします。

○原事務局長 製造事業者、販売事業者の義務ですけれども、製造事業者については、消費生活用製品安全法の義務づけの条文がありますが、販売事業者の義務づけとしたときに、製造事業者の義務と販売事業者の義務をどういうふうに整理したものかという話と、それから、経済産業省でも非常に問題意識を持っておられて、検討されているというか、着手されているというようなお話も聞きました。もちろん、大きな検討課題だと思っておりますけれども、義務づけの内容についてどう詰めていくかというところまで、議論も詰めきれなかったというところもございます。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。
細川委員、どうぞ。

○細川委員 リコールというのは非常に悩ましい問題だと思っていて、責任者が誰かというところで責任追及するだけでは、解決しない問題というのはいくらもあります。いくら事業者が情報提供をしても、消費者がそれに対して認識しなければ何もならないわけだし、現実にテレビでリコールを訴えてもなかなか回収が進まない。これは、まさに社会全体が、よりよい社会というか、より安全な社会実現のために、それぞれがどう貢献するかという国民的な盛り上がりがあって、それぞれが役割分担を考えてやれることをやっていかないと、なかなかこれは進まないような感じがします。
例えばアメリカのCtoC、ネットオークションが日本でも広まってきましたけれども、これが広く行われることになって、せっかくガレージに寝ていたリコール商品がまた市場に出回ってしまうという問題が起きたわけです。使わなければ問題なかったのに、それがまた誰かに売られて使われる。CPSC(米国消費者製品安全委員会)はホームページでいろいろな情報を流している。日本も消費者庁でいろいろな情報を提供しています。ですが、わざわざ消費者庁やCPSCにアクセスして確認する人はなかなかいないわけです。
そこで、私はちょっと記事を見たのは、アメリカでは、ネットオークションをやっているサイトにCPSCがリンクを張って、今、あなたが取引しようとしている物がリコール品でないかどうか調べませんかという、そういうバーナーを入れたというのです。そういうのが必要ですね。本当に必要なときに、そういう情報の窓口があって初めて人間は活用するわけで、そういう仕組みというのは、例えばネットオークションの会社とか、あるいは、インターネットで物を買ったり探したり、中古品を買うという人も多いわけでしょうから、ヤフーとかグーグルのようなところの協力も必要です。
あるいは、報道機関ももう少し考えてほしいのは、今、社告扱いでリコール情報を入れようとすると、社会面の下辺りの一番注目度の高いところに入れると、巨額な広告料を取られるわけです。社会の公器をうたっているのだから、もう少し安くというか、協力してもいいと思いますし、そういうことを考えると、リコールを取り巻くステークホルダーというのはいろいろな人たちがいると思うので、そういうところの協力をどう得るかという仕組みづくりが必要ではないかと感じました。

○松岡消費者安全専門調査会座長 御指摘、どうもありがとうございました。調査会の後半で、ネットを使った個人の取引の話も出てきています。その場合、リコールをどうしたらいいかということが少し話題になりましたけれども、時間の都合で詰めるところまでいきませんでした。
社告の費用の件もヒアリングしまして、非常に高額がかかる、おかしいではないかということで、それも議論になりました。ただ、その辺のことをどういうふうに対策したらいいかというのはなかなか難しい問題で、まとめるまでにいかなかったことは残念に思っています。

○河上委員長 川戸委員、どうぞ。

○川戸委員 今、読ませていただきまして、本当に調査会、御苦労さまでございました。細川委員の御意見もあったように、また、山口委員長代理からの御意見もあったように、私たちは、この製品は悪いといったときにはやはり販売店というのが一番身近だと思います。この調査であったように、新聞、メディア、そういうものは低くなっているということもこれありで、やはり販売店のところにきちんと責任を持たせる。先ほど、その境目が難しいとおっしゃいましたけれども、少なくとも伝達という部分の責任は負わせるような法改正をしたほうが、新しく法律をつくるよりもこちらのほうが私は先のような気がいたしました。

○河上委員長 よろしいですか。御意見ということで。
ほかにはよろしいですか。
私も何度か拝聴しましたが、大変活発な委員会で、松岡座長には御苦労もあったと思いますけれども、充実した報告書をまとめていただき、本当にありがとうございました。製品の安全に係る課題というのは、古くから消費者問題における大変重要な位置を占めておりまして、第1次消費者委員会におきましても、消費者安全専門調査会の報告書に基づいて、消費者庁をはじめとする関係各省に対する建議を行ってまいりました。第1次では、主に「事故情報の収集・分析とその活用について」ということで、いわば行政にとっての事故情報の入口に当たるところに焦点を当てて建議が行われました。
今回は、出口に当たるところとして、リコール情報や注意喚起の情報をきちんと行き渡らせて、いかに消費者へ被害防止のための行動をとってもらうかという具体的な方策を御提案いただいたと認識しております。特に、事故情報の収集のルートを逆に事故情報を伝達するためのルートとして活用するとか、きょうは具体的な話は出ませんでしたけれども、例えば母子手帳にいろいろなことを書くとかいうことで、対象に応じてツールを工夫してはどうかという、読んでいても具体的に参考となる有益な情報がたくさん入っていると思いました。
今後の課題として、消費者委員会においてさらに検討していくべきポイントについても御提示いただいております。先ほど、小幡委員や山口委員長代理からも発言がありましたけれども、リコール促進法やリコール基本法のように、本格的なリコールのための基本枠組みというか、そういうものについて立法的な整備も必要ではないかということで、検討を要請していただいたと認識しております。委員会としても、これら数々の点について、引き続きしっかりと検討していきたいと考えております。
特に、今回は食品と自動車、あとは医薬品ですか。

○原事務局長 医薬部外品とかです。

○河上委員長 それらについては、一応、検討対象から外れております。これは、問題がたくさんあるということでしたから、やむを得ないと思いますけれども、まだまだ残された課題はたくさんあるということで、引き続き消費者委員会としてもしっかりと検討させていただきたいと思います。
なお、本日の御報告を受けまして、今後、消費者委員会としての意見表明を、建議のような形になろうかと思いますけれども、すみやかにとりまとめたいと考えております。機会を改めて、後日、委員会において本件について議題として取り上げたいと思います。
松岡座長におかれましては、お忙しい中、審議に御協力いただきまして、まことにありがとうございました。

○松岡消費者安全専門調査会座長 どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。

≪4.健康食品について≫

○河上委員長 続きまして、「健康食品について」です。
健康食品の表示の在り方については、特に昨年の秋以降、当委員会に有識者をお招きし、審議を重ねてきたところですけれども、今般、「健康食品の表示等の在り方に関する建議(案)」がまとまりました。お手元に、資料3ということで建議案を配付しております。
それでは、担当委員としてこのテーマの調査審議に御尽力くださいました田島委員から、説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○田島委員 当委員会では、平成22年8月に消費者庁から、健康食品の表示の効果的な規制等について検討依頼を受けて以降、有識者のヒアリング、昨年には利用者アンケートを実施しました。その結果を分析した考え方を取りまとめ、公表しております。
その後、委員長からも御紹介がありましたとおり、再び有識者ヒアリング等を重ね、その結果、健康食品の表示・広告の適正化に向けた取組みの強化、健康食品の安全性に関する取組みの推進、健康食品の機能性の表示に関する検討、健康食品の特性等に関する消費者理解の促進の4点について、建議をしてはどうかという結論に達しました。
お手元の資料3-1の3ページ目をおめくりください。
まず、建議事項1、「健康食品の表示・広告の適正化に向けた取組みの強化」でございます。これについては、現行法における取組みと法規制の在り方の検討の2つの観点から建議をしてはどうかと思います。
まず、現行法における取組みですが、健康増進法に基づく勧告・命令の実績がこれまで一件もありません。このため、具体的には消費者庁に対して、次の点について取組みを強化するように求めたいと思います。
第1点として、健康食品の虚偽・誇大な表示・広告のガイドライン等を平易で明快なものに大幅に改善すること。その際、いわゆる健康食品の表示・広告の実態を分析し、違反のおそれのある具体的な表現を多数収載することが必要です。特に、間接的に健康保持増進効果を標榜するものを明確化して、また、監視機能に有益な具体的事例を豊富に取りまとめた事例集を作成することも必要だと考えております。
第2点として、市民力を活用し、消費者からの申出や、消費者がモニタリング等を行う仕組みを充実することも必要だと思います。さらに、これは消費者庁及び厚生労働省の両省が対象になりますが、健康増進法、景品表示法、薬事法等の担当部局が国・地方レベルで連携し、厳格に法執行を行うことも求めていきたいと思います。
次に、法制度の在り方についてですが、消費者庁に対して、健康増進法及び景品表示法について次の3点を建議してはどうかと思います。
第1点、まず健康増進法ですが、景品表示法における差止請求権の利用実態を検証した上で、同法への差止請求権導入の要否を検討すること。
第2点、次に景品表示法ですが、適格消費者団体による差止請求が低調であることの指摘について、その原因を検証し、所要の措置を実施すること。
第3点、また、景品表示法に不実証広告規制や、措置命令の権限の都道府県への付与を検討すること。
これらを求めたいと思います。
続きまして、建議事項第2でございます。10ページになります。「健康食品の安全性に関する取組みの推進」ですが、健康被害情報の収集・解析、健康食品の安全な利用のための注意喚起、健康食品の製造における安全性確保の3つの観点から、建議をしてはどうかと思います。
まず、健康食品による健康被害情報の収集・解析についてですが、具体的には次の2点について、措置を講ずるよう建議してはどうかと思います。
第1点、まず、厚生労働省に対して、類似の被害情報を統一的な基準で効率的に収集・解析する手法の研究を行うこと。
第2点、その上で厚生労働省及び消費者庁に対して、長期研究の成果等を踏まえ、流通規制、表示規制を含む所要の措置を実施すること。
これらを求めたいと思います。
健康食品の安全な利用のための注意喚起に関しては、医療機関の協力を仰ぐことが非常に有効です。このため、厚生労働省に対して次の2点を建議してはどうか。
第1点、医師、薬剤師等が、患者より健康食品の利用状況を聴取し、その適切な利用について、患者への注意喚起を行うことなどの取組みを行うよう、関係機関へ協力要請を行うこと。
第2点、医師、薬剤師等が診療、調剤等を行うに当たり、健康食品に関する問題に適切に対処できるよう、医師、薬剤師等に対して、健康食品に関する情報提供を行うこと。
また、健康食品の製造における安全性確保のための措置として、厚生労働省に対して、適正製造規範、原材料の安全性にかかわる第三者認証制度の整備・普及促進等を通じて、事業者によるこれらのガイドラインを活用し、また、消費者に認証制度について啓発することを求めたいと思います。
建議事項3、14ページでございます。「健康食品の機能性の表示に関する検討」ですが、これについては消費者自らが食品の特性を十分理解し、自らの判断に基づき食品の選択が行えるよう正しい情報提供を行うことの観点から、消費者庁に対して次の2点について対応を建議してはどうかと思います。
第1点、栄養機能食品制度において、海外の事例、実証研究等を参考としつつ、新たに追加すべき栄養成分の有無を検討すること。
第2点、特定保健用食品制度において、有効性に関する審査基準の作成、及び有効性の科学的根拠に関する一定の審査内容の開示について検討を進めること。
これらを求めたいと思います。
最後に、建議事項第4、17ページになります。「健康食品の特性等に関する消費者理解の促進」でございますが、消費者庁及び厚生労働省に対して、保健機能食品を含む健康食品の特性、これらの適切な利用方法、機能性表示の意味等について、消費者に対し専門的な啓発を行うことを求めてはどうかと思います。
以上、これまでの委員会での議論を踏まえこのように建議を取りまとめましたので、私からの説明は以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
それでは、御意見のある方は発言をお願いいたします。いかがでしょうか
山口委員長代理、どうぞ。

○山口委員長代理 健康食品については第1次からのテーマでありまして、特に昨年の夏以降、本当に頭を痛めてまいりました。正直言って、私自身はもっと踏み込んだ建議ができるのではないかということで、消費者団体の方々と話し合ったこともありますけれども、残念ながら、現段階で責任をもって建議に盛り込めるのはこの程度でございます、ごめんなさいと言うしかないという感じです。
幾つか申し上げますと、資料3-1の3ページ、ガイドラインと執行力の強化、ここが今回の建議の肝でありまして、現在、何に効くのかよくわからないようないわゆる健康食品が、あたかもこれさえ飲んでいれば四国のお遍路ができますとか、階段を軽々とのぼり降りできますというような宣伝がまかり通っているわけですけれども、そんな広告の状況を放置していいのかというところで随分議論をいたしました。
例えば化粧品については、業界のほうで、厳しい、非常に細かい広告のガイドラインをつくっております。メディアの関係者に聞くと、化粧品についてはどこまで表現が許されるか、どこまではダメかということがはっきりしているものだから、メーカーからこういう広告宣伝をしたいという希望が出ても、化粧品のガイドラインはこうなっているから、この広告はできませんと断りやすいというわけです。
そういうものにならって、もっとガイドラインを具体化できないのかということで、そういう点も盛り込んだらどうかということもあったのですが、実は化粧品については医薬部外品ということで、薬事法の法規制のもとでそういう細かいガイドラインがあの業界できちっとできている。ところが、健康食品については、外延もはっきりしないし、何よりも業者団体の組織率が非常に低い。したがって、業者団体だけが自主基準をつくっても、アウトサイダー、業界団体に入っていないところがどんどんオーバートークの広告を出してしまうと、悪貨が良貨を駆逐することになりかねないという状態もある。ここは、それこそ消費者庁に頑張っていただいて、使いやすい、切れやすい刀、執行のしやすい刀を研ぎ澄ましていただいて、そして、執行体制も整えてやっていただくしかないというところであります。
今週の日曜日に大変悲しい亡くなり方をした神宮司審議官とも、個人的にさしでお話しましたが、執行の責任者である審議官として、消費者庁の責任者としては「やります」と。健康増進法に基づく勧告・命令はやらなければいけないと思うし、消費者委員会のほうでやれという形で建議をされれば、消費者庁もそれを重く受けとめてやりますということをおっしゃっていました。消費者委員会としては、消費者庁、特に食品表示課はもっと力を込めて執行を頑張ってほしい。少なくとも1件、2件、3件と執行の具体例を出して、これを守らないとえらいことになるという意識を、健康食品業界の人たちに持ってもらわなければ話は始まらない。そんなところで、この3ページの建議にとどまったということがあります。非常に不満は残るところでありますが、しょうがないのかなと。
8ページでも、健康増進法に基づく差止について、消費者団体の立証責任を軽減するようなことができないかとか、健康増進法にも景品表示法類似の適格消費者団体による差止制度をつくってはどうかということを、具体的に建議として盛り込んだらどうかということで議論しました。話せば長い、理論的ないろいろな問題点がございまして、ここでは役人言葉で、検討することとか、そういうオブラートに包んだ表現になっておりますが、ここについては、今後、さらに消費者庁の検討を待つということでしょうがないのではないかというところがございます。
何よりもこれは深刻だと思ったのは、14ページの建議事項のところでございます。現段階でアメリカや韓国がやっているような機能性表示をできるのか、できないのか。できないとしたらなぜなのかというところを、消費者庁で整理してまとめてはどうですかということを申し上げてきたわけです。消費者庁のほうからは、そういうことは消費者委員会が検討してくださいということで実は返されたわけです。では、機能性表示をした場合の消費者行動がどういう影響をもたらすのかという点について、どこがどういうふうに検討したらいいのかさえも、はっきり言って政府部内では固まっていないという実情であります。私個人としては、仮に韓国やアメリカのような機能性表示をした場合、消費行動にどういう影響をもたらすのか、そのことぐらい消費者庁で検討してはどうですかということをかなり申し上げたのですが、はね返されまして、結局、この点建議に書けなかったという実情がございます。
最後に、この委員会の公的な議論の場で、届出制の実現についてかなり突っ込んだ議論をいたしましたし、建議の中にそれを盛り込めないかということで議論をいたしましたが、資料3-2、分厚い報告書の57ページ~59ページにかけて、検討経過をかなり率直に盛り込んでおります。
59ページの下から2つ目のマルに結論めいたところがあるのですが、「届出制の導入は、健康食品の安全性の確保や消費者の適切な食品選択において効果的なシステムとなる可能性があるが」、この辺はまた議論があるところで、私は効果的なシステムだと思いますが、仮に建議をするとすれば、次にある3点をどうしてもクリアーしなければ、消費者委員会として責任を持った建議には織り込めないだろうということであります。
一つは、届出制を建議するとした場合、どういう範囲の健康食品を届出制の義務づけの対象にするのか。届出を受理した組織は、それをどういう形で消費者に公表・開示するのか。3番目には、届出をどこの組織がどういうふうに受理して、その届出内容が真実かどうかを審査する必要があるのかどうか。仮に審査するとしたならば、どこがどういう形で審査することになるのか。これは、韓国でもアメリカでも、あるいは日本の通販業界などでもかなり難しい議論をしておりますし、化粧品についても同じような問題がある。やはりこの3点についての答えが出しにくいというところもございまして、この辺は今後の課題であり、皆さんとも継続して検討していただいて、それなりの結論を得られてはどうかと思っております。
そんなこんなで、私個人としては非常に不満が残る建議ではありますけれども、理論的にぎりぎりに詰めて、各方面からさまざまな意見を聞いてまとめてみたらこうなってしまいました、済みませんというのが、私の個人的な担当した委員としての意見でございます。

○河上委員長 ほかにも何か、御意見はございますでしょうか。
小幡委員、どうぞ。

○小幡委員 今、山口委員長代理からございましたように、建議としてもっと突っ込むとすると、最後にお話になった届出制を入れるかということだったかと思います。健康食品ということで、サプリメント状、いかにも薬のような形状になっているものを取り上げると、これが何で食品なのかわからないのですが、少なくとも健康食品と言われている。成分を凝縮していますので、健康被害の可能性も、まだ出ていないようではございますが、医薬品と混ぜて使うなどということであるかもしれないなどを考えると危険性もあるので、届出制というのは一つの手法だったかと思います。今、この業界は非常にボリュームがありますので、立法事実といいますか、実際に健康被害が起きているということでもないので、届出制を導入することの影響を考えると、その辺りの難しさもあるかなと思っております。
私は個人的には、行政が審査などはしない形で、消費者が、どういう成分が入っているかということを、情報として明確に知ることができる形での届出制というのがよかったのではないかと思っておりますが、建議ではなかなかそこまでいけなかったということかと思います。
したがって、今後どうなっていくかわかりませんが、現状としてお願いしたいのは、健康食品の市場をより消費者に信頼のあるものにするためには、自主的なルールをきちんとつくっていただくことが何よりだと思います。公的な規制として届出制ということにすぐには行けないようでございますので、是非、自主ルールというところで、できるだけ多くの健康食品の業界が参加する形で信頼のある健康食品の市場をつくっていただければと思っております。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。特によろしゅうございますか。
文案そのものについて、修正を必要とすることがないということでありましたら、このような形で建議を取りまとめるということで、よろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

○河上委員長 では、これで「案」をとることにしたいと思います。
この建議につきましては、皆様の御了解をいただいたということで、宛て先ですけれども、内閣府の特命担当大臣(消費者担当)、厚生労働省宛てに発出することにしたいと思います。
くどくど言うことはないのですけれども、健康食品というのは、消費者にとって今では非常に身近なものになっております。ただ、国民が健康な生活を送るためには、適量でバランスのいい普通の食事をすること、適度に運動して適度に休養することに尽きておりまして、それが基本であります。関係省庁には本建議を着実に履行していただくことによって、消費者が、健康食品の利用によって疾病が予防されるなどといった過大な期待に惑わされることなく、消費者自身がさまざまな食品の特性を理解し、正しい情報に基づいて、適切に健康食品の利用の要否や適否を判断できる環境整備に努めていただきたいと思います。
先ほど、田島委員のお話にありましたように、第1次消費者委員会以降、このテーマの調査審議に取り組んでまいりましたけれども、本日、このような形で建議を取りまとめることができました。消費者庁から、健康食品の機能性表示の在り方に関する審議依頼があったわけですけれども、それに対しては、本建議をもってその回答といたしまして、今後については、消費者庁の研究の進捗状況等を踏まえて、新たに必要が生じた場合には改めて委員会における審議を開始することにしたいと思います。どうもありがとうございました。


○河上委員長 次に、特保についてであります。「健康食品の表示等の在り方に関する建議」の中において、健康食品の表示・広告の適正化に向けた取組みの強化を所管省庁に求めております。これに関連して、特保の宣伝・広告についても、消費者、事業者及び日本健康・栄養食品協会に対して、委員長及び新開発食品調査部会長連名による共同声明を発出することにいたしました。
この点についても、田島委員から説明をお願いいたします。

○田島委員 それでは、お手元の資料4をごらんください。これが、特定保健用食品についての消費者委員会委員長と新開発食品調査部会部会長の連名の声明でございます。
資料4を読ませていただきます。
特定保健用食品(以下「特保」)は医薬品とは異なり、病気を治すことを目的としたものではありません。健康の基本は「ごはんやパンなどの主食、肉類や魚などの主菜、野菜などの副菜を基本にした、バランスのとれた食生活」と「適度の運動」です。特保を摂ることは、健康にプラスの効果が認められるというに過ぎません。「特保さえ摂っていれば」、あるいは、「特保を多量に摂れば」、健康を維持・増進できるという性質のものではありません。
特保の効果は、それぞれの食品に表示されている「許可表示」に示されていますが、例えば、体の脂肪が気になる方に効果がある特保でも、太り気味の方が摂った場合に一定の効果は認められていても、BMIが普通の方が摂った場合は、一般的には有効性が明確に確認されたわけではありません。消費者の皆様は「許可表示」の内容を十分確認した上で、自分の健康状態に合わせて、節度をもって利用することが大切です。
消費者委員会・新開発食品調査部会はこのような認識を持って、特保の申請品の審査に当たっていますが、許可された特保の宣伝・広告の中には、あたかも特保さえ摂っていれば、食事のバランス等とは無関係に効果がある旨を示唆し、あるいは暗示するようなイメージ広告など、審査に当たった者として違和感を覚えるものが見受けられます。
特保を製造・販売される事業者の方々は、消費者が「特保さえ摂っていれば、あるいは、特保を多量に摂れば、健康を維持できる」といった誤解を持つことがないよう、その宣伝・広告に当たって十分な配慮が求められます。
なお、(公益財団法人)日本健康・栄養食品協会においては、「『特定保健用食品』適正広告自主基準」を設けていますが、遵守状況を審査するための機関を設置するなど、その実効性を高めるため、引き続き自主的な努力を払っていただくことを期待します。
以上でございます。

○河上委員長 ありがとうございました。
それでは、このような形での消費者委員会からの声明を出すことについて、御意見のある方は発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
山口委員長代理、どうぞ。

○山口委員長代理 田島委員に3点質問したいのですが、まず、4行目ですが、健康の基本は食生活と適度の運動ですと書いてありますが、「適度の運動と睡眠」ではないですか。この適度の運動のところにかぎ括弧がつけてあるのを、「適度の運動・睡眠です」、あるいは「運動と睡眠です」程度にできないでしょうか。これが一つです。
第2パラグラフの3~4行目ですが、「BMIが普通の方が摂った場合は」と書いてあります。このBMIというのは体重を身長で割った数字ということですけれども、私は自分でやってみたら40を超えるわけです。私はそんなに太っているとは思わないけれども、「一般的には有効性が明確に確認されたわけではない」というと、では、BMIが普通ではない人、つまり、私のように数字は肥満気味だと言われている人については有効性は明確に確認されたのでしょうか。この辺の表現がどうなのか。
それから、最後のパラグラフです。どうも消費者委員会としては、行政には建議ができるけれども、民間の団体には、具体的にああしてほしいこうしてほしいということは希望でしか言えないということで、「期待します」ということになっているようです。これは前から指摘されていますけれども、公益財団法人日本健康・栄養食品協会の作業はいかんせん遅すぎるところがあって、効果的な対策がなかなか実現していない。せめて実効性を高めるために、引き続き自主的な努力を迅速に払っていただく、あるいは「迅速に」をどこかに入れることぐらいはできないのか。消費者委員会として無理ならばそれはしょうがないのですけれども、以上、3点です。

○田島委員 私が答えられる範囲でお答えしたいと思います。
まず第1点、適度な運動と睡眠でございますが、厚生労働省が発表している、健康な食生活、食事摂取基準というのが、睡眠だけではなくて「休養」という表現を使っておりますので、「適度な運動・休養」と入れたほうがより明確だとは私も思います。
それから、BMIですけれども、体重割る身長の2乗なのです。身長で2回割っていただく。そうすると40ということはないと思います。多分、22ぐらいにおさまると思います。25ぐらいまでが適正体重で、25~30はやや肥満、30以上は肥満。特保が、体に脂肪がつきにくい、あるいは体重が維持できるという保健の機能を標榜したときの実験データは、やや肥満(BMI25~30)、これを被験者にしています。ということで、普通の人、BMIが25以下の人は対象に実験を行っていないし、BMIが30以上の人も実験対象にはしていないということが、このような表現になっているかと思います。
最後の、「迅速」というのを入れるか、入れないかというのは、これは私からはちょっと答えられないので、この委員会での御議論に任せたいと思います。

○河上委員長 「迅速に」というのがいいのかどうかわかりませんけれども、いかがですか。何かいい案がありますか。「引き続き」の後に「迅速」というのは、ちょっと変な感じはしますね。

○山口委員長代理 事業者団体の方もおいでになっていますので、気持ちは伝わっていると思いますので。

○原事務局長 実際には日本健康・栄養食品協会では、機関を設置するということで取組みを始めておられると。でも、「引き続き」と「迅速に」の両方入ってしまうのはおかしいので、ちょっとお時間をください。文章を考えます。

○小田審議官 「引き続き」でよろしいですね。

○原事務局長 取り組まれているという状況で。

○小田審議官 いいですよ。

○河上委員長 では、気持ちはそういう気持ちだということで、特に入れないと。
「『許可表示』の内容を十分確認した上で」と書いてあるところは、あるいは説明が必要かもしれませんが、許可表示の中には、例えば、BMIがこういう範囲の人に効きますというような表示をしているということでしょうか。

○田島委員 それは、しておりません。表示には、直接的なBMIが幾つの方で実験データが得られているというようなことは書かれていません。

○河上委員長 許可表示を見てそういうことが理解できるかどうかという辺りが、ちょっと気になったのですが。
審議官、どうぞ。

○小田審議官 BMIが幾つではなくて、「太り気味の方に」という表示になっています。

○河上委員長 それは書いているわけですね。

○小田審議官 それは書いてあります。ですから、まさにここに書いてあるように、太り気味の方には効果はあるけれども、そうでない人も、自分も効果があるというわけではありません、そこはよく気をつけてくださいと。こういう趣旨だと私は理解しております。

○山口委員長代理 太り気味ではない女性まで摂ってしまうわけです、実情は。

○小田審議官 表示には「太り気味の方に」というふうに書いてあるので、そこをよく読んでくださいということです。

○河上委員長 ですから、BMIは自分の状態を確認するときの参考資料というふうに位置づけていただければいい、そういうことですね。
それから、先ほどの「適度の運動」の後ろには、「・休養」を入れるということでよろしいですね。
ほかには、何か御意見はございませんか。

○細川委員 消費者委員会の権限としては、民間の企業、事業者に対する措置命令とか、そういう権限がないのが、ここでは声明という形で、配慮してくださいという表現になっています。最近、特保のインターネットの広告が、非常に行儀が悪いというか、ここにありますように、節度を越えているなというものが多いように思います。例えばアニメーションを使って、健康食品を摂った後と前で、すごく美男子になって、すごくやせてスマートになるかのようなイメージを、中性脂肪を減らすというところで特保を取っただけなのに、そういうイメージ広告で訴えたり、あるいは筋肉隆々の人のイメージをつくったり、認可した行政庁としては多分首を傾げているだろうというようなものがあるわけです。
こういうのは節度をもってやっていただかないと、こういうものがなくならないということになれば、後から消費者庁の御説明もあるでしょうか、景表法等の運用もしっかりやっていただきたいと思いますけれども、それでもこういう問題があるとすれば、我々は、新たな広告規制とか、罰則の強化とか、そういうものも建議しなければならないと思います。事業者の方は、特保の趣旨を踏まえて、それが適切に消費者に伝わり、適切な情報のもとに消費者が賢い選択ができる、そういう市場、そのための表示に努めていただければと思います。

○河上委員長 ほかにはよろしいでしょうか。
私も、委員長をやりながらいろいろなところから話を伺いますけれども、新開発食品調査部会の中で、特保制度の本来の趣旨をもう一度きちんと考えていただく必要があるということで、なぜ特保として許可したのか、本来の制度趣旨に返って考えていただき、そのことを広告の中で十分生かしていただきたいと。委員会の委員が先ほど、「違和感」という言葉を使われましたけれども、特保制度を利用してもらってよかったと思えるような形の広告を、是非、配慮していただくことを事業者の方々にお願いしたいと思います。
それでは、先ほどの「適度の運動・休養」というところを変えまして、ほかの点はこのままの形で、声明を出すことにしたいと思います。
なお、この建議、声明あわせて、委員会終了後、19時ぐらいを目途に消費者庁の記者会見室において、私から記者会見をさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。


○河上委員長 次は、景品表示法及び健康増進法の連携についてであります。同じく「健康食品の表示等の在り方に関する建議」との関係で、消費者庁から景品表示法と健康増進法の執行面における連携について、説明をしたいというお申出がございました。消費者庁におかれましては、お忙しいところを御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
それでは、短い時間で恐縮ですが、5分程度で説明をお願いいたします。

○消費者庁片桐表示対策課長 連携につきまして、消費者庁としてかねてから必要性を認識しておりまして、検討を行ってきたものでございます。今般、連携について、消費者庁として取りまとめいたしましたので、健康食品の建議がなされるという機会に、まず、御説明したいというふうに考えたものでございます。今日は説明の場を設けていただきまして、ありがとうございます。深く感謝する次第でございます。
資料5をごらんいただければと思います。
第1の「連携強化の必要性」ということですけれども、いわゆる健康食品、先ほどもお話がございましたけれども、インターネット等を利用した広告宣伝が活発に行われている。この中には、虚偽・誇大広告、不当表示のおそれのあるものも見受けられるということで、こういったものに対する厳正な法執行が求められているということでございます。虚偽・誇大広告につきましては、景品表示法、健康増進法といった法律の執行が考えられますけれども、現状は、両法の執行活動が表示対策課と食品表示課という別の課において行われておりまして、連携が十分ではない。両法の要件効果の違いというものがあるわけですけれども、こういったものも十分に生かしきれていないということでございます。
両法の要件効果の違いですけれども、このペーパーには直接書いてございませんが、2つの法律で、それぞれ対象となる表示、対象となる事業者、立証についても、例えば景品表示法では4条2項というのがございます。事業者が合理的根拠を示す資料を提出しない場合には、優良誤認表示とみなす仕組みがあるのに対して、健康増進法ではそのような仕組みがない。表示どおりの効果・効能がないことを行政側が立証しなくてはいけないといった、要件についての違いがあります。
効果につきましては、景品表示法については、景品表示法の違反があれば、行政指導を経由しないで直ちに行政処分をする。片や健康増進法は、違反があるとまず勧告、行政指導を行いまして、勧告に従わない場合に初めて命令(行政処分)を行うという効果の違い。こういった両法の要件効果の違いがありますけれども、十分に生かしきれていないということでございます。
そこで、本文に戻っていただきまして、こういった両法の特徴を生かしつつ、両法が相互に補完し合って効果的な法執行を行うことができる体制をつくるということで、今後は両法の執行面における連携を図ることとしたものでございます。
第2のところでございますけれども、違反行為に対する連携調査の具体的な方法でございます。マル1で書いてございますのは、体制ということで、表示対策課、食品表示課がそれぞれ両法の執行をしている課ですけれども、両課の調査官を常時それぞれの課に併任させた上で、食品表示担当班というものを設けます。いわゆる健康食品の健康保持増進効果等の表示に係る事案については、この食品表示担当班におけるこれらの調査官が連携して、景品表示法、健康増進法の両法の違反事件として、調査に当たることができる体制を整えるということでございます。
資料5は表裏になっていまして、めくっていただくと、参考資料ということでポンチ絵をつけてございます。これの右手のほうが、併任調査官が食品表示担当班ということで、今後、このような形で連携を図っていくという図でございます。
まず、真ん中のほうですが、いわゆる健康食品の健康保持増進効果等表示に係る事案については、今、インターネットの監視業務等をやっておりまして、こういった業務での情報も含めまして、表示対策課と食品表示課において端緒を全面的に共有することで、一元的に食品表示担当班に配分をするということでございます。
この食品表示担当班による調査ということですけれども、景品表示法、健康増進法の特徴を生かしつつ、事案の内容に応じ、商品等の供給主体、広告媒体、こういったものに対して景品表示法及び健康増進法による調査を行うということで、景品表示法、健康増進法の特徴を生かして対処することを考えているものでございます。
表の紙に戻っていただきまして、インターネット監視業務の情報の共有化でございます。現状、いわゆる健康食品の健康保持増進効果の表示については、法違反のおそれのあるものについて、未然防止の観点ということで、表示対策課では、景品表示法の観点から注意喚起のメールを、食品表示課においては、健康増進法の観点から改善を要請する電子メールをそれぞれ発出するという取組みをしていますけれども、片方の法律の観点にのみ基づいたものとなっている。今後については、法違反のおそれのある表示に関する情報を共有いたしまして、景品表示法、健康増進法の両法の観点に基づいた対応、注意喚起を行っていくということでございます。
食品表示担当班、連携を図る体制は、今週末の2月1日にも発足させる予定としております。
食品表示に関する情報の集約、執行の一元化でございますけれども、一元化に伴う法執行の円滑化を図るために、つい先ほど閣議決定された平成25年度の予算案において、景品表示法と健康増進法を含む、相互補完関係にある法律の食品表示についての執行権限を収れんさせた「食品表示対策室」というものを、本年の7月から設置することが予算の内容に盛り込まれているところでございます。
したがいまして、本日、ただいま御説明した景表法と健康増進法との連携について、予算が成立すれば、本年7月以降については食品表示対策室で執行の連携が行われることになりますので、この点、つけ加えさせていただきます。
私からの説明は以上でございます。

○河上委員長 ただいまの説明について、御質問、御意見のある方は発言をお願いします。
山口委員長代理、どうぞ。

○山口委員長代理 消費者委員会の建議の動きを受けまして、あるいは、独自にお考えいただいていたこともあったと思いますが、このような形で連携の強化を明示されたことについては本当に感謝申し上げますし、高く評価して、この実現を是非お願いしたいと思います。
とりわけ健康増進法については、執行の勧告・命令の実績が全くないということで、事業者サイドから見ると、守らなければいけない法律という意識が非常に希薄化しているという状況もございます。先ほどお聞きいただいたかと思いますが、細川委員がお話しになったように、想像力と暗喩、比喩を増長させるような広告で、あたかも、健康食品あるいは特保を摂取していれば健康上の問題が解決するかのような広告が多い。これは著しく誤認、著しく事実に反する表示だと思います。その辺が、今、垂れ流しの状態になっているということもございますので、これは消費者庁食品表示課の仕事になるのかもしれませんが、早急にガイドラインを整備していただいて、この食品表示対策室で速やかに執行をお願いしたいと思います。
そこで一つだけ、第2の2、インターネット監視業務の情報の共有化のところですけれども、先般、表示対策課でお聞きしたところ、非常に少ない予算でモニターを一般消費者から募集して、インターネットによる景品表示法違反と思われる表示を、年間20件以上、モニターに通報していただいて、それをまた、少ない2人だけの職員で対処しながらやられていると聞きました。
この辺ももう少しモニターを増やしていただいて、モニター制度を充実して、一般消費者の声を景表法と健康増進法の執行面に生かす。端的に言えば、前の景品表示法の場合、公取時代は、何ぴとも通告して、通告した場合には、それについてどういう措置をとりましたということを回答できるシステムにしていました。それが、消費者庁になってから回答は必要なくなったわけで、その点、一般消費者としては、答えもないから、消費者庁がちゃんと取り組んでいただいているのかどうかさえわからない。ですから、「措置しないことにしました」という形の回答でも結構なので、返事があるかどうかだけでも消費者としては大分意識が違うと思います。一般消費者の意識を高めるという意味も込めて、モニター制度の充実と、消費者からの通報について答えを出すという、その辺の改善の余地がないのかについてはどうでしょうか。

○消費者庁片桐表示対策課長 実は、景品表示法について申し上げると、事件のきっかけになるもの、これはたくさん情報提供がございます。件数は毎年、運用状況等で公表しております。モニター制度の充実ということでございますけれども、数を増やすということも意味しているかもしれませんが、質的な充実、いただいた情報をより効率的に処理していくという観点からの体制の充実も重要かと思います。御指摘を踏まえて考えたいと思います。
情報提供に対する回答ですけれども、これは、もともと委員が御指摘の回答するというシステムは、独占禁止法の規定に準拠してやっていたということで、景表法の位置づけが独占禁止法の特別法から消費者法になった。今度、消費者法の世界で、そういった執行法の在り方という中で考えていかなくてはいけないということになったので、単純に独禁法の特別法時代にパッと戻せるかというと、なかなか難しい点はありますけれども、皆さんから御指摘も多くございますので、その点については心得て、一般に対する事件の執行についての情報提供は広い意味で充実させていきたいと思っております。

○河上委員長 細川委員、どうぞ。

○細川委員 まず一点、今のことで言うと、むしろ景表法が独禁法から分かれて消費者庁に来たがゆえに、逆に消費者の手に届かなくなってしまった、そんなイメージを持ちます。今までは申出をすれば、やるならやる、やらないならやらないという応答義務があったのに、それがなくなってしまったというのは、何のために消費者庁をつくったのかというのが消費者あるいは消費者団体の率直な思いだと思います。別に独禁法と切り離されたから回答しないでいいということはないはずですので、消費者に寄り添う消費者庁というスタンスを示す意味では、新たな制度が必要だったらそれはつくるべきだというふうに思います。
もう一点、まさに特保の問題、景品表示の監視という意味で、市場の監視役として健康食品プラス特保も見るという視点も必要ですけれども、今、消費者庁は特保自体の認定もしているわけですから、認定者として、特保のマークがいわゆる誇大な広告みたいな感じで使われているという問題点にもうちょっと意識を持ってほしいと思います。ただ、そうなると、今度は担当課長が違うということになるのかと思いますが。
というのは、最近、特保のマークが広告代わりに使われているのです。商品の認証されたマークとしてパッケージにあるというだけではなく、ネット上に誇大な文言を書いて、その横にわざと大きく消費者庁認可というマークを使っている。こういう使い方は、現行法、何の規制もないのか。水戸黄門の印籠かのような使い方をして、さも、これさえ買って飲めば効くという形の広告に対する消費者庁のスタンスも、もう少ししっかり持っていただけないかというふうに思います。これは個人的な意見です。

○河上委員長 何かございますか。

○消費者庁片桐表示対策課長 繰り返しになりますけれども、情報提供の在り方についてはさまざま工夫を凝らしていきたいと思います。
後段については、食品表示課長に伝えたいと思います。

○河上委員長 ほかにはいかがですか。
先ほどの市民力を活用したモニターの充実というのも、建議の中に入っておりますので、また、建議についてしっかりと検討をお願いしたいと思います。
健康食品の表示・広告を規制する関連法令を所管する各部局の緊密な連携というのは、建議事項の1-1(3)で取りまとめられて建議として文章化させていただいております。消費者庁におかれまして、早速こういう形で連携をやるという取組みの様子をお話しいただきまして、少なくとも個人的には大変心強く受けとめているところでございます。きょう、御説明いただいた取組みをはじめとして、建議の着実な履行によって、健康食品の表示・広告の適正化について一層の御尽力をいただきますよう、期待しております。
消費者庁におかれましては、お忙しい中、審議に御協力いただきまして、まことにありがとうございました。

≪5.公共料金について≫

○河上委員長 続きまして、「公共料金について」であります。公共料金等専門調査会の検討状況について、事務局から説明をお願いいたします。

○原事務局長資料6に基づいて御説明いたします。
公共料金等専門調査会は、去る11月13日の第104回の消費者委員会で設置が決まっております。12月11日に開催された第1回の会合で、公共料金に関する情報公開などの横断的な課題について、審議をしていくこととされました。
また、家庭用電気料金の値上げ認可申請に関する調査会をそのもとに設置し、電気料金の調査審議は同調査会で行うことといたしました。資料6に示したとおり、昨年12月11日と、ことし1月24日に調査会を開いております。電力会社から申請内容の説明を受け質疑応答をいたしましたし、関西と九州の地元の消費者団体からのヒアリングも行いました。また、消費者庁からチェックポイントの案も示されておりまして、目下、委員からのコメントを反映させる作業を行っております。
今後ですが、資源エネルギー庁の査定方針が固まりましたら、時期は未定ですが、消費者庁から委員会に対して意見を求める付議がなされることになります。調査会の場で、チェックポイントが査定方針にどのように反映されたかといった観点から検証を行い、調査会としての意見をまとめて委員会として消費者庁に提示し、これを踏まえて、消費者庁が資源エネルギー庁との調整を行うことになります。また、この過程で、地元消費者団体の意見についても御意見をお聞きしていきたいと考えております。
なお、この問題は大変関心が高いということもございまして、調査会の模様については、開催の翌日には消費者委員会のウェブで動画配信しております。地元がそれぞれ遠いところでありますけれども、是非ごらんになっていただければと思います。
以上です。

○河上委員長 ありがとうございました。
それでは、御質問、御意見のある方はお願いいたします。いかがでしょうか。
山口委員長代理、どうぞ。

○山口委員長代理 第2回調査会に、関西電力と九州電力においでいただいてお話を伺ったのですが、一番象徴的なのは、取締役が両社17名ずつおられまして、その報酬を2割強削減しましたとおっしゃったわけです。それで幾らになったのかというと、17名の平均の報酬は、関西電力は4,100万、九州電力は3,300万とおっしゃるのです。そうすると、2割を削る前はどうだったのかと思ったのです。いずれにしてもそういう高額の報酬を取っておいて、消費者には値上げのツケを回すというのは、公共企業として何を考えていらっしゃるのかなというふうに私などは素朴に思った次第です。
その意味では、消費者の声を、消費者委員会としてこの審査に反映していただく役割としては、ほかにもたくさん問題はありますけれども、非常に重大と思って責任を痛感した次第です。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。
ヒアリングでの発言も非常に真摯な発言が多くて、これをきちんと受けとめて考えていかないといけないというポイントが、非常にたくさんあるような気がしました。
よろしいですか。
細川委員、どうぞ。

○細川委員 関西電力、九電をやっていて、そういう実態がわかったということで、これは別に関西電力、九電だけの話ではなく、ほかの電力もそうかもしれませんし、ガスとかそういうところもどうなのか。今回、原発の事故があってこういう状況になったから、それが明らかになったわけです。今までそういうものを放置してきたシステムのどこに問題があるのか。申請してこなかったところは情報も提供されない、高値でいいのかという問題もありますので、今、これに手がかかって大変なことはわかりますけれども、公共料金の在り方についての制度的な検証、あるいは情報開示の仕組みというものは、まさに消費者委員会で専門部会ができたわけですから、これは真剣に考えてやらないとならない問題だと思います。事務局体制の整備とか、そういうものを政府に求めていかないと、ほかのこともいろいろありますので、これは大変なことだなというふうに思います。

○河上委員長 ほかに、よろしいですか。
事務局体制の整備というのは確かに大事なことで、どうしても人がいないと調査会も動けないということがございますから、頑張って体制を強化していきたいと思います。

≪6.その他≫

○河上委員長 それでは、議題「その他」といたしまして、新開発食品調査部会から、新開発食品調査部会設置・運営規程第8条第2項の規定に基づき、審議結果の報告をいただきたいと思います。
田島部会長、よろしくお願いいたします。

○田島委員資料7でございます。特定保健用食品の表示許可にかかわる答申について、私から御報告いたします。
内閣総理大臣より諮問を受けて、安全性及び効果について新開発食品調査部会で審議を行い、議決について、新開発食品調査部会設置・運営規程第8条に基づき、委員長の同意を得て委員会の議決とし、内閣総理大臣へ答申を行いました。
第9回部会において、資料7の3品目は、特定保健用食品として認めることとして差し支えないこととされました。
平成24年8月1日付で、資料7の2枚目の1品目は、指摘事項を確認の上、了承するとされ、部会長の確認後に、特定保健用食品として認めることとして差し支えないこととされました。同年8月27日付で内閣総理大臣へ答申を行いました。
資料7の3枚目でございます。この9品目は、第11回新開発食品調査部会において、特定保健用食品として認めることとして差し支えないこととされ、平成24年12月28日付で内閣総理大臣へ答申を行いました。
私からの報告は以上になります。

○河上委員長 ありがとうございました。
この点に関して、何かございますか。よろしいですか。
本日の議題は、以上でございます。お忙しい中、審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。

≪7.閉会≫

○河上委員長 最後に、事務局から、今後の予定等について説明をお願いいたします。

○原事務局長 長時間、ありがとうございます。
次回ですけれども、2月12日(火曜日)を予定しております。委員会の開催に先駆けて、16時から17時は「消費者団体等関連団体との意見交換会」の開催を予定しております。その後、17時より委員会を開催いたしますが、議題については、改めてホームページなどを通じて御案内をさせていただきます。
今週の土曜日ですけれども、2月2日 13時から、「消費者契約法の課題を考える」として、シンポジウムを開催いたします。会場はプラザエフになります。午後の時間帯です。
それから、第7回の地方消費者委員会を3月2日(土曜日)に米沢で開催いたします。場所は山形県立米沢女子短期大学で、「食品表示の在り方について」を課題にして行いたいと思っております。
先ほど、委員長から発言がありましたけれども、本日、委員会終了後、19時を目途に消費者庁記者会見室において、「健康食品の表示等の在り方に関する建議」等について、委員長記者会見を報道の方対象に行いたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。

○河上委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)