第61回 消費者委員会 議事録

日時

2011年7月8日(金)15:00~16:35

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
 松本委員長、中村委員長代理、池田委員、佐野委員、
 下谷内委員、田島委員、日和佐委員、山口委員
【説明者】
 社団法人全国消費生活相談員協会   丹野美絵子理事長
 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長  山本健司弁護士
 消費者庁  成田消費者制度課長
西川消費者制度課企画官
【事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.民法(債権関係)改正について
○説明者: 社団法人全国消費生活相談員協会 丹野美絵子理事長
弁護士 山本健司氏(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長)
3.「消費者基本計画」の「検証・評価」(平成22年度)及び計画の見直しについて
○説明者: 消費者庁 成田消費者制度課長、西川消費者制度課企画官
4.閉 会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:8KB)
【資料1】 民法(債権関係)の改正に関する考え方(社団法人全国消費生活相談員協会提出資料)(PDF形式:235KB)
【資料2】 「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」に対する意見書及び補足説明書(山本弁護士提出資料)
(資料2-1) 「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」に対する意見書~ 消費者の観点から ~
(資料2-2) 補足説明書~ 「民法と消費者概念」について~(PDF形式:166KB)
【資料3】 消費者基本計画の検証、評価及び見直しについて(消費者庁提出資料) 【資料4】 食品衛生法の改正に係る答申関連(PDF形式:221KB)
【参考資料1】 委員間打合せ概要(PDF形式:10KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、時間がまいりましたので、始めさせていただきたいと思います。
本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会(第61回)」の会合を開催いたします。それでは、委員長、どうぞよろしくお願いいたします。

≪2.民法(債権関係)改正について≫

○松本委員長 それでは、議題に入ります。
本日は、当初予定をしておりました、「民法(債権関係)改正について」に加えまして、「『消費者基本計画』の『検証・評価』(平成22年度)及び計画の見直しについて」を議題として取り上げたいと思います。
初めに、民法(債権関係)の改正についてです。民法(債権関係)改正につきましては、平成21年10月に開催されました法務省の法制審議会におきまして、法務大臣から、民法(債権関係)の改正に関する諮問がなされたことを受けて、「民法(債権関係)部会」が設置され、これまで議論がなされてきております。
諮問の内容は、「民事基本法典である民法のうち債権関係の規定について、同法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り、国民一般にわかりやすいものとする等の観点から、国民の日常生活や経済活動にかかわりの深い契約に関する規定を中心に見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい」というものです。
この民法(債権関係)部会におきまして、本年4月の会議で「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」が決定され、現在、この論点整理についてパブリックコメントが実施されているところです。民法(債権関係)部会におきましては、社会・経済の変化への対応の一つとして、消費者・事業者に関する規定を民法に設けることの当否が論点の一つとなっており、消費者契約法等の特別法と民法の役割分担等についてもこれまで議論がなされているところです。本検討は、消費者契約の在り方にかかわるものであり、消費者委員会として、中間的な論点整理が示されたこの段階におきまして関係団体からヒアリングを行い、議論を行いたいと思います。
本日は、社団法人全国消費生活相談員協会理事長の丹野美絵子氏、及び日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長を務めておられます、弁護士の山本健司氏においでいただいております。本検討につきまして、御意見を順次お聞かせいただき、その後、質疑を行いたいと思います。
それでは、初めに、全国消費生活相談員協会の丹野理事長から御説明をお願いいたします。

○社団法人全国消費生活相談員協会丹野理事長 全相協の丹野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私がトップバッターというのは予定外でございまして、当然、日弁連さんが先だと思っておりましたので、多少緊張しております。その辺は是非御容赦をいただきたいと思います。
資料1「民法(債権関係)の改正に関する考え方」というペーパーをお出ししておりますので、それに沿ってお話を申し上げたいと思います。
先ほど松本委員長御案内のように、8月1日までのパブコメということですが、このペーパーをパブコメに出すわけではなく、まだ足りない論点があるので、これに加えてパブコメを出したいと思っていますが、概要を今日、皆様にお話を申し上げたいと思っております。
まず、「はじめに」というところを読ませていただきます。私どもの団体は、全国の自治体の消費生活相談の窓口で、消費者からの苦情や相談を受ける「消費生活相談員」を主な会員とする団体であり、適格消費者団体でもございます。会員数は全国で2,000名を超えておりますが、その2,000名が何をしているかといいますと、消費者相談の現場で、消費者のあらゆる分野の苦情を受けとめて被害回復を目指しています。そのために各種の法律、特商法、割販法、保険業法、金商法、電子契約法、ありとあらゆるものを幅広く活用し、当然のことながら、我々のバイブルでもあります消費者契約法を駆使し、更に、信義則その他民法そのものを活用するなど、法律を総動員しつつ、それに、それだけでは足りない社会常識とか知見を加味して、消費者への後見的な立場で消費者に助言し、事業者とのあっせん交渉を行っております。ですから、今回の民法改正論議について消費者の目線から考え方を述べたいと思っております。
民法改正の趣旨として、先ほどもお話がございましたように、消費者・市民にわかりやすい民法とすることがうたわれていたはずですが、中間整理が200ページを超えまして、補足説明とここにございますが、465ページございます。これが非常に大部でありまして、しかも中身が、正直に申し上げると、読んでいても大変わかりにくいといいますか、平易とは到底言い難いことから、質も量も、普通の消費者が市民感覚でこれについて何か意見を言えと言われても非常に困難であるということをまず申し上げて、始めさせていただきたいと思います。
最初に、パブコメの中でとられていることとは直接関係がないことを一つ申し上げようと思います。「消費者契約法と民法の関係について」は、「民法に消費者契約法を統合することには賛成しません」と書きました。
理由は、改正の議論の当初には、消費者契約法の実体法部分を民法に入れ込んでしまって、消費者契約法そのものを廃止するんだという議論があったということを伺っております。消費者契約法は施行後10年を経過いたしましたが、数年たったら見直すということが当初から予定されていたにもかかわらず、一向にそれがされておりません。やったのは一つ、適格消費者団体に関する消費者団体訴訟制度という部分が加わっただけで、他は触らないでおります。私どもは、むしろ消費者契約法そのものをより充実した法にするべく早急に見直しをすることが必要なのではないかと考えております。
なぜ見直しの必要があるかといいますと、私どもは適格消費者団体ですが、一つだけ例をここに書かせていただきました。美容外科の高額なキャンセル料に対して、消費者契約法の9条1号による不当条項であるとして、つまりキャンセル料の額が何十%と高率だったものですから、それに対して不当条項であるということで差止請求をいたしました。その結果、相手方から何という回答があったかというと、平均的損害を超えない範囲の実損害をキャンセル料にするという回答があって、法律家の先生たちから言わせれば、もうこれ以上は法律的にはどうしょうもないですよと。消費者契約法の9条1号で規定されているのは、こういうふうに言われたらこれ以上対処法がありませんという話なんだけれども、こんな変なキャンセル料の規定が一般市民に分かりやすいかというと、ちっとも分かりやすくないわけです。何のことだかちっとも分からない。それが具体的に明瞭にされないという課題を残したままでございます。
これ一つ取り上げてみましても、消費者契約法は緊急に見直しの必要があると思いますし、これ以外にも、消費者相談の中で、不当勧誘分でももう少し使いやすくなってくれればいいなという部分が実はたくさんございます。ですから、消費者契約法自体は時代の要請を受けて早急に見直しをする必要があると思っています。
それに対して、民法というのは基本法でございます。当然、法の安定性の要請が高いので、柔軟に改正することはできないだろうというのは自明のことでございまして、それぞれの法律の役割の違いを踏まえれば、消費者契約法を民法に統合すべきではないということをまず申し上げたいと思います。
以下、個々の論点について考え方を述べますが、いただいている時間が確か20分でございますので、飛ばし飛ばしでまいります。
私の出したペーパーの2ページの下、「第12 保証債務」についてお話を申し上げます。「保証契約締結の際における保証人保護の方策」というのを中間論点整理では出されています。その中で、保証人を保護しましょうということでいろいろ出されているのですが、私どもの意見としましては、そもそも個人が保証する制度というのは廃止する方向で見直すべきではないかということを申し上げたいと思います。
理由は非常に簡単でございまして、保証人は、義理と人情と力関係の人間関係を元に保証を引き受けていて、保証人は保証をしてもちっともいいことはないです。完全に無償の行為なのに、特に借金の保証人になった場合など、無償の行為の代償として生活の基盤を失ってしまうという悲惨な実態が実はたくさんございます。多重債務者の中には「保証人になったために」という人がたくさんいます。そういうことから考えれば、保証人という制度そのものが、社会の公平性、妥当性を欠く制度ではないかということを考えております。
ほかの部分は後ほどお読みいただくとして、具体的な事例をそこに挙げておりますので、読ませていただきます。
具体的事例、「金銭消費貸借の保証人-勤務先の会社の経営者に頼まれて断りきれずに、借金の保証人になった。その後、勤務先の会社が倒産し、経営者も行方不明になり、保証人である自分に借金の支払督促が来ているが、とても返済ができない。自己破産するしか方法がない」。こういう類の相談が実は消費者相談にはたくさんございまして、これを考えれば、保証人という制度そのものがいかがなのかなというふうに思っておりますので、先ほどの意見のようになります。
次に、3ページの「第23 契約交渉段階」についてです。契約交渉の不当破棄。意見としましては、消費者と事業者の間の契約において、契約交渉の不当破棄規定を設けることが項目として挙げられていますけれども、それに対して賛成しないということを言っております。
何のことかといいますと、入れるべきとして例で挙げられているのは映画のロケの話です。契約すると言われて映画のロケーションの準備をして、たくさん費用がかかったけれど、結局、ロケーションがなかった場合、契約がなかったからといって、そこで費用がかかった分を損害賠償する方向で何とかできないかということが、言われていることだと思います。
しかし消費者契約においては、事業者からの強いアプローチにより消費者の意思確立が十分でないまま、断り切れずに契約に至ったり、事業者から情報提供が十分でないために誤解して契約に至ったりすることが非常にたくさんございます。これが消費者トラブルの元凶でございまして、トラブルに陥った消費者はどうしたいかというと、自分が陥っている契約から何とか離脱したいと考えその方法を模索します。そこから考えれば、契約が成立する前においては、当然消費者の離脱を許容する必要があり、契約交渉中の破棄により発生した事業者の「損害」と称するものを直ちに消費者に負わせることは、消費者保護の観点から到底賛成できないというふうに考えております。
これも具体的事例を挙げさせていただいております。2つ挙げていますが、上だけ読み上げます。
投資用マンションの事例。実はたくさんこういうのがあります。勤務先に投資用マンションの電話勧誘があり、断っても執拗に電話があるので、余りに周りの方に迷惑なので、仕方がなく断るために会うことにした。喫茶店で会ったが、こちらが断ろうとしても事業者がろくすっぽしゃべらせないわけです。ワーッと勧誘するのですが、その勧誘が続き3時間もたってしまった。最終的にやっと「やらない」ということで断ったが、「ここまで説明させて断るとは、これまでの時間をどうしてくれるのか、損害賠償しろ」と。これは常道でございまして、必ずこういうふうに言います。この事例は質が悪くて、土下座して謝罪しろと言ったので、他のお客がいる前で土下座をさせられたということを付けていますが、こういうことが今でも起きているのに、例えばそういうことが決められてしまえば、早晩、火を見るより明らかではないかというふうに考えております。
それから、「第23 契約交渉段階 2.契約締結過程における説明義務・情報提供義務」でございます。これは、契約締結過程における説明義務・情報提供義務を設けるか、設けないかということが挙げられております。設けた場合、どうするかということも併せて挙げられております。そのことについて私どもは賛成いたします。
理由としては、消費者契約において、個々の消費者の理解できる程度に事業者に説明義務、情報提供義務を課すことは、特商法とか、金商法とか、さまざま法律で規定されておりますが、民法において説明義務・情報提供義務を設けて、義務違反について取消権というものが付与されれば、消費者トラブルの解決に大きく寄与するものではないかということを挙げております。
具体的事例として2つ挙げていますが、1つ目の事例はたくさんある事例でございます。個人年金保険の事例でございまして、75歳の母親が、銀行の窓口で元本確保だという説明を受けて、変額個人年金保険の契約をしました。母親は5年後の満期になったら元金を一括で受け取れると思っていたが、10年にわたって年金として受け取れば、総額で元本を保証するものだった。75歳が5年後の満期ですから、80歳です。80歳から10年にわたって、つまり90歳です。90になってようやく元本が全部受け取れるタイプのものだった。母はそれでは90歳になってしまうと怒っている。取消してもとに戻してほしいと、いう類の相談は実はたくさんございますが、実際にこれを相手方と交渉して取り消しを勝ち得ることは至難のわざでございまして、なかなか難しいのです。こういう被害がたくさんあるのに放置していいのか、という問題がございます。
もう一つ、同じような事例が挙がっておりますが、それも後でお読みいただきたいと思います。
「第27 約款」でございます。約款に関しては、民法の中でそれを取り決めて、組み入れ要件に関する規定を設けるとか、そもそも約款とは何ぞやということで定義をするとか、それについて項目として挙げられています。
約款とは何かというのが、識者の方と庶民とではかなりずれております。例えば認可約款のようなものを約款と呼ぶんだ、それ以外の、その辺のお店屋さんとの契約を約款と呼ばないんだというのが、たぶん有識者の方の御意見だろうと思いますが、私どもは、そうではなく、約款を「多数の契約に用いられるため、あらかじめ定式化された契約条項の総体」等と広く定義する。できるだけ広く定義をつくることに、基本的には賛成でございます。その前提として、約款の事前開示及び当事者間の合意を原則として必要とすることに、これも基本的には賛成でございます。
理由は、消費者が契約締結後に契約内容について苦情を申し出て、契約関係を解消しようとする際に、事業者が、事前につくって書面化した契約条項を盾に、「内容を知らなかったといってもここに書いてある、書いてあるものにあなたたちは拘束される」、もしくは、書面を渡して、それで「受けとったのだから、そこに合意があった」、そういう主張もなさいます。そのために紛争が起きることが非常に多い。
そのことを踏まえれば、約款を契約条項として組み入れるための要件をまず明確にすべきだと。更に、どのようなものを約款とするかについて約款の定義を明確にする必要がある。その定義の前提として、少なくとも契約締結までに約款が消費者に開示されること。その約款を契約内容とすることについて、消費者の合意があることを原則必須にするべきだと考えております。当事者が約款に拘束されるというのであれば、最低限、開示と合意が必要です。
当然、反論があると思うのは、例えば電車など交通機関の約款のようなものはどうするんだという話になると思いますが、あれは今、駅に掲示はされていても、通常は普通の人はあれを見ません。私も見たことがありません。そういう約款についてまで開示と合意を一々取るのかという話だと思いますけれども、そういうものについては、利便性を阻害するから例外を認めなければならないと思いますが、だからといって例外を無原則に認めていっては意味がありませんので、その辺の慎重な検討が必要だと考えております。
具体的事例を申し上げれば、有料老人ホームの事例を挙げています。「隣人とトラブルがあり、有料老人ホームを退去することになった。預けてあった入居一時金の30%は初期償却費用として返金しないという。苦情を言ったら、約款に書いていると言うが、私は読んでいない。従わないといけないのか」。
それから、共済というのがありまして、ケガをして後遺障害になり共済団体に共済金を請求したが、支払われない。支払わない理由を聞いたら、顧客に渡す約款ではなく、約款には、詳細は内規で決める、詳細は別に当団体が定めるというふうに書いてあって、実際は内規で決める。内規は顧客には見せられない、そういうことを言われた。」今でもこういう苦情がまだございます。
例えば損害保険に関して言えば、「自動車保険に申し込み、すぐ保険料を払い、その日に補償が開始したけれども、後から証券と一緒に約款が送られてきた。約款が契約の内容だろう。契約締結後に契約の内容を示すのはおかしい」、という苦情もございます。
それが約款についてのお話でございます。
時間がないので少し飛ばさせていただいて、8ページの第30の「第三者による詐欺」をお話申し上げます。第三者による詐欺と書きましたが、「第三者が詐欺をした場合について、相手方が知ることができた場合にも表意者はその意思表示を取り消すことができることに賛成します」というわかりにくいことを書いておりますが、下はもっと端的でございまして、消費者契約の中で消費者と法人が契約をして、「法人が相手方である場合、従業員その他契約締結補助者等の詐欺の事実を知っていたか否かにかかわらず取り消しを認めることに賛成します」ということを書きました。
消費者契約法の5条に「媒介」がございますが、媒介者の法理の拡充をしてほしいというお話です。理由としては、直接、詐欺行為にかかわったり、教唆したわけでない場合であっても、販売者と委託関係または業務上の強い連携関係にある相手方は、販売者の行為によって利益を得ていたり、販売者を一定の管理下に置ける立場であるので、販売者に詐欺があれば、相手方が知っているか、知らないか関係なしにやはり消費者の保護をすべきだ、ということを書きました。
具体的事例で3つばかり挙げておりますが、リース契約というところを見ていただければと思います。自分は視覚障害者で自宅で鍼灸師をしています。訪問販売で業者、サプライヤーと言いますが、要は訪販業者です。サプライヤーが来て、「今、使っている電話機は型が古くて修理ができない。新しいタイプの電話機は通話料も安くなるから」といって長時間勧誘されて、仕方なく、よくわからないで契約をするのですが、期間7年の電話機のリース契約をした。しかし、リース料金の負担が増えただけで通話料は安くならない。また、リース契約ですから中途解約ができないことも知らされなかった。
こういう場合、訪問してきた事業者と実際のリース業者の間の責任関係はどうなるかということを考えれば、先ほど意見で申し上げたようなことが、叶えられなければいけないと思います。
それから、9ページの第30のところで、「意思表示に関する規定の拡充」と書きました。不実表示というのは、不実告知等を指しますが、消費者が不実表示をしたことに対して、事業者の取消権を認めるかどうかというのも項目に挙げられております。そのことについては賛成しないと言っております。消費者と事業者の間には、いわゆる情報格差、交渉力格差が存在しますので、消費者がうっかり不実の意思表示をして契約した場合をとらまえて、事業者が取り消すことができるというのは、やはりバランスを欠くのではないかということです。
具体的事例としては先物取引でございまして、「金の先物取引を勧誘され、担当者から、年収が多いほどたくさん取引ができると言われたため、顧客カードに実際の年収より多く書いた。取引を始めて、たまたま利益が上がったら、業者から言われたことは、年収欄を虚偽で記載したでしょう、だから契約を取り消すと言われた」という例です。こういう例から言えば、事業者からの取消権を認めることには賛成しないということを申し上げたいと思います。
第31が「不当条項規制」でございます。不当条項規制というのが今回の目玉で挙げられているのですけれども、不当条項規制の要否、その他適用対象等については、意見としては、不当条項規制は消費者契約法との関係、役割分担等を含め、更に十分な議論が必要。消費者契約における不当条項については、個別交渉事項、中心条項という言い方をしていらっしゃいますけれども、そういうものもとりあえず全部除外するべきではありません。不当条項リストの当否は、どんなものを不当条項リストに挙げるか、挙げないかという具体的なリストの内容がまさに問題であって、そこの部分がわからないことには意見の言いようがないと思っておりまして、更なる緻密な議論が必要だと考えております。
あと、14ページ、これも少しだけ皆さんにお話をさせていただきたいと思います。第59に挙げられているのが「契約の解釈」というのでございまして、そこに、条項使用者不利の原則についてどうかということが掲げられております。私どもは条項使用者不利の原則の考え方に賛成します。
理由は何かといいますと、消費者契約や約款において、書かれている内容がそもそも難しいとか、その趣旨が分からないとか、当事者である消費者にとって必ずしも明瞭でない場合がたくさんございます。消費者が理解できる合理的な内容でない場合、そもそも合意があったかという基本的な問題がありますけれども、少なくとも事業者と消費者の間で解釈が分かれる契約や約款において、条項を作っている側、つまり事業者側ですが、作って使用している側が不利になるような解釈をすべきであって、すなわち消費者が有利になる解釈をとるのが、公平の観点から当然に必要だろうと考えております。
具体的事例をここに掲げております。「生命保険に加入しているが、病気で入院したが、保険会社が保険金を支払ってくれません。理由を聞いたら、約款の該当部分を教えてくれました。それを素直に読むと、私にはどうしても支払い対象にしか読めません。でも、その会社は払わないと言っている。実は他社でも同じ約款で払ってくれました。こういう約款というのは保険会社の都合のよいように読むものですか」というものです。こういうトラブルはたくさんございますので、条項使用者不利の原則というのを明確化していただきたいと思っております。
最後のところで申し上げますが、15ページに「第62 民法に消費者・事業者に関する規定を設けることの当否」「消費者契約の特則」というのが掲げられております。非常に大事なテーマでございまして、それについては、消費者・事業者の概念を規定することは、それにより何ができるかという議論とセットだと思われます。より十分な議論が必要だと考えておりますし、仮に消費者に関する規定を設けるのなら、民法の中には、索引といいますか、レファレンスといいますか、抽象的な理念規定を民法に設け、それを消費者契約法がより詳細に受けるという形の役割分担の議論を深めるなど、如何にしたら消費者保護を適切に図ることができるのかという観点から、十分に検討していただきたいと考えております。
理由としてここに長々と書きましたが、国民すべてが消費者であること、企業間の契約を除けばそれ以外はすべて消費者契約にほかならないこと、しかも消費者と事業者の間には歴然とした情報格差、交渉力格差が存在すること、それによりさまざまな問題が起きていることから言えば、民法においても消費者を正面から視野に入れなければならないことはその通りだと思っています。しかも、既に近時の立法では、消費者保護を趣旨とする法律がたくさん生まれてきています。
しかし、消費者は、民法が、対等な私人間の関係を大前提にして、その上で権利義務関係を規定していることにずっと慣れてきておりまして、特別法ではなく基本法をドラスティックに改正することとその効果を、私どもは現時点ではとても読みきれません。結果を引き受けるのは最終的には消費者ですから、混乱がないのか、懸念がないのか、基本法の改正は柔軟には行えない点も考慮すれば、更に十分に審議を尽くすべきだと考えております。
当然のことながら、もしも民法に消費者の規定を設けるのならば、先ほど述べたように、格差があるわけですから、劣後する者の利益に配慮する必要があるなどの抽象理念を導入することに賛成ですが、消費者契約法で更に充実の議論をしていただかねばならないのではないかと思います。正直に申し上げれば、今、消費者庁さんが国民生活センターとの一元化の議論を一生懸命やっていらっしゃる。それをやるよりも、まずやることが先にあるのではないか、消費者契約法が全く手つかずでいることは大変問題です。是非、順番を間違えずに検討していただきたいと思っています。
また法制審議会のメンバー構成を見ますと、四十何人いる中で消費者代表は一人でございます。松本委員長もお出になっていらっしゃるけれども、学者の枠ですし、学者さんの中でも消費者法に深い理解を示される方がたくさんいらっしゃいますけれども、それでもやはりそこが、消費者法や消費者契約法の議論をする場所だろうかと思っていますので、その辺も考慮していただきたい。以上、長々としゃべりましたが、考えかたを述べさせていただきました。

○松本委員長 ありがとうございました。
続きまして、山本弁護士から御説明をお願いいたします。

○山本弁護士(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長) 御紹介にあずかりました、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会で民法改正問題担当副委員長をしております山本でございます。本日は、このような意見陳述の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
民法というのは御承知のとおり、我が国の民事ルールの基本法、一般法であります。その改正は、消費者契約、消費者に対して非常に大きな影響がある内容であろうと思っております。日弁連の消費者問題対策委員会では、消費者の権利利益の保護という観点から、民法改正問題という点について諸問題を検討しております。その現時点での議論状況をまとめさせていただきましたのが、本日配付させていただいております、資料2-1という横書きの見開き2ページの意見書でございます。
民法の改正というのはかなり広範囲にわたっておりまして、消費者の観点から見てもいろいろなことを申し上げないといけない点がございます。現時点での問題意識を列挙させていただいているのがこの意見書ですけれども、ごらんになっていただいて明らかなようにかなり大部なもので、かつ広範囲にわたっております。本日は、このうち、先ほど、最後に62ということで理事長からも御紹介がありました「消費者概念」の導入という問題に論点を絞って意見陳述させていただきたいと思います。資料2-2のレジュメを用いながら、お話をさせていただきたいと思います。
なお、日弁連としての中間論点整理に対する意見は、現在、各単位会や日弁連内部の委員会の意見を照会しながら、現在、取りまとめ中でございます。追って、会長名で正式な意見書として提出されることになるのではないかと思います。したがいまして本日の意見陳述は、あくまでも現時点において、日弁連の消費者問題対策委員会内部での議論状況を踏まえて、私が個人的な立場で申し述べさせていただくものであることをあらかじめ御了承賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。それでは、内容に入らせていただきます。
民法に消費者概念を導入するかどうかというのは、今回の民法改正において大きな論点の一つでございます。具体的には、現在の民法には存在しない消費者保護や契約弱者保護といった規定を、民法に設けるかどうかというのが一つ大きな問題としてあります。また、設けるとしてもどのような規定を置くかという問題もあります。更に、その規定を置くか、置かないか、置くとしてもどのような内容にするかという点を考慮する上において、民法と消費者契約法との役割分担をどのように考えるかというのが大きな問題点としてございます。
まず、「民法における契約当事者間の格差への対応の当否・要否」という問題が、この第1番目の論点としてございます。格差対応は特別法に委ねておけばよい問題かどうか、という点でございます。この点に関しては、我々は、民法も現実の人に存する知識・情報・交渉力等のさまざまな格差に対応する必要があるとの考え方に賛成という見解をとっております。民法といえども、消費者を含む契約弱者に対して、それに対応しない、保護しないというやり方は入れるべきではない、現代社会に合致したように、民法にもそういう概念を真正面から取り入れるべきであろうという考え方に立っております。
理由については、下のところに列挙させていただいていますけれども、まず、消費者市場と消費者契約の割合の大きさというのが指摘できると思います。これは、平成20年の国民生活白書から引っ張らせていただいている数字ですけれども、消費者が支出する総額(家計最終消費支出)は2007年の時点で284兆円ということで、国内総生産に占めるシェアは約55%という記載がございます。
また、消費者契約における1契約当たりの単位の低さを考えたときには、我が国における私人間契約に占める消費者契約の割合はかなりの割合になるだろう。したがって、消費者契約をどう律するかという点について、それを除外した形での基本法の改正、在り方の見直しというのはあり得ないだろうと考えております。したがって、消費者契約をどう律するかというのを視野に入れた中で民法改正はなされていくべきではないかと考えております。
一方において、消費者問題が現に深刻であるという点についても指摘できると思います。消費生活相談件数は2009年度でも年間約90万件で高止まりしているという状況ですし、契約額で147万円、支払額で55万円という、無視できない消費者被害の現状がございます。
また、消費者被害に遭った人の割合の無視できない高さも指摘できるかと思います。内閣府の国民生活選好度調査の結果では、2006年度の数字ですが、全体の2.6%が被害に遭ったと認識される数字があります。これは、交通事故に遭った割合とか、刑法犯に遭った割合よりも高いという統計結果が出ております。
また、消費者被害における経済的損失額の大きさが、同じく国民生活白書の試算では最大で3兆4,000億円にものぼる。こういう多くの被害が、消費者が自ら欲さない、真に欲さない契約に支出されているという事実は、単に消費者被害というのみならず、健全な事業者に本来消費者から評価されて行くべき金銭が、良い契約内容・サービスを提供していない事業者に流れているということですから、これは事業者の見地からしても不正義の事態が生じている。是正すべき状態である。いわゆる健全な消費者契約取引市場ではない状態になっていると評価できるのではないかと思います。これは是正する必要があろうと思っております。
また、公的に消費者の権利が擁護されていると感じている国民意識が、我が国ではかなり低いという点についても指摘できるのではないかと思います。したがって、民法という基本的な法律においても、消費者契約に代表される契約当事者間の格差、契約弱者の保護という点については、これは真正面から受けとめて図っていくべきであろうと考えております。
特別法というのは、どうしても一定の領域、適用範囲というものがございますから、どうやってもそこから抜け落ちる法律、分野というのは出てまいります。例えば消費者を対象にした立法でしたら、個人とほとんど変わらないような中小零細事業者に対して、適用できるのか、できないのかという問題が必ず生じます。そういうときには、消費者特別法を拡大するという方向性も勿論一つの在り方でしょうし、新しい立法をつくるというのも一つの在り方でしょうけれども、その法律ができるまでに受け皿である民法で救済できれば、間隙を埋めるというか、よい状況になるのではないか。そういう意味で、民法に契約弱者の保護という観点を入れるというのは非常に重要なことではないかと思っております。
レジュメの2ページに移らせていただきます。中間論点整理の第2の照会事項として、「当事者間に格差がある場合には、劣後する者の利益に配慮する必要がある旨の抽象的な解釈理念を規定することについてどう思うか。その当否」というのがあります。今、お話しさせていただきました意見の延長線上のものとして、これは、積極的に設けた方がいいのではないかという意見を有しております。
第3に「消費者契約に関する規定を設けることの当否」という問題がございます。
まず、消費者契約に関する規定を現行法よりもたくさん設ける必要があるのかどうか、そういう前提問題があるかと思います。これは1の「消費者契約に関する規定の要否」という点ですけれども、これについては、後述する法形式の問題、どの法律で立法するかという問題はさておき、新たな消費者契約に関する特則を法制化する必要性はかなり高いと思っております。
別途、書面に付けさせていただいております、「別紙図面マル1」というカラーのA4の書類を見ていただけますでしょうか。簡単に図式でまとめさせていただきました。消費者契約に関する現在の問題と、現状と要改正点について図面化させていただきました。
まず確認ですけれども、消費者契約というのは事業者・消費者間の契約ですが、その特徴として、契約当事者間の格差・情報・交渉力の格差が存在いたします。その結果、事業者が十分に情報提供をせずに契約を勧誘するとか、事業者が一方的に有利な契約書や約款で契約を締結するという現象が生じます。これによって消費者契約トラブルが発生します。
弊害として、上に書かせていただきましたけれども、消費者側としては、不本意な契約への支出・拘束を余儀なくされる不利益を受けますし、事業者サイドとしても、本来なら消費者に支持されないはずの劣悪な販売方法や契約条件しか提供できていない事業者に、健全な事業者が売上を奪われるという社会正義に反する事態が発生すると思います。
是正するための対策としては主として2点で、対策1としては、契約締結過程の公正を図るための法制度を整備する。2つ目は、契約内容の公正を図るための法制度を整備する。これによって消費者側としては、真に望む契約に基づく支出ができる状況になる。事業者側としても、良質の販売方法や契約条件を提供する事業者が消費者に支持・評価され、売上を確保できる健全な消費者取引市場が実現する。ひいては、消費者契約トラブルが解消・減少する、という流れになるのではないかと考えております。
現に我が国においては、契約締結過程の公正と契約内容の公正を図るために、平成13年施行の消費者契約法という、消費者契約に関する包括的民事ルールが制定されております。これは、民法には詐欺・錯誤・公序良俗といった不十分な規定しかないという現状と、運用面においても厳しい運用がなされているということが前提としてあったと思います。けれども、その消費者契約法について、契約締結過程を規律する規定も、契約内容を規律する規定も、極めて不十分であることは、恐らく多くの論者が指摘するところではないかと思います。契約締結過程の取消権を定めている条文は実際1条しかありませんし、不当条項規制についても3条しかないという状況でございます。
したがって日弁連では、消費者契約法については早期改正が必要であるということで、例えば2006年12月14日の意見書では、契約締結過程の公正化のための法制度の整備として、情報提供義務・説明義務を明定すべきであるという提案、現行の消費者取消権の要件を見直して、適用範囲を拡大する、要件を緩和する改正が必要であるという提案、新たな消費者取消権の導入を図るべきであるという提案、具体的には、情報提供義務違反の取消権を認める、状況の濫用の取消権を認める、不招請勧誘で取消権を認める、あと、受け皿的に、不当勧誘行為に関する一般的な取消権規定を導入するという提案をしております。
また、契約内容の公正化を図るための手当として、現行10条の一般規定をもう少し使いやすい、わかりやすい条文に見直す。先ほども御指摘が出ておりました第9条の不当条項リストの要件を見直す、平均的損害等については、立証責任を含めてかなり問題がある条文だと思っており、これの要件を見直す。不当条項リストについては、大幅な拡張が必要であろうと考えております。継続的契約に関する中途解約権の明定等についても、必要ではないかと思っています。これらの消費者契約法の改正を、早期実現することが必要ではないかと思っております。
この点、今般の民法改正では、この一部について、民法の改正という土俵の中で議論の対象になっているものがあります。右に書かせていただいておりますけれども、契約締結過程の点においては、情報提供義務・説明義務を明定したらどうかという提案がなされております。また、不実表示という一般的な規定として新たな取消権を認めればどうか、という提案がなされております。公序良俗について、暴利行為やそれ以外の特定の類型について明定すればどうかというふうな意見照会がなされております。また、契約内容の適正化の問題として、約款規制というものを新たに導入してはどうか、消費者契約や約款を念頭に置いて不当条項規制を定めてはどうかという点についても、論点として挙げられております。最終的に立法化されるかどうかはこれからですけれども、論点としては挙げられております。その他の問題として、抗弁接続や債権各論の諸問題等について論点になっております。
レジュメの2ページに戻らせていただきます。このような問題状況の中で「消費者契約に関する規定の要否」という点に関しては、先ほど申し上げたように、消費者契約に関する特則規定は現行の消費者契約法では十分ではない状況なので、これは法制化する必要があると考えております。高止まりしている消費者被害を抜本的に減少させるためにも、次々と発生してくる新たな消費者契約被害の救済を図るためにも、不適切な営業活動を行っている事業者を市場から排除して健全な消費者取引市場を実現するためにも、消費者契約法の実体法改正は早期に実現する必要があるかと思います。
しかし、残念ながら現在の消費者庁では、他の立法課題との関係で、消費者契約法の実体法改正に向けての具体的な立法作業を行っていない模様であるという点については、非常に残念なことで、問題であると考えております。この点については、後ほどもう少し述べさせていただきたいと思います。
レジュメの4ページ、(2)ですけれども、民法改正問題において、更に消費者契約の特則の検討の必要性は高まったのではないかと考えております。というのは、民法の原則規定自体が見直されると、それに対応した形で、今まで議論していなかった新たな消費者契約の特則を考える必要性が出てきているという点は指摘できると思います。
例えば、最終的に採用されるかどうかわかりませんけれども、債権の消滅時効に関して、時効期間や起算点を当事者の合意で自由に定めることができるという制度がもし採用されるのであれば、そのこと自体について我々は反対意見ですけれども、仮にそれが採用された場合には、消費者契約においては少なくとも除外されるべきであろうと思われますので、そういう意味での予備的な主張といいますか、もしそういう原則が採用されるのであれば、今まで議論していなかったような新たな消費者契約の特則を検討する必要性もあるかと思います。
次に、レジュメの4ページ、2の「民法と消費者契約法との役割分担のあり方」という点についてです。消費者契約には特則が必要であろうというのは先ほど申し上げたとおりですけれども、では、それを民法に設けるか、消費者契約法に設けるか。これは法形式の選択の問題であると思います。我々の意見としては、消費者契約に関する特則の法制化については、「意見」のところに述べておりますように、法務省と消費者庁の協力によって、民法と同時に、もしくはそれに先立って、消費者契約法を改正する方向で立法化する方が望ましいのではないかと思っております。また、民法の改正を機に、消費者契約法の私法実体規定を民法に取り込んで証明させるという考え方(いわゆる統合論)には反対でございます。
その理由は、レジュメの5ページ、「理由」の(1)以下に述べさせていただきました。消費者契約に関する特則の性格としては、社会実態に適合した迅速な法改正の必要性、これが固有の存在意義を有するだろう。民法のように、一たん定めればなかなか改正できないという法律の中に、消費者契約に関する特則を定め切ることには無理があるのではないかと思っております。したがって、民法は民法で受け皿的に消費者保護や弱者保護を図る、これは大事だとは思いますけれども、それと、消費者契約法という独自の特別法は要らないかどうか、それは別の問題であって、迅速な法改正の必要性等の観点から、消費者契約法というのは固有の存在意義を有し、かつ、消費者契約法の特則については、その法律を拡張させる方向で考えていった方がいいのではないかという意見を持っております。
同じ理由から、消費者契約法の民法典への統合については反対意見でございます。
また、「理由」の(3)ですけれども、民法改正に伴う消費者契約に関する特則の立法化の必要性は高まっていると思います。一つ、考えないといけない点として、民法で仮に原則規定のみが立法化される、消費者契約に関する特則規定・例外規定とかが民法では消費者契約に関して定めるのはやめにしようということになって原則規定だけが立法化されて消費者契約に関する特則規定の立法が遅れる、そういう事態になったら、これは大問題であろうというふうに思っております。したがって、原則規定を民法で改める際には、消費者契約についてはどう考えるのか、その原則をそのまま適用するのか、例外規定を設けるのかということについては、同時に立法しないと全体像をちゃんと法制化したことにはならないと思います。
その意味で、法務省と消費者庁が協力することによって、民法と同時に消費者契約法を改正する方法で、消費者契約に関する特則規定を立法化することが最も望ましいと思います。本来あるべき民事ルールの法改正の在り方としては、消費者契約の特則としてどのような規制が必要なのかというのをまず考え、次に、それを民法と消費者法のどちらに割り振るのが合理的かという観点から法の位置づけを考えるという点について、十分な議論と体系的な立法が必要である。そのためには消費者庁の方も、消費者契約法を、民法が変わるという前提を踏まえてどう変えるのかという点についての議論を早急に行うことが必要であろうと思います。このまま民法改正作業のみが進んでいくと、消費者保護に関する特則の部分について、それが不完全なものになる、もしくは遅れてしまうことになっては非常に問題かと思います。
法制審の民法改正問題については、今月の末から第2ステージに入ってまいります。その第2ステージが終わったときに、中間試案というふうに方向性が取りまとめられると聞いております。その時期については現時点でははっきりしないと聞いておりますけれども、仮に第1ステージと同じように1年半程度の期間だとすれば、平成25年の年明けぐらいには第2ステージの議論が終わってしまうという形になるかと思います。したがって、どの論点に対して、どういう方向性で立法していくのかという議論自体が、民法の改正の土俵では一通り終わってしまうことになってしまいます。それから消費者契約法の改正の議論とかをしていても、時の間に合わないということになるのではないかと思います。
法制審における民法改正の議論と、消費者庁における消費者契約法改正の議論は、並行しての議論、相互に関連させながらの議論が不可欠かと思います。したがって、消費者庁の方では可及的速やかに消費者契約法の実体法改正の議論を開始しないと、間に合わないのではないかというふうに非常に危惧をいたしております。この点、本日は強く、消費者庁における消費者契約法の実体法改正の議論を開始する必要性があるのではないかという点について、是非とも御検討を賜りたいと思います。
法制審の方には、消費者庁から関係官として職員の方も列席しておられますから、法制審の議論状況を消費者庁も理解されておられるはずです。また、消費者庁の方で新たな審議会で法制審と同じ議論を一から開始するというのも、時間と費用と労力の無駄ではないかと思いますので、法制審の議論の使えるところは消費者庁の方でもうまく使えば、その立法スケジュールというのも対処が可能ではないかと思います。人的な問題があるということも存じあげてはおりますけれども、言っていられない問題ではないか、より重要な問題ではないかというふうに思います。予算措置を講じてでも対応すべき重要な問題ではないかと思います。
私の方で申し上げたかったことは以上でございます。細かいことはありますけれども、時間の関係で割愛させていただきたいと思います。ありがとうございました。

○松本委員長 ありがとうございました。詳細な意見照会に対して、ごく一部しか、各団体から御発言をいただくことができませんでしたが、ただいまの御説明につきまして、委員の皆様から質問や御意見がございましたら、お出しください。
中村委員、どうぞ。

○中村委員長代理 今日、ここで設定したテーマは民法(債権法)の改正だったのですが、お二人のお話を聞いていると、消費者契約法の改正を早くやれというメッセージにしか聞こえてこないので、ちょっと確認なんですけれども、今、消費者契約に関する議論を政府部内でやっているのは法制審しかないわけですね。山本弁護士も最後に言われましたけれども、昔は、いろいろな消費者関連の立法は国民生活審議会でもやれば、産業構造審議会でもやって、それらをやがてすり合わせて法律になっていくというプロセスを多くたどっていたのですが、今日のお話を聞いていて、消費者契約法の改正を先にやれという雰囲気だとすると、今の法制審の議論はストップしてでも別個にやってくれということなのか。今、民法改正の中で議論されていることに対するスタンスをどういうふうに持っておられるのか。その辺をお二人に、もう一回明確に意思確認したいのですが。

○山本弁護士 民法改正との関係は、論者によっていろいろ考え方はあるかもしれませんけれども、私どもの意見を申し上げさせていただきますと、民法改正というのは、結論から申しますと、同時に改正すべきであろうと。民法は民法で改正するのは必要だとは思いますけれども、その改正は、どうしても消費者契約に関する法規範を変えることを必然的に伴う。そうであれば、その特別法である消費者契約法も同時に改正しないと、我が国の消費者契約をどう律するかという問題について全体像が決まったことにはならない。原則を変えるなら、例外もどういうふうに定めるかというのを同時に議論しないといけないはずだと。
今、法制審で例外の部分まで一緒に論じられていますけれども、所管の問題で、ある種の遠慮がちの議論がなされているところがある。その点については、消費者庁がむしろ一緒に入っていくことによって、消費者契約法の立法、今まで課題になっている改正の必要性も踏まえて、また新たに必要になった改正の点も踏まえて、それは同時に立法されないといけないだろう。少なくとも民法だけが法制化されて、消費者契約法だけが現状のままで残ってしまうという状況は、これは絶対に避けないといけないだろうと思います。
また、現行の消費者契約法も、民法の規定を準用している条文がたくさんありますので、民法を改正したら、消費者契約法は形式上も絶対に変えないといけないはずなので、その改正を実質改正にするべきだろうというふうに考えております。

○社団法人全国消費生活相談員協会丹野理事長 ほとんど同じでございまして、先生が言い尽くしていただいた通りですが、私どもから見ると、民法改正の論議が非常に早い。私どものところに、消費者の目線のところに項目、方向、内容が浸透してくる前に、非常に神学論争的にいろいろなことを論議しておられて、ドラスティックに改正することを目的としていらっしゃる割には、我々一般庶民に遠いレベルでやっておられる。
では、民法が全部消費者法をカバーしてやってくれるのかというと、先ほどから申し上げているように、民法という基本法の性質上、その時点では間に合っても、結局、その後新たな問題が出てきて、ずれていって間に合わないことができてくるだろう。そう考えれば、やはり特別法で補完しなければいけない。消費者が消費者に関する法律を考えるときに、民法はと特別法がそれぞれ違う部分ができることになると大変というか、混乱すると思います。それを考えれば、どうやったって既に消費者契約法があるのだから、その消費者契約法を直していって、民法は、ある意味レファレンス機能みたいな抽象的なものを残しておいて、特別法のところで細かい規定を設けていく方がいいのではないかと思っております。

○中村委員長代理 民法に消費者契約法を統合することには賛成しかねると言っているのだったら、消費者契約法の改正を、どこで誰が議論したらいいのかということについてのお考えを、ひとつ聞いておきたいのですが。

○社団法人全国消費生活相談員協会丹野理事長 そのために消費者庁があるのだと思っておりまして、消費者庁さんに頑張っていただいて、物理的な、人的な制約というお話がいっぱいあるだろうけれども、それはそれとして、何よりも一番最初にやることは、消費者契約法を今の時代に合うものに直していくことを考えるべきだと思っています。

○山本弁護士 同意見でございます。消費者庁さんの役割であろうというふうに思います。

○松本委員長 ほかに御意見はございませんか。
山口委員、どうぞ。

○山口委員 ありがとうございました。確認ですが、私の認識する限りでは、消費者庁ができる前に、内閣府の国民生活審議会で消費者契約法の実体法部分の改正の審議がされていたと思います。簡単には言えないかもしれませんが、どの程度その審議が煮詰まっていたのか。その辺をわかれば教えていただきたい。
それから、先ほど山本弁護士から簡単に説明がありましたけれども、今回の民法改正の論議で取り上げられていない、消費者契約法で独自で改正なり検討すべきと思われる点はどういう点があるのか。それも整理して出していただければと思います。

○山本弁護士 ありがとうございます。前者の御質問に関して、本日配付させていただきましたレジュメの3ページに、少し細かくなるので割愛させていただいたのですけれども、書かせていただいております。消費者契約法が立法化されたときに、衆参両院の附帯決議において、5年を目途に見直しを含めた措置を講じることになっておりました。また、平成17年4月に策定された消費者基本計画においても、見直すというお話になっておりました。それを受けて、真ん中ぐらいの(イ)のところからですけれども、内閣府及び消費者庁においては法改正に向けた取り組みを一部なされておりました。
まず、所轄官庁である内閣府においては、平成18年に諸外国の立法状況について調査をして、その調査結果を報告書としてホームページ等にアップされております。その調査結果については『別冊NBL121号』ということで本にもなっております。これが契約締結過程に関する立法準備作業です。
不当条項規制に関しては、平成16年及び平成19年の2回にわたって、不当条項に関する我が国の社会実態の調査を行っておられます。それについても、消費者契約における不当条項の横断的分析ということで報告書としてホームページにアップされておりますし、『別冊NBL128号』ということで本にもなっております。
更に、国民生活審議会の方で平成19年8月に、消費者契約法の実体法改正に向けた現行法の評価や論点の検討・整理が行われて、この報告書も書面化されております。
ここまで作業されていたのですけれども、この後、いわゆる消費者庁の設置問題というのが起こって、優先すべき立法課題が次々と生じているということで、改正に向けた作業は、事実上、停止している状況ではないかというふうに私は理解しております。それが前者の点に関する回答でございます。
次に、後者の、民法改正の議論の中で論じられていない点としてどういうものがあるかという点に関して、これは多岐にわたるのですけれども、代表的なものとしては、契約締結過程に関する公正化のところで、不当勧誘行為に関する一般的規定の導入というのが論点として挙がってきておりません。社会正義に反する不公正な契約勧誘行為があったら、それで取り消せるようにするという受け皿的な規定があれば、新しい悪徳商法にも対応できるのですけれども、そういう立法をしようという論点設定は、少なくとも今のところ、法制審の議論ではなされていないと思います。
あと、情報提供義務違反に関して、これは損害賠償義務というところで議論されていて、それに取消権を与えようという議論はなされておりません。不招請勧誘の問題も、論点としては挙がってきていないというふうに理解しております。
契約内容の公正の点に関しては、不当条項規制について、今、論点にはなっていますけれども、実際に民法の中で、不当条項リストをどこまで列挙する形で立法化できるのかということについては、なかなか不透明な要素があるのではないか。消費者契約法だと、リストとして列挙するのは言ってみれば当然のことになると思いますけれども、民法でどこまでリスト化というところまで対応できるのかということについては、まだ不透明なところですが、消費者契約法のように簡単にはいかない側面があるのではないかと思っております。
以上です。

○松本委員長 ほかにございませんか。
下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 お二方、ありがとうございました。本日は、丹野さんからは事例をもとに、そして、先生の方からは詳しくまた御説明がありまして、私たち消費者にとっては非常にわかりやすく理解できたと思っています。特に民法と契約法の関係につきましては非常に関心が高かったし、また、基本計画の中にうたわれているにもかかわらず何もされていないということは、お二方の御意見で非常に力強い思いもいたしました。基本計画が閣議決定されておりますので、是非皆さんのお力も加えて、消費者庁も頑張っていただければいいのかなというふうに思っております。ありがとうございました。

○松本委員長 ありがとうございました。お二方、かなり共通の御意見だったと思います。消費者契約法を民法に一元化していくことは適切でない。消費者契約法の見直しを早急に行うべきである。更に、消費者契約法と民法の関係をきちんと考えて、消費者庁と法務省が協力しながら作業を行うべきである。どのようなルールをどちらの法律に配置するのが適切かをお互いに考えながらやるべきである、という御指摘だったと思います。消費者委員会としましてもこの問題は大変重要な問題だと考えておりますので、引き続き、注視してまいりたいと思います。
本日は、全国消費生活相談員協会及び日本弁護士連合会消費者問題対策委員会におかれましては、お忙しい中を当委員会の審議に御協力をいただきまして、ありがとうございました。

≪3.「消費者基本計画」の「検証・評価」(平成22年度)及び計画の見直しについて≫

○松本委員長 続きまして、「消費者基本計画」の「検証・評価」(平成22年度)及び計画の見直しについてです。消費者基本計画の検証・評価と見直しにつきまして、これまで消費者委員会におきまして、具体的施策に関する関係省庁からのヒアリングを行うとともに、消費者庁から検証・評価及び見直しの状況について、各段階ごとに報告をいただいてきたところです。本日、消費者基本計画の検証・評価及び計画の見直しについて、閣議決定が行われたとのことでございますので、本日はこれについて消費者庁から御報告をいただきたいと思います。
それでは、どうぞ御説明をお願いいたします。

○消費者庁成田消費者制度課長 消費者庁消費者制度課の成田でございます。
消費者基本計画の検証・評価と見直しにつきましては、これまで6月3日の消費者委員会に素案を御説明し、6月10日に消費者委員会から御意見をいただいております。その後、消費者庁におきまして、5月25日から6月7日まで実施いたしました御意見募集の結果、消費者委員会の御意見を踏まえて素案を修正し、その内容につきまして、6月17日の消費者委員会において御説明させていただいているところでございます。更に、先週の消費者委員会におきまして、国民生活センターの在り方についての記載の修正につきまして、地方協力課から御説明させていただいていると承知しております。本日、消費者基本計画の検証・評価と基本計画の見直しの案が、消費者政策会議、これは持ち回りで開催されましたけれども、ここにおいて案が決定されまして、その後、閣議決定されましたので、御報告させていただきます。
資料でございますけれども、資料3-1が閣議決定の資料でございます。前半に別紙といたしまして、見直し後の基本計画を付けてございます。後半に別添といたしまして、「平成22年度の具体的施策の実施状況に関する検証及び評価の結果」を付けてございます。また、資料3-2といたしまして、基本計画の新旧対照表を参考として配付させていただいております。
これらの資料につきましては、御意見募集においていただいた御意見と、それに対する考え方とともに、本日から消費者庁のホームページにおいても掲載しております。内容につきましては、17日と先週の委員会で御説明させていただいた内容と基本的に大きく変わっておりませんので、中身の御説明については省略させていただきます。
大変簡単で恐縮でございますけれども、御報告は以上でございます。

○松本委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいま御説明のございました消費者基本計画につきまして、どうぞ、委員の皆様から御意見、御質問がございましたら、お出しください。
佐野委員、どうぞ。

○佐野委員 資料3-2の最初のページの第2のところ、下の方に書いてあるのですが、東日本大震災への対応について、本来でしたら各省庁の施策をもう少し細かく書いていただきたかったところを、この3行でまとめてしまってあります。今後、どういう形で各省庁が政策を展開していくのか、来年度、どういうふうに検証をする形になるのかということを、具体的にもう少し教えていただきたいと思います。
それから、先週もいろいろ議論がありましたけれども、国民生活センターに関しては一文字も変わらずに、そのまま、「一元化することを含め」というふうに入ってしまったことに、非常にがっかりというか、消費者の声を反映させていただけなかったことに関しては抗議したいと思います。
以上です。

○消費者庁成田消費者制度課長 前半の震災への対応でございますけれども、消費者庁の中でも、関係省庁ともいろいろと御相談したのですが、今やっている施策、これからやっていく施策、まだかなり動きがあろうかと思います。そういう意味で、今、各施策の中に具体的に何をするというのを書いていくのは難しいだろうと。基本的な考え方を総論の中で書いていくということで整理いたしました。例えば、リスクコミュニケーションの施策がございますけれども、ここでどういうふうにわかりやすい情報提供をしていったのかとか、消費者基本計画にある施策については、検証・評価の中で、震災への対応をどういうふうにやっていったのかということも検証していくことになるのではないかと思っております。
国民生活センターにつきましては、先週、長官からいろいろと御説明をさせていただいたと理解しておりますので、私の方から重ねては申し上げません。今、佐野委員から御指摘のあった事項については上に伝えたいと思います。

○松本委員長 中村委員、どうぞ。

○中村委員長代理 基本計画の中の「担当省庁等」の欄が結構変わっているのですが、そのことについて、本文等にどこかに説明されているのですか。去年の基本計画を見ていた人が今年を見ると、担当省庁が消えているのが幾つかあったりするのですが、この辺は説明をしておかないとわからないのではないですか。我々はこのあいだ御説明を受けたから、国民生活センターがここから消えたというのはわかっているのですが、一般国民の人はこれだけでわかりますか。

○消費者庁成田消費者制度課長 まず、事実関係としては、計画のどこかに担当省庁が変わったことについて触れている部分はございませんので、変更事項については、新旧対照表もホームページに載せておりますので、ここで御確認いただければと思います。国民生活センターを担当省庁から削除したことにつきましては、御意見募集でもかなり御指摘がございまして、先ほど御紹介いたしましたけれども、本日公表した資料に、考え方については一応記載させていただいているところでございます。

○中村委員長代理 閣議決定されたその大臣たちは、そういうことを理解して決定されたのでしょうか。そこがちょっと心配になりますね。

○消費者庁成田消費者制度課長 各省庁において、必要な事項をそれぞれの大臣に上げていただいていると理解しております。

○松本委員長 今、中村委員が質問されたこととの関係で私も質問したいのですが、例えば新旧対照表27ページの125番というのが、単に担当省庁の名前の国民生活センターというのが消えただけではなく、施策全体が消えています。どうしてですか。消費者庁の現在の案だと、消費者庁国民生活センターという名前で、従来の国民生活センターが担っていた機能は施設等機関として実施するんだというお話だったと思います。それなら、ここの国民生活センターを消費者庁と置きかえて残すのが適切かと思いますが、完全に消してしまっているというのは、施策としてやらないということですか。

○消費者庁成田消費者制度課長 この部分については総則の記載と重複するので、削除するという整理をしたと理解しております。

○松本委員長 総則というのはどこを指していますか。

○消費者庁西川消費者制度課企画官 新旧対照表の2ページ目です。

○松本委員長 個別施策としてではなくて、地の文といいましょうか、一般的に書かれていることの中にとかし込んだから、もう要らないということですか。

○消費者庁成田消費者制度課長 そのように理解しております。

○山口委員 総則のどこに書いてありますか。

○松本委員長 2ページの右側の上の方、傍線の引いてあるところです。

○中村委員長代理 今の話だと、各論と総論というのはどこで区分けして、そういうふうに去年まで各論だったものが今年は総論になるのですか。どういう考え方なんですか。

○消費者庁成田消費者制度課長 消費者庁内でいろいろと議論をしていく中で、この部分については総論に書くということで整理をしたものでございます。

○松本委員長 総論に移ったから手を抜くということはないだろうと信じたいと思いますから、場所がどこかにかかわらず、従来やってきた施策を廃止するというわけではないのであれば、きちんと継続してやっていただきたいと思いますし、消費者委員会としてもそういう視点で、総論の方につきましてもやはり監視機能を強めていきたいと思います。
ほかに、御意見等ございませんか。

○池田委員 同じことですけれども、133番は総論のどこに入ったのですか。

○消費者庁成田消費者制度課長 3ページにも変更部分がございますので。

○池田委員 それは違うんじゃないですか。それは、国センの一元化に係る記述の変更部分ということの下線ではないですか。133番には対応してないのではないですか。

○消費者庁成田消費者制度課長 全体として総論の中で読めると判断したと理解しております。細かいところ、もしも必要があれば確認をさせていただきたいと思います。

○松本委員長 125番と133番は共に、総論2ページの上の「地方公共団体への支援・連携」の傍線、4行程度に入ったという御趣旨ですね。

○消費者庁成田消費者制度課長 はい。従来からある部分と合わせて読めるというふうに考えております。

○池田委員 趣旨が違うと思いますね。

○山口委員 明らかに133の商品テストは表現も落ちています。落ちているけれども、やるんだという話ですか。

○消費者庁成田消費者制度課長 そのように理解しておりますけれども、確認させていただきます。

○松本委員長 どうぞ、下谷内委員。

○下谷内委員 なかなか理解がしにくいので、教えていただきたいのですが、この総論のところで、変更点、変更前もそうですが、2行目、「政府は、各地域の社会的、経済的状況も踏まえて、強力な支援を行い、地方公共団体との連携を強化します」と書いてあります。先日、次長も一言のもとに、PIO-NETに対しては財政的援助をしないとはっきり言われたのですけれども、これと財政的なあれというのは、単に活性化基金だけのことをおっしゃっているのですか。機械の設置だとか、技術を導入する、入力負担の軽減とか、そういう技術なことではなくて、財政的な負担というのは、2行目からのところに対応していないのではないかというのが、一点、感じています。全否定されましたので。建議の中とか、地方行政法の先生方にも、PIO-NETの財政的負担というのは、国の共有財産だから当然できるという御意見がありました。その辺のところがどうしても見えてこない。地方自治だからといって、一言のもとでこういうふうにされるのとは違うのではないかという気がします。

○消費者庁成田消費者制度課長 財政的な支援については、今回の見通しで、表現を変えていないと思いますので、この基本計画の今回の見直しでどうという話ではなく、具体的な財政支援を消費者行政支援の中でどのようにしていくかということについては、また機会を改めて御議論いただければと思います。

○下谷内委員 施策番号1のマル2、PIO-NETにところを、今、伺ったのですけれども。

○消費者庁成田消費者制度課長 財政支援の話はここでは書いていないのではないでしょうか。

○下谷内委員 ここに出てこない。

○消費者庁成田消費者制度課長 施策番号1に、前もなくて、見通し後もありませんので、この施策はこの施策として実施していく。そのほかに、今、御指摘のあったことについてどうするかというのは全体の中の話だと思っております。

○下谷内委員 なかなか意見というのは通らないんだなあ、というのを感じております。

○松本委員長 どうぞ、日和佐委員。

○日和佐委員 今、皆さんがおっしゃっていらしたことと関連しますけれども、前は総論のところに書いてあり、それを具体的にどこがやるかということで番号をつけて、具体的に消費者庁なり国民生活センターなりということになっていたわけですね。それをやめて、具体的なところがなくて、総論にあるから、そこに移行したので、やりますということのようなんですけれども、総論にあっても、では、それはどこがやるのかということを具体的に記述していただかないと、具体化が果たしてどうなるのかということで私どもは非常に疑問に思うし、不安に思うわけなので、この記述の仕方はやはりよくないと思います。
なおかつ、「一元化することを含め」という文章については、多くの消費者委員会の委員が削除を求めていた項目ですけれども、それがそのまま残っているという状況です。総論に移行したので各論をやめましたというのは、すべて国民生活センターにかかわる事業計画であるということで、この辺りを関連づけると、一元化に向けての意図的なものをどうしても感じてしまう。ですから、「一元化することを含め」という意味について、改めて、どういう解釈でこのような文章になっているのか、もう一度明確にお話をいただきたい。

○消費者庁成田消費者制度課長 「一元化」につきましては、先週、長官から御説明しておりますので、それで言い尽くされていると思っております。

○松本委員長 もう1点の、各論が総論に引っ越した場合の実施主体はどこになるのでしょうか。

○消費者庁成田消費者制度課長 総論に何を書いて各論に何を書くかということは、今回の見直しでも、少し議論をしたのですけれども、どういうことを各論に書いて、どういうことを総論に書くのかというのは、もしかすると整理しきれていない部分があるかもしれないと思っております。それはまた、今後の計画の見直しなり検証の中で少し整理をしていきたいと思っております。

○松本委員長 ほかに、御意見、御質問ございませんか。
山口委員、どうぞ。

○山口委員 今年度の基本計画として閣議決定されたので、もういろいろ言ってもしょうがないところだと思いますが、なお、先ほどの疑問点については調査の上で御回答をいただきたいと思います。私は、地方消費者行政強化の観点で専門調査会でいろいろ議論し、かつ建議を消費者委員会でしてきた立場として、27ページに地方消費者行政のことが少し出ていますが、是非、2つお願いしたいと思います。
1つは122番で、改定された内容として、「地域住民の意思に基づく充実強化が図られるよう、地域主権改革の理念を踏まえ、地方消費者行政・消費生活相談体制の実態調査や消費者委員会における審議結果なども参考とし、全般的に検討を行います」とあります。少なくとも、「消費者委員会における審議結果などを参考とし、検討を行う」と。検討だけではなく実施もしてほしいのですが、いずれにしても審議結果を参考にして、是非、地方消費者行政の強化のために何をするかということの具体的な内容を、より明らかに。これは当然、今年の末辺りにも検証・評価があるわけでしょうから、具体的に何をどうしたのかというところについては具体化していただきたい。
次に、国民生活センターで、土日の相談に加えて平日においてもバックアップに取り組むということが書いてあります。これは、実施する方向でやられているということで理解していいと思いますが、是非強化してほしい。
1枚めくっていただきまして、128ですけれども、先ほど来議論が出ていますように、「PIO-NET端末の設置に向けて検討を進めることや」云々と書いてあります。PIO-NETの端末をたくさん設置していただく、これは大変結構な話で是非実現してほしいのですが、端末を入れた以上、それの入力作業というのがあるわけです。その辺をどういうふうに予算措置を講じるのかということは、これは焦眉の検討課題だと思います。これはこれとして決まったものでしょうけれども、端末の設置に向けての検討、実施だけではなく、それを有効活用する方法も具体的にどうするのか。これは消費者庁としての課題になると思いますので、是非それは検討をお願いしたいと思います。

○松本委員長 ほかに、ございませんでしょうか。
閣議決定をされました消費者基本計画につきまして、消費者委員会から幾つか意見を申し上げたことになります。私としては一番気になるのは、各論の個別の施策番号から消えて総論の中にとけ込んだものの扱いであります。消費者委員会としては、従来、総論に書かれていることは内閣としての方向性、姿勢を示すものであるという認識のもとに、総論に書かれていることについて個別に検証するということはやっておりませんでした。各論として書かれている百数十の施策から、重要と思われる緊急性の高いものをピックアップして検証をやってきたということです。
例えば、震災対応につきましては総論のところに書き込まれておりますが、このままだと恐らく検証というのはなかなか難しいことかと思います。ただ、施策番号121では、消費者庁の個別施策として、「今回の『東日本大震災』で被害を受けた自治体のバックアップに取り組みます」と書かれておりますから、この施策を取り上げて消費者庁から状況等をお聞きすることは具体的にやれるかと思います。そういう意味で、施策から単純に消えて同じ文章が総論のところに載っていますというだけだと、やはり少し問題があるのではないかと思います。毎年、基本計画は改定されることになると思いますから、次回の改定の際には、そういった点について十分に留意をしていただきたいと思いますし、消費者委員会としても、検証・評価・監視の仕方について、総論部分に書かれていることをどういう形で取り上げるかについては検討したいと思います。
これ以外の書かれております施策につきましても、実施状況について、今後、消費者委員会として検証・評価・監視を行っていきたいと思います。
消費者庁におかれましては、お忙しい中を審議に御協力をいただきまして、ありがとうございました。

≪4.閉会≫

○松本委員長 本日の議題は以上でございますが、6月8日に委員会の下部組織である「食品表示部会」の第10回会合が開催されております。本日は、食品表示部会設置・運営規程第8条第2項の規程に基づき、その審議結果の報告をいただきたいと思います。
それでは、田島部会長からよろしくお願いいたします。

○田島委員 食品表示部会部会長の田島です。
6月8日に開催いたしました食品表示部会の議決について、食品表示部会設置・運営規程第8条に基づき、委員長の同意を得て委員会の議決とし、7月1日付で内閣総理大臣へ答申を行いました。
本答申は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令第7条に規定する表示基準を新たに内閣府令として設定するものです。厚生労働省令である乳等省令第7条に乳及び乳製品に関する表示基準が規定されております。消費者庁の設立に伴い、当該基準に関しては、本来、内閣府令として新たに規定するべき内容でしたが、当初、消費者庁設置の際にこのような手続が間に合わなかったことから、当面、厚生労働省にそのまま規定されていたところです。本制定は、従来の食品衛生法に基づく乳及び乳製品の表示に関する基準を実質的に変更するものではありません。改めて、そのまま内閣府令として新たに規定し直すということで検討を行ったところでございます。本日は、同条第2項の規定に基づき決定事項を委員会に御報告するものです。資料4に答申書がありますので、ごらんください。
今回の部会では、平成22年12月13日付消食表第458号をもって諮問のあった内閣府令の制定に関し、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令第7条に規定する表示基準を内閣府令として新たに制定することについては、別添のとおり、制定することが適当であるとされました。
私からの報告は以上でございます。

○松本委員長 ありがとうございました。
最後に、事務局より、今後の予定について御説明をお願いいたします。

○原事務局長 今日は少し早く終わっておりますけれども、御審議、ありがとうございました。
次回の委員会は、第3週になりますけれども、7月15日、来週の金曜日15時から行う予定です。
議題としては、「消費者安全専門調査会の報告について」を予定しております。それに加えて、これまで消費者委員会で行った建議のフォローアップを順次行っていきたいということで、そちらも予定をしております。
事務局からは以上です。

○松本委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)