第50回 消費者委員会 議事録

日時

2011年3月11日(金)15:06~16:25

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
 松本委員長、中村委員長代理、池田委員、佐野委員、
 下谷内委員、田島委員、日和佐委員、山口委員
【説明者】
 群馬大学教育学部 高橋久仁子教授
 消費者庁 畑野取引・物価対策課長
 金融庁 小原総務企画局企画課保険企画室長
【事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.健康食品の表示の検討について
○説明者: 群馬大学教育学部 高橋久仁子教授
3.公益通報者保護制度について
4.特定商取引法施行令の改正について
○説明者: 消費者庁 畑野取引・物価対策課長
金融庁 小原総務企画局企画課保険企画室長
5.閉 会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:81KB)
【資料1】「健康食品」の宣伝・広告等の現状と問題点~食生活教育の立場から~(高橋教授提出資料)(PDF形式:430KB)
【資料2】公益通報者保護制度について
【資料3】特定商取引に関する法律施行令の改正に係る消費者委員会への諮問について(消費者庁提出資料)(PDF形式:72KB)
【資料4】保険業法に係る特定商取引に関する法律の適用除外のための政令改正について(金融庁提出資料)(PDF形式:29KB)
【参考資料1】特定商取引に関する法律施行令の一部改正について(諮問)(PDF形式:34KB)
【参考資料2】委員間打合せ概要(PDF形式:9KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、時間を過ぎましたが、エレベーターも復旧の目途が立たないような状況ですし、委員も一人、まだお見えになっておりませんけれども、始めさせていただきたいと思います。
今日は「消費者委員会」の第50回という記念すべき会合です。こんなことになりまして、あたふたとしておりますけれども、傍聴者の方もどうもありがとうございます。
それでは、委員長、どうぞよろしくお願いします。

○松本委員長 それでは、さっそく議題に入ります。

≪2.健康食品の表示の検討について≫

○松本委員長 本日は、当初予定しておりました「健康食品の表示の検討について」「特定商取引法施行令の改正について」に加えまして、「公益通報者保護制度について」を議題として取り上げたいと思います。
初めに、「健康食品の表示の検討について」です。健康食品の表示の検討につきましては、消費者委員会において、これまで4回にわたって関係団体や有識者よりヒアリングを行ってきたところですが、本日は、高橋久仁子群馬大学教育学部教授においでいただいておりますので、表示や広告の在り方、消費者への情報提供等について御説明をいただき、併せて議論を行いたいと思います。
それでは、御説明をお願いいたします。

○群馬大学教育学部高橋教授 群馬大学の高橋久仁子です。よろしくお願いいたします。
私は、教育学部の家政教育講座というところで食生活教育を担当しております。今日は食生活教育を担当する立場から発言させていただきます。
資料1の2ページ目をごらんください。総務省では、健康食品という言葉は使っておりませんで、健康保持用摂取品という言葉を使っていることをまず御紹介しておきたいと思います。
「『健康食品利用』の健康問題」として、次の3ページをごらんください。私は7点に整理しております。
1番目として、有毒物質を含有する場合がある。
2番目として、医薬品成分を含有する場合がある。
3番目として、一般的な食品成分でも病態によっては有害となることがある。
4番目として、抽出・濃縮等によって特定成分を大量に摂取することは、もとの食品をたくさん食べることとは別次元の問題を生むという問題。
5番目として、食生活を改善させたような錯覚に陥らせてしまう。
6番目として、効果を過信して、あるいは思い込まされて、標準医療を受ける機会を逸してしまう。
7番目として、プロポリス、イチョウ葉がその例かと思いますが、もともと食用歴のないものが、健康食品という冠をかぶせることで食品の仲間入りをしてしまう。
こういったことが問題として挙げられますが、食生活教育の立場としては、赤で書きました3番、4番、5番について特に今日は説明いたします。
4ページ目をごらんください。「一般的食品成分でも病態によっては有害」という例を幾つか挙げました。世の中にタンパク質系のいわゆる健康食品があります。タンパク質はアミノ酸の重合体ですけれども、こういったマルチアミノ酸、あるいはクロレラ。クロレラもそれなりのタンパク質を含んでおります。大豆タンパク、小麦タンパク、そういったものを粉末化したものをプロテインと称して売っている。2gあるいは10g程度のタンパク質を余計に摂取しても、健康な方の場合には何らか悪影響はありませんけれども、1日タンパク30g、40gというタンパク摂取制限をしていらっしゃる方の場合には、これは決していい方向には働かない、マイナスに働いてしまうという例です。
また、腎機能が低下していらっしゃる患者さんは、カルシウムを高濃度に含有する製品で腎機能を更に悪化させてしまうこともあるわけです。
また、核酸を含む食品、あるいはクランベリー含有製品。今どき、痛風・高尿酸血症の方に厳しく肉・魚の摂取を制限するという食事療法は一般的に行われておりませんけれども、こういった製品から核酸をそれなりに含むものを余計に摂取するというのは、害あって一利なしと言っていいと思います。また、クランベリー含有製品は尿のマル8を下げるということで、高齢者に多い尿路感染症を防ぐということを、隠れたセールストークとして売られています。もしそれだけの効果があるのであれば、高尿酸血症・痛風の方には不適切であるということになります。これが3番目としての、一般的食品成分であってもある種の病態を持つ方には有害になるという例です。
5ページ目に移ってください。抽出・濃縮・乾燥等によって特定成分を大量に摂取するという問題。これは、いわゆる健康食品の宣伝で常套句として使われますが、「医薬品ではありません。食品だから安全です」と。これは全く根拠がないわけで、食品成分といえども危害要因、ハザードになり得るわけです。その例としては、βカロテン錠剤を摂取することによって、喫煙者の肺がんが防げるどころか増えてしまった、これは1994年の研究報告であります。
また、乾燥アマメシバ摂取によって閉塞性細気管支炎を起こしてしまう。アレルギー性の肝障害・肺障害、こういったものが起きる。食べ物としての常識的な量で食べているのであればそこまで引き起こす量には至らないのに、「体によい」ということで、継続的に食べることによって起こってしまうことがあるわけです。また、自己免疫疾患の誘導、例えば緑茶抽出物錠剤で肝障害という事例もあります。
こういったことで、たとえ食品成分であるといえども問題が起こるという例です。
次をお願いいたします。「食生活の改善を錯覚させる」という例です。野菜を粒にしましたという製品が、ここに3製品挙げましたけれども、これ以外にもあります。
では、野菜を粒にしたという製品を1日の目安とされる量を飲んで、もとの野菜どれだけに匹敵するかということを調べてみますと、例えばAという製品では、生の野菜22g分でしかない。Bという製品も20g程度でしかない。Cという製品の場合には、15g程度でしかない。
どの会社も、1日に350gの野菜摂取が望ましいと厚生労働省が言っていることを承知していながら、その1割にも満たないもので、「これを飲めば野菜不足を補えます」とは一言も書いていないのですけれども、そう思わせてしまうような宣伝・広告を展開しております。私は、こういった会社にいろいろ問い合わせをしたり、意見を言ったりしていますが、一向に改善されることがありません。
次のページをお願いいたします。今、一般的に消費者は行間を読まされております。「何々に効く」「何々によい」、そういう文言は一切書いてありません。書いてありませんけれども、読まされております。
そこに幾つか例を挙げました。6つ並べてあるものをごらんください。「若々しくありたいすべての方へ」、若々しくなれるとは書いていないわけです。「負けないちから」とは何のことでしょうかと言いたくなりますけれども、「“負けないちから”を目指すあなたへ」、「“うっかり”が最近気になるあなたへ」、いろいろあるわけです。
そして、「毎日1本。飲むコラーゲン しっとり・ぷるぷる・すっきり」、となるとは一言も書いていないわけでして、これはコラーゲンの宣伝すべてに共通することです。マリンコラーゲンとあるところにも、「こんな方におすすめ」とあります。
「糖値サポート」という製品は、実は既にない製品ですけれども、5、6年前にはありました。これもまた、「甘いもの、控えたほう方がいいのよね」と。でも、これを飲めば、それを控えなくても大丈夫ということを思わせてしまうわけです。
そして、私が食生活教育の立場から問題にしたいことは、左下に緑色の字で、「こんな方におすすめします」とあります。「中性脂肪が気になる方・青魚を毎日食べられない方・甘い物や果物をよく食べる方・宴席が多い方」。こういう広告というのは、問題のある日常生活を見直すことなく、こういう製品を利用すればそれが解消できるかのような印象を与える。それは非常に困ります。
8ページ目ですが、「『健康食品』による影響の判断と対処」ということを図式化したものです。「効く」「効かない」が健康食品に関してはよく話題になりますけれども、それを論じる前に、「摂取して安全なのか?」が問われなければならないわけです。
製品Aを摂取したときに、影響がなかった場合、これは摂る意味がないということは簡単に理解していただけると思いますが、影響があった場合です。影響があっても、それが期待外の影響で悪い影響だった、これは有害作用として、摂ってはいけないということが簡単にわかると思いますが、問題は期待した影響があった場合です。
例えば糖尿病の患者さんが、「これを飲むと血糖値が下がる」と言われたとき、そして、それを利用したら確かに血糖値が下がった、でも、そのメカニズムは何なのか。もしかして、違法に医薬品が添加されていたから下がったのではないか。あるいは、体のどこかの機能を障害したから血糖値が下がってきたのではないか。そういうことも考えなければいけないわけです。効いたと感じたならば無条件に利用していいのか、そして、その作用のメカニズムはどうなのかということが問われなければならないわけです。
そして、医薬品は「効果が害を上回る」なら使うという合意が成り立っております。健康食品に関しても、少々の害があっても利益があればいいではないかという、非常に乱暴な論を聞くことがありますけれども、更なる健康を求めて利用する健康食品にどこまでの害だったら許され得るのですか、ということを私は問いたいと思います。
9ページ目です。食品中のいわゆる「機能性成分」を配合した製品では、有効性を発現させるため、そして有害性を発現させないために、摂取量・摂取方法の指示が必要となります。食品の摂取量・摂取方法は個人の自由な裁量に委ねられるべきものであります。過剰摂取の有害性が明らかなアルコール飲料や食塩も摂取量は個人の判断に帰すものであります。ビール1本までにしておきましょうなどということはどこにも書いていないわけです。
用法・用量的なことを指示する必要がある製品を「食品」の範疇に含めることに問題があり、これは食生活教育を複雑化させ、混乱させる一因となっております。
「健康食品の表示に関する検討会」においても「一定の機能性表示を認める新たな制度設計の可能性があるのではないか」との論もあるようですけれども、もしそれを検討するのであれば、食品とは別の範疇で行っていただきたいと思います。食品の範疇とは別なところで行っていただく分には、私は何の文句も言いません。
以上でございます。ありがとうございました。

○松本委員長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問がございましたら、どうぞお出しください。
佐野委員、どうぞ。

○佐野委員 どうもありがとうございました。
最後のページのところですが、これは高橋先生としては、特保とか栄養機能食品も含めてのことなのかということを一つお伺いしたいのと、先ほどの、食生活の改善を錯覚させるとか、行間を読まされると。先生は専門家としてこういうことを規制すべきであると思っていらっしゃるかどうか、その辺りをお願いします。

○群馬大学教育学部高橋教授 ありがとうございます。特保、保健機能食品制度を含めてそう考えております。
2点目ですが、「行間読ませ」に関して規制すべきであるといっても、規制をしても、そこをかいくぐる手法が必ず生み出されてまいりますので、規制してもしょうがない。それは、売る方たちの良心に期待するしかない、モラルに期待するしかないと考えております。だから野放しでいいということではないのですが、どこまで読まされるのかということは非常に線引きしにくいという問題がありますので、基本的にはモラルにお任せしたい、そういうふうに考えております。

○松本委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 2つあります。今の問題ですけれども、いわゆるオーバートークについては、それが事実に反する場合は、薬事法でも、違反ということで薬事法は刑事摘発も含めてありますし、景表法でもかなり執行力のあることができると思います。健康増進法は、やはり同じような建付けで行政的な規制ができるように、罰則も含めてあるかと思います。
その辺で、虚偽の表示、あるいはオーバートークについては一定の規制ができるように思いますが、どこまでが薬事法違反でみなし薬品になるのか、あるいは、どこまでが景品表示法違反で有利誤認や優良誤認になるのか。その辺が、当局者はわかっているようですが、私どもその道の素人から見ると、どこまでが違反で、どこまでが違反ではないのかということがどうもはっきりしない。もう少しはっきりさせるような工夫ができないものかと思うのですが、その辺はしょうがないということなのか、それとも、何か工夫をすれば違反の範囲がもう少しはっきりできるようになるのか、何か御意見があれば伺いたいのが一つです。
もう一つは、この間、議論で出ていますのが、錠剤とかカプセル、あるいは粉末もそうかもしれませんが、ドラッグストアなどで薬品の隣に食品として、濃縮した、いわゆるかぎ括弧付きの健康食品が食品として売られているかと思います。これについて、そのような売り方はだめですと言うのはなかなか実情としては難しいのかもしれませんが、例えば、今、先生が指摘されたような、有害なもの、大量摂取でいろいろ問題が起こりそうなものについては、特に宣伝なり広告について、まず表示をきちんとさせる。これこれこういう人には副作用がありますよとか、これこれこういう薬と併用では問題がありますよとか、スペースの関係があるのでなかなか難しいかもしれませんが、顕著にそういう問題がある健康食品については、宣伝・広告・表示に何か表示を義務づけたらどうかというふうにも思いますが、その辺についてはどういうふうにお考えなのか。
以上、2点をお願いします。

○群馬大学教育学部高橋教授 後の方の質問にまずお答えします。4ページの黒マル3番目に「痛風・高尿酸血症者への核酸、クランベリー含有製品」ということで、錠剤の写真を置いてありますけれども、実はこの左横にはクランベリージュースの写真がありまして、それは隠しています。その製品には、後ろに「高尿酸血症、痛風の方はお医者様に御相談ください」と書いてあるのです。小さな字で書いてあります。御相談されたお医者様は困ってしまうわけです。書いてあっても、それをどう判断するかという問題があります。
それから、1つ目の御質問ですけれども、法律が確かにあって、そういう法律が、明らかに違反しているというものに対して即速やかに対応できれば、それで事は解決すると思います。ただ、いかんせん、監視システム、摘発システムというのが、私に言わせれば、製品の数に対して余りにも人手が少な過ぎます。私自身はこういう違法なものを見つけたときに、それをすぐに関係機関、私の場合でしたら群馬県の前橋市保健所、そういうところに即、新聞広告でこうだったああだった、テレビでこうだったというふうに一々言っていけば、そしてそれにすべて対応してくだされば、制度がある以上、それは速やかに事は解決していくのかもしれません。
でも、現実には、それを一々言うことにもエネルギーが要りますし、また、告発を受けた保健所の側もそればかりにかかりきっているわけにもいかないということで、制度は確かにあるけれども、それが速やかに運営できる状況にないというところに問題があって、「言った者勝ち」の世界になっていると思います。今、コラーゲンを飲めばいかにも肌がつるつるになるかのような宣伝がまかり通っておりますけれども、ああいった広告に対して、少なくとも日本の大手メーカーに対して、その根拠を示せという調査をしなければいけないと思っていますが、残念ながら、まだできていない状況です。とにかく「言った者勝ち」の世界になっている、たまに捕まる業者さんがいるけれども、それは、問題が起こらないうちにその製品を引っ込めてしまえばいいということで現実に動いているという気がいたします。

○松本委員長 田島委員、どうぞ。

○田島委員 御説明ありがとうございました。
健康食品は、先生もおっしゃっているように、いわゆる行間を読ませるという広告が今は主流で、薬事法違反で取り締まることは非常に困難になっているわけです。結局、だまされた方が悪い、と言っては語弊がありますけれども、買う人がいるから売れると私は思うのです。ということで、買わないためにはどんな教育をしたらいいのか。私も高校の家庭科の教科書の編纂をしていますけれども、実際に中学校、高校の家庭科では、健康食品の摂取を控えましょうというようなことは余り触れていないわけです。先生は教育学部でございますので、今、教育の現場ではどのようになっているのでしょうか。

○群馬大学教育学部高橋教授 ありがとうございます。教育の現場でそこまで触れる時間的余裕はありません。小学校の5・6年生から家庭科が始まりまして、中学校そして高等学校も一応家庭科はあります。しかし、未履修問題もあることは御存じのように、家庭科は学校教育の中で軽視されております。「弱小教科」という立場です。技術・家庭科という中学校の課程で男女一緒に学ぶようになったのはいいのですが、時間は増えておりません。ですから、例えば食生活教育に割ける時間というのは非常に限られております。限られている中で、教科書によっては、実は私がかかわった教科書はこういったことにも触れていますが、なかなか項目には上がりにくい。でも、家庭科の教員自身は、「普通に食べる」ということの重要性を伝えていかなければという思いは、大半の教員が持っていると思いますが、教育のシステムの中に組み入れること自体が非常に困難な状況です。

○松本委員長 私からも1点、御質問したいのですが、4ページの「マル3一般的食品成分でも病態によっては有害」。つまり、普通の食品の中にも、ある種の病態の人にとっては有害なものが含まれているという御指摘ですが、これと、5ページの「マル4抽出・濃縮・乾燥等による特定成分の大量摂取」というのが、2つ合わさって初めて危険だということになるのか。4ページだけであれば、すべての食品にとって危険性が含まれている可能性があるという指摘なので、では、何を食べたらいいのですかという話になりますから、むしろマル3はマル4とつながることによって意味があると。そうでもないのですか。

○群馬大学教育学部高橋教授 全く独立した事柄です。もうちょっと説明させていただきますと、タンパク質系、マルチアミノ酸という製品の場合、例えばアミノ酸として2gです。健康な人にとっては、たった2gのアミノ酸を摂って何のいいことがあるのかということです。でも、その2gのタンパク質、このアミノ酸も、腎障害などで、1日30gのタンパク質摂取制限をしてください、40gに制限してくださいという方にとっては1割近いものになってしまうわけなのです。言っている意味、わからないでしょうか。

○松本委員長 私の疑問は、普通に例えばお豆腐を食べていますと。

○群馬大学教育学部高橋教授 わかりました。食事制限をしている方は、普通のお肉やお魚は制限しています。そういうものは、タンパク質の多い食品としてちゃんと制限します。でも、「アミノ酸」とあると、アミノ酸・イコール・タンパク質ということがわからない方もいらっしゃるものですから、アミノ酸製品はタンパク摂取制限の人の対象にならないと思ってしまう方がいるのです。

○松本委員長 そういう意味ですか。

○群馬大学教育学部高橋教授 そういうことです。クロレラもそうなのです。クロレラというと藻類ですね。腎臓の悪い方がクロレラ錠剤をたくさん飲むと、1日摂取量で3gぐらいのタンパク質に相当してしまいます。クロレラにタンパク質が多いなんて思ってもみないものですから、肉や魚や牛乳や卵は制限しているのに、こういうものを利用してしまう人がいるのです。そういうことなので、この3番と4番は全く違うことです。

○松本委員長 まさに食品の表現の仕方に問題があって、普通の健康指導を受けている立場から見れば想像できないような名前の食品で売られているから、食事を制限されている人にとってはそこがわからないという御趣旨ですね。

○群馬大学教育学部高橋教授 はい。

○松本委員長 わかりました。
どうぞ。

○山口委員 もう一回、その意味でお聞きしたいのですが、5ページのマル4、やはり大量摂取し過ぎると明らかにいろいろ問題が起こるということになりますと、しつこいようですが、先ほどの先生の御説明だと、錠剤やカプセル、粉末について、表示といっても「お医者さんに御相談」というのでは余り意味がないというお話です。5ページの4番に書かれているようなものが錠剤、カプセル、粉末になっている場合は、例えば1日摂取量を幾ら以内にしてくださいとか、そういうことを記載することは一定の意味があるのではないかと思われますが、その辺はどうでしょうか。

○群馬大学教育学部高橋教授 例えばβカロテンの場合は、野菜や果物をたくさん食べる人たちはある種のがんやある種の心臓疾患にかかりにくいという疫学的なデータが蓄積されて、有効成分は多分βカロテンであろうということでβカロテンの補充実験が始まったわけです。中間報告をまとめるためにあけてみたら、喫煙者の場合は逆に肺がん罹患率が高いということがわかったわけです。ですから、幾ら以上飲んではいけませんというのは、ビタミンですから、そんなことは考えなかったわけです。
それから、乾燥アマメシバの場合は、一定量摂取していて、有害物質が一定量蓄積すると起こることです。ですから、これは1日幾らだったら大丈夫というものではないわけです。
自己免疫疾患の誘導というのは、α-リポ酸摂取によるインスリン自己免疫症候群です。インスリン注射歴がないにもかかわらず血中にインスリン結合抗体を有し、食後に低血糖を起こしてしまうという症状ですけれども、あれも、α-リポ酸というものを食事成分としてごく微量摂っている分にはそういうことは起こらないわけです。でも、それを「○○にいい」ということで錠剤化されたものを健康食品として利用した場合には、そういう事例が今まではほとんどなかったのに、ここのところ、とてもたくさん出ているわけです。そういったことです。
緑茶抽出物錠剤の肝障害というのは、これは日本の事例ではありません。これはエタノール抽出が悪かったのではないかという話ですけれども、そういった抽出物を錠剤にして飲んで肝障害を起こすと。幾らまで、毎日これだけの量だったら安全ですということは言えないものもあるわけでして、今、委員のおっしゃったことは、残念ながら適正量の表示ということはちょっと難しいと思います。

○松本委員長 日和佐委員、どうぞ。

○日和佐委員 今日はどうもありがとうございました。
9ページで、「食品」の範疇に含めることに問題があるとおっしゃっていらっしゃいます。そうであろうと私も考えますけれども、そうすると、「食品とは」という定義を明確にしなければいけないということでしょうか。そこを教えてください。

○群馬大学教育学部高橋教授 食品とは何かということが昔から論じられていて、今日においてなお食品を定義することはできないと言った方がいいだろうと思います。私も食品の領域で生きてもう40年以上になりますけれども、常にその問題と直面してきております。私は基本的に、「おいしい」「まずい」を言わないものを食品の範疇に含めてはいけないと、かつて15年ぐらい前までは言っていたのですけれども、ちょっとそこにも無理があるなというところになってまいりまして、今回、この委員会でこういった機会をいただきまして、また考え直して、用法・用量的なことを指示する必要がある製品を食品と言うのはやはり無理があると。
例えば先ほども言いましたけれども、アルコールの適正摂取量とありまして、そういったことはわかっていても、この缶ビールは1日1本までにしておきましょうなどという表示はどこにもありませんし、そんなことをしたら消費者はみんな怒ってしまうと思います。でも、いわゆる健康食品に関して、保健効果を発揮するために、あるいは有害性を発現させないために、そこである種の指示が必要というのは、そもそも食品と言うことに無理があるのではないか。お米の御飯をそれこそおなかいっぱい食べて、肥満という健康問題が起きてきます。油の摂り過ぎで肥満ということも起こってまいりますが、それとは違う問題の起こり方ということで、時代とともに食品の範囲は変わってくるのかもしれませんが、そういう中で健康食品というものがこの何十年か、社会的に存在するものとしてきたことを、もう一回ここで見直していただきたいという思いです。

○松本委員長 私は大豆タンパク系の食品が好きなものですから、お豆腐とか納豆とか、よく食べるのですが、ちょっと前に食品安全委員会が大豆タンパクのリスクアセスメントをしたと。

○群馬大学教育学部高橋教授 イソフラボンです。

○松本委員長 イソフラボンですか、失礼しました。それで、お豆腐もたくさん食べたら危険だとかいうデータが出ていましたけれども、その辺との関係はどうなるのでしょうか。

○群馬大学教育学部高橋教授 それは違います。大豆製品のお豆腐、納豆、油揚げ、そういったものをいくら食べても、イソフラボンの過剰摂取は、納豆3パックを毎日食べたらどうかなというのはありますけれども、基本的には胃袋の方が受け付けてくれないので心配ありません。食品安全委員会があそこで出したのは、大豆イソフラボンを特定保健用食品として認めるという話だったのです。ですから、大豆タンパクではありません。大豆製品を食品として食べるというのは、やはり常識的な量というのがあります。その範囲で食べている限りイソフラボンの過剰摂取を心配する必要はありませんけれども、大豆からイソフラボンを抽出してそれを錠剤にすると、これは、他の食品成分、ビタミンでも言えますけれども、過剰摂取が可能になってしまうのです。そういうことです。

○松本委員長 下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 教えていただきたいのですけれども、先ほど食品の範疇ということで、用法・用量的なことを指示する必要があるのは食品に入らないということをおっしゃられました。5ページにおいては、根拠のない常套句ということで、「医薬品ではありません。食品だから安全です」と。上の写真を見ると、大体錠剤とかカプセルになっているものが多いから、いかにも医薬品のように私みたいな素人は思うわけです。まさに先生がおっしゃっていることは私も賛成いたします。
ただ、その前に、「制度の運用がうまく働かなければ」ということをおっしゃられました。そうすると、例えば用法・用量的なものは、今はそれらしき行間を読ませるものを書いてありますけれども、行間を読ませるものも含めて、そういうものを表示しなければある程度制度の運用がうまくいくのでしょうか。

○群馬大学教育学部高橋教授 もう一度お願いします。

○下谷内委員 すみません。容器などに広告表示がありますね。そこのところに効能効果のような書き方をされていますけれども、それは大体、行間を読むようなものが書いてあるわけです。それは、効能効果とかそういうものではないと思うのです。そうすると、行間を読ませるようなもの、先生がいっぱい書いてくださった、「しっとり・ぷるぷる」とか、そういうものの広告の在り方というのは非常に難しいと思うんですね、景表法とかいろいろなことがありますが。効能効果とか用法・用量について、「ぷるるん」も全く書かないものをおっしゃっておられるのか、その辺りがちょっとわからないのですけれども。

○群馬大学教育学部高橋教授 「コラーゲンを飲んでお肌つるつる」のことに関して言わせてもらいますと、ここに「毎日1本・飲むコラーゲン」とあります。要するにそうやって書いてあるわけで、1日1本飲みましょうと。何本飲んでも効果があるものではありませんとは書いていないわけです。ですから、5本飲めばもっと効果があるのではないかと思って飲む人がいるかもしれません。コラーゲンなんて、そんな余計に飲んでも別に害はないと思いますけれども、ものによっては害が出てくるものもあります。ですから、やはりあった方がいいのではないかということです。

○下谷内委員 いえ、そういうものを削るには。

○松本委員長 下谷内委員の御質問は、行間を読ませる広告をさせないようにするためにはどうすればいいか、ということですか。

○下谷内委員 はい。

○群馬大学教育学部高橋教授 それができないんですよ。私は随分いろいろな企業に文句を言ってきました。学生の卒業論文でやったり、私自身が個人的にもやりましたけれども、私が一人でやってもどうにもなりません。

○松本委員長 恐らく広告代理店というのはそれで商売をしている。行間を読ませる、いいキャッチコピーをつくることで商売をしているわけだから、確かに難しいですね。

○佐野委員 先ほど先生がおっしゃった、メーカーのモラルというところに期待しているととんでもないところに行きそうな気がします。そこを私たちは何とかしたいと考えているのですが。

○中村委員長代理 そこで池田さん。

○松本委員長 池田委員、どうぞ。

○池田委員 メーカーでございます。ビール会社でございます。いろいろと話題が出ておりますが、なかなか難しいテーマをお話しなさっていると思います。我々はBtoCのビジネスですから、特に広告というのは大事な表現力で、広告なしにしては商品が成り立たないわけです。ですから、イメージとか、商品の特性とか、広告はいろいろな考え方で打っています。
例えば新商品の場合ですと、こういう考え方で我々は開発したというカタログのような広告もございますし、ある程度商品が長く続いてきますと、やはり時代によって商品のイメージが変化しますから、イメージをどのようにお客様にお伝えしていくかということで、イメージ的な、商品の性格づけ的な広告もしていきます。それと、確かに我々も事業としてサプリメントを扱っていますから、今おっしゃったように、行間を読ませるような広告を行っているのも事実だと思います。そういう広告はすべて代理店を通じてやっておりますけれども、それを指示したり承認しているのは第一義的には私ども事業会社ですから、それについてのすべての責任は事業会社にあることは間違いないわけです。
一方で、我々は、CSRといいますか、社会的に責任がある企業であることが我々のモラルの基本です。しかし、一つひとつの事柄について、これを禁止したらよくなるとか、これをしたらよくなるとか、こういう問題はなかなか解決が出てこないのではないか。それと、大から小、善意の事業者、悪意の事業者、いろいろな種類がございますから、事業者一般という表現でやられると、この問題も全然解決は出てこない。そういう種々の条件の中にいろんな要因が入ってきますので、効率的に白黒決着して解決していくような簡単な問題でもないと思います。
それから、食品というのはある程度歴史的な事実の上に成り立っているものだと思います。だから、歴史の浅い商品はいろいろな問題が起こってくるのも事実だろうと思います。食経験によって食品として選択されていく代物ではないかと思うのです。私は中国へ行ってナマコの姿煮というのを出されたときにびっくり仰天したんです。それが最高のもてなしで、三日三晩出るわけです。やはりそういう体験の中で選択の判断が出てくるのであって、一概にこれだからこうと、明らかに悪意的なものは別ですが、最終的には事業者がしっかりすることと、消費者がしっかりする。その両方が成り立たないとこの問題は解決しないのではないか。だから、非常に大事なことではありますが、難しいテーマを議論しているのだと思います。

○山口委員 3ページのマル7ですが、これをもう少し御説明いただければと。何が問題なのかがよくわからないのですが、これまで食べられなかったものが食べられるのはいいことではないかと思いますが、何が問題なのか。
それからもう一つ、9ページ、先ほど日和佐委員が質問したことですが、先生は、薬品と食品の間に新しい何とか概念をつくったらどうかという、そういうお考えなのかどうなのか。その2点です。

○群馬大学教育学部高橋教授 7番目の「非食品の食品化」というのは、未利用資源の活用ではありません。未利用資源の活用というのは、今までだったら、食べられるのに捨てられていた部分を食品工業的に加工して食べられるようにすることです。それは非常にいいことだと思います。ここの7番目はそうではありません。プロポリスというのは、東欧の国々で医薬品として使っていたという歴史があります。イチョウ葉エキスも、ヨーロッパではいろいろな国が医薬品として使っております。イチョウの実である銀杏を食べる食用歴は長いですけれども、イチョウの葉っぱをお茶にして飲むという歴史はないのです。プロポリスもイチョウ葉も薬理成分は強いですから、いわゆる健康食品として安易に利用されると、これは非常に重大問題が起きております。そういうことです。
それから、私は食品の領域で生きておりまして、どうしたらいいのかと言われると非常に困るのですけれども、例えば9ページ目の今の御質問は、食品の範疇に含めることに問題があるということで、では、医薬品と食品の間に何か制度をつくるべきかどうかという、その辺りのことは、制度をつくるのがいいのか。国民生活センターの宗林さんの御発表にもあったと思いますが、赤ぶどう葉エキスがOTCでもし認められるのであれば、そういったところで認める、あるいは、医薬部外品というよりは、OTCの第1類、第2類、第3類のどこが適当かわかりませんけれども、何かそういうもので機能性は語ってほしいという思いでおります。食品から除外してくれれば結構です。

○中村委員長代理 先ほどのお話で、違法・違反広告を見て通報しても取締り当局が全然追いつかないというお話がありました。では、消費者教育のところでどうかというと、家庭科でほとんど時間がとれない。そうすると、先生が憂えておられる今日の状態というのは、どうやったらうまく改善できると思われますか。

○群馬大学教育学部高橋教授 それができれば私も苦労はしません。無駄な健康食品に数万円という金を使って日常の食生活が貧弱な人っているんですね。私はそれが本当に悔しくて、悔しくて、しょうがないです。そんなものを買う金でおいしいお刺身を食べてくださいと言いたいのです。その思いです。どうにもならないから歯ぎしりしております。ごまめの歯ぎしりと笑われております。

○松本委員長 こうすれば解決できるというのは、そう簡単には答えがないということだろうと思います。
本日は、高橋先生におかれましては消費者委員会の審議に御協力いただきまして、誠にありがとうございました。

≪3.公益通報者保護制度について≫

○松本委員長 続きまして、「公益通報者保護制度について」でございます。公益通報者保護制度につきましては、消費者委員会のもとに設置しております「公益通報者保護専門調査会」において御審議をいただいており、第47回「消費者委員会」におきまして、島田座長より専門調査会の報告をいただいたところです。
本日は、この報告を受けまして、消費者委員会として意見表明を行いたいと思います。資料2-1として、「公益通報者保護制度の見直しについての意見(案)」を配付しておりますので、中村委員長代理から御紹介をお願いいたします。

○中村委員長代理 資料2-1ですが、冒頭に少し経過を書いております。割愛した形で表現しておりまして、詳しい内容は資料2-2の専門調査会の報告書本体にありますので、資料2-2の方も併せて見ていただきたいと思います。
「公益通報者保護制度の見直しについての意見(案)・平成23年3月11日・消費者委員会」として御提起します。
公益通報者保護法附則第2条を受けて、これは5年後見直しということですが、公益通報者保護専門調査会を設置しまして、法施行後5年という節目にあわせて限られた時間の中で、8回にわたる審議を行いました。同専門調査会では、別紙のとおり、資料2-2の方に「政府に求められる事項」というのをまとめております。報告書の12ページにあります。
なお、この報告を受けまして、消費者委員会でこれをホームページに掲載しましたところ、消費者委員会には、大阪弁護士会、日本弁護士連合会、公益通報事件の当事者である方々数名、本日も1人傍聴に来ておられますけれども、そういう方々から、法改正の必要性を示唆する複数の意見が寄せられておりますし、更につい先日、朝日新聞の社説などにも同様の意見が述べられております。
本法の附帯決議において、公益通報者の範囲等、制度の見直しに係る具体的検討事項まで指摘しておりますが、現状においては見直しのための十分な調査が行われているとは言えないと思います。
このため、消費者委員会としては、本法を所管する消費者庁に対して、「政府に求められる事項」に関し早急に検討を行うことを求めるとともに、とりわけ5項目のうち、法や通報処理制度の実態の把握に関する事項、3番目に書いてありますが、これについては、法の運用、適用、遵守状況も含め、以下の観点から充実した調査を行うことを求めるものであります。
1つとして、労働相談窓口、労働委員会、裁判所、弁護士会、行政機関、マスコミ、公益通報事案の当事者等から、労働相談・労働紛争・労働裁判等の中に存在する、公益通報に関連する紛争の実情・実態を調査し、傾向・問題点を洗い出すこと。
2つとして、また、公益通報者保護の法制度の周知が進まない原因を更に調査探索すること。
今後、消費者委員会は、本意見を踏まえた対応状況について適宜報告を求めるものとしたいと思います。
なお、本法の目的である法令遵守の促進を図るためにも、公益通報者保護制度の充実を図る視点に加え、本制度以外の法制度・仕組みも充実させ、総合的に体制を構築しつつ事業者や行政の意識も改革していくことが重要であると思います。
以上でございます。

○松本委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの意見案につきまして、更に御意見のある方は御発言ください。
特にございませんでしょうか。
ございませんようでしたら、この内容で消費者委員会としては意見を採択したいと思います。ありがとうございました。

≪4.特定商取引法施行令の改正について≫

○松本委員長 それでは、3つ目の課題でございますが、「特定商取引法施行令の改正について」ということでございます。特定商取引法につきましては、第64条第1項の規定により、政令事項のうち同項に規定する重要なものの制定または改正に当たっては、消費者委員会及び消費経済審議会に諮問することとなっております。
これに基づきまして、本日、消費者庁から参考資料1のとおり諮問がございましたので、この諮問について消費者庁及び金融庁からヒアリング及び審議を行った上で、委員会として判断を示すこととしたいと思います。
それでは初めに、消費者庁取引・物価対策課より御説明をお願いいたします。

○消費者庁畑野取引・物価対策課長 取引・物価対策課長でございます。
今、松本委員長から御丁寧な御紹介をいただきましたけれども、本日は、資料3、後ほど金融庁に資料4というこの2つの資料で、本日諮問させていただきます、特定商取引に関する法律の施行令の改正に係る話につきまして御審議をいただきたいと思っております。
消費者庁取引・物価対策課から、この委員会でこの法律の政令の御諮問をさせていただくのはこれが初めてということもございますので、資料3に基づきまして、若干制度の中身も含めて簡単に御説明させていただきまして、その後、金融庁から資料4ということで、具体的な本件の内容でございます、「保険業法」についてのお話をしていただきたいと思っております。
資料3でございますけれども、今、松本委員長から御紹介いただきましたように、特定商取引法におきましては、すべてではないわけですが、法律で政令改正あるいはこれをつくるときには、消費者委員会、経済産業省の審議会の方に諮問しなければいけないことになっております。今回、政令の改正を検討しておりますのは、特定商取引法の中でいわゆる適用除外というところ、これが政令の方で規定されておりますので、そこの部分の改正ということでございます。
具体的には、そのページの(2)に書いてございますように、特定商取引法の6類型の中で、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売の3類型につきまして、平成20年の特定商取引法改正によりまして、原則あらゆる商品・サービスにこの法律の適用をすることになっているわけでございますけれども、各個別法、主として業法ですが、実効ある消費者保護のための規制体系が構築されている場合には、二重規制を排する観点から特定商取引法を適用除外ということになっております。
特定商取引法そのものの中には、金融商品取引法、旅行業法、宅建業法、この3つにつきまして、あらかじめ法律で適用除外となっているわけでございますけれども、それらにつきましては、政令でこれを列挙するということで、現在、49本の法律が適用除外になっているわけでございます。
(3)でございますけれども、今般御審議をいただきますのは、「保険業法の一部を改正する法律の一部を改正する法律」が昨年末の臨時国会で成立したということで、その関係での適用除外の改正をしていただくというものでございます。
総じて申し上げますと、今般の消費者委員会への諮問事項でございますが、「認可特定保険業者の行う特定保険業等」、これはあとで金融庁から説明があろうかと思いますけれども、これを新たに特定商取引法の適用除外とする、これを可能とするための政令改正を行う。これが諮問事項ということになっております。
注3にございますけれども、保険業法につきましては、この中で規定されております役務・サービスにつきましては既に特定商取引法の適用除外とされているところでございます。
一、二点、補足で次のページ以降で説明させていただきます。
まず、「消費者保護のための規制体系が構築されている」というのはどういうことなのかということでございます。3枚目、横長のページで「(2)全面的な適用除外の基準」という資料がございます。その下のほうの説明によれば、「他の法律の規定によって利益を保護することができる」とはどういうことかということですけれども、これはクライテリアが2つということでございます。
「マル1消費者被害に対する是正措置が整備されていること」ということでございます。更に具体的には、業務改善命令、指示命令、約款変更命令といった形で不当な状態が是正できる、そういった行政命令がかけられるか、あるいは許可等の取消処分、営業停止命令と。冒頭申し上げましたように、適用除外となっているもののほとんどは業法でございます。業法というのは行政庁が許可・免許を与えているということでございますので、消費者保護に適わない業者につきましては、許可等を取り消す、こういった是正措置が加えられているかどうか。この(1)か(2)、いずれか、もしくは両方でもいいわけでございますけれども、なっている場合には消費者保護が図られる。第1のクライテリアは満足されるであろうと。
「マル2是正措置を発動することが可能となるような法目的との整合性」。こういった発動に当たって消費者保護が図られているかどうかといった観点がトリガーとなっていないと、意味がないということでございますので、法目的あるいは法律を総合的に読んだ暁に、是正措置が発動可能となる法目的を有しているというふうに観念できるかどうか。これが第2のクライテリアになるわけでございます。
もう一言、次のページでございますけれども、金融商品取引法、宅地建物取引業法、旅行業法、この3つにつきましては既に特定商取引法の法律の中で適用除外とされております。そのほかの49の法律については、政令でこれを列挙するということでございます。
今回御審議いただき、また、保険業法、既に御説明申し上げましたけれども、「i)金融取引に関するもの」ということで、既に保険業法の役務提供につきましては特定商取引法の適用除外となっている。何となれば、先ほどの2つのクライテリアが満足されているということでございます。今回は保険業法の一部改正で特定保険業という業態が一つ加わる。これについても適用除外とするという話が、今回の政令改正の中身になっております。
私からの説明は以上にさせていただきまして、続きまして、金融庁からお願いします。

○金融庁小原総務企画局企画課保険企画室長 金融庁の保険企画室長の小原でございます。よろしくお願いいたします。
お手元の資料4に沿いまして、御説明を差し上げたいと存じます。
まず、1番目、「特定商取引に関する法律施行令の改正」というところでございます。ただいま消費者庁から御説明がございましたように、現行の特定商取引に関する法律施行令におきまして、保険会社の行う保険の引受け等は、既に特定商取引に関する法律の適用除外とされているところでございます。具体的には、別紙の1に列挙している業者の行う業について適用除外とされているところでございます。改正後の保険業法等の一部を改正する法律に基づきまして、認可特定保険業者が行う特定保険業等を、今回、特定商取引法の適用除外とするべく、必要な手当を行うこととするものでございます。
具体的な今回の改正法の内容につきましては、別紙2を御参照いただければと思います。「『保険業法等の一部を改正する法律』の一部を改正する法律の概要」という紙でございますが、まず、基本的考え方のところでございます。ここに書いてあることの前段階として、平成17年に保険業法の改正が行われましたが、当該改正前は、保険業法の規制の対象は不特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業と規定されておりました。これが保険業の定義ということでございまして、逆に特定の者を相手方とするものは、保険業法の適用除外ということで規制・監督がなかったという状態でございました。
その後、さまざまな問題点が指摘されたことを受けまして、本文の矢印のところでございますが、平成17年の保険業法改正によりまして、特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業についても、原則として保険業法の規定を適用するという改正が行われたところでございます。
他方、その改正を受けまして、既存の団体の中には、引き続き共済事業を行おうとすれば保険会社になるなどの対応が必要であったわけですが、新たな規制には、直ちには適用することが容易でないものが多数存在したというところを受けまして、下の大きな矢印のところ、これが今回の措置ですけれども、「既存の団体のうち、一定の要件に該当するものにつきまして、保険業法の規制の特例を設け、当分の間、その実態に即した監督を行う」。すなわち、平成17年改正前は全く規制・監督がなかったものにつきまして、一部保険業法の規定を準用する形で規制・監督を設けていく。当分の間、共済事業の継続を認めるというものでございます。
以下、かいつまんで御説明いたします。まず、対象のところでございますが、これは今、申し上げたとおりでございまして、「平成17年の保険業法改正時に現に特定保険業を行っていた者」。特定保険業というのは下に小さく注書きがありますが、「改正後の保険業法に規定する保険業であって、改正前の保険業法に規定する保険業に該当しないもの」。ややこしいわけですけれども、改正前は特定の者を相手方とするものは保険業ではなかったわけですので、大ざっぱに言うと、特定の者を相手に保険の引受けを行う事業、これを特定保険業というふうに御理解いただければと思います。
下の業務のところでございます。一番上でございますが、今回、当分の間の措置ということもございまして、特定保険業を行う範囲は保険業法改正時に行っていた範囲で、新たな顧客層ですとか、新たな商品というものを販売することはできないことになっております。
それから、一番下でございますが、保険募集に係る重要事項の説明義務ですとか、虚偽告知の禁止などにつきましては、保険業法の募集に係る禁止行為の規定を準用しているところでございます。
右上にまいりまして、経理等を整えていただくことのほか、監督規定といたしまして、報告徴求、立入検査、業務改善命令等の規定につきましても、同様に保険会社等の規定を準用しているところでございます。
恐縮ですが、1枚目の紙に戻っていただきまして、2番目でございます。「現行の特定商取引法と保険業法との関係」でございます。現行保険業法に規定されている業務等が特定商取引法の適用除外とされている理由でございますが、以下のとおりとなっております。
マル1でございます。「特定商取引法における違反類型(不当勧誘・不当広告等)に対して、業務改善命令や指示命令等の是正措置が準備されていること」というメルクマールでございますが、保険業法上、保険会社等が不当な勧誘や広告を行った場合等につきましては、業務改善・停止命令、免許の取消し等、具体的には保険業法132条第1項におきまして、業務もしくは財産の状況に照らして必要があると認めるときには、業務改善命令なり業務停止命令が出せることになっております。同じく133条によりまして、行政処分あるいは法令等に違反したときなどには、免許の取消し等の措置が存在しているところでございます。
マル2のメルクマールでございますが、「上記是正措置を発動する目的が、特定商取引法の目的と合致」することとございます。これらの措置につきましては、保険契約者保護の観点からの措置でございまして、具体的に申し上げますと、保険業法の第1条に目的規定がございます。「保険業を行う者の業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保することにより、保険契約者等の保護を図る」というのが保険業法の目的でございまして、特定商取引法の目的と合致するものと思っております。
3番目でございます。認可特定保険業者、これは、今回の措置により認可を受けて特定保険業を行う者でございますが、「認可特定保険業者の行う特定保険業等について特定商取引法の適用除外とすることが適切な理由」でございますが、先ほど別紙2で御説明いたしましたとおり、認可特定保険業者につきましても不当な勧誘や広告が行われた場合等には、保険契約者等の保護の観点から業務停止命令や認可の取消しの措置が存在しているというところでございます。
私からは以上でございます。

○松本委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして、どうぞ、御意見、御質問がございましたら、お出しください。
下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 御説明ありがとうございました。金融庁にお伺いしたいのですが、教えていただければと思います。
今、共済事業に関しては、村とか商店街で、無尽講とかそういうのをやっていらっしゃるのがまだあると思います。当分の間、実態に即して特例を設けるということでありますが、そういうものが新しい勧誘ができなくなりますので、それは自然に終わるのを待つということですか。そういうものの働きについて余り効果がないからやめると、自然に淘汰を待つのでしょうか。

○金融庁小原総務企画局企画課保険企画室長 若干先ほどの説明が十分ではなかったかと思いますけれども、平成17年の改正が一体何を意味するのかといいますと、共済事業というのはいろいろなところで行われている。例えば会社の一つの課の中で給料日に500円ずつ集めて、だれか結婚したときにお祝い金を出すとか、それも形の上では保険と類似した業務になります。そういったものも一つの共済と考えることもできますし、あるいは御指摘のように、一つの集落単位で助け合いのために相互扶助されるということもあろうかと思います。
そういう世界だけでとどまっていれば、前回の改正は必要なかったかもしれませんけれども、「特定の者」ということで、いろいろな類型の共済と称する事業者があらわれた。例えば営利企業が、自分のお客さんを特定の者と称して共済を行うという類型も現れました。保険というのは、将来払う保険金に見合った保険料がちゃんと取れているのかという財務の健全性の問題と、内容がちゃんと契約者に説明されているのか、契約者の理解を得た上でやっているのか、そういったものが確保されているかどうかということが必要でございますけれども、それが、全く規制も監督もないということになりますと、やはり消費者保護の観点から問題があるということで平成17年に改正が行われました。
ただ、そのときに、「一定の類型」については引き続き適用除外にするという規定が設けられておりまして、その一定の類型というのは、一つは、規模が非常に小さいもの。政令で、1,000人以下を相手方とするもの、それから、企業内の共済ですとか、そういったものは、引き続き適用除外になっているということでございまして、今回の措置は、そういったものを超えて、もう少し広い範囲の相手方を対象に保険の引受けを行う事業が該当するということでございます。

○下谷内委員 確かに保険業法を改正されましたときにも、「オレンジ共済」とかいろいろな問題が出てきて、相談の中にも消費者被害が非常に多くなった事実はあります。だから、それを規制してもらうのはとてもいいことだと思いますけれども、一方ではすごく反対されている意見もあったので、その辺のところでどうだったのかなというふうに思ったわけです。ありがとうございました。

○松本委員長 ほかにございませんか。
中村委員、どうぞ。

○中村委員長代理 今まで共済関係がいろいろあって、それは監督官庁は別に金融庁ではなく、厚労省とかそんなところが担当していて、そこの監督が必ずしもうまくいっていなかったということも今回の背景にあるのかなと思うのです。今度は金融庁の方で、従来目が届かなかった共済に対してもいろいろものを言えると、そういう理解でよろしいのですか。例えば厚生労働省などが所管していたこととの関係がどうなるのか、御説明いただけますでしょうか。

○金融庁小原総務企画局企画課保険企画室長 一口に共済といっても、大きく2つの類型に分けられるかと思います。1つは制度共済と言われているものです。例えば農業協同組合、消費生活協同組合、事業協同組合といったもので、これは法律の規定に基づいて共済事業を行って、それぞれ農林水産省、厚生労働省あるいは各事業所管大臣が監督するという類型が一つあろうかと思います。こちらにつきましては、今、委員長代理が御指摘のように、契約者保護の観点から不十分ではないかとの指摘をいただくこともありますけれども、近年、経理とか、募集規制とか、かなり整備が進められているというふうに聞いております。
今回、問題にしているのは、どこの省庁も、共済事業に特化した、共済事業に着目した監督はしていなかった類型の共済事業について監督を行うというものでございます。
それで、もう一つ申し上げなければいけないのは、今回、対象になってくる事業者のかなりの部分が従来の民法上の公益法人であったというところでございます。こちらの監督官庁につきましては、一般社団法人、一般財団法人に移行した後、そちらの法律では監督官庁はなくなるわけですけれども、従来からそこを見てきたということもあって、今回、当分の間の措置ということもあって、引き続き旧主務官庁に見ていただく。それ以外の任意団体などで、今まで全くどこの官庁も見ていなかったところを金融庁が見るということになっております。

○松本委員長 ほかに、御質問等ございませんか。
ございませんようでしたら、ただいまの諮問を受けた改正内容ということで、消費者委員会としては、特に問題がないという結論でお答えしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○松本委員長 ありがとうございました。それでは、そのように答申いたしたいと思います。

≪5.閉会≫

○松本委員長 本日の予定しております議題は以上でございますが、山口委員から、少し情報提供をお願いいたします。

○山口委員 未公開株の問題が多発していることについて、消費者委員会として、特にこれは金融庁に対する関係で提言をしてまいりました。つまり、無登録事業者が非上場の会社の有価証券等を販売した場合については民事的な効果を及ぼして、取消しあるいは無効にすることが可能な制度改正を検討するべきではないか。あるいは、そのような被害者を生み出す事業者の行為についての罰則が、3年以下の懲役あるいは罰金ということで軽過ぎるので、やはり一定の重罰化をするべきではないかという提言をしてまいりました。
この提言につきまして、金融庁の方で真摯に受けとめていただきまして、消費者委員会の方で提言をした内容をほぼ受けとめて制度改正をしていただける方向が、今日、閣議決定で出ておりますので、これに注目して今後の推移を見守る必要があるのではないかと思います。
それから、有料老人ホームの問題につきましても、委員会で調査した上で消費者委員会として建議をいたしました。この建議の中で特に90日ルールについて、入居して90日以内に退去したお年寄りに関して、入居一時金を払った場合、取扱いが法律にきちっと定められていないので各施設で返還金の処理がばらばらな取り扱いになっている。これを、法律で全額返還のルールを明記すべきではないかということで建議してきたわけですが、これも今日、法律改正をするということで閣議決定がございました。
中身としましては、「介護保険法等の一部を改正する法律」において、有料老人ホームの入居一時金については、法律上、一定の場合を除外して全額を返還する旨の契約を締結しなければならないということで、義務づける改正を、ほかの法律改正と併せてやれるようでありまして、我々消費者委員会の建議が生かされる形で閣議決定されました。
この2つについては、消費者委員会で提言なり建議をして、消費者被害を少しでも軽くする方向での制度改正をお願いしてきたわけです。厚労省及び金融庁において、このような努力がなされたことについては感謝したいと思いますし、今後の推移も見守りたいと思いますが、消費者委員会として、今後、これをどうするのか。事務局のお考えも聞かせていただければと思います。

○原事務局長 今後の取組みについては、委員間打ち合わせでまた御相談させていただきたいと思います。早い段階で委員会でも取り上げることができればと思います。

○松本委員長 消費者委員会はあと残すところ6か月ほどになりまして、これからいろいろな形で成果が出てくる時期で、早速こういう2つの法改正が実現することがほぼ確実になったことは、我々として喜びたいと思います。
本日の議題はこれで終了でございます。事務局より、今後の予定について御説明をお願いいたします。

○原事務局長 本日、委員会終了後5時10分を目途に委員長記者会見を行う予定にしております。
次回の委員会は3月25日(金曜日)の15時から行う予定です。議題につきましては、決まり次第お伝えしたいと思います。

○松本委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。地震の中で審議におつき合いいただきまして、誠にありがとうございました。

(以上)